JP2008265110A - インク吸収性記録媒体 - Google Patents

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Hiroshi Asakawa
浩 浅川
Hisao Kamo
久男 加茂
Hiroshi Kakihira
洋 垣平
Tetsuro Noguchi
哲朗 野口
Hirokazu Momota
博和 百田
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Abstract

【課題】第1の課題は、インク吸収性を向上させると共に、インク液滴のドット径を広げることである。第2の課題は、インク吸収性の向上と、シアンインクのブロンズ防止を両立させることである。第3の課題は、微少なインク液滴の付与した場合であっても、インク吸収性に優れると共に、インク液滴のドット径を広げることである。
【解決手段】上層は、アルミナ水和物とバインダーを含有し、かつ上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下である。また、下層は、アルミナ水和物とバインダーを含有し、かつ下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7%以上12%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、色材を含むインクの吸収性が高い、高インク吸収性のインク受容層を有するインク吸収性記録媒体に関する。特に、複数の異なる色材を夫々、備えた複数のインクによる印字、画像形成を行なえるインク吸収性記録媒体全般に適用できる技術に関する。
近年、インクジェットプリンタにおける画質の向上が望まれており、インクジェット記録媒体と、インクや色材自体の改良、との両面からの検討がなされている。特に、2004年秋以降のプリンターにおいて、色材自体の耐光性を重視した色材が使用され、大きな技術革新が見られている。
この色材技術開発については、近年、技術内容がほぼ集約されてきている。例えば、黒系インクとしてはカーボンブラックを主体とするもの、黄色インクとしてはD.Y.132、92等を主体とするものが有用であり、一般的に使用されている。また、マゼンタインクとしてはキナクリドン系染料から水溶化基としてのスルホン基を3個以上で、トリアジン環等の付加構造を備えたアントラピリドン系色材が使用されてきている。特に、フタロシアニン系色材のシアンインクは、耐光性が向上されたトリアジン環等の付加構造を備えたフタロシアニン系染料が使用されてきている。
また、顔料インクは、光沢メディアに対して上乗せ系インクに集約されメディアの表面域に多くの色材が残存するものとなってきている。このため、この表面色材を保護などするために透明液体を更に付与する方式が採用されている。
一方、インクジェット記録媒体に関しては、顔料粒子であるシリカ粒子やアルミナ水和物粒子をバインダーで保持した、インク吸収性で多孔質構造のインク受容層を有するものが一般的である。このインクジェット記録媒体に付与される一般色材はアニオン性のため、一般的に、インクジェット記録媒体のインク受容層中にはカチオン性添加剤を添加されている。なお、インク受容層中には、多孔質構造を形成するため、バインダー機能を有するポリビニルアルコール(以下、「PVA」と記載する)が多く用いられている。
ここで、従来から、インク受容層を多層とし、各層に異なる機能を付与したインクジェット記録媒体が検討されている。例えば、特許文献1は,インク受容層を2層構成にし、上層の親水バインダー/無機顔料粒子(B/P)が下層の親水バインダー/無機顔料粒子(B/P)より多いことを特徴とする発明を開示している。しかし、この特許文献1の技術内容は、無機顔料のアニオンに親水バインダー(カチオン性ポリマー)を徐々に添加して、親水バインダーのカチオンで中和するものである。また、更に、余分なカチオンでカチオン化して無機顔料をポリマー分散したことが記載されている。そして、この特許文献1の具体的実施例は、上層(B/P)が23.8/100で、下層(B/P)が16.4/100であり、比較例の開示はこの逆の構成となっている。また、この特許文献1には、上層と下層のうち少なくともこれらの一方にカチオン性ポリマーを添加することや、上層・下層共にカチオン性ポリマーを入れることの示唆がなされている。また、ブロンズ防止のためにインクジェット記録媒体をpH3.5以上とする構成の開示もある。
一方、特許文献2の実施例及び比較例を見ると、共に、上層のバインダー/無機顔料粒子(B/P)が20/100で、下層のバインダー/無機顔料粒子(B/P)が22/100であることが開示されている。しかし、この特許文献2の発明の目的であるブロンズ防止は、ジルコニウムやアルミニウム化合物を添加することで解決している。
更に、特許文献3には、ブロンズ防止のため、より単純にpHを8.5以上としたインクジェット記録媒体が開示されている。
特開2003−72229号公報 特開2006−110771号公報 特開2004−314635号公報
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載のインクジェット記録媒体は、インク吸収性において未だ不十分な場合があった。また、ブロンズ防止において未だ不十分な場合があった。また、インク吸収性と、インク液滴のドット径の広径化又はブロンズ防止との両立については十分に検討されていなかった。また、インク吸収性と、インク液滴のドット径の適正化、更に高い画像濃度を同時に実現することについては十分に検討されていなかった。
そこで、本発明者は、インク及び色材の、インクジェット記録媒体中における定着状態に関する検討を行った。この結果、以下のような知見が得られた。
・インクの色材種によって、インクジェット記録媒体の深さ方向の定着領域に差異があることが判明した。具体的例示として、インクジェット記録媒体に、イエローインク、シアンインク、マゼンタインクを打ち込んだ。この結果、インクジェット記録媒体の表面から深さ方向に5μm以内の範囲でイエローインクの主たる定着域、表面上部及び表面近傍に表面域部分にシアンインクの主たる定着域があった。また、インクジェット記録媒体の表面から深さ方向に10μmを超えた、比較的、深い部分にマゼンタインクの主たる定着域があった。つまり、色材によって、インクジェット記録媒体内の深さ方向の定着域にばらつきが生じていることが分かった。
・上記のインクによって定着域がばらつく傾向は、インク液滴が5.5ピコリットル以下(1ピコリットル以上が好ましい)、特に2ピコリットル程度の小液滴になると、特に、顕著で、差が大きくなっていた。これと同時に、インク液滴に対して形成されるドット径の大きさにも違いが見られた。
本発明は、これらの新たな知見に対してなされた発明であり、少なくとも1種のインクに対して、優れたインク吸収性を有し、適正な画像が形成できるインク吸収性記録媒体を提供することを主たる課題とするものである。
すなわち、(1)第1の課題は、インク吸収性を向上させると共に、インク液滴の付与後、定着までの間にインク液滴のドット径を広げることにより、高品位の記録画像を形成可能なインク吸収性記録媒体を提供することである。
(2)第2の課題は、インク吸収性の向上と、シアンインクのブロンズ防止を両立させることにより、画質品質に優れたインク吸収性記録媒体を提供することである。
(3)第3の課題は、微少なインク液滴を付与した場合であっても、インク吸収性に優れると共に、インク液滴の付与後、定着までにインク液滴のドット径を広げることにより、高品位のインク吸収性記録媒体を提供することである。
(4)第4の課題は、シアンインクのブロンズを防止することにより、画像品質に優れたインク吸収性記録媒体を提供することである。
(5)第5の課題は、インク吸収性を向上させると共に、インク液滴の付与後、定着までの間にインク液滴のドット径を広げ、さらに画像濃度を高くするものである。そして、これにより、高品位の記録画像を形成可能なインク吸収性記録媒体を提供することである。
第1の発明は、上記第1の課題を解決するものである。
すなわち、第1の発明は、支持体と、前記支持体上に設けられアルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている少なくとも上層と下層とを有するインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体であって、
前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下であり、
前記下層は、前記上層の直下の層を構成し、かつ前記下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7%以上12%以下であることを特徴とするインク吸収性記録媒体に関するものである。前記上層と下層の厚みの合計が、30μm以上であることが好ましい。前記上層の厚みが、2.0μm以上10μm以下であることが好ましい。
第2の発明は、上記第2の課題を解決するものである。
すなわち、第2の発明は、支持体と、前記支持体上に設けられアルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている少なくとも上層と下層とを有するインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体であって、
前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下であり、かつ上層の厚みが3μm以上であり、
前記下層は、前記上層の直下の層を構成し、かつ前記下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7%以上12%以下であり、
前記上層と下層中の、前記アルミナ水和物とメタンスルホン酸の質量割合(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.3%以上2.1%以下であることを特徴とするインク吸収性記録媒体に関するものである。
第3の発明は、上記第3の課題を解決するものである。
すなわち、第3の発明は、支持体と、前記支持体上に設けられ少なくとも上層と下層とを有するインク受容層とを有する、5.5pl以下のインク液滴による画像形成用のインク吸収性記録媒体であって、
前記上層は、前記インク受容層の表面層としてアルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている層であり、かつ前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下であり、
前記下層は、前記上層の直下の層を構成し、前記上層よりもインク透過性が低い層であり、前記上層と下層のインク透過性の差により前記インク受容層の上層上へのインク液滴の付与時よりも下層へのインク液滴の定着時のドット径を大きくできるように構成されていることを特徴とするインク吸収性記録媒体に関するものである。
第4の発明は、上記第4の課題を解決するものである。
すなわち、支持体と、前記支持体上に設けられ少なくとも表面層としての上層と前記上層の直下に位置する下層とを有するインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体であって、
前記上層は、アルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている層であり、アルミナ水和物とバインダーを含有し、かつ前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下であることを特徴とするインク吸収性記録媒体に関するものである。前記上層と下層の厚みの合計が、30μm以上であることが好ましい。前記上層の厚みが、2.0μm以上10μm以下であることが好ましい。
第5の発明は、上記第5の課題を解決するものである。
すなわち、支持体と、前記支持体上に設けられアルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている少なくとも上層と下層とを有するインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体であって、
前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下であり、
前記下層は、前記上層の直下の層を構成し、かつ前記下層中のアルミナ水和物とバインダーの割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7%以上12%以下であり、
前記インク受容層の平均細孔径が7nm以上10nm以下であることを特徴とするインク吸収性記録媒体に関するものである。前記上層と下層の厚みの合計が、30μm以上であることが好ましい。前記上層の厚みが、2.0μm以上10μm以下であることが好ましい。
第6の発明は、上記第1の課題を解決するものである。
すなわち、支持体と、前記支持体上に設けられアルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている少なくとも上層と下層とを有するインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体であって、
前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下であり、
前記下層は、前記上層の直下の層を構成し、かつ前記下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7%以上12%以下であり、
前記下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100と、前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100との差が1.5%以上であることを特徴とするインク吸収性記録媒体に関するものである。前記インク受容層の平均細孔径が7nm以上10nm以下であることが好ましい。前記上層と下層の厚みの合計が、30μm以上であることが好ましい。前記上層の厚みが、2.0μm以上10μm以下であることが好ましい。
なお、第3の発明において、上層が「インク透過性」とは、上層の表面上に付与されたインク成分の少なくとも一部が、上層の表面からこの表面と反対側の面(下層との境界面)まで透過できることを表す。
(1)第1の発明では、上層が優れたインク吸収性を有し、上層上に付与されたインク液滴を早い速度で上層内を透過させて、にじみを防止することができる。また、下層中のインク吸収性は、上層中のインク吸収性よりも低くなっている。このため、にじみを防止しつつも、上層と下層の境界部分又は下層中で、インク液滴のドット径を大きくしてドット間の間隔が小さい優れた記録画像を得ることができる。
(2)第2の発明では、上層が優れたインク吸収性を有し、上層上に付与されたインク液滴を早い速度で上層内を透過させて、にじみを防止することができる。また、インク受容層中でのインク、特にシアンインクの凝集を防止して、ブロンズの発生を防止することができる。
(3)第3の発明では、上層が優れたインク吸収性を有し、上層上に付与されたインク液滴を早い速度で上層内を透過させて、にじみを防止することができる。また、インク液滴のドット径に対してドット間の間隔が大きくなり易い5.5ピコリットル以下のインク液滴を付与した場合であっても、下層中でインク液滴を適度に広げてドット間の間隔を小さくすることができる。この結果、高品位・高精細な記録画像を得ることができる。
(4)第4の発明では、インク受容層中でのインク、特にシアンインクの凝集を防止して、ブロンズの発生を防止することができる。
(5)第5の発明では、上層が優れたインク吸収性を有し、上層上に付与されたインク液滴を早い速度で上層内を透過させて、にじみを防止することができる。また、下層中のインク吸収性は、上層中のインク吸収性よりも低くなっている。このため、にじみを防止しつつも、上層と下層の境界部分又は下層中で、インク液滴のドット径を大きくしてドット間の間隔が小さい優れた記録画像を得ることができる。さらに、透明性の高いインク受容層とすることによって、画像濃度の高い記録画像を得ることができる。
(5)第6の発明では、上層が優れたインク吸収性を有し、上層上に付与されたインク液滴を早い速度で上層内を透過させて、にじみを防止することができる。また、下層中のインク吸収性は、上層中のインク吸収性よりも低くなっている。このため、にじみを防止しつつも、上層と下層の境界部分又は下層中で、インク液滴のドット径を大きくしてドット間の間隔を小さい優れた記録画像を得ることができる。
