JP2008063479A - ポリエステルの製造方法及びそれから得られるポリエステル - Google Patents

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Abstract

【課題】 連続重縮合法において良好な静電密着性を有し、しかも、連続運転をしても異物の含有量の増大が少なく、高度な清澄度を有するポリエステルが安定して生産できる製造方法を提供すること。
【解決手段】 少なくともアルカリ土類金属化合物およびリン化合物の存在下に連続式重縮合法でポリエステルを製造する方法において、該製造工程の反応槽間の移送ラインにスタティックミキサーを設置し、該スタティックミキサー部にアルカリ土類金属化合物およびリン化合物の一部を溶液状で混合して添加するポリエステルの製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は良好な静電密着性を有し、しかも、異物の含有量が少なく、高度な清澄度を有するポリエステルの製造方法、およびそれから得られるポリエステルに関するものである。
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステルは、機械的特性、及び化学的特性に優れており、それぞれのポリエステルの特性に応じて、例えば衣料用や産業資材用の繊維、包装用、磁気テープ用、光学用などのフイルムやシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等の広範な分野において使用されている。一方、近年、高速成形化に伴い、例えば、フィルムの破断、繊維の糸切れ、及び目ヤニの発生等の成形上の問題が顕在化すると共に、各種製品においてより高精度化、高速化、高級感等が求められるに伴い、フィルムや繊維等の表面外観が劣るとか、ビデオテープとして画像の乱れが生じるとか、液晶画面の表層として光散乱により画像が見にくくなるとか、或いは、コンデンサーフィルムとして絶縁破壊が生じる等の種々の問題が指摘されている。これらの問題は、樹脂製造時に用いられるアンチモン化合物等の重縮合触媒や各種添加剤がこれらの残渣等として樹脂中に粒子状に存在していることに起因すると考えられている。
例えば、ポリエステルフィルムは、ポリエステルを溶融押出した後、2軸延伸して得られる。すなわち、押出機により溶融押出されたシート状物を回転する冷却ドラムの表面に密着させて引き取り、次いで、該シート状物を冷却ドラムの後段に配置された延伸ロールへと導いて縦延伸し、さらに、テンターで横延伸した後、熱固定(熱セット)される。ここで、フィルムの厚みの均一性を高め、また、キャスティングの速度を高めるには、押出口金から溶融押出したシート状物を回転冷却ドラム表面で冷却する際に、該シート状物とドラム表面とが十分に高い付着力で密着していなければならない。このため、シート状物と回転ドラムの表面との付着力を高めるための方法として、押出口金と冷却回転ドラムの間にワイヤー状の電極を設けて高電圧を印加し、未固化のシート状物の表面に静電気を析出させて、該シート状物を冷却ドラムの表面に静電付着させて、急冷する、所謂、静電密着キャスト法が多く使用されている。すなわち、冷却ドラムにシート状物を静電付着させることで、ドラムの表面にシート状物が該表面との間に隙間を形成することなく高い付着力で密着し、冷却回転ドラムの回転速度を速めてもシート状物が位置ずれすることなく引き取られて一様にキャスティングされ、厚みの均一性に優れたフィルムが効率良く製造される。
静電密着キャスト法において、シート状物の冷却ドラムへの静電密着性を向上させるにはシート状物表面における電荷量を多くすることが有効であり、該電荷量を多くするには、原料となるポリエステル(以下、原料ポリエステルと称す)を改質してその比抵抗を低くすることが有効であることが知られている。そして、この比抵抗を低くする方法として、原料ポリエステルの製造段階において、エステル化またはエステル交換反応中にアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物を添加すること等が行われている。
一方、ポリエステルフィルムは厚みの均一性が高くても、それのみでは十分な品質を有しているとは言えず、フィルム中の異物量を少なくして、フィッシュ・アイ等の欠陥を極力少なくする必要がある。すなわち、ポリエステルフィルムには清澄度が要求される。そのために、原料ポリエステルにも高度の清澄度が必要となり、清澄度を高めるための対策がとられている。その一つとして、ポリエステルの反応生成物であるポリマーを微細なフィルターを使ってろ過することによって清澄度を高める方法が一般に採用されている。しかしながら、近年、その使用が拡大している光学用フィルムに使用するポリエステルフィルムにおいては、より高度の清澄度が要求されている。
例えば、重縮合触媒にアンチモン化合物を使用し、かつ、マグネシュウム化合物とリン化合物を添加してなるポリエステルで、静電密着性および異物の存在量が少ない、高い清澄度を有するフィルム用のポリエステルおよびその製造方法が開示されている(特許文献1参照)。
特開2002−327053号公報
また、直接重縮合法によるポリエステルの製造方法において、グリコール可溶性のマグネシウム化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物から選ばれた少なくとも1種、リン化合物および塩基性窒素化合物の特定量をエステル化反応装置の出口から、初期重縮合反応装置入口までの間において添加することにより、静電密着性および異物の存在量が少ない、高い清澄度を有するフィルム用のポリエステルおよびその製造方法が開示されている(特許文献2参照)。さらに、該特許文献において、グリコール可溶性のマグネシウム化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物から選ばれた少なくとも1種およびリン化合物を上記反応装置の移送ラインに設けたインラインミキサーの前に添加することが好ましいことが開示されている。
特開平3−292323号公報
近年、ポリエステルの製造方法においては、品質のみでなくその製造コストも重要視されており、例えば、高度な清澄度が要求される光学用ポリエステルフィルム用原料ポリエステルにおいても、製造コストが低減できる連続直接重縮合法での生産が実施されている。
一般に、連続重縮合法においては、6ヶ月以上という長期に渡る連続生産が実施されている。上記の従来公知のポリエステル製造方法は、生産をスタートした時は清澄度の高いポリエステルが得られるが、運転の経過により静電密着性付与する目的で添加されるマグネシウム化合物あるいはマグネシウム化合物とリン化合物との反応生成物残渣が配管や反応装置の缶壁に析出し、該析出物が運転時間の経過とともに脱落してポリエステルに混入することで得られるポリエステルの清澄度が時間の経過とともに悪化するという課題を有している。
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、連続重縮合法において良好な静電密着性を有し、しかも、長期連続運転をしても異物の含有量の増加が少なく、高度な清澄度を有するポリエステルが安定して生産できる製造方法、およびそれから得られるポリエステルを提供するものである。
