以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、本発明に係る表示装置の構成を示すブロック図である。表示装置1は、後述する画像信号出力装置2からの画像信号の入力を受け付けるインタフェースである入力部11と、入力される画像信号が含む色成分毎の強度を示す階調値を適宜変換する変換部12と、輝度ムラ及び色ムラを補正するムラ補正部13と、表示部16の階調特性を吸収するガンマ補正を行なうLUT(Look Up Table)14と、補正後の階調値を表示部16へ出力する出力部15と、LCDパネル、PDP等のパネル及びパネルを駆動する駆動回路を含む表示部16とを備えている。変換部12、ムラ補正部13、LUT14及び出力部15はASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途集積回路)で構成される。なお、変換部12、ムラ補正部13、LUT14及び出力部15は夫々ASICに限定されるものではなく、FPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されてもよく、個々の回路で構成するようにしてもよい。
画像信号出力装置2は、PC(Personal Computer)、テレビ用チューナー、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤー、ゲーム機等の画像信号を出力する装置である。
表示装置1は、画像信号出力装置2から出力される画像信号を入力部11により受け付け、画像信号に含まれる各画素の各色成分、又は輝度及び色差の強度を表わす階調値に基づき、表示部16に対応する画像信号を出力部15により出力し、表示部16に画像を表示させる。
変換部12は、表示部16に表示させる画像を構成する各画素の色成分をR(Red:赤成分)G(Green:緑成分)B(Blue:青成分)で表わし、且つそのRGB夫々の色成分の強度を示す階調値を8ビット、即ち0から255までの256段階で表わした24ビットのRGB信号の入力を受け付ける。したがって、入力部11は、入力部11で受け付ける画像信号の種類によってはアナログ/デジタル変換の機能、RGB信号へ変換する機能等を有していてもよい。なお、変換部12が受け付ける画像信号は上述のような24ビットのRGB信号とは限らず、他の色成分を含む信号でもよく、更に、変換処理によっては例えば各色成分を10ビット、14ビット等で表わした画像信号でもよい。
変換部12は、入力部11を介して入力された色成分毎の階調値を適宜変換して出力する。変換部12には変換のための係数、例えば色空間の設定に応じたカラーマトリックス、又は色温度の設定に応じて強度比率を変換するための係数が記憶されている。変換部12は、入力された各色成分の階調値を係数を用いて変換し、出力する。
LUT14は、後段の表示部16で滑らかな階調表示を実現するため、表示部16における入力階調値と出力輝度との対応を示す階調特性を吸収するように、ムラ補正部13から出力される色成分毎の階調値に対してガンマ補正を行ない、補正後の画像信号を出力部15を介して表示部16に入力する。
図2は、ガンマ補正の概要を示す説明図である。図2(a)は表示部16の階調特性の例を示し、図2(b)は理想的な階調特性を示している。図2(b)に示す理想的な階調特性の場合、入力される階調値xに対して表示される画像の輝度yがxのγ乗(y=xγ)の関係(ガンマ曲線)となるように出力される。ここで言うγはガンマ値と呼ばれ、ガンマ値γは入力される階調値xの最小階調値から最大階調値までをゼロから1までの間の数値に正規化した階調比の対数により、最小階調値に対応する輝度から最大階調値に対応する輝度までをゼロから1までの間の数値に正規化した輝度比の対数を除したものである(式1)。なおガンマ値γは、γ=2.2又はγ=1.8が一般的に良好とされている。
γ=log(輝度比)/log(階調比)・・・(1)
