JP2009087543A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高出力を維持するとともに、燃料電池の表面における温度が局部的に高温となるのを防止し、使用する際の安全性を向上させることができる燃料電池を提供することを目的とする。
【解決手段】燃料電池1は、燃料電池セル10と、燃料電池セル10のアノード側およびカソード側に設けられたアノード導電層18、カソード導電層19と、アノード導電層18に対向させて設けられた燃料分配層30と、燃料分配層30の燃料電池セル10側とは異なる側に配置された燃料供給部43と、カソード導電層19に積層された保湿層50と、保湿層50に積層された、複数の空気導入口61を有する表面カバー60とを備える。燃料収容部41と燃料供給部43との間に設けられた流路44の一部は、表面カバー60の表面に設けられた流路支持部材70によって、表面カバー60の中央から縁辺部に向かって渦巻き状に固定される。
【選択図】図1
【解決手段】燃料電池1は、燃料電池セル10と、燃料電池セル10のアノード側およびカソード側に設けられたアノード導電層18、カソード導電層19と、アノード導電層18に対向させて設けられた燃料分配層30と、燃料分配層30の燃料電池セル10側とは異なる側に配置された燃料供給部43と、カソード導電層19に積層された保湿層50と、保湿層50に積層された、複数の空気導入口61を有する表面カバー60とを備える。燃料収容部41と燃料供給部43との間に設けられた流路44の一部は、表面カバー60の表面に設けられた流路支持部材70によって、表面カバー60の中央から縁辺部に向かって渦巻き状に固定される。
【選択図】図1
Description
本発明は、液体燃料を用いた燃料電池に関する。
近年、ノートパソコンや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これら携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされている。燃料電池は、燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料を補給すれば連続して長時間発電することが可能であるという特徴を有している。このため、燃料電池を小型化できれば、携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムとなる。
直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)は、小型化が可能であり、さらに燃料の取り扱いも容易であるため、携帯用電子機器の電源として有望視されている。DMFCにおける液体燃料の供給方式としては、気体供給型や液体供給型等のアクティブ方式や、燃料収容部内の液体燃料を電池内部で気化させて燃料極に供給する内部気化型等のパッシブ方式が知られている。
これらのうち、内部気化型等のパッシブ方式はDMFCの小型化に対して特に有利である。パッシブ型DMFCにおいては、例えばアノード(燃料極)、電解質膜およびカソード(空気極)を有する膜電極接合体(燃料電池セル)を、樹脂製の箱状容器からなる燃料収容部上に配置した構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。燃料収容部から気化した燃料を直接燃料電池セルに供給する場合、燃料電池の出力の制御性を高めることが重要となるが、現状のパッシブ型DMFCでは必ずしも十分な出力制御性は得られていない。
一方、DMFCの燃料電池セルと燃料収容部とを流路を介して接続することが検討されている(例えば、特許文献2−4参照。)。燃料収容部から供給された液体燃料を燃料電池セルに流路を介して供給することによって、流路の形状や径等に基づいて液体燃料の供給量を調整することができる。特許文献3には、燃料収容部から流路にポンプで液体燃料を供給する燃料電池が記載され、特許文献4には、電気浸透流ポンプを用いて液体燃料等を供給する燃料電池が記載されている。
また、上記した膜電極接合体を平面的に配置してなる燃料電池において、膜電極接合体の縁辺部は、周囲の大気等への熱の放散が多いため温度が低くなり、この縁辺部におけるアノード触媒層およびカソード触媒層における化学反応が促進されないこがある。また、燃料電池の内部で燃料を気化させて気体燃料を生じる内部気化型の燃料電池では、燃料を気化させる熱源として、膜電極接合体で発生する熱を利用することが多いが、この場合に、縁辺部では膜電極接合体自体の温度が低いため、燃料を気化させるための熱量が十分に得られないことがある。燃料を気化させるための熱量が不十分な膜電極接合体の縁辺部では、供給される気体燃料の量が少なくなり、さらに出力が低下することがある。逆に、膜電極接合体の中央部では、周囲の大気等へ熱を放散し難いために温度が高くなり、供給される気体燃料の供給も多くなり、出力が高くなる傾向がある。
ここで、例えば、燃料電池複合発電プラントにおいて、燃料電池に供給する燃料を、燃料加熱用の熱交換器を通過させて予め加熱し、その後燃料電池に供給する技術が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
国際公開第2005/112172号パンフレット
特表2005−518646号公報
特開2006−085952号公報
米国特許公開第2006/0029851号公報
特開2000−133295号公報
上記したように、従来の膜電極接合体を平面的に配置してなる燃料電池において、縁辺部では温度が低くなり、中央部では温度が高くなるため、中央部と縁辺部とで大きな温度差が生じる。例えば、燃料電池を携帯機器の電源として使用する場合、燃料電池の高温になる中央部に利用者が長時間触れていると、低温火傷等を生じる恐れがあるため、この高温となる中央部の温度を低く抑えなければならない。しかしながら、中央部近傍の温度を、利用者にとって十分に安全な温度まで下げると、縁辺部の温度はさらに低い温度となり、燃料電池全体として得られる出力が低下するという問題があった。
