JP2008280818A - 建築物の免震構造とそれを採用した建築物 - Google Patents
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Abstract
【課題】一般住宅等の小型建築物に対して好適に採用されて、振動絶縁手段による躯体の基礎に対する水平方向変位を十分に許容せしめつつ、躯体の基礎に対する水平方向変位が生ぜしめられた際に有効なダンパ効果(減衰効果)を作用せしめる新規な構造の建築物の免震構造を提供する。
【解決手段】金属製の連結部材14が土台50および基礎46の側方に位置して上下方向に延びた形態で土台50と基礎46を固定することによって、連結部材14の長さ寸法を、振動絶縁手段を介して重ね合わされた土台50と基礎46の固定部位間距離よりも大きくした。
【選択図】図1
【解決手段】金属製の連結部材14が土台50および基礎46の側方に位置して上下方向に延びた形態で土台50と基礎46を固定することによって、連結部材14の長さ寸法を、振動絶縁手段を介して重ね合わされた土台50と基礎46の固定部位間距離よりも大きくした。
【選択図】図1
Description
本発明は、建築物の免震構造の関連技術に属し、特に、一般住宅や倉庫等の小型建築物において好適に採用される、新規な構造の免震構造の技術に関するものである。
より詳細には、振動絶縁手段によって水平方向の相対変位が許容された建築物の基礎と土台とを連結して、それら基礎と土台の水平方向の相対変位に際してダンパー効果を発揮し得る連結部材を備えた、新規な構造の建築物用免震構造とそれを採用した建築物に関するものである。
良く知られているように、一般住宅等の小型建築物では、躯体の最下部に位置する土台が、地盤に敷設された基礎に対して載置されて、アンカーボルトで固定されている。これにより、躯体を含む上部構造の荷重を、下部構造としての基礎を介し、支持地盤に伝達させて、建築物を安定して支持せしめるようになっている。
ところで、近年では、地震等の外部荷重から上部構造を保護するために、外部荷重の入力部分である基礎と上部構造の土台との間にゴムマウント等の振動絶縁手段を介在させた免震構造が提案されている。この免震構造によれば、地震で基礎が水平方向変位しても、基礎から上部構造への力の伝達が、振動絶縁手段で軽減乃至は遮断されることから、上部構造のダメージを効果的に抑えることが出来るのである。
ところが、従来からの一般住宅では、前述のとおり土台が基礎に対してアンカーボルトによって強固に固定されていた。それ故、免震構造を採用するに際しては、このアンカーボルトによる土台と基礎の固定構造を解消して、土台の基礎に対する水平方向の相対変位を許容することが必要となる。
そこで、かかる要求に対処するために、例えば特許文献1(特開平10−220067号公報)や特許文献2(特開2000−110403号公報)において、基礎の上端面におけるアンカーボルトの突出部分の周囲をザグリ状に肉抜きすることにより、アンカーボルトによる土台と基礎の連結力を軽減して、土台の基礎に対する水平方向の相対変位を許容することが提案されている。
しかしながら、これら特許文献1,2に示された従来構造では、基礎のザグリによって基礎強度の低下が避けられないという大きな問題があるばかりでなく、たとえザグリを設けたとしても、基礎と土台の対向面間に跨がって上下方向に延びるアンカーボルトでは、その自由長が極めて小さいが故に、免震構造に要求される躯体の基礎に対する数十センチ或いはそれ以上の水平方向変位を許容することが極めて困難であった。
加えて、たとえ基礎のザグリを設けてアンカーボルトの曲げ変形を許容し得たとしても、アンカーボルトの軸方向となる躯体の基礎に対する鉛直方向の相対変位は、アンカーボルトによる大きな締結力と引張強度によって殆ど許容され得ない。それ故、縦揺れの直下型地震に対しては、免震効果が殆ど発揮され得ないという問題もあったのである。
一方、躯体の基礎に対する水平方向変位を許容するためにアンカーボルトを用いないで、水平方向変位量を制限するストッパ機構だけを採用することも提案されている。ところが、このような構造では、地震による外力作用時における基礎に対する躯体の振動変位を抑える減衰作用が発揮され得ず、長い時間に亘って躯体が水平方向に往復変位を繰り返してしまうという問題があった。
本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、一般住宅等の小型建築物に対して好適に採用されて、振動絶縁手段による躯体の基礎に対する水平方向変位を十分に許容せしめつつ、より一層優れた免震効果を発現せしめ得る新規な免震構造を提供すること、およびかかる免震構造を備えた建築物を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、建築物用免震構造に関する本発明の特徴とするところは、建築物の基礎と土台の間に振動絶縁手段を配して、該建築物における該土台を含む上部構造の荷重を該振動絶縁手段を介して該基礎に伝達支持せしめると共に、該振動絶縁手段によって該建築物の該上部構造の該基礎に対する水平方向の相対変位を許容せしめた建築物の免震構造において、前記土台と前記基礎の側方に位置して上下方向に延びる金属製の連結部材を配設して、該連結部材の上端を該土台に固定する一方、該連結部材の下端を該基礎に固定することにより、前記振動絶縁手段を介して重ね合わされた該土台と該基礎との上下方向の対向面間距離よりも大きな長さ寸法を有する該連結部材によって該土台と該基礎を連結せしめて、前記建築物の前記上部構造が該基礎に対して水平方向に相対変位せしめられた際に該連結部材が変形せしめられるようにした建築物の免震構造にある。
このような本発明に従う構造とされた免震構造においては、土台と基礎が特定構造の連結部材によって相互に連結されているのであり、かかる連絡部材が土台と基礎の側方で上下方向に延びて配設されていることによって自由長が大きく確保されていることから、土台の基礎に対する水平方向の相対変位が、この連結部材の変形に基づいて十分なストロークで許容され得る。特に、特許文献1,2に記載のような基礎上端面にザグリを設ける必要もないことから、基礎の強度を十分に確保しつつ、連結部材の自由長を大きく設定することが可能となる。
また、かかる連結部材を、例えば鉛や銅、鉄鋼等の適当な金属材料で形成して、土台が基礎に対して水平方向変位せしめられることに伴って塑性変形が生ぜしめられるようにしても良い。この塑性変形履歴によってダンパ効果(減衰効果)を発揮し得る。このダンパ効果によって、上部構造の揺れが速やかに抑えられる。また、かかる連結部材を、例えば鉄鋼やばね鋼等の適当な金属材料で成形して、土台の基礎に対する相対変位が相当に大きな領域まで、当該連結部材の弾性変形が生ぜしめられるようにしても良い。なお、土台の基礎に対する相対変位量が小さい場合には、連結部材が弾性変形領域で変形せしめられることから、この鉄鋼やばね鋼等の連結部材の弾性に基づいて、基礎に対して相対変位せしめられた土台の基礎に対する初期位置への返戻作動が一層速やかに且つ自動的に発現され得る。
また、連結部材の総長(自由長)が、土台と基礎の直線的な連結長(土台側連結部位と基礎側連結部位間の鉛直方向離隔距離)よりも大きくされていることにより、土台と基礎の上下方向の相対変位も、連結部材の変形によって許容されることとなる。しかも、かかる土台と基礎の上下方向の変位に際しても、前述の如き、連結部材の塑性変形に基づくダンパー効果や、弾性変形に基づく初期位置への復元効果が有効に発揮される。
しかも、かかる連結部材は、金属材で形成されていることから、強風等の地震時振動に比して振動加速度が小さな外力作用時には、この連結部材が土台と基礎を相互に固定的に連結することとなり、いわゆるアンカー機能を発揮して上部構造の下部構造による安定支持効果も発揮されるのである。
