JP2008173089A - 大豆煮汁成分の有効活用方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】大豆煮汁成分を含有する液体に対し酸処理を施して、大豆タンパク質由来のアミノ酸や大豆ペプチドを生成する。ここでいう「大豆煮汁成分を含有する液体」とは、現在では廃棄処分されている大豆煮汁の原液,大豆煮汁の濃縮液,該濃縮液の希釈液,又は大豆煮汁の固化物の水溶液である。酸処理工程では、大豆煮汁成分を含有する液体に塩酸溶液を添加し、80℃〜90℃で加熱して大豆タンパク質を酸分解する。このような方法により大豆タンパク質をアミノ酸等に転換することで、大豆煮汁の食品素材としての付加価値を向上させることができる。また、大豆煮汁を食品原料として利用することにより、排水処理施設への負荷率の低減と、企業の排水処理コストの低減を達成できる。
【選択図】なし
Description
味噌をはじめとする大豆加工食品の製造現場では、大豆を煮熟する工程で多量の煮汁が発生する。多量の有機物を含む大豆煮汁は工場排水として扱われ、従来は河川等に放流することによって処理されてきた。一方現在では、海・河川・池の水質汚濁を防止する観点から大豆煮汁の河川等への放流は厳しく規制されており、大豆煮汁を活性汚泥法等によって処理した上で廃棄する必要が生じている。
近年の健康志向の向上を背景に、大豆に由来する成分が着目されており、更年期障害の改善,コレステロールや血圧の低下作用,乳がん・骨粗しょう症の予防,ダイエット効果等の様々な機能や効果が多数報告されている。中でも、基礎代謝量の増加作用が確認されている大豆ペプチド(大豆タンパク質とアミノ酸の中間物質)は、近年特に注目を集めている。大豆から抽出,精製された大豆ペプチドやアミノ酸等の成分は、健康補助食品や機能性食品、或いは飲食品への添加材料として広く活用されている。
また、本発明の他の目的は、大豆煮汁の原液等に対して酸処理を施し、大豆タンパク質を、機能性に優れた大豆ペプチドやアミノ酸に転換することで、大豆煮汁の食品素材としての付加価値を向上させることにある。
ここでいう「大豆煮汁成分を含有する液体」とは、大豆煮汁の原液,大豆煮汁の濃縮液,前記濃縮液の希釈液,又は大豆煮汁の乾燥固化物の水溶液である。
蒸発装置としては、攪拌型薄膜蒸発装置(株式会社櫻製作所製 ハイエバオレータ(登録商標))を用いることが好ましい。
すなわち、本発明の方法によれば、従来廃棄処理されてきた大豆煮汁から、人体に有効なアミノ酸や大豆ペプチドを生成することができるので、大豆煮汁の食品素材としての付加価値を向上させることできる。
特に、実験において、酵素処理の場合と比較して顕著な低分子可傾向が認められたことから、本発明は、アミノ酸を主に含有する製剤等を生成するのに適しているといえる。
大豆を原料とする食品の製造現場では、大豆を煮熟する工程で多量の煮汁が発生する。この大豆煮汁に溶出した有用成分を有効に活用すべく、本発明では、発生した大豆煮汁の原液に対して酸処理を施すことにより大豆タンパク質を加水分解し、アミノ酸,ペプチド又はこれらの混合物(以下「アミノ酸等」と略称する。)を生成する。
なお、中和反応の過程で生成された塩分については、必要であれば、公知の手段によって脱塩処理してもよい。
分解液の濃縮・乾燥化の手順(デキストリンの添加等を含む)は、後述する大豆煮汁の濃縮・固化の手順と同様であるので、その説明は省略する。
アミノ酸等を分離した後の煮汁(分解液)については、廃水処理施設等で所定の処理を施した上で放流する。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
味噌をはじめとする大豆加工食品の製造現場では、大豆を煮熟する工程で多量の煮汁が発生する。この大豆煮汁中の成分を精製するにあたっては、精製効率や品質の安定性を考慮すると、専門業者へ委託する方が好ましい場合もある。
しかしながら、委託を行うためには大豆煮汁の移送が必要となることから、大豆煮汁中の水分を除去することで大幅な減容化を図り、移送コストや移送効率を改善する必要がある。また、大豆煮汁がタンパク質を多量に含み変敗しやすいことを考えると、アミノ酸等の精製を行うまでの間の貯蔵安定性を改善するためにも、水分活性を低下させる必要がある。
なお、事前に固形分割合が判明している場合や、固形分割合を推測できる場合には、上述した固形分割合の測定手順は省略してもよい。
固化物の製造工程で利用可能な蒸発装置の種類は特に限定されず、公知の種々の蒸発装置を用いることが可能である。ただし、利用可能な好ましい蒸発装置の一つとしては、たとえば特開平4−4001号公報に開示された攪拌型薄膜蒸発装置(商品名「ハイエバオレータ」/商標登録第3068162号)が挙げられる。
図2は、図1に示す攪拌型薄膜蒸発装置の横断面図である。
