JP2008178338A - 断片化核酸が混入する核酸試料中の標的核酸を増幅する核酸増幅方法、及びそのキット - Google Patents

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Abstract

【課題】断片化された核酸の影響を受けることなく、標的核酸を特異的かつ効率的に増幅できる核酸増幅方法並びに核酸増幅用キットを提供。
【解決手段】断片化核酸が混入する核酸試料中の標的核酸を増幅する核酸増幅方法において、断片化核酸が混入する核酸試料に対して高度好熱菌由来のRecAタンパク質の存在下で核酸増幅反応を行い、前記核酸試料中の標的核酸を増幅する核酸増幅方法。
【選択図】なし

Description

本発明は断片化核酸が混入する核酸試料中の標的核酸を増幅する核酸増幅方法、及びそのキットに関する。詳細には、断片化核酸が混入する核酸試料を高度好熱菌由来のRecAタンパク質の存在下で核酸増幅反応を行う核酸増幅方法、及びそのキットに関する。
ポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」と略する場合がある。)等に代表される核酸増幅技術は、目標とする特定の核酸領域を短時間で10万倍以上に増幅できる画期的な技術である。しかしながら、その反応を最適化することは難しく、鋳型となる核酸に起因する要因により標的産物が得られない場合があった。また、標的産物が得られない場合だけでなく、望まない産物の生成を招く場合があった。このような要因の1つに鋳型核酸の一部の断片化が挙げられる。かかる鋳型核酸の一部が断片化した断片化核酸がプライマーのように働き、目的産物の産生が阻害される場合があった。
鋳型核酸の断片化は、臨床検体等の被検体から核酸試料を調製する過程でも発生する。例えば、夾雑物質が複雑に混在する場合、かかる夾雑物質が増幅阻害要因となるため、これを排除すべく核酸試料の単離精製を行っていた。時には煩雑かつ長時間にわたる処理を要する場合があり、核酸の断片化が重大な問題となっていた。また、分析までの間の被検体、および調製した核酸の保存中に、酸化等により核酸の分子構造の一部が損傷を受け断片化が発生する。
従来において、目的産物が得られない場合には、増幅反応を構成するパラメーターを変更することにより最適化を図っていた。例えば、重要なパラメーターとして、プライマーデザインおよび濃度、マグネシウム濃度、ヌクレオチド濃度、DNAポリメラーゼのタイプ及び濃度、サーモサイクルが例示される。しかしながら、パラメーターの最適化には実験者の熟練を要し、また、パラメーター設定に際しての試料の損失により微量試料の場合には十分に最適化を図ることができなかった。そのため、核酸増幅を断念せざるを得ない場合があった。
また、効率的な増幅反応の達成の側面からも様々な試みが報告されている。例えば、DNA結合タンパク質である、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来の一本鎖結合タンパク質(以下、「SSB」と略する)の存在下でPCRを行うことで核酸増幅効率を向上できることが報告されている(例えば、非特許文献1を参照のこと。)。さらに、被検試料中に存在する、核酸増幅を阻害する電荷物質を中和することで、核酸の単離精製工程を経ず被検試料を直接PCRに適用できる技術が報告されている(例えば、非特許文献2を参照のこと。)。
しかしながら、上記した何れにおいても、断片化した核酸を含む試料からの核酸増幅効率の向上効果が報告されていない。何れもプライミング効率効果は認められていなかった。特に、電荷物質を中和する方法は、試料中に含まれる増幅阻害物質である電荷物質に対する中和にしかすぎない。したがって、断片化された核酸が混在する核酸試料においても、標的核酸を効率的に増幅できる技術の確立が求められていた。
Perales 他著、"Enhancement of DNA, cDNA synthesis and fidelity at high temperatures by a dimeric single-stranded DNA-binding protein." Nucleic Acids Research、2003年、第31巻、第22号、第6473〜6480頁 Ampdirect(登録商標)〔online〕〔平成18年1月6日検索〕、島津製作所、インターネット<URL: HYPERLINK "http://www.shimadzu-biotech.jp/reagents/amp/" http://www.shimadzu-biotech.jp/reagents/amp/>
そこで、本発明は以上の実情を鑑みて、断片化された核酸の影響を受けることなく、標的核酸を特異的かつ効率的に増幅できる核酸増幅方法並びに核酸増幅用キットを提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく本発明者らは鋭意研究した結果、断片化された核酸が混在する核酸試料に対して、高度好熱菌由来のRecAタンパク質の存在下で核酸の増幅反応を行なうことで、所望の核酸のみを特異的に増幅できるとの知見を得た。更に鋭意研究を行ったところ、高度好熱菌由来のRecAタンパク質が、増幅阻害物質に対する中和作用をも有することが判明し、精製度の低い試料に適用した場合においても所望の核酸のみを特異的に増幅できるとの知見を得た。これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的を達成するため本発明は、以下の〔1〕〜〔7〕に示す構成を有する。
〔1〕断片化核酸が混入する核酸試料中の標的核酸を増幅する核酸増幅方法において、
断片化核酸が混入する核酸試料に対して高度好熱菌由来のRecAタンパク質の存在下で核酸増幅反応を行い、前記核酸試料中の標的核酸を増幅する核酸増幅方法。
〔2〕前記核酸試料が、生体試料、環境試料、及び食品から選択される試料である上記〔1〕の核酸増幅方法。
〔3〕前記断片化核酸が、100〜300bpの核酸断片である上記〔1〕又は〔2〕の核酸増幅方法。
〔4〕前記高度好熱菌由来のRecAタンパク質が、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、又はサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)に由来する上記〔1〕〜〔3〕のいずれかの核酸増幅方法。
〔5〕前記核酸増幅反応が、ポリメラーゼ連鎖反応に基づく反応である上記〔1〕〜〔4〕の核酸増幅方法。
上記〔1〕〜〔5〕の構成によれば、従来の核酸増幅技術では増幅が困難であった断片化核酸を含む核酸試料から、標的核酸の効率的な増幅が可能となる。高度好熱菌由来のRecAタンパク質の働きにより、プライマーのプライミング効率と正確性が向上でき、ひいては、断片化した標的核酸に類似する配列へのプライマーのプライミングを抑制し、増幅産物のキメラ化を抑制できる。また、同時に核酸増幅阻害物質に作用し、その作用を中和することから、精製度の低い試料からも効率よく標的核酸を増幅することができる。したがって、様々な産業分野、特には分子生物学の分野に幅広く利用可能である。
〔6〕DNAポリメラーゼ、高度好熱菌由来のRecAタンパク質、とを含む断片化核酸が混在する核酸試料核酸を増幅するための核酸増幅用キット。
〔7〕前記高度好熱菌由来のRecAタンパク質がサーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、又はサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)に由来する上記〔6〕の核酸増幅用キット。
上記〔6〕〜〔7〕の構成によれば、このように核酸増幅に必要な成分をキットして構成することにより、簡便且つ迅速な核酸増幅が可能となる。
以下、具体的な本発明の実施の形態について説明するが、これはあくまでも本発明を例示するに留まり、本発明を限定するものではない。
