JP2008512463A - マトリックスメタロプロテイナーゼ−12に関連する糸球体基底膜疾患の治療 - Google Patents

マトリックスメタロプロテイナーゼ−12に関連する糸球体基底膜疾患の治療 Download PDF

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Abstract

マトリックスメタロプロテイナーゼ-12に関連する糸球体基底膜疾患、例えばアルポート症候群の治療法が開示される。例えば、治療は、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターを投与することにより、CCR2受容体インヒビターを投与することにより、又はMCP-1インヒビターを投与することにより、影響さ得る。マトリックスメタロプロテイナーゼ形成は、MCP-1ケモカインによって刺激される、CCR2受容体により影響される。

Description

政府助成
本発明は、国立衛生研究所によって与えられる助成番号R01DK55000及びR01DC04844下での政府支援によってなされた。政府は本発明にある権利を有することがある。
出願データの継続
本願は、本明細書に参照として引用されている、2004年9月8日に出願された米国特許仮出願番号60/607,907、及び2005年6月1日に出願された米国特許仮出願番号60/686,148の利益を請求する。
背景
アルポート症候群は、IV型コラーゲン遺伝子での突然変異によって引き起こる糸球体基底膜(GBM)疾患である。糸球体は、腎臓のボーマン嚢内のループ状血管の小さなクラスターである。糸球体は、ギリシャ語の「フィルター」に由来し、約百万個が存在する糸球体は、腎臓による血液ろ過に重要な役割を果たしている。糸球体内には、糸球体の毛管壁がある。糸球体の毛管壁は、3層:前庭内皮細胞、糸球体基底膜、及び糸球体の上皮細胞の足突起、を有する点で、一般的ではない。GBMの独特の不同な肥厚化及び薄膜化は、進行性の糸球体性疾病を特徴付ける。これらのGBMの原因となる代謝性不均衡は、よく知られていない。
アルポート症候群は、基底膜に影響を与える遺伝性疾患の候補モデルとなっている。遺伝子頻度は、5000人に約1人であり、公知の遺伝性疾患の中でより広く行き渡っている (Atkin他 (1988) Diseases of the Kidney, 第4版, 第19章, Little Brown, Boston, 617-641)及びPescucci他 (2003) J. Nephrol. 16, 314-316)。X-関連アルポートは、コラーゲン4A5遺伝子における一連の突然変異によって引き起こることが決定されている(Barker他 (1990) Sci. 348, 1224-1227)。当該遺伝子中の少なくとも60の異なった突然変異が、疾患を遠くに運ぶファミリーにおいて同定されている (Tryggvason他 (1993) Kidney Int. 43, 38-44 及びAntignac他 (1994) Am. Soc. Clin. Invest. 93, 1195-1207)。アルポート症候群の常染色体形態は、X-関連形態の疾患として同一の範囲の表現型を示すが、これは、基底膜コラーゲン遺伝子4A3又は4A4のいずれかにおける突然変異に起因する (Lemmink他 (1994) Hum. Mol. Gen. 3, 1269-1273及びMochizuki他 (1994) Nature Genet. 8, 77-81)。アルポート症候群は、蛋白尿の若年性発症によって特徴付けられる。糸球体の尿管空間内のタンパク質は、繊毛化された有足細胞及びメサンギウムの拡大を含む糸球体細胞種での変化よりも重要である。これらの変化は、細胞外マトリックスの蓄積において頂点に達し、病巣性及び分節性糸球体腎炎を引き起こす。糸球体は、終には繊維状になり、血液を濾過する腎臓の能力を減少させる。この終局的な血管は、致命的***である。現代の治療法は、移植に限定されている。但し、移植された臓器中でのIV型コラーゲン鎖に対する免疫反応に因る高い拒絶リスクがある。
アルポート糸球体疾患の顕著かつ独特な特徴は、糸球体基底膜の不同な肥厚、薄膜及び***である(Kashtan他 (1999) Medicine 78, 338-360)。進行性GBM損傷は、有足細胞の足突起消失に関連する。表現型の基礎となっているメカニズムは知られていないが、肥厚化部位はマトリックスタンパク堆積の領域を示すことが示唆されている(Cosgrove他 (1996) Genes De v. 10, 2981-2992及びCosgrove他 (2000) Am. J. Pathol. 157, 1649-1659; Abrahamson他 (2003) Kidney Int. 63, 826-834)。或いは、アルポート腎臓由来のIV型コラーゲンマトリックスは、通常の腎臓由来のものよりも内部タンパク質分解性開裂をより受け易いことが示された(Kalluri他 (1997) J. Clin, invest. 99, 2470- 2478)。これは、コラーゲン鎖組成物中の差異から生じる内部鎖ジスルフィド架橋の重要な減少におそらく起因する(Gunwar他 (1998) J. Biol. Chem. 273, 8767-8775)。
アルポート症候群は、現在、透析及び移植によって治療されている。しかしながら、移植は、IV型コラーゲンに対する自己免疫反応を一般的に起こす。アルポート腎疾患の基礎となっている分子的プロセスの研究は、動物モデル系の開発によって顕著に進歩し、変化する開発のステージにある潜在的な治療モダリティの進展をもたらした。ラミプリルは、当該分野では目下のところACEインヒビターであるが、アルポートマウスの寿命を二倍にし (Gross他 (2003) Kidney Int. 63, 438-446)、ヒト臨床試験について現在検討されている。インテグリンα1β1の中和も、マウスモデルで2倍の寿命を達成し(Cosgrove他 (2000) Am. J. Pathol. 157, 1649-1659)、中和抗体に関連する治療的アプローチは第2相臨床試験に入っている。遺伝子療法も動物モデルでの試験のために開発されている (Heikkila他 (2001) Gene Ther. 8, 882-890)。しかしながら、現在、アルポート症候群は、依然として、強力な又は信頼できる治療的選択がない疾患である。
概要
1つの局面において、本発明は、対象へのマトリックスメタロプロテイナーゼ-12(MMP-12)インヒビターの投与を含む、対象における糸球体基底膜疾患を治療する方法を提供する。更なる局面では、本発明はまた、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターの対象への投与を含む、対象におけるアルポート症候群を治療する方法を提供する。マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターの投与は、アルポート症候群に関連する糸球体疾患を治療する方法、アルポート症候群に関連する糸球体基底膜の幅の不同を減らす方法、及び糸球体基底膜における細胞外マトリックスの分解を減少させる方法にも用いられる。上記のマトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターを用いる方法の1つの実施態様では、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターの投与は、糸球体有足細胞でのマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性を減少させる。
マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターを用いる方法の更なる実施態様では、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターは、非-ペプチド性インヒビターでもよい。非-ペプチド性インヒビターは、更なる実施態様では、アリールスルホンアミド-置換ヒドロキサム酸誘導体でもよい。更に別の実施態様では、アリールスルホンアミド-置換ヒドロキサム酸はMMI-270である。更なる実施態様で用いることができる他の非-ペプチド性インヒビターは、チオフェンアミノ酸誘導体、フルオロチオフェン誘導体及び1-カルボキシメチル-2-オキソ-アゼパン誘導体を含む。更なる実施態様では、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターは、ポリペプチド、例えば抗体又はオリゴヌクレオチドでもよい。
追加の局面では、本発明は、CCケモカイン受容体2(CCR2)受容体インヒビターを対象に投与することを含む、対象における糸球体基底膜疾患を治療する方法を提供する。更なる局面では、本発明はまた、CCR2受容体インヒビターを対象に投与することを含む、対象におけるアルポート症候群を治療する方法を提供する。CCR2受容体インヒビターの投与は、アルポート症候群に関連する糸球体疾患を治療する方法、アルポート症候群に関連する糸球体基底膜の幅の不同を減らす方法、及び糸球体規定膜における細胞外マトリックスの分解を減少させる方法にも用いられる。上記のCCR2受容体インヒビターを用いる方法の1つの実施態様において、CCR2受容体インヒビターの投与は、糸球体の有足細胞でのマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性を減少させる。
上記のCCR2受容体インヒビターを用いる実施態様では、CCR2受容体インヒビターは、非-ペプチド性インヒビターでもよい。更なる実施態様では、非-ペプチド性の小分子インヒビターは、有機ゲルマニウム化合物でもよい。なお更なる実施態様では、有機ゲルマニウム化合物は、3-オキシゲルミルプロピオン酸(oxygemylpropinic acid)ポリマーである。更なる実施態様では、CCR2受容体インヒビターは、ポリペプチド例えば抗体又はオリゴヌクレオチドでよい。
更なる局面では、本発明は、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)インヒビターを対象に投与することを含む、対象での糸球体基底膜疾患を治療する方法を提供する。更に別の局面では、本発明はまた、MCP-1インヒビターを対象に投与することを含む、対象でのアルポート症候群を治療する方法を提供する。MCP-1インヒビターの投与は、アルポート症候群に関連する糸球体疾患を治療する方法、アルポート症候群に関連する糸球体基底膜の幅の不同を減らす方法、及び糸球体基底膜における細胞外マトリックスの分解を減らす方法にも用いることができる。上記のMCP-1インヒビターを用いる方法の1実施態様では、MCP-1インヒビターの投与は、糸球体有足細胞におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性を減少させる。
上記のMCP-1インヒビターを用いる方法の実施態様において、MCP-1インヒビターは、非-ペプチド性インヒビターでもよい。更なる実施態様では、MCP-1インヒビターは、ポリペプチド例えば抗体又はオリゴヌクレオチドでもよい。本発明の方法の追加の実施態様では、インヒビターは、経口的に、心室的に、筋肉内で、腹腔内で及び/又は皮下的に投与することができる。インヒビターは、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターでも、CCR2受容体インヒビターでも又はMCP-1インヒビターでもよい。
本発明の方法の更なる実施態様は、1以上の追加の治療的モダリティの投与を含む。追加の治療的モダリティは、腎臓透析、コルチコステロイドの投与、及び非-ステロイド性抗-炎症性薬(NSAID)の投与を含んでもよい。
更なる局面では、本発明は、MMP-12インヒビター、CCR2受容体インヒビターもしくはMCP-1インヒビター又はこれらの組み合わせを投与することにより、対象の糸球体におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性を減少させることによって糸球体基底膜疾患を治療する方法を提供する。1つの実施態様では、糸球体基底膜疾患は、アルポート症候群である。更なる実施態様において、糸球体におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性の減少は、糸球体有足細胞におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性を減少させることを含む。本明細書で用いる用語「ポリペプチド」及び「ペプチド」は、交換的に用いられ、アミノ酸のポリマーを意味する。これらの用語は、アミノ酸のポリマーの特定の長さを意味しない。従って、例えば、オリゴヌクレオチド、タンパク質及び酵素という用語は、組換え技術、化学的もしくは酵素的合成を用いて製造されたものでも、又は天然であっても、ポリペプチド又はペプチドの定義内に含まれる。当該用語は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化等によって修飾又は誘導化されたポリペプチドも含む。本明細書で用いる用語「オリゴヌクレオチド(複数)」及び「オリゴヌクレオチド」は、交換的に使用され、ヌクレオチドのポリマーを意味する。当該用語は、ヌクレオチドのポリマーの特定の長さを意味しない。オリゴヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)でも又はリボ核酸(RNA)でもよい。オリゴヌクレオチドは、組換え技術、化学的もしくは酵素的合成を用いて製造することができ、又は天然でもよい。当該用語は、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化等により、修飾又は誘導体化されたポリペプチドも含む。
他に記載しない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」及び「少なくとも1つ(at least one)」は、交換的に使用され、1又は1以上を意味する。用語「含む(comprises)」及びその変形は、それらの用語が明細書及びクレームに表れる限定的な意味を有さない。
本明細書で用いる用語「室温」とは、約20℃〜約25℃、又は約22℃〜約25℃の温度を意味する。
本発明の上記概要は、本発明に開示の各実施態様又は本発明の全ての実施を記載するものではない。以下の記載は、例証的な実施態様をより具体的に実証する。適用におけるいくつかの場面では、例のリストによって指針が提供され、例は様々な組み合わせで用いられる。各例では、引用されたリストは、代表的な群として役立ち、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
例証的実施態様の詳細な説明
本発明は、糸球体基底膜疾患の治療の治療的ストラテジーを含む。糸球体基底膜疾患は、腎臓のボーマン嚢内の毛細血管網である、糸球体の適正な機能を損なう疾患又は障害である。細胞外マトリックス(ECM)の改造は、正常な成長及び発育の重要な生理的特徴であり、多数の疾患がECM合成及び分解の不均衡に関連している (Arthur, M.J., Digestion (1989), 59, 376-380)。ホメオスタティックECMターンオーバーは、共役した生合成及び分解プロセスの細やかに均衡のとれた系である。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーは、ECMの全ての成分を包括的に分解できる25を越えるメンバーからなる。MMP活性は、組織改造のいくつかの正常なプロセスに関連する。MMPの調節障害は、疾患プロセスの一因となるかもしれない。ECM分解の制御及び調節は、複雑であることが明らかになっており、アルポート症候群における系の認識は基本的なものである。予備的な証拠は、アルポート症候群に関連する腎臓の病因において、MMPの役割に関連する(Rao他 (2003) Kidney Int. 63, 1736-1748)及びRodgers他 (2003) Kidney Int. 63, 1338-55)。
