JP2008307571A - 溶接部特性に優れた電縫管製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電縫溶接あれる直前の突き合せ端部形状をペネトレータ(酸化物)の排出に適合した形状にする方法、および突き合せ溶接部へのペネトレータ(酸化物)の生成を防止する方法の提供。
【解決手段】ロール成形の終盤であるフィンパス成形3用の同一スタンドでフィン孔型形状の転写により幅端部の管外面側になる部分と管内面側になる部分の双方にテーパ形状を付与した後、不活性ガスまたは還元性ガスを吹き付けながら、あるいは不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気の中で、電縫溶接する。
【選択図】図1
【解決手段】ロール成形の終盤であるフィンパス成形3用の同一スタンドでフィン孔型形状の転写により幅端部の管外面側になる部分と管内面側になる部分の双方にテーパ形状を付与した後、不活性ガスまたは還元性ガスを吹き付けながら、あるいは不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気の中で、電縫溶接する。
【選択図】図1
Description
本発明は、溶接部特性に優れた電縫管製造方法に関わり、特に、油井のラインパイプ向けなど溶接部靭性が要求される管あるいは油井のケーシングパイプなど溶接部強度が要求される管を製造する方法に関わる。
通常、管は溶接管と継目無管に大別される。溶接管は、電縫鋼管を例とするように、帯材(板)をロール成形等によって丸めて幅端部を突き合わせて溶接して製造し、継目無管は、材料の塊を高温で穿孔しマンドレルミル等で圧延して製造する。溶接管の場合、一般に溶接部の特性は母材より劣ると言われ、管の適用に当たって、用途ごとに溶接部の靭性や強度の保証が常に議論されて問題となってきた。
例えば,原油や天然ガスなどを輸送するラインパイプでは、管を寒冷地に敷設することが多いため低温靭性が重要であり、また、原油採掘の油井では採掘管を保護するためのケーシングパイプが必要であり、管の強度が重要視される。
通常、管の母材となる熱延板は、管製造後の母材特性を考慮して成分設計や熱処理等が行われるため、母材の靭性や強度等の特性は確保される。
通常、管の母材となる熱延板は、管製造後の母材特性を考慮して成分設計や熱処理等が行われるため、母材の靭性や強度等の特性は確保される。
しかし、溶接部の特性は、母材の成分設計や熱処理による以上に、溶接方法によって大きく左右されるため、特に、電縫溶接の場合は溶接部を母材同等の靭性や強度等の特性となしうる溶接技術の開発が重要であった。
電縫溶接の不良原因としては、ペネトレータと呼ばれる酸化物が被溶接帯材の幅端部に生成し、これが電縫溶接時に溶鋼とともに端面から排出されずに残留し、この残留したペネトレータを原因として靭性が低下し、また、強度不足になる例が多かった。
電縫溶接の不良原因としては、ペネトレータと呼ばれる酸化物が被溶接帯材の幅端部に生成し、これが電縫溶接時に溶鋼とともに端面から排出されずに残留し、この残留したペネトレータを原因として靭性が低下し、また、強度不足になる例が多かった。
そこで、従来、ペネトレータを溶接部から除くため、溶接部になる被溶接帯材の幅端面から積極的に溶鋼を排出する技術が鋭意検討されてきた。例えば、特許文献1や特許文献2などに、帯材の幅端部の形状について検討した例が記載されている。通常、帯材の幅端部はスリットや端面研削によってほぼ矩形端面(矩形端部の端面と同じ形状の端面)とされるが、特許文献1,2では、この幅端部を電縫溶接までに加工して、加工した幅端部形状によって電縫溶接時の溶鋼排出を良好にすることを目的としている。
特開昭57−31485号公報
特開昭63−317212号公報
しかし、上記従来の方法では、電縫溶接直前の帯材幅端部のテーパ形状を狙いどおりのものとすることが難しく、電縫溶接管の溶接部の靭性を十分向上させるまでには至っていない。
