JP2008162956A - (メタ)アクリル酸溶液を得るためのシステムおよび(メタ)アクリル酸の製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸溶液を得るためのシステムおよび(メタ)アクリル酸の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、接触気相酸化反応による(メタ)アクリル酸の製造工程において、接触気相酸化反応器から排出されるガスの温度変動に拘わらず、非凝縮性ガス分離装置から得られる(メタ)アクリル酸溶液を高濃度で且つ一定濃度で安定的に得るためのシステムと、当該システムを利用する(メタ)アクリル酸の製造方法を提供することを目的にする。
【解決手段】本発明に係る(メタ)アクリル酸を含有するガスから非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得るためのシステムは、接触気相酸化反応により(メタ)アクリル酸含有ガスを製造する反応器と、製造された(メタ)アクリル酸含有ガスから非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得る非凝縮性ガス分離装置を含み、非凝縮性ガス分離装置が加熱手段を有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、(メタ)アクリル酸を含有するガスから非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得るためのシステムと、当該システムを利用する(メタ)アクリル酸の製造方法に関するものである。
アクリル酸やメタクリル酸(以下、これらを合わせて「(メタ)アクリル酸」という)は、工業製品の製造原料等として用いられるものであり、大規模なプラントで大量に生産される化学物質である。一般に、これら化合物は、高純度の製品を得るために、粗生成物から非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸の溶液を得る工程や、さらに種々の精製工程などを経て製造される。
例えばアクリル酸の製造工程においては、プロピレン、プロパン、アクロレイン等を酸化触媒の存在下で分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化すると、目的物であるアクリル酸の他に、酢酸、低級アルデヒド、水等の低沸点物質と、フルフラールや無水マレイン酸等の高沸点物質が副生成物として発生する。このため、得られた混合ガスを非凝縮性ガスの分離装置に導き、捕集溶剤と接触させたり凝縮することによりアクリル酸とその他の副生物を含む溶液を得て、この溶液から蒸留、放散、抽出、晶析等の方法によりアクリル酸を分離、精製して製品を得ている。
非凝縮性ガス分離装置内においては、プロピレンや二酸化炭素など常温常圧で気体の非凝縮性ガスが分離される。ここで、非凝縮性ガス分離装置へ導入される(メタ)アクリル酸含有ガスは高温であるため、目的化合物である(メタ)アクリル酸が非凝縮性ガスに伴って排出されてしまう。よって、従来、(メタ)アクリル酸含有ガスから非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得る際には、捕集溶剤や非凝縮性ガス分離装置等をできるだけ冷却することが行なわれていた。
例えば、特許文献1に記載の技術は、捕集溶剤を用いる捕集塔を非凝縮性ガス分離装置として使用するものであり、捕集塔から得られた(メタ)アクリル酸溶液を比較的少量取り出して強度に冷却し、捕集塔に再循環している。また、特許文献2には、捕集塔の塔底部や塔頂部に設けた除熱装置により除熱量を大きくすることが記載されている。その他、特許文献3〜5には、接触気相酸化反応により得られたアクリル酸含有ガスを冷却することが記載されている。
しかし、(メタ)アクリル酸の製造プロセスの安定的な操業という観点からは、これら先行技術では十分ではない。即ち、(メタ)アクリル酸を合成するための接触気相酸化反応では、通常、酸素含有ガスとして安価な空気が使用されるが、空気中の水分は常に変動する。よって、非凝縮性ガス分離装置へ導入されるガス中の水分量や(メタ)アクリル酸濃度が変動し、非凝縮性ガス分離装置から排出される(メタ)アクリル酸溶液の濃度も変動してしまう。その結果、以降の精製工程を一定の条件で安定的に行なうことができなくなる。
これに対し、(メタ)アクリル酸溶液に含まれる水分量が変動すると次工程以降の稼動安定性の確保が困難となることに鑑み、(メタ)アクリル酸溶液の濃度を制御するための技術として特許文献6の技術がある。かかる技術は、非凝縮性ガス分離装置である捕集塔の塔頂の温度や圧力を制御して塔頂から排出されるガス中の水分量を変化させることによって、捕集塔から得られる(メタ)アクリル酸溶液の濃度を制御する技術である。
また、非凝縮性ガス分離装置から得られる(メタ)アクリル酸溶液の濃度が高ければ、その後における精製工程での効率が向上する。よって、当該濃度を高めるための技術も開発されている。特許文献7には、非凝縮性ガス分離装置である捕集塔で得られたアクリル酸溶液を晶析工程と蒸留工程に付し、得られた留出液を捕集塔に循環する技術が開示されており、かかる技術によって80%以上の高濃度アクリル酸溶液が得られている。しかし、当該技術によれば高濃度のアクリル酸溶液を得ることはできるが、当該技術はアクリル酸溶液を一定濃度で安定的に得るためのものではない。
