JP2008143835A - 血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤の提供。
【解決手段】ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する、新たな血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤を提供する。また、ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する機能性食品、化粧料、さらには血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する組成物を調製するためのホスファチジルイノシトールの使用、そしてホスファチジルイノシトールを摂取及び/又は塗布することによる血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害方法を提供する。
【選択図】なし
【解決手段】ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する、新たな血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤を提供する。また、ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する機能性食品、化粧料、さらには血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する組成物を調製するためのホスファチジルイノシトールの使用、そしてホスファチジルイノシトールを摂取及び/又は塗布することによる血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害方法を提供する。
【選択図】なし
Description
本発明は、血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤に関する。より詳細には、ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤に関する。
血管内皮細胞は、血管内腔を裏打ちして内膜を構成する一層の細胞である。血管内皮細胞は、血液中の栄養物などの必要な成分を組織へ輸送する仲介をし、不必要に多量の成分が通過することを防ぐ作用、血液が凝固せずに円滑に循環させる作用、血管が離断したときに出欠を阻止する作用、血管の緊張を一定に保つ調節作用、炎症に関与する因子を産生して炎症を制御する作用、血管における病態を制御する作用などを有している。
また、血管内細胞は血管新生における重要な因子でもある。血管内皮細胞で産生されたプロテアーゼによる基底膜の消化、血管内皮細胞の遊走・増殖、次いで血管内皮細胞の管腔形成の順で血管新生が生じる。血管新生は、種々の増殖因子やサイトカイン、アラキドン酸代謝物、モノブチリンなどによって引き起こされると考えられている。血管新生を引き起こす増殖因子としては、繊維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血管透過性因子などが知られている。その中でも、VEGFは受容体が血管内皮だけに存在しており、血管内皮に選択的に作用するため、最も重要な血管新生因子と考えられている。
また、血管新生とは、血管が新たに増生する現象であり、脊椎動物の胎生期における循環器系の形成や、組織形成に関与するばかりでなく、成熟個体の性周期における黄体形成、胎盤形成などに関する。このように血管新生は健常な状態で発生し、組織の回復に重要な役割を担っている。しかし、糖尿病をはじめ多くの慢性疾患において毛細血管が増加して組織に重篤な損傷をもたらすことも知られている。
血管新生が関与する疾患としては、黄斑変性症、悪性腫瘍の増大や転移、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、炎症性皮膚疾患、関節リュウマチ、変形性関節症などがあげられる。
例えば、黄斑変性症は、脈絡膜から新生血管を生じる病気である。脈絡膜新生血管はほとんどの場合、黄斑部と呼ばれる眼底の中心部で起こり、脈絡膜新生血管は水がもれやすい、出血しやすいなどの性質があるため、網膜の下や網膜色素上皮の下に水や血液がたまる。網膜の下にたまった場合は HYPERLINK "http://health.goo.ne.jp/medical/search/10A70500.html" 網膜剥離、網膜色素上皮の下にたまった場合は網膜色素上皮剥離を起こして、網膜の機能が損なわれる。その結果、物がゆがんで見える(変視症)、物が小さく見える(小視症)、中心が見えにくい(中心暗点)などが初期の症状として現れ、多くの場合、視力も徐々に低下する。また、突然大量の出血を起こしたりすると、急激な視力低下が現れることもある。
悪性腫瘍が増殖する際には、腫瘍細胞の増殖に必要な栄養や酸素を得るために腫瘍細胞が自ら血管新生促進因子による血管の新生を誘導する。悪性腫瘍が他の臓器や部位へ転移する場合も血管新生を誘導し、血流にのって腫瘍細胞が移動する。糖尿病性網膜症の場合には、糖尿病性網膜症の場合には、糖尿病による粘性血液によって毛細血管が詰まり、網膜に出血や浮腫を生じ、さらにこれが慢性化して網膜に酸素や栄養の不足を起こすため、網膜や神経系乳頭上に新生血管が発生し、その周囲に繊維組織が形成される。この繊維組織によって網膜が引っ張り上げられたり(網膜剥離)、網膜の血管が引き裂かれて出血を起こし(ガラス体出血)、やがて高度視力障害や失明にいたる。
このように、血管内皮細胞の増殖により生じる血管新生は様々な疾病の発症や進行に深く関与しているため、これら疾病の治療を目的として、血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を阻害する物質の探索がこれまでに数多く行われている。血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を阻害する作用のある物質や薬剤として、例えば硫酸化多糖体(特許文献1)、アスコルビン酸エーテル及び関連化合物(特許文献2)、チアゾール誘導体(特許文献3)、サメ軟骨エキス(コンドロイチン及びムコ多糖類)(特許文献4)などがある。しかし、これまで血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を阻害する作用を阻害する物質として提案された物質は、実用的に満足できる効果を発揮しうるものではなかった。このため、血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生をより強力に阻害し、安全性の高い物質を開発することが求められていた。
血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生が関与する疾病の1つである癌の治療法としては、一般的に外科的方法、放射線療法、化学療法(薬剤投与)などが行われている。これらのうち化学療法としては、直接腫瘍細胞に作用して腫瘍細胞を死滅させる薬剤を投与する治療法が広く適用されており、このような治療法に適用するための抗腫瘍剤についての提案は多い。しかし、このような薬剤は、腫瘍細胞を死滅させるとともに正常細胞にも作用するため、癌の治療効果は高いが、副作用が非常に強いという欠点がある。また、このような薬剤は、細胞単位で効いても、腫瘍塊の深部まで届かないため、根本的な解決とならない。さらに、癌はその器官が異なると性質も異なり、抗腫瘍剤の選択や投与方法が異なることは珍しくなく、さまざまな種類の癌に効果を有する抗腫瘍剤が望まれている。
ここで、ホスファチジルイノシトールは、大豆レシチンに含まれ、細胞の情報伝達に深く関与していることが数多く報告されてきた。近年、ホスファチジルイノシトールの摂取が血中のトリアシルグリセロール(TG)濃度を減少させ、HDL−C(高比重リポタンパク質コレステロール)濃度を上昇させることが報告され(非特許文献1)ている。
しかし、ホスファチジルイノシトールを用いた上記のような血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤に関しては、全く報告がない。
特開昭63−119500号公報
特開昭58−131978号公報
特公平6−62413号公報
