JP2009021408A - 有機el表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】斜めからの外光に対する反射防止効果が向上し、明所コントラストの高い有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】反射電極を有する有機EL素子の光取り出し側に、1/4λ板と偏光板とを有する円偏光板を設けた有機EL表示装置において、前記1/4λ板は、直交する面内方向屈折率をnx、ny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、nx<ny、nx<nzの関係を満足することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】反射電極を有する有機EL素子の光取り出し側に、1/4λ板と偏光板とを有する円偏光板を設けた有機EL表示装置において、前記1/4λ板は、直交する面内方向屈折率をnx、ny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、nx<ny、nx<nzの関係を満足することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、有機EL表示装置に係り、明るい環境の下でも良好な視認性が得られる表示装置に関するものである。
有機EL表示装置は、有機薄膜からなる発光層に、正負の電荷を注入することにより、電気エネルギーを光に変換して発光させる素子を画素として、表示域に配列させたものである。液晶表示装置などの非発光型表示装置に比べ、薄型、軽量、視野角が広い、表示の応答速度が早いなどの特徴を有する。
図4は従来の有機EL表示装置の一例を示す断面図である。駆動回路(省略)が埋め込まれた基板11の上面に、画素電極(陽極)として機能する光反射性の金属からなる反射電極12が設けられた素子基板を用意する。次にホール輸送層13、発光層14、電子輸送層15、陰極として機能する透明電極16を順次積層した構造となっている。両電極から注入された電荷は発光層14で再結合し発光が起こる。
また透明電極16上には、必要に応じて窒化シリコンなどの透明無機膜、或いはアクリル系、ポリイミド系などの透明樹脂膜からなる保護膜17を設けてもよい。さらにこの上に透明なガラス或いはプラスチックなどの上部基板18を設けることで、有機EL表示部にキズが付くのを防ぐことができる。最後に外光反射を抑制するために円偏光板19を例えば保護膜17上に貼り付けることで、有機EL表示装置が完成する。
ここで円偏光板19を構成する1/4λ板として機能する位相差板は、複屈折率を持つフィルムである。プラスチックフィルムを特定方向に延伸処理することによって作製することが可能である。材料としては、透明で、延伸処理が可能であればよい。例えばポリカーボネート系高分子、ポリエステル系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリスチレン系高分子、ポリフェニレンオキシド系高分子、ポリオレフィン系高分子などを挙げることができる。
発光層14から出射した光のうち透明電極16側に向かった光は、透明電極16を透過(通過)する。また、反射電極12に向かった光は、反射電極12で反射して、同様に透明電極16を通過する。ここで反射電極12の反射率は高いほど明るい表示を得られる。
ところが明るい環境下では、この反射電極12のため、外光反射の影響でコントラストが低下するという問題がある。これを解決するための手段として、特許文献1に記載されているように、光出射面側に円偏光板を配置した構造が実用化されている。つまり、有機EL素子の光取り出し側に、偏光板と、同偏光板の光軸に対して45度傾いた光軸の1/4λ板として機能する位相差板とからなる円偏光板を設ける。円偏光板は以下のとおり作用する。
周囲から有機EL表示装置に入射する外光は、偏光板を通過する際、特定の方向に偏光面を持つ直線偏光が通過し、これと偏光面が直交する直線偏光は吸収される。さらに偏光板を通過した光は位相差板の作用を受け、偏光面が回転する円偏光となる。
位相差板を通過した光は反射電極で反射する際、回転方向が逆向きの円偏光となる。反射電極で反射した光は、再び位相差板に入射し、これを通過するときにその作用を受けて入射時とは直交する直線偏光に変換されて、偏光板に吸収されるため、外光反射が抑制される。このため黒色の表示性能が向上、コントラスト比が大きく改善される。
しかし従来の円偏光板を備えた有機EL表示装置では、斜め方向から入射した外光に対して位相差板を通過する光の光路長が長くなり、理想的な円偏光板の機能が果たせず表示コントラストが低下するという問題が残る。