そこで、燃料電池の出力を高く維持しながら、利用者の安全を確保するためには、膜電極接合体と燃料電池の表面部材との間に断熱材等を設け、膜電極接合体の高温となる部分の熱が、直接表面部材に伝わらないように構成すること等の対応策が必要となる。しかしながら、断熱を充分に行おうとすると、断熱材の重量や体積が過大なものとなり、携帯機器の電源として用いるには不適当となるなどの問題があった。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高出力を維持するとともに、燃料電池の表面における温度が局部的に高温となるのを防止し、使用する際の安全性を向上させることができる燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の前記燃料極側に配置され、前記燃料極に燃料を供給する燃料供給部と、燃料を収容する燃料収容部と、前記燃料収容部に収容された燃料を、前記空気極で発生した熱によって加熱して前記燃料供給部に導く燃料流路とを具備することを特徴とする燃料電池が提供される。
また、本発明の一態様によれば、燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の前記燃料極側に配置され、前記燃料極に燃料を供給する燃料供給部と、前記空気極で発生した熱によって燃料を加熱しながら収容する燃料収容部と、前記燃料収容部に収容された燃料を前記燃料供給部に導く燃料流路とを具備することを特徴とする燃料電池が提供される。
本発明に係る燃料電池によれば、高出力を維持するとともに、燃料電池の表面における温度が局部的に高温となるのを防止し、使用する際の安全性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池1の構成を示す断面図である。図2は、図1の燃料電池1の上方、すなわち燃料電池1の外部から表面カバー60をみたときの表面カバー60の構成を示す平面図である。図3は、流路44の加熱部44aの他の配置例を示す平面図である。図4は、本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池1において、流路44の他の構成を示す断面図である。図5は、本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池1において、流路44のさらに他の構成を示す断面図である。図6は、本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池1においてポンプ85を備えた場合の構成を示す断面図である。
図1は、本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池1の構成を示す断面図である。図2は、図1の燃料電池1の上方、すなわち燃料電池1の外部から表面カバー60をみたときの表面カバー60の構成を示す平面図である。図3は、流路44の加熱部44aの他の配置例を示す平面図である。図4は、本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池1において、流路44の他の構成を示す断面図である。図5は、本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池1において、流路44のさらに他の構成を示す断面図である。図6は、本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池1においてポンプ85を備えた場合の構成を示す断面図である。
図1に示すように、燃料電池1は、起電部を構成する燃料電池セル10と、この燃料電池セル10のアノード(燃料極)側およびカソード(空気極)側にそれぞれ設けられたアノード導電層18、カソード導電層19と、このアノード導電層18に対向させて設けられた複数の開口部31を有する燃料分配層30と、この燃料分配層30の燃料電池セル10側とは異なる側に配置され、燃料分配層30に液体燃料Fを供給する燃料供給機構40と、カソード導電層19に積層された保湿層50と、この保湿層50に積層された、複数の空気導入口61を有する表面カバー60とを備える。また、燃料供給機構40の一部を構成し、燃料収容部41と燃料供給部43との間に設けられた流路44は、その一部が、カソード(空気極)側に配設される構成部材である表面カバー60に設けられた流路支持部材70に支持され、固定されている。
燃料電池セル10は、いわゆる膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)であり、アノード触媒層11とアノードガス拡散層12とを有するアノード(燃料極)13と、カソード触媒層14とカソードガス拡散層15とを有するカソード(空気極)16と、アノード触媒層11とカソード触媒層14とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性を有する電解質膜17とから構成される。
アノード触媒層11やカソード触媒層14に含有される触媒としては、例えばPt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が挙げられる。アノード触媒層11として、例えば、メタノールや一酸化炭素等に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等を用いることが好ましい。カソード触媒層14として、例えば、Pt、Pt−Ni、Pt−Co等を用いることが好ましい。ただし、触媒は、これらに限定されるものではなく、触媒活性を有する各種の物質を使用することができる。触媒は、炭素材料のような導電性担持体を使用した担持触媒、あるいは無担持触媒のいずれであってもよい。
電解質膜17を構成するプロトン伝導性材料としては、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)やフレミオン(商品名、旭硝子社製)等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂等の有機系材料、あるいはタングステン酸やリンタングステン酸等の無機系材料が挙げられる。ただし、プロトン伝導性の電解質膜17は、これらに限られるものではない。
アノード触媒層11に積層されるアノードガス拡散層12は、アノード触媒層11に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層11の集電体も兼ねている。カソード触媒層14に積層されるカソードガス拡散層15は、カソード触媒層14に酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層14の集電体も兼ねている。また、アノードガス拡散層12およびカソードガス拡散層15は、カーボンペーパ、カーボンクロス、カーボンシルク等の多孔性炭素質材、チタン、チタン合金、ステンレス、金などの金属材料からなる多孔質体またはメッシュなどで構成される。
