JP2009127214A - 多層建物の床スラブ - Google Patents

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Mitsuhiro Sugiyama
光宏 杉山
Masatoyo Matsuzaki
真豊 松崎
Satoru Kando
覚 貫洞
Tetsuya Yamada
哲也 山田
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Abstract

【課題】水回りや給排気設備の設置位置を自由に変更することができ、天上高さを可能な限り高く、或いは階高を可能な限り低くする。
【解決手段】その上面31aに上面溝32〜34(第1の溝)が形成され、その下面31bに換気ダクト22を収容する下面溝35,36(第2の溝)が形成されたPCa床版31(床スラブ)を複数並設する。PCa床版31の上方に床板27を敷設してPCa床版31との間に排水管26の設置スペースS1を確保し、PCa床版31の下方に天井板28を設けてPCa床版31との間に換気ダクト22の設置スペースS2を確保してSI住宅1の床構造30を構成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、多層建物の床スラブに関し、特に、建物の構造体(スケルトン)と内装や設備等の非構造体(インフィル)とが分離して構成されたスケルトン・インフィル(以下、「SI」と記す)方式を採用した多層建物の床スラブ構造に関する。
近年、オフィスビルやマンション等では、技術の進歩に伴って高層化が進んでおり、高層化の波は首都圏のみならず地方にも波及している。このような高層建物では、施工の容易化、工期の短縮を図るために、現場で床コンクリートを打設するのではなく、専用工場において予め製造されたプレキャスト(以下「PCa」と記す)床版を現場に運搬して設置する組立床工法が多く採用されている。
また、近年の高層マンション等では、スケルトン(S)はそのままで、インフィル(I)のみを変更することによって、生活様式の変化に伴って間取りや配置の変更を容易にできるようにしたSI方式の多層建物(以下、「SI住宅」と呼称する)が多く建設されている。SI住宅では一般に、床構造として二重床が採用され、廊下等に設けられた縦シャフトのパイプスペースと住居内の水回りとを接続する給排水管等は床下に収納される。天井構造としては二重天井が採用され、キッチンや浴室からの換気ダクトやスプリンクラーの給水管、電線等は天井裏に配置されている。
二重床における床スラブと床板との間の配管スペースは、排水管の敷設延長に依ってその必要寸法は異なるが、一般的な集合住宅においては、適正な排水勾配を確保するために300mm程度必要となる。また、二重天井における天井板と天井スラブとの間にも、スプリンクラー用の空間としては150mm程度の、換気ダクト用の空間としては250mm程度の設置スペースが必要となる。したがって、二重床や二重天井を採用する場合、天井高さh(床板から天井板までの高さ)を確保するためには、階高H(床スラブ面から1階上の床スラブ面(場合によって「天井スラブ」と呼ぶ)までの高さ)を高くする必要があるが、階高Hを高くすると建物の建設コストが上昇し、或いは高さ制限のある建物では建築可能な階数が少なくなるといった問題があった。
そのため、従来では図7(A)に示すように、水回りを廊下側等のパイプスペースに近い位置に配置し、床スラブ50に段差を設けて水回り領域の床スラブ50aをその他の住居領域の床スラブ50bよりも低くすることによって、床板52と床スラブ50aとの間の配管スペースS1’を確保するとともに、住居領域の天井板53bを水回り領域の天井板53aよりも高くすることによって住居部分の天井高さh’を可能な限り高くした段差スラブ方式が実用されている。
また、床スラブをパイプスペースへ向けて自然排水勾配以上に傾斜させることによって、床下に配設された排水管の排水勾配を確保するとともに、天井裏の給排気設備をパイプスペースと反対側の外壁側近傍におけるスペースの大きな天井裏に設けることで、天井ふところを最小限にして階高を低く抑えた建築手法も提案されている(特許文献1)。
