JP2009132916A - 蛍光体、及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐湿性等の耐久性に優れた蛍光体を提供する。
【解決手段】Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比が0.56以上である窒化物又は酸窒化物を母体とし、発光ピーク強度維持率(25℃、395nm又は455nm励起)が下記式[1]及び/又は[2]を満足する蛍光体。
I(B)/I(A)≧ 0.93 [1]
I(1000)/I(0) ≧ 0.94 [2]
(I(A)は、蛍光体の発光ピーク強度、I(B)は、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後の蛍光体の発光ピーク強度。I(0)は、蛍光体の発光ピーク強度、I(1000)は、温度85℃、湿度85%の環境下に1000時間静置した後の蛍光体の発光ピーク強度。)
【選択図】図5

Description

本発明は、焼成後、粉砕等により整粒して得られた蛍光体に対し、アニール処理を施すことにより、蛍光体の表面に、蛍光体内部とは異なる組成を有する表面層を形成してなる、高耐久性の蛍光体、及びその製造方法に関する。
本発明はまた、この蛍光体を用いた蛍光体含有組成物及び発光装置、並びにこの発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置に関する。
蛍光体は、蛍光灯、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、白色発光ダイオード(LED)などに用いられている。これらのいずれの用途においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するためのエネルギーを蛍光体に供給する必要があり、蛍光体は真空紫外線、紫外線、可視光線、電子線などの高いエネルギーを有する励起源により励起されて、紫外線、可視光線、赤外線を発する。
近年、従来のケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ホウ酸塩蛍光体、硫化物蛍光体、酸硫化物蛍光体などの蛍光体に代わり、三元系以上の窒化物について多くの新規物質が合成されている。
しかしながら、窒化物蛍光体は、酸素、熱、水分等により劣化しやすい傾向にあり、近年、以下のような酸化劣化対策が報告されている。
特許文献1に、熱酸化雰囲気(ベーク)劣化対策として、窒化物蛍光体を、窒化金属系材料、酸窒化金属系材料等の窒素元素を含有する被覆材料で被覆する方法が記載されている。
特許文献2に、窒素を構成元素に含む雰囲気ガス中で熱処理を行ない、結晶構造の欠陥及び歪みを除去すると共に、蛍光体表面に表面コーティング処理によりSiO膜を形成することにより、長時間の点灯や製造工程の熱処理を受けても輝度の低下や色味の変化が少ない蛍光体を得る方法が記載されている。
特許文献3に、窒化物又は酸窒化物蛍光体を、リンを含む化合物によって処理することにより、熱酸化雰囲気(ベーク)による劣化が改善されることが記載されている。
特許文献4に、窒化物又は酸窒化物蛍光体の表面を2つの異なる化合物で被覆することにより、蛍光体の劣化を抑制する方法が記載されている。
一方、酸化物蛍光体の劣化抑制の方法として、特許文献5に、Eu付活バリウムアルミン酸塩蛍光体(酸化物蛍光体)を、酸化雰囲気下、700℃〜1100℃において焼成し、2価のEuを3価のEuに置換することにより、酸素の欠損をなくし、蛍光体表面への水や炭化水素系ガスの吸着を抑え、劣化を抑制できることが記載されている。
しかしながら、窒化物又は酸窒化物蛍光体は、原料化合物と窒素との反応性を高めるために、酸化物蛍光体よりも高温条件下、若しくは高温・加圧条件下で焼成して製造する場合が多く、場合によっては、アンモニアのように反応性の高い雰囲気下での焼成により製造される場合もある。従って、特許文献5にあるような、酸化物蛍光体についての熱処理の条件が、このまま窒化物又は酸窒化物蛍光体へは適用できないものと考えられる。
特開2004−161807号公報 特開2006−282809号公報 特開2006−269938号公報 特開2007−103818号公報 特開2003−336052号公報
照明装置、画像表示装置等に用いる発光体としては、長時間の使用に耐えうることが求められ、特に、耐湿性が求められる。しかしながら、いずれも被覆剤を用いることを特徴とする特許文献1〜4に記載の方法では、窒化物又は酸窒化物蛍光体の劣化対策として、耐久性の点で、何れも不十分なものであった。このため、上記目的に適う高耐久性の蛍光体が望まれていた。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、耐久性に優れた窒化物又は酸窒化物蛍光体、及びその製造方法を提供するとともに、この蛍光体を用いた蛍光体含有組成物及び発光装置と、この発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置を提供することである。
本発明者らは、窒化物又は酸窒化物蛍光体の劣化対策について鋭意検討した結果、従来公知の被覆剤を用いる方法では、蛍光体粒子表面に気体分子が実質的に透過しない被覆層を形成することは極めて困難であり、また、蛍光体の主な劣化原因は、被覆剤を用いて形成される被覆層のガスバリア性が不十分であることに起因するものであることを見出した。
そこで、本発明者らは、被覆剤を用いることなく、窒化物又は酸窒化物蛍光体の耐湿性を向上させる方法が有効であると考えた。従来の知見に基づくと、特許文献3の比較例にもあるように、酸化雰囲気において、300℃程度の低温で熱処理すると、窒化物又は酸窒化物蛍光体が劣化するものとされていた(これは窒素が脱離するなどの理由で劣化が起こると推測される)が、驚くべきことに、本発明者らは、蛍光体の製造方法において、焼成温度よりかなり低い温度であっても蛍光体を特定の条件下で、再加熱する工程(アニール工程)を設けることにより、窒化物又は酸窒化物を母体結晶とする蛍光体の耐久性を向上させることができることを見出した。
前述のアニール工程を行なうと、蛍光体粒子表面の極めて限られた領域において原子の再配列が起こり、組成が蛍光体結晶層(バルク結晶層)から連続的に表面層へと組成が変化したり、あるいは、アニール処理を行わない場合とは異なる特性を有する特定の表面層が生成したりすることにより、ガスバリア性が向上し、耐久性が向上するものと考えられる。
また、本発明者らは、上記の製造方法により得られる蛍光体は、下記式[1]及び/又は[2]、或いは[3]を満たす蛍光体、好ましくは、下記式[1]、[2]及び[3]のうちのいずれか2以上を満たす蛍光体、より好ましくは、下記式[1]、[2]及び[3]の全てを満たす蛍光体、として特徴付けられることを見出した。
さらに、本発明者等はこの蛍光体が光源として非常に優れた特性を示し、発光装置等の用途に好適に使用できることを見出して、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の(1)〜(19)を要旨とするものである。
(1) Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、0.56以上である窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体であって、該蛍光体の発光ピーク強度維持率が下記式[1]及び/又は[2]を満足することを特徴とする蛍光体。
I(B)/I(A)≧ 0.93 [1]
(前記式[1]において、
I(A)は、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
I(B)は、該蛍光体を、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
I(1000)/I(0) ≧ 0.94 [2]
(前記式[2]において、
I(0)は、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
I(1000)は、該蛍光体を、温度85℃、湿度85%の環境下に1000時間静置した後、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
(2) 化学組成が下記式[4]で表されることを特徴とする(1)に記載の蛍光体。
[4]
(但し、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
は、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
は、Al、Ga、In、及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
は、Siを必須とする、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素である。
a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5 )
(3) Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、0.56以上である窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体であって、下記式[3]で表される重量増加率が11%以下であることを特徴とする蛍光体。
(W(B)/W(A)−1)×100 [3]
(前記式[3]において、
W(A)は、該蛍光体の重量であり、
W(B)は、該蛍光体を、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後の該蛍光体の重量である。)
(4) 化学組成が下記式[4]で表されることを特徴とする(3)に記載の蛍光体。
[4]
(但し、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
は、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
は、Al、Ga、In、及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
は、Siを必須とする、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素である。
a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5 )
(5) 該蛍光体が、該蛍光体の表面に、該蛍光体の母体結晶とは異なる化学組成を含む層(以下、「表面層」と称する。)を有することを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載の蛍光体。
(6) 前記表面層が、該蛍光体の母体結晶に由来することを特徴とする(5)に記載の蛍光体。
(7) 該蛍光体が、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素、Si、Al、O(酸素)、及びN(窒素)を含有し、該蛍光体の表面層において、Alに対する窒素元素のモル比が0.37以下であることを特徴とする(5)又は(6)に記載の蛍光体。
(8) 前記表面層において、アルカリ土類金属元素の少なくとも一部が複合酸化物として存在することを特徴とする(5)ないし(7)のいずれかに記載の蛍光体。
(9) 該蛍光体を、該蛍光体の重量比で10倍量の塩酸(濃度 0.5M)に1時間分散させたとき、前記表面層が脱離又は溶解することを特徴とする(5)ないし(8)のいずれかに記載の蛍光体。
(10) 蛍光体原料を焼成する工程を有する、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法であって、該焼成工程の後に、さらに、アニール前蛍光体を250℃以上650℃以下の温度で焼成する工程(以下、「アニール工程」)を有することを特徴とする蛍光体の製造方法。
(11) 前記蛍光体が少なくともSrとSiとを含有することを特徴とする(10)に記載の蛍光体の製造方法。
(12) 前記アニール工程の焼成温度が320℃以上480℃以下の温度範囲であることを特徴とする(10)又は(11)に記載の蛍光体の製造方法。
(13) 前記蛍光体が、N(窒素)を必須とし、かつ、O(酸素)とN(窒素)との合計に対するN(窒素)の割合(モル比)が0.6以上であることを特徴とする(10)ないし(12)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(14) 前記蛍光体が、Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、0.56以上であることを特徴とする(11)ないし(13)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(15) 前記アニール工程の前に、アニール前蛍光体を洗浄する工程を有することを特徴とする(10)ないし(14)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(16) 前記アニール工程を、酸素濃度0.1ppm以上の雰囲気下で行なうことを特徴とする(10)ないし(15)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(17) (1)ないし(9)のいずれかに記載の蛍光体と、液体媒体とを含有することを特徴とする蛍光体含有組成物。
(18) 第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、該第2の発光体が、(1)ないし(9)のいずれかに記載の蛍光体の1種以上を、第1の蛍光体として含有することを特徴とする発光装置。
(19) (18)に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
(20) (18)に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。
本発明によると、耐湿性等の耐久性に優れた蛍光体、及び蛍光体含有組成物を提供することができる。さらに、本発明の蛍光体又は蛍光体含有組成物を用いると、長時間の使用に耐え得る発光装置、画像表示装置、及び照明装置を提供することができる。
また、本発明の蛍光体の製造方法によると、劣化しにくい蛍光体を得ることができる。
以下、本発明について実施形態や例示物を示して説明するが、本発明は以下の実施形態や例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
なお、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表す。また、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち1種又は2種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。例えば、「(Ca,Sr,Ba)Al:Eu」という組成式は、「CaAl:Eu」と、「SrAl:Eu」と、「BaAl:Eu」と、「Ca1−PSrAl:Eu」と、「Sr1−PBaAl:Eu」と、「Ca1−PBaAl:Eu」と、「Ca1−P−QSrBaAl:Eu」とを全て包括的に示しているものとする(但し、前記式中、0<P<1、0<Q<1、0<P+Q<1)。
[1.蛍光体]
1−1.蛍光体の物性
<発光ピーク強度維持率>
第1の態様に係る本発明の蛍光体は、Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、0.56以上である窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体であって、該蛍光体の発光ピーク強度維持率が下記式[1]及び/又は[2]を満足することを特徴とする。
なお、以下において、下記式[1]で表される発光ピーク強度維持率を「発光ピーク強度維持率[1]」と称し、下記式[2]で表される発光ピーク強度維持率を「発光ピーク強度維持率[2]」と称す場合がある。
I(B)/I(A)≧ 0.93 [1]
(前記式[1]において、
I(A)は、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
I(B)は、該蛍光体を、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
I(1000)/I(0) ≧ 0.94 [2]
(前記式[2]において、
I(0)は、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
I(1000)は、該蛍光体を、温度85℃、湿度85%の環境下に1000時間静置した後、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
なお、本明細書において、蛍光体の母体(母体結晶)とは、付活元素を固溶し得る結晶又はガラス(アモルファス)を意味し、付活元素を含有せずに、結晶又はガラス(アモルファス)それ自体が発光するものも含むものとする。
発光ピーク強度維持率[1]が0.93未満であるか、発光ピーク強度維持率[2]が0.94未満であると、本発明で目的とする高い耐久性を満足し得ない。
発光ピーク強度維持率[1]も発光ピーク強度維持率[2]も、1に近い程、耐湿性などの耐久性に優れることを意味する。耐久性に優れた蛍光体を用いれば、長時間駆動しても全光束が低下しにくく、色ずれも小さい発光装置を得ることができる。
発光ピーク強度維持率[1]は大きい程好ましく、特に0.94以上、とりわけ0.96以上であることが好ましい。発光ピーク強度維持率[1]の上限については、蛍光体は、通常、高温高湿の条件下では劣化するので、理論的には1以下となるものであるが、通常1.1以下である。
発光ピーク強度維持率[2]もまた大きい程好ましく、特に0.95以上、とりわけ0.96以上であることが好ましい。発光ピーク強度維持率[2]の上限については、蛍光体は、通常、高温高湿の条件下では劣化するので、理論的には1以下となるものであるが、通常1.1以下である。
発光ピーク強度維持率[1]及び発光ピーク強度維持率[2]は、例えば次のようにして測定することができる。
〈発光ピーク強度維持率[1]の測定方法〉
製造した蛍光体(試料)について、まず、下記オートクレーブ処理前に波長455nm(又は波長395nm)励起における発光ピーク強度I(A)を測定する。
次いで、オートクレーブ(内容積50リットル程度)を用いて、試料(蛍光体1g)を温度135℃、0.23MPa(自己発生圧)の水蒸気雰囲気に20時間暴露した後、波長455nm(又は波長395nm)励起における発光ピーク強度I(B)を測定する。
下記式[1]により、発光ピーク強度維持率I(B)/I(A)を算出する。
I(B)/I(A) [1]
〈発光ピーク強度維持率[2]の測定方法〉
製造した蛍光体(試料)について、下記エージング処理前に波長455nm(又は波長395nm)励起における発光ピーク強度I(0)を測定する。
次いで、温度85℃、相対湿度85%に保たれたチャンバーに試料を静置することにより、試料を高温高湿条件下に1000時間暴露した後、波長455nm(又は波長395nm)励起における発光ピーク強度I(1000)を測定する。
下記式[2]により、発光ピーク強度維持率I(1000)/I(0)を算出する。
I(1000)/I(0) [2]
なお、本発明では、発光ピーク強度維持率[1]及び発光ピーク強度維持率[2]の測定に用いる励起波長を波長395nm又は波長455nmと規定しているが、この励起波長は、必ずしも395nm又は455nmである必要はなく、測定対象とする蛍光体に最適な励起波長を適宜選択することができる。
上記発光ピーク強度維持率[1]及び発光ピーク強度維持率[2]の値は、いずれか一方を満たせば良く、両方を満たすことは必ずしも必須ではないが、発光ピーク強度維持率[1]及び発光ピーク強度維持率[2]が共に上記値を満たすことが好ましい。
ただし、本発明者らの検討により、発光ピーク強度維持率[1]による評価は、発光ピーク強度維持率[2]による評価と同等の結果が得られることが確認されている。即ち、発光ピーク強度維持率[1]が0.93以下の蛍光体は、通常発光ピーク強度維持率[2]についても0.94以下の値を示す。従って、発光ピーク強度維持率[1]による評価は、高温高湿条件下に1000時間暴露する発光ピーク強度維持率[2]による評価結果をも比較的短時間で評価することのできる優れた評価基準である。
但し、発光ピーク強度維持率[2]の評価後の試料は、炭酸塩化されていたのに対し、発光ピーク強度維持率[1]の評価後の試料は、加水分解が起きているのみであった。従って、両者の劣化のメカニズムは異なるものであり、劣化試験としては、長時間を要するが、発光ピーク強度維持率[2]で評価することが望ましい。
<重量増加率>
第2の態様に係る本発明の蛍光体は、Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、0.56以上である窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体であって、下記式[3]で表される重量増加率が11%以下であることを特徴とする。
なお、以下において、下記式[3]で表される重量増加率を「重量増加率[3]」と称す場合がある。
(W(B)/W(A)−1)×100 [3]
(前記式[3]において、
W(A)は、該蛍光体の重量であり、
W(B)は、該蛍光体を、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後の該蛍光体の重量である。)
この重量増加率[3]は、大きい程、蛍光体が劣化し易いことを意味する。これは、窒化物又は酸窒化物を母体結晶とする蛍光体の劣化は、蛍光体の母体結晶が加水分解することにより起こるものと考えられ、加水分解によって蛍光体を構成する元素に水酸基などが結合することにより、蛍光体の重量増加が起こることによるものと推測される。
従って、本発明の蛍光体は、上記重量増加率[3]が11%以下、特に9%以下、とりわけ7%以下であることが好ましい。重量増加率[3]は小さい程好ましく、その下限については特に制限はないが、通常0.1%以上である。
重量増加率[3]は、例えば次のようにして測定することができる。
〈重量増加率[3]の測定方法〉
試料(蛍光体)について、まず、大気中、135℃で2時間乾燥後、重量W(A)を測定する。
次いで、オートクレーブ(内容積50リットル程度)を用いて、試料(蛍光体1g)を温度135℃、0.23MPa(自己発生圧)の水蒸気雰囲気に20時間暴露した後、大気中、135℃で2時間乾燥後、同様に重量W(B)を測定する。
下記式[3]により、重量増加率W(B)/W(A)を算出する。
(W(B)/W(A)−1)×100 [3]
本発明の蛍光体は、更に、下記式[3A]で表される重量増加率が14%以下であることが好ましい。
なお、以下において、下記式[3A]で表される重量増加率を「重量増加率[3A]」と称す場合がある。
(W(1000)/W(0)−1)×100 [3A]
(前記式[3A]において、
W(0)は、該蛍光体の重量であり、
W(1000)は、該蛍光体を、温度85℃、湿度85%の環境下に1000時間静置した後の該蛍光体の重量である。)
この重量増加率[3A]も、重量増加率[3]と同様に大きい程、蛍光体が劣化し易いことを意味する。
この重量増加率[3A]は、特に10%以下、とりわけ8%以下であることが好ましい。重量増加率[3A]は小さい程好ましく、その下限については特に制限はないが、通常0.1%以上である。
重量増加率[3A]は、例えば次のようにして測定することができる。
〈重量増加率[3A]の測定方法〉
試料(蛍光体)について、まず、大気中、135℃で2時間乾燥後、重量W(0)を測定する。
次いで、温度85℃、相対湿度85%に保たれたチャンバーに試料を静置することにより、試料を高温高湿条件下に1000時間暴露した後、大気中、135℃で2時間乾燥後、同様に重量W(1000)を測定する。
下記式[3A]により、重量増加率W(0)/W(1000)を算出する。
(W(1000)/W(0)−1)×100 [3A]
<表面層>
窒化物は、一般的に、大気中に曝すと、表面に酸化膜が生成することが知られている。従って、大気に暴露された蛍光体表面には、該蛍光体の母体結晶とは異なる組成を有する酸化膜(以下、「自然酸化膜」と称する。)が生成するものと考えられている。
これに対して、本発明の蛍光体は、上記の自然酸化膜とは異なる性質を有する層(以下、「表面層」と称する。)を有することを特徴とする。表面層は、未だ解明されていない点もあるが、耐湿性に優れ、ガスバリア性が高いことを特徴とし、自然酸化膜を強化したものと考えられる。この推測は、後述する比較例I−1のXPS分析結果(図7)による考察と一致するものである。
本発明の蛍光体が表面層を有するものと考えられるのは、以下の理由による。
一般的に、焼成工程を経て得られた、窒化物を母体とする蛍光体に対して、比較的高い温度(例えば、700℃〜1200℃)での再焼成を施すと、結晶欠陥が消失するという現象が見られることがあるが、本発明における表面層は、比較的低い温度(例えば、250℃〜650℃)の再焼成(アニール工程)で得ることができる。比較的低い温度で再焼成することにより、結晶欠陥が消失するという現象は、通常見られないことから、本発明の蛍光体は、結晶欠陥が消失することで結晶性が高まったからではなく、他の要因によって性質が変化し、この結果、耐久性が向上したものと推測される。
この表面層の膜厚は、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは20nm以下である。特に好ましくは表面層の膜厚は5nm±4nm程度である。
この表面層は、コーティング等の外部からの被覆によって形成されるものではないことをもう一つの特徴とする。この表面層は、蛍光体の母体結晶に由来し、蛍光体の母体結晶から一部の原子が移動することにより形成するものと考えられ、具体的には、後述するアニール工程を行なうことによりこの表面層を生成させることができる。
また、この表面層は、希塩酸、希硫酸、希硝酸等の希薄な鉱酸、又は酢酸等の希薄な有機酸等の酸性条件下において、蛍光体の母体結晶から脱離又は溶解する性質を有するという特徴もある。
上記のような性質を有するかどうかは、以下のような方法で判定することができる。
〈表面層確認試験〉
試料(蛍光体)を、試料重量の10倍重量の希塩酸(0.5M塩酸水溶液)に分散させ、1時間、室温で攪拌した後、濾過、水洗を行う。次いで、100℃で2時間、真空乾燥を行う。
このようにして希塩酸で処理した後の試料と、処理前の試料とで、耐久性(例えば、前述の発光ピーク強度維持率[1]、又は発光ピーク強度維持率[2]、更には重量増加率[3])を比較した場合、処理後の試料で、処理前の試料に対して耐久性の劣化があるものは、処理前には存在していた前述の表面層が希塩酸に対して溶解するか、或いは希塩酸処理で脱離(剥離)されることによって耐久性が低下することを確認することができる。
なお、この表面層の化学組成については、完全に解明できてはいないものの、母体結晶や自然酸化膜とは異なる可能性が高いと考えられる。
表面層の化学組成について以下に詳述する。
本発明の蛍光体が、母体結晶にアルカリ土類金属元素(具体的には、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn)、ケイ素、酸素、及び窒素を含有する場合、前記表面層において、アルミニウム元素(Al)に対する窒素元素(N)のモル比(以下「表面層のN/Al(モル比)」と記載する場合がある。)が0.37以下であることが好ましい。また、さらには、窒素元素に対する酸素元素のモル比(以下「表面層のO/N(モル比)」と記載する場合がある。)が9.5以上、95以下であり、かつ、該蛍光体の表面層において、酸素元素に対するアルカリ土類金属元素のモル比(以下「表面層のEM/O(モル比)」と記載する場合がある。)が0.05以上、1以下であることが好ましい。
表面層のN/Al(モル比)は、母体結晶の組成にもよるが、さらに好ましくは0.01以上、特に好ましくは0.05以上であり、また、通常0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.37以下、さらに好ましくは0.35以下、特に好ましくは0.3以下である。窒素元素が多くなりすぎると、大気中の水と反応しやすくなる傾向にあるからである。
表面層のO/N(モル比)は、母体結晶の組成にもよるが、通常9.5以上、好ましくは10以上、特に好ましくは11以上であり、また、通常95以下、好ましくは30以下、より好ましくは28以下、特に好ましくは25以下である。
また、表面層のEM/O(モル比)は、母体結晶の組成にもよるが、通常0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.11以上、特に好ましくは0.12以上であり、また、通常1以下、好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.7以下である。
酸素元素が多すぎると、蛍光体の発光特性が低下する場合があり、酸素元素が少なすぎると、蛍光体の耐久性が不充分となる場合があるからである。
表面層のアルミニウム元素に対するケイ素のモル比(以下、「表面層のSi/Al(モル比)」と記載する場合がある。)は、母体結晶の組成にもよるが、通常1.1以上、好ましくは1.5以上であり、また、通常3以下、好ましくは2.5以下である。
また、表面層のアルミニウム元素に対するアルカリ土類金属元素のモル比(以下、「表面層のEM/Al(モル比)」と記載する場合がある。)は、母体結晶の組成にもよるが、通常0.1以上、好ましくは0.2以上であり、また、通常2以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下である。
上述した中でも、表面層のN/Al(モル比)が0.37以下であり、かつ、表面層のEM/Al(モル比)が上記の範囲内にあることが好ましい。耐久性の程度との相関関係は、特に表面層のN/Al(モル比)の値に見られるものと推測され、また、表面層に含まれるアルカリ土類金属元素が多すぎるとアニール工程から得られる効果が小さくなるとも推測されるからである。
なお、表面層のN/Al(モル比)、O/N(モル比)、EM/O(モル比)、Si/Al(モル比)、及びEM/Al(モル比)は、以下のXPS分析により求めることができる。
(XPS分析)
試料(蛍光体)についてPHI社製Quantum2000を用いて、以下の測定条件で測定を行う。
・X線源:単色化Al−Kα,出力16kV−34W(X線発生面積170μmφ)
・帯電中和:電子銃2μA,イオン銃併用
・分光系:パスエネルギー
187.85eV=ワイドスペクトル
58.7eV=ナロースペクトル[N1s,Na1s,Ca2p,Eu3d]
