JP2009076696A - 接合方法および接合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】2つの基材を、一部の領域において部分的に、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる接合方法、および、2つの基材を、かかる接合方法により、一部の領域において部分的に接合してなる接合体を提供すること。
【解決手段】本発明の接合方法は、第1の基材21と、第2の基材22(第2の被着体42)とを用意し、第1の基材21の接合面上の一部の所定領域に、接合膜3を形成し、第1の被着体41を作製する工程と、接合膜3に対してエネルギーを付与し、接合膜3中から脱離基を脱離させることにより、接合膜3を活性化させる工程と、接合膜3と第2の基材22の接合面24とが密着するように、第1の被着体41と第2の被着体42とを貼り合わせることにより、これらが所定領域において部分的に接合してなる接合体1を得る工程とを有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、接合方法および接合体に関するものである。
2つの部材(基材)同士を接合(接着)する際には、従来、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコン系接着剤等の接着剤を用いて行う方法が多く用いられている。
接着剤は、部材の材質によらず、接着性を示すことができる。このため、種々の材料で構成された部材同士を、様々な組み合わせで接着することができる。
例えば、インクジェットプリンタが備える液滴吐出ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)は、樹脂材料、金属材料、シリコン系材料等の異種材料で構成された部品同士を、接着剤を用いて接着することにより組み立てられている。
このように接着剤を用いて部材同士を接着する際には、液状またはペースト状の接着剤を接着面に塗布し、塗布された接着剤を介して部材同士を貼り合わせる。その後、熱または光の作用により接着剤を硬化させることにより、部材同士を接着する。
ところが、このような接着剤では、以下のような問題がある。
・接着強度が低い
・寸法精度が低い
・硬化時間が長いため、接着に長時間を要する
・耐インク性などの有機溶剤に対する信頼性が低い
また、多くの場合、接着強度を高めるためにプライマーを用いる必要があり、そのためのコストと手間が接着工程の高コスト化・複雑化を招いている。
一方、接着剤を用いない接合方法として、固体接合による方法がある。
固体接合は、接着剤等の中間層が介在することなく、部材同士を直接接合する方法である(例えば、特許文献1参照)。
このような固体接合によれば、接着剤のような中間層を用いないので、寸法精度の高い接合体を得ることができる。
しかしながら、固体接合には、以下のような問題がある。
・接合される部材の材質に制約がある
・接合プロセスにおいて高温(例えば、700〜800℃程度)での熱処理を伴う
・接合プロセスにおける雰囲気が減圧雰囲気に限られる
・一部の領域を選択的に接合することができないので、接合界面に、部材間の熱膨張率差に伴う大きな応力が発生し、接合体の剥離等を招く
このような問題を受け、接合に供される部材の材質によらず、部材同士を、一部の領域において部分的に、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合する方法が求められている。
特開平5−82404号公報
本発明の目的は、2つの基材を、一部の領域において部分的に、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる接合方法、および、2つの基材を、かかる接合方法により、一部の領域において部分的に接合してなる接合体を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合方法は、基材上の一部の所定領域に、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
前記接合膜に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離させることにより、前記接合膜に接着性を発現させる工程と、
前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせることにより、これらが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、2つの基材を、一部の領域において部分的に、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる。また、接合体中の2つの基材間に、接合膜の厚さに相当する高さの空間が形成される。したがって、前記所定領域の形状を適宜調整することにより、この空間を活かして、接合体中に閉空間や流路を形成することができる。
本発明の接合方法は、基材上の一部の所定領域に、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを重ね合わせて、仮接合体を得る工程と、
前記接合膜に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離させることにより、前記接合膜に接着性を発現させ、前記第1の被着体と前記第2の被着体とが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、2つの基材を、一部の領域において部分的に、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる。また、接合体中の2つの基材間に、接合膜の厚さに相当する高さの空間が形成される。したがって、前記所定領域の形状を適宜調整することにより、この空間を活かして、接合体中に閉空間や流路を形成することができる。さらに、仮接合体の状態では、第1の被着体と第2の被着体との間は接合されていない。このため、第1の被着体と第2の被着体とをずらし、これらの相対的な位置を調整することができる。このようにすれば、2つの被着体を重ね合わせた後、これらの位置を容易に微調整することができるので、位置の調整の作業性が向上し、最終的に得られる接合体の面方向における寸法精度を高めることができる。
本発明の接合方法は、基材上に、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
前記接合膜の一部の所定領域に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離させることにより、前記接合膜の前記所定領域に接着性を発現させる工程と、
前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせることにより、これらが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、2つの基材を、一部の領域において部分的に、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる。また、エネルギーを付与する領域を選択することのみで、接合部の領域を容易に制御することができる。
本発明の接合方法は、基材上に、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを重ね合わせて、仮接合体を得る工程と、
前記接合膜の一部の所定領域に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離させることにより、前記接合膜の前記所定領域に接着性を発現させ、前記第1の被着体と前記第2の被着体とが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、2つの基材を、一部の領域において部分的に、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる。また、エネルギーを付与する領域を選択することのみで、接合部の領域を容易に制御することができる。さらに、仮接合体の状態では、第1の被着体と第2の被着体との間は接合されていない。このため、第1の被着体と第2の被着体とをずらし、これらの相対的な位置を調整することができる。このようにすれば、2つの被着体を重ね合わせた後、これらの位置を容易に微調整することができるので、位置の調整の作業性が向上し、最終的に得られる接合体の面方向における寸法精度を高めることができる。
本発明の接合方法では、前記脱離基は、前記接合膜のうち、表面付近に偏在していることが好ましい。
これにより、接合膜に金属酸化物膜としての機能を好適に発揮させることができる。すなわち、接合膜に、接合を担う機能の他に、導電性や透光性等の特性に優れた金属酸化物膜としての機能を好適に付与することができるという利点も得られる。換言すれば、脱離基が、接合膜の導電性や透光性等の特性を阻害してしまうのを確実に防止することができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜は、透光性を有することが好ましい。
これにより、本発明の接合体を、光学素子等における、透光性を必要とする領域に適用することができる。
本発明の接合方法では、前記金属原子は、遷移金属元素の原子であることが好ましい。
遷移金属は、一般に硬度や融点が高く、電気伝導性および熱伝導性が高いため、接合膜が含む金属原子として遷移金属元素の原子を選択することにより、接合膜に発現する接着性をより高めることができる。また、それとともに、接合膜の導電性をより高めることができる。
本発明の接合方法では、前記金属原子は、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、およびアンチモンのうちの少なくとも1種であることが好ましい。
接合膜を、これらの金属原子を含むものとすることにより、接合膜は、優れた導電性と透明性とを発揮するものとなる。
本発明の接合方法では、前記脱離基は、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、エネルギーを付与することによって比較的簡単に、かつ均一に脱離する脱離基が得られることとなり、第1の被着体と第2の被着体との間の接着性をより高度化することができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜は、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)に、脱離基として水素原子が導入されたものであることが好ましい。
かかる構成の接合膜は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜は、第1の基材に対して特に強固に接着するとともに、第2の被着体に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、第1の被着体と第2の被着体とを強固に接合することができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、第1の被着体と第2の被着体とをより強固に接合することができるようになる。
本発明の接合方法は、基材上の一部の所定領域に、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
前記接合膜に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記接合膜から脱離させることにより、前記接合膜に接着性を発現させる工程と、
前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせることにより、これらが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、2つの基材を、一部の領域において部分的に、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる。また、接合体中の2つの基材間に、接合膜の厚さに相当する高さの空間が形成される。したがって、前記所定領域の形状を適宜調整することにより、この空間を活かして、接合体中に閉空間や流路を形成することができる。
本発明の接合方法は、基材上の一部の所定領域に、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを重ね合わせて、仮接合体を得る工程と、
前記接合膜に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記接合膜から脱離させることにより、前記接合膜に接着性を発現させ、前記第1の被着体と前記第2の被着体とが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、2つの基材を、一部の領域において部分的に、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる。また、接合体中の2つの基材間に、接合膜の厚さに相当する高さの空間が形成される。したがって、前記所定領域の形状を適宜調整することにより、この空間を活かして、接合体中に閉空間や流路を形成することができる。さらに、仮接合体の状態では、第1の被着体と第2の被着体との間は接合されていない。このため、第1の被着体と第2の被着体とをずらし、これらの相対的な位置を調整することができる。このようにすれば、2つの被着体を重ね合わせた後、これらの位置を容易に微調整することができるので、位置の調整の作業性が向上し、最終的に得られる接合体の面方向における寸法精度を高めることができる。
本発明の接合方法は、基材上に、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
前記接合膜の一部の所定領域に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記接合膜から脱離させることにより、前記接合膜の前記所定領域に接着性を発現させる工程と、
前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせることにより、これらが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、2つの基材を、一部の領域において部分的に、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる。また、エネルギーを付与する領域を選択することのみで、接合部の領域を容易に制御することができる。
本発明の接合方法は、基材上に、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを重ね合わせて、仮接合体を得る工程と、
前記接合膜の一部の所定領域に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記接合膜から脱離させることにより、前記接合膜の前記所定領域に接着性を発現させ、前記第1の被着体と前記第2の被着体とが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、2つの基材を、一部の領域において部分的に、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる。また、エネルギーを付与する領域を選択することのみで、接合部の領域を容易に制御することができる。さらに、仮接合体の状態では、第1の被着体と第2の被着体との間は接合されていない。このため、第1の被着体と第2の被着体とをずらし、これらの相対的な位置を調整することができる。このようにすれば、2つの被着体を重ね合わせた後、これらの位置を容易に微調整することができるので、位置の調整の作業性が向上し、最終的に得られる接合体の面方向における寸法精度を高めることができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜は、有機金属材料を原材料として、有機金属化学気相成長法を用いて成膜されたものであることが好ましい。
かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、かつ、均一な膜厚の接合膜を成膜することができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜は、低還元性雰囲気下で成膜されたものであることが好ましい。
これにより、基板上に純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で成膜することができる。すなわち、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた接合膜を形成することができる。
本発明の接合方法では、前記脱離基は、前記有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存したものであることが好ましい。
このように成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基として用いる構成とすることにより、形成された金属膜中に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜を成膜することができる。
本発明の接合方法では、前記脱離基は、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団で構成されることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、エネルギーを付与することによって比較的簡単に、かつ均一に脱離する脱離基が得られることとなり、第1の被着体と第2の被着体との間の接着性をより高度化することができる。
本発明の接合方法では、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
アルキル基で構成される脱離基は、化学的な安定性が高いため、脱離基としてアルキル基を備える接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
本発明の接合方法では、前記有機金属材料は、金属錯体であることが好ましい。
金属錯体を用いて接合膜を成膜することにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、確実に接合膜を形成することができる。
本発明の接合方法では、前記金属原子は、遷移金属元素の原子であることが好ましい。
遷移金属は、一般に硬度や融点が高く、電気伝導性および熱伝導性が高いため、接合膜が含む金属原子として遷移金属元素の原子を選択することにより、接合膜に発現する接着性をより高めることができる。また、それとともに、接合膜の導電性をより高めることができる。
本発明の接合方法では、前記金属原子は、銅、アルミニウム、亜鉛および鉄のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
接合膜を、これらの金属原子を含むものとすることにより、接合膜は、優れた導電性を発揮するものとなる。
本発明の接合方法では、前記接合膜中の金属原子と炭素原子との存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜の安定性が高くなり、第1の被着体と第2の被着体とをより強固に接合することができるようになる。また、接合膜を優れた導電性を発揮するものとすることができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜は、導電性を有することが好ましい。
これにより、接合体において、接合膜を配線基板が備える配線や、その端子等に適用することができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜は、その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が、当該接合膜から脱離した後に、活性手が生じることが好ましい。
これにより、接合体の表面に接着性が発現する。その結果、第1の被着体は、第2の被着体に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
本発明の接合方法では、前記活性手は、未結合手または水酸基であることが好ましい。
これにより、接合膜を有する第1の被着体は、第2の被着体に対して、特に強固な接合が可能となる。
本発明の接合方法では、前記接合膜の平均厚さは、0.2〜1000nmであることが好ましい。
これにより、第1の被着体と第2の被着体とを接合した接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜は、流動性を有さない固体状をなしていることが好ましい。
これにより、接合膜は、その厚さや形状がほとんど変化しないものとなる。このため、接合体の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。また、硬化に要する時間が不要になるため、従来に比べ、短時間で強固な接合が可能になる。
本発明の接合方法では、前記基材は、板状をなしていることが好ましい。
これにより、基材が撓み易くなり、2つの基材を重ね合わせたときに、互いの形状に沿って十分に変形可能なものとなるため、これらの密着性がより高くなる。また、基材が撓むことによって、接合界面に生じる応力を、ある程度緩和することができる。