なお、本態様において連結部材の上端部と下端部における土台と基礎への固定部位や固定構造は、特に限定されるものでない。具体的に例示すると、土台や基礎に対して水平方向に貫通する挿通孔を形成し、この挿通孔に対して連結部材の上端部や下端部を挿通固定することも可能である。或いは、土台や基礎に対して、予め固定された基台等の取付部材を設けておいて、この取付部材に対して、連結部材の上端部や下端部を固定することも可能である。特に、土台は一般に木や金属で形成されることから、この土台に対して孔を穿ったり、ねじ固定したり等して、連結部材の上端部を容易に固定することが可能である。一方、基礎は一般に鉄筋コンクリートで形成されていることから、その配筋に対して係止等させることにより、連結部材の基礎に対する固定強度を基礎配筋を利用して容易に且つ十分に得ることが可能となる。また、基礎が布基礎やベタ基礎等で形成されている場合には、そのフーチング部分に対して、連結部材の下端部を固定することも可能である。その場合には、例えば基礎梁の側方に所定距離だけ離れた位置において、フーチングの上面から上方に延び出すようにして、連結部材が設けられることとなる。
また、本発明では、例えば、前記連結部材が、前記土台の側面から外方に延び出している上端側方突出部と、前記基礎における基礎梁の側面から外方に延び出している下端側方突出部と、それら上端側方突出部の突出先端部分と下端側方突出部の突出先端部分とを一体的に連結して上下方向に延びる中央部分とを、含んだ一体構造とされてなる態様が、好適に採用され得る。
このような連結部材を採用することにより、連結部材の配設スペースを比較的に小さく抑えつつ、連結部材の自由長を一層効率的に確保することが可能となる。なお、連結部材の基礎および土台からの突出方向は、建築物の外側に向かって突出させる他、建築物の内側すなわち縁の下に向かって突出させても良い。
また、本発明では、例えば、前記連結部材が、その全長に亘って、折れ曲がった部分を有しないで滑らかに連続した形状とされている態様が、好適に採用され得る。
このような連結部材においては、変形に際しての応力集中が緩和されて、長さ方向の広い範囲に亘って変形が生ぜしめられることから、耐荷重強度が大きくされると共に、塑性変形を利用した減衰効果や弾性変形を利用した初期位置への復元効果が有利に図られ得る。
また、本発明では、例えば、前記土台と前記基礎を連結する前記連結部材が複数設けられており、該複数の連結部材のうち、少なくとも1つが他の連結部材に対して異なる弾性限度を有している態様が、好適に採用され得る。
このような態様においては、弾性限度が異なる連結部材の複数が採用されていることによって、例えば、ある連結部材に塑性変形によるダンパー効果を積極的に生ぜしめる一方、別の連結部材に弾性変形による初期位置の復元効果を積極的に生ぜしめるようにすることも可能となる。それ故、ダンパー効果や復元効果等を含んでなる免震効果のチューニング自由度の更なる向上が図られ得る。
また、本発明では、例えば、前記基礎に取付基台が固設されていると共に、該取付基台における該基礎の側部から露出する部分に対して前記連結部材の前記基礎側固定部が固定される態様が、好適に採用される。
このような態様においては、基礎コンクリートの打設後に連結部材を基礎に固定することが出来る。それ故、基礎から突出配置される連結部材によって阻害されることなく、基礎コンクリート型枠を容易に組み立てることが出来、基礎工などの作業性が有利に確保され得る。また、取付基台自体を基礎コンクリート型枠の巾決固定用セパレータとして用いることもできる。
また、本発明では、例えば、前記連結部材が、既存の前記土台および前記基礎に対して固定されることにより、後付けで取り付けられるようになっている態様が、好適に採用され得る。
このような態様においては、基礎や土台の設置等の作業に際して連結部材を組み付ける必要がなく、それら基礎や土台の設置作業が容易となる。しかも、地震等によって連結部材が塑性変形した場合には、連結部材を容易に交換することも可能となる。即ち、本発明では、前記連結部材が前記土台および前記基礎に対して着脱可能とされている態様が、採用されても良い。また、本態様に従えば、既存の一般住宅に対しても、それが免震住宅の場合にはそのまま、免震住宅でない場合には振動絶縁手段の組み付けと併せて、連結部材を装着することも、容易に実現可能となる。
また、本発明では、例えば、前記土台が前記基礎に対して水平方向に相対変位せしめられた際に、初期位置へ返戻方向の復元力を及ぼす初期位置復元手段を設けた態様が、好適に採用され得る。
このような態様においては、基礎に対して相対変位せしめられた土台の基礎に対する初期位置への返戻作動が確実となり、それによって、免震効果が一層有利に発揮され得る。なお、初期位置復元手段には、例えば、弾性限度がチューニングされた前述の如き連結部材の弾性の他、相互に重ね合わせられた部材の重ね合わせ面間に働く摩擦力や、凸部を凹所に支持せしめる機械的な構造等が採用される。
また、本発明では、例えば、前記基礎に固定される下側支持部材と前記土台に固定される上側支持部材とを上下方向に重ね合わせて配すると共に、該下側支持部材と該上側支持部材の対向面にはそれぞれ他方に向かって開口するすり鉢状の凹所を形成して、それら下側支持部材と上側支持部材の両凹所の対向面間に球形状のころがり部材を組み込むことによって、前記振動絶縁手段を構成し、該下側支持部材と該上側支持部材が同一中心軸上に位置合わせされた平常時には、該下側支持部材の該凹所と該上側支持部材の該凹所の各中央最深部間に該ころがり部材が位置せしめられるようにすると共に、前記建築物の前記上部構造が該基礎に対して水平方向に相対変位せしめられた際には、該下側支持部材の該凹所と該上側支持部材の該凹所を乗り上げる方向に該ころがり部材が移動せしめられるようにした構造が、好適に採用される。
このような特定構造の振動絶縁手段を採用することにより、家屋における上部構造の大きな重力を巧く利用して、その分力作用によって、土台が基礎に対して水平方向に相対変位せしめられた際の帰心力、即ち初期位置へ返戻する方向の作用力を効果的に得ることが可能となる。それ故、連結部材の弾性だけによる帰心力よりも大きな帰心力を得ることが可能となり、比較的に小さな外力の作用時には、上部構造物を基礎に対して固定支持せしめて、上部構造物を安定支持せしめることが可能となる。また、地震等に際して水平力が及ぼされた際にも、連結部材が塑性変形領域までも至らない程度であれば、連結部材の弾性と振動絶縁手段による上下構造重力の分力作用に基づいて、減衰的作用が発揮されて、上部構造の水平方向変位が一層速やかに収束されると共に、初期位置に速やかに返戻されることとなる。
また、上述の如き振動絶縁手段では、土台が基礎に対して水平方向変位せしめられた際に、下側支持部材の凹所と上側支持部材の凹所を乗り上げる方向にころがり部材が移動せしめられることにより、上下支持部材が上下方向で相互に離隔せしめられて土台が基礎に対して上方に離隔変位せしめられることとなる。それ故、本発明に従う特定構造の連結部材と、かかる特定の振動絶縁手段とを、組み合わせて採用したことにより、水平方向振動に際して土台と基礎が水平方向だけでなく上下方向にも相対変位せしめられることとなり、その結果、かかる連結部材に対してより効率的に変形が及ぼされるのである。これにより、連結部材の塑性変形に基づくダンパ効果が、より効果的に発揮され得ることとなり、一層優れた免震効果が実現可能となるのである。
なお、かかる振動絶縁手段における凹所の底面の形状は、特に限定されるものでなく、外周側に行くに従って次第に立ち上がる傾斜角度や、その開口面積等を含めて、要求される制振効果や予想される振動外力の大きさ、更に地震作用時に予想される上部構造の基礎に対する相対変位量の大きさ等を考慮して、適宜に設計される。具体的には、例えば、凹所の底面を円錐形状や湾曲したすり鉢形状等とする他、中央部分に平坦面を形成したり、中央を尖鋭形状としたりすることも可能である。
