JP2009112540A - 関節屈曲動作予測装置および関節屈曲動作予測方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】計測可能な情報を用いて関節の屈曲動作を比較的簡単に推定する。
【解決手段】関節屈曲動作予測装置100は、関節の屈曲角度を検出する角度センサ1と、角度センサ1を関節に沿わせて装着するための装着部2と、屈曲角度に基づいて関節の屈曲角速度を演算する角速度演算部3と、関節の屈曲角度および屈曲角速度のデータを記憶する角度記憶部4と、関節の複数種類の屈曲動作パターンにそれぞれ対応して、角度記憶部4に記憶された関節の屈曲角度および屈曲角速度と予測判定の基準値となる参照角度データの対応関係を定義するアルゴリズムを記憶するアルゴリズム記憶部6と、角度記憶部4に記憶された関節の屈曲角度および屈曲角速度と前記アルゴリズムに基づいて当該屈曲動作の種類を判定し、関節の最終的な屈曲状態を予測する予測判定部5と、を有する。
【選択図】図1
【解決手段】関節屈曲動作予測装置100は、関節の屈曲角度を検出する角度センサ1と、角度センサ1を関節に沿わせて装着するための装着部2と、屈曲角度に基づいて関節の屈曲角速度を演算する角速度演算部3と、関節の屈曲角度および屈曲角速度のデータを記憶する角度記憶部4と、関節の複数種類の屈曲動作パターンにそれぞれ対応して、角度記憶部4に記憶された関節の屈曲角度および屈曲角速度と予測判定の基準値となる参照角度データの対応関係を定義するアルゴリズムを記憶するアルゴリズム記憶部6と、角度記憶部4に記憶された関節の屈曲角度および屈曲角速度と前記アルゴリズムに基づいて当該屈曲動作の種類を判定し、関節の最終的な屈曲状態を予測する予測判定部5と、を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、人体などの関節の屈曲動作におけるパワーアシストなどに利用可能な関節屈曲動作予測のための装置および方法に関する。
人体に装着して人間の動作を補助するためのパワーアシスト機器には、装着者の負担にならない自然なアシスト動作を行なう機能が求められており、その実現には装着者の意思を把握することがポイントである。従来の装着型パワーアシストシステムの多くは筋電位信号のような生体信号を計測している。代表的な例としてロボットスーツHAL (Hybrid Assistive Limb) のシステムがある(特許文献1、非特許文献1参照)。
特開2006−294号公報
Kawamoto H., Lee S., Kanbe S., Sankai Y., "Power Assist Method for HAL-3 using EMG-based Feedback Controller", Proc. of Int'l Conf. on Systems, Man and Cybernetics (SMC2003), pp.1648-1653, 2003.
従来のパワーアシストシステムでは、計測した生体信号のパターンから現在行なわれている動作を推定し、その後推定された動作に基づき支援量を決定し、装着されたアクチュエータに指令を出して装着者の支援を行なうのが普通である。しかし、計測された生体信号にノイズが多く含まれることや、生体信号は長時間の計測が難しいこと、個々人の生体信号にフィットした推定アルゴリズムを作成しなければならないことなど、様々な課題があり、この方法には限界があると考えられる。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、計測可能な情報を用いて関節の屈曲動作を比較的簡単に推定することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る関節屈曲動作予測装置は、関節の屈曲角度を検出する角度センサと、前記角度センサを関節に沿わせて装着するための装着部と、前記屈曲角度に基づいて関節の屈曲角速度を演算する角速度演算部と、前記関節の屈曲角度および屈曲角速度のデータを記憶する角度記憶部と、前記関節の複数種類の屈曲動作パターンにそれぞれ対応して、前記角度記憶部に記憶された前記関節の屈曲角度および屈曲角速度と予測判定の基準値となる参照角度データの対応関係を定義するアルゴリズムを記憶するアルゴリズム記憶部と、前記角度記憶部に記憶された前記関節の屈曲角度および屈曲角速度と前記アルゴリズムに基づいて当該屈曲動作のパターンの種類を判定し、前記関節の最終的な屈曲状態を予測する予測判定部と、を有することを特徴とする。