特開平8−176062号公報(請求項1、段落[0011]、[0017]、[0022]) 特開2003−206256号公報(段落[0025]、[0029]) 特開2003−176252号公報(段落[0018]) 特開2005−179354号公報(段落[0016]) 特開2001−19655号公報(段落[0008]) 特開2003−238485号公報(特許請求の範囲、段落[0029]) 特開2005−15478号公報(段落[0065])
上述した通り、従来における(メタ)アクリル酸の製造方法においては、非凝縮性ガス分離装置で(メタ)アクリル酸含有ガスから非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得る効率を高めるために、捕集溶剤や非凝縮性ガス分離装置等をできるだけ冷却することが行なわれていた。また、非凝縮性ガス分離装置から得られる(メタ)アクリル酸溶液の濃度を一定のものとしたり、当該濃度を高めるための技術も知られていた。しかし、(メタ)アクリル酸溶液を高濃度且つ安定的に一定濃度で得るには、従来技術では十分でないことが分かった。
即ち、接触気相酸化反応は触媒を用いるが、この触媒は経時的に劣化する。よって、触媒の劣化が進行するに連れて(メタ)アクリル酸の生成量が低下しない様に、反応温度を上げる必要がある。その結果、接触気相酸化反応により得られる(メタ)アクリル酸含有ガスの温度は100℃以上変動する。ここで従来技術では、非凝縮性ガス分離装置から得られる(メタ)アクリル酸溶液の濃度は50〜70質量%程度に設定していたために、非凝縮性ガス分離装置から排出される水蒸気量は少なく、積極的に非凝縮性ガス分離装置を冷却すればよいため、余裕をもって制御することができる。ところが、より高濃度の(メタ)アクリル酸溶液を目的とする場合、非凝縮性ガス分離装置へ導入される(メタ)アクリル酸含有ガスの温度変化に応じて微妙な制御が必要となり、非凝縮性ガス分離装置の制御可能範囲を超えてしまうか、或いは制御可能範囲の限界付近での操業を強いられ、わずかな外乱で(メタ)アクリル酸溶液の濃度が変動してしまうことがあった。
より具体的には、従来の濃度の(メタ)アクリル酸溶液を得る場合、循環させる(メタ)アクリル酸溶液における最小の除熱量を100とすると、最大除熱量は150程度でよい。しかし、高濃度の(メタ)アクリル酸溶液を得る場合には、非凝縮性ガスの分離装置内で蒸発させる水の量を多くすべく分離装置内温度を比較的高く保つ必要があり、入口ガス温度が低い時には極少量の除熱が必要となるので、循環する溶液の除熱量は、26〜140程度にする。この場合の除熱量差は、従来の1.5倍(150/100)に対して約5.4倍(140/26)であり、循環ラインにおける冷却器を通過する循環溶液の量を制御するといった手段により可能な制御範囲を超えてしまい、濃度変動が起こってしまう。つまり、従来方法では、高濃度の(メタ)アクリル酸溶液を安定的に得ることはできなかった。
非凝縮性ガス分離装置における除熱は、一般的に、塔底から得られる(メタ)アクリル酸溶液の一部を冷却して分離装置に循環することにより行なわれる。ところが、従来、(メタ)アクリル酸溶液の濃度を一定に保つにはかかるシステムでも対応可能であったが、濃度の高い溶液を得ようとすると、上記の通り(メタ)アクリル酸含有ガスの温度の変動に応じて除熱すべき量の差が約5.4倍まで大きくなり、従来におけるシステムのコントロール範囲を超えてしまう。その結果、除熱量が過少または過大となって、(メタ)アクリル酸溶液の濃度を安定化することができなくなる。
そこで本発明の目的は、接触気相酸化反応による(メタ)アクリル酸の製造工程において、接触気相酸化反応器から排出されるガスの温度変動に拘わらず、非凝縮性ガス分離装置から得られる(メタ)アクリル酸溶液を高濃度で且つ一定濃度で安定的に得るためのシステムと、当該システムを利用する(メタ)アクリル酸の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、(メタ)アクリル酸含有ガスの温度にかかわらず、非凝縮性ガス分離装置から得られる(メタ)アクリル酸溶液を安定的に高濃度かつ一定濃度とする条件につき鋭意検討した。その結果、従来、非凝縮性ガス分離装置は効率的に非凝縮性ガスを分離するために冷却することが常識であったことから、従来システムには分離装置等の冷却手段しか設けられていなかったところ、加熱手段を併設して分離装置等の温度を調節することにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明に係る(メタ)アクリル酸を含有するガスから非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得るためのシステムは、
接触気相酸化反応により(メタ)アクリル酸含有ガスを製造する反応器と、
製造された(メタ)アクリル酸含有ガスから非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得る非凝縮性ガス分離装置を含み、
非凝縮性ガス分離装置が加熱手段を有することを特徴とする。
上記システムにおいては、上記加熱手段として、下記の少なくとも1つを有することが好ましい。
(1)非凝縮性ガス分離装置の底部に設置するジャケット式熱交換器