本発明の接合方法では、前記板状の基材は、可撓性を有するものであることが好ましい。
これにより、接合体の接合強度のさらなる向上を図ることができる。また、基材と第2の被着体の双方が可撓性を有している場合には、全体として可撓性を有し、機能性の高い接合体が得られる。
本発明の接合方法では、前記基材の少なくとも前記接合膜を形成する部分は、シリコン材料、金属材料またはガラス材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、表面処理を施さなくても、十分な接合強度が得られる。
本発明の接合方法では、前記基材の前記接合膜を備える面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、基材の接合面が清浄化および活性化され、接合面に対して接合膜が化学的に作用し易くなる。その結果、基材の接合面と接合膜との接合強度を高めることができる。
本発明の接合方法では、前記表面処理は、プラズマ処理または紫外線照射処理であることが好ましい。
これにより、接合膜を形成するために、基材の表面を特に最適化することができる。
本発明の接合方法では、前記基材と前記接合膜との間に、中間層が介挿されていることが好ましい。
これにより、信頼性の高い接合体を得ることができる。
本発明の接合方法では、前記中間層は、酸化物系材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、基材と接合膜との間の接合強度を特に高めることができる。
本発明の接合方法では、前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
本発明の接合方法では、前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線であることが好ましい。
これにより、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜中の骨格をなす分子結合が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、接合膜から脱離基を選択的に切断することができる。これにより、接合膜の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜に接着性を確実に発現させることができる。
本発明の接合方法では、前記加熱の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、接合体が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
本発明の接合方法では、前記圧縮力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、圧力が高すぎて各基材に損傷等が生じるのを防止しつつ、接合体の接合強度を確実に高めることができる。
本発明の接合方法では、前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われることが好ましい。
これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギーの付与をより簡単に行うことができる。
本発明の接合方法では、前記第2の被着体の前記被着面は、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理を施したものであることが好ましい。
これにより、被着面が清浄化および活性化され、被着面に対して接合膜が化学的に作用し易くなる。その結果、被着面と接合膜との接合強度を高めることができる。
本発明の接合方法では、前記第2の被着体の前記被着面は、あらかじめ、官能基、ラジカル、開環分子または不飽和結合を有する脱離性中間体分子、ハロゲンおよび過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質を有することが好ましい。
これにより、被着面と接合膜との接合強度をより高めることができる。
本発明の接合方法では、前記脱離性中間体分子は、炭化水素分子であることが好ましい。
これにより、前記炭化水素分子が有する開環分子および不飽和結合の顕著な反応性に基づき、第2の被着体は、接合膜に対して強固に作用し得るものとなる。したがって、このような炭化水素分子を有する第2の被着体は、接合膜に対して特に強固に接合可能なものとなる。
本発明の接合方法では、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
これにより、第2の被着体は、接合膜に対して特に容易かつ強固に接合可能なものとなる。特に、接合膜の表面に水酸基が露出している場合には、水酸基同士間に生じる水素結合に基づいて、第2の被着体と接合膜との間を短時間で強固に接合することができる。
本発明の接合方法では、さらに、前記接合体に対して、その接合強度を高める処理を行う工程を有することが好ましい。
これにより、接合体の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
本発明の接合方法では、前記接合強度を高める処理を行う工程は、前記接合体にエネルギー線を照射する方法、前記接合体を加熱する方法、および前記接合体に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合体の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
本発明の接合体は、2つの基材が、本発明の接合方法により接合されてなることを特徴とする。
これにより、2つの基材を、一部の領域において部分的に接合してなる接合体が得られる。
本発明の接合体では、前記接合膜は、機能性部分接合膜としての機能を有するものであることが好ましい。
これにより、例えば、積層基板のような接合体中に各種機能を効率よく集積することができるので、電子部品の高機能化および薄型化をより高度化することができる。
以下、本発明の接合方法および接合体を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の接合方法は、2つの基材(第1の基材21および第2の基材22)を、接合膜3を介して、一部の領域において部分的に接合する方法である。
この接合膜3は、脱離基を含んでおり、エネルギーを付与することにより、接合膜3の表面31付近に存在する脱離基が接合膜3から脱離するものである。そして、この接合膜3は、脱離基の脱離によって、その表面のエネルギーを付与した領域に、他の被着体との接着性が発現するという特徴を有するものである。
このような特徴を有する接合膜3によれば、2つの基材21、22を、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合可能なものである。そして、本発明によれば、2つの基材21、22が部分的に強固に接合してなる信頼性の高い接合体1が得られる。
<接合方法>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の接合方法および本発明の接合体の各第1実施形態について説明する。
図1および図2は、本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)、図3は、本発明の接合方法において、エネルギー付与前の接合膜の状態を示す部分拡大図、図4は、本発明の接合方法において、エネルギー付与後の接合膜の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図1〜4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21と、第2の基材22(第2の被着体42)とを用意し、第1の基材21の接合面23上の一部の所定領域310に、接合膜3を形成し、第1の被着体41を作製する工程と、接合膜3に対してエネルギーを付与し、接合膜3中から脱離基を脱離させることにより、接合膜3を活性化させる工程と、接合膜3と第2の基材22とが密着するように、第1の被着体41と第2の被着体42とを貼り合わせることにより、これらが所定領域310において部分的に接合してなる接合体1を得る工程とを有する。
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、第1の基材21と第2の基材22とを用意する。なお、図1では、第2の基材22を省略して示している。
このような第1の基材21および第2の基材22の各構成材料は、それぞれ特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、インジウム錫酸化物(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
また、第1の基材21および第2の基材22は、それぞれ、その表面に、Niめっきのようなめっき処理、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
なお、第1の基材21の構成材料と第2の基材22の構成材料とは、それぞれ同じでも、異なっていてもよい。
また、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。これらの熱膨張率がほぼ等しければ、第1の基材21と第2の基材22とを接合した際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる接合体1において、剥離を確実に防止することができる。
なお、後に詳述するが、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率が互いに異なる場合でも、後述する工程において、第1の基材21と第2の基材22とを接合する際の条件を最適化することにより、これらを高い寸法精度で強固に接合することができる。
また、2つの基材21、22は、互いに剛性が異なるのが好ましい。これにより、2つの基材21、22をより強固に接合することができる。
また、2つの基材21、22のうち、少なくとも一方の構成材料は、樹脂材料であるのが好ましい。樹脂材料は、その柔軟性により、2つの基材21、22を接合した際に、その接合界面に発生する応力(例えば、熱膨張に伴う応力等)を緩和することができる。このため、接合界面が破壊し難くなり、結果的に、接合強度の高い接合体1を得ることができる。
なお、上記のような観点から、2つの基材21、22のうちの少なくとも一方は、可撓性を有しているのが好ましい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。さらに、2つの基材21、22の双方が可撓性を有している場合には、全体として可撓性を有し、機能性の高い接合体1が得られる。
また、各基材21、22の形状は、それぞれ、接合膜3を支持する面を有するような形状であればよく、例えば、板状(層状)、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
なお、本実施形態では、図1、2に示すように、各基材21、22がそれぞれ板状をなしている。これにより、各基材21、22は撓み易くなり、2つの基材21、22を重ね合わせたときに、互いの形状に沿って十分に変形し得るものとなる。このため、2つの基材21、22を重ね合わせたときの密着性が高くなり、最終的に得られる接合体1における接合強度が高くなる。
また、各基材21、22が撓むことによって、接合界面に生じる応力を、ある程度緩和する作用が期待できる。
この場合、各基材21、22の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜3mm程度であるのがより好ましい。
次に、必要に応じて、第1の基材21の接合面23に接合膜3との密着性を高める表面処理を施す。これにより、接合面23を清浄化および活性化され、接合面23に対して接合膜3が化学的に作用し易くなる。その結果、後述する工程において、接合面23上に接合膜3を形成したとき、接合面23と接合膜3との接合強度を高めることができる。
この表面処理としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。
なお、表面処理を施す第1の基材21が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、表面処理として、特にプラズマ処理または紫外線照射処理を行うことにより、接合面23を、より清浄化および活性化することができる。その結果、接合面23と接合膜3との接合強度を特に高めることができる。
また、第1の基材21の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第1の基材21の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
このような材料で構成された第1の基材21は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような酸化膜で覆われた第1の基材21を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、第1の基材21の接合面23と接合膜3との接合強度を高めることができる。
なお、この場合、第1の基材21の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合面23付近が上記のような材料で構成されていればよい。
また、表面処理に代えて、第1の基材21の接合面23に、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層上に接合膜3を成膜することにより、最終的に、信頼性の高い接合体1を得ることができる。
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料、樹脂系接着剤、樹脂フィルム、樹脂コーティング材、各種ゴム材料、各種エラストマーのような樹脂系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、第1の基材21と接合膜3との間の接合強度を特に高めることができる。
一方、第1の基材21と同様、第2の基材22の接合面24(後述する工程において、接合膜3と密着する面)にも、必要に応じて、あらかじめ接合膜3との密着性を高める表面処理を施してもよい。これにより、接合面24を清浄化および活性化する。その結果、後述する工程において、接合面24と接合膜3とを密着させ、これらを接合したとき、接合面24と接合膜3との接合強度を高めることができる。
この表面処理としては、特に限定されないが、前述の第1の基材21の接合面23に対する表面処理と同様の処理を用いることができる。
また、第1の基材21の場合と同様に、第2の基材22の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との密着性が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第2の基材22の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
すなわち、このような材料で構成された第2の基材22は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような酸化膜で覆われた第2の基材22を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、第2の基材22の接合面24と接合膜3との接合強度を高めることができる。
なお、この場合、第2の基材22の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合面24付近が上記のような材料で構成されていればよい。
また、第2の基材22の接合面24に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、第2の基材22の接合面24と接合膜3との接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような各種官能基、各種ラジカル、開環分子または、2重結合、3重結合のような不飽和結合を有する脱離性中間体分子、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基や物質、または、これらの基が脱離してなる終端化されていない結合手(未結合手、ダングリングボンド)が挙げられる。
このうち、脱離性中間体分子は、開環分子または不飽和結合を有する炭化水素分子であるのが好ましい。このような炭化水素分子は、開環分子および不飽和結合の顕著な反応性に基づき、接合膜3に対して強固に作用する。したがって、このような炭化水素分子を有する接合面24は、接合膜3に対して特に強固に接合可能なものとなる。
また、接合面24が有する官能基は、特に水酸基が好ましい。これにより、接合面24は、接合膜3に対して特に容易かつ強固に接合可能なものとなる。特に接合膜3の表面に水酸基が露出している場合には、水酸基同士間に生じる水素結合に基づいて、接合面24と接合膜3との間を短時間で強固に接合することができる。
また、このような基や物質を有するように、接合面24に対して上述したような各種表面処理を適宜選択して行うことにより、接合膜3に対して強固に接合可能な第2の基材22が得られる。
このうち、第2の基材22の接合面24には、水酸基が存在しているのが好ましい。このような接合面24には、水酸基が露出した接合膜3との間に、水素結合に基づく大きな引力が生じる。これにより、最終的に、第1の被着体41と第2の被着体42とを特に強固に接合することができる。
また、表面処理に代えて、第2の基材22の接合面24に、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、前記第1の基材21の場合と同様に、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して、第2の基材22と接合膜3とを接合することにより、最終的に、信頼性の高い接合体1を得ることができる。
かかる中間層の構成材料には、例えば、前記第1の基材21の接合面23に形成する中間層の構成材料と同様の材料を用いることができる。
なお、上記のような表面処理および中間層の形成は、必要に応じて行えばよく、特に高い接合強度を必要としない場合には、省略することができる。
[2]次に、図1(a)〜(b)に示すように、第1の基材21の接合面23のうち、一部の所定領域310に接合膜3を形成する。これにより、第1の被着体41を得る。
接合膜3は、第1の基材21と第2の基材22との間に位置し、これらの接合を担うものである。
この接合膜3は、前述したように脱離基を含むものである。そして、接合膜3にエネルギーが付与されると、接合膜3の表面31付近に存在する脱離基が接合膜3から脱離する。そして、この接合膜3は、脱離基の脱離によって、その表面のエネルギーを付与した領域に、他の被着体との接着性が発現するという特徴を有するものである。
なお、この接合膜3については、後に詳述する。
[3]次に、第1の被着体41の接合膜3に対してエネルギーを付与する。
接合膜3にエネルギーを付与すると、接合膜3では、図3および図4に示すように、脱離基303が接合膜3から脱離し、脱離基303が脱離した後には、接合膜3の表面31付近に活性手が生じる。これにより、接合膜3の表面31に、第2の被着体42との接着性が発現する。
このような状態の第1の被着体41は、第2の被着体42と、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
ここで、接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与されるものであってもよいが、例えば、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜3をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。中でも、本実施形態では、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。かかる方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギーを付与する方法として好適に用いられる。
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線のような電磁波、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図1(c)参照)。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜3中の骨格をなす分子結合が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、接合膜3から脱離基303を選択的に切断することができる。これにより、接合膜3の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜3に接着性を確実に発現させることができる。