特開平10−147534号公報
Jim W. Burgessら、Journal of Lipid Research (46) 350-355
また、血管内細胞は血管新生における重要な因子でもある。血管内皮細胞で産生されたプロテアーゼによる基底膜の消化、血管内皮細胞の遊走・増殖、次いで血管内皮細胞の管腔形成の順で血管新生が生じる。血管新生は、種々の増殖因子やサイトカイン、アラキドン酸代謝物、モノブチリンなどによって引き起こされると考えられている。血管新生を引き起こす増殖因子としては、繊維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血管透過性因子などが知られている。その中でも、VEGFは受容体が血管内皮だけに存在しており、血管内皮に選択的に作用するため、最も重要な血管新生因子と考えられている。
また、血管新生とは、血管が新たに増生する現象であり、脊椎動物の胎生期における循環器系の形成や、組織形成に関与するばかりでなく、成熟個体の性周期における黄体形成、胎盤形成などに関する。このように血管新生は健常な状態で発生し、組織の回復に重要な役割を担っている。しかし、糖尿病をはじめ多くの慢性疾患において毛細血管が増加して組織に重篤な損傷をもたらすことも知られている。
血管新生が関与する疾患としては、黄斑変性症、悪性腫瘍の増大や転移、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、炎症性皮膚疾患、関節リュウマチ、変形性関節症などがあげられる。
例えば、黄斑変性症は、脈絡膜から新生血管を生じる病気である。脈絡膜新生血管はほとんどの場合、黄斑部と呼ばれる眼底の中心部で起こり、脈絡膜新生血管は水がもれやすい、出血しやすいなどの性質があるため、網膜の下や網膜色素上皮の下に水や血液がたまる。網膜の下にたまった場合は HYPERLINK "http://health.goo.ne.jp/medical/search/10A70500.html" 網膜剥離、網膜色素上皮の下にたまった場合は網膜色素上皮剥離を起こして、網膜の機能が損なわれる。その結果、物がゆがんで見える(変視症)、物が小さく見える(小視症)、中心が見えにくい(中心暗点)などが初期の症状として現れ、多くの場合、視力も徐々に低下する。また、突然大量の出血を起こしたりすると、急激な視力低下が現れることもある。
悪性腫瘍が増殖する際には、腫瘍細胞の増殖に必要な栄養や酸素を得るために腫瘍細胞が自ら血管新生促進因子による血管の新生を誘導する。悪性腫瘍が他の臓器や部位へ転移する場合も血管新生を誘導し、血流にのって腫瘍細胞が移動する。糖尿病性網膜症の場合には、糖尿病性網膜症の場合には、糖尿病による粘性血液によって毛細血管が詰まり、網膜に出血や浮腫を生じ、さらにこれが慢性化して網膜に酸素や栄養の不足を起こすため、網膜や神経系乳頭上に新生血管が発生し、その周囲に繊維組織が形成される。この繊維組織によって網膜が引っ張り上げられたり(網膜剥離)、網膜の血管が引き裂かれて出血を起こし(ガラス体出血)、やがて高度視力障害や失明にいたる。
このように、血管内皮細胞の増殖により生じる血管新生は様々な疾病の発症や進行に深く関与しているため、これら疾病の治療を目的として、血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を阻害する物質の探索がこれまでに数多く行われている。血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を阻害する作用のある物質や薬剤として、例えば硫酸化多糖体(特許文献1)、アスコルビン酸エーテル及び関連化合物(特許文献2)、チアゾール誘導体(特許文献3)、サメ軟骨エキス(コンドロイチン及びムコ多糖類)(特許文献4)などがある。しかし、これまで血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を阻害する作用を阻害する物質として提案された物質は、実用的に満足できる効果を発揮しうるものではなかった。このため、血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生をより強力に阻害し、安全性の高い物質を開発することが求められていた。
血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生が関与する疾病の1つである癌の治療法としては、一般的に外科的方法、放射線療法、化学療法(薬剤投与)などが行われている。これらのうち化学療法としては、直接腫瘍細胞に作用して腫瘍細胞を死滅させる薬剤を投与する治療法が広く適用されており、このような治療法に適用するための抗腫瘍剤についての提案は多い。しかし、このような薬剤は、腫瘍細胞を死滅させるとともに正常細胞にも作用するため、癌の治療効果は高いが、副作用が非常に強いという欠点がある。また、このような薬剤は、細胞単位で効いても、腫瘍塊の深部まで届かないため、根本的な解決とならない。さらに、癌はその器官が異なると性質も異なり、抗腫瘍剤の選択や投与方法が異なることは珍しくなく、さまざまな種類の癌に効果を有する抗腫瘍剤が望まれている。
ここで、ホスファチジルイノシトールは、大豆レシチンに含まれ、細胞の情報伝達に深く関与していることが数多く報告されてきた。近年、ホスファチジルイノシトールの摂取が血中のトリアシルグリセロール(TG)濃度を減少させ、HDL−C(高比重リポタンパク質コレステロール)濃度を上昇させることが報告され(非特許文献1)ている。
しかし、ホスファチジルイノシトールを用いた上記のような血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤に関しては、全く報告がない。
本発明は、血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を阻害する新たな薬剤を提供することを目的とする。本発明はさらに、血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を伴う疾病の治療剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、ホスファチジルイノシトールについて種々の検討を行ったところ、ホスファチジルイノシトールが血管内皮細胞の増殖阻害及び/又は血管新生阻害活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤、
(2)ホスファチジルイノシトールが全リン脂質中の純度が50モル%以上であるホスファチジルイノシトールである上記(1)記載の血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤、
(3)ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害及び/又は血管新生阻害作用を有する機能性食品、
(4)ホスファチジルイノシトールが全リン脂質中の純度が50モル%以上であるホスファチジルイノシトールである上記(3)記載の機能性食品、
(5)血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する組成物を調製するためのホスファチジルイノシトールの使用。
(6)ホスファチジルイノシトールを摂取及び/又は塗布することを特徴とする血管内皮細胞増殖阻害及び/又は血管新生阻害方法、
(7)ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する黄斑変性症の改善効果を有する化粧料、
(8)ホスファチジルイノシトールが、大豆由来リン脂質にホスフォリパーゼB活性を有するカンディダ属由来の酵素を作用させることによって得られたものである上記(1)又は(2)に記載の血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤。
に関する。
さらに本発明は、
(9)ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する医薬、
(10)ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を伴う疾病の治療剤、
