JP2008179657A - 水性顔料分散液、及びそれを用いたインク組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明は、普通紙に印刷した場合の耐マーカー性が良好で、光沢紙に印刷した場合の定着性が良好となるインク組成物を作製できる水性顔料分散液を提供する。またサーマル方式において、長期間にわたり安定なインクの吐出を実現でき、光学濃度が高いインク組成物を提供する。
【解決手段】
少なくとも顔料、ポリウレタン、水を含有する水性顔料分散液であって、ポリウレタンを構成する水酸基を含有する全化合物中の70〜90モル%が一般式(1)で表される化合物に由来する構造で構成されたものであり、10〜30モル%が水酸基を3個以上有する化合物に由来する構造で構成されたものである水性顔料分散液。
【化1】
(R1はアルキレン基および/またはエステル基を有する炭素数13〜80の有機基を表す。R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【選択図】 なし
本発明は、普通紙に印刷した場合の耐マーカー性が良好で、光沢紙に印刷した場合の定着性が良好となるインク組成物を作製できる水性顔料分散液を提供する。またサーマル方式において、長期間にわたり安定なインクの吐出を実現でき、光学濃度が高いインク組成物を提供する。
【解決手段】
少なくとも顔料、ポリウレタン、水を含有する水性顔料分散液であって、ポリウレタンを構成する水酸基を含有する全化合物中の70〜90モル%が一般式(1)で表される化合物に由来する構造で構成されたものであり、10〜30モル%が水酸基を3個以上有する化合物に由来する構造で構成されたものである水性顔料分散液。
【化1】
(R1はアルキレン基および/またはエステル基を有する炭素数13〜80の有機基を表す。R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【選択図】 なし
Description
本発明は、分散安定性と耐熱性に優れる水性顔料分散液及びそれを用いたインク組成物に関する。特にインクジェットプリンターに使用されるインク組成物に関する。
近年、インクジェットプリンター用インクや筆記具用インクに利用される着色剤として、染料のかわりに堅牢性に優れる顔料の利用が検討されている。インクジェットにおけるインクの吐出方式としては、電圧をかけることで圧電素子を変形させインクを押し出すピエゾ方式と、加熱による発泡の際に生じる圧力によりインクをとばすサーマル方式が一般に用いられている。
民生用のインクジェットプリンター用インクでは溶媒として主に水が使用されるが、顔料は染料と異なり水に不溶なため、顔料を使用するインクジェットプリンター用インクでは顔料を微粒子の状態で水中に安定に分散させる必要がある。特に、サーマル方式では、インクが吐出時に瞬間的に400〜500℃の高温にさらされるため、高温における顔料の分散安定性が要求される。
水中で顔料微粒子を分散する方法としては、高分子分散剤を用いる方法が報告されている(特許文献1参照)。この方法では、スルホン酸基を含有するアクリル系高分子分散剤およびカルボキシル基を含有するアクリル系高分子分散剤を用いて、カーボンブラックを水中に安定に分散させている。しかし、高分子分散剤により安定化されたインク組成物において、印刷物の光学濃度を上げるためにインク中の顔料濃度を増やすと、高分子分散剤の濃度も増加してしまい、インク組成物の粘度が上昇し吐出安定性が低下するという問題があった。
一方、高分子分散剤や界面活性剤なしでカーボンブラックを水中に安定化する技術がある(特許文献2〜4参照)。これらの方法では、カーボンブラック表面に直接または多価の基を介して、カルボキシル基やスルホン酸基などの親水性官能基を導入することで、カーボンブラックを水中に安定に分散させている。しかし、このインク組成物を普通紙に印刷し、乾燥させた後、印字部分を蛍光ペンでこすると印字部分が汚れてしまい、耐マーカー性に問題があった。
顔料インクを普通紙に印刷した場合の耐マーカー性を改善する方法として、イオン性モノマー、疎水性モノマー、フッ素および/またはシロキサン鎖を有するモノマーから得られるアクリル系高分子をカーボンブラックに化学結合させる方法がある(特許文献5参照)。この方法では、アクリル系高分子中のフッ素および/またはシロキサン鎖によりカーボンブラック粒子に疎水性を与えることで、耐マーカー性を改善したインク組成物を提供している。この方法ではアクリル系高分子の重量平均分子量を3000〜20000としている。アクリル系高分子で重量平均分子量が5万以下の場合、高分子同士の絡み合いが弱いため、光沢紙に印刷した場合の顔料の定着性が不十分である。
また、カーボンブラックの耐マーカー性を向上させるために、水分散性のウレタン系高分子をインク組成物中に添加する方法がある(特許文献6参照)。特許文献6に記載されたインクジェット用インクは、水性インク中に親水性基を導入したカーボンブラックと重量平均分子量が3万以上のポリウレタン分散体を含有させることで、耐マーカー性を改善している。ポリウレタンは、ウレタン結合同士の水素結合により重量平均分子量がそれほど大きくなくても高分子同士の絡み合いが強くなることから、重量平均分子量を1万以上とすることで光沢紙に印刷した場合の顔料の定着性が良好となる。また、この方法ではポリウレタンを構成する水酸基を含有する化合物としてジメチロールプロピオン酸を用いることでポリウレタンにカルボキシル基を導入したポリウレタン分散体を合成している。しかし、ジメチロールプロピオン酸は炭素数が少ないため、ハードセグメントにカルボキシル基が導入されたポリウレタンが形成される。ハードセグメントにカルボキシル基が導入された重量平均分子量が1万以上のポリウレタンを含有するインク組成物は、高温で顔料の凝集を引き起こされやすく、サーマル方式では長期間安定して吐出することが困難である。
特開2000−154343号公報(第2頁)
特開平8−3498号公報(第2頁)
特開平10−140062号公報(第2頁)
特開平10−195360号公報(第2頁)
特開2004−115548号公報(第2頁、第11〜14頁、第28頁)
特表2005−515289号公報(第2頁、第9頁)
本発明は、普通紙に印刷した場合の耐マーカー性が良好で、光沢紙に印刷した場合の定着性が良好となるインク組成物を作製できる水性顔料分散液を提供する。さらに、高温におけるインク組成物中の顔料分散安定性が要求されるサーマル方式においても、長期間にわたり安定なインクの吐出を実現できるインク組成物を提供する。また光学濃度が高い印刷物を得ることができるインク組成物を提供する。
すなわち本発明は、少なくとも顔料、ポリウレタン、水を含有する水性顔料分散液であって、ポリウレタンを構成する水酸基を含有する全化合物中の70〜90モル%が一般式(1)で表される化合物に由来する構造で構成されたものであり、10〜30モル%が水酸基を3個以上有する化合物に由来する構造で構成されたものである水性顔料分散液である。
(R1はアルキレン基および/またはエステル基を有する炭素数13〜80の有機基を表す。R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
本発明の水性顔料分散液は、微粒子化された顔料の高温での分散安定性に優れる。また、本発明の水性顔料分散液を用いて製造されるインク組成物はサーマル方式においても長期間にわたって安定なインクの吐出を実現できる。さらに、インク組成物は普通紙および光沢紙に印刷した状態において光学濃度が高く、普通紙に印刷した状態において耐マーカー性が良好であり、光沢紙に印刷した状態において定着性が良好である。
本発明は、少なくとも顔料、ポリウレタン、水を含有する水性顔料分散液であって、ポリウレタンを構成する水酸基を含有する全化合物中の70〜90モル%が一般式(1)で表される化合物に由来する構造で構成されたものであり、10〜30モル%が水酸基を3個以上有する化合物に由来する構造で構成されたポリウレタンを用いる。
R1はアルキレン基および/またはエステル基を有する炭素数13〜80の有機基を表す。R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
ポリウレタンはイソシアネート基を有する化合物と、水酸基などの活性水素を有する化合物との付加反応により生成される。またポリウレタンにカルボキシル基やスルホン酸基などを分子鎖に導入し、中和剤を添加することで、水中に分散または溶解することができる。ポリウレタンの分子鎖にカルボキシル基を導入するには、ジメチロールプロピオン酸などのジヒドロキシカルボン酸をポリウレタンを構成する化合物として用いるのが一般的である。ポリウレタンのウレタン結合同士が水素結合によって結合している部分は、ウレタン結合の濃度が高い部分でありハードセグメントとなる。他方、ウレタン結合の濃度が小さい部分がソフトセグメントとなる。ウレタン結合の濃度の制御は、一般にウレタン結合を作る水酸基などの活性水素を有する化合物の水酸基に付いている炭素の数に依る。水酸基を含有する化合物としてジメチロールプロピオン酸などのジヒドロキシカルボン酸を用いると、水酸基に付いている炭素数が小さいため、カルボキシル基はハードセグメントに導入されることになる。ポリウレタンの重量平均分子量が1万以上である場合、カルボキシル基がハードセグメントに導入されたポリウレタンでは、それを用いた水性顔料分散液において高温で顔料の分散状態が不安定化し、またインク組成物はサーマル方式では長期間安定して吐出することが困難となる。
一般式(1)で表される化合物のR1中に含まれる炭素数は13〜80の範囲であるが、13以上であるとカルボキシル基が導入された部分の柔軟性が十分に大きくなり、カルボキシル基が導入された部位がソフトセグメントとなる。ポリウレタンの重量平均分子量が1万以上であっても、カルボキシル基がソフトセグメントに導入されているので、そのポリウレタンを含有する顔料分散液は耐熱性が良好で、インク組成物のサーマル吐出特性が安定化する。一方、一般式(1)で表される化合物のR1中に含まれる炭素数が80よりも大きい場合には、分子鎖中のカルボキシル基の含有率が少なくなるので、ポリウレタンの親水性が低下し、ポリウレタンを含有する顔料分散液の耐熱性が低下する。
