JP2008242463A - 複屈折性光学フィルム、それを用いた楕円偏光板、および、それらを用いた液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】所望の位相差値を容易に得ることができる高い配向性と、小さな光弾性係数とを兼ね備える複屈折性光学フィルムを提供する。
【解決手段】
本発明の複屈折性光学フィルムは、2種類以上のポリマー材料を含む複屈折性光学フィルムであって、前記各ポリマー材料の光弾性係数Cnとその体積分率Wnとの積の総和が下記数式1を満たし、かつ、光弾性係数の値が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料を少なくとも1種類含む、という構成である。
数式1: Σ(Cn×Wn) ≦ 30×10-8cm2/N
【選択図】なし
【解決手段】
本発明の複屈折性光学フィルムは、2種類以上のポリマー材料を含む複屈折性光学フィルムであって、前記各ポリマー材料の光弾性係数Cnとその体積分率Wnとの積の総和が下記数式1を満たし、かつ、光弾性係数の値が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料を少なくとも1種類含む、という構成である。
数式1: Σ(Cn×Wn) ≦ 30×10-8cm2/N
【選択図】なし
Description
本発明は、複屈折性光学フィルム、前記光学フィルムを用いた楕円偏光板、および、それらを用いた液晶表示装置に関する。
従来、各種液晶表示装置に使用される光学補償用複屈折性フィルムは、フィルム延伸技術により作製されてきた。その延伸方法としては、例えば、ロール間引張り延伸法、ロール間圧縮延伸法、テンター横一軸延伸法等(例えば、特許文献1参照。)や、フィルム強度の関係から異方性を持つような条件で二軸延伸する方法がある(例えば、特許文献2参照。)。また、延伸方法以外の作製方法として、例えば、可溶性ポリイミドをフィルム化することによって、負の一軸性を付与する形成方法もある(例えば、特許文献3参照。)。
前記フィルム延伸技術等によって、例えば、nx≧ny>nzという光学特性を、フィルムに付与できる(nxおよびnyは、フィルム平面内の主屈折率を表し、nzは、フィルム厚み方向の屈折率を表す。)。この複屈折性フィルムを、駆動セルと偏光子との間に配置すれば、液晶セルの視角補償フィルムとして利用でき、液晶表示装置を広視野角化できる。
二軸性複屈折フィルムは、例えば、マルチドメイン配向した垂直配向(VA)モードの液晶セルにおいて、広視野角を得るための光学補償フィルムとして使用できる。この二軸性複屈折フィルムは、一般に、ポリマーフィルムの延伸によって得ることができ、例えば、フィルム平面の2方向(xおよびy方向)延伸、または、フィルムの長手方向を固定して幅方向に延伸する固定端一軸延伸(例えば、テンターによる横延伸)等によって得ることができる。
二軸性複屈折フィルムでは、通常、三次元の屈折率である、前記nx、nyおよびnzを制御でき、特に、平面内の位相差Δndおよび厚み方向の位相差値Rthを、制御できる。なお、ΔndおよびRthは、下記式で表される。
Δnd=(nx−ny)・d
Rth=(nx−nz)・d
(dは、複屈折性フィルムの厚みである。)
Δnd=(nx−ny)・d
Rth=(nx−nz)・d
(dは、複屈折性フィルムの厚みである。)
前記ΔndおよびRthは、例えば、延伸温度やx方向およびy方向の延伸倍率等によって制御できる。具体的には、例えば、Δndは、x方向とy方向との延伸率比等により、Rthは、x方向およびy方向の延伸率量等により、制御できる。二軸性複屈折フィルムでは、Rthの形成が重要で、特に、垂直配向(VA)モードの液晶の複屈折の補償は、Rthに大きく依存する。
前記Rthの形成において、複屈折性フィルムのポリマー材料として延伸配向性の高い材料(例えば、ポリカーボネート等)を用いると、xおよびy方向の延伸量を大幅に増やすことなく、所望のRthを得ることができる。しかし、前記材料では、光弾性係数も大きくなるため、例えば、偏光板の寸法変化等の微小な外力が加わった場合に、屈折率が変化しやすい。また、このようなフィルムを組み込んだ液晶表示装置は、加熱や加湿等の過酷な条件下では、部分的なコントラストの低下が見られ、面内の均一性が著しく損なわれるという問題点もある。
一方、光弾性係数の小さな材料(例えば、ポリノルボルネン系等)を用いた複屈折性フィルムは、外力が加わった場合でも複屈折がほとんど変化せず、これを組み込んだ液晶表示装置は、上記の過酷な条件下であっても、表示の均一性は損なわれない。しかし、前記材料では、延伸配向性が低いため、一枚のフィルムでは十分なRthを得ることができない場合があり、所望のRthを実現するために、xおよびy方向の延伸倍率を大きくし、複数枚の位相差板を用いる必要がある。その結果、例えば、ΔndやRthの精度低下、ボーイング現象による光学軸精度の低下、パネルの厚型化、コストアップ等の問題が生じる。
すなわち、従来の技術では、所望の位相差値を容易に得ることができる高い配向性と、加熱や加湿等の耐久性試験においてコントラストのムラの発生を低減できる小さな光弾性係数とを兼ね備える複屈折性光学フィルムを得ることが困難であった。
特開平3−33719号公報
特開平3−24502号公報
特表平8−511812号公報
そこで、本発明は、良好な配向性と、小さな光弾性係数とを兼ね備える複屈折性光学フィルムの提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の複屈折性光学フィルムは、2種類以上のポリマー材料を含む複屈折性光学フィルムであって、前記各ポリマー材料の光弾性係数Cnとその体積分率Wnとの積の総和が下記数式1を満たし、かつ、光弾性係数の値が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料を少なくとも1種類含む、という構成である。
数式1: Σ(Cn×Wn) ≦ 30×10-8cm2/N
数式1: Σ(Cn×Wn) ≦ 30×10-8cm2/N
上記式において、前記光弾性係数Cnは、本発明の複屈折性光学フィルムに含まれる各ポリマー材料の光弾性係数を意味し、前記体積分率Wnは、本発明の複屈折性光学フィルムに含まれるポリマー材料の総体積に対する前記各ポリマー材料の体積分率を意味する。
本発明者らは、複屈折性光学フィルムの光弾性に関し鋭意研究を重ねた結果、複屈折性光学フィルムに含まれるポリマー材料が上記数式1を満たせば、フィルム全体として、小さな光弾性係数を備えることができることを見出した。そして、前記光学フィルムが、光弾性係数の値が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料を少なくとも1種類含めば、さらに、高い配向性を備えることができることを見出し、本発明に到達した。
なお、本発明でいう光弾性係数とは、弾性体が外力を受けた時、一時的に光学異性体となって複屈折を生じ、外力を除いた後に元に戻るという光弾性効果を示す物質において、複屈折差の応力依存性を表す定数である。すなわち、平面内の複屈折差Δnxyと光弾性係数との関係は下記式で表され、外力が加わった場合には、光学フィルムの位相差値が変化することを意味する。
Δnxy = C・σ (式中、Cは光弾性係数、σは応力を表す。)
Δnxy = C・σ (式中、Cは光弾性係数、σは応力を表す。)
本発明の複屈折性光学フィルムは、高い配向性と、小さな光弾性係数とを兼ね備えるから、位相差値制御が容易であり、位相差値変化において、例えば、耐熱、耐湿等に優れる。したがって、本発明の複屈折性光学フィルムを用いれば、例えば、各種液晶モードの視角補償に適し、かつ、加熱や加湿等に対する表示均一性に優れた光学補償フィルムおよび光学補償楕円偏光板を提供できる。またさらに、本発明の複屈折性光学フィルムを用いれば、例えば、広視野角であり、かつ、加熱や加湿等によるコントラストムラが低減された液晶表示装置を提供できる。
次に、本発明の複屈折性光学フィルム、前記複屈折性光学フィルムを用いた楕円偏光板、および、それらを用いた液晶表示装置について、さらに詳しく説明する。