(11)ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する、黄斑変性症、悪性腫瘍の増大や転移、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、炎症性皮膚疾患、関節リュウマチ、又は変形性関節症の治療剤、
に関する。
すなわち、本発明は、
(1)ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤、
(2)ホスファチジルイノシトールが全リン脂質中の純度が50モル%以上であるホスファチジルイノシトールである上記(1)記載の血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤、
(3)ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害及び/又は血管新生阻害作用を有する機能性食品、
(4)ホスファチジルイノシトールが全リン脂質中の純度が50モル%以上であるホスファチジルイノシトールである上記(3)記載の機能性食品、
(5)血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する組成物を調製するためのホスファチジルイノシトールの使用。
(6)ホスファチジルイノシトールを摂取及び/又は塗布することを特徴とする血管内皮細胞増殖阻害及び/又は血管新生阻害方法、
(7)ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する黄斑変性症の改善効果を有する化粧料、
(8)ホスファチジルイノシトールが、大豆由来リン脂質にホスフォリパーゼB活性を有するカンディダ属由来の酵素を作用させることによって得られたものである上記(1)又は(2)に記載の血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤。
に関する。
さらに本発明は、
(9)ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する医薬、
(10)ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を伴う疾病の治療剤、
(11)ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する、黄斑変性症、悪性腫瘍の増大や転移、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、炎症性皮膚疾患、関節リュウマチ、又は変形性関節症の治療剤、
に関する。
本発明によれば、ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する、新たな血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤が提供される。この血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤を有効成分とする薬剤は、黄斑変性症、腫瘍増殖、関節リウマチ、糖尿病性網膜症などの血管新生を伴う種々の疾病の治療剤として用いることができる。さらに、本発明の血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤または治療剤は、低毒性であるため、安全性が高い。
また、ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する機能性食品、化粧料、さらには血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する組成物を調製するためのホスファチジルイノシトールの使用、そしてホスファチジルイノシトールを摂取及び/又は塗布することによる血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害方法を提供することができる。
また、ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する機能性食品、化粧料、さらには血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する組成物を調製するためのホスファチジルイノシトールの使用、そしてホスファチジルイノシトールを摂取及び/又は塗布することによる血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害方法を提供することができる。
本発明に用いるホスファチジルイノシトールは医薬又は食品として服用又は食用可能なホスファチジルイノシトールであればその由来および製法は何ら限定されるものでは無いが、大豆リン脂質から熱エタノール法(特開2000−300186号広報)により製造したもの、または大豆リン脂質から実質的にホスファチジルイノシトールに作用しないホスフォリパーゼBを用いて製造したものなどを用いれば良い。
そのようなホスフォリパーゼB(PLB)としては、具体的には以下の(1)〜(4)のようなものがあげられる。
(1)PLB活性を有するキャンディダ属由来の酵素であって、下記の物理化学的性質を有する酵素。
1)作用:リン脂質を2モル比の遊離脂肪酸と等モル比のグリセリルホスフォリルコリンとに加水分解する作用
2)分子量:53,000±3,000(SDS電気泳動法による)
3)等電点:pH4.21±0.2
4)至適pH:pH5.5から6.5付近
5)pH安定性:pH5から9付近(37℃、90分間処理)
6)安定性:55℃(pH5で10分間処理)
7)基質特異性:ホスファチジルイノシトールに対する活性比がホスファチジルコリンの場合の10%以下
(2)下記工程により得られる酵素画分A又は酵素画分Bを含有するホスフォリパーゼB。
1)キャンディダ・シリンドラッセ(ルゴーサ)を培養する工程
2)キャンディダ・シリンドラッセ(ルゴーサ)の培養液を濃縮する工程
3)有機溶媒により酵素を沈殿させる工程
4)3)の工程により得られる粗酵素液を疎水クロマトグラフィーで精製する工程
5)4)の工程で得られる酵素をイオン交換クロマトグラフィーで酵素画分A又は酵素画分Bに分離精製する工程
(3)配列表配列番号1のアミノ酸配列を有するホスフォリパーゼB。
(4)配列表配列番号2のアミノ酸配列を有するホスフォリパーゼB。
そのようなホスフォリパーゼB(PLB)としては、具体的には以下の(1)〜(4)のようなものがあげられる。
(1)PLB活性を有するキャンディダ属由来の酵素であって、下記の物理化学的性質を有する酵素。
1)作用:リン脂質を2モル比の遊離脂肪酸と等モル比のグリセリルホスフォリルコリンとに加水分解する作用
2)分子量:53,000±3,000(SDS電気泳動法による)
3)等電点:pH4.21±0.2
4)至適pH:pH5.5から6.5付近
5)pH安定性:pH5から9付近(37℃、90分間処理)
6)安定性:55℃(pH5で10分間処理)
7)基質特異性:ホスファチジルイノシトールに対する活性比がホスファチジルコリンの場合の10%以下
(2)下記工程により得られる酵素画分A又は酵素画分Bを含有するホスフォリパーゼB。
1)キャンディダ・シリンドラッセ(ルゴーサ)を培養する工程
2)キャンディダ・シリンドラッセ(ルゴーサ)の培養液を濃縮する工程
3)有機溶媒により酵素を沈殿させる工程
4)3)の工程により得られる粗酵素液を疎水クロマトグラフィーで精製する工程
5)4)の工程で得られる酵素をイオン交換クロマトグラフィーで酵素画分A又は酵素画分Bに分離精製する工程
(3)配列表配列番号1のアミノ酸配列を有するホスフォリパーゼB。
(4)配列表配列番号2のアミノ酸配列を有するホスフォリパーゼB。
本発明におけるホスファチジルイノシトールの使用は、本発明の血管内皮増殖阻害及び/又は血管新生阻害用組成物を調製するための使用であれば特に限定されない。本発明の血管内皮増殖阻害及び/又は血管新生阻害用組成物としては、ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する医薬;ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤;ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を伴う疾患の治療剤;ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する機能性食品;ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する化粧料などが挙げられる。さらには、ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する機能性栄養補助食品であってもよい。