アノードガス拡散層12の表面に積層されたアノード導電層18、およびカソードガス拡散層15の表面に積層されたカソード導電層19は、例えば、Auのような導電金属材料からなるメッシュ、多孔質膜等で構成される。これらの中でも、アノード導電層18やカソード導電層19は、燃料電池セル10に対応して開口された複数の開口部を有する薄膜で構成されることが好ましく、この開口部を介して、燃料電池セル10に対向して設けられている燃料分配層30の開口部31からの燃料を燃料電池セル10に導く。なお、アノード導電層18およびカソード導電層19は、それらの周縁から燃料や酸化剤が漏れないように構成されている。また、電解質膜17とアノード導電層18およびカソード導電層19との間には、それぞれゴム製のOリング20が介在されており、これらによって燃料電池セル10からの燃料漏れや酸化剤漏れを防止している。なお、ここでは、アノード導電層18およびカソード導電層19を備えた燃料電池1を示しているが、アノード導電層18およびカソード導電層19を設けずに、上記したようにアノードガス拡散層12およびカソードガス拡散層15を拡散層として機能させるとともに、導電層として機能させてもよい。
保湿層50は、カソード触媒層14で生成された水の一部が含浸して、水の蒸散を抑制するとともに、カソード触媒層14への空気の均一拡散を促進するものである。この保湿層50は、例えば、ポリエチレン多孔質膜等からなる平板で構成される。
表面カバー60は、空気の取入れ量を調整するものであり、その調整は、空気導入口61の個数や大きさ等を変更することで行われる。表面カバー60は、例えば、SUS304またはSUS306Lのようなステンレス合金、チタンまたはチタン合金のような金属で構成されることが好ましい。
また、図2に示すように、表面カバー60の表面には、空気導入口61を閉塞しない位置に、流路44の加熱部44aを支持するための流路支持部材70が複数固着されている。この流路支持部材70は、流路44の加熱部44aを支持する機能とともに、表面カバー60からの熱を流路44に伝導する機能をも有している。したがって、流路支持部材70と表面カバー60との接触面積は広いことが好ましく、さらに、流路支持部材70は、表面カバー60に、例えば半田付け、溶接などによって取り付けられていることが好ましい。この流路支持部材70は、流路44を挿入可能に内部の貫通口の断面形状が流路44の形状に対応して形成され、流路44の周囲を覆う筒状の金属部材で形成される。また、流路44を挿入した際、流路支持部材70の内周が流路44の外側面と密着するように、流路支持部材70の貫通口の内径などが設定される。また、流路44と流路支持部材70との間に、熱伝導性グリス(通称サーマルグリース)や熱伝導性接着剤等を介在させ、流路44と流路支持部材70との間の熱伝導の向上を図ってもよい。
なお、ここでは、流路支持部材70を筒状とした一例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、流路44を嵌合可能に内部の断面形状がU字状に形成された金属部材で流路支持部材70を構成してもよい。また、このU字状の溝部は、流路44を嵌合させた際、流路支持部材70の内壁面が流路44の外側面と密着するように形成される。
燃料供給機構40は、燃料収容部41と、燃料供給部本体42と、流路44とを主に備える。
燃料収容部41には、燃料電池セル10に対応した液体燃料Fが収容されている。この燃料収容部41は、液体燃料Fによって溶解や変質を生じることがない材料で構成される。燃料収容部41を構成する材料として、具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが使用される。なお、図示しないが、燃料収容部41には液体燃料Fを供給するための燃料供給口が設けられている。
液体燃料Fとしては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料Fは、必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料Fは、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。いずれにしても、燃料収容部41には、燃料電池セル10に応じた液体燃料が収容される。
燃料供給部本体42は、供給された液体燃料Fを燃料分配層30に対して均一に供給するために、液体燃料Fを平坦に分散させるための凹部からなる燃料供給部43を備えている。この燃料供給部43は、配管等で構成される液体燃料Fの流路44を介して燃料収容部41と接続されている。
また、図1および図2に示すように、流路44の一部は、表面カバー60の表面に設けられた流路支持部材70によって、表面カバー60の中央から外側(縁辺部)に向かって渦巻き状に固定されている。なお、流路44は、表面カバー60の空気導入口61を閉塞しないように渦巻き状に配置されている。また、流路44が交差する部分は、一方の流路を、例えば他方の通路を跨ぐように形状を変形させて配置されている。流路44のうち、この流路支持部材70によって固定され、表面カバー60の表面に配置された部分は、加熱部として機能する。そして、カソード(空気極)16で発生した熱が表面カバー60から流路支持部材70を介してこの加熱部44aに伝わり、加熱部44aを流れる液体燃料Fを加熱する。一方、液体燃料Fを加熱することでカソード(空気極)側は冷却される。すなわち、流路44の加熱部44aは、熱交換器としての機能を有している。なお、液体燃料Fは、加熱部44aにおいて気化しない温度範囲の温度に加熱される。このように、加熱されて燃料供給部43に供給された燃料は、燃料収容部41に収容されていたときよりも温度が高く、気化しやすい状態となっている。そのため、燃料分配層30を介して燃料電池セル10に供給される燃料の量は増加する。
ここで、流路44の加熱部44aを、表面カバー60の中央から外側に向かって渦巻き状に固定したのは、ここで示した燃料電池1では、表面カバー60の中央部の温度が最も高くなるからである。すなわち、この表面カバー60の中央部における温度と、液体燃料Fの温度との差が大きいために、多くの熱量が交換されるからである。一方、縁辺部では、表面カバー60の温度と、液体燃料Fの温度との差が小さくなるために、交換される熱量は少なくなる。これによって、中央部の温度を低く抑えると同時に、中央部と縁辺部との温度差を小さくし、表面カバー60の表面温度を均一化することが可能となる。
