JP2009061614A - インクジェットヘッド、およびインクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents

インクジェットヘッド、およびインクジェットヘッドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】圧電基板上に形成された保護膜と、ノズルプレートを貼りつける接着剤との接着性が向上したインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】本発明に係るインクジェットヘッド10の圧電基板18には、圧電基板18を保護する保護膜26が形成されている。ノズルプレート17が接着する面の保護膜26の表面には、パターン化された凹部62が形成されている。凹部62が形成された保護膜26表面に接着剤24を塗布し、ノズルプレート17を貼り付ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクを吐出するインクジェットヘッドに関する。また、そのインクジェットヘッドを製造する方法に関する。
インクジェットヘッドは、微量な液滴を吐出させるものであり、ヘッドチップ、ノズルプレート、およびヘッドベースから構成されている。ヘッドチップは、インク流路が設けられたアクチュエーター部材を備えており、インク流路は、液滴を吐出するために必要なエネルギーの発生手段を有している。ノズルプレートは、液滴を吐出する微小な孔であるノズル孔が複数設けられた、樹脂または金属のプレートである。インク流路の断面積は、ノズル孔の断面積よりも大きい構成である。ノズル孔は、ノズル孔の中心軸とインク流路断面の中心軸とがほぼ一致するように、ノズルプレートに設けられている。ヘッドベースは、配線基板およびそれを支持するための部材を備えている。インクジェットヘッドは、ヘッドチップ、ノズルプレート、およびヘッドベースを組み立てたアセンブリであり、各部品同士は、多くの場合には、接着剤で互いに結合しているか、互いにコーティングされているか、または、その両方がなされている。
インクジェットヘッドには、インクの腐食作用、温度変化、および物理的負荷などにより、その耐久性が著しく低下してしまうという問題がある。特にインク吐出部であるノズル孔の近傍は、常にインクに浸漬している状態であり、インクの腐食作用による影響を受けやすい。ノズル孔近傍において不具合が発生した場合には、インクジェットヘッドの吐出特性に大きく影響する。そのため、ノズルプレート、およびインク流路を有するアクチュエーター部材単体の耐久性を高めるとともに、これら部材の接着状態を良好に保つための取り組みが数多くなされている。
ノズルプレートの材料としては、通常、耐薬品性の高いポリイミド樹脂やステンレスなどの金属が用いられており、大きな問題とはならない。一方、アクチュエーター部材としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が用いられることが多いが、PZTは、インクに対する耐性が低く、インクとの接液部において腐食による特性劣化が生じ易い。そこで、PZTによって形成されているベース部材を含むインクジェットヘッドを、耐薬品性の高い有機絶縁膜によってコーティングするという方法が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された方法では、絶縁膜として、水蒸気を含む各種ガスの透過防止力に優れたパリレンCを主成分とする有機膜、および、耐水性に優れたパリレンNを主成分とする有機膜を用いて、これらを積層することにより、保護膜の劣化を防いでいる。それにより、電極と水性インクとの絶縁状態を維持し、アクチュエーター部材および電極の劣化を防いでいる。
しかしながら、上記の方法では、特定のインクには対応しうるが、ほとんどのインクについては対応できないという問題がある。たとえば、積層したパリレンN膜とパリレンC膜との接合部は、耐薬品性が著しく低い。そのため、パリレンN膜とパリレンC膜との間にインクが侵入した場合には、層間剥離が生じる。これは、必ずしも特殊なインクにおいて発生するわけではなく、たとえばイソプロピルアルコールなどの一般的な溶剤を使用した場合にも発生する。そのため、パリレン単層膜によってインクジェットヘッドを保護することが望ましいが、パリレン単層膜では、いくつかの問題が生じる。
たとえば、パリレンC単層膜を形成した場合には、パリレンCとパリレンNとの積層膜の場合に比べ、接着剤との密着力が低下する。これは、パリレンC膜がパリレンN膜よりも接着力に劣っていることによる。両者の接着力を評価するために、接着剤としてエポキシ系接着剤を用い、PZT基板からノズルプレート側を90°の角度で引き剥がすというピール試験をおこなった。その結果、PZT上にパリレンCとパリレンNとの積層膜が形成されているものに比べ、パリレンC単層膜が形成されているものでは、接着力が1/10以下であった。
また、パリレンN単層膜を形成した場合には、パリレンN単層膜は多孔質材料であるため、インク溶剤がPZTに到達し、PZTが腐食してしまう。
上記の結果から、パリレン単層膜によってインクジェットヘッドを保護するために、耐薬品性の高いパリレンC膜と接着剤との接着強度を改善することが求められている。
パリレンC膜と接着剤との接着強度を高める方法の1つとして、パリレンC膜の接着面の表面トポグラフィ(形状)を変更することが可能であり、そのための表面処理方法がいくつか知られている。このような表面処理方法の多くは、接着面の表面を粗くする方法であり、たとえば、化学エッチング、プラズマおよび反応性エッチング、機械的アブレーション、ならびにサンドブラストなどが挙げられる。これらはすべて、表面トポグラフィに何らかの影響を及ぼすことができる処理方法である。また、接着面金型の表面に粗さを取り入れることにより、接着面の表面トポグラフィを変化させることも可能である。
しかし、表面処理による接着性の向上を図る従来技術においては、以下のような種々の問題がある。