本発明において、ホスファチジルイノシトールの医薬又は機能性食品中の含有量は、血管内皮細胞増殖阻害及び/又は血管新生阻害作用が得られる量であれば何ら限定されるものではないが、1日のホスファチジルイノシトールの摂取量の下限値としては、1mg以上が好ましく、10mg以上がより好ましく、30mg以上がさらに好ましく、50mg以上が特に好ましく、100mg以上が特に大変好ましい。また、上限値としては、50000mg以下が好ましく、10000mg以下がより好ましく、1000mg以下がさらに好ましく、500mg以下が特に好ましく、200mg以下が特に大変好ましい。
本発明の血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を伴う疾病の治療剤は、上記の本発明の血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤と同様に、ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する。血管内皮細胞増殖及び/又血管新生を伴う疾病としては、黄斑変性症、悪性腫瘍の増大や転移、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、炎症性皮膚疾患、関節リウマチ、変形性関節症などが挙げられる。本発明の医薬は、これら疾患の治療に有用であり、特に、血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を伴う黄斑変性症、中でもとりわけ加齢黄斑変性症の治療に有用である。
本発明の医薬投与経路としては、経口投与または非経口投与のいずれであってもよい。その剤形は、投与経路に応じて適宜選択される。例えば、注射液、輸液、散剤、顆粒剤、錠剤(含チュアブル錠、速崩錠)、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、丸剤、腸溶剤、トローチ、内用液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、外用液剤、湿布剤、点鼻剤、点耳剤、点眼剤、吸入剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粘付剤、坐剤、経腸栄養剤などが挙げられる。これは、症状に応じてそれぞれ単独でまたは組み合わせて使用することができる。これらの製剤には、必要に応じて、賦形剤、結合剤、防腐剤、酸化安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などの医薬の製剤技術分野において通常用いられる補助剤が用いられる。
これらの製剤は常法に従って調製されるが、ホスファチジルイノシトールは水に難溶性であるため、植物性油、動物性油等の非親水性有機溶媒に溶解するか又は、乳化剤、分散剤もしくは界面活性剤等とともに、ホモジナイザー(高圧ホモジナイザー)を用いて水溶液中に分散、乳化させて用いてもよい。更に、ホスファチジルイノシトールの吸収性を高めるために、賦型剤(アラビアガム、デキストリン、カゼイン等)の存在化又は非存在化、平均粒子系を1ミクロン程度まで微粉砕して用いることも可能である。
製剤化のために用いることができる添加剤には、例えば大豆油、サフラー油、オリーブ油、胚芽油、ひまわり油、牛脂、いわし油等の動物性油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤、精製水、乳糖、デンプン、結晶セルロース、D−マンニトール、マルトース、レシチン、アラビアガム、デキストリン、ソルビトール液、糖液等の賦形剤、甘味料、着色料、pH調整剤、香料などをあげることができる。尚、液体製剤は、服用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよい。また、錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしても良い。
注射剤の形で投与する場合には、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経皮、関節内、滑液嚢内、胞膜内、骨膜内、舌下、口腔内等に投与することが好ましく、特に静脈内投与又は腹腔内投与が好ましい。静脈内投与は、点滴投与、ポーラス投与のいずれであってもよい。
本発明のホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する機能性食品としては、例えばホスファチジルイノシトール含有サプリメント(散在、顆粒剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、チュアブル錠、速崩錠、シロップ、液剤等)、ホスファチジルイノシトール含有飲料(お茶、炭酸飲料、乳酸飲料、スポーツ飲料等)、ホスファチジルイノシトール含有菓子(グミ、ゼリー、ガム、チョコレート、クッキー、キャンデー等)、ホスファチジルイノシトール含有油、ホスファチジルイノシトール含有油脂食品(マヨネーズ、ドレッシング、バター、クリーム、マーガリン等)、ホスファチジルイノシトール含有ケチャップ、ホスファチジルイノシトール含有ソース、ホスファチジルイノシトール含有流動食、ホスファチジルイノシトール含有乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ等)、ホスファチジルイノシトール含有パン類、ホスファチジルイノシトール含有麺類(うどん、そば、ラーメン、パスタ、やきそば、きしめん、そーめん、ひやむぎ、ビーフン等)、ホスファチジルイノシトール含有スープ類(味噌汁、コーンスープ、コンソメスープ等)、ホスファチジルイノシトール含有ふりかけ等が挙げられる。
なお、本発明でいう機能性食品とは、保健機能食品のことであり、健康食品のうち、国が安全性や有効性などを考慮して設定した規格基準などを満たした食品である。保健機能や栄養機能を表示することを認められ、食品の目的や機能等の違いにより、「特定保健用食品」と「栄養機能食品」に分けられる。
なお、本発明でいう機能性食品とは、保健機能食品のことであり、健康食品のうち、国が安全性や有効性などを考慮して設定した規格基準などを満たした食品である。保健機能や栄養機能を表示することを認められ、食品の目的や機能等の違いにより、「特定保健用食品」と「栄養機能食品」に分けられる。
本発明のホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する化粧料としては、例えば、黄斑変性症、特に加齢黄斑変性症の改善用の化粧料などが挙げられる。その形態は特に限定されるものではないが、クリーム、乳液、ローション、マイクロエマルジョンエッセンス、ハップ剤、入浴剤などが挙げられ、さらに香料等を混合してもよい。
本発明の血管内皮増殖阻害及び/又は血管新生阻害用組成物には、必要に応じて各種栄養素、各種ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK等)、各種ミネラル類(マグネシウム、亜鉛、鉄、ナトリウム、カリウム、セレン、酸化チタニウム等)、食物繊維、各種糖類(セルロース、デキストリン、キチン等)、各種多価不飽和脂肪酸(アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸等)、各種共役脂肪酸類(共役リノール酸、共役リノレン酸、共役アラキドン酸、共役DHA、共役EPA、共役DPA等)、各種リン脂質(レシチン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルDHA等)、各種糖脂質類(セレブロシド等)、各種カロチノイド類(β-カロチン、リコピン、アスタキサンチン、β−クリプトキサンチン、カプサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン等)、各種フラボノイド類(ケルセチン、ルテオリン、イソフラボン等)、各種アミノ酸類(グリシン、セリン、アラニン、グルタミン、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、トリプトファン、フェニルアラニン、ヒスチジン、プロリン、メチオニン、システイン等)、その他の各種栄養素(還元型コエンザイムQ10、カルニチン、セサミン、α−リポ酸、イノシトール、D−カイロイノシトール、ピニトール、タウリン、グルコサミン、コンドロイチン硫酸、S−アデノシルメチオニン、クルクミン、γ−オリザノール、グルタチオン、γ−アミノ酪酸、シネフリン、ピロロキノリンキノン、カテキン、カプサイシン等)、各種分散剤、各種乳化剤等の安定化剤、各種甘味料(ソルビトール、ショ糖等)、各種呈味成分(クエン酸、リンゴ酸等)、フレーバー、ローヤルゼリー、蜂蜜、蜜ロウ、プロポリス、アガリクス、高麗人参、バイオペリン等を配合することができる。また、ペパーミント、ベルガモット、カモンミール、ラベンダーなどのハーブ類を配合してもよい。また、テアニン、デヒドロエピアンドステロン、メラトニンなどの素材を配合してもよい。
