JP2008543833A - 神経毒による自己免疫疾患の治療 - Google Patents

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Abstract

1種以上の自己免疫疾患の治療方法は、自己免疫疾患を有する患者に、ボツリヌス毒素などのクロストリジウム神経毒を投与するステップを含む。1つの態様では、方法は、患者の胸腺または胸腺の近くに、神経毒を投与するステップを含む。もう1つの態様では、方法は、患者に、サイトカインインヒビターの投与と併用して神経毒を投与するステップを含む。組成物も記載される。

Description

本発明は、神経毒を用いる自己免疫疾患の治療、さらに詳しくは、クロストリジウム属神経毒を用いる自己免疫疾患を治療するための方法および組成物に関する。
免疫系
免疫系は、身体から感染を除去するために一緒に働く臓器、腺、高度に特殊化した細胞および循環系が関与する身体の防御の最前線である。免疫系は、2つの大きな要素からなる。1つの要素は、液性免疫系といわれるものであり、抗体の生成に関与する。2つめの要素は、細胞性免疫といわれ、胸腺リンパ球(Tリンパ球またはT細胞)を含む構成要素である。
活性化T細胞は、ヒト患者の胸部に位置する胸腺を通過する白血球から形成される。胸腺は、輪紋状(areolar)組織によって結合した二つの葉からなる。葉は、上皮細胞およびリンパ球からなる不規則な分枝状骨格からなる小葉へと葉を分割する線維性被膜に包まれている。胸腺は、3つの主要な細胞集団を含む:(1)上皮細胞、(2)造血細胞および(3)補助細胞。
上皮細胞は、必要な微小環境およびその因子の創成に関与すると思われる。上皮細胞は、胸腺内T細胞分化および成熟の種々の段階を促進する。少なくとも6つの異なる型の上皮細胞が存在すると思われる:1型−被膜下−血管周囲細胞;2型−外側皮質に多く存在する蒼白(pale)上皮細胞;3型−細胞内細胞貫入現象という独特の特徴を有する胸腺ナース細胞;4型−髄質に特有である暗細胞;5型−髄質に特有である未分化細胞;6型−ハッサル小体の周囲および内部に見出される大髄質細胞。
造血細胞は、3つの異なる型のリンパ系細胞を含む:(1)被膜下細胞;(2)皮質細胞;および(3)髄質細胞。
胸腺の補助細胞として、***促進性であり胸腺細胞の機能的成熟を誘発する胸腺細胞分化因子を分泌するマクロファージ;免疫学的攻撃中にどのT細胞前駆体が活性化されるか(ヘルパーまたはキラー)の決定において役割を有する指状嵌入細胞;およびアセチルコリン受容体を発現し、重症筋無力症に関与する可能性があると思われ、胸腺からの胸腺細胞の排出において役割を有することができる筋様細胞が挙げられる。
胸腺の細胞は、アセチルコリン受容体を発現すると思われる。たとえば、コリン受容体は、胸腺の上皮細胞上に結合が見出されている。胸腺は、胸腺ホルモンおよび免疫系全般に影響を及ぼしうる視床下部からの神経細胞の神経支配を受けるとも思われる。
リンパ球は、赤色骨髄中の血球母細胞(幹細胞)を起源とする。リンパ球は、上皮細胞によって産生される走化性因子によって胸腺に引き寄せられると思われる。胸腺に入るリンパ球は、成熟し、活性化Tリンパ球または活性化T細胞に発達する。活性化T細胞は、身体の他の場所で遭遇する抗原に応答することができる。T細胞は、2つのグループに分けることができる:(1)血液中に入り、その一部は、循環中に残り、一部は他のリンパ系組織にとどまるグループ;および(2)胸腺中に残り、次世代のT細胞の源であるグループ。
T細胞は、3つの防御機能を行うと考えられる:(1)他のリンパ球による抗体の産生および増殖を刺激する;(2)侵入しているウイルスおよび微生物を包囲し、飲み込む食細胞の増殖および作用を刺激する;および(3)異種および異常組織を認識し、破壊する。したがって、胸腺は、疾患の侵入に対する身体の応答において非常に重要な役割を演じる。胸腺およびT細胞の機能は、免疫応答の生成および調節において、それらの機能における不全または平衡失調が免疫系の機能不全を引き起こすような、中枢的で重要な役割を演じる。
自己免疫疾患は、身体の自身の細胞または組織に対する免疫応答によって引き起こされる疾患である。自己免疫疾患は、1つ以上のタイプの身体組織の破壊、臓器の異常成長または臓器の機能の変化をもたらす。障害は、1つの臓器または組織タイプのみに影響を及ぼすか、または複数の臓器および組織タイプに影響を及ぼす。さらに、ヒトは、同時に1種以上の自己免疫疾患を経験しうる。自己免疫疾患によって通例影響を受ける臓器および組織として、赤血球などの血液成分、血管、結合組織、甲状腺または膵臓などの内分泌腺、筋肉、関節および皮膚が挙げられる。
自己免疫疾患は、2つの一般的タイプに分類することができる:(1)全身性自己免疫疾患(すなわち、多くの臓器または組織を損傷する障害);および(2)限局性自己免疫疾患(すなわち、ただ1つの臓器または組織を損傷する障害)。しかし、限局性自己免疫疾患の影響は、他の身体臓器およびシステムに間接的に影響を及ぼすことによって全身性になりうる。
全身性自己免疫疾患として、関節ならびに場合により肺および皮膚に影響を及ぼしうる関節リウマチ;皮膚、関節、腎臓、心臓、脳、赤血球ならびにその他の組織および臓器に影響を及ぼしうる身性紅斑性狼瘡(SLE)などの狼瘡;皮膚、腸および肺に影響を及ぼしうる強皮症;唾液腺、涙腺および関節に影響を及ぼしうるシェーグレン症候群;肺および腎臓に影響を及ぼしうるグッドパスチャー症候群;洞、肺および腎臓に影響を及ぼしうるウェゲナー肉芽腫症;大筋群に影響を及ぼしうるリウマチ性多発筋痛症;および頭部および頸部に影響を及ぼしうる側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
限局性自己免疫疾患として、膵島に影響を及ぼす1型糖尿病;甲状腺に影響を及ぼす橋本甲状腺炎およびグレーブス病;胃腸管に影響を及ぼすセリアック病、クローン病および潰瘍性大腸炎;中枢神経系に影響を及ぼす多発性硬化症(MS)およびギラン・バレー症候群;副腎に影響を及ぼすアジソン病;肝臓に影響を及ぼす原発性硬化性胆管炎、硬化性胆管炎および自己免疫性肝炎;および指、つま先、鼻、耳に影響を及ぼしうるレイノー現象が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
次に示すものは、自己免疫疾患のさらなる例である:悪性貧血;アジソン病;皮膚筋炎;重症筋無力症(MG);ライター症候群;尋常性天疱瘡;強皮症またはクレスト症候群;自己免疫性溶血性貧血;自己免疫性血小板減少性紫斑病;強直性脊椎炎;血管炎;および筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリック病)。
自己免疫疾患の症状は、疾患のタイプに応じて広範に変化しうる。通例観察される症状として、疲労、目眩、倦怠感および発熱が挙げられる。1種以上の自己免疫疾患において観察される他の症状として、悪寒、体重減少、皮膚発疹、血管炎 、多発性関節痛、斑点状の脱毛、口および鼻のヒリヒリ感、リンパ節腫脹、胃の問題、関節炎の場合の関節などに位置しうる全身性の痛み、グレーブス病の場合の甲状腺などの腫脹した腺、心臓の動悸、皮膚の水疱および病変、筋力低下が挙げられる。
自己免疫疾患の治療は、疾患に特異的であり、通常、根本にある原因よりもむしろ症状の緩和または予防に焦点をあてる。
特定の自己免疫疾患において用いられる1つの治療は、神経伝達物質アセチルコリンの加水分解を減少させることによって、シナプス間隙において利用可能なアセチルコリンの量を増加させ、中枢および末梢神経系を通じてコリン作動性受容体の刺激を増加させることによる症状軽減を提供するコリンエステラーゼインヒビターの投与である。
もう1つの自己免疫疾患の治療は、炎症をコントロールまたは低減化するための副腎皮質ステロイドなどのステロイドの使用を含む。副腎皮質ステロイドは、通常、抗コリンエステラーゼ療法に応答しないか、または耐性がある患者に充てられる。
第3のアプローチは、免疫応答の増殖性性質をコントロールまたは低減化するためのアザチオプリンなどの免疫抑制剤の投与である。これらの薬物は、細胞の複製を阻害することによって機能し、したがって、貧血などの副作用を導く非免疫細胞も抑制する。
第4のアプローチは、胸腺の外科切除(すなわち、胸腺摘出術)を含む。
自己免疫疾患のもう1つの治療は、サイトカインインヒビターの投与を含む。
ヒトサイトカイン過剰発現および/または過小発現は、炎症性腸疾患、関節炎および全身性エリテマトーデスなどの疾患をもたらしうる(Mackayら、N. Engl J Med、345(5):340−350、2001)。関節炎は、炎症および関節損傷を引き起こす細胞媒介性免疫応答をもたらす、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)の過剰発現および/またはインターロイキン−1(IL−1)受容体アンタゴニストの過小発現による、よくある慢性の炎症および破壊性関節障害である(Mackayら、前述;Choyら、N. Engl. J. Med、344(12):907−916、2001)。
サイトカインインヒビターとして、可溶性ヒトサイトカイン受容体タンパク質(たとえば、エタネルセプト)、モノクローナル抗体(たとえば、リツキシマブ、インフリキシマブ、D2E7およびネレリモマブ)およびサイトカイン受容体ブロッカー(たとえば、インターロイキン1受容体アンタゴニスト)が挙げられる。このようなインヒビターが、関節炎(Choyら、前述)、喘息(ゾレア(Xolair)の添付文書、Genentech、2003)および1型糖尿病(Heroldら、N. Engl. J. Med.、346(22):1692−1698、2002)の治療に有効であることが報告されている。サイトカインインヒビター、特にモノクローナル抗体は、細胞(たとえば、ガン細胞)の表面で成長する特異的抗原を標的とするので、独特である。放射免疫療法は、抗体に結合する放射性物質で構成される。この組み合わせは、特定の疾患のための標的化デリバリー(モノクローナル抗体)および治療(放射性物質)を提供する。
ボツリヌス毒素
クロストリジウム属は、120種以上存在し、その形態および機能によって分類される。嫌気性グラム陽性菌であるボツリヌス菌は、ボツリヌス中毒と呼ばれるヒトおよび動物における神経麻痺の病気を引き起こす強力なポリペプチド神経毒であるボツリヌス毒素を産生する。ボツリヌス菌の胞子は、土壌中に見出され、自営缶工場の不適切に滅菌され、密封された食品容器中で成長することができ、多くのボツリヌス中毒の症例の原因である。ボツリヌス中毒の影響は、典型的には、ボツリヌス菌培養物または胞子に汚染された食品を食べた後18〜36時間後に現れる。ボツリヌス毒素は、弱毒化されずに腸の内張りを通過し、末梢運動ニューロンを攻撃することができるようである。ボツリヌス毒素中毒の症状は、歩行、嚥下および会話困難から呼吸筋の麻痺および死へと進行しうる。
