JP2008160045A - 可撓性感圧体とそれを用いた圧電素子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の圧電素子は高温高湿環境下で使用されると、圧電素子を構成する可撓性感圧体1が水を吸収し、電気抵抗や静電容量、圧電特性が変化し、耐久性、信頼性に劣るという課題を有していた。
【解決手段】圧電セラミック粉末3と可撓性を有する有機高分子4とを含む可撓性感圧体1において、前記圧電セラミック粉末3は表面に水分の吸収を抑制する被覆層5を設け、前記被覆層5形成後に洗浄処理し、残留する金属元素を含む化合物を除去しているので、圧電セラミック粉末3に残留する金属元素や被覆層5に含まれる未反応の金属元素の溶出が抑制することができるため、信頼性の高い可撓性感圧体を実現できるとともに、静電容量、電気抵抗、圧電特性の変化を防止することができる。その結果、長期にわたり安定した電気特性を維持することができる。
【選択図】図1
【解決手段】圧電セラミック粉末3と可撓性を有する有機高分子4とを含む可撓性感圧体1において、前記圧電セラミック粉末3は表面に水分の吸収を抑制する被覆層5を設け、前記被覆層5形成後に洗浄処理し、残留する金属元素を含む化合物を除去しているので、圧電セラミック粉末3に残留する金属元素や被覆層5に含まれる未反応の金属元素の溶出が抑制することができるため、信頼性の高い可撓性感圧体を実現できるとともに、静電容量、電気抵抗、圧電特性の変化を防止することができる。その結果、長期にわたり安定した電気特性を維持することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は有機高分子中に圧電セラミック粉末を配合してなる可撓性感圧体に係わり、特に、可撓性のある感圧センサとして用いられる圧電素子とその製造方法に関するものである。
この可撓性感圧体は上記材料をニーダーやロールなどの加工機械を用い、均一に分散混合及び混練して得られるものであり、塩素化ポリエチレンなどの熱可塑性エラストマーを含んでいるため可撓性を有し、シート状やケーブル状に加工されて圧電素子として用いられている(例えば特許文献1参照)。
シート状の圧電素子は、先ず圧電体粉末と塩素化ポリエチレンをロールで混練した後、可撓性感圧体をホットプレスでシート状に成型し、このシートの両面に銀ペーストを塗布処理もしくはゴムにカーボンを分散させた導電シートを融着させることにより1対の電極が形成され、その後、圧電性を発現させるために数十kVの直流電圧を両電極間に印加しポーリング処理を行うことによって得ることができる。この電極面の一部あるいは全面に圧力が印加されると、その部分の可撓性感圧体が歪み、その結果両電極間に電圧が誘起され、この誘起電圧を利用して圧力を検出することができるので圧力センサとして応用されている。
特開昭62−230071号公報
しかしながら、従来の圧電素子を高温高湿環境下で使用した場合、水蒸気が電極を通過し、圧電素子を構成する可撓性感圧体に到達する。可撓性感圧体の内部の温度が外側よりも低い場合や、可撓性感圧体の表面で水蒸気が過飽和状態になると、拡散した水蒸気は凝縮して水を生成し、可撓性感圧体を構成する圧電セラミック粉末の成分や不純物が水によって溶出し、イオン化する現象が発生する。その結果、電気抵抗や静電容量、圧電特性が変化するという問題が起こり、耐久性が劣るという課題があるとともに、センサとして用いる場合、検知や制御のための回路が複雑になるという課題があった。
特に、周期表の第1族、第2族のアルカリ金属、アルカリ土類の金属を含む圧電セラミック粉末は固有抵抗が低く、かつ水に溶出し易いため、電気抵抗の低下が大きな課題となる。
なお、上記課題はシート状の圧電素子に対して述べたが、ケーブル状の場合や、他の形状でも同様の課題を有するとともに、可撓性感圧体のみでも同様の課題を有する。
本発明は、従来の課題を解決するもので、高温高湿環境下で使用されても電気的特性の変化を抑制し、常に安定した圧電特性を実現するとともに、複雑な回路を必要としない可撓性感圧体及び可撓性感圧体を用いた圧電素子とその製造方法を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の可撓性感圧体は、圧電セラミック粉末と可撓性を有する有機高分子とを含む可撓性感圧体において、前記圧電セラミック粉末は表面に水分の吸収を抑制する被覆層を設け、前記被覆層形成後に洗浄処理し、残留する金属元
素を含む化合物を除去した構成としている。
素を含む化合物を除去した構成としている。
これによって、圧電素子が高温高湿環境下で用いられ、圧電素子の内部で水蒸気が凝縮して水を生成しても、圧電セラミック粉末表面に水分の吸収を抑制する被覆層を設けているので圧電セラミック粉末への水分の吸収が抑制される。さらに皮膜形成後に洗浄処理を施し、残留する金属元素を含む化合物を除去しているので、圧電セラミック粉末に残留する金属元素や被覆層に含まれる未反応の金属元素や金属元素を含む化合物の溶出が抑制され、静電容量、電気抵抗の変化が低減する。また、可撓性感圧体へ浸透する水の量が低減するので、圧電素子として用いた場合の電気的特性、圧電特性の変化がさらに低減する。
本発明の可撓性感圧体を用いた圧電素子とその製造方法は、圧電セラミック粉末及び圧電セラミック粉末表面の被覆層に残留した未反応成分を洗浄除去することによって、圧電セラミック粉末及び被覆層から溶出する金属元素や金属元素を含む化合物を低減することができるので、初期の電気的特性を維持することができて、時間経過による変化を防止することができ、優れた耐久性、信頼性を実現することができる。
第1の発明は、圧電セラミック粉末と可撓性を有する有機高分子とを含む可撓性感圧体において、前記圧電セラミック粉末は表面に水分の吸収を抑制する被覆層を設け、前記被覆層形成後に洗浄処理し、残留する金属元素を含む化合物を除去しているので、圧電セラミック粉末に残留する金属元素や被覆層に含まれる未反応の金属元素の溶出が抑制することができるため、信頼性の高い可撓性感圧体を実現できる。
第2の発明は、圧電セラミック粉末は洗浄処理された後に圧電セラミック粉末表面に水分の吸収を抑制する被覆層を形成し、被覆層形成後にさらに洗浄処理を施し、残留する金属元素を含む化合物を除去している。そのため、効率よく圧電セラミック粉末に残留する金属元素を除去することができ、信頼性の高い可撓性感圧体を実現できる。
第3の発明は、特に、第1の発明の圧電セラミック粉末の粒子表面の被覆層を撥水材料で構成することにより、撥水作用を薄膜の被覆層とすることができ、可撓性感圧体への浸透を防止することによる圧電特性の変化を防止することができるとともに、圧電性を発現するために行うポーリング処理において、印加電圧のロスを少なくすることができ、低い電圧でも優れた圧電特性を発現させることができる。
また、圧電セラミック粉末に撥水材料を被覆することにより、圧電セラミック粉末表面が疎水性を示すので可撓性を有する有機高分子との馴染みが良好になり、両者の混練性が向上する。その結果、混練加工時間を短縮化することができ、生産性を向上させることができる。
第4の発明は、特に、被覆層を脂肪酸、脂肪酸塩、単分子層の少なくとも1種で構成することにより、優れた撥水性を実現することができる。特に、第1の被覆層を単分子層で構成することにより、被覆層の厚みを数nmレベルの単分子層にすると圧電特性を発現させるために高い直流電圧を印加するポーリング処理の際に単分子層で起こる電圧降下が低減され、ポーリングの効率を向上させることができるとともに、ポーリング処理時間の短縮化または優れた圧電特性を実現することができる。
また、被覆層を単分子層とすることで撥水材料の使用量を少なくすることができるので撥水圧電素子の低コスト化が図れる。
第5の発明は、特に、洗浄処理後の圧電セラミックスを煮沸処理し、その水溶液のpHは静電容量や電気抵抗、圧電特性等の電気特性の変化と相関があるため、pHを8.0以下にすることによって、残留する金属元素の影響を低減でき、長期にわたり安定した電気特性を維持することができる。さらに圧電素子として使用する場合は静電容量、電気抵抗、圧電特性の変化を防止することができるとともに、センサとして用いる場合の検知や制御のための回路を簡素化することができる。
第6の発明は、特に、洗浄処理後の圧電セラミックスを煮沸処理し、その水溶液の導電率は静電容量や電気抵抗、圧電特性等の電気特性の変化と相関があるため、導電率を50μS/cm以下にすることによって、残留する金属元素の影響を低減でき長期にわたり安定した電気特性を維持することができる。さらに圧電素子として使用する場合は静電容量、電気抵抗、圧電特性の変化を防止することができるとともに、センサとして用いる場合の検知や制御のための回路を簡素化することができる。
第7の発明は、特に、洗浄処理後の圧電セラミックスを煮沸処理し、その水溶液のナトリウムイオンは静電容量や電気抵抗、圧電特性等の電気特性の変化と相関があるため、ナトリウムイオン濃度を300μg/g以下にすることによって、残留する金属元素の影響を低減でき長期にわたり安定した電気特性を維持することができる。さらに圧電素子として使用する場合は静電容量、電気抵抗、圧電特性の変化を防止することができるとともに、センサとして用いる場合の検知や制御のための回路を簡素化することができる。