LUT14は、ムラ補正部13から出力される色成分毎の階調値を、全階調値に亘りガンマ値γ=2.2又はγ=1.8となるように補正して出力する。図2(c)は、LUT14によって階調値が補正される例を示している。図2(c)の横軸は、LUT14の前段のムラ補正部13から入力される階調値であり、図2(c)の縦軸は、LUT14での階調値の補正によって出力される階調値である。図2(c)に示すようにLUT14では、入力される階調値毎に出力される階調値が対応付けられている。具体的には、LUT14を構成するメモリに、補正後の階調値が入力階調値毎に書き換え可能に記憶されており、LUT14は入力される階調値に対応する補正後の階調値を出力するように構成されている。LUT14で階調値を補正した後の階調値が、図2(a)の階調特性を有する表示部16へ出力部15を介して入力されることにより、ムラ補正部13から出力される各色成分の階調値に対し、表示部16で表示される画像の輝度が図2(b)に示した階調特性となる。
なお、LUT14に記憶されるデータの格納数は有限であり、例えば色成分毎に階調値を8ビット即ち256階調で表わす場合、入力階調値と出力階調値との対応は256個である。したがって、図2(c)に示す曲線は実際には離散的なグラフ(散布図)となるが、便宜上曲線とみなして表わしている。本実施の形態では以降、階調特性、階調値に対するガンマ値の分布についても曲線として扱うが、実際には同様に離散的なグラフである。
LUT14で記憶されている補正後の階調値を求めるために用いられる補正値は、表示部16毎にその階調特性が異なることから、個々の表示装置1で異なる。個々の表示装置1の表示部16毎に階調特性、即ち各階調値毎の出力輝度を測定する処理、及び、表示部16の階調特性を吸収して図2(b)に示したような階調特性となるように補正するための補正値を個々の表示装置1について全階調値に対し算出し、当該補正値から補正後の階調値を算出して記憶する処理には長時間を要する。
図3は、個々の表示装置1が備える表示部16によって異なる階調特性の例を示すグラフ図である。図3のグラフ図の横軸は、表示部16に入力される階調値を示し、縦軸は入力される階調値に対し当該階調値を底とする表示部16で表示される画像の輝度の対数、即ちガンマ値γを示す。図3のグラフ図には、三台の表示装置1夫々の表示部16の階調特性を表わす曲線A、B、Cが示されている。理想的な階調特性では図3中の破線で示すように、全入力階調値に亘りガンマ値γがγ=2.2、γ=1.8等の一定値となる。しかしながら、図3のグラフ図中の曲線A、B、Cに表わされるように、表示部16の駆動回路における構成素子の特性、表示部16に利用されるパネルの特性等種々の起因により、入力階調値に対するガンマ値γは一定値とならない。
図3のグラフ図を参照した場合、曲線A、B、Cは非線形部と線形部との合成曲線であると見ることができる。図3のグラフ図中の曲線A、B、C夫々における低階調値側及び高階調値側に見られる非周期的な曲線部分、即ち非線形部は表示部16内の回路特性に起因し、線形部は表示部16が液晶パネルを利用している場合には液晶層を挟む電極間のギャップのバラツキに起因するものであると推定される。これは、例えば曲線A、B、Cの内の一の曲線Bの階調特性を有する表示部16へ入力する階調値を、曲線Bが線形となるように補正する補正値を算出し、当該補正値を用いて階調値を補正した画像信号を他の曲線A、Cに対応する表示部16へ入力した場合に、階調値に対するガンマ値の分布がほぼ線形、即ち曲線B、Cがほぼ線形となることからも推定可能である。
表示部16に含まれる駆動回路が同一構成の回路であれば、回路を構成する素子による特性はほぼ同様である。回路のメカニズムを起因とする特性は同一構成の回路を使用している各表示装置1の表示部16で同様となる。したがって、回路特性を起因とする特性を吸収する補正を行なった場合、階調値に対するガンマ値の分布は、ほぼ線形となる。これに対し、同種、同じ大きさの液晶パネルでも電極間ギャップはバラつく。当該電極間ギャップのバラつきは、階調値に対するガンマ値の分布の傾きのバラつきの起因である。
図4は、表示部16の駆動回路を構成するデジタル/アナログ(D/A)変換器に入力される階調値と出力される電圧値との対応例を示す説明図である。なお、図4の説明図に示す表示部16の例では、階調値は64ビットで表わされている。
液晶パネルを使用する場合に液晶パネルの各素子の電極に印加する電圧は、D/A変換器で複数の基準電圧V1、V2、V3、V4、…を発生させ、これをラダー抵抗で分圧することによって作成する。そして表示部16では、入力される階調値に対応して作成された電圧が選択され、各画素に対応する素子へ出力される。図4の説明図に示すように、電圧を作成するに際し使用する基準電圧(V2、V3、V4)が切り替わる点が存在する。この切り替わり点によって、入力される階調値と出力される電圧値との間の関係に非線形性が生じる。