A型ボツリヌス毒素が、世に知られている最も致死率の高い天然の生物剤である。50ピコグラムの市販のA型ボツリヌス毒素(精製神経毒複合体)(100ユニットバイアルの商品名ボトックス(登録商標)としてAllergan、Inc.、アーヴィン、カリフォルニアから入手可能)の約50ピコグラムが、マウスにおけるLD50(すなわち1ユニット)である。1ユニットのボトックスは、約50ピコグラム(約56アトモル)のA型ボツリヌス毒素複合体を含む。興味深いことには、モルベースで、A型ボツリヌス毒素は、ジフテリアと比べて約18億倍高い致死率、シアン化ナトリウムと比べて約6億倍高い致死率、コブラ毒と比べて約3000万倍高い致死率およびコレラと比べて約1200万倍高い致死率である。Singhの「Critical Aspects of Bacterial Protein Toxins」、p63−84 (チャプター4)、Natural Toxins II、B.R. Singhら編、Plenum Press、ニューヨーク(1976)(ここで述べられた1 Uに等しい0.3 ngというA型ボツリヌス毒素のLD50は、約0.05 ngのボトックス(登録商標)が1ユニットに等しいという事実に対して補正される)。1ユニット(U)のボツリヌス毒素は、体重18〜20グラムの雌性スイス・ウェブスターマウスへの腹腔内注射でのLD50として定義される。
7つの一般に免疫学的に別個のボツリヌス神経毒が特性決定されており、これらはそれぞれボツリヌス毒素血清型A、B、C1、D、E、FおよびGであり、それぞれ型特異的抗体による中和によって区別される。異なる血清型のボツリヌス毒素は、それらが影響を及ぼす動物の種の間で様々であり、それらが惹起する麻痺の重篤度および持続期間において様々である。たとえば、A型ボツリヌス毒素は、ラットにおいて引き起こされる麻痺の割合によって測定されるように、B型ボツリヌス毒素と比べて500倍強力であることが決定されている。さらに、B型ボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素に対する霊長類のLD50の約12倍である480 U/kgの用量で霊長類において非毒性であることが決定されている。Moyer Eら、“Botulinum Toxin Type B:Experimental and Clinical Experience”、チャプター6、p71−85、「Therapy With Botulinum Toxin」、Jankovic、J.ら編(1994)、Marcel Dekker, Inc.。ボツリヌス毒素は、コリン作動性運動ニューロンに高い親和性で結合し、ニューロン内へ移動し、アセチルコリンの放出をブロックするようである。さらなる取り込みは、低親和性受容体を通って、ならびに食作用および飲作用によって起こる。
血清型にかかわらず、毒素中毒の分子的メカニズムは、類似しており、少なくとも3つのステップまたは時期が関与すると考えられる。過程の最初のステップにおいて、毒素は、重鎖であるH鎖と細胞表面受容体の間の特異的相互作用を通って標的ニューロンのシナプス前膜に結合する;受容体は、ボツリヌス毒素の各型および破傷風毒素に対して異なっていると考えられる。H鎖のカルボキシル末端セグメントであるHCは、毒素の細胞表面への標的化にとって重要であると考えられる。
第2のステップにおいて、毒素は、毒素に冒された細胞の細胞膜を横切る。毒素は、最初、受容体媒介性エンドサイトーシスを介して細胞に取り込まれ、毒素を含むエンドソームが形成される。次いで、毒素がエンドソームからに入る。このステップは、約5.5またはそれ以下のpHに応答して毒素のコンホメーション変化の引き金を引くH鎖のアミノ末端セグメントであるHNによって媒介されると考えられる。エンドソームは、エンドソーム内のpHを下げるプロトンポンプを有することがわかっている。コンホメーション変化によって、疎水性残基が毒にさらされることから、毒素がそれ自身をエンドソーム膜に固定するのが可能になる。次いで、毒素(または最小でも軽鎖において)は、エンドソーム膜を通って原形質内へ移動する。
ボツリヌス毒素作用のメカニズムの最後のステップは、重鎖(H鎖)と軽鎖(L鎖)を連結しているジスルフィド結合の減少が関与すると思われる。ボツリヌス毒素と破傷風毒素の全毒性作用は、ホロトキシンのL鎖に含まれる;このL鎖は、神経伝達物質含有小胞の認識および細胞膜の細胞質表面とのドッキングならびに小胞と細胞膜の融合に必須のタンパク質を選択的に切断する亜鉛(Zn++)エンドペプチダーゼである。破傷風神経毒、B、D、FおよびG型ボツリヌス毒素は、シナプトブレビン(小胞結合膜タンパク質(VAMP)とも呼ばれる)、シナプトソーム膜タンパク質の分解を引き起こす。シナプス小胞の細胞質表面に存在する大部分のVAMPは、これらの切断イベントのいずれか1つの結果として除去される。ボツリヌス毒素血清型C1は、初めは、シンタキシンを切断すると考えられていたが、シンタキシンとSNAP−25を切断することが見出された。同じ結合を切断するB型ボツリヌス毒素(および破傷風毒素)を除いて、ボツリヌス毒素のそれぞれは、異なる結合を特異的に切断する。これらの切断のそれぞれは、小胞−膜ドッキングの過程をブロックし、そのことによって小胞内容物のエキソサイトーシスを妨げる。
ボツリヌス毒素は、活動亢進性骨格筋(すなわち、運動障害)を特徴とする神経筋障害の治療のための臨床設定において用いられている。1989年に、A型ボツリヌス毒素複合体が、眼瞼痙攣、斜視および片側顔面痙攣の治療のために、アメリカ合衆国食品医薬品局によって承認された。続いて、A型ボツリヌス毒素は、頸部ジストニアの治療およびの眉間のしわの治療のためにも、FDAによって承認され、B型ボツリヌス毒素が、頸部ジストニアの治療のために承認された。非A型ボツリヌス毒素血清型は、A型ボツリヌス毒素と比べて、作用が弱く、および/または作用持続時間が短いようである。末梢筋肉内A型ボツリヌス毒素の臨床的影響は、通常、注射から1週間以内に見られる。治療作用の有意に長い期間が報告されているが、A型ボツリヌス毒素の単回筋肉内注射からの症状軽減の典型的持続期間は、平均して約3ヶ月である。
すべてのボツリヌス毒素血清型が、神経筋接合部において神経伝達物質アセチルコリンの放出を阻害するようであるが、それらは異なる神経分泌タンパク質に影響を及ぼすこと、および/またはこれらのタンパク質を異なる部位で切断することによって、そのようにする。たとえば、AおよびE型ボツリヌス菌の療法が、25キロダルトン(kD)のシナプトソーム結合タンパク質(SNAP−25)を切断するが、それらは、タンパク質内の異なるアミノ酸配列を標的とする。B、D、FおよびG型ボツリヌス毒素は、小胞結合タンパク質(VAMP、シナプトブレビンともいう)上で作用し、各血清型は、異なる部位でタンパク質を切断する。最後に、ボツリヌス毒素C1型は、シンタキシンとSNAP−25の両方を切断することが明らかにされている。作用のメカニズムにおけるこれらの差異は、種々のボツリヌス毒素血清型の相対強度および/または作用の持続時間に影響を及ぼす。ボツリヌス毒素の基質が、種々の異なるT細胞型において見出され得るようである。たとえば、Biochem J 1;339 (pt 1):159−65:1999およびMov Disord、10(3):376:1995 (膵島B細胞は、少なくともSNAP−25およびシナプトブレビンを含む)を参照。
ボツリヌス毒素タンパク質分子の分子量は、既知のボツリヌス毒素血清型7種全てについて、約150 kDである。興味深いことに、ボツリヌス毒素は、150 kDのボツリヌス毒素タンパク質分子ならびに関連する非毒性タンパク質を含む複合体としてクロストリジウム菌によって放出される。したがって、A型ボツリヌス毒素複合体は、900 kD、500 kDおよび300 kD体としてクロストリジウム菌によって産生されうる。BおよびC1型ボツリヌス毒素は、700 kDまたは500 kD複合体としてのみ産生されるようである。D型ボツリヌス毒素は、300 kDおよび500 kD複合体の両方として産生される。最後に、EおよびF型ボツリヌス毒素は、約300 kD複合体としてのみ産生される。複合体(すなわち、約150 kD以上の分子量)は、非毒性ヘマグルチニンタンパク質および非毒性非ヘマグルチニンタンパク質を含むと考えられる。これらの2つの非毒性タンパク質(ボツリヌス毒素分子に加えて、関連する神経毒複合体を含むは、を含む)は、ボツリヌス毒素分子への変性に対する安定性および毒素が摂取される場合に消化性酸に対する保護を提供するように作用する。さらに、より大きい(約150 kD以上の分子量)ボツリヌス毒素複合体では、ボツリヌス毒素複合体の筋肉内注射の部位からのボツリヌス毒素の拡散速度をより遅くすることが可能である。
