JP2008169068A - アルカリ珪酸塩浸透方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルカリ珪酸塩浸透材の半固体ゲル化反応を迅速かつ確実に行わせることができるアルカリ珪酸塩浸透方法を提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート構造物の防水又は吸水劣化防止のためにアルカリ珪酸塩をコンクリートに浸透させる方法において、コンクリートに対し、硝酸カルシウム水溶液を、アルカリ珪酸塩浸透材と相前後して浸透させる。前記硝酸カルシウム水溶液は、前記アルカリ珪酸塩浸透材における珪素のモル濃度(モル/L)を[Si]、前記硝酸カルシウム水溶液におけるカルシウムのモル濃度(モル/L)を[Ca]としたとき、モル濃度比[Ca]/[Si]が0.15乃至2.0となるものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、コンクリートの劣化防止を目的としてコンクリート中に添加されるアルカリ珪酸塩浸透材の反応を強化促進するためのアルカリ珪酸塩浸透方法に関する。
鉄筋コンクリート構造物の劣化は、地震力及び荷重等の外力によるものを除けば、コンクリート自体の劣化と鉄筋の腐食によるものである。それらを原因又は症状に基づいて分類すると、(1)中性化、(2)塩害、(3)硫酸塩浸食、(4)凍害、(5)アルカリ骨材反応のようになり、現実に起こる劣化はこれの複数原因又は症状が同時に進行する。
これらの劣化は、全て、水を媒体にした物理・化学反応である。いわゆる生コンクリートは余剰の水分を含んでいるが、凝固乾燥とともに、セメント硬化体に化学的に取り込まれた水分及びセメント硬化体を構成するいわゆるC−S−Hゲルの中に捕捉又は吸着されたゲル水以外の水分は漸次蒸発し乾燥状態になる。このC−S−Hゲルは、セメントの水和反応によって生成するコンクリートの主要強度成分であり、単純な化学式では表せないが、3CaO・2SiO・3HOが近いとされている。天然に存在する鉱物であるトベルモライトに近い構造を持つといわれている。
雨水又は海水が吸水又は透水(圧力をともなう)という形で、コンクリート内部に侵入する際、種々の有害な物質を伴うので、内部の物質との間で劣化化学反応を引き起こす。また、それだけではなく、元々内部に存在している物質間(乾燥状態では安定していたにも拘わらず)での有害な化学反応が、水を媒体にして励起されたり、活性化される。
従って、外部からの水の侵入を防止するか、又は大巾に減少させることにより、コンクリート内部を乾燥状態に保てれば、劣化の進行を止めるか、又は大巾に減少させることができる。
コンクリートの吸水及び透水を防止してコンクリートを保護するための一般的な方法は、その表面を防水施工するか、又は仕上げ(塗装、吹付け、金属パネル等、タオル等)加工を施す方法である。
防水施工方法には、アスファルト防水、シート防水、及び塗膜防水等があるが、作業性及び美観上から、適用箇所が屋上コンクリート床及び水槽内部等に限られる。また、防水材はもちろん、塗装材及び吹付け材のほとんどは有機質であるので、紫外線又は温度変化にともない、経時劣化が避けられず、耐久性に弱点がある。
一方、タイル及び金属パネルは高価であり、建築の外壁に使われることはあっても、土木構造物での使用は極めて稀である。
アルカリ珪酸塩浸透材は、ナトリウム珪酸塩溶液又はナトリウム珪酸塩とカリウム珪酸塩の混合溶液を主成分とし、他に少量の特殊金属酸化物を含むものである。これをコンクリート表面に散布又は塗布すると、アルカリ珪酸塩浸透材は、多孔質であるコンクリートの内部に、毛細管現象で数cm〜10cmの深さに浸透する。この場合の浸透深さは、コンクリート自体の水密性(水セメント比W/C及び粗骨材の大きさによる)によって異なる。
コンクリートの骨材以外の部分であるセメント硬化体は多孔質の固体ゲルであり、0.01μm〜数μmの範囲の空隙を持ち、これを毛細管空隙とよんでいる。この空隙は、セメントの水和反応によって生成したC−S−Hゲル間に残った余剰水が水和の終結とともに徐々に蒸発して空隙化したものである。コンクリート内部には、毛細管空隙の他に、(1)ひび割れ又は凝結時の分離沈降によって生じた空隙、(2)AE材使用による気泡(数10μm〜1000μm)、(3)ゲル空隙(1nm〜4nm)がある。この(1)の空隙は漏水の原因となるものであるが、この空隙は、毛細管空隙より遙かに大きく、アルカリ珪酸塩のゲル化反応では対処できない。通常、シール材又はエポキシ樹脂の注入により補修される。但し、ヘアークラックとよばれる0.1mm幅以下の空隙であれば、アルカリ珪酸塩浸透材でも対処可能である。また、(2)は独立気泡であり、(3)に含まれる水はゲルに強く拘束されていて、共に劣化化学反応には関与しない。