なお、上記した加熱部44aの配置構成は、表面カバー60の中央部の温度が最も高くなることを前提とした配置構成であり、表面カバー60の他の部分の温度が最も高くなるような燃料電池の場合には、その温度が最も高くなる部分から、温度が最も低くなる部分に向かって、流路44の加熱部44aを渦巻き状に固定することが好ましい。また、流路44の加熱部44aの配置構成は、表面カバー60の中央から外側に向かって渦巻き状に配置する構成に限らず、表面カバー60の中央から外側に向かって、すなわち、温度が最も高くなる部分から温度が最も低くなる部分に向かって配置されていればよい。例えば、表面カバー60の中央から外側に向かって、2以上の方向に放射線状等に固定する構成などが挙げられる。なお、流路支持部材70を設けずに、流路44の加熱部44aを直接表面カバー60の表面に固着してもよい。
また、流路44は、液体燃料Fによって溶解や変質を生じることがなく、かつ熱伝導率の高い物質で構成されることが好ましい。具体的には、流路44を構成する材料として、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属、アルミナセラミックス、陶磁器、ガラス等のセラミック類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、シリコーン樹脂等の樹脂、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム等のゴムなどが挙げられる。また、これらの樹脂に炭素や金属等の粉末を混合した熱伝導性樹脂を使用してもよい。
ここで、流路44を、熱伝導率が高く、かつ肉厚が薄くても高い強度を有するように構成するには、流路44を金属で構成することが好ましい。特に、銅(20℃における熱伝導率が370W/(mK))、アルミニウム(20℃における熱伝導率が204W/(mK))を使用することは、熱伝導率が高いので好ましい。ただし、流路44を金属材料で構成する場合、液体燃料Fに微量に溶存する酸素やギ酸等の有機酸等によって、流路44が酸化や腐食される可能性がある。これらの酸化や腐食を防止するため、ステンレス(20℃における熱伝導率が15W/(mK))等の腐食しにくい金属材料を用いることが好ましい。さらに、液体燃料Fと接する流路44の内壁面に、金メッキや、樹脂もしくはゴムによるコーティングを施したり、液体燃料Fに溶解しない塗料を塗布することが好ましい。コーティングを施すための樹脂もしくはゴムとしては、上記した流路44を構成する材料を使用することが好ましい。コーティング材料として樹脂やゴムを使用する場合、これらの材料は金属に比べて熱伝導率が低いため、コーティングする際、可能な限り薄くコーティング膜を形成することが好ましい。
一方、流路44において、液体燃料Fによる酸化や腐食が生じないようにするには、流路44を樹脂やゴムで構成することが好ましい。ただし、上記のように、樹脂やゴムの熱伝導率は、金属等に比べて低い(通常0.1〜0.5W/(mK))ため、流路44を樹脂やゴムで構成する場合には、肉厚をできるだけ薄く形成することが好ましい。ここで、流路44の肉厚を薄くすることによって生じる強度の低下を防止するためや、流路44と表面カバー60と間の熱伝導を向上させるために、流路44の表面の一部または全部を金属等の材料で覆ってもよい。この場合、流路44と流路44の表面を覆う金属材料との間に、熱伝導性グリス(通称サーマルグリース)や熱伝導性接着剤等を介在させ、流路44と金属材料との間の熱伝導の向上を図ってもよい。
なお、上記した燃料電池1では、流路44の加熱部44aを、表面カバー60の中央から外側に向かって渦巻き状に固定する一例を示したが、この構成に限られるものではない。例えば、燃料電池1の表面における局部的な高温部の形成を防止し、カソード(空気極)側を冷却するという観点から、図3に示すように、流路44の加熱部44aを、表面カバー60の縁辺部に沿って周状に固定してもよい。また、燃料供給部43に供給される液体燃料Fの温度が過剰に高温となる場合には、流路44の加熱部44aと燃料供給部43との間の流路44に、流路内を流れる液体燃料Fの熱を外気に放散する放熱機構として機能する熱交換器を備えてもよい。なお、この熱交換器の構成は、図4を参照して次に説明する熱交換器の構成と同じである。
また、図4に示すように、流路44の加熱部44aの下流側において、流路44を流路切換え弁45によって切り替え可能に2つに分岐し、一方の流路44bに、流路内を流れる液体燃料Fの熱を外気に放散する放熱機構として機能する熱交換器46を備えてもよい。なお、他方の流路44cは、図1に示す流路44と同様の流路で構成されている。この熱交換器46は、例えば、図4に示すように、流路44bの側面の周囲に板状のフィンを複数設けることで構成される。この板状のフィンは、例えば熔接等により、その一端が流路44bの側面の周囲に固着される。なお、熱交換器46の構成は、この構成に限られるものではなく、表面積を増加して外気との熱交換を促進できる構成であればよい。
例えば、アノード触媒層11で反応できる量以上の燃料がアノード触媒層11に供給された場合、反応しない燃料が電解質膜17を透過してカソード触媒層14に至り、カソード触媒層14で燃料が空気と反応することがある。このような場合には、燃料供給部43に供給される液体燃料Fの温度が過剰に高温となることがあり、流路切換え弁45によって、液体燃料Fの流路を、通常液体燃料Fが流れる流路44cから、熱交換器46を備える流路44bに切り替え、液体燃料Fが流路44の加熱部44aにおいて吸収した熱の一部を周囲の大気等に放散することができる。これによって、過剰に高温な液体燃料Fが燃料供給部43に供給されるのを防止することができる。なお、流路44の加熱部44aと流路切換え弁45との間に、流路44を流れる液体燃料Fの温度を測定する、例えば熱電対のような温度検知装置を設け、制御手段(図示しない)が、その検知した温度に基づいて、流路切換え弁45を制御してもよい。