インビトロ実験は、ボツリヌス毒素が、脳幹組織の初代細胞培養物からのアセチルコリンとノルエピネフリンの両方のカリウムカチオン誘発放出を阻害することを示している。さらに、ボツリヌス毒素が、脊髄ニューロンの初代培養物中のグリシンとグルタミン酸塩の両方の誘発放出を阻害すること、および脳シナプトソーム調製物において、ボツリヌス毒素が、神経伝達物質アセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン(Habermann E.ら、Tetanus Toxin and Botulinum A and C Neurotoxins Inhibit Noradrenaline Release From Cultured Mouse Brain、J Neurochem 51(2);522−527:1988)、CGRP、サブスタンスPおよびグルタミン酸塩(Sanchez−Prieto、Jら、Botulinum Toxin A Blocks Glutamate Exocytosis From Guinea Pig Cerebral Cortical Synaptosomes、Eur J. Biochem 165;675−681:1897)のそれぞれの放出を阻害することが報告されている。したがって、適切な濃度を用いる場合、大部分の神経伝達物質の刺激誘発放出は、ボツリヌス毒素によってブロックされる。たとえば、Pearce、L.B.、Pharmacologic Characterization of Botulinum Toxin For Basic Science and Medicine、Toxicon 35(9);1373−1412 、1393; Bigalke H.ら、Botulinum A Neurotoxin Inhibits Non−Cholinergic Synaptic Transmission in Mouse Spinal Cord Neurons in Culture、Brain Research 360;318−324:1985;Habermann E.、Inhibition by Tetanus and Botulinum A Toxin of the release of [3H]Noradrenaline and [3H]GABA From Rat Brain Homogenate、Experientia 44;224−226:1988、Bigalke H.ら、Tetanus Toxin and Botulinum A Toxin Inhibit Release and Uptake of Various Transmitters、as Studied with Particulate Preparations From Rat Brain and Spinal Cord、Naunyn−Schmiedeberg's Arch Pharmacol 316;244−251:1981および;Jankovic J.ら、Therapy With Botulinum Toxin、Marcel Dekker、Inc.、(1994)、p5を参照。
A型ボツリヌス毒素は、公知の手順にしたがって、培養槽中でボツリヌス菌の培養物を樹立し、増殖させ、次いで、培養混合物を収集し、精製することによって得ることができる。全てのボツリヌス毒素血清型は、最初は、神経活性になるためにプロテアーゼによって切断または刻み目を入れなければならない不活性単鎖タンパク質として合成される。ボツリヌス毒素血清型AおよびGを作成する細菌株は、内因性プロテアーゼを有し、したがって、血清型AおよびGは、大部分はそれらの活性体で細菌培養物から回収することができる。対照的に、ボツリヌス毒素血清型C1、DおよびEは、タンパク非分解性菌株によって合成され、したがって、培養物から回収される場合、典型的には、活性化されていない。血清型BおよびFは、タンパク分解性およびタンパク非分解性菌株によって産生され、したがって、活性または不活性体のいずれかで回収することができる。しかし、たとえば、B型ボツリヌス毒素血清型を産生するタンパク分解性菌株でさえも、産生された毒素の一部を切断するのみである。刻み目を入れた分子の刻み目を入れていない分子に対する正確な比率は、インキュベーションの長さおよび培養の温度に応じて変わる。したがって、たとえば、B型ボツリヌス毒素のいずれかの製剤の一定のパーセンテージは、不活性である可能性があり、A型ボツリヌス毒素と比べて、B型ボツリヌス毒素の既知の有意に低い強度の原因であると思われる。その臨床的効力に寄与することなく抗原性の増加につながっていた、臨床製剤における不活性ボツリヌス毒素分子の存在は、製剤の全タンパク質負荷に寄与するであろう。さらに、B型ボツリヌス毒素が、筋肉内注射に際し、同じ用量レベルにおいて、A型ボツリヌス毒素よりも作用の持続期間がより短く、効力も低いことが知られている。
高品質の結晶性A型ボツリヌス毒素は、≧3 X 107 U/mg、0.60未満のA260/A278およびゲル電気泳動におけるバンド形成の独特のパターンという特徴をもつボツリヌス菌のホール(Hall)A株から産生されうる。Shantz、E.J.ら、Properties and use of Botulinum toxin and Other Microbial Neurotoxins in Medicine、Microbiol Rev. 56;80−99:1992に記載の公知のShantzの工程を用いて、結晶性A型ボツリヌス毒素を得ることができる。一般に、A型ボツリヌス毒素複合体は、適当な培地中でA型ボツリヌス菌を培養することによる嫌気的発酵から単離し、精製することができる。公知の工程を用いて、非毒性タンパク質からの分離により、たとえば、分子量約150 kDで、特異的効力1−2 X 108 LD50 U/mg以上の精製A型ボツリヌス毒素;分子量約156 kDで、特異的効力1−2 X 108 LD50 U/mg以上の精製B型ボツリヌス毒素;分子量約155 kDで、特異的効力1−2 X 107 LD50 U/mg以上の精製F型ボツリヌス毒素;などの精製ボツリヌス毒素を得ることもできる。
ボツリヌス毒素および/またはボツリヌス毒素複合体は、List Biological Laboratories、Inc.、キャンベル、カリフォルニア;the Centre for Applied Microbiology and Research、ポートンダウン、イギリス;和光純薬(大阪、日本)、Metabiologics (マジソン、ウィスコンシン)ならびにSigma Chemicals 、セントルイス、ミズーリから入手することができる。精製ボツリヌス毒素を用いて、医薬組成物を調製することができる。
一般に酵素と同様に、ボツリヌス毒素の生物活性(細胞内ペプチダーゼである)は、少なくとも一部は、それらの三次元コンホメーションに応じて変わる。したがって、A型ボツリヌス毒素は、加熱、種々の化学的表面伸長および表面乾燥によって無毒化される。さらに、公知の培養、発酵および精製によって得られる毒素複合体を医薬組成物製剤に用いられる著しく低い毒素濃度へ希釈することは、適当な安定化剤が存在しない限り、毒素の急速な無毒化をもたらすことが知られている。このような大幅な希釈による特異的毒性の急速な喪失のせいで、ミリグラム量からミリリットル当たりナノグラムを含む溶液への毒素の希釈から、著しい困難が提示される。毒素は、毒素含有医薬組成物が製剤されてから数ヶ月または数年後に使用される場合があるので、アルブミンおよびゼラチンなどの安定化剤を用いて毒素を安定化させることができる。
市販のボツリヌス毒素含有医薬組成物は、ボトックス(登録商標)(Allergan、Inc.、アーヴィン、カリフォルニアから入手可能)として販売されている。ボトックス(登録商標)は、滅菌真空乾燥体でパッケージ化された精製A型ボツリヌス毒素、アルブミンおよび塩化ナトリウムで構成される。A型ボツリヌス毒素は、N−Zアミンおよび酵母抽出物を含む培地中で増殖させたボツリヌス菌のホール株の培養物から作成される。A型ボツリヌス毒素複合体は、一連の酸沈澱によって培養溶液から精製され、活性高分子量毒素タンパク質および結合ヘマグルチニンタンパク質からなる結晶性複合体になる。結晶性複合体を、食塩水およびアルブミンを含む溶液に再溶解し、滅菌濾過(0.2 ミクロン)した後に真空乾燥する。真空乾燥した生成物を冷凍庫または−5℃以下で貯蔵する。筋肉注射の前に、滅菌非保存食塩水にボトックス(登録商標)を元に戻すことができる。ボトックス(登録商標)の各バイアルは、防腐剤を含まず、滅菌真空乾燥体で、約100ユニット(U)のA型ボツリヌス毒素精製神経毒複合体、0.5 mgのヒト血清アルブミンおよび0.9 mgの塩化ナトリウムを含む。
真空乾燥ボトックス(登録商標)を元に戻すために、防腐剤を含まない滅菌生理食塩水(0.9% 塩化ナトリウム注射液)を用いて、適当なサイズの注射器内に適切な量の希釈液を作成する。通気または同様の激しい撹拌によってボトックス(登録商標)が変性するかもしれないので、希釈液をバイアルに静かに注入する。滅菌性という理由から、ボトックス(登録商標)は、冷凍庫から出して、元に戻してから4時間以内に投与されるのが好ましい。この4時間の間に、元に戻したボトックス(登録商標)を約2℃〜約8℃にて冷蔵庫で保管することができる。元に戻し、冷蔵したボトックス(登録商標)が、少なくとも約2週間効力を保持することが報告されている。Neurology、48:249−53:1997。
A型ボツリヌス毒素が、以下の臨床設定において用いられることが報告されている:
(1)頸部ジストニアを治療するために、筋肉内注射(複数の筋肉)当たり約75−125ユニットのボトックス(登録商標);
(2)眉間のしわ(額のしわ)を治療するために、筋肉内注射当たり5−10ユニットのボトックス(登録商標)(鼻根筋に5ユニットを筋肉内注射し、皺眉筋に各10ユニットを筋肉内注射する);
(3)恥骨直腸筋の括約筋内注射によって便秘を治療するために、約30−80ユニットのボトックス(登録商標);
(4)上眼瞼の外側瞼板前部眼輪筋および下眼瞼の外側瞼板前部眼輪筋に注射することによって眼瞼痙攣を治療するために、筋肉当たり約1−5ユニットの筋肉内注射されたボトックス(登録商標);
(5)斜視を治療するために、約1−5ユニットのボトックス(登録商標)を外眼筋に筋肉内注射する;注射量は、注射される筋肉のサイズおよび所望の麻痺範囲の両方(すなわち、所望のジオプター矯正の量)に基づいて変化する;
(6)5つの異なる上肢屈筋へのボトックス(登録商標)の筋肉内注射によって卒中に続く上肢痙攣を治療するために、次の量;
(a)深指屈筋:7.5 U〜30 U
(b)浅指屈筋:7.5 U〜30 U
(c)尺側手根屈筋:10 U〜40 U
(d)橈側手根屈筋:15 U〜60 U
(e)上腕二頭筋:50 U〜200 U。
各治療セッションにおいて患者が筋肉内注射により90 U〜360 Uの上肢屈筋ボトックス(登録商標)を受けるように、5つの示した筋肉のそれぞれが、同じ治療セッションにおいて注射を受けている;
(7)片頭痛を治療するために、頭蓋骨膜注射された(眉間、前頭および側頭筋へ対称的に注射された)25 Uのボトックス(登録商標)の注射が、片頭痛頻度、最大重篤度、関連嘔吐および25 U注射後の3か月以上の急性投薬用途の減少によって測定される、ビヒクルと比べての片頭痛の予防的治療として有意な利点を明らかにされている。
近年の研究は、ボツリヌス神経毒が、インスリン分泌を阻害することができ、したがって、インスリンエキソサイトーシスのコントロールおよび代謝コントロールにおいて役割を有することを実証している(Huangら、Mol. Endocrinol. 12(7):1060−70、1998)。
