JP2009040672A - 板状多結晶粒子、板状多結晶粒子の製造方法、結晶配向セラミックスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】板状多結晶粒子10は、無機粒子を所定厚さ(15μm)以下の自立したシート状の成形体に成形しこれを焼成し、所定サイズのメッシュの開口部を通過させることにより焼成後の成形体を解砕及び分級して得られる。無機粒子は、等方的且つ多面体形状の結晶粒子(例えば立方体)に成長するペロブスカイト構造を有する酸化物により構成されているが、厚さ方向への粒成長が限られており、シートの面方向に粒成長がより促されるため、アスペクト比が大きく配向度の高い結晶粒子12を得ることができる。このため、板状多結晶粒子10は、その大部分が厚さ方向に結晶粒子12が1個であり、アスペクト比が大きく配向度が高いものである。また、この板状多結晶粒子10は、粒界部14で結晶粒子12同士が結合された構造であり、この粒界部14で解砕しやすい。
【選択図】図1
Description
結晶粒子を複数含み、
実質的に厚さ方向の該結晶粒子が1個であり該複数の結晶粒子が特定の結晶面を揃えた状態で粒界部で結合されている、ものである。
結晶粒子を複数含む板状多結晶粒子の製造方法であって、
無機粒子を厚さが15μm以下の自立したシート状の成形体に成形する成形工程と、
前記成形体を該成形体と実質的に反応しない不活性層に隣接させ又は、該成形体のまま焼成する焼成工程と、
所定サイズの開口部を通過させることにより前記焼成後の成形体を解砕及び分級する粉砕工程と、
を含むものである。
上述した本発明の板状多結晶粒子と、原料粉体とを混合する混合工程と、
前記混合した粉体のうち前記板状多結晶粒子を所定方向に配向させ所定の2次成形体に成形する第2成形工程と、
前記板状多結晶粒子が配向している方向に前記原料粉体を配向させるよう前記2次成形体を焼成する第2焼成工程と、
を含むものである。
板状多結晶粒子10に用いる無機材料としては、所定焼成条件において異方形状の結晶粒子に成長するもの、即ち、所定焼成条件における成長形が異方形状の結晶粒子に成長するものや、所定焼成条件において等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長するもの、即ち、所定焼成条件における成長形が等方的且つ多面体形状の結晶粒子であるものを用いることができる。この点について、本発明では、厚さが15μm以下のシート状の成形体を焼成させ粒成長させるので、成形体の厚さ方向への粒成長は限られており、成形体の面方向に、より粒成長が促進されるから、所定焼成条件において等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長するもの、例えば立方体に成長するものでも、これを用いて板状多結晶粒子10を作製することができるのである。ここで、「所定焼成条件における成長形」とは、与えられた熱処理条件下で無機材料の結晶が平衡に達したときに見られるモルフォロジーと定義され、例えば、バルクを焼成し結晶化を進めた際に表面の粒子の形状を観察することにより得られるものである。また、「異方形状」とは、例えば板状、短冊状、柱状、針状及び鱗状など、長軸長さと短軸長さとの比(アスペクト比)が大きいもの(例えばアスペクト比が2以上など)をいう。また、「等方的且つ多面体形状」とは、例えば立方体形状などをいう。ここで、一般的に、粒成長によって生成する結晶粒子のモルフォロジーは、固体の融点もしくは分解温度に対し、例えば400℃以下など粒成長する温度が十分に低ければ、ほとんど球状となる。本来、原子の配列に異方性があり、結晶面によって成長速度に差があるにもかかわらず、球状に粒成長するのは、固体原子が非常に動きにくいからである。一方、固体の融点もしくは分解温度と、粒成長する温度とが近い場合、例えば両者の温度差が200℃以内となると、粒成長する際の粒子表面の原子の動きが活発となり、結晶構造に起因した表面形態が現れる。すなわち、粒成長において、結晶面による成長速度の差が出るようになり、成長の遅い結晶面は発達するが、成長の速い結晶面は、小さくなるか消滅してしまう。このように面成長速度の差で定まるモルフォロジーを成長形という。成長形として、異方形状や多面形状となるのは、先に述べたように、固体の融点、もしくは分解温度と、粒成長する温度が近い材料の他に、ガラスなどの低融点化合物をフラックスとして添加し、フラックスを介した粒成長を行わせるようにした系が好ましく選ばれる。