JP2008274344A - 耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管 - Google Patents

耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管 Download PDF

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Abstract

【課題】高強度化を達成しつつ耐遅れ破壊特性に優れ、さらに疲労強度も高い、従来以上に耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管を提供すること。
【解決手段】質量%でC:0.30%超0.50%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Ti:0.1%以下、Mo:0.3%以上0.5%以下、B:0.0005%以上、0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼で製造した鋼管であって、鋼管を焼き入れ後に、100〜400℃で焼き戻し処理を施すことで、旧オーステナイト粒径が10μm以下となる硬化部が鋼管のC断面面積の30%以上形成された鋼組織を有することを特徴とする耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管を用いる。鋼が、さらに、Al:1.0%以下、Cr:2.5%以下、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、V:0.5%以下の中の1種または2種以上を含有することが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管に関する。
近年、自動車や建築分野においても鋼材の高強度化が一段と進み、あらゆる部材における高強度化が指向されてきている。鋼管が用いられる分野においても、例えば自動車分野においては高強度材を用いて車体の軽量化を図ろうとする試みが盛んである。一方、高強度化が指向される場合に最も懸念されるのが、遅れ破壊である。例えば、特許文献1には、耐遅れ破壊特性を考慮した車軸部材用超高張力電縫鋼管について記載されており、引張強さが170kg/mm2を超えると、鋼の遅れ破壊特性が劣化するとされている。
また、特許文献2には、引張強度を1620N/mm2以上と高強度化した上で、耐遅れ破壊特性を向上させる自動車用超高強度電縫鋼管の技術が開示されており、具体的には、質量%で、C:0.20〜0.30%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.80〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、Al:0.01〜0.10%、Cu:0.05〜1.0%、Cr:0.05〜1.0%、Ti:0.01〜0.10%、B:0.0005〜0.0050%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる熱延鋼板から造管した電縫鋼管を、Ac3変態点以上、950℃以下の温度に加熱した後、水冷する高周波焼き入れを行うことが記載されている。
特開平05−339678号公報 特開2001−164338号公報
上述の特許文献1に記載の鋼管では、引張強度が170kg/mm2以下での使用となり、近年の高強度化に対する要求を十分満足するものとは言えない。また、特許文献2に記載の鋼管については、高強度化を達成しつつ耐遅れ破壊についても考慮がなされているが、疲労特性についての考慮がなされておらず、繰返し負荷が作用するような部材への適用を考えると、十分満足行くものとは言えない。さらに、耐遅れ破壊特性についても、評価が不十分であるため、確実に遅れ破壊を防止できる鋼管が求められている。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、高強度化を達成しつつ耐遅れ破壊特性に優れ、さらに疲労強度も高い、従来以上に耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討をかさねた結果、これを解決する手段を見出した。すなわち、C、Mo、B、Tiを適正範囲で添加した鋼の焼き入れ後の旧オーステナイト粒径を適正に微細化させて、その後、100〜400℃の低温度域で焼き戻しすることで、鋼管の高い耐遅れ破壊特性および疲労強度特性の両立を実現できるという知見を得た。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
