JP2008198714A - 多結晶シリコン膜の作製方法及び多結晶シリコン膜付き基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】低純度シリコンを用いて高純度の多結晶シリコン膜を基板上に形成する。
【解決手段】まず、アルミニウム膜12を石英基板10上に形成し、次いで低純度シリコンを蒸発源として非晶質シリコン膜14をアルミニウム膜12の上に形成することにより、積層基板16を得る。続いて、積層基板16を525℃で19時間加熱することにより、アルミニウム膜12と非晶質シリコン膜14とが固溶・拡散して非晶質シリコン膜14中のシリコンが石英基板10上に結晶化しつつアルミニウム膜12が該結晶化したシリコンより表面側に移動するようにする。このとき、アルミニウムは、低純度シリコンに含まれる不純物(鉄など)の固溶限界濃度がシリコンよりも大きい金属であるため、不純物はアルミニウム膜12に集積され、多結晶シリコン膜18は高純度となる。
【選択図】図3
【解決手段】まず、アルミニウム膜12を石英基板10上に形成し、次いで低純度シリコンを蒸発源として非晶質シリコン膜14をアルミニウム膜12の上に形成することにより、積層基板16を得る。続いて、積層基板16を525℃で19時間加熱することにより、アルミニウム膜12と非晶質シリコン膜14とが固溶・拡散して非晶質シリコン膜14中のシリコンが石英基板10上に結晶化しつつアルミニウム膜12が該結晶化したシリコンより表面側に移動するようにする。このとき、アルミニウムは、低純度シリコンに含まれる不純物(鉄など)の固溶限界濃度がシリコンよりも大きい金属であるため、不純物はアルミニウム膜12に集積され、多結晶シリコン膜18は高純度となる。
【選択図】図3
Description
本発明は、多結晶シリコン膜の作製方法及びその作製方法によって多結晶シリコン膜が作製された基板に関する。
現在の太陽電池は、多結晶シリコン太陽電池が主流である。こうした多結晶シリコン太陽電池を作製するには基板上に多結晶シリコンを成膜することが必要になるが、そのような成膜技術はこれまでに種々開発されている。例えば、非特許文献1には、アルミニウム支援結晶化と呼ばれる手法が報告されている。この手法では、まず、基板上にアルミニウム薄膜と非晶質シリコン膜とをこの順に積層した積層基板を得る。続いて、この積層基板を500℃程度の温度に加熱する。すると、非晶質シリコン膜へのアルミニウムの拡散とアルミニウム薄膜中へのシリコンの固溶が起こる。この拡散・固溶が引き金となって、シリコン結晶核が発生する。結晶シリコンのギブスの自由エネルギは非晶質シリコンのギブスの自由エネルギより小さいため、非晶質シリコン膜中のシリコン原子はその結晶核を中心に結晶化し、結晶シリコンが成長する。アルミニウムの結晶シリコン中への拡散係数は、非晶質シリコン中への拡散係数より小さいため、最終的には基板上に多結晶シリコン膜が成長し、その上面にはアルミニウム薄膜が残留する。このようにして、基板上に多結晶シリコン膜を形成することができる。
Applied Physics Letters vol.73, No.22(1998)pp.3214-3216
Applied Physics Letters vol.73, No.22(1998)pp.3214-3216
ところで、現状では、太陽電池用シリコンは、主に大規模集積回路に用いられる半導体用シリコンの規格外品の再利用で賄っているが、太陽電池の普及が進むと、このような再利用では太陽電池用シリコンを賄いきれないことが懸念されている。ここで、半導体用シリコンの規格外品は、例えば純度2N(99%)程度の低純度シリコンを高純度化して例えば純度11Nの高純度シリコンを生成する際の規格外品であるから、規格外といっても低純度シリコンに比べるとかなり純度は高い。このように純度の高いシリコンを太陽電池用シリコンとしているため、太陽電池用シリコンを賄いきれないおそれが生じるのである。これに対して、太陽電池用シリコンとして、低純度シリコンをそのまま利用できるのであれば、低純度シリコンの生産量は非常に多いことから、賄いきれなくなるという事態は生じなくなる。このため、太陽電池用シリコンとして、低純度シリコンを利用できる手法の開発が望まれている。