コンクリート内部には、主要強度成分であるC−S−Hゲルの他に、多量(セメント量の約1/3)の水酸化カルシウムCa(OH)の結晶が存在し、その一部(溶解度0.18g/100gHO)は毛細管空隙内で溶解している。また、セメント中には当初からアルカリ分(酸化ナトリウムNaO、酸化カリウムKO)が含まれるので、毛細管空隙中に水分が存在すると、ナトリウムイオンNa、カリウムイオンK、水酸化物イオンOH及びカルシウムイオンCa2+が溶解し、本来は強塩基性(pH12.5〜13.5)である。
毛細管空隙にアルカリ珪酸塩が浸透すると、それが溶液中のカルシウムイオンを取り込んでガラス質の半固体ゲルに変化する。このゲルは水分の多い環境下では、充分な水分(ゲル水)を吸収して密なゲルとなり、空隙を塞ぐ。この状態では、液体及び気体の出入りが遮断される。一方、乾燥時(ゲル水は通常の遊離水よりも蒸発しにくい)には、水分を失って粗なゲルとなり、気体(酸素、二酸化炭素、水蒸気)はある程度、流通する。
このような性質を利用して、水及び海水の侵入を防止又は抑制し、それによってコンクリートの劣化の進行を遅らせ、延命をはかるのに使われるのがアルカリ珪酸塩浸透材である。
このアルカリ珪酸塩浸透材は、コンクリート内で生成する半固体ゲル(カルシウムアルカリ珪酸塩)が、セメント又はガラスと似た組成(酸化珪素、酸化カルシウム、酸化アルカリ)で、全て無機質であり、紫外線又は温度変化による経年変質がほとんどないという長所がある。また、施工可能な部位は、床、壁、天井(床下面、梁下面)の全てであり、また施工後もコンクリート表面の外観にほとんど変化がない。よって、材齢の若いコンクリートであれば、本来の肌理及び色を長期間にわたり保つことができる。
そして、一般の防水のように薄い被膜による防水ではなく、ある厚さ(コンクリートの密実さによって数cm〜10cm)に広がった防水性のある層を形成するので、表面での機械的摩耗及び引っかき傷には強い。また、コンクリートの背面からの水圧をともなった透水(建物地中壁、地下ピット、擁壁、トンネル、水槽等)に対して、補修手段として極めて有効である。なぜなら、表面からの被膜防水では、内部からの水によって剥がれてしまい、困難である。
更に、カルシウムアルカリ珪酸塩ゲルは、防水性のある層を形成するが、通常の意味での防水層ではない。防水層のように、健全である限り一滴の水も通さないという性質のものではない。むしろ、ある深さまでの一過性の吸水を前提にしている。しかし、カルシウムアルカリ珪酸塩ゲルは、それ以上の水の浸入は防止又は抑制し、劣化を起こさない程度に内部を乾燥した状態に保つことができる。その効果の永続性、つまり耐久性は、一般の防水材にはない長所である。
川村満紀、S.チャタジー著「コンクリートの材料科学」 永長久彦著「溶液を反応場とする無機合成」 井村久則、鈴木孝治、保母俊行「分析化学1」
しかしながら、アルカリ珪酸塩浸透材の短所は、そのゲル化の反応速度がコンクリートの状況、即ち塩基性度(pH)によって大きく左右されることである。これは反応の相手方である水酸化カルシウムの溶解性による。
材齢が若く、健全なコンクリートではpHは12.0〜13.5であるといわれているが、この状態では毛細管空隙に溶解しているカルシウムイオンは極めて少ない。この場合、ゲル化の速度は極端に遅く、ゲル化の効果が発現するのに1〜2年を要する例もある。そして、この間に、コンクリートに浸透させたアルカリ珪酸塩(水溶性)が拡散してしまうおそれもある。
下記表1は2種類のセメントペースト中における細孔溶液中のCa2+イオン濃度を示す(非特許文献1)。また、図5は細孔溶液中のK,Na、Ca2+、及びOH濃度の経時変化を示すグラフ図である(同非特許文献1)。表1及び図5によれば、水酸化物イオンOH、カリウムイオンK、ナトリウムイオンNaの濃度は高いが、カルシウムイオンCa2+は極めて微量である。但し、これらのデータは、実験用のセメントペースト硬化体によるデータであり、実際のコンクリートより極端な数値になってはいると思われる。
Figure 2008169068
また、図6は水酸化カルシウムCa(OH)の溶解度曲線(非特許文献2)であり、この図6からpH>12.5ではほとんど溶解しないことが分かる。このことは、溶解度積に基づく計算結果からも検証される。その結果によれば、pH≧12.0では、カルシウムイオン濃度は数10mmol/L(ミリモル/リットル)以下である。