マトリックスメタロプロテイナーゼ-12
マトリックスメタロプロテイナーゼ (MMP) 酵素は、糸球体でのECMの分解の主な生理的な調節因子である(Woessner, J.F. Jr., (1991) FASEB 5, 2145-2154)。MMP発現又は活性での変化は、変化したECMターンオーバーを生じることがあり、これは、糸球体性瘢痕化及び腎機能の衰退を導くことがある。糸球体疾患の多くの形態は、細胞質での変化によって特徴付けられ、ECM組成物及びターンオーバーに影響を与えることがある。MMP酵素は、糸球体細胞の挙動に影響を示すことが判明し、多数の糸球体疾患の形態に関連している (Lenz他 (2000) J. Am. Soc. Nephrol. 11, 574-581)。
マトリックスメタロプロテイナーゼファミリーは、亜鉛-依存性マトリックス-分解性酵素の大ファミリーであり、間質性コラゲナーゼ、ストロメリシン、ゲラチナーゼ、エラスターゼ、及びMMP含有膜-型RXKRを含む。マトリックスメタロプロテイナーゼファミリーは、特に限定されないが、線維性コラゲナーゼ (MMP-1)、ゲラチナーゼ-A (MMP-2)、ストロメリシン-1 (MMP-3)、マトリリシン (MMP-7)、コラゲナーゼ-2 (MMP-8)、ゲラチナーゼ-B (MMP-9)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-10 (MMP-10)、ストロメリシン-3 (MMP-11)、マクロファージメタロエラスターゼ (MMP-12)、ヒトコラゲナーゼ-3 (MMP 13)、及び膜1型-マトリックスメタロプロテイナーゼ (MT1-MMP又はMMP-14とも称される)を含む。
本発明は、糸球体疾患の治療のための治療的ストラテジーに関する。1つの実施態様では、これは、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12(MMP-12)活性レベルを減少させることによって達成される。MMP-12は、炎症性マクロファージによって分泌されるエラストリティック(elastolytic)メタロプロテイナーゼ-12として最初に同定され (Banda及びWerb (1981) Biochem. J. 193, 589-605)、Shapiro他 (Shapiro他, (1992) J. Biol. Chem. 267, 4664-4671、及びShapiro他, (1993) J. Biol. Chem. 268, 23824-23829) により構造的に同定され、EC番号3.4.24.65が付けられている。MMP-12は、一般的に、メタロエラスターゼとして分類され、その物質の1つはエラスチンである。他の物質は、フィブロネクチン、ラミニン、プラスミノーゲン及び組織因子経由インヒビターを含む。従って、MMP-12は、マクロファージエラスターゼとも称される。ほとんどのMMPは、細胞外プロテイナーゼによって開裂される時に活性化される不活性なプロタンパクとして分泌される。MMP-12プロペプチドは両側で開裂され、活性酵素を与えると考えられる。MMP-12は溶解性及び非溶解性エラスチンを分解する。
MMP-12 (マトリックスメタロプロテイナーゼ-12)は、マクロファージ及び肺性疾患に関連する広範なマトリックス基質特異性を有する強力なプロテアーゼである (Gronski他. (1997) J Biol. Chem. 272, 12189-12194)。従来、MMP-12の発現は、マクロファージ(Vos他, J. Neuroimmunol. 2003; 38, 106-114) 及びKaneko他 (2003) J. Immunol. 170, 3377-3385)、肥厚性破砕細胞 (Hou他 (2004) Bone 34, 37-47)、血管平滑筋細胞 (Wu他 (2003) Genes Cells 8, 225-234)、及びいくつかの癌細胞 (Ding他, 2002, Oncology 63, 378-384; Zucker他 (2004) Cancer Metastasis Rev. 23, 101-117) において証明されているにすぎなかった。
MMP-12の基質特異性の決定因子は、その結晶構造の解析に基づいて記載されている (Lang et al. (2001) J. MoI. Biol. 28, 731-742)。結晶構造解析は、他のMMPの構造と同一の全体的な折り畳みを示した。しかしながら、ストランドIII及びIVに結合するS-型のダブルループは、β-シート構造に近く固定され、そのHis 172側鎖を疎水性の活性部位溝に突き出している。これは、S3及びS1-ポケットを定義し、他のMMPで観察されるものよりもより高い程度で、それらを他のものと分離する。MMP-12の活性部位溝は、結合できるようにうまく備えられており、Ala-Met-Phe-Leu-Glu-Ala配列 (配列番号B)を効率的に開裂する。しかしながら、MMP-12は、広範な基質特異性を有するように思われるが、非常に幅広い基質の範囲内で部位を開裂することができる (Gronski他 (1997) J. Biol. Chem. 272, 12189-12194)。
マトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性は、当業者によって様々な方法を用いて決定することができる。例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12レベルは、生検によって得られた組織試料で決定することができる。一般的に、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12は、合成的にクエンチされた蛍光基質を用いてアッセイされる。例えば、クエンチされた蛍光ペプチドを用いるMMP-12用の特異的蛍光アッセイキットは入手可能である。この蛍光アッセイキットは、AK-403 QUANTIZYMEアッセイ系と称され、BIOMOL研究室(Plymouth Meeting, PA)より入手可能である。
糸球体基底膜疾患の治療
本発明は、対象における糸球体基底膜疾患(例えばアルポート症候群)の治療方法を提供する。当該対象は、好ましくは哺乳動物、例えば家畜(例えばウシ、ウマ、ブタ)又はペット(例えばイヌ、ネコ)である。より好ましくは、対象はヒトである。糸球体基底膜(GBM)疾患は、基底膜そのものの中に存在する病原性による他の糸球体疾患とは区別される。GBM疾患は、一般的に、当業者に公知の技術を用いて検出される血尿及び蛋白尿を引き起こす。
先に記載したとおり、GBMは、糸球体の毛管壁に存在する3層のうちの1つである。GBMの構造は、Deen他 (Deen他 (2001) Am. J. Physiol. Renal. Physiol. 281, F579-596) により記載されている。GBMは、90〜93体積%の水であるゲル-様物質である。構造的な完全性ついては、IV型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エンタクチン及び硫酸ヘパリンプロテオグリカンのヘテロポリマー網によって与えられる。IV型コラーゲンは、GBM内の繊維の相互連結網を形成し、そこには他のマトリックス成分が結合されている。ラミニンは、GBMの構造の全体性に重要な役割を果たし、糸球体の毛管壁の細胞層との相互作用に重要な役割を果たしている、と考えられている。硫酸化糖タンパク質であるエンタクチン又はニドゲンは、IV型コラーゲン、硫酸化ヘパリンプロテオグリカン及びラミニンに結合し、GBM成分が他と結合する際に重要な役割を果たすことがある。同様に、フィブロネクチンは、ラミニン、IV型コラーゲン及び硫酸化ヘパリンプロテオグリカンに結合し、GBM構成成分が互いに結合する際に重要な役割を果たすことを示唆している。硫酸化ヘパリンプロテオグリカンは、GBMの乾燥重量の1 %を含むことが明らかになっている。GBMが半透性壁として適正に機能する能力を喪失する時に、糸球体基底膜疾患が起こる。
アルポート症候群は、基底膜コラーゲン遺伝子4A3又は4A4のいずれかにおいて突然変異によって起こるGBM疾患を生じるX-関連遺伝性疾患である。アルポート症候群は、遺伝性腎炎、出血性家族性腎炎、及び遺伝性難聴及びネフロパシーとしても知られている。アルポート症候群の第一の症状の1つは、一般的に血尿又は尿中の血液である。試験は、尿中の高レベルのタンパク質及び白血球、及び老廃物、例えば血液中の尿素(***)を示すことがある。他の症状は、難聴、特に高周波数での音;視力障害、例えば白内障、無意識の眼の動き、及び角膜の異常;神経系の障害、例えば多発ニューロパシー;皮膚障害;及び血液凝固を含むことができる血小板カウント、を含んでもよい。アルポート症候群の患者は、ネフローゼ症候群をも発症していることがあり、これは、尿中の高タンパク質、血中のアルブミンと称されるタンパク質の低レベル、及び一般的には脚及び/又は腹部における腫れを引き起こすことがある。ネフローゼ症候群は、糸球体に対する損傷によって引き起こる。糸球体の構造は、ほとんどのタンパク質が、濾過されて尿中に入ることを抑制する。通常、正常個体は、24-時間にわたって尿中に150 mg未満のタンパク質を喪失する。しかしながら、ネフローゼ程度の蛋白尿では、24-時間に渡って、3.5グラムより多いか又は通常の25倍タンパク質の排尿が観察される。
アルポート症候群は、腎臓GBMの幅の不同な肥厚化及び薄膜化に基づいて臨床的に診断される。本明細書の実施例Iは、MMP-12 mRNA及びタンパク質発現が、常染色体アルポートマウスモデルの糸球体において顕著に誘導することを証明する。
従って、1つの局面において、本発明は、糸球体基底膜疾患例えばアルポート症候群におけるMMP-12の役割についての新たに明らかになった理解を用いて、糸球体基底膜疾患を治療する新規な方法を提供する。データは、MMP-12誘導が、糸球体基底膜の分解をもたらすことを示している。従って、本発明の実施態様におけるMMP-12活性の阻害は、糸球体基底膜の分解を抑制するかもしれない。次いで、MMP-12活性は、CCR2受容体活性によって調節することができる。更に、CCR2受容体活性は、CCR2受容体を刺激する、ケモカインMCP-1の活性によって影響を受けることがある。
1つの局面では、本発明は、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性を減少させることにより、糸球体基底膜疾患(例えばアルポート症候群)を治療する。本明細書で記載するマトリックスメタロプロテイナーゼ-12は、本明細書に記載する、活性を維持する特徴的なマトリックスメタロプロテイナーゼ-12酵素のポリペプチド配列と少なくとも90 %の同一性、より好ましくは95 %の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドである。ポリペプチド配列は、当業者によって容易に特定することができる。例えば、ポリペプチド配列は、質量分析、エドマン分解又はオリゴヌクレオチド配列からの予測を用いて特定することができる。更なる実施態様では、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12は、Gronski他 (Gronski他, J. Biol. Chem. (1997) 272, 12189-12194)、又はShapiro他 (Shapiro他, (1993) J. Biol. Chem. 268, 23824-23829)によって記載される、酵素であり、実質的に同一のポリペプチドである。
密接に関連する形態の酵素、例えば軽微な突然変異又は他の変化を含むが酵素的活性を維持する酵素、をカバーするために、特徴的なマトリックスメタロプロテイナーゼ-12酵素のポリペプチド配列と少なくとも90 %の同一性、より好ましくは95 %の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドも含まれる。類似性は、構造的類似性と称され、一般的には、所与の配列を有する候補ポリペプチドの残基を並べることによって決定される。例えば、MMP-12に関しては、候補のMMP-12酵素アミノ酸配列は、MMP-12の公知の配列と並べて、同一のアミノ酸数及びそれらの配列の長さを最適化する。同一のアミノ酸配列数を最適化するために、いずれかの配列又は両配列におけるギャップは、配列を作成するには許容されるが、各配列におけるアミノ酸はその適正な順序で維持する必要がある。
好ましくは、2つのアミノ酸配列は、Tatusova他 (FEMS Microbiol. Lett, 174: 247-250 (1999))により記載される、及びhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bl2.htmlで入手される、BLAST 2検索アルゴリズムのBlastpプログラムを用いて比較される。好ましくは、マトリックス = BLOSUM62; オープンギャップペナルティ(open gap penalty) = 11、拡張ギャップペナルティ(extension gap penalty) = 1、gap x_dropoff = 50、期待値 = 10、ワードサイズ = 3、及び場合によりfilter onを含む、全てのBLAST 2検索パラメータのデフォルト値が使用される。BLAST検索アルゴリズムを用いる2つのアミノ酸配列の比較において、構造的類似性は「同一性」と称される。
例えば、図13に示される配列番号17は、Shapiro他, J Biol Chem. (1993) 268(32), 23824-9により決定され、Genbank受入番号 NP 002417.1に帰属されるマトリックスメタロプロテイナーゼ-12のプロ酵素形態のアミノ酸配列を提供する。プロ酵素変形は、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12のアミノ酸配列を含み、同時に、開裂してマトリックスメタロプロテイナーゼ-12の活性形態を形成する追加のアミノ酸をも含む (Gronski他, J. Biol. Chem. (1997) 272, 12189-12194)。
より具体的には、MMP-12の活性は、プロテアーゼとして、より具体的にはエラスターゼとして機能するMMP-12の能力を称する。エラスターゼとして機能する能力は、MMP-12に、多数のポリペプチド基質を開裂する能力を与える。例えば、MMP-12は、配列番号18を含むポリペプチドを開裂する能力を有することが判明している。従って、本明細書で用いる語句「活性レベルを減少させる」とは、インヒビター(例えば、MMP-12インヒビター、CCR2受容体インヒビター又はMCP-1インヒビター)が投与されないときに、対象に存在するMMP-12活性に比べて対象におけるMMP-12の活性レベルを減少させることを称する。活性は、少なくとも50 %減少することがあり、本発明の更なる実施態様では、少なくとも75 %又は少なくとも90 %減少することがある。
