JP2009057404A - 無着色低硫黄灯軽油基材の製造装置及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】灯軽油留分を複数の水素化脱硫装置A−1、A−2に供給して水素化脱硫し、水素化脱硫して得られた低硫黄灯軽油が着色していない場合、当該水素化脱硫装置からの低硫黄灯軽油を無着色低硫黄灯軽油基材として得、複数の水素化脱硫装置のうち、ある水素化脱硫装置で水素化脱硫して得られた低硫黄灯軽油が着色している場合、当該水素化脱硫装置からの低硫黄灯軽油を脱色処理装置B−1に供給して脱色する無着色低硫黄灯軽油基材の製造方法、及び灯軽油留分を水素化脱硫して低硫黄灯軽油を得る複数の水素化脱硫装置、及び水素化脱硫装置で得られた低硫黄灯軽油を脱色するために、水素化脱硫装置より少ない数の脱色処理装置を具備する無着色低硫黄灯軽油基材の製造装置。
【選択図】図1
Description
(1)灯軽油留分を複数の水素化脱硫装置に供給して水素化脱硫し、各水素化脱硫装置から流出する水素化脱硫後の灯軽油留分の色相(セーボルト)が基準値以上である場合は、当該水素化脱硫装置からの低硫黄灯軽油を無着色低硫黄灯軽油基材として得、水素化脱硫後の灯軽油留分の色相(セーボルト)が基準値未満である場合には、当該水素化脱硫装置からの低硫黄灯軽油を脱色処理装置に供給して脱色して、無着色低硫黄灯軽油基材を得る、硫黄分10ppm以下の無着色低硫黄灯軽油基材の製造方法である。
(2)水素化脱硫後の灯軽油留分の色相(セーボルト)が基準値未満である場合に、当該水素化脱硫装置からの低硫黄灯軽油を脱色処理装置に供給して脱色処理しても、色相(セーボルト)が基準値未満である無着色低硫黄灯軽油が得られない場合、当該水素化脱硫装置を灯軽油留分を処理する通油系から切り離し、水素化脱硫触媒の交換及び/又は再生を行う、上記(1)に記載の無着色低硫黄灯軽油基材の製造方法である。
(4)2基の水素化脱硫装置と1基の脱色処理装置を具備した上記(3)に記載の無着色低硫黄灯軽油基材の製造装置。
図1は2つの水素化脱硫装置(A−1、A−2)と1つの脱色処理装置(B−1)を具備した無着色低硫黄灯軽油基材の製造装置の一例を示し、図2−1は3つの水素化脱硫装置(A−1、A−2、A−3)と1つの脱色処理装置(B−1)を具備した無着色低硫黄灯軽油基材の製造装置の一例を示す。図中、2個の三角形が頂点で接した形状は原料灯軽油、水素化脱硫灯軽油などの流路を開閉する装置(以後、代表的開閉装置であるバルブともいう。)を示す。すなわち、開閉装置を操作することにより、水素化脱硫装置の前後を閉じて孤立させたり、水素化脱硫装置の流出油を脱色処理装置に導いたりすることができる。
図3−1は、水素化脱硫装置A−1及びA−2がともに水素化脱硫後の灯軽油留分の色相が基準値以上である無着色低硫黄灯軽油基材を製造して、脱色処理装置B−1を必要とない場合のフローを示す。原料灯軽油は図の左から右に向かって流れ分岐してそれぞれ入口バルブ1及び4を通過して2つの水素化脱硫装置A−1及びA−2に供給され、脱硫されて無着色の低硫黄灯軽油基材が製造され、出口バルブ2及び5を通って製品タンク又は半製品タンク(図示せず)にランダウンされている。この状態では、脱色処理装置B−1で脱色する必要がないので、水素化脱硫装置A−1又はA−2と脱色処理装置B−1を結ぶ連結バルブ3及び6は閉じている。なお、図中、黒く塗りつぶしたバルブは閉じた状態であることを示し、塗りつぶされていないバルブは開いた状態であることを示す。また、脱色処理装置B−1の補修、脱色処理装置B−1に使用されている脱色処理剤の交換、再生などもこの状態にして行うことができる。
(a−1)当該水素化脱硫装置からの色相が基準値未満である着色した低硫黄灯軽油を脱色処理装置に供給して脱色して、無着色低硫黄灯軽油基材を得る、
(a−2)当該水素化脱硫装置からの色相が基準値未満である着色低硫黄灯軽油を供給して脱色するための脱色処理装置がふさがっている場合、当該水素化脱硫装置の運転条件を緩和制御して、色相が基準値以上である無色低硫黄灯軽油を得ながら、脱色処理装置が利用可能になる機会を待つ、又は