この計算方法について以下に説明する。Ca(OH)の溶解度積Kspは、Ksp=[Ca2+][OH=10−5.4である。また、溶解前の水酸化物イオン濃度を[OHOR、Ca(OH)の溶解度をS(mol/L)で表す。そうすると、[Ca2+]=S、[OH]=[OHOR+2Sである。このため、Ksp=S×([OHOR+2S)となり、これを展開して、下記数式が得られる。
+[OHOR+(1/4)[OHOR S−(1/4)×Ksp=0
Sはこの3次方程式の解として与えられる。結果のみを示すと以下の通りである。
pH=13.0の溶液([OHOR=10−1
→S<0となり、溶解しない。
pH=12.0の溶液([OHOR=10−2
→S=6.67×10−3mol/L、pH=12.37に上昇する。
pH=11.0の溶液([OHOR=10−3
→S=9.65×10−3mol/L、pH=12.31に上昇する。
pH=10.0の溶液([OHOR=10−4
→S=9.95×10−3mol/L、pH=12.30に上昇する。
pH=7.0の溶液([OHOR=10−7
→S=9.98×10−3mol/L、pH=12.30に上昇する。
pH=12.3強は、Ca(OH)の飽和水溶液のpH値であり、溶解前の溶液が中性又は塩基性であれば、Ca(OH)は自ら溶解することでこの値に近づいていく。その際の溶解量(電離している量)は僅か(1g/L以下)である。
一方、外的要因によって当初のpH値が維持されている場合、例えば、酸の供給による場合、Ca2+=S、[OH]=[OHORであり、次のようになる。
pH=12.0の溶液:S=3.98×10−2mol/L(2.95g/L)
pH=11.0の溶液:S=3.98mol/L(295g/L)
このように、pH=12.0の溶液においては、カルシウム濃度Sは、3.98mol×10−2mol/L、即ち、39.8mmol/L(ミリモル/リットル)であるので、pHが12以上では、カルシウムイオン濃度は数10mmol/L以下となる。外部から酸の供給又はコンクリート内部のアルカリ分(NaOH,KOH)の溶出が無ければ、Ca(OH)の飽和水溶液のpH値は、pH=12.3程度に保たれている。もし、酸の供給(空気中の炭酸ガスCO又は酸性雨HSOの浸入)があったり、コンクリートの給水・乾燥の繰り返しがあり、OH−1の流出があると、pH値が下がる。このとき、Ca(OH)の溶解にも拘わらず、pH=12.0に保持されていると仮定すると、Sは前述の如く39.8mmol/Lであるので、これを質量に換算すると、2.95g/Lとなり、ゲル化には1桁足りないことになる。
pH値の大きい健全なコンクリートも、時間とともにpH値が下がっていく。その第1の原因は当初から含まれていたアルカリ分の溶出である。pH値が下がると水酸化カルシウムの溶解が増大し、pH値を元の高い値に戻そうとする。
一方、空気中の二酸化炭素がコンクリート中に吸収されると、溶解しているカルシウムイオンと結合して、当初は炭酸カルシウム(不溶性)となるが、過剰の二酸化炭素と更に結合して、水溶性の炭酸水素カルシウムCa(HCOとなって、表面に向かって移動する。表面に達すると、二酸化炭素を放出して、最終的に炭酸カルシウムとなって固化する。また、前述のアルカリ分も、炭酸イオンCO 2−、硫酸イオンSO 2−と結合して結晶化する。これらを総称してエフロレッセンス(白樺)と呼んでいる。
以上のプロセスが中性化であるが、中性化が進行している状態では、溶解カルシウムイオンも充分に存在しているので、アルカリ珪酸塩のゲル化反応も進行する(pH≦11.0)。
以上のように、コンクリートが健全な状態の間(pH≧12.0)は、アルカリ珪酸塩浸透材のゲル化は極めて緩慢で、かつ不十分(固化の程度が低い)であるが、劣化(中性化)が既に始まり、進行している状態では、ゲル化は順調に進み、本来の効力を発揮する。換言すれば、鉄筋コンクリート構造物の防水又は吸水劣化防止を目的として浸透させたアルカリ珪酸塩は、健全なコンクリート(pH≧12.0)中では、水酸化カルシウムの溶解が極めて少なく、そのためカルシウムイオンとの結合による半固体ゲル化反応に長時間を要し、その間にアルカリ珪酸塩が拡散してしまうおそれがあるという問題点がある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、アルカリ珪酸塩浸透材の半固体ゲル化反応を迅速かつ確実に行わせることができるアルカリ珪酸塩浸透方法を提供することを目的とする。
本発明に係るアルカリ珪酸塩浸透方法は、鉄筋コンクリート構造物の防水又は吸水劣化防止のためにアルカリ珪酸塩をコンクリートに浸透させる方法において、コンクリートに対し、硝酸カルシウム水溶液を、アルカリ珪酸塩浸透材と相前後して浸透させることにより、コンクリートの半固体ゲル化反応を促進することを特徴とする。