本発明において、少なくとも一つのポリマー材料の光弾性係数は、60×10-8cm2/N 以上であって、この範囲のポリマー材料であれば、本発明の複屈折性光学フィルムに高い配向性を付与できる。前記ポリマー材料の光弾性係数の範囲としては、好ましくは、65×10-8cm2/N 〜 300×10-8cm2/N であって、より好ましくは、70×10-8cm2/N 〜 200×10-8cm2/ N である。
本発明の複屈折性光学フィルム全体の光弾性を評価する指標として、各ポリマー材料の光弾性係数Cnとその体積分率Wnとの積の総和Σ(Cn×Wn)を使用する。このΣ(Cn×Wn)が、上記数式1の範囲内であれば、例えば、本発明の複屈折性光学フィルムを用いた液晶表示装置を高温や多湿等の条件下に置いた場合であっても、コントラストムラを抑えることができる。例えば、前記液晶表示装置における、より向上した表示均一性の観点等から、前記Σ(Cn×Wn)は、好ましくは、−25×10-8cm2/N 〜25×10-8cm2/Nの範囲であって、より好ましくは、−20×10-8cm2/N 〜20×10-8cm2/Nの範囲である。
本発明の複屈折性光学フィルムに用いられるポリマー材料は、前記Σ(Cn×Wn)の範囲を満たし、光学的に透明なものであれば、特に制限されない。
本発明の複屈折性光学フィルムの形態としては、特に制限はなく、例えば、2種類以上のポリマー材料を混合して形成された単一膜の光学フィルムであってもよい。また、例えば、単数または複数のポリマー材料ごとにポリマー層が形成された積層体の光学フィルムであってもよい。本発明の複屈折性光学フィルムが、前記積層体である場合、各ポリマー層を形成するポリマー材料には、他のポリマー層を形成するポリマー材料と同一のものが含まれていてもよく、含まれなくてもよい。
前記積層体は、例えば、光弾性係数が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料が形成するポリマー層と、前記材料以外のポリマー材料が形成するポリマー層とを含むものであってよい。
本発明の複屈折性光学フィルムの異方性としては、光弾性係数が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料が形成するポリマー層において、層の平面内の2方向の主屈折率をnxおよびny、層の厚み方向の屈折率をnzとした場合に、nx≧ny>nzを満たすことが好ましい。nx≧ny>nzという光学特性を有する前記ポリマー層を含む複屈折性光学フィルムならば、例えば、液晶セルの視角補償フィルムとして好適に利用できる。
本発明の複屈折性光学フィルムの配向性としては、光弾性係数が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料が形成するポリマー層において、Δnxz=(nx−nz)で評価した場合、Δnxzの範囲が、0.005〜0.1の範囲であることが好ましい。Δnxzが、0.005以上であれば、例えば、十分なRthを得るために厚膜化する必要がなくなり、フィルム全体での光弾性係数を抑えることができる。また、Δnxzが、0.1以下であれば、例えば、位相差制御が可能である。Δnxzの範囲としては、0.007〜0.08がより好ましく、さらにより好ましくは0.01〜0.06である。
本発明の複屈折性光学フィルムの製造方法は、特に限定されない。例えば、本発明に用いるポリマー材料をフィルム基材等に塗工して製造してもよい。その場合は、加熱溶解による方法でもよく、または、前記ポリマー材料を溶媒に溶解させたポリマー溶液を塗布する方法でもよい。製造効率および光学異方性制御の観点等から、前記ポリマー溶液を塗工する方法が好ましい。前記ポリマー溶液を用いる場合は、粘度の観点等より、溶媒100重量部に対して、例えば、本発明のポリマー材料が5〜50重量部であるのが好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。
前記ポリマー溶液をフィルム基材等に塗工する方法において、前記フィルム基材は、そのままポリマー層として使用できる。例えば、前記フィルム基材上に、前記ポリマー溶液を塗工してポリマー層を形成すれば、2層構造の積層体ができる。このようにすると、前記フィルム基材等を別途使用する必要がなくなり、例えば、コストの点等から好ましい。また、例えば、フィルム作製後の転写や剥離の工程等を省くことができるため、製造工程の点からも好ましい。
また、前記塗工の処理は、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等の適宜な方法で行うことができる。
光学異方性を付与するためにポリマー材料を配向させる方法としては、例えば、有機溶媒等に溶解させたポリマー材料を含むポリマー溶液を塗布し、その後乾燥させることにより厚み方向の配向(nx>nz)を得る方法や、ポリマー材料を延伸することにより配向を得る方法等があげられる。
前記延伸は、例えば、延伸可能な基材上に前記ポリマー溶液を塗工して、前記基材を延伸することで実施されることが好ましい。その方法としては、例えば、フィルムの長手方向に一軸に延伸する自由端縦延伸、フィルムの長手方向は固定しながら幅方向に一軸に延伸する固定端横延伸、長手方向にも幅方向にも延伸する二軸延伸等があげられる。
本発明の複屈折性光学フィルムが前記積層体である場合、前記延伸可能な基材は、そのままポリマー層として使用できる。例えば、前記延伸可能なポリマー材料からなる基材上に前記ポリマー溶液を塗工してポリマー層を形成し、前述のように延伸すれば、配向された2層構造の積層体ができる。このようにすると、例えば、前記延伸可能な基材を別途使用する必要がなくなり、延伸後の転写や剥離の工程等を省くことができる。この場合、基材上に塗工するポリマー溶液のポリマー材料としては、光弾性係数が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料が好ましい。
また、本発明の複屈折性光学フィルムが前記積層体である場合、前述のように直接ポリマー層を積層してもよいし、または、別々に作製したポリマー層を接着剤や粘着剤等を介して貼り合せてもよい。
本発明の複屈折性光学フィルムの厚みは、通常、10〜500μmであって、好ましくは、15〜400μm、より好ましくは、20〜300μmである。また、本発明の複屈折性光学フィルムがポリマー層の積層体であって、その積層に接着剤や粘着剤を用いる場合、その接着剤等の層の厚みは、通常10nm〜100μmであって、好ましくは、20nm〜70μm、より好ましくは、30nm〜50μmである。
本発明で使用する光弾性係数が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料は、延伸等を含めた製造工程の観点等より、熱可塑性であることが好ましく、光弾性係数が60×10-8cm2/N 以上であるものを適宜選択すればよい。そのようなポリマー材料としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミド等があげられる。
本発明で使用する光弾性係数が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料のポリエーテルケトンとしては、例えば、特開2001−49110号公報に記載された、下記一般式(1)で表されるポリアリールエーテルケトンがあげられる。
上記(1)中、Xは、置換基を表し、qは、その置換数を表す。Xは、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロゲン化アルキル基、低級アルコキシ基、または、ハロゲン化アルコキシ基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子およびヨウ素原子があげられる。これらの中でも、フッ素原子が好ましい。前記低級アルキル基としては、例えば、C1-6の直鎖または分岐鎖の低級アルキル基が好ましく、C1-4の直鎖または分岐鎖のアルキル基がより好ましい。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、および、tert-ブチル基が、さらにより好ましく、特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。前記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の前記低級アルキル基のハロゲン化物があげられる。前記低級アルコキシ基としては、例えば、C1-6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、C1-4の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基がより好ましい。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、および、tert-ブトキシ基が、さらにより好ましく、特に好ましくは、メトキシ基およびエトキシ基である。前記ハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基等の前記低級アルコキシ基のハロゲン化物があげられる。