また、本発明では、例えば、前記すり鉢状の凹所が、円錐面形状を有する中央部と、湾曲面形状を有する外周縁部から構成されており、該円錐面形状の中央部が、該湾曲面形状の外周縁部の接線方向に延び出している態様が、好適に採用され得る。
このような態様においては、円錐面形状の中央部によって、凹所の中央最深部が有利に実現され得ることに加え、風等の振動加速度の小さな外力作用時には円錐面の傾斜が抵抗となり、土台と基礎の連結が安定して保持される。しかも、かかる中央部の外周側、即ち凹所の外周縁部が湾曲面形状とされていることによって、ころがり部材が凹所から飛び出す方向に大きく変位することが制限されることから、土台と基礎が過度に相対変位することが抑えられ、延いては上部構造の大きな揺れが一層速やかに抑えられる。
また、本発明では、例えば、前記基礎に固定される下側支持部材と前記土台に固定される上側支持部材とを上下方向に重ね合わせて配すると共に、該下側支持部材の上面には上方に向かって開口するすり鉢状の凹所を形成する一方、該上側支持部材の下面には該下方に向かって突出する当接突部を形成して、上側支持部材の該当接突部を該下側支持部材の該凹所内に突出位置せしめることによって、前記振動絶縁手段を構成し、該下側支持部材と該上側支持部材が同一中心軸上に位置合わせされた平常時には、該下側支持部材の該凹所の中央最深部に対して該上側支持部材の該当接突部が突出位置せしめられるようにすると共に、前記建築物の前記上部構造が該基礎に対して水平方向に相対変位せしめられた際には、該上側支持部材の該当接突部が該下側支持部材の該凹所の内面を乗り上げる方向に当接状態で移動せしめられるようにした態様が、好適に採用される。
このような特定構造の振動絶縁手段を採用した場合でも、上述のころがり部材を含んで構成される振動絶縁手段を採用した場合と同様に、家屋における上部構造の大きな重力を巧く利用して、その分力作用によって、土台が基礎に対して水平方向に相対変位せしめられた際の帰心力を得ることが出来るのであり、上述のころがり部材を含んで構成される振動絶縁手段を採用した場合と同様な効果が、何れも有効に発揮され得る。
それに加えて、本態様では、ころがり部材が不要とされることから、部品点数の減少と構造の簡略化も図られ得ることとなる。なお、本態様において、上側支持部材における当接突部は、上側支持部材と一体形成されていても良いし、別体形成された例えば球体等を上側支持部材に対して組み付けることによって形成されていても良い。
また、本発明では、例えば、前記すり鉢状の凹所が、全体として円錐面形状とされた態様が、好適に採用され得る。
このような態様においては、円錐面形状の頂部によって、凹所の中央最深部が簡単な構造で有利に実現され得ることに加え、風等の振動加速度の小さな外力作用時には円錐面の傾斜が抵抗となり、土台と基礎の連結が安定して保持される。
さらに、上述の如きころがり部材や当接突部を採用してなる、特定構造の振動絶縁手段においては、例えば、その下側支持部材の凹所に粘性材を収容した態様が、好適に採用される。
このように凹所を利用して粘性材を収容することにより、ころがり部材や当接部材の転動や滑動に基づいた土台の基礎に対する水平方向の相対変位が一層安定して所定の抵抗をもって許容され得ることとなり、免震構造の信頼性の向上も図られ得る。
要するに、本発明において、上述の如き当接突部を採用してなる特定構造の振動絶縁手段を採用するに際して、上側支持部材の下面に対して凹所を形成すると共に、下側支持部材の上面に対して当接突部を形成することも可能であるが、そのような態様の場合に比して、前述の如き下側支持部材の上面に対して凹所を形成すると共に、上側支持部材の下面に対して当接突部を形成した態様では、かかる凹所に粘性材を収容させることにより、信頼性の向上等の一層優れた効果が発現可能となるのである。
なお、かかる粘性材としては、オイルやグリス等の液状やゲル状の各種摩擦軽減剤が採用可能であるが、好適には、雨水の侵入に対処するために疎水性(親油性)のものが望ましく、耐火性が高い方が一層望ましい。
また、かくの如き振動絶縁部材に粘性材の収容構造を採用するに際しては、例えば、前記平常時において、前記下側支持部材と前記上側支持部材が、前記凹所の外周縁部において互いにシール状態で当接せしめられるようになっている態様が、好適に採用される。
このような態様によれば、平常時に雨水等が内部侵入して耐久性や作動性が低下してしまう不具合が効果的に防止され得ることとなり、信頼性の向上も図られ得る。
さらに、建築物に関する本発明の特徴とするところは、上述の如き本発明に従う構造とされた建築物の免震構造を採用した建築物にある。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1,2には、本発明の建築物の免震構造に係る一実施形態としての免震構造10を採用した建築物12の要部が示されている。この免震構造10は、連結部材としてのダンパーアンカ14や振動絶縁手段としてのローラーパッキン16を含んで構成されている。以下の説明において、特に断りのない限り、上下方向は、図1,2中の上下方向をいう。
より詳細には、ダンパーアンカ14は、図3〜7にも示されているように、略全体に亘って略一定の円形断面で延びる金属材からなり、上部に配されたボルト部18と中央部分に配された湾曲部20と下部に配された固定板部22が互いに一体形成された構造を呈している。
ボルト部18は、左右方向(図2中、左右)に略ストレートに延びていると共に、外周面に全体に亘って雄ねじ加工が施されている。また、ダンパーアンカ14におけるボルト部18の一方の端部(図2中、右)と上下方向に所定距離を隔てた下部には、固定板部22が配されている。
固定板部22は、略矩形平板形状を有しており、固定板部22の板厚方向がボルト部18の軸方向と略平行に延びている。これらボルト部18と固定板部22の間に湾曲部20が形成されている。
湾曲部20は、左右方向の一方(図2中、右)に凸となる形態で略弓形状に湾曲しており、一方(図2中、上)の端部がボルト部18の一方(図2中、右)の端部と接続されていると共に、湾曲部20の他方(図2中、下)の端部が固定板部22の一方(図2中、右)の端面の中央部分と接続されている。このことからも明らかなように、ダンパーアンカ14は、ボルト部18と固定板部22を除く略全体が湾曲部20で構成された湾曲部分を備えている。
なお、本実施形態に係る湾曲部20の形状は何等限定されるものでなく、図1に示されるように、その全長に亘って、折れ曲がった部分を有さずに滑らか連続して湾曲する形状とされていたり、図2に示されるように、湾曲部20の中央部分が湾曲部20の湾曲方向と反対方向に湾曲していても良い。
本実施形態では、建築物12の後述する土台50と布基礎46の間において、ダンパーアンカ14が水平方向に所定距離を隔てて複数設けられて、土台50と布基礎46を連結するようになっており、目的とする減衰効果や初期位置復元効果その他の免震効果に応じて、各ダンパーアンカ14の形成材料が設定変更される。具体的に、例えば、それらダンパーアンカ14のうちの一又は二以上が、鉛や銅、鉄鋼等を用いて形成されていることによって、土台50と布基礎46の水平方向の相対変位に際して塑性変形に基づく減衰効果が発揮されるようにしても良い。また、例えば、ダンパーアンカ14のうちの一又は二以上が、鉄鋼やばね鋼等で形成されていることによって、土台50と布基礎46の水平方向の相対変位に際して、弾性変形に基づき、土台50を布基礎46に対して初期の位置に戻す初期位置復元効果が発揮されるようにしても良い。本実施形態では、これらダンパーアンカ14による減衰効果および初期位置復元効果を両方得ようと、各効果を奏するダンパーアンカ14が組み合わせて採用されていることで、複数のダンパーアンカ14のうちの少なくとも1つが他のダンパーアンカ14に対して異なる弾性限度を有している。なお、本実施形態では、これに限定されるものでなく、前述の如く目的とする免震効果に応じて、例えば全てのダンパーアンカ14に同一の材料が採用されることにより全てのダンパーアンカ14の弾性限度を略等しくして、同一の効果を奏するようにしても良い。また、ダンパーアンカ14に弾性および塑性を備えた材料が採用されることによって、一つのダンパーアンカ14で減衰効果および初期位置復元効果を得ることも可能である。