例えば特許文献1の場合、フィンパス成形のフィンの角度を1段階としておいて、材料端部(帯材の幅端部の意。以下同じ)を一部分接触させてテーパを付与する方法を採用している。しかし、本発明者らがこの方法を検討してみると、フィンパス成形のアプセット量を0からプラスに大幅に変更し、材料端部の一部のみをフィンに接触させようとしても著しく困難なことが判明した。これは材料端部がわずかしか加工硬化していないために、材料端部全体がフィンパス成形用のロール孔型(略してフィン孔型)に完全充満し易くて、材料端部にフィン孔型形状がほぼ完全に転写されてしまうためである。あるいは、アプセット量をマイナスにすると、材料端部がフィン孔型に全く充満しなくなり、一部分のみフィンに接触させることが著しく困難になることによる。
例えば特許文献1の場合、フィンパス成形のフィンの角度を1段階としておいて、材料端部(帯材の幅端部の意。以下同じ)を一部分接触させてテーパを付与する方法を採用している。しかし、本発明者らがこの方法を検討してみると、フィンパス成形のアプセット量を0からプラスに大幅に変更し、材料端部の一部のみをフィンに接触させようとしても著しく困難なことが判明した。これは材料端部がわずかしか加工硬化していないために、材料端部全体がフィンパス成形用のロール孔型(略してフィン孔型)に完全充満し易くて、材料端部にフィン孔型形状がほぼ完全に転写されてしまうためである。あるいは、アプセット量をマイナスにすると、材料端部がフィン孔型に全く充満しなくなり、一部分のみフィンに接触させることが著しく困難になることによる。
また、例えば特許文献2の場合、ロール成形途中のエッジャー圧延(エッジャーロールを用いた圧延)で材料端部に厚み方向全域にわたって一様に傾斜(厚み方向に対して傾斜)した平滑面を付与した後、その一部のみをフィンパス成形でほぼ垂直(幅方向に対して垂直)にする方法を採用している。しかし、本発明者らが検討したところ、ロール成形途中のエッジャー圧延で材料端部に傾斜した平滑面を付与するには、特許文献2に記載されるとおり内面側(管内面側に対応する側)が外面側(管外面側に対応する側)よりも太いエッジャーロールを用いて成形する必要があるが、材料内面側の端部がロールにより削り取られて、「ひげ」と称する余肉材が発生することがあって問題である。さらに、ロール成形される材料の断面方向(長さ方向に直交する断面内方向)には管を外側に開く大きな反力が作用するため、エッジャーロールと材料端部との相互圧力は必然的に小さくなる。その結果、特許文献1の場合と同様に、エッジャーロールでの材料端部の圧下では加工硬化しにくいまま、その後のフィンパス成形をされて、フィンパス成形でのアプセット量を軽減したとしても材料がフィン孔型にほぼ充満するため、材料端部に特許文献2記載のような形状を付与することは困難であることがわかった。
このように、従来の技術では、電縫溶接される直前の突き合せ端部形状をペネトレータ排出に適合した形状にするのが難しいという課題があった。また、一方では、突き合せ端部形状の調整のみでは溶接部靭性が思い描いていたほどには向上しないという課題もあった。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その要旨は次のとおりである。
1. 帯材をロール成形し、幅端部を突き合わせて電縫溶接し管とする電縫管製造方法において、前記ロール成形の終盤であるフィンパス成形用の同一スタンドでフィン孔型形状の転写により幅端部の管外面側になる部分と管内面側になる部分の双方にテーパ形状を付与した後、不活性ガスまたは還元性ガスを吹き付けながら、あるいは不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気の中で、電縫溶接することを特徴とする溶接部特性に優れた電縫管製造方法。