図3は、図1に示す攪拌型薄膜蒸発装置の一部を拡大して示す側面図である。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
前述した第2実施形態では、蒸発装置を用いて大豆煮汁を完全に乾燥固化させる場合について説明したが、第3実施形態では、大豆煮汁を完全に固化させずに「濃縮液」を生成する。この場合には、必ずしもデキストリンを添加する必要はなく、大豆煮汁を原液のまま蒸発装置に投入すれば足りる。また、大豆煮汁は濃縮に伴い粘性を増すことから、濃縮液を生成する場合にも蒸発装置として図示する攪拌型薄膜蒸発装置を用いることが好ましい。
18% HCl : Conc. HCl を2倍希釈する。
18% NaOH: 180g NaOHを1000 ml の蒸留水で溶解する。(中和剤)
大豆煮汁原液(pH 5.6、18L、10缶)を25L 用テンタルに採取する。そこに塩酸(18%)を加え、pHを1〜1.1に調整する。反応はIHヒータで加熱することにより80〜90℃で行った。操作は2連で5回繰り返して行った。
タンパク質分解率は、全窒素に対するアミノ態窒素(ホルモール窒素)の比率で計算した。
全窒素は、ケルダール法で測定した。つまり、大豆煮汁酸分解物(中和したもの)の適量(Sg)をケルダール分解フラスコに精密に量り、分解促進剤5gを加え、次いで濃硫酸15mlを加え、穏やかに振り混ぜた後、弱火で加熱する。分解が始まると液は黒化し泡立つ。黒色粘ちょう液になったら加熱を強める。反応が進むと亜硫酸ガスと炭酸ガスを発生しながら液は徐々に黒褐色から褐色になり、最後に青色ないし青緑色で透明な液になる。更に1〜2時間強熱を続けて分解を完了させた。
冷却後、分解液に脱イオン水約120mlを加え、沸騰石数個を加えてから、静かに30%水酸化ナトリウム70mlを加えて、蒸留装置に連結させる。蒸留液の留出口に4%ホウ酸溶液40mlを入れた三角フラスコを留出口がホウ酸溶液の液面より下にあるように装着した後、加熱蒸留し、液量が120mlになったら留出口を液面から離し、更に150mlまで蒸留した。
蒸留液に混合指示薬を数滴加え、0.05 mol/l 硫酸標準液で滴定する。青色、青緑色を経て汚無色から桃色になったところを終点とする(V1ml)。別に空試験として試料の代わりにショ糖を試料と同量採取し、前記同様に操作して分解、蒸留、次いで滴定した(V2ml)。
窒素(gN/100ml) =( 0.0014 x (V1 - V2) x f / S) x 100
f : 0.05 mol/l硫酸標準液のファクター
アミノ態窒素(ホルモール窒素)は、醤油分析法によって定量した。つまり、試料25mlをホールピペットではかりとり、100mlビーカーに入れる。これをpHメーターによりN/10水酸化ナトリウム溶液を加えてpH 8.5に調整する。これにpH 8.5に調整したホルムアルデヒド液20mlをメスシリンダーで計り加える。直ちにpHは酸性を示すので、改めてN/10水酸化ナトリウム溶液を滴加してpH 8.5まで中和滴定した(t ml)。
ホルモール態窒素(gN/100ml) = t x 0.0014 x F x 100/ 25
F : N/10 水酸化ナトリウム溶液のファクター (No.1〜4:0.999)
塩分はMohr法で分析した。つまり、試料10mlをホールピペットで50mlメスフラスコにはかりとり、水を加えて定容する。これより1mlをホールピペットでとり、50ml の磁性蒸発皿に入れ、これに2%クロム酸カリウム溶液1mlを加えてガラス棒でかき混ぜながらN/50硝酸銀溶液で、終点の微橙色を呈するまで滴定する。
塩分=58.44 x (1/50) x (1/100) x F x (滴定値ml)x(希釈倍率)x (100/(サンプル採取量))
N/50 AgNO3の力価(Factor)= 5 x [(N/10 NaCl のFactor)/(滴定値ml)]
(N/10 NaCl 1 ml + クロム酸カリウム1 mlをN/50 AgNO3で滴定)
(No.1〜3:0.991, No.4:1.001)
塩酸分解反応が終了した後冷却し、18%苛性ソーダを用いてpH 5.6まで中和した。
[加熱操作]
図4にIHヒーターで加熱した場合の反応液の加熱時間と反応液温度の関係を示す。
反応液は約2時間の加熱で80℃に達し、その後2時間加熱反応をおこなった。
室温および50℃での反応においては、反応液の色は黄色を示したが、80℃付近から黄色から褐色に変化した。これは、原液中のタンパク質の酸分解によりアミノ酸が生成し、これが原液中の糖類とメイラード反応によって結合して生成したメラノイジンに起因すると考えられた。
原液の初発pHは5.6であり、これに18%HClを700ml添加してpHを1.0に調整し、加熱を開始した。加熱終了後、室温まで放冷し、18% NaOHを900ml添加することにより酸を中和し、pHを5.6に調整した。