また、ダンパーアンカ14の固定板部22が、取付基台としてのアンカープレート24に装着されるようになっている。アンカープレート24は、固定板部22よりも一回り大きな且つ厚肉の略矩形平板形状を有していると共に、複数のフック26が固設されている。これらフック26は、後述する布基礎46や布基礎46に埋設された鉄筋52に対して係止可能とされていればよく、特に限定されるものでないが、本実施形態では、アンカープレート24の上端面から左右方向一方(図2中、左)の側において斜め上方に延びて先端部分が湾曲せしめられた上部フック26aと、アンカープレート24における上部フック26aの基端部分よりも下方の端面から左右方向一方に向かってストレートに延びて先端部分が湾曲せしめられた下部フック26bとが、それぞれ各一対設けられて、アンカープレート24の長手方向に所定距離を隔てて配されている。また、アンカープレート24の中央部分には、一対の下部フック26b,26bの間を下部フック26bと平行に延びるようにしてセパレートボルト28が螺着固定されている。これにより、アンカープレート24は、コンクリート型枠の巾決固定用セパレータとしても利用することができる。
一方、ローラーパッキン16は、図8,9に示される如き上側支持部材としての上沓部材30と下側支持部材としての下沓部材32を備えている。本実施形態において、上沓部材30と下沓部材32(以下、上下沓部材30,32とも言う。)の形状や大きさ、構造は、同一とされている。
上下沓部材30,32は、図10,11にも示されているように、略矩形平板形状を有する弾性材を用いて形成されている。弾性材としては、例えば天然ゴムやスチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコンゴムの他、スチレン系や塩化ビニル系のエラストマ等が単体で若しくはそれらを適宜に混合したもの採用され、望ましくは耐圧性能や耐蝕性能、高減衰特性等に優れたものが採用される。なお、弾性材の採用により、上下沓部材30,32が、縦揺れの地震振動に対して、応答衝撃エネルギーの吸収緩和機能等の作用を発揮することが可能となる一方、長期鉛直荷重に対する安定した支持作用も奏し得る。
また、上下沓部材30,32の中央部分には、底部付近から一方(図11中、上)の端面に向かって円形状に開口するすり鉢状凹所34が形成されている。すり鉢状凹所34の縁部が、上下沓部材30,32の略正方形状の外周縁部よりも内側に位置せしめられていると共に、すり鉢状凹所34の深さ寸法が外周縁部から内側に向かって次第に大きくされており、上下沓部材30,32の中央部分において最大とされている。特に本実施形態では、すり鉢状凹所34の中央部分から外周部分にかけて、深さ寸法の変化が少しとされる一方、外周部分から周縁部にかけて変化が急に大きくされていることによって、上下沓部材30の縦断面において、すり鉢状凹所34の中央部分から外周部分にかけての底面が緩やかに湾曲していると共に、外周部分から周縁部にかけての底面が大きく湾曲している。
すり鉢状凹所34の底面を含む上下沓部材30,32の一方(図11中、上)の端面には、ステンレス鋼等からなる鋼板36が被着されている。鋼板36の厚さ寸法が全体に亘って略一定とされていることで、すり鉢状凹所34の底面に被着された部分の鋼板36の表面の曲率が、すり鉢状凹所34の底面の曲率と略同じとされている。また、上下沓部材30,32における鋼板36が被着された側の角部が、斜めに切り欠かれた形状を有している。
さらに、鋼板36の外周縁部が、上下沓部材30,32における鋼板36が設けられたのと反対側の表面に向かって、該表面に至らない所定の長さで延びるようにして、上下沓部材30,32の外周縁部に被着形成されている。この鋼板36の外周縁部の長さはすり鉢状凹所34の中央底部の深さ寸法と略同じとされている。即ち、本実施形態に係る上下沓部材30,32において、厚さ方向(図8,9中、上下)で鋼板36が設けられたのと反対側の表面から鋼板36に至る領域が、略矩形平板形状の弾性材からなるゴム層39とされている。また、図8等では省略してあるが、上下沓部材30,32における鋼板36と反対側に設けられたゴム層39の表面には、略全体に亘って複数の溝部が形成されていることによって、滑り止め加工が施されている。なお、鋼板36の厚さ寸法は、静止時に及ぼされる鉛直荷重による上下沓部材30,32の圧縮変形を抑制するのに十分な厚さとされている一方、ゴム層39の厚さ寸法は、上下沓部材30,32を後述する土台50や基礎梁56に重ね合わせた際に、幅方向の位置ずれを剪断変形して吸収したり、或いは後述する上下沓部材30,32の収容領域38に鋼球40を収容配置した際に、ゴム層39の弾性変形により鋼板36や鋼球40等の寸法誤差を吸収したりするのに十分な厚さ寸法とされている。
本実施形態では、すり鉢状凹所34の中央部分から外周部分にかけて緩やかに湾曲した底面に被着されて、該底面と略同じ曲率で湾曲する鋼板36の表面によって、第一の湾曲面41が形成されていると共に、すり鉢状凹所34の外周部分から周縁部にかけて大きく湾曲する底面に被着されて、該底面と略同じ曲率で湾曲する鋼板36の表面によって、第二の湾曲面43が形成されている。これら第一の湾曲面41と第二の湾曲面43は滑らかに接続されている。また、上下沓部材30,32におけるすり鉢状凹所34から外周側に広がる表面に被着された鋼板36の略平坦な形状の表面によって、平坦面45が形成されている。これら第一及び第二の湾曲面41,43や平坦面45は、全体に亘ってショットブラスト加工が施されていることによって、粗面化されている。
これら上沓部材30と下沓部材32が、鋼板36が設けられた面が互いに向き合うようにして上下方向で対向位置せしめられて、上下沓部材30,32の中心軸を同一線上に位置せしめた状態下、上下沓部材30,32の平坦面45,45が互いに重ね合わせられることによって、各すり鉢状凹所34に被着された鋼板36の第一及び第二の湾曲面41,43が協働して略扁平球殻形状の収容領域38を構成している。
上述の説明からも明らかなように、すり鉢状凹所34の深さ寸法が外周縁部から内側に向かって次第に大きくされて、上下沓部材30,32の中央部分において最大とされていることから、各すり鉢状凹所34の底面に被着された鋼板36の第一の湾曲面41の一対で構成される収容領域38の中央部分において、中央部分の高さ寸法:H1が最も大きくされており、かかる中央部分から外周部分に向かって次第に小さくされている。また、外周部分から周縁部にかけて深さ寸法の変化が急に大きくなるすり鉢状凹所34の底面に被着された第二の湾曲面43の一対で構成される収容領域38の外周部分乃至は外周縁部において、収容領域38の中央部分と接続される部分の高さ寸法が、H2とされており、H1>H2とされている。
かかる収容領域38には、ころがり部材としての鋼球40が収容配置されている。鋼球40は、中心を通る断面が全て略同じ大きさの円形状とされた略球体とされており、ステンレス鋼等の高剛性材料を用いて形成されている。