本発明は、断片化核酸が混在する核酸試料中の標的核酸を、高度好熱菌由来のRecAタンパク質(以下、「高度好熱菌RecAタンパク質」と称する場合がある)の存在下で核酸増幅反応を行い、標的核酸を特異的かつ効率的に増幅する方法を提供する。従来の核酸増幅反応においては、断片化核酸の存在により標的核酸を増幅できず目的産物の取得を断念せざるを得ない場合があったが、高度高熱菌RecAタンパク質の添加により断片化核酸の混在に影響されることなく目的産物の取得が可能となった。
本明細書において、核酸増幅反応とは、好ましくは耐熱性DNAポリメラーゼを利用して目的とする特定の核酸領域を増幅するポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」と称する場合がある。)である。また、様々なPCRの変法をも含む。たとえば、アダプター付加PCR、アレル特異的増幅法(MASA法)、非対称PCR、逆PCR(IPCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、一本鎖DNA高次構造多型PCR(PCR-SSCP法)、アービトラリリーポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、RACE、マルチプレックスPCR(multiplex PCR)等が挙げられる。しかしながら、これらに限定するものではなく、あらゆるPCRの変法に利用可能である。更には、原理の異なる他の酵素を利用した各種核酸増幅方法を排除するものではない。したがって、リガーゼ連鎖反応(以下、「LCR」と称する場合がある)、鎖置換増幅反応(以下、「SDA」と称する場合がある)、ローリングサイクル増幅反応(以下、「RCA」と称する場合がある)等の公知の核酸増幅反応を含む。
本発明において増幅対象となる標的核酸は、標的核酸の長さ及び塩基配列等に対する制限なく、また、一本鎖、二本鎖を問わず、いかなる核酸であってもよい。具体的には、生物のゲノムDNAでもよく、或いは、該ゲノムDNAを物理的手段若しくは制限酵素消化により切断された断片であっても良い。更に、DNA断片をプラスミド、ファージ等に挿入したものに対しても好適に利用できる。また、当該技術分野で常用されている核酸自動合成機等を使用して合成されたDNA断片、mRNAを鋳型にして合成したcDNA断片等の人工的産物等、いずれも標的核酸となり得る。
ここで、核酸試料としては、標的核酸を含む、もしくは標的核酸を含む可能性のある試料であれば特に制限はない。したがって、生体試料、環境試料、食品等の他、DNA合成技術等による人工産物試料をも含む。生体試料として動物由来の血液、尿、糞、唾液、組織、細胞培養物等、及び植物由来の根、茎、葉、花、果実等が、環境試料として土壌、地下水、河川水、湖沼水、海水等が、食品として肉、卵、加工食品等が例示される。
核酸試料は、直接、本発明の核酸増幅方法に適用してもよく、また、公知の核酸抽出、精製等の処理を行った後、本発明の核酸増幅方法に適用してもよい。核酸試料の調製は、任意の方法で行うことができる。被検体から細胞、原虫、真菌、細菌、ウイルス等を分離し、次に核酸を抽出することにより行われる。核酸の抽出方法としては、SDS等の界面活性剤、リゾチーム及びプロテインナーゼ等の酵素、カオトロピック塩により細胞等を破壊し、フェノール/クロロホルム等により核酸を抽出することにより行うことができる。また、抽出に際して、必要に応じて精製を行ってもよい。
そして、本発明の核酸増幅方法の対象と成る核酸試料は、断片化核酸の混入している、もしくは混入している可能性のある核酸試料である。断片化核酸としては、一本鎖、二本鎖を問わず、また、二本鎖の場合には核酸の末端の形態についても、接着末端、付着末端の別をも問わない。更に、塩基配列等に対する制限なく、いかなる核酸であってもよい。特には、鋳型となる標的核酸の少なくとも一部の領域の連続した塩基配列を有するもの、また、標的核酸の少なくとも一部の領域の連続した塩基配列に類似する配列を有するものを指す。また、断片化核酸の大きさは、標的核酸のポリヌクレオチド(塩基長n)に対して1〜n−1までの塩基長のものを指し、特には15〜150塩基、若しくは300塩基以下の塩基長である。そして、標的核酸の一部が分解して生じたもの、また、標的核酸に由来しない断片化核酸も含む。また、核酸の骨格鎖の1つの切断により生じるニックが形成された核酸をも含む。更に、断片化核酸は、せん断等の物理的要因、分解酵素等の酵素的要因、酸化水分解、酸化等の化学的要因により生じたもの別を問わない。
したがって、被検体からの標的核酸の調製過程、被検体の保存過程、または微生物等の死骸や組織の損傷等により核酸の断片化が生じた試料に本発明は好適に適用することができる。例えば、微生物、哺乳類由来の試料が例示される。特には、土壌微生物等を含む土壌試料のように生物多様性に富み、種々の核酸の混入が想定される試料に好適に適用できる。さらに、長期保存を行った試料等、従来の核酸増幅技術によっては増幅が困難であった試料に好適に適用することができる。
ここで、PCRに適用する場合について詳細に説明する。PCRは、耐熱性DNAポリメラーゼを用いて連鎖反応的にDNAを増幅する方法である。そしてPCRの原理は、プライマーおよび耐熱性DNAポリメラーゼの存在下で、3段階の温度変化をnサイクル繰り返すことにより増幅対象核酸(以下、標的核酸と略する場合がある。)を2n倍に増幅するものである。
本発明においてPCR反応液は、高度好熱菌RecAタンパク質の存在下、標的核酸、耐熱性DNAポリメラーゼ、プライマーDNA、デオキシヌクレオチド5´−三リン酸(以下、「dNTP」と称する。)、並びに適当な緩衝液を含んで調製される。また、dNTPとは別個にヌクレオチド5´−三リン酸(以下、「NTP」と称する。)を含んで調製してもよい。ここで、プライマーDNA、dNTPは必要に応じて検出のため適当な標識物質により標識していても良い。このような標識物質は公知であるので当業者は適宜選択して使用できる。
ここで、高度好熱菌RecAタンパク質とは、単鎖核酸に協同的に結合し、該単鎖核酸と二本鎖核酸との間で相同領域を検索し、核酸の相同組換えを行うタンパク質である。本発明において使用されるRecAタンパク質は、高度好熱菌由来タンパク質である。したがって、本発明において大腸菌由来のRecAタンパク質等の使用は適さない。本発明の使用に適した高度好熱菌RecAタンパク質としては、サーマス(Thermus)属、サーモコッカス(Thermococcus)属、ピロコッカス(Pyrococcus)属、サーモトーガ(Thermotoga)属等由来のRecAタンパク質が例示される。具体的には、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来のRecAタンパク質が例示される。特に、好ましくは、サーマス・サーモフィラス由来である。
これらの高度好熱菌RecAタンパク質は、天然由来の高度好熱菌RecAタンパク質の他、化学合成的もしくは遺伝子工学的に人工的に合成された高度好熱菌RecAタンパク質も包含する。具体的には、常法に従って、高度好熱菌から抽出したものを利用することができる。更に、既知の大腸菌等の宿主・発現ベクター系を利用して、容易に精製することができる。例えば、当該高度好熱菌RecAタンパク質をコードする遺伝子を公知の方法により導入した発現ベクターにより宿主である大腸菌を形質転換して培養し、当該高度好熱菌RecAタンパク質を発現させる。そして、宿主の大腸菌を破砕して熱処理を行うことにより、当該高度好熱菌RecAタンパク質以外の大腸菌由来タンパク質は熱変性して熱凝集するため、遠心分離等により分離除去できる。これにより熱変性しない当該高度好熱菌RecAタンパク質を可溶画分として大腸菌由来タンパク質と分離し、親和性クロマトグラフィー等を用いて精製できる。
このとき、当該高度好熱菌RecAタンパク質は高度好熱菌由来であるため室温で構造が安定しており、さらに有機溶剤に対しても高い安定性を有している。そのため、上記精製工程は室温で行うことが可能である。
尚、宿主細胞は大腸菌に限らず、例えば、酵母(Saccharomyces cerevisiae)や昆虫(Sf9細胞)などの真核生物細胞を利用することが可能である。また、発現ベクターは、プロモーター配列、高度好熱菌のRecAタンパク質をコードする遺伝子を挿入できる少なくとも1つの制限酵素サイトを有するマルチクローニングサイト等の配列を含み、かつ、上記宿主細胞で発現できるものであれば、何れの発現ベクターを用いることができる。好適なプロモーターとしては、例えば、T7lacプロモーターを利用するのが好ましい。