多汗症の治療などの腺を治療するために用いる場合、A型ボツリヌス毒素が、12ヶ月間まで(European J. Neurology 6 (Supp 4):S111−S1150:1999)、そして一部の状況においては、27ヶ月間の効力を有しうることが知られている。たとえば、Bushara K.、Botulinum toxin and rhinorrhea、Otolaryngol Head Neck Surg 1996;114(3):507およびThe Laryngoscope 109:1344−1346:1999を参照のこと。しかし、ボトックス(登録商標)の筋肉内注射の通常の持続期間は、典型的には、約3〜4ヶ月間である。
種々の臨床症状を治療するためのA型ボツリヌス毒素の成功が、他のボツリヌス毒素血清型への関心をもたらしている。2つの市販のヒト用A型ボツリヌス毒素製剤は、カリフォルニア、アーヴィンのAllergan、Inc.から入手可能なボトックス(登録商標)とイギリス、ポートンダウンのBeaufour Ipsenから入手可能なディスポート(登録商標)である。B型ボツリヌス毒素製剤(ミオブロック(登録商標))は、カリフォルニア、サンフランシスコのElan Pharmaceuticalsから入手可能である。
末梢部位における薬理作用を有することに加えて、ボツリヌス毒素は、中枢神経系における阻害作用を有することもできる。Work by Weigandら、Nauny−Schmiedeberg's Arch. Pharmacol. 1976;292、161−165、およびHabermann、Nauny−Schmiedeberg's Arch. Pharmacol. 1974;281、47−56による研究は、ボツリヌス毒素が逆行性輸送によって脊髄領域に上行することができることを明らかにした。このように、たとえば、筋肉内注射で末梢部位に注射されたボツリヌス毒素は、脊髄に逆行性輸送されうる。
米国特許5,989,545号は、特定の標的化部分に化学的に複合または組換え的に融合した修飾クロストリジウム属神経毒またはそのフラグメント、好ましくはボツリヌス毒素を用いて、脊髄への作用剤の投与によって痛みを治療することができることを開示する。
ボツリヌス毒素は、耳の中耳炎(米国特許5,766,605)、内耳障害(米国特許6,265、379;6,358,926)、緊張型頭痛(米国特許6,458,365)、片頭痛(米国特許5,714,468)、術後疼痛および内臓痛(米国特許6,464,986)、育毛および毛髪保持(米国特許6,299,893)、乾癬および皮膚炎(米国特許5,670,484)、損傷した筋肉(米国特許6,423,319)、種々のガン(米国特許6,139,845)、平滑筋障害(米国特許5,437,291)および神経性炎症(米国特許6,063,768)の治療に提案されるか、または使用されている。徐放性毒素インプラントが公知であり(たとえば、米国特許6,306,423および6,312,708を参照のこと)、経皮ボツリヌス毒素投与も同様である(米国特許出願番号10/194805)。
また、ボツリヌス毒素は、ラットホルマリンモデルにおいて、誘発された炎症性疼痛を軽減する効果を有する。Aoki K.ら、Mechanisms of the antinociceptive effect of subcutaneous Botox:Inhibition of peripheral and central nociceptive processing、Cephalalgia 2003 Sep;23(7):649。さらに、ボツリヌス毒素神経遮断が、上皮厚さの減少を引き起こしうることが報告されている。Li Yら、Sensory and motor denervation influences epidermal thickness in rat foot glabrous skin、Exp Neurol 1997;147:452−462 (p459参照)。最後に、足底多汗症(Katsambas A.ら、Cutaneous diseases of the foot:Unapproved treatments、Clin Dermatol 2002 Nov−Dec;20(6):689−699;Sevim、S.ら、Botulinum toxin−A therapy for palmar and plantar hyperhidrosis、Acta Neurol Belg 2002 Dec;102(4):167−70)、痙攣性つま先(Suputtitada、A.、Local botulinum toxin type A injections in the treatment of spastic toes、Am J Phys Med Rehabil 2002 Oct;81(10):770−5)、突発性つま先歩行(Tacks、L.ら、Idiopathic toe walking:Treatment with botulinum toxin A injection、Dev Med Child Neurol 2002;44(Suppl 91):6)および足のジストニア(Rogers J.ら、Injections of botulinum toxin A in foot dystonia、Neurology 1993 Apr;43(4 Suppl 2))を治療するために足にボツリヌス毒素を投与することが知られている。
破傷風毒素ならびに誘導体(すなわち、天然でない標的化部分を有するもの)、そのフラグメント、ハイブリッドおよびキメラもまた、治療的有用性を有することができる。破傷風毒素は、ボツリヌス毒素に対する多くの類似性をもつ。したがって、破傷風毒素とボツリヌス毒素の両方は、クロストリジウムの近縁種(それぞれ破傷風菌およびボツリヌス菌)によって産生されるポリペプチドである。また、破傷風毒素とボツリヌス毒素の両方は、1つのジスルフィド結合によって重鎖(分子量約100 kD)に共有結合した軽鎖(分子量約50 kD)からなる二鎖タンパク質である。したがって、破傷風毒素および7つのボツリヌス毒素(非複合体)のそれぞれの分子量は、約150 kDである。破傷風毒素とボツリヌス毒素の両方について、軽鎖は細胞内生物(プロテアーゼ)活性を提示するドメインをもつが、一方、重鎖は受容体結合(免疫原性)および細胞膜転移ドメインを含む。
さらに、破傷風毒素とボツリヌス毒素の両方は、シナプス前コリン作動性ニューロンの表面上のガングリオシド受容体に対して、高い、特異的親和性を提示する。末梢コリン作動性ニューロンによる破傷風毒素の受容体媒介性エンドサイトーシスは、逆行性軸索輸送、中枢シナプスからの阻害性神経伝達物質の放出の遮断および痙攣性麻痺をもたらす。これに反して、末梢コリン作動性ニューロンによるボツリヌス毒素の受容体媒介性エンドサイトーシスは、逆行性輸送をほとんどもたらさず、中毒した末梢運動ニューロンからのアセチルコリンエキソサイトーシスの阻害および弛緩性麻痺をもたらす。
最終的に、破傷風毒素とボツリヌス毒素は、生合成および分子構造の両方において互いに似ている。したがって、破傷風毒素およびA型ボツリヌス毒素のタンパク質配列の間には、全体として34%の同一性があり、いくつかの機能的ドメインには62%の配列同一性がある。Binz T.ら、The Complete Sequence of Botulinum Neurotoxin Type A and Comparison with Other Clostridial Neurotoxins、J Biological Chemistry 265(16);9153−9158:1990。
アセチルコリン
いくつかの神経調節物質が、同じニューロンによって放出されうることを示唆する証拠があるが、典型的には、小分子神経伝達物質の1つのタイプのみが、哺乳動物神経系におけるそれぞれのタイプのニューロンによって放出される。神経伝達物質アセチルコリンは、脳の多くの領域においてニューロンによって分泌されるが、特に、運動皮質の大錐体細胞、基底核におけるいくつかの異なるニューロン、骨格筋を神経支配する運動ニューロン、自律神経系(交感神経および副交感神経の両方)の節前ニューロン、筋紡錘のbag 1繊維、副交感神経系の節後ニューロンおよび交感神経系の節後ニューロンのいくつかによって分泌される。交感神経系の大部分の節後ニューロンは神経伝達物質ノルエピネフリンを分泌するので、本質的に、汗腺に至る節後交感神経線維、立毛筋および少数の血管のみが、コリン作動性である。ほとんどの場合、アセチルコリンは、興奮効果を有する。しかし、アセチルコリンは、迷走神経による心拍数の抑制などのいくつかの末梢副交感神経終末において抑制効果を有することが知られている。
自律神経系の遠心性シグナルは、交感神経系または副交感神経系のいずれかを通って身体に伝達される。交感神経系の節前ニューロンは、脊髄の中間外側角に位置する節前交感神経ニューロン細胞体から伸びる。細胞体から伸びている節前交感神経線維は、脊椎傍交感神経節または脊椎前神経節のいずれかに位置する節後ニューロンとシナプスを形成する。交感および副交感神経系の両方の節前ニューロンは、コリン作動性なので、神経節へのアセチルコリンの適用は、交感および副交感ニューロンの両方を興奮させる。
アセチルコリンは、ムスカリンおよびニコチン受容体という2つのタイプの受容体を活性化させる。ムスカリン受容体は、副交感神経系の節後ニューロンならびに交感神経系の節後コリン作動性ニューロンによって刺激されたすべてのエフェクター細胞において見出される。ニコチン受容体は、副腎髄質ならびに自律神経節内に見出され、交感および副交感系の両方の節前および節後ニューロンの間のシナプスにおける節後ニューロンの細胞表面上にある。ニコチン受容体は、たとえば、神経筋接合部における骨格筋繊維の膜などの多くの自律神経でない終末においても見出される。
アセチルコリンは、小さい透明な細胞内小胞がシナプス前神経細胞膜と融合するときに、コリン作動性ニューロンから放出される。副腎皮質(ならびにPC12細胞系)および膵島細胞などの多種多様な非神経分泌細胞は、大有芯小胞からそれぞれカテコールアミンおよび副甲状腺ホルモンを放出する。PC12細胞系は、交感神経副腎発生の研究湯のための組織培養モデルとして広く用いられるラット褐色細胞腫細胞のクローンである。ボツリヌス毒素は、除神経された細胞への毒素の透過性(電気穿孔によるなど)または直接注入においてインビトロで両方のタイプの細胞からの両方のタイプの化合物の放出を阻害する。ボツリヌス毒素は、皮質シナプトソーム細胞培養物からの神経伝達物質グルタミン酸塩の放出を遮断することも知られている。
