JP2008133514A - 加工後の伸びフランジ特性および伸び特性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.06〜0.15%、Si:1.2%以下、Mn:0.5〜1.6%、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.05%以下、Ti:0.03〜0.20%、V:0.03〜0.15%、Zr:0.0005〜0.005%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、フェライトの体積率が50〜95%、前記フェライトの粒界に析出するセメンタイトの体積率が4%以下、残部が実質的にベイナイトであり、前記フェライト中にはTiおよび/またはVを含む析出物が析出し、該析出物の平均直径が20nm以下であるミクロ組織を有することを特徴とする加工後の伸びフランジ特性および伸び特性に優れた引張強度が780MPa以上の高強度熱延鋼板。
【選択図】なし
Description
特許文献1、2、5:近年価格が高騰しているMoが使用されているため、著しいコスト増を招く。
特許文献3、4、6、7、8:近年のプレス技術の進歩により、伸びフランジ変形部位では、ドロー(絞りおよび張り出し)→トリム(穴抜き)→リストライク(穴広げ)のような加工工程の採用が増加している。そのため、このような加工工程を経て成形させる鋼板には、ドロー・トリム後、すなわち加工後の伸びフランジ特性や伸び特性が重要であるが、特許文献3、4、6、7、8の鋼板では、780MPa以上のTSを得ようとすると、必ずしも十分な加工後の伸びフランジ特性や伸び特性が得られない。
TS≧780MPa
伸長率10%で圧延後の伸びフランジ特性(λ10)≧60%
伸長率10%で圧延後の伸び特性(El10)≧17%
Ms=(Ti20/Titotal+V20/Vtotal)/2
M0=(Tisol/Ti+Vsol/V)/2
上記式で、Ti20、V20は、直径が20nm以下の析出物中の各元素の含有量(鋼に対する質量%)を、Titotal、Vtotalは、総析出物中の各元素の含有量(鋼に対する質量%)を、Tisol、Vsolは、鋼中の各元素の固溶量(質量%)を、そしてTi、Vは、鋼中の各元素の含有量(質量%)を表す。
C:0.06〜0.15%
Cは、TiやVを含む炭化物としてフェライト中に析出するとともに、ベイナイトを生成させて高強度化に寄与する元素である。TSを780MPa以上にするにはC量を0.06%以上とする必要がある。しかしながら、C量が0.15%を超えると溶接性が劣化するため、その上限を0.15%とする。より好ましいC量の範囲は0.07〜0.12%である。
Siは、フェライト変態を促進させる働きや固溶強化する働きを有するので、Si量は0.1%以上とすることが好ましい。ただし、その量が1.2%を超えると鋼板の表面性状が著しく劣化し、耐食性も低下するため、Si量の上限を1.2%とする。より好ましいSi量の範囲は0.2〜1.0%である。
Mnは、固溶強化による高強度化に有効な元素である。しかしながら、その量が0.5%に満たないと780MPa以上のTSが得られない。一方、その量が1.6%を超えると溶接性を著しく低下させる。そのため、Mn量は0.5〜1.6%、好ましくは0.8〜1.2%とする必要がある。
Pは、旧γ粒界に偏析して低温靭性を劣化させるとともに、加工性を低下させるので、P量は0.04%以下とする必要があるが、極力低減することが好ましい。
Sは、旧γ粒界に偏析したり、MnSとして多量に析出すると、低温靭性を低下させたり、また、加工の有無に関わらず伸びフランジ性を著しく低下させる。そのため、S量は0.005%以下とする必要があるが、極力低減することが好ましい。
Alは、鋼の脱酸剤として添加され、鋼の清浄度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るためには0.001%以上含有させることが好ましい。しかし、その量が0.05%を超えると介在物が多量に発生し、鋼板の表面疵の原因になるため、Al量は0.05%以下とする。より好ましいAl量の範囲は0.01〜0.04%である。
Tiは、炭化物として析出してフェライトを強化する非常に重要な元素である。その量が、0.03%未満では780MPa以上のTSを得ることが困難であり、0.20%を超えると高強度化の効果は飽和し、コストアップとなる。そのため、Ti量は0.03〜0.20%、好ましくは0.08〜0.18%とする。
Vは、Ti同様、炭化物として析出して、あるいは固溶状態でフェライトを強化する非常に重要な元素である。その量が、0.03%未満では780MPa以上のTSを得ることが困難であり、0.15%を超えると高強度化の効果は飽和し、コストアップとなる。そのため、V量は0.03〜0.15%、好ましくは0.05〜0.10%とする。
Zrは、本発明において最も重要な元素であり、フェライト中にTiおよび/またはVを含む析出物を微細に分散させて高強度化を促進するとともに、加工後の伸びフランジ特性および伸び特性を著しく向上させる。この理由は、Zrを添加すると、フェライト粒界において、セメンタイトの析出が抑制され、Zr炭化物が析出するためと考えられる。このような効果を得るには、Zr量を0.0005%以上にする必要がある。また、その量が0.005%超えるとZr炭化物が粗大化するために、加工時にZr炭化物の界面にクラックが生成し、加工後の伸びフランジ特性、伸び特性が不十分となる、すなわちλ10が60%未満、El10が17%未満となるので、Zr量は0.005%以下とする。より好ましいZr量の範囲は0.0007〜0.003%である。