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基303の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3の表面31付近の脱離基303を脱離し得る程度の時間、すなわち、接合膜3の表面付近に存在する脱離基303を選択的に脱離し得る程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、1秒〜30分程度であるのが好ましく、1秒〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
一方、レーザ光としては、例えば、エキシマレーザのようなパルス発振レーザ(パルスレーザ)、炭酸ガスレーザ、半導体レーザのような連続発振レーザ等が挙げられる。中でも、パルスレーザが好ましく用いられる。パルスレーザでは、接合膜3のレーザ光が照射された部分に経時的に熱が蓄積され難いので、蓄積された熱による接合膜3の変質・劣化を確実に防止することができる。すなわち、パルスレーザによれば、接合膜3の内部にまで蓄積された熱の影響がおよぶのを、防止することができる。
また、パルスレーザのパルス幅は、熱の影響を考慮した場合、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、パルス幅が1ps(ピコ秒)以下であるのが好ましく、500fs(フェムト秒)以下であるのがより好ましい。パルス幅を前記範囲内にすれば、レーザ光照射に伴って接合膜3に生じる熱の影響を、的確に抑制することができる。なお、パルス幅が前記範囲内程度に小さいパルスレーザは、「フェムト秒レーザ」と呼ばれる。
また、レーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、200〜1200nm程度であるのが好ましく、400〜1000nm程度であるのがより好ましい。
また、レーザ光のピーク出力は、パルスレーザの場合、パルス幅によって異なるが、0.1〜10W程度であるのが好ましく、1〜5W程度であるのがより好ましい。
さらに、パルスレーザの繰り返し周波数は、0.1〜100kHz程度であるのが好ましく、1〜10kHz程度であるのがより好ましい。パルスレーザの周波数を前記範囲内に設定することにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、接合膜3の骨格をなす分子結合が切断されてしまうのを防止しつつ、脱離基303を接合膜3から確実に切断することができる。
なお、このようなレーザ光の各種条件は、レーザ光を照射された部分の温度が、好ましくは常温(室温)〜600℃程度、より好ましくは200〜600℃程度、さらに好ましくは300〜400℃程度になるように適宜調整されるのが好ましい。これにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、接合膜3の骨格をなす分子結合が切断されてしまうのを防止しつつ、脱離基303を接合膜3から確実に切断することができる。
また、接合膜3に照射するレーザ光は、その焦点を、接合膜3の表面31に合わせた状態で、この表面31に沿って走査されるようにするのが好ましい。これにより、レーザ光の照射によって発生した熱が、表面31付近に局所的に蓄積されることとなる。その結果、接合膜3の表面31に存在する脱離基303を選択的に脱離させることができる。
また、接合膜3に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、特に、大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜3に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による第1の基材21の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜3から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、第1の被着体41と第2の被着体42との間の接合強度を容易に制御することができる。
すなわち、脱離基303の脱離量を多くすることにより、接合膜3の表面31および内部に、より多くの活性手が生じるため、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基303の脱離量を少なくすることにより、接合膜3の表面31および内部に生じる活性手を少なくし、接合膜3に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
ここで、エネルギーが付与される前の接合膜3は、図3に示すように、その少なくとも表面31付近に脱離基303を有している。かかる接合膜3にエネルギーを付与すると、脱離基303(図3では、水素原子)が接合膜3から脱離する。これにより、図4に示すように、接合膜3の表面31に活性手304が生じ、活性化される。その結果、接合膜3の表面31に接着性が発現する。
ここで、本明細書中において、接合膜3が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜3の表面31および内部の脱離基303が脱離して、接合膜3中に終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜3が「活性化された」状態と言うこととする。
したがって、活性手304とは、図4に示すように、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手304が存在するようにすれば、第2の被着体42に対して、特に強固な接合が可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜3に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成されることとなる。
[4]次に、接合膜3と第2の基材22とが密着するように、第1の被着体41と第2の被着体42とを貼り合わせる(図2(d)参照)。これにより、前記工程[3]において、接合膜3に第2の基材22に対する接着性が発現していることから、接合膜3と第2の基材22とが化学的に結合する。その結果、第1の被着体41と第2の被着体42とが所定領域310において部分的に接合され、図2(e)に示すような接合体1が得られる。
このようにして得られた接合体1では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、2つの基材21、22が接合されている。このため、接合体1は短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
また、このような接合方法によれば、従来の固体接合のように、高温(例えば、700℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された第1の基材21および第2の基材22をも、接合に供することができる。
また、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合しているため、各基材21、22の構成材料に制約がないという利点もある。
以上のことから、本発明によれば、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
また、固体接合では、接合層を介していないため、第1の基材21と第2の基材22との間の熱膨張率に大きな差がある場合、その差に基づく応力が接合界面に集中し易く、剥離等が生じるおそれがあったが、接合体(本発明の接合体)1では、接合膜3によって応力の集中が緩和され、剥離の発生を的確に抑制または防止することができる。
また、本実施形態では、接合に供される第1の基材21と第2の基材22のうち、一方のみ(本実施形態では、第1の基材21)に接合膜3が設けられている。そのため、第1の基材21上に接合膜3を形成する際に、接合膜3の形成方法によっては、第1の基材21が比較的長時間にわたってプラズマに曝されることになるが、本実施形態では、第2の基材22は、プラズマに曝されることはない。
したがって、例えば、第2の基材22として、プラズマに対する耐久性が著しく低いものを選択した場合であっても、本実施形態にかかる方法によれば、第1の被着体41と第2の被着体42とを強固に接合することができる。したがって、第2の基材22を構成する材料は、プラズマに対する耐久性をあまり考慮することなく、幅広い材料から選択することが可能になるという利点もある。
また、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、第1の基材21と第2の基材22との熱膨張率の差にもよるが、第1の基材21および第2の基材22の温度が25〜50℃程度である状態下で、第1の被着体41と第2の被着体42とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、第1の基材21と第2の基材22との熱膨張率の差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体1における反りや剥離等の発生を確実に抑制または防止することができる。
また、この場合、具体的な第1の基材21と第2の基材22との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。
また、本実施形態によれば、第1の基材21と第2の基材22とを接合する際に、これらの接合面(互いに対向する面)全体を接合するのではなく、一部の領域(所定領域310)のみを選択的に接合する。この接合の際、接合膜3を形成する領域(所定領域310)を制御することのみで、接合される領域を簡単に選択することができる。これにより、例えば、第1の基材21と第2の基材22との接合部の面積や形状を制御することができるので、接合体1の接合強度を容易に調整することができる。その結果、例えば、接合部を容易に分離可能な接合体1が得られる。
すなわち、接合体1の接合強度を調整可能であると同時に、接合体1を分離する際の強度(割裂強度)を調整可能である。
かかる観点から、容易に分離可能な接合体1を作製する場合には、接合体1の接合強度は、人の手で容易に分離可能な程度の大きさであるのが好ましい。これにより、接合体1を分離する際、装置等を用いることなく、簡単に行うことができる。
また、第1の基材21と第2の基材22との接合部の面積や形状を制御することにより、接合部に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、第1の基材21と第2の基材22との間で熱膨張率差が大きい場合でも、各基材21、22を確実に接合することができる。
さらに、本実施形態にかかる接合方法によれば、図2(e)、(f)に示すように、接合される所定領域310以外の領域では、第1の基材21と第2の基材22との間に、接合膜3の厚さに相当する距離(高さ)の空間3cが形成される。この空間3cを活かすため、所定領域310の形状を適宜調整することにより、第1の基材21と第2の基材22との間に、閉空間や流路を形成したりすることができる。
ここで、本工程において、第1の被着体41と第2の被着体42とを接合するメカニズムについて説明する。
例えば、第2の被着体42の接合面24に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、第1の被着体41の接合膜3と第2の被着体42の接合面24とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜3の表面31に存在する水酸基と、第2の被着体42の接合面24に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、第1の被着体41と第2の被着体42とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、第1の被着体41と第2の被着体42との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、第1の被着体41と第2の被着体42とがより強固に接合されると推察される。
また、第1の被着体41の接合膜3の表面や内部、および、第2の被着体42の接合面24や内部に、それぞれ終端化されていない結合手すなわち未結合手(ダングリングボンド)が存在している場合、第1の被着体41と第2の被着体42とを貼り合わせた時、これらの未結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成されることとなる。これにより、接合膜3と第2の被着体42とが特に強固に接合される。
なお、前記工程[3]で活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[3]の終了後、できるだけ早く本工程[4]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[3]の終了後、60分以内に本工程[4]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、第1の被着体41と第2の被着体42とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
換言すれば、活性化させる前の接合膜3は、金属系の骨格に脱離基303を導入した接合膜であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜3は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接合膜3を備えた第1の被着体41を多量に製造または購入して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[3]に記載したエネルギーの付与を行うようにすれば、接合体1の製造効率の観点から有効である。
以上のようにして、図2(e)に示す接合体(本発明の接合体)1を得ることができる。
このようにして得られた接合体1は、第1の基材21と第2の基材22の間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する接合体1は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。そして、後述のように、接合体1を用いて、例えば液滴吐出ヘッドを構成した場合、耐久性に優れた液滴吐出ヘッドが得られる。また、本発明の接合方法によれば、第1の基材21と第2の基材22とが上記のような大きな接合強度で接合された接合体1を効率よく作製することができる。
なお、従来のシリコン基板同士を直接接合するような固体接合では、接合に供される基板の表面を活性化させても、その活性状態は、大気中で数秒〜数十秒程度の極めて短時間しか維持することができなかった。このため、表面の活性化を行った後、接合する2つの基板を貼り合わせる等の作業に要する時間を、十分に確保することができないという問題があった。
これに対し、本発明によれば、比較的長時間にわたって活性状態を維持することができる。このため、貼り合わせ作業に要する時間を十分に確保することができ、接合作業の効率化を高めることができる。
なお、接合体1を得る際、または、接合体1を得た後に、この接合体1に対して、必要に応じ、以下の3つの工程([5A]、[5B]および[5C])のうちの少なくとも1つの工程(接合体1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
[5A] 図2(f)に示すように、得られた接合体1を、第1の基材21と第2の基材22とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、第1の基材21の表面および第2の基材22の表面に、それぞれ接合膜3の表面がより近接し、接合体1における接合強度をより高めることができる。
また、接合体1を加圧することにより、接合体1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、接合体1における接合強度をさらに高めることができる。
なお、この圧力は、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、接合体1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料によっては、各基材21、22に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、接合体1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
[5B] 図2(f)に示すように、得られた接合体1を加熱する。
これにより、接合体1における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体1を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[5A]、[5B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図2(f)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体1の接合強度を特に高めることができる。
[5C] 得られた接合体1に紫外線を照射する。
これにより、接合膜3と第2の基材22との間に形成される化学結合を増加させ、接合体1の接合強度を特に高めることができる。
このとき照射される紫外線の条件は、前記工程[3]に示した紫外線の条件と同等にすればよい。
また、本工程[5C]を行う場合、第1の基材21および第2の基材22のうち、いずれか一方が透光性を有していることが必要である。そして、透光性を有する基材側から、紫外線を照射することにより、接合膜3に対して確実に紫外線を照射することができる。
以上のような工程を行うことにより、接合体1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
ここで、第1の基材21と第2の基材22との接合を担う接合膜3について詳述する。
以上説明したような本実施形態にかかる接合方法において、接合膜3には、次のIまたはIIの構成のものが適用される。接合膜3をIまたはIIの構成のものとすれば、接合膜3に対してエネルギーを付与することにより、接合膜3の表面31付近に存在する脱離基303が、接合膜3から脱離する。そして、この接合膜3は、脱離基303の脱離によって、その表面31に、第2の基材22(第2の被着体42)との接着性が発現する。
以下、IおよびIIの構成の接合膜3について、それぞれ、詳述する。
<I> まず、Iの構成の接合膜3は、第1の基材21上に設けられ、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子と、これら金属原子および酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基303とを含むものである(図3参照。)。換言すれば、接合膜3は、金属酸化物で構成される金属酸化物膜に脱離基303を導入したものと言うことができる。
このような接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜3(金属原子および酸素原子の少なくとも一方)から脱離し、図4に示すように、接合膜3の少なくとも表面31の付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3表面に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜3を備えた第1の被着体41は、第2の被着体42に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
また、接合膜3は、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子とで構成されるもの、すなわち金属酸化物に脱離基303が結合したものであることから、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜3自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られる接合体1においても、寸法精度が高いものが得られる。
さらに、接合膜3は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、接合膜3を用いて得られた接合体1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
また、本発明では、接合膜3は、導電性を有するものであるのが好ましい。これにより、後述する接合体1において、接合膜3を配線基板が備える配線や、その端子等に適用することができる。
また、接合膜3が導電性を有する場合、接合膜3の抵抗率は、構成材料の組成に応じて若干異なるものの、1×10−3Ω・cm以下であるのが好ましく、1×10−4Ω・cm以下であるのがより好ましい。接合膜3の抵抗率が、このように十分に低ければ、かかる接合膜3は、例えば、損失の少ない配線として十分に利用することができる。
さらに、接合膜3は、透光性を有するものであるものが好ましい。これにより、本発明の接合体を、光学素子等における、透光性を必要とする領域に適用することができる。
なお、脱離基303は、少なくとも接合膜3の表面31付近に存在していればよく、接合膜3のほぼ全体に存在していてもよいし、接合膜3の表面31付近に偏在していてもよい。なお、脱離基303が表面31付近に偏在する構成とすることにより、接合膜3に金属酸化物膜としての機能を好適に発揮させることができる。すなわち、接合膜3に、接合を担う機能の他に、導電性や透光性等の特性に優れた金属酸化物膜としての機能を好適に付与することができるという利点も得られる。換言すれば、脱離基303が、接合膜3の導電性や透光性等の特性を阻害してしまうのを確実に防止することができる。