神経筋接合部は、筋細胞への軸索の近接によって骨格筋内に形成される。たとえば神経筋接合部の運動終板において、神経系を通って伝達されたシグナルは、イオンチャネルの活性化およびニューロン内シナプス小胞からの神経伝達物質アセチルコリンの放出により終末軸索において活動電位をもたらす。アセチルコリンは、細胞外空間を横切って、筋終板の表面上のアセチルコリン受容体タンパク質に結合する。いったん、十分な結合が生じると、筋細胞の活動電位が特異的膜イオンチャネル変化を引き起こし、筋細胞収縮をもたらす。次いで、アセチルコリンは、筋細胞から放出され、細胞外空間においてコリンエステラーゼによって代謝される。代謝産物は、終末軸索内へ戻されてさらなるアセチルコリンに加工するために再利用される。
米国特許番号6,585,993は、徐放性神経毒システムを開示する。米国特許番号6,506,399は、生分解性ボツリヌス毒素インプラントを開示する。米国特許番号6,383,509は、生分解性神経毒インプラントを開示する。米国特許番号6,312,708は、ボツリヌス毒素インプラントを開示する。米国特許番号6,306,423は、神経毒インプラントを開示する。
このように、自己免疫疾患を治療するために用いることができる新規な組成物および方法の必要性が残っている。
概要
本発明は、この必要性に取り組み、1種以上の自己免疫疾患の効果的な緩和を提供する新規な組成物および方法を提供する。
1つの実施態様では、自己免疫疾患を治療する方法は、自己免疫疾患を有する患者の胸腺に近接する位置に、ボツリヌス毒素などのクロストリジウム属神経毒を投与するステップを含む。特定の実施態様では、クロストリジウム属神経毒は、胸腺に直接注射されるA型ボツリヌス毒素である。この実施態様では、方法は、サイトカインインヒビターを患者に投与するステップを含むこともできる。
もう1つの実施態様では、自己免疫疾患を治療する方法は、自己免疫疾患を有する患者に、治療有効量のボツリヌス毒素などのクロストリジウム属神経毒および治療有効量のサイトカインインヒビターを投与することを含む。併用投与は、どちらかの作用剤単独の投与には認められない相乗効果を提供する。この実施態様では、方法は、患者の胸腺に神経毒を投与するステップを含むこともできる。
自己免疫疾患を治療するための組成物も開示する。このような組成物は、自己免疫疾患を有する患者の胸腺またはその近くに投与するのに適している。組成物は、1種以上のクロストリジウム属神経毒および1種以上のサイトカインインヒビターの組み合わせを含んでもよい。
本明細書に記載するあらゆる特徴およびこのような特徴の2種以上のあらゆる組み合わせは、本発明の範囲に包含されるが、このような組み合わせに包含される特徴は、互いに矛盾するものではない。さらに、いずれかの特徴または特徴の組み合わせは、本発明のいずれかの実施態様から特別に排除されうる。
本発明のさらなる態様および利点を以下の説明および請求の範囲に、特に添付の実施例と関連させて考察して記載する。
定義
以下の定義を本明細書に適用する。
「約」は、そのように限定された値のプラスまたはマイナス10%を意味する。
「生体適合性の」は、組成物の投与から重大な炎症性または抗原性応答がないことを意味する。
「生物活性化合物」は、投与される被験者に有利な変化を生じさせることができる化合物を意味する。たとえば、「生物活性化合物」として、神経毒類が挙げられる。
生物活性化合物に適用される「有効量」は、被験者において所望の変化を生じさせるのに概して十分な化合物の量を意味する。たとえば、自己免疫疾患症状において所望の効果が低減化である場合、化合物の有効量は、自己免疫疾患症状の少なくとも実質的な低減化を引き起こし、重大な毒性をもたらさない量である。
注射用組成物の非活性成分(ボツリヌス毒素と混合するために用いられる担体など)に適用される「有効量」は、個体に投与されたときに、活性成分の放出および/または活性に肯定的に影響を及ぼす非活性成分の量を意味する。この「有効量」は、本明細書の教示および当業界の一般的知識に基づいて決定することができる。
「神経毒」は、神経筋または神経腺接合部を横切る神経興奮伝達を妨害するか、神経伝達物質のエキソサイトーシスを遮断または低減化するか、またはニューロンの電位依存性ナトリウムチャネルにおける活動電位を変えることができる作用剤を意味する。神経毒の例として、ボツリヌス毒素、破傷風毒素、サキシトキシンおよびテトロドトキシンが挙げられる。
「治療」は、哺乳動物の疾患のいずれかの治療を意味し、(i)疾患が起こるのを防止すること;(ii)疾患を抑制すること、すなわち、その進行を抑止すること;または(iii)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の症状の出現率を低下させるか、または疾患の退行を引き起こすこと;を含む。
「インプラント」は、実質的に非液体の薬物デリバリー装置を意味する。インプラントは、神経毒に伴って、生分解性または非生分解性ポリマーなどのポリマー成分を包含してもよい。インプラントは、固体、半固体または粘弾性であってよい。インプラントは、一般に、マイクロスフェアよりも大きい。
「マイクロスフェア」は、種々の大きさのボディまたはエレメントに成形したポリマーまたはポリマーの組み合わせを意味する。マイクロスフェアは、実質的に球形であることが多いが、どのような形状にでもすることができる。
「生分解性」マイクロスフェアは、長期間にわたって、化学的、生理学的またはその他の生物学的手段によって身体によって吸収される能力があるマイクロスフェアを意味する。
本明細書で用いる「治療薬」は、自己免疫疾患治療の過程に治療効果を提供するか、または自己免疫疾患治療に生物学的もしくは生理学的応答を提供するいずれかの物質を意味する。治療薬の一例は、筋弛緩に有効な神経毒である。適当な神経毒の一例は、クロストリジウム・ベラッチ(beratti)、クロストリジウム・ブチリカム、破傷風菌およびボツリヌス菌などのクロストリジウム属細菌によって産生される神経毒である。本明細書に記載するように、好ましい組成物は、ボツリヌス毒素成分を含む。ボツリヌス毒素成分は、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素から選ばれる1種以上のボツリヌス毒素型を含む組成物の一部である。ボツリヌス毒素成分は、クロストリジウム属細菌または組換え技術によって産生されるボツリヌス毒素を含んでもよい。ボツリヌス毒素は、組換え的に作成されたボツリヌス毒素またはハイブリッドのボツリヌス毒素であることができる。好ましい組成物において、ボツリヌス毒素成分は、商品名ボトックス(登録商標)(Allergan、Inc.、カリフォルニア)販売されている市販のボツリヌス毒素などのA型ボツリヌス毒素を含む。
説明
新規な自己免疫疾患の治療方法ならびに自己免疫疾患の治療用組成物を発明した。本発明方法および組成物は、自己免疫疾患を患っているヒトまたは動物患者などの患者に投与されるクロストリジウム属神経毒を含む。本明細書で用いる自己免疫疾患は、身体自身の細胞または組織に対する免疫応答によって引き起こされる疾患を意味する。本発明方法および組成物は、現行の治療アプローチに比べて低い副作用と増加された緩和持続時間を提供することができる自己免疫疾患の新規な治療方法を提供する。
1つの実施態様では、自己免疫疾患の治療方法は、自己免疫疾患の少なくとも1つの症状を緩和するために、患者の胸腺に近接する位置に、有効量のクロストリジウム属神経毒を投与することを含む。特定の状況において、クロストリジウム属神経毒の投与は、自己免疫疾患を完全に治療するのに有効である。クロストリジウム属神経毒を胸腺に近接する位置に投与することによって、神経毒が胸腺上皮細胞の活性を効果的に減少させることができ、それによって、T細胞の成熟、免疫機能および免疫機能障害を妨害することができると考えられる。
クロストリジウム属神経毒は、胸腺の近くの領域に投与される。たとえば、神経毒を胸腺組織から離れているが、胸腺活性に関連する少なくとも1つの自己免疫疾患症状の所望の緩和を引き起こすのに十分に近い領域に投与することができる。いずれかの特定の理論または作用機序に結びつけられることを望むものではないが、胸腺の近くの位置へのクロストリジウム属神経毒の投与により、胸腺を神経支配するコリン作動性ニューロンからのアセチルコリン放出の神経毒阻害がもたらされうる。したがって、前述したように、アセチルコリン放出の阻害は、T細胞成熟を妨げることができる。したがって、1つの実施態様では、クロストリジウム属神経毒は、胸腺の近くであり、胸腺を神経支配するコリン作動性ニューロンを含む位置に投与される。もう1つの実施態様では、クロストリジウム属神経毒は、胸腺に直接投与される。たとえば、本明細書に述べるように、ボツリヌス毒素などのクロストリジウム属神経毒は、針の先端が胸腺の組織に接触するように針を患者に挿入することによって、胸腺に直接投与することができる。神経毒を胸腺に直接投与しない場合、神経毒を胸腺の表面から約5 mm〜約50 mmの距離で胸腺から離れた位置に投与することができる。特定の実施態様では、胸腺の近くの身体における非全身性、非筋肉領域に神経毒を投与することが望ましい。
胸腺に近い位置にクロストリジウム属神経毒を局所投与することは、従来の治療法にともなう副作用が低減化された自己免疫疾患の有効な治療法を提供することができる。たとえば、本明細書において述べるように、コリンエステラーゼインヒビターを用いる治療法は、シナプス間隙に残るアセチルコリンの量が増加することによる筋肉の過剰興奮ならびに末梢および中枢神経系の活性の増加を伴う。長期のステロイドおよび免疫抑制剤の使用は、このような作用剤は全身的に投与されるので、望ましくない副作用をもたらしうる。したがって、この実施態様は、胸腺の近くにおける神経伝達物質またはペプチドの放出の局所的阻害を提供することによって、効果的な自己免疫疾患治療を提供することができる。
特定の実施態様では、方法は、投与を行う医師による胸腺の位置決定を促進するための1つ以上のステップを含む。たとえば、それを通して神経毒含有組成物を通すように設定された針またはカニューレなどの神経毒デリバリー装置による胸腺への直接の物理的接近を提供するために、胸腺を覆う胸領域の切開を行ってもよい。もう1つの方法は、胸腺視覚化装置を用いることを含んでもよく、患者の胸部を切開する必要がなくなる。特定の方法では、神経筋の病気を治療するためにボトックス(登録商標)を投与するのに用いられる電極などの電極を用いることなく神経毒を投与する。適切な投与部位または標的部位を同定するその他の方法は、当業者に周知の通常の方法を用いて実施することができる。
本発明のもう1つの実施態様では、自己免疫疾患の治療方法は、自己免疫疾患を患っている患者に、有効量のクロストリジウム属神経毒および有効量のサイトカインインヒビターを投与することを含む。この併用治療処置は、自己免疫疾患の1つ以上の症状を緩和するか、または自己免疫疾患を完全に治療することができる。