通常の位相差板は、面内の最大屈折率をnx、面内で直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、nx>ny=nzの1軸異方性材料を用いる。
ここでnxは異常光線屈折率で、ny、nzは常光線屈折率である。例えばポリカーボネート系高分子などはフィルムをx軸方向に延伸して配向させることで、x軸方向に異方性を与える。このような材料は正の複屈折性材料と呼ばれる。
これに対して特許文献2では、1/4λ板を構成する位相差板の屈折率を次の条件にして、斜め方向からの外光反射防止効果の高い円偏光板を提案している。
開示された円偏光板の1/4λ板は、少なくとも1つ以上の位相差板がny<nz<nxを満足するように形成されている。このため位相差板を通過する光の内、正面方向から入射した光の屈折率差(nx−ny)よりも、斜め方向から入射した光に対する屈折率差(nx−nz)が小さくなる。故に両者の物理的な距離の差異(斜め方向から入射した光の方が物理的距離は長くなる)が、ちょうど補償される。そこで光路長としては両者を同等にすることが可能になり、正面でも、斜め方向でも良好な反射防止が可能になるというものである。
詳しくは、位相差板材料の屈折率楕円体を考えた時、位相差板の面内の最大屈折率をnx、面内の最大屈折率を有する方向に直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、次の<式1>の条件で、良好な反射防止特性が得られるとしている。
<式1> 0.3<(nx−nz)/(nx−ny)<0.7
<式1> 0.3<(nx−nz)/(nx−ny)<0.7
従来用いられている位相差板は、nx>ny=nzの条件を満たし、x軸方向に異方性を持つ1軸異方性材料である。1/4λの条件の厚さdは、1/4λ=(nx−ny)×dとなるように設定される。
上記の斜め方向からの外光反射防止効果の高い円偏光板の条件としてny<nzが示されるのは、斜め方向へ進む光は屈折率楕円体空間の、y−z平面での屈折率を感じるためと解釈できる。
例えば王子計測株式会社のホームページ掲載の技術資料などに次のような説明がある。
厚さdの1/4λ板に角度θだけ傾斜して入射した偏光に対して観測されるレターデーションR(θ)は、
<式2>(nx−n*)×d/cos(θ)=R(θ)
と表される。
<式2>(nx−n*)×d/cos(θ)=R(θ)
と表される。
ここで光路長:d/cos(θ)は、厚さdの光路長が、角度θだけ傾斜したので1/cos(θ)倍だけ大きくなることを示す。
角度θだけ傾斜して入射した偏光の感じる屈折率n*は、
<式3>n*=(ny×nz)/{(ny 2×sin(θ)2)2+(nz 2×cos(θ)2)2}0.5
と表される。
<式3>n*=(ny×nz)/{(ny 2×sin(θ)2)2+(nz 2×cos(θ)2)2}0.5
と表される。
例えば、斜め45度の方向を進む外光は、垂直に入射する外光に比べて1/cos(45度)≒1.4倍程大きくなる。
ここで、1/4λ板を進む距離をd*とすると、
1/4λ板位相差=(nx−n*)×d*
と表される。例えばnx=1.53、ny=1.50の屈折率を有する1/4λ板で、nz=1.52の時、上式でn*が1.51になれば、上記1/4λ板位相差の値は垂直入射時とほぼ同じになることが分かる。
1/4λ板位相差=(nx−n*)×d*
と表される。例えばnx=1.53、ny=1.50の屈折率を有する1/4λ板で、nz=1.52の時、上式でn*が1.51になれば、上記1/4λ板位相差の値は垂直入射時とほぼ同じになることが分かる。
良好な反射防止特性が得られるとしている0.3<(nx−nz)/(nx−ny)<0.7条件で、分母(nx−ny)は外光が垂直入射時の屈折率差、分子(nx−nz)はほとんど真横からの外光入射時の屈折率差を表している。この比率が0.3から0.7くらいに入れば、上記1/4λ板を進む距離d*の補正が可能であると記されている。
ところで、次のような光取り出しを向上させる提案がなされているが、同時に外光反射防止効果が充分に得られないという課題が残っている。
有機EL素子などの自発光素子からの光は、例えば素子基板と空気界面で、臨界角よりも大きな角度で入射した光は全反射される。このため実際は全発光の20%程度の光しか外部に取り出せないという問題がある。そこで素子の光取り出し面に凹凸などを設けることで、光取り出し効率を高くする提案が多数なされている。
従来の表示装置の高輝度化技術として、特許文献3、特許文献4に記載の技術がある。すなわちバックライト光源からの光が、液晶表示パネルに導かれる際に三角柱、四角錐など形状を最適化したプリズムシ−トを途中に挿入して、正面観察方向へ効率良く集光させるものである。
