JP2008197438A - 信号処理装置、信号処理方法 - Google Patents

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文孝 西尾
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Tetsunori Itabashi
徹徳 板橋
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Abstract

【課題】デジタル構成によるノイズキャンセリングシステムの実用化を図る。
【解決手段】マイクロフォンにより外部音を収音して得た信号を、ΔΣ変調器とデシメーションフィルタから成るA/Dコンバータによりデジタル信号に変換してDSP内のノイズキャンセル用フィルタに入力させ、ここでノイズキャンセル用信号を生成して、インターポレーションフィルタを備えるD/Aコンバータによりアナログ信号に変換してドライバから出力させる、というノイズキャンセリングシステムの系において、上記デシメーションフィルタ、インターポレーションフィルタとについて最小位相推移型FIRにより構成する。
【選択図】図5

Description

本発明は、音声信号を対象として所定目的に応じた信号処理を実行するようにされた、信号処理装置と、その方法に関するものである。
ヘッドフォン装置により楽曲などのコンテンツの音声を再生しているときに聴こえてくる外部のノイズをアクティブにキャンセルするようにされた、ヘッドフォン装置対応のいわゆるノイズキャンセリングシステムが知られ、また、実用化されるようになってきている。そして、このようなノイズキャンセリングシステムとしては、大別してフィードバック方式とフィードフォワード方式との2つの方式が知られている。
例えば、特許文献1には、ユーザの耳に装着される音響管内においてイヤホンユニットの近傍に設けたマイクロフォンユニットにより収音した音響管内部の騒音(ノイズ)を位相反転させた音声信号を生成し、これをイヤホンユニット3から音として出力させることにより、外部ノイズを低減させるようにした構成、つまり、フィードバック方式に対応したノイズキャンセリングシステムの構成が記載されている。
また、特許文献2には、その基本構成として、ヘッドフォン装置外筐に取り付けたマイクロフォンにより収音して得た音声信号について所要の伝達関数による特性を与えてヘッドフォン装置から出力させるようにした構成、つまりフィードフォワード方式に対応したノイズキャンセリングシステムの構成が記載されている。
特開平3−214892号公報 特開平3−96199号公報
ところで、上記したフィードバック方式とフィードフォワード方式との何れについてもいえることであるが、現在、民生機器におけるヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムとして実用化されているものは、アナログ回路により構成されたものとなっている。
ノイズキャンセリングシステムのノイズキャンセル効果が有効に得られるようにするためには、例えばマイクロフォンにより収音された外部の不要音と、この不要音のキャンセルのためにドライバから出力される音との位相差を一定以内に納めることが必要である。換言すれば、ノイズキャンセリングシステムにおいて、外部の不要音を入力してから、これに応じたキャンセル音が出力されるまでの速度(応答速度)が一定以内であることが要求される。
しかしながら、ノイズキャンセリングシステムをデジタル回路により構成しようとすると、その入力と出力にA/Dコンバータ、D/Aコンバータを備えることになる。現状で広く用いられるA/Dコンバータ、D/Aコンバータの処理時間では、ノイズキャンセリングシステムとしての採用を考えた場合には遅延が相当に大きく、有効なノイズキャンセル効果を得ることが難しい。例えば、軍事用、産業用などの分野では、サンプリング周波数が相当に高いうえで遅延の少ないA/Dコンバータ、D/Aコンバータが存在するが、これらは著しく高価であり、民生機器で採用することは現実的ではない。現状にあってノイズキャンセリングシステムをデジタル回路により構成せずに、アナログ回路により構成しているのは、このような理由による。
とはいえ、アナログ回路をデジタル回路に置き換えることによっては、例えば物理的な部品素子の定数の変更、交換などを行うことなく、特性や動作モードの変更、切り換えを行うことが容易化され、また、ノイズキャンセリングシステムのようなオーディオに関連したシステムであれば、さらなる音質の向上も期待できるなど、利点は多い。
そこで、本願発明としては、例えば民生におけるヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムなどとして、デジタル回路により形成したものでありながら、実用上、充分なノイズキャンセル効果が得られるようにすることを目的とする。
そこで本発明は上記した課題を考慮して、信号処理装置として次のように構成する。
つまり、入力したアナログ信号についてデルタシグマ変調処理を実行して所定のサンプリング周波数による2ビット以上の所定の量子化ビットによる第1の形式のデジタル信号に変換したうえで、この第1の形式のデジタル信号からパルスコード変調信号としての第2の形式のデジタル信号に変換して出力するデシメーションフィルタとを有するアナログ−デジタル変換手段と、
上記アナログ−デジタル変換手段から出力された後のデジタル信号を入力して、所定のキャンセル対象音をキャンセルするための所定の信号特性を与えて出力するようにされたキャンセル信号処理手段と、このキャンセル信号処理手段から出力された第2の形式によるデジタル信号を入力して、デルタシグマ変調処理によりアナログ信号に変換するデジタル−アナログ変換処理を実行するもので、このデジタル−アナログ変換処理のために、入力された第2の形式によるデジタル信号について、第2の形式よりも高い所定のサンプリング周波数と、第2の形式よりも小さな量子化ビット数による第3の形式のデジタル信号に変換する処理を実行するインターポレーションフィルタを含むようにされたデジタル−アナログ変換手段とを備え、デシメーションフィルタとインターポレーションフィルタの少なくとも何れか一方について、直線位相型の有限インパルス応答システムよりも信号遅延が少ないとされる所定形式のデジタルフィルタにより形成することとした。
上記構成によっては、所定のキャンセル対象音をキャンセル(低減、減衰)するシステムの信号処理系について、キャンセル対象音の成分を含むアナログ信号をデルタシグマ変調によりデジタル信号に変換したうえで、これを、デシメーションフィルタによりパルスコード変調(PCM:Pulse Code Modulation)信号に変換して出力するようにされたアナログ−デジタル変換手段と、このアナログ−デジタル変換手段からのデジタル信号を入力して、PCM信号形式に対応するデジタル信号処理によってキャンセル対象音をキャンセルするための信号特性を与えるようにされたキャンセル信号処理手段と、このキャンセル信号処理手段から出力された信号を、ΔΣ変調を使用してアナログ信号に変換するデジタル−アナログ変換手段とにより形成するものとされる。
そのうえで、上記のデシメーションフィルタと、デジタル−アナログ変換手段が備えるものとされるインターポレーションフィルタについては、直線位相型の有限インパルス応答(FIR:Finite Impulse Response)システムよりも、入出力間の信号遅延が少ないとされる形式のデジタルフィルタにより形成する。
この構成により、アナログ−デジタル変換手段とデジタル−アナログ変換手段における信号処理遅延を短縮することが可能になる。
そして、上記のようにしてアナログ−デジタル変換の部位と、デジタル−アナログ変換の部位とでの信号処理遅延が短縮されることにより、デジタル方式の下で、キャンセル対象音をキャンセルするシステム(ノイズキャンセリングシステム)の信号処理系として要求される応答速度を満たすことが可能になる。つまり、デジタル回路方式によるノイズキャンセリングシステムを容易に実現することが可能となる。そして、デジタルによるノイズキャンセリングシステムが実現されることで、アナログ回路によるものでは困難であった機能の実装であるとか、高音質化などが図られることになるものであり、ユーザにとっての利用価値は高まる。
本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)としては、ノイズキャンセリングシステムが搭載されたヘッドフォン装置を例に挙げることとする。
そこで、本実施の形態としての構成を説明するのに先立ち、ヘッドフォン装置に対応するノイズキャンセリングシステムの基本概念について説明を行っておくこととする。
このようなヘッドフォン装置対応のノイズキャンセリングシステムの基本的な方式としては、フィードバック方式によりサーボ制御を行うようにされたものとフィードフォワード方式がそれぞれ知られている。先ず、図1により、フィードバック方式について説明する。
図1(a)には、ヘッドフォン装着者(ユーザ)の右耳(L(左),R(右)による2チャンネルステレオにおけるRチャンネル)側における、フィードバック方式によるノイズキャンセリングシステムのモデル例を模式的に示している。
ここでのヘッドフォン装置のRチャンネル側の構造としては、先ず、右耳に対応するハウジング部201内において、ヘッドフォン装置を装着したユーザ500の右耳に対応する位置にドライバ202を設けるようにされる。ドライバ202は、いわゆるスピーカと同義のものであり、音声信号の増幅出力により駆動(ドライブ)されることで音声を空間に放出するようにして出力するものである。
そのうえで、フィードバック方式としては、ハウジング部201内においてユーザ500の右耳に近いとされる位置に対してマイクロフォン203を設けるようにされる。このようにして設けられるマイクロフォン203によっては、ドライバ202から出力される音声と、外部のノイズ音源301からハウジング部201内に侵入して右耳に到達しようとする音声、つまり右耳にて聴き取られる外部音声であるハウジング内ノイズ302とが収音されることになる。なお、ハウジング内ノイズ302が発生する原因としては、ノイズ音源301が例えばハウジング部のイヤーパッドなどの隙間から音圧として漏れてきたり、ヘッドフォン装置の筐体がノイズ音源301の音圧を受けて振動し、これがハウジング部内に伝達されてくることなどを挙げることができる。
そして、マイクロフォン203によって収音して得られた音声信号から、例えば外部音声の音声信号成分に対して逆特性となる信号など、ハウジング内ノイズ302がキャンセル(減衰、低減)されるようにするための信号(キャンセル用音声信号)を生成し、この信号について、ドライバ202を駆動する必要音の音声信号(オーディオ音源)に合成させるようにして帰還させる。これによりハウジング部201内における右耳に対応するとされる位置に設定されたノイズキャンセル点400においては、ドライバ201からの出力音声と外部音声の成分とが合成されることによって外部音声がキャンセルされた音が得られ、ユーザの右耳では、この音を聴き取ることになる。そして、このような構成を、Lチャンネル(左耳)側においても与えることで、通常のL,R2チャンネルステレオに対応するヘッドフォン装置としてのノイズキャンセリングシステムが得られることになる。
図1(b)のブロック図は、フィードバック方式によるノイズキャンセリングシステムの基本的なモデル構成例を示している。なお、この図1(b)にあっては、図1(a)と同様にして、Rチャンネル(右耳)側のみに対応した構成が示されているものであり、また、Lチャネル(左耳)側に対応しても同様のシステム構成が備えられるものである。また、この図において示されるブロックは、フィードバック方式によるノイズキャンセリングシステムの系における特定の回路部位、回路系などに対応する1つの特定の伝達関数を示すもので、ここでは伝達関数ブロックということにする。各伝達関数ブロックにおいて示されている文字が、その伝達関数ブロックの伝達関数を表しているものであり、音声信号(若しくは音声)は、伝達関数ブロックを経由するごとに、そこに示される伝達関数が与えられることになるものである。