特開2003−129602号公報
しなしながら、従来の段差スラブ工法では、水回りの設定位置は一段下がったスラブの範囲内に制限されてしまう他、この水回り領域の天井スラブ部分では、天井高さが低くなってしまうという問題があった。また、特許文献1に記載の建築手法では、水回りはいずれの位置にも配置可能であるが、給排気設備を設ける位置が外壁側近傍に限定されてしまうため、依然自由な間取り設計を行うことはできなかった。
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、水回りや給排気設備の設置位置を自由に変更することができ、天上高さを可能な限り高く、或いは階高を可能な限り低くすることを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、多層建物の床スラブにおいて、上方に敷設される床板との間に排水管の設置スペースが形成されるとともに、下方に設けられる天井板との間に換気ダクトの設置スペースが形成され、前記排水管を収容する第1の溝を床スラブの上面に設け、前記換気ダクトを収容する第2の溝を床スラブの下面に設けるように構成する。この場合、前記第1の溝が勾配を有する底面を有するように構成するとよく、且つ、前記下面が前記第1の溝の底面と同一方向の勾配を有するように構成するとよい。更にこのような場合、前記第1の溝と第2の溝とを交互に並設するとよい。また、複数のプレキャストコンクリート床版によって床スラブを構成するとよい。
発明によれば、床スラブの第1の溝に給排水の配管等を配置可能となるため、床下の配管スペースを確保しつつ床スラブ上面と床板との間隔を小さくでき、床スラブの第2の溝に換気ダクト等が配置可能となるため、天井裏の配管スペースを確保しつつ床スラブ下面と天井板との間隔を小さくすることができる。したがって、床スラブの下方に配置される天井板から床スラブの上方に配置される床板までの高さを小さくすることができ、同じ階高であれば天井高さを高くし、同じ天井高さを確保するのであれば必要な階高を小さくすることができる。また、床スラブを従来の床スラブと同重量とすれば、従来よりも剛性の高い床スラブを得ることができ、逆に従来の床スラブと同じ剛性を確保するのであれば、床スラブを軽量化することが可能である。更に、床スラブを現場打ちとすれば、個々の建物、フロア、間取り等に応じて、第1および第2の溝を所望の大きさ、配置にすることができる。
また、第1の溝の底面に勾配がつけられことによって、排水管設置スペースが最小限にされるとともに、排水管を第1の溝の底面に沿って配置するだけで排水勾配を確保できるようになり、排水管設置作業が容易となる。また、床スラブの下面に第1の溝の底面と同一方向の勾配がつけられることによって、排水管設置スペースを確保した上で、床スラブの厚さを可能な限り薄くすることができる。更に、第1の溝と第2の溝とが重畳または交差しないように交互に配置されることによって、床スラブ厚の増大を抑えて床スラブの上下に配置される床板と天井板との間の高さを小さくすることができる。また、予め工場等で製作されたプレキャストコンクリート床版部材から床スラブを構成することによって、現場における床版工の作業を簡略化して工期の短縮を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
≪実施形態の構成≫
図1は、実施形態に係るPCa床版による床スラブ構造を集合住宅に適用したSI住宅の一戸を示す平面図である。SI住宅1(多層建物)は複数階に亘る複数の住戸10から構成されている。各住戸10は共益部分である廊下2に面しており、縦壁3によってその全周が囲まれている。SI住宅1の床構造30は、平行に延在する2本の梁4,5上に複数敷き並べられたプレキャスト床版(以下、「PCa床版」と略称する)31を主要構成要素としている。