前述の方法では、クロストリジウム属神経毒またはサイトカインインヒビターのいずれかであって、両方ではない投与と比べて、1つまたは複数の症状のより大きい軽減を提供する量で、クロストリジウム属神経毒およびサイトカインインヒビターを投与することができる。したがって、本併用療法は、クロストリジウム属神経毒およびサイトカインインヒビター別々の投与では実現されなかった予期せぬ治療結果を提供する。特定の実施態様では、本明細書において述べるように、患者の胸腺に、クロストリジウム属神経毒を投与する。その他の実施態様では、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、グルタミン酸塩およびサブスタンスPの放出などの神経ペプチド放出を阻害するのに有効な領域、または炎症性疼痛を抑制するのに有効な領域に、クロストリジウム属神経毒を投与する。さらなる実施態様では、患者に、神経ペプチド媒介性炎症を阻害するのに有効な量でクロストリジウム属神経毒を投与し、サイトカイン媒介性炎症を阻害するのに有効な量でサイトカインインヒビターを投与する。
患者に投与しうるサイトカインインヒビターとして、サイトカイン中和剤、サイトカイン受容体遮断薬および抗炎症性サイトカイン、またはその組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
サイトカイン中和剤は、炎症性サイトカインがその細胞表面受容体と相互作用するか、またはそれに結合するのを妨げることによって、炎症性サイトカインの活性を遮断または低減化する。したがって、本明細書の開示によれば、サイトカイン中和剤として、投与の後に炎症性サイトカインに結合することができる可溶性受容体融合タンパク質、炎症性サイトカインを認識し、結合する天然のサイトカインアンタゴニストまたはモノクローナル抗体などの抗体もしくはそのフラグメントが挙げられるが、これらに限定されるものではない。サイトカイン受容体遮断薬の例としてサイトカイン受容体を認識し、結合する、サイトカイン受容体アンタゴニストおよびモノクローナル抗体などの抗体もしくはそのフラグメントが挙げられる。サイトカイン発現細胞からの炎症性サイトカインの発現を阻害するために抗炎症性サイトカインを投与することができる。
のいくつかの具体例として、ピリジニルイミダゾール、二環式イミダゾール、オキシペンチフィリン、サリドマイドおよびメシル酸ガベキセートが挙げられる。さらなるサイトカインインヒビターは、当業者に周知の通常の方法を用いて得るか、または同定することができる。たとえば、スクリーニングアッセイを用い、既存のサイトカインインヒビターと潜在的サイトカインインヒビターの活性を比較して、潜在的サイトカインインヒビターを同定することができる。
喘息などの炎症性応答を伴う自己免疫疾患にとって、クロストリジウム属神経毒とサイトカインまたはサイトカイン受容体に対するモノクローナル抗体の組み合わせは、自己免疫疾患に伴う炎症を相乗的に低減化することができる。同様の相乗効果を糖尿病の治療において認めることができる。さらに、抗体などのサイトカインインヒビターが、神経毒に結合または付着するという状況では、神経毒の標的化デリバリーを達成して、自己免疫疾患を治療するための増強された相乗効果を提供することができる。
開示した併用療法では、神経毒およびサイトカインインヒビターの投与部位を変化させることができる。たとえば、神経毒およびサイトカインインヒビターの両方を同じ部位または異なる部位に投与することができる。さらに、投与モードを同じまたは異なるようにすることができる。特定の実施態様では、患者が炎症性疼痛を覚える部位に神経毒を投与することができる。たとえば、関節の近くまたは関節内に神経毒を注射することができる。あるいは、インスリン放出をコントロールするのに有効な部位に神経毒を投与することができる。神経毒を局所的、経皮、皮内、皮下、腺内または筋肉内投与することができる。神経毒とは別に投与する場合、サイトカインインヒビターの全身デリバリーを提供するのに有効な様式でサイトカインインヒビターを投与することができる。サイトカインインヒビターを筋肉内または腹腔内投与するのが望ましいが、経口および皮下投与もまた有効である。
前述の方法を実施する際に、クロストリジウム属神経毒は、クロストリジウム属細菌によって産生される神経毒のいずれかであってよく、あるいは、いずれかの神経毒は、クロストリジウム属細菌によって産生される神経毒と実質的に同一または正確に同一のアミノ酸配列を有する。特定の実施態様では、患者に投与されるクロストリジウム属神経毒は、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素から選ばれる。特定の好ましい方法では、クロストリジウム属神経毒は、A型ボツリヌス毒素である。ヒトにおいて効力が高く、容易に入手でき、そして神経伝達物質放出を阻害するための公知の使用ゆえに、A型ボツリヌス毒素が望ましい。
本発明方法および組成物は、ボツリヌス毒素に特に関連して述べられるが、他の神経毒が、ボツリヌス毒素と併用して、あるいはボツリヌス毒素無しで、本発明組成物に有効でありえる。本発明の範囲に含まれる他のクロストリジウム属神経毒の例として、クロストリジウム・ブチリカムおよびクロストリジウム・ベラッチ種によって作成される神経毒が挙げられる。本発明は、(a)細菌培養物、毒素抽出物、濃縮物、保存物、凍結乾燥物および/または再構成物によって獲得又は加工されたクロストリジウム属神経毒;および/または(b)修飾または組換え神経毒、すなわち、公知の化学的/生化学的アミノ酸修飾手順によるか、または公知の宿主細胞/組換えベクター組換え技術の使用によって故意に欠失、修飾または置換された1つ以上のアミノ酸またはアミノ酸配列を有している神経毒、ならびにそのように作成された神経毒の誘導体またはフラグメントの使用も含む。これらの神経毒変異体は、ニューロン間の神経伝達を阻害する能力を保持し、これらの変異体のいくつかは、天然の神経毒と比べて阻害効果の持続時間を長くすることができ、あるいは、神経毒に曝されたニューロンに対する結合特異性を増強することができる。これらの神経毒変異体は、神経伝達を阻害するという所望の生理的効果を有する神経毒を同定する通常のアッセイを用いて変異体をスクリーニングすることによって選ぶことができる。
本発明方法に用いる神経毒を種々の形態で患者に投与することができる。たとえば、特定の実施態様では、生理食塩水などの担体成分を含む溶液などの組成物にて神経毒を投与する。その他の実施態様では、インプラント装置によって神経毒を投与してもよい。インプラント装置は、典型的にはポリマー成分を含む非液体装置である。神経毒含有インプラントは、生分解性または非生分解性であってよい。つまり、インプラントは、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマーおよびその組み合わせを含むことができる。特定の実施態様では、生分解性マイクロスフェアなどのポリマーマイクロスフェアの形態で神経毒を投与する。インプラントは、神経毒の制御放出を提供するためのポンピング機構を含むこともでき、あるいは、インプラントは、インプラントの生理化学的特性に基づく制御放出を提供することができる。潜在的神経毒含有インプラントの例として、前述した特許に開示されたインプラントが挙げられる。
したがって、本発明方法は、患者にボツリヌス毒素成分および担体成分を含む組成物を注射するステップ、患者の体内にボツリヌス毒素を含むインプラント装置を設置するステップ、またはその組み合わせを含むことができる。特定の実施態様では、サイトカインインヒビターとともに単一の組成物でクロストリジウム属神経毒を投与する。たとえば、患者に治療有効量のボツリヌス毒素およびサイトカインインヒビターを含む液体またはポリマー組成物を単一のステップで投与することができる。その他の実施態様では、神経毒およびサイトカインインヒビターを別個の組成物で投与し、患者にそれらを同時または異なる時間に投与することができる。したがって、本発明は、単一の組成物内に存在するクロストリジウム属神経毒および1種以上のサイトカインインヒビターを含む医薬組成物も包含する。
本発明に用いるボツリヌス毒素は、凍結乾燥形態、減圧下の容器内での減圧乾燥形態または安定な液体として貯蔵することができる。凍結乾燥する前に、ボツリヌス毒素を医薬的に許容しうる賦形剤、安定化剤および/またはアルブミンなどの担体と組み合わせることができる。生理食塩水または水で凍結乾燥材料を再構成して、患者に投与されるボツリヌス毒素を含有する溶液または組成物を作成することができる。
組成物中または本発明にしたがって投与されるクロストリジウム属神経毒の量は、障害の重篤度ならびに身体の大きさ、体重、年齢および療法に対する反応性といったようなその他の様々な患者によって変化するものなどの標的化される障害の特定の性質に応じて変えることができる。施術医師を案内するために、典型的には、約1ユニット以上、約50ユニット以下のA型ボツリヌス毒素(ボトックス(登録商標)など)を、患者治療セッション当たり、注射部位(すなわち、胸腺またはその他の炎症部位)ごとに投与する。ディスポート(登録商標)などのA型ボツリヌス毒素では、約2ユニット以上、約200ユニット以下のA型ボツリヌス毒素を、患者治療セッション当たり、投与または注射部位ごとに投与する。ミオブロック(登録商標)などのB型ボツリヌス毒素では、約40ユニット以上、約2500ユニット以下のB型ボツリヌス毒素を、患者治療セッション当たり、注射部位ごとに投与する。約1、2または40ユニット以下の(それぞれ、ボトックス(登録商標)、ディスポート(登録商標)およびミオブロック(登録商標))では、所望の治療効果を達成することができず、一方、約50、200または2500ユニット以上の(それぞれ、ボトックス(登録商標)、ディスポート(登録商標)およびミオブロック(登録商標))では、臨床的に注目すべき望ましくない筋肉の緊張低下、脱力および/または麻痺をもたらしうる。
より好ましくは:ボトックス(登録商標)については、約2ユニット以上および約20ユニット以下のA型ボツリヌス毒素;ディスポート(登録商標)については、約4ユニット以上および約100ユニット以下および;ミオブロック(登録商標)については、約80ユニット以上および約1000ユニット以下を、患者治療セッション当たり、注射部位ごとに投与する。