以上のような接合膜3としての機能が好適に発揮されるように、金属原子が選択される。
この金属原子に適用される金属元素としては、特に限定されないが、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、各種ランタノイド元素、各種アクチノイド元素のような遷移金属元素、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Tl、Pd、Bi、Poのような典型金属元素等が挙げられる。
このうち、遷移金属は、最外殻電子がd軌道またはf軌道に位置しており、各遷移金属元素間は、最外殻電子の数が異なることのみの差異であるため、物性が類似している。そして、遷移金属は、一般に、硬度や融点が高く、電気伝導性および熱伝導性が高い。このため、接合膜3が含む金属原子として、遷移金属元素の原子を選択することにより、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。また、それとともに、接合膜3の導電性をより高めることができる。
また、特に、接合膜3が含む金属原子としてIn、Sn、Zn、TiおよびSbのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることにより、接合膜3は、特に優れた導電性と透明性とを発揮するものとなる。
また、前述の金属酸化物としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)および二酸化チタン(TiO)等が挙げられる。
なお、金属酸化物としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いる場合には、インジウムとスズとの原子比(インジウム/スズ比)は、99/1〜80/20であるのが好ましく、97/3〜85/15であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
また、接合膜3中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と酸素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、第1の被着体41と第2の被着体42とをより強固に接合することができるようになる。
また、脱離基303は、前述したように、金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜3に確実に結合しているものが好適に選択される。
かかる観点から、脱離基303には、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種が好適に用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、第1の被着体41と第2の被着体42との接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記の各原子で構成される原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホン酸基等が挙げられる。
以上のような各原子および原子団の中でも、脱離基303は、特に、水素原子であるのが好ましい。水素原子で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303として水素原子を備える接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
以上のことを考慮すると、接合膜3としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)の金属酸化物に、脱離基303として水素原子が導入されたものが好適に選択される。
かかる構成の接合膜3は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜3は、第1の基材21に対して特に強固に接着するとともに、第2の基材22に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、第1の基材21と第2の基材22とを強固に接合することができる。
また、接合膜3の平均厚さは、0.2〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、接合体1の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、第1の被着体41と第2の被着体42とをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、第1の基材21の接合面23(接合膜3を成膜する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、第1の被着体41と第2の被着体42とを貼り合わせた際に、接合膜3の第2の被着体42に対する密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以上説明したような接合膜3は、接合膜3のほぼ全体に脱離基303を存在させる場合には、例えば、A:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成することができる。また、脱離基303を接合膜3の表面31付近に偏在させる場合には、例えば、B:金属原子と前記酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成することができる。
以下、AおよびBの方法を用いて、第1の基材21上に接合膜3を成膜する場合について、詳述する。
<A> Aの方法では、接合膜3は、上記のように、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法(PVD法)により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成される。このようにPVD法を用いる構成とすれば、金属酸化物材料を第1の基材21に向かって飛来させる際に、比較的容易に金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することができる。このため、接合膜3のほぼ全体にわたって脱離基303を導入することができる。
さらに、PVD法によれば、緻密で均質な接合膜3を効率よく成膜することができる。これにより、PVD法で成膜された接合膜3は、第2の基材22に対して特に強固に接合し得るものとなる。さらに、PVD法で成膜された接合膜3は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、接合体1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気中に、金属酸化物の粒子を叩き出すことができる。そして、金属酸化物の粒子が叩き出された状態で、脱離基303を構成する原子成分を含むガスと接触させることができるため、金属酸化物(金属原子または酸素原子)への脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。
以下、PVD法により接合膜3を成膜する方法として、スパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により、接合膜3を成膜する場合を代表に説明する。
まず、接合膜3の成膜方法を説明するのに先立って、第1の基材21上にイオンビームスパッタリング法により接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置200について説明する。
図5は、本発明の接合方法に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図、図6は、図5に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図である。なお、以下の説明では、図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図5に示す成膜装置200は、イオンビームスパッタリング法による接合膜3の形成がチャンバー(装置)内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置200は、チャンバー(真空チャンバー)211と、このチャンバー211内に設置され、第1の基材21(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)212と、チャンバー211内に設置され、チャンバー211内に向かってイオンビームBを照射するイオン源(イオン供給部)215と、イオンビームBの照射により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物(例えば、ITO)を発生させるターゲット(金属酸化物材料)216を保持するターゲットホルダー(ターゲット保持部)217とを有している。
また、チャンバー211には、チャンバー211内に、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を供給するガス供給手段260と、チャンバー211内の排気をして圧力を制御する排気手段230とを有している。
なお、本実施形態では、基板ホルダー212は、チャンバー211の天井部に取り付けられている。この基板ホルダー212は、回動可能となっている。これにより、第1の基材21上に接合膜3を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
イオン源(イオン銃)215は、図6に示すように、開口(照射口)250が形成されたイオン発生室256と、イオン発生室256内に設けられたフィラメント257と、グリッド253、254と、イオン発生室256の外側に設置された磁石255とを有している。
また、イオン発生室256には、図5に示すように、その内部にガス(スパッタリング用ガス)を供給するガス供給源219が接続されている。
このイオン源215では、イオン発生室256内に、ガス供給源219からガスを供給した状態で、フィラメント257を通電加熱すると、フィラメント257から電子が放出され、放出された電子が磁石255の磁場によって運動し、イオン発生室256内に供給されたガス分子と衝突する。これにより、ガス分子がイオン化する。このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254との間の電圧勾配により、イオン発生室256内から引き出されるとともに加速され、開口250を介してイオンビームBとしてイオン源215から放出(照射)される。
イオン源215から照射されたイオンビームBは、ターゲット216の表面に衝突し、ターゲット216からは粒子(スパッタ粒子)が叩き出される。このターゲット216は、前述したような金属酸化物材料で構成されている。
この成膜装置200では、イオン源215は、その開口250がチャンバー211内に位置するように、チャンバー211の側壁に固定(設置)されている。なお、イオン源215は、チャンバー211から離間した位置に配置し、接続部を介してチャンバー211に接続した構成とすることもできるが、本実施形態のような構成とすることにより、成膜装置200の小型化を図ることができる。
また、イオン源215は、その開口250が、基板ホルダー212と異なる方向、本実施形態では、チャンバー211の底部側を向くように設置されている。
なお、イオン源215の設置個数は、1つに限定されるものではなく、複数とすることもできる。イオン源215を複数設置することにより、接合膜3の成膜速度をより速くすることができる。
また、ターゲットホルダー217および基板ホルダー212の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができる第1のシャッター220および第2のシャッター221が配設されている。
これらシャッター220、221は、それぞれ、ターゲット216、第1の基材21および接合膜3が、不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
また、排気手段230は、ポンプ232と、ポンプ232とチャンバー211とを連通する排気ライン231と、排気ライン231の途中に設けられたバルブ233とで構成されており、チャンバー211内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
さらに、ガス供給手段260は、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を貯留するガスボンベ264と、ガスボンベ264からこのガスをチャンバー211に導くガス供給ライン261と、ガス供給ライン261の途中に設けられたポンプ262およびバルブ263とで構成されており、脱離基303を構成する原子成分を含むガスをチャンバー211内に供給し得るようになっている。
以上のような構成の成膜装置200を用いて、以下のようにして接合膜3が形成される。
ここでは、第1の基材21上に接合膜3を成膜する方法について説明する。
まず、第1の基材21を用意し、この第1の基材21を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
さらに、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
また、チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、金属原子または酸素原子と、前記原子成分を含むガスとの反応が効率良く行われ、金属原子および酸素原子に確実に、前記原子成分を含むガスを導入することができる。
次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出される。このとき、チャンバー211内が脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)であることから、チャンバー211内に叩き出された粒子に含まれる金属原子および酸素原子に脱離基303が導入される。そして、この脱離基303が導入された金属酸化物が第1の基材21上に堆積することにより、接合膜3が形成される。
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜3に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜3の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
以上のようにして、ほぼ全体にわたって脱離基303が存在する接合膜3を成膜することができる。
<B> 一方、Bの方法では、接合膜3は、上記のように、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成される。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を偏在させた状態で導入することができ、接合膜および金属酸化物膜としての双方の特性に優れた接合膜3を形成することができる。
ここで、金属酸化物膜は、いかなる方法で成膜されたものでもよく、例えば、PVD法(物理的気相成膜法)、CVD法(化学的気相成膜法)、プラズマ重合法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により成膜することができるが、中でも、特に、PVD法により成膜するのが好ましい。PVD法によれば、緻密で均質な金属酸化物膜を効率よく成膜することができる。
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法およびレーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、雰囲気中に金属酸化物の粒子を叩き出して、第1の基材21上に供給することができるため、特性に優れた金属酸化物膜を成膜することができる。
さらに、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を導入する方法としては、各種方法が用いられ、例えば、B1:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で金属酸化物膜を熱処理(アニーリング)する方法、B2:イオン・インプランテーション等が挙げられるが、中でも、特に、B1の方法を用いるのが好ましい。B1の方法によれば、比較的容易に、脱離基303を金属酸化物膜の表面付近に選択的に導入することができる。また、熱処理を施す際の、雰囲気温度や処理時間等の処理条件を適宜設定することにより、導入する脱離基303の量、さらには脱離基303が導入される金属酸化物膜の厚さの制御を的確に行うことができる。
以下、金属酸化物膜をスパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により成膜し、次に、得られた金属酸化物膜を、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で熱処理(アニーリング)することにより、接合膜3を得る場合を代表に説明する。
なお、Bの方法を用いて接合膜3の成膜する場合も、Aの方法を用いて接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置200と同様の成膜装置が用いられるため、成膜装置に関する説明は省略する。
[i] まず、第1の基材21を用意する。そして、この第1の基材21を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
[ii] 次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、このとき、加熱手段を動作させ、チャンバー211内を加熱する。チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、膜密度の高い金属酸化物膜を成膜することができる。
[iii] 次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出され、第1の基材21上に堆積して、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子とを含む金属酸化物膜が形成される。
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜3に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜3の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
[iv] 次に、第2のシャッター221を開いた状態で、第1のシャッター220を閉じる。
この状態で、加熱手段を動作させ、チャンバー211内をさらに加熱する。チャンバー211内の温度は、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303が導入される温度に設定され、100〜600℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、次工程[v]において、第1の基材21および金属酸化物膜を変質・劣化させることなく、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303を導入することができる。
[v] 次に、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー211内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
このように、前記工程[iv]でチャンバー211内が加熱された状態で、チャンバー211内を、脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)とすると、金属酸化物膜の表面付近に存在する金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303が導入されて、接合膜3が形成される。
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
なお、チャンバー211内は、前記工程[ii]において、排気手段230を動作させることにより調整された減圧状態を維持しているのが好ましい。これにより、金属酸化物膜の表面付近に対する脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。また、前記工程[ii]の減圧状態を維持したまま、本工程においてチャンバー211内を減圧する構成とすることにより、再度減圧する手間が省けることから、成膜時間および成膜コスト等の削減を図ることができるという利点も得られる。
この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、熱処理を施す時間は、15〜120分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