29.35eV=ナロースペクトル[C1s,O1s,Al2p,Si2p,
Sr3d]
・測定領域:300μmφ
・取り出し角:45°(表面より)
上述のようなXPS分析により、表面層の原子比を求めることができる原理は次の通りである。
真空中で固体表面にX線を照射すると、表面原子から電子(光電子)が発生する。この光電子は、元素に固有のエネルギー値を有しているので、そのエネルギー分布を測定することにより、該固体表面の組成を調べることができる。表面から深いところで発生した光電子は、表面に出てくるまでに吸収されるため、この方法による分析可能な深さは、平均的な表面層の数十原子層(表面から3nm〜5nmの深さまで)の領域となる。また、この分析法は、化合物の種類によって結合しているエネルギーがわずかに異なるため、光電子のエネルギー分布を調べることにより、化合物を構成する各元素の化学結合に関する情報が得られる。
XPS以外に、例えばオージェ電子分光法(AES)により、表面層の原子比や、深さ方向の分布を求めることができる。また、オージェ電子スペクトルを高分解能で測定することにより、状態分析を行うこともできる。
前記表面層には、窒素が存在してもよいが、従来公知の製法により焼成した蛍光体(例えば、後述の製造例1で得られる蛍光体)を大気中に暴露した場合に自然酸化により生じる表面(自然酸化膜)よりも窒素が少ないことを特徴とする。前述の好適な表面層のN/Al(モル比)は、この傾向を表すものである。また、前記表面層は、自然酸化膜と比較して、酸素が多く、アルカリ土類金属が多くなる傾向にある。
また、上記の分析結果から、前記表面層においては、アルカリ土類金属元素の少なくとも一部が複合酸化物として存在するものと考えられる。
以下、このことを、蛍光体の母体結晶の組成が、CaAlSiN、又はSrCa1−xAlSiNである場合を例に説明するが、本発明の蛍光体の組成は、これらの組成に限定されるものではない。
(推測1)
非特許文献2(Frank L.Riley, J.Am.Ceram.Soc.,83[2]245-65(2000))に、i)大気中で窒化ケイ素を1000℃以上で加熱すると表面にSiOの酸化膜が形成すること、ii)その酸化膜と窒化ケイ素の間にSiOが存在すること、及び、iii)前記酸化膜SiOからSiに向かって連続的に組成が変化していること、が報告されている。
上記ii)に記載のSiOは、CaAlSiNやSrCa1−xAiSiNと同一の結晶構造であるため、CaAlSiNやSrCa1−xAiSiNを酸化雰囲気下、高温で加熱処理を行なえば、窒化ケイ素の場合と同様にその表面に少なくとも酸化物からなる表面膜が容易に形成されるものと考えられる。
(推測2)
また、上述したように、該蛍光体(CaAlSiNやSrCa1−xAlSiNなど)と表面酸化膜との間にSiOが生成するならば、より緻密なSiO層を表面酸化膜と蛍光体の表面の間に形成し、酸素、水蒸気等の拡散に対し、有効な障壁となってガスバリア性が向上する可能性がある(なお、非特許文献2には、SiO中の酸素の拡散速度は、SiO中よりも低いため酸化を防ぐ障壁となり得るとの記載がある)。このSiO層の性質(厚さ等)は蛍光体中のアルカリ土類金属元素の含有量やアルカリ土類金属の種類によって変わり、SiO層の性質によって、耐湿性が異なる可能性がある。
一方、SiO層が存在せず、表面酸化膜と蛍光体表面の間を組成が連続的に変化している場合についても考えてみると、蛍光体表面に近い部分はSiOよりSiOに近い性質を示し、これにより、蛍光体との密着性を高め、水分子等の拡散障壁となって耐湿性を向上できる可能性がある。
(推測3)
(推測1)及び(推測2)の元にした、非特許文献2等の公知の知見は1000℃以上の高温における酸化層(SiO+SiO)についてのものである。本発明における表面層は、比較的低温(例えば、450℃付近)で形成されるものであるので、その組成や性質が異なる可能性がある。
しかしながら、本発明のアニール工程によって(推測1)及び(推測2)に記載したようなSiO層が形成しないと仮定しても、アニール工程を行なうことによりアルカリ土類金属を含む複合酸化物(あるいは多元系化合物)が形成し、この複合酸化物を含有する表面層の存在によって、自然にできる酸化膜と比較して耐久性が向上している可能性がある。例えば、SrOは大気中では速やかにSr(OH)へ変化するが、複合酸化物であるSrSiOはSrOと比較して加水分解し難い傾向にあるからである。
なお、上述した(推測1)〜(推測3)はそれぞれ単独で起こっていても、2つ以上が複合して起こっていてもよい。
なお、このような表面層を生成させる方法としては、後述のアニール工程を行なうことが好ましいが、表面層の再構成を伴う限り特に制限はない。例えば、後述のアニール工程に代えて、或いは、アニール工程に加えて、酸素等のカルコゲン、フッ素等のハロゲン、水蒸気、NO等の窒素酸化物を含有する雰囲気下で加熱を行ってもよい。
また、このような表面層を生成する方法としては、後述のアニール工程のように気相反応とする代わりに、液相反応としてもよい。この場合、酸素等の代わりに、過酸化水素や硝酸で酸化させてもよい。
<発光色>
本発明の蛍光体の発光色は、化学組成等を調整することにより、波長360nm〜480nmといった近紫外領域〜青色領域の光で励起され、青色、青緑色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色等、所望の発光色とすることができる。
<発光スペクトル>
蛍光体の化学組成や付活元素の種類によって発光ピーク波長及びその形状は異なるが、例えば、本発明の蛍光体が、後述のSr置換量が多い蛍光体であり、かつ、付活元素MとしてEuを含有する場合、橙色ないし赤色蛍光体としての用途に鑑みて、ピーク波長455nmの光で励起した場合における発光スペクトルを測定した場合に、以下の特徴を有することが好ましい。
まず、上記の蛍光体は、上述の発光スペクトルにおけるピーク波長λp(nm)が、通常590nmより大きく、中でも600nm以上、また、通常650nm以下、中でも640nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると黄味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると暗赤味を帯びる傾向があり、何れも橙色ないし赤色光としての特性が低下する場合があるので好ましくない。
また、上記の蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅(full width at half maximum。以下適宜「FWHM」と略称する。)が、通常50nmより大きく、中でも70nm以上、更には75nm以上、また、通常120nm未満、中でも100nm以下、更には90nm以下の範囲であることが好ましい。この半値幅FWHMが狭過ぎると発光ピーク強度が低下する場合があり、広過ぎると色純度が低下する場合がある。
なお、上記の蛍光体をピーク波長455nmの光で励起するには、例えば、GaN系発光ダイオードを用いることができる。また、本発明の蛍光体の発光スペクトルの測定は、例えば、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)等を用いて行うことができる。発光ピーク波長、及び発光ピークの半値幅は、得られる発光スペクトルから算出することができる。
<重量メジアン径D50
本発明の蛍光体は、その重量メジアン径D50が、通常3μm以上、中でも5μm以上、また、通常30μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径D50が小さすぎると、輝度が低下する場合や、蛍光体粒子が凝集してしまう場合がある。一方、重量メジアン径D50が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
なお、本発明における蛍光体の重量メジアン径D50は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等の装置を用いて測定することができる。
<温度特性>
本発明の蛍光体は、温度特性(即ち、高温(例えば、150℃)下での発光ピーク強度の維持率)にも優れるものである。具体的には、波長455nmにピークを有する光を照射した場合における25℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値に対する150℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値の割合が、通常55%以上であり、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
また、通常の蛍光体は温度上昇と共に発光ピーク強度が低下するので、該割合が100%を越えることは考えられにくいが、何らかの理由により100%を超えることがあっても良い。ただし150%を超えるようであれば、温度変化により色ずれを起こす傾向となる。
本発明の蛍光体は、上記発光ピーク強度に関してだけでなく、輝度の点からも温度特性に優れたものである。具体的には、波長455nmにピークを有する光を照射した場合の25℃での輝度に対する150℃での輝度の割合も、通常55%以上であり、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
尚、上記温度特性を測定する場合は、例えば、発光スペクトル装置として大塚電子製MCPD7000マルチチャンネルスペクトル測定装置、輝度測定装置として色彩輝度計BM5A、ペルチェ素子による冷却機構とヒーターによる加熱機構を備えたステージ及び光源として150Wキセノンランプを備える装置を用いて、以下のように測定することができる。ステージに蛍光体サンプルを入れたセルを載せ、温度を20℃から150℃の範囲で変化させる。蛍光体の表面温度が測定温度で一定となったことを確認する。次いで、光源から回折格子で分光して取り出したピーク波長455nmの光で蛍光体を励起して発光スペクトル測定する。測定された発光スペクトルから発光ピーク強度を求める。ここで、蛍光体の励起光照射側の表面温度の測定値は、放射温度計と熱電対による温度測定値を利用して補正した値を用いる。
<その他>
本発明の蛍光体は、その内部量子効率が高いほど好ましい。その値は、通常0.5以上、好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。内部量子効率が低いと発光効率が低下する傾向にあり、好ましくない。
本発明の蛍光体は、その吸収効率も高いほど好ましい。その値は通常0.5以上、好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。吸収効率が低いと発光効率が低下する傾向にあり、好ましくない。
1−2.蛍光体の好ましい組成
本発明の蛍光体は、少なくともSiを含む4価の金属元素Mと、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の2価の金属元素Mとを含むものであり、さらに好ましくは付活元素Mを含有する。
中でも、前述の表面層を形成したときに耐久性向上効果が顕著に得られるので、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素のモル比が、0.56以上である蛍光体が好ましい。Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の比の好ましい範囲としては、通常0.56以上、好ましくは0.8以上であり、また、通常1.2以下、好ましくは1.1以下である。このような組成が好ましい理由は以下の通りである。
Siと、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素とを含有する蛍光体は、Si(O,N)四面体が頂点共有して形成されるアニオン骨格で、不安定なアルカリ土類金属元素等(具体的には、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZn)を包み込むような結晶構造をとることが難しい傾向にある。この傾向は、Siに対するアルカリ土類金属元素の比が大きい蛍光体であるほど顕著に見られる。アニオン骨格で包み込まれないアルカリ土類金属は、Ca<Sr<Baの順に、大気中の水分子、あるいは水蒸気との反応性が増し、耐久性が低下する傾向にあり、前記式[1]、又は[2]で表される発光ピーク強度維持率が低くなる傾向が認められる。このような蛍光体に対し、表面層を形成し、本発明の蛍光体とすれば、ガスバリア性が向上するので、前記発光ピーク強度維持率を向上させ、耐久性を向上させることができる。従来公知のSiに対するMg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の比が、0.56以上である蛍光体は、輝度などの発光特性に優れるものであっても、耐久性の点で問題があり、実用化が難しいかと思われたが、本発明によれば、耐久性に問題のあった蛍光体を実用化に耐えうるものにすることができる。
特に、本発明の蛍光体は、2価の金属元素MとしてSrを含むと共に、4価の金属元素MとしてSiを含有することがより好ましい。Srは、Caと比較してイオン半径が大きいことから、前述のアニオン骨格で包み込むことが難しくなり、その分、大気中の水分子、つまり、水蒸気と接触しやすなる。さらに、Caと比較して、水に対して不安定な元素であるため、従来公知のSrSi:EuなどのSrを含有する蛍光体は、耐久性をより向上させる必要があった。これに対し、前述の表面層を有する本発明の蛍光体とすれば、耐久性が低いという問題点を克服することができる。
なお、Caは、Srよりもイオン半径が小さいことから、Caイオンがアニオン骨格から露出しにくく、大気中の水分子との接触が起こりにくいため、Srを含む蛍光体のように耐久性が低いという問題は生じにくいので、製造工程を増やして表面層を形成するメリットは小さくなる傾向にある。
本発明の蛍光体は、付活元素M、少なくともSrを含む2価の金属元素M、3価の金属元素M、及び少なくともSiを含む4価の金属元素Mを含むことがより好ましい。この場合においては、3価の金属元素MとしてAlを含有することが好ましい。
付活元素Mとしては、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体を構成する結晶母体に含有可能な各種の発光イオンを使用することができるが、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素を使用すると、発光特性の高い蛍光体を製造することが可能なので好ましい。また、付活元素MとしてはMn、Ce、Pr及びEuの1種又は2種以上を含むことが好ましく、特にCe及び/又はEuを含むことが高輝度の赤色又は黄色発光を示す蛍光体を得ることができるので更に好ましい。また、輝度を上げることや蓄光性を付与するなど様々な機能を持たせるために、付活元素MとしてはCe及び/又はEu以外に共付活剤を1種又は複数種含有させても良い。
付活元素M以外の元素としては、各種の2価、3価、4価の金属元素が使用可能である。2価の金属元素MがSrを必須とするMg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、3価の金属元素MがAl、Ga、In、及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、4価の金属元素MがSiを必須とするSi、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素であることが、発光特性の高い蛍光体を得ることができるので好ましい。
2価の金属元素Mとしては、Sr単独とするよりも、Srと、Mg、Ca、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる元素の1種又は2種以上とを組み合わせることが好ましく、Srと、Mg、Ca、及びBaよりなる群から選ばれる元素の1種又は2種以上とを組み合わせることがより好ましく、Srと、Ca及び/又はBaとを組み合わせることがさらに好ましく、SrとCaとを組み合わせることが特に好ましい。
また、2価の金属元素Mの50モル%以上がSrとなるように組成を調整すると発光特性の高い蛍光体が得られるので好ましい。中でも、2価の金属元素Mの80モル%以上をSrとすることがより好ましく、90モル%以上をSrとすることが更に好ましく、また、通常100モル%以下であり、95モル%以下とすることが好ましい。
また、3価の金属元素Mの50モル%以上がAlとなるように組成を調整すると発光特性の高い蛍光体が得られるので好ましい。中でも、3価の金属元素Mの80モル%以上をAlとすることが好ましく、90モル%以上をAlとすることがより好ましく、3価の金属元素Mの全てをAlとすることが最も好ましい。
また、少なくともSiを含む4価の金属元素Mの50モル%以上がSiとなるように組成を調整すると発光特性の高い蛍光体が得られるので好ましい。中でも、少なくともSiを含む4価の金属元素Mの80モル%以上をSiとすることが好ましく、90モル%以上をSiとすることがより好ましく、4価の金属元素Mの全てをSiとすることが好ましい。
特に、2価の金属元素Mの50モル%以上がSrであり、かつ、3価の金属元素Mの50モル%以上がAlであり、かつ、少なくともSiを含む4価の金属元素Mの50モル%以上がSiとなるようにすることにより、発光特性が特に高い蛍光体が製造できるので好ましい。このとき、本発明の蛍光体を橙色ないし赤色蛍光体としたい場合は、付活元素MをEuに、本発明の蛍光体を黄色蛍光体としたい場合は、付活元素MをCeにすると、発光効率の点で好ましい。
中でも、本発明の蛍光体としては、化学組成が下記式[4]で表される部分を有することが好ましい。
[4]
(但し、a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5 )
尚、前記式[4]において、Mは前記付活元素Mを表し、Mは前記2価の金属元素Mを表し、Mは前記3価の金属元素Mを表し、Mは前記少なくともSiを含む4価の金属元素Mを表すが、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、Mは、Srを必須とするMg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、Mは、Al、Ga、In、及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、Mは、Siを必須とするSi、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素であることが好ましい。
また、前記式[4]におけるa〜fの数値範囲の好適理由は次の通りである。
aが0.00001より小さいと十分な発光ピーク強度が得られない傾向にあり、aが0.15より大きいと濃度消光が大きくなって発光ピーク強度が低くなる傾向にある。従って、aは通常0.00001以上、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.002以上、特に好ましくは0.004以上で、通常0.15以下、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下、更に好ましくは0.04以下、特に好ましくは0.02以下となるように原料を混合することが好ましい。
aとbの合計は、蛍光体の結晶母体中において付活元素Mが2価の金属元素Mの原子位置を置換するので、通常1となるように原料混合組成を調整する。
cが0.5より小さい場合も、cが1.5より大きい場合も、製造時に異相が生じ、前記蛍光体の収率が低くなる傾向にある。従って、cは通常0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.8以上で、通常1.5以下、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.2以下となるように原料を混合することが発光ピーク強度の観点からも好ましい。
dが0.5より小さい場合も、dが1.5より大きい場合も、製造時に異相が生じ、前記蛍光体の収率が低くなる傾向にある。従って、dは通常0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.8以上で、通常1.5以下、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.2以下となるように、原料を混合することが発光ピーク強度の観点からも好ましい。
eは窒素の含有量を示す係数であり、
Figure 2009132916
となる。この式に0.5≦c≦1.5,0.5≦d≦1.5を代入すれば、eの範囲は
1.84≦e≦4.17
となる。しかしながら、前記式[4]で表される蛍光体組成において、窒素の含有量を示すeが2.5未満であると蛍光体の収率が低下する傾向にある。また、eが3.5を超えても蛍光体の収率が低下する傾向にある。従って、eは通常2.5≦e≦3.5である。
前記式[4]で表される蛍光体中の酸素は、原料金属中の不純物として混入する場合、粉砕工程、窒化工程などの製造プロセス時に導入される場合などが考えられる。酸素の割合であるfは蛍光体の発光特性の低下が容認できる範囲で0≦f≦0.5が好ましい。
前記式[4]で表される蛍光体の中でも、下記式[5]で表される蛍光体とすることができる。
1’ a’Srb’Cac’2’ d’Ale’Sif’g’ [5]
(但し、a’、b’、c’、d’、e’、f’、g’はそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a’≦0.15
0.1≦b’≦0.99999
0≦c’<1
0≦d’<1
a’+b’+c’+d’=1
0.5≦e’≦1.5
0.5≦f’≦1.5
0.8×(2/3+e’+4/3×f’)≦g’≦1.2×(2/3+e’+4/3×f’))
ここで、M1’は前記式[4]におけるMと同様に、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbからなる群から選ばれる付活元素を表す。付活元素M1’としては中でも、Mn、Ce、Pr及びEuの1種又は2種以上を含むことが好ましく、特にEu及び/又はCeを含むことが好ましい。
2’はMg及び/又はBaを表し、好ましくはMgである。Mgを含有させることにより、蛍光体の発光ピーク波長を長波長化することができる。
a’の範囲は、通常0.00001以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.002以上であり、また、通常0.15以下、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.02以下である。
b’の範囲は、通常0.1以上であり、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.7以上であり、また、通常0.99999以下である。
c’の範囲は、通常0以上であり、また通常1未満、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。
d’の範囲は、通常0以上であり、また通常1未満、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下である。
a’、b’、c’、d’相互の関係は通常、
a’+b’+c’+d’=1
を満足する。
e’の範囲は通常、0.5以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、また通常1.5以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
f’の範囲は通常、0.5以上であり、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、また通常1.5以下であり、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
g’の範囲は、通常0.8×(2/3+e’+4/3×f’)以上であり、好ましくは0.9×(2/3+e’+4/3×f’)以上、より好ましくは2.5以上であり、また通常1.2×(2/3+e’+4/3×f’)以下であり、好ましくは1.1×(2/3+e’+4/3×f’)以下、より好ましくは3.5以下である。
以下に、式[5]においてb’の値が、0.4≦b’≦0.99999の範囲であり、かつ、d’=0である蛍光体を「Sr置換量が多い蛍光体」と略記する場合がある。
本発明の蛍光体に含まれる酸素は、原料金属中の不純物として混入するもの、粉砕工程、窒化工程などの製造プロセス時に混入するものなどが考えられる。
酸素の含有量は蛍光体の発光特性低下が容認できる範囲で通常5重量%以下、好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1重量%以下である。
蛍光体の組成の具体例としては、(Sr,Ca,Mg)AlSiN:Eu、(Sr,Ca,Mg)AlSiN:Ce等が挙げられる。
2.蛍光体の製造方法
本発明の蛍光体の製造方法には特に制限はないが、好ましくは、本発明の蛍光体は、蛍光体原料を焼成する工程を有する、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法において、焼成工程の後に、さらに、250℃以上650℃以下の温度で焼成する工程(以下、「アニール工程」)を経る本発明の蛍光体の製造方法により製造される。この場合において、出発原料として蛍光体原料用合金を用いることが好ましいが、固相反応方法を経て製造する方法であってもよい。
なお、以下において、本発明に係るアニール工程に供する蛍光体を「本発明のアニール前蛍光体」と称する場合がある。
2−1.出発原料として蛍光体原料用合金を用いるアニール前蛍光体の製造方法
蛍光体原料用合金を出発原料とする製造方法では、以下の工程を経て本発明のアニール前蛍光体を製造する。即ち、まず目的とする蛍光体組成から窒素及び酸素を抜いた組成となるように原料となる金属やその合金を秤量する。そして、これらの原料を融解させて合金化して蛍光体原料用合金を製造する(融解工程)。その後、蛍光体原料用合金を窒素雰囲気下で加熱することにより窒化を行なう(窒化処理工程。また、適宜、「二次窒化工程」ともいう。)。また、これらの工程に加え、必要に応じて鋳造工程、粉砕工程、分級工程、一次窒化工程、冷却工程などを行なってもよい。
2−1−1.蛍光体原料用合金の製造
{原料の秤量}
例えば、化学組成が前記式[4]で表される部分を有する蛍光体を製造する場合、下記式[6]の組成となるように、原料となる金属やその合金(以下、単に「原料金属」と言う場合がある。)を秤量して蛍光体原料用合金を製造することが好ましい。
[6]
(但し、M、M、M、M、a、b、c、dはそれぞれ前記式[4]におけると同義である。)
原料としては、金属、当該金属の合金などを用いることができる。また、本発明の蛍光体が含む元素に対応した原料は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。ただし、原料の中でも、付活元素Mの原料として使用するEu原料やCe原料としては、Eu金属やCe金属を使用することが好ましい。これは原料の入手が容易であるからである。
合金の製造に使用される金属の純度は、高いことが好ましい。具体的には、合成される蛍光体の発光特性の点から、付活元素Mの金属原料としては不純物が0.1モル%以下、好ましくは0.01モル%以下まで精製された金属を使用することが好ましい。付活元素M以外の元素の原料としては、2価、3価、又は4価を取り得る金属元素の各種金属原料等を使用する。付活元素Mと同様の理由から、いずれも含有される不純物濃度は0.1モル%以下であることが好ましく、0.01モル%以下であることがより好ましい。例えば、不純物としてFe、Ni、及びCoからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する場合、各々の元素の含有量は、通常500ppm以下、好ましくは100ppm以下である。
原料金属の形状に制限は無いが、通常、直径数mmから数十mmの粒状又は塊状のものが用いられる。なお、ここでは直径10mm以上のものを塊状、それ未満のものを粒状と呼んでいる。
2価の金属元素Mとしてアルカリ土類金属元素を用いる場合、その原料としては、粒状、塊状など形状は問わないが、原料の化学的性質に応じて適切な形状を選択することが好ましい。例えば、Caは粒状、塊状のいずれでも大気中で安定であり、使用可能であるが、Srは化学的により活性であるため、塊状の原料を用いることが好ましい。
なお、融解時に揮発やルツボ材質との反応等により損失する金属元素については、必要に応じて、予め過剰に秤量し添加してもよい。
{原料の融解}
原料の秤量後、当該原料を融解させて合金化して蛍光体原料用合金を製造する(融解工程)。得られる蛍光体原料用合金は、製造される蛍光体を構成する金属元素を2種以上含有するものである。なお、本発明の蛍光体を構成する金属元素を1つの蛍光体原料用合金が全て含有していなくても、後述の一次窒化工程又は二次窒化工程において、2種以上の合金及び/又は金属を併用することにより、本発明の蛍光体を製造することができる。
原料金属を融解する方法に特に制限はなく、任意の方法を採用することができる。例えば、抵抗加熱法、電子ビーム法、アーク融解法、高周波誘導加熱法(以下、「高周波融解法」と称する場合がある。)等を用いることができる。また、これらの方法を2種以上任意に組み合わせて融解することも可能である。
また、融解時に用いることのできるルツボの材質としては、アルミナ、カルシア、黒鉛、モリブデン等が挙げられる。
ただし、特に、Siと2価の金属元素Mとしてアルカリ土類金属元素を含む蛍光体原料用合金を製造する場合、次の点に留意することが好ましい。
即ち、Siの融点は1410℃であり、アルカリ土類金属の沸点と同程度である(例えば、Caの沸点は1494℃、Srの沸点は1350℃、Baの沸点は1537℃である)。特に、Srの沸点がSiの融点より低いため、SrとSiを同時に融解させることは極めて困難である。
そこで、本発明では、Siの原料(即ち、Si及び/又はSiを含む合金)を先に融解させて、その後、アルカリ土類金属原料(即ち、アルカリ土類金属及び/又はアルカリ土類金属を含む合金)を融解することが好ましい。これにより、アルカリ土類金属の原料とSiの原料とをともに融解させることが可能である。さらに、このようにSiの原料を融解した後でアルカリ土類金属の原料を融解することにより、得られる蛍光体原料用合金の純度が向上し、それを原料とする蛍光体の特性が著しく向上するという効果も奏される。
以下、このようにSiとアルカリ土類金属元素とを含む蛍光体原料用合金を製造する場合について詳しく説明する。