特許文献5には、光源が自発光タイプの有機EL表示装置に、プリズムシートを設けた構成例が開示されている。
特許文献6には、光源が自発光タイプの有機EL表示装置に円偏光板、プリズムシートを積層した構成例が開示されている。
特許文献7には、光源が自発光タイプの有機EL表示装置にプリズムシートに相当するもの、円偏光板を積層した構成例が開示されている。
ここで用いられる円偏光板は、外光に対する反射防止効果を向上させ、明所コントラストの高い表示を得る効果を期待している。
しかし光取り出し面に凹凸を付けると、外光はさらに反射電極に斜め入射するようになり、反射電極での反射時の位相ずれ、1/4λ板を通過する時の位相ずれが大きくなり、外光反射防止効果が低下する問題が残っている。
上述のように、1/4λ板の外光入射角度によって変わる位相差の補正をしても、有機EL表示装置には、反射電極が必須の構成要素である。この反射電極での外光反射時にも同様の位相ずれが起こり、斜め入射時の方が位相ずれが大きくなり、これを補償できないという問題が残る。
後に述べるように反射電極での位相ずれは、従来の1/4λ板の入射方向による位相ずれとほぼ同程度の影響がある。
また半透過型液晶表示装置は、外光の反射を利用して表示することと外光の反射による表示コントラストの低下の両立という課題解決のため、同様の検討がなされている。
外光の反射を利用するため、反射面の形状を工夫して、正反射は抑え、拡散的な反射を促進する検討が行われている。ここでは反射面での反射時の位相ずれが一定にならないため(正反射の一定の値にならないため)、これを補償できないという問題が残る。
本発明は、斜めからの外光に対する反射防止効果が向上し、明所コントラストの高い有機EL表示装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段として、本発明は、
反射電極を有する有機EL素子の光取り出し側に、1/4λ板と偏光板とを有する円偏光板を設けた有機EL表示装置において、
前記1/4λ板は、直交する面内方向屈折率をnx、ny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、nx<ny、nx<nzの関係を満足することを特徴とする。
(ここでnxは異常光線屈折率、ny、nzは常光線屈折率である。)
反射電極を有する有機EL素子の光取り出し側に、1/4λ板と偏光板とを有する円偏光板を設けた有機EL表示装置において、
前記1/4λ板は、直交する面内方向屈折率をnx、ny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、nx<ny、nx<nzの関係を満足することを特徴とする。
(ここでnxは異常光線屈折率、ny、nzは常光線屈折率である。)
本発明によれば、斜めからの外光に対する反射防止効果が向上し、明所コントラストの高い表示が得られる。
反射電極での位相ずれを補償するために、金属からなる反射電極を有する有機EL素子の光取り出し側に設けた円偏光板の1/4λ板(位相差板)を次のように最適化する。つまり、直交する面内方向屈折率をnx、ny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、nx<ny、nx<nz(ここでnxは異常光線屈折率で、ny、nzは常光線屈折率である。)の関係を満足することを特徴とする1/4λ板を有機EL素子の光取り出し側に設ける。このような材料は負の複屈折性材料と呼ばれる。
従来の1/4λ板は、nx>ny=nzの条件を満たし、x軸方向(例えば、フィルムの延伸方向)に異方性を持つ1軸異方性材料である。1/4λの条件の厚さdは、1/4λ=(nx−ny)×dとなるように設定される。
一方、本発明の1/4λ板は、nx<nyの条件を満たし、偏光板を通過する時に前記1/4λ板の作用を受け、偏光面が従来のnx>nyの条件を満たす円偏光板に対して逆向きに回転する円偏光となる。
さらに、1/4λ板を通過した光は反射電極で反射する際、回転方向が逆向きの円偏光となる。反射電極で反射する時に入射角度に応じて逆向きの位相ずれを受ける。この反射光は再び1/4λ板に入射し、同1/4λ板を通過するときにその作用を受けて直線偏光に変換されて今度は偏光板に吸収される。ここで斜め入射時の光の位相ずれは、1/4λ板がnx<nyの条件を満たすので、同1/4λ板を通過時に位相が進む。そのため、1/4λ板を通過時の位相進みと、反射電極で反射時の位相遅れとが逆方向になり、相殺されるので、従来の円偏光板に比べて、斜めからの外光反射は著しく抑制される。したがって、黒色の表示性能が向上し、コントラスト比が大きく改善される。
