JP2008243840A - 薄膜素子の転写方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材と金属酸化薄膜素子と、基材と薄膜素子の少なくとも一面に備えた光熱変換層とを含む転写体、及び被転写体を、接着層を介して対向し、転写体及び被転写体のうち、XYステージに載置されていない面の周縁部と、XYステージのうち被転写体又は転写体が載置されていない部分とを一体のシートで覆い、XYステージに設けた吸引部を稼動する工程、光熱変換層にレーザ光を選択的に照射し、得られた熱により接着層を溶融・軟化させ、薄膜素子と被転写体とを接着させ、接着された薄膜素子を転写体から離脱させて被転写体に転写層を選択的に形成することを特徴とする。
【選択図】図2
Description
フォトリソグラフ法では、写真製版で製造される高価なガラスマスクの製作が必須であり、回路基板の設計から製造までの時間短縮のために、ガラスマスクに代わって、レ−ザ照射により感光性ドライフィルムに回路を、直接描画する直描システムが導入されつつある。
本製造方法によれば湿式プロセスによる現像、エッチング、レジスト剥離が不要となり低環境負荷の要求に対応している。
しかしながら本製造方法によると、熱供給源であるサーマルヘッドの問題から3000Åを越える膜厚を有する金属層を転写することが尚実現することができていない。
[基材]
基材の厚さは特に限定はされないが、好ましくは4.5μm〜200μm、より好ましくは20μm〜188μm、更に好ましくは50μm〜100μmである。
[光熱変換層]
光熱変換層2は、図1では、基材1と薄膜素子3の間にのみ設けられているが、これに限定されるものではない。
図3(A)〜(C)に光熱変換層2の設けられる位置に関する各種の態様を示す。
図2において、本発明に用いられる光熱変換層2としては、前記レーザ光を選択的に照射されると前記レーザ光を熱に変換し、前記熱により選択的に、前記接着層4を溶融・軟化させる機能に加えて、(a)前記光熱変換層2そのものを前記熱により選択的に瞬間的に蒸発させる機能、(b)前記光熱変換層2中に存在する気体物質を前記熱により選択的にガス化する機能、(c)前記光熱変換層2と前記薄膜素子3の界面で前記熱により選択的に化学反応を生じさせる機能の内、少なくともいずれか一つの機能を有することが望ましい。
また、機能(a)による蒸発の際の気化圧、機能(b)によるガス圧、及び/又は、機能(c)により、薄膜素子3を構成する金属酸化薄膜中の酸素が光熱変換層中の元素、例えば炭素と反応して2酸化炭素を発生する際のガス圧が、薄膜素子3を基材1から(選択的に)離脱させ、接着層4を介して被転写体5に押し付ける方向に働き、薄膜素子3の基材1からの剥離と、被転写体への接着を容易にする。
[ダイヤモンドライクカーボン]
前記光熱変換層を構成するダイヤモンドライクカーボンとしては、水素、窒素、フッ素を含むグループから選択された少なくとも1種の気体物質(即ち、前記光熱変換層中に化学結合(化学吸着)あるいは物理吸着により存在する、常温で気体の物質)を1〜60原子%の含有率で含むことが好ましい。
以下、このようなダイヤモンドライクカーボンからなる薄膜を総称して、「DLC薄膜」という。
[接着層]
この場合、溶解性パラメータが9未満又は14以上であると、転写性が劣化するという点で問題がある。
[被転写体]
上述のように、透明導電膜などの金属酸化薄膜素子3が高温でも形成可能な基材1、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ダイヤモンドライクカーボン等からなる光熱変換層2を設け、その光熱変換層上に例えばITOからなる金属酸化薄膜からなる薄膜素子3が形成されている転写体10を用意する。一方被転写体5として例えばガラス材等を用意する。本図の例では接着層4は転写体10側に形成されている。
次に、転写体10又は被転写体5のうち、XYステージに載置されていない面、即ち本実施例では転写体10の上面、の少なくとも周縁部10aと、XYステージのうち被転写体5及び転写体10が載置されていない部分6aとを、一体のシート8で覆う。
シートが透明であれば、シートは転写体10の上面全体を覆ってもよい。
XYステージ6は放熱性のよい金属製にしてあり、密着性が向上すると放熱性も一層向上でき、目的のレーザ焦点部部位以外の温度上昇が抑制され、最終製品の仕上がり精度を向上するだけでなく、加熱による歪み、損傷を抑制できる。
その際シート8は、この吸引効果を一層確実にすることができる。