この場合に、前記硝酸カルシウム水溶液は、前記アルカリ珪酸塩浸透材における珪素のモル濃度(モルl/L)を[Si]、前記硝酸カルシウム水溶液におけるカルシウムのモル濃度(モル/L)を[Ca]としたとき、モル濃度比[Ca]/[Si]が0.15乃至2.0となるものであることが好ましい。
本発明において、硝酸カルシウム水溶液を、アルカリ珪酸塩浸透材と相前後して浸透させる。この態様としては、(1)アルカリ珪酸塩の浸透の後、硝酸カルシウム水溶液の浸透を行うもの、及び(2)硝酸カルシウム水溶液の浸透の後、アルカリ珪酸塩の浸透を行うものの2態様がある。
本発明においては、コンクリートに浸透させたアルカリ珪酸塩の半固体ゲル化反応の過程で、アルカリ珪酸塩浸透材と相前後して浸透させることにより外部から供給されたカルシウムイオンとアルカリ珪酸塩中の水素イオンとのイオン交換によってpH値が低下し、その結果コンクリート中の水酸化カルシウムの溶解が促進される。これにより、半固体ゲル化反応が迅速かつ確実に行われ、この反応促進の結果、浸透させる硝酸カルシウムの濃度をより低くすることができ、硝酸カルシウムの使用量が節減される。
本発明によれば、アルカリ珪酸塩浸透材と相前後して硝酸カルシウム水溶液をコンクリートに浸透させることにより、コンクリートの半固体ゲル化反応が促進され、アルカリ珪酸塩による鉄筋コンクリート構造物の防水又は吸水劣化防止効果を確実にかつ迅速に得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明においては、アルカリ珪酸塩の浸透と相前後して硝酸カルシウム水溶液を浸透させることにより、カルシウムイオンを外部から補給し、それによって、アルカリ珪酸塩のゲル化を強化促進する。
この浸透の態様としては、(1)アルカリ珪酸塩の浸透の後、硝酸カルシウムの浸透を行うもの、及び(2)硝酸カルシウムの浸透の後、アルカリ珪酸塩の浸透を行うものの2態様がある。また、浸透作業は、アルカリ珪酸塩及び硝酸カルシウム塩の双方共、例えば、以下のとおりである。即ち、コンクリートの表面を水洗いし、浸透材を散布又は塗布し、表面残留分を水洗いし、再び浸透材を散布又は塗布し、表面残留分を水洗いし、更に浸透材を散布又は塗布するというようにして、浸透材をコンクリート中に浸透させる。そして、コンクリートの状況(吸水性)によって、散布又は塗布は2〜3回繰り返される。
健全なコンクリート(pH≧11.5)では、毛細管空隙中に溶解しているカルシウムイオンが少なく、アルカリ珪酸塩浸透材が有効に作用しないという問題点がある。また、中性化の終局段階(pH≦9.2)にあるコンクリートでも、溶解カルシウムイオンは極めて少なく、同様の問題がある。本発明においては、これを解決する方法として、同材の浸透の前後に外部からカルシウムイオンを補給浸透させ、強制的にゲル化反応を起こさせる。
この場合、カルシウムイオンの供給源となる物質(カルシウム塩)としては、充分に水溶性であること、次にゲル化後に残る物質(主として陰イオン)がコンクリート及び鉄筋に有害でないこと、更には大量に使用する上で高価でないことの三つの条件を満たす必要がある。これらを満足し、かつ入手しやすい物質として硝酸カルシウム及び塩化カルシウム等がある。
このうち、塩化カルシウムは、濃度の制約がある、即ち、ゲル化反応後に残る塩化物イオン(Cl)は、ある濃度(一般に、1.2kg/m(コンクリート)といわれている)を超すと、鉄筋を腐食から守っている不働態(酸化)皮膜を破壊し、溶存酸素と協働して腐食させる虞がある。このため、日本工業規格では、コンクリート中の塩化物イオン(Cl−1)量を、0.30kg/m以下と0.60kg/m以下の二段階で規制している。
以上の理由から、塩化カルシウムの適用範囲が限られる。即ち、材齢の若いコンクリート(pH≧12)及び中性化の初期段階(pH=11.5乃至12)では、後述する”呼び水効果”によって、規制値の範囲内でのゲル化が可能であるが、中性化の最終段階(pH≦9.2前後)では、内部に存在していた水酸化カルシウムの殆どは炭酸カルシウムに変わっている(炭酸化)ので、”呼び水効果”は全く期待できない。そのため、ゲル化に必要なカルシウムイオンは全て外部から供給してやる必要があり、規制値を超える可能性が大きい。
コンクリート中には、細骨材に海砂が使用された場合には、多少とも除塩後の残留塩分が含まれており、また海中又は海岸の構造物では、雨風と共に、塩分がコンクリート内部に持ち込まれる。従って、外部から供給される塩化カルシウムによる塩化物イオン量が規制値内であっても、全体的には、塩化物イオン量が規制値を超える虞がある。
このような塩化カルシウムの濃度上の制約に対し、硝酸カルシウムCa(NOの場合は、コンクリート及び鉄筋に外を及ぼす虞がなく、例えば、[Ca]/[Si]が0.9程度の高濃度でコンクリートに浸透させることができる。