本発明の血管内皮増殖阻害活性及び血管新生阻害活性は、ヒトさい帯静脈内皮細胞と繊維芽細胞を共培養し管腔形成に及ぼす組成物の影響を血管新生定量ソフトウエアで解析することにより測定できる。例えば、市販の血管新生キットを用いて、ヒト血管内皮細胞を培養し、管腔形成に及ぼす組成物の影響を観察することなどにより行われる。他にもマドリゲル法などがあげられる。
本発明を参考例、製剤例、食品製造例、化粧料製造例、及び実施例に基づいて説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
[参考例1]ホスファチジルイノシトールの製造に用いるホスフォリパーゼBの製造方法
30リットル容積のジャーファメンターに3%脱脂綿実粉、0.3%食塩、0.2%リン酸2カリウム、0.2%リン酸1カリウム、0.1%硫酸マグネシウム、消泡剤0.3%から成る滅菌した培地20リットルに、同一培地で前培養(28℃、4日間)したキャンディダ・シリンドラッセATCC14830株の培養液100mlを無菌的に植菌した。1分間20リットルの無菌空気を通気し1分間300回転で攪拌しながら28℃で培養を行った。50時間後のPLBは最大の活性(0.2U/ml)が確認された。
得られた培養液を5000回転、10分間遠心分離を行い、16リットルの上清を得た。この上清を限外濾過法により濃縮を行った。得られた濃縮液3リットルに9リットルの冷アセトンを添加し生じた沈殿物について、5000回転、10分間遠心分離を行って沈殿物を回収し、2M塩化ナトリウムを含む10mMトリス塩酸緩衝液(以下、Tris−HClと略す)(pH7.5)2リットルに溶解した。不溶物を遠心分離により除去し、予めカラムに充填したオクチルセファロース(ベッド容積;300ml)に通しPLBを吸着させた。次いで、2M塩化ナトリウムを含む10mM Tris−HCl(pH7.5)、10mMTris−HCl(pH7.5)でカラムを洗浄した。カラムに吸着されたPLBは2%アデカトールSO120を含む10mM Tris−HCl(pH7.5)で溶出された(疎水クロマトによる精製)。次いで、溶出液(1リットル)を10mM Tris−HCl(pH7.5)で予め平衡化したDEAE−セファロースカラム(ベッド容積;200ml)に通してPLBを吸着させ、前記の緩衝液でカラムを洗浄後、0〜0.3M塩化ナトリウムの濃度勾配をかけて酵素を溶出した。塩化ナトリウムが約0.1M付近でPLB酵素画分A、塩化ナトリウムが約0.25M付近でPLB酵素画分Bを得た(イオン交換クロマトによる分離精製)。
酵素画分A及び酵素画分BのN末端アミノ酸配列をアミノ酸シークエンサーにより特定したところ、酵素画分Aのアミノ酸配列は配列表配列番号1に示す配列であることが、また、酵素画分Bのアミノ酸配列は配列表配列番号2に示す配列であることがわかった。さらに、GENETEX WIN 5.2(ソフトウエア株式会社製)による相同性解析により、酵素画分Bの酵素画分Aに対する相同性を解析したところ、88.5%であることがわかった。
30リットル容積のジャーファメンターに3%脱脂綿実粉、0.3%食塩、0.2%リン酸2カリウム、0.2%リン酸1カリウム、0.1%硫酸マグネシウム、消泡剤0.3%から成る滅菌した培地20リットルに、同一培地で前培養(28℃、4日間)したキャンディダ・シリンドラッセATCC14830株の培養液100mlを無菌的に植菌した。1分間20リットルの無菌空気を通気し1分間300回転で攪拌しながら28℃で培養を行った。50時間後のPLBは最大の活性(0.2U/ml)が確認された。
得られた培養液を5000回転、10分間遠心分離を行い、16リットルの上清を得た。この上清を限外濾過法により濃縮を行った。得られた濃縮液3リットルに9リットルの冷アセトンを添加し生じた沈殿物について、5000回転、10分間遠心分離を行って沈殿物を回収し、2M塩化ナトリウムを含む10mMトリス塩酸緩衝液(以下、Tris−HClと略す)(pH7.5)2リットルに溶解した。不溶物を遠心分離により除去し、予めカラムに充填したオクチルセファロース(ベッド容積;300ml)に通しPLBを吸着させた。次いで、2M塩化ナトリウムを含む10mM Tris−HCl(pH7.5)、10mMTris−HCl(pH7.5)でカラムを洗浄した。カラムに吸着されたPLBは2%アデカトールSO120を含む10mM Tris−HCl(pH7.5)で溶出された(疎水クロマトによる精製)。次いで、溶出液(1リットル)を10mM Tris−HCl(pH7.5)で予め平衡化したDEAE−セファロースカラム(ベッド容積;200ml)に通してPLBを吸着させ、前記の緩衝液でカラムを洗浄後、0〜0.3M塩化ナトリウムの濃度勾配をかけて酵素を溶出した。塩化ナトリウムが約0.1M付近でPLB酵素画分A、塩化ナトリウムが約0.25M付近でPLB酵素画分Bを得た(イオン交換クロマトによる分離精製)。
酵素画分A及び酵素画分BのN末端アミノ酸配列をアミノ酸シークエンサーにより特定したところ、酵素画分Aのアミノ酸配列は配列表配列番号1に示す配列であることが、また、酵素画分Bのアミノ酸配列は配列表配列番号2に示す配列であることがわかった。さらに、GENETEX WIN 5.2(ソフトウエア株式会社製)による相同性解析により、酵素画分Bの酵素画分Aに対する相同性を解析したところ、88.5%であることがわかった。
[参考例2]PLB活性の測定法
PLBの酵素活性は、レシチンから生成されるGPCを酵素法により測定することによって確認できる。すなわち、1M MES−NaOH緩衝液(以下、MES−NaOHと略す)(pH6)0.05ml、3%トリトンX100に溶解した10mM卵黄ホスファチジルコリン0.05ml、1M塩化カルシウム0.025ml、0.2%TODB0.05ml、0.2%4−アミノアンチピリン0.05ml、50U/mlモノグリセリドリパーゼ0.1ml、300U/mlグリセロリン酸オキシダーゼ0.1ml、6U/mlGPCホスフォジエステラーゼ0.025ml、100U/mlパーオキシダーゼ0.05mlからなる反応液0.5mlを37℃で2〜3分間予備加温した後、0.05%BSAを含む10mM Tris−HCl(pH7.5)に溶解し同一緩衝液で希釈したPLB溶液(0.03〜0.15U/ml)25μlを添加して反応を始め、正確に10分後に0.5%SDS1mlを加えて反応を止め、550nmにおける吸光度を測定した。
なお、1分間に1μMolのGPCを遊離する活性を1単位とした。
PLBの酵素活性は、レシチンから生成されるGPCを酵素法により測定することによって確認できる。すなわち、1M MES−NaOH緩衝液(以下、MES−NaOHと略す)(pH6)0.05ml、3%トリトンX100に溶解した10mM卵黄ホスファチジルコリン0.05ml、1M塩化カルシウム0.025ml、0.2%TODB0.05ml、0.2%4−アミノアンチピリン0.05ml、50U/mlモノグリセリドリパーゼ0.1ml、300U/mlグリセロリン酸オキシダーゼ0.1ml、6U/mlGPCホスフォジエステラーゼ0.025ml、100U/mlパーオキシダーゼ0.05mlからなる反応液0.5mlを37℃で2〜3分間予備加温した後、0.05%BSAを含む10mM Tris−HCl(pH7.5)に溶解し同一緩衝液で希釈したPLB溶液(0.03〜0.15U/ml)25μlを添加して反応を始め、正確に10分後に0.5%SDS1mlを加えて反応を止め、550nmにおける吸光度を測定した。