(2)非凝縮性ガス分離装置の底部に設置するコイル式熱交換器
(3)非凝縮性ガス分離装置の底部から得られた(メタ)アクリル酸溶液を加熱し、非凝縮性ガス分離装置の中間部へ供給する循環ライン。
従来、(メタ)アクリル酸溶液から非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得る場合、効率を高めるために非凝縮性ガス分離装置を冷却のみしていた。本発明では当該溶液をあえて加熱することによって、(メタ)アクリル酸溶液を高濃度で得ることができ、また、当該濃度を容易に略一定とすることが可能になる。
また、本発明に係る(メタ)アクリル酸の製造方法は、
接触気相酸化反応器において原料ガスを接触気相酸化反応させて(メタ)アクリル酸を含有するガスを製造する工程;および
製造された(メタ)アクリル酸含有ガスを非凝縮性ガスの分離装置へ導入し、(メタ)アクリル酸含有ガスから非凝縮性ガスを分離して75質量%以上の高濃度の(メタ)アクリル酸溶液を得る工程;を含み、
上記の本発明システムを用い;
非凝縮性ガス分離装置へ供給される(メタ)アクリル酸含有ガスの温度に応じて、上記加熱手段による加熱温度を調節することを特徴とする。
上記方法においては、さらに、接触気相酸化反応により得られる(メタ)アクリル酸含有ガスの温度に応じて、非凝縮性ガス分離装置へ供給する(メタ)アクリル酸含有ガスの温度を制御することが好ましい。非凝縮性ガス分離装置へ供給する前に予めガス温度を制御しておくことにより、非凝縮性ガス分離装置の温度制御が容易となり、(メタ)アクリル酸溶液の濃度を一層安定なものとすることが可能となるからである。また、上記ガスの温度を200℃〜300℃に制御することが好ましい。高濃度の(メタ)アクリル酸溶液を得る場合であっても、非凝縮性ガス分離装置の温度制御性を保つことができ、得られる(メタ)アクリル酸溶液の濃度変動の抑制を一層容易にできるからである。
さらに本発明方法においては、非凝縮性ガス分離装置から排出される(メタ)アクリル酸溶液中の水分濃度を1〜10質量%にすることが好ましい。接触気相酸化反応においてアクリル酸含有ガス中にアクリル酸と共に主として生成されるのは水分であり、かかる水分濃度を低減することにより、相対的にアクリル酸溶液中のアクリル酸濃度を高くすることができるからである。
本発明により、接触気相酸化反応器から排出されるガスの水分量や温度変動にかかわらず、(メタ)アクリル酸溶液を高濃度でかつ略一定に安定的に得ることが可能となる。従って、本発明に係る(メタ)アクリル酸溶液を得るためのシステムと製造方法は、非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得る工程以降の工程における負担や労力を大きく軽減することが可能となり、従来技術より一層生産効率を向上させることができる。特に、高濃度アクリル酸溶液を安定して得ることも可能となるため、非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得る工程の後、前処理工程を経ることなく晶析工程に供することも可能となり、生産効率は一層高まる。よって本発明は、(メタ)アクリル酸の効率的な製造を可能にするものとして、産業上極めて有用である。
本発明に係る(メタ)アクリル酸を含有するガスから非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得るためのシステムは、
接触気相酸化反応により(メタ)アクリル酸含有ガスを製造する反応器と、
製造された(メタ)アクリル酸含有ガスから非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得る非凝縮性ガス分離装置を含み、
非凝縮性ガス分離装置が加熱手段を有することを特徴とする。以下、本発明を、具体的に説明する。
まず、接触気相酸化反応についてアクリル酸の製造を代表例として説明する。メタクリル酸については、例えば原料としてアクロレインの代わりにメタクロレインを用いるなど、当業者であれば以下の説明を参照し応用することができる。
当該反応の原料としては、プロピレン、プロパン、アクロレイン等を用い、不活性ガス等と、ブロワーで昇圧された空気等の分子状酸素含有ガスと共に、酸化触媒が充填された接触気相酸化反応器に供給し、接触気相酸化反応してアクリル酸含有ガスを生成する。ここで接触気相酸化反応に用いる反応器としては、接触気相酸化触媒の存在下でアクリル酸を生成するものであれば特に制限はないが、反応効率に優れる点で多管式反応器を利用するものが好ましい。具体的には、多管式反応器等の反応器を用い、酸化触媒の存在下、プロピレン、プロパン、アクロレイン等の原料成分、不活性ガス等、空気等の分子状酸素含有ガスからなる反応原料ガスを所定量供給し接触気相酸化反応を行なう。この時、原料成分としてプロピレンを使用すると、まずアクロレインが生成され、これをさらに接触気相酸化することによりアクリル酸が得られる。本発明で採用される反応工程としては、これらの反応を1つの反応器で行なう一段法であるか、異なる反応器でそれぞれ行なう二段法であるかは問わない。また、使用する酸化触媒、ならびに原料成分、分子状酸素、不活性ガス等のガス濃度、反応温度等の反応条件は、従来公知であるアクリル酸生成反応工程の何れの条件をも適用することができる。
