JP2008121822A - 免震構造体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上下の面板12,14の間に剛性板20と弾性板22とが交互に積層されており、積層方向に中空部27が形成されている積層弾性体28と、前記中空部内に封入された減衰部材24とを有し、前記減衰部材が、粒状又は粉状の低降伏点材料を加圧して成形したものであることを特徴とする免震構造体10。
【選択図】図1
Description
このような構造の免震構造体40は、積層されたゴム等の弾性体54のせん断変形時には内部の鉛プラグ46の塑性変形によりエネルギーを吸収することができる。従って、この免震構造体40を建造物と基礎との間に配置しておくことで、地震の際、積層されたゴム等により建造物の固有周期を地震の周期からずらすとともに、減衰部材46により縦揺れや横揺れのエネルギーが吸収され、建造物の破壊を防ぐ効果が得られる。
しかし、錫などの低降伏点材料により連続体として作製した減衰部材を用いた場合、図6に示すように、繰返し変形に対して減衰部材56に多数の亀裂58が発生し易く、繰り返し耐久性が低いという問題がある。また、図7は、鉛、錫、アルミニウムのそれぞれについて荷重と変位量との関係を概略的に示している。錫やアルミニウムあるいはそれらの合金は、鉛よりは硬く降伏点が高いため、過大な減衰能力を付与する傾向がある。
しかし、ガラスビーズ等の硬質粒状物は地震等の際に粒状物同士が摩擦し合うことにより破壊され易く、減衰効果が大きく低下して次の地震発生時に十分なエネルギー吸収を発揮できないおそれがある。
<1> 上下の面板の間に剛性板と弾性板とが交互に積層されており、積層方向に中空部が形成されている積層弾性体と、前記中空部内に封入された減衰部材とを有し、前記減衰部材が、粒状又は粉状の低降伏点材料を加圧して成形したものであることを特徴とする免震構造体。
このような免震構造体であれば、鉛が使用されないにも関わらず、繰り返し変形に対して減衰部材に亀裂が発生しにくく、繰り返し耐久性に優れ、また、減衰部材の降伏点が見かけ上低く、適度な減衰能力を発揮することができる。
上記のような降伏点の低い金属又は合金の粒状体等により加圧成形した減衰部材を備えていれば、繰り返し耐久性に確実に優れるとともに、鉛プラグを備えた免震構造体に近い、より適切な減衰能力を発揮することができる。
上記のような降伏点の低い樹脂の粒状体等により加圧成形した減衰部材を備えていれば、繰り返し耐久性に確実に優れるとともに、鉛プラグを備えた免震構造体に近い、より適切な減衰能力を発揮することができる。
粒状又は粉状の低降伏点材料を加圧して成形した減衰部材を、前記積層弾性体の中空部に封入する工程と、
前記積層弾性体に上下の面板を取り付ける工程とを含むことを特徴とする免震構造体の製造方法。
上記のような低降伏点材料の粒状体等により加圧成形した減衰部材を用いれば、鉛を使用しなくても、繰り返し耐久性に優れるとともに、鉛プラグを備えたものに近い、適切な減衰能力を発揮する免震構造体を製造することができる。
上記のような降伏点の低い金属又は合金の粒状体等により加圧成形した減衰部材を用いれば、繰り返し耐久性に確実に優れるとともに、鉛プラグを備えたものに近い、より適切な減衰能力を発揮する免震構造体を製造することができる。
上記のような降伏点の低い樹脂の粒状体等により加圧成形した減衰部材を用いても、繰り返し耐久性に確実に優れるとともに、鉛プラグを備えたものに近い、より適切な減衰能力を発揮する免震構造体を製造することができる。
図1は、本発明に係る免震構造体の一例を概略的に示している。この免震構造体10は、上下の面板12,14間に、複数枚の円盤状の金属板20と、同じく複数枚の円盤状のゴム板22とを厚み方向に交互に積層した積層弾性体28が設けられている。そして、積層弾性体28の中央には積層方向に円筒状の貫通孔(中空部)27が形成されており、この中空部27内に粒状又は粉状の低降伏点材料を加圧して円柱状に成形した減衰部材24が封入されている。なお、本発明における「低降伏点材料」とは、具体的には、引張降伏応力(又は0.2%耐力)σyが、10MPa≦σy≦100MPaとなる材料が好ましく、10MPa≦σy≦40MPaとなる材料がより好ましい。
<積層弾性体>
剛性板20と弾性板22とが交互に積層されており、積層方向に中空部27が形成されている積層弾性体28を用意する。
剛性板20の材質としては、後述の弾性板22に用いる材質よりも剛性が高いもの、例えば、金属、セラミックス、プラスチック、FRP、ポリウレタン、木材、紙板、スレート板、化粧板などを用いることができる。弾性板22との接着性、硬度等の点から、金属板、特に鋼板を好適に用いることができ、ニッケル板、銅板、黄銅板またはニッケルメッキ、銅メッキ、黄銅メッキを施した鋼板も好適に使用することができる。
剛性板20の大きさ(直径、厚さ等)については、特に限定されるものではなく、免震構造体10の使用目的(例えば支持する建造物の重量)等に応じて適宜選択すればよい。