nx<nyの条件を満たす1/4λ板の作製法としては、従来公知の複屈折性を有するフィルムの作製法を利用できる。正又は負の固有屈折率値を有する材料からなるフィルムを延伸して配向させることが一般に行われ、液晶表示装置の色補正用途などに提供されている。
正の固有複屈折を有する材料としては、例えばポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、などが知られている。負の固有複屈折を有する材料としては、例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、マレイミドを含む共重合体などが知られている。
正の固有複屈折を有する材料は延伸方向の屈折率が大きくなる材料で、負の固有複屈折を有する材料は延伸方向の屈折率が小さくなる材料である。これらの差異は、高分子材料の分子主鎖の配向方向の分極率と、その直交方向の分極率との大小に依存することが知られている。また、フィルムの単純な一軸延伸による配向制御にとどまらず、二軸延伸や液晶性材料の自発配向などを利用し三軸の分子配向を精密に制御して所望のnx、ny、nzを設計して作製したフィルムが得られる。
偏光板を通過した偏光はS偏光成分が吸収されて、通常P偏光となる。1/4λ板を通過して、反射電極へ向かう際は円偏光(P波とS波との位相差が90度(1/4λ)の光波)に変換される。
次に、有機EL素子の反射電極での反射時の位相変化を考える。
図1のような簡単な構成で、上記の位相ずれの見積もりを行う。
21は金属からなる反射電極、22は有機EL層(屈折率をn1=1.7とする)、23は上部ITO透明電極(屈折率は2.0)、24は1/4λ板(屈折率n=1.5)、25は偏光板(屈折率n=1.5)である。
外光が角度αで有機EL素子に入射したときに、1/4λ板24には角度βで入射し、有機EL層22に角度θで入射すると、スネルの法則で、次の<式4>の関係となる。
<式4> sin(α)/1.0=sin(β)/1.5=sin(θ)/1.7
<式4> sin(α)/1.0=sin(β)/1.5=sin(θ)/1.7
この関係から、外光入射角α(空気から偏光板25へ入射する角度)、1/4λ板24を通過する角度β、有機EL層22から反射電極21へ入射する角度θの関係が求まる。
光学概論I(朝倉書店)に記載されている反射時の位相変化を表す式を参考にして以下の計算ができる。
有機EL層22(屈折率ns1=1.7)と、反射電極21をなすAlNiNd合金膜(ns2=1.11+5.47i)との界面で、外光がθの角度で入射−反射したときの位相変化を、Φp(P偏光)、Φs(S偏光)で表す。そうすると、次の<式5>、<式6>のようになる。ここで、Δ=(ns1 2−ns2 2)/2ns1 2である。
<式5>Φp=2tan−1[(ns1/ns2)2(2Δ/sin2θ−1)1/2]
<式6>Φs=2tan−1[(2Δ/sin2θ−1)1/2]
<式5>Φp=2tan−1[(ns1/ns2)2(2Δ/sin2θ−1)1/2]
<式6>Φs=2tan−1[(2Δ/sin2θ−1)1/2]
垂直入射(θ=0)の円偏光は、P波−S波の位相差が90度(1/4λ)であるが、外光の入射角度θを変化させたとき、この位相差Φs−Φpがどのように変化するかを計算した。
同様の計算を反射電極21をAg(0.055+3.32i)、Al(0.80+5.92i)、Cr(3.491+4.53i)についても行った。
同様の計算は、光学薄膜の基礎理論(オプトロニクス社)の第2章を参照しても可能である。
次に1/4λ板24を通過する角度βが変わった時の前記1/4λ板24の光路長比を示す。
ここで、従来の1/4λ板(nx>ny=nz)では、異方性軸nxの屈折率が最大で、光波は遅くなる方向なので、光路長比が大きくなるほど位相が遅れる。
これに対して、本発明の1/4λ板(nx<ny=nz)では、異方性軸nxの屈折率が最小で、光波は早くなる方向なので、光路長比が大きくなるほど位相が進む。
これらの結果を表1、表2に示す。
表1の各金属(AlNiNd、Ag、Al、Cr)での反射時の位相ずれ量、及び表2の1/4λ板を通過する時の位相ずれ量を、1/4λ(90度)単位で表す。
また、反射光は再び1/4λ板を通過して、P波−S波の位相差90度(1/4λ)が付加されて、偏光板に入射する時には、1/4λ板によって合計180度(1/2λ)の位相差が付加される。そこで1/4λ板と反射電極とで入射角度による位相ずれがなければ、円偏光が直線偏光に変換されて、偏光板に吸収されるため、外光反射は抑制される。
次に、表1、表2の結果から1/4λ板と反射電極とで位相ずれの影響を受けて再び偏光板に向かう反射外光の位相ずれを見積もる(1/4λ板と反射電極との位相ずれを足し合わせる)。