本発明は上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。即ち本発明は、少なくともアルカリ土類金属化合物およびリン化合物の存在下に連続式重縮合法でポリエステルを製造する方法において、該製造工程の反応槽間の移送ラインにスタティックミキサーを設置し、該スタティックミキサー部にアルカリ土類金属化合物およびリン化合物の一部を溶液状で混合して添加することを特徴とするポリエステルの製造方法である。
この場合において、上記アルミニウム化合物溶液とリン化合物溶液との混合を攪拌翼外周の周速が2〜400m/秒であるホモミキサー型の混合機で行うことが好ましい。
また、この場合において、得られるポリエステル樹脂に含有される最大径25μm以上の異物粒子数がポリエステル1gあたり5個以下であることが、少なくとも3ヶ月間に渡り維持されることが好ましい。
また、得られるポリエステルの275℃での溶融比抵抗が0.5×10Ω・cm以下であることが好ましい。
本発明のポリエステル製造方法により、良好な静電密着性を有し、しかも、連続運転をしても異物の含有量の増大が少なく、高度な清澄度を有するポリエステルが長期に渡り安定して生産できる。従って、本発明の製造方法で得られたポリエステルは、フィルムや繊維等に成形するにおける破断や糸切れ、及び目ヤニの発生等の成形上の問題が抑制される。また、極めて高い清澄度を有しているので、異物や欠点が少ないことが求められる光学用フィルムや中空成型体および超ファインデニール繊維等の原料として好適に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に言うポリエステルとは、ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体とジオールおよび/またはそのエステル形成性誘導体とから成るものをいう。
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3ーシクロブタンジカルボン酸、1,3ーシクロペンタンジカルボン酸、1,2ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,3ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,4ーシクロヘキサンジカルボン酸、2,5ーノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5ー(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1,3ーナフタレンジカルボン酸、1,4ーナフタレンジカルボン酸、1,5ーナフタレンジカルボン酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸、2,7ーナフタレンジカルボン酸、4、4’ービフェニルジカルボン酸、4、4’ービフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’ービフェニルエーテルジカルボン酸、1,2ービス(フェノキシ)エタンーp,p’ージカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
これらのジカルボン酸のうちテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸とくに2,6ーナフタレンジカルボン酸が、得られるポリエステルの物性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を構成成分とする。
これらジカルボン酸以外にも少量であれば多価カルボン酸を併用しても良い。該多価カルボン酸としては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3、4、3’、4’ービフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
グリコールとしてはエチレングリコール、1、2ープロピレングリコール、1、3ープロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2ーブチレングリコール、1、3ーブチレングリコール、2、3ーブチレングリコール、1,4ーブチレングリコール、1、5ーペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオール、1,2ーシクロヘキサンジオール、1,3ーシクロヘキサンジオール、1,4ーシクロヘキサンジオール、1,2ーシクロヘキサンジメタノール、1,3ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジエタノール、1,10ーデカメチレングリコール、1、12ードデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’ージヒドロキシビスフェノール、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1、2ービス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5ーナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
これらのグリコールのうちエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
これらグリコール以外に少量であれば多価アルコールを併用しても良い。該多価アルコールとしては、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸を併用しても良い。該ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3ーヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、pー(2ーヒドロキシエトキシ)安息香酸、4ーヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
また、環状エステルの併用も許容される。該環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらの化合物のアルキルエステルやヒドロキシルアルキルエステル等が挙げられる。
ジオールのエステル形成性誘導体としては、ジオールの酢酸等の低級脂肪族カルボン酸とのエステルが挙げられる。
本発明のポリエステルとしてはPET、PBT、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ(1,4ーシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、PEN、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートおよびこれらの共重縮合体が好ましく、これらのうちポリエチレンテレフタレートおよびこの共重縮合体が特に好ましい。共重縮合体としてはエチレンテレフタレート単位を50モル%以上よりなるものが好ましく、70モル%以上がより好ましい。
本発明において用いられる重縮合触媒は、限定されない。アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、スズ化合物およびアルミニウム化合物等の従来公知の重縮合触媒が使用できる。
