JP2009029978A - インクカートリッジ - Google Patents
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Abstract
【課題】泡立ったインクによって、インク室の内圧を適切な状態に保持することができなくなってしまう、あるいは、インクジェットプリンタに泡を供給してしまう場合が起こり得る。この結果、気泡がキャリッジに設けられたノズルからのインクの吐出を妨げるために、印刷用紙に吐出されるインクが途切れ、印字不良が発生してしまう。
【解決手段】水不溶性有機化合物は、水性インクの泡立ちを抑えることができる。すなわち、水性インクの液性成分水に溶解しにくい為、インクの泡の発生を抑え、更に泡が発生しても速やかに消泡することができる。この結果、インク流路105に発生した泡インクは速やかに消泡するので、インク室の圧力を適切に保持したり、あるいは気泡をインクジェットプリンタに供給することを抑制したりすることができる。従って、インクジェットプリンタにインクを安定して供給することが可能となり、印字不良の発生は抑制される。
【選択図】図2
【解決手段】水不溶性有機化合物は、水性インクの泡立ちを抑えることができる。すなわち、水性インクの液性成分水に溶解しにくい為、インクの泡の発生を抑え、更に泡が発生しても速やかに消泡することができる。この結果、インク流路105に発生した泡インクは速やかに消泡するので、インク室の圧力を適切に保持したり、あるいは気泡をインクジェットプリンタに供給することを抑制したりすることができる。従って、インクジェットプリンタにインクを安定して供給することが可能となり、印字不良の発生は抑制される。
【選択図】図2
Description
本発明は、容器内にインクを収容したインクカートリッジに関し、詳しくはその収容されたインクの組成に関する。
インクジェットプリンタのキャリッジに装着して供給口からインクを供給するインクカートリッジでは、インクジェットプリンタにインクを安定して供給するため、インクカートリッジの容器内において、インクが収容されているインク室の内圧を適切な状態に保持することが行われる。このため、インク室に空気を取り入れるための大気開放孔から、インクの消費に見合う分の空気を安定して取り入れる大気開放流路を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示されたインクカートリッジでは、蛇行状態に形成した連通路部分(ヘビ道とも呼ぶ)と、浸入したインクを貯留可能な空気室とを、インクを収容するインク室と大気開放孔との間に形成して、インク室にインクの消費に見合う分の空気を安定して取り入れるように工夫されている。このように、従来のインクカートリッジの内部には、ヘビ道や空気室など構造の異なるインク流路が複数形成されている。
ところで、インクカートリッジの落下、キャリッジへのインクカートリッジの着脱、あるいはインクカートリッジの移動や運搬等によって、インクカートリッジに衝撃や振動が加わると、インクカートリッジ内のインクが泡立ってしまうことがある。このとき、インクカートリッジ内に形成された複数のインク流路において、泡立ったインクがインク流路(例えば空気室)に泡立った状態のまま泡インクとして残留する場合が起こり得る。このような場合、例えば残留した泡インクがインク流路においてメニスカスを形成すると、インク室への空気の流入を妨げてしまい、空気を安定して取り入れることができず、インク室の内圧を適切な状態に保持することができなくなってしまう。この結果、インク室から供給口へのインクの流れが悪くなってノズルからのインクの吐出を妨げてしまうために、印字不良が発生するという課題が生ずる。
あるいは、泡立ったインクがインク室に発生し、インクとともに供給口まで到達することによって、インクジェットプリンタに泡(つまり気泡)を供給してしまう場合が起こり得る。この結果、周知のように、インクジェットプリンタに気泡が供給されると、気泡がキャリッジに設けられたノズルからのインクの吐出を妨げるために、印刷用紙に吐出されるインクが途切れたりして所定量のインク滴が吐出されず、印字不良が発生してしまうという課題が生ずる。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]インクカートリッジであって、容器内に収容されたインクが、水、着色剤、水不溶性ポリマー粒子、および水不溶性有機化合物を含むインクであることを特徴とする。
水不溶性有機化合物は、水性インクの泡立ちを抑えることができる。すなわち、水性インクの液性成分水に溶解しにくい為、インク泡の発生を抑え、更に泡が発生しても速やかに消泡することができる。この結果、インク流路に留まった泡インクも速やかに消泡するので、インク室の圧力を適切に保持したり、あるいは気泡をインクジェットプリンタに供給することを抑制したりすることができる。従って、インクジェットプリンタにインクを安定して供給することが可能となり、印字不良の発生は抑制される。
[適用例2]上記インクカートリッジであって、前記水不溶性有機化合物の一部は、前記水不溶性ポリマー粒子に含有されていることを特徴とする。
こうすれば、水不溶性有機化合物の一部がポリマー粒子に含有されることでポリマー粒子の柔軟性を改良する可塑性を付与することができる。この結果、水不溶性有機化合物がポリマー粒子に可塑性を付与することで、インク中のポリマー粒子は、印刷用紙上で相互に融着しやすくなり、得られる印字物の光沢性あるいは写像性が向上するという効果も奏する。従って、水不溶性有機化合物は、水性インクの泡立ちを抑えるとともに、得られる印字物の光沢性を向上させることができる。
[適用例3]上記インクカートリッジであって、前記水不溶性ポリマー粒子が、塩生成基含有モノマーと、少なくともマクロマー又は疎水性モノマーのいずれかと、を含むモノマー混合物を共重合させてなる水不溶性ポリマー粒子であることを特徴とする。
このような水不溶性ポリマー粒子によれば、消泡性を付与するための水不溶性有機化合物によって可塑性が得られることから、泡が立ちにくく且つ印刷物の光沢性あるいは写像性を向上するインクを得ることができる。
[適用例4]上記インクカートリッジであって、前記水不溶性有機化合物は、少なくとも(あ)分子中に、エステル又はエーテル結合を2個以上有するエステル又はエーテル化合物、又は、(い)分子中に、エステル又はエーテル結合を1個以上と、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸残基、カルボニル基、エポキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を1個以上と、を有するエステル又はエーテル化合物、のいずれかであることを特徴とする。
このような水不溶性有機化合物によれば、インクに消泡性を付与するとともに、水不溶性ポリマーに可塑性が得られることから、泡が立ちにくく且つ印刷物の光沢性あるいは写像性を向上するインクを得ることができる。