上記(1)中、前記qは、0から4までの整数である。そのなかでも、q=0であり、かつ、ベンゼン環の両端に結合したカルボニル基とエーテル酸素とが互いにパラ位に存在することが好ましい。
また、上記(1)中、R1は、下記式(2)で表される基であり、mは、0または1の整数である。
上記(2)中、X’は、置換基を表し、q’は、その置換数を表す。X’は、例えば、前記Xがとりうる前記範囲のものであり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。q’は、0から4までの整数であり、q’=0であるのが好ましい。また、pは、0または1の整数である。
また、上記(2)中、R2は、2価の芳香族基を表す。この2価の芳香族基としては、例えば、o−、m−もしくはp−フェニレン基、または、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o−、m−もしくはp−テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、もしくは、ビフェニルスルホンから誘導される2価の基等があげられる。これらの2価の芳香族基において、芳香族に直接結合する水素が、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されてもよい。これらの中でも、前記R2としては、下記式(3)〜(9)からなる群から選択される芳香族基が好ましい。
上記(1)中、前記R1としては、好ましくは、下記式(10)で表される基である。下記式(10)中、R2およびpは上記(2)と同義である。
さらに、上記(1)中、nは、重合度を表す。nの値は、具体的には、例えば、2〜5000であって、好ましくは、5〜500である。また、その重合は、同一の繰り返し単位からなるものであってもよく、異なる繰り返し単位からなるものであってもよい。後者の場合には、繰り返し単位の重合形態は、ブロック重合であってもよいし、ランダム重合でもよい。
さらに、上記(1)で示されるポリアリールエーテルケトンの末端は、p−テトラフルオロベンゾイレン基側がフッ素であり、オキシアルキレン基側が水素原子であることが好ましい。すなわち、上記(1)で表されるポリアリールエーテルケトンは、好ましくは、下記一般式(11)で表される重合体である。なお、nは、上記(1)と同様の重合度を表す。
上記(1)で示されるポリアリールエーテルケトンの具体例としては、下記式(12)〜(15)で表されるもの等があげられる。なお、nは、上記(1)と同様の重合度を表す。
本発明で使用する光弾性係数が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料のポリアミドまたはポリエステルとしては、例えば、特表平10−508048号公報に記載されるポリアミドまたはポリエステルがあげられ、それらの繰り返し単位は、下記一般式(16)で表すことができる。
上記(16)中、Yは、OまたはNHであり、Eは、例えば、共有結合、C2アルキレン基、ハロゲン化C2アルキレン基、CH2基、C(CX3)2基(ここで、Xは、ハロゲンまたは水素である。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(R)2基(ここで、Rは、C1-3アルキル基およびC1-3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも1種類である。)、および、N(R)基(ここで、Rは、前記定義のものである。)からなる群から選ばれる。さらに、前記Eは、カルボニル官能基またはY基に対してメタ位またはパラ位にある。
また、上記(16)中、AおよびBは、置換基であり、tおよびzは、それぞれの置換数を表す。また、pは、0から3までの整数であり、qは、1から3までの整数であり、rは、0から3までの整数である。
さらに、上記(16)中、前記Aは、例えば、水素、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、OR(ここで、Rは、前記定義のものである。)で表されるアルコキシ基、アリール基、ハロゲン化等による置換アリール基、C1-9アルコキシカルボニル基、C1-9アルキルカルボニルオキシ基、C1-12アリールオキシカルボニル基、C1-12アリールカルボニルオキシ基およびその置換誘導体、C1-12アリールカルバモイル基、ならびに、C1-12アリールカルボニルアミノ基およびその置換誘導体からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記Bは、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基および置換フェニル基からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基のフェニル環上の置換基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基およびこれらの組み合わせがあげられる。前記tは、0から4までの整数であり、前記zは、0から3までの整数である。
さらに、上記(16)で表されるポリイミドまたはポリエステルの繰り返し単位の中でも、下記一般式(17)で表されるものが好ましい。
上記(17)中、A、BおよびYは、上記(16)で定義したものであり、vは、0から3、好ましくは、0から2までの整数である。xおよびyは、それぞれ0または1であるが、共に0であることはない。
これらのポリアミドまたはポリエステルの分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)として、20,000〜500,000の範囲が好ましく、より好ましくは、50,000〜200,000の範囲である。重量平均分子量が、これらの範囲内であれば、十分な強度が得られ、光学フィルム化した場合に、伸縮、歪み等で、クラックが生じにくく、また、ポリアミドまたはポリエステルがゲル化することなく、溶剤に対する良好な溶解性が得られる。
本発明で使用する光弾性係数が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料のポリイミドとしては、例えば、特表2000−511296号公報に記載されたポリイミドがあげられ、9,9-ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記一般式(18)に対応する繰り返し単位を1つ以上含むポリマーを任意に使用できる。
上記(18)中、R3〜R6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1-10のアルキル基で置換されたフェニル基、およびC1-10のアルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも1種類の置換基である。好ましくは、R3〜R6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1-10のアルキル基で置換されたフェニル基、および、C1-10のアルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも1種類の置換基である。
また、上記(18)中、Dは、例えば、C6-20の4価芳香族基である。好ましくは、Dは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または、下記一般式(19)で表される基である。