硝酸カルシウムCa(NOは、純度が高いものは、火工品の原料として使用される危険物であるが、純度が低い粗硝酸カルシウムは、硝酸石灰とも呼ばれ、肥料に使用され、水に良く溶け、価格も安い。
アルカリ珪酸塩浸透材は、対象とするコンクリートの水溶性(透水性)の違いにより、アルカリと珪素のモル濃度比[R]/[Si](R:Na又はKの総量)を変える必要があり、[R]/[Si]=0.5乃至2.0で使用される。一方、カルシウムイオン量は、”呼び水効果”がある場合とない場合とでは必要量が異なる。また、例え、過剰であっても、害がないので、アルカリ量とのモル比では、実験の結果、[Ca]/[R]=0.3乃至1.0の範囲が好ましい。以上から、[R]/[Si]と、[Ca]/[R]との最小値及び最大値同士を乗算すれば、[Ca]/[Si]=0.15乃至2.0とするのが有効な成分の範囲となる。
硝酸カルシウムの場合は、濃度が増しても害がないどころか、以下に示す利点がある。酸としての硝酸は強酸であり、コンクリートを激しく侵食するが、塩である硝酸カルシウムにはそのような毒性はない。[Ca]/[Si]が0.08乃至0.90の濃度では、コンクリートに浸透しても、殆ど無害であるばかりか、むしろ鉄筋の不働態皮膜の維持には、良い効果をもたらす。
この理由は以下のとおりである。酸化性の酸である硝酸には、酸化力があるが、その源は陰イオンNO3−にある。従って、硝酸カルシウムにも、下記反応式で示すように、酸化力がある。
(濃硝酸) 2HNO→2NO+HO+1/2・O
(希硝酸) 2HNO→2NO+HO+3/2・O
但し、この反応には、濃硝酸では、僅かの光及び熱が、希硝酸では強い光及び熱が必要である。この反応を窒素酸化物間の電子の授受としてみると、下記反応式で表される。
(濃硝酸) NO +e → NO+O2−
(希硝酸) NO +3e → NO+2O2−
いずれの場合も、電子を吸収するので、酸化作用(相手を酸化し、自らは還元される)である。これを窒素の酸化数でみると、酸化数+5(NO )から+4(NO)又は+2(NO)に変化する過程で電子を吸収している。
アルカリ珪酸塩浸透材のゲル化に使用される程度の濃度の硝酸カルシウム溶液の硝酸イオンは、濃硝酸のそれよりもはるかに薄く、希硝酸とみなされるから、その酸化力は低い。しかし、微弱な酸化力であっても、鉄筋の不働態皮膜の形成及び維持に有利な方向に作用する。
若材齢のコンクリートとか、適正な配合で作られ、劣化要因の影響を余り受けなかったコンクリートの内部は、pH=12〜13.5の強塩基性である。この状態での鉄筋は緻密な酸化膜である不働態皮膜で覆われ、錆びることはない。
何らかの原因で不働態皮膜が壊れると、溶存酸素と水とによって、以下の電気化学的反応(腐食)が進行する。
Fe → Fe2+ + 2e
O + 1/2・O + 2e → 2OH
Fe2+ + 2OH → Fe(OH)
Fe(OH)は更に水と酸素によりFe(OH)となり、以下の化学式で示すように、最終的にオキシ水酸化鉄になり、これは赤錆と呼ばれるものである。
Fe(OH) → FeOOH + H
図7は、Whitman等(松島巌「錆と防食のはなし」(日刊工業新聞社))により測定された塩基度pHと腐食度との関係を示すグラフ図である。pHは、水に酸又はアルカリを少量添加して種々変更した。そして、この水溶液中に鉄片を浸漬して腐食度を測定した。図7の中間部の平坦な部分では、電気化学反応が溶存酸素量に制約されて、腐食速度が一定になっている。pHが4以下である領域で腐食度が上昇しているのは、酸による腐食である。
この際の化学反応は、以下のとおりである。
Fe → Fe+ + 2e
2H + 2e → H
そして、pHが10以上では、不働態皮膜の形成が行われ、pHの増加と共に、腐食度が急激に減少する。一般に、pHが高いほど、溶存酸素による電気化学反応は不活発になり、それに伴う酸素消費量は少なくなる。その結果、余った酸素によって、緻密な酸化膜、即ち不働態皮膜が形成される。このときの酸化は、赤錆生成のときの水を介在した電気化学反応ではなく、金属表面での直接化学反応(酸化)である。
図8はこの関係を模式的に示す。不働態皮膜形成限界値は、pHにより変わり、pH値が下がるほど、大きくなる。溶存酸素量が限界値を超えれば、余剰酸素分によって、不働態皮膜の形成が始まる。図8において、pH=Pであるとすると、限界値はTであり、RTが余剰酸素、Rは溶存酸素量である。
不働態皮膜の形成には、過剰な溶存酸素(一種の酸化剤)だけではなく、当然ながら、硫酸イオン及び硝酸にイオンのような酸化力があるイオンも寄与する。従って、硝酸カルシウムのもつ酸化力も溶存酸素に加わって、全体の酸化力を僅かでも高める効果がある。
