JP2009119550A - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】低硬度で溶着を起こしやすい被削材の高速切削加工で、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(Cr1−XYX)N(但し、原子比で、0.01≦X≦0.1)を満足するCrとYの複合窒化物層からなる硬質被覆層を形成してなる表面被覆切削工具。
【選択図】 なし
【解決手段】炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(Cr1−XYX)N(但し、原子比で、0.01≦X≦0.1)を満足するCrとYの複合窒化物層からなる硬質被覆層を形成してなる表面被覆切削工具。
【選択図】 なし
Description
この発明は、特に銅合金や炭素鋼等のように低硬度で、しかも、切粉が切刃に溶着しやすい被削材を、高速切削条件で切削加工した場合に、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
また、被覆工具として、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された工具基体の表面に、少なくとも、窒化クロム(以下、CrNで示す)層を硬質被覆層として物理蒸着してなる被覆工具が知られており、このCrN層がすぐれた潤滑性を有することが知られている。
そして、上記従来被覆工具のCrN層が、例えば図1に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に基体を装入し、ヒータで装置内を、例えば500℃の温度に加熱した状態で、Cr合金がセットされたカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に、例えば電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば2Paの反応雰囲気とし、一方上記基体には、例えば−100Vのバイアス電圧を印加した条件で蒸着することにより、上記CrN層を硬質被覆層として形成し得ることも知られている。
特開平11−156992号公報
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削工具には被削材の材種にできるだけ影響を受けない汎用性、すなわち、できるだけ多くの材種の切削加工が可能な切削工具が求められる傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、これを、銅合金、炭素鋼等の低硬度であって工具表面に溶着し易い被削材の高速切削加工に用いた場合には、切削時の発熱によって被削材および切粉は高温に加熱されて粘性度が一段と増大し、これに伴って硬質被覆層表面に対する粘着性および反応性が一段と増すようになり、この結果切刃部におけるチッピング(微少欠け)の発生が急激に増加し、これが原因で比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に銅合金、炭素鋼等の低硬度であって工具表面に溶着し易い被削材の切削加工を、高速切削条件で行った場合に、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆工具を開発すべく、上記の従来被覆工具に着目し、研究を行った結果、
上記従来被覆工具の硬質被覆層であるCrN層に、Crとの合量に占めるYの含有割合が1〜10原子%となるようにY成分を含有させ(Cr,Y)N層を構成すると、Y成分の含有によって、(Cr,Y)N層の耐熱性が向上するため、銅合金、炭素鋼等の、低硬度かつ工具表面に溶着し易い被削材の切削加工において、切削時に高熱が発生したとしても、切刃部での溶着発生が抑制されるとともに、(Cr,Y)N層の潤滑性が劣化せず、その結果、切刃部におけるチッピング(微少欠け)の発生が防止されることを見出し、本発明に至ったものである。
上記従来被覆工具の硬質被覆層であるCrN層に、Crとの合量に占めるYの含有割合が1〜10原子%となるようにY成分を含有させ(Cr,Y)N層を構成すると、Y成分の含有によって、(Cr,Y)N層の耐熱性が向上するため、銅合金、炭素鋼等の、低硬度かつ工具表面に溶着し易い被削材の切削加工において、切削時に高熱が発生したとしても、切刃部での溶着発生が抑制されるとともに、(Cr,Y)N層の潤滑性が劣化せず、その結果、切刃部におけるチッピング(微少欠け)の発生が防止されることを見出し、本発明に至ったものである。
この発明は、
「 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Cr1−XYX)N(但し、XはYの含有割合を示し、原子比で、0.01≦X≦0.1である)を満足するCrとYの複合窒化物層からなる硬質被覆層を形成した表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
「 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Cr1−XYX)N(但し、XはYの含有割合を示し、原子比で、0.01≦X≦0.1である)を満足するCrとYの複合窒化物層からなる硬質被覆層を形成した表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明について詳述する。
硬質被覆層を構成するCrとYの複合窒化物(以下、(Cr,Y)Nと略記する)層は、所定の高温硬さ、高温強度、潤滑性を有するとともに、その構成成分であるY成分によって、すぐれた耐熱性を備えるようになり、そのため、高温切削条件下でも低摩擦係数が維持され、すぐれた潤滑性を発揮するようになるが、Yの含有割合を示すX値がCrとの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.01未満になると、耐熱性を確保することができないために潤滑効果を期待することはできず、一方、Yの割合を示すX値が同0.10を越えると、相対的にCrの含有割合が減少し、低硬度で溶着性が高い被削材の高速切削加工で必要とされる高温強度を確保することができないばかりか、潤滑性も低下し、チッピング発生を防止することが困難になることから、X値を0.01〜0.10(原子比、以下同じ)と定めた。
硬質被覆層を構成する(Cr,Y)N層の平均層厚が1μm未満では、自身のもつすぐれた耐熱性、潤滑性を長期に亘って発揮するには不十分であり、一方その平均層厚が5μmを越えると、銅合金、炭素鋼等の低硬度で溶着性が高い被削材の高速切削加工では切刃部にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜5μmと定めた。
そして、上記(Cr,Y)N層は、例えば図1に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に基体を装入し、ヒータで装置内を、例えば500℃の温度に加熱した状態で、所定組成のCr−Y合金がセットされたカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に、例えば電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば2Paの反応雰囲気とし、一方上記基体には、例えば−100Vのバイアス電圧を印加した条件で蒸着することにより、上記(Cr,Y)N層を硬質被覆層として形成することができる。
この発明の被覆工具は、硬質被覆層を構成する(Cr,Y)N層が、すぐれた高温硬さと高温強度、さらに、一段とすぐれた耐熱性及び潤滑性を備えていることから、特に低硬度で切刃部に対する溶着性の高い銅合金、炭素鋼などの被削材を、大きな発熱を伴う高速切削条件で切削加工した場合であっても、すぐれた潤滑性と耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、ISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A−1〜A−10を形成した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、ISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体B−1〜B−6を形成した。
(a)ついで、上記の工具基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置内に上記工具基体を装入し、さらに装置内にカソード電極(蒸発源)として所定組成の硬質被覆層形成用のCr−Y合金とアノード電極を配置し、
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Cr−Y合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
