JP2008025018A - 焼結摩擦材 - Google Patents

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Noriyuki Arai
敬之 新井
Katsuo Arai
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Abstract

【課題】PRTR法の指定化学物質をまったく含まないことで環境保護の面で好ましいと共に、焼結摩擦材の基地組織をフェライトに保つことで、高温特性と耐食性に優れ且つ相手材摩耗量を少なくする等、ブレーキ制動時の性能に優れた焼結摩擦材を提供する。
【解決手段】この発明による焼結摩擦材は、従来の銅粉末が主体である摩擦材に代えて、融点が高い還元鉄から形成された粉末をベースに構成されている。この還元鉄粉に黒鉛化傾向の大きい元素を添加して焼結されており、基地組織がフェライトに保たれている。焼結の際に、鉄中の炭素を黒鉛(グラファイト)として独立して存在させる割合を増加させる傾向(即ち、黒鉛化傾向)の大きい元素を添加することにより、基地組織はフェライトに保たれ、高温特性と耐食性に優れた焼結摩擦材が得られる。また、ブレーキディスク等の相手材への攻撃性を低めて相手材摩耗量を少なくすることができる。
【選択図】なし

Description

この発明は、自動車、二輪車、鉄道車両、産業機械等の制動装置に用いられるブレーキ用の摩擦材としての焼結摩擦材に関する。
従来、ブレーキ用の焼結摩擦材としては、銅を主成分とし、錫や時により鉄、ニッケル、亜鉛、アンチモン、クロム、鉛等を添加した金属を基材とし、それにアルミナ、ムライト、ジルコニア等のセラミックス研削材や黒鉛、二硫化モリブデン等の潤滑材を添加した焼結摩擦材が用いられている。この種の焼結摩擦材は、レジン系摩擦材より重く、高価で、ブレーキノイズが発生し易い等の要改善点があるが、レジン系摩擦材に比較して摩擦材が高温になる制動条件下でもフェード現象(高温下で制動時の摩擦係数が大幅に低下する現象)を起こさず安定した性能が得られ、強度、耐摩耗性も優れているという長所があるため、過酷な制動条件下でも高い摩擦性能を要求されるブレーキにはこれまで多く採用されている。
高い摩擦係数を安定的に得ることを図ったブロンズ系の乾式焼結摩擦材料の一例が提案されている(特許文献1)。この乾式焼結摩擦材料は、重量比で銅60〜80%、錫3〜20%、アルミナ及び/又はシリカを3〜20%、黒鉛3〜10%、二硫化モリブデン1〜5%及びマンガン15%以下を含むものであり、マトリックス成分として構成されることにより、制動時摩擦係数を安定させ、相手板との間の発熱によって表面に硬質の酸化銅皮膜を形成して、水フェード現象及び熱フェード現象に対して抵抗性を有し、安定した摩擦面をうることを図っている。アルミナ、シリカは、高負荷、高温摩擦摺動に耐える目的で添加され、黒鉛、二硫化モリブデンは潤滑性向上も目的で添加され、マンガンは焼結中他金属の酸化皮膜を還元し、焼結性の向上目的で添加されている。
焼結摩擦材の別の例として、鉄系焼結体からなる有孔の本体部と、この本体部の孔内に固定された水溶液がアルカリ性を示すアルカリ性物質とを有する鉄系焼結摩擦材が提案されている(特許文献2)。摩擦材の骨格となる金属基材は、鉄を主成分とする材料であり、ステンレス、鋳鉄等の一般的な鉄系金属、これらの混合物、その他金属との混合物でとすることができる。潤滑材としては黒鉛、二硫化モリブデン等が例示されている。
焼結摩擦材の更に別の例として、銅又は銅合金をマトリックスとする焼結摩擦材であって、安定化ジルコニアを2〜20重量%含有するものが提案されている(特許文献3)。この焼結摩擦材によれば、銅系又は鉄系焼結摩擦材において、安定化ジルコニアを採用することで、広範な制動条件に対して適応性がよく、安定した摩擦係数が得られ、耐摩性、耐熱性がよく、相手材への攻撃性が少ない焼結摩擦材を得ることを図っている。