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、低純度シリコンを用いて高純度の多結晶シリコン膜を基板上に形成することが可能な多結晶シリコン膜の製造方法を提供することを目的の一つとする。また、こうした製造方法によって多結晶シリコン膜が形成された基板を提供することを目的の一つとする。
上述した目的を解決するために、本発明者は、上述した非特許文献1に記載されたアルミニウム支援結晶化と呼ばれる手法を、低純度シリコンの高純度化に適用することを考えた。すなわち、アルミニウム膜を形成した基板上に、純度2N程度の低純度シリコンを蒸発源として非晶質シリコン膜を蒸着することにより積層基板とし、この積層基板を500℃程度に加熱したところ、最終的には基板上に高純度の多結晶シリコン膜が成長することを確認し、本発明を完成するに至った。
本発明の多結晶シリコン膜の作製方法は、
(a)シリコンと共晶反応すると共にシリコンに電気伝導性を付与する所定の金属を主成分とする金属膜を基板上に形成し、次いで低純度シリコンを蒸発源として非晶質シリコン膜を前記金属膜の上に形成することにより、積層基板を得る工程と、
(b)前記工程(a)のあと、前記金属膜と前記非晶質シリコン膜とが固溶・拡散して前記非晶質シリコン膜中のシリコンが前記基板上に結晶化しつつ前記金属膜が該結晶化したシリコンより表面側に移動するように、前記所定の金属とシリコンとの共晶点温度未満の温度に前記積層基板を加熱する工程と、
を含み、
前記所定の金属は、該所定の金属における前記低純度シリコンに含まれる不純物の固溶限界濃度がシリコンにおける前記不純物の固溶限界濃度よりも大きい金属、とするものである。
(a)シリコンと共晶反応すると共にシリコンに電気伝導性を付与する所定の金属を主成分とする金属膜を基板上に形成し、次いで低純度シリコンを蒸発源として非晶質シリコン膜を前記金属膜の上に形成することにより、積層基板を得る工程と、
(b)前記工程(a)のあと、前記金属膜と前記非晶質シリコン膜とが固溶・拡散して前記非晶質シリコン膜中のシリコンが前記基板上に結晶化しつつ前記金属膜が該結晶化したシリコンより表面側に移動するように、前記所定の金属とシリコンとの共晶点温度未満の温度に前記積層基板を加熱する工程と、
を含み、
前記所定の金属は、該所定の金属における前記低純度シリコンに含まれる不純物の固溶限界濃度がシリコンにおける前記不純物の固溶限界濃度よりも大きい金属、とするものである。
本発明の多結晶シリコン膜付き基板は、上述した本発明の多結晶シリコン膜の作製方法によって多結晶シリコン膜が作製された基板である。
本発明の多結晶シリコン膜の作製方法によれば、例えば純度2N程度の低純度シリコンを蒸発源として、太陽電池や薄膜トランジスタなどに利用可能な高純度の多結晶シリコン膜を得ることができる。特に、低純度シリコンには、シリコンにとって最も悪質な元素といわれている鉄が不純物として含まれることが多いが、得られた多結晶シリコン膜中の鉄濃度は極めて小さくなるため(例えば1ppm程度)、太陽電池や薄膜トランジスタなどに利用したとしても支障のないものとすることができる。
また、こうして得られる多結晶シリコンの平均結晶粒径は10μm以上であり、十分な太陽電池の変換効率を得ることができる。結晶粒径と太陽電池の変換効率との関係は、例えば、小長井誠 編著「薄膜太陽電池の基礎と応用」(オーム社,2001年)p143の図4−10に掲載されている。これによれば、結晶粒径が0.1μmまでは粒径とともに変換効率が急激に増加し、0.1μmから1μmの間では漸増、1μm以上では効率の変化はほとんどなくなる。したがって、多結晶シリコン太陽電池では最低でも結晶粒径は1μm以上必要と考えられ、10μmもあれば十分な大きさといえる。