従来の1/4λ板とAlNiNd電極又はAg電極、本発明の1/4λ板とAlNiNd電極又はAg電極との組み合わせについてまとめた結果を表3に示す。
表3の結果から、従来の1/4λ板とAlNiNd電極又はAg電極との組み合わせは、位相ずれが重畳されるので、斜め入射時にどちらも大きな位相ずれを示す。つまり、従来の1/4λ板を通過時に位相が遅れるので、同1/4λ板を通過時の位相遅れと、反射電極で反射時の位相遅れとが重畳されるのである。
これに対して本発明の1/4λ板を用いると位相ずれが相殺されて小さくなることが分かる。つまり、本発明の1/4λ板を通過時に位相が進むので、同1/4λ板を通過時の位相進みと、反射電極で反射時の位相遅れとが相殺されるのである。
さらにAg電極と組み合わせたものは位相ずれが非常に小さくなり、外光反射が入射角度によらず、小さくなることが期待できる。
次のように外光入射角度を変化させた時の反射光の防止効果を算出した。
市販の光線追跡シミュレーションソフト(商品名:ASAP Breault Research Organization,INC.)を用いた。光線追跡シミュレーション条件は以下のように設定した。
(1)外光の設定
入射外光:有機EL素子の中心平面へ平行光入射(+/−2度の拡散光含む)
光線本数:2000本 モンテカルロシミュレーション
フレネル分岐数:50
入射外光:有機EL素子の中心平面へ平行光入射(+/−2度の拡散光含む)
光線本数:2000本 モンテカルロシミュレーション
フレネル分岐数:50
(2)構成系のパラメーターの設定
アノ−ド電極(各種金属電極):AlNiNd(1.107+5.471i)、Ag(0.055+3.32i)、Cr(3.491+4.53i)の3種
有機EL層:屈折率1.70 膜厚0.13μm
カソ−ド電極(ITO):屈折率2.00 膜厚0.05μm
1/4λ板:屈折率1.53 膜厚1/4λ相当
従来品:nx:1.5908 ny:1.5821 nx>ny=nz
本発明:nx:1.5691 ny:1.5705 nx<ny=nz (負のA−PLATEと呼ばれる)
偏光板:屈折率1.53 膜厚200μm
端面フレネル反射
アノ−ド電極(各種金属電極):AlNiNd(1.107+5.471i)、Ag(0.055+3.32i)、Cr(3.491+4.53i)の3種
有機EL層:屈折率1.70 膜厚0.13μm
カソ−ド電極(ITO):屈折率2.00 膜厚0.05μm
1/4λ板:屈折率1.53 膜厚1/4λ相当
従来品:nx:1.5908 ny:1.5821 nx>ny=nz
本発明:nx:1.5691 ny:1.5705 nx<ny=nz (負のA−PLATEと呼ばれる)
偏光板:屈折率1.53 膜厚200μm
端面フレネル反射
ここで、外光反射率は、入射させた全光束と、偏光板を通過して有機EL素子からの反射による上面へ向かう反射光束との比を求めることによって算出した(偏光板、1/4λ板の反射は考慮しない)。
結果を表4、表5に示す。
表4、5の結果から次のことが言える。
表1〜3の位相ずれの予想と一致して、本発明の1/4λ板(nx<ny=nz)(負のA−PLATEと呼ばれる)では、反射電極の位相ずれを補償することが可能になり、斜めから入射した外光に対しても良好な反射防止効果を予想できる。特にAg系の反射電極は従来に比べて顕著に外光反射率を下げることができる。
<実施例1>
有機EL素子は、公知の素子構成、素子材料を適宜利用することができる。特に、本発明の実施例では、有機EL素子として、光取り出しを上部電極側から行うトップエミッション素子を用いている。
有機EL素子は、公知の素子構成、素子材料を適宜利用することができる。特に、本発明の実施例では、有機EL素子として、光取り出しを上部電極側から行うトップエミッション素子を用いている。
図2は、本発明の実施例に係る有機EL素子の構造例を示す縦断面図である。
この有機EL素子は、駆動用回路などが予め設けられた基板31に対して、真空蒸着法で有機EL膜を形成したものである。
基板31には、予め50nmの厚さで100μm四方のCrからなる金属アノード電極(反射電極)32が、200μmピッチで2次元パターンで形成されている。反射電極32の反射面は、拡散的な反射を防ぐために、平坦面とされている。
アノード電極材料としては、Crの他に反射率の高いAl、Agなどを用いてもよく、さらにCr系合金、Al系合金、Ag系合金などを用いてもよい。また、正孔注入性を高めるために、ITO、IZOなどの透明導電膜を金属アノード電極32の上に積層することも可能である。