上記(19)中、Jは、例えば、共有結合、C(R7)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C2H5)2基、または、NR8基であって、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。wは、1から10までの整数を表し、R7は、それぞれ独立に、水素またはC(R9)3である。R8は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル基、またはC6-20のアリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R9は、それぞれ独立に、水素、フッ素、または塩素である。
前記多環式芳香族基としては、例えば、ナフタレン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはアントラセンから誘導される4価の基があげられる。また、前記多環式芳香族基の置換誘導体としては、例えば、C1-10のアルキル基およびそのフッ素化誘導体、ならびにFやCl等のハロゲンからなる群から選択される少なくとも一つで置換される前記多環式芳香族基があげられる。
さらに、その他にも、例えば、特表平8−511812号公報に記載されたポリイミドがあげられる。具体的には、繰り返し単位が一般式(20)または(21)で示されるホモポリマー、および繰り返し単位が一般式(22)で示されるポリイミド等があげられる。なお、式(22)は式(20)の好ましい形態である。
上記(20)〜(22)中、GおよびG'は、例えば、共有結合、CH2基、C(CH3)2基、C(CF3)2基、C(CX3)2基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(CH2CH3)2基、および、N(CH3)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表す。
上記(20)および(22)中、Lは、置換基であり、dおよびeは、その置換数を表す。前記Lは、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも1種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。また、前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素があげられる。前記dは、0から2までの整数であり、eは、0から3までの整数である。
上記(20)〜(22)中、Qは、置換基であり、fは、その置換数を表す。Qは、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。前記置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また前記置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。fは、0から4までの整数であり、gおよびhは、それぞれ0から3および1から3までの整数である。また、gおよびhは、1より大きいことが好ましい。
上記(21)中、R10およびR11は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から、それぞれ独立に、選択される基である。その中でも、R10およびR11は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記(22)中、M1およびM2は、同一であるかまたは異なり、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基である。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、前記置換フェニル基のとしては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも1種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。
このようなポリイミドとしては、例えば、下記式(23)で表されるもの等があげられる。
さらにまた、その他のポリイミドとしては、例えば、前記骨格以外の酸二無水物やジアミンを適宜共重合させたコポリマーがあげられる。
前記酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2′−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
前記ピロメリト酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメリト酸二無水物等があげられる。前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記2,2′−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2′−ジブロモ−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′−ジクロロ−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
また、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4′−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−[4,4′−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等があげられる。
これらの中でも、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,2′−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、2,2′−ビス(トリハロメチル)−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
前記ジアミンとしては、芳香族ジアミンがあげられる。この芳香族ジアミンの例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンがあげられる。
前記ベンゼンジアミンの例としては、o−、m−およびp−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼンおよび1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼンのようなベンゼンジアミンから成る群から選択されるジアミン等があげられる。前記ジアミノベンゾフェノンの例としては、2,2′−ジアミノベンゾフェノン、および3,3′−ジアミノベンゾフェノン等があげられる。前記ナフタレンジアミンの例としては、1,8−ジアミノナフタレン、および1,5−ジアミノナフタレン等があげられる。前記複素環式芳香族ジアミンの例としては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、および2,4−ジアミノ−S−トリアジン等があげられる。
また、前記芳香族ジアミンとしては、これらの他に、4,4′−ジアミノビフェニル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−(9−フルオレニリデン)-ジアニリン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2'−ジクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2',5,5'−テトラクロロベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン等があげられる。
これらのポリイミドの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。