1つの局面では、本発明は、MMP-12の活性を直接に減少させることによりアルポート症候群を治療する。別の局面では、本発明は、その形成を減少させることにより、MMP-12の活性を間接的に減少させることにより、アルポート症候群を治療する。MMP-12は、サイトカインにより高度に調節される。MMP-12活性化の公知の経路は、GM-CSF、MCP-1及びPDGF-BB (Wu他 (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun.. 269, 808-815; Feinberg他 (2000) J. of Bio. Chem. 275, 25766-25773; Jost他 (2003) FASEB J. 17, 2281-2283) を含む。これらの3つのサイトカインは全て、様々な糸球体疾患、及びメサンギウム細胞培養系で誘導されることが判明している。しかしながら、糸球体有足細胞におけるMMP-12誘導の細胞内メカニズムは、CCR2受容体のMCP-1活性化である、ことを実施例Iの結果は示している。従って、本発明の実施態様は、CCR2の活性化を減少させることにより及び/又はMCP-1のレベルを減少させることによりアルポート症候群を治療し、それによりCCR2受容体刺激を減少させる方法を提供する。
従って、本発明の方法は、いくつかの実施態様ではMMP-12活性を減少させるインヒビターの使用によって、GBM疾患及び/又はアルポート症候群の治療のための様々な手段を提供する。例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性は、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターを投与することにより減少させることができる。マトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性は、CCR2受容体のインヒビターを投与することにより減少させてもよく、それにより、MMP-12の形成を減少させる。マトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性は、MCP-1のインヒビターを投与することによって減少させてもよい。MCP-1がCCR2受容体を活性化するので、MCP-1の阻害は、MMP-12の形成を減少させる。マトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性は、上記の方法の組み合わせにより減少させることもできる。例えば、GBM疾患及び/又はアルポート症候群は、MMP-12インヒビター及びCCR2受容体インヒビターを投与することにより治療することができる。多数の治療方法の組み合わせ投与は、対象においてGBM疾患及び/又はアルポート症候群の治療に相乗効果をもたらす。
MMP-12インヒビターの投与による治療
1つの実施態様では、本発明は、対象にマトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターを投与することにより、糸球体基底膜疾患例えばアルポート症候群を治療する方法を提供する。本明細書で定義する、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビター(MMP-12インヒビター)は、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12に作用し、又はその生合成を阻害してマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性を減少させる、薬剤である。マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターは、本明細書では、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12のインヒビターとも称される。1つの局面では、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12は、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12に対する阻害効果を有するプロテイナーゼインヒビターである。
マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターは、MMP-12のみに特異的である必要はなく、本発明のこれらの実施態様が特異的MMP-12インヒビターを用いるかもしれないが、他の酵素に影響を有してもよい。MMP-12インヒビターも、MMP-12の触媒部位に作用する必要はないが、様々な他の方法で、例えば、活性部位を立体的に妨害する、酵素構造を変形する、又は必要なイオもしくは共因子に近づかないようにすることにより、MMP-12を阻害するかもしれない。
MMP-12インヒビターは、全身的に投与することができ、又は腎臓に優先的に投与することができる。腎臓への選択的な投与は、腎臓への直接的な送達、薬物動力学的手段によって、又は腎臓に特異的な標的薬剤の使用によって達成することができる。1つの実施態様では、MMP-12インヒビターの投与は、糸球体有足細胞でのMMP-12活性のレベルを減少させる。
様々な種類の薬剤は、MMP-12インヒビターとして使用することができる。例えば,MMP-12インヒビタターは、非-ペプチド性インヒビターでもよい。マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターは、(Matter及びSchudok (Curr Opin Drug Discov Devel. 2004 Jul; 7(4): 513-35)により参照される)医薬及び薬化学の分野で規則的に用いられる様々な構造-型デザイン方法を用いてデザインされたMMP-12インヒビターを含む。かかる非-ペプチド性MMP-12インヒビターの例は、例えば、ヒドロキサム酸誘導体、例えば、米国特許第5,552,419号明細書及び同5,672,615号明細書に記載のアリールスルホンアミド-置換ヒドロキサム酸及びその塩、及び米国特許第6,277,987号明細書及び同6,410,580号明細書に記載のスルホニルアミノ酸及びスルホニルアミノヒドロキサム酸誘導体、を含む。非-ペプチド性MMP-12インヒビターの他の例は、Compere他の米国特許出願第2005/0014816号に記載のチオフェンアミノ酸誘導体、Compere他の米国特許出願第2005/0014817号に記載のフルオロチオフェン酸誘導体、及びWarshawsky他の米国特許第6,770,640号明細書に記載の1-カルボキシメチル-2-オキソアゼパン誘導体を含む。
1つの実施態様では、MMP-12インヒビターは、CGS 27023Aとしても公知の、MMI-270、すなわちN-ヒドロキシ-2(R)-[(4-メトキシスルホニル)(3-ピコリル)アミノ]-3-メチルブタンアミド塩酸塩一水和物である (MacPhersonほか, J Med Chem. 1997 Aug 1; 40(16): 2525-32)。MMI-270は、本明細書では「MMI270」とも称され、図12に示されており、幅広い範囲のMMPの活性部位においてZn2+イオンに競争的に結合することができる新規な合成ヒドロキサム酸誘導体であり、in vitroにおいてnM濃度で活性を阻害する。MMI-270の経口投与は、第I相試験及びLevitt他(Clin Cancer Res. 2001 Jul; 7(7): 1912-22) によって報告されている薬理学的試験で用いられる方法に従ってもよい。
別の実施態様では、MMP-12インヒビターはペプチドでもよい。例えば、MMP-12インヒビターは、MMP-12に特異的に結合する抗体でもよい。本明細書で用いる用語「特異的に結合する」及び当該用語の他の置換は、好適な条件下で、異なった抗原よりもむしろ所望の抗原と優先的に相互作用することになる抗体を称する。MMP-12は、多数のアミノ酸を含むポリペプチドであるが、MMP-12に特異的に結合する抗体を生成するために用いることができる多数の抗原部位を提供する。MMP-12に対する抗体は、様々な方法で、例えばMMP-12活性部位を妨害する又は免疫系によりMMP-12を除かれるようにさせることにより、MMP-12インヒビターとして働くことができる。
抗体はB細胞によって産生され、免疫グロブリンと呼ばれる、一種のグロブリンタンパク質である。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという、5つの主な免疫グロブリンの種類がある。抗体分子は、抗原として働く大分子、例えば核酸、タンパク質及び多糖、の表面部分又はエピトープを化学的に認識することができる。一般的に、わずか2個のアミノ酸は、ある環境では効果的であるかもしれないが、ポリペプチドに結合する抗体は、約6個のアミノ酸を含むポリペプチド上のエピトープを認識する。免疫グロブリンG(IgG)抗体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖からなる。特定の種類の抗体分子は、アミノ酸配列において異なり、特定の抗原に対する抗体の特異性を説明するある小断片を除いて、類似の全体的な構造を有する。
従って、MMP-12上に存在する抗原は、脊椎動物の抗体、ハイブリッド抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、改変抗体、一価抗体、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体、Fabタンパク質及び単一ドメイン抗体を含む、抗体を産生するために使用できる。必要ならば、MMP-12は、それを免疫原性担体、例えば、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、マウス血清アルブミン、ウサギ血清アルブミン等、に共有結合的に結合することにより修飾することができる。
ポリクローナル抗体が望ましい場合には、選ばれた動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、又はトリ、例えばニワトリ)は、MMP-12由来の抗原で免疫される。ポリクローナル抗血清を製造かつ加工する技術は、当該分野で公知である(例えば、Mayer及びWalker著 Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London) (1987), Coligan他, Unit 9, Current Protocols in Immunology, Wiley Interscience (1991), Green他, Production of Polyclonal Antisera, in Immunochemical Protocols (Manson著), 第1-5頁 (Humana Press 1992); Coligan他, Production of Polyclonal Antisera in Rabbits, Rats, Mice and Hamsters, in Current Protocols in Immunology, section 2.4.1 (1992)参照)。
別の局面では、MMP-12インヒビターは、MMP-12に対するモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、当業者によって容易に製造することができる。ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を製造するための一般的な方法論は、よく知られている。不滅の抗体-産生細胞株は、細胞融合によりつくることができ、他の方法、例えばBリンパ球細胞の発現性遺伝子DNAによる直接的な形質転換、又はEpstein-Barrウイルスを用いるトランスフェクションによってもつくることができる (Monoclonal Antibody Production. Committee on Methods of Producing Monoclonal Antibodies, Institute for Laboratory Animal Research, National Research Council; The National Academies Press; (1999), Kohler & Milstein, Nature, 256:495 (1975); Coligan他, sections 2.5.1-2.6.7; 及びHarlow他, Antibodies: A Laboratory Manual, 第726頁 (Cold Spring Harbor Pub. 1988)を参照)。
本発明の別の局面では、MMP-12インヒビターは、分子遺伝的レベルでMMP-12の形成を阻害するオリゴヌクレオチドを含む。かかるオリゴヌクレオチドは、当業者によって容易に見出されるか又は決定することができる、MMP-12のオリゴヌクレオチド配列の点からデザインできる。配列は、マウス、ラット及びウサギのMMP-12遺伝子については現在よく知られている。例えば、MMP-12インヒビターは、MMP-12の翻訳及び/又は転写を停止するようにデザインされた短干渉リボ核酸(siRNA)を含んでもよい。特定のポリペプチドの転写を止めるようにデザインされたsiRNAは、当業者によって容易に調製することができる。例えば、特定のポリペプチドの転写を止めるようにデザインされた1,000を超えるsiRNAが、需要に応じてsiRNAの顧客デザインも行うAMBIONから入手可能である。siRNAに代わるものとして、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、MMP-12の形成を妨害するために使用することができ、よってMMP-12インヒビターとして役立つ。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的には18〜25ヌクレオチド長であるが、MMP-12 mRNA中の相補的配列に結合するようにデザインされ、MMP-12 mRNAの転写を抑制する。MMP-12インヒビターとしてアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる本発明の実施態様は、ヌクレアーゼによる分解に対して高い抵抗性を提供するアンチセンスオリゴヌクレオチドのモルフィノ又はホスホロチオエート誘導体を使用できる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当業者によって容易に調製することができ、例えばGene Tools, LLCから入手可能である。
CCR2受容体インヒビターの投与による治療
本発明は、CCR2受容体インヒビターの投与による、糸球体基底膜疾患及び/又はアルポート症候群を治療するための方法も提供する。CCR2受容体インヒビターの投与は、本発明の実施態様では、更なる実施態様で、対象におけるマトリックスマタロプロテイナーゼ-12活性のレベルを減少させるかもしれないCCR2受容体活性を減少させる。本明細書で定義するCCR2受容体インヒビターは、CCR2受容体に作用し、その生合成を阻害してCCR2受容体活性を減少させることになる薬剤である。CCR2受容体活性の減少は、様々な異なった方法で起こることがある。例えば、CCR2受容体活性は、CCR2受容体の数を低減させ、存在する受容体を拮抗し、受容体を修飾し、当該受容体から送られるシグナリングを抑制し、及び/又はMCP-1から受けた刺激を減少させることにより、減少させることができる。