さらに、この発現ベクターには他の公知の塩基配列が含まれていてもよい。他の公知の塩基配列としては特に限定されない。例えば、発現産物の安定性を付与する安定性リーダー配列、発現産物の分泌を付与するシグナル配列、及び、ネオマイシン耐性遺伝子・カナマイシン耐性遺伝子・クロラムフェニコール耐性遺伝子・アンピシリン耐性遺伝子・ハイグロマイシン耐性遺伝子等の形質転換された宿主において表現型選択を付与することが可能なマーキング配列等が挙げられる。このような発現ベクターは、市販の大腸菌用発現ベクター(例えばpETタンパク質発現システム:ノバジェン社製)を用いることが可能である。さらに、適宜所望の配列を組み込んだ発現ベクターを作製して使用することが可能である。
更に、上記したような高度好熱菌RecAタンパク質と類似の構造を有し、かつ、機能的に同等なタンパク質をも含む。したがって、自然界に存在するRecA類似タンパク質の他、人為的な変異誘発または遺伝子組換えにより改変されたタンパク質をも含むことが意図される。例えば、上記した天然由来の高度好熱菌RecAタンパク質のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加されたアミノ酸配列を有し、かつ上記した高度好熱菌RecAタンパク質と生物学的機能が同等である改変体が包含し得る。なお、アミノ酸配列における変異の数は、もとのタンパク質の生物学的機能が維持される限り制限されない。
ここで、アミノ酸配列に対する改変は、改変しようとするアミノ酸配列に部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res. 10、pp6487、1982年)等の公知の変異操作手段を用いて人工的に行うことができる。更には、自然界におけるアミノ酸の変異によって生じた改変体をも含む。
プライマーは、標的核酸の特定配列に対して相補的になるように設計されるものである。特には、増幅すべき標的配列のその両端に相補的な塩基配列を有するものであることが好ましい。もっとも単純な系ではプライマーが2つ要求されるが、マルチプレックスPCR(Multiplex PCR)等を行う場合は3つ以上でもよく、また、1のプライマーのみでの増幅反応にも好適に利用可能である。プライマーの設計は、ランダムプライマーを用いる場合を除いて、標的核酸の配列を予め調査し決定される。そして、標的核酸の塩基配列の調査には、GeneBank、EBI等のデータベースを好適に利用できる。
プライマーは、ホスホアミダイト法等に基づく化学合成法、既に標的となる核酸が取得されている場合にはその制限酵素断片等が利用可能である。化学合成法に基づきプライマーを調製する場合には、合成に先立って標的核酸の配列情報に基づいて設計される。プライマーは合成後、HPLC等の手段により精製される。また、化学合成を行う場合には市販の自動合成装置を利用することも可能である。ここで、相補的とは、プライマーと標的核酸とが塩基対合則に従って特異的に結合し安定な二重鎖構造を形成できることを意味し、完全な相補性のみならず、プライマーと標的核酸が互いに安定な二重鎖構造を形成し得るのに十分である限り、いくつかの核酸塩基のみが塩基対合則に沿って適合する部分的な相補性であっても許容される。その塩基数は、標的核酸を特異的に認識するために十分に長くなければならないが、長すぎると逆に非特異的反応を誘発するので好ましくない。したがって、適当な長さはGC含量等の標的核酸の配列情報、並びに、反応温度、反応液中の塩濃度等のハイブリダイゼーション反応条件など多くの因子に依存して決定されるが、好ましくは、20〜50塩基長である。
ここで、使用されるDNAポリメラーゼは、PCRにおいて使用できる耐熱性のDNAポリメラーゼであれば、特に制限はない。例えば、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来のTaqポリメラーゼ、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来のTthポリメラーゼ、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus Stearothermophilus)由来のBstポリメラーゼ、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来のVent DNAポリメラーゼ等の好熱菌由来のDNAポリメラーゼ他、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来のPfuポリメラーゼ等の好熱古細菌由来のDNAポリメラーゼが挙げられる。
dNTPとしては、アデニン、チミン、グアニンおよびシトシンの各塩基に夫々対応する4種類のデオキシヌクレオチドが使用される。特には、dGTP、dATP、dTTP、dCTPの混合物が好ましく使用される。更に、PCRで合成され伸長されるDNA分子中に、耐熱性DNAポリメラーゼによって取り込まれ得る限りにおいては、デオキシヌクレオチドの誘導体をも含み得る。そのような誘導体として、7−デアザ−dGTP、7−デアザ−dATP等が例示され、例えば、夫々dGTP、dATPに代えて、若しくは、双方を共在させて使用することができる。したがって、核酸合成に必要なアデニン、チミン、グアニンおよびシトシンの各塩基に対応する4種類が含まれる限り、いかなる誘導体の使用を排除するものではない。
緩衝液としては、適当な緩衝成分およびマグネシウム塩等を含んで調製されたものを使用でき、特に制限はない。緩衝成分としては、トリス酢酸、トリス塩酸、リン酸ナトリウム並びにリン酸カルシウム等のリン酸塩が好適に使用でき、特にはトリス酢酸の使用が好ましい。緩衝成分の最終濃度は5mM〜100mMの範囲で、pH6.0〜9.5の範囲内で調製される。また、マグネシウム塩としては特に制限はないが、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム等を適宜使用でき、特には酢酸マグネシウムが好ましい。更に、必要に応じて、KCl等のカリウム塩、DMSO、グリセロール、ベタイン、ゼラチン、Triton等を添加することができる。また、市販のPCR用耐熱性DNAポリメラーゼに添付の緩衝液を用いることができる。緩衝液の組成は、使用するDNAポリメラーゼの種類等に応じて適宜変更することができる。特には、MgCl2、KCl等のイオン強度の影響、DMSO、グリセロール等のDNAの融解温度に影響を与える各種添加物並びにそれらの濃度を勘案して、適宜設定することができる。
そして、反応液は容量100μl以下、特には、10〜50μlの範囲で調製することが好ましい。各成分の濃度として、高度好熱菌RecAタンパク質は好ましくは反応溶液中に0.004〜0.02μg/μlの濃度で含まれるよう使用される。高度好熱菌RecAタンパク質以外の各成分の濃度は、PCRは公知であることから、当業者は適宜設定することができる。例えば、標的核酸は、好ましくは100μl当り10pg〜1μgの濃度で、プライマーDNAは好ましくは、最終濃度0.01〜10μM、特には0.1〜1μMの濃度に調製される。更に、DNAポリメラーゼは、好ましくは100μlあたり0.1〜50unit、特には1〜5unitの範囲の濃度で使用する。そして、dNTPは、好ましくは最終濃度0.1mM〜1Mに調製する。また、マグネシウム塩は最終濃度で0.1〜50mM、特には、1〜5mMの範囲に調製することが好ましい。
PCRは、以下の工程に従って実行され、これらの工程は高度好熱菌RecAタンパク質の存在下で行なわれる。
(1)鋳型核酸の熱変性
(2)プライマーのアニーリング
(3)耐熱性ポリメラーゼによる伸長反応
上記(1)〜(3)からなる三段階の温度変化を1サイクルとする反応を、適切なサイクルを繰り返すことによって、プライマーが起点となって標的核酸を鋳型として、相補性を有するもう一本の核酸鎖の合成が開始される。その結果、nサイクルの反応で標的核酸は2n倍に増幅される。サーモサイクル数は、鋳型となる標的核酸の種類、量およびその純度等に応じて決定されるが、非特異的増幅を抑制し効率的な核酸増幅の観点から20〜40サイクル、特には、32〜36サイクルで行うことが好ましい。