たとえば、プラズマ表面処理は、真空などの非標準の環境においておこなう必要があり、生産時間および生産コストの両方を増大させてしまう。また、プラズマ、RIE(リアクティブイオンエッチング)、およびコロナなどにより表面を化学的に変化させて、接着性を向上させる表面処理は、不安定であり、最適な結果を得るためには処理後直ちに結合させなければならないことが多い。そのために、製造工程が複雑になってしまう問題がある。また、機械的アブレーションおよびサンドブラストなどの表面処理は、製造工程に所望ではない異物を持ち込んで、インクジェットヘッドの歩留まりおよび品質に影響を及ぼす場合がある。また、上述した方法により粗面仕上げをおこなうと、接合部の強度が上がる場合があるものの、そのような方法により作製した表面構造は制御されておらず、接着に最適化されているわけではない。さらに、上述したタイプの表面処理方法の多くは、環境にやさしいものではない。また金型を用いた表面加工処理においては、金型からの部品の取出しが困難になってしまう場合がある。
さらには、接着に最も効果的な表面を作製する表面処理は、歩留まりを下げ、コストおよび生産時間が増大するという問題がある。また、各部品の形状に影響を及ぼすことによって、製造工程に悪影響を及ぼすといった問題もある。また、インクジェットヘッドの組み立て中には、インクジェットヘッド部品の特定の部分を表面処理することが望ましいが、その同じ部品の他の表面を処理すると不具合を生じる場合がある。不具合の発生を防ぐために表面処理を施さない領域をマスキングすると、かなりのコストが加算される可能性がある。
上述した問題を解決するための技術として、たとえば、レーザ照射による表面加工処理をおこなう技術が特許文献2に開示されている。特許文献2に記載の表面加工処理方法は、基板表面に、その一部を保護するためのイニシエータを塗布した後、レーザを照射し、保護されていない部分の研磨をおこなって、所望の密度および大きさの微細構造を形成する方法である。
特開2004−74469号公報(平成16年3月11日公開) 特開2003−268566号公報(平成15年9月25日公開)
しかしながら、特許文献2に開示された技術においては、イニシエータ塗布の際に、イニシエータに含まれる微粒子がインク流路内に入り込んでしまうという問題がある。微粒子のサイズは直径数百ナノメートルのオーダーであるため、ごく微量ではノズル詰まりを引き起こすことはない。しかし、数十個が凝集した場合には、ノズル詰まりの原因となり得る。ノズル詰まりを引き起こさない場合でも、ノズル孔付近およびノズルテーパー内に粒子が付着したときには、インクの吐出曲がりを発生させる。さらに、微粒子がインク溶剤に溶解する可能性もあり、その場合には、インク性能が変わってしまうため、製品自体の不良を引き起こす虞がある。
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、保護膜の表面加工処理を施すことによって保護膜と接着剤との接着性を向上させることにより、耐薬品性および信頼性が向上したインクジェットヘッド、およびその製造方法を提供することにある。
本発明にかかるインクジェットヘッドは、上記の問題を解決するために、インクを吐出するノズル孔を有するノズルプレートと、該ノズル孔からインクを吐出させるための圧電基板とを備えているインクジェットヘッドにおいて、前記圧電基板の表面に、前記圧電基板を保護する保護膜が形成されており、前記ノズルプレートは、前記圧電基板と前記保護膜を介して、接着剤によって接着しており、前記ノズルプレートが接着する前記保護膜の表面には、パターン化された凹部が形成されていることを特徴とする。
前記構成によれば、圧電基板の表面は保護膜が形成されているので、圧電基板の薬品に対する耐性が向上している。また、圧電基板とノズルプレートとが接着している面にある保護膜の表面形状は平坦ではなく、パターン化された凹部が形成されている。表面に凹部を設けたことにより、保護膜と接着剤との有効接着面積が増加し、保護膜に対する接着剤の接着強度が増加している。したがって、接着剤を介して圧電基板に接着しているノズルプレートが、ずれにくくなり、各部品間の接着力が強固なインクジェットヘッドを製造することができる。また保護膜に形成される凹部の形成密度および形状によって、保護膜に対する接着剤の接着力が変化するが、本発明のインクジェットヘッドにおいては、所望の密度および形状の凹部を設けることができる。そのため、必要とする接着力に最適な密度および形状の凹部を、安定して設けることができる。
さらに本発明のインクジェットヘッドにおいては、上述した構成に加えて、前記保護膜の表面が有機絶縁膜によって形成されていることが好ましい。
前記構成によれば、導電性を有するインクと圧電基板のチャンネル溝に設けられたインク室電極との接触を避けることができる。それにより、チャンネル溝への電圧印加時にリーク電流が流れることを防ぐことができる。したがって、正規のチャンネル壁剪断モード変形が達成できないことに起因する吐出不良を防止することができる。
さらに本発明のインクジェットヘッドにおいては、上述した構成に加えて、前記有機絶縁膜の材料は、パラキシリレン樹脂を主成分とすることが好ましい。
前記構成によれば、前記保護膜はパリレン膜であるため、化学的に安定であり、耐薬品性に優れた保護膜となる。しがたって、インクジェットヘッドの耐薬品性を向上させることができる。
さらに本発明のインクジェットヘッドにおいては、上述した構成に加えて、前記パラキシリレン樹脂は、ポリモノクロロパラキシリレンであることが好ましい。
前記構成によれば、インクジェットヘッドを保護する保護膜は、水蒸気を含む各種ガスの透過防止力に優れたパリレンCを主成分とする有機膜によって構成される。そのため、インクジェットヘッドにおいてインクが熱によって気化した場合にも、インクが保護膜を透過して圧電基板に到達することを防ぐことができる。したがって、インクによる圧電基板の劣化、および電極材料の電解腐食に起因するインクジェットヘッドの破損を防止することができる。
さらに本発明のインクジェットヘッドにおいては、上述した構成に加えて、前記保護膜の厚さは、1μm以上かつ10μm以下であることが好ましい。