また、本発明に係る関節屈曲動作予測方法は、角度センサを関節に沿わせて装着する装着ステップと、前記装着ステップの後に、所定の複数種類の関節屈曲動作パターンに沿う動作がなされたときに前記角度センサによって関節の屈曲角度を検出して、その屈曲角度に基づいて関節の屈曲角速度を演算し、予測判定の基準値となる参照角度データを記憶する参照角度データ記憶ステップと、前記参照角度データ記憶ステップの後に、対象動作に対応して、前記角度センサによって関節の屈曲角度を検出して、その屈曲角度に基づいて関節の屈曲角速度を演算し、当該対象動作における角度データを記憶する対象角度データ記憶ステップと、前記所定の複数種類の関節屈曲動作パターンに対応させて前記参照角度データと対象角度データとの対応関係を定義するアルゴリズムによって、前記対象角度データに基づいて、当該対象動作のパターンの種類を判定し、前記関節の最終的な屈曲状態を予測する予測判定ステップと、を有することを特徴とする。
本発明によれば、パワーアシスト機器の推定アルゴリズムに含まれる各種パラメータ設定値を、各装着者の動作に基づいて、その装着者ごとに簡単に抽出し設定することができる。これにより、装着者に負担のかかりにくいパワーアシスト機器に適した意思の推定システムが構成できる。
手の把持動作における力をアシストするためのパワーアシストグラブは各指の関節に動作部が設けられ、動作部が屈曲することにより指を曲げる動作をサポートする。このシステムではスムーズな力のアシストを行なうために、関節屈曲動作を予測するシステムが必要となる。しかし、手の指や甲はセンサやアクチュエータを配置するには場所が狭く、また装着者への負担軽減のため装着物の重量はなるべく軽くしたいし、把持動作を行なえるようにするためには手のひらには何も配置できない。そこで手の把持機能を解析することにより、なるべく簡略化したシステムとするのが望ましい。
人間の手は各指3ヶ所ずつ15ヶ所の関節をもち様々な形状に変形することができるが、物を把持する動作における変形状態の種類(把持形状)は数が限られる。リハビリテーション等の分野で把持形状を分類する研究が行なわれているが、全種類の把持形状で力をサポートする必要は無く、重い物を持つ形状など力が必要となりうる把持形状のみでサポートできれば良い。サポートする形状を減らすことによりシステムが簡略化される。アシストする必要がある把持形状を再分類すると以下の3種類となる。
(1)にぎる(grip):5本の指を使用し、手のひらに包み込むようにして力を入れて物を把持する形状。筒状の物を把持する形状。母指と示指で輪を描くように全ての関節を対象物に沿わせるように屈曲させて把持する形状。手すり、包丁、うちわ、等を把持する形状。
(2)つかむ(grasp):5本の指を使用し、示指から小指までの四本の指はやや伸ばした状態で、手のひらに包み込まず、母指と示指から小指までの四本の指で対象をはさむように力を入れて物を把持する形状。本、水の入ったコップ、等を把持する形状。
(3)つまむ(pinch):母指、示指、中指の3本の指を使用し、比較的小さい物を把持する形状。ボトルの口等を把持する形状。
これらの三種類の把持形状さえ識別できれば、力の必要な把持動作をする時にタイミング良く指の力をサポートするシステムが開発できる。本実施形態では上記三種類の把持形状のうちどの動作を行なうかを把持動作の初期段階で識別する。
関節角度データから把持形状を識別するためには多くの関節角度を測定すればよいが、システムを簡略化したい。そこで以下の考察に基づいて角度センサの数を最小限に抑えた。
示指から小指の第一関節と第二関節はリンク機構により協調動作し、双方の相対角度をプロットすると直線状のグラフが描ける。つまり示指から小指の第一関節と第二関節では、片方の角度が測定できればもう片方の角度が決まる。指の第一関節と第二関節では通常は第二関節の方が大きくセンサが設置しやすいことを考慮すると、角度センサは第二関節にのみ設置すれば、第一関節と第二関節の角度が共に測定できる。