以下に各工程について詳細に説明する(以下の数値については一般的な数値を記載しております。本発明に適合するか否かのご確認をお願いします。
(1)鋳型核酸の熱変性
二本鎖核酸を加熱により、変性させ一本鎖に解離させる。好ましくは、92〜98℃で10〜60秒行われる。また、ゲノムDNA等の長いDNAを鋳型核酸とする場合は、鋳型核酸の変性を完全にするため、一番初めの熱変性のみを長め(10分程度)に設定することができる。
(2)プライマーのアニーリング
温度を下げることにより上記(1)において熱変性され一本鎖となった鋳型核酸とプライマーとのハイブリッドを形成する。アニーリングは、好ましくは30〜60秒間行われる。また、アニーリング温度はプライマーに用いるオリゴヌクレオチドのTmを推定し、このTmをアニーリング温度として設定することが好ましい。通常は、50〜70℃で行われる。
(3)耐熱性ポリメラーゼによる伸長反応
耐熱性ポリメラーゼによりプライマーからの核酸鎖の伸長反応が3´末端において行われる。伸長反応温度は、耐熱性ポリメラーゼの種類に応じて、適宜設定されるものであるが、65〜75℃で行うことが好ましい。また、伸長時間は、標的配列が1kb以下のときは1分程度で十分であり、それより長い場合には、1kbにつき1分の割合で長くすることが好ましい。
以上のように構成する事により、高度好熱菌RecAタンパク質の存在下でPCRを行うことにより、断片化核酸を含む試料から標的核酸を効率的に増幅することが可能となる。断片化核酸は核酸増幅阻害物質として作用し、従来においては断片化核酸が混在する核酸試料中の標的核酸の増幅は困難であったが、本発明はかかる核酸増幅阻害の影響を最小限に低減できる。これは、高度好熱菌RecAタンパク質の働きにより、PCRにおけるプライミング効率と正確性が向上できることに起因するものである。特に、断片化した標的核酸に類似する配列へのプライミングを抑制し、増幅産物のキメラ化を抑制できる。また、同時に核酸増幅阻害物質に作用し、その作用を中和することから、精製度の低い試料からも効率よく標的核酸を増幅することができると考えられる。
そして本発明の増幅方法は、様々な用途に利用可能である。例えば、医療分野、生物化学分野、環境分野、食品分野等の多岐にわたる用途に利用可能である。特に、核酸増幅反応の最適化が容易に行われることから微量試料にも好適に適用することができる。例えば、遺伝子型分析のために、少量の試料から大量のDNAを調製するに際して、或いは、シークエンシングのための核酸試料の調製に際して利用可能である。さらに、動物或いは植物細胞、微生物等から抽出した少量の試料からDNAチップ固定用DNAを調製する等、種々の用途に適用できる。
具体的には、医療分野での利用として、一塩基多型性の検出をはじめとする遺伝子診断、SARS、インフルエンザ等のウイルスや細菌等の病原体の検出等が例示される。特に、臨床試料における一塩基多型の検出方法に本発明は好適に適用できる。本発明により、プライマーの標的核酸以外の核酸への結合を特に抑制することができ、効果的にプライマーのミスプライミングを抑制できる。したがって、所望の一塩基多型を有する核酸に相補的なプライマーを用いることにより、かかる一塩基多型を有する核酸が効率的に増幅できる。その一方で、かかる一塩基多型を有しない核酸は増幅されないか、または増幅が抑制されることから、かかる一塩基多型を有する核酸を特異的に増幅することが可能となる。そのため、臨床試料のように断片化核酸の混入が疑われる試料に対しても、断片化核酸の影響を最低減に抑制し、鋳型特異的な増幅が可能となる。そして、長期保存により断片化を生じた臨床試料等にも好ましく適用される。また、生物化学分野での利用として、個人の同定、生物種の同定が挙げられる。
そして、環境分野における利用においては、環境中における細菌、ウイルス等の病原体検出等の環境測定、新規有用微生物の探索等が例示される。特に土壌は生物多様性が非常に大きいことが知られている一方、微生物の死骸に由来する断片化核酸の混入等により通常の核酸増幅技術では有用遺伝子の探索には限界があった。しかし本発明により断片化核酸の混在下においても効率的に核酸増幅が可能となったことからその利用価値は高い。さらに、食品分野における利用としては、遺伝子組み換え作物含有の判定、偽ブランド食物の検定等が例示される。しかしながら、これに限定されるものではない。核酸増幅技術が適用可能な用途であれば、制限されることなく本発明の方法を適用できる。従来においては困難であった断片化核酸の混入が疑われる試料に対して好適に利用することができる。
また、本発明はPCRにより核酸を増幅させるための核酸増幅用キットを提供する。本発明の核酸増幅用キットは、DNAポリメラーゼ、高度好熱菌RecAタンパク質を含んで構成される。更に、適当な緩衝液、マグネシウム、dNTP塩等のPCRに必要な成分を適宜含んで構成してもよい。また、所望の核酸をもって病原体等を検出するためのキットのような場合には、所望の核酸増幅に特異的な任意のプライマー等を含ませてもよい。このようにPCR増幅に必要な成分をキットして構成することにより、簡便且つ迅速なPCR増幅が可能となる。
以下に実施例を示し、さらに本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
様々な核酸試料につき、高度好熱菌RecAタンパク質の存在下でPCRを行った。まず、実施例において、実施例にて使用した試薬について説明する。
(試薬)
核酸試料としては、大腸菌ゲノムDNA試料、枯草菌ゲノムDNA試料、及びこれらの混合試料、並びにヒトゲノムDNA試料を使用した。
具体的には、大腸菌ゲノムDNA試料としては、以下を使用した。
大腸菌ゲノムDNA試料1は、大腸菌W3110株から新生化学実験講座 核酸I 分離精製 第3章 大腸菌DNAの抽出(東京化学同人出版)に記載の方法に準じて調整した。
一方、大腸菌DNA試料2は、大腸菌W3110株からDNeasy tissue kit(キアゲン社製)により調製した。
枯草菌ゲノムDNA試料は、枯草菌168株からDNeasy tissue kit(キアゲン社製)により調製した。
ヒトゲノムDNA試料は、Human genomic DNA(プロメガ社から購入)を使用した。
DNAポリメラーゼは、rTaq DNA Polymerase(Takara−Bio社製)を使用した。
高度好熱菌TthRecAタンパク質としては、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来のRecAタンパク質(以下、「TthRecAタンパク質」と称する場合がある。)を使用した。ここで、TthRecAタンパク質は、Masui R, Mikawa T, Kato R, Kuramitsu S.著、Characterization of the oligomeric states of RecA protein: monomeric RecA protein can form a nucleoprotein filament.,Biochemistry.1998年10月20日、第37巻、第42号、第14788〜14797頁の記載を参照して本発明の発明者が調製したものを使用した。このとき、50 mM Tris-HCl (pH7.5)、1.5 M KCl、1.0 mM EDTA、0.5 mM DTT、50 % Glycerolを保存溶液として使用した。かかる溶液と共にTthRecAタンパク質を添加して使用した。
ここで使用したプライマー対の配列を以下に示す。
プライマー対BS:
オリゴヌクレオチド1
5'-AAG CGG ATG ATA TTA TCG GC-3'(配列認識番号:1)
オリゴヌクレオチド2
5'-ATG TTT TGC AGG TTC GGA TC -3'(配列認識番号:2)
プライマー対BSは枯草菌ゲノムDNAのDNAポリメラーゼI遺伝子の一部を増幅するために設計されたプライマーである。
プライマー対EC:
オリゴヌクレオチド3