(a−3)脱色処理しても色相が基準値未満である着色した低硫黄灯軽油が得られる恐れがある場合、当該水素化脱硫装置を、灯軽油留分を処理する通油系から切り離し、水素化脱硫触媒の交換及び/又は再生を行う
ことができる。
本発明において原料として用いる灯軽油留分は、原油を常圧蒸留して得た直留灯軽油留分を好ましく用いることができる。直留灯軽油留分は単独で用いてもよいが、軽油留分であれば、熱分解油や接触分解油を直留軽油留分に混合して用いてもよい。さらには、灯軽油相当の留分であれば他の石油精製プロセスなどからの副生油も、混合して用いることができる。
このような原料として用いる灯軽油留分は、硫黄分が0.5〜5質量%、窒素分が50〜500質量ppmであり、軽油留分であれば、密度(15℃)が0.80〜0.90g/cm3、10容量%留出温度が180〜290℃、50容量%留出温度が250〜320℃、90容量%留出温度が310〜370℃、95容量%留出温度が320〜390℃、
灯油留分であれば、密度(15℃)が0.76〜0.82g/cm3、10容量%留出温度が140〜220℃、50容量%留出温度が170〜250℃、95容量%留出温度が230〜300℃といった性状を有するものを好ましく用いることができる。硫黄分が0.5質量%未満、窒素分が50質量ppm未満であってもよいことは断るまでもない。
水素化脱硫処理に用いる水素化脱硫触媒としては、周期律表第6族の元素と第9族及び/又は第10族の元素を含む触媒が用いられる。周期律表第6族の元素としてはモリブデン、タングステン、第9族の元素としてはコバルト、第10族の元素としてはニッケルが特に好ましい。これら周期律表第6族の元素と第9族及び/又は第10族の元素は、無機多孔質酸化物担体に担持して用いられることが好ましい。無機多孔質酸化物担体としては、周期律表第2、第4、第13、及び第14族の元素の酸化物を用いることができる。このうちでも、シリカ、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、ボリア、カルシア等が好適であり、これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用すると良い。特には、アルミナ(γ、δ、η、χ等の各結晶構造を有するもの)、シリカ−アルミナ、シリカ、アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア、アルミナ−シリカ−マグネシアが好ましい。
金属成分等の担持は、通常用いられるスプレー含浸法や浸漬法等で行うことが好適であり、無機多孔質酸化物担体の吸水率に相当する溶液を含浸させるポアフィリング法が特に好ましい。金属の担持状態を制御するために、有機化合物又は有機塩類等を金属担持液に共存させるとよい。金属成分等を含む溶液を含浸したのち50〜180℃、好ましくは80〜150℃の温度範囲で、10分〜24時間乾燥し、さらに金属成分等をより多く担持するために、乾燥と担持とを繰り返して行ってもよい。所望の金属成分等を担持した後、乾燥して得られる乾燥物または焼成処理することによって水素化処理触媒が製造される。この焼成処理は、好ましくは400〜600℃、特には450〜580℃の温度範囲で行われ、焼成温度までの昇温時間は10〜240分、焼成温度での保持時間は1〜240分が好適である。
灯軽油留分は、水素化脱硫装置で、水素の存在下に周期律表第6族の元素と第9族及び/又は第10族の元素を含む水素化脱硫触媒と接触して硫黄分を除去(水素化脱硫)して硫黄分10ppm以下の低硫黄灯軽油に変換される。
ここで、軽油色相の基準値をセーボルト色が+5とした場合の例を次に示す。
この水素が脱硫後の低硫黄軽油色相が基準値未満である場合、すなわちセーボルト色が+5未満である場合、脱色処理装置に送られて脱色処理される。これにより水素化脱硫装置で得られた色相が基準値以上、すなわちセーボルト色が+5以上の低硫黄軽油基材と、色相が基準値未満で脱色処理装置により脱色処理されて得られた色相が基準値以上、すなわちセーボルト色が+5以上の無着色低硫黄軽油基材が得られる。なお、本発明において、水素化脱硫の段階で硫黄分10ppm以下の低硫黄軽油を得ておくことが製品軽油を調製する上で有利であり、好都合である。
