JP2009000614A - 中空糸膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明の目的は、製膜原液と内部芯液とを2重管ノズルを有する口金から吐出することを特徴とする中空糸膜の製造方法において、環境負荷の低い内部芯液を用いた中空糸膜の製造方法を提供することにある。
【解決手段】
製膜原液と糖類が含まれた内部芯液とを2重管ノズルを有する口金から吐出することを特徴とする中空糸膜の製造方法およびかかる製造方法によって製造された中空糸膜を筒状ケースに内蔵することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
【選択図】なし
本発明の目的は、製膜原液と内部芯液とを2重管ノズルを有する口金から吐出することを特徴とする中空糸膜の製造方法において、環境負荷の低い内部芯液を用いた中空糸膜の製造方法を提供することにある。
【解決手段】
製膜原液と糖類が含まれた内部芯液とを2重管ノズルを有する口金から吐出することを特徴とする中空糸膜の製造方法およびかかる製造方法によって製造された中空糸膜を筒状ケースに内蔵することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、中空糸膜の製造方法に関する。更に詳しくは、低有害性の内部芯液を用いた中空糸膜の製造法に関する。
中空糸膜を製造するためには、膜の構成物である高分子ポリマーを有機溶媒に溶解して紡糸原液を調製した後、2重管ノズルから紡糸原液と内部芯液を吐出させ、それを水性凝固浴中でゲル化させる湿式または乾湿式紡糸法が広く知られている(特許文献1)。
一般に、紡糸原液と内部芯液は、ギヤポンプによって計量され、規定量を吐出することにより、目的とする径を有する中空糸膜を得ることが出来るが、内部芯液の粘度が低い場合、ギヤポンプによる計量が変動し、その結果内径のばらつきが大きくなり、目的とする内径を有する中空糸膜を安定して製膜することが困難となる。
そのため、内部芯液の粘度を増大させるために、例えば分子量約120万程度の高分子であるポリビニルピロリドンなどを多量に内部芯液に添加することが行われている。しかしながら、このような増粘剤として、高分子であるポリビニルピロリドンを多量に添加すると、単価自体が非常に高く、製造コストが割高となるという問題があった。
そこで、特許文献2で提案されているように、内部芯液の組成として、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの水混和性有機溶剤または水を溶媒として用い、増粘剤としてポリビニルピロリドンやポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどの高分子を添加し、さらに必要に応じて、増粘補助剤として、通常グリセリンやグリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコールなど)などをあわせて添加する方法を用いることで、増粘剤である高分子の添加量を低減することができる。しかしながら、増粘補助剤として用いるグリセリンやグリコール類には有害性があることが一般に知られており、製造時の廃液や、膜中に残存した物質による環境負荷が高いことが問題であった。
特開平1−168909号公報
特開昭63−99325号公報
本発明の目的は、製膜原液と内部芯液とを2重管ノズルを有する口金から吐出する中空糸膜の製造方法において、環境負荷の低い内部芯液を用いた中空糸膜の製造方法を提供することにある。
1.外管と内管を有する2重管ノズルを有する口金を用い、製膜原液を前記外管から吐出し、糖類が含まれた内部芯液を前記内管から吐出することを特徴とする中空糸膜の製造方法。
2.前記中空糸膜がポリスルホンを含むことを特徴とする前記1に記載の中空糸膜の製造方法。
3.前記1または2に記載の中空糸膜を筒状ケースに内蔵することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
2.前記中空糸膜がポリスルホンを含むことを特徴とする前記1に記載の中空糸膜の製造方法。
3.前記1または2に記載の中空糸膜を筒状ケースに内蔵することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
本発明によれば、中空糸膜製造時、内部芯液に添加する増粘補助剤であるグリセリンやグリセロール類を用いることなく中空糸膜を製造することが出来る。これにより製造時の廃液や膜中に残存した物質が使用時に排出されることによる環境負荷を低減することが出来る。また、糖類を添加することで、増粘剤である高分子の添加量を従来よりも低下させることが出来るので、低コストである内部芯液の提供が可能であり、さらには製品コストの低下という面においても有効である。
本発明において、中空糸膜の素材としてはセルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリスルホン等多くの高分子化合物が用いられる。ポリスルホンを含む中空糸膜を例に取ると、ポリスルホン系樹脂半透膜を製造するために用いる製膜原液は、基本的にはポリスルホン系樹脂(I)、ポリビニルピロリドン(II)、溶媒(III)および添加剤(IV)からなる4成分系で構成される。ここで言うポリスルホン系樹脂(I)は、通常式(1)または(2)の繰り返し単位からなるものであるが、官能基を含んでいるものや、アルキル系のものであってもよく、特に限定するものではない。
本発明においては、ポリビニルピロリドンが用いられるが、本発明におけるポリビニルピロリドンとしては、変性ポリビニルピロリドン、共重合ポリビニルピロリドンであってもよい。