その際、前記レーザ光源には、CCDカメラからなる光学系(図示せず)が、両者の焦点が合致するように同軸に設けられており、焦点は薄膜素子3と光熱変換層2の界面に当たるように設定される。
焦点の離隔距離と走査ピッチは、共に単線ストリップ形成時のストリップ幅に略比例し、各々、ストリップ幅の25倍、2倍程度が好ましい。
その結果、図2(B)(本図では、XYステージ6とシート8の記載を省略してある。)に示すように、光熱変換層2、薄膜素子3、接着層4のうち、レーザ光が照射された部分を各々、2a、3a、4aとすると、これにより光熱変換層2aが発熱し、その熱により、その直下の接着層4aが溶融・軟化し接着性を発現することで、被転写体5と薄膜素子3aとが接着されることとなる。
レーザ光の波長としては紫外光から赤外光まで幅広い波長が原理的には使用することが可能であるが、紫外光のレーザ光源は高価であり、また、多くの材料が紫外光に対しては光吸収が大きく、使用することが難しい。赤外光では、光熱変換層以外で発熱する可能性が大きい。
このため、工業的にも安価にレーザが入手できることを含め、本転写技術においては可視光領域、或いは可視光に近い波長領域のレーザ光を使用することが適当である。
その場合は、転写体10と被転写体5のセットは、図1の場合とは倒置されて、XYステージ6上に載置される。
その後150℃で30分から、1時間加熱すると、密着の良い低抵抗な透明電極が得られる。
本実施例では、基材1としては、PETフィルム(膜厚100μm)を用い、光熱変換層2としてDLC膜をPBII(Plasma Based Ion Implantation)法にて、アセチレン(C2H2)ガス添加雰囲気で室温成膜した。
ガス流量・ガス圧・成膜時間は、膜厚100nmの場合、各々、60ccm、1.0Pa、30分であった
DLC膜の膜厚としては、100nmのサンプルを作成し、その上に、薄膜素子3としてITO膜をミラ−トロン(対向タ−ゲットスパッタ法の1種)法で250nm成膜した。成膜時のITO膜の抵抗率が2×10−4Ω・cmであった。
別途被転写体5としてソーダライムガラス(板厚1.1mm)及びPETフィルム(100μm)を用意し、この被転写体5に接着層4として、エポキシ樹脂と共重合ポリアミド樹脂(ダイセル・デグサ社製ダイアミドX1874M)の混合物を塗布、乾燥してBステージ状態、即ち、半固化状態にしたものを作成し(下記の表1では、単に「X1874M」としてある)、実験に供した。
その結果、レーザ光Lは、透明な被転写体5(ソーダライムガラス及びPETフィルム)、接着層4、薄膜素子3(ITO膜)を通して、薄膜素子と光熱変換層2(DLC膜)の界面に十分到達し、不透明なDLC膜に妨げられることがない。
焦点の設定に当たっては、薄膜素子3(この場合、透明な金属酸化薄膜であるITO膜)と光熱変換層2の界面に現れる、(a)薄膜素子3の表面の微細な歪みに起因するニュートンリング、及び(b)DLC膜の表面に存在する微小な空隙(窪み)、のいずれか一方又は双方が最も明瞭な映像を呈するように対物レンズの位置を光学的に調節する。
その場合の光学顕微鏡による拡大映像(×100)の一例を図5に示す。図において、視野右上にニュートンリング(本実施例では緑色を主とし、これはレーザ光の波長532μmに対応する。)が見られ、視野全体に微小な空隙(窪み)が斑点状に見られる。
ただし、表1に示すように、サンプル5〜7についてのレーザ光照射方向は転写体10側からである、即ち図1のスキーム用いており、レーザ光は、薄いが(100μ厚)不透明なDLC膜を通して所在のDLC膜を加熱しながら減衰し、ITO膜との界面に到達する。
○ : パターンエッジの凹凸が2ミクロン以下、
△ : パターンエッジの凹凸が5ミクロン以下、
× : パターンエッジの凹凸が5ミクロン以上。
この実験の範囲では、サンプル5、即ち、強いレーザ(0.75W)を転写体側から照射した場合に、最も目標線幅(20μ)に近くエッジ凹凸が小さいが、パターンエッジ凹凸が安定して小さいと言う点では、レーザを被転写体側から当てるサンプル1〜3の条件の方が勝る。
焦点位置をオフセットしたサンプル4では、幅広(30μm)の回路配線が得られる。
ガラス板厚が変化した場合の最適なレーザ強度を表4に示す。これらのことからガラス板厚が変わっても、高品質なITO膜の転写が可能であることが明らかとなった。
なお、XYステージを下面から冷却すると、同一のレーザ強度に対して、目的のレーザ焦点部部位以外の温度上昇が抑制され、最終製品の熱歪みを抑制できる。