NbおよびCrは、Vと同様、析出物を形成して、あるいは固溶状態でフェライトを強化する働きを有する。Nb量が0.001%未満、あるいはCr量が0.01%未満では高強度化にほとんど寄与せず、Nb量が0.10%超え、あるいはCr量が0.5%超えると加工性が劣化する。したがって、Nb量は0.001〜0.10%、好ましくは0.01〜0.7%と、また、Cr量は0.01〜0.5%、好ましくは0.02〜0.4%とする。
2-1)フェライトの体積率:50〜95%
フェライトの体積率が50%未満の場合は、硬質第二相が過多となり、伸びフランジ特性が低下して、λ10≧60%を満足することができなくなる。一方、フェライトの体積率が95%を超えた場合は第二相が少な過ぎて加工後の伸び特性が向上せず、TS≧780MPaかつEl10≧17%を満足できなくなる。したがって、フェライトの体積率は50〜95%、好ましいくは65〜88%とする。
フェライト粒界に析出するセメンタイトは、打ち抜き加工時にクラック発生の起点となり、加工後の伸びフランジ特性を低下させる。λ10を60%以上にするには、このセメンタイトの体積率を4%以下、好ましくは3%以下にする必要がある。なお、フェライト粒界に析出するセメンとは、フェライト粒の界面または三重点に存在する粒状やフィルム状のセメンタイトのことであり、次に述べるベイナイト中に生成するセメンタイトではない。
本発明の鋼板においては、Tiおよび/またはVを含む析出物が、主に炭化物としてフェライト中に析出している。これは、フェライトにおけるCの固溶限がオーステナイトの固溶限より小さく、過飽和のCがフェライト中に炭化物として析出しやすいためと考えられる。そして、こうした析出物により軟質のフェライトが硬質化(高強度化)し、硬質のベイナイトとの硬度差が低減されるため、加工後の伸びフランジ性が向上すると考えられる。しかし、Tiおよび/またはVを含む析出物の平均直径が20nm超えると、転位の移動を抑制する効果が小さく、フェライトを十分に硬質化できないため、優れた加工後の伸びフランジ性が得られなくなる。したがって、Tiおよび/またはVを含む析出物の平均直径は20nm以下とする必要がある。
Titotal、Vtotal:従来の抽出残査法である10%A-A(アセチルアセトン電解溶液)を用いた抽出残渣法により求めた。すなわちTitotalは鋼中の析出Ti量(質量%)、Vtotalは鋼中の析出V量(質量%)として求まる値である。
Ti20、V20:上記TEM像中に観察された析出物のうち直径が20nm以下の析出物を画像解析によって抽出し、その直径からこれらの析出物の体積率を求めて合計し、鋼中における20nm以下の析出物の体積率を計算した。また、EDX分析したところ、20nm以下の析出物はその多くがTi-Vの複合炭化物であり、TiとVの組成比は3:1であった。この結果から、20nm以下の析出物は全てTi-Vの複合炭化物(Ti3V1C4)であるとして、下記i)〜iii)の仮定のもとにTi-Vの複合炭化物の格子定数を4.265Åと算出して密度(5.19g/cm3)を求め、上記で求めた体積率およびFeの密度(7.86g/cm3)を用いて鋼中の20nm以下の析出物中に含有されるTi量、V量であるTi20、V20を求めた。
i)Ti-V-CはNaCl型の結晶構造
ii)格子定数は、VC(4.130Å)、TiC(4.310Å)を基に、TiとVの比で分配
iii)組成比Ti:V=3:1
Tisol、Vsol:鋼中の固溶Ti量であるTisolは、鋼中のTi含有量と上記のようにして求めたTitotalとの差(=Ti-Titotal)として求めた。Vsolも同様にして求めた。
3-1)鋼スラブの加熱温度:1150〜1300℃
TiあるいはVなどの炭化物形成元素は、鋼スラブ中ではほとんどが炭化物として存在している。熱間圧延後にフェライト中に目標どおりに析出させるためには熱間圧延前に炭化物として析出している析出物を一旦溶解させる必要がある。そのためには1150℃以上で鋼スラブを加熱する必要があるが、1300℃を超えて加熱すると、熱間圧延後の結晶粒径が粗大になりすぎて、加工後の伸びフランジ特性、伸び特性ともに劣化するので、鋼スラブの加熱温度は1150〜1300℃、好ましくは1170〜1260℃とする。
加熱後の鋼スラブは、熱間圧延の終了温度である仕上圧延温度850〜1100℃で熱間圧延される。仕上圧延温度が850℃未満では、フェライト+オーステナイトの領域で圧延され、展伸したフェライト組織となるため、加工後の伸びフランジ特性や伸び特性が劣化する。仕上圧延温度が1100℃超えでは、圧延で導入された歪が回復し、フェライト変態の核生成サイトが減少するためフェライトの体積率が50%以上にならない。よって、仕上圧延温度は850〜1100℃、好ましくは870〜960℃とする。