第8の発明は、特に、第1の発明の圧電セラミック粉末を少なくとも周期表第1族、周期表第2族の元素を含む構成にすることによって、洗浄の効果をより得ることが出来る。特に、周期表の第1族、第2族のアルカリ金属、アルカリ土類の金属を含む圧電セラミック粉末は固有抵抗が低く、かつ水に溶出し易いため、湿度の影響を大きく受けていたが、被覆層および洗浄処理を施すことによって、湿度に対する変化を低減することができる。
第9の発明は、特に、第8の発明の周期表第1族、周期表第2族の元素を含む圧電セラミック粉末をバリウム、ナトリウム、カリウム、ビスマス、リチウムの少なくとも1種を含む構成とすることにより、圧電セラミック粉末の比誘電率を低くすることができるので直流電圧を印加して圧電特性を発現させるためのポーリング処理を行う際に、圧電セラミック粉末へ高い電圧を印加することができるので、ポーリングの効率を高くすることができ、電圧出力定数を大きくすることができる。その結果、圧電素子を感圧センサとして用いた場合には、印加される圧力に対するセンサの出力電圧を高くすることができるので感度を向上させることができる。
第10の発明は、特に、第8の発明の周期表第1族、周期表第2族の元素を含む圧電セラミック粉末をニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、チタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマスの少なくとも1種を含む構成とすることにより、特に圧電セラミック粉末の誘電率をさらに小さくすることができるので、圧電特性を発現させるためのポーリング効率を一層高くすることができるとともに、シート状の圧電素子の高感度化により検知回路の増幅率を低くすることができるので圧電素子を感圧センサとして用いた場合には、印加される圧力に対するセンサの出力電圧を高くすることができるので感度を向上させることができるとともに、電気的ノイズに対し強い感圧センサを得ることができる。
第11の発明は、特に、洗浄処理を水で行うことにより、圧電セラミック粉末に残留する周期表第1族、周期表第2族の元素を含む成分の除去効率を高くすることができる。
第12の発明は、特に、第11の発明の洗浄処理を酸性水で行うことにより、除去の対
象となる圧電セラミック粉末に残留する周期表第1族、周期表第2族の元素を含む成分がアルカリ性であるため、効率的に酸性水に溶解することができ、水よりも短時間で高い除去効率を得ることができる。
象となる圧電セラミック粉末に残留する周期表第1族、周期表第2族の元素を含む成分がアルカリ性であるため、効率的に酸性水に溶解することができ、水よりも短時間で高い除去効率を得ることができる。
第13の発明は、特に、第11または第12の発明の洗浄処理を行う水または酸性水を加温することにより、圧電セラミック粉末に残留する周期表第1族、周期表第2族の元素を含む成分の溶出を促進させることができ、なお一層高い除去効率を実現することができる。
第14の発明は、特に、可撓性感圧体に接続された第1電極と、前記可撓性感圧体に接続され前記第1電極と絶縁された第2電極とを備えた圧電素子に構成することにより、電気出力を簡単に得ることができるため、センサ等の応用展開が容易となる。また、圧電素子を高温高湿環境下で用いた場合、圧電素子の内部で水蒸気が凝縮して水を生成しても、凝縮した水に圧電セラミック粉末に未反応の成分が残留していないので溶出が溶出を抑制することができる。そのため、圧電素子の静電容量、電気抵抗、圧電特性の変化を防止することができる。その結果、長期にわたり安定した電気特性を維持することができるとともに、センサとして用いる場合の検知や制御のための回路を簡素化することができる。
第15の発明は、特に、可撓性感圧体は第1電極を覆い、第2電極は前記可撓性感圧体を覆う構成としたケ−ブル状圧電素子に構成することで、上下方向の振動のみならず円心方向の振動検知ができるため、平板形状では使用が限られていた場合にもケーブル形状にすることで、応用展開が容易となる。さらに、可撓性を有しかつ形状がケーブル状であるので屈曲した部位を含んだ配設や取り付け幅に制限を有する省スペースの配設に対応可能である。また、圧電素子を高温高湿環境下で用いた場合、圧電素子の内部で水蒸気が凝縮して水を生成しても、凝縮した水に圧電セラミック粉末に未反応の成分が残留していないので溶出が溶出を抑制することができる。そのため、圧電素子の静電容量、電気抵抗、圧電特性の変化を防止することができる。その結果、長期にわたり安定した電気特性を維持することができるとともに、センサとして用いる場合の検知や制御のための回路を簡素化することができる。
第16の発明は、特に、圧電セラミック粉末及び圧電セラミック粉末表面の被覆層に残留した未反応成分を洗浄除去することによって、圧電セラミック粉末及び被覆層から溶出する金属元素や金属元素を含む化合物を低減することができるので初期の電気的特性、圧電特性を維持することができて、時間経過による変化を防止することができ、優れた耐久性、信頼性を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるシート状の圧電素子の断面図である。図1において、シート状の圧電素子は、シート状の可撓性感圧体1の両面に第1電極である電極2Aと、第2電極である電極2Bを形成して構成されている。
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるシート状の圧電素子の断面図である。図1において、シート状の圧電素子は、シート状の可撓性感圧体1の両面に第1電極である電極2Aと、第2電極である電極2Bを形成して構成されている。
図2は、可撓性感圧体1の一部断面を示す模式図である。図2において、シート状の可撓性感圧体1は周期表第1族、周期表第2族の元素を含む圧電セラミック粉末3と可撓性を有する有機高分子4とから構成されている。さらに圧電セラミック粉末3の表面には水分の吸収を抑制する被覆層5が形成され、圧電セラミック粉末3と有機高分子4とは均一に分散した状態にある。
本実施の形態に用いられる周期表第1族、周期表第2族の元素を含む圧電セラミック粉末3の化合物は、バリウム、ナトリウム、カリウム、ビスマス、リチウムの少なくとも1種を含むもの、具体的にはニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、チタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマスの少なくとも1種を含むものでポーリング処理によって圧電性を発現するセラミック材料が挙げられる。
なお、周期表第1族、周期表第2族の元素を含む圧電セラミック粉末3は、所定の組成となるように周期表第1族、周期表第2族の元素を含む原材料(例えば、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩など)を反応させ、その後高温で焼成して製造される。このとき、焼成して造られたセラミックには圧電特性を発現する結晶構造を有する化合物の他に、不純物、未反応の元素や化合物、あるいは圧電特性を発現することができない組成の化合物が存在する。本発明では、圧電セラミック粉末3に存在する圧電特性を発現することができない化合物を残留する金属元素を含む化合物と定義している。
第1の実施の形態におけるシート状の圧電素子は以下のように作製される。この製造工程を図3に示す。先ず、周期表第1族、周期表第2族の元素を含む圧電セラミック粉末3を適切な溶媒で希釈して所定の濃度に調整した撥水材料を含む溶液、または融解する温度に加熱された撥水材料の溶液に浸漬して乾燥、または圧電セラミック粉末3を所定量の撥水材料の粉末と混合することによって圧電セラミック粉末3に撥水材料の被覆層5を形成された圧電セラミック粉末3を作製する(S1)。
次に、被覆層5が形成された圧電セラミック粉末3を水の入った容器に漬浸し、撹拌しながら圧電セラミック粉末3及び被覆層5に含まれる残留する金属元素を含む化合物から金属元素を溶出させる洗浄処理を実施(S2)。必要に応じてこの洗浄処理を数回繰り返し、乾燥処理を行い、残留する金属元素を除去した圧電セラミック粉末3を作製する。
次に、圧電セラミック粉末3と可撓性を有する有機高分子4とをニーダーやロールなどの加工機を用い、圧電セラミック粉末3が可撓性を有する有機高分子4に均一に混合・分散された状態となるように混練する(S3)。このとき、混練を向上させるためにチタンカップリング剤を添加してもよい。混練を行なった後、ロールまたはホットプレスなどの加工機を用いて加工し、シート状の可撓性感圧体1を作製する(S4)。