図5は、D/A変換器に入力される階調値と出力される電圧値との対応関係の例を示したグラフ図である。図5のグラフ図の横軸は入力される階調値を示し、縦軸は夫々の階調値に対して作成される電圧値を示している。
図5のグラフ図に示すように、入力される階調値に対応して液晶パネルの電極に印加される電圧値は、階調値に対して複数の滑らかでない尖った部分、即ち傾きが急に変化する点(尖点)を有する曲線となる。図5中の破線で表わした丸印は尖点を示している。これらの尖点は、図4の説明図における基準電圧(V2、V3、V4)の切り替わり点に対応する。図3のグラフ図に示した曲線A、B、Cの非線形部は、図5のグラフ図に示した入力されるデジタル信号の階調値と基準電圧との関係を示す曲線の尖点近傍の歪みを起因とすることが解析により判る。
そこで、本実施の形態におけるLUT14は、図3のグラフ図に示した入力階調値に対するガンマ値の分布の内の非線形部に対応する部分を、基準となる一の表示装置1の表示部16の階調特性を全階調値に亘りガンマ値がγ=2.2とするための第1補正値を利用して補正する。そしてLUT14は更に、線形部に対応する部分を個々の表示部16における階調特性を、全階調値に亘りガンマ値がγ=2.2へ近づくように補正するための第2補正値を算出し、これを用いて入力される画像信号が含む階調値を補正するように構成される。
まず、非線形部に対応する部分を補正するための第1補正値の算出について説明する。基準となる階調特性は例えば、任意の表示装置1を抽出し、当該表示装置1が備える表示部16の階調特性を測定したものでもよい。予め複数台の表示装置1を抽出し、夫々の表示部16の階調特性を測定し、測定した階調特性から中央値となる階調特性を基準としてもよい。また、数台の表示装置1で測定した階調特性の平均を算出し、当該平均を基準となる階調特性としてもよい。なお、実測によって基準となる階調特性を得るのみならず、各表示装置1が備える表示部16を構成する駆動回路の構成要素から計算式、又はシミュレーションにより階調特性を算出し、当該階調特性を基準としてもよい。
本実施の形態では、三台の表示装置1夫々の表示部16の階調特性を測定し、中央値となる階調特性を有する表示装置1を抽出し、抽出された表示装置の表示部16の階調特性を基準として設定する。図3のグラフ図に示した例では、曲線Bが表わす階調特性が中央値であり、基準として設定される。
図6は、基準の階調特性が補正される例を示すグラフ図である。図6のグラフ図の横軸は表示部16に入力される階調値を示し、縦軸は入力される階調値に対するガンマ値γを示す。図6中の破線は、基準として設定された表示装置1の表示部16固有の階調特性を示し、図3中の曲線Bと等しい。図6中の実線は基準の階調特性が第1補正値によって補正された後の階調特性を示す。また、図6中の一点鎖線はガンマ値γ=2.2の直線を示す。
まず、基準として設定された階調特性が全階調に亘ってγ=2.2となるように、入力される階調値毎に第1補正値を予め算出しておく。具体的には、第1補正値=γtarget/γref x、γtarget=目標ガンマ値(例えば2.2)、γref x=基準の階調特性における入力階調値xでのガンマ値である。例えば、基準の階調特性において一の入力階調値x1に対するガンマ値がγref x1=2.3である場合、入力階調値x1に対する第1補正値は、(2.2/2.3)と算出される。また、基準の階調特性における他の入力階調値x2に対するガンマ値がγref x2=2.5である場合、入力階調値x2に対する第1補正値は、(2.2/2.5)と算出される。LUT14には、次の式2中の階調値xと、第1補正値を用いた補正後の階調値x´とが対応付けて記憶される。LUT14は、入力される画像信号が含む階調値xに対応付けて記憶されている補正後の階調値x´を出力する。
補正後の階調値x´=xα、α(第1補正値)=γtarget/γref x・・・(2)
これにより、基準の階調特性では全階調に亘ってガンマ値γが目標ガンマ値γ=2.2となる。例えば、LUT14は表示部16へ画像信号を入力するに際し、ムラ補正部13からLUT14へ入力される画像信号が含む階調値がx1である場合、LUT14には階調値x1に対応付けて、第1補正値α=(2.2/2.3)を用いて補正がされたx1´=x1(2.2/2.3)が記憶されているので、当該x1´を出力する。同様にLUT14は、ムラ補正部13からLUT14へ入力される画像信号が含む階調値がx2である場合、階調値x2に対応付けて記憶されているx2´=x2(2.2/2.5)を出力する。