以下、有機EL素子の製造工程を説明する。有機EL素子を製造するには、先ず、有機EL材料である正孔輸送層33として、α−NPDを20nmの厚さに積層する。次に、発光層34として、Alq3を30nmの厚さに積層する。次に、電子注入層35として、炭酸セシウムとAlq3との混合膜を50nmの厚さに積層する。
透明カソード電極36として、ITO膜をスパッタ法により60nmの厚さに積層することにより、有機EL素子が製造される。
この素子構成のEL発光は正孔輸送層33と発光層34との界面で起こる。
透明保護膜37として、透明カソード電極36の表面に、スパッタ法によりSiN膜を640nmの厚さに積層する。この透明保護膜37を配置することにより、外部からの水分が有機層に浸入することを防ぐことができる。
透明保護膜37としては、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウムなどを主成分とした酸化物、窒化物、硫化物材料の膜が適している。なお、酸素、水分などの遮断効果が得られる膜厚は、300nm乃至10μm程度である。また、膜応力を小さくすること及び成膜時間を短くして生産性を高めることを考えると、透明保護膜37の膜厚は300nm乃至5μm程度であることが望ましい。
次に円偏光板を形成するために、マレイミド系共重合体の1/4λ板38を、アクリル樹脂でガラス保護板40に接着した。1/4λ板38は、マレイミド系高分子を用いたもので、nx屈折率は1.5691、ny(=nz)屈折率は1.5705である。フィルムの厚さは約100μmである。
1/4λ板38の上に直線偏光板39としてポリビニールアルコールを延伸処理して、ヨウ素染料を染色させたフィルムを延伸方向が45度の角度をなすように貼り付けた(低反射クリアタイプ直線偏光板:日東電工社製)。
有機EL素子は、水分の吸収などで劣化が起こるので、透明保護膜37まで設けた基板31の上に、直線偏光板39を上にして、ガラス保護板40を載せて周囲をアクリル樹脂で封止し、水分の素子内への浸入を防止した。
作製したサンプルを実施例1とする。
村上色彩(株)製の変角分光測定装置を用いて、実施例1の正反射率を、外光の入射角度を変えて測定した。
<比較例1>
実施例1と同様にして、1/4λ板だけを変えた比較例1を作製した。
実施例1と同様にして、1/4λ板だけを変えた比較例1を作製した。
1/4λ板は、ポリカ−ボネイトを用いたもので、前記1/4λ板のnx屈折率は1.585、ny(=nz)屈折率は1.576である。フィルムの厚さは約150μmである。
実施例1と同様に外光反射率の測定を行った。
<実施例2>
実施例1と同様にして、1/4λ板だけを変えた実施例2を作製した。
実施例1と同様にして、1/4λ板だけを変えた実施例2を作製した。
1/4λ板は、ポリスチレンを用いたもので、前記1/4λ板のnx屈折率は1.575、ny屈折率は1.583、nz屈折率は1.579である。フィルムの厚さは約160μmである。
実施例1と同様に外光反射率の測定を行った。
これらの結果を表6に示す。
表6のように実際の有機EL素子でも、本発明の円偏光板を用いることで、斜めからの外光反射を低減可能なことが分かった。また実施例2のようにny>nz>nxの2軸異方性の1/4λ板を用いれば、さらに1/4λ板の入射方向による位相ずれが補償できるので、外光反射低減の効果が大きいことが分かった。
上記<式3>により、それぞれの入射角度での金属アノード電極の位相ずれと、1/4λ板の位相ずれとが相殺する条件からn*を求める。次にnx、nyからnzの値が求められる。適正なnzの値を設定すれば斜め60度入射でもほとんど位相ずれが起こらないようにすることも可能である。
<実施例3>
背景技術の項で述べたように、光取り出しを向上させる提案がなされているが、同時に外光反射防止効果が充分に得られないという課題が残っている。
背景技術の項で述べたように、光取り出しを向上させる提案がなされているが、同時に外光反射防止効果が充分に得られないという課題が残っている。
図3のような簡単な構成で位相ずれの見積もりを行う。
41は金属からなる反射電極、42は有機EL層(屈折率をn1=1.7とする)、43は上部ITO透明電極(屈折率は2.0)、44は1/4λ板(屈折率n=1.5)である。45は有機EL素子の発光面に対して傾斜した面を持つ、柱状あるいは錐状、球面状などの単位部が、複数形成された透過性を有する光取り出しシート(屈折率n=1.5)、46は偏光板(屈折率n=1.5)である。つまり、図示例の有機EL表示装置は、有機EL素子の光取り出し側に光取り出しシート45を有し、有機EL素子の光取り出し側から、偏光板46、光取り出しシート45、1/4λ板44、有機EL素子の順に配置されている。