前記構成によれば、圧電基板の表面は、1μm以上の保護膜によって覆われており、圧電基板表面の凹凸、および圧電基板表面に付着したダストの影響による保護膜のピンホールの発生を防ぐことができる。それによりインクが圧電基板に到達することを防ぎ、インクによる圧電基板の劣化をさらに防ぐことができる。また、前記構成によれば、保護膜の厚さは10μm以下である。それにより、成膜に要する時間を短縮でき、かつ原材料のコストを低減させることができる。
さらに本発明のインクジェットヘッドにおいては、上述した構成に加えて、前記凹部の底部から前記保護膜の表面までの距離が50nm以上であり、かつ、前記凹部の底部から前記保護膜の底面までの距離が10nm以上であることが好ましい。なお、保護膜の底面とは、保護膜と圧電基板が接している保護膜側の面のことである。
前記構成によれば、凹部の底部から、保護膜表面までの距離が50nm以上である。その場合には、保護膜の活性面が表面に露出することになり、保護膜と接着剤との接着強度を大幅に向上させることができる。したがって、ノズル面に付着したインクを擦り取るときに生じ得るノズルプレートの剥離を防ぐことができる。また、凹部の底部から、保護膜の底面までの距離が10nm以上である場合には、凹部を形成するときに発生する熱ダメージのチャンネルへの影響を防ぐことができる。それにより、チャンネルにクラックが発生するのを防止することができる。クラックの発生を防止することにより、インクジェットヘッドがクラックを基点として疲労破壊を起こすことを防ぐことができる。
さらに本発明のインクジェットヘッドにおいては、上述した構成に加えて、前記凹部の前記保護膜の表面における形状は、円であり、該円の直径は、50μm以下であることが好ましい。
さらに本発明のインクジェットヘッドにおいては、上述した構成に加えて、前記凹部の前記保護膜の表面における形状は、星形であることが好ましい。
前記構成によれば、凹部の表面形状は星形である。凹部の表面形状が星形である場合には、凹部の表面形状が円形である場合に比して、保護膜のアンカー効果を発揮することのできる領域、すなわち、接着剤との有効接触面積、が大きくなる。したがって、星形のパターンにすることにより、円形のパターンよりも、保護膜と接着剤との接着強度を高めることができ、インクジェットヘッドの信頼性を向上させることができる。
さらに本発明のインクジェットヘッドにおいては、上述した構成に加えて、前記保護膜の表面と直交する面における前記凹部の断面形状は、前記保護膜の表面に向かうにつれて幅が狭くなる逆テーパー形状であることが好ましい。
前記構成によれば、凹部はいわゆる逆テーパー形状であり、通常のテーパー形状よりも、接着剤との接着強度を高めることができる。
さらに本発明のインクジェットヘッドにおいては、上述した構成に加えて、前記保護膜の表面において、前記凹部の開口部の全断面積は、前記ノズルプレートが接着する領域の面積の10%以上であることが好ましい。なお、ここで、前記保護膜において前記ノズルプレートが接着する領域の面積には、凹部の開口部は含むが、インク室の開口部は含んでいないものとする。
前記構成によれば、形成される凹部の接着表面に占める割合が10%以上である。凹部が形成されると、形成されずに表面が平坦である場合に比べて、接着剤との有効接触面積が大きくなる。したがって前記構成によれば、接着強度をより高めることができる。
さらに本発明のインクジェットヘッドにおいては、上述した構成に加えて、前記ノズルプレートの形成材料は、ポリイミドであることが好ましい。
前記構成によれば、ノズルプレートは耐薬品性に優れたポリイミドによって形成されている。したがって、ノズルプレートの耐薬品性を向上させることができ、耐薬品性に優れたインクジェットヘッドを提供できる。
さらに本発明のインクジェットヘッドにおいては、上述した構成に加えて、前記接着剤は、エポキシ系接着剤であることが好ましい。
前記構成によれば、圧電基板とノズルプレートとは、耐薬品性に優れたエポキシ系接着剤によって接着している。したがって、インクによる接着剤の劣化を防ぎ、ノズルプレートと圧電基板との接着を強固に保つことができる。
本発明に係るインクジェットヘッドの製造方法は、上記のインクジェットヘッドの製造方法であって、前記凹部をレーザの照射により形成する加工工程を含むことを特徴とする。
前記方法によれば、凹部の形成はレーザの照射によっておこなっている。レーザの照射条件を変更することにより、所望の形状および大きさの凹部を形成することができる。またレーザを用いることにより、インクジェットヘッドを低コスト、かつシンプルなプロセスで製造することができる。
さらに本発明のインクジェットヘッドの製造方法においては、前記レーザは、エキシマレーザであることが好ましい。
前記方法によれば、凹部の形成にエキシマレーザを用いているので、加工工程における保護膜への熱ダメージを軽減させることができる。したがって、保護膜の劣化を防ぎ、信頼性の向上したインクジェットヘッドを製造することができる。また、凹部形成時に発生する加工残渣をエキシマレーザのスキャンによって容易に除去することができる。したがって、加工残渣の除去のために別の装置を必要とせず、インクジェットヘッドを低コスト、かつシンプルなプロセスで製造することができる。
以上のように、本発明に係るインクジェットヘッドは、圧電基板に、圧電基板を保護する保護膜が形成されており、ノズルプレートが接着する面の保護膜の表面には、パターン化された凹部が形成されており、凹部が形成された保護膜表面に接着剤を塗布し、ノズルプレートを貼り付けているので、保護膜と接着剤との接着強度が上昇し、圧電基板とノズルプレートが強固に接着しているので、インクジェットヘッドの耐薬品性、信頼性を向上させることができる。
また、本発明に係るインクジェットヘッドの製造方法は、圧電基板上に形成された保護膜の表面に、パターン化された凹部が形成されているインクジェットヘッドの製造方法であって、凹部の形成はレーザによりおこなっているので、インクジェットヘッドを低コスト、かつシンプルなプロセスで製造することができる。