導入する脱離基303の種類等によっても異なるが、熱処理を施す際の条件(チャンバー211内の温度、真空度、ガス流量、処理時間)を上記範囲内に設定することにより、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を選択的に導入することができる。
以上のようにして、表面31付近に脱離基303が偏在する接合膜3を成膜することができる。
<II> 次に、IIの構成の接合膜3は、第1の基材21上に設けられ、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである(図3参照。)。
このような接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303の結合手が切れて接合膜3の少なくとも表面31付近から脱離し、図4に示すように、接合膜3の少なくとも表面31付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3の表面31に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜3を備えた第1の被着体41は、第2の被着体42に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
また、接合膜3は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303とを含むもの、すなわち有機金属膜であることから、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜3自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られる接合体1においても、寸法精度が高いものが得られる。
このような接合膜3は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、このような接合膜3を用いて得られた接合体1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
また、本発明では、接合膜3は、導電性を有するものであるのが好ましい。これにより、後述する接合体1において、接合膜3を配線基板が備える配線や、その端子等に適用することができる。
以上のような接合膜3としての機能が好適に発揮されるように、金属原子および脱離基303が選択される。
具体的には、金属原子としては、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、各種ランタノイド元素、各種アクチノイド元素のような遷移金属元素、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Tl、Pd、Bi、Poのような典型金属元素等が挙げられる。
このうち、遷移金属は、前述したように、各遷移金属元素間は、最外殻電子の数が異なることのみの差異であるため、物性が類似している。そして、遷移金属は、一般に、硬度や融点が高く、電気伝導性および熱伝導性が高い。このため、接合膜3が含む金属原子として、遷移金属元素の原子を選択することにより、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。また、それとともに、接合膜3の導電性をより高めることができる。
また、特に、接合膜3が含む金属原子としてCu、Al、ZnおよびFeのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることにより、接合膜3は、特に優れた導電性を発揮するものとなる。さらに、接合膜3を後述する有機金属化学気相成長法を用いて成膜する場合には、これらの金属を含む金属錯体等を原材料として用いて、比較的容易かつ均一な膜厚の接合膜3を成膜することができる。
また、脱離基303は、前述したように、接合膜3から脱離することにより、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜3に確実に結合しているものが好適に選択される。
具体的には、脱離基303としては、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団が好適に選択される。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、第1の被着体41の接着性をより高度なものとすることができる。
より具体的には、原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基の他、前記アルキル基の末端がイソシアネート基、アミノ基およびスルホン酸基等で終端しているもの等が挙げられる。
以上のような原子団の中でも、脱離基303は、特に、アルキル基であるのが好ましい。アルキル基で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303としてアルキル基を備える接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
また、かかる構成の接合膜3において、金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、第1の被着体41と第2の被着体42とをより強固に接合することができるようになる。また、接合膜3を優れた導電性を発揮するものとすることができる。
また、接合膜3の平均厚さは、0.2〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、接合体1の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、第1の被着体41と第2の被着体42とをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、第1の基材21の接合面23(接合膜3を成膜する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、第1の被着体41と第2の被着体42とを貼り合わせた際に、接合膜3の第2の被着体42に対する密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以上説明したような接合膜3は、いかなる方法で成膜してもよいが、例えば、IIa:金属原子で構成される金属膜に、脱離基(有機成分)303を含む有機物を、金属膜のほぼ全体または表面付近に選択的に付与(化学修飾)して接合膜3を形成する方法、IIb:金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜3を形成する方法(積層させる方法あるいは、単原子層からなる接合層を形成)、IIc:金属原子と脱離基303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として適切な溶媒に溶解させスピンコート法などを用いて接合膜を形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、IIbの方法により接合膜3を成膜するのが好ましい。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、かつ、均一な膜厚の接合膜3を形成することができる。
以下、IIbの方法、すなわち金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜3を形成する方法により、接合膜3を得る場合を代表に説明する。
まず、接合膜3の成膜方法を説明するのに先立って、接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置400について説明する。
図7は、本発明の接合方法に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図7に示す成膜装置400は、有機金属化学気相成長法(以下、「MOCVD法」と省略することもある。)による接合膜3の形成をチャンバー411内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置400は、チャンバー(真空チャンバー)411と、このチャンバー411内に設置され、第1の基材21(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)412と、チャンバー411内に、気化または霧化した有機金属材料を供給する有機金属材料供給手段460と、チャンバー411内を低還元性雰囲気下とするためのガスを供給するガス供給手段470と、チャンバー411内の排気をして圧力を制御する排気手段430と、基板ホルダー412を加熱する加熱手段(図示せず)とを有している。
基板ホルダー412は、本実施形態では、チャンバー411の底部に取り付けられている。この基板ホルダー412は、モータの作動により回動可能となっている。これにより、第1の基材21上に接合膜3を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、基板ホルダー412の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター421が配設されている。このシャッター421は、第1の基材21および接合膜3が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
有機金属材料供給手段460は、チャンバー411に接続されている。この有機金属材料供給手段460は、固形状の有機金属材料を貯留する貯留槽462と、気化または霧化した有機金属材料をチャンバー411内に送気するキャリアガスを貯留するガスボンベ465と、キャリアガスと気化または霧化した有機金属材料をチャンバー411内に導くガス供給ライン461と、ガス供給ライン461の途中に設けられたポンプ464およびバルブ463とで構成されている。かかる構成の有機金属材料供給手段460では、貯留槽462は、加熱手段を有しており、この加熱手段の作動により固形状の有機金属材料を加熱して気化し得るようになっている。そのため、バルブ463を開放した状態で、ポンプ464を作動させて、キャリアガスをガスボンベ465から貯留槽462に供給すると、このキャリアガスとともに気化または霧化した有機金属材料が、供給ライン461内を通過してチャンバー411内に供給されるようになっている。
なお、キャリアガスとしては、特に限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガス等が好適に用いられる。
また、本実施形態では、ガス供給手段470がチャンバー411に接続されている。ガス供給手段470は、チャンバー411内を低還元性雰囲気下とするためのガスを貯留するガスボンベ475と、前記低還元性雰囲気下とするためのガスをチャンバー411内に導くガス供給ライン471と、ガス供給ライン471の途中に設けられたポンプ474およびバルブ473とで構成されている。かかる構成のガス供給手段470では、バルブ473を開放した状態で、ポンプ474を作動させると、前記低還元性雰囲気下とするためのガスが、ガスボンベ475から、供給ライン471を介して、チャンバー411内に供給されるようになっている。ガス供給手段470をかかる構成とすることにより、チャンバー411内を有機金属材料に対して確実に低還元な雰囲気とすることができる。その結果、有機金属材料を原材料としてMOCVD法を用いて接合膜3を成膜する際に、有機金属材料に含まれる有機成分の少なくとも一部を脱離基303として残存させた状態で接合膜3が成膜される。
チャンバー411内を低還元性雰囲気下とするためのガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素ガスおよびヘリウム、アルゴン、キセノンのような希ガス、一酸化窒素、一酸化二窒素等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、有機金属材料として、後述する2,4−ペンタジオネート−銅(II)や[Cu(hfac)(VTMS)]等のように分子構造中に酸素原子を含有するものを用いる場合には、低還元性雰囲気下とするためのガスに、水素ガスを添加するのが好ましい。これにより、酸素原子に対する還元性を向上させることができ、接合膜3に過度の酸素原子が残存することなく、接合膜3を成膜することができる。その結果、この接合膜3は、膜中における金属酸化物の存在率が低いものとなり、優れた導電性を発揮することとなる。
また、キャリアガスとして前述した窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガスのうちの少なくとも1種を用いる場合には、このキャリアガスに低還元性雰囲気下とするためのガスとしての機能をも発揮させることができる。
また、排気手段430は、ポンプ432と、ポンプ432とチャンバー411とを連通する排気ライン431と、排気ライン431の途中に設けられたバルブ433とで構成されており、チャンバー411内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
以上のような構成の成膜装置400を用いてMOCVD法により、以下のようにして第1の基材21上に接合膜3が形成される。
[i] まず、第1の基材21を用意する。そして、この第1の基材21を成膜装置400のチャンバー411内に搬入し、基板ホルダー412に装着(セット)する。
[ii] 次に、排気手段430を動作させ、すなわちポンプ432を作動させた状態でバルブ433を開くことにより、チャンバー411内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、ガス供給手段470を動作させ、すなわちポンプ474を作動させた状態でバルブ473を開くことにより、チャンバー411内に、低還元性雰囲気下とするためのガスを供給して、チャンバー411内を低還元性雰囲気下とする。ガス供給手段470による前記ガスの流量は、特に限定されないが、0.1〜10sccm程度であるのが好ましく、0.5〜5sccm程度であるのがより好ましい。
さらに、このとき、加熱手段を動作させ、基板ホルダー412を加熱する。基板ホルダー412の温度は、形成する接合膜3の種類、すなわち、接合膜3を形成する際に用いる原材料の種類によっても若干異なるが、80〜600℃程度であるのが好ましく、100〜450℃程度であるのがより好ましく、200〜300℃程度であるのがさらに好ましい。かかる範囲内に設定することにより、後述する有機金属材料を用いて、優れた接着性を有する接合膜3を成膜することができる。
[iii] 次に、シャッター421を開いた状態にする。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽462が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ464を動作させるとともに、バルブ463を開くことにより、気化または霧化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー内に導入する。
このように、前記工程[ii]で基板ホルダー412が加熱された状態で、チャンバー411内に、気化または霧化した有機金属材料を供給すると、第1の基材21上で有機金属材料が加熱されることにより、有機金属材料中に含まれる有機物の一部が残存した状態で、第1の基材21上に接合膜3を形成することができる。
すなわち、MOCVD法によれば、有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存するように金属原子を含む膜を形成すれば、この有機物の一部が脱離基303としての機能を発揮する接合膜3を第1の基材21上に形成することができる。
このようなMOCVD法に用いられる、有機金属材料としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ペンタジオネート−銅(II)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、銅フタロシアニン、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(hfac)(VTMS)]、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(hfac)(MHY)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(pfac)(VTMS)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(pfac)(MHY)]等、各種遷移金属元素を含んだアミド系、アセチルアセトネート系、アルコキシ系、シリコンを含むシリル系、カルボキシル基をもつカルボニル系のような金属錯体、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、ジエチル亜鉛のようなアルキル金属や、その誘導体等が挙げられる。これらの中でも、有機金属材料としては、金属錯体であるのが好ましい。金属錯体を用いることにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、接合膜3を確実に形成することができる。
また、本実施形態では、ガス供給手段470を動作させることにより、チャンバー411内を低還元性雰囲気下となっているが、このような雰囲気下とすることにより、第1の基材21上に純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で成膜することができる。すなわち、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた接合膜3を形成することができる。
気化または霧化した有機金属材料の流量は、0.1〜100ccm程度であるのが好ましく、0.5〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、均一な膜厚で、かつ、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で、接合膜3を成膜することができる。
以上のように、接合膜3を成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基303として用いる構成とすることにより、形成した金属膜等に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜3を成膜することができる。
なお、有機金属材料を用いて形成された接合膜3に残存する前記有機物の一部は、その全てが脱離基303として機能するものであってもよいし、その一部が脱離基303として機能するものであってもよい。
以上のようにして、接合膜3を成膜することができる。
なお、第1の基材21の接合面23のうち、一部の所定領域310に接合膜3を形成する場合には、所定領域310の形状に対応する窓部61を有するマスク6を用いて、前述したような方法で接合膜3を成膜するようにすればよい。
すなわち、図1(a)に示すように、第1の基材21の接合面23の上方にマスク6を設け、このマスク6を介して、接合面23に接合膜3を成膜する。この成膜の際、接合膜3を構成する原料が、マスク6の窓部61を通過することにより、所定領域310にのみ原料が堆積する。これにより、第1の基材21の接合面23の所定領域310に接合膜3が形成される。
なお、図1(a)では、マスク6と第1の基材21とが離れているが、第1の基材21の接合面23に接するようにマスク6を設けるようにしてもよい。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第2実施形態について説明する。
図8および図9は、本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図8および図9中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、接合方法の第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態にかかる接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法では、第1の被着体41と第2の被着体42とを、接合膜3にエネルギーを付与する前に重ね合わせて仮接合体5とした後、この仮接合体5にエネルギーを付与して、接合体1を得るようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21と、第2の基材22(第2の被着体42)とを用意し、第1の基材21の接合面23の一部の所定領域310に接合膜3を形成し、第1の被着体41を作製する工程と、接合膜3と第2の被着体42とが密着するように、これらを重ね合わせて、仮接合体5を得る工程と、仮接合体5にエネルギーを付与して、接合体1を得る工程とを有する。
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、第1の基材21および第2の基材22(第2の被着体42)を用意する。なお、この各基材21、22は、それぞれ、前記第1実施形態と同様の構成とされる。
次に、図8(a)に示すように、第1の基材21の接合面23の上方に、所定領域310の形状に対応する形状をなす窓部61を有するマスク6を設ける。