上述に示したLUT14における第1補正値αを用いた補正により、図6の破線で表わした表示部16の階調特性は、LUT14に入力される画像信号に含まれる階調値に対し、図6中の実線で表わすようにγ=2.2のほぼ線形の関数となる。
次に、基準の階調特性が全階調に亘ってγ=2.2となるような第1補正値αを用い、個々に異なる階調特性を有する表示装置1の表示部16の前段のLUT14で補正を行なった場合について説明する。
図7は、LUTにより補正を行なった場合の個々の表示装置1の表示部16における階調特性の例を示すグラフ図である。図7(a)は、LUT14が基準の階調特性により算出される第1補正値αを用いて補正を行なった場合の階調特性の例を示すグラフ図である。図7(a)のグラフ図の横軸はLUT14に入力される階調値を示し、縦軸は入力される階調値に対するガンマ値を示す。横軸の階調値は、式2による補正前の階調値xである。図7(a)中の破線は比較のために表示部16固有の階調特性を示し、図3中の曲線Cに等しい。また、図7中の一点鎖線はガンマ値γ=2.2の直線を示す。
個々の表示装置1のLUT14で、ムラ補正部13から出力された色成分毎の階調値xが式2により補正された場合、図7(a)のグラフ図に示すように、ガンマ値の分布における非線形部が解消され、略線形に変換される。しかしながら、第1補正値αを用いた補正では、図7(a)のグラフ図に示すように全階調に亘りガンマ値γ=2.2とはならない。
そこで、本実施の形態では更に、第1補正値αを用いた補正後の入力階調値に対するガンマ値の分布を一次関数として扱い、傾き及び切片を特定する。このためまず、第1補正値αを用いた補正後のガンマ値の一次関数分布に対し、二つの入力階調値における出力輝度を測定し、夫々の表示装置1の表示部16における固有のガンマ値を算出することによって取得する。図7(a)中のx印は、二つの入力階調値に対する固有のガンマ値を示している。これにより、図7(a)のグラフ図に示す一次関数の傾き及び切片を特定することができる。そして、特定された傾き及び切片から、ガンマ値の一次関数分布をガンマ値γ=一定分布とするための第2補正値を算出し、第2補正値を加味して補正される階調値を入力階調値に対応付けてLUT14に記憶させておく。第2補正値の算出方法の具体例は後述にて詳細を説明する。
図7(b)のグラフ図は、特定された一次関数に基づき算出される第2補正値を用いた補正を行なった場合のガンマ値の分布である。図7(b)のグラフ図の横軸はLUT14に入力される階調値を示し、縦軸は入力される階調値に対するガンマ値を示す。横軸の階調値は、式2による補正前の階調値xである。図7(b)中の破線は比較のため、第1補正値αを用いた補正後の入力階調値に対するガンマ値の分布を示し、図7(a)中の実線に等しい。また、図7(b)中の一点鎖線はガンマ値γ=2.2の直線を示す。
図7(b)のグラフ図に示すように、第1補正値α及び第2補正値を用いた補正により、入力される階調値に対してガンマ値が、全階調値に亘ってほぼ一定の値となる。この補正により、表示部16個々の階調特性を吸収し、ムラ補正部12から出力される画像信号の色成分毎の階調値により、表示部16で滑らかな階調表現を実現することができる。
図7(a)のグラフ図に示した一次関数の傾き及び切片を特定して階調値を補正するための第2補正値の算出方法の具体例について以下に詳細を説明する。
まず、第1補正値αを用いた補正を行なった後の一の入力階調値、例えばx=64を含む画像信号を入力し、当該入力階調値に対応する出力輝度を測定する。そして、出力輝度からx=64に対するガンマ値γ64を取得しておく。LUT14に入力される画像信号に含まれる入力階調値がx=64の場合のガンマ値がγ64=2.3である場合、全階調値に亘り、ガンマ値γ64=2.3を目標ガンマ値であるγtarget=2.2とする変換を行なう。即ち、式2で補正する階調値x´を以下に示す式3により変換しておく。
補正後の階調値x´´=x´β、変換値β=(γref 64/γ64)・・・(3)
なお、式3は以下に示す式4に変換される。