本発明において使用可能なアンチモン化合物としては、特に限定はされないが、好適な化合物として三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが挙げられ、特に三酸化アンチモンの使用が好ましい。また、ゲルマニウム化合物としては、特に限定はされないが、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、特に二酸化ゲルマニウムが好ましい。二酸化ゲルマニウムとしては結晶性のものと非晶性のものの両方が使用できる。
本発明において使用可能なチタン化合物としては特に限定はされないが、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート、蓚酸チタン酸リチウム、蓚酸チタン酸カリウム、蓚酸チタン酸アンモニウム、酸化チタン、チタンとケイ素やジルコニウムやアルカリ金属やアルカリ土類金属などとの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステル、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する多価アルコール、2−ヒドロキシカルボン酸および塩基からなる反応生成物などが挙げられ、このうちチタンとケイ素の複合酸化物、チタンとマグネシウムの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物が好ましい。
またスズ化合物としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイド、ジブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸などが挙げられ、特にモノブチルヒドロキシスズオキサイドの使用が好ましい。
また、アルミニウム化合物としては、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn−プロポキサイド、アルミニウムiso−プロポキサイド、アルミニウムn−ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso−プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物及びこれらの部分加水分解物、アルミニウムのアルコキサイドやアルミニウムキレート化合物とヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、酸化アルミニウム、超微粒子酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート、アルミニウムとチタンやケイ素やジルコニウムやアルカリ金属やアルカリ土類金属などとの複合酸化物などが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩及びキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネートが特に好ましい。
これらのアルミニウム化合物の中でも、アルミニウム含有量が高い酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムが好ましく、さらに溶解度の観点から酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムが好ましい。さらに、装置を腐食しない観点から、酢酸アルミニウムの使用がとくに好ましい。
ここで、水酸化塩化アルミニウムは一般にポリ塩化アルミニウムや塩基性塩化アルミニウムなどとも呼ばれるものの総称であり、水道用に使われるものなどが使用できる。これらは、例えば一般構造式[Al(OH)Cl6−n(ただし1≦n≦5)で表される。これらの中でも、装置を腐食しない観点から塩素含有量の少ないものが好ましい。
上記の酢酸アルミニウムは、塩基性酢酸アルミニウム、トリ酢酸アルミニウム、酢酸アルミニウム溶液などに代表される酢酸のアルミニウム塩の構造を有するものの総称であり、これらの中でも、溶解性および溶液の安定性の観点から、塩基性酢酸アルミニウムの使用が好ましい。塩基性酢酸アルミニウムの中でも、モノ酢酸アルミニウム、ジ酢酸アルミニウム、あるいはこれらがホウ酸で安定化されたものが好ましい。ホウ酸で安定化されたものを用いる場合、塩基性酢酸アルミニウムに対して等モル以下の量のホウ酸で安定化されたものを用いることが好ましく、とくに1/2〜1/3モル量のホウ酸で安定化された塩基性酢酸アルミニウムの使用が好ましい。塩基性酢酸アルミニウムの安定剤としては、ホウ酸以外に尿素、チオ尿素などが挙げられる。
本発明においては、上記重縮合触媒の添加量は限定されない。実用的な重縮合触媒活性を示す範囲で適宜設定すればよい。ただし、該重縮合触媒起因の異物生成を抑制し、得られるポリエステルの清澄度を確保する点より必要最低限の添加に留めるのがよい。
最も代表的な重縮合触媒であるアンチモン化合物を用いる場合は、最終的に得られるポリエステルに対するアンチモン原子の含有量が100〜200ppmとなる量添加するのが好ましく、100ppm未満であると重合生産性が低下し、逆に、200ppmを超えると、不溶性の異物を生じやすくなる。より好ましいアンチモン原子の含有量は140〜170ppmである。
本発明において使用するアルカリ土類金属化合物としては、Be,Mg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。該アルカリ土類金属化合物はポリエステルの溶融比抵抗を下げ、静電密着性を向上するために添加される。高度な静電密着性を付与するためには、MgまたはCa化合物の使用が好ましい。
また、本発明においては、さらにアルカリ金属化合物を添加するのが好ましい。該アルカリ金属化合物を添加することにより、静電密着性向上効果を増大させることができ、かつ、副反応であるグリコール成分同士の縮合反応、例えば、グリコール成分としてエチレングリコールを用いた場合はジエチレングリコールの副生が抑制される。
本発明において使用するアルカリ金属は、Li,Na,K,Rb,Csである。NaまたはK化合物の使用が好ましい。
上記のアルカリ土類金属やアルカ金属化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属などの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等のジオールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重合系に添加しなければならず重合工程上問題となる場合が有る。さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重合時にポリエステルが加水分解等の副反応を受け易くなるとともに、重合したポリエステルは着色し易くなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。従って、本発明のアルカリ金属化合物あるいはアルカリ土類金属化合物として好適なものは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物、および酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ土類金属あるいはアルカリ金属などの金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、特に酢酸塩の使用が好ましい。