(c)次に、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、前記工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Cr−Y合金とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表3に示される目標組成、目標層厚の(Cr,Y)N層からなる硬質被覆層を1〜5μmの平均層厚で蒸着形成し、
上記(a)〜(c)により、本発明被覆工具としての本発明表面被覆スローアウエイチップ(以下、本発明被覆チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Cr−Y合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
(c)次に、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、前記工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Cr−Y合金とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表3に示される目標組成、目標層厚の(Cr,Y)N層からなる硬質被覆層を1〜5μmの平均層厚で蒸着形成し、
上記(a)〜(c)により、本発明被覆工具としての本発明表面被覆スローアウエイチップ(以下、本発明被覆チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、これら工具基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、カソード電極(蒸発源)として金属Crを装着し、まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の金属Crとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記工具基体に印加するバイアス電圧を−100Vに下げて、前記金属Crのカソード電極とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、もって前記工具基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれの表面に、表4に示される目標層厚の窒化クロム(CrN)層で構成された硬質被覆層を蒸着形成することにより、比較被覆工具としての表面被覆スローアウエイチップ(以下、比較被覆チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
つぎに、上記の各種の被覆チップを、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆チップ1〜16および比較被覆チップ1〜16について、
被削材:JIS・S45Cの丸棒、
切削速度: 270 m/min.、
切り込み: 2.0 mm、
送り: 0.30 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件A)での炭素鋼の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は、150m/min.)、
被削材:JIS・C1100の丸棒、
切削速度: 240 m/min.、
切り込み: 2.0 mm、
送り: 0.20 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件B)での銅合金の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は、120m/min.)、
被削材:JIS・S10Cの丸棒、
切削速度: 250 m/min.、
切り込み: 2.0 mm、
送り: 0.3 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件C)での軟鋼の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は、130m/min.)、
を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表5に示した。
被削材:JIS・S45Cの丸棒、
切削速度: 270 m/min.、
切り込み: 2.0 mm、
送り: 0.30 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件A)での炭素鋼の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は、150m/min.)、
被削材:JIS・C1100の丸棒、
切削速度: 240 m/min.、
切り込み: 2.0 mm、
送り: 0.20 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件B)での銅合金の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は、120m/min.)、
被削材:JIS・S10Cの丸棒、
切削速度: 250 m/min.、
切り込み: 2.0 mm、
送り: 0.3 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件C)での軟鋼の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は、130m/min.)、
を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表5に示した。
原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr3C2粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、TiC/WC=50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表6に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの3種の工具基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表6に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22mm、および20mm×45mmの寸法、並びにいずれもねじれ角30度の4枚刃スクエア形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)C−1〜C−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体(エンドミル)C−1〜C−8の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表7に示される目標組成および目標層厚の(Cr,Y)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、本発明被覆工具としての本発明表面被覆超硬製エンドミル(以下、本発明被覆エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記の工具基体(エンドミル)C−1〜C−8の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表7に示される目標層厚のCrN層からなる硬質被覆層を蒸着することにより、従来被覆工具としての表面被覆超硬製エンドミル(以下、比較被覆エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明被覆エンドミル1〜8および比較被覆エンドミル1〜8のうち、
本発明被覆エンドミル1〜3および比較被覆エンドミル1〜3については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S45Cの板材、
切削速度: 60 m/min.、
溝深さ(切り込み): 3 mm、
テーブル送り: 250 mm/分、
の条件での炭素鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は、30m/min.)、
本発明被覆エンドミル4〜6および比較被覆エンドミル4〜6については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・C1100の板材、
切削速度: 50 m/min.、
溝深さ(切り込み): 3.5 mm、
テーブル送り: 200 mm/分、
の条件での銅合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は、30m/min.)、
本発明被覆エンドミル7,8および比較被覆エンドミル7,8については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S10Cの板材、
切削速度: 50 m/min.、
溝深さ(切り込み): 3.5 mm、
テーブル送り: 230 mm/分、