CCR2受容体インヒビターは、全身的に投与することができ、又は腎臓に優先的に投与することができる。腎臓への優先的な投与は、腎臓への直接的な送達によって、薬物動力学的手段、又は腎臓に特異的な標的化薬剤の使用によって達成することができる。1つの実施態様では、CCR2受容体インヒビターの投与は、糸球体有足細胞でのMMP-12活性レベルを減少させる。
CCケモカイン受容体2(CCR2受容体)は、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、すなわち単球走化性を仲介するケモカイン、の受容体である。受容体は、アゴニスト-依存性カルシウム移動及びアデニル酸シクラーゼの阻害を仲介する。CCR2をコードする遺伝子は、ケモカイン受容体遺伝子クラスター領域に位置する。2つの代替的なスプライス転写変異体は当該遺伝子により発現される。第一の変異体(A)は、細胞質アイソフォームをコードする。あるいは、それは、変異体Bに比べて、フレームシフト及びダウンストリームストップコドンの使用をもたらすコード領域においてスプライスされる。アイソフォームA、受入番号NP 000638は、区別できるC-末端を有し、アイソフォームBよりも14アミノ酸長く、配列番号19に示される配列を有し、図14に示される。Charo他, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1994) 91, 2752-2756を参照。本明細書で定義するCCR2受容体は、MMP-12形成を刺激する能力を保持する特徴付けられたCCR2受容体のポリペプチド配列に対して少なくとも90 %の同一性、より好ましくは95 %の同一性を有するアミノ酸を含むポリペプチドである。ポリペプチド配列は、当業者によって容易に同定することができる。例えば、ポリペプチド配列は、質量分析計、エドマン分解、又はオリゴヌクレオチド配列からの予想を用いて特定することができる。更なる実施態様では、CCR2は受容体であり、Charo他 (Charo他, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1994) 91, 2752-2756) によって記載されるポリペプチドと実質的に同一のポリペプチドである。
特徴付けられたCCR2受容体のポリペプチド配列に対して少なくとも90 %の同一性、より好ましくは98 %の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドの包含は、受容体の密接に関連した形態、例えば些細な突然変異又は他の変化を含むがMMP-12形成を刺激する能力を保持する形態、をカバーする意図である。配列類似性は、本明細書に記載のようにして、好ましくはBLAST 2検索アルゴリズムのBlastpプログラムを用いて決定することができる。
1つの実施態様では、CCR2受容体の活性化は、CCR2受容体インヒビターを対象に投与することによって減少させる。本明細書で定義するCCR2受容体インヒビターは、CCR2受容体に作用するか又はその生合成を阻害して減少したCCR2活性をもたらす薬剤である。CCR2受容体インヒビターは、CCR2受容体のインヒビターとして本明細書でも言及されている。本発明の実施態様は特異的なCCR2受容体インヒビターを使用することができるが、CCR2受容体インヒビターはCCR2受容体にのみ特異的である必要はなく、他の受容体に対して効果を有してもよい。
様々な種類の薬剤は、CCR2受容体インヒビターとして使用することができる。例えば、CCR2受容体インヒビターは、非-ペプチド性インヒビターでもよい。CCR2受容体インヒビターは、(Matter及びSchudok (Curr Opin Drug Discov Devel. 2004 Jul;7(4):513-35)により検討されている) 医薬及び薬化学の分野で決まって用いられる様々な構造-型デザインアプローチを用いてデザインされた、CCR2受容体インヒビターを含んでもよい。CCR2受容体インヒビターの例は、例えば米国特許第5,532,272号明細書及び同5,621,003号明細書に開示されている種類の有機ゲルマニウム化合物を含む。米国特許6,936,633号明細書に開示されているピロリジノン及びピロリジン-チオン、及び米国特許出願第2005/0192302号に開示されている3-シクロアルキルアミノピロリジン誘導体を含む。好ましい有機ゲルマニウム化合物は、アンタゴニストであるプロパゲルマニウム酸ポリマー(すなわち、3-オキシゲルミルプロピオン酸)である。
プロパゲルマニウムは、CCR2に密接に関連するグリコシルフォスファチジルイノシトール-固定タンパク質を標的化することによりCCR2活性を阻害する (Yokochi他 (2001) J. Interferon Cytokine Res. 21, 389-398)。MCP-1によるCCR2活性化は、急性及び慢性の炎症性反応メカニズムと関連するので、プロパゲルマニウムを用いるこれまでの動物試験は、その抗-炎症性活性に焦点が当てられ、アテローム性動脈硬化症、腎線維症及び肝臓疾患を含む(Yokochi他, 2001 ; Eto他, 2003; Kitagawa他)。治療的潜在性は、局所的炎症部位に対する単球/リンパ球救援において、MCP-1によるCCR2活性化の中心的な役割に焦点が当てられてきた (Dambach他 (2002) Hepatology 35, 1093-1 103; Maus他, (2002) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 166, 268-273; Zernecke他 (2001) J. Immunol. 166, 5755-5762)。これは、単球/リンパ球救援に関連しない病理生物学的系におけるこの系の役割を証明する最初のレポートである。CCR2受容体インヒビターは、いくつかの実施態様では、ペプチドでよい。例えば、CCR2受容体に特異的に結合する(抗体断片を含む)抗体は、CCR2受容体インヒビターとしても用いられる。1つの実施態様では、CCR2受容体上のMCP-1結合部位に特異的な抗体も使用できる。しかしながら、受容体に結合するか又は受容体に近づく活性を減少させることになるCCR2受容体の任意の部分に特異的な抗体が用いられる。(抗体断片を含む)これらの抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、抗-イデオタイプ、動物-由来、ヒト化及びキメラ抗体を含む。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、本明細書に記載の手法を用いて調製することができる。例えば、CCR2受容体インヒビターとして有用なモノクローナル抗体は、米国特許出願第2002/0042370号に記載されている。
本発明の別の局面では、CCR2受容体インヒビターは、CCR2の形成を分子遺伝的レベルで阻害するオリゴヌクレオチドを含む。かかるオリゴヌクレオチドは、Charo他 (Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1994) 91 (7), 2752-2756) により記載され、受入番号NM 000647で提供される、ヒトCCR2遺伝子の配列の点から記載することができる配列は、マウス、ブタ、イヌ及びウシのCCR2受容体遺伝子についても知られている。例えば、CCR2受容体インヒビターは、翻訳及び/又はCCR2受容体の転写を止めるようにデザインされた短干渉リボ核酸(siRNA)を含んでもよい。特定のポリペプチドの転写を止めるようにデザインされたsiRNAは、当業者によって容易に調製することができる。例えば、特定のポリペプチドの転写を止めるようにデザインされた1,000を越えるsiRNAは、需要に応じてsiRNAの顧客デザインも行うAMBIONから入手可能である。siRNAに代わるものとして、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、CCR2受容体の形成を妨害するために使用することができ、よってCCR2受容体インヒビターとして役立つ。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的には18〜25ヌクレオチド長であるが、CCR2受容体mRNAの相補的配列に結合するようにデザインされ、CCR2受容体mRNAの翻訳を抑制する。アンチセンスオリゴヌクレオチドをCCR2受容体インヒビターとして用いる本発明の実施態様は、ヌクレアーゼによる分解に高い抵抗性を提供するアンチセンスオリゴヌクレオチドのモルフォリノ又はホスホロチオエート誘導体を使用することがある。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当業者によって容易に調製することができ、例えばGene Tools, LLCから入手可能である。
MCP-1インヒビターの投与による治療
本発明は、MCP-1インヒビターを投与することにより、糸球体基底膜疾患及び/又はアルポート症候群を治療する方法も提供する。本発明の実施態様において、MCP-1インヒビターの投与はMCP-1活性を減少させる。MCP-1活性の減少は、いくつかの実施態様では、CCR2受容体活性の減少、次いで対象におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性のレベルの減少を招くことがある。本明細書で定義するMCP-1インヒビターは、MCP-1に作用するか又はその生合成を阻害してMCP-1活性の減少をもたらす薬剤である。MCP-1活性の減少は、様々な異なった方法で起こるかもしれない。例えば、MCP-1活性は、得られるMCP-1の量を減少させることにより減らすことができる。MCP-1の量は、MCP-1の生合成を抑制することにより、又は存在するMCP-1を除去することにより減少させることができる。例えば、MCP-1の部分的分解、MCP-1の活性部位を遮断すること、又はCCR2受容体を近づかないようにそれを隠すことにより、MCP-1活性も減少させることができる。
MCP-1インヒビターは、全身的に投与することができるか、又は腎臓に優先的に投与することができる。腎臓への優先的な投与は、腎臓への直接的送達、薬物動力学的手段、又は腎臓に特異的な標的化薬剤の使用により、送達することができる。1つの実施態様では、MCP-1インヒビターの投与は、糸球体有足細胞のMMP-12レベルを減少させる。
本明細書で定義するMCP-1は、CCR2受容体を刺激する能力を保持する特徴付けられたMCP-1ケモカインのポリペプチド配列に対して少なくとも90 %の同一性、より好ましくは95 %の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドである。ポリペプチド配列は、当業者により容易に同定される。例えば、ポリペプチド配列は、質量分析計、エドマン分解、又はオリゴヌクレオチド配列からの予測を用いて特定することができる。更なる実施態様では、MCP-1ケモカインは、ポリペプチドであり、Chang他, Int. Immunol. (1989) 1, 388-397、又は Yoshimura他 (Yoshimura他, Adv. Exp. Med. Biol. (1991) 305, 47-56) により記載されるポリペプチドと実質的に同一のポリペプチドである。
特徴付けられたMCP-1ケモカインのポリペプチド配列に対して少なくとも90 %の同一性、より好ましくは95 %の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドの包含は、MCP-1の密接に関連する形態、例えば微細な突然変異又は他の変化を含むがMMP-12形成を刺激する能力を保持する形態、をカバーする意図である。配列類似性は、本明細書に記載のようにして、好ましくはBLAST 2検索アルゴリズムのBlastpプログラムを用いて決定することができる。MCP-1の特徴付けられた形態の例は、ヒトMCP-1である。ヒトMCP-1のアミノ酸配列は図15に示され、配列番号20によって表され、受入番号AAP35993に帰属する。MCP-1は、CCL2リガンドとも称される。MCP-1によるCCR2受容体の活性化の減少は、様々な異なった方法で達成できる。例えば、MCP-1形成は減少してもよく又はCCR2受容体へのMCP-1結合は妨害されてもよい。本発明の1つの実施態様では、CCR2受容体のMCP-1活性化は、MCP-1インヒビターを対象に投与することにより減少する。本明細書で定義するMCP-1インヒビターは、MCP-1に作用するか又はその生合成を阻害してMCP-1による減少したCCR2受容体活性化をもたらす薬剤である。様々な薬剤の種類は、MCP-1インヒビターとして使用できる。例えば、MCP-1インヒビターは、非-ペプチド性インヒビターでもよい。例えば、MCP-1アンタゴニストとして機能する多数の化合物を提供する、米国特許第6,809,113号明細書及び同6,737,435号明細書を参照されたい。更なる実施態様では、MCP-1インヒビターは、ペプチドでもよい。例えば、MCP-1に特異的に結合する(抗体断片を含む)抗体は、MCP-1インヒビターとして使用できる。抗体は、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよく、本明細書に記載のようにして当業者により容易に製造することができる。MCP-1は、分子遺伝的レベルでCCR2の形成を阻害するオリゴヌクレオチドを使用することにより、遺伝子療法技術により阻害することもできる。CCL2リガンドのアミノ酸配列は、ヒト、マウス、ウシ及びイヌにおいて決定されている。かかるオリゴヌクレオチドは、Chang他, Int. Immunol. (1989) 1, 388-397により記載され、受入番号NM 002982でNCBIから入手可能である、ヒトMCP-1遺伝子の配列の点からデザインすることができる。
追加の治療モダリティ
本発明の方法では、1以上の追加の治療モダリティが、実施態様によってはMMP-12活性のレベルを減少させることがあるインヒビターを用いて、糸球体基底膜疾患(例えばアルポート症候群)の治療を補うために使用することができる。治療モダリティは、本明細書では、疾患の理学療法を含む治療法又は薬、例えば外科手術又は化学療法として定義される。本発明において有用な追加の治療モダリティは、特に限定されないが、腎臓透析、コルチコステロイドの投与、及び/又は非-ステロイド性抗-炎症性薬(NSAID)の投与を含んでもよい。かかる追加の治療モダリティは、薬剤の投与の前、後及び/又は同時に投与することができる。
腎臓透析は、例えば血液透析及び腹膜透析を含んでもよい。血液透析は、大量の液体中に浸漬されるセルロース-膜を使用する。血液は、このチューブを通して汲み上げられ、患者の血管に戻る。この膜は、血中のほとんどの溶質をチューブを通過させるがタンパク質及び細胞を保持することになる、低(cut-off)分子量を有する。一方、腹膜透析は、人工膜を使用しないが、腹膜と称される患者の腹腔の上皮を透析膜として使用する。液体は腹腔に注射され、溶液は血液からこの液体に拡散する。数時間後に、液体をニードルで除き、新鮮な液体と交換する。
コルチコステロイド及び/又は非-ステロイド性抗-炎症性薬の投与は、追加の治療モダリティを示す。コルチコステロイドは、副腎皮質内で産生される、天然のコルチコステロイドの効果を治療上真似る又は増大するために使用されるステロイドの一般的な化学構造を有するいくつかの合成又は天然物質の任意の1つを含む。コルチコステロイドの例は、プレドニソン、ベータメタゾン、メチルプレドニゾロンアセテート、ヒドロコルチゾン及びデキザメタゾンを含む。コルチコステロイドは、免疫系を抑制し、腎臓内の炎症を減少させる、追加の治療モダリティとして効果的である。