先ず、ハウジング部201内に設けられるマイクロフォン203により収音される音声は、このマイクロフォン203と、マイクロフォン203にて得られた電気信号を増幅して音声信号を出力するマイクロフォンアンプに対応する伝達関数ブロック101(伝達関数M)を介した音声信号として得られることになる。この伝達関数ブロック101を経由した音声信号は、FB(FeedBack)フィルタ回路に対応する伝達関数ブロック102(伝達関数−β)を介して合成器103に入力される。FBフィルタ回路は、マイクロフォン203により収音して得られた音声信号から、上記したキャンセル用音声信号を生成するための特性が設定されたフィルタ回路であり、その伝達関数が−βとして表されているものである。
また、楽曲などのコンテンツとされるオーディオ音源の音声信号Sは、ここでは、イコライザによるイコライジングが施されるものとしており、このイコライザに対応する伝達関数ブロック107(伝達関数E)を介して合成器13に入力することとしている。
ここでの合成器103では、上記の2つの信号を加算により合成するようにされる。このようにして合成された音声信号は、パワーアンプにより増幅され、ドライバ202に駆動信号として出力されることで、ドライバ202から音声として出力されることになる。つまり、合成器103からの音声信号は、パワーアンプに対応する伝達関数ブロック104(伝達関数A)を経由し、さらにドライバ202に対応する伝達関数ブロック105(伝達関数D)を経由して音声として空間内に放出される。なお、ドライバ202の伝達関数Dは、例えばドライバ202の構造などにより決まる。
そして、ドライバ202にて出力された音声は、ドライバ202からノイズキャンセル点400までの空間経路(空間伝達関数)に対応する伝達関数ブロック106(伝達関数H)を経由するようにしてノイズキャンセル点400に到達し、ここの空間にてハウジング内ノイズ302と合成されることになる。そして、ノイズキャンセル点400から例えば右耳に到達するものとされる出力音の音圧Pとしては、ハウジング部201の外部から侵入してくるノイズ音源301の音がキャンセルされるものとなる。
上記図1(b)に示されるノイズキャンセリングシステムのモデルの系にあって、上記出力音の音圧Pは、ハウジング内ノイズ302をN、オーディオ音源の音声信号をSとしたうえで、各伝達関数ブロックにおいて示される伝達関数、M、−β、E、A、D、Hを利用して、
Figure 2008197438
のようにして表されるものとなる。この(数1)の式において、ハウジング内ノイズ302であるNに着目すると、Nは、1 /(1 +ADHMβ)で表される係数により減衰されることがわかる。ただし、(数1)に示される式の系が、ノイズ低減対象の周波数帯域にて発振することなく、安定して動作するためには、
Figure 2008197438
が成立していることが必要となる。
一般的なこととして、フィードバック方式によるノイズキャンセリングシステムにおける各伝達関数の積の絶対値が、
1<<|ADHMβ|
で表されることとと、古典制御理論におけるNyquistの安定性判別と合わせると、(数2)については下記のように解釈できる。
ここでは、図1(b)に示されるノイズキャンセリングシステムの系において、ハウジング内ノイズ302であるNに関わるループ部分を一箇所切断して得られる、(−ADHMβ)で表される系を考える。この系を、ここでは「オープンループ」ということにする。一例として、マイクロフォン及びマイクロフォンアンプに対応する伝達関数ブロック101と、FBフィルタ回路に対応する伝達関数ブロック102との間を切断すべき箇所とすれば、上記のオープンループを形成できる。
上記のオープンループは、例えば図2のボード線図により示される特性を持つものとされる。このボード線部においては、横軸に周波数が示され、縦軸においては、下半分にゲインが示され、上半分に位相が示される。
このオープンループを対象とした場合、Nyquistの安定性判別に基づき、(数2)を満足するためには、下記の2つの条件を満たす必要がある。
条件1:位相0deg.(0 度)の点を通過するとき、ゲインは0dBより小さくなくてはならない。
条件2:ゲインが0dB以上であるとき、位相0deg.の点を含んではいけない。
上記2つの条件1、2を満たさない場合、ループには正帰還がかかることとなって、発振(ハウリング)を生じさせることになる。図2においては、上記の条件1に対応する位相余裕Pa、Pbと、条件2に対応するゲイン余裕Ga、Gbが示されている。これらの余裕が小さいと、ノイズキャンセリングシステムを適用したヘッドフォン装置を使用するユーザの各種の個人差やヘッドフォン装置を装着したときの状態のばらつきなどにより、発振の可能性が増加することになる。
例えば図2にあっては、位相0deg.の点を通過するときのゲインとしては0dbより小さくなっており、これに応じてゲイン余裕Ga 、Gbが得られている。しかしながら、例えば仮に位相0deg.の点を通過するときのゲインが0dB以上となってゲイン余裕Ga 、Gbが無くなる、あるいは位相0deg.の点を通過するときのゲインが0dB未満であるものの、0dBに近く、ゲイン余裕Ga 、Gbが小さくなるような状態となると、発振を生じる、あるいは発振の可能性が増加することになる。
同様にして、図2にあっては、ゲインが0dB以上であるときには位相0deg.の点を通過しないようにされており、位相余裕Pa、Pbが得られている。しかしながら、例えばゲインが0dB以上であるときに位相0deg.の点を通過してしまっている。あるいは、位相0deg.に近くなり位相余裕Pa、Pbが小さくなるような状態となると、発振を生じる、あるいは発振の可能性が増加することになる。
次に、図1(b)に示したフィードバック方式のノイズキャンセリングシステムの構成において、上述の外部音声(ノイズ)のキャンセル(低減)機能に加えて、必要な音(必要音)をヘッドフォン装置により再生出力する場合について説明する。
ここでは、必要音として、例えば楽曲などのコンテンツとしてのオーディオ音源の音声信号Sが示されている。
なお、この音声信号Sとしては、このような音楽的、又はこれに準ずる内容のもののほかにも考えられる。例えば、ノイズキャンセリングシステムを補聴器などに適用することとした場合には、周囲の必要音を収音するために筐体外部に設けられるマイクロフォン(ノイズキャンセルの系に備えられるマイクロフォン203とは異なる)により収音して得られた音声信号となる。また、いわゆるヘッドセットといわれるものに適用する場合には、電話通信などの通信により受信した相手方の話し声などの音声信号となる。つまり、音声信号Sとは、ヘッドフォン装置の用途などに応じて再生出力すべきことが必要となる音声一般に対応したものである。
先ず、(数1)において、オーディオ音源の音声信号Sに着目する。そして、イコライザに対応する伝達関数Eとして、
Figure 2008197438
により表される式による特性を有するものとして設定したこととする。なお、この伝達特性Eは、周波数軸でみた場合に、上記オープンループに対してほぼ逆特性(1+オープンループ特性)となっている。そして、この(数3)により示される伝達関数Eの式を、数1に代入すると、図1(b)に示されるノイズキャンセリングシステムのモデルにおける出力音の音圧Pについては、
Figure 2008197438
のようにして表すことができる。
(数4)におけるADHSの項において示される伝達関数A、D、Hのうち、先ず伝達関数Aはパワーアンプに対応し、伝達関数Dはドライバ202に対応し、伝達関数Hはドライバ202からノイズキャンセル点400までの経路の空間伝達関数に対応するので、ハウジング部201内のマイクロフォン203の位置が耳に対して近接した位置にあるとすれば、音声信号Sについては、ノイズキャンセル機能を有さないようにした通常のヘッドフォンと同等の特性が得られることがわかる。
次に、フィードフォワード方式によるノイズキャンセリングシステムについて説明する。
図3(a)は、フィードフォワード方式によるノイズキャンセリングシステムのモデル例として、図1(a)と同様に、Rチャンネルに対応する側の構成を示している。
フィードフォワード方式では、ハウジング部201の外側に対して、ノイズ音源301から到達してくるとされる音声が収音できるようにしてマイクロフォン203を設けるようにされる。そして、このマイクロフォン203により収音した外部音声、つまりノイズ音源301から到達してきたとされる音声を収音して音声信号を得て、この音声信号について適切なフィルタリング処理を施して、キャンセル用音声信号を生成するようにされる。そして、このキャンセル用音声信号を、必要音の音声信号と合成する。つまり、マイクロフォン203の位置からドライバ202の位置までの音響特性を電気的に模擬したキャンセル用音声信号を必要音の音声信号に対して合成するものである。
そして、このようにしてキャンセル用音声信号と必要音の音声信号とが合成された音声信号をドライバ202から出力させることで、ノイズキャンセル点400において得られる音としては、ノイズ音源301からハウジング部201のなかに侵入してきた音がキャンセルされたものが聴こえるようにされる。
図3(b)は、フィードフォワード方式によるノイズキャンセリングシステムの基本的なモデル構成例として、一方のチャンネル(Rチャンネル)に対応した側の構成を示している。
先ず、ハウジング部201の外側に設けられるマイクロフォン203により収音される音は、マイクロフォン203及びマイクロフォンアンプに対応する伝達関数Mを有する伝達関数ブロック101を介した音声信号として得られる。
次に、上記伝達関数ブロック101を経由した音声信号は、FF(FeedForward)フィルタ回路に対応する伝達関数ブロック102(伝達関数−α)を介して合成器103に入力される。FFフィルタ回路102は、マイクロフォン203により収音して得られた音声信号から、上記したキャンセル用音声信号を生成するための特性が設定されたフィルタ回路であり、その伝達関数が−αとして表されているものである。
また、ここでのオーディオ音源の音声信号Sは、直接、合成器103に入力するものとしている。
合成器103により合成された音声信号は、パワーアンプにより増幅され、ドライバ202に駆動信号として出力されることで、ドライバ202から音声として出力されることになる。つまり、この場合にも、合成器103からの音声信号は、パワーアンプに対応する伝達関数ブロック104(伝達関数A)を経由し、さらにドライバ202に対応する伝達関数ブロック105(伝達関数D)を経由して音声として空間内に放出される。
そして、ドライバ202にて出力された音声は、ドライバ202からノイズキャンセル点400までの空間経路(空間伝達関数)に対応する伝達関数ブロック106(伝達関数H)を経由するようにしてノイズキャンセル点400に到達し、ここでハウジング内ノイズ302と空間で合成されることになる。
また、ノイズ音源301から発せられた音がハウジング部201内に侵入してノイズキャンセル点400に到達するまでには、伝達関数ブロック110として示すように、ノイズ音源301からノイズキャンセル点400までの経路に対応する伝達関数(空間伝達関数F)が与えられる。その一方で、マイクロフォン203では、外部音声であるノイズ音源301から到達してくるとされる音声を収音することになるが、このとき、ノイズ音源301から発せられた音(ノイズ)がマイクロフォン203に到達するまでには、伝達関数ブロック111として示すように、ノイズ音源301からマイクロフォン203までの経路に対応する伝達関数(空間伝達関数G)が与えられることになる。伝達関数ブロック102に対応するFFフィルタ回路としては、上記の空間伝達関数F,Gも考慮した上での伝達関数−αが設定されるものである。
これにより、ノイズキャンセル点400から例えば右耳に到達するものとされる出力音の音圧Pとしては、ハウジング部201の外部から侵入してくるノイズ音源301の音がキャンセルされるものとなる。