したがって、水素化脱硫装置から流出する低硫黄軽油の色相をモニターして基準値を管理する。基準値をセーボルト色で+5とした場合、セーボルト色で+5を下回るようであれば、低硫黄軽油の行先を製品タンク(又は半製品タンク)から脱色処理装置に切り替えて脱色処理することにより、無着色の低硫黄軽油基材を得ることができる。なお、他の水素化脱硫装置(又は、他の脱色処理装置)から流出する低硫黄軽油と混合して、無着色低硫黄軽油基材全体として、例えばセーボルト+5以上を得ることができればよく、その間、脱色処理装置への切り替えを延期することができる。
水素化脱硫装置から流出した脱硫灯軽油の色相が基準値未満である場合、脱色処理装置に供給して脱色する。脱色処理装置は、色相が基準値未満である脱硫灯軽油を脱色し、色相の基準値を満足する装置であれば公知のどのようなものであってもよい。例えば、軽油の色相の基準値をセーボルト色+5とした場合、水素の存在下(水素圧力が2〜10MPa)、反応温度200〜300℃、好ましくは220〜290℃、より好ましくは240〜280℃、LHSVを通常の水素化脱硫の10倍以下、より好ましくは6倍以下、特には3倍以下、具体的には0.3〜15hr−1といった比較的温和な条件下に水素化脱硫触媒を用いて多環縮合芳香族類を水素化しセーボルト色+5以上に脱色する方法や、低硫黄軽油を水素の非存在下で脱色機能を持った脱色処理剤と接触させて脱色する方法が挙げられる。水素化脱硫触媒を用いて多環縮合芳香族類を水素化する方法は、通常高温、高圧下で行う必要があるため、熱ロスに配慮して水素化脱硫装置やユーティリティ設備の近傍に配置するなど設置場所が限定されたり、設備コストが高くなるデメリットがある。一方、脱色機能を持った脱色処理剤と接触させる方法は、常温〜200℃と比較的低い温度で、かつ水素ガスを用いることなく単に液体(低硫黄灯軽油)と固体(脱色処理剤)を接触して脱色するので、設置場所も水素化脱硫装置の近傍にわざわざ設置する必要がなく、オフサイトのランダウンタンク近傍にあっても良く、より好ましい。
色相が基準値未満である着色した脱硫灯軽油は、脱色処理剤と接触すると、脱硫灯軽油中の着色物質を多く含む4環以上の多環縮合芳香族類が脱色処理剤に固定(吸着)されて脱色される。着色性が殆どない単環〜3環の芳香族類は固定(吸着)されないことが脱色処理剤の活性、寿命の面から好ましい。脱色処理剤として、具体的には活性炭系脱色処理剤、ゼオライト系脱色処理剤、無機酸化物系脱色処理剤などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
これらの脱色処理剤のなかでも、活性炭、HY型ゼオライト、ZSM型ゼオライト、アルミナ、シリカ−アルミナは脱色能が高く、好ましく用いることができる。特に合成高分子、タールピッチあるいは石油系ピッチを紡糸した繊維を出発原料として得られた繊維状活性炭が好ましい。
前記のように、軽油色相の基準値をセーボルト色+5とした場合、脱色処理装置において、水素化脱硫装置からセーボルト色が+5未満の低硫黄軽油は脱色処理剤と接触し、多環縮合芳香族類が脱色処理剤に固定(吸着)されて、セーボルト色が+5以上に脱色、改善された脱色軽油、すなわち無着色低硫黄軽油基材が生産される。低硫黄軽油の硫黄分は、脱色処理剤にごく一部吸着されるため、水素化脱硫装置からの低硫黄軽油の硫黄分に比べ若干減少するが殆ど同じ濃度で流出する。なお、脱色軽油は、必ずしもセーボルト色が+5以上に脱色する必要はなく、他の水素化脱硫装置(又は、他の脱色処理装置)から流出する低硫黄軽油と混合して、無着色低硫黄灯軽油基材全体として例えばセーボルト+5以上を得ることができればよい。