熱間圧延後は、仕上圧延温度から650〜800℃の冷却停止温度まで、平均冷却速度30℃/s以上で第一の強制冷却を行う必要がある。冷却停止温度が800℃超えでは、核生成が起こりにくいためフェライトの体積率が50%以上にならず、Tiおよび/またはVを含む析出物の所定の析出状態が得られない。冷却停止温度が650℃未満では、C、Tiの拡散速度が低下するため、フェライトの体積率が50%以上にならず、Tiおよび/またはVを含む析出物の所定の析出状態が得られない。したがって、冷却停止温度は650〜800℃とする。特に、680〜770℃とすると、Msが0.5以上、M0が0.4以下となり、確実に800MPa以上のTSが得られる。また、仕上圧延温度から冷却停止温度までの平均冷却速度が30℃/s未満では、パーライトが生成するため、加工後の伸びフランジ特性や伸び特性が劣化する。したがって、平均冷却速度は30℃/s以上、好ましくは70℃/s以上とする。なお、冷却速度の上限は、特に限定するものではないが、上記の冷却停止温度範囲内に正確に停止させるためには、300℃/s程度とすることが好ましい。
第一の強制冷却後は、3〜15sの間、強制冷却を停止して空冷する。この空冷している時間が3s未満ではフェライトの体積率が50%以上にならず、15sを超えるとパーライトが生成し、加工後の伸びフランジ特性や伸び特性が劣化する。なお、空冷時の冷却速度は概ね15℃/s以下である。
空冷後は、巻取温度300〜600℃まで平均冷却速度20℃/s以上で第二の強制冷却を行う。このとき、平均冷却速度が20℃/s未満では冷却中にパーライトが析出するため、平均冷却速度は20℃/s以上、好ましくは80℃/s以上とする。なお、冷却速度の上限は、特に限定するものではないが、上記の巻取温度範囲内に正確に停止させるためには、300℃/s程度とすることが好ましい。また、巻取温度が300℃未満では、焼きが入るために残部がマルテンサイトとなり、加工後の伸びフランジ特性や伸び特性が劣化する。巻取温度が600℃超えでは、パーライトが生成し、加工後の伸びフランジ特性や伸び特性が劣化する。したがって、巻取温度は300〜600℃、好ましくは350〜550℃とする。
TS:圧延方向を引張方向としてJIS 5号試験片を用いてJIS Z 2241に準拠した方法で引張試験を行い、TSを求めた。
λ10:伸長率10%で圧延後、鉄連規格JFST 1001に準じて穴拡げ試験を行い、λ10を求めた。
El10:伸長率10%で圧延後、圧延方向を引張方向としてJIS 5号試験片を用いてJIS Z 2241に準拠した方法で引張試験を行い、El10を求めた。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.06〜0.15%、Si:1.2%以下、Mn:0.5〜1.6%、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.05%以下、Ti:0.03〜0.20%、V:0.03〜0.15%、Zr:0.0005〜0.005%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、フェライトの体積率が50〜95%、前記フェライトの粒界に析出するセメンタイトの体積率が4%以下、残部が実質的にベイナイトであり、前記フェライト中にはTiおよび/またはVを含む析出物が析出し、該析出物の平均直径が20nm以下であるミクロ組織を有することを特徴とする加工後の伸びフランジ特性および伸び特性に優れた引張強度が780MPa以上の高強度熱延鋼板。
- さらに、質量%で、Nb:0.001〜0.10%およびCr:0.01〜0.5%のうち少なくとも1種を含有する成分組成を有することを特徴とする請求項1に記載の加工後の伸びフランジ特性および伸び特性に優れた引張強度が780MPa以上の高強度熱延鋼板。
- 下記のMsが0.5以上で、かつ下記のM0が0.4以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の加工後の伸びフランジ特性および伸び特性に優れた引張強度が780MPa以上の高強度熱延鋼板;
Ms=(Ti20/Titotal+V20/Vtotal)/2
M0=(Tisol/Ti+Vsol/V)/2
上記式で、
Ti20、V20は、直径が20nm以下の析出物中の各元素の含有量(鋼に対する質量%)を、
Titotal、Vtotalは、総析出物中の各元素の含有量(鋼に対する質量%)を、
Tisol、Vsolは、鋼中の各元素の固溶量(質量%)を、そして
Ti、Vは、鋼中の各元素の含有量(質量%)を、
表す。 - 請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼スラブを、1150〜1300℃に加熱後、850〜1100℃の仕上圧延温度で熱間圧延を行い、650〜800℃の冷却停止温度まで平均冷却速度30℃/s以上で第一の強制冷却を行い、3〜15s間空冷後、平均冷却速度20℃/s以上で第二の強制冷却を行って、300〜600℃の巻取温度で巻取ることを特徴とする加工後の伸びフランジ特性および伸び特性に優れた引張強度が780MPa以上の高強度熱延鋼板の製造方法。
- 第一の強制冷却の冷却停止温度が680〜770℃であることを特徴とする請求項4に記載の加工後の伸びフランジ特性および伸び特性に優れた引張強度が780MPa以上の高強度熱延鋼板の製造方法。
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