本発明を具現化した一実施形態となるインクカートリッジと、これを装着したインクジェットプリンタとについて、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態のインクカートリッジ100,200,300,400を装着したインクジェットプリンタ10について、その概略構造を示したものである。また、図中吹き出し部に示した図は、後述するキャリッジ20を図中矢印Aの方向から見た側面図である。
このインクジェットプリンタ10は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色インクがそれぞれ収容されたインクカートリッジ100,200,300,400が、キャリッジ20に装着され、キャリッジ20の図面裏側に設けられた噴射ヘッド30からインク滴39を噴射して、印刷用紙25に所定の画像を印刷するものである。
キャリッジ20は、キャリッジベルト41に固定され、キャリッジベルト41がキャリッジモータ40によって駆動されるのに伴って、フレーム17に固定されたガイド21に沿って図面左右方向に移動する。このとき、各色インクを噴射するため噴射ヘッド30に穿設された複数のノズルから、印刷画像に相応した所定量のインク滴39が噴射される。また印刷用紙25は、プラテン28によって裏面から支持されつつ、フレーム17に固定された駆動モータ26により駆動される紙送りローラー(不図示)などによって、図面上下方向に所定量ずつ移動する。こうして、印刷画像に相応した所定量のインク滴39が、印刷用紙25全体に噴射されることによって画像が正しく形成されるのである。
従って、各インクカートリッジ100〜400に収容されたインクが、噴射ヘッド30からインク滴39が途切れることなく噴射されないと、正しく画像を形成することができないことになる。このため、通常インクジェットプリンタ10では、所定のタイミングで、クリーニングボックス18の位置にキャリッジ20を移動し、所定のクリーニング処置を行って、噴射ヘッド30内に形成されたインクの流路やノズルの開口部に滞留した気泡を吸い出し、ノズルをクリーニングすることも行われる。
このような一連の動作についての主な制御は、フレーム17に取り付けられたメイン基板50と、キャリッジ20に取り付けられたサブ基板60とによって行われる。これらの基板は、フレキシブル基板45によって接続され、必要なデータが相互にやりとりされてインクジェットプリンタ10についての所定の動作を行う。
さて、各インクカートリッジ100〜400は、図中吹き出し部内に示したように、キャリッジ20との間で形成された着脱手段103(詳細構造は後述する)によって、キャリッジ20に着脱可能な状態で白抜き矢印の方向から挿入固定されている。また、各インクカートリッジ100〜400から供給されるインクは、同じく図示しないインク流路に従って、噴射ヘッド30に設けられたそれぞれ対応するノズルまで流れるように構成されている。
各インクカートリッジ100〜400には、インクの消費情報などインクカートリッジに関する情報を記録したICチップを搭載した回路基板150が取り付けられている。そして、同じく、各インクカートリッジ100〜400には、インクカートリッジ内のインクの消費状態を検出するための検出センサ(不図示)が取り付けられ、所定の検出方法(例えば、信号波の伝達速度の変化を検出する方法や、光の透過光量の変化を検出する方法)によってインクが存在するか否かを検出し、検出結果に応じたデータをICチップに記録する。その後、記録されたデータは、所定の通信手段(不図示)によって回路基板150からサブ基板60に送られ、送られた検出センサのデータに応じて、前述したようにサブ基板60とメイン基板50とによって印刷を適切に制御する。
次に、本実施形態のインクカートリッジ100〜400について、その具体的な構造を図2を用いて説明する。図2は、インクカートリッジ100の全体構成を模式的に示した側面図である。なお、他のインクカートリッジ200,300,400は総てインクカートリッジ100と同じ構造を有しているため、説明を省略する。
図2に示すように、インクカートリッジ100は、インクを収容するためのインク室や前述したヘビ道および空気室などといったインク流路(図2では単に四角形で示した)105が内部に形成された樹脂製のインク容器体101と、インク容器体101と一体で設けられた着脱手段103と供給口107と、回路基板150とから構成されている。
供給口107は、中央部分に開口部が形成された略パイプ形状を有し、噴射ヘッド30に対してインクを供給するインクの供給口である。すなわち、キャリッジ20にインクカートリッジ100が装着されると、この開口部に対して、キャリッジ20側に設けられた供給針70が挿入される。そして、インク収容部105に収容されたインクが供給針70に流出して、噴射ヘッド30に対してインクが供給されるのである。なお、供給口107の開口部には、インクカートリッジ100がキャリッジ20に装着されていないときはインクが流出しない封止状態となり、インクカートリッジ100がキャリッジ20に装着されて供給針70が挿入されているときは開口状態となる弁機構が、必要に応じて構成されている。
着脱手段103は、図示するような略フック形状を呈し、インクカートリッジ100を図面下方向へ押し下げると二点鎖線で示した状態(符号103a)に撓むように形成されている。従って、インクカートリッジ100はキャリッジ20へ図面上方から押し込むことによって装着される。装着後は、キャリッジ20の溝部20bと突起部103bが係合することによって図面上方向に抜けないように固定される。もとより、インクカートリッジ100をキャリッジ20から取り外す場合は、着脱手段103を二点鎖線で示した状態(符号103a)に撓ませた後、図面上方向に引き上げればよい。こうして、インクカートリッジ100は、キャリッジ20つまりインクジェットプリンタ10に対して着脱が可能なように構成されている。なお、本実施形態における着脱手段は一例であって、着脱が可能な構造であれば、他の構造(例えばネジ止め)であっても勿論よい。
さて、このように構成されたインクカートリッジ100(200,300,400)について、例えば机上から床への落下、キャリッジ20への着脱操作、装着状態におけるキャリッジ20の左右方向への移動、あるいは運送移動等によって、インクカートリッジ100に衝撃や振動が加わると、インクカートリッジ100内のインクが泡立ってしまうことがある。
このとき、インクカートリッジ100内に形成されたインク流路において、泡立ったインクがインク室への空気の流入を妨げたり、あるいは、インク室に発生したインクの泡がインクジェットプリンタ10に気泡となって供給されたりしてしまう。この結果、インク室から供給口へのインクの流れが悪くなり、ノズルからのインクの吐出を妨げてしまうために、印字不良が発生するという前述した課題が生ずる。また、インクジェットプリンタ10に供給された気泡がキャリッジ20に設けられたノズルからのインク滴39の吐出を妨げるために、印刷用紙25に吐出されるインクが途切れ、印字不良が発生してしまうという前述した課題が生ずるのである。また、このような気泡によって検出センサが誤判定を起こしてしまうことも起こり得る。