住戸10の廊下2に面する縦壁3には、住戸10への出入り口となる玄関扉6が設けられている。住戸10の内部は間仕切り壁7によって、玄関扉6に隣接する玄関ホール11、リビングダイニング12、キッチン13、ベッドルーム14a,14b,14c、パウダールーム15、バスルーム16、トイレ17に区画されている。住戸10における廊下2と反対側の面には、バルコニー18が設けられている。また、廊下2における住戸10と反対側の面に、各階をシャフト状に連結する上下水管や給湯器が設けられるパイプスペース(以下「PS」と略称する)19a、同じく電気ケーブルが設けられる電気パイプスペース(以下「EPS」と略称する)19b、各種メータボックスが設けられるボックススペース19cが配置されている。
パウダールーム15、バスルーム16およびトイレ17の天井には、それぞれ換気扇21a,21b,21cが設けられており、排気を共同住宅外に導くために天井裏に設けられた換気ダクト22aにそれぞれ接続されている。また、キッチン13の調理台の上方には、2つの換気扇21d,21eが設置されており、同じく換気ダクト22b,22cに接続されている。
パウダールーム15の洗面台23およびバスルーム16には、給湯器を経由する図示しない給水管が引かれており、各排水は床下に設けられた排水管26aに導かれてPS14内の下水管に放流される。また、トイレ17に設置された便器24にもPS14内の給水管から給水管が直接引かれており、便器24における排水は別途設けられた排水管26bによってPS14内の下水管に放流される。更に、キッチン13のシンク25の排水は別途設けられた排水管26cによってPS14内の下水管に放流される。なお、これら排水管26a,26b,26cには排水勾配がつけられており、排水は自然排水でPS14まで流れる。
次に、図2を参照して床構造30について説明する。図2は床構造30の一部透視斜視図である。床構造30の構成要素であるPCa床版31は、専用工場で製作され、施工時に現場に搬入された後、適所に設置されて、接続部のみに場所打ちコンクリートが打設されて建物に一体化される。各PCa床版31は、平面視において長方形の輪郭を呈しており、その上面31aが水平となるように設置されている。
床構造30の主要構成要素であるPCa床版31(床スラブ)の上方には、防振性を有するスペーサ(図示せず)によって確保される排水管26の設置スペースS1を挟んで床板27が水平に敷設され、PCa床版31の下方には、換気ダクト22の設置スペースS2を挟んで階下の住戸10’の天井板28が水平に吊設されている。SI住宅1の床構造30は、これら複数のPCa床版31と、床板27と、天井板28とによって構成されている。なお、後述するように、排水管26は上面溝32〜34(第1の溝)内に、換気ダクト22は下面溝35,36(第2の溝)内にそのそれ収容可能であるため、床板27および天井板28とをPCa床版31に直張りすることも可能であるが、本実施形態では高音域の騒音の伝達を防止するために、PCa床版31と床板27および天井板28との間にそれぞれ空間が設けられている。
次に、PCa床版31について詳細に説明する。図3はPCa床版の平面図を、図4は図3中のIV−IV矢視図を、図5は図3中のV−V矢視図を、図6は図3のVI−VI矢視図を、図7は図3中のVII−VII矢視図をそれぞれ示している。図6、図7に示すように、PCa床版31は、側面視においてその下面31bが約2.5%の傾斜を有するテーパー形状を呈している。したがって、PS19a側に配置される一端面31eにおけるPCa床版31の厚さT1(上面31aから下面31bまでの厚さ)は、他端面31fにおける厚さT2よりも厚くなっている。なお、本実施形態では、各PCa床版31の長辺寸法は8mであり、短辺寸法は2.4mである。また、一端面31eにおけるPCa床版31の厚さT1は400mmであり、他端面31fにおけるPCa床版31に於けるの厚さT2は200mmである。
PCa床版31の上面31aには、その長辺と平行に中心線上に延在し、上面31aに開口する上面センター溝32と、長辺側の両側面31c,31dに沿って稜線を切り欠くように設けられた2本の上面サイド溝33,34とが形成されている。より正確には、上面サイド溝33,34は、複数のPCa床版31が並置されたときに、隣接するPCa床版31の上面サイド溝33或いは34と共に上面31aに開口する溝を構成する。一方、PCa床版31の下面31bには、その長辺と平行に直線状に延在し、下面31bに開口する2本の下面溝35,36が形成されている。