なお、1分間に1μMolのGPCを遊離する活性を1単位とした。
[参考例3]リパーゼ活性の測定法
リパーゼ活性測定は、ジグリセリドを基質にして生成されるモノグリセリドをモノグリセリドリパーゼでグルセリンに変換後、酵素法により測定した。すなわち1M MES−NaOH(pH6.0)0.1ml、3%トリトンX100に溶解した10mM1,2ジグリセリド0.05ml、0.05M塩化カルシウム0.025ml、0.05M塩化マグネシウム0.025ml、0.05MATP0.05ml、10U/mlモノグリセリドリパーゼ0.05ml、5U/mlグリセロキナーゼ0.05ml、400U/mlグリセロリン酸オキシダーゼ0.025ml、100U/mlパーオキシダーゼ0.025ml、0.3%TOOS0.025ml、0.3%4−アミノアンチピリン0.025mlから成る反応液0.5mlに0.05%BSAを含む10mM Tris−HClで希釈した酵素液(0.03〜0.15U/ml)25μlを添加し反応を37℃で10分間行った後0.5%SDSで反応を止め550nmにおける吸光度を測定した。なおリパーゼ活性1単位は1分間に1マイクロモルのグリセリンを遊離する活性とした。
リパーゼ活性測定は、ジグリセリドを基質にして生成されるモノグリセリドをモノグリセリドリパーゼでグルセリンに変換後、酵素法により測定した。すなわち1M MES−NaOH(pH6.0)0.1ml、3%トリトンX100に溶解した10mM1,2ジグリセリド0.05ml、0.05M塩化カルシウム0.025ml、0.05M塩化マグネシウム0.025ml、0.05MATP0.05ml、10U/mlモノグリセリドリパーゼ0.05ml、5U/mlグリセロキナーゼ0.05ml、400U/mlグリセロリン酸オキシダーゼ0.025ml、100U/mlパーオキシダーゼ0.025ml、0.3%TOOS0.025ml、0.3%4−アミノアンチピリン0.025mlから成る反応液0.5mlに0.05%BSAを含む10mM Tris−HClで希釈した酵素液(0.03〜0.15U/ml)25μlを添加し反応を37℃で10分間行った後0.5%SDSで反応を止め550nmにおける吸光度を測定した。なおリパーゼ活性1単位は1分間に1マイクロモルのグリセリンを遊離する活性とした。
[参考例4]PLB画分Aのゲル濾過クロマトによる精製
参考例1で得たPLB活性酵素画分Aを遠心型の限外濾過装置にかけ濃縮を行った。濃縮した液を0.5M塩化ナトリウムを含む10mM Tris−HCl(pH7.5)で予め平衡化したゲル濾過クロマト(スーパーデックス75)にかけ1分間あたり0.5mlの流速で分離を行い活性画分を得た。
各分画において、参考例2及び3の方法によりPLB活性及びリパーゼ活性をそれぞれ求め、さらに280nmにおける吸光度により蛋白濃度を測定した。各分画におけるPLB活性、リパーゼ活性、及び蛋白濃度の結果を図1に示した。
その結果、280nmで測定した蛋白濃度とリパーゼ活性及びPLB活性が一致した溶出パターンが得られ、リパーゼ活性とPLB活性を有する蛋白は同一酵素蛋白であることがわかった。
参考例1で得たPLB活性酵素画分Aを遠心型の限外濾過装置にかけ濃縮を行った。濃縮した液を0.5M塩化ナトリウムを含む10mM Tris−HCl(pH7.5)で予め平衡化したゲル濾過クロマト(スーパーデックス75)にかけ1分間あたり0.5mlの流速で分離を行い活性画分を得た。
各分画において、参考例2及び3の方法によりPLB活性及びリパーゼ活性をそれぞれ求め、さらに280nmにおける吸光度により蛋白濃度を測定した。各分画におけるPLB活性、リパーゼ活性、及び蛋白濃度の結果を図1に示した。
その結果、280nmで測定した蛋白濃度とリパーゼ活性及びPLB活性が一致した溶出パターンが得られ、リパーゼ活性とPLB活性を有する蛋白は同一酵素蛋白であることがわかった。
[参考例5]PLBの諸性質
5−1(反応の至適pH)
参考例2に示した反応液組成のうち、緩衝液として酢酸緩衝液(以下、Acetateと略す)、ホスファチジルイノシトールPES−NaOH緩衝液(以下、ホスファチジルイノシトールPES−NaOHと略す)、又はMES−NaOHを用いて各pHにおける酵素画分Aの酵素活性を測定し、MES−NaOHpH6.0を使用したときの活性に対する各緩衝液での相対活性を求めた。その結果を図2に示した。
図2に示したように、MES−NaOHについてはpH6付近で最大の酵素活性を示し、またホスファチジルイノシトールPES−NaOH及びAcetateについてもpH6付近で最大の酵素活性を示すことが予想された。
5−1(反応の至適pH)
参考例2に示した反応液組成のうち、緩衝液として酢酸緩衝液(以下、Acetateと略す)、ホスファチジルイノシトールPES−NaOH緩衝液(以下、ホスファチジルイノシトールPES−NaOHと略す)、又はMES−NaOHを用いて各pHにおける酵素画分Aの酵素活性を測定し、MES−NaOHpH6.0を使用したときの活性に対する各緩衝液での相対活性を求めた。その結果を図2に示した。
図2に示したように、MES−NaOHについてはpH6付近で最大の酵素活性を示し、またホスファチジルイノシトールPES−NaOH及びAcetateについてもpH6付近で最大の酵素活性を示すことが予想された。
5−2(pH安定性)
Acetate、MES−NaOH、Tris−HCl、又はBicine−NaOH緩衝液(以下、Bicine−NaOHと略す)の10mMの各種緩衝液に、5U/mlになるように酵素画分Aを溶解して37℃に90分間静置した後、参考例2の方法に基づきPLB活性を測定し、Acetate pH5における活性に対する各種pHでの相対残存活性を求めた。その結果を図3に示した。
図3に示したように、pH5からpH8の広い範囲で安定であることがわかった。
Acetate、MES−NaOH、Tris−HCl、又はBicine−NaOH緩衝液(以下、Bicine−NaOHと略す)の10mMの各種緩衝液に、5U/mlになるように酵素画分Aを溶解して37℃に90分間静置した後、参考例2の方法に基づきPLB活性を測定し、Acetate pH5における活性に対する各種pHでの相対残存活性を求めた。その結果を図3に示した。
図3に示したように、pH5からpH8の広い範囲で安定であることがわかった。
5−3(熱安定性)
5U/mlになるように10mMのMES−NaOH(pH6.0)に酵素画分Aを溶解し、参考例2の方法により0〜70℃の温度範囲で10分間加温した後PLB活性を測定した。その結果を図4に示した。冷蔵保存した酵素画分AのPLB活性を100%とした時の相対残存活性は、55℃までの処理で90%以上であり、熱に対して安定な酵素であることがわかった。
5U/mlになるように10mMのMES−NaOH(pH6.0)に酵素画分Aを溶解し、参考例2の方法により0〜70℃の温度範囲で10分間加温した後PLB活性を測定した。その結果を図4に示した。冷蔵保存した酵素画分AのPLB活性を100%とした時の相対残存活性は、55℃までの処理で90%以上であり、熱に対して安定な酵素であることがわかった。
5−4(基質特異性)
参考例2に記載のPLB活性測定法により、参考例1のイオン交換クロマトで得られた2種類のリン脂質加工剤としてのPLB(酵素画分A及び酵素画分B)の、PC対する各種リン脂質についての相対活性を測定した。その結果を表1に示した。その結果、酵素画分A及び酵素画分BともにPCに対するホスファチジルイノシトールの相対活性は他のリン脂質に比べて低く、該リン脂質加工剤は、リン脂質の中でもホスファチジルイノシトールに対する活性が小さいという基質特異性があることがわかった。表1の結果より、いずれの画分もPLB活性を有することからリン脂質加工剤としては両画分の混合物を用いることもできることがわかる。
参考例2に記載のPLB活性測定法により、参考例1のイオン交換クロマトで得られた2種類のリン脂質加工剤としてのPLB(酵素画分A及び酵素画分B)の、PC対する各種リン脂質についての相対活性を測定した。その結果を表1に示した。その結果、酵素画分A及び酵素画分BともにPCに対するホスファチジルイノシトールの相対活性は他のリン脂質に比べて低く、該リン脂質加工剤は、リン脂質の中でもホスファチジルイノシトールに対する活性が小さいという基質特異性があることがわかった。表1の結果より、いずれの画分もPLB活性を有することからリン脂質加工剤としては両画分の混合物を用いることもできることがわかる。