そこで、本実施形態のインクカートリッジ100(200,300,400)は、泡立ったインクが素早く消泡するインク組成を有するインクを収容することによって、インクジェットプリンタ10による印刷において、印字不良の発生を抑制できるようにするものである。
また、噴射ヘッド30内に形成されたインクの流路やノズルの開口部に気泡が滞留することも抑制されるので、クリーニングボックス18の位置にキャリッジ20を移動して行うクリーニング処置の回数も抑制できることが期待できる。また、気泡による検出センサの誤判定を回避することも可能である。
それでは、本実施形態のインクカートリッジに収容されるインクの組成について説明する。本実施形態のインクカートリッジに収容するインクは、組成として、少なくとも、水不溶性有機化合物、水不溶性ポリマー粒子、着色剤、および水を含有するインクである。以下、含有される各組成について、具体的に順次説明する。
(水不溶性有機化合物)
インク組成のうち水不溶性有機化合物は、前述のように、インクの泡立ちを効果的に抑制し、印字物の光沢性あるいは写像性向上の為に、分子量100〜2,000のものが好ましく、分子量100〜1,000のものがより好ましい。
インク組成のうち水不溶性有機化合物は、前述のように、インクの泡立ちを効果的に抑制し、印字物の光沢性あるいは写像性向上の為に、分子量100〜2,000のものが好ましく、分子量100〜1,000のものがより好ましい。
水不溶性有機化合物は、ポリマー粒子に含有させ易くするため、エステル化合物、エーテル化合物、又はスルホン酸アミド化合物であることが好ましく、少なくとも分子中に、エステル又はエーテル結合を2個以上有するエステル又はエーテル化合物、又は、分子中に、エステル又はエーテル結合を1個以上と、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸残基、カルボニル基、エポキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を1個以上と、を有するエステル又はエーテル化合物、がより好ましい。これらの化合物におけるエステル又はエーテル結合は、1〜3個が好ましい。官能基数は、1〜3個が好ましい。なお、リン酸残基とは、リン酸の一部がエステル化又はエーテル化された残りのリン酸基のことをいう。
これらの化合物の中では、1価カルボン酸又はその塩と多価アルコールから得られるエステル、多価酸(多価カルボン酸、リン酸)又はその塩と1価アルコールから得られるエステル、又は多価アルコールのエーテル化合物が好ましく、脂肪族又は芳香族カルボン酸エステル基を2つ又はリン酸エステル基を3つ有することが更に好ましい。塩としては、アルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
1価カルボン酸としては、炭素数1〜18、好ましくは炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖の脂肪族カルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸等の直鎖脂肪族カルボン酸、ピバリン酸等の分岐脂肪族カルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸、のような不飽和脂肪族カルボン酸)、炭素数6〜12の芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸)が挙げられ、多価酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の炭素数2〜12の脂肪族カルボン酸;フタル酸、トリメリット酸等の炭素数6〜12の芳香族カルボン酸、リン酸等が挙げられる。
1価アルコールとしては、炭素数1〜18、好ましくは炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖の脂肪族アルコール(例えば、エチルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール)、炭素数6〜12の芳香族アルコール(例えば、フェノール)が挙げられ、多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の炭素数2〜12の多価アルコールが挙げられる。脂肪酸やアルコールとしては飽和又は不飽和のいずれのものも使用できる。
水不溶性有機化合物の具体例としては、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、リン酸エステル、シクロアルカン(ケン)カルボン酸エステル、オキシ酸エステル、グリコールエステル、エポキシ系エステル、スルホンアミド、ポリエステル、グリセリルアルキルエーテル、グリセリルアルキルエステル、グリコールアルキルエーテル、グリコールアルキルエステル、トリメチロールプロパンのエーテル又はエステル、ペンタエリスリトールのエーテル又はエステル等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸エステルとしては、写像性の観点から脂肪族ジ又はトリカルボン酸エステルが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸エステルの具体例としては、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(ブチルジエチレングリコール)アジペート、ジメチルセバケート、ジエチルセバケート、ジブチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジエチルサクシネート、ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート等の脂肪族二塩基酸エステル等が挙げられる。
芳香族カルボン酸エステルの具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、オクチルベンジルフタレート、ノニルベンジルフタレート、ステアリルベンジルフタレート、オクチルデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジフェニルフタレート、ビス(ジメチルシクロヘキシル)フタレート、ビス(t−ブチルシクロヘキシル)フタレート、エチルフタリルエチルグリコレート等のフタル酸エステル、ジブチルトリメリテート、ジイソブチルトリメリテート、トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテート等のトリメリット酸エステル等が挙げられる。
これらの中でも、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート等の炭素数1〜5の脂肪族アルコール残基を有するフタル酸ジエステル、オクチルベンジルフタレート、ノニルベンジルフタレート、ステアリルベンジルフタレート等の炭素数3〜18のアルキル基を有するベンジルフタレート、及びジブチルトリメリテート、ジイソブチルトリメリテート等の炭素数3〜5の脂肪族アルコール残基を有するトリメリット酸ジエステルが特に好ましい。芳香族カルボン酸エステルは、芳香族ジ又はトリカルボン酸エステルが好ましい。