しかし近年、環境保護の観点からPRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握及び管理の改善の促進に関する法律)が制定され、ブレーキ用摩擦材として使用する材料も環境保護を考慮して、同法で定められている指定化学物質を用いないことが要求されるようになってきた。ところが、これまで焼結摩擦材の原材料として用いられている上記の銅から鉛までの金属基材やセラミックス、潤滑材等の添加材のうち、鉄、セラミックス、黒鉛以外の材料はPRTR法の指定化学物質に設定されており、今後はできるだけ使用しないことが望まれている。
このような背景から、これまでもPRTR法の指定化学物質をできるだけ使用しない配合の焼結摩擦材の研究・開発が行われてきた。しかしながら、これまで主成分としていた銅や錫を使用しない鉄系材料を主成分とした焼結摩擦材の場合には、制動時に摩擦材の摩耗量や相手材(例えば、ブレーキディスク。主として普通鋳鉄、低合金鋼、ステンレス等の鉄系材料から成る。)の摩耗量が大幅に増加するという現象が生じ、しかも、要求される摩擦係数を確保することができない。また、鉄系材料以外でPRTR法の指定化学物質でないアルミニウム、マグネシウム、チタン等の材料は焼結摩擦材の主成分としては問題が多く、環境保護に優れた焼結摩擦材の実用化はなかなか困難であった。本出願人は、鋳鉄粉又は還元鉄粉を基材とした鉄系焼結摩擦材について発明し、銅系焼結摩擦材と同等の性能を得ている(例えば、特願2005−300817号)。しかしながら、高負荷条件の評価では、銅系焼結摩擦材と同等までには至っていないことが判った。
特公昭63−15976号公報(第2欄、第2行〜第4欄第1行) 特開2002−181095号公報(段落[0022]〜[0026]) 特許第2958493号公報
そこで、焼結摩擦材の原材料として、PRTR法の特定第一種指定化学物質である六価クロム化合物やニッケル化合物は勿論のこと、第一種指定化学物質である亜鉛、アンチモン、銅、錫、鉛、モリブデン等の材料をまったく使用しないことで、環境保護に貢献するとともに、焼結摩擦材の基地組織を高温特性と耐食性に優れたフェライトに保ち、且つ鉄の同種摩擦を防ぐことで相手材摩耗量を少なくする点で解決すべき課題がある。
この発明の目的は、PRTR法の指定化学物質をまったく含まないことで、環境保護の面で好ましいとともに、焼結摩擦材の基地組織をフェライトに保つことで、高温特性と耐食性に優れ、且つブレーキディスク等の相手材への攻撃性を低めて相手材摩耗量を少なくする等、ブレーキ制動時の性能に優れた焼結摩擦材を提供することである。
この発明による焼結摩擦材は、主成分としての高融点の還元鉄粉に黒鉛化傾向の大きい元素を添加して焼結されており、基地組織がフェライトに保たれている。
この焼結摩擦材は、従来の銅粉末が主体である摩擦材に代えて、融点が高い還元鉄から形成された粉末をベースに構成されている。焼結の際に、融点が高い還元鉄粉に潤滑材の黒鉛が固溶して(Fe−C)となる。(Fe−C)は硬さが増すが、融点が下がり耐熱性を低下させていた。そこで、固溶を抑制し、鉄中の炭素を黒鉛(グラファイト)として独立して存在させる割合を増加させる傾向(即ち、黒鉛化傾向)の大きい元素を添加することにより、基地組織はフェライト(体心立方格子のα鉄に最大0.02%の炭素(C)が固溶した固溶体)に保たれる。
この焼結摩擦材において、前記黒鉛化促進元素は、アルミニウム、珪素、チタンの元素群から選ばれる1又は2以上の元素とすることができる。黒鉛化傾向の大きい元素として、アルミニウム(Al)、珪素(Si)、チタン(Ti)が挙げられる。黒鉛化傾向は、大きい順からAl>Si>Ti>Cである。