これら上下面5本の溝32〜36は、平面視において、交互に平行に配置されている。具体的には、下面溝35は上面センター溝32と上面サイド溝33との中間に配置され、下面溝36は上面センター溝32と上面サイド溝34と中間に配置されている。また、溝32〜36は平面視において、それぞれの間隔が一定となる配置となっている。なお、以下においては必要に応じ、図2において破線で区切られた符号41で示す部位を上側フランジと呼称し、同じく破線で区切られた符号42で示す部位を下側フランジと呼称し、同じく破線で区切られた符号43で示す部位をリブと呼称する。本実施形態では、上面センター溝32、下面溝35,36の幅は300mmであり、上面サイド溝33,34の幅は500mmであり、各リブ43の幅は125mmとなっている。
図2に示すように、上面センター溝32は、底面32aと、底面32aの両側縁から略垂直に立ち上がる両側面32b,32cとにより画成され、底面32aはPCa床版31の一端面31eへ向けて約2.5%の下り勾配となっている。また、上面サイド溝33,34は、それぞれ底面33a,34aと、底面33a,34aに於ける長辺側の両側面31c,31dと反対側の側縁から略垂直に立ち上がる側面33b,34bとにより画成されている。両上面サイド溝33,34の底面33a,34aも底面32aと同方向、同程度(2.5%)の勾配を有しており、下側フランジ42の厚さは150mmで一定となっている。
一方、両下面溝35,36は、図5に示すように、それぞれ底面35a,36aと、その両側縁から下方へ略垂直に延在する両側面35b,35c,36b,36cとにより画成されている。各底面35a,36aは、PCa床版31の上面31aと平行平面上に形成されており、PCa床版31設置時には水平面をなしている。すなわち、上側フランジ41の厚さも150mmで一定となっており、PCa床版31の下面31bの勾配に従って、リブ43の高さのみが変化している。なお、各溝32〜36の側面32b〜36bおよび32c〜36cは、工場製作時における脱型容易化の観点から、開口面へ向かって開く若干の傾斜が与えられている。
そして、図2、図4に示すように、上面センター溝32の内部には、洗面台23およびバスルーム16に接続する排水管26aが溝32の底面32aに沿って配設され、更に図7に示すように、上面サイド溝34の内部には、便器24に接続する排水管26bが上面サイド溝34の底面34aに沿って配設されている。また、図2、図4、図6に示すように、下面溝36の内部には、換気扇21a,21b,21cに接続する換気ダクト22aが略水平に配設されている。
≪実施形態の作用効果≫
このように、PCa床版31はその上面31aに上面溝32〜34を有しているため、給水管や排水管26等が上面溝32〜34内に配置可能となっている。したがって、床下の排水管26の設置スペースS1を確保しながら、PCa床版31の上面31aと床板27との間隔を小さくすることが可能となっている。また、PCa床版31はその下面31bに下面溝35,36を有しているため、換気ダクト22やスプリンクラー用の給水管、電気ケーブル等が下面溝35,36内に配置可能となっている。したがって、天井裏の換気ダクト22の設置スペースS2を確保した上で、PCa床版31の下面31bと天井板28との間隔を小さくすることが可能となっている。
本実施形態の効果について図8を参照しながら説明する。図8(A)は床スラブ50に段差を設けた従来のSI住宅の断面図を示しており、図8(B)は本実施形態によるSI住宅1の断面図を示している。(A)に示すように、従来のSI住宅では、例えば住居領域に2.6mの天井高さh’を確保するためには、天井高さh’に、スラブ厚T’:0.3m、天井ふところR’:0.15m、床ふところF’:0.15mを加えた3.3mの階高H’をとる必要があった。しかしながら、水回り領域の床下に排水管26を配設し、且つ排水管26の自然勾配を確保するためには、水回り領域の床スラブ50aを住居領域の床スラブ50bよりも低くして、水回り領域の床ふところF''を0.3m程度にする必要がある。一方、スラブ厚T''には住居領域のスラブ厚T’と同じ厚さが必要であると共に、天井裏に換気ダクト22を設けるためには天井ふところR''を0.25m程度にする必要があるため、床スラブ50aの下方の天井板53aから床スラブ50aの上方の床板27までは合計0.85mの高さが必要である。したがって、水回り領域の天井高さh''は2.35mになってしまう。