また、円柱状の物体を握る時には示指と中指はほぼ同じ角度変化で指を曲げる。また、薬指と小指の運動神経は一般的には完全に分離しておらず、屈曲時には両者は協調して同じように動作することが一般的に知られている。よって示指と中指、および薬指と小指の二本ずつについて、把持動作では同じ動作をすると見なす。
上記3種類の把持動作の中で「つまむ」動作では、示指および中指はつまむように屈曲するが、薬指および小指は、多くの人は示指および中指の屈曲状態とは異なる角度を保つ。そこで、薬指および小指の第二関節および第三関節の屈曲角度変化の特徴を識別できれば、「つまむ」動作を「にぎる」および「つかむ」動作と識別できる。
母指は上記3種類の把持形状全ての場合で屈曲するため、識別という意味では情報量が少ないので測定しなくても良い。
以上記した考察の結果、本実施形態では把持動作における指の形状を、3関節の角度を以下の2パターンどちらかで測定することによって識別することとした。実験にて確認を行なった結果、全ての組み合わせが有効であった。
(a)示指第三関節または中指第三関節、示指第二関節または中指第二関節、
薬指第三関節または小指第三関節、の3箇所
(b)示指第三関節または中指第三関節、示指第二関節または中指第二関節、
薬指第二関節または小指第二関節、の3箇所
薬指第三関節または小指第三関節、の3箇所
(b)示指第三関節または中指第三関節、示指第二関節または中指第二関節、
薬指第二関節または小指第二関節、の3箇所
上記(a)および(b)を言い換えると、測定位置としてつぎの3箇所の組み合わせになる。
(ア)示指第三関節または中指第三関節
(イ)示指第二関節または中指第二関節
(ウ)薬指第二関節、薬指第三関節、小指第二関節、小指第三関節のうちのいずれか一つ
(ア)示指第三関節または中指第三関節
(イ)示指第二関節または中指第二関節
(ウ)薬指第二関節、薬指第三関節、小指第二関節、小指第三関節のうちのいずれか一つ
把持形状を識別した結果をアクチュエータ駆動トリガとして用いることにより、パワーアシストグラブの把持動作について、最適な関節部位にアシスト力を加えることができる。具体的には「にぎる」形状では手の指全体を曲げるため全ての指関節の力をアシストする。「つかむ」形状では示指から小指の第二関節はあまり屈曲しないためアシストしすぎず、他は全ての関節をアシストする。「つまむ」形状では小指と薬指にはアシストする必要が無く、他の3指のアシストを行なう、などのようにする。
このような一つの把持モードに対応するアシスト部位を予め設定しておくことで、各把持モードで適切なアシストが実現できる。
また発明者らの実験では、上記3種類の把持動作を行なった際の手指角度の時系列変化について、把持動作を繰り返しても、把持動作の速さを変化させても、角度変化はほとんど決まった経路を通るという特徴がみられた。よって代表的な把持経路プロット教示データと現在までの時系列データの形状の類似度を比較することにより、現在の把持動作がどのパターンであるか識別できると考えた。
以上の理由により、本実施形態では関節角度変化経路のパターンを識別することにより、把持動作が終了する前に把持動作を予測し、装着者の意思を推定する方法を採用する。パターン識別手法にはDynamic Time Warping法(以下DTW法)を応用した。DTW法は、ある測定された時系列データの形状と、事前に測定された参照時系列データの形状の類似度を算出する汎用的なアルゴリズムである。実験により、本アルゴリズムの採用によればつぎのような効果が得られることがわかった。すなわち、ロバストな推定アルゴリズムにより、繰り返し誤差を吸収して推定できること、そして、汎用的な推定アルゴリズムにより、装着者が変わっても高い推定確率が維持できることがわかった。
本実施形態のアシストの考え方は、手指関節の動作に限らず、肘など別の部位のアシスト機器にも応用可能である。
図1に、本発明に係る一実施形態である関節屈曲動作予測装置100を、左手の甲側から見た図をモチーフに示す。