Siとアルカリ土類金属元素とを含む蛍光体原料用合金を製造する場合、融解法に制限は無く、前記の融解法を任意に採用できるが、中でも、アーク融解法、高周波融解法が好ましく、高周波融解法が特に好ましい。以下、(1)アーク融解・電子ビーム融解の場合、(2)高周波融解の場合を例に更に詳しく説明する。
(1)アーク融解法・電子ビーム融解法の場合
アーク融解・電子ビーム融解の場合は、以下の手順で融解を行う。
i)Si金属又はSiを含む合金を電子ビームあるいはアーク放電により融解する。
ii)次いで間接加熱によりアルカリ土類金属を融解し、Siとアルカリ土類金属とを含む合金を得る。
ここで、Siを含む溶湯にアルカリ土類金属が溶け込んだ後、電子ビームあるいはアーク放電により加熱及び/又は攪拌して混合を促進しても良い。
(2)高周波融解法の場合
アルカリ土類金属元素を含む合金は酸素との反応性が高いため、大気中ではなく真空あるいは不活性ガス中で融解する必要がある。このような条件では通常、高周波融解法が好ましい。しかしながら、Siは半導体であり、高周波を用いた誘導加熱による融解が困難である。例えば、アルミニウムの20℃における比抵抗率は2.8×10−8Ω・mであるのに対し、半導体用多結晶Siの比抵抗率は10Ω・m以上である。このように比抵抗率が大きいものを直接高周波融解することは困難であるため、一般に導電性のサセプタを用い、熱伝導や放射によりSiに熱移動を行って融解する。
サセプタの形状に制限はなく、ディスク状、管状なども可能であるが坩堝を用いることが好ましい。
また、サセプタの材質は、原料の融解が可能であれば制限はなく、黒鉛、モリブデン、炭化珪素などが一般に用いられる。しかし、これらは、非常に高価であり、また、アルカリ土類金属と反応しやすいという問題点がある。一方、アルカリ土類金属を融解可能な坩堝(アルミナ、カルシアなど)は絶縁体であり、サセプタとして使用することが難しい。従って、アルカリ土類金属とSi金属とを坩堝に仕込んで高周波融解するにあたり、公知の導電性の坩堝(黒鉛など)をサセプタとして使用して、間接的な加熱によりSi金属とアルカリ土類金属とを同時に融解することは困難である。そこで、次のような順序で融解することで、この問題点を解決する。
i)Si金属を導電性の坩堝を使用して間接加熱により融解する。
ii)次に、絶縁性の坩堝を使用して、アルカリ土類金属を融解することにより、Siとアルカリ土類金属元素とを含む合金を得る。
上記i)、ii)の工程の間でSi金属を冷却しても良いし、冷却せず連続してアルカリ土類金属を融解しても良い。連続して行う場合には導電性の容器にアルカリ土類金属の融解に適したカルシア、アルミナなどで被覆した坩堝を使用することもできる。
更に具体的な工程を記述すると、以下の通りである。
i)Si金属と金属M(例えばAl、Ga)を導電性の坩堝を使用して間接加熱により融解し、導電性の合金(母合金)を得る。
ii)次いで、アルカリ土類金属耐性坩堝を使用して、i)の母合金を融解させた後、アルカリ土類金属を高周波により融解させることにより、Siとアルカリ土類金属元素とを含む合金を得る。
Si金属あるいはSiを含む母合金を先に融解させ、次いでアルカリ土類金属を融解させる具体的方法としては、例えば、Si金属あるいはSiを含む母合金を先に融解させ、そこにアルカリ土類金属を添加する方法等が挙げられる。
また、Siを2価の金属元素M以外の金属Mと合金化して導電性を付与することもできる。この場合、得られる合金の融点がSiより低いことが好ましい。SiとAlの合金は、融点が1010℃付近と、アルカリ土類金属元素の沸点より融点が低くなるので特に好ましい。
Siと2価の金属元素M以外の金属Mとの母合金を用いる場合、その組成には特に制限はないが、母合金が導電性を有していることが好ましい。この場合、Siと金属Mとの混合割合(モル比)は、Siのモル数を1とした場合に、金属Mが、通常0.01以上、5以下の範囲となるようにして、アルカリ土類金属元素の沸点よりも融点の低い母合金を製造することが好ましい。
なお、Siを含む母合金に、さらにSi金属を加えることもできる。
本発明において、Si金属を融解させた後にアルカリ土類金属を融解させること以外に、他の原料金属の融解時期には特に制限はないが、通常、量が多いもの、もしくは、融点が高いものを先に融解させる。
付活元素Mを均一に分散させるため、また、付活元素Mの添加量は少量であるため、Si金属を融解させた後に付活元素Mの原料金属を融解させることが好ましい。
前述の式[6]で表され、4価の金属元素MがSiであり、2価の金属元素Mとして少なくともSrを含む蛍光体原料用合金を製造する場合、次のような手順で融解させることが好ましい。
(1) Siと3価の金属元素Mとの母合金を製造する。この際、好ましくはSiと3
価の金属元素Mとは、式[6]におけるSi:M比で合金化する。
(2) (1)の母合金を融解させた後、Srを融解させる。
(3) その後、Sr以外の2価の金属元素、付活元素Mを融解させる。
ところで、いずれの原料を融解する場合でも、原料の融解時の具体的な温度条件及び融解させる時間は、用いる原料に応じて適切な温度及び時間を設定すればよい。
また、原料の融解時の雰囲気は蛍光体原料用合金が得られる限り任意であるが、不活性ガス雰囲気が好ましく、中でもアルゴン雰囲気が好ましい。なお、不活性ガスは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、原料の融解時の圧力は蛍光体原料用合金が得られる限り任意であるが、1×10Pa以上が好ましく、1×10Pa以下が好ましい。更に、安全性の面から、大気圧以下で行なうことが望ましい。
{溶湯の鋳造}
原料の融解により蛍光体原料用合金が得られる。この蛍光体原料用合金は通常は合金溶湯として得られるが、この合金溶湯から直接蛍光体を製造するには技術的課題が多く存在する。そのため、この合金溶湯を金型に注入して成型する鋳造工程を経て、凝固体(以下適宜、「合金塊」という)を得ることが好ましい。
ただし、この鋳造工程において溶融金属の冷却速度によって偏析が生じ、溶融状態で均一組成であったものが組成分布に偏りが生じることもある。従って、冷却速度はできるだけ速いことが望ましい。また、金型は銅などの熱伝導性のよい材料を使用することが好ましく、熱が放散しやすい形状であることが好ましい。また、必要に応じて水冷などの手段により金型を冷却する工夫をすることも好ましい。
このような工夫により、例えば厚さに対して底面積の大きい金型を用い、溶湯を金型へ注湯後、できるだけ早く凝固させることが好ましい。
また、合金の組成によって偏析の程度は異なるので必要な分析手段、例えばICP発光分光分析法などによって、得られた凝固体の数箇所より試料を採取して組成分析を行い、偏析の防止に必要な冷却速度を定めることが好ましい。
なお、鋳造時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気が好ましく、中でもアルゴン雰囲気が好ましい。この際、不活性ガスは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
{合金塊の粉砕}
加熱工程に先立ち、蛍光体原料用合金は、所望の粒径の粉末状にすることが好ましい。そこで、鋳造工程で得られた合金塊は、次いで粉砕することにより(粉砕工程)、所望の粒径、粒度分布を有する蛍光体原料用合金粉末(以下、単に「合金粉末」と称する場合がある。)とすることが好ましい。
粉砕方法に特に制限はないが、例えば、乾式法や、エチレングリコール、ヘキサン、アセトン等の有機溶媒を用いる湿式法で行うことが可能である。
以下、乾式法を例に詳しく説明する。
この粉砕工程は、必要に応じて、粗粉砕工程、中粉砕工程、微粉砕工程等の複数の工程に分けてもよい。この場合、全粉砕工程を同じ装置を用いて粉砕することもできるが、工程によって使用する装置を変えてもよい。
ここで、粗粉砕工程とは、合金粉末のおおよそ90重量%が粒径1cm以下になるように粉砕する工程であり、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、クラッシングロール、インパクトクラッシャーなどの粉砕装置を使用することができる。中粉砕工程とは、合金粉末のおおよそ90重量%が粒径1mm以下になるように粉砕する工程であり、コーンクラッシャー、クラッシングロール、ハンマーミル、ディスクミルなどの粉砕装置を使用することができる。微粉砕工程とは、合金粉末が後述する重量メジアン径になるように粉砕する工程であり、ボールミル、チューブミル、ロッドミル、ローラーミル、スタンプミル、エッジランナー、振動ミル、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。
中でも、不純物の混入を防止する観点から、最終の粉砕工程においては、ジェットミルを使用することが好ましい。ジェットミルを用いるためには、粒径2mm以下程度になるまで予め合金塊を粉砕しておくことが好ましい。ジェットミルでは、主に、ノズル元圧から大気圧に噴射される流体の膨張エネルギーを利用して粒子の粉砕を行うため、粉砕圧力により粒径を制御すること、不純物の混入を防止することが可能である。粉砕圧力は、装置によっても異なるが、通常、ゲージ圧で0.01MPa以上、2MPa以下の範囲であり、中でも、0.05MPa以上、0.4MPa未満が好ましく、0.1MPa以上、0.3MPa以下がさらに好ましい。ゲージ圧が低すぎると得られる粒子の粒径が大きすぎる可能性があり、高すぎると得られる粒子の粒径が小さすぎる可能性がある。
さらに、いずれの場合も粉砕工程中に鉄等の不純物の混入が起こらないよう、粉砕機の材質と被粉砕物の関係を適切に選択する必要がある。例えば、接粉部は、セラミックライニングが施されていることが好ましく、セラミックの中でも、アルミナ、窒化ケイ素、タングステンカーバイド、ジルコニア等が好ましい。
また、合金粉末の酸化を防ぐため、粉砕工程は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスの種類に特に制限はないが、通常、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの気体のうち1種単独雰囲気又は2種以上の混合雰囲気を用いることができる。中でも、経済性の観点から窒素が特に好ましい。
さらに、雰囲気中の酸素濃度は合金粉末の酸化が防止できる限り制限はないが、通常10体積%以下、特に5体積%以下が好ましい。また、酸素濃度の下限としては、通常、10ppm程度である。特定の範囲の酸素濃度とすることによって、粉砕中に合金の表面に酸化被膜が形成され、安定化すると考えられる。酸素濃度が5体積%より高い雰囲気中で粉砕工程を行う場合、粉砕中に粉塵が爆発する可能性があるため、粉塵を生じさせないような設備を設けることが好ましい。
なお、粉砕工程中に合金粉末の温度が上がらないように必要に応じて冷却してもよい。
{合金粉末の分級}
上述したようにして得られた合金粉末は、例えば、バイブレーティングスクリーン、シフターなどの網目を使用した篩い分け装置;エアセパレータ等の慣性分級装置;サイクロン等の遠心分離機などを使用して、前述の所望の重量メジアン径D50及び粒度分布に調整(分級工程)してから、これ以降の工程に供することが好ましい。
なお、粒度分布の調整においては、粗粒子を分級し、粉砕機にリサイクルすることが好ましく、分級及び/又はリサイクルが連続的であることがさらに好ましい。
この分級工程についても、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスの種類に特に制限はないが、通常、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの1種単独雰囲気又は2種以上の混合雰囲気が用いられ、経済性の観点から窒素が特に好ましい。また、不活性ガス雰囲気中の酸素濃度は10体積%以下、特に5体積%以下が好ましい。
後述の一次窒化工程や二次窒化工程で用いる合金粉末は、当該合金粉末を構成する金属元素の活性度により粒径を調整する必要があり、その重量メジアン径D50は、通常の場合、100μm以下、好ましくは80μm以下、特に好ましくは60μm以下、また、0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1μm以上である。また、合金がSrを含有する場合は、雰囲気ガスとの反応性が高いため、合金粉末の重量メジアン径D50は、通常5μm以上、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは13μm以上とすることが望ましい。合金粉末の粒径が前述の重量メジアン径D50の範囲よりも小さいと、窒化等の反応時の発熱速度が上昇する傾向にあるので、反応の制御が困難となる場合や、また、合金粉末が大気中で酸化されやすくなるので、得られる蛍光体に酸素が取り込まれやすくなる等、取り扱いが難しくなる場合がある。一方で、合金粉末の粒径が前述の重量メジアン径D50の範囲よりも大きいと、合金粒子内部での窒化等の反応が不十分となる場合がある。
また、合金粉末中に含まれる、粒径10μm以下の合金粒子の割合は80重量%以下であることが好ましく、粒径45μm以上の合金粒子の割合は40重量%以下であることが好ましい。
また、QDの値は、特に制限はないが、通常0.59以下である。ここで、QDとは、積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75と表記し、QD=(D75−D25)/(D75+D25)と定義する。QDの値が小さいことは粒度分布が狭いことを意味する。
2−1−2.加熱工程
上述のようにして得られた蛍光体原料用合金(ここで、蛍光体原料用合金は、粉末状であっても塊状であってもよいが、前述の蛍光体原料用合金粉末であることが好ましい。)、及び/又は後述する窒素含有合金を窒素含有雰囲気中で加熱することにより窒化する。加熱工程では、後述の二次窒化工程を必須とし、必要に応じて下記の一次窒化工程を行う。
{一次窒化工程}
本発明の蛍光体を工業的に効率よく製造する観点から、必要に応じて、二次窒化工程の前に一次窒化工程を行なう。この一次窒化工程は、合金粉末(但し、粒状、塊状の合金であってもよい。)を窒化することで、後述する窒素含有合金を製造する工程である。具体的には、窒素含有雰囲気下、所定の温度域で所定の時間、合金粉末を加熱することにより、予備的に窒化を行なう工程である。このような一次窒化工程の導入により、後述する二次窒化工程における合金と窒素との反応性を制御することができ、合金から蛍光体を工業的に生産することが可能となる。
合金粉末は、本工程において窒化されることにより、その材質が蛍光体原料用合金から窒素含有合金に変換され、その重量が増加する。本明細書において、この際の合金粉末の重量増加は、下記式[7]で表される重量増加率で表すものとする。
(一次窒化工程後の窒素含有合金の重量−一次窒化工程前の合金粉末の重量)
/一次窒化工程前の合金粉末の重量×100 [7]
本工程では、窒素分圧、温度、加熱時間等の反応条件により窒化の程度を制御することができる。
後述する二次窒化工程の反応条件、合金粉末の組成等によっても異なるが、上記式[7]で求められる合金粉末の重量増加率が、通常0.5重量%以上、中でも1重量%以上、特に5重量%以上となるように反応条件を調整することが好ましい。また、重量増加率の上限に特に制限はないが、理論上、通常40重量%以下、好ましくは31重量%以下となる。合金粉末の重量増加率を上記の範囲内となるように調整するために、一次窒化工程を2回以上繰り返し行なうこともできる。一次窒化工程を繰り返して行なう場合、その回数に特に制限はないが、製造コストを考えると、通常3回以下、中でも2回以下が好ましい。
また、一次窒化工程は、連続方式でも回分方式でも行なうことができる。連続方式の場合と回分方式の場合とで好ましい反応条件が異なるため、以下、一次窒化工程の反応条件について、連続方式で行なう場合と回分方式で行なう場合に分けて説明する。
なお、生産性の観点から回分方式よりも連続方式で行なうことが好ましい。即ち、一次窒化工程を連続方式で行なう場合、回分方式と比較してより高濃度の窒素を流通させ、より高温、より短時間で加熱することが好ましい。
<連続方式の場合>
(装置の形式)
一次窒化工程を連続方式で行なう場合、例えば、ロータリーキルン、トンネル炉、ベルト炉、流動焼成炉等の装置を用いることが可能であり、中でも、ロータリーキルンを用いることが好ましい。
ロータリーキルン方式を用いる場合、窒素含有ガスを流通させた耐火性の円筒形炉心管を回転させながら合金粉末を加熱する。炉心管を傾斜させ、合金粉末を連続供給することにより、連続処理が可能となる。ロータリーキルンを用いると、加熱中に合金粉末を攪拌することができることから、合金粉末同士の融着を抑制し、気固の接触効率を向上させることが可能である。その結果、加熱時間の短縮、かつ、均一な窒化処理を実現することができる。ロータリーキルンとしては、雰囲気ガスが流通可能な構造であるものが好ましく、さらには、合金粉末の滞留時間及び投入速度が制御できるものが好ましい。
なお、縦型炉を用いて、合金粉末を窒素雰囲気中で落下させながら、窒化させても良い。
炉心管の回転速度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常1rpm以上、好ましくは2rpm以上、特に好ましくは3rpm以上、また、通常100rpm以下、好ましくは20rpm以下、特に好ましくは8rpm以下である。この範囲を外れると、炉心管内での合金粉末の動態を制御することが困難となることがある。すなわち、回転速度が遅すぎると、合金粉末が炉心管の内壁に付着し、滞留する傾向がある。一方、回転速度が速すぎると、遠心力により合金粉末が炉心管の内壁に押し付けられたまま落下せず、攪拌効率が低下する傾向にある。
炉心管の水平に対する傾斜角は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常0.6°以上、好ましくは1°以上、特に好ましくは1.7°以上、また、通常6°以下、好ましくは5°以下、特に好ましくは3.4°以下である。この範囲を外れると、合金粉末の供給速度が制御しにくくなる傾向にある。
ロータリーキルンを用いて一次窒化工程を行なう場合は、合金粉末の炉心管への付着を防止することが好ましい。即ち、合金粉末が炉心管へ付着すると、被処理物の排出を妨げ、安定した処理が困難となる可能性がある。また、炉心管をヒーター等で外部から加熱する場合、合金粉末が炉心管へ付着していると、付着物が断熱材として作用し、加熱温度が実質的に低下する場合がある。付着物は、一次窒化工程終了後、炉心管を冷却する際に、炉心管と合金粉末との熱膨張率の違いなどにより剥離して除去される場合もあるが、窒素含有合金の排出速度を一定とし、かつ、一次窒化工程における窒化の程度を一定に保つためには、炉心管に振動等を加えて付着物を剥離させたり、物理的に付着物を掻き落としたりする等、常に付着物を除去し続けることがより好ましい。
(装置の材質)
連続方式で用いる装置において、焼成容器、炉心管等の合金粉末と接触する部品の材質は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、例えば、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、黒鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、モリブデン、タングステン等を用いることができる。使用時の温度がおおよそ1100℃以下の場合は、石英も用いることができる。これらの中でも、炉心管の材質としては、酸化アルミニウム、窒化ホウ素が特に好ましい。なお、前記材質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(加熱時の雰囲気)
加熱時の雰囲気は、窒素元素を含有することを必須とし、窒素ガスと窒素以外の不活性ガスとを混合したガスを流通させることが好ましく、中でも、窒素と、アルゴン等の希ガス類元素とを混合したガスを流通させることが好ましい。これは、窒素ガスに不活性ガスを混合することで反応速度を制御することができるからである。なお、前記の不活性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
雰囲気中の窒素濃度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常0.1体積%以上、好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは3体積%以上、また、上限に特に制限はないが、好ましくは80体積%以下である。雰囲気中の窒素濃度が低すぎると、窒化の進行が不十分となる場合があり、一方、窒素濃度が高すぎると、加熱温度の制御が難しくなる場合や、炉心管等への合金の付着が多くなる場合がある。
また、雰囲気中の酸素濃度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常300ppm以下、好ましくは100ppm以下、また、0に近いことが好ましいが、通常0.1ppm以上、好ましくは1ppm以上である。雰囲気中の酸素濃度が高すぎると、窒素含有合金、更には最終的に得られる蛍光体中に酸素が混入し、発光ピーク波長が短波長化したり輝度が低下したりすることがある。
また、酸素の混入を避ける目的で、爆発限界に達しない量の還元性ガス(例えば、水素、一酸化炭素、炭化水素、アンモニア等)を雰囲気中に混合することが好ましい。なお、還元性ガスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
加熱時の圧力は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、大気中の酸素の混入を防ぐために大気圧以上の圧力とすることが好ましい。圧力が低すぎると、加熱炉の密閉性が悪い場合には多量の酸素が混入して特性の高い蛍光体を得ることができない場合がある。
加熱時の雰囲気中における窒素分圧は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常大気圧以下、好ましくは0.09MPa以下、さらに好ましくは0.08MPa以下であり、また、通常0.0005MPa以上、好ましくは0.001MPa以上である。窒素分圧が高いほど窒化速度は大きくなるが、窒素分圧があまりにも高すぎると、発熱速度が大きすぎて、合金粉末の表面に窒化物が充分な膜厚で形成される以前に、合金粉末の温度が当該合金粉末を形成する合金の融点を超え、合金粒子が融着する可能性があり、窒化が均一に進行しないことがある。一方、窒素分圧が低すぎると、一次窒化工程に要する時間が長くなる、消費される雰囲気ガス(例えば、アルゴンガス等が挙げられる。)の量が多くなる等、工業的に課題が生じることがあり、また、合金からSr等が揮発して組成がずれる場合もある。
(窒素供給量・速度)
連続方式の場合、単位時間あたり所定量の合金粉末が装置内に供給されるようにすることが好ましい。また、供給された合金粉末を所望の程度まで窒化するためには、少なくとも、単位時間あたり理論上必要な量の窒素を装置内に供給する。具体的には、単位時間あたり供給される合金粉末の重量に対し、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、また、上限には特に制限はないが、通常200重量%以下の窒素を含有する窒素含有雰囲気ガスが装置内に供給されることが好ましい。
なお、上記の窒素含有の雰囲気ガスの流通方向は合金粉末の供給方向に対し、向流であっても併流であっても構わないが、通常、向流とする。
(加熱条件)
加熱温度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常は蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度以上、好ましくは蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度以上、また、通常は蛍光体原料用合金の融点より10℃低い温度以下の温度範囲で加熱するとよい。より具体的な加熱温度としては、合金の組成によっても異なるが、例えば、通常800℃以上、好ましくは900℃以上、また通常2500℃以下、好ましくは1500℃以下である。加熱温度が低すぎると窒化反応の進行が不充分となる傾向にあり、一方、温度が高すぎると炉心管への合金粉末の付着が多くなる傾向がある。なお、ここで加熱温度は、加熱時の炉心管温度を指している。
また、蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度とは、おおよそ、蛍光体原料用合金の窒化が開始される温度を意味している。
なお、本明細書において、蛍光体原料用合金、窒素含有合金等の合金の融点は、後述の実施例の項に記載されるように、熱重量・示差熱((thermogravimetry−differential thermal analysis:以下適宜「TG−DTA」と略す。)測定による吸熱ピークから求めることができるものであり、合金の組成によって異なるが、おおよそ900℃以上1300℃以下である。ただし、明確な融点を示さない合金の場合は、分解開始温度を合金の融点とみなす。また、複数種の合金を用いる場合は、当該合金の中でも最も融点の低い合金の融点を、合金の融点とする。
前記の温度範囲で加熱する時間(最高温度での保持時間)は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常0.1分以上、好ましくは1分以上、また、通常1時間以下、好ましくは30分以下、さらに好ましくは8分以下である。加熱時間が長すぎると、アルカリ土類金属の揮発により組成がずれる場合があり、加熱する時間が短すぎると、窒化の進行が不十分となる場合がある。
<回分方式の場合>
(装置の形式)
一次窒化工程を回分方式で行なう場合、例えば、管状炉、一般的な雰囲気加熱炉、ロータリーキルン等を用いることができる。具体的操作としては、通常、合金粉末を耐火性の焼成容器(トレイやルツボ等)に充填してから装置内にて加熱を行なう。
(焼成容器)
合金粉末を充填する焼成容器の形状は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、焼成雰囲気と合金粉末との接触効率が高くなるように、密閉構造でなく、かつ、充填層高が高すぎないものが好ましい。充填層高は、通常30mm以下、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下、また、通常3mm以上、好ましくは5mm以上である。充填層高が高すぎると窒化反応が均一に進行しないことがあり、一方、充填層高が低すぎると生産性が低下することがあるからである。
焼成容器等の合金粉末と接触する部分の材質は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、例えば、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、黒鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、モリブデン、タングステン等を用いることができる。使用時の温度がおおよそ1100℃以下の場合は、石英も使用することができる。これらの中でも、黒鉛、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、石英を用いることが好ましく、窒化ホウ素を用いることがさらに好ましい。なお、前記材質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(加熱時の雰囲気)
加熱時の雰囲気は、窒素雰囲気と不活性ガス雰囲気とを混合した雰囲気であることが好ましく、中でも、窒素と、アルゴン等の希ガス類元素とを混合した雰囲気であることが好ましい。これは、窒素雰囲気に不活性ガス雰囲気を混合することで反応速度を制御することができるからである。なお、前記の不活性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
雰囲気中の窒素濃度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常0.1体積%以上、好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは3体積%以上、また、通常99体積%以下、好ましくは20体積%以下、さらに好ましくは10体積%以下である。雰囲気中の窒素濃度が低すぎると、アルカリ土類金属等が揮発する場合があり、一方、窒素濃度が高すぎると、窒化の進行が不均一となることがある。
雰囲気中の酸素濃度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常は、連続方式の場合と同様である。
また、連続方式の場合と同様に、爆発限界に達しない量の還元性ガス(水素、一酸化炭素、炭化水素、アンモニア等)を混合することが好ましい。
加熱時の圧力は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、連続方式の場合と同様、大気中の酸素の混入を防ぐために大気圧以上の圧力とすることが好ましい。
加熱時の雰囲気中における窒素分圧は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常は、連続方式の場合と同様である。
(加熱条件)
加熱温度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常は蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度以上、好ましくは蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度以上、また、通常は蛍光体原料用合金の融点以下、好ましくは蛍光体原料用合金の融点より10℃低い温度以下、より好ましくは蛍光体原料用合金の融点より50℃低い温度以下で加熱するとよい。より具体的な加熱温度としては、合金組成によっても異なるが、例えば、通常800℃以上、好ましくは900℃以上、また、通常2500℃以下、好ましくは1500℃以下である。加熱温度が低すぎると、一次窒化工程が完了するまでに長時間を要する傾向にあり、場合によっては窒化の進行が不完全となることがある。一方、加熱温度が高すぎると、一次窒化工程において窒化反応の制御が困難となり、窒化の進行が不均一となることがある。また、蛍光体原料用合金の融点付近の温度で加熱を行なうと、合金粉末が容器に付着したり、合金粒子が融着したりして窒素との接触効率が低下する傾向にある。なお、ここで加熱温度とは、加熱時の炉内温度を指している。
また、前記の合金の融点については、連続方式の場合の項で説明したとおりである。
加熱時間は、装置の形式や加熱温度等の他の条件によって異なるが、連続方式で行なう場合よりも長時間の加熱を要する傾向にあり、通常10分以上、好ましくは20分以上、また、通常48時間以下である。加熱時間が長すぎると、アルカリ土類金属の揮発により組成がずれる場合があり、加熱時間が短すぎると、窒化の進行が不十分となる場合にある。ここで加熱時間とは、最高温度での保持時間をさす。