ここで、鋼球40の直径寸法:φAと収容領域38の最大高さ寸法:H1が略等しくされていることによって、鋼球40が収容領域38の中央部分に収容された状態下で、上下沓部材30,32の中心軸および鋼球40の中心が略一致せしめられており、ローラーパッキン16の初期状態(平常時の状態)とされる。また、鋼球40の第一及び第二の湾曲面41,43に沿った回転により、上沓部材30と下沓部材32が水平方向で360°相対的に変位可能とされている。また、鋼球40が、その回転により第一及び第二の湾曲面41,43の形状に沿って中央の最深部から周縁の浅い部分向かって乗り上げるように移動し、上沓部材30と下沓部材32が水平方向で相対変位せしめられると、その高さの違いにより建築物12の自重の分力が上沓部材30を下沓部材32に対する初期位置へ返戻する方向に作用せしめられるようになっており、ローラーパッキン16の帰心作用が有利に発揮されるようになっている。
なお、鋼球40の直径寸法:φAと収容領域38の最大内法寸法(最大高さ寸法):H1との関係は、必ずしも略同じとされる必要はなく、例えば、鋼球40の直径寸法:φAが収容領域38の最大高さ寸法:H1に比して小さくされることによって、鋼球40が収容領域38の中央部分に位置せしめられた状態で、鋼球40と収容領域38の間に隙間があっても良い。これにより、収容領域38の中央部分の鋼板36の間に略点当たり状で当接する鋼球40を介して、建築物12の木造家屋44の荷重が集中的に及ぼされることを回避して、ローラーパッキン16の耐久性を好適に確保することも可能となる。また、鋼球40が収容領域38の中央部分に位置せしめられた初期状態で鋼球40を挟んで上下沓部材30,32が重ね合わせられないことから、例えば振動加速度の小さな風等の外圧が建築物12に及ぼされても、鋼球40の回転変位が制限されることに伴い上下沓部材30,32延いては土台50と布基礎46の水平方向の相対変位を制限して、小さな外圧では木造家屋44が容易に動かないようにすることも可能である。更に、大きな振動加速度の地震等に際して、土台50と布基礎46が水平方向に大きく相対変位して、鋼球40が収容領域38の外周部分の第二の湾曲面43に当接することによって回転し、建築物12の自重の分力を利用して収容領域38の中央部分に返戻しても良い。
あるいは、鋼球40の直径寸法:φAが収容領域38の最大高さ寸法:H1に比して大きくされることによって、ローラーパッキン16を建築物12に装着する前の単品状態で、上下沓部材30,32の収容領域38における一対の鋼板36,36が鋼球40を挟んで重ね合わせられると、それら鋼板36,36が重ね合わせられる平坦面45,45の間に隙間があるようにしても良い。そして、ローラーパッキン16を土台50と基礎梁56の間に装着した際に、木造家屋44の自重がローラーパッキン16に及ぼされて、上下沓部材30,32のゴム層39が弾性変形することに伴い鋼板36,36の重ね合わせ面間の隙間を小さくし乃至は消失するようにしても良い。その結果、上下沓部材30,32を鉛直方向に強固に重ね合わせて、木造家屋44の自重が鋼球44を介して一対の鋼板36,36に大きく及ぼされることにより、小さな外圧では、鋼球40が容易に回転しないようにして、土台50と布基礎46の水平方向の相対変位による木造家屋44の変位を抑えることも可能となる。
一方、鋼球40の直径寸法:φAと収容領域38における中央部分と外周部分との接続部分の内法寸法(高さ寸法):H2との関係は、φA≧H2とされることが望ましい。特に本実施形態では、鋼球40の半径が、すり鉢状凹所34の湾曲が大きくなる外周部分から周縁部にかけて被着された鋼板36の第二の湾曲面43の曲率半径と略同じとされている。これにより、図12にも示されているように、鋼球40の転がり作用で上下沓部材30,32が相対変位して、鋼球40の外周面が両第二の湾曲面43,43に当接すると、鋼球40を介して上下沓部材30,32に係止作用が機能して、上沓部材30と下沓部材32におけるそれ以上の各同一の方向への変位が制限されるようになっている。即ち、上下沓部材30,32が、所定の量だけ水平方向に変位した後に、抵抗力が働いて静止することとなる。
また、ローラーパッキン16の収容領域38には、粘性材としての高粘性流体42が収容されている。これにより、上下沓部材30,32の水平方向変位に際して、粗面化された第一及び第二の湾曲面41,43上を鋼球40が回転したり、一対の平坦面45,45が相対変位することによる減衰効果と相俟って、減衰効果が一層大きく働くようになっていると共に、鋼球40のスリップ防止や、回転移動の際の摩擦音等の抑制が図られ得る。高粘性流体42としては、オイル、グリース等の液状やゲル状の所定の抵抗を発揮し得る粘性材が採用可能である。雨水の侵入等に対処するため、疎水性のものが望ましい。なお、高粘性流体42は、鋼球40を収容配置した収容領域38にあって、重力作用で下沓部材32のすり鉢状凹所34の内側に位置せしめられた際に、該すり鉢状凹所34の開口縁部以下の量となるように、即ち鋼球40を収容配置した収容領域38の半分の容積を超えない量で、収容領域38に収容されている。なお、ローラーパッキン16の初期状態においては、上下沓部材30,32がすり鉢状凹所34の外周縁部において互いにシール状態で当接せしめられようになっており、平常時の雨水等の内部への侵入によるローラーパッキン16の作動性の低下等が有利に防止される。
本実施形態では、鋼球40の直径寸法:φAと収容領域38の最大内法寸法:H1と収容領域38における中央部分と外周部分との接続部分の内法寸法:H2との関係が、望ましくはH2≦φA≦1.2・H1、より好ましくは1.2・H2≦φA≦H1とされる。蓋し、φA<H2だと、鋼球40の直径寸法:φAが収容領域38における中央部分と外周部分との接続部分の内法寸法:H2に比して小さくなって、鋼球40が第二の湾曲面43の外周縁部にまで容易に当接され難くなり、要求される土台50と基礎梁56の相対変位量が確保され難くなるおそれがあるからである。また、φA>1.2・H1だと、鋼球40の直径寸法:φAが収容領域38の最大内法寸法:H1に比して大きくなり過ぎて、建物(木造家屋44)の自重が鋼球40に集中して及ぼされる結果、鋼球40乃至は鋼球40と当接する鋼板36の耐久性が確保され難くなることに加えて、鋼球40の回転が著しく制限されて、目的とする土台50と基礎梁56の相対変位量が確保され難くなるおそれがあるからである。
次に、上述の如きダンパーアンカ14やローラーパッキン16、アンカープレート24等を含んでなる免震構造10を採用する建築物12について簡単に説明すると、建築物12は、建物(上部構造)としての木造家屋44や基礎(下部構造)としての布基礎46を含んで構成されている。木造家屋44は、木造軸組構法(在来構法)で施工されて、柱48や梁、土台50等が軸組されることによって構成されている。一方、布基礎46は、施工された地盤に図示しない型枠を設置すると共に、複数の鉄筋52を組み込んで、型枠にコンクリートを流し込むことにより、逆T字状の断面で水平方向に延びる鉄筋コンクリートとされて、フーチング54の上面に基礎梁56が突設された構造を呈している。なお、基礎梁56の上端面には、水準器等で上端面が水平方向に延びるように形成されたレベルモルタルが敷設されている。
ここで、アンカープレート24の上部フック26aと下部フック26bが布基礎46の鉄筋52に係止された状態下、コンクリートが打設されることにより、基礎梁56の一方(図2中、右)の側部からアンカープレート24の表面が露出した形態で、アンカープレート24が基礎梁56に埋入固着されている。なお、アンカープレート24に設けられたセパレートボルト28を利用して、コンクリート型枠の巾決固定が可能となり、作業工程の簡略化が図られ得る。
このような木造家屋44の最下部に位置する土台50と布基礎46の基礎梁56の間において、柱48の直下若しくは柱48から外れた箇所には、複数のローラーパッキン16が配設されている。