例えば、原料成分としては、プロピレン、プロパン、アクロレインの何れかまたはこれらの2種以上の混合物を用いることができ、これらの原料成分は、反応器に供給する反応原料ガスの6〜20容量%、好ましくは8〜15容量%とするのがよい。また、当該反応原料ガスは、酸化反応を行なわせるため原料成分に対し1〜3倍(モル比)の分子状酸素を含有し、残りは窒素、二酸化炭素、水蒸気などの不活性ガスである。
また、例えば、本発明でプロピレン含有ガスを接触気相酸化反応してアクリル酸を製造するには、プロピレンの接触気相酸化によりアクロレインを生成する前段反応に使用する触媒として、プロピレンを含有する原料ガスを接触気相酸化してアクロレインを製造するのに一般的に使用される酸化触媒を使用することができる。同様に、上記前段反応で得られたアクロレインの接触気相酸化によりアクリル酸を生成する後段反応に使用する触媒についても特に制限はなく、アクロレインを含む反応ガスを接触気相酸化してアクリル酸を製造するのに一般に用いられている酸化触媒を使用することができる。
この接触気相酸化反応で得られるアクリル酸含有ガスには、アクリル酸、分子状酸素、未反応原料成分、不活性ガスが含まれ、その他に副生する水、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、アセトン、アクロレイン、フルフラール、ホルムアルデヒド等の不純物が含まれている。
上記反応においては、(メタ)アクリル酸の生成量を保つために、触媒の経時劣化に応じて反応温度を上げる必要がある。また、用いる触媒によって反応温度は異なる。このため、反応器から排出された(メタ)アクリル酸含有ガスの温度は、一般的に200〜350℃と100℃を超える幅を有する。
本発明では、接触気相酸化反応により得られる(メタ)アクリル酸含有ガスの温度に応じて、非凝縮性ガス分離装置へ供給する(メタ)アクリル酸含有ガスの温度を制御することが好ましい。高濃度の(メタ)アクリル酸溶液をより効率的かつ一定に得られるからである。
(メタ)アクリル酸含有ガスを得るための反応器と非凝縮性ガス分離装置の間に配設されるガス温度制御手段の例としては、下記(A)〜(F)の手段が挙げられる。
(A)内部を通過する(メタ)アクリル酸含有ガスの供給量を変化させることにより(メタ)アクリル酸含有ガスの温度を制御する廃熱回収熱交換器。供給量の変化は、例えば反応器と非凝縮性ガス分離装置との間に廃熱回収熱交換器への通過を回避するためのバイパスラインを設け、合流後のアクリル酸含有ガスの温度を温度計により確認しながらバイパス量を変化させることによって行うことができる。
(B)蒸気を発生させることにより熱交換を行う熱交換器であって、蒸気の圧力を変化させることにより(メタ)アクリル酸含有ガスの温度を制御する廃熱回収熱交換器。蒸気圧力の変化は、例えば、アクリル酸含有ガスの温度を温度計により確認しながら圧力を変化させることによって行うことができる。
(C)蒸気を発生させることにより熱交換を行う熱交換器であって、内部の被蒸発液の液面高さを変化させることにより(メタ)アクリル酸含有ガスの温度を制御する廃熱回収熱交換器。液面高さは、例えば、アクリル酸含有ガスの温度を温度計により確認し、また、液面高さを液面高さ表示計により確認しながら、変化させることができる。
(D)冷却媒体を通過させることによって熱交換を行う熱交換器であって、冷却媒体の流量を変化させることにより(メタ)アクリル酸含有ガスの温度を制御する廃熱回収熱交換器。当該冷却媒体の流量変化は、例えば冷却媒体のバイパスラインを設け、アクリル酸含有ガスの温度を温度計により確認しながらバイパス量を変化させることによって行うことができる。
(E)非凝縮性ガス分離装置から排出された(メタ)アクリル酸溶液を(メタ)アクリル酸含有ガスと直接接触させて熱交換を行う熱交換器であって、冷却媒体によって冷却されたアクリル酸溶液の供給量および/または温度を変化させることにより(メタ)アクリル酸含有ガスの温度を制御する直接接触熱交換器。冷却されたアクリル酸溶液の供給量の変化は、例えば、非凝縮性ガス分離装置の塔底から抜き出したアクリル酸溶液を直接接触式熱交換器に供給するラインを設け、アクリル酸含有ガスの温度を温度計により確認しながら供給量を変化させることによって行うことができる。また、冷却されたアクリル酸溶液の温度の変化は、例えば、非凝縮性ガス分離装置の塔底から抜き出したアクリル酸溶液を直接接触式熱交換器に供給するラインを設け、アクリル酸含有ガスの温度を温度計により確認しながら冷却媒体の供給量を変化させることによって行うことができる。
(F)冷却媒体を供給して熱交換を行う複数の熱交換器であって、冷却媒体が供給される熱交換器の数を変化させることによって、アクリル酸含有ガスの温度を制御する直接接触熱交換器。かかる温度制御は、複数の熱交換器を配設し、冷却媒体が供給される熱交換器と供給されない熱交換器とを適宜組み合わせることによりアクリル酸含有ガスの温度を変化させる態様である。
非凝縮性ガス分離装置に供給する(メタ)アクリル酸含有ガスの温度は、好ましくは200℃〜300℃、より好ましくは210〜290℃、更に好ましくは230〜280℃に制御することが望ましい。200℃以上とすることによって、アクリル酸より低い沸点を有する成分の凝縮の抑制を一層向上することができ、(メタ)アクリル酸溶液を高濃度に保つための非凝縮性ガス分離装置の温度制御が可能になる。一方、300℃以下とすることによって、(メタ)アクリル酸含有ガスから非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得る工程における冷却に要する負荷を軽減することができ、(メタ)アクリル酸溶液を得る効率を一層高めることが可能となる。