本発明の複屈折性光学フィルムに用いられる光弾性係数が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料として、前記のポリアリールエーテルケトン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド等を単独で用いても良いし、または、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドの混合物のように異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。
また、前記塗工に使用するポリマー材料溶液中に、配向性が著しく低下しない範囲で、構造の異なる他の樹脂を配合してもよい。その際使用される他の樹脂としては、例えば、汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。
前記汎用樹脂の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等があげられる。前記エンジニアリングプラスチックの例としては、ポリアセテート(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等があげられる。前記熱可塑性樹脂の例としては、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等があげられる。前記熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等があげられる。
また、前記他の樹脂等を、前記ポリマー材料溶液中に配合する場合、前記他の樹脂の配合量は、配向性が著しく低下しない範囲であれば特に制限されないが、通常、前記ポリマー材料溶液中のポリマー材料に対して、例えば、0〜50質量%であり、好ましくは、0〜30質量%である。
また、さらに、前記ポリマー材料溶液中には、安定剤、可塑剤、金属類等を含む、種々の従来公知である添加剤を、必要に応じて配合できる。
前記ポリマー材料溶液の溶媒としては、前記ポリマー材料等を溶解できるものであれば特に制限はなく、前記ポリマー材料の種類に応じて適宜選択できる。その溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等があげられる。これらの溶媒は、単独または2種類以上で使用できる。
本発明の複屈折性光学フィルムに用いられる光弾性係数が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料以外のポリマー材料としては、延伸等を含めた製造工程の観点より、熱可塑性であることが好ましく、上記数式1を満たす光弾性係数のポリマー材料を適宜選択すればよい。そのようなポリマー材料としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル樹脂、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基を有する熱可塑性樹脂との混合物、液晶ポリマー等があげられる。
本発明の複屈折性光学フィルムが前記積層体であって、前記ポリマー層を接着剤または粘着剤を介して積層する場合、前記接着剤または粘着剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系ポリマー、フッ素系ポリマー、または、天然ゴムもしくは合成ゴム系ポリマー等をベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。これらの中でも、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性を示す粘着特性を有し、耐候性や耐熱性に優れるものが好ましい。
本発明の複屈折性光学フィルムと、偏光子とを含む積層体は、楕円偏光板として利用できる。
本発明の楕円偏光板を作製する方法としては、例えば、(1)基材上に形成した本発明の複屈折性光学フィルムを、接着剤または粘着剤を介して、偏光子または偏光板に転写して積層する方法、(2)基材上に形成した本発明の複屈折性光学フィルムを積層体として用い、接着剤または粘着剤を介して、偏光板に積層する方法、(3)基材との積層体である本発明の複屈折性光学フィルムを保護層として利用し、接着剤または粘着剤を介して、さらに偏光子を積層する方法、(4)偏光子を基材として用い、直接前記偏光子上に本発明の複屈折性光学フィルムを形成する方法等があげられる。
前記接着剤または粘着剤としては、特に限定はなく、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の透明な感圧接着剤等の接着剤または粘着剤を用いることができる。中でも、光学フィルム等の光学特性の変化を防止する点より、硬化や乾燥の際に高温のプロセスを要しないもの、長時間の硬化処理や乾燥時間を要しないものが好ましい。また、液晶表示装置等に用いる場合、加熱・加湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、液晶セルの反り防止、高品質で耐久性に優れる形成性等の点より、吸湿率が低く、耐熱性に優れる接着剤または粘着剤であることが好ましい。
前記偏光板としては、特に限定されないが、その基本的な構成は、偏光子の片側または両側に、接着層を介して、保護層となる透明保護フィルムが積層するという構成である。
前記偏光子としては、自然光を入射させると直線偏光を透過するものであれば、特に限定されない。前記偏光子の材料としては、例えば、ポリビニルアルコールや部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系ポリマーのフィルムがあげられる。このフィルムに、ヨウ素や二色性染料等よりなる二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の処理をすることで、前記偏光子を得ることができる。また、材料としてポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等を用いた偏光子でもよい。これらの中でも、ヨウ素または二色性染料を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムの偏光子が好ましく、さらに光透過率や偏光度に優れるものがより好ましい。偏光子の厚さは、1〜80μmが一般的であるが、これに限定されない。
前記透明保護フィルムの材料としては、特に限定されないが、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れるポリマーのフィルム等が好ましい。そのポリマーの例としては、アセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリノルボルネン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基を有する熱可塑性樹脂との混合物等があげられる。前記アセテート樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロースがあげられ、前記熱可塑性樹脂の混合物の具体例としては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のイソブテンとN−メチルマレイミドとからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物があげられる。偏光特性や耐久性等の点より、表面をアルカリ等でケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムが好ましい。前記透明保護フィルムの厚さとしては、任意であるが、通常、偏光板の薄型化等の点より、500μm以下が好ましく、より好ましくは、5〜300μm、さらにより好ましくは、5〜150μmである。なお、前記偏光子の両側に前記透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で異なるポリマー等からなる透明保護フィルムであってもよい。