角度センサ1は関節部に設置されて関節の屈曲角度を測定する機能をもち、測定値データを演算部3に出力する。装着部2は角度センサ1を確実に関節部分に設置する機能をもつ。演算部3は角度センサ1から得られた角度の時系列データを時間微分することにより角速度を計算し、角度および角速度データを角度記憶部4に出力する。角度記憶部4は、角度および角速度の過去から現在までの時系列データおよび学習した角度データを記憶する機能をもつ。
判定部5は、角度記憶部4に蓄積された時系列データと角度記憶部4が記憶している学習データに基づき、把持モードを判定する機能をもつ。アルゴリズム記憶部6は、判定部5で把持モードを判定するために必要なアルゴリズムを記憶する機能をもつ。判定部5は、角度記憶部4がもつデータをアルゴリズム記憶部6がもつアルゴリズムにより演算し、関節屈曲動作予測装置100の出力である判定値を出力する。
角度センサ1は指のように比較的小さな関節部でも装着可能なもの、たとえば光ファイバを通る光量変化を検出する方式や、関節の屈曲により生じるワイヤ位置変化量を検出する方式のものが好ましい。具体的には、たとえば、新川電機株式会社から市販されているシェイプセンサS700(商品名)や、株式会社リベックスから市販されているワイヤインパルスコーダ(商品名)などを利用できる。
装着部2は、なるべく角度センサ1が正確に関節角度を測定できるよう、伸びやたるみの少ない、装着者に適した形状のものを使用することが望ましい。
演算部3、角度記憶部4、判定部5、アルゴリズム記憶部6は、一般的なパーソナルコンピュータで駆動するプログラムが使用できる。
発明者らの実験では、演算部3では1 ms毎の角度情報を取得し、50Hzのローパスフィルタおよび微分フィルタにより角速度を求めた。
角度記憶部4は、過去の所定の時間分もしくは所定の関節角度変化分の角度情報および角速度情報を記憶する。発明者らの実験では、最新の角度データと、示指第三関節もしくは示指第二関節に設置した角度センサの出力変化量の絶対値が0.5°変化する毎に3つの角度センサからサンプリングした角度の過去10サンプリングデータ分を角度記憶部4に保持させた。
以下、判定部5およびアルゴリズム記憶部6について詳細に説明する。はじめにDTW法について記す。DTW法は連続量の変化の時間伸び変動を吸収でき、シンプルで計算量が少ないため実装しやすい特徴をもった計算モデルである。
把持動作における角度プロットは各把持パターンで特徴的な曲線を描く。本実施形態のシステムでは3関節の角度データを取得しているためその曲線は3次元空間に描かれる角度変化の軌跡の形状となる。この形状に対してDTW法を適用し、あらかじめ装着者が規定の動作を行なうことによって得られる学習データとの類似度を算出して判定値を出力する。
DTW法は、図2に示すように、時系列方向の伸び縮みにかかわらず、時間変化するデータの軌跡の形状類似度を比較できるパターンマッチング手法である。
データAをn個の時系列データであるとし、データBをm個の時系列データであるとする。
A = {a1, a2, a3, …, an}
B = {b1, b2, b3, …, bm}
A = {a1, a2, a3, …, an}
B = {b1, b2, b3, …, bm}
つぎにDynamic Time Warping 法のアルゴリズムの詳細を、図3を参照して説明する。
以上の選び方をa1,b1からなる距離d1,1になるまでくり返す。最終的なくり返し回数をp回とする。p個選ばれた距離d1,d2,d3,…,dpの平均値が類似度(Time Warping距離)DA,Bとなる。以上をまとめるとDynamic Time Warping法の一般式は以下のように表わされる。
つぎに、発明者らの実験で検討したDTW法の具体的な応用例を記す。例として、示指第二関節、示指第三関節、薬指第二関節の3ヶ所に角度センサを設置した発明者らの実験内容を示す。角度記憶部4が記憶しているデータ系列Qを Q = qm(xm, ym, zm)、学習データRをRS = rs, n(xs, n, ys, n, zs, n)で記す。mは角度記憶部4が記憶している過去のデータ数で、発明者らの実験ではm = 10とした。x, y, zはそれぞれ角度センサで測定された関節角度の値で、xは示指第二関節、yは示指第三関節、zは薬指第二関節の角度を示し、q(x, y, z)としたときは最新の取得データを指すことにする。学習データRは把持パターンの定義数(S個)だけ用意される。今回の把持パターンは、「にぎる」、「つかむ」、「つまむ」のの三種類(S = 1, 2, 3)である。nは個々(S = 1, 2, 3)の学習データのデータ系列数でn = 30に設定した。また、数式5に示したDTW法アルゴリズム内のくり返し回数pをp = 10に設定した。