1. 帯材をロール成形し、幅端部を突き合わせて電縫溶接し管とする電縫管製造方法において、前記ロール成形の終盤であるフィンパス成形用の同一スタンドでフィン孔型形状の転写により幅端部の管外面側になる部分と管内面側になる部分の双方にテーパ形状を付与した後、不活性ガスまたは還元性ガスを吹き付けながら、あるいは不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気の中で、電縫溶接することを特徴とする溶接部特性に優れた電縫管製造方法。
2. 前記不活性ガスが、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスのいずれか1種または2種以上の混合ガスであり、前記還元性ガスが、水素ガス、一酸化炭素ガスのいずれか1種または2種の混合ガスまたはこれらを不活性ガスで希釈したガスである前項1に記載の溶接部特性に優れた電縫管製造方法。
3. 幅端部に付与するテーパ形状は、下記(A)に定義されるテーパ角度が25〜50°の範囲内にあり、下記(B)に定義されるテーパ深さが帯材厚さの20〜45%の範囲内にあるものとすることを特徴とする前項1または2に記載の溶接部特性に優れた電縫管製造方法。
3. 幅端部に付与するテーパ形状は、下記(A)に定義されるテーパ角度が25〜50°の範囲内にあり、下記(B)に定義されるテーパ深さが帯材厚さの20〜45%の範囲内にあるものとすることを特徴とする前項1または2に記載の溶接部特性に優れた電縫管製造方法。
記
(A)テーパ角度とは、テーパ面と同側の帯材幅端を通り帯材幅方向と直交する仮想平面に対するテーパ面の傾き角度である。
(B)テーパ深さとは、テーパ面と帯材幅方向断面との交差部をなす線分を前記仮想平面へ正射影してなる線分の長さである。
(A)テーパ角度とは、テーパ面と同側の帯材幅端を通り帯材幅方向と直交する仮想平面に対するテーパ面の傾き角度である。
(B)テーパ深さとは、テーパ面と帯材幅方向断面との交差部をなす線分を前記仮想平面へ正射影してなる線分の長さである。
本発明によれば、著しく良好な靭性および溶接強度を有する電縫管を製造することができる。
従来の電縫管製造方法において、材料端部にテーパを付与するためにフィンパス成形を活用するには、フィン孔型に材料を充満させずに、フィンに材料端部の一部分を押し当ててテーパ形状を付与する方法が検討されていた。
しかし、本発明者らの検討によれば、孔型に材料の円周方向全周が充満しなくとも、材料がフィンパス成形用のスタンドに装入される際に、帯材端部がフィンに強圧されて、材料端部がフィン孔型に完全充満するのである。すなわち、本発明者らは、円周方向両端部が未接合である開管状材料がフィンパス成形用のスタンドに装入される場合、フィンに接触した材料端部とそのほぼ180°反対側に位置する開管底部分とが梁撓みの状態となって、断面(幅方向断面)を円弧状に曲げようとする材料の反力が大きく作用して、たとえ材料がフィン孔型に充満しなくとも材料端部には円周方向に大きな圧縮力が作用し、その結果、材料端部はフィンに強圧されてフィンの形状がそのまま材料端部に転写されることを把握した。
しかし、本発明者らの検討によれば、孔型に材料の円周方向全周が充満しなくとも、材料がフィンパス成形用のスタンドに装入される際に、帯材端部がフィンに強圧されて、材料端部がフィン孔型に完全充満するのである。すなわち、本発明者らは、円周方向両端部が未接合である開管状材料がフィンパス成形用のスタンドに装入される場合、フィンに接触した材料端部とそのほぼ180°反対側に位置する開管底部分とが梁撓みの状態となって、断面(幅方向断面)を円弧状に曲げようとする材料の反力が大きく作用して、たとえ材料がフィン孔型に充満しなくとも材料端部には円周方向に大きな圧縮力が作用し、その結果、材料端部はフィンに強圧されてフィンの形状がそのまま材料端部に転写されることを把握した。
そこで本発明者らは、上記のように材料端部がフィンに強圧されることに着目して、この現象を積極的に活用する手段を検討した。すなわち、フィンに2段階以上のテーパを付与しておけば、フィンパス圧延でのアプセット量が小さくとも0%以上であれば材料端部にはテーパ形状が充分に転写され、所望のテーパを付与できるわけでる。