次に、シート状の可撓性感圧体1の両面に導電性粉末と有機高分子が混合された導電性ペーストまたは導電塗料を塗布、導電性粉末をゴムや熱可塑性エラストマーなどの可撓性を有する有機高分子に混合・分散させた導電シートを融着、導電性材料を蒸着のいずれかの材料および形成方法によって互いに絶縁された電極2A、電極2Bを形成する(S5)。その後、圧電性を発現させるために空気中またはシリコンオイル浴中で電極2A、電極2B間に直流高電圧を印加してポーリング処理を行い(S6)、シート状の圧電素子を作製する。なお、ポーリング処理(S6)は、電極2A、電極2Bを形成(S5)した後行っているが、シート状の可撓性感圧体1を作製(S4)した後、2つの擬似電極を用いて行ってもよい。
以上のように構成されたシート状の圧電素子について、以下その動作、作用を説明する。
シート状の圧電素子の圧電特性は、前述したように電極2A、電極2B間に高圧の直流電圧を印加し、可撓性感圧体1をポーリング処理することにより発現する。圧電特性を発現させたシート状の圧電素子の一部あるいは全面に時間的に変化する圧力が印加されたとき、第1電極2A、第2電極2B間にはその部分に生じる加速度に応じた振動電圧が誘起される。この誘起電圧を利用して圧力を検出することができる。自動車ドアに設置して挟
み込みを防止するセンサ、ドアハンドルに設置して解錠を制御するタッチセンサ、介護ベッドなどに設置して体動を検知するセンサ、ベランダの手すり等に配置して外部からの侵入を検知するセンサなど感圧センサとして利用することができる。
み込みを防止するセンサ、ドアハンドルに設置して解錠を制御するタッチセンサ、介護ベッドなどに設置して体動を検知するセンサ、ベランダの手すり等に配置して外部からの侵入を検知するセンサなど感圧センサとして利用することができる。
前述のような感圧センサは、屋外で使用される場合や自動車用に搭載される場合であれば梅雨時や夏場の雨天による高温水蒸気環境、介護ベッドに搭載される場合であれば失禁や汗による多湿環境、また寝具に搭載される場合であれば衛生保持するための洗濯、クリーニングなどによる高温高湿環境の下で使用される可能性が高い。
このような高温高湿環境下で感圧センサとして従来の圧電素子が使用されると、水蒸気が電極を通過し、シート状の圧電素子の内部に拡散する。可撓性感圧体の温度が外側よりも低い状態や可撓性感圧体の表面で水蒸気が過飽和状態になると、拡散した水蒸気が凝縮して水が生成し、この水が可撓性感圧体に浸透することにより圧電セラミック粉末3に残留する化合物や不純物が溶出する現象が発生する。その結果、シート状の圧電素子の静電容量が増加するとともに、電気抵抗が減少するなどの電気的特性が変化するという問題が発生し、耐久性が劣るとともに、感圧センサとして用いる場合、検知や制御のための回路を初期の電気特性の変化に対応できるようにする必要があり、回路が複雑な構成となる。
しかし、本実施の形態のシート状の圧電素子が高温高湿環境下で使用される場合、水蒸気が電極2A、電極2Bを通過し、可撓性感圧体1の表面で水蒸気が凝集して水が生成しても、圧電セラミック粉末3表面に水分の吸収を抑制する被覆層5を設けているので圧電セラミック粉末への水分の吸収自身を抑制できる。さらに被覆層5の形成後に洗浄処理を施し、圧電セラミック粉末3及び被覆層5に残留する金属元素を除去しているので可撓性感圧体1で水蒸気が凝縮して水が生成しても、圧電セラミック粉末3に残留する金属元素や被覆層5に含まれる未反応の金属元素の溶出が抑制され、シート状の圧電素子としての電気抵抗や圧電特性の変化を防止することができる。その結果、シート状の圧電素子の初期の電気的特性を維持することができ、優れた耐久性と信頼性を実現することができる。また、初期の電気特性の変化を防止できることにより、電気特性の変化を補正する回路構成を必要とせず、検知や制御のための回路を簡素化することができる。
本実施の形態に用いられるシート状の圧電素子の圧電特性は両電極間に高圧の直流電圧を印加し、ポーリング処理することで発現するが、本実施の形態のシート状の圧電素子を感圧センサとして用いる場合、重要となる圧電特性は発生電圧の指標となる電圧出力定数である。
本実施の形態のシート状の圧電素子を構成する可撓性感圧体1は、圧電セラミック粉末3と可撓性を有する有機高分子4の複合体からなり、圧電セラミック粉末3の比誘電率(材料の誘電率/真空の誘電率)が数百から数千であるのに対し、可撓性を有する有機高分子4の比誘電率は数十である。ポーリング処理の際に印加された直流電圧は、圧電セラミック粉末3と可撓性を有する有機高分子4の誘電率の比に反比例して分配されるので、直流電圧は誘電率の低い可撓性を有する有機高分子4に高い電圧が印加されることになる。換言すれば、可撓性を有する有機高分子4として同じものを用いた場合、圧電セラミック粉末3の誘電率が高いほど可撓性を有する有機高分子4に高い電圧が印加されることになる。
したがって、可撓性感圧体1の圧電セラミック粉末3として比誘電率が約2000のチタン酸ジルコン酸鉛と、比誘電率が約600のチタン酸ビスマス・ナトリウムを用いた場合、両者の可撓性感圧体1に一定の直流電圧を印加すると、比誘電率の低いチタン酸ビスマス・ナトリウムの方がチタン酸ジルコン酸鉛よりも高い電圧が印加され、ポーリングの効率を高くすることができるので電圧出力定数が大きくなる。その結果、シート状の圧電
素子を感圧センサとして用いた場合には、印加される圧力に対するセンサの出力電圧を高くすることができるので感度を向上させることができるとともに、シート状の圧電素子の高感度化により検知回路の増幅率を低くすることができるので電気的ノイズに対し強い感圧センサを得ることができる。
素子を感圧センサとして用いた場合には、印加される圧力に対するセンサの出力電圧を高くすることができるので感度を向上させることができるとともに、シート状の圧電素子の高感度化により検知回路の増幅率を低くすることができるので電気的ノイズに対し強い感圧センサを得ることができる。
圧電セラミック粉末3の比誘電率は低ければ低いほど良いが、1000以下であればチタン酸ジルコン酸鉛の圧電セラミック粉末3を用いる場合よりも3倍以上の優れた電圧出力定数が得られる。その点から、有用な圧電セラミック粉末3は、周期表第1族、周期表第2族の元素を含む圧電セラミック粉末3の化合物は、バリウム、ナトリウム、カリウム、ビスマス、リチウムの少なくとも1種を含むもの、具体的にはニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、チタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマスの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
また、本実施の形態に用いる圧電セラミック粉末3は鉛を含まないのでシート状の圧電素子が廃棄処理され、酸性雨などの環境に曝されても鉛の溶出がなく、環境汚染の可能性がない。
本実施の形態によれば、撥水材料の被覆層5は圧電セラミック粉末3の表面に形成している。可撓性感圧体1への水の浸透を抑制し、高温高湿環境下でのシート状の圧電素子の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を著しく少なくするためには可撓性感圧体1の表面全体に優れた撥水性を発現させる必要があり、そのためには第1の被覆層5の撥水性を著しく高くする必要がある。そのために被覆層5は蒸留水に対する接触角が125°以上の撥水材料がよい。言い換えれば、被覆層5の蒸留水に対する接触角が125°以上であれば、可撓性感圧体1の表面が温度の高い環境下でも凝縮した水に対して高い撥水性を得ることができ、可撓性感圧体1への水の浸透を抑制する効果を高くすることができる。なお、接触角はその定義上、180°未満であるので、蒸留水に対する接触角が125°以上180°未満の撥水材料が好ましい。望ましくは蒸留水に対する接触角が150°以上の超撥水材料がよい。
特に、撥水処理を施して成した第1の被覆層5の蒸留水に対する接触角が150°以上の撥水材料としては、前述の脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸アミド、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、シラン化合物が挙げられる。
特に、脂肪酸としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデンカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、プラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレイン酸が挙げられる。
また、脂肪酸塩としては、前述の各脂肪酸とカルシウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、銅、鉛の各金属元素の化合物が挙げられ、これらの少なくとも1種の脂肪酸塩が挙げられる。