また、図5に示すように、燃料電池1の中央に、流路44を挿入可能な穴径の貫通口80、すなわち、燃料供給部本体42、燃料分配層30、アノード導電層18、燃料電池セル10、カソード導電層19、保湿層50および表面カバー60の中央に連通して、流路44を挿入可能な穴径の貫通口80を形成し、この貫通口80に流路44を挿入し、表面カバー60側へ導出してもよい。ここで、貫通口80の穴径は、流路44の外径とほぼ等しいか、流路44の外径よりも若干大きく設定される。なお、貫通口80の、アノード(燃料極)13とカソード(空気極)16に面する部分には、Oリング20を挿入するため、その部分の貫通口80の穴径は、他の部分の穴径よりも若干大きく形成される。ここで、貫通口側となる、電解質膜17とアノード導電層18およびカソード導電層19との間に、それぞれゴム製のOリング20を介在させ、燃料漏れや酸化剤漏れが防止される。また、燃料供給部本体42と流路44との間を、例えばエチレン・プロピレンゴム(えPDM)などの封止剤81で封止することで、燃料供給部43から外部への燃料の流出を防止している。なお、貫通口80を介して表面カバー60側へ導出された流路44において、流路44の加熱部44aは、前述した配置構成と同様の配置構成で、表面カバー60の表面に固定される。
燃料収容部41に収容された液体燃料Fは、重力を利用して流路44を介して燃料供給部43まで落下させて送液することができる。また、流路44に多孔体等を充填して、毛細管現象により燃料収容部41に収容された液体燃料Fを燃料供給部43まで送液してもよい。さらに、図6に示すように、流路44の一部にポンプ85を介在させて、燃料収容部41に収容された液体燃料Fを燃料供給部43まで強制的に送液してもよい。
このポンプ85は、燃料収容部41から燃料供給部43に液体燃料Fを単に送液する供給ポンプとして機能するものであり、燃料電池セル10に供給された過剰な液体燃料Fを循環する循環ポンプとしての機能を備えるものではない。このポンプ85を備えた燃料電池1は、燃料を循環しないことから、従来のアクティブ方式とは構成が異なり、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも構成が異なる、いわゆるセミパッシブ型と呼ばれる方式に該当する。なお、燃料供給手段として機能するポンプ85の種類は、特に限定されるものではないが、少量の液体燃料Fを制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能という観点から、ロータリベーンポンプ、電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、しごきポンプ等を使用することが好ましい。ロータリベーンポンプは、モータで羽を回転させて送液するものである。電気浸透流ポンプは、電気浸透流現象を起こすシリカ等の焼結多孔体を用いたものである。ダイアフラムポンプは、電磁石や圧電セラミックスによりダイアフラムを駆動して送液するものである。しごきポンプは、柔軟性を有する燃料流路の一部を圧迫し、燃料をしごき送るものである。これらのうち、駆動電力や大きさ等の観点から、電気浸透流ポンプや圧電セラミックスを有するダイアフラムポンプを使用することがより好ましい。上記したようにポンプ85を設ける場合、ポンプ85は、制御手段(図示しない)と電気的に接続され、この制御手段によって、燃料供給部43に供給される液体燃料Fの供給量が制御される。
燃料分配層30は、例えば、複数の開口部31が形成された平板で構成され、アノードガス拡散層12と燃料供給部43との間に挟持される。この燃料分配層30は、液体燃料Fの気化成分や液体燃料Fを透過させない材料で構成され、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリイミド系樹脂等で構成される。また、燃料分配層30は、例えば、液体燃料Fの気化成分と液体燃料Fとを分離し、その気化成分を燃料電池セル10側へ透過させる気液分離膜で構成されてもよい。気液分離膜には、例えば、シリコーンゴム、低密度ポリエチレン(LDPE)薄膜、ポリ塩化ビニル(PVC)薄膜、ポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜、フッ素樹脂(たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)など)微多孔膜などが用いられる。
次に、上記した燃料電池1における作用について説明する。
燃料収容部41から流路44を介して燃料供給部43に向かって導出された液体燃料Fは、流路44の加熱部44aを通過することで、カソード(空気極)16で発生した熱により加熱される。そして、加熱された液体燃料Fは、燃料供給部43に供給され、液体燃料Fのまま、もしくは液体燃料Fと液体燃料Fが気化した気化燃料が混在する状態で、燃料分配層30およびアノード導電層18を介して燃料電池セル10のアノードガス拡散層12に供給される。アノードガス拡散層12に供給された燃料は、アノードガス拡散層12で拡散してアノード触媒層11に供給される。液体燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層11で次の式(1)に示すメタノールの内部改質反応が生じる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …式(1)
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …式(1)
なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、メタノールは、カソード触媒層14で生成した水や電解質膜17中の水と上記した式(1)の内部改質反応によって改質されるか、または水を必要としない他の反応機構により改質される。
この反応で生成した電子(e-)は、集電体を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、カソード(空気極)16に導かれる。また、式(1)の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は、電解質膜17を経てカソード(空気極)16に導かれる。カソード(空気極)16には酸化剤として空気が供給される。カソード(空気極)16に到達した電子(e-)とプロトン(H+)は、カソード触媒層14で空気中の酸素と次の式(2)に示す反応を生じ、この発電反応に伴って水が生成する。
(3/2)O2+6e-+6H+ → 3H2O …式(2)
(3/2)O2+6e-+6H+ → 3H2O …式(2)
上記した内部改質反応が円滑に行なわれ、高出力で安定した出力を燃料電池1において得ることができる。
