JP2008239580A - エマルション組成物並びにこれを含む食品及び化粧料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のエマルション組成物は、コエンザイムQ10、リン脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び多価アルコールを含有するエマルション組成物であって、リン脂質量/コエンザイムQ10量(質量比)が、0.01以上であることを特徴とする。また本発明の食品及び化粧料は、本発明のエマルション組成物を含むものである。
【選択図】なし
Description
また特許文献2には、重合度の異なる2種類のポリグリセリン脂肪酸エステルを併用した高濃度のコエンザイムQ10を含む水中油型エマルションが開示されている。このエマルションは、コエンザイムQ10の均質で安定な可溶化状態が良好な水溶性組成物であると記載されており、例えば85℃での耐熱試験や耐塩性試験等でその安定性を示している。
従って、本発明は、保存、特に低温での長期保存の場合でも乳化安定性に優れたコエンザイムQ10を含有するエマルション組成物と、これを含む食品及び化粧料を提供することを目的とする。
上記エマルション組成物において前記多価アルコールがグリセリンであってもよい。
本発明のエマルション組成物は、コエンザイムQ10の含有量を1質量%に調整した際の、波長700nmの光の透過率が80%以上であることが好ましい。
また本発明のエマルション組成物は、粒子径が200nm以下であることが好ましい。
本発明の食品及び化粧料は、前記エマルション組成物を含有することを特徴とするものである。
本発明の析出防止方法は、コエンザイムQ10、リン脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び多価アルコールを含有するエマルション組成物におけるコエンザイムQ10の析出を防止する方法であって、該リン脂質量/コエンザイムQ10量(質量比)を0.01以上とするものである。
本発明のエマルション組成物は、コエンザイムQ10、リン脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び多価アルコールを含有するエマルション組成物であって、リン脂質量/コエンザイムQ10量(質量比)が、0.01以上であることを特徴としている。
本発明のエマルション組成物では、リン脂質とコエンザイムQ10との配合比を所定の範囲にすることによって長期保存、特に低温時での長期保存でも乳化安定性に優れ、コエンザイムQ10の析出を効果的に抑制することができる。
コエンザイムQ10は、「ユビデカレノン」として日本薬局方に記載されている補酵素の一種であり、ユビキノン10、補酵素UQ10等と呼ばれることもある。自然界においては、酵母、鯖、鰯、小麦胚芽等の天然物に多く含まれており、熱水、含水アルコール、アセトン等の溶媒によってコエンザイムQ10を抽出することができる。工業的にも製造可能であり一般的には発酵法や合成法が知られている。本発明で使用されるコエンザイムQ10は、天然物から抽出されたものであってもよく、工業的に合成されたものであってもよい。また、コエンザイムQ10として市販品を使用してもよく、日清ファルマ社製のコエンザイムQ10や、日本油脂社製のコエンザイムQ10粉末等を挙げることができる。
本発明に用いられるリン脂質は、グリセリン骨格またはスフィンゴシン骨格と脂肪酸残基及びリン酸残基を必須構成成分とし、これに、塩基や多価アルコール等が結合したものである。
本発明で使用可能なリン脂質としては、レシチン(ホスファチジルコリン)、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ビスホスファジン酸、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等のグリセロレシチン;スフィンゴミエリン等のスフィンゴレシチン等を挙げることができ、これらの成分を含む大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物由来のものや、卵黄、牛等の動物由来のもの及び大腸菌等の微生物等由来の各種レシチンも挙げることができる。またこれらリン脂質の由来は特に限定されず、例えばダイズ油等の植物油、卵黄等の動物由来のもの等が用いられ、特に精製したものが好適である。本発明では、これらのリン脂質を、単独、又は併用して用いることができる。
これらのリン脂質の内で、入手の容易性、安全性、及び乳化性の点から、レシチン(ホスファチジルコリン)が、好ましい。
レシチンとしては、植物、動物及び微生物の生体から抽出分離された従来公知の各種のものを挙げることができる。市販品のレシチンとしては、理研ビタミン(株)製レシオンシリーズを挙げることができる。
前記酵素分解レシチンは、リゾレシチンとも呼ばれ、レシチンにホスホリパーゼA2を作用させ、β位のエステル結合を加水分化し、水酸基を増やすことにより、親水性を増大させたものである。
また、前記ヒドロキシル化は、レシチンを高濃度の過酸化水素と酢酸、酒石酸、酪酸などの有機酸と共に加熱することにより、脂肪酸部分の不飽和結合が、ヒドロキシル化される。ヒドロキシル化により、レシチンの親水性が改良される。
本発明で用いることができるこれらのリン脂質は、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
本発明においては、リン脂質の添加量は、リン脂質量/コエンザイムQ10量(質量比)が、0.01以上である必要がある。好ましくは、リン脂質量/コエンザイムQ10量の比率は、0.05〜2.0の範囲であり、より好ましくは、0.1〜1.0の範囲である。リン脂質/コエンザイムQ10量の比率が小さ過ぎる場合は、即ちリン脂質の量が少なすぎる場合は、冷蔵保存性の向上効果が不十分である。一方、リン脂質/コエンザイムQ10量の比率の上限は、コエンザイムQ10の乳化の観点からは特に限定されないが、大き過ぎる場合、即ちリン脂質の量が多すぎる場合は、コエンザイムQ10含有量が相対的に少なくなり、食品、化粧料への適用範囲を狭める懸念がある。
前記リン脂質の含有量を0.1質量以上とすることにより、エマルション組成物の乳化安定性が良好となる傾向がある。また、前記含有量を200質量%以下とすることにより、過剰なリン脂質が油性成分から離れて水中にリン脂質分散体を形成することなく、エマルション組成物の乳化安定性の点から好ましい。
(3−1)ポリグリセリン脂肪酸エステル