一方、(B)に示す本実施形態のSI住宅1では、PCa床版31の最厚部分のスラブ厚Tは従来のSI住宅のスラブ厚T’よりも厚い0.4mとなっているが、排水勾配を確保した上で排水管26が上面溝32〜34内に配置可能であるため、床ふところFは0.07m程度にされている。また、換気ダクト22が下面溝35,36内に配置可能であるため、最薄部の天井ふところRは0.13m程度にされている。したがって、天井高さhを2.6mとするためには、階高Hを従来のSI住宅と同じ3.2mにすればよい。そして、床板27および天井板28は、住居領域と水回り領域とに関わりなく同一水平面に設けられるため、天井高さhには住宅内の全域に亘って2.6mが確保される。
このように、本実施形態のSI住宅1では、PCa床版31の下方の天井板28からPCa床版31の上方の床板27までの高さが住宅全域に亘って小さくなり得るため、同じ階高Hであれば天井高さhを高くし、或いは、同じ天井高さhを確保するためには必要となる階高Hを小さくすることができる。また、PCa床版31の下面31bに勾配を設けたことによって、天井ふところRの大きな領域では、天井板28に段差を設けることで所望の領域の天井高さhを更に高くすることが可能となっている。
更に、PCa床版31の下面31bの勾配によって、曲げモーメントの大きな梁中間部において必要断面を確保し、廊下2側へ向けて排水管26の排水勾配を確保した上で、バルコニー18側のPCa床版31の厚さを極力薄くして軽量化を図ることが可能となっている。PCa床版31の剛性について、本実施形態をモデル化したものと従来のものとの比較結果を図9に示す。
図9は従来技術と本実施形態に関する床版モデルとに等分布荷重を加えたときの撓み量を比較したグラフである。モデル1〜モデル3は、すべて同一のヤング係数を有し、同一幅および同一長さであって、断面形状のみが異なる。モデル1は、全面において厚さが等しい従来の等厚PCa床版モデルであり、両端における断面A,Bが同一形状を呈している。なお、モデル1は、その断面積がモデル2の断面積と等しくなるような厚さに設定されている。モデル2は、全長に亘って断面形状の等しい本実施形態に類似するPCa床版モデルであり、その上面および下面にそれぞれ上面溝および下面溝を備えている。モデル3は、本実施形態に係るPCa床版モデルであり、その上面および下面にそれぞれ上面溝および下面溝を備えるとともに、両端における断面A,Bが異なる形状を呈している。具体的には、一端におけるA断面はモデル2と同一形状を呈しており、他端におけるB断面はA断面よりも薄く、上面溝および下面溝の深さがA断面よりも浅くなっている。一方、フランジ部の厚さはA断面と同一であり、B断面に近づくほど単位当たり重量が小さくなっている。
図9のグラフに示すように、モデル1およびモデル2では、スパン中央部における撓み量が最大となっており、モデル3では、最大撓み位置は、スパン中央部から、より断面積の小さなB断面側に移行している。そして、モデル2は、モデル1と断面積が同じであるにも拘わらず、その最大撓み量はモデル1の1/3程度となっている。一方、モデル3は、その断面積はモデル1よりも小さいが、最大撓み量はモデル1の3/4程度と小さくなっている。
この結果は、本実施形態に係るPCa床版31が、PCa床版31の最大断面積と同じ断面積を全長に亘って有する従来の等厚PCa床版よりも高い剛性を有することを意味している。なお、本実施形態に係るPCa床版31については、他のモデル(モデル1、モデル2)よりも軽量となる条件で撓み量を比較しているが、厚さを増して重量が同一となる条件で比較すれば、モデル3よりも当然に撓み量は小さくなり、従来の等厚PCa床版と比較してグラフに示す比率よりも更に高い剛性が得られることを理解できよう。
したがって、PCa床版31では、所定の剛性を確保するために必要な断面積を小さくすることが可能であり、これにより、PCa床版31の製造コストや設置コストが低減されるだけでなく、梁4,5や柱の構造をも小さくすることが可能となり、躯体構造全体の軽量化が実現される。