本発明に係るインクジェットヘッドの一実施形態について、図1から図9に基づいて説明すれば以下の通りである。
〔インクジェットヘッドの構成〕
まず本実施形態におけるインクジェットヘッドの構成について、図2、図3、図5、図7、図8、および図9を用いて説明する。
図2は、インクジェットヘッド10の概略の構成を示す斜視図である。図3は、ヘッドチップ(圧電基板)18の、ノズルプレート17と接着する面を表す図である。
図2に示すように、インクジェットヘッド10は、アクチュエータ部材11およびカバー部材12を有するヘッドチップ18と、ノズル孔16を有するノズルプレート17とを備える構成である。
アクチュエータ部材11は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料ウエハを加工して製造されたものであり、厚さ1mm、幅6mm、および奥行き12mmである。ここで、厚さ、および幅とは、それぞれ、アクチュエータ部材11のノズルプレート接着面15を有する面の長辺の長さ、および短辺の長さである。アクチュエータ部材11には、インク室となるチャンネル溝13が、チャンネル壁14を挟んで形成されている。なお、説明の便宜上、図2においては、チャンネル溝の数を省略して図示している。
チャンネル溝13は、インクを吐出させるためのインク室の一部となるものである。チャンネル溝13は、ダイサーのダイシングブレードを、アクチュエータ部材11の厚み方向の途中まで切り込んだ状態にして走行させる切削加工によって、アクチュエータ部材11に形成される。チャンネル溝13の深さは、300μmであり、横幅は、80μmである。それぞれのチャンネル溝13は、アクチュエータ部材11の一方の端部から他方の端部まで貫通するように、互いに平行に、かつ同じ深さに形成されている。チャンネル壁14は、チャンネル溝13同士の間に形成される隔壁である。
カバー部材12は、チャンネル溝13の上部を封じる部材であり、圧電材料ウエハを加工したものである。チャンネル溝13の上部が覆われることにより、インク室25が形成される。カバー部材12の圧電材料としては、アクチュエータ部材11との熱膨張率のマッチングを良くするために、アクチュエータ部材11と同じくPZTを用いている。なお、熱膨張率がアクチュエータ部材11と比較的近ければよく、安価なアルミナセラミックを用いてもよい。カバー部材12には、インクジェットヘッドを構成したときに共通インク室となるザグリ、および、インク供給口となる貫通加工部が設けられている。アクチュエータ部材11とカバー部材12とは、市販の接着剤によって、接着している。
ノズルプレート17は、インクを吐出するノズル孔16を有している部材である。ノズルプレート17は、各チャンネル溝13に対応した位置にノズル孔16が配置するように、ヘッドチップ18のインク吐出面(ノズルプレート接着面15)に接着している。ノズルプレート17の材料としては、民生用プリンタなど、さほど高い吐出性能を要求しない用途であれば、レーザ加工できる材料であればいかなる材料であってもよい。これに対し、工業用インクジェットプリンタ用途の場合には、特にインクの着弾精度、吐出体積の点において高精度のものが要求されるため、ノズル径のばらつき、ノズルテーバー形状のばらつきは、厳密に管理する必要がある。そのため、高精度ノズルを製造する方法として、薄い樹脂プレートにエキシマレーザ光を用いて加工する方法が用いられている。その場合のノズルプレート17の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、およびポリアミドイミドといったエキシマレーザ加工容易性の高い材料が好ましい。また、Niの電鋳メッキによって得られる金属製のノズルプレート17であってもよい。本実施形態におけるノズルプレート17は、ポリイミドを材料として用いている。
図3は、ヘッドチップ18のノズルプレート接着面15を表す図であり、図3(a)は、表面に有機絶縁膜(保護膜)26を成膜する前、図3(b)は、表面に有機絶縁膜26を成膜した後のヘッドチップ18を示す図である。また、図7は、インクジェットヘッド10の断面図である。
図3および図7に示すように、インク室25は、チャンネル溝13をカバー部材12によって覆うことにより形成されるものである。インク室25には、チャンネル壁14の上部(カバー部材12に近い側)にインク室内電極23が設けられている。インクジェットヘッド10を用いてインク吐出をおこなう場合には、チャンネル壁14を挟んで互いに対向するインク室内電極23に、互いに逆位相の電位を印加することにより、チャンネル壁14に、シェアモード変形を起こさせる。すなわち、チャンネル壁14の両側のインク室内電極23の間に電位差を生じさせることにより、チャンネル壁14のうち、インク室内電極23が設けられている上半分と、インク室内電極23が設けられていない下半分との境目を折れ目とした、チャンネル壁14の変形が生じる。この変形によるインク室25の内部の体積変化は、インク室25の内部にあるインクに圧力が加わる。この圧力を利用して、インク室の先端部に配置したノズル孔16からインク液滴が吐出される。
インク室内電極23は、カバー部材12によってアクチュエータ部材を覆う前に、電極材料となる金属をチャンネル溝13の上方から蒸着させ、チャンネル壁14上面に形成された金属膜を除去することにより形成される。電極材料としては、Au、Al、およびCuなどの金属が好ましく、本実施形態においては、Auを用いており、インク室内電極23の厚さは、0.5μmである。
図3(b)に示すように、ヘッドチップ18の表面、インク室内電極23の表面ならびにインク室25の底面および側面には、有機絶縁膜26が形成されている。有機絶縁膜26は、インクジェットヘッド10を構成する部材、インク室内電極23、および接着剤をインクから隔離して保護するためのものである。