リン酸エステルの具体例としては、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等が挙げられる。
シクロアルカン(ケン)ジカルボン酸エステルの具体例としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチルエステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル等のシクロヘキサンエステル類、3,4−シクロヘキセンジカルボン酸ジブチルエステル、3,4−シクロヘキセンカルボン酸ジイソノニルエステル等のシクロヘキセンエステル等が挙げられる。
オキシ酸エステルの具体例としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルリシノール酸メチル等が挙げられる。
グリコールエステルの具体例としては、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキソエート)等が挙げられる。
エポキシ系エステルの具体例としては、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が挙げられる。
スルホンアミドの具体例としては、o−及びp−トルエンスルホンアミド、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
ポリエステルの具体例としては、ポリ(1,2−ブタンジオールアジペート)、ポリ(1,3−ブタンジオールアジペート)等が挙げられる。
グリセリルアルキルエーテルの具体例としては、グリセリルモノエーテル、グリセリルジエーテル、グリセリルトリエーテルが挙げられる。これらの中では、炭素数8〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するグリセリルモノエーテルが好ましい。アルキル基の炭素数は8〜30であるが、好ましくは8〜22、更に好ましくは8〜14である。
グリセリルアルキルエステルの具体例としては、グリセリルモノアルキルエステル、グリセリルジアルキルエステル、グリセリルトリアルキルエステルが挙げられる。
グリコールアルキルエーテルの具体例としては、グリコールモノアルキルエーテル、グリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
グリコールアルキルエステルの具体例としては、グリコールモノアルキルエステル、グリコールジアルキルエステルが挙げられる。
上記の水不溶性有機化合物は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(水不溶性ポリマー粒子)
インク組成のうち、水不溶性ポリマー粒子は、水不溶性有機化合物との相互作用により、印字濃度、光沢性、写像性を向上させるために用いられる。この水不溶性ポリマーは、水不溶性有機化合物を含有しやすくするポリマーであることが好ましい。
インク組成のうち、水不溶性ポリマー粒子は、水不溶性有機化合物との相互作用により、印字濃度、光沢性、写像性を向上させるために用いられる。この水不溶性ポリマーは、水不溶性有機化合物を含有しやすくするポリマーであることが好ましい。
水不溶性ポリマーとしては、水不溶性ビニルポリマー、水不溶性エステル系ポリマー、水不溶性ウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらの中で、特にビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られる水不溶性ビニルポリマー粒子が好ましい。
水不溶性ポリマー粒子として使用する水不溶性ポリマーは、塩生成基含有モノマーと、マクロマー、及び/又は疎水性モノマーとを含むモノマー混合物を共重合させてなる水不溶性ポリマーが好ましい。
塩生成基含有モノマーは、得られる分散体の分散安定性を高める観点から用いられる。塩生成基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、アンモニウム基等が挙げられる。
塩生成基含有モノマーとしては、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられ、例えば、不飽和アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。
アニオン性モノマーの代表例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−3−スルホプロピル)イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
マクロマーは、特にポリマー粒子が顔料を含有した場合に、ポリマー粒子の分散安定性を高める観点から用いられる。マクロマーとしては、数平均分子量500〜100,000、好ましくは1,000〜10,000の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。マクロマーの中では、ポリマー粒子の分散安定性等の観点から、片末端に重合性官能基を有する、スチレン系マクロマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーが好ましい。
スチレン系マクロマーとしては、スチレン系モノマー単独重合体、又はスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等が挙げられる。
芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーとしては、芳香族基含有(メタ)アクリレートの単独重合体又はそれと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
疎水性モノマーは、印字濃度、光沢性、写像性の向上の観点から用いられる。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜12の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、例えば、前記のスチレン系モノマー、前記の芳香族基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。ヘテロ原子を含む置換基としては、前記のものが挙げられる。
モノマー混合物としては、更に、ノニオン性(メタ)アクリレート系モノマーが含有されても良く、その代表例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール・プロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(着色剤)
インクの組成に含まれる着色剤としては、例えば、シアン顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料等を挙げることができる。本実施例におけるインク組成物に使用される着色剤の配合量は、発色性と目詰まり回復性の観点から、0.1〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜8重量%である。