また、蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度から蛍光体原料用合金の融点より10℃低い温度までの温度範囲においては、ゆっくりと昇温することが好ましい。この温度範囲における昇温速度は、通常9℃/分以下、中でも7℃/分以下とすることが好ましく、また、昇温速度の下限には特に制限はないが、生産性の観点から、通常0.1℃/分以上、中でも0.5℃/分以上とすることが好ましい。
なお、加熱開始時から蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度までの昇温条件については特に制限はなく、急速に昇温してもゆっくり昇温してもよいが、場合によっては、焼成装置の温度制御に対する応答性などを勘案して、蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度より更に低い温度から、昇温速度を9℃/分以下に減速してもよい。
(窒素含有合金)
本明細書において、窒素含有合金とは、上述の一次窒化工程終了後の合金のことを指す。
窒素含有合金は本発明の蛍光体を構成する金属元素を2種以上含有するものである。また、窒素含有合金は、金属元素以外の成分として主として窒素を含有する。窒化の程度を表す指標の一つとして、下記式[8]で求められる全金属元素含有率(重量%)を用いることができる。この全金属元素含有率が小さいほど、窒化が進んでいることを示す。
全金属元素含有率(重量%)
=100−{(一次窒化工程後の窒素含有合金の重量−一次窒化工程前の合金の重量)
/一次窒化工程後の窒素含有合金の重量}×100 [8]
窒素含有合金の全金属元素含有率(重量%)とは、窒素含有合金中に含まれる全ての金属元素の含有率である。その具体的範囲は本発明の蛍光体が得られる限り任意であるが、通常60重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは76重量%以上、また、通常97重量%以下、好ましくは95重量%以下、より好ましくは93重量%以下である。全金属元素含有率が上記範囲よりも大きくなると、一次窒化工程による効果が得られない場合がある。また、全金属元素含有率が上記範囲よりも小さくなることは理論的に考えられにくい。
また、窒素含有合金の窒化の程度は、窒素含有率(重量%)を用いて規定することもできる。窒素含有率は、例えば、酸素窒素同時分析装置(Leco社製)により窒素含有量を測定し、下記式[9]により求めることができる。
窒素含有合金の窒素含有率(重量%)
= (窒素含有量/窒素含有合金の重量)× 100 [9]
上記式[9]で求められる窒素含有率の具体的範囲は、本発明の蛍光体が得られる限り任意であるが、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、更に好ましくは5重量%以上であり、また、通常31重量%以下、好ましくは25重量%以下である。窒素含有率が小さすぎると後述の二次窒化工程における発熱の抑制が不十分となる可能性があり、大きすぎると時間、エネルギーの点で不経済となる可能性がある。
尚、上記式[9]で求められる窒素含有率が10重量%以上、好ましくは12重量%以上である窒素含有合金を蛍光体原料として用いると、後述の二次窒化工程において発熱を抑制する効果が大きく、焼成容器に充填する合金粉末の量を増やしても、高特性の蛍光体を製造できる傾向にあり、特に好ましい。
また、窒素含有合金は、さらに下記式[10]を満たすことが好ましい。
0.03≦NI/NP≦0.9 [10]
(式[10]において、
NIは、窒素含有合金の窒素含有率(重量%)を表し、
NPは、製造される蛍光体の窒素含有率(重量%)を表す。)
ここで、上記式[10]は、窒素含有合金について、後述の二次窒化工程により製造される蛍光体の窒素含有率を基準として、窒素含有合金の窒化の程度を表したものである。一次窒化工程完了後の窒素含有合金の窒素含有率は、当然ながら、蛍光体の窒素含有率よりも小さくなる。上記式[10]の値は、本発明の蛍光体が得られる限り任意であるが、通常0.03以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.15以上、また、通常0.9以下、好ましくは0.85以下である。
上記式[10]のNI/NPの値が上記範囲よりも小さいと、一次窒化工程における窒化の進行が不十分なことがあり、二次窒化工程の際の発熱速度が大きくなり、特性の高い蛍光体が得られにくくなる傾向がある。一方、上記式[10]のNI/NPの値が上記範囲よりも大きいと、窒素含有合金自体が不安定となり、取り扱いが難しくなる傾向がある。
二次窒化工程を円滑に進行させるためには、原料とする合金の反応性によって、例えば上記式[8]、[9]、[10]で表せるような窒素含有合金の窒化の進行の程度を適宜調整することが好ましい。ここで、原料とする合金の反応性は、組成や重量メジアン径D50等によって決まる。例えば、Srを含む場合や重量メジアン径D50が小さい場合は原料と窒素との反応性が高い。したがって、反応性の高い原料を用いる場合には、一次窒化工程における窒化の程度を高くしておくことが好ましく、逆に、反応性の低い原料を用いる場合には、一次窒化工程における窒化の程度を低くしておくことが好ましい。
また、粉砕工程で得られた蛍光体原料用合金からなる合金粉末の窒素に対する反応性は、該合金粉末を、窒素気流中でTG−DTA測定を行なうことにより見積もることができる。具体的には、蛍光体原料用合金の融点から100℃低い温度から1500℃までの温度範囲において、大気圧下、合金粉末と窒素とを反応させ、TG−DTA測定により合金粉末の重量を測定し、重量増加速度を求める。
この時、連続方式を用いる場合は特に問題はないが、回分方式を用いる場合は、合金粉末の重量増加速度が、通常5重量%/時以上、中でも10重量%/時以上、また、通常300重量%/時以下、中でも150重量%/時以下、特には100重量%/時以下となるように、一次窒化工程の雰囲気中の窒素濃度を選択することが好ましい(ただし、昇温速度を10℃/分としたものとする)。回分方式を用いる場合、重量増加速度が上記範囲より大きくなるような窒素濃度を選択すると、一次窒化工程において発熱が大きくなり過ぎる傾向にあり、大量に窒素含有合金を製造する際に発生した熱により合金原料が溶融あるいは分相したり、窒化物が分解したりして蛍光体の特性が低下する場合がある。一方、この重量増加速度が上記範囲より小さくなるような窒素濃度を選択すると、窒化反応が充分に進行しない等の理由により、生産性が低下したり、蛍光体の輝度が低下したりする場合がある。
また、窒素含有合金の酸素含有率は、例えば、酸素窒素同時分析装置(Leco社製)により酸素含有量を測定し、下記式[11]により求めることができる。
窒素含有合金の酸素含有率(重量%)
= (酸素含有量/窒素含有合金の重量)×100 [11]
窒素含有合金の酸素含有率(重量%)は、本発明の蛍光体が得られる限り任意であるが、通常7.5重量%以下、好ましくは5重量%以下、また、通常0.1重量%以上である。酸素含有率が高すぎると得られる蛍光体の輝度が低下する可能性がある。
上記のような窒素含有合金は、二次窒化工程によりさらに窒化することで、あるいは、窒素含有合金の合金粉末と粉砕工程で得られた合金粉末(一次窒化前の合金粉末)等とを混合し、二次窒化工程によりさらに窒化すると、本発明のアニール前蛍光体を得ることができる。また、この際、二次窒化工程における発熱速度を制御することができるため、合金を原料としたアニール前蛍光体の大量生産が可能となる。
二次窒化工程前の窒素含有合金の合金粉末の重量メジアン径D50は、合金を構成する金属元素の活性度により粒径を調整することが好ましい。本発明の蛍光体が得られる限りその具体的な範囲に制限は無いが、通常は、蛍光体原料用合金の合金粉末(一次窒化工程前の合金粉末)と同様の範囲が好ましい。
(冷却及び粉砕)
一次窒化工程を行なった場合、一次窒化工程終了後、二次窒化工程の前に、一次窒化工程で得られた窒素含有合金からなる合金粉末を一旦冷却してもよい(冷却工程)。
一次窒化工程で用いる装置と二次窒化工程で用いる装置とが異なる場合は、通常、合金粉末の温度が200℃以下になるまで冷却してから取り出して二次窒化工程で用いる装置に仕込む。また、一次窒化工程で用いる装置と二次窒化工程で用いる装置とが同一である場合においても、装置内の雰囲気の切り替えや置換等に先立ち、一旦冷却することが好ましい。冷却を行なわないと、急激な窒素分圧の変動により合金粉末の温度が急上昇して溶融したり、高温で大気と接触した際に合金粉末が変質したりする可能性がある。この場合の冷却温度は、通常、窒素含有合金の融点より100℃以上低い温度、好ましくは窒素含有合金の融点より200℃以上低い温度であり、下限には特に制限はないが、通常、室温以上である。
冷却後は、必要に応じて、粉砕及び/又は混合を行なう。粉砕後の窒素含有合金からなる合金粉末の重量メジアン径D50は、通常100μm以下であり、一次窒化工程前の合金粉末と同様であることが好ましい。
一次窒化工程後の窒素含有合金は、同じ粒径範囲の一次窒化工程前の合金粉末と比較して、より限界酸素濃度が高く、粉塵爆発し難い傾向があるため、取り扱い性及び安全性がより向上している。しかしながら、一次窒化工程後の窒素含有合金は大気中で加水分解される、あるいは酸化されて酸素が混入する可能性があるため、乾燥空気、窒素雰囲気、或いはアルゴン等の不活性ガス雰囲気中で扱うことが好ましく、窒素雰囲気で扱うことが特に好ましい。なお、不活性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
雰囲気中の酸素濃度は、通常5体積%以下、好ましくは4体積%以下、また、通常0.1ppm以上である。酸素濃度が高すぎると、酸化される可能性があるので注意を要する。
このような一次窒化工程を導入すると、後述する二次窒化工程における原料合金と窒素との反応性を制御することができる。その他の条件によっても異なるが、一次窒化工程を行わない場合と比較して、一度に製造できる蛍光体の量を1.5倍以上、好ましくは2倍以上に増やすことができる。
<二次窒化工程(窒化処理工程)>
二次窒化工程においては、蛍光体原料に対して窒化処理を施すことにより、アニール前蛍光体を得る。この際、蛍光体原料としては、一次窒化工程を経ていない蛍光体原料用合金(好ましくは、その合金粉末)を用いてもよく、一次窒化工程により得られた窒素含有合金(好ましくは、その合金粉末)を用いてもよく、両者を併用してもよい。ただし、工業的な生産性の観点から、窒素含有合金の合金粉末のみ、又は、蛍光体原料用合金の合金粉末と窒素含有合金の合金粉末との混合物に対して窒化処理を施すことが好ましい。更に、前記混合物に対して窒化処理を施す場合、当該混合物中の窒素含有合金粉末の割合が20重量%以上となるようにすることが好ましい。また、全金属元素含有率が97重量%以下の窒素含有合金であることが好ましく、特に蛍光体原料用合金の一部又は全部が、窒素含有率10重量%以上の窒素含有合金であることが好ましい。窒素含有合金の量ないしは窒素含有合金の窒素含有率が少なすぎると一次窒化工程を行なったことの利点が十分に得られない可能性があるからである。
二次窒化工程における窒化処理は、蛍光体原料を、例えばルツボ、トレイ等の焼成容器に充填して窒素含有雰囲気下で加熱することにより行なう。具体的には、以下の手順により行なう。
即ち、まず、蛍光体原料を焼成容器に充填する。ここで使用する焼成容器の材質は、本発明の効果が得られる限り任意であるが、例えば、窒化ホウ素、窒化珪素、炭素、窒化アルミニウム、タングステン等が挙げられる。中でも、窒化ホウ素が耐食性に優れることから好ましい。なお、前記の材質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、ここで使用する焼成容器の形状は、本発明の効果が得られる限り任意である。例えば、焼成容器の底面が、円形、楕円形等の角のない形や、三角形、四角形等の多角形であってもよいし、焼成容器の高さも加熱炉に入る限り任意であり、低いものでも高いものでもよい。中でも、放熱性のよい形状を選択することが好ましい。
この蛍光体原料を充填した焼成容器を、焼成装置(「加熱炉」と称する場合もある。)に納める。ここで使用する焼成装置としては、本発明の効果が得られる限り任意であるが、装置内の雰囲気を制御できる装置が好ましく、さらに圧力も制御できる装置が好ましい。例えば、熱間等方加圧装置(HIP)、抵抗加熱式真空加圧雰囲気熱処理炉等が好ましい。
また、加熱開始前に、焼成装置内に窒素を含むガスを流通して系内を十分にこの窒素含有ガスで置換することが好ましい。必要に応じて、系内を真空排気した後、窒素含有ガスを流通しても良い。
窒化処理の際に使用する窒素含有ガスとしては、窒素元素を含むガス、例えば窒素、アンモニア、或いは窒素と水素の混合気体等が挙げられる。なお、窒素含有ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。系内の酸素濃度は製造される蛍光体の酸素含有量に影響し、余り高い含有量となると高い発光が得られなくなるため、窒化処理雰囲気中の酸素濃度は、低いほど好ましく、通常0.1体積%以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下とする。また、必要に応じて、炭素、モリブデン等の酸素ゲッターを系内加熱部分に入れて、酸素濃度を低下させても良い。なお、酸素ゲッターは、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
窒化処理は、窒素含有ガスを充填した状態或いは流通させた状態で蛍光体原料を加熱することにより行なうが、その際の圧力は大気圧よりも幾分減圧、大気圧或いは加圧の何れの状態でも良い。ただし、大気中の酸素の混入を防ぐためには大気圧以上とすることが好ましい。圧力を大気圧未満にすると加熱炉の密閉性が悪い場合には多量の酸素が混入して特性の高い蛍光体を得ることができない可能性がある。窒素含有ガスの圧力は少なくともゲージ圧で0.2MPa以上が好ましく、中でも10MPa以上がより好ましく、また、200MPa以下が好ましい。
蛍光体原料の加熱温度は本発明のアニール前蛍光体が得られる限り任意であるが、通常800℃以上、好ましくは1000℃以上、更に好ましくは1200℃以上、また、通常2200℃以下、好ましくは2100℃以下、更に好ましくは2000℃以下である。加熱温度が800℃より低いと、窒化処理に要する時間が非常に長くなる可能性がある。一方、加熱温度が2200℃より高いと、生成する窒化物が揮発或いは分解し、得られる窒化物蛍光体の化学組成がずれて、特性の高いアニール前蛍光体が得られず、また、再現性も悪いものとなる可能性がある。
また、加熱温度は、合金の組成等によっても異なるが、蛍光体原料用合金の融点より通常300℃以上、中でも400℃以上、更には500℃以上、特には700℃以上高い温度であることが好ましい。なお、合金の融点については、前述の一次窒化工程の項で説明した通りである。
窒化処理時の加熱時間(最高温度での保持時間)は、蛍光体原料と窒素との反応に必要な時間で良いが、通常1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは60分以上とする。加熱時間が1分より短いと窒化反応が完了せず特性の高い蛍光体が得られない可能性がある。また、加熱時間の上限は生産効率の面から決定され、通常24時間以下である。
このように蛍光体原料に対して窒化処理することにより、窒化物又は酸窒化物を母体とする本発明のアニール前蛍光体を得ることができる。
ところで、二次窒化工程においては、一度に大量の蛍光体原料について窒化処理を行なう場合、その他の条件によっては、窒化反応が急激に進行し、本発明の蛍光体の特性を低下させる可能性がある。そこで、一度に大量の蛍光体原料の加熱処理を行いたい場合、以下のように昇温条件を調整すると、急激な窒化反応の進行をさらに抑えることができ、好ましい。
即ち、二次窒化工程において、加熱する蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から前記融点より30℃低い温度までの温度域(以下、「昇温速度を減速する温度域」と称す場合がある)の加熱を、9℃/分以下の昇温速度で行なう。このように、加熱する合金の融点より100℃低い温度から融点より30℃低い温度までの温度域で昇温速度を減速する理由は次の通りである。但し、蛍光体原料用合金に代えて窒素含有合金を用いる場合や、蛍光体原料用合金と窒素含有合金とを併用する場合であっても、前記の「加熱する蛍光体原料用合金の融点」とは、蛍光体原料用合金の融点とする。
蛍光体は、一般的に蛍光体原料をルツボ、トレイ等の焼成容器に充填し、加熱炉内で加熱することにより合成される。この際、蛍光体原料の炉内での滞留時間を短くすることで、生産性を高めることができるため、反応に必要な温度域までの昇温速度は、加熱炉の能力と坩堝等の耐熱衝撃特性が許す範囲で速いことが好ましい。
しかしながら、蛍光体原料用合金、窒素含有合金等の合金を原料として蛍光体を工業的に生産する場合においては、昇温速度が速いと、窒化時の発熱により合金粉末が溶融し、合金粒子同士が融着し、内部まで窒素ガスが侵入できず、合金粒子の内部まで窒化反応が進行しない場合がある。このため、得られる蛍光体の輝度が低下する傾向にあり、場合によっては発光しない場合もある。
焼成容器の直径が同一の場合において、合金粉末の充填量が少なければ、放熱性が高く、窒化反応時の発熱量の蓄積が少ないため、上述したような現象は生じない。しかし、蛍光体原料の充填量が多いと、放熱性が低下するため、窒化反応時の発熱を抑制することが望まれる。
一方で、蛍光体、特に窒化物蛍光体の合成は、高温高圧下で反応を行なうため、通常は高価な反応装置を使用することになる。そのため、一回あたりの蛍光体原料の充填量を増やすことがコスト低減のためには望まれる。
そこで、アニール前蛍光体の製造にあたっては、後述する特定の温度域において昇温速度を減速することが好ましい。これにより、蛍光体原料用合金、窒素含有合金等の合金を原料として蛍光体を工業的に生産する場合であっても、反応熱の蓄積による蛍光体特性の低下を避けることが可能となる。特に、蛍光体原料用合金にSrを含む場合において、蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から融点の間で、急激に窒化反応が進み、原料の重量が急激に増加することがあるが、この温度域で昇温速度を減速すると、この急激な重量増加が起こらなくなるという効果がある。
前記の昇温速度を減速する温度域は、通常、蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から該融点より30℃低い温度までの温度域であり、好ましくは蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度以上、より好ましくは該融点より200℃低い温度以上、また、好ましくは該融点以下、より好ましくは該融点より100℃以上高い温度以下までの温度域である。
ここで、蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度とは、おおよそ、窒化が開始される温度を意味する。また、該融点より30℃低い温度から該融点までの温度域では、窒化反応が急激に進行するため、昇温速度による窒化反応の進行の制御は困難であることが多い。
なお、前記の融点より100℃低い温度から融点より30℃低い温度までの温度域の温度とは、加熱処理の際の炉内温度、即ち、焼成装置の設定温度をさす。
昇温速度を減速する温度域において、昇温速度は通常9℃/分以下であり、好ましくは7℃/分以下である。これよりも速い昇温速度では、急激な反応熱の蓄積を避けることができず、高輝度の蛍光体が得られない傾向にある。また、昇温速度の下限には特に制限はないが、通常、生産性の観点から0.1℃/分以上であり、好ましくは0.5℃/分以上である。
なお、蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度より更に低い温度域における昇温条件については特に制限はなく、急速に昇温してもゆっくり昇温してもよい。また、加熱炉の温度制御の応答性などを勘案して、合金の融点より100℃低い温度より更に低い温度から、昇温速度を9℃/分以下に減速してもよい。
また、蛍光体原料用合金の融点より30℃低い温度に到達した後も加熱を続ける場合、その昇温速度に特に制限はないが、該融点より30℃低い温度から該融点までの温度域においても、通常9℃/分以下、特に7℃/分以下、また、通常0.1℃/分以上、特に0.5℃/分以上で、ゆっくり昇温することが好ましい。該融点よりも更に高い温度にまで加熱する場合にあっても、該融点からその温度までの昇温速度も、通常9℃/分以下、特に7℃/分以下、通常0.1℃/分以上、特に0.5℃/分以上であることが好ましいが、該融点より10℃高い温度から更にそれよりも高温域においては、昇温速度を減速することによる効果は特になく、この高温域の昇温速度は10℃/分以上、例えば10℃/分〜100℃/分として生産性を高めることが好ましい。
なお、蛍光体原料用合金の融点については、前述の一次窒化工程の項で説明した通りである。
以上のように蛍光体原料用合金及び/又は窒素含有合金を窒化することにより、本発明のアニール前蛍光体を製造することができる。
2−1−3.その他の付加工程
{再加熱工程}
二次窒化工程により得られたアニール前蛍光体は、必要に応じて再加熱工程を行ない、再度、加熱処理(再加熱処理)をすることにより粒子成長させても良い。これにより、粒子が成長し、蛍光体が高い発光を得ることが可能となる等、蛍光体の特性が向上する場合がある。
この再加熱工程では、一度室温まで冷却してから、再度加熱を行なってもよい。再加熱処理を行なう場合の加熱温度は、通常1200℃以上、好ましくは1300℃以上、より好ましくは1400℃以上、特に好ましくは1500℃以上であり、また、通常2200℃以下、好ましくは2100℃以下、より好ましくは2000℃以下、特に好ましくは1900℃以下である。1200℃未満で加熱すると、蛍光体粒子を成長させる効果が小さくなる傾向にある。一方、2200℃を超える温度で加熱すると、無駄な加熱エネルギーを消費してしまうだけでなく、蛍光体が分解する場合がある。また、蛍光体の分解を防止するためには雰囲気ガスの一部となる窒素の圧力を非常に高くすることになるため、製造コストが高くなる傾向にある。
アニール前蛍光体の再加熱処理時の雰囲気は、基本的には窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気又は還元性雰囲気が好ましい。なお、不活性ガス及び還元性ガスは、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、雰囲気中の酸素濃度は、通常1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下とする。酸素濃度が1000ppmを越えるような酸素含有ガス中や大気中など酸化雰囲気下で再加熱処理すると、蛍光体が酸化され、目的の蛍光体を得ることができない可能性がある。ただし、0.1ppm〜10ppmの微量酸素を含有する雰囲気とすることで比較的低温でのアニール前蛍光体の合成が可能となるので好ましい。
再加熱処理時の圧力条件は、大気中の酸素の混入を防ぐためには大気圧以上の圧力とすることが好ましい。圧力が低すぎると、前述の加熱工程と同様に焼成装置の密閉性が悪い場合には多量の酸素が混入し、特性の高い蛍光体を得ることができない可能性がある。
再加熱処理時の加熱時間(最高温度での保持時間)は、通常1分間以上、好ましくは10分間以上、より好ましくは30分間以上であり、また、通常100時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。加熱時間が短すぎると粒子成長が不十分となる傾向にある。一方、加熱時間が長すぎると、無駄な加熱エネルギーが消費される傾向にあり、また、蛍光体の表面から窒素が脱離して発光特性が低下する場合もある。
2−2.固相反応法を経るアニール前蛍光体の製造方法
この場合には、例えば、金属化合物の混合物であって、焼成することにより、例えば、前記式[4]、好ましくは前記式[5]、あるいは後述の式[12]で表される組成物を構成しうる原料混合物を、窒素を含有する不活性雰囲気中において1200℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成することにより、アニール前蛍光体を製造する。より具体的には、目的組成が得られるように蛍光体原料を秤量し、ボールミル等を用いて十分混合したのち、ルツボに充填し、所定温度、雰囲気下で焼成し、焼成物を粉砕、洗浄することにより、アニール前蛍光体を得ることができる。
この方法により、アニール前蛍光体を製造する場合、例えば、窒化ユーロピウム及び/又は酸化ユーロピウム(フッ化ユーロピウムを用いてもよい。)と、Ca、SrN、BaN、Mg、Zn等のアルカリ土類金属及びZnの窒化物と、窒化ケイ素(ケイ素を含有するイミド化合物を用いてもよい。)、窒化ゲルマニウム等の4価の金属元素の窒化物と、窒化アルミニウム、窒化ガリウム等の3価の金属元素の窒化物の他に、Si22Oの酸素源としてアルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、又は、AlとSiの複合酸化物、AlとCaの複合酸化物、SiとCaの複合酸化物、或いは、Al、Si及びCaの複合酸化物等の金属化合物の混合粉末を出発原料とするのがよい。
この方法により、特に、前記式[4]において、MがEuで、MがSrで、MがAlで、MがSiである蛍光体を合成する場合は、窒化ユーロピウム、窒化ストロンチウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム粉末の混合物を出発原料とするのがよい。
また、後述の式[12]で表される蛍光体を製造する場合は、酸化ユーロピウム、窒化ストロンチウム等のアルカリ土類金属元素の窒化物、窒化ケイ素の粉末の混合物を出発原料とするのがよい。
2−2−1.混合工程
目的組成が得られるように蛍光体原料を秤量して混合する際の混合手法としては、特に限定はされないが、具体的には、例えばハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機、又は、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕と、例えばリボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、又は、乳鉢と乳棒を用いる混合とを組み合わせ、前述の原料を粉砕混合する乾式混合法が挙げられる。
原料の混合は、窒化物原料が水分により劣化し無いように、水分管理されたNグローブボックスでミキサー混合するのが良い。混合を行う作業場の水分は10000ppm以下が良く、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは10ppm以下、更に好ましくは1ppm以下がよい。また、酸素も1%以下、好ましくは10000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下がよい。
2−2−2.焼成工程
得られた混合物を、各原料との反応性の低い材料からなるルツボ又はトレイ等の耐熱容器中に充填する。このような焼成時に用いる耐熱容器の材質としては、例えば、アルミナ、石英、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素、マグネシウム、ムライト等のセラミックス、白金、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、イリジウム、ロジウム等の金属、あるいは、それらを主成分とする合金、カーボン(グラファイト)などが挙げられる。
このような耐熱容器の例として、好ましくは窒化ホウ素製、窒化珪素製、炭化珪素製、白金製、モリブデン製、タングステン製、タンタル製の耐熱容器が挙げられ、より好ましくは窒化ホウ素製のものである。
なお、蛍光体原料を前記耐熱容器内へ充填する際の充填率(以下、「耐熱容器内充填率」と称する。)は、焼成条件によっても異なるが、後述する後処理工程において焼成物を粉砕しにくくならない程度に充填すれば良く、通常10体積%以上、通常90体積%以下である。
また、一度に処理する蛍光体原料の量を増やしたいときは、昇温速度を減速する等、耐熱容器内に熱が均一に周るようにすることが好ましい。
また、耐熱容器を炉内に充填する際の充填率(以下適宜、「炉内充填率」と称する)は、炉内の耐熱容器間で熱が不均一にならない程度につめることが好ましい。
さらに、上記焼成において、焼成炉中の耐熱容器の数が多い場合には、例えば、上記の昇温速度を遅めにする等、各耐熱容器への熱の伝わり具合を均等にすることが、ムラなく焼成するためには好ましい。
焼成に用いる炉は、焼成温度が高温であり、また焼成雰囲気が窒素を含有する不活性雰囲気であることから、金属抵抗加熱方式又は黒鉛抵抗加熱方式で、炉の高温部の材料として炭素を用いた電気炉が好適である。焼成の手法は、常圧焼結法やガス圧焼結法などの外部から機械的な加圧を施さない焼結手法が好ましい。
焼成工程については、通常、2200℃を超える焼成温度では焼成粉が焼結してしまい、発光ピーク強度が低くなる場合があるが、1700℃〜1800℃前後の焼成温度では結晶性の良好な粉体が得られる。従って、アニール前蛍光体を製造するための、焼成温度としては、通常1000℃以上、好ましくは1300℃以上、より好ましくは1500℃以上の温度であり、また、通常2000℃以下、好ましくは1900℃以下、より好ましくは1850℃以下の温度である。
焼成雰囲気としては特に制限されないが、通常、窒素を含有する不活性ガス雰囲気で行われる。なお、不活性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、不活性ガス中の酸素濃度が低い方が好ましく、酸素濃度が通常100ppm以下であることが好ましい。
また、焼成時間は、焼成時の温度や圧力等によっても異なるが、通常、0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。また、通常、100時間以下、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下、さらに好ましくは12時間以下である。
焼成時の圧力は、焼成温度等によっても異なるため特に限定されないが、通常1×10-5Pa以上、好ましくは1×10-3Pa以上、より好ましくは0.01MPa以上、さらに好ましくは0.1MPa以上であり、また、上限としては、通常5GPa以下、好ましくは1Gpa以下、より好ましくは200MPa以下、さらに好ましくは100MPa以下である。このうち、工業的には大気圧〜1MPa程度がコスト及び手間の点で簡便であり好ましい。
また、焼成工程においては、良好な結晶を成長させる観点から、反応系にフラックスを共存させてもよい。