溶媒(III)は、ポリスルホン系樹脂(I)及びポリビニルピロリドン(II)を共に溶解する溶媒である。ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジオキサン等、多種の溶媒が用いられるが、特にジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンが望ましい。添加剤(IV)は、溶媒(III)と相溶性を持ち、ポリビニルピロリドン(II)の良溶媒となり、かつ、ポリスルホン系樹脂(I)の非溶媒又は膨潤剤となるものであれば何でもよく、例えば、水、メタノール、エタノール、イスプロパノール、ヘキサノール、1,4−ブタジオール等がある。生産コストを考えると水が最も望ましい。添加剤(IV)は、ポリスルホン系樹脂(I)に対する凝固性を考え合わせた上で選択すればよい。
これら製膜原液を2重管ノズルの外管から一旦空気中に吐出した後、凝固浴に浸漬する乾湿式紡糸が行われるが、それに限定されるものではない。本発明においては、製膜原液を2重管ノズルの外管から吐出し、さらに中空糸膜の中空形態を保つため、中空糸膜の中空部に内部芯液を用いて2重管ノズルの内管から製膜原液とともに吐出させる。内部芯液の組成は、内表面の構造形成に大きく関与する。通常、内部芯液としては、紡糸原液に使用された溶媒と増粘剤との混合物が用いられ、必要に応じて増粘補助剤が添加される。また、特開昭57−82515号公報に開示されている通り、内部芯液のポリマー原液に対する凝固性が高くなると、ドラフトがかかる製膜条件下では、口金吐出後に糸切れが発生することが知られているが、必要に応じて内部芯液の組成を変更し、凝固性を調整すればよい。本発明においては、増粘補助剤の成分としては有害性のない糖類を用いる。
糖の種類については、選択した溶媒に溶解可能であればよく、低分子の糖類から澱粉類などの高分子糖類に至るまで全ての糖類について使用可能であり、例えば澱粉、グルコース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトテトラオースがある。
特に、糖類が澱粉のように高分子である場合は、澱粉自体に増粘効果があるため、本特許で言及している増粘剤を使用する必要はなく、溶媒/糖類の2成分で内部芯液を構成することもまた可能である。
また、糖類は食品にも使用される通り、環境に対しても無害であるため、グリセリンやグリコール類といった化学合成物を使用した場合と比較して、廃液処理・環境に配慮した化合物といえる。
この内部芯液のポリマー原液に対する凝固性の指標として、凝固価を設定している。この凝固価とは、1重量%ポリスルホン DMAc溶液 50gに対し、内部芯液を少量ずつ添加し系内が白濁した時点の、内部芯液の添加重量を表す。この凝固価の値が小さくなると、内部芯液の凝固性が高くなることを示す。過去の経験則から、中空糸のドラフト比が1.5以上の紡糸の場合、凝固価は55以上必要であることが知られている。
このようにして製膜した中空糸は、処理液と被処理液により物質の濾過、拡散、吸着を行う中空糸膜モジュールとして好適に用いられる。中空糸膜モジュールは、中空糸膜を複数本束ねて本体ケースに挿入し、本体ケース端部に隔壁注型用キャップを取り付けた後に、隔壁用ポリマーをケース端部に注入し、隔壁を形成することで、中空糸膜束を本体ケースに固定する。隔壁が固化した後に、端部における中空糸膜が両面とも外側に向かって開口するように隔壁部材をカットし、カット後の本体ケースの両端部にヘッダーを液密に取り付け、中空糸膜モジュールとする。
[実施例1]
ジメチルアセトアミド(三菱瓦斯化学社製)、ポリスルホン樹脂(BASF社製、ウルトラゾンS6010)ポリビニルピロリドン(BASF社製、ルビテックK−90)、水を75/15/7/3の重量比率にて溶解攪拌した原液を2重管ノズルの外管から、ジメチルアセトアミド(三菱瓦斯化学社製)、ポリビニルピロリドン(BASF社製、ルビテックK−90)、およびマルトテトラオース(日本食品加工株式会社製、フジオリゴ450P)を78/5.5/16.5の重量比率で含む内部芯液を2重管ノズルの内管から、環状スリット口金を用いて、37℃で相対湿度(RH)が70乃至90%の空気中に吐出し、70mm下方の80℃の温水の凝固浴中に浸積し、更に、70乃至85℃の熱水を通過させ、外径中央値=460μm、内径中央値=300μmの中空糸膜をカセに巻き取った。この際糸切れは発生せず、巻き取った中空糸内径のばらつき(範囲R、n=20本)が20μmであり良好な結果であった。安価で環境負荷の低いマルトテトラオースを用いることにより、製造コストが低く、かつ環境によい製造方法を提供できることがわかった。
[比較例1]
内部芯液として、ジメチルアセトアミド(三菱瓦斯化学製)、ポリビニルピロリドン(BASF社製、ルビテックK−90)、およびグリセリン(阪本薬品製)を73/10/17の重量比率のものを用いた以外は、実施例と同様の方法で中空糸膜を製造した。実施例と比較してポリビニルピロリドン(k−90)の添加量が増加しているが、紡糸時に糸切れは発生せず、また巻き取った中空糸内径のばらつき(範囲R、n=20本)は22μmであり良好な結果であったが、環境負荷の高いグリセリンを使用することによる問題が残った。
[比較例2]
内部芯液として、ジメチルアセトアミド(三菱瓦斯化学製)、ポリビニルピロリドン(BASF社製、ルビテックK−90)を86/14の重量比率のものを用いた以外は、実施例と同様の方法で中空糸膜を製造した。この際糸切れはなく、また巻き取った中空糸内径のばらつき(範囲R、n=20本)は20μmであり良好な結果であったが、高価なポリビニルピロリドンを使用しなければ達成できず、製造コストが高いという問題が残った。