次に、マスク6を介して、第1の基材21の接合面23に接合膜3を成膜する。これにより、第1の基材21と、第1の基材21の接合面23の一部の所定領域310に設けられた接合膜3とを備える第1の被着体41が作製される(図8(b)参照)。
[2]次に、図8(c)に示すように、接合膜3と第2の基材22(第2の被着体42)の接合面24とが密着するように、2つの被着体41、42を重ね合わせる。これにより、図9(d)に示す仮接合体5を得る。
なお、この仮接合体5の状態では、第1の被着体41と第2の被着体42との間は接合されていない。このため、第1の被着体41と第2の被着体42とをずらし、これらの相対的な位置を調整することができる。このようにすれば、2つの被着体41、42を重ね合わせた後、これらの位置を容易に微調整することができるので、位置の調整の作業性が向上し、最終的に得られる接合体1の面方向における寸法精度を高めることができる。
[3]次に、得られた仮接合体5中の接合膜3に対してエネルギーを付与する。これにより、仮接合体5において、接合膜3が活性化される。
具体的には、図9(e)に示すように、紫外線を照射することにより、エネルギーを付与する。その結果、接合膜3に接着性が発現する。そして、この接着性により、接合膜3と第2の基材22とが所定領域310において部分的に接合される。これにより、図9(f)に示す接合体1が得られる。
なお、本工程でエネルギーを付与する際には、接合膜3に選択的にエネルギーを付与してもよいが、仮接合体5の全体にエネルギーを付与するようにしてもよい。
また、仮接合体5に付与するエネルギーは、紫外線を照射する方法以外のいかなる方法で付与されてもよく、例えば、前記第1実施形態で挙げたような方法で付与される。
また、第2の基材22の構成材料によっては、後述するエネルギー付与工程において仮接合体5にエネルギーを付与することにより、第2の基材22の接合面24に対して、前述した表面処理による作用・効果と同様の作用・効果をもたらすことが期待できる。この場合には、表面処理および中間層の形成を省略しても、十分に高い接合強度を得ることができる。
ここでは、仮接合体5にエネルギーを付与する他の方法として、仮接合体5中の接合膜3を加熱する方法、および、接合膜3に圧縮力を付与する方法を例に説明する。
接合膜3を加熱する場合、加熱温度を25〜100℃程度に設定するのが好ましく、50〜100℃程度に設定するのがより好ましい。かかる範囲の温度で加熱すれば、第1の基材21および第2の基材22が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜3を確実に活性化させることができる。
また、加熱時間は、接合膜3の脱離基303を脱離し得る程度の時間とすればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、接合膜3は、いかなる方法で加熱されてもよいが、例えば、ヒータを用いる方法、赤外線を照射する方法、火炎に接触させる方法等の各種方法で加熱することができる。
なお、赤外線を照射する方法を用いる場合には、第1の基材21または第2の基材22は、光吸収性を有する材料で構成されているのが好ましい。これにより、赤外線を照射された第1の基材21または第2の基材22は、効率よく発熱する。その結果、接合膜3を効率よく加熱することができる。
また、ヒータを用いる方法または火炎に接触させる方法を用いる場合には、第1の基材21または第2の基材22は、熱伝導性に優れた材料で構成されているのが好ましい。これにより、第1の基材21または第2の基材22を介して、接合膜3に対して効率よく熱を伝えることができ、接合膜3を効率よく加熱することができる。
また、接合膜3に圧縮力を付与することにより、接合膜3に対してエネルギーを付与する場合には、第1の基材21と第2の基材22とが互いに近づく方向に、仮接合体5を0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、接合膜3に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、接合膜3に、第2の基材22との十分な接着性が発現する。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の基材21と第2の基材22の各構成材料によっては、各基材21、22に損傷等が生じるおそれがある。
また、圧縮力を付与する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、圧縮力を付与する時間は、圧縮力の大きさに応じて適宜変更すればよい。具体的には、圧縮力の大きさが大きいほど、圧縮力を付与する時間を短くすることができる。
本実施形態にかかる接合方法では、前記第1実施形態にかかる接合方法と同様の作用・効果が得られる。
なお、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じて、前記第1実施形態における3つの工程([5A]、[5B]および[5C])のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
≪第3実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第3実施形態について説明する。
図10および図11は、本発明の接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図10および図11中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第3実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態または前記第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21の接合面23の全面に設けられた接合膜3を備える第1の被着体41を用意し、この接合膜3の一部の所定領域310のみを選択的に活性化させることにより、第1の被着体41と第2の被着体42とを、前記所定領域310において部分的に接合するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21の接合面23の全面に設けられた接合膜3を備える第1の被着体41と、第2の基材22(第2の被着体42)とを用意する工程と、第1の被着体41の接合膜3の一部の所定領域310に対して選択的にエネルギーを付与して、前記所定領域310を選択的に活性化させる工程と、接合膜3と第2の基材22とが密着するように、第1の被着体41と第2の被着体42とを貼り合わせ、これらが前記所定領域310において部分的に接合されてなる接合体1を得る工程とを有する。
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、図10(a)〜(b)に示すように、第1の基材21の接合面23の全面に接合膜3を形成する。これにより、第1の被着体41を得る。
なお、接合膜3の形成方法は、マスクを用いないようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
また、接合膜を備えない第2の基材22(第2の被着体42)を用意する。
[2]次に、図10(c)に示すように、第1の被着体41の接合膜3の表面31のうち、一部の所定領域310に対して選択的にエネルギーを付与する。
エネルギーが付与されると、接合膜3では、所定領域310が部分的に活性化される。これにより、接合膜3のうちの所定領域310に、第2の基材22との接着性が発現する。一方、接合膜3の所定領域310以外の領域には、この接着性はほとんど発現しない。
このような方法によれば、エネルギーを付与する領域を選択することのみで、接合部の領域を容易に制御することができる。
このような状態の第1の被着体41は、所定領域310において、第2の基材22と部分的に接着可能なものとなる。
ここで、接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよいが、例えば、前記第1実施形態で挙げたような方法で付与される。
また、本実施形態では、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。この方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
また、本実施形態では、エネルギー線として、特に、レーザー光、電子線のような指向性の高いエネルギー線を用いるのが好ましい。かかるエネルギー線であれば、目的の方向に向けて照射することにより、所定領域310に対してエネルギー線を選択的にかつ簡単に照射することができる。
また、指向性の低いエネルギー線であっても、接合膜3の表面31のうち、エネルギー線を照射すべき所定領域310以外の領域を覆うように(隠すように)して照射すれば、所定領域310に対してエネルギー線を選択的に照射することができる。
具体的には、図10(c)に示すように、接合膜3の表面31の上方に、エネルギー線を照射すべき所定領域310の形状に対応する形状をなす窓部61を有するマスク6を設け、このマスク6を介してエネルギー線を照射すればよい。このようにすれば、所定領域310に対して、エネルギー線を選択的に照射することが容易に行える。
[3]次に、図11(d)に示すように、接合膜3と第2の基材22とが密着するように、2つの被着体41、42を貼り合わせる。これにより、第1の被着体41と第2の被着体42とが所定領域310において部分的に接合され、図11(e)に示す接合体1を得る。
なお、接合体1では、第1の被着体41と第2の被着体42との間隙のうち、接合している所定領域310以外の領域では、わずかな間隙が生じている(残存している)。したがって、この所定領域310の形状を適宜調整することにより、第1の被着体41と第2の被着体42との間に、閉空間や流路等を容易に形成することができる。
また、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じ、前記第1実施形態の工程[5A]、[5B]および[5C]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
例えば、図11(f)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱することにより、接合体1の各基材21、22同士がより近接する。これにより、接合膜3と第2の基材22との界面における水酸基の脱水縮合が促進される。そして、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
このとき、前述したように、接合体1の接合膜3と第2の基材22との界面のうち、所定領域310以外の領域(非接合領域)では、わずかな間隙が生じている(残存している)。したがって、接合体1を加圧しつつ、加熱する際には、この所定領域310以外の領域において、接合膜3と第2の基材22とが接合されないような条件で行うようにするのが好ましい。
また、上記のことを考慮して、前記第1実施形態の工程[5A]、[5B]および[5C]のうちの少なくとも1つの工程を行う場合、これらの工程を、所定領域310に対して選択的に行うのが好ましい。これにより、所定領域310以外の領域において、接合膜3と第2の基材22とが接合されるのを防止することができる。
≪第4実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第4実施形態について説明する。
図12および図13は、本発明の接合方法の第4実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図12および図13中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第4実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態ないし前記第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法は、エネルギーを付与する前に、第1の被着体41と第2の被着体42とを重ね合わせて仮接合体5を得た後、一部の所定領域310に対して選択的にエネルギーを付与する以外は、前記第3実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21の接合面23の全面に設けられた接合膜3を備える第1の被着体41と、第2の基材22(第2の被着体42)とを用意する工程と、接合膜3と第2の基材22とが密着するように、第1の被着体41と第2の被着体42とを重ね合わせて、仮接合体5を得る工程と、仮接合体5の一部の所定領域310に対して選択的にエネルギーを付与して、接合体1を得る工程とを有する。
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、図12(a)〜(b)に示すように、第1の基材21の接合面23の全面に接合膜3を形成する。これにより、第1の被着体41を得る。
なお、接合膜3の形成方法は、マスクを用いないようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
また、接合膜を備えない第2の基材22(第2の被着体42)を用意する。
[2]次に、図12(c)に示すように、接合膜3の表面31と第2の基材22の接合面24とが密着するように、第1の被着体41と第2の被着体42とを重ね合わせる。これにより、仮接合体5を得る。
なお、この仮接合体5の状態では、第1の被着体41と第2の被着体42との間は接合されていない。このため、第1の被着体41と第2の被着体42とをずらし、これらの相対的な位置を調整することができる。このようにすれば、2つの被着体41、42を重ね合わせた後、これらの位置を容易に微調整することができるので、位置の調整の作業性が向上し、最終的に得られる接合体1の面方向における寸法精度を高めることができる。
[3]次に、得られた仮接合体5中の接合膜3のうち、一部の所定領域310に対して選択的にエネルギーを付与する。これにより、仮接合体5において、接合膜3が活性化される。
具体的には、前記第2実施形態と同様に、図13(d)に示すように、マスク6を介して、所定領域310に紫外線を選択的に照射することにより、エネルギーを付与する。その結果、接合膜3の所定領域310に接着性が発現する。そして、この接着性により、接合膜3と第2の基材22とが所定領域310において部分的に接合される。これにより、図13(e)に示す接合体1が得られる。
なお、仮接合体5に付与するエネルギーは、紫外線を照射する方法以外のいかなる方法で付与されてもよく、例えば、前記第1実施形態で挙げたような方法で付与される。
また、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じ、前記第1実施形態の工程[5A]、[5B]および[5C]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
以上のような前記各実施形態にかかる接合方法は、種々の複数の部材同士を接合するのに用いることができる。
このような接合に供される部材としては、例えば、トランジスタ、ダイオード、メモリのような半導体素子、水晶発振子のような圧電素子、反射鏡、光学レンズ、回折格子、光学フィルターのような光学素子、太陽電池のような光電変換素子、半導体基板とそれに搭載される半導体素子、絶縁性基板と配線または電極、インクジェット式記録ヘッド、マイクロリアクタ、マイクロミラーのようなMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品、圧力センサ、加速度センサのようなセンサ部品、半導体素子や電子部品のパッケージ部品、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体のような記録媒体、液晶表示素子、有機EL素子、電気泳動表示素子のような表示素子用部品、燃料電池用部品等が挙げられる。
また、前記各実施形態にかかる接合方法により得られた接合体は、構成材料を選択することにより、接合膜に導電性を付与することができる。これにより、接合体中の接合膜を、部材同士を部分的に接合する機能の他、配線、くし歯状電極(アンテナ、フィルター等)の各種機能を有する「機能性部分接合膜」として用いることができる。その結果、例えば、積層基板のような接合体中に前述したような各種機能を効率よく集積することができるので、電子部品の高機能化および薄型化をより高度化することができる。
<液滴吐出ヘッド>
ここでは、本発明の接合体をインクジェット式記録ヘッドに適用した場合の実施形態について説明する。
図14は、本発明の接合体を適用して得られたインクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)を示す分解斜視図、図15は、図14に示すインクジェット式記録ヘッドの主要部の構成を示す断面図、図16は、図14に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図である。なお、図14は、通常使用される状態とは、上下逆に示されている。
図14に示すインクジェット式記録ヘッド10は、図16に示すようなインクジェットプリンタ9に搭載されている。
図16に示すインクジェットプリンタ9は、装置本体92を備えており、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ921と、下部前方に記録用紙Pを排出する排紙口922と、上部面に操作パネル97とが設けられている。
操作パネル97は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えている。
また、装置本体92の内部には、主に、往復動するヘッドユニット93を備える印刷装置(印刷手段)94と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置94に送り込む給紙装置(給紙手段)95と、印刷装置94および給紙装置95を制御する制御部(制御手段)96とを有している。
制御部96の制御により、給紙装置95は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この記録用紙Pは、ヘッドユニット93の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット93が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行なわれる。すなわち、ヘッドユニット93の往復動と記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となって、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
印刷装置94は、ヘッドユニット93と、ヘッドユニット93の駆動源となるキャリッジモータ941と、キャリッジモータ941の回転を受けて、ヘッドユニット93を往復動させる往復動機構942とを備えている。
ヘッドユニット93は、その下部に、多数のノズル孔111を備えるインクジェット式記録ヘッド10(以下、単に「ヘッド10」と言う。)と、ヘッド10にインクを供給するインクカートリッジ931と、ヘッド10およびインクカートリッジ931を搭載したキャリッジ932とを有している。
なお、インクカートリッジ931として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。
往復動機構942は、その両端をフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸943と、キャリッジガイド軸943と平行に延在するタイミングベルト944とを有している。
キャリッジ932は、キャリッジガイド軸943に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト944の一部に固定されている。
キャリッジモータ941の作動により、プーリを介してタイミングベルト944を正逆走行させると、キャリッジガイド軸943に案内されて、ヘッドユニット93が往復動する。そして、この往復動の際に、ヘッド10から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
給紙装置95は、その駆動源となる給紙モータ951と、給紙モータ951の作動により回転する給紙ローラ952とを有している。
給紙ローラ952は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ952aと駆動ローラ952bとで構成され、駆動ローラ952bは給紙モータ951に連結されている。これにより、給紙ローラ952は、トレイ921に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置94に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ921に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
制御部96は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置94や給紙装置95等を制御することにより印刷を行うものである。