フラックスを介することで、粒子表面での固体構成元素の動きが活発となるためである。なお、無機材料は、多面体形状に成長するものの中で、6面体形状に成長するものを利用することができる。6面体であれば、平板形状としたときに、この平板形状のシート面に平行な表面を持った粒子は、その2面を除く他の4面が成長面として成形体内の全方位に含まれるから、成形体内で等方的に粒成長したときには、2つのシート面が無理なく拡がるため、アスペクト比の大きな粒子が得られやすく、好ましい。同様の理由で6角柱や8角柱など、柱形状を用いることもできる。なお、アスペクト比の大きな結晶粒子を得る目的で、粒成長を促進する添加剤を添加してもよい。この無機材料は、ペロブスカイト構造を有する酸化物となるものが好ましく、更に、焼成後の結晶が一般式ABO3で表される酸化物であり、このAサイトがLi,Na,K,Bi及びAgから選ばれる1種以上を含み、BサイトがNb,Ta及びTiから選ばれる1種以上を含むものとなるものを用いるのが好ましい。例えば、無機材料として、NaNbO3のAサイトの一部をLi,Kなどで置換し、Bサイトの一部をTaなどで置換したもの((LiXNaYKZ)NbMTaNO3:X,Y,Z,M,Nは任意の数を表す)となるようなものとすると、900℃〜1300℃での成長形が立方体形状となるため、好ましい。なお、ここに挙げた元素以外を添加しても構わない。また、(Bi0.5Na0.5-xKx)TiO3 を主組成とするものにおいては、X>0.01とすることで成長形が立方体形状となるため、好ましい。また、AサイトとしてPbを主成分として含み、Bサイトとして、Mg、Zn、Nb、Ni、Ti、Zrから選ばれる1種以上を含むものも好ましい。さらにフラックスとして、鉛ホウ酸系ガラス、亜鉛ホウ酸系ガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛−珪酸ガラス、亜鉛−珪酸ガラス及びビスマス−珪酸ガラスなど、融点が1000℃以下のガラスを、0.1wt%以上添加したものとすると、900℃〜1300℃での成長形がより立方体形状となりやすいため好ましい。この場合、ガラスの分散性の観点から、ガラス粉末をそのままシート状にするのではなく、一度仮焼しガラスを十分拡散したあとこの仮焼した材料を粉砕し、この粉砕した粉末を用いて成形体を作製するものとするのが好ましい。ABO3で表される酸化物となるものを用いるとき、AサイトとBサイトの比であるA/Bが1.0以上1.1以下となるよう原料を調製することが好ましい。A/Bが1.0以上1.1以下の範囲では、焼成後の板状多結晶粒子に含まれる結晶のアスペクト比や配向度を大きいものとすることができる。また、A/Bが1.0以上1.1以下の範囲では、焼成時に揮発するアルカリ成分や鉛成分などを補償する点で好ましい。なお、得られた焼成成形体から、結晶粒子12を得る場合に、A/Bが1.0以上1.1以下の範囲にあると焼成成形体を水に入れた際などに粒界部に存在するアルカリリッチ相が溶解し結晶粒子が各粒子単位に簡単に分離することがあるため、好ましい。更に、成形シートの厚みが3μm以下のように極めて薄い場合や、焼成時の鞘内部の雰囲気(アルカリ成分や鉛成分の蒸気など)が薄い場合など、焼成時における成形シートからのアルカリ成分や鉛成分などの揮発による組成変化が大きくなることがあるため、A/Bが1.1以上1.3以下の範囲も好ましい。
無機粒子を成形体の厚さが15μm以下の自立したシート状の成形体に成形する。ここで、「自立した成形体」とは、それ単体でシート状の成形体の形状を保つことができるものや、それ単体ではシート状の成形体の形状を保つことができないものであってもなんらかの基板に貼り付けたり成膜したりして、焼成前、又は焼成後に、この基板から剥離したものをも含む。成形体の成形方法としては、例えば、無機粒子を含むスラリーを用いたドクターブレード法や、無機粒子を含む坏土を用いた押出成形法などによって行うことができる。ドクターブレード法を用いる場合、可撓性を有する板(例えばPETフィルムなどの有機ポリマー板など)にスラリーを塗布し、塗布したスラリーを乾燥固化して成形体とし、この成形体と板とを剥がすことにより板状多結晶粒子の焼成前の成形体を作製してもよい。成形前にスラリーや坏土を調製するときには、無機粒子を適当な分散媒に分散させ、バインダーや可塑剤などを適宜加えてもよい。