接触気相酸化反応により得られた(メタ)アクリル酸含有ガスは、次いで非凝縮性ガス分離装置へ供給され、非凝縮性ガスが分離されることにより(メタ)アクリル酸溶液が得られる。より具体的には、例えば、非凝縮性ガス分離装置が捕集塔の場合、捕集溶剤を用いて(メタ)アクリル酸を捕集し非凝縮性ガスを分離する場合には、当該ガスは充填層等が設置された捕集塔下部より供給され、捕集塔上部より供給される捕集溶剤と接触して捕集される。ここで、非凝縮性ガスとは常温常圧で気体である物質をいい、例えば、プロピレン、プロパン、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、酸素等をいう。
捕集塔へ供給された(メタ)アクリル酸含有ガスが捕集溶剤と接触すると、(メタ)アクリル酸等は捕集溶剤に捕集される一方で、非凝縮性ガスの大部分は捕集溶剤に捕集されることなく塔頂部より放出される。この際、(メタ)アクリル酸含有ガスに含まれる水分が捕集溶剤に捕集されるか、或いは気体として非凝縮性ガスと共に放出されるかは、主に捕集塔の温度に依存する。また、捕集塔自体の温度が十分に高ければ、捕集塔からも水分は放出され続ける。即ち、捕集塔の温度が高ければ、より多くの水分が放出されるため、得られる(メタ)アクリル酸溶液の濃度は高くなる。しかし、捕集塔の温度が高過ぎると、捕集溶剤に捕集されずに非凝縮性ガスと共に放出される(メタ)アクリル酸の量が増えてしまう。よって、捕集塔における除熱量、即ち捕集溶剤や捕集塔自体の温度は、非凝縮性ガスと共に放出される水分と(メタ)アクリル酸との量のバランスを考慮して決定する必要がある。
使用する捕集溶剤は、特に限定されるものではないが、例えば、主成分を水とするものが挙げられる。また、主成分を水とする溶液として、(メタ)アクリル酸の製造工程で発生する廃水および次工程である(メタ)アクリル酸精製工程等で発生する廃液の一部または全量を回収して再利用するのが経済的であり好ましい。また、場合によっては洗浄廃液などを混合して用いることもできる。さらに、(メタ)アクリル酸の効率的な捕集を可能にするために、(メタ)アクリル酸を捕集した捕集溶剤、即ち(メタ)アクリル酸溶液の一部または全部を循環させ、捕集溶剤として用いてもよい。
ここで(メタ)アクリル酸含有ガスと捕集溶剤との接触方法には、公知の接触方法を使用することができ、例えば、泡鐘トレイ、ユニフラックストレイ、多孔板トレイ、ジェットトレイ、バルブトレイ、ベンチュリートレイおよびそれらの任意の組み合わせを用いる十字流接触;ターボグリッドトレイ、デュアルフロートトレイ、リップルトレイ、キッテルトレイ、不規則充填物、規則充填物およびこれらの任意の組み合わせを用いる向流接触などが挙げられる。中でも、向流接触により(メタ)アクリル酸含有ガスと捕集溶剤とを接触させる方法が有利であり、特に、捕集塔において、捕集溶剤の塔内の流れにおける上流側に吸収効率の高い充填物を、その下流側に重合生成能の相対的に低い充填物および/または棚段(トレイ)を設置することが有利である。また、捕集溶剤の供給温度や供給量に関しては、適宜設定することができる。
捕集溶剤を用いることなく(メタ)アクリル酸含有ガスを凝縮して(メタ)アクリル酸溶液を得る場合に用いる非凝縮性ガスの分離装置としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、バブルトレイ、シーブトレイ、バルブトレイなどのトレイや、充填物を含む蒸留塔であって、導入された(メタ)アクリル酸含有ガスを冷却媒体により満遍なく冷却することができ、非凝縮性ガスを塔頂から排出しつつ(メタ)アクリル酸などの凝縮成分を凝縮して(メタ)アクリル酸溶液が得られるものであれば、特に制限されない。かかる非凝縮性ガスの分離装置の冷却媒体としては、得られた(メタ)アクリル酸溶液を熱交換器で冷却したものを循環して用いることができる。
ここで、より濃度の高い(メタ)アクリル酸溶液を得るためには、非凝縮性ガス分離装置内における温度を高め、水分の排出量を多くしなければならない。その手段としては、非凝縮性ガス分離装置の温度を高く設定することが挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸含有ガスの温度が低い場合において高濃度の(メタ)アクリル酸溶液を得ようとすれば、非凝縮性ガス分離装置での除熱量を少なくしなければならない。ところが、従来のシステムでは、(メタ)アクリル酸を効率的に捕集するために非凝縮性ガス分離装置を冷却する手段しか有しておらず、(メタ)アクリル酸含有ガスの温度が低い場合においては、当該温度が高い場合と同様の高濃度(メタ)アクリル酸溶液を得るために、ごく少量の除熱をして非凝縮性ガス分離装置の温度制御をするということができなかった。
そこで本発明では、非凝縮性ガス分離装置に加熱手段を設けることによって、(メタ)アクリル酸含有ガスの温度が低い場合でも、非凝縮性ガス分離装置の除熱の制御性を維持でき、高濃度の(メタ)アクリル酸溶液を安定的に得ることを可能にした。
ここで使用する非凝縮性ガス分離装置としては、加熱手段を有する以外、従来公知の捕集塔と同様のものを用いることができる。例えば、捕集塔の場合、下部から反応器により得られた反応ガスを供給し、上部から捕集溶剤を供給し、捕集塔内で反応ガスと捕集溶剤を接触させ、塔頂部から非凝縮性ガスを排出し、塔底から凝縮溶液を排出することができるものであればよく、特に限定されるものではない。