インクの組成に含まれる着色剤としては、例えば、シアン顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料等を挙げることができる。本実施例におけるインク組成物に使用される着色剤の配合量は、発色性と目詰まり回復性の観点から、0.1〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜8重量%である。
シアン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、及びC.I.バットブルー4、60等が挙げられる。これらシアン顔料は、単独でも、2種以上混合して用いることができる。
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、35、37、42、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、138、147、150、153、155、174、180、188、198等が挙げられる。これらイエロー顔料は、単独でも、2種以上混合して用いることができる。
マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド、1、3、5、8、9、16、17、19、22、38、57:1、90、112、122、123、127、146、184、202、207、209、及びC.I.ピグメントバイオレット1、3、5:1、16、19、23、38等が挙げられる。これらマゼンタ顔料は、単独でも、2種以上混合して用いることができる。なお、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水に不溶であればいずれも使用できる。
(水)
本実施形態におけるインク組成物は、主溶媒としての水を含む。水としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純粋又は超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生が防止されるので好ましい。
本実施形態におけるインク組成物は、主溶媒としての水を含む。水としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純粋又は超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生が防止されるので好ましい。
(その他のインク組成)
上述した4つのインク組成(水不溶性有機化合物、水不溶性ポリマー粒子、着色剤、水)に加えて、本実施形態にかかるインクは、記録媒体への濡れ性を高めて有機顔料の浸透性を高める観点から、浸透促進剤を組成物として添加することとしてもよい。
上述した4つのインク組成(水不溶性有機化合物、水不溶性ポリマー粒子、着色剤、水)に加えて、本実施形態にかかるインクは、記録媒体への濡れ性を高めて有機顔料の浸透性を高める観点から、浸透促進剤を組成物として添加することとしてもよい。
浸透促進剤としては、1,2−アルカンジオール及び/またはグリコールエーテルを含有することが好ましい。1,2−アルカンジオールの具体的な例としては、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等が挙げられる。また、グリコールエーテルの具体的な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等が挙げられる。これらの溶剤は、1種又は2種以上を用いることができ、適切な浸透性及び乾燥性の確保という観点で、インク組成物中に2〜15重量%含まれることが好ましい。
さらに、浸透促進剤のその他の好ましい例としては、表面張力調整剤を挙げることができる。表面張力調整剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤やポリエーテル変性シロキサン類が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の例としては、サーフィノール420、440、465、485、104、STG(エアープロダクツ社製品)、オルフィンPD−001、SPC、E1004、E1010(日信化学工業(株)製品)、アセチレノールE00、E40、E100、LH(川研ファインケミカル(株)製品)等が挙げられる。またポリエーテル変性シロキサン類としては、BYK−346、347、348、UV3530(ビックケミー社製品)などが挙げられる。これらは、インク組成物中に1種又は2種以上を用いることができ、表面張力20〜40mN/mに調整されることが好ましく、インク組成物中には0.1〜3.0重量%含まれる。
また、本実施形態にかかるインクは、インク組成物の乾燥を防いでインクジェットプリンタのヘッドでの目詰りを防止する観点から、湿潤剤を組成物として添加することが好ましい。湿潤剤としては、例えば、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレンフリコール、ジプロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等の多価アルコール類、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸類、1,2−ジメチル尿素、尿素類、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられる。これらは、インク組成物中に1種又は2種以上を用いることができ、インク組成物の適正な物性値(粘度等)の確保、印刷品質、信頼性の確保という観点で、インク組成物中に10〜50重量%含まれることが好ましい。
さらに、本実施形態にかかるインクには、pH調整剤、防腐剤、防カビ剤、防錆剤、溶解助剤、酸化防止剤等から選ばれる材料を必要に応じて組成物として添加することができる。これらの成分は、各種別に一種又は二種以上を混合して用いることができる。また、添加する必要がなければ添加しなくてもよい。消泡性に関する効果を損なわない範囲で、選択された好ましい添加剤を好ましい量で用いることができる。
pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアミン類等を用いることができるが、好ましくは、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンから選択される少なくとも1種類のpH調整剤を含み、pH6〜10に調整されることが好ましい。pHがこの範囲を外れると、インクジェットプリンタを構成する材料等に悪影響を与えたり、目詰まり回復性が劣化したりする。