制御部96は、いずれも図示しないが、主に、各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、圧電素子(振動源)14を駆動して、インクの吐出タイミングを制御する圧電素子駆動回路、印刷装置94(キャリッジモータ941)を駆動する駆動回路、給紙装置95(給紙モータ951)を駆動する駆動回路、および、ホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとを備えている。
また、CPUには、例えば、インクカートリッジ931のインク残量、ヘッドユニット93の位置等を検出可能な各種センサ等が、それぞれ電気的に接続されている。
制御部96は、通信回路を介して、印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理して、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づいて、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により圧電素子14、印刷装置94および給紙装置95は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
以下、ヘッド10について、図14および図15を参照しつつ詳述する。
ヘッド10は、ノズル板11と、インク室基板12と、振動板13と、振動板13に接合された圧電素子(振動源)14とを備えるヘッド本体17と、このヘッド本体17を収納する基体16とを有している。なお、このヘッド10は、オンデマンド形のピエゾジェット式ヘッドを構成する。
ノズル板11は、例えば、SiO、SiN、石英ガラスのようなシリコン系材料、Al、Fe、Ni、Cuまたはこれらを含む合金のような金属系材料、アルミナ、酸化鉄のような酸化物系材料、カーボンブラック、グラファイトのような炭素系材料等で構成されている。
このノズル板11には、インク滴を吐出するための多数のノズル孔111が形成されている。これらのノズル孔111間のピッチは、印刷精度に応じて適宜設定される。
ノズル板11には、インク室基板12が固着(固定)されている。
このインク室基板12は、ノズル板11、側壁(隔壁)122および後述する振動板13により、複数のインク室(キャビティ、圧力室)121と、インクカートリッジ931から供給されるインクを貯留するリザーバ室123と、リザーバ室123から各インク室121に、それぞれインクを供給する供給口124とが区画形成されている。
各インク室121は、それぞれ短冊状(直方体状)に形成され、各ノズル孔111に対応して配設されている。各インク室121は、後述する振動板13の振動により容積可変であり、この容積変化により、インクを吐出するよう構成されている。
インク室基板12を得るための母材としては、例えば、シリコン単結晶基板、各種ガラス基板、各種樹脂基板等を用いることができる。これらの基板は、いずれも汎用的な基板であるので、これらの基板を用いることにより、ヘッド10の製造コストを低減することができる。
一方、インク室基板12のノズル板11と反対側には、振動板13が接合され、さらに振動板13のインク室基板12と反対側には、複数の圧電素子14が設けられている。
また、振動板13の所定位置には、振動板13の厚さ方向に貫通して連通孔131が形成されている。この連通孔131を介して、前述したインクカートリッジ931からリザーバ室123に、インクが供給可能となっている。
各圧電素子14は、それぞれ、下部電極142と上部電極141との間に圧電体層143を介挿してなり、各インク室121のほぼ中央部に対応して配設されている。各圧電素子14は、圧電素子駆動回路に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて作動(振動、変形)するよう構成されている。
各圧電素子14は、それぞれ、振動源として機能し、振動板13は、圧電素子14の振動により振動し、インク室121の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能する。
基体16は、例えば各種樹脂材料、各種金属材料等で構成されており、この基体16にノズル板11が固定、支持されている。すなわち、基体16が備える凹部161に、ヘッド本体17を収納した状態で、凹部161の外周部に形成された段差162によりノズル板11の縁部を支持する。
以上のような、ノズル板11とインク室基板12との接合、インク室基板12と振動板13との接合、およびノズル板11と基体16とを接合する際に、少なくとも1箇所において本発明の接合方法が適用されている。
換言すれば、ノズル板11とインク室基板12との接合体、インク室基板12と振動板13との接合体、およびノズル板11と基体16との接合体のうち、少なくとも1箇所に本発明の接合体が適用されている。
このようなヘッド10は、接合部の接合界面の接合強度および耐薬品性が高くなっており、これにより、各インク室121に貯留されたインクに対する耐久性および液密性が高くなっている。その結果、ヘッド10は、信頼性の高いものとなる。
また、非常に低温で信頼性の高い接合ができるため、線膨張係数の異なる材料でも大面積のヘッドができる点でも有利である
このようなヘッド10は、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電素子14の下部電極142と上部電極141との間に電圧が印加されていない状態では、圧電体層143に変形が生じない。このため、振動板13にも変形が生じず、インク室121には容積変化が生じない。したがって、ノズル孔111からインク滴は吐出されない。
一方、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電素子14の下部電極142と上部電極141との間に一定電圧が印加された状態では、圧電体層143に変形が生じる。これにより、振動板13が大きくたわみ、インク室121の容積変化が生じる。このとき、インク室121内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル孔111からインク滴が吐出される。
1回のインクの吐出が終了すると、圧電素子駆動回路は、下部電極142と上部電極141との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電素子14は、ほぼ元の形状に戻り、インク室121の容積が増大する。なお、このとき、インクには、インクカートリッジ931からノズル孔111へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気がノズル孔111からインク室121へ入り込むことが防止され、インクの吐出量に見合った量のインクがインクカートリッジ931(リザーバ室123)からインク室121へ供給される。
このようにして、ヘッド10において、印刷させたい位置の圧電素子14に、圧電素子駆動回路を介して吐出信号を順次入力することにより、任意の(所望の)文字や図形等を印刷することができる。
なお、ヘッド10は、圧電素子14の代わりに電気熱変換素子を有していてもよい。つまり、ヘッド10は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してインクを吐出する構成(いわゆる、「バブルジェット方式」(「バブルジェット」は登録商標))のものであってもよい。
かかる構成のヘッド10において、ノズル板11には、撥液性を付与することを目的に形成された被膜114が設けられている。これにより、ノズル孔111からインク滴が吐出される際に、このノズル孔111の周辺にインク滴が残存するのを確実に防止することができる。その結果、ノズル孔111から吐出されたインク滴を目的とする領域に確実に着弾させることができる。
<配線基板>
さらに、本発明の接合体を配線基板に適用した場合の実施形態について説明する。
図17は、本発明の接合体を適用して得られた配線基板を示す斜視図である。
図17に示す配線基板510は、絶縁基板513と、絶縁基板513上に配設された電極512と、リード514と、リード514の一端に、電極512と対向するように設けられた電極515とを有する。
そして、電極512の上面の一部分には、前述した接合膜3と同様の接合膜(図示せず)が形成されている。すなわち、電極515と電極515とは、前述の本発明の接合方法によって貼り合わせることにより接合されている。これにより、電極512、515間は、接合膜によって強固に接合されることになる。その結果、各電極512、515間の層間剥離等が確実に防止されるとともに、信頼性の高い配線基板510が得られる。
また、接合膜は、接合膜に含まれる金属酸化物として導電性を有するものを選択することにより、各電極512、515間を導通する機能をも担う。接合膜は、非常に薄いものでも十分な接合力を発揮する。このため、各電極512、515間の離間距離をより小さくすることができ、各電極512、515間の電気抵抗成分(接触抵抗)の低減を図ることができる。その結果、各電極512、515間の導電性をより高めることができる。
また、接合膜は、前述したように、その厚さを高い精度で容易に制御することができる。これにより、配線基板510は、より寸法精度の高いものとなり、各電極512、515間の導電性も容易に制御することができる。
以上、本発明の接合方法および接合体を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の接合方法は、前記各実施形態のうち、任意の1つまたは2つ以上を組み合わせたものであってもよい。
また、本発明の接合方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
また、前記各実施形態では、第1の基材と第2の基材の2枚の基材を接合する方法について説明しているが、3枚以上の基材を接合する場合に、本発明の接合方法を用いるようにしてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.接合体の製造
(実施例1)
まず、第1の基材として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板を用意し、第2の基材として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのガラス基板を用意した。
次いで、単結晶シリコン基板を図5に示す成膜装置200のチャンバー211内に収納し、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、表面処理を行った面に、イオンビームスパッタリング法を用いて、ITOに水素原子が導入された接合膜(平均厚さ100nm)を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
<イオンビームスパッタリングの成膜条件>
・ターゲット :ITO
・チャンバーの到達真空度 :2×10−6Torr
・成膜時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・水素ガスの流量 :60sccm
・チャンバー内の温度 :20℃
・イオンビームの加速電圧 :600V
イオン発生室側のグリッドへの印加電圧 :+400V
チャンバー側のグリッドへの印加電圧 :−200V
・イオンビーム電流 :200mA
・イオン発生室に供給するガス種 :Krガス
・処理時間 :20分
このようにして成膜された接合膜は、ITOに水素原子が導入されたもので構成されており、金属原子(インジウムおよびスズ)と、この金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基(水素原子)とを含むものである。
次に、得られた接合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。なお、紫外線を照射した領域は、ITO膜(接合膜)のうち、周縁部の幅3mmの枠状の領域とした。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :窒素ガス
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
一方、ガラス基板の片面に対して、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、紫外線を照射してから1分後に、接合膜の紫外線を照射した面と、ガラス基板の表面処理を施した面とが接触するように、単結晶シリコン基板とガラス基板とを重ね合わせた。これにより、接合体を得た。
次に、得られた接合体を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
(実施例2)
接合体を加圧しつつ加熱する際の加熱温度を80℃から25℃に変更した以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
(実施例3〜13)
第1の基材の構成材料および第2の基材の構成材料を、それぞれ表1に示す材料に変更した以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
(実施例14)
まず、前記実施例1と同様にして、単結晶シリコン基板とガラス基板(第1の基材および第2の基材)を用意し、それぞれに酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、シリコン基板の表面処理を行った面に、前記実施例1と同様にして接合膜を成膜した。
次に、接合膜と、ガラス基板の表面処理を行った面とが接触するように、単結晶シリコン基板とガラス基板とを重ね合わせた。これにより、仮接合体を得た。
そして、仮接合体に対して、以下に示す条件で紫外線を照射した。なお、紫外線を照射した領域は、仮接合体中のITO膜(接合膜)のうち、周縁部の幅3mmの枠状の領域とした。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :窒素ガス
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
これにより、各基板を接合し、接合体を得た。
続いて、得られた接合体を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
(実施例15)
単結晶シリコン基板上にITO膜(接合膜)を成膜する際に、シリコン基板の周縁部の幅3mmの枠状の領域のみに成膜するようにした以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
(実施例16)
単結晶シリコン基板上にITO膜(接合膜)を成膜する際に、シリコン基板の周縁部の幅3mmの枠状の領域のみに成膜するようにした以外は、前記実施例14と同様にして接合体を得た。
(実施例17)
次に、ターゲットとしてITOに代えてATOを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、シリコン基板の表面処理を行った面に、ATOに水素原子が導入された接合膜を成膜した。以下に詳述する。
まず、第1の基材として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板を用意し、第2の基材として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのガラス基板を用意した。
次いで、これらの基材の双方を、それぞれ、図5に示す成膜装置200のチャンバー211内に収納し、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、表面処理を行った面に、イオンビームスパッタリング法を用いて、ATOに水素原子が導入された接合膜(平均厚さ100nm)を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
<イオンビームスパッタリングの成膜条件>
・ターゲット :ATO
・チャンバーの到達真空度 :2×10−6Torr
・成膜時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・水素ガスの流量 :60sccm
・チャンバー内の温度 :20℃
・イオンビームの加速電圧 :600V
イオン発生室側のグリッドへの印加電圧 :+400V
チャンバー側のグリッドへの印加電圧 :−200V
・イオンビーム電流 :200mA
・イオン発生室に供給するガス種 :Krガス
・処理時間 :20分
次に、得られた接合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。なお、紫外線を照射した領域は、ATO膜(接合膜)のうち、周縁部の幅3mmの枠状の領域とした。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :窒素ガス
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
続いて、紫外線を照射してから1分後に、接合膜の紫外線を照射した面と、ガラス基板の表面処理を施した面とが接触するように、各基板を重ね合わせた。これにより、接合体を得た。
次に、得られた接合体を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
(実施例18)
まず、第1の基材として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板を用意し、第2の基材として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのガラス基板を用意した。
次いで、単結晶シリコン基板を図5に示す成膜装置200のチャンバー211内に収納し、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、表面処理を行った面に、イオンビームスパッタリング法を用いて、金属酸化物膜として、平均厚さ100nmのITO膜を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
<イオンビームスパッタリングの成膜条件>
・ターゲット :ITO
・チャンバーの到達真空度 :2×10−6Torr
・成膜時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・チャンバー内の温度 :20℃
・イオンビームの加速電圧 :600V
イオン発生室側のグリッドへの印加電圧 :+400V
チャンバー側のグリッドへの印加電圧 :−200V
・イオンビーム電流 :200mA
・イオン発生室に供給するガス種 :Krガス
・処理時間 :20分
次に、得られた金属酸化物膜に、以下に示す条件で熱処理を施して、金属酸化物膜(ITO膜)の表面付近に水素原子を導入することにより接合膜を形成した。なお、熱処理の条件は以下に示す通りである。
<熱処理の条件>
・熱処理時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・水素ガスの流量 :60sccm
・チャンバー内の温度 :150℃
・処理時間 :60分
以上のようにして成膜された接合膜は、ITO膜の表面付近に水素原子が導入されたもので構成されており、金属原子(インジウムおよびスズ)と、この金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基(水素原子)とを含むものである。
次に、得られた接合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。なお、紫外線を照射した領域は、ITO膜(接合膜)のうち、周縁部の幅3mmの枠状の領域とした。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :窒素ガス
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
一方、ガラス基板の片面に対して、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、紫外線を照射してから1分後に、接合膜の紫外線を照射した面と、ガラス基板の表面処理を施した面とが接触するように、単結晶シリコン基板とガラス基板とを重ね合わせた。これにより、接合体を得た。
次に、得られた接合体を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
(実施例19)
まず、第1の基材として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板を用意し、第2の基材として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのガラス基板を用意した。
次いで、単結晶シリコン基板を図7に示す成膜装置400のチャンバー411内に収納し、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、表面処理を行った面に、原材料を2,4−ペンタジオネート−銅(II)とし、MOCVD法を用いて、平均厚さ100nmの接合膜を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
<成膜条件>
・チャンバー内の雰囲気 :窒素ガス + 水素ガス
・有機金属材料(原材料) :2,4−ペンタジオネート−銅(II)
・有機金属材料の流量 :1sccm
・キャリアガス :窒素ガス
・水素ガスの流量 :0.2sccm
・チャンバーの到達真空度 :2×10−6Torr