本発明システムが有する非凝縮性ガス分離装置の加熱手段の例としては、特に制限されるものではないが、例えば下記(1)〜(3)の手段が挙げられる。
(1)非凝縮性ガス分離装置の底部に配設されたコイル式熱交換器(図1)。
(2)非凝縮性ガス分離装置の底部に配設されたジャケット式熱交換器(図2)。
(3)非凝縮性ガス分離装置の底部から得られた(メタ)アクリル酸溶液を加熱し、非凝縮性ガス分離装置の中間部へ供給する循環ライン(図3、4、5)。
上記(1)および(2)の加熱手段は、例えば図1及び図2のように配設し、非凝縮性ガスの排出部等の温度を温度計により確認しながら熱交換器の加熱量を変化させ、非凝縮性ガス分離装置の底部周辺を加熱するものである。捕集塔へ供給される(メタ)アクリル酸含有ガスの温度が低い場合、高濃度の(メタ)アクリル酸溶液を得ようとすると非凝縮性ガス分離装置の底部での除熱量はごく僅かでよく、制御が困難であるために、本発明に係る加熱手段で加熱することで、除熱量を容易に制御することができる。
また、上記(3)の加熱手段は、例えば図3のように、非凝縮性ガス分離装置の底部から得られた(メタ)アクリル酸溶液の一部を抜き出し、非凝縮性ガス分離装置の中間部へ循環する循環ラインを設け、当該ラインに従来公知の加熱器を配設し、非凝縮性ガス分離装置の非凝縮性ガス排出部等の温度を温度計により確認しながら加熱量を変化させるものである。
ここで一般的に、(メタ)アクリル酸含有ガスから非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得る工程においては(メタ)アクリル酸溶液を得る効率を高めるため、塔底より排出された(メタ)アクリル酸溶液を、一部は冷却手段で冷却しつつ非凝縮性ガス分離装置の中間部に循環させ、残りは抜出して蒸留、放散、抽出、晶析工程等の次の工程に供することが行われている。本発明では、従来の冷却手段の代わり或いは冷却手段に加えて、加熱手段を設ける。これによって、高濃度の(メタ)アクリル酸溶液の取得を目的とする場合であっても、非凝縮性ガス分離装置のより詳細な温度制御が可能となる。
上記(3)の別態様として、冷却器を有する循環ラインを加熱することも好ましい(図4、図5)。かかる加熱手段による循環(メタ)アクリル酸溶液の温度制御は、例えば、冷却循環ラインにバイパスラインを設け、かつ両ラインが一体となって非凝縮性ガス分離装置の中間部へ(メタ)アクリル酸溶液を循環できる様に設置し、一体となった経路に加熱手段を設け、非凝縮性ガスの排出部等の温度を温度計で確認しながらバイパス量を変化させることにより行うことができる(図4)。また、例えば冷却循環ラインとバイパスラインを設け、従来の冷却手段に加熱媒体も供給できる様にし、非凝縮性ガスの排出部等の温度を温度計で確認しながらバイパス量を変化させると共に、循環(メタ)アクリル酸溶液の一部を加熱することにより行うことができる(図5)。上記(3)の態様で用いる加熱手段および冷却手段として、従来公知の適当な冷却器および加熱器を用いることができ、適当な冷却媒体および加熱媒体を用いることができる。例えば、冷却媒体および加熱媒体として、水を用いることができる。
このように、上記(3)の加熱手段において、(メタ)アクリル酸の循環供給ラインに加熱手段を有する態様は、冷却手段と加熱手段を併用することによって一層詳細な温度制御が可能となる。従って、上記(3)は、加熱制御を一層有用なものとできる点でより好ましい。
本発明に係る(メタ)アクリル酸の製造方法は、
接触気相酸化反応器において原料ガスを接触気相酸化反応させて(メタ)アクリル酸を含有するガスを製造する工程;および
製造された(メタ)アクリル酸含有ガスを非凝縮性ガスの分離装置へ導入し、(メタ)アクリル酸含有ガスから非凝縮性ガスを分離して75質量%以上の高濃度の(メタ)アクリル酸溶液を得る工程;を含み、
上記で説明した本発明のシステムを用い;
非凝縮性ガス分離装置へ供給される(メタ)アクリル酸含有ガスの温度に応じて、上記加熱手段による加熱温度を調節することを特徴とする。
本発明における加熱温度は、非凝縮性ガス分離装置から排出される(メタ)アクリル酸溶液の濃度を略一定にするため、非凝縮性ガス分離装置における除熱量の制御性が保てる様に制御する。従来、非凝縮性ガス分離装置はできるだけ冷却することが技術常識であった。しかし、実際の操業においては、非凝縮性ガス分離装置へ導入される(メタ)アクリル酸含有ガスの温度差は100℃を超える。その様な事実の下、高濃度の(メタ)アクリル酸溶液を得ることを目的とする場合、接触気相酸化反応の触媒が十分に活性を有していて反応温度を高める必要がなく、(メタ)アクリル酸含有ガスの温度が低いと、従来方法では非凝縮性ガス分離装置の除熱量をごく僅かにすることが困難であったことから、得られる(メタ)アクリル酸溶液の濃度が変動してしまう。一方、本発明では非凝縮性ガス分離装置をかえって加熱することによって、(メタ)アクリル酸含有ガスの温度が変化した場合であっても、非凝縮性ガス分離装置の除熱量の差が小さくなり、非凝縮性ガス分離装置の温度制御が容易に可能となる。
捕集塔の加熱温度は、予備実験等により決定すればよく特に制限されないが、例えば、非凝縮性ガスの排出部などの温度が略一定となる様に、加熱温度を決定すればよい。