非-ステロイド性抗-炎症性薬(NSAID)は、追加の治療モダリティとして腎臓内の炎症を減少させるために使用してもよい。NSAIDは、例えば、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサール、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メフェナミン酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク及びトルメチンを含む。
薬剤の調合及び投与
本発明の方法では、薬剤は、対象への治療剤の投与に用いられる1以上の多くの経路によって投与することができる。例えば、MMP-12インヒビターは、経口的に、局所的に、静脈内で、筋肉注射で、腹腔内に及び/又は皮下的に投与することができる。
本発明の方法は、患者(すなわち対象)、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトへの、所望の効果を生成させるために効果的な量での(CCR2受容体のインヒビターを含む)MMP-12インヒビターの投与を含む。(CCR2受容体のインヒビターを含む)MMP-12インヒビターは、腸内投与(経口、直腸等)又は非経口投与(注射、インターナルポンプ等)用に調合することができる。投与は、組織への直接的な注射、動脈内注射(interarterial injection)、静脈内注射、又は他の内部的投与手段、例えば移植ポンプの使用によってもよく、あるいは粘膜への組成物の送達を促進するようにデザインされた担体中で組成物を粘膜に接触させること、例えば座薬、点眼薬、吸入器、又は他の類似の投与方法によってもよく、あるいはシロップ剤、液剤、ピル剤、カプセル剤、ゲル被覆錠剤、又は他の類似の経口投与法の形態での経口投与によってもよい。活性剤は、絆創膏、パッチ、増粘剤等に取り込まれるか、又は制御された放出のための生物-分解性マトリックスに包含されるかもしくは取り込まれる。
内部投与のための担体は、組成物の内部投与を促進するために一般的に用いられる任意の担体、例えば血漿、殺菌した生理食塩水溶液又は第IV溶液等でよい。粘膜による投与のための担体は、当該分野で周知である。経口投与のための担体は、当該分野で周知の任意の担体でよい。
調合物は、単位投薬形態で簡便に提供することができ、医薬の分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。全ての方法は、活性剤を、1以上の補助的な成分を構成する担体に会合させるステップを含んでもよい。一般的に、調合物は、活性剤を液体担体、細粒された固体担体又はこれらの両方に一様にかつ密接に会合させることにより、もし必要ならば、生成物を所望の調合物に形成することにより調製される。
非経口投与に適した調合物は、好都合なことに、好ましくはレシピエントの血液と等張である、活性剤の殺菌性水溶性調製物又は活性剤の殺菌性粉末の分散体を含む。液体調製物中に含まれうる等張剤は、糖類、緩衝剤及び塩化ナトリウムを含む。活性剤の溶液は、水で調製することができるが、場合により、非毒性界面活性剤と混合される。活性剤の分散体は水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、植物油、グリセロールエステル及びこれらの混合物中で調製することができる。最終的な投薬形態は殺菌性、液体で、かつ製造及び保存の条件下で安定である。必要な流動性は、例えば、リポソームを用いることにより、分散体の場合には好適な粒子サイズを使用することにより、又は界面活性剤を用いることにより達成することができる。液体調製物の殺菌は、活性剤の生物活性を保存する任意の簡便な方法により、好ましくはフィルター殺菌により、達成することができる。粉剤を調製する好ましい方法は、殺菌性注射用溶液の真空乾燥及び凍結乾燥を含む。その結果生じた微生物汚染は、様々な抗生物質、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等を含む抗菌剤、抗ウイルス剤及び抗真菌剤を用いて抑制することができる。長期間に渡る活性剤の吸収は、遅延用剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含むことにより達成することができる。
経口投与に適した調合物は、別個の単位、例えば錠剤、トローチ剤、カプセル剤、トローチ剤、ウェハー又はサッシェとして提供することができる。各々は、規定量の活性剤を粉末又は顆粒として、活性剤を含むリポソームとして又は水溶液又は非-水溶性液体の溶液又は懸濁液、例えばシロップ、エリキシル、エマルション又はドラフトとして含む。活性剤の量は、投薬レベルが対象に所望の結果を生じるために効果的であるような量である。
スプレー式点鼻調合物は、保存剤及び等張剤を含有する、活性剤の精製水溶液を含む。かかる調合物は、好ましくは、鼻粘膜と適合するpH及び等張状態に調整される。直腸又は膣内投与の調合物は、好適な担体例えばココアバター、硬化油脂又は硬化脂質カルボン酸と共に座薬として提供することができる。眼科調合物は、pH及び等張因子が好ましくは目のpH及び等張に合致するように調整されることを除いて、鼻スプレーと同様な方法により調製することができる。
局所調合物は、1以上の媒体、例えば鉱物油、DMSO、ポリヒドロキシアルコール又は局所医薬調合物に使用される他の基材中に溶解又は懸濁されている活性剤を含む。
活性剤の有用な投薬は、例えば実施例の項でより詳細に述べる様々なin vitro及びin vivoモデル系を含む動物モデルにおけるin vitro活性とin vivo活性とを比較することにより決定することができる。ヒトへの、マウス及び他の動物における効果的な投薬の外挿法は当該分野で公知である。
錠剤、トローチ剤、ピル剤、カプセル剤等は、1以上の以下のものを含んでもよい:結合剤例えばトラガカントガム、アカシア、コーンスターチ又はゼラチン;賦形剤例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤例えばコーンスターチ、ジャガイモスターチ、アルギン酸等;滑沢剤例えばステアリン酸マグネシウム;甘味料例えばスクロース、フルクトース、ラクトース又はアスパルテーム;及び天然又は人工風味剤。単位投薬形態がカプセル剤である場合には、液体担体例えば植物油又はポリエチレングリコールを更に含んでもよい。様々な他の材料は、コーティングとして存在するか、又は固体単位投薬形態の物理的形態を修飾するために存在してもよい。例えば、錠剤、ピル剤又はカプセル剤はゼラチン、ワックスウ、セラック又は糖類等で被覆してもよい。シロップ又はエリキシルは、1以上の甘味剤、保存剤例えばメチル-又はプロピルパラベン、糖類の結晶化を遅らせる薬剤、任意の他の成分の溶解性を増加するための薬剤、例えば多価アルコール、例えばグリセロール又はソルビトール、色素、並びに風味剤を含んでもよい。任意の単位投薬剤形の調製に使用される材料は、使用される量において、実質的に非毒性である。活性剤は、徐放性調製物及び装置に組み込んでもよい。
薬剤の投薬用キット
本発明は、本明細書に記載の方法を実行するためのキットも提供する。キットは、少なくとも1投与に十分な量で好適な包装材料中に本発明の1以上の薬剤を含む。場合により、本発明を実施するために必要とされる他の薬剤例えば緩衝剤及び溶液も含まれる。包装された薬剤の使用の教示も典型的に含まれる。
本明細書で用いる語句「包装材料」は、キットの内容を収納するために用いられる1以上の物理的構造を称する。包装材料は、周知の方法により、好ましくは殺菌性で汚染物質のない環境を提供するために、構築される。包装材料は、薬剤(複数)が本明細書に記載の方法のために用いられることを示すラベルを有する。加えて、包装材料は、本方法を実行するためにキット内の材料がどのように用いられるかを示す教示を含む。本明細書で用いる用語「包装」は、固体マトリックス又は材料、例えばガラス、プラスチック、紙、フォイル等を称し、一定の限度内で薬剤(複数)を保持することができる。従って、例えば、包装は、薬剤(複数)の好適な量を含むために使用されるガラスバイアルでもよい。「使用のための教示」は、典型的には、薬剤の使用の条件を記載する明白な表現を含む。
本発明は、以下の実施例によって例証される。具体的な実施例、材料、量及び方法は、本明細書に記載の発明の範囲及び精神に従って広く解釈されるべきであると理解されたい。
実施例 1:アルポート症候群におけるMMP-12-介在損傷の阻害
本実施例では、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12(MMP-12)がアルポートマウスの糸球体で顕著に誘導されることが示されている。アルポートマウス由来の糸球体での誘導の程度は、糸球体疾患の進行と非常に関連する。MMP-12誘導の細胞メカニズムは、糸球体有足細胞上のCCR2受容体の単球走化性タンパク質-1(MCP-1)-介在活性化として同定される。インヒビターMMI 270又はCR2受容体アンタゴニストであるプロパゲルマニウムのいずれかによるMMP-12の阻害は停止し、進行性GBM肥厚化を逆転させることがあり、糸球体フィルターの完全な状態を維持する。これらのデータは、アルポート症候群でのGBMの不同な肥厚化が、糸球体有足細胞におけるMMP-12の高発現に起因して、GBMのタンパク質分解的な分解により引き起こる、ことを示唆している。MMP-12誘導の細胞メカニズム(糸球体有足細胞上のCCケモカイン受容体2(CCR2)MCP-1の活性化)は新規であり、全く予測できず、マクロファージにおいて以前に記載されているのみである。
本実施例は、メタロエラスターゼ(MMP-12)発現がアルポートマウスの糸球体有足細胞では40-倍よりも高く誘導され、MMP-12活性の抑制はアルポートマウスモデルでの腎臓病を減少させる、ことを示している。MMP-12の発現は、マクロファージ及び肥厚性軟骨細胞に限定されると以前には考えられていた。MMI-270、すなわちMMP-12のインヒビターによるアルポートマウスの治療は、大幅に修復されたGBM超構造及び機能をもたらした。MMP-12が、アルポートマウスの糸球体有足細胞上のCCR2受容体のMCP-1活性化により誘導され、そしてCCR2受容体シグナリングの阻害が、MMP-12 mRNAの誘導を妨害しGBM損傷を抑制する、ことも示された。従って、不同的なGBMの「肥厚化」は、誘導されたMMP-12活性から生じるGBMの限局的な分解を示すことがある。
マウス及びMMPインヒビター投与
アルポートマウスモデルが記載されている(Cosgrove他 (1996) Genes Dev. 10, 2981-2992)。使用した対照マウスは、いずれもコラーゲンα3(IV)アレルについて正常であり、アルポート突然変異用の二重異種交配の産物である。本試験における動物の使用は、承認された委員会IACUCプロトコールに従って行った。マウスの疼痛及び不快感を最小限にするために最大のケアを行った。MMPインヒビターを4〜7週令で投与した。投与する前に全ての薬物を新たに調製した。BAY 129566を0.5 %カルボキシメチルセルロースを含む懸濁液中で乳化し、4 mgを経口ガーベージで1日に1回投与した。MMI-270を0.9 %生理食塩水に溶解し、I.P.注射(50μg/g体重)により1日1回投与した。
糸球体単離
マウス糸球体の単離を、Takemoto他(Am. J. Pathol. (2002)161 , 799-805) により記載されているようにして行った。方法は、不活性化された4.5μM Dynabeads (Dynal Biotech, Oslo, Sweden)を用いる心臓潅流を含み、次いで、コラゲナーゼ消化及び磁石を用いる糸球体単離を含む。調製物は、一貫して99 %を越える純度であることが判り、マウスにおける糸球体-特異的遺伝子発現の信頼性の高い評価を可能にする。
リアルタイムPCR分析
逆転写(RT)の前に混入してゲノムcDNAを除くために、37℃で1時間、RNaseを混入していないDNase I (Gibco BRL, USA)で、RNA試料を全て処理した。オリゴdtプライマーと共にSuperscript II (GIBCO BRL)を用いて、総RNAを逆-転写した。連続試料中のMMP転写物の定量が添加したRNAの量の相違、RNAの完全な状態、又はRT-PCR阻害のレベルの試料間相違によって影響されなかったことを確実にするために、GAPDH遺伝子を標的化する内部対照反応を各反応について複数回行い、MMP転写物の結果を標準化するために使用した。ネズミGAPDH用のプライマー及びTAQmanプローブは、Applied Biosystems (Catologue # 4308313)から購入し、製造者の教示に従って使用した。データは、検出閾値(CT)法を用いて分析した。対照のmRNA量は、IX試料として表し、アルポート試料由来の全ての他の量は対照に比較した倍差として表した。逆転写酵素が反応混合物から除かれる繰り返しRT-PCR反応では、測定できる蛍光シグナルは検出されなかった。プライマーは、標準的なエンドポイントRT-PCRにより試験し、得られた単一バンドは検証された配列であった。TaqMan ABI 7000 Sequence Detection System (Applied Biosystems, Foster City, CA)で、リアルタイムRT-PCRを行った。
PCRは、AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ、AmpEraseウラシル-N-グリコシレート、dUTPを含むdNTP、陰性対照(passive Reference)及び最適化緩衝剤成分を含む、TaqMan Universal PCR Master Mix (Applied Biosystems)で行った。AmpEraseウラシル-N-グリコシレート処理は、持ち越しPCR産物の可能な再増幅を抑制した。各標的分子は、同一のPCRチューブ内のプライマー及びGAPDH用TaqManプローブにより共増幅した。PCR反応の総体積は、50マイクロリットル(μl)であった。PCR反応中の各オリゴヌクレオチドの最終濃度は以下のとおりであった:GAPDHプライマー, 100 ナノモーラー (nM); 標的分子用のプライマー, 900 nM; GAPDH用のTaqManプローブ, 200 nM; 及び標的分子用のTaqManプローブ, 250 nM。
Figure 2008512463
プライマー及びVIC-プローブを含むTaqMan Rodent GAPDH対照試薬 (Cat # 4308313)はApplied Biosystemsから購入した。
サーマルサイクリングは、それぞれ至適EmpErase UNG活性及びof AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼの活性化のために、50℃で2分及び95℃で10分のインキュベーションにより開始した。この初期ステップの後に、40サイクルを行った。各PCRサイクルは、融解のために95℃で15秒、及びアニーリング及び拡張のために60℃で60秒からなった。二回蒸留(dd)H2Oからなる全ての対照は、標的及びハウスキーピング遺伝子に陰性であった。
Figure 2008512463
データは、平均±SDで示す。平均間の差は、スチューデントt-検定を用いて有意差を試験した。差は、P<0.05のレベルで有意であると考えられた。