防腐剤又は防カビ剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及び1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(AVECIA社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、及びプロキセルTN(以上商品名))等を例示できるが、これらに限定されない。
溶解助剤とは、インク組成物から不溶物が析出する場合に、その不溶物を溶解し、インク組成物を均一な溶液に保つための添加剤である。溶解助剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドンなどのピロリドン類、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネート等のアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類などを挙げることができるがこれらに限定されない。
酸化防止剤の例としては、L−アスコルビン酸及びその塩類等が例示できるが、これらに限定されない。
以上、本実施形態のインクカートリッジによれば、収容されるインクは、水不溶性有機化合物によって水性インクの泡立ちを抑える消泡性の高いインクとすることができる。すなわち、水性インクの液性成分水に溶解しにくい為インク表面での泡の発生を抑え、更に泡が発生しても速やかに消泡することができる。この結果、例えば空気室に留まった泡インクも速やかに消泡するので、インク室の圧力を適切に保持したり、あるいは気泡をインクジェットプリンタに供給することを抑制したりすることができる。従って、インクジェットプリンタにインクを安定して供給することが可能となり、印字不良の発生は抑制される。
次に、このような組成を有するインクを収容したインクカートリッジについて、具体的な実施例を、製造方法を含めて例示する。また、実施例との比較のために、3つの比較例を挙げ、実施例との性能比較についても合わせて説明する。なお、比較例1は水不溶性有機化合物を含まない例、比較例2は水不溶性有機化合物および水不溶性ポリマー粒子を含まない例、比較例3は水不溶性ポリマー粒子を含まない例である。
「実施例」
(1)顔料分散液の製造
反応容器内に、メチルエチルケトン25重量部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.04重量部、メタクリル酸(三菱ガス化学株式会社、商品名GE−110(MAA))15重量部、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社、商品名AS−6S)15重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社、商品名アクリエステルEH)30重量部、スチレンモノマー(新日鉄化学株式会社、商品名スチレンモノマー)25重量部、及びメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート15重量部のうちのそれぞれ10重量%ずつを入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
(1)顔料分散液の製造
反応容器内に、メチルエチルケトン25重量部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.04重量部、メタクリル酸(三菱ガス化学株式会社、商品名GE−110(MAA))15重量部、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社、商品名AS−6S)15重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社、商品名アクリエステルEH)30重量部、スチレンモノマー(新日鉄化学株式会社、商品名スチレンモノマー)25重量部、及びメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート15重量部のうちのそれぞれ10重量%ずつを入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロート中に、上記各モノマーの残り90重量%ずつを仕込み、次いで重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.27重量部、メチルエチルケトン60重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2重量部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、その混合溶液の液温を75℃で2時間維持した後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を該混合溶液に加え、更に75℃ で2時間、85℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液の一部を、減圧下、105℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによって単離した。標準物質としてポリスチレン、溶媒として60mmol/Lのリン酸及び50mmol/Lのリチウムブロマイド含有ジメチルホルムアミドを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を求めたところ、121,000であった。
得られた共重合体溶液を減圧乾燥させて得られた共重合体30重量部を、メチルエチルケトン75重量部に溶かし、その中にイオン交換水220重量部と水酸化ナトリウム(30%水溶液)を所定量(塩生成基の中和度が65%になる量)加えて共重合体の一部を中和し、更に顔料としてC.I.ピグメントバイオレット19を70重量部を加え、ビーズミルで混練して、本分散させた。
得られた分散液に、イオン交換水240重量部を加え、攪拌した後、減圧下60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去した。得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散体40部と水不溶性有機化合物であるジブチルセバケート1重量部と混合・攪拌することでジブチルセバケートをポリマー粒子中に含有させ、メンブランフィルターで濾過することにより、固形分濃度が20重量%の水不溶性有機化合物と顔料を水不溶性ポリマー粒子の含有した顔料分散液を得た。
(2)インク組成物の製造
実施例の(1)で得られた顔料分散液(固形分濃度20重量%)30重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル4重量部、1,2−ヘキサンジオール2重量部、オルフィンE1010(日信化学工業化学株式会社製)1重量部、グリセリン15重量部、トリメチロールプロパン3重量部、及びイオン交換水45重量部を混合した。得られた混合液を10μmのメンブランフィルターでろ過して、実施例のインク組成物とした。