上記のアルカリ土類金属化合物およびアルカリ金属化合物はエチレングリコール溶液としてポリエステル製造工程に添加するのが好ましい。これらの金属化合物は、両者を混合して供給してもよいし、それぞれを別個に供給してもよい。
ポリエステル中のアルカリ土類金属元素含有量は3〜200ppmが好ましい。ポリエステル中のアルカリ土類金属元素含有量は5〜160ppmがより好ましく、10〜120ppmがさらに好ましく、15〜100ppmがよりさらに好ましい。アルカリ土類金属元素含有量が3ppm未満ではポリエステルの溶融比抵抗の低下が少なくなり静電密着性が悪化するので好ましくない。逆に、200ppmを超えた場合は、該アルカリ土類金属起因の異物生成が増大するとともに、ポリエステルの熱安定性等の安定性が低下したり、ポリエステルの着色が増大するので好ましくない。
ポリエステル中のアルカリ金属元素含有量は0.5〜50ppmが好ましい。ポリエステル中のアルカリ金属元素含有量は1〜40ppmがより好ましく、2〜30ppmがさらに好ましく、3〜20ppmがよりさらに好ましい。アルカリ金属元素含有量が0.5ppm未満ではポリエステルの溶融比抵抗の低下が少なくなり静電密着性が悪化する。さらに、副反応であるグリコール成分同士の縮合反応が増加し、例えば、グリコール成分としてエチレングリコールを用いた場合はジエチレングリコールの副生が増大する。該副反応の増大によりポリエステルの融点低下や熱酸化安定性等の品質低下が低下するので好ましくない。逆に、50ppmを超えた場合は、ポリエステルの溶融比抵抗の低下やグリコール成分同士の縮合反応の抑制効果が頭打ちになり、かつポリエステルの着色が増大し色調の低下が起こるので好ましくない。
本発明においては、リン化合物を添加するのが好ましい。該リン化合物は、例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられ、具体例としては、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジメチル、フェニールホスホン酸ジメチル、フェニールホスホン酸ジエチル、フェニールホスホン酸ジフェニール等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、これらのうちでもリン酸トリメチルおよび/またはリン酸が好ましい。
当該リン化合物は、リン元素アルカリ土類金属原子/リン原子(原子比)は1.0〜10の範囲が好ましく、1.2〜3.0が特に好ましい。リン元素アルカリ土類金属原子/リン原子(原子比)が1.0未満ではポリエステルの静電密着性向上効果が低下するので好ましくない。一方、10を超えた場合はポリエステルの耐熱性やレジンカラーが悪化するので好ましくない。ここで原子比とは、原子の数の比を表し、以下原子比と記した場合、同様である。
上記製造方法により、275℃での溶融比抵抗が0.5×10Ω・cm以下である本発明のポリエステルを得ることができる。275℃での溶融比抵抗は0.4×10Ω・cm以下がより好ましく、0.3×10Ω・cm以下がさらに好ましい。該ポリエステルの溶融比抵抗が0.5×108Ω・cmを超えた場合は、静電密着性が悪化し、キャスティング速度が遅くなり生産性が悪くなる。ここで、溶融比抵抗とは、静電密着キャスト法においてピンナーブルの発生を抑制しながらキャストできる最高のキャスティング速度、すなわち静電密着性と相関している。溶融比抵抗が低いポリマーほど、高速でキャスティングすることが可能となり、フイルム生産性の面から非常に重要である。ただし、0.1×108Ω・cm未満になると該ポリエステルを用いた成型体がエレクトレットを形成し易くなるので好ましくないことが発生する場合がある。
該ポリエステルの溶融比抵抗は、275℃で溶融したポリエステル中に2本の電極(ステンレス針金)を置き、120Vの電圧を印加した時の電流(io)を測定し、これを次式に当てはめて求めた比抵抗値Si(Ω・m)である。
Si(Ω・m)=(A/L)×(V/io
[A:電極間面積(cm2)、L=電極間距離(cm)、V=電圧(V)]
本発明においては、得られるポリエステルの清澄度が高いことが好ましい。該ポリエステルの清澄度は、下記方法で評価した最大径が25μm以上の異物粒子の個数が5個/g以下であることが好ましい。3個/g以下がより好ましく、2個/g以下がさらに好ましい。
[異物粒子数の測定法]
試料ポリエステルを熱風乾燥機中、180℃、2時間で結晶化及び乾燥させて水分量を100ppm以下とした後、20mm径の一軸押出機にて280℃で溶融押出して、フラットダイスより110mm幅で吐出し、冷却ロールで冷却して厚み20μmの未延伸シートを製膜した。平均押出し速度4m/分で製膜した。該製膜シートの冷却ロールから巻き取り機までの間にCCDカメラを設置し倍率40倍で透過法でフォーカススキャンしながら画像を画像処理装置に取り込み、画像処理装置で認識される粒子の周上の2点間の直線距離の最大値を最大径とし、その最大径25μm以上の粒子個数をカウントし、その個数を1gのポリエステル重量当たりに換算した。該測定は15分間ずつ3回測定しその平均値で表示した。
さらに、本発明においては、ポリエステルを長期に渡り連続生産した場合に、上記の清澄度がポリエステルの製造開始より少なくとも3ヶ月間に渡り維持されることが好ましい。
該特性を付与するための好ましい実施態様は後述する。
本発明のポリエステルには、色調改善等の目的でコバルト化合物をコバルト原子としてポリエステルに対して10ppm未満の量で添加することが好ましい態様である。より好ましくは5ppm以下であり、さらに好ましくは3ppm以下である。コバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には例えば、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルトおよびそれらの水和物等が挙げられる。その中でも特に酢酸コバルト四水和物が好ましい。
本発明のポリエステルの色調を改善するために、コバルト化合物以外の色調改善剤を用いることも好ましい態様である。色調改善剤とは添加することで色調を変化させる物質のことをいう。本発明の色調改善剤としては特に限定はされないが、無機および有機の顔料、染料、蛍光増白剤などが好ましい。
顔料または染料を使用する場合、使用量が増えると、結果重縮合体の明るさが低下するという問題が発生する。そのため多くの用途で許容できなくなるという問題が発生する。そのため顔料および染料の総使用量は得られるポリエステルに対して20ppm以下であることが好ましく、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下である。かかる領域では重縮合体の明るさを低下させることなく着色を効果的に消去できる。
さらに蛍光増白剤を単独もしくは他の色調改善剤と併用して用いると、色調が良好になり、例えば使用する顔料または染料の量が少なくてよいので好ましい。蛍光増白剤は一般に用いられている物を1種だけ使用してもよくもしくは2種以上を併用してもよい。添加量は得られるポリエステルに対して50ppm以下であることが好ましく、5〜25ppmであることがさらに好ましい。