さらに、材料端部に容易にテーパ形状を付与するには、1つのスタンド(フィンパス成形用のスタンドの意。以下同じ)で内面側、外面側の双方に同時に付与すると良いことを見出した。すなわち、複数のスタンドを用いて、例えば、先に一のスタンドで外面側に、後に他のスタンドで内面側に、それぞれテーパを付与すると、先にテーパを付与された外面側の端部に、他のスタンドにおいてドッグボーンが形成されて目標とするテーパ形状を充分付与できない場合がある。
さらに、材料端部に容易にテーパ形状を付与するには、1つのスタンド(フィンパス成形用のスタンドの意。以下同じ)で内面側、外面側の双方に同時に付与すると良いことを見出した。すなわち、複数のスタンドを用いて、例えば、先に一のスタンドで外面側に、後に他のスタンドで内面側に、それぞれテーパを付与すると、先にテーパを付与された外面側の端部に、他のスタンドにおいてドッグボーンが形成されて目標とするテーパ形状を充分付与できない場合がある。
そこで、材料の両端部(円周方向両端部であり、ロール成形前の帯材の幅方向両端部に対応する)の内面側、外面側とも同一のスタンドでテーパを付与すると、このような問題がなく安定してテーパを付与可能になる。
また、材料の内外面側に同一のスタンドでテーパを付与するに用いる1つのスタンドにおいては、フィン両側面に3段階の角度を有するフィン形状とすればよい。ただし、3段階としたフィンの角度のいずれかが、フィンパス成形用のロールの垂直方向(の角度90°)より大きな角度になると、材料端部がフィンにより削り取られて、「ひげ」と称する余肉材が発生することがあり、フィンパス成形時に疵を発生させたり、電縫溶接のスパークの原因となったりするので、フィンの角度は垂直方向(の角度90°)以下にしておくとよい。なお、ここにいうフィンの角度とは、その角度に対応するフィン側面内の仮想面をそのフィン回転中心軸に近い方の端を不動としてフィン内側に倒していったとき、それがフィン回転中心軸と平行になるまでの倒し角度である。
また、材料の内外面側に同一のスタンドでテーパを付与するに用いる1つのスタンドにおいては、フィン両側面に3段階の角度を有するフィン形状とすればよい。ただし、3段階としたフィンの角度のいずれかが、フィンパス成形用のロールの垂直方向(の角度90°)より大きな角度になると、材料端部がフィンにより削り取られて、「ひげ」と称する余肉材が発生することがあり、フィンパス成形時に疵を発生させたり、電縫溶接のスパークの原因となったりするので、フィンの角度は垂直方向(の角度90°)以下にしておくとよい。なお、ここにいうフィンの角度とは、その角度に対応するフィン側面内の仮想面をそのフィン回転中心軸に近い方の端を不動としてフィン内側に倒していったとき、それがフィン回転中心軸と平行になるまでの倒し角度である。
また、材料の内外面側に同一のスタンドでテーパを付与するに用いる1つのスタンドは、必ずしもフィンパス成形の最終スタンドである必要はなく、フィンパス成形用の第1スタンドまたは中間スタンドであってもよい。というのは、同一のスタンドで内外面側にテーパを付与された幅端部は、その付与時の強圧によって著しく加工硬化するため、その付与されたテーパ形状は、後続スタンドでのフィンパス成形を経ても比較的潰れにくく、フィンパス成形終了後も保全されるからである。
ここで、本発明者らはさらに電縫溶接後の溶接部の靭性向上を目指した。すなわち、電縫溶接前の帯材(板)の端部(丸められた幅の端部)が加熱される過程において、溶接欠陥であるペネトレータの原因となる酸化物が板の端面に形成される。その後、端面の酸化物は電縫溶接時の溶鋼表面に浮いて、一部は溶鋼とともに排出される。この際に、板端面にテーパ形状が付与されていると、溶鋼が容易に排出されて、同時にペネトレータも有効に排出できるわけである。しかし、ペネトレータの原因になる板端面の酸化物は、電縫溶接の加熱とともに順次生成してくるため、溶接条件によっては、板端部のテーパ形状との組み合わせで、溶接後の靭性または強度を充分に向上できる可能性がある。
