JP2008304103A - 真空誘導炉及び該誘導炉を用いた金属材料の精錬方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】真空誘導炉は、上部に材料装入口(10a)を有する真空チャンバ(10)と、真空チャンバ(10)の材料装入口(10a)を開閉可能な蓋体(12)と、真空チャンバ(10)内に収容され、材料装入口(10a)の下方に位置する炉体(18)と、炉体(18)の外周に配置された誘導コイル(20)と、炉体(18)の上部から当該炉体(18)の内部で熔解した材料を流出させるべく、基準位置にて直立状態にある炉体(18)を傾動させる傾動装置と、炉体(18)を基準位置よりも上方に直立状態にて移動させて炉体(18)を材料装入位置に位置付ける昇降装置とを備える。
【選択図】図1
Description
真空誘導炉の炉体への材料の装入は、例えば、以下のようにして行われている。まず、真空チャンバの外にて、クレーンのフックにワイヤロープ等の吊具を介して材料を玉掛けする。この後、材料を吊り上げ、真空チャンバの開口を通じて、材料を炉体の内部に降ろす。それから、真空チャンバ内に進入した作業員が玉掛けを外し、装入が終了する。
一方、材料として、リターン材と称される廃材を用いる場合には、リターン材が嵩高いため、先に装入した材料の熔解後に炉体に材料を追装する必要があるが、玉掛けにより材料を追装するのは困難である。
好ましくは、前記昇降装置は、前記炉体を搭載する昇降台と、前記昇降台の下に配置され、前記昇降台を上下方向に移動させるための少なくとも1つの油圧シリンダとを含む(請求項3)。
好ましくは、前記ガイドは、前記油圧シリンダの周囲に立設された複数の支柱と、前記昇降台から下方に延び、平面でみて、前記複数の支柱のうち対応する支柱と間隔を存してそれぞれ対向する複数のガイドロッドと、前記支柱と前記ガイドロッドとの間に配置されたガイドローラとを含む(請求項5)。
好ましくは、前記位置決め装置は、前記炉体及び昇降台のうち一方に設けられ、先細り形状を有する位置決めピンと、前記炉体及び昇降台のうち他方に設けられ、前記位置決めピンと嵌合する位置決め穴とを含む(請求項8)。
請求項2の真空誘導炉では、傾動装置がワイヤロープにより構成されているため、シリンダを用いた場合に比べて傾動装置の占有スペースが狭い。この結果として、この真空誘導炉では、昇降装置及び真空誘導炉自体の大型化が防止される。
請求項4の真空誘導炉では、1つの油圧シリンダにより昇降台を上下させればよいため、複数の油圧シリンダを用いた場合のように油圧シリンダ間で伸縮速度を調整する必要がなく、油圧シリンダの制御が容易である。一方、1つの油圧シリンダにより昇降台を上下させるとしても、ガイドによって昇降台の傾きが防止されるため、昇降台の上下動の安定性が確保される。
請求項6の真空誘導炉では、制御装置が、炉体を上方に移動させるときに、ワイヤロープにかかる張力を監視しながら、傾動装置のモータを作動させてワイヤロープをドラムに巻取らせる。一方、制御装置は、炉体が下方に移動するときに、ワイヤロープにかかる張力を監視しながら、傾動装置のモータを作動させてワイヤロープをドラムから放出させる。このため、昇降装置により炉体が上下に移動させられるときに、ワイヤロープが弛むことがなく、ワイヤロープがドラムに乱巻き状態で巻回されることが防止される。この結果として、乱巻きによるワイヤロープの損傷や破断が防止され、傾動装置の信頼性が確保される。
請求項7の真空誘導炉では、昇降台が炉体から下方に離間することがあるが、位置決め装置により、昇降台上での炉体の位置が一定に保たれるので、昇降台の重心のずれが防止され、昇降台の上下動の安定性が確保される。
請求項9の金属材料の精錬方法では、請求項1乃至8の何れか1項に記載の真空誘導炉を用いているため、炉体への金属材料の装入が容易且つ安全に行われる。
真空誘導炉は、金属材料を精錬するのに用いられ、真空誘導炉からは、精錬された金属材料が熔解状態で取り出される。