また、前記透明保護フィルムは、例えば、色付きが無いことが好ましい。具体的には、下記式で表されるフィルム厚み方向の位相差値(Rth)が、−90nm〜+75nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmの範囲である。前記位相差値が−90nm〜+75nmの範囲であれば、十分に保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)を解消できる。なお、下記式において、nx,ny,nzは、前述と同様であり、dは、その膜厚を示す。
Rth=[(nx+ny)/2-nz]・d
Rth=[(nx+ny)/2-nz]・d
さらに、前記透明保護フィルムは、本発明の目的を損なわない限り、さらに、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキングの防止処理、拡散処理、アンチグレア処理等が施されたものでもよい。
前記ハードコート処理は、偏光板表面の傷付き防止等を目的とし、例えば、前記透明保護フィルムの表面に、硬化型樹脂から構成される硬度や滑り性に優れた硬化被膜を形成する処理である。前記硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂が使用でき、前記被膜形成処理は、従来公知の方法によって行うことができる。前記反射防止処理は、偏光板表面での外光の反射防止を目的とし、従来公知の反射防止フィルム等の形成により達成できる。前記スティッキング防止処理は、隣接層との密着防止を目的とし、前記拡散処理は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大して視角補償すること等を目的とし、前記アンチグレア処理は、偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的とする。これらの処理は、例えば、前記透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を形成することにより行うことができる。このような凹凸構造の形成方法としては、例えば、サンドブラスト方式やエンボス加工方式等による粗面化方式、透明微粒子を前記透明保護フィルムの材料に配合する方式等があげられる。
前記透明微粒子には、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等があげられる。この他にも、導電性を有する無機系微粒子を用いてもよく、また、架橋または未架橋のポリマー粒状物等からなる有機系微粒子等を用いることもできる。前記透明粒子の平均粒径は、例えば、0.5〜20μmの範囲であって、その使用量は、特に制限されないが、通常、前記透明保護フィルムの材料100重量部あたり、2〜70重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、5〜50重量部である。
前記透明微粒子が配合されたアンチグレアを目的とする層は、例えば、前述のように前記透明保護フィルムそのものを使用することもでき、または、前記透明保護フィルムの表面に塗工層等として形成されてもよい。さらに、このアンチグレアを目的とする層は、拡散層を兼ねるものであってもよい。同様に、前記反射防止、スティッキング防止、拡散等を目的とする層は、それらの層を設けたシート等から構成される光学層として、前記透明保護フィルムとは別層のものとして設けることもできる。
前記偏光子と前記透明保護フィルムとの接着処理は、特に限定されず、例えば、アクリル系ポリマーやビニルアルコール系ポリマー等の接着剤を使用できる。湿度や熱等の影響で剥がれにくく、光透過率や偏光度に優れる偏光板とすることができる等の点から、さらに、ホウ酸、ホウ砂、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤を含むことが好ましい。これらの接着剤の層は、例えば、水溶液を塗工し、乾燥させる等して形成できる。前記水溶液の調製に際しては、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合できる。これらの中でも、前記接着剤としては、PVAフィルムとの接着性に優れる点から、ポリビニルアルコールの接着剤が好ましい。
また、本発明の複屈折性光学フィルムおよび楕円偏光板は、例えば、各種位相差板、拡散制御フィルム、輝度向上フィルム等と組合せて用いることもできる。前記位相差板としては、ポリマーを一軸延伸または二軸延伸したもの、Z軸配向処理したもの、液晶性高分子を塗布したもの等があげられる。前記拡散制御フィルムとしては、例えば、視野角を制御するための拡散、散乱、屈折を利用したフィルムや、解像度に関わるギラツキや散乱光等を制御するための拡散、散乱、屈折を利用したフィルム等を用いることができる。輝度向上フィルムとしては、例えば、コレステリック液晶の選択反射とλ/4板とを用いた輝度向上フィルムや、偏光方向による異方性散乱を利用した散乱フィルム等を用いることができる。また、ワイヤーグリッド型偏光子と組合せて用いてもよい。
本発明の光学フィルムや楕円偏光板は、例えば、各種液晶表示装置の形成等に用いることが好ましい。その適用に際しては、必要に応じて、前記接着剤または粘着剤を介して、偏光板、反射板、半透過反射板、輝度向上フィルム等の他の光学層を積層できる。前記光学層は、1層でもよいし、2層以上を積層してもよい。
本発明の楕円偏光板に、例えば、前記反射板をさらに積層すれば、反射型偏光板を形成できる。この反射型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に配置され、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)等の形成に使用される。このような液晶表示装置では、例えば、バックライト等の光源の内蔵を省略できることから、液晶表示装置の薄型化を図り易い等の利点を有する。
前記反射型偏光板は、例えば、前記楕円偏光板の片面に、金属等からなる反射板を配置する方式等、従来公知の方法により形成できる。具体例には、例えば、前記透明保護フィルムの片面(露出面)に、必要に応じマット処理を行い、その表面に、アルミニウム等の反射性金属の箔や蒸着膜を反射板として形成する方法等があげられる。
また、前記反射型偏光板の他の例として、表面を微細凹凸構造とした前記透明保護フィルムの上に、その微細凹凸構造を反映させた前記反射板を形成したもの等もあげられる。表面微細凹凸構造の反射板は、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点を有する。
前記反射板の形成方法としては、例えば、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式もしくはスパッタリング方式等の蒸着方式またはメッキ方式等の従来公知の手段で、金属を前記透明保護フィルムの表面に直接形成させる方法等があげられる。
また、前記反射型偏光板は、前述の前記反射板を前記楕円偏光板の保護層に直接形成する方式に代えて、前記保護層に使用される透明保護フィルムのような適当なフィルムに反射板を設けた反射シート等を使用して形成してもよい。前記反射型偏光板の反射板は、通常、金属から構成されるため、酸化による反射率の低下防止、さらに、初期反射率の長期持続の点等から、その使用形態は、前記反射板の反射面が前記保護層や楕円偏光板等で被覆された状態であることが好ましい。
一方、半透過型偏光板は、前記反射型偏光板において、反射板を、反射型から半透過型にしたものであり、反射板で光を反射しかつ透過するハーフミラー等があげられる。
前記半透過型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示する。また、比較的暗い雰囲気においては、前記半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示する。すなわち、前記半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置等の形成に有用である。