(1)、質量%で、C:0.30%超、0.50%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Ti:0.1%以下、Mo:0.3%以上、0.5%以下、B:0.0005%以上、0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼で製造した鋼管であって、該鋼管を焼き入れ後に、100〜400℃で焼き戻し処理を施すことで、旧オーステナイト粒径が10μm以下となる硬化部が鋼管のC断面面積の30%以上形成された鋼組織を有することを特徴とする耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管。
(2)、鋼が、さらに、質量%で、Al:1.0%以下、Cr:2.5%以下、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、V:0.5%以下の中から選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管。
(3)、鋼が、さらに、質量%で、W:0.1%以下、Nb:0.1%以下の中から選んだ1種または2種を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管。
(4)、焼き入れを、高周波加熱を用いて行うことを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管。
本発明によれば、従来以上に高い疲労強度特性と耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼管を得ることができる。
以下に,本発明の詳細を説明する。
まず、本発明において、鋼組成を上記範囲に限定した理由について説明する。
なお、以下の説明において、成分元素の含有量%は全て質量%を意味するものである。
C:0.30%超、0.50%以下とする。
Cは必要な強度を確保するために必須の元素であり、0.30%以下では所定の強度確保が難しい。一方、0.50%を超えると焼き戻しを後述する温度域で行った場合には、通常使用したい強度域以上の強度となり遅れ破壊特性が急激に低下する。そこで、上限を0.5%とした。
Si:1.0%以下とする。
Siは、鋼の溶製時に脱酸剤として作用するために、含有させることができる。但し、1.0%を超えると鋼の加工性を著しく低下させるので、上限を1.0%とした。
Mn:1.5%以下とする。
Mnは、鋼の溶製時に脱酸剤として作用するために、含有させることができる。但し、1.5%を超えると残留オーステナイト量が増加してかえって疲労強度を低下させるので、上限を1.5%とした。
Mo:0.3%以上、0.5%以下とする。
Moは本発明において、特に重要な元素である。Moは延性を大きく損なうことなく強度を向上させる。また耐食性の維持のためにも必要な元素である。その効果を発現するには0.3%以上の添加が必須である。一方、0.5%を超えて添加してもそれ以上の強度向上にならず、コスト高となってしまう。また、過剰に添加すると不必要な炭化物が析出して疲労強度も低下し始めるので、上限を0.5%とした。
B:0.0005%以上、0.01%以下とする。
Bは、粒界部に濃化して粒界強度向上に寄与する最も重要な元素である。遅れ破壊は主にオーステナイト粒界で発生するものであり、この粒界を強化することは耐遅れ破壊特性の向上に大きく寄与する。そのためには0.0005%以上の含有が必要である。しかし0.01%を超えて含有してもその効果は飽和するので、上記範囲に限定した。
Ti:0.1%以下とする。
Tiは、不可避的不純物として混入するNと結合することで、BがBNを形成してBの効果が消失することを防止する。この効果を得るためには0.005%以上含有することが好ましいが、0.1%を超えて含有させるとTiNが大量に形成されて、強度や疲労強度の低下を招くため、Tiは0.1%以下とする。
以上が、本発明における基本成分であるが、次に本発明の高強度鋼管の組織について説明する。本発明では以下の条件がそれぞれ必要になる。
鋼組織を焼き入れにより、旧オーステナイト粒径が10μm以下となる硬化部をC断面(鋼管に成形した際の、鋼管の軸に垂直な断面)の面積の30%以上とする。鋼管全体に焼きが入っている必要はないが、少なくとも鋼管表面には焼き入れが施されているものとする。
鋼管の強度、疲労強度維持のために、本発明では焼き入れを施し、硬化部を形成させる。本発明では、この硬化部の旧オーステナイト粒径の調整が重要である。旧オーステナイト粒径を微細化することで、粒界に析出し、遅れ破壊特性を低下させる膜状炭化物の析出を抑制し、粒界強度を向上させる。そのためには、硬化部の旧オーステナイト粒径は10μm以下であることが必要となる。なお、より好ましくは、7μm以下であれば一層の効果がある。