最も好ましくは:ボトックス(登録商標)については、約5ユニット以上および約15ユニット以下のA型ボツリヌス毒素;ディスポート(登録商標)については、約20ユニット以上および約75ユニット以下および;ミオブロック(登録商標)については、約200ユニット以上および約750ユニット以下を、患者治療セッション当たり、注射部位ごとに投与する。患者の治療セッションのそれぞれについて、複数注射部位(すなわち、注射のパターン)がありうることに留意することが重要である。
したがって、本発明方法は、約1ユニット〜約50,000ユニットの範囲のボツリヌス毒素の量を投与することを含む。ボツリヌス毒素の量は、ボツリヌス毒素の血清型または菌株などのボツリヌス毒素のタイプおよび患者に投与される組成物の量に応じて変わる。特定の方法では、約10ユニット〜約2,000ユニットの範囲のA型ボツリヌス毒素の量を投与する。他の方法では、約100ユニット〜約30,000ユニットの範囲のB型ボツリヌス毒素の量を投与する。本発明方法が、治療薬として生物活性のあるボツリヌス毒素を投与することを含むのが好ましい。たとえば、本発明方法は、ボツリヌストキソイドを投与することを包含しない。
本発明方法は、1種以上の自己免疫疾患を治療するために実施することができる。本発明方法によって治療可能な自己免疫疾患として、全身性自己免疫疾患または局所性自己免疫疾患のいずれかまたは両方が挙げられる。本発明方法によって治療される自己免疫疾患の例として、次に述べる、関節および場合により肺および皮膚に影響を及ぼしうる関節リウマチ;皮膚、関節、腎臓、心臓、脳、赤血球ならびにその他の組織および臓器に影響を及ぼしうる全身性エリテマトーデス(SLE)などの狼瘡;皮膚、腸および肺に影響を及ぼしうる強皮症;唾液腺、涙腺および関節に影響を及ぼしうるシェーグレン症候群;肺および腎臓に影響を及ぼしうるグッドパスチャー症候群;洞、肺および腎臓に影響を及ぼしうるウェゲナー肉芽腫症;大きい筋肉群に影響を及ぼしうるリウマチ性多発筋痛症;頭部および頸部の動脈に影響を及ぼしうる側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎;膵島に影響を及ぼす1型糖尿病;甲状腺に影響を及ぼす橋本甲状腺炎およびグレーブス病;胃腸管に影響を及ぼすセリアック病、クローン病および潰瘍性大腸炎;中枢神経系に影響を及ぼす多発性硬化症(MS)およびギラン・バレー症候群; the 副腎に影響を及ぼすアジソン病;肝臓に影響を及ぼす原発性硬化性胆管炎、硬化性胆管炎および自己免疫性肝炎;指、つま先、鼻、耳に影響を及ぼしうるレイノー現象;悪性貧血;アジソン病;皮膚筋炎;重症筋無力症(MG);ライター症候群;尋常性天疱瘡;強皮症またはクレスト症候群;自己免疫性溶血性貧血;自己免疫性血小板減少性紫斑病;強直性脊椎炎;脈管炎;および筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリック病)のいずれかのうちの1種以上が挙げられる。
特定の実施態様では、該方法は、多発性硬化症、重症筋無力症または全身性エリテマトーデスを治療するために、胸腺に近接して、クロストリジウム属神経毒を投与することによって実施される。
本発明方法は、疲労、目眩、倦怠感、発熱、悪寒、体重減少、皮膚発疹、血管炎、多発性関節痛、斑点状の脱毛、口および鼻のヒリヒリ感、リンパ節腫脹、胃の問題、関節炎の場合関節に位置する全身の痛み、グレーブス病における甲状腺などの肥大した腺、心臓の動悸、皮膚の水膨れおよび外傷、筋脱力およびその組み合わせから選ばれる少なくとも1つの症状などの自己免疫疾患の少なくとも1つの症状を治療するのに有効である。
さらに、本発明方法は、胸腺の活性に基づいてT細胞成熟をコントロールまたは調節することによって自己免疫疾患の原因を治療するのに有効である。
投与経路および用量の例を提供するが、適切な投与経路および用量は、一般に、主治医によって個別に決定される。このような決定は、当業者にはルーチンである(たとえば、Harrison’s Principles of Internal Medicine (1998)、Anthony Fauciら編、14版、McGraw Hill刊行を参照)。たとえば、本願開示の発明にしたがって、クロストリジウム属神経毒の投与経路および用量は、神経毒の溶解度特性ならびに治療される自己免疫疾患の強度および範囲などの基準に基づいて選ぶことができる。
神経毒および/またはサイトカインインヒビターを含む組成物を注射または輸液するために、注射器、カテーテル、針およびその他の手段によって組成物の注射を実行することができる。本明細書において述べるように、注射のための標的部位を同定する1つ以上のステップで注射を実施することができる。
注射の頻度および量は、治療される特定の自己免疫疾患の性質および位置に基づいて決定される。一般に、神経毒注射用組成物の安定な長持ちする特性から、複数回の注射は必要ではない。しかし、特定の場合では、最適の結果を達成するために繰り返し注射が望ましい。特定の場合それぞれに対する注射の頻度および量は、当業者によって決定される。
胸腺へ神経毒の投与、またはサイトカインインヒビターと組み合わせての神経毒の投与は、患者への投与後約7日以内に、自己免疫疾患の少なくとも1つの症状の最初の軽減または緩和を提供する。軽減は、投与モードに応じて、数ヶ月間または数年間持続する。たとえば、ボトックス(登録商標)などのA型ボツリヌス毒素を含む液体組成物は、投与後約4〜約6ヶ月間の軽減を提供することができる。A型ボツリヌス毒素をデリバリーするインプラントは、少なくとも6ヶ月間、さらに3〜5年間などの1年以上の治療的軽減を提供することができる。神経毒とサイトカインインヒビターの併用療法によって提供される相乗効果は、数ヶ月間、たとえば、約1〜約12ヶ月間観察されうる。特定の状況では、神経毒効果は、によって媒介される効果を越えて持続する。
したがって、1つの特定の実施態様では、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症または多発性硬化症などの自己免疫疾患の治療方法は、自己免疫疾患を有する患者の胸腺に、商品名ボトックス(登録商標)またはディスポート(登録商標)で入手可能な組成物などの治療有効量のA型ボツリヌス毒素を注射するステップを含む。胸腺へのボツリヌス毒素の注射は、胸腺上皮細胞の活性の低減化、T細胞成熟、免疫機能および免疫機能障害の減少に有効である。
もう1つの本発明の特定の実施態様では、全身性エリテマトーデス、喘息および糖尿病などの自己免疫疾患の治療方法は、自己免疫疾患を有する患者の胸腺に、商品名ボトックス(登録商標)またはディスポート(登録商標)で入手可能な組成物などの治療有効量のA型ボツリヌス毒素および治療有効量のサイトカインインヒビターを投与するステップを含む。ボツリヌス毒素およびサイトカインインヒビターの投与は、自己免疫疾患の治療に対する増強または相乗効果を提供する。
以下の非限定的実施例は、当業者に、本発明の範囲に含まれる、病気を治療するための特定の好ましい方法を提供するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。以下の実施例では、クロストリジウム属神経毒の非全身投与の様々なモードを実行することができる。
実施例1
ボツリヌス神経毒による全身性エリテマトーデスの治療
全身性エリテマトーデスと診断された42歳の男性を、10ユニットのボトックス(登録商標)を胸腺内に注射する(胸腺の各葉内に5ユニットを注射する)ことによって治療する。約1週間後、患者は、発熱、頭痛、関節痛および皮膚発疹の低減化を示す。全体として、患者は、一般に、疲労感が減少し、前向きな姿勢をもつ。軽減は、約4ヶ月間持続する。
最初の治療から6ヶ月後、患者は、A型ボツリヌス毒素を含む生分解性インプラントを入れる手術を受ける。1 mgインプラントを胸腺から5 mmの位置に設置する。インプラントは、約200ユニットのA型ボツリヌス毒素とポリ(ラクチド−コ−グリコリド)ポリマー(PLGA)((乳酸・グリコール酸共重合体))を含む。インプラントは、約2ユニット/日の速度でボツリヌス毒素を放出する。患者は、約10日後に、ボトックス(登録商標)の胸腺注射と同様の改善を報告する。しかし、症状の軽減は、外科手術後18ヶ月間持続した。
実施例2
ボツリヌス神経毒による重症筋無力症の治療
重症筋無力症と診断された女性患者を治療するために、実施例1の処置を行う。患者は、眼瞼下垂、視覚のぼやけおよび全面的な眼球不動を呈している。治療は、障害およびそれに伴う腕、手および呼吸器系の筋力低下のさらなる進行を防止することに成功する。
実施例3
ボツリヌス神経毒による多発性硬化症の治療
多発性硬化症と診断された女性患者を治療するために、実施例1の処置を行う。患者は、視覚のぼやけおよび眼球痛ならびに手足の痙攣を呈している。A型ボツリヌス毒素を胸腺に投与した後、筋肉にボツリヌス毒素を投与することなく、約14日以内に症状は緩和される。症状の緩和は数ヶ月間持続する。
実施例4−6
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例1−3の処置を繰り返すが、Ipsen Pharmaceuticals、パリ、フランスから入手可能なディスポートを4倍多い量で投与する。
実施例7−9
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例1−3の処置を繰り返すが、商品名NT 201でMerz Pharmaceuticals(フランクフルト、ドイツ)から入手可能な精製A型ボツリヌス毒素(たとえば、複合タンパク質を含まないA型ボツリヌス毒素タンパク質製剤)を同量で投与する。
実施例10−12
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例1−3の処置を繰り返すが、B型ボツリヌス毒素(すなわち、Solstice Neurosciences、サンディエゴ、カリフォルニアから入手可能なミオブロック)を50倍多い量で投与する。
実施例13−15
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例1−3の処置を繰り返すが、A型ボツリヌス毒素の代わりに治療有効量のC型ボツリヌス毒素を投与する。
実施例16−18
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例1−3の処置を繰り返すが、A型ボツリヌス毒素の代わりに治療有効量のC型ボツリヌス毒素を投与する。
実施例19−21