いま、測定中のデータの最新の値をqm(xm, ym, zm)とする。はじめにqm(xm, ym, zm)と最も距離dSが短いrs, nをn = 1〜30に対し総当り計算で求める。選ばれたrsをrs, t(ws, t, xs, t, ys, t, zs, t) (n = t)とする。この二点間のユーグリッド距離ds, 1はつぎの式である。
DTW法の出力となる類似度は、ユーグリッド距離の和であるTime Warping距離という数値で表わされる。Time Warping距離はΣdS = dS,1 + dS,2 + dS,3 + … + dS,10を一定の法則に従って計算することで求められる。次式はdS,2を決定する定義式である。
このように時系列データをさかのぼって距離を計算する。発明者らの行なった実験ではTime Warping距離DSをつぎの式で定義した。
DS = ΣdS = dS,1 + dS,2 + dS,3 + … + dS,10
DS = ΣdS = dS,1 + dS,2 + dS,3 + … + dS,10
続いて学習データの設定方法を記す。標準的な3種類の把持動作、すなわち、「にぎる」、「つかむ」、「つまむ」の各動作を行なった際の3角度センサの時系列データは、それぞれ、図4、5および6のような3次元曲線を描く点の集合データで得られる。これらの図で、曲線20は3次元曲線を示し、曲線21および22はそれぞれ、曲線20を2次元座標面に投影した2次元曲線を示している。
図4、5および6の点の集合からds, 1を求めるのは計算量が多すぎるので、図4、5および6の各曲線からn個の点を抽出する。以下の説明では、たとえば、n = 30とする。抽出基準は曲線の長さを等分するようにでもよいし、曲線の取得時間を等分するようにでもよい。
ここで、各曲線からn個の点を抽出する方法の例を示すとつぎのようになる。
まず、生データの各プロット間の距離dを求め、全てのdの和Σdを算出する。つぎに、生データ系列の初めの点を1点目として抽出する。つぎに、生データ系列の初めの点からdを1つずつ足していき、和がΣd/29を越えた点を抽出する。つぎに、抽出された点から再びdを1つずつ足していき、和が再びΣd/29を越えた点を抽出する。そして、以上の操作をくり返す。そして、30点目に生データ系列最後の点を抽出する。
さらに、人間の動作は繰り返しでばらつくので、同じ標準把持動作を複数回、発明者らの実験では、3回ずつ行なってから、平均化し、n個の点のデータを抽出した。抽出後のデータを、「にぎる」、「つかむ」、「つまむ」の各標準動作について、それぞれ図7、8および9に示す。これらの図で、プロット25は図4、5および6の3次元曲線に対応し、プロット26および27はそれぞれ2次元座標面に投影した2次元曲線21および22に対応する。図7、8および9のプロット数n = 30個の3次元データを、学習データRsとして角度記憶部4に記憶させる。
図10に、本実施形態における把持動作意思取得アルゴリズムを記したフローチャートを示す。各modeはシステムの状態を示し、各状態はつぎのように表わされる。
開始点においてシステムのモードはmode = 0の待機状態である。このとき、演算部3および角度記憶部4は動作しているが判定部5は動作していない。
ステップS1において把持動作の開始を検出し、システムをmode = 1に移行する。このときはシステム演算開始状態にあり、判定部5が計算を開始する。つぎに、ステップS2においてTime Warping距離DSの計算ループを開始する。発明者らの実験では角度センサのサンプリングタイムに合わせて1 msで計算ループを作成した。
ここで、最新取得データ10点をサンプリングする方法の例を説明する。
計測する関節とその角度値を、関節X = x、関節Y = y、関節Z = zとする。角度変化幅は、Xが0°〜 50°、Yが0°〜 30°、Zが0°〜 45°とする。これは、図7に示す「にぎる」をモチーフとする。また、計測角度をサンプリングする配列B[m]を、B[1]〜B[10] とする。