2−2−3.一次焼成及び二次焼成
なお、焼成工程を一次焼成と二次焼成とに分割し、混合工程により得られた原料混合物をまず一次焼成した後、ボールミル等で再度粉砕してから二次焼成を行ってもよい。
ここで、一次焼成の温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、焼成中の中間窒化物の加水分解等の副反応を防ぐ目的から一次焼成の温度はあまり低すぎない方が好ましく、通常1000℃以上、好ましくは1300℃以上、また、通常1800℃以下、好ましくは1700℃以下、より好ましくは1600℃以下の範囲である。
一次焼成の時間は任意であるが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、また、通常100時間以下、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下、さらに好ましくは12時間以下である。
二次焼成の温度、時間等の条件は、基本的に上述の「2−2−2.焼成工程」の項に記載した条件と同様である。
なお、フラックスは一次焼成の前に混合してもよいし、二次焼成の前に混合してもよい。また、雰囲気等の焼成条件も一次焼成と二次焼成で変更してもよい。
焼成により得られた粉体凝集体が固く固着している場合は、例えばボールミル、ジェットミル等の工業的に通常用いられる粉砕機により粉砕する。粉砕は、粉体の重量メジアン径D50が通常0.1μm以上、好ましくは5μm以上、また通常20μm以下、好ましくは15μm以下となるように行うことが好ましい。平均粒径が20μmを超える粉体では、流動性と樹脂への分散性が悪くなり、発光光源又は励起源と組み合わせて照明器具や画像表示装置を形成する際に、部位により発光ピーク強度が不均一になる。平均粒径が0.1μm未満になるまで粉砕すると、蛍光体粉体表面の欠陥量が多くなるため、蛍光体の組成によっては発光ピーク強度が低下するかもしれない。
なお、前述の式[5]で表される組成を有する蛍光体を製造する場合は、前述の如く、アニール前蛍光体を、蛍光体を構成する金属元素を少なくとも2種類以上含有する合金、好ましくは蛍光体を構成する金属元素を全て含有する合金を作成し、得られた合金を窒素含有雰囲気中、加圧下で加熱処理することにより、製造することが好ましい。また、蛍光体を構成する金属元素の一部を含有する合金を作成し、得られた合金を窒素含有雰囲気中、加圧下で加熱処理した後、更に蛍光体を構成する残りの金属元素源となる原料化合物と混合して、加熱処理することにより、製造することもできる。このように合金を経て製造された蛍光体は、不純物が少なく、輝度が高い蛍光体となる。
2−3.後処理
本発明の蛍光体の製造方法においては、任意の時機において、上述した処理工程及び後述のアニール工程以外の処理を施しても良い。
得られた蛍光体は、特に、以下の洗浄工程を行なってからアニール前蛍光体として、後述のアニール工程に供することが好ましい。このとき、洗浄工程以外にも、必要に応じて、粉砕工程、分級工程、乾燥工程の後処理を施すとよい。また、アニール工程後に、さらに、表面処理等の後処理を施してもよい。
〈粉砕工程〉
粉砕工程では、窒化工程中の粒子成長、焼結などにより凝集している蛍光体に機械的な力を加え、粉砕する。例えば、ジェットミルなどの気流による粉砕や、ボールミル、ビーズミル等のメディアによる粉砕などの方法が使用できる。
〈分級工程〉
上記の手法により分散された蛍光体の粉末は、分級工程を行なうことにより所望の粒度分布に調整できる。分級には、例えば、バイブレーティングスクリーン、シフター等の網目を使用した篩い分け装置、エアセパレータ、水簸装置等の慣性分級装置や、サイクロン等の遠心分級機を使用することができる。
〈洗浄工程〉
洗浄工程では、蛍光体を、中性又は酸性の溶液(以下、「洗浄媒」と称する場合がある。)を用いて洗浄する。なお、洗浄工程を前述の粉砕工程後に行うと、蛍光体の特性が向上する傾向にあり、好ましい。
ここで用いる中性の溶液としては、水を用いることが好ましい。使用可能な水の種類は、特に制限はないが、脱塩水又は蒸留水が好ましい。用いる水の電気伝導度は、通常0.0064mS/m以上、また、通常1mS/m以下、好ましくは0.5mS/m以下である。また、水の温度は、通常、室温(25℃程度)が好ましいが、好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、また、好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下の温水又は熱水を用いることにより、目的とする蛍光体を得るための洗浄回数を低減することも可能である。
また、酸性の溶液としては酸性の水溶液が好ましい。酸性水溶液の種類に特に制限はないが、塩酸、硫酸などの鉱酸の1種又は2種以上を希釈した水溶液が使用できる。酸性の水溶液の酸の濃度は、通常0.1mol/l以上、好ましくは0.2mol/l以上、また、通常5mol/l以下、好ましくは2mol/l以下である。中性の水溶液ではなく、酸性の水溶液を用いると、蛍光体の溶解イオン量の低減効率の点で好ましいが、この洗浄に用いる酸性の水溶液の酸濃度が5mol/lを超えると、蛍光体表面を溶解する場合がある。一方、酸性の水溶液の酸濃度が0.1mol/l未満であると、酸を用いた効果が十分に得られない傾向にある。
但し、アニール工程により生成した表面層が酸や水により除去されてしまう可能性があるので、アニール工程後に洗浄工程を行うことは避けることが好ましい。何らかの理由により、アニール工程後に洗浄を行う必要があるときは、少量の蒸留水で洗浄するとよい。
なお、本発明においては、洗浄に用いる酸性の溶液としてフッ酸のような腐食性の強い酸は必要としない。
また、洗浄媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で行なってもよい。
蛍光体を洗浄する方法としては、特に制限はないが、具体的には、得られた蛍光体粒子を上述の中性又は酸性の溶液(洗浄媒)に入れて所定時間撹拌することにより分散させ、その後、蛍光体粒子を固液分離する方法等が挙げられる。
蛍光体を洗浄する際の撹拌手法には特に制限はなく、蛍光体粒子を均一に分散させることができればよい。例えば、チップスターラーや撹拌機等を用いることができる。
洗浄媒の量には特に制限はないが、過度に少ないと十分な洗浄効果が得られず、過度に多いと大量の洗浄媒を要し、不合理であることから、洗浄する蛍光体の重量の2重量倍以上、中でも5重量倍以上であることが好ましく、また、洗浄する蛍光体の重量の1000重量倍以下、中でも100重量倍以下であることが好ましい。
撹拌時間は、蛍光体と上述のような洗浄媒とを十分に接触させることができるような時間であれば良く、通常1分以上、また、通常1時間以下である。
洗浄媒と蛍光体粒子とを固液分離する手法には、特に制限はなく、例えば、濾過、遠心分離、デカンテーション等が挙げられる。
ただし、蛍光体粒子の洗浄方法は、上述のような、洗浄媒中で蛍光体粒子を撹拌し、分散した後の固液分離を行なう手法に限定されるものではなく、例えば、蛍光体粒子を洗浄媒の流体にさらす方法等であっても良い。
また、このような洗浄工程は複数回行なっても良い。複数回の洗浄工程を行なう場合、水による洗浄と酸性の溶液による洗浄とを組み合わせて行なっても良いが、その場合、蛍光体への酸の付着を防止するために、酸性の溶液で洗浄した後、水による洗浄を行なうようにすることが好ましい。また、水による洗浄後、酸性の溶液で洗浄し、その後、水による洗浄を行なってもよい。
また、複数回の洗浄工程を行なう場合、洗浄工程の間に前述の粉砕工程や分級工程を行なっても良い。
蛍光体の洗浄は、洗浄後の蛍光体について、次のような水分散試験を行ない、その時の上澄み液の電気伝導度が所定の値以下となるまで行なうことが好ましい。
即ち、洗浄後の蛍光体を、必要に応じて乾式ボールミル等で解砕ないし粉砕し、篩又は水簸により分級を行なって所望の重量メジアン径に整粒し、その後、当該蛍光体の10重量倍の水中で所定時間、例えば10分間撹拌して分散させた後、1時間静置することにより、水よりも比重の重い蛍光体粒子を自然沈降させる。このときの上澄み液の電気伝導度を測定し、その電気伝導度が、通常50mS/m以下、好ましくは10mS/m以下、より好ましくは5mS/m以下となるまで、必要に応じて上述の洗浄操作を繰り返す。
この蛍光体の水分散試験に用いられる水としては、特に制限はないが、上述の洗浄媒の水と同様に脱塩水又は蒸留水が好ましく、特に電気伝導度は、通常0.0064mS/m以上、また、通常1mS/m以下、好ましくは0.5mS/m以下である。また、上記蛍光体の水分散試験に用いられる水の温度は、通常、室温(25℃程度)である。
このような洗浄を行なうことにより、蛍光体の輝度をさらに向上させることができる。
なお、上記蛍光体の水分散試験における上澄み液の電気伝導度の測定は、東亜ディケーケー社製電気伝導度計「EC METER CM−30G」等を用いて行なうことができる。
上記蛍光体の水分散試験における上澄み液の電気伝導度は、蛍光体の構成成分が一部溶解した結果、イオンとなって水中に溶け出すことにより上昇する。上記上澄み液の電気伝導度が低い、ということは、蛍光体中のこの水溶性成分の含有量が少ないことを意味する。
また、洗浄工程を行なうことにより、蛍光体の酸素含有量も減少することがある。これは、酸素を含む不純物相、例えば結晶性の悪い窒化物が加水分解して生じた水酸化物が除去されるためと推察される。
例えば、アニール前蛍光体が前記式[4]で表される組成を有する場合、洗浄すると、以下のようなことが起きていると推測することができる。
(1)結晶性の悪い窒化物等が加水分解して、例えばSr(OH)などの水酸化物となり、水中に溶け出す。温水、あるいは希薄な酸で洗浄すると、これらが効率よく除去され、電気伝導度が低下する。一方で、洗浄媒の酸濃度が高過ぎたり、酸性の溶液にさらす時間が長過ぎたりすると、母体の蛍光体自体が分解する場合がある。
(2)前記の加熱工程において加熱時に使用する窒化ホウ素(BN)製ルツボから混入したホウ素が、水溶性のホウ素窒素−アルカリ土類化合物を形成して蛍光体に混入するが、上記洗浄によりこれが分解され、除去される。
洗浄による発光効率及び輝度向上の理由は完全には明らかとはされていないが、焼成直後の蛍光体を空気中に取り出したときわずかなアンモニア臭が感じられるところから、洗浄により、この未反応又は反応不十分な部分が分解して生成した部分が除去されたことによると考えられる。
〈乾燥工程〉
上記洗浄後は、蛍光体を付着水分がなくなるまで乾燥させて、使用に供するとよい。具体的な操作の例を挙げると、洗浄を終了した蛍光体スラリーを遠心分離機等で脱水し、得られた脱水ケーキを乾燥用トレイに充填すればよい。その後、100℃〜200℃の温度範囲で含水量が0.1重量%以下となるまで乾燥する。得られた乾燥ケーキを篩等に通し、軽く解砕し、蛍光体、即ち、アニール前蛍光体を得る。
〈表面処理工程〉
加熱処理後の蛍光体又はアニール前蛍光体に対して表面処理を施しても良い。表面処理としては、例えば、シリカ、アルミナ、リン酸カルシウム等の微粒子を蛍光体の表面に薄層として付着させる処理が挙げられる。これにより、蛍光体の粉体特性(凝集状態、溶液中での分散性や沈降挙動等)を改善することができる。
また、加熱処理後の後処理については、公知の蛍光体、例えば、ブラウン管、プラズマディスプレイパネル、蛍光ランプ、蛍光表示管、X線増感紙等に用いられる蛍光体に関して一般的に知られている技術を利用することができ、目的、用途等に応じて適宜選択することができる。
2−4.アニール工程
アニール工程とは、蛍光体原料を焼成する工程の後に、さらに、前記焼成工程の加熱条件よりも低い温度、好ましくは250℃以上650℃以下の温度で、アニール前蛍光体を焼成する工程をいう。
前述の後処理は、アニール工程の前に行なっても後に行なってもよいが、アニール工程に供する前に蛍光体の洗浄を行うと、蛍光体表面に存在する不純物(例えば、アモルファス層、吸着物質)を除去することができ、アニール工程における予想外の反応を抑制し、かつ、製品間のばらつきを抑えることができる。粉砕などの新しく破断面を生じさせるような処理は予めアニール工程の前に行なっておくことが好ましい。粉砕などにより蛍光体粒子の粒径を整えることは、蛍光体の発光特性、及び取り扱い性の向上のために好ましく、また、アニール工程の後に、新しく破断面を生じさせるような操作を行うと、アニール工程で形成される表面層が脱離、もしくは損傷してしまう可能性があるからである。従って、アニール工程の前に、粉砕及び洗浄を行なっておくことが好ましく、加えて、分級も行っておくことがより好ましい。なお、リン酸コートなどの表面処理を行う場合は、アニール工程の前に行なっても後に行なってもよい。
また、上記のような後処理の終了直後にアニール工程を行なわなくてもよく、ポリエチレン容器などに保管した後にアニール工程を行なうこともできる。
アニール工程の加熱条件について以下に詳述する。
アニール工程の加熱条件としては、前記表面層が生成する程度に行なえば特に制限はないが、アニール工程を、蛍光体の母体結晶の構造まで変化するような条件で行なうと、かえって、耐湿性が低下する傾向にあるので、以下のように調整することが好ましい。
アニール工程の雰囲気としては、特に制限はなく、酸素含有雰囲気であっても、不活性雰囲気であってもよいが、好ましくは、酸素含有雰囲気が好ましい。前述の複合酸化膜がより効率的に形成されると推測されるためである。酸素含有雰囲気としては、酸素濃度が通常0.1ppm以上、好ましくは10ppm以上、また、通常90体積%以下、好ましくは50体積%以下であることが好ましく、大気であることがより好ましい。また、不活性雰囲気としては、窒素、アルゴンなどが挙げられ、窒素であることが好ましい。
なお、上記の雰囲気は、流通させても密閉させてもよい。
アニール工程の圧力条件としては、特に制限はないが、通常0.01MPa以上、通常100MPa以下で、好ましくは大気圧である。圧力が高過ぎると経済性が低下する傾向にあり、低過ぎるとアニール工程の効率が低下する場合がある。
アニール工程の加熱温度(最高到達温度)としては、アニール前蛍光体の組成や、使用する雰囲気によっても異なるが、通常250℃以上、好ましくは300℃以上、より好ましくは320℃以上、さらに好ましくは370℃以上であり、また、通常650℃以下、好ましくは570℃以下、より好ましくは480℃以下、さらに好ましくは450℃以下である。
以下、アニール工程の条件の詳細について蛍光体の組成ごとに説明する。
まず、SiとSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が0.56以上の蛍光体、好ましくは、前記式[4]又は前記式[5]で表される蛍光体を製造する場合に適したアニール工程の条件の詳細について以下に説明する。
アニール工程のより好適な加熱温度(最高到達温度)としては、使用する加熱雰囲気によって異なるため、以下、雰囲気ごとに以下に説明する。
・酸素含有雰囲気でアニール処理を行う場合、加熱温度(最高到達温度)は低めに設定することが好ましく、通常250℃以上、好ましくは320℃以上、より好ましくは350℃以上、通常550℃以下、好ましくは480℃以下、より好ましくは440℃以下である。
・不活性雰囲気でアニール処理を行う場合、加熱温度(最高到達温度)は高めに設定することが好ましく、通常450℃以上、好ましくは470℃以上、通常650℃以下、好ましくは600℃以下である。
加熱温度(最高到達温度)が高過ぎると、蛍光体の母体結晶の表面に存在する酸素イオンが熱により結晶構造中に拡散することにより、蛍光体の母体結晶の構造まで変化してしまう可能性があり、また低過ぎると前述の表面層を形成し得ない場合がある。
また、加熱温度(最高到達温度)での保持時間は加熱雰囲気や加熱温度によっても異なるが、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、通常100時間以下、好ましくは48時間以下である。
加熱時間が長過ぎると、蛍光体の母体結晶の表面に存在する酸素イオンが熱により結晶構造中に拡散することにより、蛍光体の母体結晶の構造まで変化してしまう可能性があり、また短か過ぎると前述の表面層を形成し得ない場合がある。
また、加熱温度(最高到達温度)までの昇温速度については特に制限はないが、通常2℃/分以上、好ましくは4℃/分以上、通常20℃/分以下、好ましくは10℃/分以下である。この昇温速度が遅過ぎるとアニール処理に長時間を要し、処理効率が低下する。
また、加熱温度(最高到達温度)からの降温速度については特に制限はないが、通常3℃/分以上、好ましくは5℃/分以上である。この降温速度が遅過ぎるとアニール処理に長時間を要し、処理効率が低下する。
このようなアニール工程を行なうことにより、蛍光体表面に前記表面層を生成させることができ、従来と比較して蛍光体の耐久性を大幅に向上させた本発明の蛍光体を得ることができる。
アニール工程終了後、前述の後処理を行なってもよく、前記表面層の周りにさらにコーティングを行ってもよい。但し、前述したように、新しく破断面を生じさせるような処理や、酸による洗浄等によって表面層が破壊される可能性のある処理は、形成された表面層による耐久性向上効果が損なわれるので、注意を要する。
次に、後述の式[12]で表される蛍光体を製造する場合に適したアニール工程の条件の詳細について以下に説明する。
アニール工程のより好適な加熱温度(最高到達温度)としては、使用する加熱雰囲気によって異なるため、以下、雰囲気ごとに以下に説明する。
・酸素含有雰囲気でアニール処理を行う場合、加熱温度(最高到達温度)は低めに設定することが好ましく、通常250℃以上、好ましくは280℃以上、通常500℃以下、好ましくは480℃以下、さらに好ましくは450℃以下である。
・不活性雰囲気でアニール処理を行う場合、加熱温度(最高到達温度)は高めに設定することが好ましく、通常300℃以上、好ましくは350℃以上、通常600℃以下、好ましくは500℃以下である。
加熱温度(最高到達温度)が高過ぎると、蛍光体の母体結晶の表面に存在する酸素イオンが熱により結晶構造中に拡散することにより結晶構造が変化するおそれがある。
また、加熱温度(最高到達温度)での保持時間は加熱雰囲気や加熱温度によっても異なるが、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、通常100時間以下、好ましくは48時間以下である。
加熱時間が長過ぎると、蛍光体の母体結晶の表面に存在する酸素イオンが熱により結晶構造中に拡散することにより結晶構造が変化するおそれがある。
また、加熱温度(最高到達温度)までの昇温速度については特に制限はないが、通常2℃/分以上、好ましくは4℃/分以上、通常20℃/分以下、好ましくは10℃/分以下である。この昇温速度が遅過ぎるとアニール処理に長時間を要し、処理効率が低下する。
また、加熱温度(最高到達温度)からの降温速度については特に制限はないが、通常3℃/分以上、好ましくは5℃/分以上である。この降温速度が遅過ぎるとアニール処理に長時間を要し、処理効率が低下する。
このようなアニール工程を行なうことにより、従来と比較して蛍光体の耐久性を大幅に向上させることができる。
アニール工程終了後、前述の後処理を行なってもよく、前記表面層の周りにさらにコーティングを行ってもよい。
2−5.適用可能な蛍光体
前述の本発明の蛍光体の製造方法において、アニール工程に供される蛍光体粒子(以下、適宜「蛍光体」と称することがある。)は、特に限定は無いが、発光特性が優れているが耐湿性が低い蛍光体粒子、酸素の暴露により劣化しやすい蛍光体粒子、イオンの溶出が起こりやすい蛍光体粒子、電気分解により劣化しやすい蛍光体粒子、臭気のある蛍光体粒子等は、本発明の製造方法の適用により、発光装置等に好ましく利用することができるようになるので好適である。
即ち、本発明に係るアニール工程によりガスバリア性が担保され、水蒸気、酸素、臭気原因物質がブロックされる。また、蛍光体由来のイオンの溶出によるパッケージ、封止材などの周辺部材の劣化が抑制される。また、漏れ電流による蛍光体の劣化を抑制することができる。
<好ましい蛍光体粒子>
本発明に係る表面層形成処理の対象として好ましい蛍光体としては、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体が挙げられる。窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体の中でも、アルカリ土類金属元素とSiとを含むものが好ましい。このような蛍光体は、表面層を形成しないと不安定なアルカリ土類金属が、Siで構成されるアニオン骨格で保護されずに水分子に攻撃されてアルカリ土類金属の水和物をつくり、結晶構造が破壊されてしまうことがあるからである。
母体にアルカリ土類金属元素とSiとを含む無機蛍光体としては、例えば母体結晶としてMAlSiN、MSi、及びMSiよりなる群(ただし、Mは、Ca、Sr、及びBaからなる群から選ばれる1種、又は2種以上を表す)から選ばれる少なくとも一つを含有し、かつ付活元素としてMn、Bi、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる少なくとも一つを含有する蛍光体が挙げられる。
上記蛍光体の具体例としては、例えば、CaAlSiN:Eu、SrAlSiN:Eu、(Ca1-aSr)AlSiN:Eu、CaAlSiN:Ce、SrAlSiN:Ce、(Ca1-aSr)AlSiN:Ce、CaSi:Eu、SrSi:Eu、BaSi:Eu、(Ca1-aSr)Si:Eu、CaSi:Ce、SrSi:Ce、BaSi:Ce、(Ca1-aSr)Si:Ce、CaSi:Eu、SrSi:Eu、BaSi:Eu、CaSi:Ce、SrSi:Ce、BaSi:Ce、BaSi:Eu(以上に関し、aは0≦a≦1を満たす。)が、挙げられる。
また、本発明の製造方法は、酸窒化物よりも窒化物を母体とする蛍光体に好適に用いることができる。即ち、N(窒素)を必須とし、かつ、O(酸素)とN(窒素)との合計に対するN(窒素)の割合(モル比)が、通常0.6以上、好ましくは0.8以上、また、理論的には通常1以下である蛍光体に好適に用いることができる。これは窒化物を母体とする蛍光体の方がより劣化しやすいためである。
本発明の製造方法は、上記に例示した蛍光体の中でも、2価の金属元素としてSrを含む蛍光体に用いると好ましい効果が得られる。中でも、Siに対する、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が大きい場合に特に好ましい効果が得られ、具体的には、Siに対する、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、通常0.35以上、好ましくは0.56以上、より好ましくは0.8以上、また、通常1.2以下、好ましくは1.1以下の蛍光体に本発明の製造方法を用いるとよい。
Siと、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素を含有する蛍光体は、2価の金属元素としてSrを含有させると、高温下(例えば、100℃〜150℃)での発光ピーク強度維持率(温度特性)を向上させることができたり、発光ピーク波長を調整することができたりするが、Srは、Caと比較してイオン半径が大きいことから、前述のアニオン骨格で包み込むことが難しくなり、その分、大気中の水分子、つまり、水蒸気と接触しやすくなる。さらに、Caと比較して、水に対して不安定な元素であるため、従来公知のSrを含有する蛍光体は、耐久性の点で問題があった。これに対し、本発明の製造方法を適用すれば、耐久性が低いという問題点を克服することができ、SiとSrとを含有する蛍光体を実用化に耐えうるものとすることができる。
なお、Caは、Srよりもイオン半径が小さいことから、Caイオンがアニオン骨格から露出しにくく、周囲の水分子との接触が起こりにくいため、Srを含む蛍光体のように耐久性が低いという問題は生じにくいので、製造工程を増やして表面層を形成するメリットは小さくなる傾向にある。SiとCaとを含有する蛍光体についても、本発明の製造方法を適用してアニール工程を行なっても構わないが、アニール工程により得られる効果はSrを含む蛍光体の場合と比較して小さくなる傾向にある。また、Baは、Srよりもイオン半径が大きく、SrよりもBaイオンの方がアニオン骨格から露出しやすく、水分子と接触しやすい状態にある。そのため、本発明の製造方法によれば、耐久性向上効果は得られるものの、Srと比較すると、本発明の製造方法により製造したものであっても耐水性の点で問題がある。
以上のように、本発明の製造方法は、SrとSiとを含有する窒化物を母体とする蛍光体に用いると好適である。このような蛍光体として具体的には、前記式[4]で表される蛍光体、前記式[5]で表される蛍光体や、下記式[12]で表される蛍光体が挙げられる。本発明の製造方法は、このような蛍光体の製造に用いると、耐久性向上効果に優れる製造方法となる。
(J1−kEuSi [12]
(但し、Jは、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素である。kは、0.01≦k≦0.3を満たす数である。)
上記に例示した中でも、Siに対する、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素のモル比が、通常0.56以上、好ましくは0.8以上、また、通常1.2以下である蛍光体を製造する場合に、本発明の製造方法をより効果的に用いることができる。Siとアルカリ土類金属元素とを含有する蛍光体は、Si(O,N)四面体が頂点共有して形成したアニオン骨格が、不安定なアルカリ土類金属元素を包み込むような結晶構造をとっている。そのため、Siに対するアルカリ土類金属元素の比が大きい蛍光体の方が、包み込むことがより難しく、不安定なアルカリ土類金属元素と大気中の水分子、あるいは水蒸気と反応しやすくなり、耐久性が低くなる傾向にある。本発明の製造方法は、このような耐久性の低い蛍光体の耐久性を向上させることができるものである。
従って、本発明の製造方法は、前記式[12]で表される蛍光体よりも、Siに対するSrを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の比が大きい前記式[4]で表される蛍光体や、前記式[5]で表される蛍光体に好適に用いることができる。
3.蛍光体含有組成物
本発明の蛍光体は、液体媒体と混合して用いることもできる。特に、本発明の蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体中に分散させた形態で用いることが好ましい。本発明の蛍光体を液体媒体中に分散させたものを、適宜「本発明の蛍光体含有組成物」と呼ぶものとする。
3−1.蛍光体
本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体の種類に制限は無く、上述したものから任意に選択することができる。また、本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本
発明の蛍光体は、1種のみであってもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、本発明の蛍光体以外の蛍光体を含有させてもよい。
3−2.液体媒体
本発明の蛍光体含有組成物に使用される液体媒体としては、該蛍光体の性能を目的の範囲で損なわない限りにおいて特に限定されない。例えば、所望の使用条件下において液状
の性質を示し、本発明の蛍光体を好適に分散させるとともに、好ましくない反応を生じないものであれば、任意の無機系材料及び/又は有機系材料が使用できる。
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、又はこれらを組み合わせた無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
有機系材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体例を挙げると、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
これらの中で特に照明など大出力の発光装置に蛍光体を用いる場合には、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用することが好ましい。
珪素含有化合物とは、分子中に珪素原子を有する化合物をいい、例えば、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、ハンドリングの容易さ等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
上記シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば下記式(i)で表される化合物及び/又はそれらの混合物が挙げられる。
(RSiO1/2(RSiO2/2
(RSiO3/2(SiO4/2 (i)
上記式(i)において、RからRは同じであっても異なってもよく、有機官能基、水酸基、水素原子からなる群から選択される。
また、上記式(i)において、M、D、T及びQは、各々0以上1未満の数であり、且つ、M+D+T+Q=1を満足する数である。
該シリコーン系材料は、半導体発光素子の封止に用いる場合、液状のシリコーン系材料を用いて封止した後、熱や光によって硬化させて用いることができる。
シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン系材料)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン系材料)、紫外線硬化タイプが好適である。以下、付加型シリコーン系材料、及び縮合型シリコーン系材料について説明する。
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランとをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られるSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。これらは市販のものを使用することができ、例えば付加重合硬化タイプの具体的商品名としては信越化学工業社製「LPS−1400」「LPS−2410」「LPS−3400」等が挙げられる。
一方、縮合型シリコーン系材料とは、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。
具体的には、下記一般式(ii)及び/又は(iii)で表わされる化合物、及び/又はそ
のオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
m−n (ii)
(式(ii)中、Qは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表し、Xは、加水分解性基を表し、Yは、1価の有機基を表し、mは、Qの価数を表す1以上の整数を表し、nは、X基の数を表す1以上の整数を表す。但し、m≧nである。)