脱色処理剤を用いて脱色処理を行っていくと、脱色処理剤は低硫黄灯軽油中の多環縮合芳香族類などを吸着して吸着能が漸次低下する。急激に吸着能がなくなる前に、脱色処理剤を新品に取り替えるか、再生して吸着能を回復する。新品の脱色処理剤への交換は、機能回復は100%であるが、コストがかかる。このため、オンサイトないしオフサイトで劣化した脱色処理剤を再生することが経済的である。
(1)トルエン、アルコール及びアセトン、アルキルベンゼン類などの溶剤による洗浄
(2)非酸化雰囲気下(通常は窒素雰囲気下)及び/又は減圧下での加熱
などにより、オンサイトで容易に脱着再生することができる。トルエンを用いる洗浄による脱着でも、吸着性能が相当回復し、色相(セーボルト)が改善された無着色灯軽油を製造できるが、数回繰り返していると徐々に性能が落ちる。このような場合、(2)の非酸化雰囲気下及び/又は減圧下での加熱によって吸着性能を回復させることができる。また、オンサイトであれば、製油所のユーティリティである水蒸気を加熱源として使用することも可能である。脱色処理剤は、オンサイトにせよオフサイトにせよ再生することによって、繰り返し使用することができる。
以上のようにして水素化精製装置から得られた色相が基準値以上の無着色低硫黄灯軽油基材及び/又はさらに脱色処理装置を経由して得られた色相が基準値以上の無着色低硫黄灯軽油基材は、それぞれ単独でも、両者を混合しても硫黄分10ppm以下の無着色低硫黄灯軽油基材とすることができる。他の灯軽油基材と混合しなくても、性状が満足すればそのまま硫黄分10ppm以下の無着色低硫黄灯軽油として使用することも可能である。
さらに、要は得られる無着色低硫黄灯軽油基材が全体として、硫黄分10ppm以下、基準値の範囲内の色相を有するものであればよいのであるから、本発明は、次のような硫黄分10ppm以下の無着色低硫黄灯軽油基材の製造方法も包含する。すなわち、複数の水素化脱硫装置とそれより少ない数の脱色処理装置からなる硫黄分10ppm以下の無着色低硫黄灯軽油基材の製造装置を用いて該無着色低硫黄灯軽油基材を製造するとき、ある水素化脱硫装置から流出する脱硫灯軽油留分及び/又はある脱色処理装置から流出する脱色灯軽油留分の色相が基準値以下、例えばセーボルト+5以下である場合、その他の水素化脱硫装置及び/又はその他の脱色処理装置から流出する色相がセーボルト+5以上である脱硫灯軽油留分及び/又は脱色灯軽油留分と、前記の色相がセーボルト+5以下の脱硫灯軽油留分及び/又は脱色灯軽油留分とを混合して、硫黄分が10ppm以下で、色相が所望の範囲(例えば、セーボルト+5以上)の無着色低硫黄灯軽油基材を製造する方法も包含する。
無着色低硫黄軽油組成物の芳香族分、蒸留性状、15℃における密度、真発熱量及び動粘度は下記に示す条件を満たすことが好ましい。
本発明の無着色低硫黄軽油組成物は、芳香族分10〜25容量%が好ましく、13〜22容量%が特に好ましい。芳香族分が10容量%未満であると発熱量が低下し、燃費が低下するので好ましくない。芳香族分が20容量%以上であるとエンジンから排出される粒子状物質の量が増え好ましくない。この芳香族分はJPI−5S−49−97に規定された方法により測定される。
95容量%留出温度は300℃以下が好ましく、より好ましくは270℃以下である。この95容量%留出温度はJIS K2254に規定された方法により測定される。
灯火用及び暖房用・厨房要燃料として用いる場合には、色(セーボルト)は+25以上であることが好ましい。色(セーボルト)はJIS K2580に規定された方法により測定される。
家庭用の暖房機器や給湯器の燃料に使われるために、漏洩時等の引火の危険性から、引火点が40℃以上であることが好ましい。この引火点はJIS K2265に規定された方法により測定される。
さらに、燃焼時の煤の発生を少なくするために、煙点を21mm以上とするが、燃焼時の炎高さ(火災発生防止)の点から43mm以下が好ましく、特には、23〜30mmが好ましい。この煙点はJIS K2537に規定された方法により測定される。