以下に本発明の最良の形態の説明を、各発明の構成を含めながら行う。
A)最良の製造条件
(1)上層用塗工液
純水中に、無機顔料粒子としてアルミナ水和物Disperal HP14(サソール社製)を30質量%となるように添加した。次に、このアルミナ水和物に対して、質量割合(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.7%となるようにメタンスルホン酸を加えて、攪拌し、コロイダルゾルを得た。得られたコロイダルゾルをアルミナ水和物が27質量%となるように適宜、希釈してコロイダルゾルAを得た。
一方、ポリビニルアルコールPVA235(クラレ(株)製)をイオン交換水に溶解して、固形分8質量%のPVA水溶液を得た。そして、上記で調製したコロイダルゾルAに前記作成したPVA溶液を、アルミナ水和物の固形分に対して、PVA固形分換算質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100)が5%となるように混合した。次に、3質量%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物の固形分に対してホウ酸固形分換算で1.0質量%になるように混合して、上層用塗工液(1)を得た。
(2)下層用塗工液
純水中に、無機顔料粒子としてアルミナ水和物Disperal HP14(サソール社製)が30質量%となるように添加した。次に、このアルミナ水和物に対して、質量割合(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.7%となるようにメタンスルホン酸を加えた。この後、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合体(日東紡社製PAS−92 分子量5000)を、アルミナ水和物に対して、質量割合(ジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合体)/(アルミナ水和物)×100が0.5%となるように加えた。この後、この混合溶液を攪拌してコロイダルゾルを得た。得られたコロイダルゾルをアルミナ水和物が27質量%となるように適宜、希釈してコロイダルゾルAを得た。
一方、ポリビニルアルコールPVA235(クラレ(株)製)をイオン交換水に溶解させて、固形分8質量%のPVA水溶液を得た。そして、上記で調製したコロイダルゾルAに前記作成したPVA溶液をアルミナ水和物の固形分に対して、質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100)が8%となるように混合した。次に、3質量%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物の固形分に対してホウ酸固形分換算で1.7質量%となるように混合して、下層用塗工液(2)を得た。
(3)塗工
上記下層用塗工液(2)と、上記上層用塗工液(1)と、を支持体に対して同時に塗工して、乾燥してインク吸収性記録媒体を得た。このとき、下層用塗工液中にアルミナ水和物とカチオン性ポリマーを含有することで、下層用塗工液の混合分散時に、緩やかにアルミナ水和物とカチオン性ポリマーの凝析が起こる。また、塗工時の乾燥過程において、水分の蒸発に伴ないコロイドの相互作用によるアルミナ水和物とカチオン性ポリマーの急激な凝析が引き起こされる。このため、前記生産工程の分散及び蒸発乾燥時の凝析により、カチオン性ポリマーを下層内に固定化することができる、下層中のカチオン性ポリマーが上層中に拡散するといったことがない。また、本発明の最良な実施形態では、上下層の無機顔料としてアルミナ水和物を使用する。
B)インク吸収性記録媒体
得られたインク吸収性記録媒体は、上記塗工液の特性が生かされたものとなっている。つまり、上層は、質量割合(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.7%、質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が5%で、層厚は5μmであった。下層は、質量割合(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.7%、質量割合(ジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合体)/(アルミナ水和物)×100が0.5%であった。また、質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が8%で、層厚が30μmであった。
特に、この場合、使用しているアルミナ水和物、バインダーが同種ものであるため、上層と下層の境界領域は区分できないほど密着している。この上層と下層は液体同士で接触製造されているため、厚みから見た上下層の境界域では、下層のジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合体が、境界部分の上層にわずかに拡散して入っていた。しかし、上層の表面側にはこのジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合体が存在していない上部領域が確認された。
C)インク吸収性記録媒体B)に対する印字特性及び評価
上記インク吸収性記録媒体B)に対して、後述する特殊な構造を持つ色材を用いて印字を行った場合に、以下の結果が得られた。
まず、アントラピリドン染料に対しては、インク吸収性記録媒体の奥深く浸透していくことが無く、下層上方(インク吸収性記録媒体内部の所望域)に定着領域を確保できた。すなわち、下層中にカチオン性ポリマー存在規定域を確保でき、所望濃度をも確保できた。この結果、マゼンタインクのマイグレーションの発生を防止することができた。
また、上記インク吸収性記録媒体B)は、上層の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が特有の値を有し、そのインク吸収性が向上している。このため、フタロシアニン染料の大部分を吸収でき、ブロンズが無く、高い画像濃度を充分に確保できていた。同時に、上層は、下層中に存在するカチオン性ポリマーが拡散していない領域を表面側に持つため、カチオン性ポリマーによるブロンズの発生が防止されていた。
つまり、上記最良の形態では、これらの両方の構成により、上記ブロンズ発生の原因の2つを解決した画期的なインク吸収性記録媒体を得ることができた。また、他のインクに対しても評価を行ったところ、従来よりも優れた画像濃度を得ることができた。しかも、画像的に見た場合、主としてインク吸収性が改善された上層により色間ブリードが大幅に改善されていた。
D)上記最良の形態に含まれる技術内容
一般的に、上記マゼンタインクに対してより適正な態様は、カチオン性ポリマーを記録媒体側に有することである。しかし、この一方で、カチオン性ポリマーによるシアンインクのブロンズ弊害は最悪なものとなる。従って、本発明のインク吸収性記録媒体は、前記構成の様に、カチオン性ポリマーの存在領域をインク受容層の特定領域に確定しているため、上記のような優れた作用効果をもたらすことができる。
上記の上層構成のように、インク吸収性を向上した場合は、上記マゼンタインクはいっそう内部に浸透しやすくなるが、本発明では、上記上層中の特有の定着領域中に、安定した画像形成領域を持つ。同時に、この上層は、インク吸収性の向上効果によってブリードの発生を防止し、シアンインクに対しては内部へのインク吸収により表面の残留が少なくなる。この結果として、ブロンズ発生を防止することができる。
定着したインクの画像濃度は、上記上層の厚さに起因する部分が大きいため、上層の厚みは2μm以上10μm以下が好ましく、より好ましくは8μm以下が良い。また、上層の成膜の安定性から、上層の厚みの下限は3μm以上がより好ましい。更に、上層の厚みは5μmであることが更に好ましい。上記カチオン性ポリマーとしては、黄変防止効果が併用して得られるジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体が好ましい。
フルベタ印刷を考慮すると、上層と下層の厚みの合計は、30μm以上であることが好ましい。この理由は、支持体をいわゆるレジンコート紙にした場合、インク中の水や、溶剤等の級数が充分でなくなる場合があるためである。最良の形態としては、35μmであることがより好ましい。
また、上層と下層は、更にアルキルスルホン酸を含有し、上層と下層中の、アルミナ水和物とアルキルスルホン酸の質量割合(アルキルスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.3%以上2.1%以下であることが好ましい。
なお、インク受容層のpHが低すぎる場合、シアンインク等の染料の凝集を促進してブロンズを引き起こす場合が知られている。このため、インク受容層全体のpHを4.5以上5.5以下の範囲に調整することが好ましく、4.8以上5.3以下の範囲に調整することがより好ましく、5.1に調整することが更に好ましい。
このような紙面pHとする酸としては、1価で酸解離定数が低い酸が有効であり、具体的には、アルキルスルホン酸,硝酸,塩酸が考えられる。しかし、硝酸塩は化学安全上、問題があり、塩酸はSUS等生産ラインの金属部位を腐食する問題がある。このため、紙面pHを調整する酸としては、アルキルスルホン酸を用いることが好ましい。そこで、上記最良の形態は、上層と下層中の、アルミナ水和物に対するアルキルスルホン酸の質量割合(アルキルスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.3%以上2.1%以としている。これによって、インク受容層全体を上記pHの範囲内に調整することができる。
なお、インク受容層が上層と下層の2層からなる場合であっても、3層以上からなる場合であっても、上層と下層の全体で(アルキルスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.3%以上2.1%以下とすれば良い。このアルキルスルホン酸は、蟻酸、酢酸、グリコール酸等のバッファー機能を持つ弱酸と比べてインク受容層のpHの調整が容易である。
アルキルスルホン酸としては、メタンスルホン酸、エタンスルホ酸、ブタンスルホン酸、イソ−プロパンスルホン酸等を挙げることができる。これらのアルキルスルホン酸の中でも、pH調整の容易性などからメタンスルホン酸を用いることが好ましい。本発明では、アルキルスルホン酸に加えて、更に、塩酸、硝酸等の強酸を用いても良い。
なお、アルキルスルホン酸の質量割合(アルキルスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100は1.5%以上1.9%以下であることが好ましく、1.7質量%であることがより好ましい。これにより、このアルキルスルホン酸を、インク受容層中に添加した場合、マゼンタ染料の耐マイグレーションの更なる向上及びブラックインク印字時の色安定性を向上することができる。
第1〜第6の発明のインク吸収性記録媒体は、支持体と、支持体上に2層以上の層からなるインク受容層を有する。このインク受容層は少なくとも上層と下層を有しており、2層以上の層で構成されていれば、その層の数は特に限定されない。この上層はインク受容層の表面層(最表層)を構成し、多孔性でインク透過性に優れた組成から構成されており、上層上に付与されたインク液滴は早い速度でその内部を透過可能な、インク透過性の層となっている。第1〜第6の発明のインク吸収性記録媒体は、このような上層を有することにより、高いインク吸収性を有することができる。
また、下層は上層の直下の層を構成し、上層と下層はその境界面を介して接している。この下層は、特定の組成及び構造等を有することにより、上層よりもインク透過性が低い層となっている。
以下、第1〜第6の発明で用いる各材料について詳細に説明する。
(支持体)
第1〜第6の発明で用いられる支持体としては、例えば、キャストコート紙、バライタ紙、レジンコート紙(両面がポリオレフィンなどの樹脂で被覆された樹脂皮膜紙)などの紙類、フィルムからなるものなどが好ましく使用される。このフィルムとしては例えば、下記の透明な熱可塑性樹脂フィルムを使用することができる。
・ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート。
これ以外にも、適度なサイジングが施された紙である無サイズ紙やコート紙、無機物の充填若しくは微細な発泡により不透明化されたフィルムからなるシート状物質(合成紙など)を使用できる。また、ガラス又は金属などからなるシートなどを使用しても良い。更に、これらの支持体とインク受容層との接着強度を向上させるため、支持体の表面にコロナ放電処理や各種アンダーコート処理を施すことも可能である。
上述した支持体の中でも、インク受容層形成後の記録媒体の光沢感等の品位の点から、レジンコート紙を用いるのが好ましい。
(アルミナ水和物)
第1〜第6の発明では、多孔質構造を形成し、染料定着性、透明性、印字濃度、発色性、及び光沢性を満たすものとして、上層及び下層中に、アルミナ水和物を用いる。このアルミナ水和物としては、例えば、下記一般式(X)により表されるものを好適に利用できる。
Al23-n(OH)2n・mH2O・・・・(X)
(上記式中、nは0、1、2又は3の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の範囲にある値を表す。但し、mとnは同時に0にはならない。mH2Oは、多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数又は整数でない値をとることができる。又、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがあり得る)。
アルミナ水和物の結晶構造としては、熱処理する温度に応じて、非晶質、キブサイト型、ベーマイト型が知られており、これらのうち、何れの結晶構造のものも使用可能である。
これらの中でも好適なアルミナ水和物としては、X線回折法による分析でベーマイト構造、又は非晶質を示すアルミナ水和物である。具体的には、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されたアルミナ水和物を挙げることができる。
第5の発明ではこのインク受容層の平均細孔径が7nm以上10nm以下であるものを用いる必要があり、第6の発明ではインク受容層の平均細孔径が7nm以上10nm以下であるものを用いることが好ましい。また、より好ましくは、インク受容層の平均細孔径が、8.0nm以上、10nm以下となるものを用いるのが良い。インク受容層の平均細孔径が、これらの範囲内にあることによって、優れたインク吸収性及び発色性を発揮することが可能となる。また、インク受容層の平均細孔径がこれらの範囲よりも小さいと、インク受容層のインク吸収性が不足して、アルミナ水和物に対するバインダーの量を調整しても、十分なインク吸収性が得ることができない場合がある。また、インク受容層の平均細孔径がこの範囲よりも大きくなると、インク受容層のヘイズが大きくなり、良好な発色性が得られない場合がある。
また、インク受容層全体の細孔容積としては、全細孔容積で0.50ml/g以上であることが好ましい。全細孔容積がこの値未満になると、インク受容層全体のインク吸収性が不足して、アルミナ水和物に対するバインダーの量を調整したとしても、十分なインク吸収性が得ることができない場合がある。
さらに、インク受容層の細孔半径として25nm以上の細孔が存在しないことが好ましい。25nm以上の細孔が存在する場合には、インク受容層のヘイズが大きくなり、良好な発色性が得られない場合がある。
なお、上記の平均細孔径、全細孔容積、細孔半径とは、記録媒体を窒素吸着脱離法によって測定された、窒素ガスの吸着脱離等温線よりBJH(Barrett−Joyner−Halenda)法を用いて求められる値である。特に、平均細孔径とは、窒素ガス脱離時に測定される全細孔容積と比表面積から計算によって求まる値である。
なお、インク吸収性記録媒体を窒素吸着脱離法により測定した場合には、インク受容層以外の部分に対しても測定が行われることとなる。しかし、インク受容層以外の成分(例えば、基材のパルプ層、樹脂被膜層等)は窒素吸着脱離法で一般的に測定できる範囲である1〜100nmに細孔を持っていない。このため、インク吸収性記録媒体全体を窒素吸着脱離法で測定した場合、は、インク受容層の平均細孔径を測定していることとなるものと考えられる。なお、このことは、レジンコート紙を窒素吸着脱離法で細孔分布を測定した場合、1〜100nmの間に細孔を有していないことからも推測される。