5−5(分子量)
参考例1に記載した方法によって得られた精製酵素画分AはSDSポリアクリルアミド電気泳動法で単一のバンドが得られた。分子量既知の蛋白をマーカーにして得られた分子量は53キロダルトンであった。
参考例1に記載した方法によって得られた精製酵素画分AはSDSポリアクリルアミド電気泳動法で単一のバンドが得られた。分子量既知の蛋白をマーカーにして得られた分子量は53キロダルトンであった。
5−6(等電点)
参考例1に記載した方法によって得られた精製酵素画分Aについて、キャリアアンフォライトを用いたpH勾配を作製して行う等電点電気泳動法により酵素画分Aについての等電点を測定し、さらに280nmにおける吸光度により蛋白濃度を測定した。酵素画分Aの等電点及び酵素濃度との関係を図5に示した。その結果、280nmの吸光度で測定した蛋白が示すpHとリパーゼ活性及びPLB活性は完全に一致し、そのpH値(等電点)は4.21であった。図5からわかるようにPLB、リパーゼと蛋白は全く同じピークを示したことからPLBとリパーゼは同じ酵素蛋白であることが明らかとなった。
参考例1に記載した方法によって得られた精製酵素画分Aについて、キャリアアンフォライトを用いたpH勾配を作製して行う等電点電気泳動法により酵素画分Aについての等電点を測定し、さらに280nmにおける吸光度により蛋白濃度を測定した。酵素画分Aの等電点及び酵素濃度との関係を図5に示した。その結果、280nmの吸光度で測定した蛋白が示すpHとリパーゼ活性及びPLB活性は完全に一致し、そのpH値(等電点)は4.21であった。図5からわかるようにPLB、リパーゼと蛋白は全く同じピークを示したことからPLBとリパーゼは同じ酵素蛋白であることが明らかとなった。
[参考例6]ホスファチジルイノシトールの定量法
1M Tris−HCl(pH8)0.1ml、10mM NAD 0.05ml、10mM塩化マグネシウム0.05ml、2%トリトンX100 0.05ml、50U/ml、ホスファチジルイノシトール特異的ホスフォリパーゼC 0.05ml、50U/mlアルカリホスファターゼ0.05ml、50U/mlイノシトールデヒドロゲナーゼ0.05ml、5%ニトロテトラゾリウムブルー0.05ml、精製水0.15mlから構成される発色液0.5mlに、ホスファチジルイノシトールを含有する被検体(1〜3mg/ml)を2%トリトンX100に溶解してできたホスファチジルイノシトール溶液0.02mlを添加し、37℃で10分間反応を行い0.5%SDS0.5mlで反応を止め、550nmにおける吸光度を測定した。既知濃度のイノシトール水溶液をキャリブレーターに用いてホスファチジルイノシトール量を定量した。
1M Tris−HCl(pH8)0.1ml、10mM NAD 0.05ml、10mM塩化マグネシウム0.05ml、2%トリトンX100 0.05ml、50U/ml、ホスファチジルイノシトール特異的ホスフォリパーゼC 0.05ml、50U/mlアルカリホスファターゼ0.05ml、50U/mlイノシトールデヒドロゲナーゼ0.05ml、5%ニトロテトラゾリウムブルー0.05ml、精製水0.15mlから構成される発色液0.5mlに、ホスファチジルイノシトールを含有する被検体(1〜3mg/ml)を2%トリトンX100に溶解してできたホスファチジルイノシトール溶液0.02mlを添加し、37℃で10分間反応を行い0.5%SDS0.5mlで反応を止め、550nmにおける吸光度を測定した。既知濃度のイノシトール水溶液をキャリブレーターに用いてホスファチジルイノシトール量を定量した。
[参考例7]ホスファチジルイノシトールの製造方法
40グラムの大豆由来リン脂質を400mlの10mM Acetate(pH5.8)に攪拌し懸濁させた後1400単位のPLB(参考例1で得た酵素画分A)を添加して45℃で反応を開始した。20時間後に反応を止めエタノール200ml、ヘキサン400mlを加え1時間攪拌した。ヘキサン層と水層とを遠心分離により分離して有機溶媒層を回収した。回収した有機溶媒を減圧下で濃縮を行った後、濃縮物にアセトン150mlを加え生じた沈殿物を集め乾燥させ8.2グラムのホスファチジルイノシトールを高濃度に含有する粉末を得た。得られたリン脂質の純度を基準油脂分析試験法(日本油化学会制定、1996年)により測定した結果、全リン脂質中86.8モル%であった。
40グラムの大豆由来リン脂質を400mlの10mM Acetate(pH5.8)に攪拌し懸濁させた後1400単位のPLB(参考例1で得た酵素画分A)を添加して45℃で反応を開始した。20時間後に反応を止めエタノール200ml、ヘキサン400mlを加え1時間攪拌した。ヘキサン層と水層とを遠心分離により分離して有機溶媒層を回収した。回収した有機溶媒を減圧下で濃縮を行った後、濃縮物にアセトン150mlを加え生じた沈殿物を集め乾燥させ8.2グラムのホスファチジルイノシトールを高濃度に含有する粉末を得た。得られたリン脂質の純度を基準油脂分析試験法(日本油化学会制定、1996年)により測定した結果、全リン脂質中86.8モル%であった。
[食品製造例1]ホスファチジルイノシトール(PI)含有の機能性マーガリン
参考例7で得たPIを、マーガリンの5重量%になるように植物油に添加した後、乳化剤などとともに均一になるよう攪拌し、通常の方法によりマーガリンを作製した。
参考例7で得たPIを、マーガリンの5重量%になるように植物油に添加した後、乳化剤などとともに均一になるよう攪拌し、通常の方法によりマーガリンを作製した。
[食品製造例2]ホスファチジルイノシトール(PI)含有の機能性パン
参考例7で得たPIの1g、砂糖15g、食塩2g、脂肪粉乳5gを湯70gに溶かし、鶏卵2個を添加してよく混ぜた。これを小麦粉130gとドライイースト2gを混合した混合物に加え、手でこねた後、バター約30gを加えて更にこね、30個のロールパン生地を作った。ついで、発酵させた後、表面に溶き卵を塗り、オーブンにて180℃で15分間焼き、ロールパンを得た。
参考例7で得たPIの1g、砂糖15g、食塩2g、脂肪粉乳5gを湯70gに溶かし、鶏卵2個を添加してよく混ぜた。これを小麦粉130gとドライイースト2gを混合した混合物に加え、手でこねた後、バター約30gを加えて更にこね、30個のロールパン生地を作った。ついで、発酵させた後、表面に溶き卵を塗り、オーブンにて180℃で15分間焼き、ロールパンを得た。
[食品製造例3]ホスファチジルイノシトール(PI)含有の機能性うどん
小麦粉400gに対して、水200g、参考例7で得たPIを2g及び食塩20gを添加して、よくこねて寝かした。この後、生地を延伸し、幅約6mmで切断してうどんを製造した。
小麦粉400gに対して、水200g、参考例7で得たPIを2g及び食塩20gを添加して、よくこねて寝かした。この後、生地を延伸し、幅約6mmで切断してうどんを製造した。
[食品製造例4]ホスファチジルイノシトール(PI)含有の機能性飲料
参考例7で得たPI 30gを5倍量のオリーブオイルに懸濁して50℃に加温し、油相を得た。グリセリン90gに乳化剤としてグリセロール脂肪酸エステル10gを添加し、70℃に加温して溶解させた。この溶液に先の油相を撹拌しながら徐々に添加した。混合液を、乳化機を用いて高圧乳化処理して乳化組成物を得た。この乳化組成物20gに水180mlを添加、撹拌してPI含有飲料を得た。
参考例7で得たPI 30gを5倍量のオリーブオイルに懸濁して50℃に加温し、油相を得た。グリセリン90gに乳化剤としてグリセロール脂肪酸エステル10gを添加し、70℃に加温して溶解させた。この溶液に先の油相を撹拌しながら徐々に添加した。混合液を、乳化機を用いて高圧乳化処理して乳化組成物を得た。この乳化組成物20gに水180mlを添加、撹拌してPI含有飲料を得た。
[製剤例1]ホスファチジルイノシトール(PI)含有錠剤
参考例7で得たPI 120g
結晶セルロース 330g
カルメロース−カルシウム 15g
ヒドロキシプロピルセルロース 10g
精製水 60ml
上記組成物を通常の方法にて配合、乾燥した後、10gのステアリン酸マグネシウムを添加し、打錠を行い、1錠あたりPIを20mg含有する100mgの錠剤を得た。
参考例7で得たPI 120g
結晶セルロース 330g
カルメロース−カルシウム 15g