すなわち、ローラーパッキン16の上沓部材30の中央部分が土台50の幅方向(図2中、左右)の中央部分に位置せしめられて、上沓部材30の滑り止め加工が施されたゴム層39の表面(上端面)が土台50の下端面に重ね合わせられると共に、複数の固定ボルト58が上沓部材30の各角部を貫通して土台50に螺着固定されている。また、ローラーパッキン16の下沓部材32の中央部分が基礎梁56の幅方向(図2中、左右)の中央部分に位置せしめられて、下沓部材32の滑り止め加工が施されたゴム層39の表面(下端面)が基礎梁56(レベルモルタル)の上端面に重ね合わせられると共に、複数の固定ボルト58が下沓部材32の各角部を貫通して基礎梁56に螺着固定されている。更に、上下沓部材30,32の各鋼板36の平坦面45が、鉛直方向(図1中、上下)で相互に重ね合わせられると共に、各鋼板36の中央部分(第一の湾曲面41の中央部分)が、鉛直方向両側から鋼球40を挟み込んで支持している。
これにより、土台50を備えた木造家屋44が複数のローラーパッキン16を介して布基礎46に載置されており、木造家屋44の荷重が各ローラーパッキン16に分担されて布基礎46に伝わるようになっている。ここで、地震等の大きな外圧が木造家屋44に及ぼされない平常時には、上沓部材30の中央部分と下沓部材32の中央部分が鋼球40を介して重ね合わせられることによるセンタリング機能によって、土台50の幅方向中央部分と基礎梁56の幅方向中央部分が互いに位置合わせされている。また、木造家屋44の荷重をローラーパッキン16を介して布基礎46に及ぼした状態下、鋼球40がすり鉢状凹所34の中央部分から外周部分に向かって凹所34を乗り上げる方向に変位することにより、ローラーパッキン16における上下沓部材30,32の水平方向の相対的な変位に基づく変形によって、土台50を備えた木造家屋44と布基礎46が、水平方向に360°相対的に変位可能とされている。一方、鋼球40が上下沓部材30,32の両すり鉢状凹所34,34の周縁部に被着された鋼板36,36の表面(第二の湾曲面43,43)に当接することで発揮される係止作用によって、木造家屋44と布基礎46の水平方向の相対変位量が制限され、もって木造家屋44の布基礎46からの脱落を防止し得ることとなる。
特に本実施形態では、土台50と基礎梁56の一方(図2中、左)の側部の側である建築物12の外方において、上下の水切り板60,62が配設されている。これら上下の水切り板60,62は長手板状を呈しており、上水切り板60が、土台50から外方に張り出して且つ土台50と平行に延びるようにして土台50にボルト等で固定されていると共に、下水切り板62が、基礎梁56から外方に張り出して且つ基礎梁56と平行に延びるようにして基礎梁56に固設された複数のローラーパッキン16の下沓部材32にボルト等で固定されている。また、上下の水切り板60,62は、上下方向で複数折り曲げられた形状を呈しており、土台50の幅方向中央部分と基礎梁56の幅方向中央部分が位置合わせされた状態下、上水切り板60の下端部と下水切り板62の上端部が、複数のローラーパッキン16が配設された土台50と基礎梁56の間の隙間よりも建築物12の外方において、上下方向に僅かな距離を隔てて対向位置せしめられている。これにより、土台50と布基礎46の水平方向の相対変位を許容しつつ、上下の水切り板60,62によって土台50と基礎梁56の間の隙間への風雨等の入り込みが抑えられるようになっている。また、上下の水切り板60,62に貫設された小形の通孔64の複数を通じて、土台50と基礎梁56の間の空間、延いては床下空間が外部空間と連通せしめられており、それによって、床下の換気効率が高められている。
また、ダンパーアンカ14のボルト部18が、土台50の長手方向に直交する方向に延びて土台50の両側部に開口するように形成された貫通孔66に挿通されると共に、ボルト部18の両端に螺着された一対の押さえナット68,68で土台50を両側部から挟み込むようにして固定されている。
このボルト部18が土台50に固定されると共に、ダンパーアンカ14の固定板部22が、基礎梁56の側部に露出したアンカープレート24の表面に重ね合わせられて、一対の固定ボルト70,70が固定板部22を貫通してアンカープレート24に螺着固定されている。その結果、ダンパーアンカ14が土台50と布基礎46に後付けで固定されて、土台50と布基礎46を剛結している。なお、ボルト部18と固定板部22は、それぞれ土台50と基礎梁56に固定された後に取り外すことが可能であり、それによって、ダンパーアンカ14が土台50および布基礎46に対して着脱可能とされている。
本実施形態では、図1に示す通り、分担荷重が大となる柱48の直下に耐荷重性の高いローラーパッキン16を配設し、当該柱48の直下を外れた近い位置において、土台50と基礎梁56に固定されたダンパーアンカ14が配設されている。これにより、柱48の直下における土台50の強度劣化を防止しつつ、ローラーパッキン16の作動安定性が確保されている。
このように固定されるダンパーアンカ14の複数が、土台50と布基礎46の間の所定の位置、例えば建築物12の矩形状の外周領域に位置する土台50と布基礎46の対向面間における一又は二以上の辺において、水平方向に所定距離を隔てて設けられている。それらダンパーアンカ14のうちの一又は二以上が鉛や銅、鉄鋼等を用いて形成されたものが採用されていると共に、ダンパーアンカ14のうちの別の一又は二以上が鉄鋼やばね鋼等で形成されたものが採用されている。
そこにおいて、ダンパーアンカ14の湾曲部20が、ボルト部18および固定板部22から左右方向の一方(図2中、右)に凸となる形態で略弓形状に湾曲していることから、湾曲部20の自由長:L1が、湾曲部20の一方(図1,2中、上)の端部と接続されるボルト部18の一方の端部(図2中、右)と、湾曲部20の他方(図1,2中、下)の端部と接続される固定板部22の中央部分との間の直線的な離隔距離:L2に比して大きくされている。
これにより、ボルト部18の一方の端部が押さえナット68で土台50に固定されて建築物12の内側(図2中、右)の土台50の側部に位置せしめられた部位をダンパーアンカ14の土台側固定部72とすると共に、固定板部22がアンカープレート24に固定されて建築物12の内側の基礎梁56の側部に位置せしめられた部位をダンパーアンカ14の基礎側固定部74とすると、ダンパーアンカ14の湾曲部14が土台側固定部72と基礎側固定部74から建築物12の内側に向かって湾曲状に延び出した形態で、ダンパーアンカ14が建築物12に装着されて、土台50と基礎梁56を固定しており、湾曲部20の自由長:L1が、略鉛直方向で対向位置せしめられた土台側固定部72と基礎側固定部74の直線的な離隔距離(L2)よりも大きくされている。なお、上記離隔距離:L2は、ローラーパッキン16を介して重ね合わされた土台50と基礎梁56の上下方向対向面間距離:L0よりも大きな長さ寸法を有していることは明らかである。また、本実施形態では、ダンパーアンカ14の湾曲部20が建築物12の内側における木造家屋44の床下に延び出している。
上述の如き構造とされた免震構造10を採用した建築物12においては、ダンパーアンカ14の一部を構成する湾曲部20が土台50と基礎梁56の側方に延び出して、ダンパーアンカ14の自由長が大きく確保されている。
従って、地震等の大きな外力が布基礎46から木造家屋44に伝わる際に、図13〜14にも示されているように、ローラーパッキン16による布基礎46と木造家屋44の水平方向の相対変位が、ダンパーアンカ14の湾曲部20の変形に基づいて十分なストロークで許容されることとなる。そして、布基礎46と木造家屋44の水平方向の相対変位に伴って、特に鉛や銅、鉄鋼等からなるダンパーアンカ14が塑性変形することとなり、この塑性変形履歴によって減衰効果が発揮される。これにより、木造家屋44における揺れが速やかに抑えられて、優れた免振効果が発揮されることとなる。また、直下型地震等の縦揺れに際しても、布基礎46と木造家屋44の上下方向の相対変位に伴って、ダンパーアンカ14が塑性変形せしめられ、同様の減衰効果が発揮され得る。