また、上記のようなインク受容層形成時の平均細孔径を得るためには、BET比表面積が、100m2/g以上200m2/g以下であるアルミナ水和物を用いることが好ましい。より好ましくは、インク受容層の平均細孔径は125m2/g以上175m2/g以下であるのが良い。
なお、上記BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。このBET法では、通常、吸着気体として窒素ガスが用いられ、吸着量を被吸着気体の圧又は容積の変化から測定する方法が最も多く用いられる。この際、多分子吸着の等温線を表すものとして最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であって、BET式と呼ばれ比表面積決定に広く用いられている。上記BET法では、BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けることにより比表面積が得られる。BET法では、窒素吸着脱離法の測定において、ある相対圧力における吸着量の関係を数点測定し、最小二乗法によりそのプロットの傾き、切片を求めることで比表面積を導き出す。このため、測定の精度を上げるためには、相対圧力と吸着量の関係は少なくとも5点測定しておくことが好ましく、より好ましくは10点以上であるのが良い。
また、アルミナ水和物の好適な形状としては、平板状で、平均アスペクト比が3.0以上10以下、平板面の縦横比が0.60以上1.0以下であるものが好ましい。なお、アスペクト比は、特公平5−16015号公報に記載された方法により求めることができる。すなわち、アスペクト比は、粒子の(厚さ)に対する(直径)の比で示される。ここで「直径」とは、アルミナ水和物を顕微鏡又は電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を示す。また、平板面の縦横比は、アスペクト比と同様に、粒子を顕微鏡で観察した場合の、平板面の最小値を示す直径と、最大値を示す直径の比を示す。
アスペクト比が上記範囲外となるアルミナ水和物を使用した場合、形成したインク受容層の細孔分布範囲が狭くなる場合がある。このため、アルミナ水和物の粒子径を揃えて製造するのが困難になる場合がある。また、同様に、縦横比が上記範囲外のものを使用した場合も、インク受容層の細孔径分布が狭くなる。
Rocek J.,et al.、Applied Catalysis、74巻、p29〜36、1991年に記載されているように、アルミナ水和物のには繊毛状と、繊毛状でない形状のものがあることが知られている。本発明者の知見によれば、同じアルミナ水和物であっても、平板状のアルミナ水和物の方が、繊毛状のアルミナ水和物よりも分散性が良い。また、繊毛状のアルミナ水和物は、塗工時に支持体の表面に対して平行に配向し形成される細孔が小さくなって、インク受容層のインク吸収性が小さくなることがある。これに対して、平板状のアルミナ水和物は、塗工により配向する傾向が小さく形成されるインク受容層の細孔の大きさやインク吸収性へ悪影響を及ぼしにくい。このため、平板状のアルミナ水和物を用いることが好ましい。
(バインダー)
第1〜第6発明のインク受容層には、バインダーを含有する。バインダーとしては、上記に挙げたアルミナ水和物を結着し、被膜を形成する能力のある材料であって、且つ、第1〜第6発明の効果を損なわない範囲のものであれば、特に制限なく利用することができる。バインダーとしては例えば、下記のものを挙げることができる。
・酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体。
・カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体。
・カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール又はその誘導体。
・ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス。
・アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体等のアクリル系重合体ラテックス。
・エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス。
・上記の各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス。
・カチオン基を用いて上記各種重合体をカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤を用いて上記各種重合体の表面をカチオン化したもの。
・カチオン性ポリビニルアルコール下で上記各種重合体を重合し、重合体の表面にポリビニルアルコールを分布させたもの。
・カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で上記各種重合体の重合を行い、重合体の表面にカチオン性コロイド粒子を分布させたもの。
・メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性バインダー。
・ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体樹脂。
・ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダー。
上記バインダーは、単独で、又は複数種を混合して用いることができる。中でも最も好ましく用いられるバインダーはポリビニルアルコールである。このポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールを挙げることができる。このポリビニルアルコールは、平均重合度が1500以上のものが好ましく用いられ、平均重合度が2000以上5000以下のものがより好ましい。また、ケン化度は80以上100以下のものが好ましく、85以上100以下のものがより好ましい。
また、この他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールや、アニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを使用することができる。
ところで、ポリビニルアルコールを用いる場合には、ポリビニルアルコールの末端基は水酸基若しくは酢酸基が存在しており、水酸機を有するモノマー成分、酢酸基を有するモノマー成分で構成されている。また、変性ポリビニルアルコールを用いる場合には、末端基の水酸基若しくは酢酸基が、カチオン性基若しくはアニオン性基のような置換基で置換されている。このため、酢酸基を有するモノマー成分、水酸基を有するモノマー成分、置換機を有するモノマー成分で構成されており、重合度が同等で、ケン化度が異なるものとなる。又は、ポリビニルアルコールが変性されている場合には質量が同じで、バインダー成分として効果を奏するポリビニルアルコールとしての量が異なる場合がある。
本発明では、アルミナ水和物とバインダーを特別な比率とすることにより形成される多孔質構造が重要となるため、バインダー成分として有効なポリビニルアルコールの存在が重要となる。そこで、本発明では、ポリビニルアルコールを用いる場合は、その量を一定とするため、アルミナ水和物と混合する際に、質量計算を行なうにあたり、ケン化度88%のポリビニルアルコールに換算して用いることとした。
(その他の材料)
第1〜第6の発明では、必要に応じて、インク受容層(上層と下層)中に下記の材料を含有することができる。
・ホウ酸、ホウ酸塩
インク受容層中には、ホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも一方を添加しても良い。ホウ酸及びホウ酸塩を添加することにより、インク受容層内でのクラックの発生を防止することができる。この際、使用できるホウ酸としては、オルトホウ酸(H3BO3)だけでなく、メタホウ酸や次ホウ酸等が挙げられる。ホウ酸塩としては、上記ホウ酸の水溶性の塩であることが好ましい。具体的には、下記のホウ酸のアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。
・ホウ酸のナトリウム塩(Na247・10H2O、NaBO2・4H2O等)、ホウ酸のカリウム塩(K247・5H2O、KBO2等)等のアルカリ金属塩。
・ホウ酸のアンモニウム塩(NH449・3H2O、NH4BO2等)。
・ホウ酸のマグネシウム塩やカルシウム塩。
これらのホウ酸等の中でも、塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の点からオルトホウ酸を用いることが好ましい。また、ホウ酸等の使用量としては、上層、下層中のバインダーに対して、ホウ酸固形分10質量%以上50.0質量%以下の範囲で用いることが好ましい。上記範囲を超えると塗工液の経時安定性が低下する場合がある。すなわち、インク吸収性記録媒体を生産する際、塗工液を長時間に渡って使用することとなり、ホウ酸の含有量が多いとその間に塗工液の粘度の上昇や、ゲル化物の発生が起こる場合がある。このため、塗工液の交換やコーターヘッドの清掃等を頻繁に行なうことが必要となり、生産性が著しく低下してしまう場合がある。更に、上記範囲を超えると、インク受容層に点状の表面欠陥が生じ易くなり、均質で良好な光沢面が得られない場合がある。なお、ホウ酸等の使用量が上記範囲内であっても、製造条件等によっては、インク受容層内にクラックが発生する場合があるため、適当な使用量の範囲を選択する必要がある。
(カチオン性ポリマー)
本明細書において、「カチオン性ポリマー」とは、ポリアリルアミン塩酸塩、メチルジアリルアミン塩酸塩重合体、及びジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体の総称を表す。すなわち、カチオン性ポリマーとは、ポリアリルアミン塩酸塩、メチルジアリルアミン塩酸塩重合体及びジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体からなる群から選択された少なくとも一種を表す。
マゼンタインクの色材であるマゼンダ染料は、アゾ系染料及びフタロシアニン系染料と異なり、酸性領域で酸析による不溶化及び凝集が起き難いという特性を有する。このため、紙面pHの低pH化のみでは充分なマイグレーション防止効果が得ることができない。そこで、下層中にカチオン性ポリマーを含有することにより、マゼンタインクの色材であるマゼンダ染料を効果的に凝集、定着させて、マイグレーションを抑制することができる。このカチオン性ポリマーは、キナクリドン系染料の定着性に優れた効果を発揮し、アントラピリドン系染料の定着に最も優れた効果を発揮する。
本発明に使用できるカチオン性ポリマーを以下に示す。
ポリアリルアミン塩酸塩は、下記式(1)で表される化合物である。
Figure 2008265110
メチルジアリルアミン塩酸塩重合体は、下記式(2)で表される化合物である。
Figure 2008265110
ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体は、下記式(3)で表される化合物である。
Figure 2008265110
また、顔料粒子としてアルミナ水和物を使用するため、カチオン性ポリマーとの相互作用により、アルミナの分散適性を良好とすることができる。更に、これらのカチオン性ポリマーの中でも、経時黄変の抑制、ODの点から、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合体を用いることが好ましい。また、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合体は、嵩高い部位を有しているため、下層の塗工液の塗工時に、この共重合体のインク受容層表面への拡散を防止することができる。
上層と下層中のアルミナ水和物100質量部に対して、カチオン性ポリマーが0.5質量部、0.75質量部であることがより好ましい。更に、上層と下層中の、(カチオン性ポリマーとメタンスルホン酸の総量)/(アルミナ水和物)の質量割合は、1.5質量%以上2.7質量%以下が好ましい。
また、下層中の(カチオン性ポリマーとメタンスルホン酸の総量)/(アルミナ水和物)の質量割合は、1.5%以上2.7%以下が好ましい。
カチオン性ポリマーとメタンスルホン酸の総量が、これらの範囲内にあることによって、マゼンタインクのマイグレーションの抑制と、ブラックインクの色安定性の向上、及びブロンズ抑制を同時に達成することができる。
なお、カチオン性ポリマーがインク受容層の上層表面に存在すると、マゼンタ染料のマイグレーション抑制には効果があるが、シアンインクを印字した場合にはブロンズが発生する場合がある。特に、最近の、堅牢性向上のために凝集性を向上させたシアン染料を用いたシアンインクでは、このブロンズがより顕著に発生する。このため、カチオン性ポリマーをインク受容層の上層表面ではなく下層中に多く存在させることで、マゼンタ染料のマイグレーションとシアンインクのブロンズ発生を共に効果的に防止することができる。
典型的な例では、マゼンタインクをインク受容層の表面に打込むと、マゼンダ染料はインク受容層の表面から10μmの深さまで浸透する。このため、マゼンタ染料の染着位置よりも深い部分にカチオン性ポリマーが存在しても、充分なマゼンタインクのマイグレーション抑制効果を得ることができない。このため、カチオン性ポリマーは、インク受容層の上層表面には存在せず、インク受容層の上層表面から10μmより深い位置に存在することが好ましい。
なお、このようにインク受容層内でのカチオン性ポリマーポリマーの存在位置を最適化するためには、上層にはカチオン性ポリマーを含有させず、下層にのみカチオン性ポリマーを含有させることが好ましい。
また、塗工液中に添加するカチオン性ポリマーの重量平均分子量が小さいと、上層と下層の塗工時にカチオン性ポリマーが上層内に拡散してブロンズの悪化を引起す場合がある。また、高湿下での保存時などインク受容層が高含量の水分を含んだ場合にも、カチオン性ポリマーがインク受容層の上層表面に拡散してマイグレーションを引き起す。このため、上層の表面側へのカチオン性ポリマーの拡散を防止するという点で、カチオン性ポリマーの重量平均分子量は3000以上であることが好ましい。一方、カチオン性ポリマーの重量平均分子量が大き過ぎると、アルミナ水和物等のアルミナ水和物の分散時に、カチオン性ポリマーがアルミナ水和物と凝集反応を起こして、インク受容層の透明性を下げて画像濃度の低下等の品質低下を引起す場合がある。このため、カチオン性ポリマーの重量平均分子量は15000以下が好ましい。また、カチオン性ポリマーの重量平均分子量は5000であることがより好ましい。
また、カチオン性ポリマーのインク受容層の上層表面への拡散は水分を介して発生するため、可溶化基を多く持たないカチオン性ポリマー、又は嵩高い部位を持ったカチオン性ポリマーを用いることが好ましい。このため、ポリマー主鎖に嵩高いジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体を用いることがより好ましい。
・pH調整剤
インク受容層(上層、下層)形成用の塗工液中には、pH調整剤として、例えば、下記の酸又は塩を適宜、添加することができる。
・蟻酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸。
・イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ピメリン酸、スベリン酸、メタンスルホン酸。
・塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸。
・上記酸の塩。
アルミナ水和物を水中に分散させるために一塩基酸を用いることが好ましい。このため、上記pH調整剤の中でも、蟻酸、酢酸、グリコール酸、メタンスルホン酸等の有機酸や、塩酸、硝酸等を用いることが好ましい。
・添加剤
また、その他の塗工液用の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、界面活性剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料を使用できる。また、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候材料等を、必要に応じて適宜、添加することができる。
・塗工液の塗工方法