図8で、本来の溶存酸素量Rに、硝酸イオンの酸化力による分が加算されて、全等価酸素量はRからSに増加して、余剰酸素量もSRだけ増える。中性化が進行してpH値が下がり、溶存酸素量が限界値を下回ると、電気化学反応による腐食が始まる。そのpHの境界値は、硝酸イオンの酸化力によって、P1からP2に下がる。このようにして、程度の差はあるものの、硝酸イオンは、不働態皮膜の維持には有益である。
以上のように、アルカリ珪酸塩浸透材のゲル化を促進し、かつ確実にするために使用されるカルシウム塩としては、硝酸カルシウムは、かなり多量に使用しても、無害であるばかりか、微弱とはいえ、その酸化力は鉄筋の不働態皮膜を形成し、また維持する上で、有効である。
コンクリートが健全で中性化が殆ど進行していないか、又は中性化の初期の段階(pH≧11.5)では、外部からのカルシウムイオンの補給浸透によって、強制的に半固体ゲル(カルシウムアルカリ珪酸塩ゲル)を生成させる場合、カルシウムイオンの必要量の全てを補給する必要はない。それは以下に述べるように、補給浸透されたカルシウムイオンがアルカリ珪酸塩と結合することが“呼び水”となって、内部の水酸化カルシウム結晶の溶解を促すからである(補給浸透されたカルシウムイオンの“呼び水効果”)。そして、この溶解によって供給されるカルシウムイオンも、補給浸透されたカルシウムイオンと同様、ゲル化と“呼び水効果”に貢献する。
“呼び水効果”の原因は、カルシウムイオンCa2+がゲル内に取り込まれる際、ゲル内部のより結合度の弱い陽イオンとの置換が起こると考えられる(電気的中立性)。この置換される陽イオンとはアルカリイオン(Na又はK)と水素イオンHである。強酸性陽イオン交換樹脂の選択度(親和度)は、Ca2+≫K>Na>Hである(非特許文献3)ことから、上述の如く、Ca2+がゲル内に取り込まれる際、ゲル内部のアルカリイオン(Na又はK)と水素イオンHとの置換が起こると考えられる。
カルシウムイオンと水素イオンの一部との交換にともなって、溶液のpH値は下がり、それによって、水酸化カルシウム結晶の溶解は促進される。
一方、水酸化カルシウムの溶解によって、カルシウムイオンCa2+と共に、水酸化物イオンOHも放出され、pH値を押し上げ、水酸化カルシウムの溶解を抑制する。
上述の水酸化カルシウムの溶解を促進する反応と、水酸化カルシウムの溶解を抑制する反応とは、互いに逆方向の反応であり、ある平衡点で両者が同時に並行して進行する。このような反応の進行は緩慢であり、充分なゲル化が行われるには、長時間を要すると考えられる。
以上のように、“呼び水効果”によって外部から補給浸透すべきカルシウムイオン量をゲル化に必要な量より少なくすることができる。このことは後に残る塩化物イオンClのように、濃度によってはコンクリートに有害になるかも知れない陰イオン物質を低減することに寄与する。
次に、本発明の効果を実証するための試験結果について説明する。
(ア)呼び水効果試験
(A)使用材料は、以下のとおりである。
(a)アルカリ珪酸塩浸透材
[Si]=3.0モル/L
[Na]=1.87モル/L
[K]=0.23モル/L
[Na]+[K]=2.1モル/L
その他、微量元素
(b)硝酸カルシウム水溶液
実施例1:2.1×0.7=1.47モル/L
実施例2:2.1×0.6=1.26モル/L
実施例3:2.1×0.5=1.05モル/L
実施例4:2.1×0.4=0.84モル/L
実施例5:2.1×0.325=0.683モル/L
実施例6:2.1×0.25=0.525モル/L
比較例7:2.1×0.175=0.368モル/L
比較例8:2.1×0.1=0.21モル/L
よって、硝酸カルシウムの濃度をアルカリ珪酸塩浸透材の[Si]で除した結果、モル濃度比は以下のとおりとなる。
実施例1:0.49
実施例2:0.42
実施例3:0.35
実施例4:0.28
実施例5:0.228
実施例6:0.175
比較例7:0.123
比較例8:0.07
(B)試験方法は以下のとおりである、
第1段階
上記実施例1乃至6及び比較例7,8の硝酸カルシウム溶液を夫々250ccと、アルカリ珪酸塩浸透材を250ccとを混合して、500ccの混合溶液とし、ゲル化の進行状況をみた。
第2段階
”呼び水効果”を確認するため、第1段階の各混合溶液に、夫々10g(0.135モル)の水酸化カルシウム(粉末状)を添加し、その後の経過を観察した。但し、実施例1乃至3については、第1段階で充分に硬いゲルを生成したので、第2段階は行っていない。