まずB[1]〜B[10]に、初期データとして1 msでサンプリングしたデータを10個代入する。このとき、10 msの間なので値は大幅に変化することはない。その後、図11に示すように、B[10]に1 ms毎に最新の測定データを代入する。そして、B[10]のデータがB[9]のデータと比較して、x,y,zのいずれかが±0.5°以上変化したとき、B[m]のデータを一つずらし、B[1]は捨てる。すなわち、 B[m] = B [m+1]とする。ここで、閾値を±0.5°に設定した理由は、角度Xの変化幅の1%の値を目安にしたためである。
つぎに、図10のステップS2における計算により、判定値が確定せず2つの把持動作となる可能性があると判定された場合、ステップS3においてシステムをmode = 2に移行する。mode = 2は、把持動作開始状態であって、判定値が2つの把持動作について小さくなり、どちらの把持動作か区別できない時に、その2つの把持動作で共通するアシスト部位をサポートするようにアシストグラブを動作させるモードである。このとき、判定部5は計算を続ける。
判定値が確定し把持モードが推定されたとき、ステップS4において各把持モードに対応したmodeにシステムを移行する。mode = 3は「にぎる」モードであり、「にぎる」動作をサポートするようにアシストグラブを動作させるモードである。判定部5は計算を続ける。同様に、mode = 4は「つかむ」モードであり、「つかむ」動作をサポートするようにアシストグラブを動作させるモードである。判定部5は計算を続ける。mode = 5は「つまむ」モードであり、「つまむ」動作をサポートするようにアシストグラブを動作させるモードである。判定部5は計算を続ける。
mode = 1からmode = 5において、判定部5はTime Warping距離DSの計算を行ない、Time Warping距離Ds = D1、D2、D3が算出される。
ここで、参照データA(たとえば30点)と取得データB(たとえば10点)から類似度(距離)DA,Bを求める方法の例を、図12および図13を参照して説明する。
はじめに、系列Bの最新データb10に対して、系列AS = 1、AS = 2それぞれの中から、最も距離が近い点aS,nをas,1〜as,30まで総当たり計算で求め、dS,1 = d(aS,n, b10)をS = 1, 2それぞれについて求める。
続いてDynamic Time Warping法を用い、d(aS,n-1, b10)、d(aS,n, b9)、d(aS,n-1, b9)の中から最も距離が近いものをdS,2とする。
これをくり返し、dS,1, dS,2, dS,3, …, dS,10(くり返し回数p = 10)まで求める。その結果、類似度 DSはつぎの式で求められる。
DS = (dS,1 + dS,2 + dS,3 + … + dS,10 ) / p
この算出方法を、最新取得データb10が更新されるたびに、1 ms間隔で行なう。そしてDS=1、DS=2 の値を比較し、一方がもう一方の半分以下の数になったときに、数が少なくなったほうの参照データが、動作しようとしている把持モードであると判定される。
この算出方法を、最新取得データb10が更新されるたびに、1 ms間隔で行なう。そしてDS=1、DS=2 の値を比較し、一方がもう一方の半分以下の数になったときに、数が少なくなったほうの参照データが、動作しようとしている把持モードであると判定される。
つぎに、Dsの値から把持モードの判定値を出力する方法について、図10のフローチャートの一部を詳細に記した図14のフローチャートを用いて記す。
規定した把持モードと全く異なる手の動作のときに誤判定されることを防ぐため、DSに閾値を設定し、閾値以下の時にのみmode = 2以降に遷移する。発明者らの実験では閾値条件をDS < 200に設定した。この閾値は複数回取得した学習データを評価することにより設定した。具体的には学習データを取得する際3回規定の動作を行なう際の角度変化を測定する時に、1回目の測定データと2回目および3回目の測定データとのTime Warping距離を計算した結果が含まれうるように、Dsの閾値を設定した。