サーマル吐出特性が良好で普通紙に印刷した場合の耐マーカー性が良好となるインク組成物を得るためには、本発明で用いるポリウレタンにおいて一般式(1)で表される化合物と、水酸基を3個以上有する化合物を用いることが必要である。水酸基を3個以上有する化合物により、ポリウレタンのハードセグメントに3次元網目構造が形成され、ポリウレタンの耐擦過性および耐水性が向上する。このポリウレタンを含有するインクから得られた印刷物部分を水性の蛍光ペンで擦った際に、3次元網目構造が形成されたポリウレタンにより顔料粒子が保護され、顔料粒子がマーカーペン中の水に溶出しにくくなる。
水酸基を含有する全化合物中に含まれる一般式(1)で表される化合物の量は70〜90モル%であり、好ましくは75〜85モル%の範囲である。一般式(1)で表される化合物の含有量が70モル%より小さいと、ポリウレタンを含有する水性顔料分散液は耐熱性が不良でインク組成物のサーマル吐出特性が不安定化し、一般式(1)で表される化合物の含有量が75モル%より小さいとポリウレタンを含有するインク組成物より得られた印刷物の光学濃度が低くなる場合がある。また、水酸基を含有する全化合物中に含まれる水酸基を3個以上有する化合物の量は10〜30モル%であり、好ましくは15〜25モルの範囲である。
水酸基を3個以上有する化合物の含有量が10モル%より小さいとインク組成物から得られる印刷物の耐マーカー性が不良となる。
ポリウレタン合成時に水酸基を含有する全化合物中に含まれる一般式(1)で表される化合物の仕込み量を70〜90モル%とし、水酸基を3個以上有する化合物の仕込み量を10〜30モル%とすることで、ポリウレタンを構成する水酸基を含有する全化合物中の一般式(1)の化合物の含有量を70〜90モル%の範囲とし、水酸基を3個以上有する化合物の含有量を10〜30モル%の範囲とすることができる。
なお、インク組成物中の一般式(1)で表される化合物および水酸基を3個以上有する化合物は、例えばつぎのような方法により分析することができる。インク組成物に塩酸等を添加し顔料とポリウレタンを析出させた後、遠心分離、水洗ろ過、真空乾燥を行い、インク組成物中から顔料とポリウレタンを抽出する。顔料とポリウレタンをテトラヒドロフランなどのポリウレタンのみを溶解する溶媒中に投入後、遠心分離、水洗ろ過、真空乾燥を行い、ポリウレタンを抽出する。ポリウレタンにピリジンなどを添加し、50〜100℃で加熱しウレタン結合を分解し、高速液体クロマトグラフィーを用い、ポリウレタンを構成する全ての水酸基を含有する化合物を分取する。質量分析装置を用いて分取した各水酸基を含有する化合物の水酸基数、分子量および重量比を推定し、また、核磁気共鳴分光装置と赤外分光装置を用いカルボキシル基の有無を推定し、一般式(1)で表される化合物および水酸基を3個以上有する化合物を推定する。上記のような方法を組み合わせて、水酸基を含有する全化合物中に含有される一般式(1)で表される化合物および水酸基を3個以上有する化合物のモル比を推定することが可能である。
一般式(1)で表される化合物のR1は、アルキレン基および/またはエステル基を有する炭素数13〜80の有機基を表す。一般式(1)で表される化合物は、R1に含まれる炭素数が13〜80の範囲を満たせばよく、一般にポリマー、オリゴマーと称される範囲のいずれの態様にも限定されない。R1は直鎖であっても分岐していてもどちらでもよいが、直鎖であるほうがポリウレタンにおいてカルボキシル基が導入された部分の柔軟性が大きくなるため好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、カルボン酸変性ポリカプロラクトンジオールであることが、ポリウレタンの耐熱性、耐光性、耐水性の点などから好ましい。カルボン酸変性ポリカプロラクトンジオールは、ジヒドロキシカルボン酸にラクトン類を開環付加重合させて得られるポリエステルジオールである。
本発明で用いるカルボン酸変性ポリカプロラクトンジオールは、例えばダイセル化学工業(株)製“プラクセル”205BA、210BA、220BAなどが挙げられる。また合成する場合は、例えば次のような方法が挙げられる。ジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸などのジヒドロキシカルボン酸にある水酸基をε−カプロラクトン、トリメチルカプロラクトンなどのラクトン類で反応温度110〜220℃で開環付加重合させることで合成する。
一方、水酸基を3個以上有する化合物の例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチルロールエタン、ペンタエリスリトール、アルキルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、フルクトース、グリコース、ヒドロキシエチルグルコシド、スクロースおよびヒドロキシプロピルグルコシドなどが挙げられ、水酸基を3個有する化合物であるグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチルロールエタンであることが、ポリウレタンを含有するインク組成物のサーマル吐出特性が良好となるため好ましい。
本発明で用いるポリウレタンは、例えば次のような方法により合成することができる。一般式(1)で表される化合物、水酸基を3個以上有する化合物、およびジイソシアネートを、アセトン、メチルエチルケトンなどの低沸点の水溶性有機溶剤中で反応させる。反応は、温度30〜100℃で、1〜24時間行い、ウレタンプレポリマーを合成する。この合成反応時には、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネート、N,N−ジエチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどの触媒を用いてもよい。得られたウレタンプレポリマー溶液に中和剤と水を添加する。その後、鎖延長反応などを行う。低沸点の水溶性有機溶媒を除去した後、ポリウレタンを得る。得られたポリウレタンは、ソフトセグメントにカルボキシル基が導入され、ハードセグメントに3次元網目構造が形成される。
ポリウレタンを合成する際に用いるジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートの例としてヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられ、脂環式ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4−シクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられ、芳香族ジイソシアネートの例としては、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。本発明では脂環式及び脂肪族のジイソシアネートを用いることが、ポリウレタンを含有するインク組成物から得られる印画の耐光性が良好となり好ましい。
ポリウレタンを合成する際に用いる中和剤としては、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノールなどの有機アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ類などが挙げられる。
前述のウレタンプレポリマーを合成する際に用いる水酸基を含有する化合物とジイソシアネートをあわせた成分と低沸点水溶性溶媒との重量比は、通常、水酸基を含有する化合物とジイソシアネートをあわせた成分:低沸点水溶性溶媒=3〜9:7〜1、好ましくは4〜8:6〜2で混合される。水酸基を含有する化合物とジイソシアネートをあわせた成分の量が多すぎると、ウレタンプレポリマー溶液の粘度が高くなりすぎ、製造が容易でない場合がある。一方、少なすぎると、ウレタンプレポリマーの重合度が小さくなりすぎるおそれがある。
ウレタンプレポリマーを合成する際に用いるジイソシアネート中のイソシアネート基と水酸基を含有する化合物中の水酸基とのモル比は、イソシアネート基:水酸基=51〜80:49〜20、好ましくは51〜70:49〜30である。イソシアネート基と水酸基のモル比を上記の範囲とすることで、最終的に得られるポリウレタンの重量平均分子量を好ましい範囲にすることができ、サーマル吐出特性と光沢紙に対する定着性が良好となる。
ウレタンプレポリマー合成に用いるアセトン、メチルエチルケトン等の低沸点有機溶媒は、ポリウレタンが得られた後にロータリーエバポレーターやアスピレーターなどを用いて、通常、減圧化、40〜100℃の温度で数時間処理することにより除去される。低沸点有機溶媒とともに一部の水も除去される場合には、ポリウレタンが析出またはゲル化しないように水を適宜加えることが好ましい。アセトン、メチルエチルケトン等の低沸点有機溶媒はできるだけ残留しないことが好ましいが、中和剤含有水溶液中のポリウレタンに対して、0.1〜1000ppm、好ましくは1〜500ppmの範囲に収まればよい。低沸点有機溶媒の濃度が1000ppmより高いと、ポリウレタンを含有する水性顔料分散液およびインク組成物に刺激臭が残る場合がある。一方、低沸点有機溶媒の濃度を0.1ppmにしようとすると生産効率が低下する場合がある。
本発明で用いるポリウレタンは通常、ウレタンプレポリマーを中和剤含有水溶液に分散または溶解させた後に鎖延長反応を行うことによって得られる。鎖延長反応は鎖延長剤と末端がイソシアネート基であるウレタンプレポリマーを温度50℃〜100℃で混合することにより行う。鎖延長剤としては水および/またはアミンを用いることが好ましく、アミンとしてはエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