実施例の(1)で得られた顔料分散液(固形分濃度20重量%)30重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル4重量部、1,2−ヘキサンジオール2重量部、オルフィンE1010(日信化学工業化学株式会社製)1重量部、グリセリン15重量部、トリメチロールプロパン3重量部、及びイオン交換水45重量部を混合した。得られた混合液を10μmのメンブランフィルターでろ過して、実施例のインク組成物とした。
(3)インクカートリッジの製造
実施例の(2)で調製したインクを、インクカートリッジ100(200,300,400)に注入することで、実施例のインクカートリッジを得た。
実施例の(2)で調製したインクを、インクカートリッジ100(200,300,400)に注入することで、実施例のインクカートリッジを得た。
「比較例1」
(1)顔料分散液の製造
比較例1では、顔料としてC.I.ピグメントバイオレット19の代わりにC.I.ピグメントブルー15:4を用いたこと、水不溶性有機化合物であるジブチルセバケートを使用しなかったこと以外は実施例の(1)と同様の方法で、固形分濃度が20重量%の顔料を水不溶性ポリマー粒子に含有した顔料分散液を得た。
(1)顔料分散液の製造
比較例1では、顔料としてC.I.ピグメントバイオレット19の代わりにC.I.ピグメントブルー15:4を用いたこと、水不溶性有機化合物であるジブチルセバケートを使用しなかったこと以外は実施例の(1)と同様の方法で、固形分濃度が20重量%の顔料を水不溶性ポリマー粒子に含有した顔料分散液を得た。
(2)インク組成物の製造
比較例1の(1)で得られた顔料分散液(固形分濃度20重量%)を用いた以外は実施例の(2)と同様の組成物および方法で比較例1のインク組成物を得た。
比較例1の(1)で得られた顔料分散液(固形分濃度20重量%)を用いた以外は実施例の(2)と同様の組成物および方法で比較例1のインク組成物を得た。
(3)インクカートリッジの製造
比較例1の(2)で調製したインクを、インクカートリッジ100(200,300,400)に注入することで、比較例1のインクカートリッジを得た。
比較例1の(2)で調製したインクを、インクカートリッジ100(200,300,400)に注入することで、比較例1のインクカートリッジを得た。
「比較例2」
(1)顔料分散液の製造
顔料としてのC.I.ピグメントバイオレット19と、分散剤としてのスチレン−アクリル樹脂(ジョンソンポリマー社製ジョンクリル61J)と、を混合し、サンドミル(安川製作所社製)中でガラスビーズ(直径1.7mm、混合液の1.5倍量(重量))とともに2時間分散させた。分散後、ガラスビーズを取り除き、他の溶剤及び水を加え、常温で30分攪拌し、10μmのメンブレンフィルターでろ過して、固形分濃度が20重量%の顔料分散液を得た。
(1)顔料分散液の製造
顔料としてのC.I.ピグメントバイオレット19と、分散剤としてのスチレン−アクリル樹脂(ジョンソンポリマー社製ジョンクリル61J)と、を混合し、サンドミル(安川製作所社製)中でガラスビーズ(直径1.7mm、混合液の1.5倍量(重量))とともに2時間分散させた。分散後、ガラスビーズを取り除き、他の溶剤及び水を加え、常温で30分攪拌し、10μmのメンブレンフィルターでろ過して、固形分濃度が20重量%の顔料分散液を得た。
(2)インク組成物の製造
比較例2の(1)で得られた顔料分散液(固形分濃度20重量%)30重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル4重量部、1,2−ヘキサンジオール2重量部、オルフィンE1010(日信化学工業化学株式会社製)1重量部、グリセリン15重量部、トリメチロールプロパン3重量部、及びイオン交換水45重量部を混合した。得られた混合液を10μmのメンブランフィルターでろ過して、比較例2のインク組成物とした。
比較例2の(1)で得られた顔料分散液(固形分濃度20重量%)30重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル4重量部、1,2−ヘキサンジオール2重量部、オルフィンE1010(日信化学工業化学株式会社製)1重量部、グリセリン15重量部、トリメチロールプロパン3重量部、及びイオン交換水45重量部を混合した。得られた混合液を10μmのメンブランフィルターでろ過して、比較例2のインク組成物とした。
(3)インクカートリッジの製造
比較例2の(2)で調製したインクを、インクカートリッジ100(200,300,400)に注入することで比較例1のインクカートリッジを得た。
比較例2の(2)で調製したインクを、インクカートリッジ100(200,300,400)に注入することで比較例1のインクカートリッジを得た。
「比較例3」
(1)顔料分散液の製造
比較例3では、比較例2の(1)と同様の顔料分散液を使用した。
(1)顔料分散液の製造
比較例3では、比較例2の(1)と同様の顔料分散液を使用した。
(2)インク組成物の製造
比較例3の(1)で得られた顔料分散液(固形分濃度20重量%)30重量部、水不溶性有機化合物であるジブチルセバケート1重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル4重量部、1,2−ヘキサンジオール2重量部、オルフィンE1010(日信化学工業化学株式会社製)1重量部、グリセリン15重量部、トリメチロールプロパン3重量部、及びイオン交換水44重量部を混合した。得られた混合液を10μmのメンブランフィルターでろ過して、比較例3のインク組成物とした。
比較例3の(1)で得られた顔料分散液(固形分濃度20重量%)30重量部、水不溶性有機化合物であるジブチルセバケート1重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル4重量部、1,2−ヘキサンジオール2重量部、オルフィンE1010(日信化学工業化学株式会社製)1重量部、グリセリン15重量部、トリメチロールプロパン3重量部、及びイオン交換水44重量部を混合した。得られた混合液を10μmのメンブランフィルターでろ過して、比較例3のインク組成物とした。
(3)インクカートリッジの製造
比較例3の(2)で調製したインクを、インクカートリッジ100(200,300,400)に注入することで比較例3のインクカートリッジを得た。
比較例3の(2)で調製したインクを、インクカートリッジ100(200,300,400)に注入することで比較例3のインクカートリッジを得た。
次に実施例、および3つの比較例(比較例1,2,3)のインクカートリッジについて、(イ)JISK3362に基づいた25℃における起泡性評価、(ロ)印字安定性評価、(ハ)保存安定性評価を実施した。それぞれの評価方法について説明する。
(イ)JISK3362に基づいた25℃における起泡性評価
各インクカートリッジに収容したインクについて、以下の要領により起泡性評価を行った。すなわち、25℃の環境でインク200mlを900mmの高さから50mlのインクを入れた目盛り管中に30秒間かけて流下させ、そのとき発生した泡の高さを測定した。数値が小さいほど消泡性が良いことを示す。