また、上面溝32〜34の底面32a〜34aに勾配がつけられことによって、一定高さの枕木等を用いて排水管26を上面溝32〜34の底面32a〜34a上に配置するだけで排水勾配を確保できるようになり、排水管設置作業が容易となる。更に、上面溝32〜34と下面溝35,36とが重畳或いは交差しないように配置されることによって、剛性確保のためのPCa床版31厚さの増大が抑制され、PCa床版31の軽量化を可能にしている。換言すれば、これは、PCa床版31の上下に配置される床板27と天井板28との間の高さを小さくすることを可能にしている。また、予め工場製作されたPCa床版31を現場で組み立てて床構造30を構築することによって、床版工の作業を簡略化して工期の短縮を図ることが可能になっている。
≪変形実施形態≫
次に、図10〜図13を参照して変形実施形態に係るPCa床版について説明する。なお、PCa床版は、上記実施形態と同様に、SI集合住宅の床構造の主要構成要素をなすものであるが、上記実施形態と同一の構成または機能を有する部材等については、重複する説明を省略する。図10は変形実施形態に係るPCa床版51の斜視図であり、図11はPCa床版51の平面図であり、図12は図11中のXII−XII矢視図であり、図13は図11中のA,B,CにおけるXIII−XIII矢視図である。PCa床版51(床スラブ)は、床構造30の主要構成要素であって、専用工場で製作されたプレキャストコンクリート床版である。PCa床版51は、平面視において長方形の輪郭を呈しており、その上面51aが水平となるように設置される。
PCa床版51の上面51aには、図示しない排水管26が収容可能な3本の上面溝52〜54(第1の溝)がPCa床版51の長辺と平行に等間隔に形成されている。また、PCa床版51の下面51bにおける、平面視においてこれら上面溝52〜54に整合する位置には、図示しない換気ダクト22が収容可能な3本の下面溝55〜57(第2の溝)が形成されている。換言すれば、PCa床版51は、図10および図13において破線で区切られ符号62で示された4つのリブと、同じく破線で区切られて符号61で示され、4つのリブ62を連結する3つのフランジ61とから構成されている。
図12に示すように、PCa床版51は、一端面51eおよび他端面51fにおいて同じ厚さT3を有している。3つの上面溝52〜54は、同一形状を呈しており、それぞれ一端面51eにおいてその深さが最も大きく、他端面51fにおいてその深さは0となっている。つまり、各上面溝の底面52a〜54aには、他端面51fから一端面51eに向けて所定の下り勾配がついている。一方、3つの下面溝55〜57も、同一形状を呈し、それぞれ他端面51fにおいて最も深く、一定勾配で溝が浅くなり、一端面51eにおいてその深さは0となっている。したがって、3つのフランジ61は、全断面において同厚の平板形状を呈し、一端51eにおいてリブ62の最下部に位置し、他端51fにおいてリブ62の最上部に位置している。
本変形実施形態のPCa床版51の剛性について図14を参照して説明する。図14は変形実施形態のPCa床版に係るモデルと更なる変形態様のモデルとの撓み量を示すグラフである。モデル4およびモデル5は、同一のヤング係数を有し、同一幅、同一断面積および同一長さであって、断面形状のみが異なる。モデル4は、その上面および下面にそれぞれ上面溝および下面溝を備えるとともに、全断面においてフランジの位置がリブの中央(上面溝および下面溝の深さが同じ)である更なる変形実施形態に係るPCa床版モデルである。モデル5は、本変形実施形態に係るPCa床版モデルであり、その上面および下面にそれぞれ上面溝および下面溝を備えるとともに、フランジの位置がリブの最下部から最上部へ徐々に変化するものである。具体的には、一端(A断面)において上面溝の深さが0で、下面溝の深さが最大であり、他端(B断面)において上面溝の深さ最大で、下面溝の深さが0となっている。