次に、上記実験結果について説明する。図1は、第1段階実験での混合溶液のpH値の測定結果を示すグラフ図である。混合前のアルカリ珪酸塩浸透材([Ca]=0)のpH値は11.9であった。[Ca]濃度の増加と共に、pH値は低下し、[Ca]=0.525モル/L(実施例6)以上では、pH値の変化は少ない。従って、実施例4,5,及び6は、”呼び水効果”によるゲル生成が期待できる。
生成ゲルの外観については、第1段階で、添加後10日経過後に写真撮影し、第2男系でも添加後10日後に写真撮影して、ゲルの生成の変化を観察した。
その結果、実施例1乃至3は、ほぼ同様の結果を示し、第1段階の観察で、透明度が高い上澄み液とゲルに明確に分離し、ゲルはぱさぱさした感じの結晶性を示し、やや透明感があり、かなり硬いものであった。実施例4は、第1段階では、結晶性のゲルは少なくなり、乳白色の粘結誠意(ねっとりした)のゲルが主となり、所々に粒状のものが混合している。第2段階では、粘結性ゲルの硬さが増し、実施例1乃至3と同程度の硬さになった。表面には、未反応の水酸化カルシウムが乳白色の糊状のゾルとして残っていた。実施例5は、第1段階では、全体が粘結性のゲルで、硬さは実施例4より軟らかい。粒状のゲルは実施例4よりも多い。第2段階では、やや硬いゲルと乳白色の糊状ゾルが混合した状態であるが、ゲルの方が優勢である。実施例6は、第1段階では、殆どゾルに近い軟らかいゲルである。第2段階では、実施例5とは逆に、やや硬いゲルよりも糊状のゾルの方が勝っている。これに対し、比較例7は、第1段階では、上部の乳白色の液と、下部のどろどろしたゾルとに分離して、ゲルは存在しない。第2段階では、全体として軟らかいヨーグルト状で、未反応水酸化カルシウムの乳白色ゾルと極めて軟らかいゲルとが混合した状態と考えられる。比較例8は、第1段階で、液体とゾルとの中間のような状態で、透明感がある、第2段階では、乳白色のゾルに変わるが、殆どが未反応の水酸化カルシウムと思われる。
以上から、実施例1乃至3では、”呼び水効果”がなくても、充分なゲル化が可能であり、実施例4乃至6では、水酸化カルシウムの溶解によるゲル化の促進、つまり、”呼び水効果”が確認できた。但し、実施例5及び6では、生成ゲルの硬さは充分ではない。これは、”呼び水効果”の発現が極めて緩慢であり、10日程度では時間が不足しているからである、2〜3ヶ月程度は必要であると推測される。
これに対し、比較例7は、実施例5及び6よりも更にゲル化が遅れる。比較例8は、外部からのカルシウムイオンの供給がない場合と同様であり、材齢の若いコンクリートにアルカリ珪酸塩浸透材を浸透しても、ゲルの生成が起こらないことがわかる。
(イ)吸透水試験(コンクリート)
次に、コンクリート試験体への吸透水試験の結果について説明する。供試体のコンクリートは、対セメント重量比で、砂を2.5質量%、砂利を2.7質量%含有するものである。また、水(W)とセメント(C)との比W/Cは0.66である。また、この試験体の寸法は、150mm×150mm×90mmである。
浸透材は、ASPが[Si]=3.0モル/L、硝酸カルシウムが[Ca]/[Si]=0.39である。試験方法は、図2に示すガラスロートを供試体に取り付け、その先端部まで注水し、1日間の水位の低下を測定した。但し、最初のみ、0.75日の測定値を1日に換算した。また、先端からの自然蒸発分については、水の浸透がない硬質樹脂板に同形のガラスロートを取り付け、その水位の低下を自然蒸発分として、測定値を補正した。
そして、供試体に対するASP及びカルシウム塩(硝酸カルシウム)による処理方法として、以下の4とおりを試験した。(1)ASPを先に、カルシウム塩を後に浸透させる。(2)カルシウム塩を先に、ASPを後に浸透させる。(3)ASPのみを浸透させる。(4)全くの無処理とする。
その結果を図3に示す。図3においては、横軸に経過時間をとり、縦軸に浸透流量をとって、両者の関係を示す図である。なお、浸透流量は、1日間に供試体の表面を内部に向かって通過した水の厚さ(cm)である。よって、ある経過時間までのグラフ線図の下方の面積は、それまでに浸透した水の総量に相当する。
上記(1)乃至(4)のいずれも、最初の2〜3日間(正確には、1.75〜2.75日間)の浸透量が極めて大きい。この場合に、浸透量が小さい(1)、(2)の2グループと、浸透量が大きい(3)、(4)の2グループとに分かれ、その比は約1/4〜1/5である。
初期(3〜4日後)を除いて、(3)、(4)には殆ど差がないことは、(3)において、ASPのカルシウムイオンCa2+との結合によるゲル化が殆ど起こっていないことによるもので、若材齢のコンクリートには、カルシウムイオンが極めて僅かしか存在していないことを示している。初期の差は、浸透したASPは半乾燥状態でも、いくらかは水の浸透を妨げる効果があることによるものと思われる。