本発明で使用する基板としては、金属膜や非晶質シリコン膜を支えることができ、且つ所定の金属とシリコンとが相互拡散する温度に十分耐える材質であればよく、例えば、ガラス、石英、ステンレス板などが挙げられる。
本発明で使用する所定の金属としては、シリコンと共晶反応すると共にシリコンに電気伝導性を付与し、且つ、その所定の金属における低純度シリコンに含まれる不純物の固溶限界濃度がシリコンにおけるその不純物の固溶限界濃度よりも大きいものであればよく、例えばホウ素やアルミニウム、ガリウムなどのようなp型半導体のドーパントとして用いられる金属が挙げられる。このうち、ホウ素やアルミニウムが好ましく、アルミニウムがより好ましい。アルミニウムがより好ましい理由は、他の原子に比べてシリコンとの共晶点温度が低いことからシリコン原子と相互拡散する温度を低く設定することができ、その結果、製造時に必要なエネルギが少なくてすみ、本発明に用いることのできる基板の選択肢が広がるからである。また、表1に示すように、アルミニウムは、低純度シリコンに含まれる不純物の固溶限界濃度がシリコンと比べて1〜4桁大きく、非晶質シリコン膜の不純物が工程(b)においてアルミニウム層中に偏析しやすいからである。なお、表1は、十分な生産量のある低純度シリコンに含まれる主な不純物の、シリコン及びアルミニウム中における固溶限界濃度を示すものであり、志村史夫著「半導体シリコン結晶工学」(丸善,1993)から引用したものである。
本発明で使用する低純度シリコンとしては、例えば純度2N(99%)程度のシリコンが挙げられる。こうした低純度シリコンには、シリコン中の電気担体を消滅させたり電気担体の移動を妨げる原子(表1参照)が不純物として含まれている。このような原子としては、例えば、鉄、ニッケル、クロム、銅、マンガンなどの金属原子がある。これらの原子は、シリコン中の電気担体をトラップして消滅させたり、電気担体の移動を妨げたり、シリコンの電気担体である電子と正孔との再結合を仲介して電気担体を消滅させたりすることがある。これらの中で鉄がシリコンにとって最も悪質といわれている。鉄がシリコン中に存在すると、シリコンの禁制帯中に準位を作り、電気担体をトラップして消滅させたり、また該禁制帯中の準位は該シリコン中の電子と正孔との再結合を仲介し消滅させたりすることがある。あるいは、鉄はシリコン中に含まれる酸素あるいはホウ素と結合して電気担体をトラップして消滅させたり、電気担体の移動を妨げる複合結晶欠陥を生じせしめたりすることがある。このようなことから、鉄は高純度化の指標とされている。
本発明で金属膜や非晶質シリコン膜を形成するには、例えば蒸着法を用いればよい。蒸着法としては、真空蒸着法やスパッタリング、イオンプレーティングなどの物理蒸着法のほか、熱CVDやプラズマCVD、光CVDなどの化学蒸着法がよく知られているが、物理蒸着法が好ましい。物理蒸着法は、化学蒸着法に比べるとコストが低いことが多く、工業化に適しているからである。
本発明で工程(b)における加熱温度は、金属膜と非晶質シリコン膜とが固溶・拡散して非晶質シリコン膜中のシリコンが基板上に結晶化しつつ金属膜が該結晶化したシリコンより表面側に移動するような温度であればよい。こうした温度は、金属膜の種類つまり所定の金属がどのような金属かによって異なる。例えば、アルミニウムの場合、400℃から570℃の範囲の温度が好ましく、450℃から550℃の範囲がより好ましい。400℃より低いと、金属膜を構成するアルミニウム原子と非晶質シリコン膜を構成するシリコン原子との相互拡散が起こりにくく、非晶質シリコン膜中に結晶核が発生しにくいため多結晶シリコン膜が成長しにくい。また、シリコン中の不純物(鉄、ニッケル、クロム、銅、マンガン等)がアルミニウム中に固溶しにくい。一方、570℃を超えると、アルミニウム膜が基板からはがれやすくなる。また、ホウ素の場合、600℃から1000℃の範囲の温度が好ましく、700℃から800℃の範囲がより好ましい。