そこで、本発明者らは電縫溶接現象を詳細に検討し直した結果、ペネトレータの原因となる酸化物の生成に着目した。すなわち、板端部のテーパ形状によるペネトレータの排出だけでなく、ペネトレータの原因となる酸化物の生成を防止する方法を検討した。その結果、電縫溶接工程(端部加熱→圧接の工程)内の端部加熱段階で被加熱部に向けて不活性ガスを吹付けると、酸化物の生成を抑制できることを把握したわけである。また、不活性ガスの代わりに還元性ガスを用いると、さらに酸化物の生成を抑制できる。このようにして、圧接の直前までペネトレータの原因である酸化物の生成を抑制しながら、端部のテーパ形状によって圧接時にペネトレータを含む溶鋼の排出を促すことにより、電縫管の溶接部の靭性または強度を著しく向上させることができるわけである。
また、不活性ガスまたは還元性ガスを吹き付けるだけでは、周辺の空気を巻き込むために、板端部の酸化物生成を充分には防止しにくい。そこで、ペネトレータ生成を充分に防止したい場合は、被加熱部を囲ってその雰囲気を不活性ガスまたは還元性ガスの雰囲気にすると、ペネトレータの生成を充分に防止できて、残留したわずかのペネトレータを端部のテーパ形状によって溶鋼とともに排出すればよいわけである。
なお、不活性ガスとして、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスのいずれか、またはこれらの混合ガスを用いると、比較的入手しやすく、コストも低くできる。さらに、還元性ガスとして、水素ガス、一酸化炭素ガスのいずれか、またはこれらの混合ガス、または、これらを不活性ガスで希釈したガスを用いると、比較的入手しやすくてコストも低くできてよい。
ここで、圧接直前の端部のテーパ形状の適正範囲を検討した結果、各テーパにおいて、テーパ面と同側の帯材幅端を通り帯材幅方向と直交する仮想平面に対するテーパ面の傾き角度で定義されるテーパ角度が25〜50°の範囲内にあり、かつ、テーパ面と帯材幅方向断面との交差部をなす線分を前記仮想平面へ正射影してなる線分の長さで定義されるテーパ深さが板厚(帯材厚さ)の20〜45%の範囲内にあるテーパ形状とすればよいことを把握した。
すなわちテーパ角度が25°未満であると、板厚中央部からの溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留し、電縫溶接部の靭性や強度が低下することがあり、一方、テーパ角度が50°超であると、テーパ形状が溶接後の製品疵として残留しやすい。
また、テーパ深さが板厚の20%未満であると、板厚中央部からの溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留しやすくなり、一方、テーパ深さが板厚の45%超であると、帯材外周面をスクイズロールで挟んで端部を圧接する際、相対する左右の両端部が上下にずれ易くて電縫溶接が正常にできず、製品としての管にすることができない場合が多々生じ、また、電縫溶接ができた場合でも、テーパ形状が溶接後の製品疵として残留しやすい。
また、テーパ深さが板厚の20%未満であると、板厚中央部からの溶鋼排出が不十分となってペネトレータが残留しやすくなり、一方、テーパ深さが板厚の45%超であると、帯材外周面をスクイズロールで挟んで端部を圧接する際、相対する左右の両端部が上下にずれ易くて電縫溶接が正常にできず、製品としての管にすることができない場合が多々生じ、また、電縫溶接ができた場合でも、テーパ形状が溶接後の製品疵として残留しやすい。
図1は本発明の実施に用いられる電縫管製造ラインの1例を示す模式図である。このラインは、帯材20を、アンコイラ1から払い出し、レベラ2で平坦に矯正し、ロール成形機4で帯材20を徐々に丸めていき、丸めた帯材20の左右両幅端部を加熱実施部(誘導加熱手段)5と圧接実施部(スクイズロール)6からなる電縫溶接機で電縫溶接して管30となし、管30の溶接ビード部をビード切削機7で切削し、切削後の管30を、サイザー8で外径調整した後、管切断機9で所定長さに切断するという構成を有している。