本発明で用いるポリウレタンの酸価は、好ましくは50〜80KOH・mg/gである。酸価が50KOH・mg/gより小さいと、ポリウレタンの親水性が低すぎるためポリウレタンを含有するインク組成物のサーマル吐出特性が不安定化する場合がある。一方、ポリウレタンの酸価が80KOH・mg/gより大きいと、ポリウレタンの親水性が高すぎるためポリウレタンが含有するインク組成物から得られる印刷物の耐マーカー性が低下する場合がある。
ポリウレタンの酸価は、一般式(1)で表される化合物の酸価及びポリウレタン全量に対する一般式(1)で表される化合物の含有量によって制御可能である。ポリウレタンの酸価を上記の範囲にする場合は、本発明の一般式(1)で表される化合物の酸価は50KOH・mg/g以上であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物の酸価が50KOH・mg/gより小さいと、ポリウレタンの酸価も50KOH・mg/gより小さくなるため、ポリウレタンを含有する水性顔料分散液の耐熱性が不良となる場合がある。
本発明において、ポリウレタンの酸価は、ポリウレタン1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数を意味する。本発明ではポリウレタンの酸価の測定は次のように行う。塩酸水溶液などをポリウレタンに滴下し、ポリウレタンを析出させた後、上澄みをろ過し、イオン交換水によりポリウレタンの水洗を十分に行う。その後、100℃以上の温度で数時間乾燥させることで、ポリウレタンから中和剤、塩酸、水などを完全に取り除いた後、ポリウレタンをエタノールに10重量%以下の濃度で溶解させる。ポリウレタンが完全にエタノールに溶解しない場合には、メチルエチルケトンなどの水溶性有機溶媒を添加して溶解させる。このようにしてポリウレタンの酸価測定用のサンプル作製を行う。JIS(日本工業規格)K0070に基づき、このポリウレタン溶液にフェノールフタレイン溶液を数滴加えた後、0.1モル/lの水酸化カリウム溶液を用いて滴定を行い、ポリウレタンの酸価を算出する。
一般的に高分子は、重量平均分子量が大きくなるほど、高分子同士の絡み合い強くなるため、光沢紙上での顔料の定着性が良好となる。しかし、ポリウレタンはウレタン結合同士の水素結合により高分子同士が強く絡み合うため、一般的な高分子と異なり重量平均分子量をそれほど大きくしなくても光沢紙上での顔料の定着性が良好となる。本発明で用いるポリウレタンは、重量平均分子量が好ましくは10000〜50000、より好ましくは11000〜40000の範囲にある。ポリウレタンの重量平均分子量が10000より小さいと、ポリウレタンを含有するインク組成物から得られる印刷物の光沢紙に対する定着性が低下する場合がある。ポリウレタンの重量平均分子量が50000より大きいと、ポリウレタンを含有するインク組成物の粘度が上昇しサーマル吐出特性が不良となる場合があり、ポリウレタンの重量平均分子量が40000より大きいと、ポリウレタンを含有するインク組成物から得られる印画の光学濃度が小さくなりやすい。
本発明において、ポリウレタンの分子量の測定は、ゲルパーミエーション・クロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算で求めることができる。ポリウレタンの分子量は、水酸基を含有する化合物の分子量、ジイソシアネートの分子量、水酸基を含有する化合物中の水酸基とジイソシアネート中のイソシアネート基とのモル比、ポリウレタンの合成条件などによって制御可能である。
本発明で用いる水としては、不純物イオンを除去したものが良く、例えばイオン交換水や蒸留水など好適に使用される。
本発明で用いられる顔料としては、有機顔料、無機顔料を使用することができる。好ましくはイオン交換水や蒸留水などで十分に不純物イオンを洗浄したものを用いることが望まれる。
本発明で用いる無機顔料としては、酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラックなど種々の系統のものが挙げられる。インクジェットプリンターに用いるブラックインクとしてはカーボンブラックが好ましく、カーボンブラックとしてはアセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラックなどが挙げられる。一般に市販されているカーボンブラックの例としては、リーガル400R、リーガル330R、リーガル660R(以上、キャボット社製)、カラーブラックFW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4(以上、デグッサ社製)、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、(株)三菱化学製)などが挙げられる。
分散安定性と耐熱性に優れる水性顔料分散液を得るためには、酸化処理されたカーボンブラックを用いるのが好ましい。酸化処理されたカーボンブラックを得るために、例えば次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウムなどの次亜ハロゲン酸塩による酸化の方法が挙げられ、次亜塩素酸ナトリウムが反応性の点から特に好ましい。カーボンブラックの酸化は、カーボンブラックと、有効ハロゲン濃度で10〜30%の次亜ハロゲン酸塩(例えば次亜塩素酸ナトリウム)とを適量の水中に仕込み、反応温度80〜120℃で撹拌することにより行う。なお、酸化処理カーボンブラックの合成の際に、塩素イオンなどがこれらの化合物に混入する場合がある。塩素イオンには静電反発力を低下させ顔料凝集を引き起こす作用があるため、この混入量をできる限り減少させる方がよい。酸化処理カーボンブラック中の塩素イオンなどの不純物イオンは透析などにより取り除くのが好ましい。
本発明で用いる有機顔料としてはフタロシアニン系、キナクリドン系、インジゴ系、イソインドリノン系、イソインドリン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ペリノン系、ジオキサジン系、アントラキノン系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、金属錯体系など種々の系統のものが挙げられる。
フタロシアニン系顔料の例としては、青色顔料PB15、PB15:2、PB15:3、PB15:4、B15:5、PB15:6、PB16、緑色顔料PG7、PG36などが挙げられる。
キナクリドン系顔料の例としては、紫色顔料PV19、PV42、赤色顔料PR122、PR192、PR202、PR206、PR207、PR209、橙色顔料PO48、PO49などが挙げられる。
インジゴ系顔料の例としては、青色顔料PB63、PB66、赤色顔料PR88、PR181などが挙げられる。
イソインドリノン系顔料の例としては、黄色顔料PY109、PY110、PY173、橙色顔料PO61などが挙げられる。
イソインドリン系顔料の例としては、赤色顔料PR260、黄色顔料PY139、PY185、橙色顔料PO66、PO69などが挙げられる。
キノフタロン系顔料の例としては、黄色顔料PY138などが挙げられる。
ジケトピロロピロール系顔料の例としては、赤色顔料PR254、PR255、PR264、PR272、橙色顔料PO71、PO73などが挙げられる。
ベンズイミダゾロン系顔料の例としては、紫色顔料PV32、赤色顔料PR171、PR175、PR176、PR185、PR208、黄色顔料PY120、PY151、PY154、PY156、PY175、PY180、PY181、PY194、橙色顔料PO36、PO60、PO62、PO72などが挙げられる。
ペリレン系顔料の例としては、紫色顔料PV29、赤色顔料PR123、PR149、PR178、PR179、PR190、PR224などが挙げられる。
ペリノン系顔料の例としては、赤色顔料PR194、橙色顔料PO43などが挙げられる。
ジオキサジン系の例としては、紫色顔料PV23、PV37などが挙げられる。
アントラキノン系顔料の例としては、青色顔料PB60、赤色顔料PR168、PR177、黄色顔料PY24、PY108、PY147、PY193、橙色顔料PO51などが挙げられる。
不溶性アゾ系顔料の例としては、赤色顔料PR1、PR2、PR3、PR4、PR5、PR6、PR7、PR8、PR9、PR10、PR11、PR12、PR13、PR14、PR15、PR16、PR17、PR18、PR20、PR21、PR22、PR23、PR31、PR32、PR37、PR38、PR41、PR95、PR111、PR112、PR114、PR119、PR136、PR146、PR147、PR148、PR150、PR164、PR170、PR184、PR185、PR187、PR188、PR210、PR212、PR213、PR222、PR223、PR238、PR245、PR253、PR256、PR261、PR266、PR267、PR268、PR269、黄色顔料PY1、PY2、PY3、PY5、PY6、PY10、PY12、PY13、PY14、PY17、PY49、PY55、PY60、PY63、PY65、PY73、PY74、PY75、PY81、PY83、PY87、PY90、PY97、PY98、PY106、PY111、PY113、PY114、PY116、PY121、PY124、PY126、PY127、PY130、PY136、PY152、PY154、PY165、PY167、PY170、PY171、PY172、PY174、PY176、PY188、橙色顔料PO1、PO2、PO5、PO6、PO13、PO15、PO16、PO22、PO24、PO34、PO36、PO38、PO44などが挙げられる。
縮合アゾ系顔料の例としては、赤色顔料PR144、PR166、PR214、PR220、PR221、PR242、PR248、PR262、黄色顔料PY93、PY94、PY95、PY128、PY166、橙色顔料PO31などが挙げられる。
金属錯体系顔料の例としては緑色顔料PG10、黄色顔料PY117、PY129、PY153、PY177、PY179、PY257、PY271、橙色顔料PO59、PO65、PO68などが挙げられる。