600℃より低いと、金属膜を構成するホウ素原子と非晶質シリコン膜を構成するシリコン原子との相互拡散が起こりにくく、非晶質シリコン膜中に結晶核が発生しにくいため多結晶シリコン膜が成長しにくい。また、シリコン中の不純物がホウ素中に固溶しにくい。一方、1000℃を超えると、ホウ素とシリコンとの共晶反応が急激に起こり、結晶核の数密度が多くなりすぎるため結晶粒の成長が妨げられる。また、1000℃を超える温度に耐えられる基板材料が制限される。加熱時間は、基板上に多結晶シリコン膜とアルミニウム膜とがこの順で配置されるようになるまでの時間とすればよく、例えば加熱時間が1時間ごとに異なるサンプルを作製しそのサンプルの基板上の膜の状態を調べることにより適切な加熱時間を決定するようにしてもよい。
工程(b)におけるメカニズムは、以下のように推察される。すなわち、工程(b)では、所定の金属の非晶質シリコン膜への拡散と金属膜中へのシリコンへの固溶が起こる。この拡散・固溶が引き金となって、シリコン結晶核が発生する。結晶シリコンのギブスの自由エネルギは非晶質シリコンのギブスの自由エネルギより小さいため、非晶質シリコン膜中のシリコン原子はその結晶核を中心に結晶化し、結晶シリコンが成長する。また、非晶質シリコン膜に含まれる不純物は、所定の金属中上における固溶限界濃度の方がシリコン中における固溶限界濃度より大きい。このため、非晶質シリコン膜の不純物は、拡散・固溶が起こる過程で金属膜に偏析する。このため、工程(b)によって形成された多結晶シリコン膜中の不純物濃度は、半導体デバイスの電気特性を損なわない濃度まで著しく減少する。
本発明の多結晶シリコン膜の作製方法において、工程(b)のあと、表面側に移動した前記金属膜を除去する工程を加えてもよい。こうすることにより、表層に高純度の多結晶シリコン膜を有する基板が得られる。ここで、膜を除去する方法としては、エッチングや研磨などの周知の技術を用いればよい。
本発明の多結晶シリコン膜の作製方法によって得られる多結晶シリコン膜の結晶粒径は10μm以上となる。特に、金属膜としてアルミニウム膜を用いた場合は、多結晶シリコン膜の結晶粒径を100μmにすることができる。
[実施例1]
本発明を実施例に基づき詳細に説明する。図1は積層基板の製造工程図であり、図2は非晶質シリコン膜の鉄原子の濃度を測定したときのグラフ、図3は多結晶シリコン膜付き基板の製造工程図、図4は多結晶シリコン膜の鉄原子の濃度を測定したときのグラフである。
本発明を実施例に基づき詳細に説明する。図1は積層基板の製造工程図であり、図2は非晶質シリコン膜の鉄原子の濃度を測定したときのグラフ、図3は多結晶シリコン膜付き基板の製造工程図、図4は多結晶シリコン膜の鉄原子の濃度を測定したときのグラフである。
図1に示すように、石英基板10の上に厚さ0.3μmのアルミニウム膜12を真空蒸着法等公知の方法で形成した。続いて、鉄(シリコン中の電気担体を消滅させたり電気担体の移動を妨げる原子)を53ppm含む低純度シリコンを蒸発源として、真空蒸着法で、該アルミニウム膜12の上に厚さ0.3μmの非晶質シリコン膜14を形成した。こうすることにより、石英基板10の上にアルミニウム膜12と非晶質シリコン膜14とがこの順に積層された積層基板16を得た。蒸着後の非晶質シリコン膜14には、図2に示すように、約10ppmの鉄原子を含むことが二次イオン質量分析法(SIMS)で計測された。なお、二次イオン質量分析は、四重極型二次イオン質量分析装置(アルバックファイ社製、DYNAMIC−SIMS形式6650)を用いて行った。図2の横軸は非晶質シリコン膜14の表面からの深さを表し、縦軸は1cm3あたりの鉄原子の数を表す。1cm3あたりのシリコン原子の数は5×1022個であることがわかっているから、これと図2の非晶質シリコン膜14に含まれる鉄原子の数とに基づいて鉄の濃度を求めると、約10ppmとなる。なお、このように蒸発源の低純度シリコンに比べて蒸着後の非晶質シリコン膜14の鉄濃度が減少したのは、シリコンと鉄の物性(蒸発温度や蒸気圧など)の違いによると推察される。