従って、表示装置としてはもとより、価格的にディスプレイが搭載されていない電子機器などにも、搭載される可能性があり、電子機器分野での応用は計り知れない。又樹脂フィルムにも回路配線形成が転写可能であり、フレキシブル回路基板、電子ペーパーなどへの展開も期待される。応用例として上記ITOの他、SnO2、RuO2などの透明金属酸化薄膜も転写可能であり、電子回路基板、インターポーザなどの用途展開が可能である。
また、酸化チタン(TiO2)の抗菌作用を応用した、低コストの空気清浄機の実現も可能である。
2、2a 光熱変換層
3、3a 金属酸化薄膜(薄膜素子)
4、4a 接着層
5 被転写体
5a 被転写体の上面の周縁部
6 XYステージ
6a XYステージのうち、転写体・被転写体が載置されていない部分
7 吸引部(真空チャック)
8 シート
10 転写体
10a 転写体の上面の周縁部
Claims (7)
- 基材に形成された薄膜素子を有する転写体の薄膜素子を選択的に被転写体に転写する方法であって、前記基材上の少なくとも一方の面、及び/又は前記薄膜素子の少なくとも一方の面には光熱変換層が形成されており、前記転写体の前記被転写体との対向面、前記被転写体の前記転写体との対向面の少なくとも一面に接着層が形成されており、前記被転写体又は前記転写体のいずれかをXYステージに載置する工程、前記転写体と被転写体とを接着層を介して対向させる工程、前記転写体及び前記被転写体のうち、前記XYステージに載置されていない面の周縁部と、前記XYステージのうち前記被転写体又は前記転写体が載置されていない部分とを一体のシートで覆い、前記XYステージに設けた吸引部を稼動する工程、レーザ光の光源に対して前記XYステージを相対的に移動することにより前記光熱変換層に前記レーザ光を選択的に照射し、光熱変換層によりレーザ光を熱に変換し、前記接着層を選択的に溶融・軟化させ、薄膜素子と被転写体とを選択的に接着させる工程、前記選択的に接着された薄膜素子を転写体から離脱させて被転写体に転写層を形成する工程とを有し、前記薄膜素子が金属酸化薄膜により構成されていることを特徴とする薄膜素子の転写方法。
- 前記光熱変換層が、前記レーザ光を選択的に照射されると前記レーザ光を熱に変換し、前記熱により選択的に、前記接着層を溶融・軟化させる機能に加えて、(a)前記光熱変換層そのものを前記熱により選択的に瞬間的に蒸発させる機能、(b)前記光熱変換層中に存在する気体物質を前記熱により選択的にガス化する機能、(c)前記光熱変換層と前記薄膜素子の界面で前記熱により選択的に化学反応を生じさせる機能の内、少なくともいずれか一つの機能を有することを特徴とする請求項1に記載の薄膜素子の転写方法。
- 前記レーザ光が、300nm〜1200nmの波長をもち、前記被転写体、又は前記転写体を30%以上透過することを特徴とする請求項1に記載の薄膜素子の転写方法。
- 前記光熱変換層は、基材の少なくとも一方の面に形成されたダイヤモンドライクカーボン(以下、DLC)からなる薄膜、あるいは前記DLCからなる薄膜において、さらに水素、窒素、フッ素を含むグループから選択された少なくとも1種の気体物質を1〜60原子%の含有率で含む薄膜(以下、これらを総称して「DLC膜」という)からなることを特徴とする請求項1に記載の薄膜素子の転写方法。
- 前記レーザの焦点を、前記薄膜素子と前記光熱変換層の界面に設定することを特徴とする請求項1に記載の薄膜素子の転写方法。
- 前記XYステージの上に、前記基材、前記光熱変換層、前記薄膜素子、前記接着層、前記被転写体がこの順に積層され、
前記被転写体が透明なガラス又は高分子フィルムからなり、前記薄膜素子が透明な金属酸化薄膜からなり、前記光熱変換層がDLC膜からなり、
前記レーザ光を前記被転写体の上方から照射する場合であって、
前記レーザ光の焦点を前記レーザ光と同軸に設けた光学系の焦点と合致させ、前記薄膜素子と前記光熱変換層の界面に現れる、(a)前記薄膜素子の表面の微細な歪みに起因するニュートンリング、及び(b)前記DLC膜の表面に存在する微小な空隙(窪み)、のいずれか一方又は双方が最も明瞭な映像を呈するように光学的に調節することにより、前記レーザ光の焦点の設定を行うことを特徴とする請求項5に記載の薄膜素子の転写方法。 - 前記レーザの焦点を、前記薄膜素子と前記光熱変換層の界面から、200μm〜800μm離隔するように設定し、20μm〜80μmの走査間隔を置いて、前記レーザ光を連続的に照射しながら走査することを特徴とする請求項1に記載の薄膜素子の転写方法。
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