また、布基礎46と木造家屋44の相対変位量が小さい場合には、ダンパーアンカ14が弾性変形領域で変形されることから、ローパーパッキン16の水平方向の柔軟な往復変形によって、布基礎46から木造家屋44に伝わる振動が、有効に減衰せしめられる。また、特に鉄鋼やばね鋼等からなるダンパーアンカ14の弾性によりローラーパッキン16の初期位置への返戻作動が一層速やかに且つ自動的に発現される。
しかも、ダンパーアンカー14の剛性に基づき、台風等の地震時の振動に比して小さな外力の作用時には、土台50と布基礎46が強固に固定された状態が保持されることとなり、いわゆるアンカー機能を発揮して、土台50を布基礎46に対して安定して支持することが可能となる。
それ故、本実施形態に係る免震構造10を備えた建築物12においては、布基礎46と土台50のダンパーアンカ14による固定状態が保持されつつ、布基礎46と土台50の水平方向の相対変位の許容量が十分に確保されることによって、木造家屋44の布基礎46に対するアンカー効果と免震効果が両立して高度に達成され得るのである。
加えて、本実施形態では、ローラーパッキン16の鋼球40が収容領域38で互いに湾曲した上下の表面を転がることで、土台50と布基礎46の水平方向変位が許容されるようになっており、収容領域38の中央部分において両面の離隔距離が最も大きくされていることから、土台50と布基礎46の水平方向変位に際して、中央部分から偏倚した位置にある鋼球40を(図12〜14、参照。)、木造家屋44の自重を鋼球40に及ぼして、鋼球40を中央部分に積極的に変位せしめることが可能となる。即ち、木造家屋44の自重や鋼球40、ローラーパッキン16の湾曲面を利用して、土台50の幅方向中央部分と基礎梁56の幅方向中央部分のセンタリング機能(帰心作用)を得ることが可能となる。それによって、揺れた木造家屋44を元の位置に戻す復元効果、延いては免震効果が一層有利に得られる。なお、本実施形態に係る初期位置復元手段は、鉄鋼やばね鋼等で形成されて土台50と布基礎46の水平方向の相対変位に伴い弾性変形するダンパーアンカ14や、鋼球40や第一及び第二の湾曲面41,43を備え、木造家屋44の自重を利用してセンタリング機能を得るローラーパッキン16を含んで構成される。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であり、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、ダンパーアンカ14やローラーパッキン16における形状や大きさ、構造、位置、範囲、数等の形態は例示の如きものに限定されるものでない。以下、前記実施形態と異なる具体例について図面を参照しつつ説明するが、前記実施形態と実質的に同一の構造とされた部材および部位については、前記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
具体的には、図15にも示されているように、ダンパーアンカ76を、土台側固定部72から水平方向に突出する上端側方突出部としての横ストレート部78および基礎側固定部74から水平方向に突出する下端側方突出部としての横ストレート部78と、各ストレート部78の突出先端部分に一体形成される比較的に大きな曲率の湾曲部80の一対と、鉛直方向で離隔して対向位置せしめられる湾曲部80の突出先端部分の間を鉛直方向に延びる中央部分としての縦ストレート部82とを含んで構成するようにしても良い。これにより、ダンパーアンカ76において土台50と布基礎46から側方に延び出す部分に湾曲部80を部分的に設けて、側方への過度の広がりを抑えてコンパクトな配設スペースを実現しつつ、自由長を有効に確保するようにしても良い。
また、振動絶縁手段として、前記実施形態で示されたローラーパッキン16に加えて、分担荷重の少ない部位である柱48と柱48の間に、図16,17に示されるようなスライドパッキン84を補助的に採用することも可能である。スライドパッキン84は、上下方向で互いに重ね合わせられる上沓部材86と下沓部材88を含んで構成されており、下沓部材88の上沓部材86に対する対向面には、図18,19にも示されているように、円形凹状で浅底のすり鉢状凹所90を形成しており、すり鉢状凹所90の底面を含む下沓部材88の一方(図16,17中、上)の端面の全体に亘って鋼板36を被着する。すり鉢状凹所90の底面は下方に向かって全体に亘って湾曲しており、中央部分において深さ寸法が最も大きくされている。この底面に被着される鋼板36の表面が、底面と略同じ曲率で湾曲した凹状湾曲面89とされている。また、上沓部材86の下沓部材88に対する対向面には、下沓部材88のすり鉢状凹所90に対応した円形凸状の当接突部92を突設しており、当接突部92の突出先端面を含む上沓部材86の一方(図16,17中、下)の端面の全体に亘って鋼板36を被着する。この当接突部92の突出先端面に被着される鋼板36の表面が、底面と略同じ曲率で湾曲した凸状湾曲面91とされている。これにより、上下沓部材86,88の凹凸状湾曲面89,91を互いに重ね合わせて、図17にも示されているように、上下沓部材86,88が同一中心軸上に位置合わせされた平常時には、凹状湾曲面89の最深中央部に対して凸状湾曲面91の中央部分が位置せしめられるようにすると共に、図20にも示されているように、当接突部20の中央部分を凹状湾曲面89の外周部分に向かって乗り上げるように当接状態で移動させることで、上下沓部材86,88を滑り変位させつつ、水平方向に相対的に変位せしめることが可能となる。また、土台50と布基礎46の水平方向変位に際して、下沓部材88のすり鉢状凹所90の中央部分から偏倚した位置にある上沓部材86の当接突部92の中央部分を(図20、参照。)、木造家屋44の自重を上沓部材86に及ぼして、当接突部92の中央部分をすり鉢状凹所90の中央部分に積極的に滑り変位させても良く、それによって、木造家屋44の自重やスライドパッキン84の湾曲面を利用して、土台50の幅方向中央部分と基礎梁56の幅方向中央部分のセンタリング機能を得ることで、免震効果をより効果的に得ても良い。なお、鋼板36の表面に高粘性流体等を塗布して、滑り変位を調整したり、摩擦音を抑制することも出来る。また、前記実施形態におけるローラーパッキン16と同様、凹凸状湾曲面89,91は、全体に亘ってショットブラスト加工が施されていることによって粗面化されている。これにより、風等の振動加速度の小さな外力作用時におけるスライドパッキン84の軽動を抑制し得る。また、スライドパッキン84の初期状態においては、上下沓部材86,88の外周縁部が互いにシール状態で当接せしめられている。また、これらローラーパッキン16やスライドパッキン84は、性能発揮後の破損時には、容易に交換することが出来る。
なお、このようなスライドパッキン84をローラーパッキン16に代えて免震構造に採用することも可能である。この場合には、前記実施形態に係るローラーパッキン16のような鋼球40を採用する必要がなくなり、部品点数の削減に伴い低コスト化を図ることが可能となる。
さらに、振動絶縁手段には、前述のローラーパッキン16やスライドパッキン84に代えて若しくは加えて、公知のアイソレータを採用することももちろん可能である。