さらに、前記輝度向上フィルムとしては、例えば、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの等が使用できる。具体的には、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体であって、例えば、3M社製商品名「D−BEF」等があげられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルム、または、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したものも使用できる。これらは、左回りまたは右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製商品名「PCF350」、Merck社製商品名「Transmax」等があげられる。
前述のように、2層以上積層した光学部材は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式によって形成できるが、予め積層して前記光学部材としたものを使用して形成してもよい。後者の場合、品質の安定性や組立作業性等に優れ、液晶表示装置等の製造効率を向上できる利点がある。なお、積層には、例えば、前記接着剤または粘着剤等を使用でき、微粒子を含有することにより光拡散性を示す接着剤または粘着剤等も使用できる。なお、前記接着剤または粘着剤等の層は、必要に応じて設ければよい。
本発明の複屈折性光学フィルムや楕円偏光板等に設けた前記接着剤または粘着剤等の層が表面に露出する場合には、セパレータにより仮着カバーすることが好ましい。実用に供するまでの間、前記表面の汚染防止等の利点があるからである。前記セパレータは、前記透明保護フィルム等のような薄膜フィルムに対して、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤の層を一層以上含む剥離コート等により形成できる。
なお、前記複屈折性光学フィルム、前記偏光子、前記透明保護フィルム、前記接着剤または粘着剤等の各層は、紫外線吸収剤で処理すること等により、紫外線吸収能を付与してもよい。前記紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等があげられる。
本発明の複屈折性光学フィルムおよび楕円偏光板は、液晶表示装置等の各種装置の形成等に適用できる。例えば、前記のさまざまな偏光板等を、液晶セルの片側または両側に配置することで、反射型、半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に適用できる。
また、前記液晶セルの両側に前記偏光板、光学部材等を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライト等の部品を、必要に応じて配置してもよい。
本発明の複屈折性光学フィルムおよび楕円偏光板は、各種液晶表示装置の光学補償用に好ましく使用できるが、特に、垂直配向(VA)モードの液晶表示装置用の視角補償フィルムとして好適である。VAモードの液晶表示装置の視角補償には、大きなRthの値が必要であるが、本発明の複屈折性光学フィルムは、高い配向性を有するため、一枚のみで、広視野角化が可能だからである。さらに、本発明の複屈折性光学フィルムは、加熱や加湿条件の耐久性試験において偏光子の寸法変化等による外力に対して発生する位相差変化量が小さいため、前記画像装置に生じるコントラストムラが非常に小さく、表示品位を維持できる。
次に、本発明の実施例および比較例を説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、位相差値および光弾性係数は、以下のように測定した。
(位相差値)
位相差値測定は、王子計測機器社製商品名KOBRA−21ADHを用いて、測定波長λ=590で行った。
位相差値測定は、王子計測機器社製商品名KOBRA−21ADHを用いて、測定波長λ=590で行った。
(光弾性係数)
光学フィルムに応力を加えながら、前記光学フィルム面内の位相差値(Δnd)を測定し、これを前記光学フィルムの厚みdで割って、Δnを求めた。さまざまな応力に対応するΔnを算出して、応力‐Δn曲線を作製し、その傾きを光弾性係数とした。
光学フィルムに応力を加えながら、前記光学フィルム面内の位相差値(Δnd)を測定し、これを前記光学フィルムの厚みdで割って、Δnを求めた。さまざまな応力に対応するΔnを算出して、応力‐Δn曲線を作製し、その傾きを光弾性係数とした。
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)および2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(PFMBまたはTFMB)から合成された、Mw=120,000のポリイミドを、メチルイソブチルケトンに溶解し、15質量%溶液を調製した。その溶液を、40μm厚の熱可塑性ポリマー基材(日本ゼオン社製、商品名:ZEONOR)に塗布し、その後150℃で乾燥して、nx=ny>nzの光学異方性を有する積層体の複屈折性光学フィルムを得た。前記ポリマー基材の光弾性係数を測定したところ、4×10-8cm2/Nであり、6FDA−PFMB層(厚みd=7.2μm)の光弾性係数は、98×10-8cm2/Nであった。従って、得られた複屈折性光学フィルムのΣ(Cn×Wn)の計算値は、18×10-8cm2/Nとなり、前記光学フィルムの測定された光弾性係数の値は、21×10-8cm2/Nであった。また、前記6FDA−PFMB層において、Δndは0.3nmであり、Rthは251nmであり、Δnxz(=nx−nz)は0.035であった。
実施例1と同様のポリイミド溶液を、40μm厚の熱可塑性ポリマー基材(日本ゼオン社製、商品名:ZEONOR)に塗布し、その後150℃で乾燥させながら、5%縦一軸延伸を行い、nx>ny>nzの光学異方性を有する積層体の複屈折性光学フィルムを得た。前記ポリマー基材の光弾性係数を測定したところ、4×10-8cm2/Nであり、その厚みは、38μmであった。また、6FDA−PFMB層の光弾性係数は、98×10-8cm2/Nであり、その厚みは、6.5μmであった。従って、得られた複屈折性光学フィルムのΣ(Cn×Wn)の計算値は、18×10-8cm2/Nであり、前記光学フィルムの測定された光弾性係数の値は、20×10-8cm2/Nであった。また、6FDA−PFMB層において、Δndは53nmであり、Rthが275nmであり、Δnxzは0.042であった。
実施例1と同様のポリイミドと、実施例1と同様の熱可塑性ポリマー(日本ゼオン社製、商品名:ZEONOR)とを、1:8の割合でメチルイソブチルケトンに溶解し、30質量%のポリマー混合溶液を調製した。この溶液を、PETフィルム状に塗布し、150℃で乾燥させた後、PETフィルムより剥離し、厚み45μmの複屈折性光学フィルムを得た。各材料の光弾性係数は、前記ポリイミドが、98×10-8cm2/Nであり、前記熱可塑性ポリマーが、4×10-8cm2/Nであった。従って、得られた複屈折性光学フィルムは、Σ(Cn×Wn)の計算値が14×10-8cm2/Nであり、測定された光弾性係数の値が15×10-8cm2/Nであり、Δndが1nmであり、Rthが180nmであった。
(比較例1)
ポリカーボネートフィルム(厚み60μm)を、165℃で、長手方向に8%、幅方向に5%の二軸延伸を行い、nx>ny>nzの光学異方性を有する複屈折性光学フィルムを得た。このフィルムの光弾性係数は、88×10-8cm2/Nであり、また、d=52μm、Δnd=55nm、Rth=245nm、Δnxz=0.0047であった。
ポリカーボネートフィルム(厚み60μm)を、165℃で、長手方向に8%、幅方向に5%の二軸延伸を行い、nx>ny>nzの光学異方性を有する複屈折性光学フィルムを得た。このフィルムの光弾性係数は、88×10-8cm2/Nであり、また、d=52μm、Δnd=55nm、Rth=245nm、Δnxz=0.0047であった。
(比較例2)
JSR社製商品名ARTRONフィルム(厚み100μm)を、175℃で20%固定端横軸延伸を行い、nx>ny>nzの光学異方性を有する複屈折性光学フィルムを得た。このフィルムの光弾性係数は、5×10-8cm2/Nであり、また、d=83μm、Δnd=49nm、Rth=118nm、Δnxz=0.0014であった。
JSR社製商品名ARTRONフィルム(厚み100μm)を、175℃で20%固定端横軸延伸を行い、nx>ny>nzの光学異方性を有する複屈折性光学フィルムを得た。このフィルムの光弾性係数は、5×10-8cm2/Nであり、また、d=83μm、Δnd=49nm、Rth=118nm、Δnxz=0.0014であった。