上記構成の有機EL表示装置の有機EL素子に外光が角度αで入射したとき、それぞれの角度は、次の関係となる。
有機EL素子の発光面に対して傾斜角度aの凹凸面を持つ光取り出しシート45に角度βで入射し、同じ角度βで1/4λ板44を通過後、有機EL層42に入射角度θで入射する。
ここで、光取り出しシート45の凹凸面が錐状のときは、頂角をbとすれば、次の<式7>の関係がある。
<式7> β≒α+180−a/2
<式7> β≒α+180−a/2
またスネルの法則から、次の<式8>の関係がある。
<式8> sin(β)/1.5=sin(θ)/1.7
<式8> sin(β)/1.5=sin(θ)/1.7
この関係から、外光入射角α(空気から偏光板46へ入射する角度)、1/4λ板44を通過する角度β、有機EL層42から反射電極41へ入射する角度θの関係が求まる。
凹凸面を持つ光取り出しシート45を頂角90度(傾斜角45度)のピラミッド(四角錐形状)として、表1、2の計算と同様に次のように計算した。
つまり、有機EL層(屈折率ns1=1.7)と反射電極をなすAlNiNd合金膜(ns2=1.11+5.47i)との界面で、外光がθの角度で入射−反射したときの位相変化は、上述したように<式5>、<式6>で表される。
垂直入射(θ=0)の円偏光は、P波−S波の位相差が90度(1/4λ)であるが、外光の入射角度θを変化させたとき、この位相差Φs−Φpがどのように変化するかを計算した。
次に1/4λ板を通過する角度βが変わった時の前記1/4λ板の光路長比を示す。
ここで、従来の1/4λ板(nx>ny=nz)では、異方性軸nxの屈折率が最大で、光波は遅くなる方向なので、光路長比が大きくなるほど位相が遅れる。
これに対して、本発明の1/4λ板(nx<ny=nz)では、異方性軸nxの屈折率が最小で、光波は早くなる方向なので、光路長比が大きくなるほど位相が進む。
これらの結果を表7に示す。
外光入射角度0〜60度に対応して、Al面に入射する角度、Al面反射時の位相ずれ量、1/4λ板を通過する時の1/4λ位相からの位相ずれ量を示す。また、従来の1/4λ板とAl電極との位相ずれ量の和、本発明の1/4λ板とAl電極との位相ずれ量の和をそれぞれ1/4λ単位で示す。
表7の結果を、表1と比べると同じ入射角θでも、Al電極へ入射する角度はより斜め方向になり、Al電極反射時、1/4λ板通過時の位相ずれが大きくなることが分かる。そして本発明の1/4λ板を組み合わせた構成では、位相ずれを相殺する効果が大きいことが分かる。
また反射光は再び1/4λ板を通過して、P波−S波の位相差90度(1/4λ)が付加されて、偏光板に入射時には、1/4λ板によって180度(1/2λ)の位相差が付加される。そこで1/4λ板と反射電極とで位相ずれがなければ、円偏光が直線偏光に変換されて、偏光板に吸収されるため、外光反射は抑制される。
上記光線追跡シミュレーションソフトを用いて、実施例1の構成と、金属アノード電極32を、Al(0.80+5.92i)に変えた以外は同じ材料、同じ膜厚構成で素子の反射率、発光の取り出し効率を計算した。
発光の取り出し効率は、有機EL層の中央部で、均等発光があると仮定し、偏光板を通過して有機EL素子から取り出された発光光束を全発光光束で割った値を発光の取り出し効率とした。
円偏光板としては次の3種類を用意した。
(1)従来の1/4λ板(nx屈折率は1.579、ny屈折率は1.575で、膜厚は1/4λ)に、偏光板の光軸を45度傾けて貼り合わせたもの。
(2)本発明の1/4λ板(nx屈折率は1.5821、ny、nz屈折率は1.5908で、膜厚は1/4λ)に、偏光板の光軸を45度傾けて貼り合わせたもの。
(3)本発明の1/4λ板(nx屈折率は1.5821、ny、nz屈折率は1.5908で、膜厚は1/4λ)と、偏光板との間に各種の凹凸面を持つ光取り出しシートを挟んで貼り合わせたもの。
ここで、(1)、(2)の円偏光板は、上記有機EL素子上の凹凸面を持つ光取り出しシート上に載せた。
また、(3)の円偏光板は、上記有機EL素子上に、1/4λ板を載せて、次に凹凸面を持つ光取り出しシートを載せて、最後に偏光板を載せた構成となる。
凹凸面を持つ光取り出しシートとしては、次の2種類を用意した。
(I)プリズムシート(頂角は70度、90度、110度、130度、140度、160度の6種類のもの。)
(II)ピラミッドシート(頂角は70度、90度、110度、130度、140度、160度の6種類のもの。)
(II)ピラミッドシート(頂角は70度、90度、110度、130度、140度、160度の6種類のもの。)
表8に、従来の円偏光板(1)を載せた有機EL素子の外光反射を計算した結果を示す。
表9に、本発明の円偏光板(2)を載せた有機EL素子の外光反射を計算した結果を示す。