上記した本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池1によれば、流路44の加熱部44aを、表面カバー60の表面の中央部から外側に向かって固定し、温度が最も高くなる表面カバー60の中央部で、多くの熱量を液体燃料Fへ伝達することで、表面カバー60の中央部の温度を低下させ、中央部と縁辺部との温度差を小さくし、表面カバー60の表面温度を均一化することができる。これによって、燃料電池1を使用する際の安全性を向上させることができる。また、カソード(空気極)側を冷却する効果も得られる。
また、流路44の加熱部44aにおいて加熱されて燃料供給部43に供給される燃料は、燃料収容部41に収容されていたときよりも温度が高く、気化しやすい状態となるため、燃料分配層30を介して燃料電池セル10に供給される燃料の量を増加することができる。これによって、燃料電池セル10に供給される燃料の量が適正な範囲であれば、燃料電池全体としての出力を増加することができる。
(第2の実施の形態)
図7は、本発明に係る第2の実施の形態の燃料電池1の構成を示す断面図である。図8は、図7の燃料電池1の上方から燃料電池1をみたときの構成を示す平面図である。なお、第1の実施の形態の燃料電池1の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
図7は、本発明に係る第2の実施の形態の燃料電池1の構成を示す断面図である。図8は、図7の燃料電池1の上方から燃料電池1をみたときの構成を示す平面図である。なお、第1の実施の形態の燃料電池1の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
図7に示すように、燃料電池1は、起電部を構成する燃料電池セル10と、この燃料電池セル10のアノード(燃料極)側およびカソード(空気極)側にそれぞれ設けられたアノード導電層18、カソード導電層19と、このアノード導電層18に対向させて設けられた複数の開口部31を有する燃料分配層30と、この燃料分配層30の燃料電池セル10側とは異なる側に配置され、燃料分配層30に液体燃料Fを供給する燃料供給部43と、カソード導電層19に積層された保湿層50と、この保湿層50に積層された、複数の空気導入口61を有する表面カバー60と、この表面カバー60上に燃料収容部90と、燃料収容部90と燃料供給部43とを連通する流路95とを備える。
図7に示すように、燃料収容部90は、表面カバー60の空気導入口61に対応して設けられた開口部91を有する筐体で構成され、内部の空洞部92は、開口部91を除いて連通している。また、表面カバー60からの熱を燃料収容部90に効率よく伝導させるために、燃料収容部90は、表面カバー60や燃料収容部90を構成する材料に応じて、表面カバー60の表面に、例えば半田付け、溶接、接着剤などによって固定されることが好ましい。また、流路95は、燃料収容部90と燃料供給部43との間に設けられ、燃料収容部90に収容された液体燃料Fを燃料供給部43に導出する。なお、図示しないが、燃料収容部90には液体燃料Fを供給するための燃料供給口が設けられている。
燃料収容部90を構成する材料は、液体燃料Fによって溶解や変質を生じることがなく、かつ熱伝導率の高い物質で構成されることが好ましい。燃料収容部41を構成する材料として、具体的には、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属、またはこれら金属の内面を金等でメッキした材料、樹脂、ゴム、塗料等でコーティングした材料、アルミナセラミックス、陶磁器、ガラス等のセラミック類などが使用される。
流路95は、液体燃料Fによって溶解や変質を生じることがない材料で構成される。流路95を構成する材料として、具体的には、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属、またはこれら金属の内面を金などでメッキした材料、樹脂、ゴム、塗料等でコーティングした材料、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリイミド(PI)、シリコーン樹脂等の樹脂、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム等のゴムなどが使用される。
ここで、燃料収容部90に収容された液体燃料Fは、表面カバー60から伝わるカソード(空気極)16で発生した熱により加熱される。燃料収容部90で加熱された液体燃料Fは、流路95を介して燃料供給部43に向かって導出される。それ以後の燃料電池1における作用は、前述した第1の実施の形態の燃料電池1における作用と同じである。なお、液体燃料Fは、燃料収容部90において気化しない温度範囲の温度に加熱される。このように加熱されて燃料供給部43に供給される燃料は、気化しやすい状態となっているため、燃料分配層30を介して燃料電池セル10に供給される燃料の量は増加する。
なお、燃料収容部90に収容された液体燃料Fは、重力を利用して流路95を介して燃料供給部43まで落下させて送液することができる。また、流路95に多孔体等を充填して、毛細管現象により燃料収容部90に収容された液体燃料Fを燃料供給部43まで送液してもよい。さらに、図6に示しめした燃料電池1と同様に、流路95の一部にポンプを介在させて、燃料収容部90に収容された液体燃料Fを燃料供給部43まで強制的に送液してもよい。
上記した本発明に係る第2の実施の形態の燃料電池1によれば、燃料収容部90を表面カバー60の表面に設けることで、燃料収容部90内の液体燃料Fが加熱され、気化しやすい状態で燃料供給部43に導入されるため、燃料分配層30を介して燃料電池セル10に供給される燃料の量を増加することができる。これによって、燃料電池セル10に供給される燃料の量が適正な範囲であれば、燃料電池全体としての出力を増加することができる。
また、表面カバー60から受熱することで、特に、表面カバー60の高温となる部分の温度を低下させ、表面カバー60の中央部や縁辺部における温度差を小さくし、表面カバー60の表面温度を均一化することができる。これによって、燃料電池1を使用する際の安全性を向上させることができる。また、カソード(空気極)側を冷却する効果も得られる。
次に、本発明に係る燃料電池が優れた出力特性を有することを実施例1〜実施例2、比較例1に基づいて説明する。
(実施例1)
実施例1で使用した燃料電池は、図6に示した燃料電池1と同一の構成を備えるものであるので、図6を参照して説明する。
実施例1で使用した燃料電池は、図6に示した燃料電池1と同一の構成を備えるものであるので、図6を参照して説明する。