上記図3(b)に示されるフィードフォワード方式によるノイズキャンセリングシステムのモデルの系にあって、上記出力音の音圧Pは、ノイズ音源301において発せられるノイズをN、オーディオ音源の音声信号をSとしたうえで、各伝達関数ブロックにおいて示される伝達関数、M、−α、E、A、D、Hを利用して、
Figure 2008197438
のようにして表されるものとなる。また、理想的には、ノイズ音源301からキャンセルポイント400までの経路の伝達関数Fは、
Figure 2008197438
のようにして表すことができる。
次に、(数6)に示される式を、(数5)に代入すると、右辺の第1項と第2項とが相殺されることとなる。この結果から、出力音の音圧Pは、
Figure 2008197438
のようにして表すことができる。このようにして、ノイズ音源301から到達してくるとされる音はキャンセルされ、オーディオ音源の音声信号だけが音声として得られることが示される。つまり、理論上、ユーザの右耳においては、ノイズがキャンセルされた音声が聴こえることになる。ただし、現実には、(数6)が完全に成立するような伝達関数を与えることのできる、完全なFFフィルタ回路の構成は困難である。また、人による耳の形状であるとか、ヘッドフォン装置の装着の仕方についての個人差が比較的大きく、ノイズの発生位置とマイク位置との関係の変化などは、特に中高域の周波数帯域についてのノイズ低減効果に影響を与えることが知られている。このために、中高域に関しては、アクティブなノイズ低減処理を控え、主として、ヘッドフォン装置の筐体の構造などに依存したパッシブな遮音をすることがしばしば行われる。
また、確認のために述べておくと、(数6)は、ノイズ音源301から耳までの経路の伝達関数を、伝達関数−αを含めた電気回路にて模倣することを意味している。
また、図3(a)に示したフィードフォワード方式のノイズキャンセリングシステムでは、マイクロフォン203をハウジングの外側に設けることから、キャンセルポイント400については、図1(a)のフィードバック方式のノイズキャンセリングシステムと異なり、聴取者の耳位置に対応させるようにしてハウジング部201内にて任意に設定できる。しかし通常にあって、伝達関数−αは固定的であり、設計段階においては、なんらかのターゲット特性を対象とした決めうちになる。その一方で、聴取者によって耳の形状などは異なる。このために、十分なノイズキャンセル効果が得られなかったり、ノイズ成分を非逆相で加算してしまって異音を生じさせたりするなどの現象が発生する可能性もある。
このようなことから、一般的に、フィードフォワード方式は、発振する可能性が低く安定度は高いが、十分なノイズ減衰量(キャンセル量)を得るのは困難であるとされている。一方、フィードバック方式は大きなノイズ減衰量が期待できる代わりに、系の安定性に注意が必要であるとされている。このように、フィードバック方式とフィードフォワード方式とでは、それぞれに特徴を有するものである。
ところで、現況として、実際に民生にあって実用化されているヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムは、アナログ回路を採用したアナログ方式である。しかしながら、ノイズキャンセリングシステムについて、その信号処理系をデジタル信号処理とするデジタル方式とすれば、ノイズキャンセリングシステムの特性や動作モードの可変、切り換えなどを始めとする各種機能を与えることが容易に可能となり、また、高音質化も図ることができる。このようにして、ノイズキャンセリングシステムをデジタル方式化することのメリットは大きい。
そこで図4に、現状において知られているデジタルデバイスを用いてヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムを構築したとする場合において、順当に考えられる1つの構成例を示す。
なお、この図に示されるノイズキャンセリングシステムは、図3に示したフィードフォワード方式に基づいて構成したものとなっている。
また、ここに示されるヘッドフォン装置(以下、単にヘッドフォンという)1は、L(左),R(右)による2チャンネルステレオに対応したものであることとするが、この図のシステム構成は、Lチャネル又はRチャンネルの何れか一方に対応したものである。
また、この図においては、説明を簡単で分かりやすいものとするために、本来聴取すべきオーディオ音源の信号系については省略し、外部音(ノイズ音源)をキャンセルするための系のみを示している。
図4において、先ずマイクロフォン2は、キャンセル対象となるヘッドフォン1の周囲の外部音(外部ノイズ)を含む外部音を収音するためのものである。フィードフォワード方式の場合、このマイクロフォン2は、実際には、ヘッドフォン1のL、Rの片側チャンネルごとに対応する筐体外部に対して設けるようにされるのが一般的である。なお、この図では、L、Rの何れか一方のチャンネルに対応して設けられるマイクロフォン2が示されている。
マイクロフォン2により外部音を収音して得られた信号はアンプ3により増幅され、アナログのオーディオ信号としてA/Dコンバータ部4に対して入力される。
この場合のA/Dコンバータ部4は、例えば1つの部品、デバイスとされるもので、入力されるアナログ信号を、所定のサンプリング周波数、及び量子化ビット数a(aは自然数)によるPCM(Pulse Code Modulation)信号形式のデジタル信号に変換して出力する。このために、例えば図示するようにして、ΔΣ変調器41とデシメーションフィルタ42を備えるようにされる。
ΔΣ(デルタシグマ)変調器41は、入力されたアナログのオーディオ信号を、所定のサンプリング周波数による1ビットのデジタル信号に変換する。このデジタル信号は、デシメーションフィルタ42により所定のサンプリング周波数にまで引き下げられるとともに、量子化ビット数については、1より大きい所定のビット数aとされる形式のPCM信号に変換され、A/Dコンバータ部4の出力とされる。
また、このようなA/Dコンバータ部4としてのデバイスでは、一般的に上記のデシメーションフィルタ42については、直線位相特性を有する直線位相型のFIR(Finite Impulse Response)システム(直線位相型FIR)により形成している。
このノイズキャンセリングシステムにおいて処理対象となるデジタル信号はオーディオ信号であり、従って、忠実な音響再生を前提とすれば、波形の歪みが生じないことが理想として求められることになるが、直線位相型FIRにより直線位相特性を与えれば、上記の波形歪みは生じない。また、FIRシステムであれば、周知のようにして、正確な直線位相特性を容易に得ることが可能とされる。このようなことを理由に、デシメーションフィルタ42としてのデジタルフィルタについては、直線位相型FIRにより構成しているものである。
なお、FIRシステムのデジタルフィルタを直線位相型とするのには、周知のようにして、例えばタップ係数について、タップ数(次数)の中心に係数のピーク値を設定して対称となるようにして設定することで実現できる。
上記A/Dコンバータ部4から出力されたデジタル信号は、DSP5に対して入力される。
この場合のDSP5は、少なくともヘッドフォン1のドライバ1aから出力させるべき音のオーディオ信号を生成するための所要の信号処理をデジタル信号処理により実行する部位とされる。以降の説明から理解されるように、ヘッドフォン1のドライバ1aから出力させるべきオーディオ信号は、デジタルオーディオソースの音声信号と、マイクロフォン2により収音した外部音がキャンセルされるようにして聴こえるための音声信号(キャンセル用音声信号)とが合成されたものとなる。
また、このDSP5は、例えば1つのチップ、デバイスとして提供されるもので、所定のPCM信号形式に対応してデジタル信号処理を実行するものとして形成されている。
この図では、DSP5において実装される信号処理機能ブロックとして、ノイズキャンセル用フィルタ51が示されている。なお、ノイズキャンセル用フィルタ51も、デジタルフィルタとして形成される。
このノイズキャンセル用フィルタ51は、図3のFFフィルタ回路に相当するもので、A/Dコンバータ部4から出力されるデジタル信号、即ち、マイクロフォン11により収音した外部音声に対応するデジタルのオーディオ信号を入力する。そして、この入力した信号を利用して、ドライバ1aから出すべき音として、ドライバ1aに対応するヘッドフォン装着者の耳に到達して聴こえる外部音声をキャンセルする作用を持つ音のオーディオ信号(キャンセル用音声信号)を生成する。このようなキャンセル用音声信号として最も簡単なものとしては、例えば、ノイズキャンセル用フィルタ51に入力されたオーディオ信号、即ち、外部音を収音して得たオーディオ信号に対して逆特性、逆位相となる信号である。そのうえで、実際にあっては、ノイズキャンセリングシステムの系中における回路、空間などの伝達特性を考慮した特性(図3の伝達特性−αに相当する)が与えられるようにされる。
なお、例えば実際において、オーディオ音源としてのデジタル信号を入力させることとした場合には、図3に従って、例えばDSP内に合成器などを設けて、ノイズキャンセル用フィルタ51の出力信号とオーディオ音源の信号とを合成すればよい。従って、実際にあっては、ノイズキャンセル用フィルタ51に入出力させる信号のサンプリング周波数と量子化ビット数aは、オーディオ音源のデジタル信号のサンプリング周波数と量子化ビット数に一致させるようにして決まるものとされる。
この場合のDSP5の出力とされるノイズキャンセル用フィルタ51からのデジタル信号は、DAC(D/Aコンバータ)・アンプ部6に対して入力される。
このDAC/アンプ部6も例えば1つのチップ部品とされるもので、先に説明したA/Dコンバータ部4により変換されたPCM形式のデジタル信号を入力して、これをアナログ信号に変換するものとされ、例えば図示するようにして、インターポレーションフィルタ61、ノイズシェイパ62、PWM回路63、パワードライブ部64を備えて構成される。
DAC・アンプ部6に入力されたDSP5(ノイズキャンセル用フィルタ51)からのデジタル信号は、先ず、インターポレーションフィルタ61に入力される。インターポレーション(オーバーサンプリング)フィルタ61では、入力デジタル信号について、そのサンプリング周波数を2のべき乗で表される係数により所定倍(2,4,8,16・・・)して得られるサンプリング周波数にまで引き上げるようにして変換して出力する。また、出力信号の量子化ビット数については、この場合、aよりも小さい所定値によるビット数bとなるようにして変換が行われる。
また、このインターポレーションフィルタ61についても、先のデシメーションフィルタ42と同じ理由により、直線位相型のFIRシステムにより形成されている。
インターポレーションフィルタ61から出力されたデジタル信号は、ノイズシェイパ62によりノイズシェイピングの処理を施される。このノイズシェイピング後の信号は、例えば入力時のサンプリング周波数を2のべき乗で表される係数により所定倍(2,4,8,16・・・)して得られるサンプリング周波数と、量子化ビット数については入力時のaビットよりも小さく、1ビットに近いとされる量子化ビット数cによる形式に変換される。なお、周知のようにして、ノイズシェイピングはΔΣ変調処理の結果として得られるもので、従って、ノイズシェイパ62は、ΔΣ変調器により実現できる。即ち、この図に示されるデジタルのノイズキャンセリングシステムは、A/D変換及びD/A変換について、ΔΣ変調を応用した構成を採っているものである。
ノイズシェイパ62の出力は、PWM(Pulse Width Modulation)回路63にてPWM変調がかけられて1ビット列の信号に変換されたうえで、後段のパワードライブ部64に入力される。パワードライブ部64は、例えば1ビット列の信号を高圧でスイッチングして増幅するスイッチングドライブ回路と、この増幅出力を音声信号波形とするためのローパスフィルタ(LCローパスフィルタ)により形成されるもので、アナログオーディオ信号としての増幅出力を得るようにされる。ここでは、このパワードライブ部64の出力がDAC/アンプ部6の出力とされる。