また、スラリーは、粘度が500〜700cPとなるように調製するのが好ましく、減圧化で脱泡するのが好ましい。成形体の厚さとしては、15μm以下とするが、10μm以下に形成することがより好ましく、5μm以下に形成することが更に好ましく、2μm以下とすることが最も好ましい。15μm以下では高い結晶粒子12の配向度を得ることができ、10μm以下であればより一層高い結晶粒子12の配向度を得ることができる。また、成形体の厚さは、0.1μm以上とするのが好ましい。厚さが0.1μm以上であれば、自立したシート状の成形体を作成しやすい。結晶粒子12の大きさを比較的大きくするには、成形体の厚さを5〜10μm程度とするのが好ましい。このシート状の成形体の厚さは、略そのまま板状多結晶粒子10の厚さとなり、ひいては結晶粒子12の粒径にも関係するから、板状多結晶粒子10の用途に合わせて、適宜設定するものとする。なお、その他の成形方法としては、エアロゾルデポジション法などの、粒子の高速吹き付け法や、スパッタ、CVD、PVDなどの気相法などにより、樹脂、ガラス、セラミックス及び金属などの基板へ膜付けし、基板から剥離することで板状多結晶粒子の焼成前の成形体を作製してもよい。この場合、焼成前の成形体の密度を高くすることができるため、低温での粒成長、構成元素の揮発防止、得られる板状多結晶粒子が高い密度である、などの利点がある。
成形工程で得られた成形体をこの成形体と実質的に反応しない不活性層(例えば、焼成済みのセラミック板やPt板、カーボン板、黒鉛板、モリブデン板、タングステン板など)に隣接させた状態で焼成するか、又は、この成形体のままの状態で焼成する。例えば、アルミナ、ジルコニア、スピネル、カーボン、黒鉛、モリブデン、タングステン、白金など、成形体の焼成温度では不活性な層の上に成形体を配置して焼成するものとしてもよい。あるいは、成形体と不活性シートとを重ねた状態でロール状に巻いて焼成してもよい。あるいは、不活性層の上にシート状に成形体を形成し、焼成後にこの不活性層から剥離させるものとしてもよい。あるいは、不活性層に成形体を成膜し、焼成後に不活性層を除去するものとしてもよい。例えば、不活性層に黒鉛を用いる場合などでは、非酸化性雰囲気(例えば窒素中)で焼成し、不活性層の存在下で所望の焼成成形体を得たあと、その温度以下の酸化雰囲気(例えば大気中)で再び熱処理し、黒鉛を燃焼させることで除去するものとしてもよい。ここで、成形体に含まれる無機粒子が等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長するものであるときでも、状況によっては特定の結晶面を成長させることが可能であると考えられる。ここでは、成形体の厚さが15μm以下と成形体の厚さ方向への粒成長が限られており、成形体の面の方向に粒成長がより促されるため、特定の結晶面が成形体の面内に成長することにより、アスペクト比が大きく配向度の高いものとなる。こうして、成形体の厚さ方向には略1個だけ結晶粒子12が存在するようになるのである。
次に、得られた焼成成形体を解砕、分級する。ここでは、目的とする粒子サイズに合わせた開口部を有するメッシュ(ふるい)を用いるものとし、1.0mm以下のメッシュを用いることが好ましい。図3は、メッシュ粉砕工程の一例の説明図である。このメッシュ粉砕工程では、例えば、開口径が45μm、25μm、20μmなどのメッシュを用いることができる。成形体30を焼成した焼成成形体32は比較的解砕しやすいため、メッシュ34上に載置したあと、例えばへら状などの押圧部材36などにより軽く焼成成形体32を押圧しながらメッシュ34を篩うことによりメッシュ粉砕工程を行うことができる。こうすれば、焼成成形体32の解砕と、解砕した板状多結晶粒子10(図1参照)の分級とを同時並行で行うことができる。また、より大きな粒径及びより大きなアスペクト比の板状多結晶粒子10を得ようとすれば、メッシュの開口部を大きくすればよいし、より小さな粒径及びより小さなアスペクト比の板状多結晶粒子10を得ようとすれば、メッシュの開口部を小さくすればよいため、メッシュの開口部の大きさを変えるという簡単な処理で板状多結晶粒子10の特性を変化させることができる。このようにして、図1に示した板状多結晶粒子10を得ることができる。
(無機粒子の合成工程)