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、低温時でも乳化安定性が高いため、本発明のコエンザイムQ10含有エマルションにおいては、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いるものである。
HLB=7+11.7log(Mw/M0)
ここで、Mwは親水基の分子量、M0は疎水基の分子量である。
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の界面活性剤を得ることができる。
これらの中でも、より好ましくは、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル(HLB=13)、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=14)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=16)などである。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が少なすぎる場合は、微細な粒子径のエマルション組成物が得られず、乳化安定性も低くなる。また、多すぎる場合は、エマルション組成物の泡立ちが悪化する。
また、本発明のコエンザイムQ10乳化物においては、他の乳化剤を併用することもできる。併用することのできる水溶性乳化剤としては、水性媒体に溶解する乳化剤であれば、特に限定は無いが、ノニオン性乳化剤が好ましい。ノニオン性乳化剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。より好ましくは、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。また、上記の乳化剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
このような他の乳化剤の量は、微細な粒子径の乳化物を容易に得るために、エマルション組成物に対して0.05〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。0.05質量%以上とすることにより容易に乳化しやすく、20質量%以下とすることにより、泡立ちがひどくなる等の問題を少なくすることができるため好ましい。
本発明のエマルション組成物は、上記成分以外に所望の目的に応じて他の成分を添加してもよい。このような他の成分としては、カロテノイド類(アスタキサンチン、カロテン、リコピン等)、ビタミンE類(トコフェロール、トコトリエノール等)、ω−3油脂類(EPA、DHA、リノレン酸等を含む油脂)などの機能性油性成分;アスコルビン酸、エリソルビン酸、ポリフェノール類などのラジカル捕捉剤(抗酸化剤)を挙げることができる。これらの他の成分のエマルション組成物における配合量については、通常各成分の目的のために用いられる範囲の量をそのまま適用することができる。
本発明におけるエマルション組成物の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、a)水性媒体(水等)に、界面活性剤を溶解させて、水相を得、b)油性成分(コエンザイムQ10等)及びリン脂質を混合・溶解して、油相を得、c)攪拌下で水相と油相を混合して、乳化分散を行い、エマルション組成物を得る、ステップからなる製造方法が好ましい。
前記製造方法における油相、水相に含有される成分は、前述の本発明のエマルション組成物の構成成分と同様であり、好ましい例及び好ましい量も同様であり、好ましい組合せがより好ましい。
油相/水相比率を0.1/99.9以上とすることにより、有効成分が低くならないためエマルション組成物の実用上の問題が生じない傾向となり好ましい。また、油相/水相比率を50/50以下とすることにより、界面活性剤濃度が薄くなることがなく、エマルション組成物の乳化安定性が悪化しない傾向となり好ましい。
具体的には、剪断作用を利用する通常の乳化装置(例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等)を用いて乳化するという1ステップの乳化操作に加えて、高圧ホモジナイザー等を通して乳化する等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物を更に均一な微粒子の液滴に揃えることができる。また、更に均一な粒子径の液滴とする目的で複数回行ってもよい。
また、操作の自由度は低いが、圧力を高める機構が作りやすいため、超高圧を必要とする場合、チャンバー型高圧ホモジナイザーも好適に用いることができる。
前記均質バルブ型高圧ホモジナイザーとしては、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等が挙げられる。
また、乳化分散された組成物である乳化液はチャンバー通過直後30秒以内、好ましくは3秒以内に何らかの冷却器を通して冷却することが、分散粒子の粒子径保持の観点から好ましい。
特に、本発明では、微細なエマルション粒子が均一に分散したエマルション組成物を得ることができる。
本発明のエマルション組成物の粒子径は、粒子安定性及び透明性の観点から、200nm以下であることが好ましく、透明性の観点から、より好ましくは130nm以下、最も好ましくは90nm以下である。
本発明における粒径範囲および測定の容易さから、本発明におけるエマルション粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
本発明における粒子径は、前記動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)を用いて測定した値とし、具体的には、以下のよう計測した値を採用する。
前記粒子径の測定方法は、油性成分の濃度が0.1〜1質量%の範囲内になるように純水で希釈を行い、石英セルを用いて測定を行う。粒子径は、試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を設定した時のメジアン径として求めることができる。
本発明における粒径は、前記動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて25℃で測定した値を採用する。