具体的には、真空誘導炉は真空チャンバ10を有し、真空チャンバ10は、複数の金属パネルを接合して形成される。真空チャンバ10は、その上部に、材料を装入するための材料装入口10aを有する。材料装入口10aは蓋体12により気密に閉塞可能であるが、蓋体12は開閉可能である。
真空チャンバ10は、排気管14及びバルブ(図示せず)を介して真空ポンプ16と接続され、真空ポンプ16により、真空チャンバ10の内部の圧力を大気圧よりも低くすることが可能である。なお、本明細書中で真空とは、圧力が大気圧よりも低い状態をいう。
図2及び図3に拡大して示したように、炉体18の外周には誘導コイル20が巻回され、誘導コイル20は、真空チャンバ10の外に配置された電源(図示せず)と接続されている。電源から誘導コイル20に交流電流が供給されることで、炉体18の内部の金属材料が加熱されて熔解する。真空下で金属材料を熔解すると、金属材料中の酸素等の不純物が除去され、金属材料が精錬される。精錬された熔解状態の金属材料は、真空チャンバ10に設けられた出鋼口10bを通じて、例えば鍋台車22に流し込まれる。
炉体18の上部には、その外周面の出鋼口10b側に第1のピン26が取り付けられ、第1のピン26は水平に延びている。炉体18が、上下方向での基準位置にて直立状態にあるとき、第1のピン26は支持台28により支持される。
炉体18の底面には出鋼口10b側に突部34が設けられ、突部34には、例えば2つの連結部材36を介して2本のワイヤロープ38の先端が固定されている。2本のワイヤロープ38は、第1及び第2のピン26,30の軸線方向に離間して互いに平行であり、真空チャンバ10の天井近傍に配置された2つのドラム40からそれぞれ延びている。
図2及び図3においては、炉体18は、上下方向でみて基準位置にあり、直立した状態である。このとき、炉体18は、材料装入口10aの下方に位置し、第1のピン26及びワイヤロープ38等を介して、支持台28及びドラム40によって支持されている。
油圧シリンダ52は、真空チャンバ10の底に固定された角筒形状のシリンダケース54を有し、シリンダケース54の上端からシリンダロッド56が上方に突出している。シリンダケース54及びシリンダロッド56は上下方向にそれぞれ延びている。
シリンダロッド56の上端は、昇降台50に対し下から当接しており、昇降台50は、油圧シリンダ52の伸縮に伴い上下動する。昇降台50は、最も下方の最低位置にあるとき、炉体18から下方に離間しているが、最低位置よりも上昇することにより、炉体18を上方に押し上げる。
図4に示したように、平面でみて、ガイドロッド60は、油圧シリンダ52を中心とする円上に120度の間隔をもって配置されている。支柱62は、対応するガイドロッド60の径方向外側に位置しており、支柱62も、油圧シリンダ52を中心とする円上に120度の間隔で配置されている。
再び図1を参照すると、油圧シリンダ52は、真空チャンバ10の外に配置された油圧シリンダドライバ70に接続され、油圧シリンダドライバ70からの油圧の供給を受けて油圧シリンダ52は伸縮する。そして、油圧シリンダドライバ70には制御装置72が接続され、油圧シリンダドライバ70は、制御装置72により制御される。すなわち、制御装置72が、油圧シリンダドライバ70を介して、油圧シリンダ52の伸縮に伴う昇降台50の上下動を制御する。制御装置72は、例えばコンピュータにより構成される。
そして、制御装置72には、例えば、油圧モータ42の出力トルクが油圧モータドライバ74を介して入力され、制御装置72は、出力トルク、換言すれば、ワイヤロープ38の張力を監視しながら、油圧モータ42及び油圧シリンダ52を作動させることが可能である。
まず、炉体18に金属材料を挿入する。そのために、図5に示したように、昇降装置を作動させ、炉体18を基準位置よりも上方の材料装入位置に直立状態にて位置付ける。即ち、油圧シリンダ52を伸張させて、直立状態のまま炉体18を上昇させる(上昇工程)。
なお、図2の状態では、スペーサ57は、炉体18の底面よりも下方に位置しているが、昇降台50が一定距離上昇すると、位置決めピン59が位置決め穴58に進入する。そこから更に昇降台50が上昇すると、位置決めピン59及び位置決め穴58により位置決めされながら、スペーサ57の上面が炉体18の底面に当接する。