有機絶縁膜26としては、ポリエチレンおよびエポキシなどの樹脂材料が挙げられるが、中でもパリレン膜であることが好ましい。パリレン膜は、化学的に安定であって、耐薬品性および絶縁性に優れている。そのため、電極材料の電解腐食に起因するインクジェットヘッドの破損を防止することができる。また、水性インクおよび金属粒子を含むインクといった導電性を有するインクを用いた場合には、ヘッド駆動時にチャンネル間での電圧印加によってリーク電流が流れ、正規のチャンネル壁剪断モード変形が達成されず、吐出不良を生じ得る。しかし、絶縁性に優れたパリレン膜を用いることにより、上述した吐出不良を防止することができる。また、有機溶媒を主成分とするインクを用いる場合にも、パリレン膜を用いることにより、インクジェットヘッドを構成する部材および接着剤を、溶解性の高い有機溶媒から隔離することが可能である。また、パリレンは、室温において気相成長によって形成される。そのため、熱によって特性が劣化する部材に対して、熱ダメージを与えることなく、有機絶縁膜26を形成することができる。また、表面形状が複雑に入り組んだ部材に対しても、均一に有機絶縁膜26を形成することができる。なお、インクジェットヘッド10においては、ポリモノクロロパラキシリレン(パリレンC)を用いている。パリレンCは、水蒸気を含む各種ガスの透過防止力に優れている。したがって、インクが熱によって気化した場合にも、インクによるインクジェットヘッド構成部材の劣化を防止することができる。
有機絶縁膜26の厚さは、1μm以上であることが好ましい。ヘッドチップ18の表面が、1μm以上の有機絶縁膜26によって覆われている場合には、ヘッドチップ18表面の凹凸、およびヘッドチップ18表面に付着したダストの影響による有機絶縁膜26のピンホールの発生を防ぐことができる。それによりインクがヘッドチップ18に到達することを防ぎ、インクによるヘッドチップ18の劣化をさらに防ぐことができる。一方、成膜工程時間の短縮、および原材料コストの低減の観点から、有機絶縁膜26の厚さとしては、10μm以下であることが好ましい。なお、インクジェットヘッド10においては、有機絶縁膜26の厚さは3.5μmである。
図5(a)および(b)は、ノズルプレート接着面15に設けられた凹部62の形状およびパターンを示す図である。凹部62は、後述するレーザ加工により形成される。図5(a)に示す凹部62は、インク室25の開口部の長辺と平行に形成された矩形パターンであり、図5(b)に示す凹部62は、円形パターンである。凹部62の形状およびパターンは、レーザ加工時に用いるマスクを変更することにより、所望の形状およびパターンとすることができる。たとえば、凹部62の表面の形状を星形に加工することも可能である。凹部62の表面形状が星形である場合には、円形である場合に比して、有機絶縁膜26のアンカー効果が発揮できる領域、すなわち、接着剤との有効接触面積、が大きくなる。したがって、凹部62を星形のパターンにすることにより、円形のパターンよりも、有機絶縁膜26と接着剤との接着強度を高めることができ、インクジェットヘッドの信頼性を向上させることができる。なお、凹部62の開口部の形状は、上述した形状に限定されるものではない。
凹部62の、有機絶縁膜26の表面と直交する面の断面形状は、テーパー形状となっている。またそのテーパー形状は、表面側の幅よりも底部側の幅が小さくなっているものである。すなわち、表面から底部にわたって凹部62の壁面が傾斜している。なお、ここでは、当該傾斜の傾斜角を、テーパー角と定義する。より詳しくは、表面に垂直な方向に引いた線と、当該壁面とが交差する部分の角度のことである。本実施形態においては、凹部62のテーパー角は約10°である。なお、テーパー角は、レーザ照射軸をずらしながら加工することにより、任意の角度に調節できる。さらに、凹部62は、表面側の幅よりも、底部側の幅の方が広い、いわゆる逆テーパー形状であってもよい。凹部62を逆テーパー形状にすることにより、通常のテーパー形状に比べ、接着剤との接着強度を高めることができる。
図8は、凹部62の形成条件による接着強度の違いを示す図である。具体的には、凹部62の加工量(凹部62の深さ)に対する接着強度、および、加工面積比に対する接着強度を示す図である。接着力の評価は、90°剥離試験によりおこなった。なお、加工面積比とは、ノズルプレート17が接着する領域の全面積に対する加工部分の面積(凹部62の開口部の全断面積)のことである。ここで、全面積には、凹部の開口部は含むが、インク室の開口部は含んでいないものとする。
インクジェットヘッドでは、ノズル面に付着したインクをゴムブレードなどによって擦り取っているため、接着強度が弱い場合には、ゴムブレードによるワイピングの際にノズルプレートが剥離してしまう。そのため、ゴムブレードによるワイピングに耐えうるには、少なくとも20g/mmの接着強度が必要である。
図8に示すように、凹部62の加工量が50nmよりも小さい場合には、加工面積比をコントロールしても、20g/mmを超える接着強度を達成することはできないことがわかる。それに対して、加工量が50nmである場合には、接着強度が20g/mmを上回ることが可能である。この結果より、凹部62の、有機絶縁膜26の表面からの深さは50nm以上であることが好ましい。なお、凹部62の深さ、および加工面積比以外の条件としては、凹部62の形状は、直径50μmの円形パターンであり、テーパー角は10°である。
ところで、凹部62の深さに制限が無いわけではなく、加工時に発生する熱ダメージが、チャンネル部に影響しない程度に、底部に有機絶縁膜を残しておく必要がある。図9は、チャンネル部に生じたクラックを示す図である。凹部の底部から、有機絶縁膜の底面までの距離(凹部底部膜厚)が10nmよりも短いと、図9に示すように、チャンネル部(PZT)にクラックが発生する。クラックは、初期のインクジェットヘッド特性には影響しないが、時間が経つにつれ、当該部分を基点として疲労破壊を起こす。そのため、凹部底部膜厚は10nm以上であることが好ましい。
また、図8に示すように、加工面積比が5%である場合には、加工量によらず、接着強度が20g/mmを下回っている。それに対して、加工面積比が10%以上である場合には、接着強度を20g/mm以上にすることが可能である。加工面積比が大きくなるほど、接着強度も大きくなる。この結果より、凹部62の密度は、加工面積比として10%以上であることが好ましい。