本発明の無機顔料としては、色調を変化できるものであれば特に規定はされないが、例えば二酸化チタン、カーボンブラック、鉄黒、ニッケルチタンイエロー、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、黄鉛、クロムチタンイエロー、亜鉛フェライト顔料、弁柄、カドミウムレッド、モリブデンレッド、酸化クロム、スピネルグリーン、クロムオレンジ、カドミウムオレンジ、群青、紺青、コバルトブルー、などが挙げられる。このうち酸化クロム、群青、紺青、コバルトブルーが好ましく、群青、コバルトブルーがさらに好ましい。またこれら無機顔料の一種もしくは二種以上を必要に応じて組み合わせて使用しても良い。
本発明の有機顔料および染料としては、色調を変化できるものであれば規定はされないが、例えばカラーインデックスで表示されているPigment Red 5, 22, 23, 31, 38, 48:1, 48:2, 48:3, 48:4, 52, 53:1, 57:1, 122, 123, 144, 146, 151, 166, 170, 177, 178, 179, 187, 202, 207, 209, 213, 214, 220, 221, 247, 254, 255, 263, 272、Pigment Orange 13, 16, 31, 36, 43, 61, 64, 71、Pigment Brown 23、Pigment Yellow 1, 3, 12, 13, 14, 17, 55, 73, 74, 81, 83,93, 94, 95, 97, 109, 110, 128, 130, 133, 136, 138, 147, 150, 151, 154,180, 181, 183, 190, 191, 191:1, 199、Pigment Green 7, 36、Pigment Blue15, 15:1, 15:2, 15:3, 15.4, 15:6, 29, 60, 64, 68、Pigment Violet 19, 23,37, 44、Solvent Red 52, 117, 135, 169, 176、Disperse Red 5、Solvent Orange 63, 67, 68, 72, 78、Solvent Yellow 98, 103, 105, 113, 116、DisperseYellow 54, 64, 160、Solvent Green 3, 20, 26、Solvent Blue 35, 45, 78, 90, 94, 95, 104, 122, 132、Solvent Violet 31、などが挙げられる。またその他のアンスラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、キノフタロン系、ペリレン系、ペリノン系、ベンズイミダゾロン系、ジアリライド系、バット系、インジゴ系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系、アントラピロリドン系の染料/顔料等を挙げることができる。
このうちPigment Red 187, 263、Pigment Blue 15:1, 15:3, 29,60、Pigment Violet 19、Solvent Red 135、Solvent Blue 45, 90,104, 122、およびアンスラキノン系とフタロシアニン系の染料/顔料が好ましい。さらにアンスラキノン系とフタロシアニン系の染料/顔料は特に好ましい。
選択される顔料および/または染料は下記の条件を満たす物が好ましい。まず顔料および染料は最大限の安全性をもたらすために重縮合体から非抽出性であること。また日光に対しておよび広範囲の温度および湿度条件に対して安定であること。さらにポリエステルの製造の間に遭遇する極めて高い温度の結果として昇華や、色相の変化を生じないことである。更にこの顔料および染料はポリエステルポリマーの物理的性質に悪影響を及ぼさないものが好ましい。
これらの条件を満たす顔料および/または染料でポリエステルの色調を改善するものであれは特に限定されないが、例えば特表2000−511211ではある種の青色1,4−ビス(2,6−ジアルキルアニリノ)アントラキノンを主に用い赤色アンスラキノンおよびアントラピリドン(3H−ジベンゾ[fi,j]イソキノリン−2,7−ジオン)化合物を色相に応じて組み合わせた色調改善剤などが例示されており、これらを用いることができる。これらの染料は適当な色特性を有し、熱、光、湿度および種々の環境要因に対して安定であると共に重縮合の合間にポリエステルポリマー構造中に含ませることができ、公知の有機染料で遭遇する問題の多くを克服する。またUV光、高温および加水分解に対して安定である。更に青色成分および赤色成分の量は、着色度の異なったポリエステルに有効に働くように、必要に応じて変化させることができる。
本発明の蛍光増白剤としては一般に用いられているものを単独もしくは組み合わせて使用しても良い。例えばベンズオキサゾリン系蛍光増白剤、好ましくはチバ・スペシャルティーケミカルズ社製のUVITEX OB、UVITEX OB−P、UVITEX OB−ONE、クラリアント社製のHOSTALUX KSや、特開平10−1563に記載のものなどが好ましく使用できる。
以上の色調改善剤は無彩色の色相を達成するため、その種類や添加比などを任意に組み合わせ使用することができる。また、色調改善剤の添加時期は重縮合のどの段階であってもよく、重縮合反応終了後であっても構わなく、重縮合反応終了後から成形時までのどの段階であってもかまわない。また添加方法は重縮合中であれば粉末や、ポリエステルのモノマーの1つに溶解させて添加することが好ましい。さらに重縮合反応終了後では粉末やマスターバッチとして添加することが好ましい。
また顔料等の分散性に問題が生じる場合は、必要に応じて分散剤を使用すると好ましい場合がある。分散剤は顔料の分散を助けるものであれば特に規定はされないが、例えばN,N’−エチレンビスミリスチン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−メチレンビスミリスチン酸アミド、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−メチレンビスオレイン酸アミドなどのN,N’−アルキレンビス脂肪酸アミドなどがある。その中でもN,N’−メチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。添加量に関しては性能にも左右されるが、顔料に対して10〜200質量%、好ましくは40〜150質量%添加するのが良い。
本発明のポリエステルは、0.580〜0.630dl/gの極限粘度を有することが好ましい。極限粘度が0.580dl/g未満であるようなポリエステルは、製膜して得られるフィルム等の成型体の力学的特性が劣悪になるため好ましくなく、逆に、0.630dl/gを超えるようなポリエステルは、重縮合反応後に製造したポリエステルチップをシート状に押出す際の押出機負荷が大きくなって、生産性が低下するので好ましくない。より好ましい極限粘度は0.600〜0.620dl/gである。
本発明におけるポリエステルの製造方法は連続式重縮合法である必要がある。連続式重縮合法は回分式重縮合法に比して品質の均一性や経済性において有利である。本発明における連続式重縮合法は、ジカルボン酸とジオールとの反応で製造する、いわゆる直接エステル化法であってもジカルボン酸のエステル形成性誘導体とジオールとの反応で製造する、いわゆるエステル交換法のどちらであっても構わない。また、エステル化、エステル交換および重縮合工程の反応器の個数やサイズおよび各工程の製造条件等は限定なく適宜選択できる。