(Q s−t−1Y’ (iii)
(式(iii)中、Qは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表し、Xは、加水分解性基を表し、Yは、1価の有機基を表し、Y’は、u価の有機基を表し、sは、Qの価数を表す1以上の整数を表し、tは、1以上、s−1以下の整数を表し、uは、2以上の整数を表す。)
また、縮合型シリコーン系材料には、硬化触媒を含有させてもよい。この硬化触媒としては、例えば、金属キレート化合物などを好適なものとして用いることができる。金属キレート化合物は、Ti、Ta、Zrの何れか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものが更に好ましい。なお、硬化触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
このような縮合型シリコーン系材料としては、例えば特願2006−47274号〜47277号明細書(例えば特開2007−112973号〜112975号公報、特開2007−19459号公報)及び特願2006−176468号明細書に記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
縮合型シリコーン系材料の中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
シリコーン系材料は、一般に半導体発光素子や素子を配置する基板及びパッケージ等との接着性が弱いことが課題とされるが、密着性が高いシリコーン系材料として、特に、以下の特徴〔1〕〜〔3〕のうち1つ以上を有する縮合型シリコーン系材料が好ましい。
〔1〕ケイ素含有率が20重量%以上である。
〔2〕後に詳述する方法によって測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
〔3〕シラノール含有率が0.1重量%以上、10重量%以下である。
本発明においては、上記の特徴〔1〕〜〔3〕のうち、特徴〔1〕を有するシリコーン系材料が好ましく、上記の特徴〔1〕及び〔2〕を有するシリコーン系材料がより好ましく、上記の特徴〔1〕〜〔3〕を全て有するシリコーン系材料が特に好ましい。
以下、上記の特徴〔1〕〜〔3〕について説明する。
<特徴〔1〕(ケイ素含有率)>
従来のシリコーン系材料の基本骨格は炭素−炭素及び炭素−酸素結合を基本骨格としたエポキシ樹脂等の有機樹脂であるが、これに対し本発明に好適なシリコーン系材料の基本骨格はガラス(ケイ酸塩ガラス)などと同じ無機質のシロキサン結合である。このシロキサン結合は、下記表1の化学結合の比較表からも明らかなように、シリコーン系材料として優れた以下の特徴がある。
(I)結合エネルギーが大きく、熱分解・光分解し難いため、耐光性が良好である。
(II)電気的に若干分極している。
(III)鎖状構造の自由度は大きく、フレキシブル性に富む構造が可能であり、シロキサン鎖中心に自由回転可能である。
(IV)酸化度が大きく、これ以上酸化されない。
(V)電気絶縁性に富む。
Figure 2009132916
これらの特徴から、シロキサン結合が3次元的に、しかも高架橋度で結合した骨格で形成されるシリコーン系のシリコーン系材料は、ガラス或いは岩石などの無機質に近く、耐熱性・耐光性に富む保護皮膜となることが理解できる。特にメチル基を置換基とするシリコーン系材料は、紫外領域に吸収を持たないため光分解が起こり難く、耐光性に優れる。
本発明に好適なシリコーン系材料のケイ素含有率は、通常20重量%以上であるが、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、
SiO2のみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常4
7重量%以下の範囲である。
なお、シリコーン系材料のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する。)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。
{ケイ素含有率の測定}
シリコーン系材料を白金ルツボ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
<特徴〔2〕(固体Si−NMRスペクトル)>
本発明に好適なシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来する前記(a)及び/又は(b)のピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
ケミカルシフト毎に整理すると、本発明に好適なシリコーン系材料において、(a)に記載のピークの半値幅は、分子運動の拘束が小さいために、全般に後述の(b)に記載のピークの場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
一方、(b)に記載のピークの半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が大き過ぎると、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生し易く、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行ない大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなる。
また、ピークの半値幅が小さ過ぎると、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。
但し、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれるシリコーン系材料においては、−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得られない場合がある。
本発明に好適なシリコーン系材料のケミカルシフトの値は、例えば以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
{固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出}
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。また、全ピーク面積に
対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することによりシラノール含有率を求める。
{装置条件}
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX−400核磁気共鳴
分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
1Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
繰り返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
基準試料:テトラメトキシシラン
シリコーン系材料については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
{波形分離解析法}
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
なお、ピークの同定は、AIChE Journal,44(5),p.1141,1998年等を参考にする。
<特徴〔3〕(シラノール含有率)>
本発明に好適なシリコーン系材料は、シラノール含有率が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である。シラノール含有率を低くすることにより、シラノール系材料は経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
なお、シリコーン系材料のシラノール含有率は、例えば上記<特徴〔2〕(固体Si−NMRスペクトル)>の{固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出}の項において説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行ない、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、適当量のシラノールを含有しているため、通常は、デバイス表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、通常、適当な触媒の存在下で加熱することにより、デバイス表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、更に強固な密
着性を発現することができる。
一方、シラノールが多過ぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する場合がある。
3−3.液体媒体及び蛍光体の含有率
本発明の蛍光体含有組成物中の蛍光体及び液体媒体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、液体媒体については、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは75重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。また、蛍光体については、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは25重量%以下である。液体媒体の量が多い場合には特段の問題は起こらないが、半導体発光装置とした場合に所望の色度座標、演色指数、発光効率等を得るには、通常、上記のような配合比率で液体媒体及び蛍光体を用いることが望ましい。一方、液体媒体が少な過ぎると流動性がなく取り扱い難くなる可能性がある。
液体媒体は、本発明の蛍光体含有組成物において、主にバインダーとしての役割を有する。液体媒体は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。例えば、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用する場合は、当該珪素含有化合物の耐久性を損なわない程度に、エポキシ樹脂など他の熱硬化性樹脂を含有してもよい。この場合、他の熱硬化性樹脂の含有量は、バインダーである液体媒体全量に対して通常25重量%以下、好ましくは10重量%以下とすることが望ましい。
3−4.その他の成分
なお、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、蛍光体及び液体媒体以外に、その他の成分を含有させてもよい。また、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
4.発光装置
本発明の発光装置(以下、適宜「発光装置」という)は、第1の発光体(励起光源)と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを有する発光装置であって、該第2の発光体として本発明の蛍光体の1種以上を、第1の蛍光体として含有するものである。ここで、本発明の蛍光体は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の蛍光体としては、例えば、励起光源からの光の照射下において、黄色ないし赤色領域の蛍光を発する蛍光体を使用する。具体的には、発光装置を構成する場合、本発明の黄色蛍光体としては、530nm〜620nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましく、本発明の橙色ないし赤色蛍光体としては、580nm〜680nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましい。
この場合、本発明の発光装置は、例えば、次の(A)又は(B)の態様とすることができる。
(A) 第1の発光体として、420nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用い、第2の発光体の第2の蛍光体として、500nm以上580nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体を用いる。
(B) 第1の発光体として、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用い、第2の発光体の第2の蛍光体として、420nm以上470nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、500nm以上580nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを用いる。
本発明の蛍光体を使用することにより、本発明の発光装置は、紫外から青色領域までの発光を有する励起光源(第1の発光体)に対して高い発光効率、及び高い耐久性を示し、更には、照明装置、液晶ディスプレイ用光源等の白色発光装置に使用した場合に優れた発光装置となる。
また、本発明の発光装置に用いられる本発明の蛍光体の好ましい具体例としては、前述の本発明の蛍光体の項で例示した本発明の蛍光体や、後述の[実施例]の欄の各実施例に用いた蛍光体が挙げられる。
本発明の発光装置は、第1の発光体(励起光源)を有し、且つ、第2の発光体として少なくとも本発明の蛍光体を使用している他は、その構成は制限されず、公知の装置構成を任意にとることが可能である。装置構成の具体例については後述する。
本発明の発光装置の発光スペクトルにおける黄色領域の発光ピークとしては、530nm〜620nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましく、橙色ないし赤色領域の発光ピークとしては、580nm〜680nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましい。
なお、発光装置の発光スペクトルは、気温25±1℃に保たれた室内において、オーシャン オプティクス社製の色・照度測定ソフトウェア及びUSB2000シリーズ分光器(積分球仕様)を用いて20mA通電して測定を行なうことができる。この発光スペクトルの380nm〜780nmの波長領域のデータから、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標として色度値(x,y,z)を算出できる。この場合、x+y+z=1の関係式が成立する。本明細書においては、前記XYZ表色系をXY表色系と称している場合があり、通常(x,y)で表記している。
また、発光効率は、前述のような発光装置を用いた発光スペクトル測定の結果から全光束を求め、そのルーメン(lm)値を消費電力(W)で割ることにより求められる。消費電力は、20mAを通電した状態で、Fluke社のTrue RMS Multimeters Model 187&189を用いて電圧を測定し、電流値と電圧値の積で求められる。
本発明の発光装置のうち、特に白色発光装置として、具体的には、第1の発光体として後述するような励起光源を用い、上述のような本発明の蛍光体の他、後述するような赤色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「赤色蛍光体」という)、青色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「青色蛍光体」という)、緑色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「緑色蛍光体」という)、黄色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「黄色蛍光体」という)等の公知の蛍光体を任意に組み合わせて使用し、公知の装置構成をとることにより得られる。
ここで、該白色発光装置の白色とは、JIS Z 8701により規定された、(黄みの)白、(緑みの)白、(青みの)白、(紫みの)白及び白の全てを含む意であり、このうち好ましくは白である。
4−1.発光装置の構成(発光体)
<第1の発光体>
本発明の発光装置における第1の発光体は、後述する第2の発光体を励起する光を発光するものである。
第1の発光体の発光波長は、後述する第2の発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができる。通常は、紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用され、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体を使用することが特に好ましい。
第1の発光体の発光ピーク波長の具体的数値としては、通常200nm以上が望ましい。このうち、近紫外光を励起光として用いる場合には、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、より好ましくは360nm以上、また、通常420nm以下の発光ピーク波長を有する発光体を使用することが望ましい。また、青色光を励起光として用いる場合には、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下の発光ピーク波長を有する発光体を使用することが望ましい。何れも、発光装置の色純度の観点からである。
第1の発光体としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光LEDや半導体レーザーダイオード(semiconductor laser diode。以下、適宜「LD」と略称する。)等が使用できる。その他、第1の発光体として使用できる発光体としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス発光素子、無機エレクトロルミネッセンス発光素子等が挙げられる。但し、第1の発光体として使用できるものは本明細書に例示されるものに限られない。
中でも、第1の発光体としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、本発明の蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光ピーク強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlGaN発光層、GaN発光層又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でもInGaN発光層を有するものは発光ピーク強度が非常に強いので特に好ましく、GaN系LEDにおいては、InGaN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光ピーク強度は非常に強いので特に好ましい。
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高くて好ましく、更にヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率が更に高いため、より好ましい。
なお、第1の発光体は、1個のみを用いてもよく、2個以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<第2の発光体>
本発明の発光装置における第2の発光体は、上述した第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する発光体であり、第1の蛍光体として前述の本発明の蛍光体を含有するとともに、その用途等に応じて適宜、後述する第2の蛍光体(赤色蛍光体、青色蛍光体、緑色蛍光体、橙色蛍光体、黄色蛍光体等)を含有する。ここで、本発明の蛍光体としては、「1−1.蛍光体の物性」の項に記載した本発明の蛍光体特有の性質を満足すればよく、発光色については特に制限はない。また、例えば、第2の発光体は、第1及び第2の蛍光体を封止材料中に分散させて構成される。
上記第2の発光体中に用いられる、本発明の蛍光体以外の蛍光体の組成には特に制限はないが、その例を挙げると、結晶母体となる、Y、YVO、ZnSiO、YAl12、SrSiO等に代表される金属酸化物、SrSi等に代表される金属窒化物、Ca(PO)Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物、YS、LaS等に代表される酸硫化物等にCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが挙げられる。
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa、SrS、ZnS等の硫化物;YS等の酸硫化物;(Y,Gd)Al12、YAlO、BaMgAl1017、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al1017、BaAl1219、CeMgAl1119、(Ba,Sr,Mg)O・Al、BaAlSi、SrAl、SrAl1425、YAl12等のアルミン酸塩;YSiO、ZnSiO等の珪酸塩;SnO、Y等の酸化物;GdMgB10、(Y,Gd)BO等の硼酸塩;Ca10(PO)(F,Cl)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO)Cl等のハロリン酸塩;Sr、(La,Ce)PO等のリン酸塩等を挙げることができる。
但し、上記の結晶母体及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、前述の通り、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。
(第1の蛍光体)
本発明の発光装置における第2の発光体は、第1の蛍光体として、少なくとも上述の本発明の蛍光体を含有する。本発明の蛍光体は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体としては、本発明の蛍光体以外にも、本発明の蛍光体と同色の蛍光を発する蛍光体(同色併用蛍光体)を用いてもよい。例えば、本発明の蛍光体が橙色蛍光体である場合、第1の蛍光体として、本発明の蛍光体と共に他種の橙色蛍光体を併用することができる。
(第2の蛍光体)
本発明の発光装置における第2の発光体は、その用途に応じて、上述の第1の蛍光体以外にも蛍光体(即ち、第2の蛍光体)を1種以上含有していてもよい。この第2の蛍光体は、第1の蛍光体とは発光ピーク波長が異なる蛍光体である。通常、これらの第2の蛍光体は、第2の発光体の発光の色調を調節するために使用されるため、第2の蛍光体としては第1の蛍光体とは異なる色の蛍光を発する蛍光体を使用することが多い。
例えば、第1の蛍光体が緑色蛍光体である場合、第2の蛍光体としては、例えば橙色ないし赤色蛍光体、青色蛍光体、黄色蛍光体等の緑色蛍光体以外の蛍光体が用いられる。
また、第1の蛍光体が青色蛍光体である場合、第2の蛍光体としては、例えば橙色ないし赤色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体等の青色蛍光体以外の蛍光体が用いられる。
また、第1の蛍光体が黄色蛍光体である場合、第2の蛍光体としては、例えば橙色ないし赤色蛍光体、青色蛍光体、緑色蛍光体等の黄色蛍光体以外の蛍光体が用いられる。
また、第1の蛍光体が橙色ないし赤色蛍光体である場合、第2の蛍光体としては、例えば青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体等の橙色ないし赤色蛍光体以外の蛍光体が用いられる。
本発明の発光装置に使用される第2の蛍光体の重量メジアン径は、通常10μm以上、中でも12μm以上、また、通常30μm以下、中でも25μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
〈橙色ないし赤色蛍光体〉
第2の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体を使用する場合、当該橙色ないし赤色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
このような橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表されるユーロピウム賦活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)S:Euで表されるユーロピウム賦活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
更に、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種類の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本発明において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O:Eu、Y:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Mg)SiO:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW:Eu、LiW:Eu,Sm、Eu、Eu:Nb、Eu:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Eu、LiY(SiO:Eu、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、SrBaSiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)Al12:Ce、(Tb,Gd)Al12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu等のEu付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ce等のCe付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、BaMgSi:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)(Zn,Mg)Si:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La):Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn):Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)WO:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)Si:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数を表す。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1−x−yScCe(Ca,Mg)1−r(Mg,Zn)2+rSiz−qGe12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等を用いることも可能である。
以上の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)S:Eu又はEu錯体を含むことが好ましく、より好ましくは(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu又は(La,Y)S:Eu、もしくはEu(ジベンゾイルメタン)・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体又はカルボン酸系Eu錯体を含むことが好ましく、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Sr,Ca)AlSiN:Eu又は(La,Y)S:Euが特に好ましい。
また、以上例示の中でも、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)SiO:Euが好ましい。
以上例示した橙色ないし赤色蛍光体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<緑色蛍光体>
第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合、当該緑色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nm以上、中でも510nm以上、更には515nm以上、また、通常580nm以下、中でも542nm以下、更には535nm以下の範囲であることが好ましい。
緑色蛍光体の具体例としては、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体等が挙げられる。
また、その他の緑色蛍光体としては、SrAl1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)AlSi:Eu、(Ba,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)(Sc,Y,Lu,Gd)(Si,Ge)24:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、YSiO:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr−Sr:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi−2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、ZnSiO:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、YAl12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Tb、LaGaSiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)(Al,Ga)12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、CaScSi12:Ce、Ca(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO:Ce,Tb、NaGd:Ce,Tb、(Ba,Sr)(Ca,Mg,Zn)B:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、CaMg(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、MSi:Eu、MSi12:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表す。)等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