〔従来技術(1)および(2)における接着強度〕
一方、表面加工処理として、アッシングのみをおこなっている従来技術(以下、従来技術(1)と記載する)、および、有機絶縁膜の成膜条件を操作して、表面の面粗さを高めている従来技術(以下、従来技術(2)と記載する)における接着強度について、図10、および図11を用いて説明する。従来技術(1)は、ヘッドチップとノズルプレートとの接着において、ヘッドチップのノズルプレート接着面、およびノズルプレートのヘッドチップとの接着面をアッシングした後、ヘッドチップのノズルプレート接着面に接着剤を塗布することにより、接着をおこなう技術である。また、従来技術(2)は、有機絶縁膜であるパリレンC膜の成膜条件を操作し、パリレンC膜表面の面粗さを高めて、接着をおこなう技術である。
図10は、従来技術(1)における接着強度の試験結果を示すグラフである。具体的には、各アッシング処理時間における、純水に対するノズルプレート接着面の接触角変化、および、ノズルプレートとヘッドチップとを接着した場合の接着強度の変化を示すものである。なお、アッシング条件としては、出力は100W、プロセスガスは空気である。また、接着強度は90°剥離試験により評価している。図10に示すように、3分のアッシング処理により、ノズルプレート接着面の接触角は10°以下になるが、ノズルプレートとの接着強度は、処理時間を長くしても、10g/mm以下であることがわかる。そのため、アッシング処理のみによる方法では、所望の接着強度が確保できないことがわかる。
図11は、従来技術(2)における接着強度の試験結果を示すグラフである。具体的には、有機絶縁膜の表面の面粗さに対する接着強度を示すものである。従来、接着面の面粗さが高ければ、いわゆるアンカー効果により、接着強度が強まると考えられている。しかし、図11に示すように、パリレンC膜の表面粗さを50nmまで高めた場合でも、接着強度が10g/mmに満たないことがわかる。
〔インクジェットヘッドの製造方法〕
次に、インクジェットヘッドの製造方法について、有機絶縁膜26を形成する工程から、ヘッドチップ18にノズルプレート17を貼り付ける工程までに関して、図1、図4、図5および図6を参照して説明する。
図4は、インクジェットヘッドの製造方法の処理プロセスの一部を表す図である。まず、成膜工程において、蒸着によって有機絶縁膜26を成膜する(ステップS1)。成膜工程の後、加工工程において、接着剤との接着強度を高めたい場所のみにレーザを照射し、有機絶縁膜26に微細な凹部を形成する(ステップS2)。加工工程の後、除去工程において、レーザ照射領域全域に低パワーのレーザを照射し、加工工程において発生した副生成物を除去する(ステップS3)。除去工程の後、塗布工程において、加工処理面に接着剤を塗布する(ステップS4)。塗布工程の後、貼り付け工程において、接着剤を塗布した面に、ノズルプレート17を接着して貼り付ける(ステップS5)。
まず、凹部62を形成する加工工程(ステップS2)について、図1および図5を参照して説明する。
図1(a)および(b)は、ヘッドチップ18のインク室25(チャンネル溝13)の深さ方向に垂直な面の断面図である。図1(a)は、レーザ照射中の断面図であり、図1(b)は、レーザ照射後の断面図である。ノズルプレート17を貼り付ける面と対向する位置からレーザ61を照射する。図1(a)に示すように、レーザ61を照射するときには、マスク(不図示)を用いることにより、インク室25の内部にはレーザ61を照射せず、ノズルプレート接着面15にのみ、選択的にレーザ61の照射をおこなっている。また、レーザ照射をおこなうレーザ照射装置は、レーザ61を所望の形状およびパターンに変形するためのマスク、ならびに、マスクを透過したレーザ61を、さらに縮小パターン化するための縮小投影レンズを備えている。この構成を備えることにより、図1(b)および図5に示すように、所望の形状およびパターンの微細な凹部62を、有機絶縁膜26に形成することができる。
本実施形態においては、レーザ61として、エキシマレーザ(波長248nm)を用いている。エキシマレーザを用いることにより、凹部形成時における有機絶縁膜26への熱ダメージを軽減することができ、また、後述する加工残渣の除去が可能となる。レーザ装置としては、ラムダフィジック社製NovaLine100を用いた。また、レーザ励起ガスとして、ハロゲンガス(フッ素とNeの混合ガス、フッ素濃度5%)純度99.9%、希ガス(Kr)純度99.995%、バッファーガス(Ne)純度99.995%、および、不活性ガス(He)純度99.995%を用いた。
通常のレーザ加工により形成される凹部62は、加工材料の表面側の形状(上部形状)よりも底部側の形状(下部形状)が小さいテーパー形状となる傾向がある。上述したテーパー角は、レーザ照射軸をずらしながら加工することにより、任意の角度に調節できる。さらに、レーザ61のフォーカス位置をずらしながら加工することにより、表面側の加工幅よりも、内部側の加工幅の方が広い、いわゆる逆テーパー形状なども、容易に形成することができる。凹部62を逆テーパー形状にすることにより、通常のテーパー形状に比べ、接着剤との接着強度を高めることができる。
次に、加工残渣を取り除く除去工程(ステップS3)について説明する。
レーザ61による加工後に、凹部62の周辺には微小な加工残渣が発生する。これは、エキシマレーザによる加工時に、アブレーションによって飛散したすすが付着しているものと考えられる。したがって、接着剤24を有機絶縁膜26に塗布する前に、加工残渣を除去する必要があるが、レーザ加工領域全面を、非常に低いパワーのエキシマレーザによってスキャンすることにより、加工残渣を容易に除去することができる。加工残渣は有機絶縁膜26の融解物であるため、エキシマレーザ以外のレーザを用いた場合には、加工残渣を除去するためにはプラズマ処理(アッシング)、または、ウェット処理をおこなわなければならない。そのため、新たな装置が必要となり、処理が複雑になってしまう。
なお、加工工程および除去工程は、クリーンルームなどの清浄雰囲気中において実施している。