ロール成形機4は、最下流段に、丸めた板端部を拘束して真円に近い形状(横断面形状)とするフィンパス成形3用のスタンドを所定台数備えており、この例では第1スタンド3a、第2スタンド3b、第3スタンド3cの全3スタンドよりなっているが、全2スタンドあるいは全4スタンド以上とされる場合もある。
本発明の実施にあたり、同一のフィンパス成形スタンド、例えば図1の第3スタンド3cを用いて、帯材20の幅端部の内面側(管内面に対応する側)と外面側(管外面に対応する側)にテーパを付与する場合、図2(a),(b)に示すように、第3スタンド3c内のフィン形状を3段階の角度を有するものとする。そのフィン形状は、図2(c)の目標テーパ形状に整合する図2(b)の形状に設計すればよい。なお、前述のように、外面側、内面側のテーパ角度α、γはともに25〜50°の範囲内とするのが好ましく、また、テーパ深さβ、δはともに板厚の20〜45%の範囲内とするのが好ましい。
本発明の実施にあたり、同一のフィンパス成形スタンド、例えば図1の第3スタンド3cを用いて、帯材20の幅端部の内面側(管内面に対応する側)と外面側(管外面に対応する側)にテーパを付与する場合、図2(a),(b)に示すように、第3スタンド3c内のフィン形状を3段階の角度を有するものとする。そのフィン形状は、図2(c)の目標テーパ形状に整合する図2(b)の形状に設計すればよい。なお、前述のように、外面側、内面側のテーパ角度α、γはともに25〜50°の範囲内とするのが好ましく、また、テーパ深さβ、δはともに板厚の20〜45%の範囲内とするのが好ましい。
そして、誘導加熱手段5とスクイズロール6の間のラインに不活性ガスまたは還元性ガスの吹き付け手段を配備し、これを用いて帯材20の被溶接端部に同ガスを吹き付けながら、電縫溶接を行う。あるいは、誘導加熱手段5とスクイズロール6の間のラインを囲って、囲いの中を不活性ガスまたは還元性ガスの雰囲気に保ちながら、電縫溶接を行う。
なお、図3には、従来のテーパ付与方法の1例を示す。これは特許文献1に記載の方法に対応する。この例は、図1においてフィンパス成形3用の第3スタンド3cを除去し、第1スタンド3aと第2スタンド3bは通常の1段階角度のフィン形状とした製造ラインを用いて、まず第1スタンド3aで外面側端部の外面位置から板厚のほぼ1/2深さ位置までの部分にテーパ形状を付与し(図3(a)(b)(c))、次いで第2スタンド3bで内面側端部の内面位置から板厚のほぼ1/2深さ位置までの部分にテーパ形状を付与してX開先相当の目標テーパ形状を得ようとするものである(図3(d)(e)(f))。しかしながら、このような方法では前述したように、目標テーパ形状を得るのが難しいのである。
なお、図3には、従来のテーパ付与方法の1例を示す。これは特許文献1に記載の方法に対応する。この例は、図1においてフィンパス成形3用の第3スタンド3cを除去し、第1スタンド3aと第2スタンド3bは通常の1段階角度のフィン形状とした製造ラインを用いて、まず第1スタンド3aで外面側端部の外面位置から板厚のほぼ1/2深さ位置までの部分にテーパ形状を付与し(図3(a)(b)(c))、次いで第2スタンド3bで内面側端部の内面位置から板厚のほぼ1/2深さ位置までの部分にテーパ形状を付与してX開先相当の目標テーパ形状を得ようとするものである(図3(d)(e)(f))。しかしながら、このような方法では前述したように、目標テーパ形状を得るのが難しいのである。
以下、実施例に基づいて説明する。
ここでは、帯材として板幅1920mm×板厚19.1mmの鋼帯を用いて、外径600mmの電縫管を製造した。製造した電縫管の溶接部から試験片を切り出してシャルピー試験を行い、性能を評価した。シャルピー試験片は、管長手方向位置の相違する10点から1本ずつ、試験片長さ方向を管円周方向に平行にし、ノッチ長さ中心を溶接部肉厚中心位置として採取し、JIS5号の2mmVノッチ衝撃試験片として、−46℃での衝撃試験を行い、吸収エネルギー(衝撃強度)、脆性破面率を測定した。なお、吸収エネルギーは125J以上、脆性破面率は35%以下を性能許容範囲とした。