炉体18が材料装入位置に位置付けられると、炉体18の上部は、真空チャンバ10の材料装入口10aから上方に僅かに突出する。蓋体12は、金属材料Mを炉体18に装入するよりも前に開作動させられるが、作図の都合上、図5では開いた状態の蓋体12を省略する。
炉体18が下降する間、制御装置72は、油圧モータ42を作動させてドラム40を逆方向に回転させ、ワイヤロープ38をドラム40から放出する。このとき制御装置72は、ワイヤロープ38の張力を監視し、ワイヤロープ38の張力が一定になるよう、炉体18の下降速度を調整する。
一方、炉体18への金属材料Mの装入後、蓋体12により材料装入口10aが閉じられ、真空ポンプにより真空チャンバ10内の圧力が低下させられる。
炉体18が基準位置に位置づけられ、且つ、真空チャンバ10内の圧力が十分に低下した後、誘導コイル20に交流電流を供給して金属材料Mを加熱し、熔解させる(熔解工程)。減圧下で熔解させることにより、金属材料Mから酸素等の不純物が除去される。
まず、油圧シリンダ52を収縮作動させて昇降台50を低下させ、炉体18を基準位置に保持したまま、スペーサ57及び昇降台50を炉体18から下方に離間させる。次に、油圧モータ42を作動させてドラム40を正方向に回転させ、ワイヤロープ38をドラム40に巻き取る。これにより、炉体18には回転モーメントが作用し、図6及び図7に示したように、炉体18は、第2のピン30が真空チャンバ10の凹部の上面に当接するまでは第1のピン26を支点として傾動し、それ以降は、第2のピン30を支点として所定の傾動角度まで傾動する。
金属材料が流出した後は、油圧モータ42を作動させてドラム40を逆方向に回転させ、ドラム40からワイヤロープ38を放出させる。これにより、上記と逆の順序にて炉体18は直立状態に復帰する。
上述した一実施形態の真空誘導炉では、昇降装置により材料装入位置に位置付けられた炉体18に対し、真空チャンバ10の材料装入口10aを通じて金属材料Mが装入される。材料装入位置は、基準位置よりも上方であるため、例えばフォークグラップルを有するスクラップ処理機等の重機13によれば、炉体18に金属材料Mを直接装入することができる。すなわち、重機13の操縦者は、直接炉体18の上部開口を見ながら、金属材料Mを炉体18に装入することができる。従って、この真空誘導炉では、金属材料Mの玉掛け及び真空チャンバ10内での玉掛けの解除が不要であり、炉体18への金属材料Mの装入が容易且つ安全に行われる。
加工屑や廃材等のリターン材の使用率を高めれば、リターン材は材料としての原価が低いため、材料コストが削減される。しかしながら、リターン材は異形であるため玉掛けが困難であり、従来の真空誘導炉を用いてリターン材の使用率を高めようとすると、作業効率が悪化し、生産コストが上昇してしまう。
一方、リターン材は、スラブ材等に比べて嵩高いために、1回の熔解工程では、金属材料により炉体18は満たされず、1回の熔解工程につき1回の傾動工程を実施すると作業効率が悪化して生産コストの上昇を招く。
かくして、上述した真空誘導炉によれば、リターン材の使用率を高めることにより、生産コストの上昇を抑制しながら、材料コストが削減される。
また、一実施形態の真空誘導炉は、昇降装置が昇降台50と油圧シリンダ52により構成されるため、簡単な構成を有する。
一方、1つの油圧シリンダ52により昇降台50を上下させるとしても、ガイドによって昇降台50の傾きが防止されるため、昇降台50の上下動の安定性が確保される。
一実施形態の真空誘導炉では、ガイドが、複数の支柱62と、ガイドロッド60と、ガイドローラ66とを有することにより、油圧シリンダ52のストロークが大きく、炉体18が重くても、昇降台50の傾きが確実に防止される。
一実施形態の真空誘導炉では、昇降台50が炉体18から下方に離間することがあるが、位置決め装置により、昇降台50上での炉体18の位置が一定に保たれるので、昇降台50の重心のずれが防止され、昇降台50の上下動の安定性が確保される。
本発明は、上述した一実施形態に限定されることはなく、種々の変更が可能である。