補正後の階調値x´´=xδ=(xα)β=xα*β、δ=(γtarget/γref x)*(γref 64/γ64)、γref 64=基準の階調特性における階調値x=64でのガンマ値、γ64=x=64の場合に取得される固有のガンマ値・・・(4)
補正後の階調値x´´を含む画像信号を表示部16に入力することにより、階調値x=64に対するガンマ値はγ=2.2となる。表示部16に入力される階調値x´´=64の表示部16の固有のガンマ値γ64=2.3である場合、出力される輝度はx´´2.3=(xδ)2.3=xδ*2.3となる。ここでxの指数δ*2.3={(2.2)/(2.3)*(2.3)/2.3}=2.2となる(γ=2.2)。
式4の補正により図7(a)のグラフ図中の実線で示した一次関数は、図7(a)のグラフ図中の二点鎖線で示すように平行移動し、階調値がx=64、ガンマ値がγ=2.2である点を通る一次関数となる。これにより、切片を求めずに傾きを算出することが可能となる。この場合一次関数の傾きをaとすると、一次関数は以下の式5により表わされる。
(γ−2.2)=a(x−64)・・・(5)
図7(a)に示すような線形の階調特性を理想的な階調特性、即ちガンマ値を一定とする補正には、ガンマ値に加算することによって式5=ゼロが成り立つ、以下の式6により表わされる補正式f(x)が必要となる。
f(x)=−a(x−64)・・・(6)
そして傾きaを特定するためには、他の一の階調値におけるガンマ値が必要である。ここでは例としてx=192におけるガンマ値を取得する。これにより、傾きaは、次の式7により算出できる。
a=(γ192−γ64)/(192−64)、γ192=(x=192の場合に取得される固有のガンマ値)、γ64=(x=64の場合に取得される固有のガンマ値)・・・(7)
式4、6及び7を総合して、各表示装置1でLUT14に入力される階調値に対し、表示部16での階調特性を表わすガンマ値がγ=2.2で一定となるようにするためには、次の式8により補正を行なう。
補正後の階調値x´´´=xε、ε=(γtarget/γref x)*(γref 64/γ64)+f(x)=[(γtarget/γref x)*(γref 64/γ64)−{(γ192−γ64)/(192−64)}*(x−64)]=・・・(8)
補正後の階調値x´´´を階調値xに対応付けてLUT14に記憶しておく。LUT14は、ムラ補正部13から出力される画像信号に含まれる色成分毎の階調値xに対応付けて記憶されている補正後の階調値x´´´を出力する。これにより、LUT14によって上述の式8におけるεを第2補正値として用いた補正が行なわれるように構成される。
なお、LUT14には、第1補正値α=(γtarget/γref x)=(目標ガンマ値/基準の階調特性における階調値xでのガンマ値)を用いて得られる補正後の階調値が、入力階調値xに対応付けられて記憶されている。二つ目のLUTを備える構成とし、当該二つ目のLUT14には、第2補正値としてζ1=(γref 64/γ64)、ζ2=傾きa及びζ3=64を用いた補正後の階調値を、入力階調値に対応付けて記憶しておくようにしてもよい。なお、この場合の第1補正値α及び第2補正値ζ1、ζ2、ζ3を用い、式8のεは、以下の式9のように変形できる。
ε={α*ζ1−ζ2(x−ζ3)}・・・(9)
このように補正される階調値x´´´を表示部16に入力することにより、各表示装置1でLUT14に入力される階調値に対し、図7(b)のグラフ図中の実線に示したように、全階調値に亘ってガンマ値γ=2.2と一定になる階調特性とすることができる。
なお、上述の説明では二つの階調値としてx=64、x=192を例に挙げたが、これ以外の階調値でもよいことは勿論である。また、傾きを算出する場合に、基準の階調特性の内の一部の階調値範囲において傾きがゼロであるとき、当該階調値範囲内の階調値を用いてもよい。これにより、より簡易に各表示装置1の表示部16における線形部の傾きaを算出することが可能である。
次に、上述の処理をフローチャートを参照して説明する。なお、図8のフローチャートに示す処理は、製造工程で第1補正値及び第2補正値をLUT14に記憶するために接続される補正用の装置によって予め行なわれる構成とする。ここで補正用の装置とは例えば、製造ラインに設備された調整用のパソコンである。
そして、各表示装置1が画像信号出力装置2から画像信号を受け付けて表示部16に入力するに際し、表示部16の前段のLUT14により、受け付けた画像信号に含まれる色成分毎の階調値が、第1補正値及び第2補正値を用いて補正される。