また、把持動作の開始直後に誤判定されて突然屈曲がアシストされるのを防ぐため、角度センサ出力値に閾値を設定した。発明者らの実験では、学習データから角度変化値の最大値と最小値を抽出し、その値の少ない方から1 / 3の角度値を越えている時に把持動作が開始していると判定した。具体的例として、示指第二関節xsについてのある把持動作形状の学習データについて最小値xs, minと最大値xs, maxを抽出し、その値をつぎの式で計算する。
xs閾値 = (xs, max - xs, min) / 3
これを3種類の把持動作に対応する学習データについて行ない、S = 1, 2, 3の結果であるx1閾値、x2閾値、x3閾値を求めた中から、最小値min xS閾値を、角度xの把持動作開始のプリ動作を判定する閾値とした(図15参照)。この閾値をyおよびzについても求め、(x, y, z)の閾値に設定した。
これを3種類の把持動作に対応する学習データについて行ない、S = 1, 2, 3の結果であるx1閾値、x2閾値、x3閾値を求めた中から、最小値min xS閾値を、角度xの把持動作開始のプリ動作を判定する閾値とした(図15参照)。この閾値をyおよびzについても求め、(x, y, z)の閾値に設定した。
閾値は、参照データの角Xおよび角Yの角度変化範囲、Lx, Ly の値に対して、最新の測定データb10の値が、閾値であるLx / 3, Ly / 3 以上になった時に、把持モードの判定を開始するという意義をもつ。このような閾値を設定する理由は、関節角度が小さい場合には各把持モードの参照データの差異がはっきりせず、また、手の動きの誤差が大きく、誤判定率が高くなるためである。また、判定タイミングが早すぎると、アクチュエータの駆動が装着者に違和感を与えることがある。
図10のフローチャートの一部を抽出して記した図14のフローチャートには、例としてD1のみがD2、D3よりも小さくなり、「にぎる」モードに判定される時の遷移パターンを記した。発明者らの実験では1つのDsの値が小さいと判定する基準として、上記二種類の閾値基準を満たしかつ、1つのDsの値が他2つのDsの値の二分の一以下の値になった時に学習データとマッチングしたと判定した。
閾値の設定方法およびTime Warping距離Dsが他より小さくなったと判定する基準値(図14中に下線を引いた所の数値)は判定合致確率に関わる値であるので、システムに応じて値を調節する必要がある。発明者らの実験においてはこれらの閾値を上記の値に設定することにより、装着者が代わっても60%以上の判定率で把持動作を識別することができるパワーアシストグラブのシステムを作成することができた。
以上説明した実施形態によれば、関節角度の測定箇所が少なく、システムを簡略化でき、繰り返し動作の誤差を吸収して推定できる。また、装着者が代わっても高い推定確率が維持できる。さらに、装着者の関節動作の特徴を抽出でき、個々人で関節角度変化の特徴量が異なることを考慮して簡単に運用することができる。また、人間の動作の繰り返し誤差を吸収可能であるロバストな推定アルゴリズムを利用できる。
1 角度センサ
2 装着部
3 演算部
4 角度記憶部
5 判定部
6 アルゴリズム記憶部
100 関節屈曲動作予測装置
2 装着部
3 演算部
4 角度記憶部
5 判定部
6 アルゴリズム記憶部
100 関節屈曲動作予測装置
Claims (9)
- 関節の屈曲角度を検出する角度センサと、
前記角度センサを関節に沿わせて装着するための装着部と、
前記屈曲角度に基づいて関節の屈曲角速度を演算する角速度演算部と、
前記関節の屈曲角度および屈曲角速度のデータを記憶する角度記憶部と、
前記関節の複数種類の屈曲動作パターンにそれぞれ対応して、前記角度記憶部に記憶された前記関節の屈曲角度および屈曲角速度と予測判定の基準値となる参照角度データの対応関係を定義するアルゴリズムを記憶するアルゴリズム記憶部と、
前記角度記憶部に記憶された前記関節の屈曲角度および屈曲角速度と前記アルゴリズムに基づいて当該屈曲動作のパターンの種類を判定し、前記関節の最終的な屈曲状態を予測する予測判定部と、
を有することを特徴とする関節屈曲動作予測装置。 - 前記アルゴリズムは、関節角度変化の時系列データを前記参照データとパターンマッチングすることによりそれらのデータの類似度を算出することを特徴とする請求項1に記載の関節屈曲動作予測装置。