Li0.07(Na0.5K0.5)0.93Nb0.9Ta0.1O3の組成比となるように、各粉末(Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Nb2O5、Ta2O5)を秤量した。ポリポットに、秤量物と、ジルコニアボールと、分散媒としてエタノールを入れ、ボールミルで16h湿式混合、粉砕を行った。得られたスラリーをエバポレータ及び乾燥機によって乾燥した後、850℃,5hの条件化で仮焼成した。この仮焼粉末と、ジルコニアボールと、分散媒としてエタノールを入れ、ボールミルで5h湿式粉砕し、エバポレータ及び乾燥機によって乾燥して、Li0.07(Na0.5K0.5)0.93Nb0.9Ta0.1O3の無機粒子粉体を得た。この粉体をHORIBA製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−750を用い、水を分散媒として平均粒径を測定したところ、メディアン径(D50)は、0.6μmであった。
(自立したシート状の成形体の成形工程)
分散媒としてのトルエン、イソプロパノールを等量混合したものに、上記の無機粒子粉体と、バインダーとしてポリビニルブチラール(BM−2、積水化学製)、可塑剤(DOP、黒金化成製)と、分散剤(SP−O30、花王製)とを混合し、スラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、無機粒子100重量部に対して、分散媒100重量部、バインダー10重量部、可塑剤4重量部及び分散剤2重量部とした。次に、得られたスラリーを、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度500〜700cPとなるように調製した。スラリーの粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。得られたスラリーをドクターブレード法によってPETフィルムの上にシート状に成形した。乾燥後の厚さを5μmとした。
(成形体の焼成工程)
PETフィルムからはがしたシート状の成形体を、カッターで50mm角に切り出し、ジルコニアからなるセッター(寸法70mm角、高さ5mm)の中央に載置した。このセッターに、シート状の成形体と同じ成形原料からなる未焼成のシート成形体(寸法5mm×40mm、厚さ100μm)をシート状の成形体の四辺の外側に載置してこれを囲い、その上に更にジルコニアの角板(寸法70mm角、高さ5mm)を載置した。こうして、シート状の成形体の空間をできるだけ小さくすると共に、同じ成形原料を共存させる焼成条件とした。そして、600℃、2h脱脂後、1100℃で5h焼成を行った。焼成後、セッターに溶着していない部分を取り出した。
(焼成成形体のメッシュ粉砕工程)
得られた焼成後の成形体を300メッシュ(開口径45μm)のふるいに載せ、軽く焼成成形体をへらで押し付けながら解砕・分級した。得られた粒子を実験例1の板状多結晶粒子とした。
メッシュ粉砕工程において、ふるいをそれぞれ500メッシュ(開口径25μm),635メッシュ(開口径20μm)とした以外は上述した実験例1と同様の工程を行い、得られた板状多結晶粒子をそれぞれ実験例2,3とした。
成形工程において、シート状の成形体の厚さを2μm,10μm,15μm,20μmとした以外は上述した実験例1と同様の工程を行い、得られた板状多結晶粒子10をそれぞれ実験例4〜7とした。
合成工程において、無機粒子の組成をLi0.07(Na0.5K0.5)0.93NbO3,Li0.07(Na0.5K0.5)0.97NbO3.02 ,Li0.07(Na0.5K0.5)1.03NbO3.05,Li0.1(Na0.5K0.5)1.1NbO3.1,Li0.07(Na0.5K0.5)0.91NbO2.99の組成比、即ち、一般式ABO3においてA/B=1.00,1.04,1.10,1.20,0.98となるように無機粒子粉体を調製した以外は上述した実験例2と同様の工程を行い、得られた板状多結晶粒子をそれぞれ実験例8〜12とした。なお、これらの実験例の平均粒径を上記と同様に測定したところ、メディアン径(D50)が0.6μmであった。
(Bi0.5Na0.35K0.1Ag0.05)TiO3の組成比となるように各粉末(Bi2O3、Na2CO3、K2CO3、Ag2O、TiO2)を秤量し実験例1と同様に湿式混合、粉砕、乾燥を行ったあと、900℃、2hの条件で仮焼し、この得られた仮焼粉末を実験例1と同様に粉砕、乾燥して(Bi0.5Na0.35K0.1Ag0.05)TiO3の無機粒子粉体を得た。この粉体を、成形工程において成形体の厚さを5μmとし、焼成工程において600℃、2hの脱脂及び焼成温度を1250℃,3hとした以外は上述した実験例2と同様の工程を行い、得られた板状多結晶粒子を実験例13とした。なお、この実験例の平均粒径を上記と同様に測定したところ、メディアン径(D50)が0.6μmであった。