[比較例3]
内部芯液として、ジメチルアセトアミド(三菱瓦斯化学製)グリセリン(阪本薬品製)を77/23の重量比率のものを用いた以外は、実施例と同様の方法で中空糸膜を製造した。この際糸切れはなかったが、巻き取った中空糸内径のばらつき(範囲R、n=20本)は55μmとなり、製品として使用出来ないレベルであった。
実施例、比較例のまとめを表1に示す。
ジメチルアセトアミド(三菱瓦斯化学社製)、ポリスルホン樹脂(BASF社製、ウルトラゾンS6010)ポリビニルピロリドン(BASF社製、ルビテックK−90)、水を75/15/7/3の重量比率にて溶解攪拌した原液を2重管ノズルの外管から、ジメチルアセトアミド(三菱瓦斯化学社製)、ポリビニルピロリドン(BASF社製、ルビテックK−90)、およびマルトテトラオース(日本食品加工株式会社製、フジオリゴ450P)を78/5.5/16.5の重量比率で含む内部芯液を2重管ノズルの内管から、環状スリット口金を用いて、37℃で相対湿度(RH)が70乃至90%の空気中に吐出し、70mm下方の80℃の温水の凝固浴中に浸積し、更に、70乃至85℃の熱水を通過させ、外径中央値=460μm、内径中央値=300μmの中空糸膜をカセに巻き取った。この際糸切れは発生せず、巻き取った中空糸内径のばらつき(範囲R、n=20本)が20μmであり良好な結果であった。安価で環境負荷の低いマルトテトラオースを用いることにより、製造コストが低く、かつ環境によい製造方法を提供できることがわかった。
[比較例1]
内部芯液として、ジメチルアセトアミド(三菱瓦斯化学製)、ポリビニルピロリドン(BASF社製、ルビテックK−90)、およびグリセリン(阪本薬品製)を73/10/17の重量比率のものを用いた以外は、実施例と同様の方法で中空糸膜を製造した。実施例と比較してポリビニルピロリドン(k−90)の添加量が増加しているが、紡糸時に糸切れは発生せず、また巻き取った中空糸内径のばらつき(範囲R、n=20本)は22μmであり良好な結果であったが、環境負荷の高いグリセリンを使用することによる問題が残った。
[比較例2]
内部芯液として、ジメチルアセトアミド(三菱瓦斯化学製)、ポリビニルピロリドン(BASF社製、ルビテックK−90)を86/14の重量比率のものを用いた以外は、実施例と同様の方法で中空糸膜を製造した。この際糸切れはなく、また巻き取った中空糸内径のばらつき(範囲R、n=20本)は20μmであり良好な結果であったが、高価なポリビニルピロリドンを使用しなければ達成できず、製造コストが高いという問題が残った。
[比較例3]
内部芯液として、ジメチルアセトアミド(三菱瓦斯化学製)グリセリン(阪本薬品製)を77/23の重量比率のものを用いた以外は、実施例と同様の方法で中空糸膜を製造した。この際糸切れはなかったが、巻き取った中空糸内径のばらつき(範囲R、n=20本)は55μmとなり、製品として使用出来ないレベルであった。
実施例、比較例のまとめを表1に示す。
Claims (3)
- 外管と内管を有する2重管ノズルを有する口金を用い、製膜原液を前記外管から吐出し、糖類が含まれた内部芯液を前記内管から吐出することを特徴とする中空糸膜の製造方法。
- 前記中空糸膜がポリスルホンを含むことを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜の製造方法。
- 請求項1または2に記載の中空糸膜を筒状ケースに内蔵することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007163443A JP2009000614A (ja) | 2007-06-21 | 2007-06-21 | 中空糸膜の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2007163443A JP2009000614A (ja) | 2007-06-21 | 2007-06-21 | 中空糸膜の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2009000614A true JP2009000614A (ja) | 2009-01-08 |
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JP (1) | JP2009000614A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015013228A (ja) * | 2013-07-03 | 2015-01-22 | 東レ株式会社 | 中空糸膜およびその製造方法 |
CN112789103A (zh) * | 2018-10-30 | 2021-05-11 | 东丽株式会社 | 中空纤维膜纺丝喷嘴及中空纤维膜的制造方法 |
-
2007
- 2007-06-21 JP JP2007163443A patent/JP2009000614A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2015013228A (ja) * | 2013-07-03 | 2015-01-22 | 東レ株式会社 | 中空糸膜およびその製造方法 |
CN112789103A (zh) * | 2018-10-30 | 2021-05-11 | 东丽株式会社 | 中空纤维膜纺丝喷嘴及中空纤维膜的制造方法 |
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