また、前記実施形態に係るダンパーアンカ14の基礎側固定部74が、ダンパーアンカ14の一方の端部に形成された固定板部22が基礎梁56に埋設されたアンカープレート24に固定されることで構成されていたが、これに限定されるものでなく、例えば、ダンパーアンカが基礎梁の側方を延びるようにして、ダンパーアンカの端部を基礎梁に直接に埋入固着したり、或いは布基礎46のフーチング54に埋入固着することも可能である。
また、前記実施形態では、ダンパーアンカ14が土台50および布基礎56の一方の側方である建築物12の内側に延びだしていたが、他方の側方である建築物の外側(外観)に延びだしていても良い。
また、前記実施形態に係るローラーパッキン16の上下沓部材30,32のすり鉢状凹所34(鋼板36)の中央部分に設けられた第一の湾曲面41に代えて、例えば図21にも示されているように、円錐面形状の円錐面94を採用することにより、すり鉢状凹所34に被着された鋼板36の表面を、円錐面94と第二の湾曲面43を含んで構成しても良い。この円錐面94は、頂部がすり鉢状凹所34の中央部分に位置せしめられていると共に、外周部分が第二の湾曲面43の内周部分と滑らかに接続されており、円錐面94の頂部を備えた中央部分が、第二の湾曲面43の接線方向に延び出している。このような上下沓部材を備えたローラーパッキンを採用することによって、特に鋼球40を収容領域38の中央部分に位置せしめた際に、鋼球40が円錐面94の頂部付近の面と周方向の略全体に亘って線当たり状に当接せしめることが可能となり、鋼球40が収容領域38の中央部分に安定して支持せしめられることから、センタリング機能が一層有利に発揮され得る。
また、この円錐面94を、上述の具体例に係るスライドパッキン84の下沓部材88のすり鉢状凹所34の略全体に亘って形成された凹状湾曲面89に代えて採用することも可能である。これにより、上沓部材86の凸状湾曲面91との当接面積を小さくして、上下沓部材の滑り変位を調節しても良い。
また、前記実施形態に係る建築物12では、土台50と布基礎46の固定部材にあって、全て本発明に従う構造とされたダンパーアンカ14が採用されていたが、例えば特許文献1,2に示されているような土台と布基礎の間を鉛直方向に延びて、一方の端部が土台を鉛直方向に貫通固定されると共に、他方の端部が布基礎に埋設される従来構造のアンカーボルトを、固定部材の一部に含む既設の建築物に対して、本発明を適用することも可能である。
加えて、前記実施形態では、本発明に係る建築物の免震構造10が、木造家屋44と布基礎46を備えた建築物12に対して適用されるものの具体例が示されていたが、倉庫等、各種の小型建築物に有利に適用可能であることは勿論である。
10:免震構造、12:建築物、14:ダンパーアンカ、16:ローラーパッキン、44:木造家屋、46:布基礎、50:土台、72:土台側固定部、74:基礎側固定部
Claims (15)
- 建築物の基礎と土台の間に振動絶縁手段を配して、該建築物における該土台を含む上部構造の荷重を該振動絶縁手段を介して該基礎に伝達支持せしめると共に、該振動絶縁手段によって該建築物の該上部構造の該基礎に対する水平方向の相対変位を許容せしめた建築物の免震構造において、
前記土台と前記基礎の側方に位置して上下方向に延びる金属製の連結部材を配設して、該連結部材の上端を該土台に固定する一方、該連結部材の下端を該基礎に固定することにより、前記振動絶縁手段を介して重ね合わされた該土台と該基礎との上下方向の対向面間距離よりも大きな長さ寸法を有する該連結部材によって該土台と該基礎を連結せしめて、前記建築物の前記上部構造が該基礎に対して水平方向に相対変位せしめられた際に該連結部材が変形せしめられるようにしたことを特徴とする建築物の免震構造。 - 前記連結部材が、
前記土台の側面から外方に延び出している上端側方突出部と、
前記基礎における基礎梁の側面から外方に延び出している下端側方突出部と、
それら上端側方突出部の突出先端部分と下端側方突出部の突出先端部分とを一体的に連結して上下方向に延びる中央部分と
を、含んだ一体構造とされている請求項1に記載の建築物の免震構造。 - 前記連結部材が、その全長に亘って、折れ曲がった部分を有しないで滑らかに連続した形状とされている請求項1又は2に記載の建築物の免震構造。
- 前記土台と前記基礎を連結する前記連結部材が複数設けられており、該複数の連結部材のうち、少なくとも1つが他の連結部材に対して異なる弾性限度を有している請求項1乃至3の何れか一項に記載の建築物の免震構造。
- 前記基礎に取付基台が固設されていると共に、該取付基台における該基礎の側部から露出する部分に対して前記連結部材の前記基礎側固定部が固定される請求項1乃至4の何れか一項に記載の建築物の免震構造。
- 前記連結部材が、既存の前記土台および前記基礎に対して固定されることにより、後付けで取り付けられるようになっている請求項1乃至5の何れか一項に記載の建築物の免震構造。
- 前記連結部材が、前記土台および前記基礎に対して着脱可能とされている請求項1乃至6の何れか一項に記載の建築物の免震構造。
- 前記土台が前記基礎に対して水平方向に相対変位せしめられた際に、初期位置へ返戻方向の復元力を及ぼす初期位置復元手段を設けた請求項1乃至7の何れか一項に記載の建築物の免震構造。
- 前記基礎に固定される下側支持部材と前記土台に固定される上側支持部材とを上下方向に重ね合わせて配すると共に、該下側支持部材と該上側支持部材の対向面にはそれぞれ他方に向かって開口するすり鉢状の凹所を形成して、それら下側支持部材と上側支持部材の両凹所の対向面間に球形状のころがり部材を組み込むことによって、前記振動絶縁手段を構成し、
該下側支持部材と該上側支持部材が同一中心軸上に位置合わせされた平常時には、該下側支持部材の該凹所と該上側支持部材の該凹所の各中央最深部間に該ころがり部材が位置せしめられるようにすると共に、
前記建築物の前記上部構造が該基礎に対して水平方向に相対変位せしめられた際には、該下側支持部材の該凹所と該上側支持部材の該凹所を乗り上げる方向に該ころがり部材が移動せしめられるようにした
請求項1乃至8の何れか一項に記載の建築物の免震構造。 - 前記すり鉢状の凹所が、円錐面形状を有する中央部と、湾曲面形状を有する外周縁部から構成されており、該円錐面形状の中央部が、該湾曲面形状の外周縁部の接線方向に延び出している請求項9に記載の建築物の免震構造。
- 前記基礎に固定される下側支持部材と前記土台に固定される上側支持部材とを上下方向に重ね合わせて配すると共に、該下側支持部材の上面には上方に向かって開口するすり鉢状の凹所を形成する一方、該上側支持部材の下面には該下方に向かって突出する当接突部を形成して、上側支持部材の該当接突部を該下側支持部材の該凹所内に突出位置せしめることによって、前記振動絶縁手段を構成し、
該下側支持部材と該上側支持部材が同一中心軸上に位置合わせされた平常時には、該下側支持部材の該凹所の中央最深部に対して該上側支持部材の該当接突部が突出位置せしめられるようにすると共に、
前記建築物の前記上部構造が該基礎に対して水平方向に相対変位せしめられた際には、該上側支持部材の該当接突部が該下側支持部材の該凹所の内面を乗り上げる方向に当接状態で移動せしめられるようにした
請求項1乃至8の何れか一項に記載の建築物の免震構造。 - 前記すり鉢状の凹所が、全体として円錐面形状とされた請求項11に記載の建築物の免震構造。
- 前記下側支持部材の前記凹所には粘性材が収容されている請求項9乃至12の何れか一項に記載の建築物の免震構造。
- 前記平常時において、前記下側支持部材と前記上側支持部材が、前記凹所の外周縁部において互いにシール状態で当接せしめられるようになっている請求項9乃至13の何れか一項に記載の建築物の免震構造。
- 請求項1乃至14の何れか一項に記載の免震構造を採用したことを特徴とする建築物。
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