5'-AAG CGG ACG ACG TTA TCG GT-3'(配列認識番号:3)
オリゴヌクレオチド4
5'- ATG TTT TGC AGG TTA GGA TC -3'(配列認識番号:4)
プライマー対ECは大腸菌ゲノムDNAのDNAポリメラーゼI遺伝子の一部を増幅するために設計されたプライマーである。
プライマー対HS:
オリゴヌクレオチド5
5'- GAC TAC TCT AGC GAC TGT CCA TCT C -3'(配列認識番号:5)
オリゴヌクレオチド6
5'- GAC AGC CAC CAG ATC CAA TC -3'(配列認識番号:6)
実施例1:PCR増幅における高度好熱菌RecAタンパク質の効果確認−1
PCR増幅における、高度好熱菌RecAタンパク質の増幅効率向上効果について確認した。
(方法)
本実施例においては、大腸菌ゲノムDNA試料1、枯草菌ゲノムDNA試料が混在する核酸試料を、枯草菌増幅用プライマー(プライマー対BS)にてPCRを行った。
PCR反応液(25 μl)を、大腸菌ゲノムDNA試料1を100ng、枯草菌ゲノムDNA試料を10ng、TthRecAタンパク質を0.5 μg、オリゴヌクレオチド1及びオリゴヌクレオチド2(プライマー対BS)を各 0.5μM(最終濃度)、DNAポリメラーゼを0.6 unit、dNTP混合液0.2 mM(最終濃度)を、10 mM Tris-HCl Buffer (pH8.3)、50 mM KCl、1.5 mM MgCl2に混合することにより調製した。
上記で調製したPCR反応液をPCRに供し、増幅産物を得た。PCRは、94℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて10秒、55℃にて30秒、70℃にて60秒の反応を1サイクルとした35サイクルの増幅反応後、70℃にて7分、4℃にて1分からなる1サイクルの最終反応によって行った。
増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を添加して撹拌し、その半量を分取して1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをエチジウムブロミドで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、TthRecAタンパク質に代えて、TthRecAタンパク質の保存溶液を0.15μl添加したものについても上記と同様の手順でPCRを行なった後、電気泳動に供した。これにより、TthRecAタンパク質の保存溶液のPCRに対する影響を排除して、TthRecAタンパク質のPCRに対する真の効果を評価することができる。
また、TthRecAタンパク質、TthRecAタンパク質の保存溶液、何れをも添加せず、上記と同様の手順でPCRを行なった後、電気泳動に供し、これをコントロールとした。
(結果)
結果を図1に示す。
図1中、レーン1は、コントロールである。
図1中、レーン2は、TthRecAタンパク質の保存溶液を添加してPCRを行った場合の増幅結果を示す。
図1中、レーン3は、TthRecAタンパク質を添加してPCRを行った場合の増幅結果を示す。
図1の結果より、TthRecAタンパク質の添加下でPCRを行った場合には枯草菌に由来する増幅産物を確認できた(レーン3)。一方、コントロール、及びTthRecAタンパク質の保存溶液のみの添加下では、増幅産物を確認することができず(レーン1、2)、何らかの増幅阻害要因により増幅反応が阻害されたことが考えられる。以上の結果より、高度好熱菌RecAタンパク質の添加により、増幅反応阻害要因の影響を低減させ鋳型核酸を特異的かつ効率的に増幅できることが判明した。
実施例2:PCR増幅における高度好熱菌RecAタンパク質の効果確認−2
実施例1に続いて、PCR増幅における、高度好熱菌RecAタンパク質の増幅効率向上効果について確認した。
(方法)
本実施例においては、大腸菌ゲノムDNA、枯草菌ゲノムDNAが混在する核酸試料を大腸菌ゲノムDNA増幅用プライマー(プライマー対EC)、枯草菌ゲノムDNA増幅用プライマー(プライマー対BS)にてPCRを行った。
ここで、PCRに供した核酸試料は具体的には以下の通りである。
試料Aは、大腸菌大腸菌ゲノムDNAとして大腸菌ゲノムDNA試料1と、枯草菌ゲノムDNA試料を含む試料であり、試料A−1、A−2は枯草菌ゲノムDNA試料の含有量が相違する。即ち、
試料A−1は、100ngの大腸菌ゲノムDNA試料1、10ngの枯草菌ゲノムDNA試料を、
試料A−2は、100ngの大腸菌ゲノムDNA試料1、5ngの枯草菌ゲノムDNA試料(試料A−1の半量)を含有してなる。
試料Bは、大腸菌大腸菌ゲノムDNAとして大腸菌ゲノムDNA試料2と、枯草菌ゲノムDNA試料を含む試料であり、試料B−1、B−2は枯草菌ゲノムDNA試料の含有量が相違する。即ち、
試料B−1は、100ngの大腸菌ゲノムDNA試料2、10ngの枯草菌ゲノムDNA試料を、
試料B−2は、100ngの大腸菌ゲノムDNA試料2、5ngの枯草菌ゲノムDNA試料(試料B−1の半量)を含有してなる。
上記試料をPCR増幅すべく、PCR反応液(25 μl)を、上記試料A−1、A−2、B−1、B−2を夫々含み、TthRecAタンパク質を0.5 μg、プライマー対を各 0.5μM(最終濃度)、DNAポリメラーゼを0.6 unit、dNTP混合液0.2 mM(最終濃度)を、10 mM Tris-HCl Buffer (pH8.3)、50 mM KCl、1.5 mM MgCl2に混合することにより調製した。
上記で調製したPCR反応液をPCRに供し、増幅産物を得た。PCRは、94℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて10秒、55℃にて30秒、70℃にて60秒の反応を1サイクルとした35サイクルの増幅反応後、70℃にて7分、4℃にて1分からなる1サイクルの最終反応によって行った。
増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を添加して撹拌し、その半量を分取して1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをエチジウムブロミドで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、試料A−1、B−1につき、TthRecAタンパク質に代えて、TthRecAタンパク質の保存溶液を0.15μl添加したものについても上記と同様の手順でPCRを行なった後、電気泳動に供した。これにより、TthRecAタンパク質の保存溶液のPCRに対する影響を排除して、TthRecAタンパク質のPCRに対する真の効果を評価することができる。
(結果)
結果を図2に示す。
図2中、レーン1〜3は大腸菌ゲノムDNA試料1を含む試料Aを、大腸菌ゲノムDNA増幅用プライマー(プライマー対EC)にて増幅した結果を示す。そして、レーン1はTthRecAタンパク質の保存溶液の添加下で試料A−1を、レーン2はTthRecAタンパク質の添加下で試料A−1、レーン3はTthRecAタンパク質の添加下で試料A−2(枯草菌ゲノムDNA試料が半量)のPCR増幅結果を示す。
図2中、レーン4〜6は大腸菌ゲノムDNA試料1を含む試料Aを、枯草菌ゲノムDNA増幅用プライマー(プライマー対BS)にて増幅した結果を示す。そして、レーン4はTthRecAタンパク質の保存溶液の添加下で試料A−1を、レーン5はTthRecAタンパク質の添加下で試料A−1、レーン6はTthRecAタンパク質の添加下で試料A−2(枯草菌ゲノムDNA試料が半量)のPCR増幅結果を示す。
図2中、レーン7〜9は大腸菌ゲノムDNA試料2を含む試料Bを、大腸菌ゲノムDNA増幅用プライマー(プライマー対EC)にて増幅した結果を示す。そして、レーン7はTthRecAタンパク質の保存溶液の添加下で試料B−1を、レーン8はTthRecAタンパク質の添加下で試料B−1、レーン9はTthRecAタンパク質の添加下で試料B−2(枯草菌ゲノムDNA試料が半量)のPCR増幅結果を示す。