中和処理した酸分解液の塩分濃度は、1.41〜1.55 g/100mlであった(表1)。
中和処理した酸分解物のタンパク質分解率は0.27〜0.29であった(表2)。
なお、本実施例では加熱による分解操作を行ったため、蒸発により試料の容量が変化し、正確なタンパク質残量が測定できないため、試料中の全窒素の中で、アミノ態窒素の比率で分解率を算出した。そのため、ペプチドの含有量は含まれていないため、見かけ上、低い分解率となった。
下記1)〜3)の各試料を高純水で0.2mg/mlに調整し、試料とした。
1)大豆煮汁の酸分解液の乾燥物(本発明の実施例)
大豆煮汁(固形分4.1%)に18%塩酸を加え、pH1〜1.1に調製し、
80℃で塩酸分解反応を約2時間行った後に冷却し、
18%苛性ソーダを用いてpH5.6まで中和したものにデキストリン8%を加え乾燥した。
2)大豆煮汁の酵素処理液の乾燥物(比較例1)
大豆煮汁(固形分3.9%)に酵素剤(プロテアーゼM「アマノ」G)を0.2%添加し、
60℃で約1時間の酵素反応を行い加水分解した後、
デキストリン3%を加え、乾燥した。
3)大豆煮汁原液の乾燥物(比較例2)
大豆煮汁(固形分4.35%)にデキストリン2%を加え乾燥した。
上記の各試料について、ケルダール法に基づき全窒素の測定を行なった。
測定の結果、大豆煮汁原液には全窒素が0.55%、酵素処理乾燥物には0.48%、酸分解物には0.35%含まれている事がわかった。
デキストリン含量が多くなるに従って固形分が少なくなるため、タンパク含量も減り、窒素量も減少していくだろうという予測をしたが、予測通りの値が得られた。
以後の実験において3種の試料の全窒素量が均一になるよう調節することが可能となった。
試料濃度を統一し、大豆煮汁、酵素分解物および酸分解物に対して、タンパク質の低分子化について評価を行った。
上記全窒素の測定結果を基に、1)酸分解乾燥物、2)酵素処理乾燥物、および3)大豆煮汁原液乾燥物、計3種の窒素濃度が全て1.0%になるよう以下のとおりに試料調製した。
1)酸分解乾燥物(実施例) ・・・ 5.7mg/ml
2)酵素処理乾燥物(比較例1) ・・・ 4.2mg/ml
3)大豆煮汁原液乾燥物(比較例2)・・・ 3.6mg/ml
表3に示した分析条件で
HPLC(CCPM、UV-8010、CO-8010、MX-8010:Tosoh製、DG-1210:Uniflows製)を用いて逆相クロマトグラフィーを行った。
HPLCによるペプチドマッピングの結果をそれぞれ図5〜図7に示した。
酵素処理乾燥物(図6)と大豆煮汁原液乾燥物(図7)を比較すると、大豆煮汁原液の分析結果に現れた3つの大きいピークのうち2つのピーク面積が酵素処理を行うことによって小さくなっていることを認めた。また、前半部分において複数のピークが出現し、新たにペプチド成分が生成されたと推測されることを認めた。これらの結果から、大豆煮汁を酵素処理することによって、含有するタンパク質が低分子化することが推察される。
一方、大豆煮汁の酸分解乾燥物(図5)では、大豆煮汁乾燥物(図7)に比べてピーク数は減少しており、また酵素処理乾燥物(図6)と比較しても低分子化傾向が認めれ、ペプチドのアミノ酸化が進んでいると考えられた。
以上の結果より、大豆煮汁の酸分解の場合は、酵素処理の場合に比べて低分子化の傾向(アミノ酸化傾向)が強いことが認められ、よって、本発明はアミノ酸をより多く含有する製剤等を生成するのに適しているといえる。
2 ジャケット
3 シリンダ(加熱管)
5 軸受
6 メカニカルシール
7 モータ
8 回転軸
9 駆動シャフト
10 ブラケット
11 ブレード
12 供給口
13 大豆煮汁
14 供給口
15 スチーム
16 排出口
17 排出口
20 分散板
21 フィン
22 排出口
31 ピン
32 ベース
Claims (5)
- 大豆煮汁成分を含有する液体に対し酸処理を施して、大豆タンパク質由来のアミノ酸,ペプチド又はこれらの混合物を生成することを特徴とする大豆煮汁成分の有効活用方法。
- 前記酸処理工程において、大豆煮汁成分を含有する液体に酸性分解剤を添加し、加熱条件下において大豆タンパク質の酸分解反応を進ませることを特徴とする請求項1記載の大豆煮汁成分の有効活用方法。
- 前記加熱条件が80℃以上であることを特徴とする請求項2記載の大豆煮汁成分の有効活用方法。
- 前記酸性分解剤によって分解された前記液体を蒸発装置に投入して減容化し、
前記減容化工程の前後のいずれかで前記液体に対し中和剤を添加してpH調整を行うようにすることを特徴とする請求項2記載の大豆煮汁成分の有効活用方法。 - 大豆煮汁成分を含有する前記液体が、大豆煮汁の原液,大豆煮汁の濃縮液,前記濃縮液の希釈液,又は大豆煮汁の固化物の水溶液であることを特徴とする請求項1記載の大豆煮汁成分の有効活用方法。
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