例えば高周波焼き入れを用いた場合には表面からある深さまでの部分焼き入れになる場合もある。その場合でも、鋼管のC断面を観察した時に粒径が10μm以下となる硬化部(硬化層ともいう)が全断面積の30%以上の面積率を占めれば、疲労強度、耐遅れ破壊特性を損なうことはない。なお、本発明において焼き入れによる硬化部とは、鋼組織におけるマルテンサイトの分率が90体積%以上である部分のことを言う。マルテンサイトの分率が90体積%未満である場合には、強度の上昇に寄与しない残留オーステナイト相等の未変態相や炭化物等の析出物の量が多くなりすぎて、高強度化の達成が困難となる。
本発明では、上述した鋼組成に加えて、以下に示すAl、Cr、Cu、Ni、Vの中から選んだ1種又は2種以上の成分をさらに含有させてもよい。
Al:1.0%以下とする。
Alは脱酸に有効な元素である。また焼き入れ時のオーステナイト粒成長を抑制することによって、強度の維持に有効な元素である。しかしながら、1.0%を超えて含有させてもその効果は飽和し、コスト上昇を招く不利が生じるだけでなく、Cを黒鉛として析出させる影響が出て疲労強度も低下する。よってAlを添加する場合は、1.0%以下とする。
Cr:2.5%以下とする。
Crは焼き入れ性の向上に有効であり、硬化深さを確保する上で有用である。しかし、過度に含有されると、炭化物安定効果によって残留炭化物の生成を助長し、強度の低下をまねく。従ってCの含有量はできるだけ低減することが望ましいが、2.5%までは許容できる。なお、焼き入れ性を向上させる作用を発現させるためには、0.2%以上含有させることが好ましい。
Cu:1.0%以下とする。
Cuは焼き入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶して強度を向上させる。しかし1.0%を超えて含有しても、その効果は飽和し、さらに熱延時に割れが発生するようになる。そこでCuを添加する場合は、1.0%以下とする。なお、焼き入れ性や強度を向上させる作用を発現させるためには、0.2%以上含有させることが好ましい。
Ni:2.0%以下とする。
Niは焼き入れ性を向上させるのに有効であり、また炭化物の生成を抑制するため、膜状炭化物の粒界への生成を抑制し粒界強度を上げることで強度、遅れ破壊特性の向上に寄与する。ただし、Niは非常に高価な元素であり、2.0%を超えて添加すると鋼材コストが著しく上昇する。そこでNiを添加する場合は、2.0%以下とする。なお、焼き入れ性や強度、遅れ破壊特性を向上させる作用を発現させるためには、0.5%以上含有させることが好ましい。
V:0.5%以下とする。
Vは、鋼中でCと結合し強化元素としての作用が期待できる。また焼き戻し軟化抵抗性を向上させる効果もあり、強度向上に寄与する。しかし0.5%を超えて含有させてもその効果は飽和するため、Vを添加する場合は、0.5%以下とする。なお、強度を向上させる作用を発現させるためには、0.1%以上含有させることが好ましい。
さらに、本発明では以下に示すW、Nbのうちから選んだ1種または2種を含有することができる。
W:0.1%以下とする。
Wは安定した炭化物を形成し、強化元素として有効である。一方で、0.1%を超えて添加すると不必要な析出物が生成し疲労強度や耐遅れ破壊特性を低下させるので、Wを添加する場合は0.1%以下とする。
Nb:0.1%以下とする。
Nbは焼き入れ性向上効果のほかに、析出強化元素として強度や靭性の向上に寄与する。この効果を発現させるためには0.005%以上含有させることが好ましい。しかし0.1%を超えて含有させても、その効果は飽和するので、Nbを添加する場合は0.1%以下とする。
以上説明した元素以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。主な不可避的不純物としては、S、P、N、Oが挙げられる。これら元素は、S:0.05%以下、P:0.05%以下、N:0.01%以下、O:0.01%以下であれば許容できる。
次に、本発明の耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管の製造方法を説明する。本発明の高強度鋼管は、上記の成分組成を有する鋼を用い、所定の形状の鋼管に成形し、焼き入れ焼き戻しを行なって製造する。
上述の成分を含む鋼は、転炉による溶製で製造されたものでも、真空溶製により製造されたものでも使用できる。溶製された鋼塊または連鋳スラブを加熱し熱間圧延して鋼帯とし、この鋼帯を成形ロールで管状に成形し、電縫して鋼管としても良い。また鍛接や圧接して鋼管としても良い。
焼き入れ処理:高周波焼き入れを行なうことが好ましい。