このDAC/アンプ部6からの増幅出力は、フィルタ7にて所定の不要帯域成分が除去されたうえで、直流絶縁用のコンデンサC1を介して、ドライバ1aに対して駆動信号として供給される。
このようにして駆動されるドライバ1aから出力される音としては、デジタルオーディオソースの音成分と、ノイズキャンセル用オーディオ信号の音成分とが合成されたものとなるが、ノイズキャンセル用オーディオ信号の音成分によっては、外部からドライバ1aに対応する耳に到達してくる外部音を打ち消す(キャンセルする)効果を生じることになる。この結果、ヘッドフォン装着者がドライバ1aに対応する耳で聴く音としては、理想的には、外部音がキャンセルされて、相対的にデジタルオーディオソースの音が強調されたものとなる。
上記図4に示した構成は、例えば民生用として入手が容易なA/Dコンバータ、DSP、D/Aコンバータなどを利用したものであり、現状において実際にデジタル方式によるノイズキャンセリングシステムとして、例えばCDなどのオーディオソースに対応するものを作ろうとした場合には、先ず順当に考えられる構成である。
しかしながら、上記の構成では、現実には充分なノイズキャンセル効果を得ることが困難であることが分かっている。これは、A/Dコンバータ部4、及びDAC・アンプ部6としての実際のデバイスが持つ信号処理時間(伝搬時間)、即ち入出力間での信号の遅延(信号遅延)が、相当に大きいことがその理由である。本来、これらのデバイスは、通常の楽曲などのオーディオ音源としてのオーディオ信号を単一的に処理することを想定しており、従って、信号処理により遅延を生じるとしても、これが問題になることはなかったものである。しかしながら、このようなデバイスをそのまま、ノイズキャンセルリングシステムに流用しようとした場合には、その遅延が無視できない程度に大きいものとなってしまうのである。
つまり、これらのデバイスを使用して構成したノイズキャンセリングシステムの系全体としても、外部音声がマイクロフォン2により収音されてからドライバにより音として出力されるまでの時間(応答速度)に大きな遅延が生じることになる。この遅延により、例えば、ドライバから出力されるノイズキャンセルのための音成分により外部音声を打ち消すことが難しくなる。例えばA/Dコンバータ部4だけをとってみても、サンプリング周波数が44.1KHzのもとでの遅延が40サンプル分であるとすれば、約550Hz以上の信号の位相回転は180°以上になる。この程度にまで遅延が大きくなってしまうと、ノイズキャンセル効果を得にくいばかりか、かえって外部音を強調してしまうような現象も生じるときがある。
このように、図1に例示したようなデジタル方式によるノイズキャンセリングシステムの構成では、許容できるノイズキャンセル効果は、550Hz程度よりも低い周波数帯域の範囲に限定されてしまうものであり、例えば可聴帯域として標準的な20Hz〜20kHzを設定した場合と比較してみたとしても、非常に狭い周波数帯域の範囲でしかノイズキャンセル効果を得ることができない。つまり、実用に足るまでのノイズキャンセル効果を得ることが難しい。このことが、現状において実用化されているヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムのほとんどが、アナログ方式であることの理由である。
しかしながら、先にも述べたように、ノイズキャンセリングシステムをデジタル方式化することにより得られる利点は大きい。そこで、本実施の形態としては、以降説明していくようにして、ヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムについて、デジタル方式でありながら上記の信号遅延の問題を解消して実用化を図るための構成を提案する。
図5は、本願発明における第1の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示したブロック図である。なお、この図において、図4と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
この図5に示される第1の実施の形態のノイズキャンセリングシステムについての全体構成としては、図4に示したノイズキャンセリングシステムと同様であることとしている。そのうえで、本実施の形態では、先ず、A/Dコンバータ部4において、図4の直線位相型FIRのデシメーションフィルタ42に代えて、FIRシステムによる最小位相推移型のデジタルフィルタ(最小位相推移型FIR)として形成した、デシメーションフィルタ42Aを設けるようにされる。
また、同様にして、DAC・アンプ部6において、図4の直線位相型FIRのインターポレーションフィルタ61に代えて、最小位相推移型FIRのインターポレーションフィルタ61Aを設けるようにされる。
なお、最小位相推移型FIRのデジタルフィルタの基本としては、FIRシステムとして最小位相が得られるようにして、タップ係数について、先頭側(入力に近い側)にピークの値を設定することで形成できる。
図17(b)(c)により、直線位相型FIRのデジタルフィルタと、最小位相推移型FIRの各特性を比較して示す。図17(b)には、直線位相型FIRについてのインパルス応答波形と位相の周波数応答特性を示し、図17(c)には、最小位相推移型FIRについてのインパルス応答波形と位相の周波数応答特性を示す。また、これらの図17(b)(c)に示される特性は、図17(a)に示すゲインの周波数応答特性を持つ信号を入力したときの出力として得られたものである。
先ず、図17(b)に示される直線位相型FIRについての位相の周波数応答特性は、位相回転が周波数に比例していることを表している。つまり、直線位相型としての周波数応答特性であることを示している。また、インパルス応答波形をみると、入力タイミングに対して或る一定時間遅延したタイミングで、そのピークが得られていることからも分かるように、入力に応答した出力は、タップ数(次数)に応じた一定時間による遅延(群遅延)を持っていることを示している。
一方、図17(b)の最小位相推移型FIRについての位相の周波数応答特性は、周波数に対する位相回転がノンリニアであることを示している。また、インパルス応答波形としては、入力タイミングに対して、例えば数タップ分程度に相当する速いタイミングでピークが得られている。
これら図17(b)(c)の特性から理解されるように、同じFIRデジタルフィルタとして、最小位相推移型FIRは、直線位相型FIRよりも、信号の入力に応答した出力の遅延(、信号遅延、入出力遅延)の時間が非常に短いということがいえる。
先に図4により述べたようにして、これまでにおいて知られているA/Dコンバータ部4、及びDAC・アンプ部6としてのデバイスを実際に採用してノイズキャンセリングシステムを構成しても、これらのデバイスの遅延時間が大きすぎるために実用化することは困難である。そして、その内部をより詳細にみれば、これらデバイスの遅延要因として、先ずA/Dコンバータ部4ではデシメーションフィルタ42による遅延が支配的で、DAC・アンプ部6ではインターポレーションフィルタ61による遅延が支配的となっているものである。このようなデシメーションフィルタ42及びインターポレーションフィルタ61における大きな遅延は、上記図17(b)からも理解されるように、直線位相型FIRが有する一定の群遅延に起因する。
デシメーションフィルタ42及びインターポレーションフィルタ61について、直線位相型FIRとして構成しているのは、処理対象がオーディオ信号とされていることで、周波数に応じた位相歪みなどを生じさせないことが本来的に好ましいということに由来する。
直線位相型FIRとされることで、入出力間には群遅延が生じるが、これまでのデバイスは、ユーザが積極的に聴こうとするオーディオ音源の再生(記録)に使用することを前提としていたために、特に問題になることはなかったものである。例えばオーディオ音源を再生する場合であれば、そのオーディオ音源の信号が信号処理デバイスに入力されてから音として再生するまでに、信号処理による相応の遅延が生じたとしても、ユーザが聴く音としては、正常に連続して再生出力されているものに他ならないわけであり、従って、ユーザがオーディオ音源を再生して聴くのに、信号処理の遅延が問題視されることはないからである。
これに対して、オーディオ音源の再生ではなく、ノイズキャンセリングシステムにこれまでのデバイスを流用しようとすると、そのデバイスが持つ群遅延により、外部音を打ち消すことのできる位相を得ることができない、あるいは困難になって、問題点として浮上してしまうわけである。
そこで、本実施の形態としては、A/Dコンバータ部4において備えるべきデシメーションフィルタ42Aと、DAC・アンプ部6において備えるべきインターポレーションフィルタ61Aについて、それぞれ最小位相推移型FIRとしているものである。これにより、デシメーションフィルタ42Aと、インターポレーションフィルタ61Aにおける信号遅延は大幅に短縮される。
このようにして、ノイズキャンセリングシステムにおける、D/A変換部位及びA/D変換部位の支配的な遅延要因が排除されることで、図に示されているノイズ音処理のための信号系(ノイズ音処理系)の遅延は非常に短いものとなる。これに応じて、ノイズキャンセルが有効にはたらくとされる音声の周波数帯域も大幅に拡大することになるものであり、この結果、実用上充分とされるノイズキャンセル効果が得られることになる。つまり、デジタル方式でありながら、実用化が実現可能なヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムが得られるものである。
なお、図17(c)に示される位相の周波数応答特性からも理解されるように、最小位相推移型FIRの場合には、周波数に応じた位相歪みが生じる。従って、オーディオ信号の場合、この位相歪みによる音質劣化を生じる可能性は避けられないことになる。このことが、これまでにおいて、オーディオ信号対応のA/DコンバータやD/Aコンバータに実装するデジタルフィルタについて直線位相型としていたことの理由である。
しかしながら、この場合の信号処理対象は、オーディオ信号とされても、例えばノイズキャンセル対象となる外部音であり、例えばオーディオソースなどと比較すれば、要求される再生忠実度は相当に低い。そのうえでさらに、実際にあってキャンセルして効果の大きいとされる音成分は、いわゆる低域といわれる低い周波数帯域であり、デバイスの特性などとの兼ね合いもあり数kHz程度までのノイズキャンセルが有効にはたらけば、実使用上は充分であるとされている。このような見地からすると、例えばA/DコンバータやD/Aコンバータなどのフィルタを最小位相推移型FIRにより形成したとしても、ノイズキャンセルという目的からみて音質的な不具合などはほとんど生じない、ということがいえる。
つまり、本実施の形態としては、ノイズキャンセリングシステムとしての用途を前提とした場合における、A/D変換部位のデシメーションフィルタとD/A変換部位のインターポレーションフィルタに関して、直線位相型FIRよりも最小位相推移型FIRの方が好適、かつ実用的であるとの見地に立ち、最小位相推移型FIRにより形成することとしたものである。
続いて、図6を参照して第2の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムについて説明する。なお、図6において、上記第1の実施の形態に対応する図5と同一とされる部分については、同一符号を付して説明を省略、或いは簡単な説明にとどめる。
また、この第2の実施の形態の説明に続けては、第12の実施の形態まで順を追って説明していくのであるが、これらの実施の形態の各々についての構成を示す図についても、同様に、それより先の実施の形態の構成を示す図と同一とされる部分については、同一符号を付して、説明の省略或いは簡易な説明に代えることとする。
先に図5に示した第1の実施の形態では、A/Dコンバータ部4、DSP5、及びDAC/アンプ部6は、それぞれ、部品としては個別のものとされている。