の条件での軟鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は、30m/min.)、
をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表7にそれぞれ示した。
本発明被覆エンドミル1〜3および比較被覆エンドミル1〜3については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S45Cの板材、
切削速度: 60 m/min.、
溝深さ(切り込み): 3 mm、
テーブル送り: 250 mm/分、
の条件での炭素鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は、30m/min.)、
本発明被覆エンドミル4〜6および比較被覆エンドミル4〜6については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・C1100の板材、
切削速度: 50 m/min.、
溝深さ(切り込み): 3.5 mm、
テーブル送り: 200 mm/分、
の条件での銅合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は、30m/min.)、
本発明被覆エンドミル7,8および比較被覆エンドミル7,8については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S10Cの板材、
切削速度: 50 m/min.、
溝深さ(切り込み): 3.5 mm、
テーブル送り: 230 mm/分、
の条件での軟鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は、30m/min.)、
をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表7にそれぞれ示した。
上記の実施例2で製造した直径が8mm(工具基体C−1〜C−3形成用)、13mm(工具基体C−4〜C−6形成用)、および26mm(工具基体C−7、C−8形成用)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれぞれ4mm×13mm(工具基体D−1〜D−3)、8mm×22mm(工具基体D−4〜D−6)、および16mm×45mm(工具基体D−7、D−8)の寸法、並びにいずれもねじれ角30度の2枚刃形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(ドリル)D−1〜D−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体(ドリル)D−1〜D−8の切刃に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表8に示される目標組成および目標層厚の(Cr,Y)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、本発明被覆工具としての本発明表面被覆超硬製ドリル(以下、本発明被覆ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記の工具基体(ドリル)D−1〜D−8の表面に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表8に示される目標層厚を有するCrN層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、比較被覆工具としての表面被覆超硬製ドリル(以下、比較被覆ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明被覆ドリル1〜8および比較被覆ドリル1〜8のうち、本発明被覆ドリル1〜3および比較被覆ドリル1〜3については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S45Cの板材、
切削速度: 80 m/min.、
送り: 0.4 mm/rev、
穴深さ: 8 mm、
の条件での炭素鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は、50m/min.)、
本発明被覆ドリル4〜6および比較被覆ドリル4〜6については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・C1100の板材、
切削速度: 70 m/min.、
送り: 0.35 mm/rev、
穴深さ: 8 mm、
の条件での銅合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は、40m/min.)、
本発明被覆ドリル7,8および比較被覆ドリル7,8については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S10Cの板材、
切削速度: 45 m/min.、
送り: 0.2 mm/rev、
穴深さ: 7 mm、
の条件での軟鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は、30m/min.)、
をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表8にそれぞれ示した。
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S45Cの板材、
切削速度: 80 m/min.、
送り: 0.4 mm/rev、
穴深さ: 8 mm、
の条件での炭素鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は、50m/min.)、
本発明被覆ドリル4〜6および比較被覆ドリル4〜6については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・C1100の板材、
切削速度: 70 m/min.、
送り: 0.35 mm/rev、
穴深さ: 8 mm、
の条件での銅合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は、40m/min.)、
本発明被覆ドリル7,8および比較被覆ドリル7,8については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S10Cの板材、
切削速度: 45 m/min.、
送り: 0.2 mm/rev、
穴深さ: 7 mm、
の条件での軟鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は、30m/min.)、
をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表8にそれぞれ示した。
この結果得られた本発明被覆工具としての本発明被覆チップ1〜16、本発明被覆エンドミル1〜8、および本発明被覆ドリル1〜8の硬質被覆層を構成する(Cr,Y)N層の組成を、透過型電子顕微鏡を用いてのエネルギー分散X線分析法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
また、本発明被覆工具と比較被覆工具の硬質被覆層の平均層厚を走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
表5、7、8に示される結果から、本発明被覆工具は、特に銅合金、炭素鋼等の低硬度であって工具表面に溶着し易い被削材の切削加工を、高速切削条件で行った場合でも、(Cr,Y)N層からなる硬質被覆層が耐熱性を備えすぐれ潤滑性を発揮することによって、チッピングの発生なく、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、硬質被覆層がCrN層で構成された比較被覆工具においては、被削材および切粉と前記硬質被覆層との粘着性および反応性が一段と高くなり、その一方で潤滑性が低下するために、切刃部にチッピングが発生するようになり、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、一般鋼や普通鋳鉄などの切削加工は勿論のこと、特に銅合金、炭素鋼等の低硬度であって工具表面に溶着し易い被削材の高速切削加工でも、すぐれた潤滑性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Cr1−XYX)N(但し、XはYの含有割合を示し、原子比で、0.01≦X≦0.1)
を満足するCrとYの複合窒化物層からなる硬質被覆層を形成した表面被覆切削工具。
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JP2007295411A JP2009119550A (ja) | 2007-11-14 | 2007-11-14 | 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 |
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