前述した様に、反応器から排出された(メタ)アクリル酸含有ガスは、従来、廃熱回収熱交換器による一定量の除熱しか行われていないため、予冷後の(メタ)アクリル酸含有ガスは100℃以上の温度幅を有する。そこで、非凝縮性ガス分離装置へ供給する前に、接触気相酸化反応により得られる(メタ)アクリル酸含有ガスの温度に応じて、(メタ)アクリル酸含有ガスの温度を制御することが好ましい。非凝縮性ガス分離装置へ供給する前に予め上記ガス温度を制御しておくことにより、(メタ)アクリル酸溶液の濃度を一層安定なものとすることが可能となるからである。
上記製造方法において、非凝縮性ガス分離装置の塔底より抜き出される(メタ)アクリル酸溶液中の(メタ)アクリル酸濃度を「略同一にする」とは、後続する精製工程などの条件を変更する必要のない範囲であればよいが、例えば当該濃度の最高値と最低値の変動幅を±2%以内にすることをいうものとする。当該変動幅は少ない方がよいので、±1%以内がより好ましく、0%が最も好ましい。当該変動幅を約0%とすることにより、次の精製工程における条件の変動を一層抑制することが可能となる。その結果、精製工程等の次工程以降において(メタ)アクリル酸濃度に応じて操作条件を設定・変更するための負担や労力を、一層軽減することができ、一層安定的に(メタ)アクリル酸の製造を行うことができる。
非凝縮性ガスの分離装置へ供給する(メタ)アクリル酸含有ガスの温度変動は、40℃以内に制御することが好ましい。高濃度の(メタ)アクリル酸溶液をより一層安定的に製造できるからである。より好適には、当該温度変動を30℃以内に制御する。
更に、非凝縮性ガス分離装置の塔底より抜き出される(メタ)アクリル酸溶液の水分濃度は、特に限定されないが1〜10質量%とすることが好ましい。10質量%以下とすることによって、十分に水分が分離され、相対的に(メタ)アクリル酸濃度を高くすることができるため、次工程以降の(メタ)アクリル酸の精製が一層効率的なものとなる。一方、水分濃度を1質量%未満とすることは実質的に不可能なため、下限は1質量%とするのが好ましい。
非凝縮性ガス分離装置の非凝縮性ガス排出部、例えば捕集塔の場合では塔頂における温度については、従来公知の温度範囲とすることができ、特に限定されないが40〜80℃の範囲であることが好ましい。40℃より低いと冷却のための設備費、用役費がかかる上に、(メタ)アクリル酸より低い沸点を持つ物質の凝縮が多くなり非凝縮性ガス分離装置の塔底より抜き出される(メタ)アクリル酸溶液中の(メタ)アクリル酸濃度の低下を招き、廃水量も増加するからである。また、80℃より高いと非凝縮性ガス排出部からの(メタ)アクリル酸のロスが増加するため製品(メタ)アクリル酸のコストアップに繋がり好ましくない。
非凝縮性ガス分離装置の非凝縮性ガス排出部の圧力についても、従来公知の圧力範囲とすることができ、特に限定されないが0〜30kPa(ゲージ圧)の範囲であることが好ましい。0kPa(ゲージ圧)より低いと減圧装置が必要となり設備費、用役費がかかり、30kPa(ゲージ圧)より高いと接触気相酸化反応器へ原料ガスを供給するためのブロワーを大型化する必要があり、設備費、用役費がかかるため、経済的ではないからである。
また、非凝縮性ガス分離装置の非凝縮性ガス排出部より排出される非凝縮性ガスは、その全てを排気ガスとして処理してもよいが、一部をリサイクルガスとして、例えばブロワーを使用して反応器に循環すれば不活性ガス等の供給量を減らすことができ有利である。
上述した通り、捕集塔の加熱手段を有する本発明のシステムおよび本発明方法によって、非凝縮性ガス分離装置の塔底から濃度変動が抑制された(メタ)アクリル酸溶液を安定的に得ることが可能となる。このため、(メタ)アクリル酸溶液に含まれる不純物分離のための蒸留、放散、抽出あるいは晶析工程等の精製工程における設備費、用役費を削減できると共に廃水量を減少させることが可能となる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
比較例
触媒の充填された多管式接触気相酸化反応器へ、反応ガスを導入した。接触気相酸化反応により、アクリル酸7.1容量%、水11.6容量%、窒素76.5容量%、酸素1.5容量%、その他3.3容量%の組成のアクリル酸含有ガスを得て、一部を抜き出した。
この抜き出したガス348.5Nm3/hrを、一定の蒸気を発生させることにより除熱することができる廃熱回収熱交換器で冷却した後、アクリル酸捕集塔の下部へ供給した。捕集溶剤として45kg/hrの水を捕集塔上部から供給し、捕集塔の塔頂部圧力11kPa(ゲージ圧)、塔頂部温度68℃としてアクリル酸の捕集を行い、塔頂部より25.4容量%の水を含む非凝縮性ガス379.0Nm3/hrを抜き出した。また、捕集塔塔底から得られたアクリル酸水溶液(温度:95℃)の一部を循環ラインに存在する冷却器により除熱し、アクリル酸水溶液の一部を捕集塔下部へ循環させると共に、冷却器を通過しないバイパスラインを設けて冷却器を通過する量を調節することにより、捕集塔内における捕集溶剤の冷却(除熱)を制御し、アクリル酸水溶液中のアクリル酸濃度の制御を試みた。