以上例示した緑色蛍光体は、いずれか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<青色蛍光体>
第2の蛍光体として青色蛍光体を使用する場合、当該青色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常490nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下、更に好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成
長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Euで表されるユーロピウム賦活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)(PO(Cl,F):Euで表されるユウロピウム賦活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)Cl:Euで表されるユウロピウム賦活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Euで表されるユウロピウム賦活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm、BaAl13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa:Ce、CaGa:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu、(Ba,Sr,Ca)(PO(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAlSi:Eu、(Sr,Ba)MgSi:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、YSiO:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO・nB:Eu、2SrO・0.84P・0.16B:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi・2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、SrSiAl19ON31:Eu、EuSiAl19ON31等のEu付活酸窒化物蛍光体、La1−xCeAl(Si6−zAl)(N10−z)(ここで、x、及びyは、それぞれ0≦x≦1、0≦z≦6を満たす数である。)、La1−x−yCeCaAl(Si6−zAl)(N10−z)(ここで、x、y、及びzは、それぞれ、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦6を満たす数である。)等のCe付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラリゾン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
以上の例示の中でも、青色蛍光体としては、(Ca、Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu又は(Ba,Ca,Mg,Sr)SiO:Euを含むことが好ましく、(Ca、Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu又は(Ba,Ca,Sr)MgSi:Euを含むことがより好ましく、BaMgAl1017:Eu、Sr10(PO(Cl,F):Eu又はBaMgSi:Euを含むことがより好ましい。また、このうち照明用途及びディスプレイ用途としては(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu又は(Ca、Sr,Ba)MgAl1017:Euが特に好ましい。
以上例示した青色蛍光体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<黄色蛍光体>
第2の蛍光体として黄色蛍光体を使用する場合、当該黄色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、
酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
特に、RE12:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)やM 12:Ce(ここで、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素を表す。)等で表されるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Si、及び/又はGeを表す。)等で表されるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)等のCaAlSiN構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体等が挙げられる。
また、その他、黄色蛍光体としては、CaGa:Eu、(Ca,Sr)Ga:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al):Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体、(M1−A−AEuMn(BO1−P(POX(但し、Mは、Ca、Sr、及びBaからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、Xは、F、Cl、及びBrからなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。A、B、及びPは、各々、0.001≦A≦0.3、0≦B≦0.3、0≦P≦0.2を満たす数を表す。)等のEu付活又はEu,Mn共付活ハロゲン化ホウ酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
また、黄色蛍光体としては、例えば、brilliant sulfoflavine FF(Colour Index Number 56205)、basic yellow HG(Colour Index Number 46040)、eosine(Colour Index Number 45380)、rhodamine 6G(Colour Index Number 45160)等の蛍光染料等を用いることも可能である。
以上例示した黄色蛍光体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<第2の蛍光体の選択>
上記第2の蛍光体としては、1種類の蛍光体を単独で使用してもよく、2種以上の蛍光体を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体と第2の蛍光体との比率も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。従って、第2の蛍光体の使用量、並びに、第2の蛍光体として用いる蛍光体の組み合わせ及びその比率等は、発光装置の用途等に応じて任意に設定すればよい。
本発明の発光装置において、以上説明した第2の蛍光体(橙色ないし赤色蛍光体、黄色蛍光体、青色蛍光体、緑色蛍光体等)の使用の有無及びその種類は、発光装置の用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、本発明の蛍光体が赤色蛍光体であって、本発明の発光装置を赤色発光の発光装置として構成する場合には、第1の蛍光体(本発明の赤色蛍光体)のみを使用すればよく、第2の蛍光体の使用は通常は不要である。
一方、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合には、所望の白色光が得られるように、第1の発光体と、第1の蛍光体(本発明の蛍光体)と、第2の蛍光体を適切に組み合わせればよい。具体的に、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合における、第1の発光体と、第1の蛍光体と、第2の蛍光体との好ましい組み合わせの例としては、例えば、第1の蛍光体(本発明の蛍光体)が橙色ないし赤色発光である場合、以下の(i)〜(iii)の組み合わせが挙げられる。
なお、本発明の蛍光体が橙色ないし赤色発光である場合、その組成は、特に制限はないが、(Sr,Ca)AlSi(N,O):Eu、及び(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Euからなる群から選ばれるものであることが好ましい。
(i)第1の発光体として青色発光体(青色LED等)を使用し、第1の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する。この場合、緑色蛍光体としては、(Ba,Sr)Si12:Eu、(Ba,Sr)SiO:Eu、CaScSi12:Ce、CaSc:Ce、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiOCl:Eu、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Eu、及びβ−(Si,Al)12(O,N)16:Euからなる群より選ばれる1種又は2種以上の緑色蛍光体が好ましい。
(ii)第1の発光体として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、第1の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として青色蛍光体及び緑色蛍光体を併用する。この場合、青色蛍光体としては、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu及び(Mg,Ca,Sr,Ba)5(PO43(Cl,F):Euからなる群より選ばれる1種又は2種以上の青色蛍光体が好ましい。緑色蛍光体としては、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu,Mn、β−(Si,Al)12(O,N)16:Eu、(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu、及び(Ba,Sr)Si12:Euからなる群より選ばれる1種又は2種以上の緑色蛍光体が好ましい。また、橙色ないし赤色蛍光体(本発明の蛍光体等)としては、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu及びLa22S:Euからなる群より選ばれる1種又は2種以上の橙色ないし赤色蛍光体が好ましい。中でも、近紫外LEDと、青色蛍光体としてBaMgAl1017:Euと、緑色蛍光体として(Ba,Sr)SiO:Eu、β−(Si,Al)12(O,N)16:Eu、又は(Ba,Sr)Si12:Euと、赤色蛍光体として(Sr,Ca)AlSiN3:Euとを組み合わせて用いることが好ましい。
(iii)第1の発光体として青色発光体(青色LED等)を使用し、第1の蛍光体として橙色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する。この場合、緑色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu、CaScSi12:Ce、β−(Si,Al)12(O,N)16:Eu、及び(Ba,Sr)Si12:Euからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
また、本発明の蛍光体は、他の蛍光体と混合(ここで、混合とは、必ずしも蛍光体同士が混ざり合っている必要はなく、異種の蛍光体が組み合わされていることを意味する。)して用いることができる。特に、上記に記載の組み合わせで蛍光体を混合すると、好ましい蛍光体混合物が得られる。なお、混合する蛍光体の種類やその割合に特に制限はない。
<封止材料>
本発明の発光装置において、上記第1及び/又は第2の蛍光体は、通常、封止材料である液体媒体に分散させて用いられる。
該液体媒体としては、前述の「3.蛍光体含有組成物」の項で記載したのと同様のものが挙げられる。
また、該液体媒体は、封止部材の屈折率を調整するために、高い屈折率を有する金属酸化物となり得る金属元素を含有させることができる。高い屈折率を有する金属酸化物を与える金属元素の例としては、Si、Al、Zr、Ti、Y、Nb、B等が挙げられる。これらの金属元素は単独で使用されてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で併用されてもよい。
このような金属元素の存在形態は、封止部材の透明度を損なわなければ特に限定されず、例えば、メタロキサン結合として均一なガラス層を形成していてもよく、封止部材中に粒子状で存在していてもよい。粒子状で存在している場合、その粒子内部の構造はアモルファス状であっても結晶構造であってもよいが、高屈折率を与えるためには結晶構造であることが好ましい。また、その粒子径は、封止部材の透明度を損なわないために、通常は、半導体発光素子の発光波長以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。例えばシリコーン系材料に、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ニオブ等の粒子を混合することにより、上記の金属元素を封止部材中に粒子状で存在させることができる。
また、上記液体媒体としては、更に、拡散剤、フィラー、粘度調整剤、紫外線吸収剤等公知の添加剤を含有していてもよい。
なお、これらの添加剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
4−2.発光装置の構成(その他)
本発明の発光装置は、上述の第1の発光体及び第2の発光体を備えていれば、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の第1の発光体及び第2の発光体を配置してなる。この際、第1の発光体の発光によって第2の発光体が励起されて(即ち、第1及び第2の蛍光体が励起されて)発光を生じ、且つ、この第1の発光体の発光及び/又は第2の発光体の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。この場合、第1の蛍光体と第2の蛍光体とは必ずしも同一の層中に混合されなくてもよく、例えば、第1の蛍光体を含有する層の上に第2の蛍光体を含有する層が積層する等、蛍光体の発色毎に別々の層に蛍光体を含有するようにしてもよい。
また、本発明の発光装置では、上述の励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム以外の部材を用いてもよい。その例としては、前述の封止材料が挙げられる。該封止材料は、発光装置において、蛍光体(第2の発光体)を分散させる目的以外にも、励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム間を接着する目的で用いたりすることができる。
4−3.発光装置の実施形態
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
本発明の発光装置の一例における、励起光源となる第1の発光体と、蛍光体を有する蛍光体含有部として構成された第2の発光体との位置関係を示す模式的斜視図を図1に示す。図1中の符号1は蛍光体含有部(第2の発光体)、符号2は励起光源(第1の発光体)としての面発光型GaN系LD、符号3は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とそれぞれ別個に作製し、それらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させてもよいし、LD(2)の発光面上に蛍光体含有部(第2の発光体)を製膜(成型)させてもよい。これらの結果、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とを接触した状態とすることができる。
このような装置構成をとった場合には、励起光源(第1の発光体)からの光が蛍光体含有部(第2の発光体)の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
図2(a)は、一般的に砲弾型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。該発光装置(4)において、符号5はマウントリード、符号6はインナーリード、符号7は励起光源(第1の発光体)、符号8は蛍光体含有樹脂部、符号9は導電性ワイヤ、符号10はモールド部材をそれぞれ指す。
また、図2(b)は、表面実装型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。図中、符号22は励起光源(第1の発光体)、符号23は蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部、符号24はフレーム、符号25は導電性ワイヤ、符号26及び符号27は電極をそれぞれ指す。
4−4.発光装置の用途
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、色再現範囲が広く、且つ、演色性も高いことから、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いられる。
4−4−1.照明装置
本発明の発光装置を照明装置に適用する場合には、前述のような発光装置を公知の照明装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、図3に示されるような、前述の発光装置(4)を組み込んだ面発光照明装置(11)を挙げることができる。
図3は、本発明の照明装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。この図3に示すように、該面発光照明装置は、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース(12)の底面に、多数の発光装置(13)(前述の発光装置(4)に相当)を、その外側に発光装置(13)の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置し、保持ケース(12)の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板(14)を発光の均一化のために固定してなる。
そして、面発光照明装置(11)を駆動して、発光装置(13)の励起光源(第1の発光体)に電圧を印加することにより光を発光させ、その発光の一部を、蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部における前記蛍光体が吸収し、可視光を発光し、一方、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により演色性の高い発光が得られ、この光が拡散板(14)を透過して、図面上方に出射され、保持ケース(12)の拡散板(14)面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
4−4−2.画像表示装置
本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、その画像表示装置の具体的構成に制限は無いが、カラーフィルターとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[物性値の測定方法]
後述する各実施例、及び比較例で得られる蛍光体の物性値は、以下の方法で測定、及び算出することができる。
<発光特性>
(発光スペクトル、及び色度座標)
発光スペクトルは、室温(25℃)において、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて測定した。
より具体的には、励起光源からの光を焦点距離が10cmである回折格子分光器に通し、波長445nm以上465nm以下の励起光のみを光ファイバーを通じて蛍光体に照射した。励起光の照射により蛍光体から発生した光を焦点距離が25cmである回折格子分光器により分光し、300nm以上800nm以下の波長範囲においてスペクトル測定装置により各波長の発光ピーク強度を測定し、パーソナルコンピュータによる感度補正等の信号処理を経て発光スペクトルを得た。
480〜800nm(励起波長455nmの場合)の波長領域のデータから、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標xとyを算出した。
(相対発光ピーク強度)
発光ピーク強度は、上述の方法で得られた可視領域における発光スペクトルから励起波長域を除いた範囲で、「化成オプトニクス社製黄色蛍光体(Y,Gd,Ce)Al12(タイプP46−Y3)」の発光ピーク強度を100%とした相対値として算出した。なお、このときの励起波長は455nmとした。
(相対輝度)
相対輝度は、JIS Z8724に準拠して算出したXYZ表色系における刺激値Yから、「化成オプトニクス社製黄色蛍光体(Y,Gd,Ce)Al12(タイプP46−Y3)」の刺激値Yの値を100%とした相対値として算出した。なお、輝度は、励起青色光をカットして測定し、励起波長は455nmとした。
<耐久性試験>
(オートクレーブ試験)
蛍光体の高温高湿度条件での耐久性を試験するため、以下の方法で発光ピーク強度維持率[1]を求めた。
各例で得られた蛍光体について、下記オートクレーブ処理前に、25℃で波長455nm励起における発光ピーク強度(相対発光ピーク強度)I(A)を求めた。
次いで、オートクレーブ(内容積50L)を用いて、この蛍光体(各サンプル1gずつ)をガラス製容器(容積10cc、内径20mm、開口径20mm)に詰めて(加圧充填はしなかった)、フタをせず、温度135℃、0.23MPa(自己発生圧)の水蒸気雰囲気に20時間暴露した後、25℃で波長455nm励起における発光ピーク強度(相対発光ピーク強度)I(B)を求めた。
下記式[1]により、発光ピーク強度維持率[1]を算出した。
I(B)/I(A) [1]
なお、上記オートクレーブ試験の前後で蛍光体の重量を、大気中、135℃で2時間乾燥後、電子天秤により測定し、オートクレーブ試験前の蛍光体の重量W(A)とオートクレーブ試験後の蛍光体の重量W(B)から、下記式[3]により、重量増加率[3]を求めた。
(W(B)/W(A)−1)×100 [3]
(エージング試験)
蛍光体の高温高湿度条件での耐久性を試験するため、以下の方法で発光ピーク強度維持率[2]を求めた。
各例で得られた蛍光体について、下記エージング処理前に、25℃で波長455nm励起における発光ピーク強度(相対発光ピーク強度)I(0)を求めた。
次いで、この蛍光体を、ガラス製容器(容積10cc、内径20mm、開口径20mm)に詰めて、フタをせず、温度85℃、相対湿度85%に保たれたチャンバー(容積50L)に静置することにより、蛍光体を高温高湿条件下に1000時間暴露した後、25℃で波長455nm励起における発光ピーク強度(相対発光ピーク強度)I(1000)を求めた。
下記式[2]により、発光ピーク強度維持率[2]を算出した。
I(1000)/I(0) [2]
なお、上記エージング試験の前後で蛍光体の重量を、大気中、85℃で2時間乾燥後、電子天秤により測定し、エージング試験前の蛍光体の重量W(0)とエージング試験後の蛍光体の重量W(1000)から、下記式[3A]により、重量増加率[3A]を求めた。
(W(1000)/W(0)−1)×100 [3A]
(発光装置の作製、及びLEDエージング試験)
東洋電波社製SMD LEDパッケージ「TY−SMD1202B」にCREE社製LEDチップ「C460−EZ290」(発光波長461nm)をボンディングした。
信越化学工業社製シリコーン樹脂「SCR−1011」及び硬化剤を100重量部:100重量部の割合で混合し、該混合物100重量部に対し、各例で得られた蛍光体6重量部を添加し、シンキー社製撹拌装置「あわとり練太郎AR−100」で3分間混練して蛍光体含有組成物とした。
この蛍光体含有組成物を上記LEDチップ付きパッケージの最上面まで充填し、70℃で1時間、次いで150℃で5時間加熱することにより硬化させた。
得られた発光装置を、室温(約25℃)において、20mAで駆動し、CIE色度座標xを測定した。
次に、上記発光装置を、温度85℃、湿度85%の高温高湿条件下、20mAで、通電した後(通電時間は、150時間、及び250時間の2通りとした。)、同様にCIE色度座標xを測定した。
そして、上記発光装置の製造直後の色度座標xに対する、高温高湿曝露150時間、250時間経過後の色度座標xの比率(x維持率:%)を算出した。
なお、製造例2の蛍光体を用いた実施例III−1〜III−3、及び比較例III−1、III−2においては、LEDチップとして、「C460−EZ290」の代わりに、昭和電工製LEDチップ「GU35R460T」(発光波長455.1nm〜457.5nm)を使用し、CIE色度座標はxとyの両方を測定し、色度座標xとyの維持率をそれぞれ算出した。
<化学組成>
(ICP法)
ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry;以下、「ICP法」と称する場合がある。)により、ジョバイボン社製ICP化学分析装置「JY 38S」を使用して分析した。
(XPS法)
PHI社製Quantum2000を用いて、以下の測定条件で測定を行った。
・X線源:単色化Al−Kα,出力16kV−34W(X線発生面積170μmφ)
・帯電中和:電子銃2μA,イオン銃併用
・分光系:パスエネルギー
187.85eV=ワイドスペクトル
58.7eV=ナロースペクトル[N1s,Na1s,Ca2p,Eu3d]
29.35eV=ナロースペクトル[C1s,O1s,Al2p,Si2p,
Sr3d]
・測定領域:300μmφ
・取り出し角:45°(表面より)
(X線粉末回折測定)
Philips社製XPert MPDを用いて、大気中で以下の条件で測定した。
ステップサイズ[°2Th.] 0.0500
スタートposition[°2Th.] 10.0350
終了pos.[°2Th.] 65
X線出力設定 45kV,40mA
発散スリット(DS)サイズ[°] 1.0000
受光スリット(RS)サイズ[mm] 1.0000
スキャンの種類 CONTINUOUS
スキャンステップ時間[s] 33.0000
ゴニオメータ半径[mm] 200.00
フォーカス−DS間の距離[mm] 91.00
照射幅[mm] 10.00
試料幅[mm] 10.00
スキャン軸 ゴニオ
入射側モノクロメータ なし
ターゲット Cu
CuKα(1.541Å)
<重量メジアン径D50
(合金粉末の重量メジアン径D50の測定)
気温25℃、湿度70%の環境下において、エチレングリコールに合金粉末サンプルを分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所 LA−300)により粒径範囲0.1μm〜600μmにて測定して得られた重量基準粒度分布曲線から求め、積算値が50%のときの粒径値を重量メジアン径D50とした。また、この積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75とし、QD=(D75−D25)/(D75+D25)でQDを算出した。
(蛍光体の重量メジアン径D50の測定)
測定前に、超音波分散器(株式会社カイジョー製)を用いて周波数を19KHz、超音波の強さを5Wとし、25秒間試料を超音波で分散させた。なお、分散液には、再凝集を防止するため界面活性剤を微量添加した水を用いた。
重量メジアン径の測定においては、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製)を使用した。
<合金の分析>
(重量変化、及び融点の測定)
合金粉末又は窒素含有合金10mgを用いて、熱重量・示差熱(thermogravimetry-differential thermal analysis:TG−DTA)測定装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2000)により、雰囲気ガス(窒素、アルゴン、又は窒素とアルゴンとの混合ガス)100ml/分流通下、昇温速度10℃/分で室温から1500℃まで加熱し、重量変化について測定を行った。
また、アルゴン気流中でのTG−DTA測定において、融解に伴う吸熱を検出し、吸熱ピークが現れる温度を融点とした。なお、融点の測定においては、Au(融点1063℃)及びSi(融点1410℃)を用いて温度校正を行った。
(重量増加率の測定)
重量増加率は、一次窒化工程前の合金粉末、及び一次窒化工程後の窒素含有合金の重量を測定し、下記式[7]により求めた。
(一次窒化工程後の窒素含有合金の重量−一次窒化工程前の合金粉末の重量)
/一次窒化工程前の合金粉末の重量×100 [7]
(全金属元素含有率の測定)
全金属元素含有率は、一次窒化工程前の合金粉末、及び一次窒化工程後の窒素含有合金の重量を測定して、下記式[8]により求めた。
全金属元素含有率(重量%)
=100−{(一次窒化工程後の窒素含有合金の重量−一次窒化工程前の合金の重量)
/一次窒化工程後の窒素含有合金の重量}×100
[8]
(窒素含有率の測定)
窒素含有率は、酸素窒素同時分析装置(Leco社製)により、窒素含有合金又は蛍光体の窒素含有量を測定し、窒素含有合金の窒素含有率は下記式[9]により、また、蛍光体の窒素含有率は下記式[9A]により求めることができる。
窒素含有合金の窒素含有率(重量%)
= (窒素含有量/一次窒化工程後の窒素含有合金の重量)×100 [9]
蛍光体の窒素含有率(重量%)
= (窒素含有量/蛍光体の重量)×100 [9A]
(酸素含有率の測定)
酸素含有率は、酸素窒素同時分析装置(Leco社製)により、窒素含有合金又は蛍光体の酸素含有量を測定し、窒素含有合金の酸素含有率は下記式[11]により、また、蛍光体の酸素含有率は下記式[11A]により求めることができる。