・成膜時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・基板ホルダーの温度 :275℃
・処理時間 :10分
以上のようにして成膜された接合膜は、金属原子として銅原子を含み、脱離基として、2,4−ペンタジオネート−銅(II)に含まれる有機物の一部(アルキル基)が残存しているものである。
次に、得られた接合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。なお、紫外線を照射した領域は、接合膜のうち、周縁部の幅3mmの枠状の領域とした。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :窒素ガス
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
一方、ガラス基板の片面に対して、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、紫外線を照射してから1分後に、接合膜の紫外線を照射した面と、ガラス基板の表面処理を施した面とが接触するように、単結晶シリコン基板とガラス基板とを重ね合わせた。これにより、接合体を得た。
次に、得られた接合体を10MPaで加圧しつつ、120℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
(比較例1〜3)
第1の基材の構成材料および第2の基材の構成材料を、それぞれ表1に示す材料とし、各基材間の周縁部の幅3mmの枠状の領域をエポキシ系接着剤で接着した以外は、前記実施例1と同様にして、接合体を得た。
(比較例4〜6)
第1の基材の構成材料および第2の基材の構成材料を、それぞれ表1に示す材料とし、各基材間周縁部の幅3mmの枠状の領域をAgペーストで接着した以外は、前記実施例1と同様にして、接合体を得た。
(参考例1〜3)
第1の基材の構成材料および第2の基材の構成材料を、それぞれ表1に示す材料とし、接合膜に紫外線を照射する際に、接合膜の全面に照射するようにした以外は、前記実施例1と同様にして、接合体を得た。これにより得られた接合体は、第1の基材と第2の基材とが全面で接合されたものとなる。
2.接合体の評価
2.1 接合強度(割裂強度)の評価
各実施例、各比較例および各参考例で得られた接合体について、それぞれ接合強度を測定した。
接合強度の測定は、各基材を引き剥がしたとき、剥がれる直前の強度(荷重)を測定することにより行った。そして、接合強度を以下の基準にしたがって評価した。
その結果、各実施例で得られた接合体の接合強度は、いずれも各参考例で得られた接合体の接合強度より小さかった。このことから、接合する領域を、接合面の一部とするか、または全部とするかを選択することによって、すなわち接合部の面積を変えることによって、接合強度(荷重の大きさ)を調整可能であることが明らかとなった。
また、各実施例で得られた接合体の接合強度は、いずれも各比較例で得られた接合体の接合強度より大きかった。
2.2 寸法精度の評価
各実施例、各比較例および各参考例で得られた接合体について、それぞれ厚さ方向の寸法精度を測定した。
寸法精度の測定は、正方形の接合体の各角部の厚さを測定し、4箇所の厚さの最大値と最小値の差を算出することにより行った。そして、この差を以下の基準にしたがって評価した。
<寸法精度の評価基準>
○:10μm未満
×:10μm以上
2.3 耐薬品性の評価
各実施例、各比較例および各参考例で得られた接合体を、80℃に維持したインクジェットプリンタ用インク(エプソン社製、「HQ4」)に、以下の条件で3週間浸漬した。その後、各基材を引き剥がし、接合界面にインクが浸入していないかを確認した。そして、その結果を以下の基準にしたがって評価した。
<耐薬品性の評価基準>
◎:全く浸入していない
○:角部にわずかに浸入している
△:縁部に沿って浸入している
×:内側に浸入している
2.4 抵抗率の評価
各実施例12、13および比較例6で得られた接合体について、それぞれ接合部分の抵抗率を測定した。そして、測定した抵抗率を以下の基準にしたがって評価した。
<抵抗率の評価基準>
○:1×10−3Ω・cm未満
×:1×10−3Ω・cm以上
2.5 形状変化の評価
各実施例、各比較例および各参考例で得られた接合体について、それぞれの接合体の接合前後における形状変化を測定した。
具体的には、接合体の反り量を、接合前後で測定し、以下の基準にしたがって評価した。
<反り量の評価基準>
◎:接合前後で反り量がほとんど変化しなかった
○:接合前後で反り量がわずかに変化した
△:接合前後で反り量がやや大きく変化した
×:接合前後で反り量が大きく変化した
以上、2.2〜2.5の各評価結果を表1に示す。
Figure 2009076696
表1から明らかなように、各実施例で得られた接合体は、寸法精度、耐薬品性、反り量の変化および抵抗率のいずれの項目においても優れた特性を示した。
また、各実施例で得られた接合体は、各参考例で得られた接合体よりも反り量の変化が小さかった。
一方、各比較例で得られた接合体は、耐薬品性が十分ではなかった。また、寸法精度は、特に低いことが認められた。さらに、接合膜の抵抗率が高いという結果が得られた。
本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法において、エネルギー付与前の接合膜の状態を示す部分拡大図である。 本発明の接合方法において、エネルギー付与後の接合膜の状態を示す部分拡大図である。 本発明の接合方法に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。 図5に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図である。 本発明の接合方法に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。 本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法の第4実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合方法の第4実施形態を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の接合体を適用して得られたインクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)を示す分解斜視図である。 図14に示すインクジェット式記録ヘッドの主要部の構成を示す断面図である。 図14に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図である。 本発明の接合体を適用して得られた配線基板を示す斜視図である。
符号の説明
1……接合体 21……第1の基材 22……第2の基材 23、24……接合面 3……接合膜 303……脱離基 304……活性手 3c……空間 31……表面 310……所定領域 41……第1の被着体 42……第2の被着体 5……仮接合体 6……マスク 61……窓部 200……成膜装置 211……チャンバー 212……基板ホルダー 215……イオン源 216……ターゲット 217……ターゲットホルダー 219……ガス供給源 220……第1のシャッター 221……第2のシャッター 230……排気手段 231……排気ライン 232……ポンプ 233……バルブ 250……開口 253……グリッド 254……グリッド 255……磁石 256……イオン発生室 257……フィラメント 260……ガス供給手段 261……ガス供給ライン 262……ポンプ 263……バルブ 264……ガスボンベ 400……成膜装置 411……チャンバー 412……基板ホルダー 421……シャッター 430……排気手段 431……排気ライン 432……ポンプ 433……バルブ 460……有機金属材料供給手段 461……ガス供給ライン 462……貯留槽 463……バルブ 464……ポンプ 465……ガスボンベ 470……ガス供給手段 471……ガス供給ライン 473……バルブ 474……ポンプ 475……ガスボンベ 10……インクジェット式記録ヘッド 11……ノズル板 111……ノズル孔 114……被膜 12……インク室基板 121……インク室 122……側壁 123……リザーバ室 124……供給口 13……振動板 131……連通孔 14……圧電素子 141……上部電極 142……下部電極 143……圧電体層 16……基体 161……凹部 162……段差 17……ヘッド本体 9……インクジェットプリンタ 92……装置本体 921……トレイ 922……排紙口 93……ヘッドユニット 931……インクカートリッジ 932……キャリッジ 94……印刷装置 941……キャリッジモータ 942……往復動機構 943……キャリッジガイド軸 944……タイミングベルト 95……給紙装置 951……給紙モータ 952……給紙ローラ 952a……従動ローラ 952b……駆動ローラ 96……制御部 97……操作パネル P……記録用紙 510……配線基板 512……電極 513……絶縁基板 514……リード 515……電極

Claims (49)

  1. 基材上の一部の所定領域に、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
    前記接合膜に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離させることにより、前記接合膜に接着性を発現させる工程と、
    前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせることにより、これらが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
  2. 基材上の一部の所定領域に、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
    前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを重ね合わせて、仮接合体を得る工程と、
    前記接合膜に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離させることにより、前記接合膜に接着性を発現させ、前記第1の被着体と前記第2の被着体とが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
  3. 基材上に、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
    前記接合膜の一部の所定領域に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離させることにより、前記接合膜の前記所定領域に接着性を発現させる工程と、
    前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせることにより、これらが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
  4. 基材上に、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
    前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを重ね合わせて、仮接合体を得る工程と、
    前記接合膜の一部の所定領域に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離させることにより、前記接合膜の前記所定領域に接着性を発現させ、前記第1の被着体と前記第2の被着体とが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
  5. 前記脱離基は、前記接合膜のうち、表面付近に偏在している請求項1ないし4のいずれかに記載の接合方法。
  6. 前記接合膜は、透光性を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の接合方法。
  7. 前記金属原子は、遷移金属元素の原子である請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
  8. 前記金属原子は、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、およびアンチモンのうちの少なくとも1種である請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
  9. 前記脱離基は、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種である請求項1ないし8のいずれかに記載の接合方法。
  10. 前記接合膜は、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)に、脱離基として水素原子が導入されたものである請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法。
  11. 前記接合膜中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法。
  12. 基材上の一部の所定領域に、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
    前記接合膜に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記接合膜から脱離させることにより、前記接合膜に接着性を発現させる工程と、
    前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせることにより、これらが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
  13. 基材上の一部の所定領域に、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
    前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを重ね合わせて、仮接合体を得る工程と、
    前記接合膜に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記接合膜から脱離させることにより、前記接合膜に接着性を発現させ、前記第1の被着体と前記第2の被着体とが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
  14. 基材上に、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
    前記接合膜の一部の所定領域に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記接合膜から脱離させることにより、前記接合膜の前記所定領域に接着性を発現させる工程と、
    前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせることにより、これらが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
  15. 基材上に、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含む接合膜を備える第1の被着体と、前記接合膜のない被着面を有する基材を備える第2の被着体とを用意する工程と、
    前記接合膜と前記被着面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを重ね合わせて、仮接合体を得る工程と、
    前記接合膜の一部の所定領域に対してエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基を、前記接合膜から脱離させることにより、前記接合膜の前記所定領域に接着性を発現させ、前記第1の被着体と前記第2の被着体とが前記所定領域において部分的に接合した接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
  16. 前記接合膜は、有機金属材料を原材料として、有機金属化学気相成長法を用いて成膜されたものである請求項12ないし15のいずれかに記載の接合方法。
  17. 前記接合膜は、低還元性雰囲気下で成膜されたものである請求項16に記載の接合方法。
  18. 前記脱離基は、前記有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存したものである請求項16または17に記載の接合方法。
  19. 前記脱離基は、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団で構成される請求項16ないし18のいずれかに記載の接合方法。
  20. 前記脱離基は、アルキル基である請求項19に記載の接合方法。
  21. 前記有機金属材料は、金属錯体である請求項16ないし20のいずれかに記載の接合方法。
  22. 前記金属原子は、遷移金属元素の原子である請求項12ないし21のいずれかに記載の接合方法。
  23. 前記金属原子は、銅、アルミニウム、亜鉛および鉄のうちの少なくとも1種である請求項12ないし21のいずれかに記載の接合方法。
  24. 前記接合膜中の金属原子と炭素原子との存在比は、3:7〜7:3である請求項12ないし23のいずれかに記載の接合方法。
  25. 前記接合膜は、導電性を有する請求項1ないし24のいずれかに記載の接合方法。
  26. 前記接合膜は、その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が、当該接合膜から脱離した後に、活性手が生じる請求項1ないし25のいずれかに記載の接合方法。
  27. 前記活性手は、未結合手または水酸基である請求項26に記載の接合方法。
  28. 前記接合膜の平均厚さは、0.2〜1000nmである請求項1ないし27のいずれかに記載の接合方法。
  29. 前記接合膜は、流動性を有さない固体状をなしている請求項1ないし28のいずれかに記載の接合方法。
  30. 前記基材は、板状をなしている請求項1ないし29のいずれかに記載の接合方法。
  31. 前記板状の基材は、可撓性を有するものである請求項30に記載の接合方法。
  32. 前記基材の少なくとも前記接合膜を形成する部分は、シリコン材料、金属材料またはガラス材料を主材料として構成されている請求項1ないし31のいずれかに記載の接合方法。
  33. 前記基材の前記接合膜を備える面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし32のいずれかに記載の接合方法。
  34. 前記表面処理は、プラズマ処理または紫外線照射処理である請求項33に記載の接合方法。
  35. 前記基材と前記接合膜との間に、中間層が介挿されている請求項1ないし34のいずれかに記載の接合方法。
  36. 前記中間層は、酸化物系材料を主材料として構成されている請求項35に記載の接合方法。
  37. 前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項1ないし36のいずれかに記載の接合方法。
  38. 前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線である請求項37に記載の接合方法。
  39. 前記加熱の温度は、25〜100℃である請求項37または38に記載の接合方法。
  40. 前記圧縮力は、0.2〜10MPaである請求項37ないし39のいずれかに記載の接合方法。
  41. 前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われる請求項37ないし40のいずれかに記載の接合方法。
  42. 前記第2の被着体の前記被着面は、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理を施したものである請求項1ないし41のいずれかに記載の接合方法。
  43. 前記第2の被着体の前記被着面は、あらかじめ、官能基、ラジカル、開環分子または不飽和結合を有する脱離性中間体分子、ハロゲンおよび過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質を有する請求項1ないし42のいずれかに記載の接合方法。
  44. 前記脱離性中間体分子は、炭化水素分子である請求項43に記載の接合方法。
  45. 前記官能基は、水酸基である請求項43または44に記載の接合方法。
  46. さらに、前記接合体に対して、その接合強度を高める処理を行う工程を有する請求項1ないし45のいずれかに記載の接合方法。
  47. 前記接合強度を高める処理を行う工程は、前記接合体にエネルギー線を照射する方法、前記接合体を加熱する方法、および前記接合体に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項46に記載の接合方法。
  48. 2つの基材が、請求項1ないし47のいずれかに記載の接合方法により接合されてなることを特徴とする接合体。
  49. 前記接合膜は、機能性部分接合膜としての機能を有するものである請求項48に記載の接合体。
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