インク受容層を形成するための上層用の塗工液、下層用の塗工液の塗工には、2層以上の層の形成、及び適正な塗工量が得られるように、例えば、下記の塗工方法を使用でき、オンマシン、オフマシンで塗工する。
・各種カーテンコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター。
・スライドホッパー方式を用いたコーター。
なお、塗工時に、塗工液の粘度調製等を目的として、塗工液を加温しても良く、コーターヘッドを加温することも可能である。
また、塗工後の塗工液の乾燥には、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機を使用できる。また、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を、適宜、選択して用いることができる。
なお、第1〜第6の発明では、上記のように適度な粘度、物性を有する塗工液、及び好適な塗工方法を選択することにより、上層と下層の間で内容成分の移動が起こらないか、ほとんど起こらないようにすることができる。このため、上層と下層の境界領域でのバインダー成分の存在状態は、上層、下層で所望の量となるように別れていて、バインダー成分の濃度が界面領域で上層と下層で異なる濃度で存在している場合がある。又は、界面領域で下層のバインダー成分が若干、上層に移動することによって、上層、界面領域、下層と3段階に濃度が異なる部分が存在する場合がある。しかし、上記のように適度な粘度、物性を有する塗工液、及び好適な塗工方法を選択することにより、上層と下層間で内容成分の移動が殆ど起こらず、本発明の効果に影響を与えるほど内容成分が移動することは無い。
尚、塗工層のバインダー成分の濃度分布を確認する方法としては、例えば、下記の方法を挙げることができる。
すなわち、インク吸収性記録媒体を断面方向にミクロトール等で切り出し、バインダー成分をオスミウム酸で染色する。この後、EPMA元素カラーマッピングを用い、バインダー量が既知の試料で検量線を作成しておくことで、上層、下層のバインダー成分の量を定量することが可能である。
次に、印字時に用いられるインク中に使用されている各色染料について説明する。
(シアンインクに使用される染料)
2003年当時、スルホン酸ナトリウム等の可溶化基を複数、任意の場所に含む構造の、下記式(4)のフタロシアニン染料が一般的であった。
Figure 2008265110
一方、2004年秋以降に使用されているフタロシアニン染料は、フタロシアニンに耐光性及び耐ガス性を向上するために、可溶化基として可溶化基置換トリアジン環を導入したものが用いられるようになった。近年の可溶化基置換トリアジン環を導入したフタロシアニン染料を用いたものが、本発明の最良の実施形態となる。
可溶化基置換トリアジン環を導入したフタロシアニン染料としては、下記式(5)の化合物を使用することができる。
Figure 2008265110
ここで、l、m、nはそれぞれl=0〜2、m=1〜3、n=1〜3(但し、l+m+n=3〜4)である。
(マゼンダインクに使用される染料)
アントラピリドン染料として、C.I.アシッドレッド80, C.I.アシッドレッド81, C.I.アシッドレッド82, C.I.アシッドレッド83, C.I.アシッドバイオレット39が挙げられる。また、下記式(6)の染料を挙げることができる。
Figure 2008265110
2003年までは、主に上記に例示したアントラピリドン系染料が用いられていた。一方、2004年秋以降は、アントラピリドン系染料を向上するために、下記式(7)のように可溶化基として可溶化基で置換トリアジン環を導入したものが用いられるようになった。
Figure 2008265110
近年の可溶化基置換トリアジン環を導入したアントラピリドン染料を用いたものが、本発明の最良の実施形態となる。
(イエローインクに使用される染料)
イエローインクはC.I.ダイレクトイエロー132に代表される一般的なアゾ化合物の二量体(下記式(8))を使用することができる。
Figure 2008265110
(ブラックインクに使用される染料)
ブラックインクとしては、下記式(9)、(10)に代表されるポリスアゾ化合物を使用することができる。
Figure 2008265110
Figure 2008265110
以下、第1〜第6の発明について詳細に説明する。
(1)第1の発明
第1の発明は、支持体と、図1に示すように、支持体上に設けられたインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体に関するものである。このインク受容層は、アルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている少なくとも上層aと下層bとを有する。また、上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.0%以上6.0%以下となっている。
また、下層は上層の直下(真下)の層を構成し、アルミナ水和物とバインダーを含有する。また、下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7%以上12%以下となっている。
本発明では、上層中に、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.0%以上6.0%以下という、特別な比率でアルミナ水和物とバインダーを含有している。このため、上層はインク受容層に要求される機械的強度や層の保持性を維持しつつ、上層内の多孔質構造cにおいてバインダーによって塞がれた部分を極力、少なくして、多孔質構造の細孔容積を大きなものとすることができる。この結果、高いインク透過性(インク吸収性)を有することができ、上層表面でのインクの滲みを効果的に防止できる。
ここで、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.0%未満であると、層を形成するのに必要な量のアルミナ水和物とバインダーとの接着が行われなくなる。この結果、インク受容層中にクラックが発生し易くなり、インク受容層の機械的強度が不十分となって粉落ちが生じ易くなる傾向がある。一方、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が6.0質量%を超えると、インク受容層の多孔質構造が多数、バインダーによって塞がれた状態となる。この結果、インク受容層の多孔質構造の細孔容積が減少して上層内へのインク液滴の透過が阻害されることとなる。そして、例えば、隣接した状態で異なる色のベタ印字が印字された場合には、その境界部分において互いの領域に他のインクが滲み出す場合がある。
なお、上層中の(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.5%以上5.5%以下であることが好ましい。
また、本発明では、下層中に、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7.0%以上12%以下という、特別な比率でアルミナ水和物とバインダーを含有している。このため、下層はインク受容層に要求される機械的強度や、上層の支持層として要求される特性を維持しつつ、上層と高い接着強度で接着することができる。
また、上層よりも下層の方が、アルミナ水和物に対するバインダー量を多くすることによって、下層内のインク透過性を低くすることができる。すなわち、図2に示すように、下層の多孔質構造内を適度な質量割合でバインダーにより塞ぎ、多孔質構造の細孔容積を、インク透過性を遅くするのに好適な量とすることができる。更に、この下層には上層内を透過したインク液滴が到達するため、上層内の透過抵抗等により下層到達時には相対的にインクの透過速度は落ちている。このため、下層中では、上層よりもインク透過性を遅くすることができる。
このように、下層中のインク透過性を上層中のインク透過性よりも低くすることによって、下層の上層との界面近傍において、急激にインクの透過速度を変化させることができる。この結果、図3に示すように下層の上層との界面近傍において、インク液滴の滞留が起こり、特定の領域にインク液滴が長時間、存在することができるようになる。そして、この時にインク液滴が、下層の厚み方向と垂直な方向(下層の横方向;下層の面方向)に広がり、印字されたドットのドット径が大きくなる。ただし、この際、下層の組成及び構造から、ドット径は滲みと認識されるほど大きく広がらない。
このため、このように適度にドット径が大きくなると、記録面が印字ドットによって覆われやすくなり、画像特性を向上させることができる。また、例えば、インク打ち込み量が低い状態で高速印字をした際の印字走査方向に対する白いスジ上のムラや、ベタ印刷時の白いモヤ状のムラを回避することが可能となる。
ここで、下層中の(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が12%を超えると、下層中の多孔質構造が過度にバインダーによって塞がれた状態となり、多孔質構造の細孔容積が減少することとなる。このため、下層中のインク浸透性が非常に遅くなり、インク液滴の定着性が非常に悪くなる。より具体的には、上層中ではインク透過性が高いのに対して下層中ではインク透過性が非常に低いため、下層中の特定の領域(例えば、上層との界面近傍)にインク液滴がかなりの時間、存在することとなる。この結果、にじみが発生しやすくなる。また、例えば、異なる色のベタ印字が隣接した状態で印字された場合には、その境界部分において互いの領域に他のインクが滲み出す場合がある。
また、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7.0%未満になると、上層と下層のインク液滴の透過性の差が小さくなる。このため、上層を透過したインク液滴を長時間、下層内の特定の領域に滞留させることが困難となり、特定の領域でドット径を広げることができなくなる。
なお、下層中の(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7.0%以上10%以下であることが好ましく、8.0%以上10%以下であることがより好ましく、8.0%以上9.0%以下であることが更に好ましい。
第1の発明では、上層と下層の厚みの合計が、30μm以上であることが好ましい。上層と下層の厚みの合計が30μm未満であると、インク受容層全体のインク吸収量が不足して、インクの滲みが生じる場合がある。また、上層と下層の厚みの合計は33μm以上であることがより好ましく、35μmであることが更に好ましい。
また、ドット径を広げることを考慮した場合、インク液滴が上層内を透過して、上層と下層の界面に達するまでの距離、すなわち、上層の厚みも重要な因子となる。ここで、上層の厚みは、2.0μm以上10μm以下であることが好ましく、2.0μm以上7.0μm以下であることがより好ましい。
上層の厚みを上記のような範囲とすることにより、例えば、インク打ち込み量を低くしてベタ印字をした場合であっても、十分な量のインク液滴を上層と下層の界面にまで到達させることができる。この結果、下層中で十分なドット径の広がりが起こり、より効果的に画像ムラを回避することができる。
一方、上層の厚みが10μmよりも厚い場合には、上層中でのインク吸収量が増えるため、相対的に下層中へ到達するインク液滴の量が減少する場合がある。すなわち、ドット径が広がるに足る量のインクが、上層と下層の界面にまで到達せず、ドット径の広がりが不十分となり、画像にムラが発生しやすくなる場合がある。
また、上層の厚みが2.0μm未満の場合には、上層の高いインク吸収性という効果を発現させることができず、インクの滲みが発生する場合がある。また、インク液滴が下層に到達するまでに上層を透過した距離が短くなるので、上層と下層のインク透過性の速度差によるドット径の広径化の効果が出にくくなる場合がある。
(2)第2の発明
第2の発明は、支持体と、支持体上に設けられ少なくとも上層と下層とを有するインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体に関するものである。この上層はインク受容層の表面層を構成するインク透過性の層であり、アルミナ水和物とバインダーを含有する。また、このインク受容層は、アルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている。
上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.0%以上6.0%以下となっていると共に、上層の厚みは3.0μm以上となっている。
また、下層は上層の直下(真下)の層を構成し、アルミナ水和物とバインダーを含有する。また、下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7%以上12%以下となっている。
更に、上層と下層中の、アルミナ水和物に対するメタンスルホン酸の質量割合(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.3%以上2.1%以下となっている。
本発明では、上層中に、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.0%以上6.0%以下という、特別な比率でアルミナ水和物とバインダーを含有している。このため、上層はインク受容層に要求される機械的強度や層の保持性を維持しつつ、上層内の多孔質構造中において、バインダーによって塞がれた部分を極力、少なくして、多孔質構造の細孔容積を大きなものとすることができる。この結果、高いインク透過性を有することができ、上層表面でのインクの滲みを効果的に防止できる。
ここで、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.0%未満のとき、上記第1の発明に記載の理由と同様の理由により、インク受容層の機械的強度が不十分となる。また、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が6.0%を超えるとき、上記第1の発明に記載の理由と同様の理由により、上層内へのインク液滴の浸透が阻害され、インクが滲み出す場合がある。
一方、たとえ上層を上記のようなバインダーとアルミナ水和物の質量割合とした場合であっても、上層の厚みが薄いと上層全体の細孔容積量が少なくなるため、インクによっては、上層内をインクが透過する際にインク中の染料が多孔質構造を有する層の孔内で密に存在しやすくなることがある。この結果、インクによっては上層内でインク中の染料同士が凝集を起こしてブロンズが発生する場合がある。
特に、このブロンズ現象を起し易いインクとしてシアンインクが挙げられる。この理由は、シアンインク中のシアン染料が凝集しやすい特性を有するためと考えられる。本明細書の(発明が解決しようとする課題)にも記載したように、本発明者はシアンインクをインク受容層に印字してインク受容層断面方向へのシアンインクの浸透距離を観察した。この結果、シアン染料は他のインクと比べて、インク受容層の表面から最も浅い位置に存在していることが多かった。この事実からも、シアン染料は凝集しやすくブロンズしやすいことが分かる。更に、近年、シアン染料の堅牢性を向上させる手段として、可溶化基として可溶化基置換トリアジン環を導入したフタロシアニン系染料を用いられている。この染料は従来の染料に比較してブロンズ現象が起こりやすくなっている。このため、インク受容層をインクの凝集が起こりにくい(ブロンズ現象が起こりにくい)構成とする必要が生じてきた。
そこで、本発明では、上層の厚みを3.0μm以上とすることによって、上層全体の細孔容積量を大きくして、インク中の染料が多孔質構造を有する層の孔内で密に存在することを防ぐことによりインク同士の凝集を防いで、ブロンズの発生を防止することができる。
なお、上層中の(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.5%以上5.5%以下であることが好ましい。また、上層の厚みは3.0μm以上8.0μm以下が好ましく、5μmがより好ましい。
また、本発明では、下層中に、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7.0%以上12%以下という、特別な質量比率でアルミナ水和物とバインダーを含有している。このため、下層はインク受容層に要求される機械的強度や、上層の支持層として要求される特性を維持しつつ、上層と高い接着強度で接着することができる。また、これと共に、上層と下層の境界領域でのインクの滞留時間を適切な範囲とすることができる。このため、上層中でインク中の染料同士が密に存在することによるブロンズの発生を効果的に抑制することができる。