- 前記アルゴリズムは、Dynamic Time Warping法を応用したパターンマッチングスコアの算出を行なうことを特徴とする請求項2に記載の関節屈曲動作予測装置。
- 前記角度記憶部は、現在までの角度センサの出力経過を所定の時間間隔のプロットとして記憶し、また、規定した複数種類の動作パターンの学習データを所定の時間間隔のプロットとして記憶し、
前記アルゴリズムは、前記出力経過と前記学習データの変化パターンの類似度を算出すること、
を特徴とする請求項3に記載の関節屈曲動作予測装置。 - 前記角度記憶部は、現在までの角度センサの出力経過を所定の角度出力値間隔のプロットとして記憶し、また、規定した複数種類の動作パターンの学習データを所定の角度出力値間隔での経路のプロットとして記憶し、
前記アルゴリズムは、前記出力経過と前記学習データの変化パターンの類似度を算出すること、
を特徴とする請求項3に記載の関節屈曲動作予測装置。 - 前記アルゴリズムは、前記出力経過と前記学習データの変化パターンの類似度を算出するに当たり、現在までの出力値を Q = qm(xm, ym, zm)、学習データをRS = rs, n(xs, n, ys, n, zs, n)、現在の関節角度の値をx, y, z、出力類似度であるTime Warping距離をDs、規定した動作パターン3種類の分類をS = 1, 2, 3で表わすとき、
QとRsの類似度を前記アルゴリズムで算出した結果である出力値Dsが、Ds < 200、かつ3角度センサ出力(x, y, z)が(x, y, z)の閾値に設定したx = (xs, max - xs, min) / 3、y = (ys, max - ys, min) / 3、z = (zs, max - zs, min) / 3で定義された角度以上の値である条件下において、D1 < D2 / 2 かつD1 < D3 / 2を満たした場合にS = 1で定義した動作パターンであるという推定結果を出力し、
D2 < D1 / 2 かつD2 < D3 / 2を満たした場合にS = 2で定義した動作パターンであるという推定結果を出力し、
D3 < D1 / 2 かつD3 < D2 / 2を満たした場合にS = 3で定義した動作パターンであるという推定結果を出力すること、
を特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の関節屈曲動作予測装置。 - 前記関節は手指の関節であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の関節屈曲動作予測装置。
- 前記角度センサが、一つの手の少なくとも第1ないし第3のセンサ位置を含む3箇所以上に設置されており、第1のセンサ位置は、示指第三関節または中指第三関節の近傍であり、第2のセンサ位置は示指第二関節または中指第二関節の近傍であり、第3のセンサ位置は薬指第二関節、薬指第三関節、小指第二関節、小指第三関節のいずれかの近傍であること、を特徴とする請求項7に記載の関節屈曲動作予測装置。
- 角度センサを関節に沿わせて装着する装着ステップと、
前記装着ステップの後に、所定の複数種類の関節屈曲動作パターンに沿う動作がなされたときに前記角度センサによって関節の屈曲角度を検出して、その屈曲角度に基づいて関節の屈曲角速度を演算し、予測判定の基準値となる参照角度データを記憶する参照角度データ記憶ステップと、
前記参照角度データ記憶ステップの後に、対象動作に対応して、前記角度センサによって関節の屈曲角度を検出して、その屈曲角度に基づいて関節の屈曲角速度を演算し、当該対象動作における角度データを記憶する対象角度データ記憶ステップと、
前記所定の複数種類の関節屈曲動作パターンに対応させて前記参照角度データと対象角度データとの対応関係を定義するアルゴリズムによって、前記対象角度データに基づいて、当該対象動作のパターンの種類を判定し、前記関節の最終的な屈曲状態を予測する予測判定ステップと、
を有することを特徴とする関節屈曲動作予測方法。
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