免疫組織化学
7-週令の正常及びアルポートマウス由来の腎臓の凍結切片(4マイクロモーラー(μM))を乾燥し、冷アセトンに浸漬して固定し、MMP-3に特異的な抗体 (ウサギポリクローナル抗-ヒトMMP-3、Dr. Z. Gunza-Smith, Miami, FLから提供を受け、1:200希釈で使用した)、MMP-12(マウスMMP-12に対するウサギポリクローナル抗体、Yoshikatsu Kanekoにより提供を受け、1:100希釈で使用した)、IV型コラーゲンα1/2鎖(マウスIV型コラーゲンに対するウサギポリクローナル、Biodesign, Inc., Saco, Maine、1:200希釈で使用した)、フィブロネクチン (ヒト血漿フィブロネクチンに対するウサギポリクローナル、Sigma Chemical Co., St. Louis, MO.、1:200希釈で使用した)を用いて、免疫組織化学染色分析に供した。抗-CD31抗体を直接的にAlexa 568(Molecular Probes, Eugene Oregon)グ複合化し、Immunotech (Marseille, France)から購入した。二重免疫蛍光免疫染色のために、本抗体を、二次抗体を含む混合物に添加した。全ての抗体を7 %無脂肪ドライミルクのPBS溶液に希釈し、非-特異的結合を減少させた。加湿チャンバー内で一次抗体を室温で2時間反応させた。PBSでの3回の5-分間洗浄の後、室温で1時間、FITC-複合化二次抗体でスライドをインキュベートした(ヤギ抗-ウサギ、Vector Laboratories, Burlingame, MA.、1:200で使用した)。切片をカバー・スリップにかけ、覆い、画像分析した。Olympus BH-2蛍光顕微鏡に接続されたCytovision Ultra画像分析装置を用いて、画像を集めた。
ノーザンブロット分析
ノーザンブロット分析を先に記載のようにして行った (Cosgrove他, 1996, Genes Dev. 10, 2981-2992)。総糸球体RNAの10マイクログラムを1 %アガロースホルムアルデヒドゲル上で分画し、ナイロン膜に転写した。プローブは、MMP-12転写物のゲル精製PCR断片(本明細書に記載のプライマー及びプローブを参照)か、又はマウスβ-アクチン(Ambion, Inc., Austin TX)用のDECAテンプレートのいずれかであった。ランダムプライマー又は製造者によって提供されるDECA法のいずれかを用いて、プローブを32P-dCTPで標識した。ULTRAhybハイブリダイゼーション緩衝剤 (AMBION)を用いて50℃で終夜ハイブリダイゼーションを行い、製造者の教示に従って膜を洗浄した。膜をX-線フィルムに終夜曝した。
In Situハイブリダイゼーション
リボプローブ調製:リアル-タイムPCR用の上記プライマーを用いて、MMP-12 cDNAの631 bp断片を、逆転写された13日令マウス胚RNAから増幅した。得られた断片をpCRlI topoクローニングベクター(Invitrogen)にクローン化し、配列を検証した。HindIIIを用いてこのプラスミドの15マイクログラムを線形化し、5'オーバーハングを提供した。フェノール/クロロホルム抽出を用いてDNAを単離した。T7ポリメラーゼを用いるBoehringer Mannheim DIG標識キットで推奨されるように、DNAの1マイクログラム(1μg)を標識した。非放射活性in situハイブリダイゼーション適用マニュアル(Roche)で推奨される、プローブ及び標識された対照のナイロン膜へのスポット並びに展開は、標識収率を見積もった。ハイブリダイゼーション用に、6マイクロメーター(μm)パラフィン切片を、37℃で10分間、0.1 モーラー(M) Tris pH 7.5中で3μg/mlプロテイナーゼKで消化した。それらは、50 %脱イオン化ホルムアミド、2x SSC、10 Tween 20及び1ミリグラム (mg) E.coli tRNA中で、45℃で1時間プレハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション溶液は、50ナノグラム(ng)熱-変性リボプローブ、50 %脱イオン化ホルムアミド、8 %硫酸デキストラン、10 % Tween-20、2x SSC、20 % tRNA及び10 mg/ml加熱サケ***からなった。スライドを45℃で終夜ハイブリダイズした。25マイクロモーラー(mM)レバミソール(Levamisole)を加えた彩色基質溶液と共にスライドを展開するために、DIG Wash及びBlock緩衝剤のセットを使用した。
電子顕微鏡
先に記載(Cosgrove他, 1996, Genes Dev. 10, 2981-2992)のようにして透過型電子顕微鏡を実施した。先に記載(Bhattacharya他, 2002)のように、IV型コラーゲンの超構造的局在化試験を基本的に行った。7-週令対照及びアルポートマウス由来の腎臓を、2 %パラホルムアルデヒドのPBSで心臓潅流により固定し、この同一の溶液で終夜、後固定した。極薄(70 nm)切片を室温で4時間、ヤギ抗-コラーゲンIV型抗体 (Southern Biotechnology, Birmingham, AL) と反応させた。PBSで6回、10分間洗浄した後、試料を10ナノメーター(nm)金-複合化抗-ウサギ抗体 (Vector Laboratories, Burlingame, CA) と室温で2時間反応させた。空気乾燥する前にグリッドを洗浄し、酢酸ウラニルで対比染色し、透過型電子顕微鏡を用いて検査した。
ウェスタンブロット分析
単離した糸球体を、0.1 % SDS、0.5 %デオキシコール酸塩、1 % Nonidet P-40、100 mM NaCl及び10 mM Tris Cl、プロテアーゼインヒビター (P8340, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO) を含むpH 7.4 免疫沈降緩衝剤からなる、RIPA (Radio Immuno Precipitation Assay) 溶解緩衝剤で溶解した。溶解物をマイクロ遠心管に移し、4℃で10分間、15,000 gで遠心した。商業的なBradfordマイクロプレートアッセイ (Pierce Biochemicals, Rockford, 111) を用いて総タンパク質について、上清をアッセイした。抗血清(ヤギ抗-ヒトCR2, Santa Cruz Biotechnology, Inc, Santa Cruz, CA)を10グラムのタンパク質に加え、4℃で終夜インキュベートした。プロティンA-セファロースCL-4Bビーズ(15マイクロリットル/ミリリットル(μl/ml)の50 %スラリー)を添加し、4℃で1時間、ロッキングプラットフォーム上でインキュベートし、遠心によりペレット化し、10 mM NaClで6回及び100 mM NaClで1回、洗浄した。プロティンA-セファロース4B Clを、ゲルローディング緩衝剤に再懸濁し、加熱し、遠心した。各試料の免疫沈降タンパク質抽出物を、12 % SDS-ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)で電気泳動し、0.45μm PVDF Immobilon P転移膜 (Sigma, St. Louis, MO) に移した。膜を、TBST (Tris-緩衝生理食塩水 + 0.5 % Tween 20; Fisher Scientific, Pittsburgh, PA) 及び5 % BSA (ウシ血清アルブミン; Sigma, St Louis, MO)の溶液で、終夜、4℃でクエンチした。抗-CCR2抗体をTBST及び3 % BSAの溶液で1:100に希釈し、ブロットをこの溶液で終夜インキュベートした。TBST溶液で数回洗浄した後、ブロットを、抗-ヤギ二次抗体 (西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体; Sigma, St. Louis, MO)を含むTBST溶液でインキュベートし、室温で1時間、1:20,000に希釈した。次いで、ブロットをTBSTで数回洗浄し、ECL (Enhanced Chemiluminescenceキット; Amersham Biosciences Corp, Piscataway, NJ)と反応させ、X-線フィルムに晒した。
CCR2アンタゴニスト、プロパゲルマニウムによるマウスの処置
プロパゲルマニウム(3-オキシゲルミルプロピオン酸ポリマー, Sanwa Kagaku Kenkyusho Co., Nagoya, Japan) を5週令から日に1回ガーベージにより経口的に投与し(10ミリグラム/キログラム(mg/kg)の1 %ゼラチン)、腎臓を7週令で採取した。1群3動物、アルポートマウス及び対照の同腹のマウスに薬物又はビヒクルのみを与え、分析した。
結果
MMP-12発現は、アルポートマウス及びヒト由来に糸球体で顕著に誘導される
新規に記載された糸球体単離技術(Takemoto他 (2002) Am. J. Pathol. 161 , 799-805)を用い、7週令の正常マウス及びアルポートマウス(7週令のアルポートマウスは糸球体疾患が進行している)から純粋な糸球体RNA調製物を得た。総RNAを調製し、内部クエンチFAM複合化プライマー法を用いて、リアル-タイムRT-PCRにより図1に示すMMPの発現について分析した。RNAローディングの内部対照として、GAPDHを全ての反応で複数回行った。3つの別個の糸球体調製物を3点で分析した。図1の結果は、MMP-2及びMMP-14をコードするmRNAは、対照糸球体に比べて疾患アルポート糸球体で著しく変わらなかったことを示す。
対照的に、MMP-3及びMMP-9をコードするmRNAは、対照に比べてアルポート糸球体では4-〜5-倍高かった。目立ったことに、MMP-12 mRNAの発現は、正常マウスに比べてアルポートマウスでは40-倍よりも高かった。MMP-7も分析した;しかしながら、MMP-7の発現は、糸球体では観察されなかった(データ非表示)。
MMP-3及びMMP-9の誘導が糸球体疾患において十分に記録されているが (Suzuki他 (1997) Kidney Int. 52, 111-119、及びUrushihara他 (2002) Nephrol Dial Transplant. 17, 1189-1196)、正常又は疾患糸球体におけるMMP-12の発現は、MMP-12発現が浸潤マクロファージに起因する (Kaneko他 (2003) J. Immunol. 170, 3377-3385)という自己免疫糸球体腎炎を除いて、記録されていない。正常及び7-週令のアルポートマウス由来の腎臓は、MMP-3又はMMP-12のいずれかに特異的な抗体を用いて免疫染色された。
図2(A及びB)の結果は、MMP-12が対照に比べてアルポートマウスで誘導されたことを示す。パネルBの矢印は、糸球体有足細胞と考えられるものの周囲に、MMP-12に対する最も強い免疫染色が観察されたことを示している。MMP-12の誘導が糸球体有足細胞で実際に起こったことを確認するために、in situハイブリダイゼーション分析を行った。図2のパネルDの結果は、糸球体(矢印)の外周に並んでいる細胞中のMMP-12 mRNAについて強いシグナルが観察されたことを示す。これは、糸球体有足細胞内の局在化と一致する。MMP-12 mRNAは、正常な同腹子の有足細胞では観察されなかった(図2、パネルC、矢印)。図2(パネルF)は、ヒトアルポート糸球体がMMP-12の高レベルを発現するが、MMP-12免疫染色は、正常なヒト由来の糸球体では観察されないことを示す(図2、パネルE)。アルポート糸球体におけるMMP-12の観察された発現は、浸潤マクロファージによる発現を表すことがある可能性があった。これを解決するために、MMP-12及びCD11bに特異的な抗体(単球及びマクロファージに特異的なマーカー)を用いて二重免疫蛍光分析を行った。図3で提供された結果は、アルポート糸球体には単球又はマクロファージが存在せず、間質性マクロファージ(赤色のCD11b陽性細胞)はMMP-12を発現しないことを示す。
MMP-12 mRNAが糸球体疾患の進行の一機能として誘導できるか否かを決定するために、糸球体RNAをノーザンブロットにより分析した。3つの別個の調製物由来の糸球体を併せ、総RNAをMOPSゲル上に分画し、ナイロン膜に転写し、MMP-12に特異的な放射性標識プローブにハイブリダイズした。図4の結果は、対照マウス由来のRNAの発現の不存在、及び4-週令のアルポートマウスのシグナルの明らかな存在によって検証されるように、MMP-12 mRNAが誘導可能であることを示す。シグナルは7-週で著しく強まった。これは、糸球体疾患の進行の過程でMMP-12 RNAの進行性誘導を示すものである。
MMP-12活性の阻害は、正常なGBM構造及びアルポートマウスにおける糸球体の機能を修復する。MMP-12は、IV型コラーゲン、ラミニン、エンタクチン及びプロテオグリカンを含む公知の基底膜タンパク質の多くを含む、広い基質特異性を有する(Gronski他 (1997) J Biol. Chem. 272, 12189-12194)。従って、MMP-12におけるこのような顕著な増加は、おそらく、アルポート糸球体におけるGBMの機能的に完全な状態に影響を与えることがあるようであった。これを試験するために、MMPの2種のインヒビターを用いた。表1で記載したように、BAY 129566は、MMP-2、3、9及び14を阻害したが、MMP-12を阻害しなかった(Gatto他, (1999) Clin. Cancer Res. 5, 3603-3607、及びHidalgo他 (2001) J. of the Nat. Cancer Ins. 93, 178-193)。MMI-270は、MMP-2、MMP-3、MMP-9、MMP-14及びMMP-12を阻害した (MacPherson他 (1997) J. Med. Chem. 40, 2525-2532)。当該活性は、化合物の臨床的な適用の基礎となっており、この化合物は、マクロファージ-由来のMMP-12が線維成形の基礎となっていることが明らかになっている肺線維症を治療することを主に目的とする。
アルポート腎臓疾患の進行に対するこれらの2種の化合物の影響を評価するために、4〜7週令まで、アルポートマウスにMMI 270又はBAY 129566のいずれかを投与した。動物にPBSを経噴門部(transcardially)潅流させ、腎臓を採取した。コラーゲンIVα1及びα2鎖及びフィブロネクチンに特異的な抗体を用いて、糸球体及び尿細管間質の損傷の程度を評価するために免疫蛍光顕微鏡により切片を分析した。図5で得られた結果は、MMI 270-処置動物が、年齢が一致する非処置アルポートマウスに比べてほとんど糸球体又は尿細管間質の疾患を有さないようである、ことを証明する(パネルC及びGと、B及びFを比較されたい)。この観察は、非処置アルポートマウスと同じ腎臓疾患の程度を示した、BAY 129566-処置動物とは対照的である(パネルD及びHを、B及びFと比較されたい)。当該観察は、MMI-270-処置アルポートマウスにおける蛋白尿の劇的な減少により更に実証された(図6)。これは、このインヒビターは糸球体フィルターの完全な状態を主に維持したことを示唆するものである。糸球体疾患の発症の後期(6〜7週令)では、MMI-270は、通常観察される蛋白尿の進行的な増加を止める(図6、パネルB)。これは、MMP-12阻害が、進行した疾患状態にさえある糸球体の病原性の進行を更に止めるだろうことを示唆する。