続いて、図3に示すように、積層基板16を10%の水素を含む窒素雰囲気中で525℃で19時間処理した。この結果、表面にアルミニウム膜12が移動し、該アルミニウム膜12の下部には多結晶シリコン膜18が成長した。その後、鉄原子が集積されたアルミニウム膜12をエッチングや研磨といった公知の方法で除去することにより、高純度でしかも電気伝導性がアルミニウムによって付与されてp型半導体になっている多結晶シリコン膜18を石英基板10上に作製することができた。これを多結晶シリコン膜付き基板20という。ここで、高純度とは、鉄原子の濃度が太陽電池用シリコンとして使用可能なレベル(1ppm程度)になっていることをいう。この多結晶シリコン膜18中の鉄原子の濃度を先ほどと同様の二次イオン質量分析法で測定したところ、図4に示すように、概ね1ppmであり、高純度になっていることを確認した。また、多結晶シリコン膜18の光学顕微鏡写真を図5に示す。図5では、結晶粒を観察しやすくするためにSeccoエッチングが施されている。ここで、Seccoエッチングとは、結晶粒界を観察する公知の手法であり、重クロム酸カリウムを含むエッチング液でエッチングすることをいう。図5から明らかなように、平均結晶粒径は200μmを超えている。
ここで、多結晶シリコン膜18の鉄原子の濃度が大幅に低下したメカニズムについて考察する。アルミニウム支援結晶化法(非特許文献1参照)では、アルミニウムと非晶質シリコンとが相互拡散し、それが引き金となって、混合層中にシリコンの結晶核が生成すると考えられる。具体的には、結晶シリコンのギブスの自由エネルギは非晶質シリコンのギブスの自由エネルギより低いため、非晶質シリコン中のシリコン原子はその結晶核の周りに結晶として析出し、結晶粒が成長すると考えられる。また、アルミニウムの結晶シリコン中への拡散係数は、非晶質シリコン中への拡散係数より小さいため、最終的には石英基板10の直上に多結晶シリコン膜18が成長し、その多結晶シリコン膜18の上面にアルミニウム膜12が残留すると考えられる。ところで、シリコンに含まれる鉄原子は、アルミニウム中の固溶限界濃度の方がシリコン中での固溶限界濃度よりも大きい(表1参照)。このため、アルミニウムと非晶質シリコンとが相互拡散した段階では、鉄原子はシリコン結晶粒中に存在することなくアルミニウム中に固溶しており、最終的には鉄原子は多結晶シリコン膜上に残留するアルミニウム膜の中に集積すると考えられる。その結果、多結晶シリコン膜中においては、鉄原子の濃度は、半導体装置の特性を損なわない濃度つまり1ppm程度にまで減少した状態になったと推察される。
なお、石英基板10の直上に成長した多結晶シリコン膜18中にはアルミニウム原子が存在するが、アルミニウム原子はシリコンに対して電気伝導(正孔)を付与できる物質であるため、得られる多結晶シリコン膜18はp型半導体となる。
[比較例1]
実施例1の低純度シリコンの代わりに、特開平11−60228号公報に記載された方法により純度10N(99.99999999%)のシリコンを作製しこれを蒸発源として用いた以外は、実施例1と同様にして多結晶シリコン膜を作製した。
実施例1の低純度シリコンの代わりに、特開平11−60228号公報に記載された方法により純度10N(99.99999999%)のシリコンを作製しこれを蒸発源として用いた以外は、実施例1と同様にして多結晶シリコン膜を作製した。
[比較例2,3]
市販されている単結晶シリコンウェハを比較例2とした。また、実施例1で積層基板16の加熱時間を短くすることにより、鉄を5ppm含む多結晶シリコン膜を作製し、これを比較例3とした。
市販されている単結晶シリコンウェハを比較例2とした。また、実施例1で積層基板16の加熱時間を短くすることにより、鉄を5ppm含む多結晶シリコン膜を作製し、これを比較例3とした。
[電気的特性]
実施例1及び比較例1〜3のシリコンの電気的特性を調べた。その結果を表2に示す。なお、電気担体の濃度や移動度は、ホール測定装置(メーカ名:東陽テクニカ、名称:比抵抗AC/DCホール測定システム、型式:Resi Test8300)を用いたホール測定の結果に基づいて求めた。