図2中、レーン10〜12は大腸菌ゲノムDNA試料2を含む試料Bを、枯草菌ゲノムDNA増幅用プライマー(プライマー対BS)にて増幅した結果を示す。そして、レーン10はTthRecAタンパク質の保存溶液の添加下で試料B−1を、レーン11はTthRecAタンパク質の添加下で試料B−1を、レーン12はTthRecAタンパク質の添加下で試料B−2(枯草菌ゲノムDNA試料が半量)のPCR増幅結果を示す。
図2の結果より、試料Bにおいては、TthRecAタンパク質の添加の有無を問わず、大腸菌及び枯草菌ゲノムDNA双方に由来する増幅産物を確認できた(レーン7〜12)。一方、試料Aにおいては、TthRecAタンパク質の添加下でPCRを行った場合には、大腸菌及び枯草菌ゲノムDNA双方に由来する増幅産物を確認できた(レーン2、3、5、6)。また、鋳型DNAとして添加する枯草菌ゲノムDNA量を低減させた場合においても十分な増幅産物を確認できた(レーン6)。一方、TthRecAタンパク質の保存溶液のみの添加下でのPCRでは、増幅産物を確認することができない(レーン4)か、若しくは増幅産物量が著しく低減した(レーン1)。試料Bにおいては試料Aのような増幅阻害が生じていないことから、試料A中に含まれる何らかの増幅阻害要因により増幅反応が阻害されたことが考えられる。試料Aと試料Bの相違は、大腸菌ゲノムDNA試料にあることから、試料Aに含まれる大腸菌ゲノムDNA試料1に増幅阻害要因が含まれており、高度好熱菌RecAタンパク質が、かかる増幅阻害要因の影響を低減させることができるものと考えられる。かかる結果は、同様に大腸菌ゲノムDNA試料を含む核酸試料での実施例1の結果を追随するものである。
実施例3:大腸菌ゲノムDNA試料1と大腸菌ゲノムDNA試料2の性状確認
実施例1、2の結果を更に詳細に検討すべく、大腸菌ゲノムDNA試料1と大腸菌ゲノムDNA試料2の性状を分子量の観点から確認した。
(方法)
大腸菌ゲノムDNA試料1、大腸菌ゲノムDNA試料2、夫々200ngを、DNA Labeling Kit(Takara-Bio社製)を用いて25μlの反応量にて製造業者のプロトコールに従い32Pで標識した。反応液の全量をフェノール・クロロホルム抽出、それに続くゲル濾過(アマシャムバイオサイエンス社製:G-50 Micro-spin column)に供し、反応を停止した。反応液に電気泳動緩衝液を加えて撹拌し、その全量を1.2%アガロースゲル電気泳動に供し、泳動後のゲルをエチジウムブロミド染色し、DNAのバンドを可視化した。
(結果)
結果を図3に示す。
図3中、レーン1は大腸菌ゲノムDNA試料1の結果を、図3中、レーン2は大腸菌ゲノムDNA試料2の結果を示す。以上の結果より、大腸菌ゲノムDNA試料1は、100〜300bpの大きさの断片化DNAを多く含むことが確認された(レーン1)。一方、大腸菌ゲノムDNA試料2は、断片化DNAをほとんど含まない試料であることが確認された(レーン2)。
以上の結果、実施例1、2において、確認された増幅阻害要因が、断片化された核酸の混入によるものであることが導かれた。また、高度好熱菌RecAタンパク質は、断片化された核酸が混在する核酸試料に対する核酸増幅効率を改善できる能力を有することが判明した。
実施例4:PCR増幅における高度好熱菌RecAタンパク質の効果確認−3
PCR増幅における、高度好熱菌RecAタンパク質の増幅効率向上効果について、実施例1〜3の結果を受けて断片化核酸を添加して確認した。
(方法)
断片化核酸が混在する核酸試料における、TthRecAタンパク質添加による増幅効率向上効果に関して確認した。具体的には、10ngの枯草菌ゲノムDNA試料からなる試料と、10ngの枯草菌ゲノムDNA試料に100〜200ngの断片化大腸菌ゲノムDNAを添加した試料を枯草菌増幅用プライマーにて、TthRecAタンパク質存在下、不在下にてPCRを行った。ここで、添加した断片化された大腸菌ゲノムDNAは以下のようにして調製した。大腸菌ゲノムDNA試料1に対して、緩衝液(10 mM Tris-HCl pH8.0, 1 mM EDTA, 150 mM NaCl)中で、ゲル濾過クロマトグラフィー(S-400 HR:アマシャムファルマシア社製)を行い、高分子のDNAと低分子化した断片化DNAとを分離し、それを使用した。
ここで、検討した検討した核酸試料を具体的に以下に示す。
核酸試料C
10ngの枯草菌ゲノムDNA試料
核酸試料D
10ngの枯草菌ゲノムDNA試料+100ngの断片化大腸菌ゲノムDNA
核酸試料E
10ngの枯草菌ゲノムDNA試料+150ngの断片化大腸菌ゲノムDNA
核酸試料F
10ngの枯草菌ゲノムDNA試料+200ngの断片化大腸菌ゲノムDNA
上記核酸試料をPCR増幅すべく、PCR反応液(25 μl)を、上記核酸試料C〜Fを夫々含み、TthRecAタンパク質を0.5 μg、オリゴヌクレオチド1及びオリゴヌクレオチド2(プライマー対BS)を各 0.5μM(最終濃度)、DNAポリメラーゼを0.6 unit、dNTP混合液0.2 mM(最終濃度)を、10 mM Tris-HCl Buffer (pH8.3)、 50 mM KCl、1.5 mM MgCl2に混合することにより調製した。
上記で調製したPCR反応液をPCRに供し、増幅産物を得た。PCRは、94℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて10秒、55℃にて30秒、70℃にて60秒の反応を1サイクルとした35サイクルの増幅反応後、70℃にて7分、4℃にて1分からなる1サイクルの最終反応によって行った。
増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を添加して撹拌し、その半量を分取して1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをエチジウムブロミドで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、TthRecAタンパク質を添加せずに上記核酸試料C〜F夫々つき、上記と同様の手順でPCRを行なった後、電気泳動に供し、これを各試料に対するコントロールとした。
(結果)
結果を図4に示す。
図4中、レーン1〜2は、核酸試料C、即ち、枯草菌ゲノムDNA試料のみを含む試料での結果を示す。そして、レーン1はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン2はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図4中、レーン3〜4は、核酸試料D、即ち、枯草菌ゲノムDNA試料と100ngの断片化大腸菌ゲノムDNAを含む試料での結果を示す。そして、レーン3はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン4はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図4中、レーン5〜6は、核酸試料E、即ち、枯草菌ゲノムDNA試料と150ngの断片化大腸菌ゲノムDNAを含む試料での結果を示す。そして、レーン5はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン6はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図4中、レーン7〜8は、核酸試料F、即ち、枯草菌ゲノムDNA試料と200ngの断片化大腸菌ゲノムDNAを含む試料での結果を示す。そして、レーン7はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン8はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図4の結果より、TthRecAタンパク質を添加下でPCRを行った場合には、断片化DNA量が増加しても、枯草菌ゲノムDNA由来の特異的な増幅産物が確認された(レーン2、4、6、8)。一方、TthRecAタンパク質を添加せずにPCRを行った場合には、断片化DNA量が増加すると枯草菌ゲノムDNA由来の増幅産物を確認することができず(レーン1、3、5、7)、増幅反応が阻害された。以上の結果より、高度好熱菌RecAタンパク質の添加により、増幅阻害要因となる断片化DNAの影響を低減させ鋳型核酸を特異的かつ効率的に増幅できることが判明した。