本発明の無着色低硫黄灯軽油は、従来使用されている灯軽油への添加剤を、所望の性能を向上させるために適宜添加することができる。このような添加剤としては、低温流動性向上剤、耐摩耗性向上剤、セタン価向上剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、腐食防止剤等の公知の燃料添加剤が挙げられる。低温流動性向上剤としては、エチレン共重合体などを用いることができるが、特には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどの飽和脂肪酸のビニルエステルが好ましく用いられる。耐摩耗性向上剤としては、例えば長鎖脂肪酸(炭素数12〜24)又はその脂肪酸エステルが好ましく用いられ、10〜500ppm、好ましくは50〜100ppmの添加量で十分に耐摩耗性が向上する。
本実施例では原料油として、すなわち水素化脱硫工程で用いる軽油留分としては、中東系の原油を常圧蒸留して得られた直留軽油留分(62.5容量部)に熱分解軽油(30.8容量部)及び接触分解軽油(6.7容量部)を混合した軽油留分を用いた。その性状を表2に示す。
表2に示す軽油留分を水素化脱硫装置で処理して、下記に示す水素化脱硫を行って低硫黄軽油を得、さらに着色低硫黄軽油については脱色処理を施した。尚、本実施例では、脱硫処理後の軽油留分の色相の基準値をセーボルト色0と設定した。
評価試験を行うにあたり、水素化脱硫装置及び脱色処理装置において用いた水素化脱硫触媒、脱色処理剤、装置、及び運転条件の詳細は以下のとおりである。
アルミナにモリブデン15重量%及びコバルト3重量%を担持した水素化脱硫触媒を内径25mm長さ103cmの反応器に100cc充填する。水素化脱硫を行う前に二硫化炭素1重量%を含む軽油を通油し、5MPaの水素共存下で150℃、次いで300℃に昇温し、いわゆる予備硫化を行う。水素を流しながら昇温し、水素圧力8.0MPa、液空間速度(LHSV)0.7hr−1、水素/油供給比(H2/Oil)300NL/Lの条件下で、軽油留分を通油して水素化脱硫した。水素化脱硫された軽油留分に窒素ガスを吹き込んで溶存する硫化水素を除去して低硫黄軽油を得、該低硫黄軽油の硫黄分が10ppmとなるまで反応温度を徐々に昇温した。反応温度が350℃となったとき、硫黄分が10ppmの低硫黄軽油(無着色低硫黄軽油基材)が得られた。それ以降は、硫黄分10ppmをキープするように主に反応温度を調節して水素化脱硫を継続した。
硫黄分10ppmの低硫黄軽油の色相は、当初セーボルト色+30と無色であったが、触媒の劣化が進み徐々に着色し、2,800時間通油したところで、セーボルト色が0の蛍光色を発した着色低硫黄軽油が得られた。このとき、反応温度は370℃であった。この時点以降に得られた着色低硫黄軽油を脱色処理用原料として採取し始め通油を続け、5,600時間通油したこところで得られた硫黄分10ppmの低硫黄軽油のセーボルト色は−16以下であった。このとき、反応温度は390℃であった。反応温度370℃から390℃にかけて脱色処理用原料として採取した着色低硫黄軽油のセーボルト色は−7.3であった。この段階で触媒のサイクル寿命と判断し触媒再生のため水素化脱硫を中止した。
脱色処理剤として、クラレケミカル社製の繊維状活性炭(FR−25;比表面積:2,749m2/g、細孔容積:0.96cm3/g)を用い、繊維状のままで使用した。まず、脱色処理剤を130℃で3時間乾燥した後、長さ300mm、内容積8.5mlの脱色塔(以下ではカラムという)に脱色処理剤1.5g充填した。
カラムに硫黄分10ppmの、セーボルト色−7.3に着色した低硫黄軽油を、LHSV0.59hr−1にて供給して、セーボルト色+30以上の無着色低硫黄軽油基材を得た。通油開始から徐々に色相の変化が現れだして蛍光色が濃くなってゆき、通油開始から82時間経過した時点で色相はセーボルト色が+5となったので、再生処理を行うために脱色処理剤への通油(脱色処理)を停止した。