また、脂肪酸アミドとしては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデンカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、プラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレイン酸の各脂肪酸の水素基をアミノ基に置換したものが用い
られる。
られる。
また、フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルキルエチルアクリレート、シリコン系樹脂としては、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、シリコン−アクリルブロック共重合体、アクリル系樹脂としては、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルの重合体が挙げられる。
また、シラン化合物としては、圧電セラミック粉末5の表面に少なくともシロキサン結合を有し、かつ少なくともアルキル基またはフルオロアルキル基を有するジアルキルシラン化合物、フルオロシラン化合物が挙げられる。前述のシラン化合物は撥水材料を施して成した被覆層5を単分子の層で形成することができる。単分子の層はその厚みが数nmレベルの超薄膜であるので可撓性感圧体1を作製後、圧電特性を発現させるために行うポーリング処理において高圧の直流電圧を印加した際、単分子層での電圧降下を少なくすることができるのでポーリングの効率を向上させることができ、処理時間の短縮化が可能であるとともに、優れた圧電特性を実現することができるとともに撥水材料の使用量を著しく少なくすることができるのでシート状の圧電素子の低コスト化を図ることができる。
なお、S1においては撥水処理を施して成した第1の被覆層5は、撥水材料を加熱して溶融させた後、圧電セラミック粉末3を浸漬するか、撥水材料に適合した溶媒に撥水材料を入れ、適切な濃度に調整した溶液に圧電セラミック粉末3を浸漬し、その後乾燥処理を行うか、撥水材料が固体の場合には撥水材料の粉末と圧電セラミック粉末3を混合することのいずれかの方法で形成される。また、撥水材料は前述した1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施の形態では、圧電セラミック粉末3及び被覆層5に残留する金属元素を除去する手段として水による洗浄処理を行うことにより、圧電セラミック粉末3の圧電特性を発現させることのできる結晶構造を破壊することなく、残留する金属元素を含む化合物から金属元素を溶出させることができる。特に被覆層5として撥水材料の脂肪酸塩を使用した場合、未反応の脂肪酸塩が残存すると塩としての金属元素が溶出する可能性もある。そのため、撥水処理後に洗浄を行うことで、被覆層5に残留する金属元素の溶出を抑制することができる。また、被覆層5の材料として脂肪酸塩ではなく、脂肪酸など塩を含まない撥水材料を使用した場合においても、被覆層5の形成後に洗浄を行うことで、未反応の撥水材料が有機高分子4中に溶出することも抑制することができるため、特性変化も発生しにくく信頼性が向上する。
また、上記水による洗浄処理において、水を沸騰させたり、50℃以上の温度にするなどのように加温することにより、残留する金属元素を含む化合物から金属元素の溶出を促進させることができ、加温しない場合よりも短時間で高い除去効率を実現することができる。
また、洗浄処理を行う液体に酸性水を用いることにより、除去の対象となる圧電セラミック粉末に残留する周期表第1族、周期表第2族の元素を含む成分がアルカリ性であるため、効率的に酸性水に溶解することができるので水よりも短時間で高い除去効率を得ることができる。さらに、上記酸性水による洗浄処理において、酸性水を加温することにより、残留する金属元素を含む化合物から金属元素の溶出を促進させることができ、加温しない場合よりも短時間で高い除去効率を実現することができる。
本実施の形態に用いられる可撓性を有する有機高分子4としては、熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む材料が挙げられる。これらの可撓性を有する高分子4はシート状の圧電素子に優れた弾性と可撓性を付与することができるのでシート状の圧電素
子は印加された圧力に対して大きな反発力と変位量を得ることができ、圧電特性を向上させることができる。
子は印加された圧力に対して大きな反発力と変位量を得ることができ、圧電特性を向上させることができる。
特に、前述の熱可塑性エラストマーとして、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレンは可撓性感圧体1の中の圧電セラミック粉末3の含有量を多くすることができるのでシート状の圧電素子の圧電特性を向上させることができる。
本実施の形態のシート状の圧電素子の電極2A、電極2Bとして、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む弾性体と導電性粉末の導電層で構成することができる。この構成では、電極2A、電極2Bを伸びのある可撓性に優れた電極とすることができるので高い耐屈曲性を有し、耐久性に優れたシート状の圧電素子を得ることができる。この導電層は熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む弾性体と導電性粉末を混練したものを押出機などの加工機を用いて、押し出し成型することによって可撓性感圧体1に形成される。
また、電極2A、電極2Bとして、主成分が導電性粉末と有機高分子との混合物である導電塗料、もしくは導電ペーストの塗布膜で構成することもできる。この構成では、可撓性感圧体1と電極2A、電極2Bの密着性を高くすることができるとともに、電極2A、電極2Bと可撓性感圧体1の間に空気層の介在を少なくすることができるのでポーリング処理の際の電極2A、電極2Bと可撓性感圧体1との間の電圧降下を抑制することができ、ポーリング処理の実効電圧を高くすることができる。
また、電極2A、電極2Bとして、導電性材料の蒸着膜で構成することもできる。この構成では、電極2A、電極2Bを薄膜で形成することができるので可撓性感圧体1の優れた可撓性を維持することができ、可撓性感圧体1の有する圧電特性の低下を防止することができる。この薄膜は真空蒸着、スパッタリング、CVDなどの装置を用い、可撓性感圧体1に蒸着によって形成される。
なお、前述の導電性粉末、導電性材料は、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種を用いることにより、特に優れた導電性と耐食性を実現することができる。
また、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子フィルムの両面にC、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の箔を接着し、両面を導通させた導電性フィルムからなる導電層を用いてもよい。
上記の製造工程で製造した圧電素子を85℃85%の高温高湿下に20時間放置した後、静電容量、抵抗、圧電特性の変化を評価した結果、洗浄処理を施さない圧電素子に比べ、各々の変化を約60%低減することができた。よって、本発明の圧電素子は湿度特性に優れるため、長期にわたり安定した電気特性を維持することができるとともに、センサとして用いる場合の検知や制御のための回路を簡素化することができる。
さらに、被膜層5を形成後に洗浄処理後を施し、残留する金属元素を含む化合物を除去した圧電セラミック粉末3を蒸留水またはイオン交換水で煮沸処理し、その煮沸溶液のpHと圧電素子を85℃85%の高温高湿下に20時間放置後の静電容量の変化率を図4に示す。
その結果、煮沸後の溶液のpHが低いほど静電容量の変化が低く、pHと静電容量の変化に相関が得られた。そのため静電容量の変化を抑制するためにはpHが低いことが望ましい。また、洗浄処理回数を重ねるとpHは低くなるため、残留元素の残存指標として処
理溶液のpHが有効であるとともに、pHは容易に測定できるので、残留元素の残存指標に適している。
理溶液のpHが有効であるとともに、pHは容易に測定できるので、残留元素の残存指標に適している。
圧電素子の出力電圧(V)と静電容量(C)は式(1)で表され、反比例の関係を示す。ここでQは電荷発生量であり材料に固有の値を示す。
V=Q/C ・・・(1)
式(1)から静電容量が増加することによって、出力電圧が低下することが解る。
V=Q/C ・・・(1)
式(1)から静電容量が増加することによって、出力電圧が低下することが解る。
特にスイッチセンサ等の用途に使用する場合、一般的にはある閾値を設け、閾値を超えるとON、閾値以下ならOFFという制御を行う。閾値を低くすると、他の振動や外部ノイズの影響を受けやすくなり、高くすると検出不能になる恐れがあるため、センサ出力は閾値の約1.3〜1.5倍に設定される場合が多い。その場合、静電容量が30%以上増加することでセンサ出力が閾値に低下し、誤作動を起こす場合が生じるので、少なくとも静電容量の変化は30%以下に抑制することが望ましく、pHを8.0以下に抑制することが望ましい。