図14のグラフに示すように、モデル4およびモデル5ともに、その長さの中央部における撓み量が最大となっている。しかしながら、両モデルの厚さおよび断面積は同一(重量も同一)であるのにも拘わらず、モデル5の最大撓み量はモデル4の2/3程度となっている。すなわち、本変形実施形態に係るPCa床版31は、その両端面51e,51f付近においてフランジの位置が上か下に偏っていることにより、断面形状の変化しないH型のPCa床版よりも高い剛性を有している。したがって、PCa床版51では、所定の剛性を確保するために必要な断面積を小さくすることが可能であり、これにより、上記実施形態と同様に、PCa床版51の製造コストや設置コストが低減されるだけでなく、躯体構造全体の軽量化が実現される。
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、床スラブはPCa床版によって構成されているが、例えば石材等、コンクリート以外の材料によって形成された床版によって構成されてもよく、また、床スラブとして工場製作された部材を用いる必要はなく、現場で組み立てられた支保工および型枠に直接打設された場所打ちコンクリートであってもよい。また、PCa床版の平面形状は長方形である必要はなく、台形や扇形等その他の形状であってもよい。更に、PCa床版の厚さがテーパー状に変化するのではなく、一定厚さであったり、上下のフランジ部の厚さが変化したりする態様であってもよい。同様に、上面溝および下面溝についても、水平および傾斜のいずれの態様に形成されてもよい。また、床上下面の溝は直線状である必要はなく、排水管や換気ダクトの全体または一部を収容するものであれば如何なる平面配置でもよく、断面形状についても矩形に限定されるものものではなく、台形や円弧、V字形状等、様々な形態を採用することができる。上記した各変更実施形態の他、更に本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。
実施形態に係るPCa床版を適用したSI住宅の平面図 実施形態に係る床構造を一部透視して示す斜視図 実施形態に係るPCa床版の平面図 図3中のIV−IV矢視図 図3中のV−V矢視図 図3中のVI−VI矢視図 図3中のVII−VII矢視図 従来技術と実施形態に係るSI住宅の比較断面図 従来技術と実施形態に関する床版モデルの撓み量を比較したグラフ 変形実施形態に係るPCa床版の斜視図 PCa床版の平面図 図11中のXII−XII矢視図 図11中のA,B,CにおけるXIII−XIII矢視図 変形実施形態に関する床版モデルの撓み量を示すグラフ
符号の説明
1 SI住宅(多層建物)
10 住戸
19a PS
19b EPS
19c ボックススペース
21 換気扇
22 換気ダクト
23 洗面台
24 便器
25 シンク
26 排水管
27 床板
28 天井板
30 床構造
31,51 PCa床版(床スラブ)
31a,51a 上面
31b,51b 下面
32 上面センター溝
33,34 上面サイド溝
35,36 下面溝
52,53,54 上面溝(第1の溝)
55,56,57 下面溝(第2の溝)
S1 排水管の設置スペース
S2 換気ダクトの設置スペース

Claims (5)

  1. 多層建物の床スラブであって、
    上方に敷設される床板との間に排水管の設置スペースを形成するとともに、下方に設けられる天井板との間に換気ダクトの設置スペースを形成し、
    前記排水管を収容する第1の溝が上面に設けられ、
    前記換気ダクトを収容する第2の溝が下面に設けられたことを特徴とする床スラブ。
  2. 前記第1の溝の底面が勾配を有することを特徴とする、請求項1に記載の床スラブ。
  3. 前記下面が前記第1の溝の底面と同一方向の勾配を有することを特徴とする、請求項2に記載の床スラブ。
  4. 前記第1の溝と第2の溝とが交互に並設されたことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の床スラブ。
  5. 複数のプレキャストコンクリート床版によって構成されたことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の床スラブ。
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