ここでは、帯材として板幅1920mm×板厚19.1mmの鋼帯を用いて、外径600mmの電縫管を製造した。製造した電縫管の溶接部から試験片を切り出してシャルピー試験を行い、性能を評価した。シャルピー試験片は、管長手方向位置の相違する10点から1本ずつ、試験片長さ方向を管円周方向に平行にし、ノッチ長さ中心を溶接部肉厚中心位置として採取し、JIS5号の2mmVノッチ衝撃試験片として、−46℃での衝撃試験を行い、吸収エネルギー(衝撃強度)、脆性破面率を測定した。なお、吸収エネルギーは125J以上、脆性破面率は35%以下を性能許容範囲とした。
(本発明例1)本発明例1では、図1と同様の電縫管製造ライン(フィンパス成形用のスタンドは全3スタンド)を用い、フィンパス成形用の第3スタンドのフィン形状を図2(b)と同様の3段階角度の形状(第1、第2スタンドは通常の1段階角度の形状)として、このスタンドで板端部の内面側と外面側に図2(c)と同様のテーパ形状の付与を図った。目標テーパ形状は、テーパ角度(α、γ)=30°、テーパ深さ(β、δ)=5mm(板厚の26%)になる形状とした。その後、誘導加熱中の板端部(被突き合せ端部)に窒素ガスを吹き付けつつ電縫溶接を行った。なお、このガス吹き付けの実施にあたっては、予め加熱実施部と圧接実施部の間に配設しておいたガス吹き付け用ノズル手段を使用した。
(本発明例2)本発明例2では、図1と同様の電縫管製造ライン(ただし、フィンパス成形用のスタンドは全2スタンドとした)を用い、フィンパス成形用の第1スタンドのフィン形状を図2(b)と同様の3段階角度の形状(第2スタンドは通常の1段階角度の形状)として、このスタンドで板端部の内面側と外面側に図2(c)と同様のテーパ形状の付与を図った。目標テーパ形状は、テーパ角度(α、γ)=40°、テーパ深さ(β、δ)=7.2mm(板厚の38%)になる形状とした。その後、誘導加熱中の板端部(被突き合せ端部)を雰囲気をアルゴンガスで3%に希釈した水素ガス(3%水素‐残部アルゴンの混合ガス)雰囲気に保持しつつ電縫溶接を行った。なお、このガス雰囲気保持の実施にあたっては、予め加熱実施部と圧接実施部の間に配設しておいたガス雰囲気保持用ボックス手段の内部の大気を前記混合ガスで置換した。
(比較例)比較例では、図1と同様の電縫管製造ライン(ただし、フィンパス成形用のスタンドは全2スタンドとした)を用い、フィンパス成形用の第2スタンドのフィン形状を図2(b)と同様の3段階角度の形状(第1スタンドは通常の1段階角度の形状)として、このスタンドで板端部の内面側と外面側に図2(c)と同様のテーパ形状の付与を図った。目標テーパ形状は、テーパ角度(α、γ)=20°、テーパ深さ(β、δ)=4mm(板厚の21%)になる形状とした。その後大気中で電縫溶接を行った。
(従来例1)従来例1では、図1と同様の電縫管製造ライン(ただし、フィンパス成形用のスタンドは全2スタンドとした)を用い、フィンパス成形の第1、第2スタンドのフィン形状を共に通常の1段階角度の形状とし、図3に示したと同様に、第1スタンドで板端部の外面側、第2スタンドで板端部の内面側にそれぞれテーパ形状の付与を図った。目標テーパ形状は、テーパ角度=20°、テーパ深さ=(板厚の約50%)になる形状とした。その後大気中で電縫溶接した。
(従来例2)従来例2では、従来例1において、ロール成形前に帯材の幅端部を平らに研磨して矩形端面とし、フィンパス成形ではテーパの付与を図らず、前記矩形端面が保全されるようにした(通常のフィンパス成形と同様)。
これらにより製造した電縫管の溶接部におけるシャルピー衝撃値と脆性破面率を測定した結果を表1に示す。また、電縫溶接直前の材料端部からテーパ形状観察用サンプルを切り出して断面形状を観察した結果も表1に付記した。