図8は、本実施の形態において第1補正値が算出される処理手順の一例を示すフローチャートである。補正用の装置は、基準となる階調特性を一の表示装置1で実際に測定するか又は複数の表示装置1における測定結果に基づき中央値をとる等により算出する(ステップS11)。そして、基準の階調特性が所定の階調特性、即ちガンマ値γ=2.2で一定となる階調特性となるように第1補正値を算出する(ステップS12)。そして補正用の装置は算出した第1補正値を用いた補正後の階調値を補正用の装置自身の記憶領域に記憶しておき(ステップS13)、処理を終了する。
図9は、本実施の形態において第2補正値が算出される処理手順の一例を示すフローチャートである。図9のフローチャートに示す処理は、各表示装置1に対して行なう構成とする。なお、ここでいう各表示装置1は、図8のフローチャートで基準となる階調特性の測定の対象となった表示装置1とは異なる補正対象の表示装置1である。これらの補正対象の各表示装置1では、テストパターンを全階調値に亘って順次入力させて図9のフローチャートに示す処理が行なわれる。
表示装置1のLUT14には、入力される階調値に対応づけて、補正用の装置が記憶している第1補正値を用いて算出される補正後の出力階調値が記憶される(ステップS21)。表示装置1では、LUT14に入力される画像信号に含まれる各階調値がLUT14によって補正され、LUT14は補正後の階調値を含む画像信号が表示部16に入力する(ステップS22)。表示装置1は、表示部16における一の階調値に対する出力輝度から、ガンマ値を算出して取得する(ステップS23)。なお、ここで表示部16における出力輝度の測定は、製造工程で接続される測定装置により行なわれ、表示装置1は測定装置から出力輝度又はガンマ値を取得するようにする。そして表示装置1は、取得したガンマ値に基づき、前述の式4により得られる補正後の階調値をLUT14に記憶し、前記一の階調値におけるガンマ値が所定のガンマ値γ=2.2と補正されるようにする(ステップS24)。
次に表示装置1は、ステップS24の補正後の他の一の階調値に対する出力輝度から、ガンマ値を算出して取得する(ステップS25)。表示装置1はステップS23及びステップS25で取得した二つの階調値に対するガンマ値から、階調値に対するガンマ値の分布の一次関数の傾き及び切片を算出し(ステップS26)、算出した傾きから第2補正値を算出し(ステップS27)、LUT14に記憶されている第1補正値を用いた補正後の階調値を、第2補正値を用いた補正後の階調値に書き換え(ステップS28)、第2補正値の算出及び記憶処理を終了する。
なお、図9のフローチャートに示した処理手順ではステップS24の処理により、一の階調値においてガンマ値γ=2.2を通るように一次関数を補正した。したがって、図9のフローチャートに示した処理手順の内のステップS26で算出する傾き及び切片の内の切片についてはガンマ値γ=2.2を用い、傾きを算出するのみでよい。これにより演算を簡易にすることができるが、ステップS23による処理を省き、二つの入力階調値におけるガンマ値から傾き及び切片を算出する構成でもよいのは勿論である。
上述に示した処理手順によって算出された第2補正値を用いた補正後の階調値が、入力階調値に対応付けられてLUT14に書き込まれる。以後LUT14により、ムラ補正部13から出力される画像信号に含まれる色成分毎の階調値に対し、第2補正値を用いて式8により補正された階調値が出力され、出力部15を介して表示部16へ入力される。
本実施の形態で示した補正方法を利用する場合、第2補正値を算出するために測定する情報は、以下のような情報で済む。例えば、表示部16でのR、G、B、W各色の最大輝度及び色度、そして最低限の二つの入力階調値に対する輝度(補正前のx=64における階調値、x=64における階調値でγ=2.2となるように補正した後のx=192における階調値)でよい。このように予め測定する情報量を削減し、そして簡易な構成で補正が可能な構成とすることにより、迅速にガンマ補正の補正を行なうことができると共に、図7(b)に示すように個々の表示部16における階調特性を高精度に一定とする補正が可能である。