これに対して、図6に示す第2の実施の形態では、先の図5に示したA/Dコンバータ部4、DSP5、及びDAC/アンプ部6のそれぞれにおいて備えられる機能部位を、LSI(Large Scale Integration)チップ100としての1つのチップ、或いは集積回路部品とされる物理構成単位に納めるようにして構成したものである。つまり図示するようにして、LSIチップ100としての集積回路部品のなかに、ΔΣ変調器41、最小位相推移型FIRのデシメーションフィルタ42A、図5のDSP5に対応し、少なくともノイズキャンセル用フィルタ51としての機能ブロックを含んで形成されるDSPブロック5Aと、最小位相推移型FIRのインターポレーションフィルタ61A、ノイズシェイパ62、PWM回路63、及びパワードライブ回路64としての回路部位を、図5と同様の信号入出力の関係により設けるものである。この場合には、例えば図5のA/Dコンバータ部4に相当する部位であるΔΣ変調器41、デシメーションフィルタ42Aや、図6のD/Aコンバータ部6に相当する部位であるインターポレーションフィルタ61A、ノイズシェイパ62、PWM回路63、及びパワードライブ回路64などは、ハードウェアにより構成して組み込むことができる。また、DSPブロック5Aについては、例えば信号処理のためのプログラムを実行するCPUを備えて構成できる。
このようにして、A/D変換部位、DSP相当部位、及びD/A変換部位を1つのチップにまとめて構成すれば、例えばA/Dコンバータ部4、DSP5、及びDAC/アンプ部6がそれぞれ独立したチップとされたものを使用してノイズキャンセリングシステムを構成する場合よりも、製造の工程が単純化されて効率が高まることになる。
図7は、第3の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示している。
この図に示される構成としては、例えば第1の実施の形態に対応する図5において示されていた直線位相型FIRのデシメーションフィルタ42A、及び直線位相型FIRのインターポレーションフィルタ61Aに代えて、それぞれ、IIR(Infinite Impulse Response)システムとしてのデジタルフィルタ(IIRフィルタ)によるデシメーションフィルタ42B、インターポレーションフィルタ61Bを設けることとしている。
図17(d)には、IIRフィルタについてのインパルス応答波形と、位相の周波数応答特性が示されている。この図17(d)に示される特性も、図17(a)に示される特性の信号を入力したときの出力についてのものである。また、この場合のIIRフィルタは2次で形成しているものとする。
そして、図17(d)と、例えば先に説明した、直線位相型FIRの特性を示す図17(b)と最小位相推移型FIRの特性を示す図17(c)と比較して分かるように、そのインパルス応答波形としては、入力タイミングに対して、例えば数タップ分程度に相当する速いタイミングでピークが得られている。つまり、最小位相推移型FIRと同様に非常に小さい入出力遅延となっている。
そこで、第3の実施の形態では、デシメーションフィルタ42B、インターポレーションフィルタ61Bとして、IIRフィルタにより構成することで、先の実施の形態と同様の効果を得ようとするものである。
図8は、第4の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示している。
この図に示すノイズキャンセリングシステムは、上記図7に示したA/Dコンバータ部4、DSP5、及びDAC/アンプ部6のそれぞれにおいて備えられる機能部位を、1つのLSIチップ100としての1つのチップに納めるようにして構成している。
つまり図示するようにして、LSIチップ100内に対して、ΔΣ変調器41、IIRのデシメーションフィルタ42B、DSPブロック5A、IIRのインターポレーションフィルタ61B、ノイズシェイパ62、PWM回路63、及びパワードライブ回路64を、図6と同様の信号入出力の関係により設けるものである。
図9は、第5の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示している。
この図に示すノイズキャンセリングシステムは、例えば図5の構成を基としたうえで、デシメーションフィルタ42A、ノイズキャンセル用フィルタ51、及びインターポレーションフィルタ61Aのそれぞれのフィルタ特性の設定を適応的に変更できるように構成される。
このために、例えばDSP5内に対しては解析・制御処理部52を設け、さらに、A/Dコンバータ部4及びDAC・アンプ部6のそれぞれにおいて、上記解析・制御処理部52からの指示を受けて動作するフィルタ設定制御部43、フィルタ設定制御部65を設ける。また、デシメーションフィルタ42Aに対応させては、このデシメーションフィルタ42Aについてのタップ係数などを始めとした所定のパラメータ項目のセットであるフィルタパラメータとして、フィルタパラメータA1〜Anを格納したフィルタパラメータテーブルTB1を用意する。同様にして、ノイズキャンセル用フィルタ51に対応させて、フィルタパラメータB1〜Bnを格納したフィルタパラメータテーブルTB2を用意し、インターポレーションフィルタ61Aに対応させて、フィルタパラメータC1〜Cnを格納したフィルタパラメータテーブルTB3を用意する。なお、DSP5内のノイズキャンセル用フィルタ51に対応するフィルタパラメータテーブルTB2については、DSP5が使用するRAM8に保持させておくこととしている。このフィルタパラメータテーブルTB2のRAM8への書き込みは、例えばDSP5の起動時おいて行うようにされればよい。
この場合の解析・制御処理部52は、A/Dコンバータ部4からDSP5に対して入力されてくる外部音のデジタルオーディオ信号を分岐して入力して、所定項目についての解析を実行する。ここで解析する項目としては、例えば、オーディオ信号のレベル(即ち外部音の音量)であるとか、その周波数帯域分布特性などを挙げることができる。そして、解析処理の結果に基づき、解析・制御処理部52は、先ず、フィルタパラメータテーブルTB1における1つのフィルタパラメータを指定する信号をフィルタ設定制御部43に対して出力する。これに応じて、フィルタ設定制御部43は、フィルタパラメータテーブルTB1に格納されるフィルタパラメータA1〜Anのうちから指定されたフィルタパラメータを、デシメーションフィルタ42Aに設定する。
また、これとともに、解析・制御処理部52は、RAM8に保持しているフィルタパラメータテーブルTB2に格納されるフィルタパラメータB1〜Bnのうちから、解析処理結果に基づいて特定したフィルタパラメータを読み出して、ノイズキャンセル用フィルタ51に対して設定する。さらに、これとともに、解析・制御処理部52は、解析処理結果に基づき、フィルタパラメータテーブルTB3における1つのフィルタパラメータを指定する信号をフィルタ設定制御部65に対して出力する。フィルタ設定制御部63は、この信号入力に応じて、フィルタパラメータテーブルTB3に格納されるフィルタパラメータC1〜Cnのうちから指定されたフィルタパラメータを、インターポレーションフィルタ61Aにセットする。
上記の動作が実行されることで、そのときにマイクロフォン2により収音して得られているとされる音声の状況に応じて、上記の各デジタルフィルタのフィルタ特性が可変されていくことになる。即ち、図9に示すノイズキャンセリングシステムの系は、例えば解析・制御処理部52により解析された外部音の音量や周波数帯域分布などに適応して、最も有効なノイズキャンセル効果が得られるようにして動作するようにされる。
これは、ノイズキャンセリングシステムとして、周囲音の変化に関わらず、常に安定して良好なノイズキャンセル効果が得られることを意味している。そして、上記したようなフィルタ特性の可変設定は、上記の各フィルタがデジタルフィルタとされていることで容易に実現できるものとなる。
また、実際のDSP5内の解析・制御処理部52は、例えばDSP5において備えられるCPUがプログラムを実行して得られる機能として実装することができる。
図10は、第6の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示している。
この図に示すノイズキャンセリングシステムは、上記図9に示したA/Dコンバータ部4、DSP5、及びDAC/アンプ部6のそれぞれにおいて備えられる機能部位、及びRAM8を、1つのLSIチップ100としての部品内に納めて構成したものである。なお、この図10においてLSIチップ10内に設けられる、図9のRAM8としての部位は、RAMブロック8Aとして示している。
このようにして、図9に示した上記の各部位をLSIチップ100としての同じデバイス内に納める構成としたことで、DSPブロック5A内の解析・制御処理部52は、デシメーションフィルタ42Aとインターポレーションフィルタ61Aに対するフィルタパラメータの可変設定を、フィルタ設定制御部43、65を経由させることなく直接実行することができる。
図11は、第7の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示している。
この図に示すノイズキャンセリングシステムは、図10の構成を基として発展させたもので、フィルタパラメータテーブルTB2だけではなく、デシメーションフィルタ42A、インターポレーションフィルタ61Aのそれぞれに対応するフィルタパラメータテーブルTB1、TB3についても、RAMブロック8A内に保持させようとするものである。
上記のようにして、LSIチップ100に対してA/Dコンバータ部、DSP、RAM、D/Aコンバータ部に相当する部位を1つに統合することで、これら複数のフィルタパラメータテーブルを全てLSIチップ内のRAM領域、即ちRAMブロック8Aに保持させるという構成を容易に実現できる。
この場合、解析・制御処理部52は、解析処理結果に基づいてデシメーションフィルタ42A、ノイズキャンセル用フィルタ51、及びインターポレーションフィルタ61Aに対して設定すべきフィルタパラメータを選択決定する。次にRAMブロック8Aに保持させているフィルタパラメータテーブルTB1、TB2、TB3のそれぞれから、選択決定したフィルタパラメータを読み出したうえで、これらの読み出したフィルタパラメータが持つパラメータ値のそれぞれを、適宜、上記各フィルタに設定するようにされる。
例えば図10の場合、フィルタパラメータテーブルTB1、TB3については、RAM8ではなく、デシメーションフィルタ42Aとインターポレーションフィルタ61A側にて保持させることとしている。このためには、例えば実際には不揮発性の記憶素子などを設けて、ここにフィルタパラメータテーブルTB1、TB3のデータを記憶させておく必要がある。これに対して、図11の構成であれば、フィルタパラメータテーブルTB1、TB3を記憶させておくためのこれらのハードウェア的な素子は不要になるので、LSIチップ100としての回路規模を縮小させることができ、その分のLSIチップの小型化、低コスト化、さらには歩留まりの向上などを期待できる。また、このようにして、全てのフィルタパラメータテーブルをRAM8に保持させるようにしたことで、ノイズキャンセルのための信号処理実行時において、必要に応じてDSP5内部にて演算を実行し、フィルタパラメータテーブルに格納すべきフィルタパラメータを生成して保持させるようにすることも可能となるものであり、それだけフィルタ特性の設定に関して自由度、適応性が高まる。
次に第8の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムについて説明する。
この第8の実施の形態は、図12により後述するようにして、ノイズキャンセリングシステムとして、これまでの実施の形態として挙げてきたもので、図3に示したモデルに基づくフィードフォワード方式の系だけではなく、図1に示したモデルに基づくフィードバック方式の系も併用することとした構成を採る。
先に若干述べたが、フィードバック方式とフィードフォワード方式とでは、相互にトレードオフとなるような関係の特徴を持っている。