次に、接着剤24を塗布する塗布工程(ステップS4)について説明する。
ヘッドチップ18とノズルプレート17とを接着させるために、塗布工程において、ノズルプレート接着面15に接着剤24を塗布している。ヘッドチップ18とノズルプレート17とを全面にわたって均一に接着するために、接着剤24は、薄くかつ均一な厚さになっていることが好ましい。そのため、バーコータ、およびスピンコータなどを用いて、均一で薄い接着剤層をポリイミドフィルムなどのシート上に形成した後、接着剤層をヘッドチップ18のノズルプレート接着面15に転写している。なお、本実施形態においては、公知のバーコータ装置を用いて、ポリイミドフィルム上に厚さ4μmの均一な接着剤24の層を形成させている。その後、接着剤24の層が形成されたポリイミドフィルム上にヘッドチップ18のノズルプレート接着面15を押し当て、スタンプ転写する方法を実施している。その結果、ノズルプレート接着面15におけるインク室25の開口部以外の領域に、厚さ2μmの均一な接着剤24の層を形成させている。
接着剤24としては、耐薬品性に優れた材料がよく、エポキシ系接着剤、シリコン架橋型フッ素系接着剤、およびポリイミドアミドが好ましく、より好ましくは、エポキシ系接着剤である。
次に、ノズルプレート17をヘッドチップ18に貼り付ける、貼り付け工程(ステップS5)について図6を参照して説明する。
図6は、ノズルプレート17をヘッドチップ18に、位置を調整して貼り付ける方法を示す概略図である。図6に示すように、まず、ヘッドチップ18のノズルプレート接着面15と対向する位置に、ノズルプレート17を配置する。ついで、上下双方にカメラを内蔵したアライメントカメラ81を、ノズルプレート17とヘッドチップ18との間において移動させ、全てのノズル孔16の中心軸と、それぞれに対応するインク室25の開口部の中心軸との位置情報を読み取る。読み取った情報を情報処理部(不図示)において処理することにより、ノズルプレート17と平行な面における、ノズルプレート17の回転方向の位置ずれ、およびX−Y方向の位置ずれの量を算出する。その後、その結果に基づき、全てのノズル孔16の中心軸と、それぞれに対応するインク室25の開口部の中心軸とが一致するように、ノズルプレート17、およびヘッドチップ18の少なくともどちらか一方を移動させて、アライメント(位置調整)する。なお、ここで、X方向およびY方向とは、それぞれ、ノズルプレートの長辺と平行な方向および短辺と平行な方向のことである。
次に、ノズルプレート17をヘッドチップ18に固定するときに用いる冶具(不図示)を、徐々にヘッドチップ18に向けて移動させることによりノズルプレート17をヘッドチップ18に近づけ、最終的に、ノズルプレート17の接着面、すなわちノズルプレート17のヘッドチップ18と対向する面(背面)を、予め接着剤24が塗布されているノズルプレート接着面15に接触させる。その後、加圧および加熱することにより、ヘッドチップ18とノズルプレート17との接着を完了させる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲において種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲において、適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
(付記事項)
なお、本発明のインクジェットヘッドは、以下の点を特徴点としていると換言することも可能である。すなわち、インク吐出面から延びるチャンネル溝を形成した圧電基板と、前記圧電基板のインク吐出面に配置することで前記チャンネル溝の一端に対向するノズル孔を形成したノズルプレートと、を備えるインクジェットヘッドにおいて、前記チャンネル溝を覆うように形成された保護膜の、前記ノズルプレートとの接着表面に、選択的に表面加工処理を施してなる凹凸部を有することを特徴としていると換言することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施形態におけるインクジェットヘッド10と、従来技術におけるインクジェットヘッドとの吐出性能の比較をおこなった。
実施例1としては、上述した構成のインクジェットヘッド10を用いており、凹部62の表面形状は円形であり、直径は30μmであり、テーパー角は10°であり、凹部底部膜厚は10nmである。比較例1としては、有機絶縁膜の表面に凹部を設けず、アッシング処理のみをおこなって、接着剤を塗布して、ヘッドチップとノズルプレートを接着させたインクジェットヘッドを用いた。また、比較例2としては、有機絶縁膜の表面に、微細な凹部を、凹部底部膜厚が10nmとなるところまで加工して形成したインクジェットヘッドを用いた。比較例3としては、有機絶縁膜の表面に、表面形状が円形であり、その直径が500nmである凹部が設けられているインクジェットヘッドを用いた。
実施例1、および比較例1〜3のインクジェットヘッドをそれぞれ3つずつ製造し、各インクジェットヘッドについて、1ヶ月間の連続吐出後において、インクの不吐出を生じるノズル孔の数を比較した(試験1)。また、1ヶ月間の連続吐出後に、所望のインク吐出速度(8m/sec)を得るための吐出電圧を比較した(試験2)。
その結果、試験1においては、実施例1では、全てのノズル孔16からインクを吐出することができた。一方、比較例1および比較例3では、20〜30のノズル孔においてインクの不吐出が発生した。また、試験2においては、実施例1は、試験開始当初と1ヶ月後において、ほとんど変化はなかった。一方、比較例2では、いくつかのチャンネルにおいて、試験開始当初に要していた電圧のおよそ2倍の電圧を必要とした。そこで、各インクジェットヘッドをノズル面側から顕微鏡観察したところ、比較例1および比較例3のインクジェットヘッドでは、ノズル孔間において、接着剤が剥がれている箇所(連通箇所)が見られた。さらに各インクジェットヘッドのノズルプレートを剥がし、ヘッドチップのノズルプレート貼り付け部分を顕微鏡観察したところ、比較例2のインクジェットヘッドにおいて、チャンネル壁が損傷を受けていると見られる箇所があった。これに対して、実施例1の本実施形態のインクジェットヘッド10においては、上述した不具合は見つからなかった。すなわち、本実施形態におけるインクジェットヘッド10は、ノズル孔とヘッドチップのインク室断面とのずれ、およびノズルプレートの変形がなく、吐出信頼性の高いインクジェットヘッドである。