顔料として有機顔料を用いる場合、分散安定性と耐熱性に優れる水性顔料分散液を得るためには、有機顔料の化学構造にスルホン酸基が導入された構造の顔料誘導体および/または該有機顔料の化学構造と一部が共通する化学構造にスルホン酸基が導入された構造の顔料誘導体を含有することが好ましい。本発明のスルホン酸基が導入された顔料誘導体とは、用いる有機顔料と同じ顔料にスルホン酸基が導入された顔料誘導体、または用いる有機顔料が有する化学構造の一部と同一の化学構造を有する顔料にスルホン酸基が導入された顔料誘導体の2種類を指し、それぞれを単独でも、混合して用いてもよい。例えば、キナクリドン系赤色顔料PR122を用いる場合、PR122にスルホン酸基が導入された顔料誘導体、もしくはPR122と一部の化学構造が同一である赤色顔料PR209にスルホン酸基が導入された顔料誘導体をそれぞれ単独か、あるいは組み合わせて用いられる。これらの顔料と顔料誘導体は分子間力により強く結合し、微粒子表面を負帯電させる。
本発明で用いられるスルホン酸基が導入された顔料誘導体は、例えば次のような方法により合成される。前記の有機顔料を濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、またはこれらの混合液などに投入してスルホン化反応を行う。得られた反応液を水で希釈し、場合により中和剤で中和する。このようにして得られた懸濁液をろ過した後に水系の洗浄液で洗浄し、乾燥する。
本発明において、有機顔料とスルホン酸が導入された顔料誘導体との混合比は、重量比で有機顔料:スルホン酸基が導入された顔料誘導体=50〜99:50〜1、好ましくは60〜97:40〜3で混合される。顔料誘導体の量が少なすぎれば顔料分散安定化効果が発揮されず、逆に顔料化誘導体の量が多すぎれば、色調が好ましくないほど変化する可能性が生じる。
上記の方法で作製した水性顔料分散液において、スルホン酸基が導入された顔料誘導体を合成する際に、硫酸イオンがこれらの化合物に混入する場合がある。硫酸イオンには静電反発力を低下させ顔料凝集を引き起こす作用があるため、この混入量をできる限り減少させる方がよい。スルホン酸基が導入された顔料誘導体中の硫酸イオンなどの不純物イオンは透析などにより取り除くのが好ましい。
本発明の水性顔料分散液は、水中で多数の一次粒子の集合体である顔料の粗大粒子(通常1〜50μm)に剪断応力を印加し、顔料の粗大粒子を一次粒子または少数の一次粒子の集合体の粒子に微細化して分散することによって作製する。
水中で粗大粒子に剪断応力を印加するための分散機としては、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、3本ロールミル、アトライターなどを用いる方法が好ましく採用される。粗大粒子を一次粒子または少数の一次粒子の集合体まで効率よく微細化するためには、分散メディアにより剪断応力を印加するのが好ましく、分散メディアとしてはジルコニアビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズなどを用いることができる。
本発明において顔料とポリウレタンの混合比は重量比で、顔料:ポリウレタン=3〜9:7〜1、好ましくは4〜8:6〜2である。顔料の量が少なすぎればインク組成物から得られる印画の光学濃度が小さくなり、顔料の量が多すぎれば光沢紙への定着性が不良となる。顔料とポリウレタンを混合するタイミングは、顔料の粗大粒子を微細化して分散する前、分散する途中、分散した後のいずれでもよい。
本発明のポリウレタンと顔料を含有する水性顔料分散液のpHは、好ましくは6〜10の範囲にある。水性顔料分散液のpHが6より小さいと水性顔料分散液中のポリウレタンが沈殿する場合がある。pHが10よりも大きいと水性顔料分散液の分散安定性と耐熱性が低下する場合がある。本発明の水性顔料分散液のpHは、例えば、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノールなどの有機アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ類などにより適切な範囲に調整できる。
本発明ではポリウレタンと顔料を含有する水系顔料分散液の表面張力を調節するために水溶性有機溶媒を用いてもよい。水溶性有機溶媒は、その比誘電率が5〜200、好ましくは10〜100の範囲のものを用いることがよい。水溶性有機溶媒の非誘電率が小さすぎると、水性顔料分散液の比誘電率も小さくなるために、顔料粒子間の静電反発力が弱くなり、分散安定性が低下する。
上記の範囲を満たす水溶性有機溶媒の例としては、エーテル類、アルコール類、エーテルアルコール類、エステル類、ケトン類、酸類、アミン類、酸アミド類などの種々のものを使用することができ、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどを使用することができる。
本発明において、水性顔料分散液の25℃での表面張力は好ましくは25〜60mN/m、より好ましくは30〜50mN/mの範囲である。表面張力が60mN/mより大きいと顔料の水への濡れ性が悪いために粗大粒子が残りやすい。また、表面張力が50mN/mより大きいと分散機の分散エネルギーを均一に顔料粒子に伝達するのが難しくなり、顔料粒径の均一な顔料分散液を得ることが困難となる場合がある。一方、水性顔料分散液の表面張力が小さすぎると、インク組成物の表面張力も小さくなるために、インクの紙への浸透性が高くなり滲みの原因となる場合がある。
本発明の水性顔料分散液の表面張力は、水と水溶性有機溶媒との混合比を重量比で、水:水溶性有機溶媒=95〜50:5〜50にすることで、上記の範囲に制御することができる。
本発明の水性顔料分散液において、水性顔料分散液全体に対する顔料の含有量は、8〜20重量%、好ましくは10〜16重量%である。含有量が小さすぎると分散液の製造効率が低くコストがかさむ。一方含有量が大きすぎると分散状態を安定化させることが非常に困難となる。
本発明のポリウレタンと顔料を含有する水性顔料分散液の顔料分散性は、顔料分散液のCasson降伏値を測定することにより評価することができる。Casson降伏値は好ましくは1×10−2Pa以下、より好ましくは1×10−3Pa以下である。この範囲にあると、顔料の分散性は安定であるといえる。
顔料の分散性は、前記の次亜ハロゲン酸塩により酸化処理されたカーボンブラックやスルホン酸基が導入された顔料誘導体を用いることなどにより制御できる。
本発明において、ポリウレタンを含有する水性顔料分散液中の顔料粒子(一次粒子または少数の一次粒子の集合体)の分散状態における粒径は、体積基準の算術平均粒径で5〜200nm、好ましくは10〜100nmの範囲にあることが好ましい。
分散状態における顔料の粒径が大きすぎるとインクジェットノズルの目詰まりを引き起こす可能性が高くなる。一方、分散状態における顔料の粒径が小さすぎると、顔料の比表面積が大きくなりすぎ、顔料の分散状態が不安定化しやすくなる場合がある。Casson降伏値が1×10−2Pa以下である水性顔料分散液は、微細化して分散した顔料の分散状態が安定であるため、希釈、加熱などの処理を行った場合でも、長期間保存した場合でも顔料の分散粒径が凝集などにより変化することなく保持される。
また、顔料の最大分散粒径は5μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下であることが望ましい。顔料の最大分散粒径が大きいと、顔料がインク吐出口につまり、ノズルの目詰まりを引き起こす可能性が高くなる。
ポリウレタンと顔料を含有する水性顔料分散液の粘度は1〜50mPa・s、好ましくは3〜10mPa・sの範囲にあることが好ましい。この範囲にあるとインク吐出に適当な粘度のインク組成物を作製することが容易となる。ポリウレタンと顔料を含有する水性顔料分散液の粘度を前記の範囲に収めるには、ポリウレタンを構成する水酸基を含有する全化合物中の一般式(1)で表される化合物および水酸基を3個以上有する化合物の含有量、ポリウレタンの酸価、ポリウレタンの分子量などを適切に制御し、さらに、前記の次亜ハロゲン酸塩により酸価処理されたカーボンブラックやスルホン酸基が導入された顔料誘導体を用いることで得られる。
本発明の水性顔料分散液の高温における顔料分散安定性は、65℃で30日間処理し、処理前後の粘度の変化率を測定することにより評価することができる。処理前後の粘度の変化率は好ましくは50%以下、より好ましくは10%以下であるの望ましい。
次に、本発明の水性顔料分散液を用いたインク組成物について説明する。上記のようにして得られた水性顔料分散液を水で希釈し、必要に応じて、各種添加物を加え、インク組成物が得られる。
本発明のインク組成物をインクジェットプリンターに用いる場合には、インク組成物の粘度が10mPa・s以下、好ましくは5mPa・s以下であることが望ましい。粘度が大きいと適当なサイズのインク滴を発生させてそれをとばすことが困難になる。インク組成物の粘度を10mPa・s以下にするには、前記の粘度を1〜50mPa・sの範囲に調製した水性顔料分散液に、適切な量の水のほかに各種添加剤を顔料の分散状態を不安定化させない範囲で適宜加えて希釈する。
本発明のインク組成物の降伏値は好ましくは1×10−2Pa以下、より好ましくは1×10−3Pa以下である。この範囲にあると、顔料の分散性は安定であるといえる。インク組成物の降伏値を1×10−2Pa以下にするには、前記のようにして降伏値を1×10−2Pa以下に調製したポリウレタンを含有する水性顔料分散液に、適切な量の水のほかに各種添加剤を顔料の分散状態を不安定化させない範囲で適宜加えて希釈する。
本発明のインク組成物の25℃での表面張力は好ましくは30mN/m以上である。インク組成物の表面張力が30mN/mより小さいと、インクの紙への浸透性が高くなり滲みの原因となる。
本発明のインク組成物において、顔料のインク組成物全体に対する濃度は1〜16重量%が好ましく、より好ましくは2〜8重量%である。顔料が少なすぎるとインク組成物から得られる印画の着色力が小さくなり良好な描画ができなくなる。また、顔料が多すぎるとインクジェットノズルで目詰まりを起こす可能性が高くなる。