まず、燃料電池セル10の作製方法について説明する。
アノード用触媒粒子(Pt:Ru=1:1)を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、アノード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをアノードガス拡散層12としての多孔質カーボンペーパ(40mm×30mmの長方形)に塗布することにより、厚さが100μmのアノード触媒層11を得た。
カソード用触媒粒子(Pt)を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、カソード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをカソードガス拡散層15としての多孔質カーボンペーパに塗布することにより、厚さが100μmのカソード触媒層14を得た。なお、アノードガス拡散層12と、カソードガス拡散層15とは、同形同大であり、これらのガス拡散層に塗布されたアノード触媒層11およびカソード触媒層14も同形同大である。
上記したように作製したアノード触媒層11とカソード触媒層14との間に、電解質膜17として厚さが30μmで、含水率が10〜20重量%のパーフルオロカーボンスルホン酸膜(商品名:nafion膜、デュポン社製)を配置し、アノード触媒層11とカソード触媒層14とが対向するように位置を合わせた状態でホットプレスを施すことにより、燃料電池セル10を得た。
続いて、この燃料電池セル10を、複数の開孔を有する金箔で挟み、アノード導電層18およびカソード導電層19を形成した。なお、電解質膜17とアノード導電層18との間、電解質膜17とカソード導電層19との間には、それぞれゴム製のOリング20を挟持してシールを施した。
また、保湿層50として、厚さが500μmで、透気度が2秒/100cm3(JIS P−8117に規定の測定方法による)で、透湿度が4000g/(m2・24h)(JIS L−1099 A−1に規定の測定方法による)のポリエチレン製多孔質フィルムを用いた。
この保湿層50の上に、空気取り入れのための空気導入口61(2.5mm×2.5mmの矩形、口数48個)が形成された厚さが1mmのステンレス板(SUS304)を配置して表面カバー60とした。この表面カバー60の表面に、流路44の配置パターンに対応して、流路支持部材70である内径が3mmのSUS薄肉管を溶接した。
流路44として、内径が1mm、外径が3mmのPFA製の円筒管を使用した。流路44の加熱部44aは、表面カバー60の表面に溶接されたSUS薄肉管を通して、表面カバー60の中央から外側に向かって渦巻き状に固定した。
また、ポンプ85としてしごきポンプを使用し、流路44の一部を一定方向にしごいて、圧力を生じさせて、燃料収容部41に収容された液体燃料Fを燃料供給部43に送液した。ここで、しごきポンプの回転数を、燃料電池1に流れる電流によって制御する制御回路を構成し、燃料電池1で電気化学反応を生じるのに必要な燃料供給量(電流1Aにつき、1分間当りのメタノールの供給量3.3mg)の1.4倍の燃料が常に供給されるように制御した。
そして、温度が25℃、相対湿度が50%の環境の下、上記した燃料電池1に、純度99.9重量%の純メタノールを、上記の供給量となるように供給した。外部負荷としての定電圧電源を接続して、燃料電池1の出力電圧が0.3Vで一定になるように、燃料電池1に流れる電流を制御した。このときに燃料電池1に流れる電流(A)と燃料電池1の出力電圧(V)との積が、燃料電池の出力(W)である。
上記した条件の下、100時間発電を行い、この100時間の間における燃料電池1の出力を計測した。そして、この100時間の間における燃料電池1の出力の平均値を算出した。ここで、出力の平均値は、燃料電池1に流れる電流と出力電圧とをデジタル記録計に記録して、この記録された値から積算電力(単位Wh)を求め、その積算電力を発電時間(100時間)で割って算出した。また、この100時間の間における表面カバー60の中央部および縁辺部の表面温度を熱電対を用いて計測し、その結果をデジタル記録計に記録した。そして、その記録されたデータから、表面カバー60の中央部および縁辺部の表面温度の最大値を得た。
測定の結果、出力の平均値は1Wであった。また、表面カバー60の中央部の表面温度の最大値は45℃、縁辺部の表面温度の最大値は41℃であった。
(実施例2)
実施例2で使用した燃料電池1の構成は、実施例1で使用した燃料電池1の中央に、流路44を貫通させる貫通口を備えた以外は、実施例1で使用した燃料電池1の構成と同じとした。また、実施例2で使用した燃料電池1の構成は、図5に示した燃料電池1にポンプを備えた構成と同一の構成であるので、図5を参照して説明する。
実施例2で使用した燃料電池1の構成は、実施例1で使用した燃料電池1の中央に、流路44を貫通させる貫通口を備えた以外は、実施例1で使用した燃料電池1の構成と同じとした。また、実施例2で使用した燃料電池1の構成は、図5に示した燃料電池1にポンプを備えた構成と同一の構成であるので、図5を参照して説明する。
図5に示すように、燃料電池1の中央、すなわち、燃料供給部本体42、燃料分配層30、アノード導電層18、燃料電池セル10、カソード導電層19、保湿層50および表面カバー60の中央に連通して、流路44(内径が1mm、外径が3mmのPFA製の円筒管)を挿入可能な穴径が3mmよりも若干大きな貫通口80を形成した。そして、この貫通口80に流路44を挿入し、表面カバー60側へ導出した。また、アノード(燃料極)13とカソード(空気極)16の部分は、Oリング20を挿入するため、貫通口80の穴径を5mmとした。また、貫通口側となる、電解質膜17とアノード導電層18およびカソード導電層19との間には、それぞれゴム製のOリング20(内径が3mm、外径が5mm)を介在させ、燃料漏れや酸化剤漏れを防止した。また、燃料供給部本体42と流路44との間を、EPDM製の封止剤81で封止し、燃料供給部43から外部への燃料の流出を防止した。なお、貫通口80を介して表面カバー60側へ導出された流路44において、流路44の加熱部44aの配置構成は、実施例1における流路44の加熱部44aの配置構成と同じとした。