本発明に係るインクジェットヘッドは、インクを吐出するノズル孔が形成されたノズルプレートが貼り付けてあるインクジェットヘッドに、好適に利用することができる。
本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドの構成部材であるヘッドチップの断面図である。 本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドの構成を示す斜視図である。 本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドの構成部材であるヘッドチップのノズルプレート接着面を示す図である。 本発明のインクジェットヘッドの製造プロセスを示す図である。 本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドの凹部のパターンを示す図である。 ノズルプレートとヘッドチップとのアライメント方法を示す図である。 本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドの断面図である。 本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドにおいて、凹部の加工パターンによる接着強度の違いを示したグラフである。 チャンネル部に発生したクラックを示した図である。 従来技術における表面加工処理方法の、アッシング処理時間による接着強度、および接触角の違いを示したグラフである。 従来技術における表面加工処理方法の、表面粗さによる接着強度の違いを示したグラフである。
符号の説明
10 インクジェットヘッド
11 アクチュエータ部材(圧電基板)
12 カバー部材(圧電基板)
13 チャンネル溝
14 チャンネル壁
15 ノズルプレート接着面
16 ノズル孔
17 ノズルプレート
18 圧電基板
23 インク室内電極
24 接着剤
25 インク室
26 有機絶縁膜(保護膜)
61 レーザ
62 凹部
81 アライメントカメラ
X X方向
Y Y方向

Claims (14)

  1. インクを吐出するノズル孔を有するノズルプレートと、該ノズル孔からインクを吐出させるための圧電基板とを備えているインクジェットヘッドにおいて、
    前記圧電基板の表面に、前記圧電基板を保護する保護膜が形成されており、
    前記ノズルプレートは、前記圧電基板と前記保護膜を介して、接着剤によって接着しており、
    前記ノズルプレートが接着する前記保護膜の表面には、パターン化された凹部が形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記保護膜の表面は、有機絶縁膜によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記有機絶縁膜の材料は、パラキシリレン樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記パラキシリレン樹脂は、ポリモノクロロパラキシリレンであることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記保護膜の厚さは、1μm以上かつ10μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
  6. 前記凹部の底部から前記保護膜の表面までの距離が50nm以上であり、かつ、前記凹部の底部から前記保護膜の底面までの距離が10nm以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
  7. 前記凹部の前記保護膜の表面における形状は、円であり、該円の直径は、50μm以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
  8. 前記凹部の前記保護膜の表面における形状は、星形であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
  9. 前記保護膜の表面と直交する面における前記凹部の断面形状は、前記保護膜の表面に向かうにつれて幅が狭くなる逆テーパー形状であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
  10. 前記保護膜の表面において、前記凹部の開口部の全断面積は、前記ノズルプレートが接着する領域の面積の10%以上であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
  11. 前記ノズルプレートの形成材料は、ポリイミドであることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
  12. 前記接着剤は、エポキシ系接着剤であることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
  13. 請求項1から12のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの製造方法であって、
    前記凹部をレーザの照射により形成する加工工程を含むことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  14. 前記レーザは、エキシマレーザであることを特徴とする請求項13に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
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