本発明のインク組成物をインクジェットプリンターに用いる場合、インクジェットノズル部分でインク組成物が乾燥することを防止したり、インク組成物の基材への塗れ性や浸透性を改善したりする目的で、水溶性の有機溶媒を含有してもよい。使用される水溶性有機溶媒の例としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類、γ−ブチロラクトンやN−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、ジメチエルスルホキシドなどのほか、アセチレングリコール類、アセチレンアルコール類、アルキレングリコール類などが挙げられる。これらの水溶性有機溶媒の量は、インク組成物に含まれる全溶媒の50重量%以下が好ましい。50重量%を越えて水溶性有機溶媒を含有させた場合、顔料の分散状態が不安定化することがある。
本発明のインク組成物には、カビや細菌の混入を防止する目的で防腐剤を添加することができる。ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩などを好適に用いることができる。これらは、インク組成物中に0.05〜1重量%含有される。これらの添加量が少ないとカビや細菌の混入防止効果が発揮されず、添加量が多すぎると顔料の分散状態の不安定化を引き起こす可能性が生じる。
本発明のインク組成物のpHは好ましくは7.5〜9.5の範囲にある。pHがこの範囲にないと、ポリウレタンが析出する場合がある。pHを上記の範囲とすることによってポリウレタンを含有するインク組成物のサーマル吐出特性が良好となり、さらにインク組成物から得られる印刷物の耐マーカー性も良好となる。インク組成物のpHは、上記したような有機アミン類、水酸化カリウムの無機アルカリ類などやリン酸などの緩衝液を用いて適宜調整することができる。
本発明のインク組成物を印刷するための基材の例としては、普通紙、リサイクル紙、光沢紙、写真用紙、OHPフィルムなどが挙げられる。
本発明において、顔料としてカーボンブラックを用いたインク組成物から得られる印画の光学濃度は、基材として普通紙を用いた場合は、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上であり、基材として光沢紙を用いた場合は、好ましくは2以上、より好ましくは2.2以上である。普通紙を用いた場合でも光沢紙を用いた場合でも、光学濃度が小さすぎると印画の着色力が小さくなり良好な印画を得ることが困難となる。普通紙を用いた場合の印画の光学濃度を1以上とし、光沢紙を用いた場合の印画の光学濃度を2以上とするためには、インク組成物全量に対する顔料濃度を1〜16重量%、好ましくは2〜8重量%とし、インク中の顔料とポリウレタンの混合比を重量比で、顔料:ポリウレタン=3〜9:7〜1、好ましくは4〜8:6〜2の範囲にするとよい。さらにポリウレタンを構成する水酸基を含有する全化合物中での一般式(1)で表される化合物および水酸基を3個以上有する化合物の含有量、ポリウレタンの酸価、ポリウレタンの分子量などを適切に制御することが求められる。光学濃度の測定は、例えば光学濃度計(GRETAG社製、SPECTROEYE)を用い、光源D50、視野角2度で測定することができる。
本発明のインク組成物から得られる印刷物の耐マーカー性は、例えばつぎのような方法により評価することができる。基材として普通紙を用いてインク組成物から得られた印字部分を蛍光ペンで擦り、印刷物に尾引きなどの汚れが無いかを目視で確認する。また蛍光ペンの先に印画による汚れが付着してないかを目視で確認する。
本発明のインク組成物から得られる印画の定着性は、基材として光沢紙を用いた場合は、例えば次のような方法により評価することができる。インク組成物から得られた印画のセロハンテープ剥離試験を行い、剥離後のセロハンテープを光沢紙上に貼り付け、そのセロハンテープの光学濃度を光学濃度計により測定する。印画の剥離試験を行った後のセロハンテープの光学濃度は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。印画の剥離を行っていないセロハンテープを光沢紙に貼り付けた場合の光学濃度は通常0.1程度となるために、剥離試験を行った後のセロハンテープの光学濃度の下限は0.1と推定される。
本発明のインク組成物は室温、及び高温下のいずれにおいても顔料の分散状態が安定で、長期間にわたりインクの吐出が可能であるため、サーマル方式のインクジェットプリンターにも使用できる。さらに、インク組成物は普通紙および光沢紙に印刷した状態において光学濃度が高く、普通紙に印刷した状態において耐マーカー性が良好であり、光沢紙に印刷した状態において定着性が良好である。本発明のインク組成物はインクジェットプリンターなどのカラー印刷を行う広範な分野で利用できる。
以下、好ましい実施態様を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例中のポリウレタン、ポリウレタンと顔料を含有する水性顔料分散液、及びインク組成物の各評価は以下の方法で行った。
<評価方法>
ポリウレタンの酸価測定
JIS(日本工業規格)K0070に基づいて、中和滴定法によりポリウレタンの酸価の測定を室温で行った。ポリウレタンの中和剤含有水溶液中にイオン交換水を加え、ポリウレタン濃度5重量%に調製した。ポリウレタン濃度5重量%の中和剤含有水溶液をビーカー中で撹拌しながら、0.1モル/l塩酸水溶液をポリウレタンが完全に析出するまで添加した。上澄みをろ過後、イオン交換水によるポリウレタンの水洗を行った。ポリウレタンの水洗ろ過を10回行った後、100℃で2時間乾燥させることで、ポリウレタンから中和剤と塩酸と水を完全に取り除いた。ポリウレタンをエタノールとともに3角フラスコに加えて、ポリウレタン濃度4重量%に調製した後、フェノールフタレイン溶液を数滴加え、試料が完全に溶けるまで十分に振り混ぜた。ポリウレタンが完全にエタノールに溶解しない場合には、ポリウレタンが完全に溶解するまでメチルエチルケトンを添加した。次に0.1モル/lエタノール性水酸化カリウム溶液をビュレットに投入し、室温にてポリウレタン溶液の滴定を行った。指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを終点とした。酸価は次の式より算出した。
ポリウレタンの酸価測定
JIS(日本工業規格)K0070に基づいて、中和滴定法によりポリウレタンの酸価の測定を室温で行った。ポリウレタンの中和剤含有水溶液中にイオン交換水を加え、ポリウレタン濃度5重量%に調製した。ポリウレタン濃度5重量%の中和剤含有水溶液をビーカー中で撹拌しながら、0.1モル/l塩酸水溶液をポリウレタンが完全に析出するまで添加した。上澄みをろ過後、イオン交換水によるポリウレタンの水洗を行った。ポリウレタンの水洗ろ過を10回行った後、100℃で2時間乾燥させることで、ポリウレタンから中和剤と塩酸と水を完全に取り除いた。ポリウレタンをエタノールとともに3角フラスコに加えて、ポリウレタン濃度4重量%に調製した後、フェノールフタレイン溶液を数滴加え、試料が完全に溶けるまで十分に振り混ぜた。ポリウレタンが完全にエタノールに溶解しない場合には、ポリウレタンが完全に溶解するまでメチルエチルケトンを添加した。次に0.1モル/lエタノール性水酸化カリウム溶液をビュレットに投入し、室温にてポリウレタン溶液の滴定を行った。指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを終点とした。酸価は次の式より算出した。
A=B×5.611/S
A:酸価
B:滴定に用いた0.1モル/lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
S:ポリウレタンの重量(g) 。
A:酸価
B:滴定に用いた0.1モル/lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
S:ポリウレタンの重量(g) 。
ポリウレタンの重量平均分子量測定
ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(water社製water410)を使用して、ポリウレタンの平均分子量測定を行った。まず、標準試料として重量平均分子量/数平均分子量が1.1以下で、重量平均分子量が1300、9700、21000、66000、370000であるポリスチレンをテトラヒドロフランに0.2重量%になるように溶解させた。ポリスチレンの分子量の測定は有機溶媒系GPC用充填カラム(昭和電工(株)製KF−804L)を使用し、カラム温度40℃、流速0.8ml/minで行った。得られたポリスチレンの保持時間とピーク強度から保持時間と分子量の検量線を作製した。つぎに、ポリウレタン濃度が0.2重量%になるようテトラヒドロフランに溶解させ、上記と同様の測定条件により、ポリウレタンの保持時間とピーク強度を測定し、ポリスチレンで作製した検量線を用いてポリウレタンの重量平均分子量を算出した。
ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(water社製water410)を使用して、ポリウレタンの平均分子量測定を行った。まず、標準試料として重量平均分子量/数平均分子量が1.1以下で、重量平均分子量が1300、9700、21000、66000、370000であるポリスチレンをテトラヒドロフランに0.2重量%になるように溶解させた。ポリスチレンの分子量の測定は有機溶媒系GPC用充填カラム(昭和電工(株)製KF−804L)を使用し、カラム温度40℃、流速0.8ml/minで行った。得られたポリスチレンの保持時間とピーク強度から保持時間と分子量の検量線を作製した。つぎに、ポリウレタン濃度が0.2重量%になるようテトラヒドロフランに溶解させ、上記と同様の測定条件により、ポリウレタンの保持時間とピーク強度を測定し、ポリスチレンで作製した検量線を用いてポリウレタンの重量平均分子量を算出した。