各インクカートリッジに収容したインクについて、以下の要領により起泡性評価を行った。すなわち、25℃の環境でインク200mlを900mmの高さから50mlのインクを入れた目盛り管中に30秒間かけて流下させ、そのとき発生した泡の高さを測定した。数値が小さいほど消泡性が良いことを示す。
(ロ)印字安定性評価
各インクカートリッジついて、以下の要領により印字安定性評価を行った。すなわち、1mの高さから自然落下により5回地上に落下させ、そのまま一日放置した後、インクジェットプリンタPX−A720(セイコーエプソン株式会社製)にセットして、ベタの印字パターンを20枚連続して印字を実施し、次の基準A,B,Cに基づき印字安定性を評価した。
A:20枚の連続印字を通して、全く印字抜けやムラが無い。
B:20枚の連続印字の中で、少なくとも1〜4枚に印字抜けやムラが発生する。
C:20枚の連続印字の中で、少なくとも5枚以上に印字抜けやムラが発生している。
各インクカートリッジついて、以下の要領により印字安定性評価を行った。すなわち、1mの高さから自然落下により5回地上に落下させ、そのまま一日放置した後、インクジェットプリンタPX−A720(セイコーエプソン株式会社製)にセットして、ベタの印字パターンを20枚連続して印字を実施し、次の基準A,B,Cに基づき印字安定性を評価した。
A:20枚の連続印字を通して、全く印字抜けやムラが無い。
B:20枚の連続印字の中で、少なくとも1〜4枚に印字抜けやムラが発生する。
C:20枚の連続印字の中で、少なくとも5枚以上に印字抜けやムラが発生している。
(ハ)保存安定性評価
各インクカートリッジについて、以下の要領により保存安定性の評価を行った。すなわち、60℃の環境下で各インクカートリッジを2週間放置した。放置後の異物(浮遊物又は沈降物)の有無を目視観察し、異物の発生がないものについては、更に物性(粘度、表面張力、pH、粒子径)の変化について調べ、次の基準A,B,Cに基づき保存安定性を評価した。
A:異物の発生がなく、物性の変化もない。
B:異物の発生はないが、物性が若干変化する。
C:異物が発生するか、物性が著しく変化する。
各インクカートリッジについて、以下の要領により保存安定性の評価を行った。すなわち、60℃の環境下で各インクカートリッジを2週間放置した。放置後の異物(浮遊物又は沈降物)の有無を目視観察し、異物の発生がないものについては、更に物性(粘度、表面張力、pH、粒子径)の変化について調べ、次の基準A,B,Cに基づき保存安定性を評価した。
A:異物の発生がなく、物性の変化もない。
B:異物の発生はないが、物性が若干変化する。
C:異物が発生するか、物性が著しく変化する。
(イ)、(ロ)、(ハ)についての評価結果の一覧を図3に示す。評価結果から明らかなように、消泡性が良いほど印字安定性が良いことが解かる。そして、上記実施形態による組成を有するインクを収容したインクカートリッジの効果を明確に示している。
すなわち、少なくとも水不溶性ポリマー粒子または水不溶性有機化合物のいずれかをインク組成として含まないインクカートリッジである比較例1,2,3では、印字安定性はA評価(問題ないレベル)以外のB評価(問題になる可能性があるレベル)またはC評価(問題となるレベル)である。また、保存安定性も比較例2,3ではA評価(問題ないレベル)以外のB評価(問題になる可能性があるレベル)またはC評価(問題となるレベル)である。これに対して、本実施形態のインク組成を有するインクを収容したインクカートリッジである実施例では、印字安定性および保存安定性ともにA評価である。このことから、本実施形態のインクカートリッジを用いることによって、印字不良の発生は抑制されることが解かる。
なお、本発明を具体化したインクカートリッジについて、上記実施形態に限るものでないことは勿論である。形状や大きさが異なったり、あるいは着脱構造を有しなかったりしたものであっても差し支えない。また、回路基板150や検出センサを取り付けないものであってもよい。
10…インクジェットプリンタ、17…フレーム、18…クリーニングボックス、20…キャリッジ、20b…溝部、21…ガイド、25…印刷用紙、26…駆動モータ、28…プラテン、30…噴射ヘッド、39…インク滴、40…キャリッジモータ、41…キャリッジベルト、45…フレキシブル基板、50…メイン基板、60…サブ基板、70…供給針、100…インクカートリッジ、101…インク容器体、103,103a…着脱手段、103b…突起部、105…インク収容部、107…供給口、150…回路基板、200,300,400…インクカートリッジ。
Claims (4)
- 容器内に収容されたインクが、水、着色剤、水不溶性ポリマー粒子、および水不溶性有機化合物を含むインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
- 前記水不溶性有機化合物の一部は、前記水不溶性ポリマー粒子に含有されていることを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
- 前記水不溶性ポリマー粒子が、塩生成基含有モノマーと、少なくともマクロマー又は疎水性モノマーのいずれかと、を含むモノマー混合物を共重合させてなる水不溶性ポリマー粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクカートリッジ。
- 前記水不溶性有機化合物は、少なくとも
(あ)分子中に、エステル又はエーテル結合を2個以上有するエステル又はエーテル化合物、又は、
(い)分子中に、エステル又はエーテル結合を1個以上と、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸残基、カルボニル基、エポキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を1個以上と、を有するエステル又はエーテル化合物、
のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009144006A (ja) * | 2007-12-12 | 2009-07-02 | Kao Corp | インクジェット記録用水系インク |
JP2009227945A (ja) * | 2008-03-25 | 2009-10-08 | Kao Corp | インクジェット記録用水系インク |
WO2010092734A1 (ja) | 2009-02-12 | 2010-08-19 | 株式会社ニフコ | 回動体のアシスト機構 |
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2007
- 2007-07-30 JP JP2007197030A patent/JP2009029978A/ja not_active Withdrawn
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JP2009144006A (ja) * | 2007-12-12 | 2009-07-02 | Kao Corp | インクジェット記録用水系インク |
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