表10に、本発明の円偏光板(3)を載せた有機EL素子の外光反射を計算した結果を示す。
表8、9、10の結果から、本発明の1/4λ板を組み合わせた構成では、凹凸面を持つ光取り出しシートを挿入した構成でも、全体の位相ずれを相殺し、外光反射を抑える効果が高いことが分かる。特に(3)の1/4λ板(nx<ny、nzで、膜厚は1/4λ)と、偏光板との間に各種の凹凸面を持つ光取り出しシートを挟んで貼り合わせた円偏光板は、入射角度に応じて正確に位相ずれを補償することが可能なので効果が大きい。また頂角が70度以下では外光が凹凸面での複数回反射の割合が増加する。このため位相ずれを相殺できない反射成分が増加して、反射防止効果が多少低下している。
表11に、円偏光板(3)を載せた有機EL素子の発光取り出し効率の計算結果を示す。
表11の結果から光取り出し効率については、頂角90度以上140度以下(凹凸面傾斜角では、20度から45度)程度の範囲が、光取り出し効率が光取り出しシートなしに比べて2倍程度の向上が期待される。頂角90度より小さい角度では、外光反射が大きくなる傾向があり、頂角140度より大きい角度では、光取り出し効率の大きな向上は期待できない。
取り出し効率の向上は、凹凸面傾斜角度とシート面に形成された傾斜面との割合(密度)でほぼ決まるので、三角錐、四角錐、円錐などの錐状構造がより好ましい。
11 基板
12 反射電極
13 ホール輸送層
14 発光層
15 電子輸送層
16 透明電極
17 保護膜
18 上部基板
19 円偏光板
21 反射電極
22 有機EL層
23 上部ITO透明電極
24 1/4λ板
25 偏光板
31 基板
32 アノード電極
33 正孔輸送層
34 発光層
35 電子注入層
36 カソード電極
37 透明保護膜
38 1/4λ板
39 直線偏光板
40 ガラス保護板
41 反射電極
42 有機EL層
43 上部ITO透明電極
44 1/4λ板
45 光取り出しシート
46 偏光板
12 反射電極
13 ホール輸送層
14 発光層
15 電子輸送層
16 透明電極
17 保護膜
18 上部基板
19 円偏光板
21 反射電極
22 有機EL層
23 上部ITO透明電極
24 1/4λ板
25 偏光板
31 基板
32 アノード電極
33 正孔輸送層
34 発光層
35 電子注入層
36 カソード電極
37 透明保護膜
38 1/4λ板
39 直線偏光板
40 ガラス保護板
41 反射電極
42 有機EL層
43 上部ITO透明電極
44 1/4λ板
45 光取り出しシート
46 偏光板
Claims (8)
- 反射電極を有する有機EL素子の光取り出し側に、1/4λ板と偏光板とを有する円偏光板を設けた有機EL表示装置において、
前記1/4λ板は、直交する面内方向屈折率をnx、ny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、nx<ny、nx<nzの関係を満足することを特徴とする、有機EL表示装置。
(ここでnxは異常光線屈折率、ny、nzは常光線屈折率である。) - 1/4λ板は、nx<ny=nzの関係を満足することを特徴とする、請求項1に記載の有機EL表示装置。
- 反射電極は、Ag系合金、Al系合金、Cr系合金であることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL表示装置。
- 反射電極の反射面は拡散的な反射を防ぐために、平坦面とされていることを特徴とする、請求項1又は請求項3に記載の有機EL表示装置。
- 有機EL素子の光取り出し側に光取り出しシートを有し、
前記光取り出しシートは、有機EL素子の発光面に対して傾斜した面を持つ、柱状あるいは錐状、球面状の単位部が、複数形成された透過性を有するシートであることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL表示装置。 - 有機EL素子の光取り出し側から、偏光板、1/4λ板、光取り出しシート、有機EL素子の順に配置されていることを特徴とする、請求項1又は請求項5に記載の有機EL表示装置。
- 有機EL素子の光取り出し側から、偏光板、光取り出しシート、1/4λ板、有機EL素子の順に配置されていることを特徴とする、請求項1又は請求項5に記載の有機EL表示装置。
- 単位部の頂角は90度以上140度以下であることを特徴とする、請求項1又は請求項5又は請求項6又は請求項7に記載の有機EL表示装置。
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-
2007
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