直接エステル化法による製造法を以下に例示する。
テレフタル酸1モルに対して1.02〜2.5モル、好ましくは1.03〜2.4モルのエチレングリコ−ルが含まれたスラリ−を調製し、これをエステル化反応工程に連続的に供給する。
エステル化反応は、1〜3個のエステル化反応槽を直列に連結した多段式装置を用いて、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル化反応の温度は240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力は常圧〜0.29MPa、好ましくは0.005〜0.19MPaである。最終段目のエステル化反応の温度は通常250〜290℃好ましくは255〜275℃であり、圧力は通常0〜0.15MPa、好ましくは0〜0.13MPaである。3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらのエステル化反応の反応率の上昇は、それぞれの段階で滑らかに分配されることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。これらのエステル化反応により分子量500〜2000程度の低次縮合物が得られる。引き続き重縮合反応槽に移送し重縮合を行う。該重縮合工程の反応槽数も限定されない。一般には初期重縮合、中期重縮合および後期重縮合の3段階方式が取られている。重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の反応温度は250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力は0.065〜0.0026MPa、好ましくは0.026〜0.0039MPaで、最終段階の重縮合反応の温度は265〜300℃、好ましくは275〜295℃であり、圧力は0.0013〜0.000013MPa、好ましくは0.00065〜0.000065MPaである。3段階以上で実施する場合には、中間段階の重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される極限粘度の上昇の度合は滑らかに分配されることが好ましい。
エステル交換法の場合は、エステル交換反応は、1〜2個のエステル交換反応器を直列に連結した装置を用いて、例えば、ジメチルテレフタレートとエチレングリコ−ルとを連続的に反応器に供給し、反応によって生成したメタノ−ルを精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル交換反応の温度は180〜250℃、好ましくは200〜240℃である。最終段目のエステル交換反応の温度は通常230〜270℃、好ましくは240〜265℃である。エステル交換触媒として、Zn,Cd,Mg,Mn,Co,Ca,Baなどの脂肪酸塩、炭酸塩等を用いるのが好ましい。
本発明においては、上記製造工程の反応槽間の移送ラインにスタティックミキサーを設置し、該スタティックミキサーに前記したアルカリ土類金属化合物およびリン化合物の一部を溶液状で混合して添加するのが好ましい。
上記アルカリ土類金属化合物とリン化合物の混合は、それぞれ別個に溶解して調製した溶液を用いて添加直前に行うのが好ましい。この場合、攪拌翼外周の周速が2〜400m/秒であるホモミキサー型の混合機で行うのが好ましい。該混合機は、例えば、市販されているパイプラインホモミキサー等の使用が好適である。
攪拌翼外周の周速が5〜200m/秒がより好ましく、10〜100m/秒がさらに好ましい。また、攪拌翼は、ディスクタービン翼等の攪拌効率の高い形式のものの使用が好ましい。これらの対応により本発明の効果が安定して発現される。
上記混合温度は限定されない。ホモミキサーの温調は特に必要はない。ただし、リン化合物の種類によっては低温では析出が起こる場合があるので20〜50℃で供給するのが好ましい。
上記スタティックミキサーを設置する移送ラインは第1の重縮合反応槽までの移送ラインを利用するのが好ましい。例えば、エステル化反応槽間および最終エステル反応槽から第1重縮合反応槽への移送ラインの少なくとも一つを利用するのが好ましい。該対応により本発明の効果がより顕著に発現できる。
上記方法で実施することにより、アルカリ土類金属化合物起因の異物生成が抑制され、長期により清澄なポリエステルが得られ、前述した清澄度を長期に渡り維持することができる。すなわち、従来公知のポリエステル製造方法は、生産をスタートした時は清澄度の高いポリエステルが得られるが、運転の経過により静電密着性付与する目的で添加されるマグネシウム化合物等のアルカリ土類金属化合物あるいはアルカリ土類金属化合物とリン化合物およびこれらとポリエステルオリゴマーとの反応生成物が配管や反応装置の缶壁に析出し、該析出物が運転時間の経過とともに脱落してポリエステルに混入することで得られるポリエステルの清澄度が時間の経過とともに悪化するという課題を有していた。本発明は、アルカリ土類金属化合物とリン化合物とを溶液状で高速で回転する攪拌機で均一混合し、かつスタティックミキサー部に添加することにより、配管や反応装置の缶壁に析出する析出物の生成が抑制されることにより達成されたものと推察される。該方法により配管や反応装置の缶壁に析出する析出物の生成が抑制される原因は明確ではないが、アルカリ土類金属化合物とリン化合物が均一混合化された状態によりポリエステルオリゴマーに添加され、かつスタティックミキサーで該混合物とポリエステルオリゴマーが均一に混合されることにより、配管や反応装置の缶壁に析出する析出物の生成反応が抑制されるものと推察される。
本発明における上記のアルカリ土類金属化合物と混合して添加するリン化合物の添加量は全リン化合物添加量の50モル%以下にするが好ましい。30モル%以下にするのが特に好ましい。該範囲で実施することにより上記効果が顕著に発現することができると共に、静電密着性が向上するという効果も発現する。
上記方法で添加したリン化合物の残量の添加は、上記添加よりも後の工程で行うのが好ましい。該方法により静電密着性向上効果が増大する。
本発明においては、最終生成物(ポリマー)はろ過してから、チップ化されるのが好ましい。かかるろ過には、通常、目開き3〜20μm程度のフィルターが使用される。
本発明方法により得られたポリエステルを前述のごとく固相状態で減圧下あるいは不活性ガス気流下でポリエステル樹脂を加熱し、さらに重縮合を進めたり、該ポリエステル樹脂中に含まれている環状3量体等のオリゴマーやアセトアルデヒド等の副生成物を除去する等の手段を取ることも何ら制約を受けない。また、例えば超臨界圧抽出法等の抽出法でポリエステル樹脂を精製し前記の副生成物等の不純物を除去する等の処理を行うことを取り入れても良い。
本発明のポリエステル中には、他の任意の重縮合体や制電剤、消泡剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
これらの添加剤は、ポリエステルの重縮合時もしくは重縮合後、あるいはポリエステル成形時の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは対象とするポリエステルの構造や得られるポリエステルの要求性能に応じてそれぞれ適宜選択すれば良い。