本実施の形態では、基準の階調特性から算出した第1補正値によって補正した場合に残る入力される階調値に対するガンマ値の分布を一次関数として扱い、二つの階調値に対するガンマ値を測定により取得し、一次関数を特定するための傾き及び切片を求める構成とした。しかしながら、本発明はこれに限らず、線形部として扱ったガンマ値の分布を所定の高次関数として扱い、これを特定するためのいくつかの階調値に対するガンマ値を測定により取得する構成としてもよい。
本実施の形態では、LUT14に、階調値毎に対応付けて記憶されている第1補正値を用いた補正後の階調値を、第2補正値を用いた補正後の階調値に書き換える構成とした。しかしながら、第1補正値及び第2補正値を用いて補正する階調値を個別に記憶する二つのLUTを備える構成としてもよい。
また、本実施の形態では複数の色成分の階調値に対する補正を例にあげたが、モノクロの画像信号における階調値に対する補正に適用してもよい。
なお、上述の図8及び図9のフローチャートに示した処理手順の説明では、各表示装置1の製造工程で、補正用の装置が基準となる階調特性を測定し、第1補正値を算出して入力階調値と補正後の階調値の対応を記憶しておき、補正対象となる各表示装置1により、第1補正値を用いた入力階調値と補正後の階調値との対応を記憶させて第2補正値を算出させる構成とした。図9のフローチャートに示した処理手順は、製造工程のみならず表示装置1としての運用中にも実施可能である。つまり、基準となる階調特性から算出された第1補正値はLUT14ではなく、別途書き換え不可能な記憶領域に記憶しておき、表示装置1自身がLUT14に第1補正値を用いた補正後の階調値を記憶し直してから以降の処理(ステップS22からステップS28までの処理)を行ない、第2補正値を算出し直す。このとき、ステップS25の表示部16における出力輝度の測定は、ユーザが測定装置を用いて測定し表示装置1へ入力することが可能な構成としておけばよい。
このように、表示装置1自身が製造工程のみならず使用年数により経年劣化で変化した階調特性の補正を行なうことができる点、優れた効果を奏する。また、表示装置1が使用年数を計時しておき、使用年数が所定の期間を経過した時点で表示装置1が自律的に階調特性の補正、即ち第2補正値の算出し直しを行なう構成としてもよい。
また、本実施の形態では変換部12、ムラ補正部13及びLUT14は夫々、処理の高速化が要求されていることから、表示装置に備えられるASIC、FPGAを構成する各モジュールによって実現する構成とした。しかしながら本発明に係る補正方法を実施するコンピュータプログラムをコンピュータ装置に実行させることにより、コンピュータ装置が接続しているモニタで表示する画像のガンマ補正を、コンピュータ装置側で行なう構成としてもよい。図10は、本発明に係る補正方法をコンピュータ装置で実施する場合の構成を示すブロック図である。この場合、コンピュータ装置3は、CPU、MPU等の制御部30と、ハードディスク(Hard Disk)、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の記憶部31と、補正後の画像信号をモニタ4へ出力する出力部32とを備える。
記憶部31には、コンピュータ装置3に入力部32を介して受け付けた画像信号に対して本発明に係る補正方法を実施させるための制御プログラム3Pが記憶されている。制御プログラム3Pには、制御部30を上述の表示装置1における変換部12、ムラ補正部13及びLUT14として機能させるためのモジュールである変換部33、ムラ補正部34及びガンマ補正部35が含まれている。また、記憶部31に記憶される制御プログラム3Pは、図示しないDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体に記録されており、制御部30はDVD/CDドライブ等の補助記憶部(図示せず)を介して可搬型記録媒体に記録されていた制御プログラム3Pを記憶部31へ記憶するようにしてもよい。
このような構成のコンピュータ装置3の制御部30は、記憶部31から制御プログラム3Pを読み出して実行し、制御プログラム3Pに含まれるガンマ補正部35の機能により、画像信号出力装置2から入力部32を介して受け付けた画像信号が表わす各色成分の階調値を変換部33の機能により変換し、ムラ補正部34の機能によって輝度ムラ、色ムラを補正する。そして制御部30は更にガンマ補正部35の機能により、接続されているモニタ4における階調特性を滑らかにするためのガンマ補正を行なうことができる。