焼き入れ処理においては、高周波加熱を用いることで、必要な温度域に到達後に、直ちに焼き入れることが可能であり、これにより結晶粒の粗大化を避け、微細な結晶粒組織を得ることができる。このためには高周波焼き入れにおいて、昇温速度100℃/s以上で最高温度800℃〜1100℃に加熱し、到達後即焼き入れる方法が有効である。鋼管の製造ラインを考えた場合には、高周波焼き入れであればオンライン焼き入れも可能となり、この場合高い生産性も期待できる。
焼き戻し温度:100℃〜400℃とする。
焼き入れにより前述の硬化部を形成させた後に、100〜400℃で焼き戻しが施されることが最も重要な部分である。焼き戻し温度をこの温度域とすることで、不必要な炭化物の析出が防止できる。焼き戻し温度をこの範囲よりも高くすると、炭化物が析出する。炭化物が析出すると、低pH(ほぼpH2以下)中では、炭化物とマトリックス間に局部電池が生成して、鋼自体の腐食による減量が大きくなる。そこで不必要に炭化物を析出させないために、400℃以下の温度範囲とする。さらに、鋼中のBが拡散したり不必要な析出をしたりすることなく、粒界に濃化して粒界の強化に有効に寄与する。そして、焼き戻し温度が400℃以下と高くないことで、旧オーステナイト粒の微細化効果との重畳によって、一定以上の強度レベルおよび耐遅れ破壊特性を維持する。逆に焼き戻し温度が100℃未満である場合には、鋼の強度が高くなりすぎ耐遅れ破壊の向上が期待できなくなる。なお、焼き戻し温度は100〜250℃とすることが一層好ましい。
かくして得られた鋼管は、優れた強度、耐遅れ破壊特性、および、疲労強度を有し、高強度を必要とする自動車シャフト等の用途に用いることが可能である。
以上説明したように、粒界を強化する組成範囲、旧オーステナイト粒径を微細化した硬化部の形成、適正な焼き戻し温度の3条件が有効に重畳し、耐遅れ破壊特性、疲労強度という相反する特性の両立が可能となり、高い疲労強度特性と耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼管を得ることができる。
表1に示す成分組成を有する鋼を溶製し、鋳造にて300mm×400mm断面の鋼塊とした。これらの鋼塊を1100℃に加熱して熱間圧延により板厚10.0mmとし、巻き取って鋼帯とした。その後、850℃で1hのノルマ処理を行ったものを素材とし、常法に従って外径35mm、肉厚7mmの電縫鋼管を製造した。
造管後に、高周波加熱により1050℃に加熱した後即焼き入れを施し、その後180℃で30分間の焼き戻しを行うことを想定し、製造した鋼管を用いて下記のような試験評価を行った。
引張試験:鋼管のL方向からJIS5号試験片を切り出して、高周波加熱によって1050℃に加熱した後、即焼き入れし、その後180℃で30分間の焼き戻しを行ったものを引張試験に供した。
疲労強度評価:疲労強度の評価は、ねじり疲労試験により行った。上述のように得られた鋼管から冷間での転造および切削加工によって、図1に示す形状の管状試験片1を作成した。この試験片に対して高周波加熱により1050℃に加熱した後、即焼き入れし、その後180℃で30分間の焼き戻しを行った。なお、ねじり疲労強度は、ねじり疲労試験において破断繰返し数が1×105回時のトルク値(N・m)で評価した。疲労試験は油圧疲労試験機を用い、図2に示すようにスプライン部(2a、2b)をおのおの円盤状のつかみ治具(3a、3b)に組み込み、周波数1〜2Hzで繰り返しねじりトルクを負荷することで行った。
耐遅れ破壊特性の評価:耐遅れ破壊特性の評価は、同一成分の鋼素材に対して、別途製造した棒鋼を用いて行った。即ち、上述の表1に示す成分組成を有する鋼塊を1100℃に加熱し熱間鍛造し、直径60mmφの丸棒とした。その後、850℃で1時間ノルマ処理を行い素材とし、これに以下の加工・熱処理を行い遅れ破壊の評価を行った。素材丸棒の1/4dの位置より、図3に示すような試験片を切り出し、引張り試験片と同様に焼き入れ焼き戻しを行った。この試験片を用いて、定荷重型試験によって遅れ破壊の評価を行った。酢酸を用いてpH1.5に調整した5%NaCl溶液に浸漬し、試験片にある一定の荷重をかけ、破断するまでの時間を測定した。試験時間が200hを越えた段階で試験は中断し、破断しないものについては破断なしと評価した。荷重を変えて試験をすることで、破断時間と荷重の曲線が得られる。破断の起きなくなる荷重から下限界応力を求めて、この値の大小にて耐遅れ破壊特性を評価した。
硬化部の旧オーステナイト粒径の測定、および、硬化部(硬化層)の割合の測定:上記の焼き入れ焼き戻しを行った鋼管の各試験片から、組織観察用サンプルを採取し、旧オーステナイト粒を現出させた後に光学顕微鏡により組織観察を行い、旧オーステナイト粒径を求めた。旧オーステナイト粒の現出は、水500gに対しピクリン酸50gを溶解させたピクリン酸水溶液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム11g、塩化第1鉄1gおよびシュウ酸1.5gを添加したものを腐食液として作用させ、旧オーステナイト粒界を現出させた。組織観察は、倍率1000倍にて観察される組織を撮影し、得られた画像から切断法により平均結晶粒径を求めることで旧オーステナイト粒径を求めた。