また、インク受容層のpHと、染料、特にシアンインクの凝集性(ブロンズの発生)との間にも関係がある。すなわち、インク受容層のpHが低すぎる場合、シアンインク等の染料の凝集を促進してブロンズを引き起こす場合がある。一方で、インク受容層のpHが高すぎると染料がインク受容層上で定着しにくい。このため、インク受容層全体のpHを4.5以上5.5以下の範囲に調整することが好ましく、4.8以上5.3以下の範囲に調整することがより好ましく、5.1に調整することが更に好ましい。
そして、本発明では、上層と下層中の、アルミナ水和物に対するメタンスルホン酸の質量割合(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.3%以上2.1%以下となっている。これによって、インク受容層全体を上記pHの範囲内に調整することができる。なお、インク受容層が上層と下層の2層、及び3層以上の何れの場合であっても、上層と下層の2層全体に対して(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.3%以上2.1%以下とする必要がある。
このメタンスルホン酸は、蟻酸、酢酸、グリコール酸等のバッファー機能を持つ弱酸と比べてインク受容層のpHの調整が容易である。本発明では、メタンスルホン酸に加えて、更に、塩酸、硝酸等の強酸を用いても良い。
なお、メタンスルホン酸の質量割合(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100は1.5%以上1.9%以下であることが好ましく、1.6%以上1.8%以下であることがより好ましく、1.7%であることが更に好ましい。
更に、本発明では、上記メタンスルホン酸を用いて、インク受容層全体のpHを4.5以上5.5以下の範囲に調整することにより、インク受容層の黄変を防ぐことができる。この黄変については様々な原因が考えられるが、一般的には、インク受容層中にBHT(2,6−t−dibutylhydoroxyltoluen)のような酸化防止剤が付着した後、BHT自身が酸化されることによって黄色く変化するためであると考えられている。
ここで、この黄変にはインク受容層中のpHが影響し、インク受容層のpHが小さく水素イオンが多く存在すると、BHT自身の酸化を抑制できるため、インク受容層の黄変を抑制することができる。
本発明では、上述のブロンズの発生と黄変のバランスを考えた場合には、インク受容層全体のpHを4、5以上5、5以下の範囲に調整することが好ましく、更に好ましくはpHを4、8以上5、3以下の範囲である。
(3)第3の発明
第3の発明は、支持体と、支持体上に設けられ少なくとも上層と下層とを有するインク受容層とを有する、5.5pl以下のインク液滴による画像形成用のインク吸収性記録媒体に関するものである。
この上層はインク受容層の表面層を構成するインク透過性の層であり、アルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている。下層は上層の直下の層を構成し上層よりもインク透過性が低い層となっている。この上層と下層は、そのインク透過性の差を利用して、インク受容層の上層上へのインク液滴の付与時よりも定着時のドット径を大きくできるように構成されている。
本発明では、上層よりも下層の方がインク透過性を低くなっている。すなわち、下層の単位体積あたりの多孔質構造の細孔容積は、上層の単位体積あたりの多孔質構造の細孔容積よりも小さくなっている。このため、インク液滴は上層よりも下層中を透過しにくくなっている。
ここで、高精細画像の形成のため、従来のインクジェット記録媒体に、5.5pl以下の微小なインク液滴を付与して画像形成を行った場合、インク液滴が付与後に広がらずに、必ずしも目的の高精細画像を得ることができなかった。これに対して、本発明では、下層中のインク透過性が上層中のインク透過性よりも低くなっているため、下層の上層との界面近傍において、急激にインクの透過速度を変化させることができる。この結果、下層の上層との界面近傍において、インク液滴の滞留が起こり、特定の領域にインク液滴が長時間、存在することができるようになる。
そして、この時にインク液滴が、下層の厚み方向と垂直な方向(下層の横方向;下層の面方向)に広がり、5.5pl以下の微小なインク液滴であっても、印字されたインクのドット径を大きくして定着させることができる。すなわち、インク液滴のドット径を、インク液滴の付与時よりも定着時に大きくできる。そして、このように、ドット径が大きくなると、記録面が印字ドットによって覆われやすくなるため、画像特性を向上させることができる。なお、本発明では、1pl以上5.5pl以下のインク液滴による画像形成用のインク吸収性記録媒体として用いることが好ましい。
また、インク透過性は、例えば、Fibro社製ダイナミックアブソープションテスター(DAT)を用いて、以下の方法により評価することができる。
まず、23℃、50%RHの環境下に調整したインク吸収性記録媒体に、4.0μl(マイクロリットル)の蒸留水(23℃)をマイクロシリンジにより滴下する。この後、滴下した液滴の輪郭をビデオカメラで撮影し、撮影した画像を解析することで液滴の体積を求め、体積の経時変化より吸収量及び吸収時間を求めることにより評価することができる。
この上層と下層のインク透過性は、各層の組成及び製造方法を特定のものに選択することによって制御することができる。例えば、下層中にアルミナ水和物とバインダーを含有させると共に、下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を7.0%以上12%以下とすれば良い。
(4)第4の発明
第4の発明は、支持体と、支持体上に設けられ少なくとも表面層としての上層と上層の直下に位置する下層とを含むインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体である。この上層は、アルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されており、アルミナ水和物とバインダーを含有する。また、上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下となっている。
このため、上層はインク受容層に要求される機械的強度や層の保持性を維持しつつ、上層内の多孔質構造中において、バインダーによって塞がれた部分を極力、少なくして、多孔質構造の細孔容積を大きなものとすることができる。ここで、従来のインクジェット記録媒体では、上層全体の細孔容積量が少なくなると、上層内をインクが透過する際にインク中の染料が多孔質構造を有する層の孔内で密に存在しやすくなっていた。この結果、上層内でインク中の染料同士が凝集を起こしてブロンズが発生する場合があった。
そこで、第4の発明では、上層中に、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.0%以上6.0%以下という、特別な比率でアルミナ水和物とバインダーを含有している。これによって、上層全体の細孔容積量を大きくして、インク中の染料が多孔質構造を有する層の孔内で密に存在することを防ぎインク同士の凝集を防いで、ブロンズの発生を防止することができる。
第4の発明では、上層と下層の厚みの合計が、30μm以上であることが好ましい。上層と下層の厚みの合計が30μm未満であると、インク受容層全体のインク吸収量が不足して、インクの滲みが生じる場合がある。また、上層と下層の厚みの合計は33μm以上であることがより好ましく、35μmであることが更に好ましい。
また、上層の厚みも重要な因子となる。ここで、上層の厚みは、2.0μm以上10μm以下であることが好ましく、2.0μm以上7.0μm以下であることがより好ましい。上層の厚みを上記のような範囲とすることにより、例えば、インク打ち込み量を低くしてベタ印字をした場合であっても、十分な量のインク液滴を上層と下層の界面にまで到達させることができる。この結果、下層中で十分なドット径の広がりが起こり、より効果的に画像ムラを回避することができる。
一方、上層の厚みが10μmよりも厚い場合には、上層中でのインク吸収量が増えるため、相対的に下層中へ到達するインク液滴の量が減少する場合がある。すなわち、ドット径が広がるに足る量のインクが、上層と下層の界面にまで到達せず、ドット径の広がりが不十分となり、画像にムラが発生しやすくなる場合がある。
また、上層の厚みが2.0μm未満の場合には、上層の高いインク吸収性という効果を発現させることができず、インクの滲みが発生する場合がある。
(5)第5の発明
第5の発明は、支持体と、支持体上に設けられ少なくとも上層と下層とを有するインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体に関するものである。この上層及び下層は、インク受容層の表面層として、アルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている層であり、アルミナ水和物とバインダーを含有する。また、上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100は、4.0%以上6.0%以下となっている。
また、下層は上層の直下(真下)の層を構成し、アルミナ水和物とバインダーを含有する。また、下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7.0%以上12%以下となっている。更に、アルミナ水和物の平均細孔径が7.0nm以上、10nmとなっている。
本発明では、上層中に、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.0%以上6.0%以下という、特別な比率でアルミナ水和物とバインダーを含有している。このため、上層はインク受容層に要求される機械的強度や層の保持性を維持しつつ、上層内の多孔質構造中において、バインダーによって塞がれた部分を極力、少なくして、多孔質構造の細孔容積を大きなものとすることができる。この結果、高いインク透過性を有することができ、上層表面でのインクの滲みを効果的に防止できる。
ここで、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.0%未満のとき、上記第1の発明に記載の理由と同様の理由により、インク受容層の機械的強度が不十分となる。また、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が6.0%を超えるとき、上記第1の発明に記載の理由と同様の理由により、上層内へのインク液滴の浸透が阻害され、インクが滲み出す場合がある。
また、本発明では、下層中に、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7.0%以上12%以下という、特別な比率でアルミナ水和物とバインダーを含有している。このため、下層はインク受容層に要求される機械的強度や、上層の支持層として要求される特性を維持しつつ、上層と高い接着強度で接着することができる
一方、たとえ上層、下層を上記のような(バインダー)/(アルミナ水和物)×100とした場合であっても、インク受容層全体の平均細孔径が大きくなる場合には、インク受容層のヘイズが大きなり透明性が損なわれるため、画像を印字した際の画像濃度が低くなることがあった。
そこで、本発明では、インク受容層全体の平均細孔径7.0nm以上、10nmとすることで、インク受容層全体のヘイズを低減し、透明性を確保することで、画像印字時に高い画像濃度を得ることができる。
第5の発明では、上層と下層の厚みの合計が、30μm以上であることが好ましい。上層と下層の厚みの合計が30μm未満であると、インク受容層全体のインク吸収量が不足して、インクの滲みが生じる場合がある。また、上層と下層の厚みの合計は33μm以上であることがより好ましく、35μmであることが更に好ましい。
また、上層の厚みも重要な因子となる。ここで、上層の厚みは、2.0μm以上10μm以下であることが好ましく、2.0μm以上7.0μm以下であることがより好ましい。上層の厚みを上記のような範囲とすることにより、例えば、インク打ち込み量を低くしてベタ印字をした場合であっても、十分な量のインク液滴を上層と下層の界面にまで到達させることができる。この結果、下層中で十分なドット径の広がりが起こり、より効果的に画像ムラを回避することができる。
一方、上層の厚みが10μmよりも厚い場合には、上層中でのインク吸収量が増えるため、相対的に下層中へ到達するインク液滴の量が減少する場合がある。すなわち、ドット径が広がるに足る量のインクが、上層と下層の界面にまで到達せず、ドット径の広がりが不十分となり、画像にムラが発生しやすくなる場合がある。
また、上層の厚みが2.0μm未満の場合には、上層の高いインク吸収性という効果を発現させることができず、インクの滲みが発生する場合がある。
(6)第6の発明
第6の発明は、支持体と、支持体上に設けられ少なくとも上層と下層とを有するインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体に関するものである。この上層と下層はアルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている。また、上層はインク受容層の最表層を構成するインク透過性の層であり、アルミナ水和物とバインダーを含有する。また、上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.0%以上6.0%以下となっている。
また、下層は上層の直下(真下)の層を構成し、アルミナ水和物とバインダーを含有する。また、下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7.0%以上12%以下となっている。
更に、下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100と、上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100との差が1.5%以上である。すなわち、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100(下層)−(バインダー)/(アルミナ水和物)×100(上層)が1.5%以上となっている。
本発明では、上層中に、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.0%以上6.0%以下という、特別な比率でアルミナ水和物とバインダーを含有している。このため、上層はインク受容層に要求される機械的強度や層の保持性を維持しつつ、上層内の多孔質構造中において、バインダーによって塞がれた部分を極力、少なくして、多孔質構造の細孔容積を大きなものとすることができる。この結果、高いインク透過性を有することができ、上層表面でのインクの滲みを効果的に防止できる。
ここで、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4.0%未満のとき、上記第1の発明に記載の理由と同様の理由により、インク受容層の機械的強度が不十分となる。また、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が6.0%を超えるとき、上記第1の発明に記載の理由と同様の理由により、上層内へのインク液滴の浸透が阻害され、インクが滲み出す場合がある。
また、本発明では、下層中に、(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7.0%以上12%以下という、特別な比率でアルミナ水和物とバインダーを含有している。このため、下層はインク受容層に要求される機械的強度や、上層の支持層として要求される特性を維持しつつ、上層と高い接着強度で接着することができる
更に、下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100と前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100との差が1.5%以上である。このように、特別な差で上層よりも下層の方が、アルミナ水和物に対するバインダー量を多くする。この結果、上層内のインク透過性に対して、下層内のインク透過性を効果的に低くすることができる。すなわち、下層の多孔質構造内を適度な割合でバインダーにより塞ぎ、多孔質構造の細孔容積を、インク透過性を遅くするのに好適な量とすることができる。更に、この下層には上層内を透過したインク液滴が到達するため、上層内の透過抵抗等により下層到達時には相対的にインクの透過速度は落ちている。このため、下層中では、上層よりもインク透過性を遅くすることができる。