弾性板22の大きさ(直径、厚さ等)についても特に限定されるものではなく、免震構造体10の使用目的等に応じて適宜選択すればよい。
なお、本発明に係る積層弾性体28の形状は、円柱状(ドーナツ状)に限定されず、免震効果を発揮することができればどのような形状でもよく、例えば角柱状の積層弾性体とするともできる。
減衰部材24については、粒状又は粉状の低降伏点材料を加圧して成形したものを用意する。
減衰部材24を構成する低降伏点材料としては、前記したような降伏点の低い材料から選択することができ、特に、錫、アルミニウム、又はこれらの金属のいずれかを主成分とする合金が好ましい。錫又はアルミニウムを主成分とする合金としては、例えば、錫−亜鉛(Sn−Zn)系合金、錫−銅(Sn−Cu)系合金、錫−銀(Sn−Ag)系合金、アルミニウム−亜鉛(Al−Zn)系合金等が挙げられる。なお、錫又はアルミニウムを主成分とする合金とは、錫又はアルミニウムの割合(質量比)が他の金属の割合よりも高い合金を意味するが、降伏点がより低い材料とするため、錫又はアルミニウムの割合は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
また、硬質プラスチックス(以下「高硬度プラスチックス」と称す場合がある。)Aよりなる海相と、この海相内に分散する硬質プラスチックスAよりも低硬度のプラスチックス(以下「低硬度プラスチックス」と称す場合がある。)Bよりなる島相とを有する海島構造を持つプラスチック材料も好適である。高硬度プラスチックスAとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(ナイロン)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられ、一方、低硬度プラスチックスBとしては、ポリエチレン、ポリブテン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。高硬度プラスチックスA、低硬度プラスチックスBは、上述のものをそれぞれ1種ずつ用いても良く、いずれか一方又は双方を2種以上混合して用いても良い。例えば、PETを主成分とし、プラスチックと金属両方の特徴を備えたプラスチック材料ASUWAN(登録商標)を好適に使用することができる。
そして、粒状体(粉状体)から加圧成形した減衰部材24には不連続部が多数存在するため、応力を分散することができる。すなわち、本発明に係る減衰部材24は、変形時に応力集中が生じ難く、見かけ上の降伏点が低下し、鉛プラグに近い、適度な減衰能力が付与されたものとなる。
なお、減衰部材24の形状は、円柱状に限定されず、例えば角柱状でもよいし、柱状以外のブロック形状とすることもできる。
減衰部材として使用する低降伏点材料は、その粒状体(粉状体)を加圧成形した減衰部材が、繰返し耐久性が高く、かつ適度な減衰能力を発揮することができれば特に限定されず、例えば銅なども使用することができる。
さらに、本発明に係る免震構造体を製造する方法も実施形態で説明した方法に限定されない。例えば、粒状又は粉状の低降伏点材料を加圧して予め成形した円柱状の減衰部材に、中央に貫通孔を有する剛性板と弾性板とを交互にはめ込んでこれを共加硫して一体化することもできる。
12 上面板
13 フランジ部
14 下面板
15 フランジ部
16 ボルト孔
20 剛性板
22 弾性板
24 減衰部材
27 中空部(貫通孔)
28 積層弾性体
30 金型
32 穴
36 加圧手段
Claims (6)
- 上下の面板の間に剛性板と弾性板とが交互に積層されており、積層方向に中空部が形成されている積層弾性体と、前記中空部内に封入された減衰部材とを有し、前記減衰部材が、粒状又は粉状の低降伏点材料を加圧して成形したものであることを特徴とする免震構造体。
- 前記低降伏点材料が、錫、アルミニウム、又はこれらの金属のいずれかを主成分とする合金であることを特徴とする請求項1に記載の免震構造体。
- 前記低降伏点材料が、低降伏点樹脂を主成分とするものであることを特徴とする請求項1に記載の免震構造体。
- 剛性板と弾性板とが交互に積層されており、積層方向に中空部が形成されている積層弾性体を用意する工程と、
粒状又は粉状の低降伏点材料を加圧して成形した減衰部材を、前記積層弾性体の中空部に封入する工程と、
前記積層弾性体に上下の面板を取り付ける工程とを含むことを特徴とする免震構造体の製造方法。 - 前記低降伏点材料として、錫、アルミニウム、又はこれらの金属のいずれかを主成分とする合金を用いることを特徴とする請求項4に記載の免震構造体の製造方法。
- 前記低降伏点材料として、低降伏点樹脂を主成分とするものを用いることを特徴とする請求項4に記載の免震構造体の製造方法。
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