なお、この実験において、ASPのコンクリートへの浸透は、必ずしも充分ではなかった。つまり、浸透しないASPが水分を失って高粘性の液体として、供試体の表面に残った。しかし、ASPの組成を調整することで浸透性を向上させ、その結果、供試体の吸透水を更に減少させることは、充分に可能である。
(ウ)吸透水試験(モルタル)
次に、モルタル試験体への吸透水試験の結果について説明する。供試体のモルタルは、セメント:砂:水の比が1:2.16:0.55であるモルタルブロックである。また、この試験体の寸法は、150mm×150mm×90mmである。
浸透材は、ASPが[Si]=2.5モル/L、カルシウムイオンが[Ca(NO]=2.7モル/Lであり、[Ca]/[Si]=0.39である。試験方法は、図2に示すガラスロートを供試体に取り付け、その先端部まで注水し、1日間の水位の低下を測定した。また、先端からの自然蒸発分については、水の浸透がない硬質樹脂板に同形のガラスロートを取り付け、その水位の低下を自然蒸発分として、測定値を補正した。
そして、供試体に対するASP及びカルシウム塩(硝酸カルシウム)による処理方法として、以下の4とおりを試験した。(1)ASPを先に浸透させ、その後(数日後)、カルシウム塩を浸透させる。(2)カルシウム塩を先に浸透させ、その後ASPを浸透させる。(3)ASPのみを浸透させる。(4)全くの無処理とする。
その結果を図4に示す。図4においては、横軸に経過時間をとり、縦軸に吸透水流量をとって、両者の関係を示す図である。なお、吸透水流量は、1日間に供試体の表面を内部に向かって通過した水の厚さ(cm)である。よって、ある経過時間までのグラフ線図の下方の面積は、それまでに浸透した水の総量に相当する。
上記(1)乃至(4)のいずれも、最初の2日間の浸透量が極めて大きいが、(1)乃至(3)は、その後、ほぼ定常状態になった。(4)のみは、その後、約20日間にわたって漸減し、その後、ほぼ定常状態に達した。定常状態での吸透水流量の比は、(1)及び(2)については、概略、1:1((1)、(2)で同量)であるが、(1)及び(2)は(4)の1/10以下である。従って、(1)及び(2)の場合には、ASPの本来的な目的であるコンクリートモルタルの吸透水抑制効果が十分に得られている。
なお、(3)については、図4において、(1)及び(2)の2〜4倍程度であり、ASPのみでもある程度の吸透水抑制効果を発揮している。しかし、ASPのみでは、この吸透水抑制効果は長く続かない。ASPは水分の多寡によって、低粘性液体、高粘性液体、半固体、固体へと変化する。この変化は可逆的であり、含水量が変われば、状態も変化する。しかし、一旦固体又は半固体化すると、水と出会っても直ぐには溶解しない。特に、常温以下では1〜2年という長い時間を要すると思われる。今回の測定結果は、ASP浸透後、1ヶ月経過した後、測定を開始したものであるが、その間に浸透したASP(特に、表面近くのASP)が水分を失い、高粘性化して毛細管空隙の狭い部分を塞ぐ状態になっていることによって、吸透水抑制効果を発揮しているものと考えられる。実際のコンクリート下では夏場の高温に曝されるので、1〜2年の間に内部のASPが侵入水に溶解し拡散するので、吸透水抑制効果が徐々に消滅していくものと考えられる。
硝酸カルシウムのカルシウムイオムイオン濃度とpHとの関係を示すグラフ図である。 吸透水試験方法を示す図である。 吸透水試験結果(コンクリート)を示すグラフ図である。 吸透水試験結果(モルタル)を示すグラフ図である。 細孔溶液中のK、Na,Ca2+,及びOH−1濃度の経時変化を示すグラフ図である。 Ca(OH)の溶解度曲線である。 pHを種々変更したときの水中での鉄の腐食(室温)を示すグラフ図である。 pHと溶存酸素との関係を示す模式図である。

Claims (2)

  1. 鉄筋コンクリート構造物の防水又は吸水劣化防止のためにアルカリ珪酸塩をコンクリートに浸透させる方法において、コンクリートに対し、硝酸カルシウム水溶液を、アルカリ珪酸塩浸透材と相前後して浸透させることにより、コンクリートの半固体ゲル化反応を促進することを特徴とするアルカリ珪酸塩浸透方法。
  2. 前記硝酸カルシウム水溶液は、前記アルカリ珪酸塩浸透材における珪素のモル濃度(モル/L)を[Si]、前記硝酸カルシウム水溶液におけるカルシウムのモル濃度(モル/L)を[Ca]としたとき、モル濃度比[Ca]/[Si]が0.15乃至2.0となるものであることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ珪酸塩浸透方法。
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