このように、下層中のインク透過性を上層中のインク透過性よりも低くすることによって、下層の上層との界面近傍において、急激にインクの透過速度を変化させることができる。この結果、下層の上層との界面近傍において、インク液滴の滞留が起こり、特定の領域にインク液滴が長時間、存在することができるようになる。そして、この時にインク液滴が、下層の厚み方向と垂直な方向(下層の横方向;下層の面方向)に広がり、印字されたドットのドット径が大きくなる。ただし、この際、下層の組成及び構造から、ドット径は滲みと認識されるほど大きく広がらない。
このため、このようにドット径が大きくなると、記録面が印字ドットによって覆われやすくなり、画像特性を向上させることができる。また、例えば、インク打ち込み量が低い状態で高速印字をした際の印字走査方向に対する白いスジ上のムラや、ベタ印刷時の白いモヤ状のムラを回避することが可能となる。
なお、下層中の(バインダー)/(アルミナ水和物)×100と、上層中の(バインダー)/(アルミナ水和物)×100との差が2.0%以上であることが好ましく、2.5%以上であることが更に好ましい。
第6の発明では、上層と下層の厚みの合計が、30μm以上であることが好ましい。上層と下層の厚みの合計が30μm未満であると、インク受容層全体のインク吸収量が不足して、インクの滲みが生じる場合がある。また、上層と下層の厚みの合計は33μm以上であることがより好ましく、35μmであることが更に好ましい。
また、上層の厚みも重要な因子となる。ここで、上層の厚みは、2.0μm以上10μm以下であることが好ましく、2.0μm以上7.0μm以下であることがより好ましい。上層の厚みを上記のような範囲とすることにより、例えば、インク打ち込み量を低くしてベタ印字をした場合であっても、十分な量のインク液滴を上層と下層の界面にまで到達させることができる。この結果、下層中で十分なドット径の広がりが起こり、より効果的に画像ムラを回避することができる。
一方、上層の厚みが10μmよりも厚い場合には、上層中でのインク吸収量が増えるため、相対的に下層中へ到達するインク液滴の量が減少する場合がある。すなわち、ドット径が広がるに足る量のインクが、上層と下層の界面にまで到達せず、ドット径の広がりが不十分となり、画像にムラが発生しやすくなる場合がある。
また、上層の厚みが2.0μm未満の場合には、上層の高いインク吸収性という効果を発現させることができず、インクの滲みが発生する場合がある。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
先ず、実施例及び比較例で作成したインク吸収性記録媒体に対して、測定した各種の物性値の測定方法について、以下に説明する。
<インク受容層の平均細孔径>
測定には下記の装置を用いた。
平均細孔径の測定:(株)島津製作所製 自動比表面積/細孔分布測定装置 TriStar3000
サンプル前処理:(株)島津製作所製 バキュプレップ061。
また、以下のようにして測定を行った。実施例及び比較例で作成したインク吸収性記録媒体を、5.0×10cmのサイズに断裁した後、これを平均細孔径測定用の3/8inセルに入る大きさに切り分けた。この後、これをセルに投入し、バキュプレップ061を用いて、マニュアルに従い、80℃に加熱しながら20millitorr以下になるまで脱気乾燥を行った。
脱気乾燥を行ったサンプルを、TriStar3000を用いて、窒素吸着脱離法により、マニュアルに従って平均細孔径の測定を行った。測定後、得られた窒素脱離側のデータを用いて、最終的に平均細孔径の値を得た。
<インク受容層の表面pH>
JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.49−1に従って、測定した3分後の表面pHの値とした。
(実施例1)
(支持体の作製例1)
下記のようにして支持体を作製した。
先ず、下記組成の紙料を調整した。
・パルプスラリー 100質量部
濾水度450ml CSF(Canadian Standarad Freeness)の、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP) 80質量部。
濾水度480ml CSFの、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)
20質量部。
・カチオン化澱粉 0.60質量部。
・重質炭酸カルシウム 10質量部。
・軽質炭酸カルシウム 15質量部。
・アルキルケテンダイマー 0.10質量部。
・カチオン性ポリアクリルアミド 0.030質量部。
次に、この紙料を長網抄紙機で抄造し3段のウエットプレスを行った後、多筒式ドライヤーで乾燥した。この後、サイズプレス装置で、固形分が1.0g/m2となるように酸化澱粉水溶液を含浸させ、乾燥させた。この後、マシンカレンダー仕上げをして、坪量170g/m2、ステキヒトサイズ度100秒、透気度50秒、ベック平滑度30秒、ガーレー剛度11.0mNの基紙Aを得た。
基紙A上に、低密度ポリエチレン(70質量部)と、高密度ポリエチレン(20質量部)と、酸化チタン(10質量部)からなる樹脂組成物を25g/m2塗布した。更に、裏面に、高密度ポリエチレン(50質量部)と、低密度ポリエチレン(50質量部)からなる樹脂組成物を、25g/m2塗布することにより、樹脂被覆した支持体1を得た。
(インク吸収性記録媒体の製造例1)
上記支持体1上に、上層形成用の塗工液、下層形成用の塗工液を塗工、乾燥してインク受容層を形成した。この際の、各塗工液の組成及び塗工方法等は、以下の通りである。
(下層形成用の塗工液Aの作成)
まず、純水中に、無機アルミナ水和物としてアルミナ水和物Disperal HP14(サソール社製)を30質量%となるように添加した。次に、このアルミナ水和物に対して、(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.7%となるようにメタンスルホン酸を加えて、攪拌し、コロイダルゾルを得た。得られたコロイダルゾルをアルミナ水和物が27質量%となるように適宜、希釈してコロイダルゾルAを得た。
一方、ポリビニルアルコールPVA235(クラレ(株)製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、固形分8.0質量%のPVA水溶液を得た。そして、上記で調製したコロイダルゾルAに前記作成したPVA溶液を、アルミナ水和物の固形分に対して、PVA固形分換算((バインダー)/(アルミナ水和物)×100)が7%となるように混合した。次に、3.0質量%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物の固形分に対してホウ酸固形分換算で1.7質量%となるように混合して、下層形成用の塗工液Aを得た。
(上層形成用の塗工液Aの作成)
まず、純水中に、無機アルミナ水和物としてアルミナ水和物Disperal HP14(サソール社製)を30質量%となるように添加した。次に、このアルミナ水和物に対して、質量割合(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.7%となるようにメタンスルホン酸を加えて、攪拌し、コロイダルゾルを得た。得られたコロイダルゾルに界面活性剤として、サーフィノール465(日信化学工業社製)を、コロイダルゾルに対して0.10質量%となるように添加した。更に、アルミナ水和物が21質量%となるように適宜、希釈してコロイダルゾルBを得た。
一方、ポリビニルアルコールPVA235(クラレ(株)製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水に溶解して、固形分8.0質量%のPVA水溶液を得た。そして、上記で調製したコロイダルゾルBに前記作成したPVA溶液を、アルミナ水和物の固形分に対して、PVA固形分換算((バインダー)/(アルミナ水和物)×100)が4.0%となるように混合した。次に、3.0質量%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物の固形分に対してホウ酸固形分換算で1.0質量%になるように混合し、上層形成用の塗工液Aを得た。
(インク受容層の塗工方法)
支持体1上に、支持体に近い方から順に、下層形成用の塗工液Aを乾燥後の厚みが30μm、上層形成用の塗工液Aを乾燥後の厚みが5μmとなるように同時重層塗布した。なお、上記2層の塗工液の塗工は、スライドダイを用いて40℃で行った。次に、これを40℃で乾燥して、インク吸収性記録媒体1を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体1中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例2)
実施例1において、上層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を5.0%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体2を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体2中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例3)
実施例1において、上層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を6.0%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体3を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体3中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例4)
実施例1において、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を12%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体4を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体4中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例5)
実施例1において、上層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を5.0%とした。また、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を12%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体5を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体5中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例6)
実施例5において、支持体を下記に示す支持体2に変えた以外は、実施例5と同様にしてインク吸収性記録媒体6を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体6中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(支持体の作製例2)
基紙A上に、以下のようにして下塗り層を形成した。
先ず、下塗り層の形成用の塗工液として、カオリン(ウルトラホワイト90、Engelhard社製)/酸化亜鉛/水酸化アルミニウムの、質量比65/10/25からなる填量100質量部を準備した。この填量100質量部に対して、市販のポリアクリル酸系分散剤0.10質量部を加えた固形分濃度70質量%のスラリーに、市販のスチレン−ブタジエン系ラテックス7.0質量部を添加して、固形分60質量%の組成物とした。次に、ブレードコーターにより、この組成物の乾燥塗工量が15g/m2となるように基紙Aの両面に塗工し、乾燥した。この後、マシンカレンダー仕上げをして(線圧150kgf/cm)、坪量185g/m2、ステキヒトサイズ度300秒、透気度3,000秒、ベック平滑度200秒、ガーレー剛度11.5mNの下塗り層付きの支持体2を得た。
(実施例7)
実施例1において、上層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を6.0%とした。また、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を12%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体7を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体7中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例8)
実施例1において、上層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を5.0%とした。また、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を8.0%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体8を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体8中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例9)
実施例8において、下層形成用の塗工液Aを下記に示す下層形成用の塗工液Bに変えた以外は、実施例8と同様にしてインク吸収性記録媒体9を作成した。
(下層形成用の塗工液Bの作成)
まず、純水中に、無機アルミナ水和物としてアルミナ水和物Disperal HP14(サソール社製)を30質量%となるように添加した。次に、このアルミナ水和物に対して、(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物物)×100が1.7%となるようにメタンスルホン酸を加えた。次に、これに更に、アルミナ水和物に対して固形分換算で1.0質量%となるようにPAS−92(日東紡績社製)を添加して攪拌してコロイダルゾルを得た。得られたコロイダルゾルをアルミナ水和物が27質量%となるように適宜、希釈してコロイダルゾルAを得た。
一方、ポリビニルアルコールPVA235(クラレ(株)製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水に溶解して、固形分8.0質量%のPVA水溶液を得た。そして、上記で調製したコロイダルゾルAに前記作成したPVA溶液を、アルミナ水和物の固形分に対して、PVA固形分換算((バインダー)/(アルミナ水和物)×100)が7%となるように混合した。次に、3.0質量%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物の固形分に対してホウ酸固形分換算で1.7質量%となるように混合して、下層形成用の塗工液Bを得た。
(実施例10)
実施例8において、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を、9.0%とした。これ以外は、実施例8と同様にしてインク吸収性記録媒体10を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体10中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例11)
実施例8において、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を、10%とした。これ以外は、実施例8と同様にしてインク吸収性記録媒体11を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体11中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例12)