合成工程において、0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3に1重量%のNiOを添加した組成比となる合成粉末へ、ZnO−B2O3−SiO2系ガラス粉末(旭硝子(AGG)製ASF1891)を1重量%添加し、ポリポットにこの秤量物とジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで16h、湿式混合を行った。得られたスラリーを乾燥機で乾燥したあと、800℃、2hの条件下で仮焼した。この仮焼粉末と、ジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで5h湿式粉砕し、乾燥機によって乾燥し、無機粒子粉体を得た。この粉体を、成形工程において、シート厚さを1μmとして成形した。得られたシートを、アルミナの鞘内に配置したジルコニア角板に載置した。この鞘内には、焼成雰囲気を調整する粉体として、0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3の組成からなる無機粒子粉体を少量共存させ、焼成工程において、600℃、2hの脱脂及び1100℃、5hの焼成条件とした以外は実験例1と同様の工程を行い、得られた板状多結晶粒子を実験例14とした。なお、この実験例の平均粒径を上記と同様に測定したところ、メディアン径(D50)が0.6μmであった。
合成工程において、0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3にとなる組成の無機粒子粉体を用い、NiO及びガラス粉末を添加せず、成形工程において、シート厚さを2μmとして成形した以外は実験例14と同様の工程を行い、得られた板状多結晶粒子を実験例14とした。なお、この実験例の平均粒径を上記と同様に測定したところ、メディアン径(D50)が0.6μmであった。
実験例14の0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3にのA/Bが1.1となるようにした以外は実験例14と同様の工程を行い、得られた板状多結晶粒子を実験例16とした。
上記実験例1〜14について、走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM−6390)を用いてSEM写真を撮影した。まず、板状多結晶粒子をさじを用いて導電性テープ上にランダムに配置した状態でSEM観察を行い、その中で、観察方向に対してシート面が平行になっているもの、つまり垂直に立った状態の粉末を選び、結晶粒子12の厚さZを求めた。次に、エタノール2gに板状多結晶粒子を0.1gを加えたものを、超音波分散機(超音波洗浄機)で30分間分散させ、これをガラス基板に2000rpmでスピンコートし、板状多結晶粒子ができるだけ重ならないように、且つ結晶面と基板面とが平行となる状態に配置してSEM観察を行った。その中で、結晶粒子が20〜40個程度含まれる視野において、板状多結晶粒子の結晶面を観察し、結晶粒子12の結晶面11の最長長さXを求め、結晶面11の最長長さXを結晶粒子12の粒径と仮定しこの粒径を結晶粒子12の厚さZで除算して各結晶粒子12のアスペクト比を算出し、これを平均した値を板状多結晶粒子10に含まれる結晶粒子12のアスペクト比とした。また、同様に、SEM写真から板状多結晶粒子10の厚さWを求め、板状多結晶粒子10が5〜30個程度含まれる視野において、板状多結晶粒子10の結晶面を観察し、板状多結晶粒子10の最長長さYを求め、最長長さYを板状多結晶粒子10の粒径と仮定しこの粒径を板状多結晶粒子10の厚さWで除算して各板状多結晶粒子10のアスペクト比を算出し、これを平均した値を板状多結晶粒子10のアスペクト比とした。