例えば、一実施形態では、ガイドを構成するガイドローラ66がガイドロッド60に固定され、レール64が支柱62に固定されていたけれども、ガイドローラ66が支柱62に固定され、レール64がガイドロッド60に固定されていてもよい。
10a 材料装入口
12 蓋体
18 炉体
20 誘導コイル
Claims (10)
- 上部に材料装入口を有する真空チャンバと、
前記真空チャンバの材料装入口を開閉可能な蓋体と、
前記真空チャンバ内に収容され、前記材料装入口の下方に位置する炉体と、
前記炉体の外周に配置された誘導コイルと、
前記炉体の上部から当該炉体の内部で熔解した材料を流出させるべく、基準位置にて直立状態にある前記炉体を傾動させる傾動装置と、
前記炉体を前記基準位置よりも上方に直立状態にて移動させて前記炉体を材料装入位置に位置付ける昇降装置と
を備えることを特徴とする真空誘導炉。 - 前記傾動装置は、
ドラムを正方向及び逆方向に回転させるためのモータと、
前記ドラムから前記炉体まで延び、前記ドラムが正方向に回転して前記ドラムに巻取られるのに伴い前記炉体に回転モーメントを作用させるワイヤロープと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の真空誘導炉。 - 前記昇降装置は、
前記炉体を搭載する昇降台と、
前記昇降台の下に配置され、前記昇降台を上下方向に移動させるための少なくとも1つの油圧シリンダと
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の真空誘導炉。 - 前記昇降装置は、上下方向に伸縮可能な1つの前記油圧シリンダと、前記昇降台の傾きを防止するガイドとを含むことを特徴とする請求項3に記載の真空誘導炉。
- 前記ガイドは、
前記油圧シリンダの周囲に立設された複数の支柱と、
前記昇降台から下方に延び、平面でみて、前記複数の支柱のうち対応する支柱と間隔を存してそれぞれ対向する複数のガイドロッドと、
前記支柱と前記ガイドロッドとの間に配置されたガイドローラと
を含むことを特徴とする請求項4に記載の真空誘導炉。 - 前記昇降装置の油圧シリンダ及び前記傾動装置のモータの動作を制御する制御装置を更に備え、
前記制御装置は、前記昇降装置により前記炉体を上下に移動させるときに、前記ワイヤロープにかかる張力を監視しながら前記モータを作動させ、前記ドラムへの前記ワイヤロープの巻取り又は前記ドラムからの前記ワイヤロープの放出を実行する
ことを特徴とする請求項3乃至5の何れかに記載の真空誘導炉。 - 少なくとも前記傾動装置が前記炉体を傾動させる間、前記昇降台は前記炉体から下方に離間し、
前記炉体の底部と前記昇降台との間に設けられ、前記昇降台上での前記炉体の位置を決定する位置決め装置を更に備える
ことを特徴とする請求項3乃至6の何れかに記載の真空誘導炉。 - 前記位置決め装置は、
前記炉体及び昇降台のうち一方に設けられ、先細り形状を有する位置決めピンと、
前記炉体及び昇降台のうち他方に設けられ、前記位置決めピンと嵌合する位置決め穴と
を含むことを特徴とする請求項7に記載の真空誘導炉。 - 請求項1乃至8の何れか1項に記載の真空誘導炉を用いて行う金属材料の精錬方法であって、
前記昇降装置により前記炉体を前記材料投入位置に位置付ける一方、前記蓋体を開作動させる上昇工程と、
前記材料装入位置にある前記炉体の内部に前記真空チャンバの材料装入口を通じて金属材料を装入する材料装入工程と、
前記材料装入工程の後、前記炉体を前記基準位置まで下降させる一方、前記蓋体を閉作動させてから前記真空チャンバ内の圧力を低下させる下降工程と、
前記下降工程の後、前記誘導コイルに通電して前記金属材料を熔解させる熔解工程と、
前記熔解工程の後、前記傾動装置により前記炉体を傾動させ、前記炉体の上部から熔解した前記金属材料を流出させる傾動工程と
を備えることを特徴とする金属材料の精錬方法。 - 前記上昇工程から前記熔解工程までを一のサイクルとしたとき、
前記一のサイクルを少なくとも2回実行した後に前記傾動工程を実行する
ことを特徴とする請求項9に記載の金属材料の精錬方法。
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