ヒドロキシプロピルセルロース 10g
精製水 60ml
上記組成物を通常の方法にて配合、乾燥した後、10gのステアリン酸マグネシウムを添加し、打錠を行い、1錠あたりPIを20mg含有する100mgの錠剤を得た。
[製剤例2]ホスファチジルイノシトール(PI)含有ソフトカプセル
参考例7で得たPIを、5倍量のオリーブオイルに懸濁し、均質になる様に十分に混合した後、カプセル充填機にてカプセル充填し、内容物約300mgのカプセルを得た。
参考例7で得たPIを、5倍量のオリーブオイルに懸濁し、均質になる様に十分に混合した後、カプセル充填機にてカプセル充填し、内容物約300mgのカプセルを得た。
[化粧品製造例]ホスファチジルイノシトール(PI)含有クリーム剤(機能性化粧品)
参考例7で得たPIを、白色ワセリンに10重量%になるように添加し、芳香剤などとともに、均一になるように攪拌し、通常の方法によりクリーム剤を作製した。
参考例7で得たPIを、白色ワセリンに10重量%になるように添加し、芳香剤などとともに、均一になるように攪拌し、通常の方法によりクリーム剤を作製した。
[実施例1]血管内皮細胞増殖阻害及び/又は血管新生阻害活性
血管新生阻害実験は、血管新生キット(Angiogenesis Kit、クラボウ社製)を用いて次のようにして行った。
ヒト血管内皮細胞と繊維芽細胞を最適濃度で共培養し、管腔形成初期段階の増殖段階にあるものをサンプルとしてPI濃度で3μg/ml、10μg/ml、30μg/mlとなるように培地の入ったウエルに添加し、11日間培養(4、7、9日後にサンプルを含む培地を交換)後、管腔形成をMouse anti-human CD31とGoat anti-mouse IgG AlkP Conjugate を用いて染色後、顕微鏡観察した。各ウエルの中央付近5点の顕微鏡写真を撮影後、血管新生定量ソフトウエア(Angiogenesis Image Analyzer、クラボウ社製)を用いて、これらの結果を定量的に評価した。コントロールとして、PI無添加のものを用いた。評価はTube area(血管面積の総和)、Length(管腔ネットワークの総長)、Path(管腔ネットワークを形成する枝(パス)数、Joint(管腔ネットワークを形成する分岐点(ジョイント数)の4項目について行い、コントロールの値に対する相対値(%)を求めた。それぞれの結果を図6、7、8、9に示す。これらの図から明らかなようにPIは濃度依存的に血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を阻害した。
血管新生阻害実験は、血管新生キット(Angiogenesis Kit、クラボウ社製)を用いて次のようにして行った。
ヒト血管内皮細胞と繊維芽細胞を最適濃度で共培養し、管腔形成初期段階の増殖段階にあるものをサンプルとしてPI濃度で3μg/ml、10μg/ml、30μg/mlとなるように培地の入ったウエルに添加し、11日間培養(4、7、9日後にサンプルを含む培地を交換)後、管腔形成をMouse anti-human CD31とGoat anti-mouse IgG AlkP Conjugate を用いて染色後、顕微鏡観察した。各ウエルの中央付近5点の顕微鏡写真を撮影後、血管新生定量ソフトウエア(Angiogenesis Image Analyzer、クラボウ社製)を用いて、これらの結果を定量的に評価した。コントロールとして、PI無添加のものを用いた。評価はTube area(血管面積の総和)、Length(管腔ネットワークの総長)、Path(管腔ネットワークを形成する枝(パス)数、Joint(管腔ネットワークを形成する分岐点(ジョイント数)の4項目について行い、コントロールの値に対する相対値(%)を求めた。それぞれの結果を図6、7、8、9に示す。これらの図から明らかなようにPIは濃度依存的に血管内皮細胞増殖及び/又は血管新生を阻害した。
[実施例2]
加齢黄斑変性症患者に本発明の組成物を投与し、投与前後の黄斑を調べることで本効果を調べることができる。
加齢黄斑変性症患者に本発明の組成物を投与し、投与前後の黄斑を調べることで本効果を調べることができる。
本発明によれば、ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤が提供される。この血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤は、加齢黄斑変性症、腫瘍増殖、関節リウマチ、糖尿病性網膜症などの血管新生を伴う種々の疾病の治療に有用である。
Claims (8)
- ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤。
- ホスファチジルイノシトールが全リン脂質中の純度が50モル%以上であるホスファチジルイノシトールである請求項1記載の血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤。
- ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する機能性食品。
- ホスファチジルイノシトールが全リン脂質中の純度が50モル%以上であるホスファチジルイノシトールである請求項3記載の機能性食品。
- 血管内皮細胞増殖阻害作用及び/又は血管新生阻害作用を有する組成物を調製するためのホスファチジルイノシトールの使用。
- ホスファチジルイノシトールを投与することを特徴とする血管内皮細胞増殖阻害及び/又は血管新生阻害方法。
- ホスファチジルイノシトールを有効成分として含有する、黄斑変性症の改善効果を有する化粧料。
- ホスファチジルイノシトールが、大豆由来リン脂質にホスフォリパーゼB活性を有するカンディダ属由来の酵素を作用させることによって得られたものである請求項1又は2に記載の血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006332733A JP2008143835A (ja) | 2006-12-11 | 2006-12-11 | 血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006332733A JP2008143835A (ja) | 2006-12-11 | 2006-12-11 | 血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008143835A true JP2008143835A (ja) | 2008-06-26 |
Family
ID=39604408
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2006332733A Withdrawn JP2008143835A (ja) | 2006-12-11 | 2006-12-11 | 血管内皮細胞増殖阻害剤及び/又は血管新生阻害剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2008143835A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US11414693B2 (en) * | 2017-05-25 | 2022-08-16 | National University Corporation Shiga University Of Medical Science | Phosphatidylinositol quantification method and quantification kit |
-
2006
- 2006-12-11 JP JP2006332733A patent/JP2008143835A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US11414693B2 (en) * | 2017-05-25 | 2022-08-16 | National University Corporation Shiga University Of Medical Science | Phosphatidylinositol quantification method and quantification kit |
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