ポンプは、実施例1で使用したポンプと同じしごきポンプを使用し、流路44の一部を一定方向にしごいて、圧力を生じさせて、燃料収容部41に収容された液体燃料Fを燃料供給部43に送液した。ここで、しごきポンプの回転数を、燃料電池1に流れる電流によって制御する制御回路を構成し、燃料電池1で電気化学反応を生じるのに必要な燃料供給量(電流1Aにつき、1分間当りのメタノールの供給量3.3mg)の1.4倍の燃料が常に供給されるように制御した。
上記した以外の構成や設定値については、実施例1で使用された燃料電池1と同様である。また、100時間の間における燃料電池1の出力の平均値および表面カバー60の中央部および縁辺部の表面温度の最大値の計測方法、計測条件および算出方法等は、実施例1におけるものと同じである。
測定の結果、出力の平均値は0.99Wであった。また、表面カバー60の中央部の表面温度の最大値は44℃、縁辺部の表面温度の最大値は41℃であった。
(比較例1)
比較例1で使用した燃料電池の構成は、実施例1で使用した燃料電池1において、流路44の加熱部44aを設けずに、燃料収容部41から導出された液体燃料Fが直接燃料供給部43に供給されるように流路44を配置した。それ以外の構成は、実施例1で使用した燃料電池1の構成と同じとした。すなわち、比較例1で使用した燃料電池は、燃料収容部41に供給される前に液体燃料Fを加熱する構成や、表面カバー60の温度を低下させる構成を有していない。
比較例1で使用した燃料電池の構成は、実施例1で使用した燃料電池1において、流路44の加熱部44aを設けずに、燃料収容部41から導出された液体燃料Fが直接燃料供給部43に供給されるように流路44を配置した。それ以外の構成は、実施例1で使用した燃料電池1の構成と同じとした。すなわち、比較例1で使用した燃料電池は、燃料収容部41に供給される前に液体燃料Fを加熱する構成や、表面カバー60の温度を低下させる構成を有していない。
上記した以外の構成や設定値については、実施例1で使用された燃料電池1と同様である。また、100時間の間における燃料電池1の出力の平均値および表面カバー60の中央部および縁辺部の表面温度の最大値の計測方法、計測条件および算出方法等は、実施例1におけるものと同じである。
測定の結果、出力の平均値は0.93Wであった。また、表面カバー60の中央部の表面温度の最大値は48℃、縁辺部の表面温度の最大値は38℃であった。
(実施例1〜実施例2、比較例1のまとめ)
表1に、実施例1〜実施例2、比較例1における、出力の平均値、表面カバー60の中央部および縁辺部の表面温度の最大値を示す。
表1に、実施例1〜実施例2、比較例1における、出力の平均値、表面カバー60の中央部および縁辺部の表面温度の最大値を示す。
表1に示すように、実施例1および実施例2における燃料電池では、比較例1における燃料電池に比べて、表面カバー60の中央部における温度の最大値が低く、また、表面カバー60の中央部および縁辺部における温度の最大値の差が小さいことがわかった。さらに、実施例1および実施例2における燃料電池では、比較例1における燃料電池に比べて、燃料電池における出力の平均値が高いことがわかった。なお、実施例2における出力の平均値が実施例1のそれよりも僅かに低いのは、燃料電池セル10に開けられた貫通口の面積の分だけ発電面積が減少したことによるものと考えられる。
なお、本発明は液体燃料を使用した各種の燃料電池に適用することができる。また、燃料電池の具体的な構成や燃料の供給状態等も特に限定されるものではなく、例えば、液体燃料をアノード導電層の下に直接流通させる方式、燃料電池の外部で液体燃料を蒸発させ、気化した気体燃料をアノード導電層の下に流通させる外部気化型、燃料収容部に液体燃料を収容し、液体燃料を電池内部で気化させてアノード触媒層に供給する内部気化型等、種々形態に本発明を適用することができる。実施段階では本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。さらに、上記実施形態に示される複数の構成要素を適宜に組み合わせたり、また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除する等、種々の変形が可能である。本発明の実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1…燃料電池、10…燃料電池セル、11…アノード触媒層、12…アノードガス拡散層、13…アノード(燃料極)、14…カソード触媒層、15…カソードガス拡散層、16…カソード(空気極)、17…電解質膜、18…アノード導電層、19…カソード導電層、20…Oリング、30…燃料分配層、31…開口部、40…燃料供給機構、41…燃料収容部、42…燃料供給部本体、43…燃料供給部、44…流路、44a…加熱部、50…保湿層、60…表面カバー、61…空気導入口、70…流路支持部材、F…液体燃料。
Claims (5)
- 燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の前記燃料極側に配置され、前記燃料極に燃料を供給する燃料供給部と、
燃料を収容する燃料収容部と、
前記燃料収容部に収容された燃料を、前記空気極で発生した熱によって加熱して前記燃料供給部に導く燃料流路と
を具備することを特徴とする燃料電池。 - 前記燃料流路の一部であり、前記燃料を前記空気極で発生した熱によって加熱する前記燃料流路の加熱部が、前記空気極側に配設される構成部材から受熱可能に、前記構成部材の中央部から縁辺部に向かう方向に、前記構成部材の表面に配置されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
- 前記燃料流路が、前記加熱部と前記燃料供給部との間に、前記燃料流路内を流れる燃料の熱を外気に放散する放熱機構を備えることを特徴とする請求項2記載の燃料電池。
- 前記加熱部の下流側において、前記燃料供給部までの燃料流路が流路を切り替え可能に2つに分岐し、一方の燃料流路が、該分岐部と前記燃料供給部との間に、前記一方の燃料流路内を流れる燃料の熱を外気に放散する放熱機構を備えることを特徴とする請求項2記載の燃料電池。
- 燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の前記燃料極側に配置され、前記燃料極に燃料を供給する燃料供給部と、
前記空気極で発生した熱によって燃料を加熱しながら収容する燃料収容部と、
前記燃料収容部に収容された燃料を前記燃料供給部に導く燃料流路と
を具備することを特徴とする燃料電池。
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