さらに望ましくは、静電容量の変化を20%以下に抑制できるpH7以下にすることがより検知精度向上と信頼性向上に繋がる。
また静電容量の変化が大きい場合には、静電容量変化による出力電圧低下を加味した設計が必要となるため、出力電圧と閾値の比を高める必要があった。つまり高出力の圧電素子が必要であったものが、静電容量変化による出力電圧の低下を抑制できるので、センサ出力と閾値との比を下げることができ、高感度設計にしなくても同様の出力を得ることができるので、低コストに繋がる。
また、被膜層5を形成後に洗浄処理を施した圧電セラミック粉末3を蒸留水またはイオン交換水で煮沸処理し、その煮沸溶液の導電率と圧電素子を85℃85%の高温高湿下に20時間放置した後の静電容量の変化率を図5に示す。
その結果、処理溶液の導電率が低いほど静電容量の変化が低く、導電率と静電容量の変化に相関が得られた。特に洗浄回数を重ねると導電率は低くなるため、残留元素の残存指標として処理溶液の導電率が有効であるとともに、導電率は容易に測定できるので、残留元素の残存指標に適している。
前に述べたようにセンサとして用いる場合、静電容量の変化は30%以下に抑制する必要があるため、導電率は50μs/cm以下に抑制することが望ましい。
さらに望ましくは、静電容量の変化を20%以下に抑制できる40μs/cm以下にすることが検知精度向上と信頼性向上に繋がる。
また、被膜層5を形成後に洗浄処理を施した圧電セラミック粉末3を蒸留水またはイオン交換水で煮沸処理し、煮沸溶液のナトリウムイオン濃度と圧電素子を85℃85%の高温高湿下に20時間放置した後の静電容量の変化率を図6に示す。
その結果、処理溶液のナトリウムイオン濃度が低いほど静電容量の変化が低く、導電率と静電容量の変化に相関が得られた。特に洗浄回数を重ねると導電率は低くなるため、残留元素の残存指標として処理溶液のナトリウムイオン濃度が有効でり、残留元素の残存指標に適している。
前に述べたようにセンサとして用いる場合、静電容量の変化は30%以下に抑制する必
要があるため、ナトリウムイオン濃度は300μg/g以下に抑制することが望ましい。
要があるため、ナトリウムイオン濃度は300μg/g以下に抑制することが望ましい。
さらに望ましくは、出力電圧の変化を20%以下に抑制できる200μg/g以下にすることが検知精度向上と信頼性向上に繋がる。
(実施の形態2)
図7は、本発明の第2の実施の形態におけるシート状の圧電素子の製造工程を説明する図であり、第1の実施の形態の製造方法と異なる点は、圧電セラミック粉末3を洗浄処理し、圧電セラミック粒子3中に残留する金属元素及び金属元素化合物から金属元素を除去後に、圧電セラミック粒子3表面に撥水材料の被覆層5を形成し、被覆層5を形成した圧電セラミック粉末に洗浄処理を施している点である。特に撥水処理材料として脂肪酸塩や金属セッケン等を使用した場合、未反応の塩が水によって溶出し、イオン化する現象が発生するために生じる静電容量、電気抵抗、圧電特性等の電気的特性の変化を抑制するものである。
図7は、本発明の第2の実施の形態におけるシート状の圧電素子の製造工程を説明する図であり、第1の実施の形態の製造方法と異なる点は、圧電セラミック粉末3を洗浄処理し、圧電セラミック粒子3中に残留する金属元素及び金属元素化合物から金属元素を除去後に、圧電セラミック粒子3表面に撥水材料の被覆層5を形成し、被覆層5を形成した圧電セラミック粉末に洗浄処理を施している点である。特に撥水処理材料として脂肪酸塩や金属セッケン等を使用した場合、未反応の塩が水によって溶出し、イオン化する現象が発生するために生じる静電容量、電気抵抗、圧電特性等の電気的特性の変化を抑制するものである。
本実施の形態におけるシート状の圧電素子は以下のように作製される。図7でその製造工程を説明する。先ず、周期表第1族、周期表第2族の元素を含む圧電セラミック粉末3を水の入った容器に漬浸し、撹拌しながら圧電セラミック粉末3に含まれる残留する金属元素を含む化合物から金属元素を溶出させる(S12)。必要に応じてこの洗浄処理を数回繰り返し、乾燥処理を行い、残留する金属元素を除去した圧電セラミック粉末3を作製する。
次に、洗浄処理された圧電セラミック粉末3を適切な溶媒で希釈して所定の濃度に調整した撥水材料を含む溶液、または融解する温度に加熱された撥水材料の溶液に浸漬して乾燥、または圧電セラミック粉末3を所定量の撥水材料の粉末と混合することによって圧電セラミック粉末3に撥水材料の被覆層5を形成し、撥水処理された圧電セラミック粉末3を作製する(S13)。
次に撥水処理された圧電セラミック粉末3を水の入った容器に漬浸し、撹拌しながら圧電セラミック粉末3に含まれる残留する金属元素を含む化合物から金属元素を溶出させる洗浄処理を施す(S14)。必要に応じてこの洗浄処理を数回繰り返し、乾燥処理を行い、残留する金属元素を除去した圧電セラミック粉末3を作製する。
次に、圧電セラミック粉末3と可撓性を有する有機高分子4とをニーダーやロールなどの加工機を用い、圧電セラミック粉末3が可撓性を有する有機高分子4に均一に混合・分散された状態となるように混練する(S15)。このとき、混練を向上させるためにチタンカップリング剤を添加してもよい。混練を行なった後、ロールまたはホットプレスなどの加工機を用いて加工し、シート状の可撓性感圧体1を作製する(S16)。
次に、シート状の可撓性感圧体1の両面に導電性粉末と有機高分子が混合された導電性ペーストまたは導電塗料を塗布、導電性粉末をゴムや熱可塑性エラストマーなどの可撓性を有する有機高分子に混合・分散させた導電シートを融着、導電性材料を蒸着のいずれかの材料および形成方法によって互いに絶縁された電極2A、電極2Bを形成する(S17)。その後、圧電性を発現させるために空気中またはシリコンオイル浴中で電極2A、電極2B間に直流高電圧を印加してポーリング処理を行い(S18)、シート状の圧電素子を作製する。なお、ポーリング処理(S18)は、電極2A、電極2Bを形成(S17)した後行っているが、シート状の可撓性感圧体1を作製(S16)した後、2つの擬似電極を用いて行ってもよい。
上記の製造工程で製造した圧電素子を85℃85%の高温高湿下に20時間放置した後
、静電容量、抵抗、圧電特性の変化を評価した結果、洗浄処理を施さない圧電素子に比べ、各々の変化を約70%低減することができた。よって、本発明の圧電素子は、撥水処理の被覆層5を形成した圧電セラミック粉末3を洗浄処理することによって、撥水処理材料の未反応成分の溶出を低減することが出来るため、より圧電素子の静電容量、電気抵抗の、圧電特性の変化を防止することができる。
、静電容量、抵抗、圧電特性の変化を評価した結果、洗浄処理を施さない圧電素子に比べ、各々の変化を約70%低減することができた。よって、本発明の圧電素子は、撥水処理の被覆層5を形成した圧電セラミック粉末3を洗浄処理することによって、撥水処理材料の未反応成分の溶出を低減することが出来るため、より圧電素子の静電容量、電気抵抗の、圧電特性の変化を防止することができる。
その結果、圧電素子の初期の電気的特性を維持することができ、優れた耐久性と信頼性を実現することができる。
なお、本実施の形態において、洗浄処理を水で行ったが、第1の実施の形態と同様、加熱した水や酸性水、あるいは加熱した酸性水を用いることにより、より効率的に未反応の残留成分を溶解することができるので短時間で高い除去効率を実現することができる。
(実施の形態3)
図8は、本発明の第3の実施の形態におけるケーブル状の圧電素子の一部断面図である。図8に示すように、ケーブル状の圧電素子は、第1電極である芯電極6の外表面に可撓性の可撓性感圧体1を形成し、この可撓性感圧体1の外表面に第2電極である可撓性の外電極7を形成し、さらに電気絶縁性の弾性体からなる保護層8を形成して構成されている。芯電極6と外電極7とは可撓性感圧体1で絶縁されている。
図8は、本発明の第3の実施の形態におけるケーブル状の圧電素子の一部断面図である。図8に示すように、ケーブル状の圧電素子は、第1電極である芯電極6の外表面に可撓性の可撓性感圧体1を形成し、この可撓性感圧体1の外表面に第2電極である可撓性の外電極7を形成し、さらに電気絶縁性の弾性体からなる保護層8を形成して構成されている。芯電極6と外電極7とは可撓性感圧体1で絶縁されている。
芯電極6は、単数または複数の金属線、あるいは多数のポリエステル繊維の収束線に銅などの金属を巻回した構成のものが用いられる。
可撓性感圧体1は、周期表第1族、周期表第2族の元素を含む圧電セラミック粉末3と可撓性を有する有機高分子4で構成され、圧電セラミック粉末3は、第1の実施の形態の被覆層5と洗浄処理を行い、残留する金属元素を除去した材料が用いられる。