上述のようにして得た複屈折性光学フィルムと、日東電工社製商品名SEG1425DU偏光板とを、前記光学フィルムの遅相軸と前記偏光板の吸収軸とが直交するように感圧性接着剤を介して貼り合せて、楕円偏光板を作製した。この楕円偏光板を用いて、下記のように、視野角特性の測定と高温暴露試験を行った。
(視野角特性の測定)
市販のVAモードセルの片面に、感圧性接着剤を介して、前記楕円偏光板を光学フィルムがセル側になるように貼り合わせ、前記VAモードセルのもう一方の面には、偏光板のみを、前記楕円偏光板と吸収軸が互いに直交するように感圧性接着剤を介して貼り合わせ、液晶表示装置を作製した。この液晶表示装置の視野角特性を、ELDIM社製商品名EZContrastを使用して測定した。視野角特性の評価は、全方位コントラストが10以上の場合、○とし、それ以外の場合、×とした。その結果を下記表1に示す。
市販のVAモードセルの片面に、感圧性接着剤を介して、前記楕円偏光板を光学フィルムがセル側になるように貼り合わせ、前記VAモードセルのもう一方の面には、偏光板のみを、前記楕円偏光板と吸収軸が互いに直交するように感圧性接着剤を介して貼り合わせ、液晶表示装置を作製した。この液晶表示装置の視野角特性を、ELDIM社製商品名EZContrastを使用して測定した。視野角特性の評価は、全方位コントラストが10以上の場合、○とし、それ以外の場合、×とした。その結果を下記表1に示す。
(高温暴露試験)
ガラス板(170mm×140mm)の片面に、感圧性接着剤を介して、前記楕円偏光板を、前記光学フィルムがガラス板側になり、かつ、楕円偏光板の吸収軸がガラス板の長辺に対して45°となるように貼り合わせ、前記ガラス板のもう一方の面には、偏光板のみを、前記楕円偏光板と吸収軸が互いに直交するように感圧性接着剤を介して貼り合わせて、高温暴露試験用サンプルを作製した。この高温暴露試験用サンプルを80℃の恒温槽に12時間投入し、その後、前記サンプル平面上に設定した9ヶ所の測定点における光透過率を輝度計にて測定し、その値を下記式(i)に適用し、高温暴露後の表示ムラの値を算出した。前記測定点として、図1に示すように、高温暴露試験用サンプル1の平面上に、1〜9の9つの測定点2を設定した。また、輝度は、輝度計(TOPCON社製、商品名BM-5A)を用いて測定した。高温暴露試験の結果を下記表1に示す。
ガラス板(170mm×140mm)の片面に、感圧性接着剤を介して、前記楕円偏光板を、前記光学フィルムがガラス板側になり、かつ、楕円偏光板の吸収軸がガラス板の長辺に対して45°となるように貼り合わせ、前記ガラス板のもう一方の面には、偏光板のみを、前記楕円偏光板と吸収軸が互いに直交するように感圧性接着剤を介して貼り合わせて、高温暴露試験用サンプルを作製した。この高温暴露試験用サンプルを80℃の恒温槽に12時間投入し、その後、前記サンプル平面上に設定した9ヶ所の測定点における光透過率を輝度計にて測定し、その値を下記式(i)に適用し、高温暴露後の表示ムラの値を算出した。前記測定点として、図1に示すように、高温暴露試験用サンプル1の平面上に、1〜9の9つの測定点2を設定した。また、輝度は、輝度計(TOPCON社製、商品名BM-5A)を用いて測定した。高温暴露試験の結果を下記表1に示す。
式 (i): 表示ムラ=[T2+T4+T6+T8]/4 - [T1+T3+T5+T7+T9]/5
上記式(i)中、Tx は、測定点xにおける光透過率を表し、光透過率は、下記式(ii)によって算出される。
式(ii): 光透過率=(高温暴露後のサンプルの輝度/ガラス板のみの輝度)x100
上記式(i)中、Tx は、測定点xにおける光透過率を表し、光透過率は、下記式(ii)によって算出される。
式(ii): 光透過率=(高温暴露後のサンプルの輝度/ガラス板のみの輝度)x100
(表1)
光弾性係数が大 光弾性係数 Δnxz 視野角 試験後の
きい材料の係数 計算値 実測値 特性 表示ムラ
実施例1 98 18 21 0.035 ○ 0.06
実施例2 98 18 20 0.042 ○ 0.06
実施例3 98 14 15 −(未測定) ○ 0.07
比較例1 88 88 88 0.0047 ○ 0.15
比較例2 5 5 5 0.0014 × 0.05
(x10 -8 cm 2 /N) (x10 -8 cm 2 /N)
光弾性係数が大 光弾性係数 Δnxz 視野角 試験後の
きい材料の係数 計算値 実測値 特性 表示ムラ
実施例1 98 18 21 0.035 ○ 0.06
実施例2 98 18 20 0.042 ○ 0.06
実施例3 98 14 15 −(未測定) ○ 0.07
比較例1 88 88 88 0.0047 ○ 0.15
比較例2 5 5 5 0.0014 × 0.05
(x10 -8 cm 2 /N) (x10 -8 cm 2 /N)
以上説明したとおり、本発明の複屈折性光学フィルムは、例えば、優れた光学補償と均一な光学特性の双方を兼ね備えた各種液晶表示装置に有用である。
1:高温暴露試験用サンプル
2:測定点
2:測定点
Claims (13)
- 2種類以上のポリマー材料を含む複屈折性光学フィルムであって、前記各ポリマー材料の光弾性係数Cnとその体積分率Wnとの積の総和Σ(Cn×Wn)が下記数式1を満たし、かつ、光弾性係数の値が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料を含むことを特徴とする複屈折性光学フィルム。
数式1:Σ(Cn×Wn) ≦ 30×10-8cm2/N - 前記各ポリマー材料の光弾性係数Cnとその体積分率Wnとの積の総和Σ(Cn×Wn)が下記数式2を満たす請求項1に記載の複屈折性光学フィルム。
数式2:‐25×10-8cm2/N ≦ Σ(Cn×Wn) ≦ 25×10-8cm2/N - 1種類または2種類以上の前記ポリマー材料から形成されたポリマー層が、2層以上積層した積層構造をとる請求項1または2に記載の複屈折性光学フィルム。
- 光弾性係数の値が60×10-8cm2/N 以上である前記ポリマー材料が形成するポリマー層と、前記材料以外のポリマー材料が形成するポリマー層とを含む請求項3に記載の複屈折性光学フィルム。
- 光弾性係数の値が60×10-8cm2/N 以上である前記ポリマー材料が形成するポリマー層において、前記層内の2方向の主屈折率nx、nyおよび前記層の厚み方向の屈折率nzが、下記数式3および数式4を満たす請求項4に記載の複屈折性光学フィルム。
数式3: nx ≧ ny > nz
数式4: 0.005 ≦ (nx−nz) ≦ 0.1 - 光弾性係数の値が60×10-8cm2/N 以上である前記ポリマー材料から形成されたフィルムを延伸配向して形成したポリマー層を含む請求項5に記載の複屈折性光学フィルム。
- 2種類以上の前記ポリマー材料の混合物から形成された単一ポリマー層からなる請求項1または2に記載の複屈折性光学フィルム。
- 前記ポリマー材料の少なくとも1種類が熱可塑性である請求項1から7のいずれかに記載の複屈折性光学フィルム。
- 光弾性係数の値が60×10-8cm2/N 以上である前記ポリマー材料が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも1種類である請求項1から8のいずれかに記載の複屈折性光学フィルム。
- 光弾性係数が60×10-8cm2/N 以上であるポリマー材料以外の前記ポリマー材料が、アセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル樹脂、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基を有する熱可塑性樹脂との混合物、および液晶ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種類である請求項1から9のいずれかに記載の複屈折性光学フィルム。
- 請求項1から10のいずれかに記載の複屈折性光学フィルムと、偏光子とを含む楕円偏光板。
- 請求項1から10にいずれかに記載の複屈折性光学フィルムが、液晶セルの少なくとも片側に配置された液晶表示装置。
- 請求項11に記載の楕円偏光板が、液晶セルの少なくとも片側に配置された液晶表示装置。
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