これらにより製造した電縫管の溶接部におけるシャルピー衝撃値と脆性破面率を測定した結果を表1に示す。また、電縫溶接直前の材料端部からテーパ形状観察用サンプルを切り出して断面形状を観察した結果も表1に付記した。
表1より、本発明例では、比較例と比べ、溶接部の衝撃強度が高く脆性破面率が小さくて、靭性が良好であって、製品の信頼性が高い。これに対し、従来例では、溶接部の衝撃強度が著しく低く脆性破面率が大きくて、靭性が低下しており、製品の信頼性に乏しかった。また、フィンパス成形後の電縫溶接直前における材料端部形状を比較すると、本発明例では目標通りのテーパ形状を付与できた(比較例も同様)のに対し、従来例1では従来例2と同様のテーパ無の形状になった。
1 アンコイラ
2 レベラ
3 フィンパス成形
3a フィンパス成形用の第1スタンド
3b フィンパス成形用の第2スタンド
3c フィンパス成形用の第3スタンド
4 ロール成形機
5 加熱実施部(誘導加熱手段)
6 圧接実施部(スクイズロール)
7 ビード切削機
8 サイザー
9 管切断機
11 仮想平面
20 帯材(板)
30 管
2 レベラ
3 フィンパス成形
3a フィンパス成形用の第1スタンド
3b フィンパス成形用の第2スタンド
3c フィンパス成形用の第3スタンド
4 ロール成形機
5 加熱実施部(誘導加熱手段)
6 圧接実施部(スクイズロール)
7 ビード切削機
8 サイザー
9 管切断機
11 仮想平面
20 帯材(板)
30 管
Claims (3)
- 帯材をロール成形し、幅端部を突き合わせて電縫溶接し管とする電縫管製造方法において、前記ロール成形の終盤であるフィンパス成形用の同一スタンドでフィン孔型形状の転写により幅端部の管外面側になる部分と管内面側になる部分の双方にテーパ形状を付与した後、不活性ガスまたは還元性ガスを吹き付けながら、あるいは不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気の中で、電縫溶接することを特徴とする溶接部特性に優れた電縫管製造方法。
- 前記不活性ガスが、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスのいずれか1種または2種以上の混合ガスであり、前記還元性ガスが、水素ガス、一酸化炭素ガスのいずれか1種または2種の混合ガスまたはこれらを不活性ガスで希釈したガスである請求項1に記載の溶接部特性に優れた電縫管製造方法。
- 幅端部に付与するテーパ形状は、下記(A)に定義されるテーパ角度が25〜50°の範囲内にあり、下記(B)に定義されるテーパ深さが帯材厚さの20〜45%の範囲内にあるものとすることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接部特性に優れた電縫管製造方法。
記
(A)テーパ角度とは、テーパ面と同側の帯材幅端を通り帯材幅方向と直交する仮想平面に対するテーパ面の傾き角度である。
(B)テーパ深さとは、テーパ面と帯材幅方向断面との交差部をなす線分を前記仮想平面へ正射影してなる線分の長さである。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007157477A JP2008307571A (ja) | 2007-06-14 | 2007-06-14 | 溶接部特性に優れた電縫管製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007157477A JP2008307571A (ja) | 2007-06-14 | 2007-06-14 | 溶接部特性に優れた電縫管製造方法 |
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2007
- 2007-06-14 JP JP2007157477A patent/JP2008307571A/ja active Pending
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