MMI-270-処置マウスにおける糸球体基底膜の電子顕微鏡分析は、試験した糸球体のほとんどで、通常の糸球体基底膜構造のほぼ完全な修復を明らかにした。図7は、糸球体のループ状毛細血管において、GBMの典型的な観察された改善を示す。通常のGBMをパネルAに示す。非処置アルポートマウスは、GBMの著しく不同な肥厚を示した(図7B)。MMI-270処置マウスは、通常の糸球体基底膜構造の顕著な修復を示した(図7C)。この観察は重要である。糸球体基底膜構造の修復は、蛋白尿によって測定される糸球体機能の修復の基礎となるようである。アルポート症候群におけるGBMのタンパク質分解的な分解は、進行性の不同なGBM損傷及び有足細胞足突起消失の基礎となることがある。アルポート腎臓由来のIV型コラーゲンは、正常な腎臓由来のIV型コラーゲンよりもin vitroでのタンパク質分解的な分解をより受けやすい (Kalluri他 (1997) J. Clin. Invest. 99, 2470-2478、おそらく、内部鎖のジスルフィド架橋の減少した数に起因する (Gunwar他 (1998) J. Biol. Chem. 273, 8767-8775)。
MMP-12の高発現がGBMの進行性タンパク質分解的分解を招く場合には、観察されたGBM不同は、局所的分解の領域を示すことがある。これを直接的に視覚化する試みにおいて、IV型コラーゲンα1及びα2鎖に対する抗体を用いて、コロイド状金免疫細胞化学を採用した。アルポートGBMのIV型コラーゲン網の完全性を試験するために、コロイド状金超構造局在化を使用した。抗体は、IV型コラーゲンα1及びα2鎖に対するものであった。二次的抗体を10 nmコロイド状金ビーズに複合化した。図8で得られた結果は、罹患したアルポート糸球体毛細血管におけるGBMの2種の領域を示す。パネルAは、通常の超構造を有する領域を示す。ここで、GBMの基底膜緻密層に沿って免疫金標識は局在した。パネルBは、GBMのおける局所的肥厚の領域を証明する。パネルAとは対照的に、免疫金は、不同な局在化パターンを示し、GBMの上皮又は内皮の境界のいずれかに沿って標識は塊になっている。パネルBの矢印は、一致した観察を意味する。免疫金クラスターが上皮境界上に観察されるときに、反対の内皮境界にはクラスターは比較的存在せず、その逆もまた同じである。このことは、内因性タンパク質分解的(endoproteolytic)損傷で予測される、基底膜コラーゲンの超構造の***及び開裂と一致する。
アルポート糸球体におけるMMP-12誘導の細胞メカニズムは、糸球体有足細胞上のCCR2受容体のMCP-1-介在活性化である。CCR2受容体の遮断は、MMP-12発現を抑制し、アルポートマウスにおけるGBM構造を修復する。マクロファージにおけるMMP-12誘導の細胞メカニズムは、顆粒球/単球走化性因子(GM-CSF)、インターロイキン-1β(IL-β)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)に関連する(Wu他 (2003) Genes Cells 8, 225-234)。調節系の発現について、正常マウス及びアルポートマウス由来に糸球体を試験した。図9(パネルA)の結果は、CCR2 mRNAが正常マウスに比べてアルポートマウス由来の糸球体では顕著にアップ-レギュレーションが起こったことを示す(レーン3及び4)。アルポートマウス由来の培養糸球体有足細胞も、正常同腹マウス由来の有足細胞に比べてCCR2 mRNAの高発現を示した(レーン1及び2)。CCR2タンパク質は、正常糸球体に比べてアルポート糸球体では上昇したことをウェスタンブロット分析により確認した(図9、パネルC)。加えて、CCR2タンパク質は培養有足細胞の抽出物で観察されたが、培養メサンギウム細胞からは特に得られなかった(図9、パネルC)。MCP-1 (CCL2とも称される)は、CCR2のケモカインリガンドであり、正常マウス由来の糸球体に比べてアルポートマウス由来の糸球体においても誘導された(図9、パネルB)。従って、ケモカイン/リガンド系は存在し、アルポート糸球体において誘導され、アルポート糸球体有足細胞におけるMMP-12誘導の細胞メカニズムを構成することができる。
このメカニズムが実際にアルポート糸球体で活性であるか否かを試験するために、特定のCCR2インヒビターであるプロパゲルマニウム(3-オキシゲルミルプロピオン酸)を使用した。当該化合物は、CCR2に密接に関連するグリコシルホスファチジルイノシトール-結合タンパク質を標的とすることにより、CCR2受容体を阻害する (Yokochi他 (2001) J. Interferon Cytokine Res. 21, 389-398)。5週令から始めて、3匹のアルポートマウス及び3匹の対照マウスに経口ガーベージにより薬物を与え、糸球体を7週令で腎臓から採取した。対照として、アルポートマウス及び野生型マウスにビヒクルのみを与えた。RNAを糸球体から単離し、リアルタイムPCRを用いてMMPの発現を3点で分析した。図10(パネル1)の結果は、MMP-3、MMP-9及びMMP-12が全て、正常対照に比べてビヒクルを与えたアルポートマウス由来の糸球体において誘導されたことを示す。これは、図1の結果と質的及び量的に一致する。プロパゲルマニウム処置アルポートマウスにおいて、MMP-3及びMMP-9 mRNAの誘導は、薬物により影響を受けないが、MMP-12 mRNA誘導は、ビヒクル-処置マウス由来の糸球体では50-倍から、プロパゲルマニウム処置アルポートマウスにおいては6-倍まで減少した。透過型電子顕微鏡により、これらの同一のマウス由来の腎皮質を試験した。図10(パネルII)は、MMP-12の減少した発現が正常のGBM構造を修復するために十分であったことを示す。この修復は、スリット・ダイアグラムの再構築(図10、パネルD、矢印)及び糸球体毛細血管束の健常な有窓内皮の再現をもたらす。これらのデータは、アルポート糸球体におけるMMP-12活性を構成する細胞メカニズムとしての、糸球体有足細胞上のCCR2のMCP-1活性を確立する。それが実際にMMP-12であり、MMP-3又はMMP-9でないことを証明し、アルポート症候群の糸球体基底膜崩壊の原因となることを証明する。
考察
実施例Iは、高いMMP-12がGBM崩壊を起こすという考えを支持する2つの明確な証拠列を提供する。第一に、マトリックスメタロプロテイナーゼの2種のインヒビターを用いる、本明細書で提供される比較的試験は、MMI 270がGBM損傷を抑制するか又は逆転させるが、BAY-12-9566は何の効果も有さない、ことを示す。これらの2つの化合物は、多数のMMPについての阻害活性を共有するが、MMI-270は、MMP-12を阻害し、一方、BAY-12-9566は阻害しない(表I)。加えて、糸球体有足細胞におけるMMP-12の活性;すなわち、糸球体有足細胞上の単球走化性タンパク質-1(MCP-1)活性化、の基礎となる予想外の細胞メカニズムを記載する第二部の証拠が提供される。MMP-12誘導はアルポート症候群のGBM病原性では非常に顕著であり、GBMの不同な「肥厚」及び糸球体フィルターの完全性の関連する喪失は、MMP-12によるGBMのタンパク質分解的分解から主に生じる、ことが明らかになっている。
Figure 2008512463
特筆すべきことに、MMP-3及びMMP-9の発現レベルは、対照に比べて、7-週令のアルポートマウスにおいて、約5-倍上昇した。図5は、BAY 129566の投与がアルポート腎疾患の進行に何ら明らかな効果を与えなかったことを示している。これは、MMP-3及びMMP-9の高発現が重要な役割を果たしていないことを示唆する。このことは、高いMMP-9の過発現が抗-糸球体基底膜腎炎では保護的であることが示されている関連研究(Lelongt他 (2001) J. Exp. Med. 193, 793-802)と対照的であるが、MMP-9の無意味な背景は、マウスモデルにおけるアルポート腎疾患の進行に影響を与えないという観察 (Andrews他 (2002) Am. J. Pathol. 160, 721-730)と一致する。MMP-3及びMMP-9のノックアウトマウスはいずれも生存可能であり、腎臓内の公知の機能欠陥を有さない(Rudolph-Owen他 (1997) Endocrinology 138, 4902-4911)。
アルポート糸球体の病原性におけるMMP-12の役割は、全く予測できない。先の研究は、MMP-12がマクロファージ (Vos他 (2003) J. Neuroimmunol. 138, 106-1 14及びKaneko他 (2003) J. Immunol. 170, 3377-3385)、肥厚性骨芽細胞 (Hou他 (2004) Bone 34, 37-47)、及び血管平滑筋細胞 (Wu他 (2003) Genes Cells 8, 225-234) において記載されていたにすぎないMMP-12の発現が高度に制限される、ことを示唆する。分化皮細胞によるMMP-12の発現は、以前には証明されていなかった。MMP-12の糸球体高発現は、自己免疫糸球体腎炎において示されているが、本研究におけるMMP-12の起源は、浸潤マクロファージであることが明らかになっている (Kaneko他 (2003) J. Immunol. 170, 3377-3385)。それにもかかわらず、Kaneko他は、糸球体におけるMMP-12の過発現は病原性を導くことができる、という考えを支持する。しかしながら、図3によって証明される結果は、アルポート糸球体ではマクロファージが存在せず、アルポート腎臓に存在する間質性単球がMMP-2に免疫-陰性である、ことを示す。図2Dで示される免疫蛍光データは、アルポート糸球体におけるMMP-12発現の起源が糸球体有足細胞でもよいが、メサンギウム細胞も関連する、ことを示す。
アルポート糸球体における観察されたMMP-12の40-倍誘導、及びMMP-12インヒビターMMI-270で処置した動物における停止糸球体病原性は、GBMの不同な衰退(rarification)の基礎ととなるタンパク質分解性の分解についての役割を支持する。アルポート症候群を有する患者由来のGBMが内因性タンパク質分解をより受けやすいことは以前に明らかになっている (Kalluri他 (1997) J. Clin. Invest. 99, 2470-2478)。生化学的分析は、α3(IV)、α4(IV)及びα5(IV)鎖からなるIV型コラーゲン網が、コラーゲンα1(IV)及びα2(IV)鎖のみからなるコラーゲン網よりも重度に架橋されている、ことを示す (Gunwar他 (1998) J. Biol. Chem. 273, 8767-8775)。このことは、通常のGBMのタンパク質分解への高い抵抗性を説明することができた。従って、コラーゲンα1(IV)及びα2(IV)組成物に起因して内因性タンパク質分解を高度に受けやすい混合された高MMP-12は、アルポート症候群におけるGBMの観察された超構造的奇形の原因となることがある。
先に記載のように、アルポート腎臓由来の細胞外マトリックス中のIV型コラーゲンは、正常腎臓由来のIV型コラーゲンよりも内因性タンパク質分解的開裂をより受けやすい (Kalluri他 (1997) J. Clin. Invest., 99, 2470-2478)。本明細書に記載の結果は、MMP-12がアルポートマウスモデルで過剰発現されることを更に証明する。理論に拘束されるものではないが、マトリックスメタロプロテイナーゼの過剰発現及び/又はECMのプロテイナーゼ分解を高度に受けやすいことは、アルポート症候群に関連する糸球体基底膜の不同な肥厚の形成に関連することがある。従って、マトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性のレベルの減少は、アルポート症候群を有する対象のGBMでのECMの分解を減少させ得る。
実施例 2:アルポート糸球体の病原性における有足細胞でのメタロプロテイナーゼ(MMP-12)誘導
アルポート症候群における糸球体病原性は、不同な肥厚、糸球体基底膜の薄層化及び***、並びに有足細胞足突起消失により特徴付けられる。GBMの超構造的損傷は、タンパク質分解性分解に起因するだろう、おそらくGBMコラーゲンの架橋の減少に起因するだろう。リアルタイムPCRと組み合わせた糸球体の磁性ビーズ分離法を用いて、多数のMMPがアルポート糸球体で誘導されることが見出された。MMP-12は最も顕著であり、そこでは、mRNAは、リアルタイムPCR及びノーザンブロット分析によって誘導される40-倍超であった。免疫蛍光分析は、MMP-12の誘導が、アルポートマウスの有足細胞で主に起こることを示唆する。コラーゲンα3(IV)-ヌルマウスモデルの糸球体病原性におけるMMPの役割を探究するために、2種のインヒビターを用いた。4〜7週令のアルポートマウスのBAY 129566 (Bayer Corporation)による処置は、糸球体疾患の進行の経過にほとんど影響を与えなかったが、NMI 270 (Novartis Corporation)による処置は、有意な影響を示した。これらの2種のインヒビターは、いずれも広いMMP基質特異性を有し、NMI 270がMMP-12を阻害するがBAY 129566は阻害しない点で主に相違する。NMI 270処置マウスは、Alport対照又はBAY 129566処置アルポートマウスに比べて、蛋白尿レベルを劇的に顕著に減少させ、GBM超構造を顕著に改善し、そして間質性疾患を著しく減少させた。NMI 270を6〜7週令のアルポートマウスに投与したときに、通常観察された蛋白尿の増加が停止した。これは、より進行した疾患を有する動物でさえ薬物治療の迅速な効果を示唆するものである。併せると、これらのデータは、高MMP-12レベルが、アルポート糸球体病原性のメカニズムに重要であうことを示唆し、そして、GBMの増加したタンパク質分解が、進行性のアルポート糸球体病原性に関連する観察された超構造的かつ機能的変化の基礎となるという仮説を支持する。
本明細書に引用された、全ての特許、特許出願及び刊行物、及び電子的に入手可能な文献(例えば、例えばGENBANK及びREFSEQでの塩基配列の提出、及び例えばSWISSPROT、PIR、PRF、PDBでのアミノ酸配列の提出、並びに、例えばGENBANK及びREFSEQで注釈を付けたコーディング領域からの翻訳を含む)の完全な開示は、参照として引用される。先に記載の詳細な説明及び実施例は、理解を明確にするためだけに与えられるものである。そこから何の限定も解釈されるべきではない。本発明は、示されたかつ記載された正確な詳細に限定されるものではなく、本クレームによって定義される発明の範囲内に様々な変更が含まれることは、当業者には明らかであろう。
全ての表題は、読み手の便宜のためであり、特に記載しない限り、表題に従うテキストの意味を限定するために使用されるべきではない。