また、硬化部の割合については、鋼管のC断面をナイタール腐食し、黒く見える硬化部と灰色に見える母相部を現出させ、光学顕微鏡で倍率20倍にて観察を行い、全断面積に対する硬化部の面積を求めることで行った。
引張強度、耐遅れ破壊特性(下限界応力)、ねじり疲労強度の評価結果を表1中に併せて示す。
Figure 2008274344
表1によれば、成分組成と組織が本発明の範囲内にある鋼は強度が1500MPa以上で、遅れ破壊については(下限界応力/引張強度(TS))が0.4以上となる高い耐遅れ破壊特性を示し、疲労強度も600以上であり、ともに優れていることがわかる。
実施例2として、組織の影響を調べた。実験方法は全て実施例1と同じである。但し、旧オーステナイト粒径の影響を見るために、表1の記号2の場合について、高周波加熱の温度を1050℃から、1100、1150℃に変化させる実験を行なった。実験結果を表2に示す。
Figure 2008274344
旧オーステナイト粒径が10μmより大きくなると、耐遅れ破壊特性、疲労強度が顕著に低下してしまうことがわかる。
また、ねじり疲労試験片の高周波焼き入れ時の条件を変えることにより、硬化部(硬化層)割合を変える実験も行った。具体的には、以下の方法によった。使用する高周波焼入装置の発振装置から、200kHzの高周波成分と4kHzの低周波成分とを発振し、これらの割合を200kH:4kHz=1:1(記号2)から、200kH:4kHz=3:1(記号17)、200kH:4kHz=5:1(記号18)に変えることで、硬化層深さを変化させ、硬化層の割合を50%、28%に変化させた。
硬化層の割合が30%以下になると引張強度、疲労強度、耐遅れ破壊特性ともに低下してしまうことが分かる。
実施例3として、他の成分を添加した場合の効果を調べた。表3に示す鋼組成を有する鋼を真空溶製にて製造した。その他の評価法は実施例1と同一である。結果を表3中に併せて示す。
Figure 2008274344
Cr、Alが過度に含有されると疲労強度の低下を招き、また、Ni、Cu、V、W、Nbについてはその効果が飽和することが分かる。
実施例4では、焼き戻し温度の影響を調べた。表1の記号2の場合について、実施例1と同様にして焼き入れまでを行い、焼き戻し温度を変える実験を行った。実験結果を表4に示す。
Figure 2008274344
焼き戻し温度が100℃以上、400℃以下で、引張強度、疲労強度、耐遅れ破壊特性の両立が見られることが分かる。
ねじり疲労試験の試験片の説明図。 ねじり疲労試験法の説明図。 遅れ破壊特性評価試験の試験片の説明図。
符号の説明
1 管状試験片
2(2a,2b) スプライン部
3(3a,3b) つかみ治具

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.30%超、0.50%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Ti:0.1%以下、Mo:0.3%以上、0.5%以下、B:0.0005%以上、0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼で製造した鋼管であって、該鋼管を焼入れ後に、100〜400℃で焼き戻し処理を施すことで、旧オーステナイト粒径が10μm以下となる硬化部が鋼管のC断面面積の30%以上形成された鋼組織を有することを特徴とする耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管。
  2. 鋼が、さらに、質量%で、Al:1.0%以下、Cr:2.5%以下、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、V:0.5%以下の中から選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管。
  3. 鋼が、さらに、質量%で、W:0.1%以下、Nb:0.1%以下の中から選んだ1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管。
  4. 焼入れを、高周波加熱を用いて行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた高強度鋼管。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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