好ましい透明性とは、上記評価法により測定した透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることが特に好ましい。ここで、透過率が80%以上であれば、エマルション組成物の乳化粒子が充分に微細であり、粒子の安定性を良好なものにすることができる。
ここで本発明における「低温」とは、一般にエマルション組成物を冷蔵保存する際に適用される温度をいい、好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下であって、好ましくは0℃以上をいう。
即ち、本発明のコエンザイムQ10の析出防止方法は、コエンザイムQ10、リン脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び多価アルコールを含有する上記エマルション組成物においてコエンザイムQ10の析出を防止する方法であって、リン脂質量/コエンザイムQ10量(質量比)を0.01以上とすることを特徴とするものである。
本析出防止方法では、エマルション組成物について記述した事項がそのまま適用可能である。
また、本析出防止方法では、低温保存時にコエンザイムQ10を含有するエマルション組成物にリン脂質が前記所定量で存在していればよい。特に、低温保存を、例えば7日間以上、好ましくは30日間以上行う際に、本析出防止方法が適用されることが有用である。これにより、低温保存の前後にわたって安定したエマルション組成物を提供することができる。
析出の有無は、通常析出の有無を検出する際に用いられる方法に従って評価することができ、例えば目視によるネックリング・濁り・沈殿、粒子径測定、透過率測定等によって評価することができる。
本発明のエマルション組成物は、このようにコエンザイムQ10を含有すると共に保存安定性に優れているので、食品、化粧料に適用することが好ましい。
即ち、本発明の食品、化粧料は、それぞれ本発明の上記エマルション組成物を含むものである。
また、前記本発明の食品及び化粧料は、本発明のエマルション組成物と、所望の目的を達成するための添加可能な任意の成分とを、常法により混合等して、得ることができる。
下記の成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、水相組成物を得た。
デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12) 150.0g
グリセリン 450.0g
純水 290.0g
コエンザイムQ10 100.0g
レシチン(大豆由来) 10.0g
その後、平均孔径1μmのミクロフィルターでろ過して、コエンザイムQ10含有エマルション組成物QE−01を調製した。
また、組成を下記表1に従った以外は全て同様にして、コエンザイムQ10含有エマルション組成物QE−02〜08を得た。
得られたコエンザイムQ10含有エマルション組成物(QE-01〜08)10.0gを90.0gの純水に添加して、スターラーを用いて、10分間攪拌を行った。得られたエマルション希釈液の粒子径を、動的光散乱粒径測定装置FPAR-1000(大塚電子株式会社製)を使用して測定した。また、上記の希釈液(コエンザイムQ10含有率は1質量%)の波長700nmにおける透過率の測定を、光路長10mmの石英セルを使用して、紫外可視分光光度計UV−2450(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。(対照セルには純水を使用した。)
また、コエンザイムQ10含有エマルション組成物(QE-01〜08)を密封栓付きのガラスビンに入れ、4℃恒温槽中に1ヶ月間放置後、室温に戻して、上記と同様にして粒子径および透過率の測定を行った。
結果を表1に示す。
<試作例1>
飲料
(1)QE−01 3g
(2)果糖ぶどう糖液糖 120g
(3)ビタミンC(L-アスコルビン酸) 10g
(4)クエン酸 10g
(6)オレンジ香料 3g
(7)水 854g
合計 1000g
化粧水
(1)1,3−ブタンジオール 60g
(2)グリセリン 40g
(3)オレイルアルコール 1g
(4)ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル 5g
(5)ポリオキシエチレン(15)ラウリルアルコールエーテル 5g
(6)エタノール 100g
(7)メチルパラベン 2g
(8)L−アスコルビン酸Na 10g
(9)QE−01 1g
(10)精製水 776g
合計 1000g
従って、本発明にかかるエマルション組成物は、保存、特に低温での長期保存時であっても優れた乳化安定性を示すものである。
Claims (9)
- コエンザイムQ10、リン脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び多価アルコールを含有するエマルション組成物であって、リン脂質量/コエンザイムQ10量(質量比)が、0.01以上であることを特徴とするエマルション組成物。
- 前記コエンザイムQ10が、エマルション全体に対して0.1質量〜30質量%である請求項1記載のエマルション組成物。
- 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが10以上である請求項1又は2に記載のエマルション組成物。
- 前記多価アルコールがグリセリンである請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のエマルション組成物。
- コエンザイムQ10の含有量を1質量%に調整した際の、波長700nmの光の透過率が80%以上である請求項1〜請求項4のいずれ1項記載のエマルション組成物。
- 粒子径が200nm以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項記載のエマルション組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載のエマルション組成物を含有する食品。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載のエマルション組成物を含有する化粧料。
- コエンザイムQ10、リン脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び多価アルコールを含有するエマルション組成物におけるコエンザイムQ10の析出を防止する方法であって、リン脂質量/コエンザイムQ10量(質量比)を0.01以上とする当該析出防止方法。
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