実施例8において、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を、11%とした。これ以外は、実施例8と同様にしてインク吸収性記録媒体12を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体12中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(比較例1)
実施例1において、上層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を3.0%とした。また、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を12%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体13を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体13中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(比較例2)
実施例1において、上層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を1.0%とした。また、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を12%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体14を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体14中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(比較例3)
実施例1において、上層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を7.0%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体15を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体15中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(比較例4)
実施例1において、上層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を9.0%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体16を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体16中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(比較例5)
実施例1において、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を13%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体17を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体17中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(比較例6)
実施例1において、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を17%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体18を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体18中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が7.9nm、表面pHが5.1であった。
(比較例7)
実施例1において、上層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を6.0%とした。また、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を6.0%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体19を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体19中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(比較例8)
実施例1において、上層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を6.0%とした。また、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を4.0%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体20を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体20中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.2nm、表面pHが5.1であった。
(比較例9)
実施例1において、上層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を3.0%とした。また、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を13%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体21を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体21中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(比較例10)
実施例1において、上層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を7.0%とした。また、下層形成用の塗工液Aのアルミナ水和物の固形分に対するPVAの固形分の質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を6.0%とした。これ以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体22を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体22中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例13)
実施例1において、上層の乾燥後の厚みを10μm、下層の乾燥後の厚みを20μmとした以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体23を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体23中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例14)
実施例2において、上層の乾燥後の厚みを10μm、下層の乾燥後の厚みを20μmとした以外は、実施例2と同様にしてインク吸収性記録媒体24を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体24中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例15)
実施例3において、上層の乾燥後の厚みを10μm、下層の乾燥後の厚みを20μmとした以外は、実施例3と同様にしてインク吸収性記録媒体25を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体25中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例16)
実施例4において、上層の乾燥後の厚みを10μm、下層の乾燥後の厚みを20μmとした以外は、実施例4と同様にしてインク吸収性記録媒体26を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体26中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例17)
実施例5において、上層の乾燥後の厚みを10μm、下層の乾燥後の厚みを20μmとした以外は、実施例5と同様にしてインク吸収性記録媒体27を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体27中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例18)
実施例7において、上層の乾燥後の厚みを10μm、下層の乾燥後の厚みを20μmとした以外は、実施例7と同様にしてインク吸収性記録媒体28を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体28中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例19)
実施例8において、上層の乾燥後の厚みを10μm、下層の乾燥後の厚みを20μmとした以外は、実施例8と同様にしてインク吸収性記録媒体29を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体29中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例20)
実施例10において、上層の乾燥後の厚みを10μm、下層の乾燥後の厚みを20μmとした以外は、実施例10と同様にしてインク吸収性記録媒体30を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体30中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例21)
実施例11において、上層の乾燥後の厚みを10μm、下層の乾燥後の厚みを20μmとした以外は、実施例11と同様にしてインク吸収性記録媒体31を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体31中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例22)
実施例12において、上層の乾燥後の厚みを10μm、下層の乾燥後の厚みを20μmとした以外は、実施例12と同様にしてインク吸収性記録媒体32を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体32中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例23)
実施例1において、上層の乾燥後の厚みを2.0μm、下層の乾燥後の厚みを28μmとした以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体33を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体33中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例24)
実施例2において、上層の乾燥後の厚みを2.0μm、下層の乾燥後の厚みを28μmとした以外は、実施例2と同様にしてインク吸収性記録媒体34を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体34中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例25)
実施例3において、上層の乾燥後の厚みを2.0μm、下層の乾燥後の厚みを28μmとした以外は、実施例3と同様にしてインク吸収性記録媒体35を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体35中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例26)
実施例4において、上層の乾燥後の厚みを2.0μm、下層の乾燥後の厚みを28μmとした以外は、実施例4と同様にしてインク吸収性記録媒体36を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体36中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例27)
実施例5において、上層の乾燥後の厚みを2.0μm、下層の乾燥後の厚みを28μmとした以外は、実施例5と同様にしてインク吸収性記録媒体37を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体37中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例28)
実施例7において、上層の乾燥後の厚みを2.0μm、下層の乾燥後の厚みを28μmとした以外は、実施例7と同様にしてインク吸収性記録媒体38を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体38中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例29)
実施例8において、上層の乾燥後の厚みを2.0μm、下層の乾燥後の厚みを28μmとした以外は、実施例8と同様にしてインク吸収性記録媒体39を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体39中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例30)
実施例10において、上層の乾燥後の厚みを2.0μm、下層の乾燥後の厚みを28μmとした以外は、実施例10と同様にしてインク吸収性記録媒体40を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体40中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例31)
実施例11において、上層の乾燥後の厚みを2.0μm、下層の乾燥後の厚みを28μmとした以外は、実施例11と同様にしてインク吸収性記録媒体41を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体41中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.1nm、表面pHが5.1であった。
(実施例32)
実施例12において、上層の乾燥後の厚みを2.0μm、下層の乾燥後の厚みを28μmとした以外は同様にしてインク吸収性記録媒体42を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体42中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例33)
実施例4において、上層の乾燥後の厚みを11μm、下層の乾燥後の厚みを19μmとした以外は、実施例4と同様にしてインク吸収性記録媒体43を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体43中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例34)
実施例4において、上層の乾燥後の厚みを13μm、下層の乾燥後の厚みを17μmとした以外は、実施例4と同様にしてインク吸収性記録媒体44を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体44中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例35)
実施例4において、上層の乾燥後の厚みを7.0μm、下層の乾燥後の厚みを23μmとした以外は、実施例4と同様にしてインク吸収性記録媒体45を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体45中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例36)