窒素含有合金の酸素含有率(重量%)
= (酸素含有量/一次窒化工程後の窒素含有合金の重量)×100 [11A]
蛍光体の酸素含有率(重量%)
= (酸素含有量/蛍光体の重量)×100 [11A]
[製造例1]
(合金の製造)
金属元素組成比がAl:Si=1:1(モル比)となるように各原料金属を秤量し、黒鉛ルツボに充填し、高周波誘導式溶融炉を用いてアルゴン雰囲気下で原料金属を溶融した。その後、ルツボから金型へ注湯して凝固させ、金属元素組成比がAl:Si=1:1である合金(母合金)を得た。
続いて、Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.008:0.792:0.2:1:1(モル比)となるよう母合金、その他原料金属を秤量した。炉内を真空排気した後、排気を中止し、炉内にアルゴンを所定圧まで充填した。この炉内でカルシアルツボを用いて母合金を溶解し、次いで、原料金属であるSr、Eu、及びCaを加えた。全成分が融解されて溶湯が誘導電流により撹拌されるのを確認した後、ルツボから水冷された銅製の金型(厚さ40mmの板状)へ溶湯を注湯して凝固させた。
得られた厚み40mmの板状合金についてICP法で組成分析を行った。板状合金の重心付近一点と、板状合金の端面付近一点から約10gサンプリングし、ICP法により元素分析を行ったところ、
板状合金の中心部 Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.009:0.782:0.212:1:0.986、
板状合金の端面 Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.009:0.756:0.210:1:0.962
であり、分析精度の範囲において実質的に同一組成であった。従って、Euを始め、各々の元素が均一に分布していると考えられた。
得られた合金はSr(Si0.5Al0.5と類似した粉末X線回折パターンを示し、AlB型のアルカリ土類シリサイドと呼ばれる金属間化合物と同定された。
(粉砕工程)
得られた合金を、アルミナ乳鉢を用いて窒素雰囲気中でその粒径が約1mm以下になるまで粉砕した。得られた合金粉末を超音速ジェット粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社、PJM−80SP)を用いて、窒素雰囲気中(酸素濃度2体積%)、粉砕圧力0.15MPa、原料供給速度0.8kg/時でさらに粉砕した。
得られた合金粉末の重量メジアン径D50、QD、及び粒度分布を測定したところ、重量メジアン径D50は14.2μm、QDは0.38であり、また、10μm以下の合金粒子の割合は全体の28.6%、45μm以上の合金粒子の割合は2.9%であった。また、この合金粉末の酸素含有率は0.3重量%、窒素含有率は0.3重量%以下(検出限界以下)だった。
また、得られた合金粉末について、アルゴン気流中で融点測定を行ったところ、融解開始温度は1078℃付近であり、融点は1121℃であった。
(一次窒化工程)
雰囲気ロータリーキルン内の雰囲気全体をアルゴンに置換し、直径90mm、全長1500mmであるアルミナ製炉心管を傾斜角θがtanθ=0.033となる角度に設定した。雰囲気ロータリーキルン全体を真空引きした後、窒素(2.5L/分)とアルゴン(2.5L/分)の混合ガスを導入することにより、ガス置換を行った。雰囲気ロータリーキルン全体に上記混合ガスを流通させながら、さらに、炉心管内に、傾斜した炉心管の下部から、窒素(2.5L/分)、アルゴン(2.5L/分)、及び水素(0.2L/分)の混合ガスを供給した。炉心管を5rpmで回転させながら、スクリューフィーダーを用いて合金粉末を300g/時で供給した。ヒーター温度は1100℃とした。この時、合金粉末の均熱帯滞留時間(フィード開始から排出開始までの時間×均熱帯長さ/炉心管全長)は約3分間であった。炉心管から出てきた一次窒化工程終了後の窒素含有合金を、雰囲気がアルゴンに置換された容器に回収し、急冷した。
一次窒化工程終了後の窒素含有合金について、分析を行ったところ、窒素含有率は14.4重量%、酸素含有率は2.2重量%であった。
また、一次窒化工程終了後の合金粉末の粉末X線回折パターンを測定したところ、SrSi(PDF No.16−0008)、SrSi(PDF No.19−1285)等の金属間化合物が検出された。続いて、得られた窒素含有合金を前述の粉砕工程と同様に粉砕した。得られた合金粉末の重量メジアン径D50は11.4μmであり、45μm以上の合金粒子の割合は1%以下、100μm以上の合金粒子の割合は0.1%未満、5μm以下の合金粒子の割合は12%、QDは0.36であった。
(二次窒化工程)
一次窒化工程で得られた窒素含有合金を、内径54mmの窒化ホウ素製ルツボに充填し、これを熱間等方加圧装置(HIP)内にセットした。前記装置内を5×10−1Paまで真空排気した後、300℃に加熱し、300℃で真空排気を1時間継続した。その後、窒素を1MPaまで充填して、室温付近まで冷却した。その後、0.1MPaまで放圧し、再び1MPaまで窒素を充填する操作を二回繰り返し、加熱開始前に約0.1MPaに調圧した。次いで、炉内温度が950℃になるまで昇温速度600℃/時で加熱した。この時、内圧は、約0.5MPaまで上昇した。炉内温度が950℃から1100℃になるまで、昇温速度66.7℃/時で加熱し、1100℃で30分間保持した。その後、温度を1100℃に保ったまま、窒素圧力を約3時間かけて140MPaまで昇圧し、さらに、その後、約1時間かけて炉内温度が1900℃に、炉内圧力が190MPaになるまで昇温及び昇圧し、この状態で2時間保持した。続いて、3時間かけて400℃以下になるまで冷却して放冷した。12時間後、室温付近まで冷却した蛍光体を得た。なお、上記で記載の温度は炉内温度であり、即ち、焼成装置(本例においては、HIP)において設定することができる温度である。
(後処理工程)
得られた蛍光体を、ボールミルを用いて粉砕した後、0.5M塩酸を用いて洗浄後、濾過により分離し、蛍光体の重量の10倍の重量のイオン交換水に分散させ、分離する操作を10回繰り返すことにより、水洗した。次いで、分級を行い、重量メジアン径D50が9μmの蛍光体粒子を得た。その後、水分を除去して真空乾燥機を用いて50℃で乾燥後、さらに150℃で大気中で乾燥し、ポリエチレン容器で密閉し、保管した。
[比較例I−1]
製造例1で得られた蛍光体(アニール工程は行なわなかった)について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
また、得られた蛍光体について上述のICP法により、化学組成(バルク組成)を分析した。その結果を表3に示す。さらに、上述のXPS法により、表面組成についても分析した。その結果を表3に示す。
[実施例I−1]
製造例1で得られた蛍光体を石英容器に充填し、大気中、昇温速度5℃/分で昇温し、400℃(最高到達温度)で、12時間加熱処理し、室温になるまで放冷した(アニール工程)。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
また、得られた蛍光体について上述のICP法により、化学組成(バルク組成)を分析した。その結果を表3に示す。さらに、上述のXPS法により、表面組成についても分析した。その結果を表3に示す。
[実施例I−2]
製造例1で得られた蛍光体にアニール工程に先立ち、蛍光体を10倍量(重量比)の水に分散し、NaPO水溶液、次いでCa(NO水溶液を添加して、30分間撹拌後、蛍光体を分離し、水洗することによりリン酸カルシウム(0.2重量%)被覆処理を行ったこと以外は、実施例I−1と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
以上の実施例I−1、I−2及び比較例I−1の結果から次のことがわかる。
表2A、及び表2Bにおいて、実施例I−1と比較例I−1の結果を比較すると、アニール工程を行なうことにより、オートクレーブ試験後の発光強度維持率[1]が1に近くなり、蛍光体の耐久性が向上していることがわかる。また、実施例I−1と実施例I−2の結果を比較すると、リン酸カルシウム被覆処理の有無は、アニール工程による耐久性向上への影響は小さいことがわかる。
また、表3より次のことがわかる。
実施例I−1の蛍光体と比較例I−1の蛍光体(いずれも重量メジアン径D50は、9μm)のバルク組成(ICP分析及び窒素酸素分析計による)は同一であった。しかし、XPS法による表面組成の分析結果は異なっていることがわかる(なお、ここで言う表面組成とは、蛍光体粒子の表面から深さ3nm〜5nmの表面層を指し、実施例I−1では、アニール工程を行なうことで形成された表面層を、比較例I−1では、自然酸化膜を指す)。
例えば、比較例I−1の蛍光体が有する自然酸化膜と、実施例I−1の蛍光体が有する表面層の表面組成を比較すると、アニール処理によって、蛍光体表面のO/Al(Alに対するOのモル比を意味する。以下、同様。)、Sr/Al、及びCa/Alが増大し、一方、N/Alが低下していることがわかる。
また、比較例I−1の蛍光体が有する自然酸化膜に対して、実施例I−1の蛍光体が有する表面層は、O/Nが著しく大きく、また、Ca/Oに大きな差異はないが、Sr/Oは多くなっている。
また、図4(a)に実施例I−2の蛍光体をオートクレーブ試験に供したあとのSEM像を、図4(b)に比較例I−1の蛍光体をオートクレーブ試験に供したあとのSEM像を示す。これは、走査型電子顕微鏡により倍率10000倍で撮影したものである。
図4(a)と図4(b)とを比較すると、比較例I−1ではオートクレーブ試験後に蛍光体粒子表面に蛍光体表面の加水分解によって生じたと推察される亀裂が生じているのに対し、実施例I−2ではそのような亀裂が全く認められない。
また、図5に、実施例I−1と比較例I−1の蛍光体をオートクレーブ試験に供したあとのX線粉末回折パターンの一部(CaAlSiN構造、即ち、実施例I−1及び比較例I−1の蛍光体のバルク構造に由来するメインピーク付近)を比較して示す。図5より、比較例I−1では、実施例I−1と比較してバルク構造に由来する回折強度が低いことから、オートクレーブ試験によって表面のみならず、蛍光体粒子内部でも結晶構造の破壊が進行していることがわかる。
以上の結果から、アニール工程を行った蛍光体は耐湿性が著しく向上し、その結晶構造の安定性も優れていることがわかる。
また、図6に、比較例I−1の蛍光体の試験前と、エージング試験後、及びオートクレーブ試験後のX線粉末回折パターンを示す。
図6より、エージング試験とオートクレーブ試験では、回折強度が同程度まで低下していることがわかる。
更に、図7に、実施例I−1と比較例I−1の蛍光体のSr 3d XPSスペクトルを示す。
図7より、アニール処理により、XPSスペクトルの形状が変化していることから、表面のSr濃度のみならず、Srの結合状態が変化していることがわかる。このスペクトル形状の変化から、蛍光体の表面層においては、自然酸化膜と比較して、例えば、複合酸化物として存在しているSrの割合が増大している可能性が示唆される。
[実施例I−3〜I−5]
アニール工程における加熱処理の温度(最高到達温度)を、それぞれ300℃(実施例I−3)、250℃(実施例I−4)、及び430℃(実施例I−5)としたこと以外は実施例I−1と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
実施例I−1、及び実施例I−3〜I−5の結果から、酸素含有雰囲気におけるアニール工程の最適な温度条件は350℃〜500℃であることがわかる。
[実施例I−6]
アニール工程における最高到達温度を525℃、処理時間を3時間としたこと以外は実施例I−1と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
実施例I−6の結果から、アニール工程の加熱処理時間を短縮しても耐久性向上効果が得られることがわかる。
[実施例I−7]
製造例1で得られた蛍光体を石英容器に充填し、窒素雰囲気(酸素濃度0.1ppm以下、水分濃度0.1ppm以下)中、昇温速度5℃/分で昇温し、400℃(最高到達温度)で、2時間加熱処理し、室温になるまで放冷した(アニール工程)。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
本実施例においても耐久性向上効果が認められることから、アニール工程における加熱雰囲気としては、大気に限定されず、窒素を用いてもよいことがわかる。
[実施例I−8〜I−9]
アニール工程における加熱処理の最高到達温度をそれぞれ500℃(実施例I−8)、550℃(実施例I−9)としたこと以外は実施例I−7と同様の条件でアニール工程を実施した。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
実施例I−7〜I−9の結果から、アニール工程において窒素雰囲気を用いる場合、加熱処理の最適温度は、大気中でアニール工程を行なう場合と比較して高めに設定した方が好ましく、具体的には450℃〜550℃が好ましいことがわかる。また、耐湿性の観点からは、アニール工程の雰囲気として、窒素雰囲気よりも大気中の方が好ましいことがわかる。
[参考例1]
実施例I−2で得られた蛍光体を、10倍量の希塩酸(0.5M)に分散し、1時間、室温で攪拌した後、濾過、水洗を行った。次いで、100℃で2時間、真空乾燥を行って蛍光体を得た。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
参考例1と実施例I−2を比較すると、実施例I−2で得られた耐湿性向上効果が完全に消失していることから、実施例I−2で得られた蛍光体の表面層は0.5Mの希塩酸で除去されたことがわかる。
[参考例2]
実施例I−2の蛍光体を重量比で10倍量のイオン交換水に分散し、攪拌しながら60℃で1時間保持した。その後、濾過、水洗を行った。次いで、100℃で2時間真空乾燥を行って蛍光体を得た。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
参考例2では実施例I−2で得られた耐湿性向上効果がそのまま保持されていることから、実施例I−2で得られた蛍光体の表面層は温水では除去されないことがわかる。
[実施例I−10]
アニール工程における加熱処理の最高到達温度を300℃としたこと以外は実施例I−7と同様にして蛍光体を得た。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示した。
アニール工程を、酸素を含有しない雰囲気(例えば、窒素雰囲気)で行なう際は、300℃よりも高い温度の方が、耐久性向上効果に優れることがわかる。
[実施例I−11]
製造例1において、後処理工程における、酸洗浄後の水洗回数を10回から5回に変更したこと以外は製造例1と同様の条件で蛍光体を製造した。
得られた蛍光体10gに、フッ化アンモニウム0.5gを水5mlに溶解したものを添加し、混合した。その後、100℃で乾燥して得た粉末を石英容器に充填し、大気中、昇温速度5℃/分で昇温し、400℃(最高到達温度)で、12時間加熱処理し、室温になるまで放冷した(アニール工程)。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示した。
本実施例では、加熱中にフッ化アンモニウムが分解してフッ素が生じ、フッ素含有雰囲気となっているものと考えられる。フッ素含有雰囲気中でアニール工程を実施する場合においても、耐久性が向上することがわかる。
[実施例I−12]
製造例1において、後処理工程における、0.5Mの塩酸を用いた酸洗浄の時間を3倍にしたこと以外は、製造例1と同様の条件で蛍光体を製造した。
得られた蛍光体について、石英容器に代えてアルミナ容器とし、該アルミナ容器への充填量を40倍にしたこと以外は、実施例I−1と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2Aに示す。また、前述のXPS法により、表面組成について分析した結果を表3に示す。
なお、本実施例の蛍光体は、重量増加率の点において、前述の実施例I−1で得られた蛍光体よりも優れたものである。
[実施例II−1]
製造例1の(後処理工程)において、0.5M塩酸による洗浄、及び水洗を全く行わなかったこと以外は製造例1と同様の条件で蛍光体を製造した。得られた蛍光体について、実施例I−1と同様の条件でアニール工程を行った。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示した。
製造例1で得られるような、前記式[4]で表される化学組成を有する蛍光体については、洗浄を行った方が、格段に耐久性が向上することがわかる。
[実施例II−2]
製造例1の(後処理工程)において、0.5M塩酸による洗浄後の水洗回数を10回から5回に変更したこと以外は製造例1と同様の条件で蛍光体を製造した。得られた蛍光体について、実施例I−1と同様の条件でアニール工程を行った。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示した。
実施例I−1と本実施例とを比較すると、製造例1で得られるような、前記式[4]で表される化学組成を有する蛍光体については、アニール前蛍光体の洗浄を十分に行うと、耐久性が格段に向上することがわかる。
また、たとえ、(後処理工程)における洗浄が不充分であっても、実施例I−11にあるように、フッ素含有雰囲気下でアニールを行なえば、耐久性向上効果が得られることがわかる。
[参考例3]
実施例I−11において、大気中400℃でのアニール工程を行わなかったこと以外は実施例I−11と同様の条件で蛍光体を得た。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2Aに示した。
実施例I−11と本参考例とから、フッ素含有化合物と混合しても、アニール工程を経なければ耐久性が向上しないことがわかる。
実施例I−11において、耐久性が向上した理由は次のように推測される。フッ化アンモニウム(NHF)が分解して生じたHFガスと、蛍光体表面との高温での反応により、蛍光体表面に、フッ化ケイ素類アニオン(例えば、SiF 2−などの難溶アルカリ土類塩)が形成されている可能性がある。フッ化アルミニウム類アニオンに関しても同様に難溶性の塩が形成されている可能性もある。あるいは、高温反応により、蛍光体表面に、カルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属のフッ化物による被覆が生じている可能性もある。
Figure 2009132916
Figure 2009132916
Figure 2009132916
[製造例2]
得られる蛍光体の組成比率がEu:Sr:Si:N=0.02:1.98:5:8(モル比)となるように、Sr金属より得られたSrNとSiとEuを、窒素雰囲気で満たされたグローブボックス内で秤量し、アルミナ乳鉢上で均一になるまで混合を行った。得られた蛍光体原料混合物を窒化ホウ素製坩堝に充填した。これを0.92MPaの窒素ガス雰囲気中で1600℃まで加熱し、その温度で2時間保持後、1800℃まで加熱しその温度で2時間保持した後、放冷した。得られた焼成物をアルミナ乳鉢上で粉砕後、篩い分けすることにより粒径50μm以下の粒子を得た。
[比較例III−1]
製造例2で得られた蛍光体(アニール工程は行わなかった)について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表4A、及び表4Bに示した。
[比較例III−2]
製造例2で得られた蛍光体をアルミナ容器に充填し、大気中、昇温速度5℃/分で昇温し、200℃(最高到達温度)で、2時間加熱処理し、室温になるまで放冷した(アニール工程)。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表4A、及び表4Bに示した。
[実施例III−1]
アニール工程における加熱処理の温度(最高到達温度)を、300℃としたこと以外は比較例III−2と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表4A、及び表4Bに示した。
[実施例III−2]
アニール工程における加熱処理の温度(最高到達温度)を、400℃としたこと以外は比較例III−2と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表4A、及び表4Bに示した。
比較例III−1〜III−2及び実施例III−1〜III−2の結果から、(SrEu)Siで表される蛍光体について酸素含有雰囲気でアニール工程を行なう際は、最適な温度条件は300℃〜400℃であることがわかる。
[実施例III−3]
アニール工程における加熱処理の温度(最高到達温度)を、400℃とし、焼成雰囲気を窒素雰囲気(酸素濃度0.1ppm以下、水分濃度1.2ppm以下)としたこと以外は比較例III−2と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表4A、及び表4Bに示した。
Figure 2009132916
Figure 2009132916
本発明の発光装置の一実施例を示す模式的斜視図である。 図2(a)は、本発明の砲弾型発光装置の一実施例を示す模式的断面図であり、図2(b)は、本発明の表面実装型発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。 本発明の照明装置の一実施例を示す模式的断面図である。 (a)図は、に実施例I−2の蛍光体をオートクレーブ試験に供したあとのSEM像を示し、(b)図は比較例I−1の蛍光体をオートクレーブ試験に供したあとのSEM像を示す。 実施例I−1及び比較例I−1の蛍光体をオートクレーブ試験に供したあとのX線粉末回折パターンを示すチャートである。 比較例I−1の蛍光体の試験前と、エージング試験後、及びオートクレーブ試験後のX線粉末回析パターンを示すチャートである。 実施例I−1及び比較例I−1の蛍光体のSr 3d XPSスペクトルを示すチャートである。
符号の説明
1 蛍光体含有部(第2の発光体)
2 励起光源(第1の発光体)(LD)
3 基板
4 発光装置
5 マウントリード
6 インナーリード
7 励起光源(第1の発光体)
8 蛍光体含有樹脂部
9 導電性ワイヤ
10 モールド部材
11 面発光照明装置
12 保持ケース
13 発光装置
14 拡散板
22 励起光源(第1の発光体)(LED)
23 蛍光体含有部(第2の発光体)
24 フレーム
25 導電性ワイヤ
26 電極
27 電極

Claims (20)

  1. Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、0.56以上である窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体であって、
    該蛍光体の発光ピーク強度維持率が下記式[1]及び/又は[2]を満足することを特徴とする蛍光体。
    I(B)/I(A)≧ 0.93 [1]
    (前記式[1]において、
    I(A)は、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
    I(B)は、該蛍光体を、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
    I(1000)/I(0) ≧ 0.94 [2]
    (前記式[2]において、
    I(0)は、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
    I(1000)は、該蛍光体を、温度85℃、湿度85%の環境下に1000時間静置した後、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
  2. 化学組成が下記式[4]で表されることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
    [4]
    (但し、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
    は、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
    は、Al、Ga、In、及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
    は、Siを必須とする、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素である。
    a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
    0.00001≦a≦0.15
    a+b=1
    0.5≦c≦1.5
    0.5≦d≦1.5
    2.5≦e≦3.5
    0≦f≦0.5 )
  3. Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、0.56以上である窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体であって、
    下記式[3]で表される重量増加率が11%以下であることを特徴とする蛍光体。
    (W(B)/W(A)−1)×100 [3]
    (前記式[3]において、
    W(A)は、該蛍光体の重量であり、
    W(B)は、該蛍光体を、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後の該蛍光体の重量である。)
  4. 化学組成が下記式[4]で表されることを特徴とする請求項3に記載の蛍光体。
    [4]
    (但し、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
    は、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
    は、Al、Ga、In、及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
    は、Siを必須とする、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素である。
    a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
    0.00001≦a≦0.15
    a+b=1
    0.5≦c≦1.5
    0.5≦d≦1.5
    2.5≦e≦3.5
    0≦f≦0.5 )
  5. 該蛍光体が、該蛍光体の表面に、該蛍光体の母体結晶とは異なる化学組成を含む層(以下、「表面層」と称する。)を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の蛍光体。
  6. 前記表面層が、該蛍光体の母体結晶に由来することを特徴とする請求項5に記載の蛍光体。
  7. 該蛍光体が、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素、Si、Al、O(酸素)、及びN(窒素)を含有し、
    該蛍光体の表面層において、Alに対する窒素元素のモル比が0.37以下であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の蛍光体。
  8. 前記表面層において、アルカリ土類金属元素の少なくとも一部が複合酸化物として存在することを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の蛍光体。
  9. 該蛍光体を、該蛍光体の重量比で10倍量の塩酸(濃度 0.5M)に1時間分散させたとき、前記表面層が脱離又は溶解することを特徴とする請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の蛍光体。
  10. 蛍光体原料を焼成する工程を有する、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法であって、
    該焼成工程の後に、さらに、アニール前蛍光体を250℃以上650℃以下の温度で焼成する工程(以下、「アニール工程」)を有することを特徴とする蛍光体の製造方法。
  11. 前記蛍光体が少なくともSrとSiとを含有することを特徴とする請求項10に記載の蛍光体の製造方法。
  12. 前記アニール工程の焼成温度が320℃以上480℃以下の温度範囲であることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の蛍光体の製造方法。
  13. 前記蛍光体が、N(窒素)を必須とし、かつ、O(酸素)とN(窒素)との合計に対するN(窒素)の割合(モル比)が0.6以上であることを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
  14. 前記蛍光体が、Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、0.56以上であることを特徴とする請求項11ないし請求項13のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
  15. 前記アニール工程の前に、アニール前蛍光体を洗浄する工程を有することを特徴とする請求項10ないし請求項14のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
  16. 前記アニール工程を、酸素濃度0.1ppm以上の雰囲気下で行なうことを特徴とする請求項10ないし請求項15のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
  17. 請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の蛍光体と、液体媒体とを含有することを特徴とする蛍光体含有組成物。
  18. 第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、
    該第2の発光体が、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の蛍光体の1種以上を、第1の蛍光体として含有することを特徴とする発光装置。
  19. 請求項18に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
  20. 請求項18に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。
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