例えば、これまでに実施の形態として挙げてきたフィードフォワード方式では、ノイズを有効にキャンセル(減衰)できる周波数帯域は広く、系の安定性も高いが、充分なノイズキャンセル量が得られにくいとされている。このために、例えばノイズ音源との位置関係などの状況によっては、系の伝達関数と合致しなくなり、例えば特定の周波数帯域にてノイズがキャンセルされない、あるいは増加してしまうような可能性のあることが指摘されている。この場合、実際には広い周波数帯域にわたってノイズキャンセルが有効にはたらいているのにも関わらず、或る特定の周波数帯域においてのみノイズが目立ってしまうような現象が生じるということになり、聴感上は、ノイズキャンセル効果を感じにくくなる。
これに対して、フィードバック方式は、ノイズをキャンセルできる周波数帯域は狭いものの、充分なノイズキャンセル量が得られるという特徴を持っている。
このことからすると、フィードフォワード方式に対してフィードバック方式を組み合わせてノイズキャンセリングシステムを構築すれば、フィードフォワード方式のみに基づく場合よりも良好なノイズキャンセル効果を期待できることになる。つまり、先ずはフィードフォワード方式によりノイズキャンセルを行ったうえで、これによってもキャンセルできなかった特定周波数帯域のノイズ音成分を、フィードバック方式により有効にキャンセルする、という構成を採ろうというものである。これにより、広い周波数帯域全体にわたってノイズ音を有効にキャンセルすることが容易に可能となる。
図12に示される第8の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例について説明する。
この図においては、先ず、フィードフォワード方式の系に対応するマイクロフォンユニットとして、これまでの実施の形態のマイクロフォン2に代えて、デジタルマイク2Aを設けることとしている。
このデジタルマイク2Aは、1つのマイクロフォンユニットとしての部品、装置として、収音した音声を基とする音声信号(オーディオ信号)を所定のデジタル信号形式により出力できるように構成されたものであり、例えば図示するようにして、マイクロフォン21と、このマイクロフォンにより収音して得られた信号について、所定のサンプリング周波数による1ビット列のデジタル信号に変換して出力するΔΣ変調器22とを備えて形成するようにされる。このデジタルマイク2Aから出力される信号は、LSIチップ100内における、最小位相推移型FIRのデシメーションフィルタ42Aに対して入力されるようになっている。
デシメーションフィルタ42Aの出力は、DSPブロック5A内のIIRフィルタ51−1に対して入力されるとともに、分岐して解析・制御処理部52に対しても入力されるようになっている。
IIRフィルタ51−1の出力は、合成器54にて、後述する他のオーディオ信号と合成される。この合成器54の出力がDSPブロック5Aの出力とされて、インターポレーションフィルタ61Aに対して入力される。
インターポレーションフィルタ61Aから後段の構成としてはフィルタ7が省略されている以外は、図11と同様となっている。
上記構成の系は、例えばIIRフィルタ51−1を、これまでの実施の形態におけるノイズキャンセル用フィルタ51としてみれば、これまでの実施の形態において示されてきたフィードフォワード方式によるノイズキャンセリングシステムとしての系を成しているものであることがわかる。
ただし、この実施の形態にあっては、ノイズキャンセル用フィルタ51(図3のFFフィルタ回路に相当する)としての機能は、デシメーションフィルタ42A−1、IIRフィルタ51−1、及びインターポレーションフィルタ61Aから成るフィルタ回路系により実現するものとしている。
つまり、中高域とされる帯域についての処理は、A/D変換側のFIRフィルタであるデシメーションフィルタ42Aと、D/A変換側のFIRフィルタであるインターポレーションフィルタ61Aとが行えるようにしてこれらのフィルタ特性を設定し、残る低域とされる帯域についての処理は、DSPブロック5A内のIIRフィルタ51−1により行えるようにして、これらのフィルタ特性を設定するものである。
一般に、A/D変換処理及びD/A変換処理に用いられるデジタルフィルタについては、演算精度であるとか、安定性などの観点から、IIRよりもFIRのほうが採用される傾向がある。しかし、音声レベルでのノイズキャンセルを行うこととした場合、FIRフィルタにより低域についても充分なノイズキャンセル効果が得られるようにするためには、オーバーサンプリング領域に対応して膨大とされるタップ数を必要としてしまう。このような理由に基づき、本実施の形態としても、それぞれ、A/D変換処理とD/A変換処理に含まれるFIRフィルタであるデシメーションフィルタ42Aとインターポレーションフィルタ61Aとして、低域を除く中高域の範囲での信号処理を行うようにして形成しているのものである。
その一方で、例えば仮にDSP(DSPブロック5A)の内部にて高精度の演算器を使用可能であると仮定した場合には、このDSP内にて、低域の信号処理を行うようにしてIIRフィルタを構成することにより、演算リソースを削減することができる。
つまり、この第8の実施の形態において、先ず、フィードフォワード方式による系においては、A/D変換処理側及びD/A変換処理側のFIRフィルタ(デシメーションフィルタ42A−1、インターポレーションフィルタ61A)と、DSP内のIIRフィルタ51−1とを、ノイズキャンセルのために協調して動作させているものであり、これにより、演算量(演算リソース)の削減を図りながら入出力遅延の短縮を実現しているものである。
そのうえで、この第8の実施の形態にあっては、上記のフィードフォワード方式の系としては、下記のフィードバック方式の系が付加される。
先ず、フィードバック方式の系に対応するマイクロフォンユニットとして、デジタルマイク2Bを設けることとしている。このデジタルマイク2Bも、デジタルマイク2Aと同様にして、マイクロフォン21とΔΣ変調器22を備えることで、収音により得た音を1ビット列によるデジタルオーディオ信号として出力する。
フィードフォワード方式に対応するデジタルマイク2Aが、例えばヘッドフォン筐体の外部にて外部音(外部ノイズ)を収音できるようにして取り付けられるのに対して、フィードフォワード方式に対応するデジタルマイク2Bは、ドライバ1aから出力されてヘッドフォン装着者の耳に到達しようとする音を収音できる位置に対して取り付けるようにされる。従ってデジタルマイク2Bによっては、ドライバ1aから出力された音と、ドライバ1aが取り付けられたヘッドフォン筐体から侵入してヘッドフォン装着者の耳に到達しようとする音とが合成された音を収音し、そのオーディオ信号を出力するようにされる。
上記デジタルマイク2Bから出力されたオーディオ信号は、LSIチップ100内のデシメーションフィルタ42A−1に対して入力される。なお、このデシメーションフィルタ42A−1は、フィードフォワード方式の系に対応して設けられるデシメーションフィルタ42Aと同様に、最小位相推移型FIRとされる。このデシメーションフィルタ42A−1から出力された信号は、DSPブロック5A内のIIRフィルタ51−2に対して入力され、ここで所定の特性が与えられたうえで、合成器54に対して入力される。合成器54(DSPブロック5A)の出力が入力されるインターポレーションフィルタ61A以降からドライバ1aまでの系は、フィードフォワード方式に対応する系と共用されることになる。
そして、このフィードバック方式の系にあっても、ノイズキャンセルのための信号特性を与えるためのフィルタ(図1のFBフィルタ回路に相当する)としては、上記フィードフォワード方式の系と同様に、A/D変換側の最小位相推移型FIRであるデシメーションフィルタ42A−1、D/A変換側の最小位相推移型FIRであるインターポレーションフィルタ61A、及びDSPブロック5A内のIIRフィルタ51−2により実現されるように構成することとしているものである。つまり、インターポレーションフィルタ61Aについてはフィードフォワード方式の系と共用したうえで、デシメーションフィルタ42A−1については、中高域に対応する信号処理を実行するようにして構成し、DSPブロック5内のIIRフィルタ51−2については、低域に対応する信号処理を実行するようにして構成するものである。
さらに、この場合においては、本来ヘッドフォン装置により聴取すべき音である、デジタルオーディオソースとしての所定形式のデジタルオーディオ信号を入力させた構成が示されている。このデジタルオーディオソースの信号は、DSPブロック5A内において形成したイコライザ53に入力されて、ここで音質調整などの目的に応じたイコライジング等の処理が施された後、合成器54に対して出力されることになる。合成器54から出力されたデジタルオーディオソースの信号成分も、インターポレーションフィルタ61Aからドライバ1aまでの系を経由することで、ドライバ1aから音声として出力される。
この構成は、上記のフィードフォワード方式によるノイズキャンセリングシステムと、フィードバック方式によるノイズキャンセリングシステムとによりノイズキャンセルを行って、デジタルオーディオソースの再生音のみが明瞭に聴こえるようにしたものである。
そして、先の説明から理解されるように、この実施の形態では、フィードフォワード方式によるノイズキャンセリングシステムと、フィードバック方式によるノイズキャンセリングシステムとが同時的に動作するようにされる。これにより、先にも述べたようにして、フィードフォワード方式により、先ずは広い周波数帯域にわたって安定的にノイズキャンセルを行うようにしたうえで、フィードフォワード方式によっては充分に減衰させることができなかった特定周波数のノイズ音の成分について、フィードバック方式により有効にキャンセル、減衰させるという複合的なノイズキャンセル動作を得ることができる。これにより、例えばフィードフォワード方式もしくはフィードバック方式の何れか一方のみの方式に基づいたシステムによりノイズキャンセルを行うこととした場合よりも高いノイズキャンセル効果が期待されることになる。
そのうえで、この場合にあっても、DSPブロック5A内に対して、解析・制御処理部52を備えると共に、RAMブロック8Aに、フィルタパラメータテーブルTB11、TB12、TB13、TB3を保持させることで、ノイズキャンセルに関連するデジタルフィルタについて、外部音の状況変化に適応したフィルタ特性を与えていくことが可能とされる。
この場合、フィルタパラメータテーブルTB11は、ともに最小位相推移型FIRとされるデシメーションフィルタ42A、42A−1についてのフィルタ特性を設定するためのフィルタパラメータが格納されて形成される。
また、フィルタパラメータテーブルTB12は、IIRフィルタ51−1についてのフィルタ特性を設定するためのフィルタパラメータを格納して形成され、フィルタパラメータテーブルTB13は、IIRフィルタ51−2についてのフィルタ特性を設定するためのフィルタパラメータを格納して形成される。
また、フィルタパラメータテーブルTB3は、例えば図11の場合と同様にして、インターポレーションフィルタ61Aについてのフィルタ特性を設定するためのフィルタパラメータを格納して形成される。
図13は第9の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示している。
この図に示されるノイズキャンセリングシステムは、上記第8の実施の形態の構成を基としたうえで、DSPブロック5A内におけるノイズキャンセル用フィルタに相当する部位として、適応信号処理部55を備えるようにされる。この適応信号処理部55は、デシメーションフィルタ42A、42A−1から入力されてくる、ヘッドフォンユニット1h(ヘッドフォン筐体)の外側のマイクロフォン2Aと、内側のマイクロフォン2Bによりそれぞれ得たノイズ音(キャンセル対象音)としてのオーディオ信号を取り込み、これらのオーディオ信号を利用して適応信号処理を実行することでノイズキャンセル用オーディオ信号を生成し、合成器54に出力するようにされる。このようにして、適応信号処理を適用することで、生成されるノイズキャンセル用オーディオ信号としては、そのときの外部音の状態(音色の特徴であるとか、レベル)の変化に適合して、常に、最良なノイズキャンセル効果が得られるものとされた信号特性が与えられるようにされる。