実施例1において、上層の乾燥後の厚みを1.0μm、下層の乾燥後の厚みを29μmとした以外は、実施例1と同様にしてインク吸収性記録媒体46を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体46中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例37)
実施例7において、上層の乾燥後の厚みを3.0μm、下層の乾燥後の厚みを27μmとした以外は、実施例7と同様にしてインク吸収性記録媒体47を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体47中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.1であった。
(実施例38)
実施例7において、コロイダルゾルBのアルミナ水和物の固形分に対するメタンスルホン酸の量(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100を1.3%とした。そして、上層と下層中の、(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100を1.3%以上2.1%以下の範囲とした。これ以外は、実施例7と同様にしてインク吸収性記録媒体48を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体48中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.3であった。
(実施例39)
実施例7において、コロイダルゾルBのアルミナ水和物の固形分に対するメタンスルホン酸の量(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100を2.1%とした。そして、上層と下層中の、(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100を1.3%以上2.1%以下の範囲とした。これ以外は、実施例7と同様にしてインク吸収性記録媒体49を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体49中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.0nm、表面pHが5.3であった。
(実施例40)
実施例2において、コロイダルゾルBの無機アルミナ水和物を、アルミナ水和物Disperal HP14(サソール社製):アルミナ水和物Disperal HP18(サソール社製)=80:20(質量基準)とした。また、コロイダルゾルAの無機アルミナ水和物を、アルミナ水和物Disperal HP14(サソール社製):アルミナ水和物Disperal HP18(サソール社製)=80:20(質量基準)とした。これ以外は、実施例2と同様にしてインク吸収性記録媒体50を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体50中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.4nm、表面pHが5.0であった。
(実施例41)
実施例2において、コロイダルゾルBの無機アルミナ水和物を、アルミナ水和物Disperal HP14(サソール社製):アルミナ水和物Disperal HP18(サソール社製)=60:40(質量基準)とした。また、コロイダルゾルAの無機アルミナ水和物を、アルミナ水和物Disperal HP14(サソール社製):アルミナ水和物Disperal HP18(サソール社製)=60:40(質量基準)とした。これ以外は、実施例2と同様にしてインク吸収性記録媒体51を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体51中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が8.9nm、表面pHが4.9であった。
(実施例42)
実施例2において、コロイダルゾルBの無機アルミナ水和物を、アルミナ水和物Disperal HP14(サソール社製):アルミナ水和物Disperal HP18(サソール社製)=40:60(質量基準)とした。また、コロイダルゾルAの無機微粒子をアルミナ水和物Disperal HP14(サソール社製):アルミナ水和物Disperal HP18(サソール社製)=40:60(質量基準)とした。これ以外は、実施例2と同様にしてインク吸収性記録媒体52を作成した。このようにして作成したインク吸収性記録媒体52中の、インク受容層の平均細孔径と表面pHを測定したところ、平均細孔径が9.5nm、表面pHが4.8であった。
上記のようにして実施例及び比較例で得られた、インク吸収性記録媒体に対して以下の評価を行った。この結果を表1〜3に示す。
<評価方法>
1)インク滲み
インク吸収性記録媒体に対して、キヤノン(株)製のインクジェットプリンタPIXUS iP8600のスーパーフォトペーパーモード(デフォルト設定)により、下記画像の印字を行なった。
・ブラックとイエローのベタ画像を隣接させたインク滲み画像
・ブラックとレッドのベタ画像を隣接させたインク滲み画像。
そして、以下の評価基準に従って、イエロー、又はレッドの印字領域へのブラックの滲みを評価した。
評価基準
A:滲みが見られず良好である。
B:レッドの印字領域に若干、ブラックが滲んでいるが許容可能なレベルである。
C:イエローとレッドの印字領域に若干、ブラックが滲んでいるが許容可能なレベルである。
D:レッドの印字領域にブラックが容易に視認できるほど滲んでいる。
E:イエローとレッドの印字領域にブラックが容易に視認できるほど滲んでいる。
2)インク受容層のクラック
インク受容層形成後に、目視により、インク吸収性記録媒体の、上層表面のクラックの長さを確認した。そして、以下の評価基準に従って、評価した。
評価基準
A:クラックの発生が無い。
B:クラックが発生しているが、全て1.0mm未満の長さのクラックである。
C:1.0mm以上のクラックがある。
3)インク受容層の粉落ち
JIS−L0849に定めた学振型摩擦試験機II型(テスター産業社製)を用いて、以下のように評価した。
300gの重りをのせた試験機の摩擦子に黒のラシャ紙を装着し、振動台に試料片をインク受容層の上層が上になるようにセットして20回こすり合わせた。この後、ラシャ紙のこすり合わせた部分と、それ以外の部分との黒の反射濃度をそれぞれX−Rite社製310TRで測定し、この濃度差から、黒の濃度残存率を下式に従って求め、下記評価基準に基づいて評価した。
評価基準
A:残存率が95%以上
B:残存率が90%以上95%未満
C:残存率が90%未満
残存率(%)=[1−(試験部以外の濃度−試験部の濃度)/(試験部以外の濃度)]×100。
4)印字ムラ
インク吸収性記録媒体に対して、キヤノン(株)製のインクジェットプリンタPIXUS iP8600のスーパーフォトペーパーモード(早い設定)により、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのベタ画像の印字を行なった。この後、以下の評価基準に従って、各色の印字領域のムラを評価した。
評価基準
A:いずれの色においても、画像にムラは見られない。
B:いずれかの色において、画像に若干、白いムラが見られるが許容可能なレベルである。
C:いずれかの色において、画像に若干の白いスジ状のムラが見られるが許容可能なレベルである。
D:いずれかの色において、画像に白いもや上のムラが見られる。
E:いずれかの色において、画像に容易に視認できる白いスジ状のムラが見られる。
5)ブロンズ
インク吸収性記録媒体に対して、キヤノン(株)製のインクジェットプリンタPIXUS iP8600を用いて、シアンのベタ画像で、印字dutyを下記のように13段階、変化させて印字した。
・5、12、21、29、35、43、51、58、66、74、85、90、100%。
この印字物について、ブロンズ現象が発生し始めるdutyを目視で評価し、そのdutyをブロンズ発生dutyとした。なお、ブロンズ発生dutyが高いほど、そのインク吸収性記録媒体はブロンズしにくいと言える。このようにして得られたブロンズ発生dutyにより、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
評価基準
A:ブロンズ発生duty88%以上(実画においてほとんどブロンズしないか、実画において視覚判断でブロンズが発生しているかどうか分からないレベルである)。
B:ブロンズ発生duty63%以上、88%未満(実画において視覚判断でブロンズの発生が分かる場合があるレベルである)。
C:ブロンズ発生duty43%以上、63%未満(画像濃度の濃い実画において視覚判断でブロンズ発生が分かるレベルである)。
D:ブロンズ発生duty43%未満(画像濃度の薄い実画において視覚判断でブロンズ発生が分かるレベルである)
6)画像濃度
インク吸収性記録媒体に対して、キヤノン(株)製のインクジェットプリンタPIXUS iP8600のスーパーフォトペーパーモード(デフォルト設定)により、ブラックのベタ画像の印字を行なった。この後、ブラック印字部の反射濃度をX−Rite社製310TRで測定した。
Figure 2008265110
Figure 2008265110
Figure 2008265110
表1、3より、上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を、従来に無い低い領域に調整した。これにより、アルミナ水和物によって層内に形成される多孔質構造を十分に活用できることが分かる。また、下層中のアルミナ水和物とバインダーの割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100を、上層より多い量とした。これにより、インク受容層にクラック等の欠陥を起こすことなく、従来にないインク吸収性を発現できることが分かる。そして、本発明では、インク滲みが生じない優れた画像特性のインク吸収性記録媒体を提供できることが分かる。
更に加えて、上層の厚みを、上層の吸収スピードと下層の吸収スピードの差異を有効に使える範囲とすることによって、印字後に下層中でドット径を大きくして、印字ムラを抑制できることが分かる。また、上層の厚みを一定厚み以上とすることで、ブロンズに対して優れたインク吸収性記録媒体を提供できることが分かる。
インク受容層の断面方向の模式図の一例の説明図 インク受容層にインクが印字された状態を示した一例の説明図 インク受容層にインクが浸透する過程を示した一例の説明図
符号の説明
a 上層インク受容層
b 下層インク受容層
c インク受容層内の多孔質部位
d アルミナ水和物+バインダー
e インク滴
f 上層内に浸透したインク
g 上層下層境界領域に存在するインク
h 下層内に浸透したインク

Claims (9)

  1. 支持体と、前記支持体上に設けられアルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている少なくとも上層と下層とを有するインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体であって、
    前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下であり、
    前記下層は、前記上層の直下の層を構成し、かつ前記下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7%以上12%以下であることを特徴とするインク吸収性記録媒体。
  2. 支持体と、前記支持体上に設けられアルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている少なくとも上層と下層とを有するインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体であって、
    前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下であり、かつ上層の厚みが3μm以上であり、
    前記下層は、前記上層の直下の層を構成し、かつ前記下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7%以上12%以下であり、
    前記上層と下層中の、前記アルミナ水和物とメタンスルホン酸の質量割合(メタンスルホン酸)/(アルミナ水和物)×100が1.3%以上2.1%以下であることを特徴とするインク吸収性記録媒体。
  3. 支持体と、前記支持体上に設けられ少なくとも上層と下層とを有するインク受容層とを有する、5.5pl以下のインク液滴による画像形成用のインク吸収性記録媒体であって、
    前記上層は、前記インク受容層の表面層としてアルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている層であり、かつ前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下であり、
    前記下層は、前記上層の直下の層を構成し、前記上層よりもインク透過性が低い層であり、前記上層と下層のインク透過性の差により前記インク受容層の上層上へのインク液滴の付与時よりも下層へのインク液滴の定着時のドット径を大きくできるように構成されていることを特徴とするインク吸収性記録媒体。
  4. 支持体と、前記支持体上に設けられ少なくとも表面層としての上層と前記上層の直下に位置する下層とを有するインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体であって、
    前記上層は、アルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている層であり、アルミナ水和物とバインダーを含有し、かつ前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下であることを特徴とするインク吸収性記録媒体。
  5. 支持体と、前記支持体上に設けられアルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている少なくとも上層と下層とを有するインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体であって、
    前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下であり、
    前記下層は、前記上層の直下の層を構成し、かつ前記下層中のアルミナ水和物とバインダーの割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7%以上12%以下であり、
    前記インク受容層の平均細孔径が7nm以上10nm以下であることを特徴とするインク吸収性記録媒体。
  6. 支持体と、前記支持体上に設けられアルミナ水和物とバインダーとによって多孔質構造が形成されている少なくとも上層と下層とを有するインク受容層と、を有するインク吸収性記録媒体であって、
    前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が4%以上6%以下であり、
    前記下層は、前記上層の直下の層を構成し、かつ前記下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100が7%以上12%以下であり、
    前記下層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100と、前記上層中のアルミナ水和物とバインダーの質量割合(バインダー)/(アルミナ水和物)×100との差が1.5%以上であることを特徴とするインク吸収性記録媒体。
  7. 前記インク受容層の平均細孔径が7nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項6に記載のインク吸収性記録媒体。
  8. 前記上層と下層の厚みの合計が、30μm以上であることを特徴とする請求項1、4から7の何れか1項に記載のインク吸収性記録媒体。
  9. 前記上層の厚みが、2μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1、4から8の何れか1項に記載のインク吸収性記録媒体。
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