実施例5:PCR増幅における高度好熱菌RecAタンパク質の効果確認−4
PCR増幅における、高度好熱菌RecAタンパク質の増幅効率向上効果について、種々の環境試料の混在した核酸試料にて確認した。
(方法)
種々の環境試料の混在下における、TthRecAタンパク質添加による増幅効率向上効果に関して確認した。具体的にはヒトゲノムDNAを環境試料に混入のもとでPCR増幅することにより検討を行った。
ここで、検討した環境試料を具体的に以下の表1に示す。サンプル1〜6、8〜11は土壌サンプルである点で共通するが、気候、及び性状等が異なる様々土地から採取されたものである。
PCR反応液(25 μl)を、表1で示した核酸濃度の上記環境試料1〜11夫々を0.5 μl、ヒトゲノムDNAを10 ng、TthRecAタンパク質を0.5 μg、オリゴヌクレオチド5及びオリゴヌクレオチド6(プライマー対HS)を各 0.5μM(最終濃度)、DNAポリメラーゼを0.6 unit、dNTP混合液0.2 mM(最終濃度)を、10 mM Tris-HCl Buffer (pH8.3)、 50 mM KCl、1.5 mM MgCl2に混合することにより調製した。
上記で調製したPCR反応液をPCRに供し、増幅産物を得た。PCRは、94℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて10秒、55℃にて30秒、70℃にて60秒の反応を1サイクルとした35サイクルの増幅反応後、70℃にて7分、4℃にて1分からなる1サイクルの最終反応によって行った。
増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を添加して撹拌し、その半量を分取して1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをエチジウムブロミドで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、TthRecAタンパク質を添加せずに、ヒトゲノムDNAを環境試料1〜11夫々の混在下で、上記と同様の手順でPCRを行なった後、電気泳動に供し、これを各試料に対するコントロールとした。また、同時に環境試料を何ら加えず同様にしてPCRを行った結果をも示す。
(結果)
結果を図5に示す。
図5中、レーン1、13は、ヒトゲノムDNAを環境試料1の混入のもとでPCR増幅した結果を示す。そして、レーン1はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン13はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図5中、レーン2、14は、ヒトゲノムDNAを環境試料2の混入のもとでPCR増幅した結果を示す。そして、レーン2はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン14はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図5中、レーン3、15は、ヒトゲノムDNAを環境試料3の混入のもとでPCR増幅した結果を示す。そして、レーン3はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン15はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図5中、レーン4、16は、ヒトゲノムDNAを環境試料4の混入のもとでPCR増幅した結果を示す。そして、レーン4はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン16はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図5中、レーン5、17は、ヒトゲノムDNAを環境試料5の混入のもとでPCR増幅した結果を示す。そして、レーン5はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン17はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図5中、レーン6、18は、ヒトゲノムDNAを環境試料6の混入のもとでPCR増幅した結果を示す。そして、レーン6はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン18はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図5中、レーン7、19は、ヒトゲノムDNAを環境試料7の混入のもとでPCR増幅した結果を示す。そして、レーン7はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン19はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図5中、レーン8、20は、ヒトゲノムDNAを環境試料8の混入のもとでPCR増幅した結果を示す。そして、レーン8はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン20はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図5中、レーン9、21は、ヒトゲノムDNAを環境試料9の混入のもとでPCR増幅した結果を示す。そして、レーン9はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン21はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図5中、レーン10、22は、ヒトゲノムDNAを環境試料10の混入のもとでPCR増幅した結果を示す。そして、レーン10はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン22はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図5中、レーン11、23は、ヒトゲノムDNAを環境試料11の混入のもとでPCR増幅した結果を示す。そして、レーン11はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン23はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図5中、レーン12、24は、環境試料の混入なしにPCR増幅した結果を示す。そして、レーン12はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン24はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図5の結果より、TthRecAタンパク質を添加下でPCRを行った場合には、いずれの環境試料中での増幅においても、ヒトゲノムDNA由来の特異的な増幅産物が確認された一方で、非特異的な増幅産物は確認されなかった(レーン13〜24)。しかし、TthRecAタンパク質を添加せずにPCRを行った場合には、増幅産物が全く得られない試料が存在し(レーン1、2、4)、増幅産物が得られた場合も、非特異的な増幅産物が確認された(レーン3、5〜12)。このことから環境試料中に何らかの増幅阻害要因が含まれ、かかる増幅阻害要因の混入により、鋳型特異的な核酸増幅が阻害されていることが理解される。そして、高度好熱菌RecAタンパク質の添加により、増幅阻害要因の影響を低減できることが判明した。