上記実験例1〜14について、XRD回折装置(リガク社製RAD−IB)を用い、板状多結晶粒子10の表面に対してX線を照射したときのXRD回折パターンを測定し、ロットゲーリング法によって擬立方(100)面の配向度を、擬立方(100),(110),(111)のピークを使用して上述の式(1)を用いて計算した。XRD回折測定は、エタノール2gに板状多結晶粒子を0.1gを加えたものを、超音波分散機(超音波洗浄機)で30分間分散させ、これを25mm×50mmのガラス基板に2000rpmでスピンコートし、板状多結晶粒子ができるだけ重ならないように、且つ結晶面とガラス基板面とが平行となる状態に配置して行った。
分散媒としてのトルエン、イソプロパノールを等量混合したものに、焼成後の結晶配向セラミックスの組成がLi0.03Na0.475K0.475Nb0.82Ta0.18O3となるように実験例1の仮焼後の無機粒子粉体(配向していない原料粉体)と、実験例1の板状多結晶粒子10と、バインダーとしてポリビニルブチラール(BM−2、積水化学製)と、可塑剤(DOP、黒金化成製)と、分散剤(SP−O30、花王製)とを混合し、スラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、無機材料100重量部に対して、板状多結晶粒子30重量部、分散媒100重量部、バインダー10重量部、可塑剤4重量部及び分散剤2重量部とした。次に、得られたスラリーを、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度2500〜3000cPとなるように調製した。スラリーの粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。得られたスラリーをドクターブレード法によって、板状多結晶粒子10が一方向に配向し、且つ乾燥後の厚さが100μmとなるように平板状に成形した。この平板を室温で乾燥したのち、600℃、2h脱脂後、1100℃で5h焼成を行い上記無機材料粉体の粒成長を行い、結晶配向セラミックス50を得た。
Claims (25)
- 結晶粒子を複数含み、
実質的に厚さ方向の該結晶粒子が1個であり該複数の結晶粒子が特定の結晶面を揃えた状態で粒界部で結合されている、
板状多結晶粒子。 - 前記結晶粒子は、等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長する無機粒子により構成され、特定の結晶面を有している、請求項1に記載の板状多結晶粒子。
- 前記板状多結晶粒子のアスペクト比が2以上である、請求項1又は2に記載の板状多結晶粒子。
- 前記板状多結晶粒子の配向度がロットゲーリング法で25%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子。
- 前記結晶粒子は、板状多結晶粒子の面方向の該結晶粒子の長さが該結晶粒子の厚さ方向の長さ以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子。
- 前記結晶粒子の厚さが0.1μm以上15μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子。
- 前記結晶粒子は、異方的な結晶粒子に成長する無機粒子により構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子。
- 前記結晶粒子は、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、AサイトがLi,Na,K,Bi及びAgから選ばれる1種以上を含み、BサイトがNb,Ta及びTiから選ばれる1種以上を含む粒子である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子。
- 前記結晶粒子は、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、AサイトがPbを含み、BサイトがMg,Zn,Nb,Ni,Ti及びZrから選ばれる1種以上を含む粒子である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子。
- 前記結晶粒子は、前記AサイトとBサイトの比である焼成前のA/Bが1.0以上1.3以下である、請求項8又は9に記載の板状多結晶粒子。
- 前記結晶粒子は、ペロブスカイト構造を有する酸化物により構成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子。
- 結晶粒子を複数含む板状多結晶粒子の製造方法であって、
無機粒子を厚さが15μm以下の自立したシート状の成形体に成形する成形工程と、