水性顔料分散液およびインク組成物の粘度測定
円錐平板型粘度計(東機産業(株)製RE100L)を用いて、25℃での粘度を測定した。
円錐平板型粘度計(東機産業(株)製RE100L)を用いて、25℃での粘度を測定した。
水性顔料分散液の降伏値測定
円錐平板型粘度計(東機産業(株)製RE100L)を用い、異なるずり速度での粘度を3点測定し、Cassonの式を用いることにより求めた。得られた降伏値よりポリウレタンと顔料を含有する水性顔料分散液の分散安定性を評価した。
円錐平板型粘度計(東機産業(株)製RE100L)を用い、異なるずり速度での粘度を3点測定し、Cassonの式を用いることにより求めた。得られた降伏値よりポリウレタンと顔料を含有する水性顔料分散液の分散安定性を評価した。
水性顔料分散液の耐熱性評価
ポリウレタンと顔料を含有する水性顔料分散液を65℃で30日間の加熱処理を行い、加熱処理前後の粘度を比較することで水性顔料分散液の耐熱性の指標とした。粘度は円錐平板型粘度計(東機産業(株)製RE100L)を用いて、25℃のとき粘度を測定した。
ポリウレタンと顔料を含有する水性顔料分散液を65℃で30日間の加熱処理を行い、加熱処理前後の粘度を比較することで水性顔料分散液の耐熱性の指標とした。粘度は円錐平板型粘度計(東機産業(株)製RE100L)を用いて、25℃のとき粘度を測定した。
水性顔料分散液中の顔料粒子の分散状態における粒径測定
ポリウレタンと顔料を含有する水性顔料分散液を顔料濃度が0.1重量%となるようイオン交換水で希釈し、動的光散乱式粒径分布測定装置((株)堀場製作所製LB−500)を用いて25℃における体積基準の算術平均径を求めた。なお、水性顔料分散液のCasson降伏値が1×10−2Pa以下であるときには、顔料の分散状態が安定であるため、10重量%から0.1重量%へ希釈することによる顔料の分散性は変化がないと推定される。
ポリウレタンと顔料を含有する水性顔料分散液を顔料濃度が0.1重量%となるようイオン交換水で希釈し、動的光散乱式粒径分布測定装置((株)堀場製作所製LB−500)を用いて25℃における体積基準の算術平均径を求めた。なお、水性顔料分散液のCasson降伏値が1×10−2Pa以下であるときには、顔料の分散状態が安定であるため、10重量%から0.1重量%へ希釈することによる顔料の分散性は変化がないと推定される。
水性顔料分散液及びインク組成物の表面張力測定
表面張力測定器(A−06、(株)山本鍍金試験器製)を用いて、白金リングとしてA−06−P01を用いて、25℃でのポリウレタンと顔料を含有する水性顔料分散液及びインク組成物の表面張力を輪環法により測定した。25℃に温度調整した水性顔料分散液をシャーレに浸し、シャーレを表面張力測定器のステージに設置した。次に、ステージをゆっくりと引き上げることで水性顔料分散液の液面と白金リングとを接触させた。白金リングをゆっくりと垂直に引き上げ、白金リングを水性顔料分散液の液面から引き離すのに必要な力を測定し、表面張力を求めた。
表面張力測定器(A−06、(株)山本鍍金試験器製)を用いて、白金リングとしてA−06−P01を用いて、25℃でのポリウレタンと顔料を含有する水性顔料分散液及びインク組成物の表面張力を輪環法により測定した。25℃に温度調整した水性顔料分散液をシャーレに浸し、シャーレを表面張力測定器のステージに設置した。次に、ステージをゆっくりと引き上げることで水性顔料分散液の液面と白金リングとを接触させた。白金リングをゆっくりと垂直に引き上げ、白金リングを水性顔料分散液の液面から引き離すのに必要な力を測定し、表面張力を求めた。
インク組成物のpH測定
小型pHメーター((株)堀場製作所製B−212)を用いて、室温でガラス電極法により測定した。
小型pHメーター((株)堀場製作所製B−212)を用いて、室温でガラス電極法により測定した。
インク組成物を用いた印刷時の吐出安定性評価
インク組成物をサーマル方式インクジェットプリンター(キヤノン(株)製“ピクサス”(商品名)iP3100のインクカートリッジ(キヤノン(株)製(商品名)BCI−3eBKおよびBCI−7eC)に詰めて3台並べてインクジェットノズルから5時間連続普通紙(キヤノン(株)製“ホワイトリサイクルペーパー”(商品名)EW−500)に印字を行い、次の評価を行った。5時間後に3台とも全てにインクかすれがなかった場合を◎、5時間後に1台以上インクかすれがあるが、インクジェットノズルのクリーニングによりかすれが改善された場合を○、5時間後に1台以上インクかすれがあり、クリーニングしてもかすれが改善されなかった場合を×とした。
インク組成物をサーマル方式インクジェットプリンター(キヤノン(株)製“ピクサス”(商品名)iP3100のインクカートリッジ(キヤノン(株)製(商品名)BCI−3eBKおよびBCI−7eC)に詰めて3台並べてインクジェットノズルから5時間連続普通紙(キヤノン(株)製“ホワイトリサイクルペーパー”(商品名)EW−500)に印字を行い、次の評価を行った。5時間後に3台とも全てにインクかすれがなかった場合を◎、5時間後に1台以上インクかすれがあるが、インクジェットノズルのクリーニングによりかすれが改善された場合を○、5時間後に1台以上インクかすれがあり、クリーニングしてもかすれが改善されなかった場合を×とした。
普通紙および光沢紙に塗布、印刷したときのインク組成物から得られる印画の光学濃度評価
インク組成物を上記したインクジェットプリンターのインクカートリッジにつめて、上記した普通紙および光沢紙に印字し、5cm×5cmのベタ画像を得た。得られたベタ画像部分の光学濃度を、光学濃度計(GRETAG社製、SPECTROEYE)を用い、光源D50、視野角2度で測定した。
インク組成物を上記したインクジェットプリンターのインクカートリッジにつめて、上記した普通紙および光沢紙に印字し、5cm×5cmのベタ画像を得た。得られたベタ画像部分の光学濃度を、光学濃度計(GRETAG社製、SPECTROEYE)を用い、光源D50、視野角2度で測定した。
普通紙に塗布、印刷したときのインク組成物から得られる印画の耐マーカー性評価
インク組成物を上記したインクジェットプリンターのインクカートリッジにつめて、上記した普通紙に印字し、印刷物を得た。得られた印刷物を室温で24時間放置後、水性蛍光ペン(ゼブラ(株)製、“オプテックス”(商品名)OP−100−黄)を用いて、印刷物の印字部分を擦った。その後、印字部分および蛍光ペンを目視で観察し、次の評価を行った。印字部分に尾引きによる汚れなく、蛍光ペンの先に汚れがない場合を◎、印字部分に尾引きによる汚れがほとんどないが、蛍光ペンの先に汚れがある場合を○、印字部分の汚れがひどく、蛍光ペンの先に汚れがある場合を×とした。
インク組成物を上記したインクジェットプリンターのインクカートリッジにつめて、上記した普通紙に印字し、印刷物を得た。得られた印刷物を室温で24時間放置後、水性蛍光ペン(ゼブラ(株)製、“オプテックス”(商品名)OP−100−黄)を用いて、印刷物の印字部分を擦った。その後、印字部分および蛍光ペンを目視で観察し、次の評価を行った。印字部分に尾引きによる汚れなく、蛍光ペンの先に汚れがない場合を◎、印字部分に尾引きによる汚れがほとんどないが、蛍光ペンの先に汚れがある場合を○、印字部分の汚れがひどく、蛍光ペンの先に汚れがある場合を×とした。
光沢紙に塗布、印刷したときのインク組成物から得られる印刷物の定着性評価
光沢紙に得られたベタ画像を室温で24時間放置後、幅15mmのセロハンテープ(ニチバン(株)製LP−15(商品名))を長さ30mmにわたって画像上に貼り付けた。1分後にセロハンテープの片隅を指で握り、ベタ画像に対して垂直にセロハンテープを1秒間かけて剥離した。印刷物の剥離試験を行った後のセロハンテープを光沢紙に貼り付け、その光学濃度を光学濃度計(GRETAG社製、SPECTROEYE)を用い、光源D50、視野角2度で測定した。なお、幅15mmのセロハンテープを光沢紙に貼り付け、光学濃度計(GRETAG社製、SPECTROEYE)を用い、光源D50、視野角2度で測定した場合には、光学濃度は0.1であった。
光沢紙に得られたベタ画像を室温で24時間放置後、幅15mmのセロハンテープ(ニチバン(株)製LP−15(商品名))を長さ30mmにわたって画像上に貼り付けた。1分後にセロハンテープの片隅を指で握り、ベタ画像に対して垂直にセロハンテープを1秒間かけて剥離した。印刷物の剥離試験を行った後のセロハンテープを光沢紙に貼り付け、その光学濃度を光学濃度計(GRETAG社製、SPECTROEYE)を用い、光源D50、視野角2度で測定した。なお、幅15mmのセロハンテープを光沢紙に貼り付け、光学濃度計(GRETAG社製、SPECTROEYE)を用い、光源D50、視野角2度で測定した場合には、光学濃度は0.1であった。
合成例1
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を設置した4つ口フラスコに、95gのカルボン酸変性ポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業(株)製“プラクセル”205BA(商品名))、11gのトリメチロールプロパン、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを投入した。“プラクセル”205BAは、ジメチロールブタン酸をラクトン変性したカルボン酸変性ポリカプロラクトンジオールであり、一般式(1)におけるR1はアルキレン基およびエステル基を有し、R1中に含まれる炭素数は25〜26である。R2はCH2CH3である。“プラクセル”205BAの酸価は110KOH・mg/g、重量平均分子量は500、水酸基価は220KOH・mg/gである(カタログによる公称値)。トリメチロールプロパンは水酸基を3個有する化合物である。