本発明のポリエステルは、ポリエステルの溶融比抵抗が最適化されているので溶融押出しキャスティングにおいて静電密着法を適用した場合に溶融押出ししたシートをチルロールに密着させる静電密着力を増大させることができ、ピンナーバブルの発生を抑制しながらキャストできる最高のキャスティング速度を上げることができるので、溶融押出し成型工程が含まれるフイルムやシートの原料として好適に用いることができる。
フイルム用として用いる場合は、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性を改善するために、フイルム中に無機粒子、有機塩粒子や架橋高分子粒子などの不活性粒子を含有させることが出来る。また、これらの粒子は無機・有機又は親水・疎水等の表面処理がされたもの、されていないもの、どちらを使っても良いが、例えば粒子の分散性を向上させる等の目的で、表面処理した粒子を用いる方が好ましい場合がある。
無機粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム、ソジュウムカルシウムアルミシリケート、疎水処理シリカ、無機処理シリカ、有機処理シリカ、ガラス粉、シリコン等が挙げられる。
有機塩粒子としては、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。その他に、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機粒子を用いても良い。
上記不活性粒子を基材フイルムとなるポリエステル中に含有させる方法は、限定されないが、(a)ポリエステル構成成分であるジオール中で不活性粒子をスラリー状に分散処理し、該不活性粒子スラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する方法、(b)ポリエステルフイルムの溶融押出し工程においてベント式二軸押出し機で、溶融ポリエステル樹脂に分散処理した不活性粒子の水スラリーを添加する方法、(c)ポリエステル樹脂と不活性粒子を溶融状態で混練する方法(d)ポリエステル樹脂と不活性粒子のマスターレジンを溶融状態で混練する方法などが例示される。
重合反応系に添加する方法の場合、不活性粒子のジオールスラリーを、エステル化反応またはエステル交換反応前から重縮合反応開始前の溶融粘度の低い反応系に添加することが好ましい。また、不活性粒子のジオールスラリーを調整する際には、高圧分散機、ビーズミル、超音波分散などの物理的な分散処理を行うとことが好ましい。さらに、分散処理したスラリーを安定化させるために、使用する粒子の種類に応じて適切な化学的な分散安定化処理を併用することが好ましい。
分散安定化処理としては、例えば無機酸化物粒子や粒子表面にカルボキシル基を有する架橋高分子粒子などの場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物をスラリーに添加し、電気的な反発により粒子間の再凝集を抑制することができる。また、炭酸カルシウム粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などの場合にはトリポリ燐酸ナトリウムやトリポリ燐酸カリウムをスラリー中に添加することが好ましい。
また、不活性粒子のジオールスラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する際、スラリーをジオールの沸点近くまで加熱処理することも、重合反応系へ添加した際のヒートショック(スラリーと重合反応系との温度差)を小さくすることができるため、粒子の分散性の点で好ましい。
これらの添加剤は、ポリエステルの重合時もしくは重合後、あるいはポリエステルフイルムの製膜後の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは化合物の特性やポリエステルフイルムの要求性能に応じてそれぞれ異なる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、評価法は以下の方法で実施した。
なお、以下の実施例、比較例においてTPAはテレフタル酸、EGはエチレングリコール、TEPAはリン酸トリエチルを意味する。また、各特性、物性値は下記の試験方法で測定した。
(1)極限粘度
ポリエステルをフェノール(6重量部)と1,1,2,2−テトラクロルエタン(4重量部)の混合溶媒に溶解し、30℃で測定する。
(2)ポリエステルの溶融比抵抗(ρi)
275℃で溶融したポリエステル中に2枚の電極板を置き、120Vの電圧を印加した時の電流値(i0)を測定し、比抵抗値ρiを次式により求める。
ρi(Ω・cm)=A/l×V/i
ここで、A=電極面積(cm)、l=電極間距離(cm)、V=電圧(V)である。
(3)異物粒子数
試料ポリエステルを熱風乾燥機中、180℃、2時間で結晶化及び乾燥させて水分量を100ppm以下とした後、20mm径の一軸押出機にて280℃で溶融押出して、フラットダイスより110mm幅で吐出し、冷却ロールで冷却して厚み20μmの未延伸シートを製膜した。平均押出し速度4m/分で製膜した。該製膜シートの冷却ロールから巻き取り機までの間にCCDカメラを設置し倍率40倍で透過法でフォーカススキャンしながら画像を画像処理装置に取り込み、画像処理装置で認識される粒子の周上の2点間の直線距離の最大値を最大径とし、その最大径25μm以上の粒子個数をカウントし、その個数を1gのポリエステル重量当たりに換算した。該測定は15分間ずつ3回測定しその平均値で表示した。
(4)ポリエステルの静電密着性
押出機の口金部と冷却ドラムの間にタングステンワイヤー製の電極を設け、電極とキャスティングドラム間に10〜15KVの電圧を印加してキャスティングを行い、得られたキャスティング原反の表面を肉眼で観察し、ピンナーバブルの発生が起こり始めるキャスティング速度で評価する。キャスティング速度が大きいポリマー程、静電密着性が良好である。
実施例1
攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する2段の完全混合槽よりなる2基の連続エステル化反応槽および3基の重縮合反応槽よりなり、第1エステル化反応槽から第2エステル化反応槽への移送ラインおよび第2エステル化反応槽から第1重縮合反応槽への移送ラインにスタティックミキサーが設置された連続式ポリエステル製造装置を用いて、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で255℃で反応させた。次に、第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対し8重量%供給し、常圧にて平均滞留時間2.0時間で260℃で反応させた。
生成PETに対してMg原子が60ppmとなる量の酢酸マグネシウムを含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が10ppmとなる量のTEPAを含むEG溶液(P1)をディスクタービン翼を装着したパイプラインホモミキサーを用いて50m/秒の周速で高速攪拌して得た混合溶液を第1エステル化反応槽から第2エステル化反応槽への移送ラインに設置したスタティックミキサーの直前に連続的に添加した。上記パイプラインホモミキサーは上記スタティックミキサー直前に設置し該パイプラインホモミキサーで上記溶液の混合を行いながら連続に添加した。また、第1エステル化反応槽に生成PETに対してNa原子が3ppmとなる量の酢酸ナトリウムを含むEG溶液を、第2エステル化反応槽から第1重縮合反応槽への移送ライン設置したスタティックミキサーの直前に生成PETに対してP原子が30ppmとなる量のTEPAを含むEG溶液(P2)を添加した。