環境試料中には、微生物の死骸等に起因する断片化DNAの混入が想定され、実施例1〜4の結果と同様、TthRecAタンパク質が、増幅阻害要因となる断片化DNAの影響を低減させ鋳型核酸を特異的かつ効率的に増幅を導いていることが理解される。また、種々の環境試料のいずれに対しても、TthRecAの添加下では鋳型特異的な核酸増幅が確認されていることも注目に値する。なぜならば、環境試料中には、多種多様な増幅阻害物質(例えば、糖、色素、タンパク質)の混入が想定されるにもかかわらず、TthRecAタンパク質の添加により鋳型核酸特異的な増幅が達成されている。したがって、高度好熱菌RecAタンパク質は、断片化核酸をはじめ、多種多様な増幅阻害物質の影響を低減する効果を有することが理解され、粗製の試料の核酸増幅にも適用できることが理解される。
実施例6:PCR増幅における高度好熱菌RecAタンパク質の効果確認−5
PCR増幅における、高度好熱菌RecAタンパク質の増幅効率向上効果について、血液試料の混在した核酸試料にて確認した。
(方法)
長期保存した血液の混在下における、TthRecAタンパク質添加による増幅効率向上効果に関して確認した。具体的にはヒトゲノムDNAを長期保存した血液試料に混入のもとでPCRに供することにより検討を行った。
PCR反応液(25 μl)を、上記血液試料、ヒトゲノムDNAを0、1、若しくは100ng、TthRecAタンパク質を0.5 μg、オリゴヌクレオチド5及びオリゴヌクレオチド6(プライマー対HS)を各 0.5μM(最終濃度)、DNAポリメラーゼを0.6 unit、dNTP混合液0.2 mM(最終濃度)を、10 mM Tris-HCl Buffer (pH8.3), 50 mM KCl, 1.5 mM MgCl2に混合することにより調製した。
上記で調製したPCR反応液をPCRに供し、増幅産物を得た。PCRは、94℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて10秒、55℃にて30秒、70℃にて60秒の反応を1サイクルとした35サイクルの増幅反応後、70℃にて7分、4℃にて1分からなる1サイクルの最終反応によって行った。
増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を添加して撹拌し、その半量を分取して1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをエチジウムブロミドで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、上記試料につき、TthRecAタンパク質を添加せずに、上記と同様の手順でPCRを行なった後、電気泳動に供した。
(結果)
結果を図6に示す。
図6中、レーン1〜2は、ヒトゲノムDNA 100ngを血液試料の混入のもとでPCR増幅した結果を示す。そして、レーン1はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン2はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図6中、レーン3〜4は、ヒトゲノムDNA 1ngを血液試料の混入のもとでPCR増幅した結果を示す。そして、レーン3はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン4はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図6中、レーン5〜6は、ヒトゲノムDNA 0ng、即ち血液試料のみをPCR増幅した結果を示す。そして、レーン5はTthRecAタンパク質の不在下(コントロール)での、レーン6はTthRecAタンパク質の添加下での結果を示す。
図6の結果より、TthRecAタンパク質を添加下でPCRを行った場合には、血液試料混入によっても、ヒトゲノムDNA由来の特異的な増幅産物が確認され、また、非特異的な増幅産物は確認されなかった(レーン2、4)。しかし、TthRecAタンパク質を添加せずにPCRを行った場合には、ヒトゲノムDNAが100ngでは増幅産物が得られたが(レーン1)、同時に非特異的な増幅産物の生成も確認された。一方、ヒトゲノムDNAが1ngでは、TthRecAタンパク質を添加下でPCRを行った場合に比べて増幅産物量が著しく低減した(レーン3、4の比較)。このことから血液試料中に何らかの増幅阻害物質が含まれ、かかる増幅阻害物質の混入により、鋳型特異的な核酸増幅が阻害されていることが理解される。そして、高度好熱菌RecAタンパク質の添加により、増幅阻害物質の影響を低減できることが判明した。
血液試料等の核酸試料は、時間の経過と共に酸化等により核酸が変性し断片化する場合があることから、本実施例で使用した血液試料中に断片化DNAの混入していることが想定される。したがって、実施例1〜5の結果と同様、TthRecAタンパク質が、増幅阻害要因となる断片化DNAの影響を低減させ鋳型核酸を特異的かつ効率的に増幅を導いていることが理解される。また、血液試料には、実施例5で検討した環境試料と同様、多種多様な増幅阻害物質(例えば、糖、色素、タンパク質)の混入が想定されるにもかかわらず、TthRecAタンパク質の添加により鋳型核酸特異的な増幅が達成されている。したがって、高度好熱菌RecAタンパク質は、断片化核酸をはじめ、多種多様な増幅阻害物質の影響を低減する効果を有することが理解され、粗製の試料の核酸増幅にも適用できることが理解される。
医療分野、生物化学分野、環境分野、食品分野等において有用な核酸の増幅方法を提供する。
PCR増幅における高度好熱菌RecAタンパク質の効果を確認した実施例1(大腸菌ゲノムDNA試料1+枯草菌ゲノムDNA試料)の結果を示す図 PCR増幅における高度好熱菌RecAタンパク質の効果を確認した実施例2(大腸菌ゲノムDNA試料1+枯草菌ゲノムDNA試料、大腸菌ゲノムDNA試料2+枯草菌ゲノムDNA試料)の結果を示す図 大腸菌ゲノムDNA試料1と大腸菌ゲノムDNA試料2の性状を確認した実施例3の結果を示す図 PCR増幅における高度好熱菌RecAタンパク質の効果を確認した実施例4(枯草菌ゲノムDNA試料+断片化されたDNA)の結果を示す図 PCR増幅における高度好熱菌RecAタンパク質の効果を確認した実施例5(ヒトゲノムDNA+環境試料)の結果を示す図 PCR増幅における高度好熱菌RecAタンパク質の効果を確認した実施例6(ヒトゲノムDNA+血液試料)の結果を示す図

Claims (7)

  1. 断片化核酸が混入する核酸試料中の標的核酸を増幅する核酸増幅方法において、
    断片化核酸が混入する核酸試料に対して高度好熱菌由来のRecAタンパク質の存在下で核酸増幅反応を行い、前記核酸試料中の標的核酸を増幅する核酸増幅方法。
  2. 前記核酸試料が、生体試料、環境試料、及び食品から選択される試料である請求項1に記載の核酸増幅方法。
  3. 前記断片化核酸が、100〜300bpの核酸断片である請求項1又は2に記載の核酸増幅方法。
  4. 前記高度好熱菌由来のRecAタンパク質が、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、又はサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)に由来する請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸増幅方法。
  5. 前記核酸増幅反応が、ポリメラーゼ連鎖反応に基づく反応である請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸増幅方法。
  6. DNAポリメラーゼと、
    高度好熱菌由来のRecAタンパク質、とを含む断片化核酸が混入する核酸試料中の標的核酸を増幅するための核酸増幅用キット。
  7. 前記高度好熱菌由来のRecAタンパク質がサーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、又はサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)に由来する請求項6に記載の核酸増幅用キット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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