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を設置した4つ口フラスコに、95gのカルボン酸変性ポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業(株)製“プラクセル”205BA(商品名))、11gのトリメチロールプロパン、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを投入した。“プラクセル”205BAは、ジメチロールブタン酸をラクトン変性したカルボン酸変性ポリカプロラクトンジオールであり、一般式(1)におけるR1はアルキレン基およびエステル基を有し、R1中に含まれる炭素数は25〜26である。R2はCH2CH3である。“プラクセル”205BAの酸価は110KOH・mg/g、重量平均分子量は500、水酸基価は220KOH・mg/gである(カタログによる公称値)。トリメチロールプロパンは水酸基を3個有する化合物である。
“プラクセル”205BA、トリメチロールプロパン、メチルエチルケトン、および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを30分間撹拌後、74gのイソホロンジイソシアネートを4つ口フラスコに投入し、室温で1時間窒素雰囲気下で撹拌後、70℃に昇温し70℃で4時間反応を行った。反応後、室温まで冷却し、濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液1を得た。
17.1gの50重量%KOH水溶液および350gのイオン交換水を四つ口フラスコ中に投入し、250gのウレタンプレポリマー溶液1とともに室温で30分間撹拌した。窒素雰囲気下で80℃に昇温後、80℃で2時間鎖延長反応を行った。反応後、ロータリーエバポレーターとアスピレーターを用いてメチルエチルケトンと一部の水を除去した後、回収量が429gになるようにイオン交換水を添加し、ポリウレタン濃度35重量%の中和剤含有水溶液(ポリウレタン1)を得た。ポリウレタン1における水酸基を含有する全化合物中の一般式(1)で表される化合物の含有量は71モル%であり、水酸基を3個有する化合物の含有量は29モル%であった。また、得られたポリウレタン1の酸価は70KOH・mg/g、重量平均分子量は47000であった。
合成例2
合成例1と同様にして、98gの“プラクセル”205BA(ダイセル化学工業(株)製)、9gのトリメチロールプロパン、73gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いて濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液2を得た。
合成例1と同様にして、98gの“プラクセル”205BA(ダイセル化学工業(株)製)、9gのトリメチロールプロパン、73gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いて濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液2を得た。
17.7gの50重量%KOH水溶液と350gのイオン交換水を四つ口フラスコ中に投入し、250gのウレタンプレポリマー溶液2とともに室温で30分間撹拌した。合成例1と同様にして、鎖延長反応、メチルエチルケトン及び一部の水の除去、イオン交換水の添加を行い、ポリウレタン濃度35重量%の中和剤含有水溶液(ポリウレタン2)を得た。ポリウレタン2における水酸基を含有する全化合物中の一般式(1)で表される化合物の含有量は75モル%であり、水酸基を3個有する化合物の含有量は25モル%であった。また、得られたポリウレタン2の酸価は74KOH・mg/g、重量平均分子量は38000であった。
合成例3
合成例1と同様にして、102gの“プラクセル”205BA(ダイセル化学工業(株)製)、7gのトリメチロールプロパン、71gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いて濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液3を得た。
合成例1と同様にして、102gの“プラクセル”205BA(ダイセル化学工業(株)製)、7gのトリメチロールプロパン、71gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いて濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液3を得た。
18.4gの50重量%KOH水溶液と350gのイオン交換水を四つ口フラスコ中に投入し、250gのウレタンプレポリマー溶液3とともに室温で30分間撹拌した。合成例1と同様にして、鎖延長反応、メチルエチルケトン及び一部の水の除去、イオン交換水の添加を行い、ポリウレタン濃度35重量%の中和剤含有水溶液(ポリウレタン3)を得た。ポリウレタン3における水酸基を含有する全化合物中の一般式(1)で表される化合物の含有量は80モル%であり、水酸基を3個有する化合物の含有量は20モル%であった。また、得られたポリウレタン3の酸価は76KOH・mg/g、重量平均分子量は32000であった。
合成例4
合成例1と同様にして、109gの“プラクセル”205BA(ダイセル化学工業(株)製)、4gのトリメチロールプロパン、67gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いて濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液4を得た。
合成例1と同様にして、109gの“プラクセル”205BA(ダイセル化学工業(株)製)、4gのトリメチロールプロパン、67gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いて濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液4を得た。
19.6gの50重量%KOH水溶液と350gのイオン交換水を四つ口フラスコ中に投入し、250gのウレタンプレポリマー溶液4とともに室温で30分間撹拌した。合成例1と同様にして、鎖延長反応、メチルエチルケトン及び一部の水の除去、イオン交換水の添加を行い、ポリウレタン濃度35重量%の中和剤含有水溶液(ポリウレタン4)を得た。ポリウレタン4における水酸基を含有する全化合物中の一般式(1)で表される化合物の含有量は89モル%であり、水酸基を3個有する化合物の含有量は11モル%であった。また、得られたポリウレタン4の酸価は78KOH・mg/g、重量平均分子量は29000であった。
合成例5
100gの“プラクセル”205BA、6gのグリセリン、74gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いた他は、合成例1と同様にして、濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液5を得た。
100gの“プラクセル”205BA、6gのグリセリン、74gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いた他は、合成例1と同様にして、濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液5を得た。
18.1gの50重量%KOH水溶液と350gのイオン交換水を四つ口フラスコ中に投入し、250gのウレタンプレポリマー溶液5とともに室温で30分間撹拌した。合成例1と同様にして、鎖延長反応、メチルエチルケトン及び一部の水の除去、イオン交換水の添加を行い、ポリウレタン濃度35重量%の中和剤含有水溶液(ポリウレタン5)を得た。ポリウレタン5における水酸基を含有する全化合物中の一般式(1)で表される化合物の含有量は75モル%であり、水酸基を3個有する化合物の含有量は25モル%であった。また、得られたポリウレタン5の酸価は74KOH・mg/g、重量平均分子量は22000であった。
合成例6
102gの“プラクセル”205BA(ダイセル化学工業(株)製)、7gのペンタエリスリトール、71gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いた他は、合成例1と同様にして、濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液6を得た。
102gの“プラクセル”205BA(ダイセル化学工業(株)製)、7gのペンタエリスリトール、71gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いた他は、合成例1と同様にして、濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液6を得た。
18.4gの50重量%KOH水溶液と350gのイオン交換水を四つ口フラスコ中に投入し、250gのウレタンプレポリマー溶液6とともに室温で30分間撹拌した。合成例1と同様にして、鎖延長反応、メチルエチルケトン及び一部の水の除去、イオン交換水の添加を行い、ポリウレタン濃度35重量%の中和剤含有水溶液(ポリウレタン6)を得た。ポリウレタン6における水酸基を含有する全化合物中の一般式(1)で表される化合物の含有量は80モル%であり、水酸基を4個有する化合物の含有量は20モル%であった。また、得られたポリウレタン6の酸価は75KOH・mg/g、重量平均分子量は62000であった。
合成例7
合成例1と同様にして、109gの“プラクセル”205BA(ダイセル化学工業(株)製)、4gのトリメチロールプロパン、67gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いて濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液7を得た。
合成例1と同様にして、109gの“プラクセル”205BA(ダイセル化学工業(株)製)、4gのトリメチロールプロパン、67gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いて濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液7を得た。