図1は、7-週令の正常及びアルポートマウス由来の糸球体RNAのMMPのリアルタイムPCR分析の結果を示す棒グラフである。アスタリスクは、正常マウスとアルポートマウスとを比較したときに、特定のMMP発現における統計的な有意差(p>0.05)を示す。 図2は、MMP-12が糸球体有足細胞でアップレギュレートされることを示す組織断片の図である。7-週令の対照及びアルポートマウス由来の組織断片を、MMP-12に特異的な抗体を用いて免疫染色した(パネルA及びB)。弱い免疫染色が正常マウス(パネルA)で観察されたのに対し、アルポート糸球体(パネルB)で強い免疫染色が観察された、これは糸球体有足細胞(矢印)に主に局在するように考えられる。In situハイブリダイゼーションは、アルポートマウスの糸球体有足細胞(パネルD)での、MMP-12 mRNAの誘導を確認するが、これは、野生型マウス(パネルC)由来の糸球体には存在しないようである。パネルFは、ヒトアルポート糸球体におけるMMP-12の陽性の免疫染色を示す。正常なヒト糸球体は、検出可能な免疫染色を示さなかった(パネルE)。 図3は、7-週令のアルポート及び正常マウス由来の腎皮質の二重免疫蛍光分析の結果を示す図である。正常及びアルポートマウスの腎臓由来の断片を、MMP-12 (A及びD)及びCD11b (B及びE)に特異的な抗体で免疫染色した。二重免疫染色(C及びF)は、単球(赤)がMMP-12(緑)には免疫-陰性であるが、糸球体はMMP-12に免疫-陽性である、ことを示す。 図4は、ノーザンブロットの結果を示し、MMP-12 mRNAがアルポート腎臓疾患の進行の一機能として誘導されることを証明する。7-週令の野生型、7-週令のアルポート、及び4-週令のアルポートマウス由来の糸球体RNAを、ノーザンブロットにより分析し、放射性同位体標識MMP-12 cDNAでプローブした。ブロットを剥がし、β-アクチン cDNAで再-プローブしてRNAローディングを制御した。 図5は、非-ペプチド性MMPインヒビターであるMMI 270によるアルポートマウスの治療が、糸球体の進行及び当該疾患に関連する尿細管間質病原性を止める、ことを証明する免疫染色組織切片を示す。腎臓を採取し、そしてフィブロネクチン(パネルA、B、C及びD)又はIV型コラーゲンα1及びα2鎖(パネルE、F、G及びH)に特異的な抗体を用いて、凍結切片を蛍光免疫染色に供した。C: 正常対照マウス (パネルA及びE); A: 非処置アルポートマウス (パネルB及びF); A MMI 270: MMI270-処置アルポートマウス (C及びG); A BAY 129566: 0.5 %カルボキシメチルセルロース担体中の経口ガーベージにより4 mgのBAY 129566によって日に1回処置したアルポートマウス。非処置アルポートマウス(B及びF)に比べてほとんど改善を示さなかった、BAY 129566-処置アルポートマウス(D及びH)に比べて、MMI 270-処置アルポートマウス(C及びG)の糸球体及び尿細管間質区分では、顕著な改善が見られたことに留意されたい。 図6は、MMI 270でのアルポートマウスの処置が糸球体機能の進行的喪失を止める(及び覆すかもしれない)ことを証明する、ゲル電気泳動の結果を示す。電気泳動により蛋白尿を分析した。(A) 対照マウス(レーン2)、MMI 270-処置正常対照マウス(レーン3)、MMI 270-処置アルポートマウス(50μg/gのNMI 270を日に2回注射した)(レーン4)、及び非処置アルポートマウス(レーン5)由来の1.5ミリリットルの尿を、10 % PAGEゲル上で分画し、クマシーブルーで染色し、脱染色した。分子量マーカーをレーン1に示す。(B) 蛋白尿の進行は、6〜7週令の、MMI-270で処置したアルポートマウスで停止すると思われる。尿を回収し、(A)で示すように分析した。レーン1、6週令対照;レーン2、6週令アルポート;レーン3、7週令対照;レーン4及び5、7週令アルポート;レーン6及び7、6〜7週令の、MMI-270で処置した7週令アルポート。分子量マーカーを図1に示す。 図7は、3〜7週間のMMI-270による処置は、顕著に改善された糸球体基底膜構造を生じることを示す。パネルA、対照マウス;パネルB、アルポートマウス;パネルC、MMI-270で3〜7週間処置したアルポートマウス。 図8は、IV型コラーゲンの免疫-金局在化が、GBMの肥厚領域において局所的な分解の証拠を示すことを、示す。構造的に正常であったループ状毛細血管領域は、基底膜緻密層に沿って金粒子の規則的分布を示した(パネルA)。GBMの局所的肥厚が観察された領域は、コラーゲン網の局所的分解の証拠を示した(パネルB)。矢印は、金の沈積が主にGBMの上皮又は内皮部分上にあるコラーゲン網***の証拠を示す。GBMの単位長さ当たりの金粒子の増加はほとんど見られなかった、これは、肥厚領域にコラーゲンが集積しなかったことを示す。 図9のAは、MCP-1及びCCR2の両方の発現が、野生型マススに対してアルポートマウス由来の糸球体において誘導される、ことを示すブロット分析の結果を示す。パネルA及びB。単離糸球体由来のRNA(パネルA、レーン3及び4;パネルB、レーン1及び2)又は培養糸球体有足細胞(パネルA、レーン1及び2)を、CCR2(パネルA)に特異的なプライマー又はMCP-1(パネルB)に特異的なプライマーを用いて増幅した。GAPDHを対照として増幅した。A = アルポート; C = 野生型; D = DKO。 Bは、MCP-1及びCCR2の両方の発現が、野生型マススに対してアルポートマウス由来の糸球体において誘導される、ことを示すブロット分析の結果を示す。パネルA及びB。単離糸球体由来のRNA(パネルA、レーン3及び4;パネルB、レーン1及び2)又は培養糸球体有足細胞(パネルA、レーン1及び2)を、CCR2(パネルA)に特異的なプライマー又はMCP-1(パネルB)に特異的なプライマーを用いて増幅した。GAPDHを対照として増幅した。A = アルポート; C = 野生型; D = DKO。 Cは、培養メサンギウム細胞(MC)、培養有足細胞(Podo)又はCCR2に特異的な抗体で増幅した正常(Wt)及びアルポート(Alp)マウス由来の単離糸球体(glom)。 図10は、CCR2 mRNAが糸球体有足細胞で誘導されることを示す組織切片、を示す。CCR2転写物に特異的なセンス(A及びC)リボプローブ又はアンチセンス(B及びD)リボプローブのいずれかを用いて、7-週令野生型(A及びB)及びアルポート(C及びD)マウス由来の腎臓切片で、in situハイブリダイゼーション分析を行った。矢印は、代表的な糸球体有足細胞を示す。 図11のIは、プロパゲルマニウムによるアルポートマウスの処置は、高MMP-12発現を低下させ、アルポート糸球体における正常なGBM構造を修復することを示す。パネルI。アスタリスクは、正常マウス及びアルポートマウスと比べたとき、特異的なMMP発現における統計的に有意な差を示す(p>0.005)。MMP-12の発現のみが、プロパゲルマニウムの投与により影響されたことに留意されたい。 IIは、ビヒクル単独(パネルA及びC)又はプロパゲルマニウム(パネルB及びD)で処置したアルポートマウス由来の代表的なループ状毛細血管を透過型電子顕微鏡により分析した。正常な有足細胞突起の再構築及びスリット・ダイアグラムの修復と共に、処置マウスにおいて均一なGBM肥厚の修復が観察された(図D、矢印)。パネルA及びB、バー= 1μm; パネルC及びD、バー= 50 nm。 図12は、MMI270の化学構造を示す。 図13は、ヒトマトリックスメタロプロテイナーゼ-12プロ酵素;Genbank受入番号NP 002417.1 (配列番号17)のアミノ酸配列を示す。 図14は、ヒトCCR2受容体、Genbank受入番号NP 000638(配列番号19)のアミノ酸配列を示す。 図15は、ヒトマクロファージ走化性タンパク質-1、Genbank受入番号AAP 35993(配列番号20)のアミノ酸配列を示す。
配列表フリーテキスト
配列番号1;MMP-2センスプライマーポリヌクレオチド
配列番号2;MMP-2アンチセンスプライマーポリヌクレオチド
配列番号3;MMP-2プローブポリヌクレオチド
配列番号4;MMP-9センスプライマーポリヌクレオチド
配列番号5;MMP-9アンチセンスプライマーポリヌクレオチド
配列番号6;MMP-9プローブポリヌクレオチド
配列番号7;MMP-12センスプライマーポリヌクレオチド
配列番号8;MMP-12アンチセンスプライマーポリヌクレオチド
配列番号9;MMP-12プローブポリヌクレオチド
配列番号10;MMO-14センスプライマーポリヌクレオチド
配列番号11;MMP-14アンチセンスプライマーポリヌクレオチド
配列番号12;MMP-14プローブポリヌクレオチド
配列番号13;CCR2フォワードプライマーポリヌクレオチド
配列番号14;CCR2リバースプライマーポリヌクレオチド
配列番号15;MCP-1フォワードプライマーポリヌクレオチド
配列番号16;MCP-1リバースプライマーポリヌクレオチド
配列番号17;マトリックスメタロプロテイナーゼ-12ポリペプチド
配列番号18;マトリックスメタロプロテイナーゼ-12基質ポリペプチド
配列番号19;CCR2受容体ポリペプチド
配列番号20;MCP-1ケモカインポリペプチド

Claims (40)

  1. マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターを対象に投与することを含む、当該対象における糸球体基底膜疾患の治療方法。
  2. マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターを対象に投与することを含む、当該対象におけるアルポート症候群の治療方法。
  3. マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターを対象に投与することを含む、当該対象におけるアルポート症候群に関連する糸球体疾患の治療方法。
  4. マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターを対象に投与することを含む、対象におけるアルポート症候群に関連する糸球体基底膜の幅の不同を減らす方法。
  5. マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターを対象に投与することを含む、糸球体基底膜における細胞外マトリックスの分解を減らす方法。
  6. マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターの投与が、糸球体有足細胞におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性を減少させる、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記マトリックスプロテイナーゼ-12インヒビターが、非-ペプチド性インヒビターである、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターが、アリールスルホンアミド置換ヒドロキサム酸誘導体である、請求項7記載の方法。
  9. 前記アリールスルホンアミド-置換ヒドロキサム酸がMMI-270である、請求項8記載の方法。
  10. 前記マトリックスメタロプロテイナーゼ-12インヒビターが、チオフェンアミノ酸誘導体、フルオロチオフェン誘導体及び1-カルボキシメチル-2-オキソ-アゼパン誘導体からなる群より選ばれる、請求項7記載の方法。
  11. 前記メタロプロテイナーゼ-12インヒビターが抗体である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  12. 前記マトリックスマタロプロテイナーゼ-12インヒビターが、オリゴヌクレオチドである、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  13. CCR2受容体インヒビターを対象に投与することを含む、当該対象における糸球体基底膜疾患の治療方法。
  14. CCR2受容体インヒビターを対象に投与することを含む、当該対象におけるアルポート症候群の治療方法。
  15. CCR2受容体インヒビターを対象に投与することを含む、当該対象におけるアルポート症候群に関連する糸球体疾患の治療方法。
  16. CCR2受容体インヒビターを対象に投与することを含む、当該対象におけるアルポート症候群に関連する糸球体基底膜の幅の不同を減らす方法。
  17. CCR2受容体インヒビターを対象に投与することを含む、当該対象の糸球体基底膜における細胞外マトリックスの分解を減少させる方法。
  18. CCR2受容体インヒビターを投与することが、糸球体有足細胞におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性を減少させる、請求項13〜17のいずれか1項記載の方法。
  19. 前記CCR2受容体インヒビターが非-ペプチド性インヒビターである、請求項13〜17のいずれか1項記載の方法。
  20. 前記CCR2受容体インヒビターが、有機ゲルマニウム化合物である、請求項19記載の方法。
  21. 前記有機ゲルマニウム化合物が、3-オキシゲルミルプロピオン酸(3-oxygemylpropinic acid)ポリマーである、請求項20記載の方法。
  22. 前記CCR2受容体インヒビターが抗体である、請求項13〜17のいずれか1項記載の方法。
  23. 前記CCR2受容体インヒビターがオリゴヌクレオチドである、請求項13〜17のいずれか1項記載の方法。
  24. MCP-1インヒビターを対象に投与することを含む、当該対象における糸球体基底膜疾患の治療方法。
  25. MCP-1インヒビターを対象に投与することを含む、当該対象におけるアルポート症候群の治療方法。
  26. MCP-1インヒビターを対象に投与することを含む、当該対象におけるアルポート症候群に関連する糸球体疾患の治療方法。
  27. MCP-1インヒビターを対象に投与することを含む、当該対象におけるアルポート症候群に関連する糸球体基底膜の幅の不同を減らす方法。
  28. MCP-1インヒビターを対象に投与することを含む、当該対象における糸球体基底膜の分解を減少させる方法。
  29. MCP-1インヒビターを投与することが、糸球体有足細胞におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性を減少させる、請求項24〜28のいずれか1項記載の方法。
  30. 前記MCP-1インヒビターが非-ペプチド性インヒビターである、請求項24〜28のいずれか1項記載の方法。
  31. 前記MCP-1インヒビターが抗体である、請求項24〜28のいずれか1項記載の方法。
  32. 前記MCP-1インヒビターがオリゴヌクレオチドである、請求項24〜28のいずれか1項記載の方法。
  33. 前記インヒビターが、経口的に、心室的に、筋肉注射で、腹膜内に及び/又は皮下的に投与される、請求項1〜32のいずれか1項記載の方法。
  34. 1以上の追加の治療モダリティを更に含む、請求項1〜33のいずれか1項記載の方法。
  35. 前記追加の治療モダリティが腎臓透析を含む、請求項34記載の方法。
  36. 前記追加の治療モダリティが、コルチコステロイドの投与を含む、請求項34記載の方法。
  37. 前記追加の治療モダリティが、非-ステロイド性抗-炎症性薬(NSAID)の投与を含む、請求項34記載の方法。
  38. MMP-12インヒビター、CCR2受容体インヒビターもしくはMCP-1インヒビター又はそれらの組み合わせを投与することを含む、対象の糸球体でのマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性を減らすことによる、糸球体基底膜疾患の治療方法。
  39. 前記糸球体基底膜疾患がアルポート症候群である、請求項38記載の方法。
  40. 糸球体におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性の減少が、糸球体有足細胞におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ-12活性の減少を含む、請求項38記載の方法。
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