上記エステル化反応生成物を連続重縮合装置に連続し移送し、初期重合反応器が、265℃、0.009MPa、中期重合反応器が、270℃、0.0007MPa、最終重合反応器が、272℃、0.0000133MPaで実施し極限粘度0.620dl/gのPETを得た。この結果を表1に示す。なお、ポリエステルの清澄度の初期値はポリエステルの製造を開始後、5日経過時に得られたポリエステルについて評価したものである。以下の実施例および比較例についても同様の取り扱いをした。
本実施例で得られたポリエステルは静電密着性に優れ、かつ清澄度が高く高品質であった。また、清澄度の高さが長期に渡り維持されており、高品質なポリエステルが長期に渡り安定して連続生産できることが示された。
比較例1
実施例1の方法において、酢酸マグネシウムのEG溶液およびP1の添加を第2エステル化反応槽に変更する以外は、実施例1と同様にして比較例1のポリエステルを得た。結果を表1に示す。本比較例で得られたポリエステルは静電密着性および初期の清澄度は良好であったが、長期連続生産で清澄度の低下が見られた。
比較例2
比較例1の方法において、P2の添加場所を変更し、P1およびP2を併せた全量のTMPを第2エステル化反応槽で添加するように変更する以外は、比較例1と同様にして比較例2のポリエステルを得た。本比較例で得られたポリエステルは、比較例1で得られたポリエステルの課題に加えて、静電密着性が劣っていた。この結果を表1に示す。
比較例3
実施例1の方法において、酢酸マグネシウムのEG溶液とP1とを混合することなく別々の供給口よりスタティックミキサーの直前に添加するように変更する以外は、実施例1と同様にして比較例3のポリエステルを得た。本比較例で得られたポリエステルは、比較例2で得られたポリエステルと同様の課題を有していた。この結果を表1に示す。
実施例2
攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる3基の連続エステル化反応槽および3基の重縮合反応槽よりなり、第2エステル化反応槽から第3エステル化反応槽への移送ラインおよび第3エステル化反応槽から第1重縮合反応槽への移送ラインにスタティックミキサーが設置された連続式ポリエステル製造装置を用いて、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で255℃で反応させた。次に、第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対し8重量%供給し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で260℃で反応させた。次に、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で260℃で反応させた。生成PETに対してMg原子が60ppmとなる量の酢酸マグネシウムを含むEG溶液、生成PETに対してP原子が10ppmのとなる量のTEPAを含むEG溶液(P1)および生成PETに対してNa原子が3ppmとなる量の酢酸ナトリウムを含むEG溶液を、パイプラインホモミキサーの周速を200m/秒にする以外は実施例1と同様の方法で均一混合し、第2エステル化反応槽から第3エステル化反応槽への移送ラインに設置したスタティックミキサーの直前に連続的に添加した。また、第3エステル化反応槽から第1重縮合反応槽への移送ライン設置したスタティックミキサーの直前に生成PETに対してP原子が30ppmとなる量のTEPAを含むEG溶液(P2)を添加した。
上記エステル化反応生成物を連続重縮合装置に連続し移送し、初期重合反応器が、265℃、0.009MPa、中期重合反応器が、270℃、0.0007MPa、最終重合反応器が、272℃、0.0000133MPaで実施し極限粘度0.620dl/gのPETを得た。この結果を表1に示す。
本実施例で得られたポリエステルは静電密着性に優れ、かつ清澄度が高く高品質であった。また、清澄度の高さが長期に渡り維持されており、高品質なポリエステルが安定して生産できることが示された。
実施例3
実施例2の方法において、スタティックミキサーを第1エステル化反応槽から第2エステル化反応槽への移送ラインに移し、実施例1と同様の方法で混合した酢酸マグネシウムのEG溶液とP1との混合溶液を該スタティックミキサーの直前に添加し、酢酸ナトリウムのEG溶液およびP2の添加場所をそれぞれ第1エステル化反応槽および第3エステル化反応槽に変更し、パイプラインホモミキサーの周速を5m/秒にする以外は、実施例2と同様にして実施例3のポリエステルを得た。結果を表1に示す。本実施例で得られたポリエステルは実施例1や2において得られたポリエステルと同様に長期連続運転において高度な清澄度が維持された。
比較例4
実施例3の方法において、酢酸マグネシウムのEG溶液とP1とを混合することなく別々の供給口よりスタティックミキサーの直前に添加するように変更する以外は、実施例3と同様にして比較例4のポリエステルを得た。本比較例で得られたポリエステルは、比較例1で得られたポリエステルと同様の課題を有していた。
Figure 2008063479
本発明のポリエステル製造方法により、良好な静電密着性を有し、しかも、連続運転をしても異物の含有量の増大が少なく、高度な清澄度を有するポリエステルが長期に渡り安定して生産できる。従って、本発明の製造方法で得られたポリエステルは、フィルムや繊維等に成形するにおける破断や糸切れ、及び目ヤニの発生等の成形上の問題が抑制される。また、極めて高い清澄度を有しているので、異物や欠点が少ないことが求められる光学用フィルムや中空成型体および超ファインデニール繊維等の原料として好適に用いることができる。従って、産業界に寄与することが大である。

Claims (4)

  1. 少なくともアルカリ土類金属化合物およびリン化合物の存在下に連続式重縮合法でポリエステルを製造する方法において、該製造工程の反応槽間の移送ラインにスタティックミキサーを設置し、該スタティックミキサー部にアルカリ土類金属化合物およびリン化合物の一部を溶液状で混合して添加することを特徴とするポリエステルの製造方法。
  2. 上記アルカリ土類金属化合物溶液とリン化合物溶液との混合を攪拌翼外周の周速が2〜400m/秒であるホモミキサー型の混合機で行うことを特徴とする請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
  3. 得られるポリエステルに含有される最大径25μm以上の異物粒子数がポリエステル1gあたり5個以下であることが、少なくとも3ヶ月間に渡り維持されることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルの製造方法により得られる275℃での溶融比抵抗が0.5×10Ω・cm以下であることを特徴とするポリエステル。
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