前記成形体を該成形体と実質的に反応しない不活性層に隣接させ又は、該成形体のまま焼成する焼成工程と、
所定サイズの開口部を通過させることにより前記焼成後の成形体を解砕及び分級する粉砕工程と、
を含む板状多結晶粒子の製造方法。 - 前記成形工程では、所定焼成条件において等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長する無機粒子を用いる、請求項12に記載の板状多結晶粒子の製造方法。
- 前記成形工程では、所定焼成条件において異方的な結晶粒子に成長する無機粒子を用いる、請求項12に記載の板状多結晶粒子の製造方法。
- 前記成形工程では、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、AサイトがLi,Na,K,Bi及びAgから選ばれる1種以上を含み、BサイトがNb,Ta及びTiから選ばれる1種以上を含む酸化物となる無機粒子を用いる、請求項12〜14のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子の製造方法。
- 前記成形工程では、一般式ABO3で表される酸化物のAサイトがLi,Na及びKから選ばれる1種以上を含み、BサイトがNb及びTaから選ばれる1種以上を含む酸化物となる無機粒子を用い、
前記焼成工程では、前記成形体の焼成温度を900℃以上1250℃以下とする、
請求項15に記載の板状多結晶粒子の製造方法。 - 前記成形工程では、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、AサイトがPbを含み、BサイトがMg,Zn,Nb,Ni,Ti及びZrから選ばれる1種以上を含む酸化物となる無機粒子を用いる、請求項12〜14のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子の製造方法。
- 前記成形工程では、前記AサイトとBサイトの比であるA/Bが1.0以上1.3以下である酸化物の無機粒子を用いる、請求項15〜17のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子の製造方法。
- 前記成形工程では、ペロブスカイト構造となる無機粒子を用いる、請求項12〜18のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子の製造方法。
- 前記成形工程では、メディアン径が前記成形体の厚さの1%以上60%以下である前記無機粒子を用いて前記成形体を成形する、請求項12〜19のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子の製造方法。
- 前記焼成工程では、前記成形体に含まれる特定成分の揮発を抑制する揮発抑制状態で前記成形体を焼成する、請求項12〜20のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子の製造方法。
- 前記焼成工程では、前記揮発抑制状態として前記成形体とは別の前記無機粒子を共存させた状態で該成形体を焼成する、請求項21に記載の板状多結晶粒子の製造方法。
- 前記粉砕工程では、前記所定サイズとして1.0mm以下の開口部を通過させることにより前記焼成後の成形体の解砕及び分級を行う、請求項12〜22のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子の製造方法。
- 前記粉砕工程では、押圧部材で前記焼成後の成形体を押圧することにより前記所定サイズの開口を有するメッシュを通過させ該焼成後の成形体を解砕及び分級する、請求項12〜23のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子の製造方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子と、原料粉体とを混合する混合工程と、
前記混合した粉体のうち前記板状多結晶粒子を所定方向に配向させ所定の2次成形体に成形する第2成形工程と、
前記板状多結晶粒子が配向している方向に前記原料粉体を配向させるよう前記2次成形体を焼成する第2焼成工程と、
を含む結晶配向セラミックスの製造方法。
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