実施例1及び比較例1〜3のシリコンの電気的特性を調べた。その結果を表2に示す。なお、電気担体の濃度や移動度は、ホール測定装置(メーカ名:東陽テクニカ、名称:比抵抗AC/DCホール測定システム、型式:Resi Test8300)を用いたホール測定の結果に基づいて求めた。
表2から明らかなように、実施例1の多結晶シリコン膜の抵抗率、電気担体の濃度及び電気担体の移動度は、蒸発源として高純度シリコンを用いて作製した多結晶シリコン膜(比較例1)や、市販の単結晶シリコンウエハ(比較例2)に匹敵することがわかった。このことから、実施例1のように525℃という比較的低温の反応条件でしかも積層基板を加熱するという簡便な手法により、太陽電池用シリコンとして十分使用可能な多結晶シリコン膜を提供できることが明らかとなった。なお、比較例3のように鉄原子を多く含む多結晶シリコン膜では、実施例1に比べて抵抗率が高く、電気担体の濃度や移動度が低いことから、太陽電池用シリコンとして使用するのは困難であることを確認した。
なお、本発明は上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
本発明は、太陽電池などの電池産業や半導体デバイスなどの半導体産業に利用することができる。
10 石英基板、12 アルミニウム膜、14 非晶質シリコン膜、16 積層基板、18 多結晶シリコン膜、20 多結晶シリコン膜付き基板。
Claims (7)
- (a)シリコンと共晶反応すると共にシリコンに電気伝導性を付与する所定の金属を主成分とする金属膜を基板上に形成し、次いで低純度シリコンを蒸発源として非晶質シリコン膜を前記金属膜の上に形成することにより、積層基板を得る工程と、
(b)前記工程(a)のあと、前記金属膜と前記非晶質シリコン膜とが固溶・拡散して前記非晶質シリコン膜中のシリコンが前記基板上に結晶化しつつ前記金属膜が該結晶化したシリコンより表面側に移動するように、前記所定の金属とシリコンとの共晶点温度未満の温度に前記積層基板を加熱する工程と、
を含み、
前記所定の金属は、該所定の金属における前記低純度シリコンに含まれる不純物の固溶限界濃度がシリコンにおける前記不純物の固溶限界濃度よりも大きい金属である、
多結晶シリコン膜の作製方法。 - 請求項1に記載の多結晶シリコン膜の作製方法であって、
(c)前記工程(b)のあと、表面側に移動した前記金属膜を除去する工程、
を含む多結晶シリコン膜の作製方法。 - 前記所定の金属は、アルミニウム又はホウ素である、
請求項1又は2に記載の多結晶シリコン膜の作製方法。 - 前記不純物は、シリコン中の電気担体を消滅させるか又は該電気担体の移動を妨げる原子である、
請求項1〜3のいずれかに記載の多結晶シリコン膜の作製方法。 - 前記不純物は、鉄、ニッケル、クロム、銅及びマンガンからなる群の少なくとも1つである、
請求項4に記載の多結晶シリコン膜の作製方法。 - 前記工程(a)では、前記金属膜を物理蒸着により形成し、前記非晶質膜も物理蒸着により形成する、
請求項1〜5のいずれかに記載の多結晶シリコン膜の作製方法。 - 請求項1〜6のいずれかに記載の多結晶シリコン膜の作製方法によって多結晶シリコン膜が作製された基板。
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JP2011009245A (ja) * | 2009-05-26 | 2011-01-13 | Kaneka Corp | 光電変換装置 |
JP2011216759A (ja) * | 2010-04-01 | 2011-10-27 | Seiko Epson Corp | 結晶化シリコン層の製造方法、半導体装置の製造方法、電気光学装置の製造方法、半導体装置、電気光学装置および投射型表示装置 |
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