16.6gの50重量%KOH水溶液と350gのイオン交換水を四つ口フラスコ中に投入し、250gのウレタンプレポリマー溶液7とともに室温で30分間撹拌した。合成例1と同様にして、鎖延長反応、メチルエチルケトン及び一部の水の除去、イオン交換水の添加を行い、ポリウレタン濃度35重量%の中和剤含有水溶液(ポリウレタン7)を得た。ポリウレタン7における水酸基を含有する全化合物中の一般式(1)で表される化合物の含有量は69モル%であり、水酸基を3個有する化合物の含有量は31モル%であった。また、得られたポリウレタン7の酸価は66KOH・mg/g、重量平均分子量は88000であった。
合成例8
116gの“プラクセル”205BA(ダイセル化学工業(株)製)、64gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いた他は、合成例1と同様にして、濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液8を得た。
116gの“プラクセル”205BA(ダイセル化学工業(株)製)、64gのイソホロンジイソシアネート、120gのメチルエチルケトン、および0.54gの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用いた他は、合成例1と同様にして、濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液8を得た。
20.8gの50重量%KOH水溶液と350gのイオン交換水を四つ口フラスコ中に投入し、250gのウレタンプレポリマー溶液8とともに室温で30分間撹拌した。合成例1と同様にして、鎖延長反応、メチルエチルケトン及び一部の水の除去、イオン交換水の添加を行い、ポリウレタン濃度35重量%の中和剤含有水溶液(ポリウレタン8)を得た。ポリウレタン8における水酸基を含有する全化合物中の一般式(1)で表される化合物の含有量は100モル%であった。また、得られたポリウレタン8の酸価は81KOH・mg/g、重量平均分子量は28000であった。
合成例1〜8で得られたポリウレタンの評価結果を表1に示す。
実施例1
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA−100(商品名))3kgを水10kgに混合した後、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度12%)4.5kgに投入し、100〜105℃で10時間撹拌し、得られた生成物をろ過した。乾燥して得られたウェット結晶を水で洗浄した後、80℃で乾燥し、2.5kgの酸化処理カーボンブラックを得た。
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA−100(商品名))3kgを水10kgに混合した後、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度12%)4.5kgに投入し、100〜105℃で10時間撹拌し、得られた生成物をろ過した。乾燥して得られたウェット結晶を水で洗浄した後、80℃で乾燥し、2.5kgの酸化処理カーボンブラックを得た。
次に、酸化処理カーボンブラックとイオン交換水を混合しスラリーを作製した。作製したスラリーはポリメチルメタクリレート透析モジュール(東レ(株)製“フィルトライザー”B3−20A(商品名))を用いて透析を行った後に乾燥して、酸化処理カーボンブラック中のナトリウムイオンと塩素イオンの除去を行い、酸化処理カーボンブラック透析物を得た。
120gの酸化処理カーボンブラック透析物、180gのトリエチレングリコールモノブチルエーテル、700gのイオン交換水と混合しホモディスパーで攪拌してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーを循環式ビーズミル分散機(ウイリー・エ・バッコーフェン社製“ダイノーミル”KDL−A)とチューブでつなぎ、メディアとして直径0.3mmのジルコニアビーズを使用して1600rpmで分散処理を3時間継続して水性ブラック顔料分散液Aを得た。
41.7gの水性ブラック顔料分散液Aに、0.7gの50重量%のKOH、0.5gのイオン交換水および合成例1で得られた7.1gのポリウレタン1(ポリウレタン濃度:35重量%)を加え、水性ブラック顔料分散液1(顔料濃度:10重量%、ポリウレタン濃度:5重量%)を作製し、水性ブラック顔料分散液1について各種の評価を行った。結果を表2、3に示す。
次いで、17.5gの水性ブラック顔料分散液1に、25.8gのイオン交換水、3.5gのグリセリン、1.7gの2−ピロリドン、1.5gのエチレングリコールを加えインク組成物(顔料濃度:3.5重量%、ポリウレタン濃度:1.75重量%)を作製し、各種の評価を行った。結果を表2、3に示す。
実施例2〜6、比較例1〜2
合成例2〜8で得られたポリウレタン2〜8と実施例1で得られた水性ブラック顔料分散液Aを用いて、実施例1と同様の方法で水性ブラック顔料分散液2〜8(顔料濃度:10重量%、ポリウレタン濃度:5重量%)を作製し、顔料分散液2〜8について各種の評価を行った。結果を表2に示す。また実施例1と同様にして、インク組成物(顔料濃度:3.5重量%、ポリウレタン濃度:1.75重量%)を作製し、各種の評価を行った。結果を表2に示す。
合成例2〜8で得られたポリウレタン2〜8と実施例1で得られた水性ブラック顔料分散液Aを用いて、実施例1と同様の方法で水性ブラック顔料分散液2〜8(顔料濃度:10重量%、ポリウレタン濃度:5重量%)を作製し、顔料分散液2〜8について各種の評価を行った。結果を表2に示す。また実施例1と同様にして、インク組成物(顔料濃度:3.5重量%、ポリウレタン濃度:1.75重量%)を作製し、各種の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例7
PB15:3(クラリアント社製“ホスタパーム”ブルーB2G(商品名))900gを攪拌しながら70℃に加熱した発煙硫酸(28%SO3)12kg中に投入した。3時間攪拌した後、氷22.5kg上に加えた。30分間放置後、生じた懸濁液をろ過し、得られた生成物を4.5kgの純水で洗浄した。純水30kg中へ前記生成物を投入し、アンモニア水溶液で中和(pHが7以上になるまでアンモニア水溶液を添加)し、ろ過を行った。得られたウェット結晶を純水で洗浄した後、80℃で乾燥した。乾燥して得られたウェット結晶を水で洗浄した後、80℃で乾燥し、1150gのPB15:3スルホン化誘導体を得た。
PB15:3(クラリアント社製“ホスタパーム”ブルーB2G(商品名))900gを攪拌しながら70℃に加熱した発煙硫酸(28%SO3)12kg中に投入した。3時間攪拌した後、氷22.5kg上に加えた。30分間放置後、生じた懸濁液をろ過し、得られた生成物を4.5kgの純水で洗浄した。純水30kg中へ前記生成物を投入し、アンモニア水溶液で中和(pHが7以上になるまでアンモニア水溶液を添加)し、ろ過を行った。得られたウェット結晶を純水で洗浄した後、80℃で乾燥した。乾燥して得られたウェット結晶を水で洗浄した後、80℃で乾燥し、1150gのPB15:3スルホン化誘導体を得た。
次に、PB15:3スルホン化誘導体とイオン交換水を混合しスラリーを作製した。作製したスラリーをポリメチルメタクリレート透析モジュール(東レ(株)製“フィルトライザー”B3−20A(商品名))を用いて透析を行った後に乾燥してPB15:3スルホン化誘導体透析物を得た。
96gのPB15:3、24gのPB15:3スルホン化誘導体透析物、180gのトリエチレングリコールモノブチルエーテル、700gのイオン交換水を混合しホモディスパーで攪拌してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーを循環式ビーズミル分散機(ウイリー・エ・バッコーフェン社製“ダイノーミル”KDL−A)とチューブでつなぎ、メディアとして直径0.3mmのジルコニアビーズを使用して1600rpmで分散処理を3時間継続して水性シアン顔料分散液Aを得た。
41.7gの水性シアン顔料分散液Aに、0.7gの50重量%のKOH、0.5gのイオン交換水および合成例1で得られた7.1gのポリウレタン1(ポリウレタン濃度:35重量%)を加え、水性シアン顔料分散液1(顔料濃度:10重量%、ポリウレタン濃度:5重量%)を作製し、水性シアン顔料分散液1について各種の評価を行った。結果を表4、5に示す。また、25gの水性シアン顔料分散液1に18.3gのイオン交換水、3.5gのグリセリン、1.7gの2−ピロリドン、1.5gのエチレングリコールを加えインク組成物(顔料濃度:5重量%、ポリウレタン濃度:2.5重量%)を作製し、各種の評価を行った。結果を表3に示す。
実施例8〜12、比較例3〜4
合成例2〜8で得られたポリウレタン2〜8(ポリウレタン濃度:35重量%)と実施例7で得られた水性シアン顔料分散液Aを用いて、実施例7と同様の方法で水性シアン顔料分散液2〜8(顔料濃度:10重量%、ポリウレタン濃度:5重量%)を作製し、シアン顔料分散液2〜8について各種の評価を行った。結果を表3に示す。また、実施例7と同様にして、インク組成物(顔料濃度:5重量%、ポリウレタン濃度:2.5重量%)を作製し、各種の評価を行った。結果を表3に示す。
合成例2〜8で得られたポリウレタン2〜8(ポリウレタン濃度:35重量%)と実施例7で得られた水性シアン顔料分散液Aを用いて、実施例7と同様の方法で水性シアン顔料分散液2〜8(顔料濃度:10重量%、ポリウレタン濃度:5重量%)を作製し、シアン顔料分散液2〜8について各種の評価を行った。結果を表3に示す。また、実施例7と同様にして、インク組成物(顔料濃度:5重量%、ポリウレタン濃度:2.5重量%)を作製し、各種の評価を行った。結果を表3に示す。
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