外電極7は、実施の形態1における電極2A、電極2Bと同様に、ポリエチレンテレフタレ−トなどの高分子フィルムの両面にC、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の箔を接着した導電性フィルムをケーブル状の可撓性感圧体7に巻回して形成した導電層、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の導電性粉末とゴムや熱可塑性エラストマーなどの可撓性を有する有機高分子とを混練して作製した可撓性導電組成物を押出成型により形成した導電層、前述の導電性粉末を有機高分子に分散させた導電性塗料(ペースト)を塗布した導電膜、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の導電性材料を可撓性感圧体7に真空蒸着、スパッタリング、CVDなどの方法で形成した薄膜の蒸着膜などが用いられる。
保護層8は、第1の実施の形態で述べた保護層5の材料が用いられ、この材料の押出成型により形成される。
本実施の形態におけるケーブル状の圧電素子の製造工程を図9を用いて説明する。先ず、圧電セラミック粉末3を適切な溶媒で希釈して所定の濃度に調整した撥水材料を含む溶液に浸漬して撹拌混合した後乾燥するか、または融解する温度に加熱された撥水材料の溶液に浸漬して混合した後冷却するか、または圧電セラミック粉末3を所定量の撥水材料の粉末と混合することのいずれかの方法によって圧電セラミック粉末3に撥水処理を施して被覆層5を形成(S14)する。
次に、被覆層5が形成された圧電セラミック粉末3を水の入った容器に漬浸し、撹拌しながら圧電セラミック粉末3及び被覆層5に含まれる残留する金属元素を含む化合物から金属元素を溶出させる洗浄処理を実施(S15)。必要に応じてこの洗浄処理を数回繰り
返し、乾燥処理を行い、残留する金属元素を除去した圧電セラミック粉末3を作製する。
返し、乾燥処理を行い、残留する金属元素を除去した圧電セラミック粉末3を作製する。
次に、被覆層5が形成された圧電セラミック粉末3と有機高分子4とをニーダーやロールなどの加工機を用い、被覆層5が形成されたセラミック粉末3が有機高分子4に均一に混合・分散された状態となるように混練する(S16)。
次にこの混練物をロールの加工機でシート状の可撓性物感圧体を作製し(S17)、このシート状の圧可撓性感圧体をペレタイザーなどの加工機を用いてペレット状に加工する(S18)。
次に、芯電極6を芯材とし、ペレット状の可撓性感圧体を押出成型の加工機を用いて押し出し、芯電極6の周囲に可撓性感圧体1の層を形成する。すなわち、芯電極6に対し可撓性感圧体1の層を周設する(S19)。
次に前述のいずれかの材料と加工手段を用いて外電極7を形成する(S20)。
次に、弾性を有する熱可塑性エラストマーやゴムなどの有機高分子を用い、押出成型により保護層8を形成する(S21)。
その後、圧電性を発現させるために空気中またはシリコンオイル浴中で芯電極6と外電極11との間に直流高電圧を印加してポーリング処理を行い(S22)、ケーブル状の圧電素子が作製される。
なお、ポーリング処理(S22)は、保護層12を形成(S21)した後行っているが、芯電極6の周囲に可撓性感圧体1の層を形成(S19)した後、芯電極と外側電極に該当する擬似電極を用いて行ってもよいし、外電極7を形成(S20)した後、行ってもよい。
このようにして作製されたケーブル状の圧電素子は、図8に示すようにその一端の保護層8と可撓性感圧体1を取り除き、芯電極6と外電極7とを露出させることにより制御回路に接続され、感圧センサとして使用される。
上記のように構成されたケーブル状圧電素子について、以下その動作、作用を説明する。
ケ−ブル状の圧電素子の一部あるいは全面に時間的に変化する圧力が印加されたとき、芯電極6と外電極7との間には、その部分のケーブル状の圧電素子に生じる加速度に応じた振動電圧が誘起される。この誘起電圧を利用して圧力を検出することができる。
上記構成のケーブル状の圧電素子が第1の実施の形態と同様に感圧センサとして高温高湿環境下で使用される場合、保護層8が存在するため、水蒸気の可撓性感圧体1への拡散量は少なくすることができる。しかしながら、保護層8の有機高分子の3次元網目分子構造の隙間は水蒸気1分子の大きさに比べて大きいため、保護層8で水蒸気の拡散を完全に防止することはできず、第1の実施の形態と同様に外電極6を通過し、可撓性感圧体7の表面に水蒸気が凝縮して水が生成する。
本実施の形態のケーブル状の圧電素子は、可撓性感圧体1を構成する圧電セラミック粉末3から残留する金属元素を含む化合物から金属元素を除去しているので可撓性感圧体1で水蒸気が凝縮して水が生成しても、圧電セラミック粉末3及び被覆層5に残留する金属元素を含む化合物から金属元素の溶出が抑制され、ケーブル状の圧電素子としての電気抵
抗や圧電特性の変化を防止することができる。その結果、シート状の圧電素子の初期の電気的特性を維持することができ、第1の実施の形態と同様な効果を実現することができる。
抗や圧電特性の変化を防止することができる。その結果、シート状の圧電素子の初期の電気的特性を維持することができ、第1の実施の形態と同様な効果を実現することができる。
また、数km以上の長尺のケーブル状の圧電素子を加工する場合でも予め圧電セラミック粉末3の一つ一つの粒子から残留する金属元素を含む化合物から金属元素を除去することによって、ケーブルの切断面を含めケーブル状のどの部位でも上記効果を発揮させることができ、常に電気的特性の安定したケーブル状の圧電素子を得ることができる。
さらに、本発明のケーブル状の圧電素子は、可撓性を有しかつ形状がケーブル状であるので屈曲した部位を含んだ配設や取り付け幅に制限を有する省スペースの配設に対応可能であり、かつ高温高湿環境下で使用されても初期の電気的特性、圧電特性、機械的強度を維持できるという優れた特性を有している。したがってこのような配設条件や特性が要求される屋外使用の圧力、振動検知用のセンサとして最も適している。具体的には、特に車のスライドア、ハッチバックドア、トランク、パワーウィンドウなど開閉が伴う機器や部品に設置して挟み込みを検知するセンサや、車のドアハンドルに設置してドアの解錠を制御するタッチセンサが挙げられる。
また、介護用ベッドなどに使用される体動センサは大面積の検知を確保する必要があるが、本発明のケーブル状圧電素子は、ベッドの上に蛇行させて配設することにより大面積の検知を可能とすることができ、さらに、失禁や汗などの多湿環境や衛生保持のための洗濯などの使用状況も考慮すると介護ベッド用の体動センサとしても最適な構成である。
また、屋外でもマンションや戸建てにおけるベランダの手すりや玄関のドアに配置して外部からの侵入を検知するセンサなど感圧センサとして利用することができる。この場合も屋外であるのでケーブル状圧電素子が高温多湿環境に暴露されるが、このような環境下でも安定した圧電特性を維持することができるので誤動作が防止でき、防犯用センサとしても十分使用することができる。
また、本発明の製造方法で作製されたケーブル状の圧電素子は、ベッドの上に蛇行させて配設することにより大面積の検知が可能であり、介護用ベッドの体動センサとしても最適な構成である。
(実施例1)
撥水材料を被覆した圧電セラミック粉末3の撥水効果を調べるため、圧電セラミック粉末として平均粒径が約1μmのチタン酸ビスマス・ナトリウムとチタン酸バリウムの固溶体である(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3と以下の各種水材料を用い、被覆層5を形成した圧電セラミック粉末3を作製した。
撥水材料を被覆した圧電セラミック粉末3の撥水効果を調べるため、圧電セラミック粉末として平均粒径が約1μmのチタン酸ビスマス・ナトリウムとチタン酸バリウムの固溶体である(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3と以下の各種水材料を用い、被覆層5を形成した圧電セラミック粉末3を作製した。
次に、ガラス板の上に各種撥水材料による第1の被覆層を形成した圧電セラミック粉末3の膜を形成し、この膜の上に蒸留水を滴下することによってできた水玉の接触角を測定した。接触角の測定は協和界面科学社製の接触角計CA−DT型を用いた。なお、比較のため、圧電セラミック粉末のみのものについても接触角を測定している。
測定に用いた撥水材料名と接触角の測定結果を(表1)に示す。
この結果より明らかなように、撥水材料による第1の被覆層を形成した圧電セラミック粉末3は大きな接触角を示すことがわかり、この大きな接触角を有することが圧電素子を構成する可撓性感圧体1への水の浸透を抑制する効果を発現させると考えられる。
(実施例2)
圧電セラミック粉末3として平均粒径が約1μmのチタン酸ビスマス・ナトリウムとチタン酸バリウムの固溶体である(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3と平均粒子系が約1μmのチタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体であるPb(Zr・Ti)O3を用い、撥水材料としてオレイン酸カルシウム(脂肪酸塩)とヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン(シラン化合物)を用い、実施例1と同様の方法で各圧電セラミック粉末3の表面に前述の撥水材料の被覆層5を形成し、撥水処理された圧電セラミック粉末3を製造した。