捕集塔へ供給されるアクリル酸含有ガスの温度を、実際の操業において触媒が劣化した場合を想定して280℃とした場合、捕集塔での除熱量を8600kcal/hrとする必要があった。このため、循環するアクリル酸水溶液1.0m3/hrのうち0.22m3/hrを冷却器に通過させて上記除熱量となる様に除熱した。このとき、冷却器を通過するアクリル酸水溶液量とバイパスする当該アクリル酸水溶液量の比を、コントロールバルブで制御可能な操作範囲内の1:3.5とすることにより、上記目的の除熱量に制御することができた。その結果、アクリル酸含有ガスからアクリル酸水溶液の凝縮および非凝縮性ガスの分離を安定して行うことができ、アクリル酸濃度が91質量%である高濃度アクリル酸水溶液を得ることができた。
一方、捕集塔へ供給されるアクリル酸含有ガスの温度を、実際の操業において触媒が劣化していない場合を想定して230℃とした場合、捕集塔塔頂部の温度を上記の場合における温度と略同一としてアクリル酸溶液の濃度を略同一とするためには、捕集塔での除熱量を、計算上1800kcal/hrとする必要があった。かかる除熱量とするためには、冷却器を通過するアクリル酸水溶液の量を、上記の場合より遥かに減量しなければならなかった。そこで、冷却器を通過させる量の減量を試みたが、コントロールバルブの操作範囲内で目的の流量に制御できず、上記目的の除熱量とすることはできなかった。このために除熱量が変動し、これに伴い捕集塔塔頂部の温度が±1℃の範囲で変動した。その結果、アクリル酸の凝縮量および塔頂部より非凝縮性ガスに伴って抜き出される水の量が変動し、捕集塔塔底から得られるアクリル酸濃度が87〜94%で変動した。このため、反応及び捕集の停止を余儀なくされた。
実施例
上記比較例と同様にして、反応および廃熱回収交換器による冷却を行い、捕集塔には冷却循環ラインとバイパスラインを配設し、当該冷却循環ラインに加熱することが可能な熱交換器を設置した。
捕集塔へ送られるアクリル酸含有ガス温度が230℃の時、加熱用熱交換器に0.2MPaGの蒸気を流すことによって、4200kcal/hrの加熱を行うと共に、冷却器にて6000kcal/hrの除熱を行った。その結果、冷却器を循環するアクリル酸水溶液量とバイパスするアクリル酸水溶液量の比を、コントロールバルブで制御可能な操作範囲な1:5.6とすることによって、前記目的の除熱量(1800kcal/hr)に制御することができた。その結果、アクリル酸含有ガスからアクリル酸水溶液の凝縮および非凝縮性ガスの分離を安定して行うことができ、アクリル酸濃度が91質量%のアクリル酸水溶液を安定に得ることができた。
上記の結果、本発明により、反応器から排出されるアクリル酸含有ガスの温度に拘わらず、捕集塔内へ供給された捕集溶剤を加熱することにより捕集塔の温度制御が容易となり、捕集塔塔底から得られるアクリル酸水溶液の濃度の変動を抑制することが可能であった。従って、本発明によれば、非凝縮性ガス分離装置へ導入される(メタ)アクリル酸含有ガスの温度変動に関わらず、高濃度の(メタ)アクリル酸溶液を安定して得られ、(メタ)アクリル酸溶液を得るためのシステムを安定して稼動できることが実証された。
本発明のシステムを実施するための一例を示す説明図である。 本発明のシステムを実施するための一例を示す説明図である。 本発明のシステムを実施するための一例を示す説明図である。 本発明のシステムを実施するための一例を示す説明図である。 本発明のシステムを実施するための一例を示す説明図である。

Claims (6)

  1. (メタ)アクリル酸を含有するガスから非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得るためのシステムであって、
    接触気相酸化反応により(メタ)アクリル酸含有ガスを製造する反応器と、
    製造された(メタ)アクリル酸含有ガスから非凝縮性ガスを分離して(メタ)アクリル酸溶液を得る非凝縮性ガス分離装置を含み、
    非凝縮性ガス分離装置が加熱手段を有することを特徴とするシステム。
  2. 上記加熱手段として、下記の少なくとも1つを有する請求項1に記載のシステム。
    (1)非凝縮性ガス分離装置の底部に設置するジャケット式熱交換器
    (2)非凝縮性ガス分離装置の底部に設置するコイル式熱交換器
    (3)非凝縮性ガス分離装置の底部から得られた(メタ)アクリル酸溶液を加熱し、非凝縮性ガス分離装置の中間部へ供給する循環ライン
  3. (メタ)アクリル酸を製造するための方法であって、
    接触気相酸化反応器において原料ガスを接触気相酸化反応させて(メタ)アクリル酸を含有するガスを製造する工程;および
    製造された(メタ)アクリル酸含有ガスを非凝縮性ガスの分離装置へ導入し、(メタ)アクリル酸含有ガスから非凝縮性ガスを分離して75質量%以上の高濃度の(メタ)アクリル酸溶液を得る工程;を含み、
    請求項1または2に記載のシステムを用い;
    非凝縮性ガス分離装置へ供給される(メタ)アクリル酸含有ガスの温度に応じて、上記加熱手段による加熱温度を調節することを特徴とする(メタ)アクリル酸の製造方法。
  4. 接触気相酸化反応により得られる(メタ)アクリル酸含有ガスの温度に応じて、非凝縮性ガス分離装置へ供給する(メタ)アクリル酸含有ガスの温度を制御する請求項3に記載の製造方法。
  5. 上記ガスの温度を200℃〜300℃に制御する請求項4に記載の製造方法。
  6. 非凝縮性ガス分離装置から排出される(メタ)アクリル酸溶液中の水分濃度を1〜10質量%にする請求項3〜5のいずれかに記載の製造方法。
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