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例1−3の処置を繰り返すが、A型ボツリヌス毒素の代わりに治療有効量のD型ボツリヌス毒素を投与する。
実施例22−24
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例1−3の処置を繰り返すが、A型ボツリヌス毒素の代わりに治療有効量のE型ボツリヌス毒素を投与する。
実施例25−27
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例1−3の処置を繰り返すが、A型ボツリヌス毒素の代わりに治療有効量のF型ボツリヌス毒素を投与する。
実施例28−30
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例1−3の処置を繰り返すが、A型ボツリヌス毒素の代わりに治療有効量のG型ボツリヌス毒素を投与する。
実施例31
ボツリヌス神経毒およびヒト化モノクローナル抗体による喘息の治療
喘息を患っている38歳の男性を、ボトックス(登録商標)およびモノクローナル抗体オマリズマブ(ゾレア(登録商標))の投与に基づく併用療法によって治療する。気管支収縮に関与する神経線維に5ユニットのボトックス(登録商標)を注射することによって男性を治療する。患者の吸入器によって迅速な軽減が提供される。患者は、6ヶ月間にわたって、喘息発作の回数の減少を報告する。
実施例32
ボツリヌス神経毒およびヒト化モノクローナル抗体による糖尿病の治療
1型糖尿病を患っている22歳の男性を、ボツリヌス神経毒および抗CD3ヒト化モノクローナル抗体hOKT3ガンマ1(Ala−Ala)を投与する併用療法によって治療する。患者は、6週間、1週間に1回、約20ユニットのボトックス(登録商標)および抗体を注射により投与される。約3週間後、糖尿病の症状は、低減化される。軽減は、最初の処置の後約6ヶ月間持続する。
実施例33
ボツリヌス神経毒およびサイトカイン受容体遮断薬による関節炎の治療
関節リウマチを患っている62歳の男性を、ボツリヌス神経毒およびインターロイキン1受容体アンタゴニストの併用療法によって治療する。患者は、左手の各関節に2ユニットのボトックス(登録商標)を投与され、アンタゴニストの皮下注射を受ける。患者は、関節痛の全体的減少を体験する。左手の痛みの減少は、約4ヶ月間持続するが、身体の他の領域の関節痛の減少の持続は、4ヶ月間以下である。
実施例34−36
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例31−33の処置を繰り返すが、Ipsen Pharmaceuticals、パリ、フランスから入手可能なディスポートを4倍多い量で投与する。
実施例37-39
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例31−33の処置を繰り返すが、商品名NT 201でMerz Pharmaceuticals(フランクフルト、ドイツ)から入手可能な精製A型ボツリヌス毒素(たとえば、複合タンパク質を含まないA型ボツリヌス毒素タンパク質製剤)を同量で投与する。
実施例40-42
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例31−33の処置を繰り返すが、B型ボツリヌス毒素(すなわち、Solstice Neurosciences、サンディエゴ、カリフォルニアから入手可能なミオブロック)を50倍多い量で投与する。
実施例43-45
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例31−33の処置を繰り返すが、A型ボツリヌス毒素の代わりに治療有効量のC型ボツリヌス毒素を投与する。
実施例46-48
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例31−33の処置を繰り返すが、A型ボツリヌス毒素の代わりに治療有効量のC型ボツリヌス毒素を投与する。
実施例49-51
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例31−33の処置を繰り返すが、A型ボツリヌス毒素の代わりに治療有効量のD型ボツリヌス毒素を投与する。
実施例52-54
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例31−33の処置を繰り返すが、A型ボツリヌス毒素の代わりに治療有効量のE型ボツリヌス毒素を投与する。
実施例55-57
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例31−33の処置を繰り返すが、A型ボツリヌス毒素の代わりに治療有効量のF型ボツリヌス毒素を投与する。
実施例58-60
同じ病気を患っている別の患者に対して実施例31−33の処置を繰り返すが、A型ボツリヌス毒素の代わりに治療有効量のG型ボツリヌス毒素を投与する。
本発明は、特定の好ましい組成物および方法に関して詳細に記載されているが、本発明の範囲に含まれる他の実施態様、バージョンおよび変更が可能である。たとえば、本発明方法において、広範な神経毒を有効に用いることができる。さらに、本発明は、自己免疫疾患の1つ以上の症状を緩和するための局所投与法を包含し、2種以上のボツリヌス毒素などの2腫以上の神経毒が同時または連続的に投与される。たとえば、臨床反応または抗体発生の中和がなくなるまでA型ボツリヌス毒素を投与し、次いで、B型ボツリヌス毒素を投与することができる。別法として、血清型A−Gのボツリヌス毒素のいずれかの2種以上の組み合わせを、局所投与して、所望の結果の開始および持続期間をコントロールすることができる。さらに、ボツリヌス毒素などの神経毒がその治療効果を発揮する前の脱神経の増強または脱神経のより素早い開始などの補助効果を提供するために、神経毒の投与に先立って、同時、または続いて、非神経毒化合物を投与することができる。
我々の発明には、その範囲内に、自己免疫疾患の治療用薬剤の製造におけるボツリヌス毒素などの神経毒の使用も包含される。
前述したすべての参考文献、論文、特許、出願および刊行物は、全体として参照することにより本発明に援用される。
したがって、請求の範囲の精神および範囲は、前述した好ましい実施態様の記載に限定されるべきではない。

Claims (23)

  1. 自己免疫疾患の少なくとも1つの症状を緩和して自己免疫疾患を治療するために、患者の胸腺に近接する位置に、有効量のクロストリジウム属神経毒を投与することを含む、自己免疫疾患の治療方法。
  2. クロストリジウム属神経毒が、胸腺を神経支配するコリン作動性ニューロンを含む位置に投与される請求項1に記載の方法。
  3. クロストリジウム属神経毒が、胸腺に直接投与される請求項1に記載の方法。
  4. クロストリジウム属神経毒が、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素から選ばれる請求項1に記載の方法。
  5. クロストリジウム属神経毒が、A型ボツリヌス毒素である請求項1に記載の方法。
  6. 投与が、約1ユニット〜約50,000ユニットの範囲のボツリヌス毒素の量を投与することを含む請求項1に記載の方法。
  7. 投与が、約10ユニット〜約2,000ユニットの範囲のA型ボツリヌス毒素の量を投与することを含む請求項1に記載の方法。
  8. 投与が、約100ユニット〜約30,000ユニットの範囲のB型ボツリヌス毒素の量を投与することを含む請求項1に記載の方法。
  9. 投与が、患者にボツリヌス毒素成分および担体成分を含む組成物を注射すること、および患者の体内にボツリヌス毒素を含むインプラント装置を設置することから選ばれるステップを含む請求項1に記載の方法。
  10. 自己免疫疾患の少なくとも1つの症状を緩和するために、サイトカインインヒビターを投与することをさらに含む請求項1に記載の方法。
  11. クロストリジウム属神経毒を投与することによって治療される自己免疫疾患が、多発性硬化症、重症筋無力症および全身性エリテマトーデスから選ばれる請求項1に記載の方法。
  12. 自己免疫疾患の少なくとも1つの症状を緩和して自己免疫疾患を治療するために、患者に、有効量のクロストリジウム属神経毒および有効量のサイトカインインヒビターを投与することを含む、自己免疫疾患の治療方法。
  13. 同じ自己免疫疾患を治療するための患者へのクロストリジウム属神経毒およびサイトカインインヒビターの一方のみの投与と比べて、クロストリジウム属神経毒およびサイトカインインヒビターが、自己免疫疾患の少なくとも1つの症状のより大きい軽減を提供する量で投与される請求項12に記載の方法。
  14. クロストリジウム属神経毒が、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素から選ばれる請求項12に記載の方法。
  15. クロストリジウム属神経毒が、A型ボツリヌス毒素である請求項12に記載の方法。
  16. 投与が、約1ユニット〜約50,000ユニットの範囲のボツリヌス毒素の量を投与することを含む請求項12に記載の方法。
  17. 投与が、約10ユニット〜約2,000ユニットの範囲のA型ボツリヌス毒素の量を投与することを含む請求項12に記載の方法。
  18. 投与が、約100ユニット〜約30,000ユニットの範囲のB型ボツリヌス毒素の量を投与することを含む請求項12に記載の方法。
  19. クロストリジウム属神経毒およびサイトカインインヒビターが、単一の組成物で患者に投与される請求項12に記載の方法。
  20. クロストリジウム属神経毒が、患者の胸腺に投与される請求項12に記載の方法。
  21. クロストリジウム属神経毒が、A型ボツリヌス毒素であり、サイトカインインヒビターが、サイトカイン中和剤、サイトカイン受容体遮断薬、抗炎症性サイトカインおよびその組み合わせから選ばれる請求項12に記載の方法。
  22. クロストリジウム属神経毒が、神経ペプチド媒介性炎症を阻害するのに有効な量で投与され、サイトカインインヒビターが、サイトカイン媒介性炎症を阻害するのに有効な量で投与される請求項12に記載の方法。
  23. 自己免疫疾患を治療するのに有効な量で存在するクロストリジウム属神経毒および少なくとも1種のサイトカインインヒビターを含む医薬組成物。
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