圧電セラミック粉末3として平均粒径が約1μmのチタン酸ビスマス・ナトリウムとチタン酸バリウムの固溶体である(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3と平均粒子系が約1μmのチタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体であるPb(Zr・Ti)O3を用い、撥水材料としてオレイン酸カルシウム(脂肪酸塩)とヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン(シラン化合物)を用い、実施例1と同様の方法で各圧電セラミック粉末3の表面に前述の撥水材料の被覆層5を形成し、撥水処理された圧電セラミック粉末3を製造した。
次に、被覆層5が形成された圧電セラミック粉末3を水の入った容器に漬浸し、撹拌しながら圧電セラミック粉末3及び被覆層5に含まれる残留する金属元素を含む化合物から金属元素を溶出させる洗浄処理を行った。必要に応じてこの洗浄処理を数回繰り返し、乾燥処理を行い、残留する金属元素を除去した圧電セラミック粉末3を作製する。
次に、撥水処理された圧電セラミック粉末3が約60体積%、可撓性を有する有機高分子4である塩素化ポリエチレンが約35体積%となるようにロール機で混練し、可撓性感圧体1のシートを作製し、ペレタイザーでペレットを製造した。
この可撓性感圧体1のペレットを用い、直径0.45mmの多数のポリエステル繊維の収束線に銅箔を巻回したものを芯電極とし、押出成型機を用いて芯電極の周囲に可撓性感圧体1を厚さ約0.6mmとなるように被覆処理した。
次に、幅3mm、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレ−トの高分子フィルムの両面に幅3mm、厚さ10μmのアルミニウム箔を接着した導電性フィルムを芯電極に被覆した可撓性感圧体1の表面に導電性フィルムの一部が重なるように巻回して外電極とした。さらに、外電極の周囲に押出成型機を用いてオレフィン系熱可塑性エラストマーを厚さ約0.5mmとなるように保護層を被覆処理し、ケーブル状圧電素子を製造し、圧電性を発現させるために100℃の空気中で芯電極と外電極に5kV/mmの直流電圧を印加してポーリング処理を行った。
以上のように作製した各種のケーブル状圧電素子を有効長さが150mmとなるように調整し、実施例1と同条件の高温高湿試験を20時間実施した。試験後、常温で電気抵抗、静電容量を測定した。測定器は日置電機社製LCRハイテスタ3522を用い、1kHzの周波数で測定した。さらに、圧電特性の指標として圧電定数d33の評価を行った。測定器はピエゾテスト製ピエゾメータシステムPM−3000を用い、110Hzの周波数で測定した。
なお、比較のため、圧電セラミック粉末3に被覆層5を形成後に洗浄処理をしないもの、また、被覆層5を形成せず洗浄処理もしないものについてもケーブル状圧電素子を製造し、同様に試験を実施した。
(表2)に高温高湿試験20時間後の電気抵抗の変化率、(表3)に高温高湿試験20時間後の静電容量の変化率、(表4)に高温高湿試験20時間後の圧電定数d33の変化率を示す。
この結果より明らかなように、被覆層5形成後に洗浄処理を施した圧電セラミック粉末3を用いたケーブル状圧電素子は電気抵抗の変化、静電容量の変化、圧電定数d33の変化が小さいことがわかり、形状が異なる圧電素子でもシート状の圧電素子と同様な効果を得ることができた。
ケーブル状圧電素子の電気抵抗は高温高湿環境下で減少する。これは、凝縮した水が可撓性感圧体1に浸透し、圧電セラミック粉末3の成分が浸透した水に溶解することが原因と考えられる。また、電気抵抗の変化は、(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3の圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子の方がPb(Zr・Ti)O3の圧電セラミック粉末3を用いたケーブル状圧電素子よりも大きい結果と示しているが、これは圧電セラミック粉末に含有するアルカリ成分が水に溶解しやすいことを示している。
一方、初期の両者の固有抵抗は、Pb(Zr・Ti)O3の圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子の方が(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3の圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子よりも約2倍高いことから、(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3の圧電セラミック粉末3を用いたケーブル状圧電素子は固有抵抗が低く、かつ高温高湿環境下でさらに低下することがわかる。ケーブル状圧電素子が長くなると電気抵抗がさらに低下することから、圧電素子に常に一定電圧を印加して圧力を検知する回路構成では感圧センサとして使用することができなくなる可能性があり、アルカリ成分を含む圧電セラミック粉末3を用いた長尺のケーブル状圧電素子を高温高湿環境下で使用する場合はアルカリ成分の溶出を防止するため、圧電セラミック粉末の被覆層の形成が不可欠といえる。
また、静電容量の変化も(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3の圧電セラミック粉末の方がPb(Zr・Ti)O3の圧電セラミック粉末よりも大きい結果と示しているが、これは圧電セラミック粉末に含まれる成分の水に対する吸湿性に差があるものと考えられる。
さらに、圧電定数d33の変化も(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3の圧電セラミック粉末の方がPb(Zr・Ti)O3の圧電セラミック粉末よりも大きい結果と示しているが、これは圧電セラミック粉末3に含まれる成分の水に対する吸湿性に差があるものと考えられる。
なお、高温高湿試験を1000時間実施したが、20時間のレベルの電気抵抗、静電容量、圧電定数d33を維持しており、優れた撥水効果を有することを確認した。
このように、圧電セラミック粉末3に撥水材料による被覆層5を形成後、圧電セラミック粉末3や被覆層5に含まれる未反応の金属元素の溶出させることによって、ケーブル状圧電素子の電気抵抗、静電容量、圧電定数d33ともに変化を少なくすることができることを確認した。
(実施例3)
圧電セラミック粉末3として平均粒径が約1μmのチタン酸ビスマス・ナトリウムとチタン酸バリウムの固溶体である(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3と平均粒子系が約1μmのチタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体であるPb(Zr・Ti)O3の各々の圧電セラミックス粉末3を洗浄処理することによって、圧電セラミック粒子3中に残留する金属元素及び金属元素化合物から金属元素を除去した。その後、撥水材料としてオレイン酸カルシウム(脂肪酸塩)とヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン(シラン化合物)を用い、実施例2と同様の方法で洗浄処理された各圧電セラミック粉末3の表面に前述の撥水材料の被覆層5を形成し、撥水処理された圧電セラミック粉末3を製造した。
圧電セラミック粉末3として平均粒径が約1μmのチタン酸ビスマス・ナトリウムとチタン酸バリウムの固溶体である(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3と平均粒子系が約1μmのチタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体であるPb(Zr・Ti)O3の各々の圧電セラミックス粉末3を洗浄処理することによって、圧電セラミック粒子3中に残留する金属元素及び金属元素化合物から金属元素を除去した。その後、撥水材料としてオレイン酸カルシウム(脂肪酸塩)とヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン(シラン化合物)を用い、実施例2と同様の方法で洗浄処理された各圧電セラミック粉末3の表面に前述の撥水材料の被覆層5を形成し、撥水処理された圧電セラミック粉末3を製造した。
次に、被覆層5が形成された圧電セラミック粉末3を水の入った容器に漬浸し、撹拌しながら圧電セラミック粉末3及び被覆層5に含まれる残留する金属元素を含む化合物から金属元素を溶出させる洗浄処理を行った。必要に応じてこの洗浄処理を数回繰り返し、乾燥処理を行い、残留する金属元素を除去した圧電セラミック粉末3を作製する。