このような構成とすれば、例えば、DSP内のノイズキャンセル用のデジタルフィルタの特性の変更設定に関しては、フィルタパラメータテーブルを用意する必要性がなくなる。これにより、例えばRAM8、RAMブロック8Aなどにおけるフィルタパラメータテーブルの保持に必要な領域サイズは縮小され、その分、RAM8、RAMブロック8Aについてその記憶容量を節約して使用でき、また、RAM8、RAMブロック8Aとしての記憶可能容量を小さく設定できることにもなる。
また、デシメーションフィルタ42A、42A−1と、インターポレーションフィルタ61Aについては、例えば図12に示した第8の実施の形態と同様にして、解析・制御処理部52の解析処理結果に応じて、RAMブロック8Aに保持されるフィルタパラメータテーブルTB11、TB3から選択して読み出したフィルタパラメータを設定することで、より効率の良いフィルタ特性の適応化が図られるようにされている。
なお、この第9の実施の形態にあって、適応信号処理部55として、どのような手法、方式に基づいた構成を採るのかについては、特に限定されるものではない。ちなみに、適応信号処理の手法としては、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムによるものであるとか、学習同定法などが知られている。
また、図12に示した第8の実施の形態では、マイクロフォンユニットとして、デジタルマイク2A,2Bが使用されているが、この図13に示す第9の実施の形態では、通常のマイクロフォン2A,2Bを使用することとして、収音により得た信号の1ビット量子化は、それぞれ、ΔΣ変調器41、41−1により行うものとしている。マイクロフォン2A、2Bは、図12のデジタルマイク2A、2Bと同様に、それぞれ、フィードフォワード方式とフィードバック方式に対応し、先ず、マイクロフォン2Aについては、ヘッドフォンユニット(ヘッドフォン筐体)1hの外部にて外部音(外部ノイズ)を収音できるようにして取り付けられ、マイクロフォン2Bは、ドライバ1aから出力されてヘッドフォン装着者の耳に到達しようとする音を収音できる位置に対して取り付けるようにされる。確認のために述べておくと、図12の第8の実施の形態においても、デジタルマイク2A、2Bにおけるマイクロフォン21、21としての部位は、上記と同様にしてヘッドフォンユニットに対して設けられるものである。
上記図12に示される適応信号処理部55の具体的な一構成例について、第10の実施の形態として図14に示しておく。
この図に示される適応信号処理部55としては、先ず、FIRによるフィルタ56aと、適応フィルタ56bと、とを備えて成るものとされる。フィルタ56aは、ヘッドフォンユニット1hの外側のマイクロフォン2Aに対応するデシメーションフィルタ42Aから入力される信号について、γ2により表されるフィルタ特性に応じた信号特性を与えて合成器54に対して出力する。このフィルタ56aの出力が、ノイズキャンセル用オーディオ信号となる。
また、この場合の適応フィルタ56bはLMSの方式に基づいて形成されるもので、特性可変フィルタ57a及び合成器57bとを有する。特性可変フィルタ57aは、例えばFIRフィルタとされて適応線形結合器などともいわれるものである。
図示するようにして、特性可変フィルタ57aは、ヘッドフォンユニット1hの外側のマイクロフォン2Aに対応するデシメーションフィルタ42Aから出力されるデジタル信号を入力信号として、フィルタ特性γ1に応じた信号特性を与えて出力するようにされ、合成器57bは、ヘッドフォンユニット1hの内側のマイクロフォン2Bに対応するデシメーションフィルタ42A−1からの信号に対する、上記フィルタ57aから出力された信号の差分を得るようにされる。そして特性可変フィルタ57aは、予め与えられた所定のアルゴリズムに従い、上記の差分に基づいて自身のフィルタ特性γ1を可変するようにされる。このようにして、ノイズキャンセルに最適とされるフィルタ特性γ1が得られる。そして、この適応信号処理部55にあっては、フィルタ56aについて、上記のようにして特性可変フィルタ57aに設定されるフィルタ特性γ1と同じフィルタ特性となるように制御する。例えば、フィルタ特性γ1として実際に得られた所定のパラメータを、所定のタイミングにより、フィルタ56aに対しても設定するようにされる。これにより、フィルタ56aから出力されるノイズキャンセル用オーディオ信号としては、外部音の状況などに適応して、常に最適とされるノイズキャンセル効果が生じるような特性が与えられることになる。
図15は、第11の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示している。
この図に示されるノイズキャンセリングシステムは、例えば図11に示した第7の実施の形態を基としている。そのうえで、LSIチップ100内において備えるDSPブロック5Aについて、ノイズキャンセル用フィルタ51及び解析・制御処理部52に加えて、デシメーションフィルタ42A、インターポレーションフィルタ61A、ノイズシェイパ62、及びPWM回路63も含めるようにして形成したものである。つまり、デシメーションフィルタ42A、インターポレーションフィルタ61A、ノイズシェイパ62、及びPWM回路63などについて、LSIチップ100内にてハードウェア的に回路を形成するのではなく、DSPにおいて実現される、よりソフトウェア的な機能により実現しようとするものである。
図16に、第12の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示す。
この図に示されるノイズキャンセリングシステムとしては、例えば上記図15においてLSIチップ100の外部にあるものとして示される、アンプ3、フィルタ7などとしての部位についても、LSIチップ100内に形成される回路として含めることとし、さらに、マイクロフォン2及びドライバ1aなどの収音、放音部位についても、LSIチップ100と一体化させようとするものである。
このような構成とする場合、マイクロフォン2については、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の技術を利用してLSIチップ100に形成することが考えられる。また、ドライバ1aについては、図示するようにしてコンデンサドライバなどを採用することが考えられる。このコンデンサドライバも、MEMSの技術を応用して形成することができる。
なお、これまでの実施の形態としての説明にあっては、フィードフォワード方式に基づいたノイズキャンセリングシステム、あるいはフィードフォワード方式に対してフィードバック方式を組み合わせたノイズキャンセリングシステムを例に挙げてきた。しかしながら、フィードバック方式のみに基づいて構成されるノイズキャンセリングシステムについても、順当な構成を考えた場合には、A/D変換部位及びD/A変換部位として、例えば図4と同様のA/Dコンバータ部4及びDAC・アンプ部6の構成を採用することになる。このことによれば、フィードバック方式のみに基づいて構成されるノイズキャンセリングシステムについても、本願発明に基づいた構成を適用できるものであり、十分な効果を期待できる。
また、これまでの実施の形態にあってLSIチップ100を備える構成に関しては、A/Dコンバータ部4、DSP5(DSPブロック5)及びDAC・アンプ部6としての部位は全て含めたうえで、所要の部位をLSIチップ100内に統合している。しかしながら、場合に応じては、例えばLSIチップ100に対して、DSP5は独立したチップやパッケージ部品などとするような構成とすることも考えられる。
また、本願発明の下では、LSIチップ100を、1つのベアチップとして捉えるだけではなく、1つのチップ部品、つまり、パッケージといわれる1部品としても扱ってもよいものする。この場合、LSIチップ100としてのパッケージの中に、A/Dコンバータ部4、DSP5(DSPブロック5)及びDAC・アンプ部6などとしての機能部位に対応した複数のチップ(ベアチップ)を実装するようにして構成とすることになる。また、この場合においては、例えば、A/Dコンバータ部4、DSP5(DSPブロック5)、DAC・アンプ部6のそれぞれに対応する3つのチップを実装する形態とされてもよいし、これらのうちの何れかが統合されて1つのチップとされてもよい。さらには、A/Dコンバータ部4、DSP5(DSPブロック5)、DAC・アンプ部6のうちの少なくとも何れか1つの部位が、2以上のチップから成るような形態とされたうえでパッケージ化されるようにすることも考えられる。例えば、DAC・アンプ部6などは、実際には後段の増幅処理の系と、これより前段のデジタル信号処理系とで、2つのチップに分けて製造することの方が効率的な場合があると考えられる。
また、上記各実施の形態においては、A/D変換部位におけるデシメーションフィルタと、D/A変換部位におけるインターポレーションフィルタについて、ともに最小位相推移型FIRとする構成、若しくは、ともにIIRフィルタとする構成を示しているが、両者のフィルタのうちの何れか一方を最小位相推移型FIRと、他方をIIRフィルタとする構成を採ることもできる。
これまでの説明から理解されるように最小位相推移型はFIRフィルタの1種とされる。従って、最小位相推移型のデジタルフィルタは、周波数に対する振幅特性については設計自由度が高く、安定性も高い。ただし、フィルタ次数(タップ数)が長くなる場合には、乗算、加算のための演算リソースを多く必要とする。
一方、IIRフィルタは、演算リソースについては大幅に削減することが可能であるが、演算器の精度がもともと低いような場合には誤差が累積していくなど、高い安定性を得ることが難しい場合がある。また、振幅特性の設計などにも制限がある。
このようにして、FIRフィルタとIIRフィルタとでは、相互にトレードオフとなるような関係で、それぞれに異なる特徴を持つ。
そこで、例えば上記のような特徴と、実際にノイズキャンセリングシステムを構築する場合の条件などを考慮し、上記のデシメーションフィルタとインターポレーションフィルタとについて、最小位相推移型FIRとIIRフィルタの何れを採用するのかを決定することも、本実施の形態のノイズキャンセリングシステムとして高性能なものを得るようにするためには、有効であると考えられる。さらに、例えばデシメーションフィルタとインターポレーションフィルタとのそれぞれ(あるいは何れか一方でもよい)について、最小位相推移型FIRによるものとIIRフィルタによるものとの2系統を用意し、そのときの使用環境、条件であるとか、外部音の解析内容などに応じて、適応的に何れか一方の系を選択できるような構成とすることも考えられる。若しくは、このようなフィルタの選択を、ユーザ操作に応じて行えるようにすることも考えられる。
さらには、本願発明としては、最小位相推移型FIR又はIIRフィルタを、A/D変換部位のデシメーションフィルタと、D/A変換部位のるインターポレーションフィルタとについての少なくとも何れか一方のみに採用した構成とされてもよいものである。このような構成であっても、例えば上記のデシメーションフィルタとインターポレーションフィルタとについて、ともに直線位相型を採用した場合と比較すれば、ノイズキャンセルのための信号処理系の遅延は短縮されることになり、従って本願発明に応じた効果を生ずるものである。
また、A/D変換部位のデシメーションフィルタと、D/A変換部位のインターポレーションフィルタに用いられるデジタルフィルタとしては、要求されるノイズキャンセル効果を満たす程度に遅延時間が小さく、例えば音質、安定性などの他の条件として一定以上の水準を満たすものでありさえすれば、最小位相推移型FIRやIIRフィルタ以外の構成も考えられるものである。
また、これまでの実施の形態にあってノイズキャンセリングシステムを実現する各部品を、どのようにして現実に装置に実装するのかであるが、この点については、実際に、本願発明に基づいたノイズキャンセリングシステムが適用される装置、システムの構成であるとか、用途などに応じて適宜任意に決定されてよい。