トルエン(脱着剤)を室温でカラムにLHSV0.13hr−1で流通し、その際、カラムから流出する混合液のセーボルト色を測定した。脱着剤としてトルエンをカラムに流通させると、最初はセーボルト色が増加するが、ある累積流出量でピークとなり、その後、着色成分の脱着量が減少したせいか、流出液のセーボルト色は薄くなって行き最終的にはセーボルト色+30以上となった。すなわち、トルエンをカラムに流通させることにより、カラム内に吸着されていた着色成分が溶出して、カラム内の脱色処理剤は脱着再生されていることが分かる。次いでカラムをアセトンで洗浄し、窒素ガスで乾燥後、再び、硫黄分10ppmの、セーボルト色−7.3に着色した低硫黄軽油を、LHSV0.59hr−1にて供給したところ、セーボルト色+30以上の無着色低硫黄軽油基材を得ることができた。つまり、脱色処理剤は再生して繰り返し使用することができる。
混合処理の一例を前記の例で示せば、A−1からの硫黄分10ppmの留出油が通油初期のセーボルト色+30、A−2からの留出油が反応温度370℃から390℃にかけて採取したセーボルト色−7.3である場合、A−2からの留出油を脱色処理してセーボルト色+30の留出油を得、A−1からのセーボルト色+30の留出油と、A−2からの留出油を脱色処理したセーボルト色+30の留出油とを混合し、硫黄分10ppm、セーボルト色+30の無着色低硫黄軽油基材を製造することができる。
フレッシュな触媒又は再生触媒が充填された水素化脱硫装置(A−2)は、予備硫化後、原料軽油留分を導入して硫黄分10ppm以下の低硫黄軽油の製造を再び開始する。水素化脱硫触媒の活性が高いため、着色のない低い反応温度で硫黄分10ppm以下の低硫黄軽油基材を製造することができる。当然、脱色処理装置を使う必要はない。
2、5、8、11 出口バルブ
3、6、9、12 連絡バルブ
A−1、A−2、A−3、A−4 水素化脱硫装置
B−1、B−2 脱色処理装置
Claims (5)
- 灯軽油留分を複数の水素化脱硫装置に供給して水素化脱硫し、各水素化脱硫装置から流出する水素化脱硫後の灯軽油留分の色相(セーボルト)が基準値以上である場合は、当該水素化脱硫装置からの低硫黄灯軽油を無着色低硫黄灯軽油基材として得、水素化脱硫後の灯軽油留分の色相(セーボルト)が基準値未満である場合には、当該水素化脱硫装置からの低硫黄灯軽油を脱色処理装置に供給して脱色して、無着色低硫黄灯軽油基材を得ることを特徴とする硫黄分10ppm以下の無着色低硫黄灯軽油基材の製造方法。
- 水素化脱硫後の灯軽油留分の色相(セーボルト)が基準値未満である場合に、当該水素化脱硫装置からの低硫黄灯軽油を脱色処理装置に供給して脱色処理しても、色相(セーボルト)が基準値未満である無着色低硫黄灯軽油が得られない場合、当該水素化脱硫装置を灯軽油留分を処理する通油系から切り離し、水素化脱硫触媒の交換及び/又は再生を行う、請求項1に記載の無着色低硫黄灯軽油基材の製造方法
- 灯軽油留分を水素化脱硫して低硫黄灯軽油を得る複数の水素化脱硫装置、及び水素化脱硫装置で色相(セーボルト)が基準値未満である低硫黄灯軽油が得られた場合に、その低硫黄灯軽油を脱色するための脱色処理装置が、水素化脱硫装置の数より少ない数であることを特徴とする、硫黄分10ppm以下の無着色低硫黄灯軽油基材の製造装置。
- 2基の水素化脱硫装置と1基の脱色処理装置を具備した請求項3に記載の無着色低硫黄灯軽油基材の製造装置。
- 灯軽油留分を水素化脱硫して低硫黄灯軽油を得る複数の水素化脱硫装置、及び低硫黄灯軽油の色相を改善するための前記水素化脱硫装置の数より少ない数の脱色処理装置からなる製造装置を用いて硫黄分10ppm以下の無着色低硫黄灯軽油基材を製造する方法において、ある1基又は複数の水素化脱硫装置から流出する脱硫灯軽油留分及び/又はある1基又は複数の脱色処理装置から流出する脱色灯軽油留分の色相(セーボルト)が基準値以下である場合、色相(セーボルト)が基準値以上であるその他の水素化脱硫装置から流出する脱硫灯軽油留分及び/又は色相(セーボルト)が基準値以上であるその他の脱色処理装置から流出する脱色灯軽油留分と、前記の色相(セーボルト)が基準値以下の脱硫灯軽油留分を混合することを特徴とする硫黄分10ppm以下である無着色低硫黄灯軽油基材の製造方法。
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