次に、撥水処理された圧電セラミック粉末3が約60体積%、可撓性を有する有機高分子4である塩素化ポリエチレンが約35体積%となるようにロール機で混練し、可撓性感圧体1のシートを作製し、ペレタイザーでペレットを製造した。
この可撓性感圧体1のペレットを用い、直径0.45mmの多数のポリエステル繊維の収束線に銅箔を巻回したものを芯電極とし、押出成型機を用いて芯電極の周囲に可撓性感圧体1を厚さ約0.6mmとなるように被覆処理した。
次に、幅3mm、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレ−トの高分子フィルムの両面に幅3mm、厚さ10μmのアルミニウム箔を接着した導電性フィルムを芯電極に被覆した可撓性感圧体1の表面に導電性フィルムの一部が重なるように巻回して外電極とした。さらに、外電極の周囲に押出成型機を用いてオレフィン系熱可塑性エラストマーを厚さ約0.5mmとなるように保護層を被覆処理し、ケーブル状圧電素子を製造し、圧電性を発現させるために100℃の空気中で芯電極と外電極に5kV/mmの直流電圧を印加してポーリング処理を行った。
以上のように作製した各種のケーブル状圧電素子を有効長さが150mmとなるように調整し、実施例1及び2と同条件の高温高湿試験を20時間実施した。試験後、常温で電気抵抗、静電容量を測定した。測定器は日置電機社製LCRハイテスタ3522を用い、1kHzの周波数で測定した。さらに、圧電特性の指標として圧電定数d33の評価を行った。測定器はピエゾテスト製ピエゾメータシステムPM−3000を用い、110Hzの周波数で測定した。
(表5)に高温高湿試験20時間後の電気抵抗の変化率、(表6)に高温高湿試験20時間後の静電容量の変化率、(表7)に高温高湿試験20時間後の圧電定数d33の変化率を示す。
この結果より明らかなように、被覆層5の形成前後に洗浄処理を施した圧電セラミック粉末3を用いたケーブル状圧電素子は電気抵抗の変化、静電容量の変化、圧電定数d33の変化が小さいことがわかり、形状が異なる圧電素子でもシート状の圧電素子と同様な効果を得ることができた。
なお、高温高湿試験を1000時間実施したが、20時間のレベルの電気抵抗、静電容量、圧電定数d33を維持しており、優れた撥水効果を有することを確認した。
(実施例4)
圧電セラミック粉末3として平均粒径が約1μmのチタン酸ビスマス・ナトリウムとチタン酸バリウムの固溶体である(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3を用い、撥水材料としてオレイン酸カルシウム(脂肪酸塩)とヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン(シラン化合物)を用い、実施例1と同様の方法で各圧電セラミック粉末3の表面に前述の撥水材料の被覆層5を形成し、撥水処理された圧電セラミック粉末3を製造した。
圧電セラミック粉末3として平均粒径が約1μmのチタン酸ビスマス・ナトリウムとチタン酸バリウムの固溶体である(Bi1/2Na1/2)0.85Ba0.15TiO3を用い、撥水材料としてオレイン酸カルシウム(脂肪酸塩)とヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン(シラン化合物)を用い、実施例1と同様の方法で各圧電セラミック粉末3の表面に前述の撥水材料の被覆層5を形成し、撥水処理された圧電セラミック粉末3を製造した。
次に、被覆層5が形成された圧電セラミック粉末3を水の入った容器に漬浸し、撹拌しながら圧電セラミック粉末3及び被覆層5に含まれる残留する金属元素を含む化合物から金属元素を溶出させる洗浄処理を行った。さらに乾燥処理を行い、残留する金属元素を除去した圧電セラミック粉末3を作製する。
この時、洗浄処理を水、温水、酸性水で行い、洗浄後の圧電セラミックス粉末3を蒸留水またはイオン交換水で煮沸処理し、煮沸溶液のナトリウムイオン濃度を測定した結果を(表8)に示す。
この結果より明らかなように、洗浄に用いる水を温水あるいは酸性水にすることによって、残留する金属元素を含む化合物から金属元素の溶出を促進させることができ、短時間で高い除去効率を実現することができることが確認できた。
以上のように、本発明にかかる圧電素子は、高温高湿環境下で使用されても可撓性感圧体1の水の吸収を抑制することができるので初期の電気的特性、圧電特性、機械的引っ張り強度の変化を防止することができ、優れた耐久性、信頼性を実現することができるものである。したがって、高温高湿環境が起こり得る自動車のドアやウィンドウの挟み込みを防止する感圧センサや介護ベッドで人の体動を検知して在床を判断する圧力検出装置など幅広い用途に適用できるものである。
1 可撓性感圧体
2A 第1電極
2B 第2電極
3 圧電セラミック粉末
4 有機高分子
5 被覆層
6 芯電極
7 外電極
8 保護層
2A 第1電極
2B 第2電極
3 圧電セラミック粉末
4 有機高分子
5 被覆層
6 芯電極
7 外電極
8 保護層
Claims (16)
- 圧電セラミック粉末と可撓性を有する有機高分子とを含む可撓性感圧体において、前記圧電セラミック粉末は表面に水分の吸収を抑制する被覆層を設け、前記被覆層形成後に洗浄処理し、残留する金属元素を含む化合物を除去した構成の可撓性感圧体。
- 圧電セラミック粉末は洗浄処理された後に圧電セラミック粉末表面に水分の吸収を抑制する被覆層を設けた請求項1に記載の可撓性感圧体。
- 被覆層は、撥水材料で構成される請求項1または2に記載の可撓性感圧体。
- 被覆層は、脂肪酸、脂肪酸塩、単分子層の少なくとも1種で形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の可撓性感圧体。
- 残留する金属元素を含む化合物を除去した圧電セラミックスを煮沸処理し、その水溶液のpHは8.0以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の可撓性感圧体。
- 残留する金属元素を含む化合物を除去した圧電セラミックスを煮沸処理し、その水溶液の導電率は50μS/cm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の可撓性感圧体。
- 残留する金属元素を含む化合物を除去した圧電セラミックスを煮沸処理し、その水溶液のナトリウムイオンは300μg/g以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の可撓性感圧体。
- 圧電セラミック粉末は少なくとも周期表第1族、周期表第2族の元素を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の可撓性感圧体。
- 周期表第1族、周期表第2族の元素を含む圧電セラミック粉末がバリウム、ナトリウム、カリウム、ビスマス、リチウムの少なくとも1種を含む請求項8に記載の可撓性感圧体。
- 周期表第1族、周期表第2族の元素を含む圧電セラミック粉末がニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、チタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマスの少なくとも1種を含む請求項8または9に記載の可撓性感圧体。
- 洗浄処理を水で行う請求項1〜10のいずれか1項に記載の可撓性感圧体。
- 洗浄処理を酸性水で行う請求項1〜10のいずれか1項に記載の可撓性感圧体。
- 洗浄処理を行う水または酸性水を加温する請求項11または12に記載の可撓性感圧体。
- 可撓性感圧体に接続された第1電極と、前記可撓性感圧体に接続され前記第1電極と絶縁された第2電極とを備えた請求項1〜13のいずれか1項に記載の圧電素子。
- 可撓性感圧体は第1電極を覆い、第2電極は前記可撓性感圧体を覆う構成とした請求項1〜13のいずれか1項に記載のケ−ブル状圧電素子。
- 洗浄処理により、残留する金属元素を含む化合物を除去する請求項1〜15のいずれか1項に記載の可撓性感圧体または圧電素子の製造方法。
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JP2007031798A JP2008160045A (ja) | 2006-11-30 | 2007-02-13 | 可撓性感圧体とそれを用いた圧電素子およびその製造方法 |
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-
2007
- 2007-02-13 JP JP2007031798A patent/JP2008160045A/ja active Pending
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