例えば、単体でノイズキャンセル機能を有するヘッドフォン装置を構成しようとするのであれば、ノイズキャンセリングシステムを形成するものとされるほぼ全ての部品を、ヘッドフォン装置の筐体内に納めるようにして実装することが考えられる。あるいは、ヘッドフォン装置と外部のアダプタなどのような装置のセットによりノイズキャンセリングシステムを構成しようとするのであれば、マイクロフォン、ドライバ以外の部品の少なくとも1つを、アダプタ側に実装させるようにすることが考えられる。また、ヘッドフォン装置などではなく、オーディオコンテンツを再生してヘッドフォン端子に出力するように構成されたオーディオ再生装置であるとか、携帯電話機器、ネットワーク音声通信機器などに、本願発明に基づくノイズキャンセリングシステムを実装することとした場合には、マイクロフォン、ドライバ以外の部品の少なくとも1つを、これらの機器側に実装することが考えられる。
フィードバック方式によるヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムについてのモデル例を示す図である。 図1に示したノイズキャンセリングシステムについての特性を示すボード線図である。 フィードフォワード方式によるヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムについてのモデル例を示す図である。 デジタル方式によるヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムの基本的な構成例を示すブロック図である。 本願発明における第1の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。 第2の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。 第3の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。 第4の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。 第5の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。 第6の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。 第7の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。 第8の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。 第9の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。 第10の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。 第11の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。 第12の実施の形態としてのノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。 デジタルフィルタの特性として、直線位相型FIR、最小位相推移型FIR、及びIIRの各特性を示す図である。
符号の説明
1 ヘッドフォン、1a・1b ドライバ(コンデンサドライバ)、2・21 マイクロフォン、2A,2B デジタルマイク、22 ΔΣ変調器、3 アンプ、4 A/Dコンバータ、41・41−1 ΔΣ変調器、42A・42A−1 デシメーションフィルタ(最小位相推移型FIR)、5 DSP、5A(DSPブロック)、6 DAC・アンプ部、7 フィルタ、8 RAM、8A RAMブロック、C1 コンデンサ、43・65 フィルタ設定制御部、51 ノイズキャンセル用フィルタ、51−1・51−2 IIRフィルタ、52 解析・制御処理部、53 イコライザ、61A インターポレーションフィルタ(最小位相推移型FIR)、62 ノイズシェイパ、63 PWM回路、64 パワードライブ部、100 LSI

Claims (10)

  1. 入力したアナログ信号についてデルタシグマ変調処理を実行して所定のサンプリング周波数による2ビット以上の所定の量子化ビットによる第1の形式のデジタル信号に変換したうえで、この第1の形式のデジタル信号からパルスコード変調信号としての第2の形式のデジタル信号に変換して出力するデシメーションフィルタとを有するアナログ−デジタル変換手段と、
    上記アナログ−デジタル変換手段から出力された後のデジタル信号を入力して、所定のキャンセル対象音をキャンセルするための所定の信号特性を与えて出力するようにされたキャンセル信号処理手段と、
    上記キャンセル信号処理手段から出力された上記第2の形式によるデジタル信号を入力して、デルタシグマ変調処理によりアナログ信号に変換するデジタル−アナログ変換処理を実行するもので、このデジタル−アナログ変換処理のために、入力された上記第2の形式によるデジタル信号について、上記第2の形式よりも高い所定のサンプリング周波数と、上記第2の形式よりも小さな量子化ビット数による第3の形式のデジタル信号に変換する処理を実行するインターポレーションフィルタを含むようにされたデジタル−アナログ変換手段とを備え、
    上記デシメーションフィルタと上記インターポレーションフィルタの少なくとも何れか一方について、直線位相型の有限インパルス応答システムよりも信号遅延が少ないとされる所定形式のデジタルフィルタにより形成する、
    ことを特徴とする信号処理装置。
  2. 上記直線位相型の有限インパルス応答システムよりも信号遅延が少ないとされるデジタルフィルタの形式は、最小位相推移型の有限インパルス応答システムである、
    ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  3. 上記直線位相型の有限インパルス応答システムよりも信号遅延が少ないとされるデジタルフィルタの形式は、無限インパルス応答システムである、
    ことを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  4. 上記キャンセル信号処理手段が入力すべきデジタル信号を分岐して入力して、所定の解析処理を実行する解析処理手段と、
    上記解析処理手段による解析結果に応じて、上記キャンセル信号処理手段を形成するとされるデジタルフィルタ、上記デシメーションフィルタ、及び上記インターポレーションフィルタの少なくとも何れか1つについてのフィルタ特性を変更設定するフィルタ特性可変手段とをさらに備える、
    ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  5. 上記キャンセル信号処理手段は、低域とされる所定以下の周波数帯域のキャンセル対象音成分がキャンセルされるようにするための信号特性を与えるようにしてフィルタ特性を設定するとともに、
    上記デシメーションフィルタと上記インターポレーションフィルタの少なくとも何れか一方は、上記低域よりも高いとされる周波数帯域のキャンセル対象音成分がキャンセルされるようにするための信号特性を与えるようにフィルタ特性を設定する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  6. 上記キャンセル信号処理手段には、無限インパルス応答システムのデジタルフィルタを用い、
    上記デシメーションフィルタと上記インターポレーションフィルタの少なくとも何れか一方には、最小位相推移型の有限インパルス応答システムのデジタルフィルタを用いる、
    ことを特徴とする請求項5に記載の信号処理装置。
  7. 上記アナログ−デジタル変換手段として、フィードフォワード方式によるヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムに対応するものとして設けられたマイクロフォンにより収音して得られた信号をデジタル信号に変換する第1のアナログ−デジタル変換手段と、フィードバック方式によるヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムに対応するものとして設けられたマイクロフォンにより収音して得られた信号をデジタル信号に変換する第2のアナログ−デジタル変換手段とを備え、
    上記キャンセル信号処理手段は、上記第1のアナログ−デジタル変換手段から出力されるデジタル信号について、フィードフォワード方式に対応して上記キャンセル対象音をキャンセルすることのできる所定の信号特性を与えるとともに、上記第2のアナログ−デジタル変換手段から出力されるデジタル信号について、フィードバック方式に対応して上記キャンセル対象音をキャンセルすることのできる所定の信号特性を与えるようにして構成される、
    ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  8. 上記アナログ−デジタル変換手段として、フィードフォワード方式によるヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムに対応するものとして設けられたマイクロフォンにより収音して得られた信号をデジタル信号に変換する第1のアナログ−デジタル変換手段と、フィードバック方式によるヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムに対応するものとして設けられたマイクロフォンにより収音して得られた信号をデジタル信号に変換する第2のアナログ−デジタル変換手段とを備え、
    上記キャンセル信号処理手段は、上記第2のアナログ−デジタル変換手段から出力されるデジタル信号に適応させて、上記第1のアナログ−デジタル変換手段から出力されるデジタル信号について与えるべき、キャンセル対象音をキャンセルするための信号特性が可変されるようにして、上記第1のアナログ−デジタル変換手段から出力されるデジタル信号を通過させるデジタルフィルタのフィルタ特性を可変するように構成されている、
    ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  9. 上記アナログ−デジタル変換手段と、上記キャンセル信号処理手段を少なくとも含むとされる信号処理部と、上記デジタル−アナログ変換手段としての構成を、1つのチップにおいて備えるようにした、
    ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  10. 入力したアナログ信号についてデルタシグマ変調処理を実行して所定のサンプリング周波数による2ビット以上の所定の量子化ビットによる第1の形式のデジタル信号に変換したうえで、デシメーションフィルタにより、上記第1の形式のデジタル信号をパルスコード変調信号としての第2の形式のデジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換手順と、
    上記アナログ−デジタル変換手順により出力された後のデジタル信号を入力して、所定のキャンセル対象音をキャンセルするための所定の信号特性を与えて出力するようにされたキャンセル信号処理手順と、
    上記キャンセル信号処理手順により出力された上記第2の形式によるデジタル信号を入力して、デルタシグマ変調処理によりアナログ信号に変換するデジタル−アナログ変換処理を実行するもので、このデジタル−アナログ変換処理の行程にあって、インターポレーションフィルタにより、上記第2の形式によるデジタル信号について、より高い所定のサンプリング周波数と、より小さな量子化ビット数による第3の形式のデジタル信号に変換する処理を実行するようにされたデジタル−アナログ変換手順とを実行するものとされ、
    上記デシメーションフィルタと上記インターポレーションフィルタの少なくとも何れか一方について、直線位相型の有限インパルス応答システムよりも信号遅延が少ないとされる所定形式のデジタルフィルタとしての動作を実行させる、
    ことを特徴とする信号処理方法。
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