前記焼結摩擦材において、前記アルミニウム1〜9vol%、前記珪素1〜8vol%、又は前記チタン0.5〜8vol%が、合計0.5〜20vol%の範囲で添加することができる。黒鉛化促進元素であるアルミニウム、珪素又はチタンのそれぞれ及び合計の割合をこのように定めることにより、焼結時の還元鉄粉に対して潤滑材である黒鉛の固溶が抑制され、基地組織を、融点の低下を防ぎ高温特性に優れ且つ比較的軟らかいために相手材攻撃性が低いフェライトに保つことができる。各黒鉛化促進元素は、各下限添加量以下では基地組織をフェライトに保つことができず、各上限添加量以上では添加金属を含む炭化物を生成してしまうことが判明している。珪素を添加する場合は、炭化物の生成を防ぐため、金属シリコンではなくフェロシリコンを添加することが好ましい。焼結により一部固溶によるパーライトがあるが、添加金属により基地組織の大部分をフェライトに保つことができる。
前記焼結摩擦材において、前記フェライトは、前記基地組織中に30%以上存在させることが好ましい。フェライトの基地組織中での存在率(フェライト/基地組織の百分率)を30%以上とすることにより、耐熱性の低下が少なく、好ましい。
前記焼結摩擦材において、前記還元鉄20〜45vol%を含み、更に、平均粒径0.3〜2μmの微細アルミナ0〜15vol%、平均粒径50〜250μmのマグネシア0〜10vol%、平均粒径5〜20μmのアルミナ2〜10vol%、及び黒鉛30〜45vol%を添加することができる。ただし、前記マグネシアと前記アルミナとの合計を5〜15vol%の範囲とすることが好ましい。ここで各成分の範囲設定の理由は、還元鉄が20vol%未満では摩擦材中の結合力不足により摩擦材摩耗量が急激に増加し、45vol%を超えると他の成分が不足し問題点が生じる。マグネシア+アルミナが5vol%未満の場合は摩擦係数が低下し、また15vol%を超えると相手材摩耗量の増加が顕著になる。アルミナの粒径が小さいためアルミナ(5〜15vol%の範囲)だけでも攻撃性を抑制し、制動時の摩擦材及び相手材(鉄系材料)摩耗量を少なくするが、マグネシアと併用することで摩擦係数の確保と相手材攻撃性の抑制を両立させることが容易になる。黒鉛粉末が30vol%未満の場合、潤滑効果が低下するため摩擦材及び相手材摩耗量ともに増加し、45vol%を超えた場合は摩擦係数の低下が大きくなる。基地組織をフェライトに保つための各黒鉛化促進元素は各下限添加量以下では基地組織をフェライトに保つことができず、各上限添加量以上では添加金属を含む炭化物を生成してしまう。
前記焼結摩擦材において、放電プラズマ焼結、ホットプレス等の加圧焼結法による焼結後の焼結体密度の百分率としての相対密度を80%以上とすることができる。
上記した耐熱性の高いフェライト基地組織を有する鉄系焼結摩擦材により銅系焼結摩擦材を上回る性能が得られたが、還元鉄粉は融点が高いために焼結温度が高く、摩擦係数や耐摩耗性等の、目的とする物性値が得にくい。その中で、たとえ高い物性値が得られたとしても、高負荷制動中に火花が発生して問題となる。そこで、主成分である還元鉄粉に微細鉄粉を添加して、鉄粉を還元鉄粉と微細鉄粉との組合せとした。微細鉄粉は、平均粒径として、還元鉄粉の1/10以下の粒径を持つ鉄粉である。このような主成分である鉄粉を融点が高く比較的軟らかい還元鉄粉に微細鉄粉を混ぜることにより、相対密度を低下させることなく硬度(HRS)を軟らかいものとすることができ、その結果、ブレーキディスクのような相手材との接触性を改善することができる。
上記の還元鉄粉に微細鉄粉を混合させた焼結摩擦材において、還元鉄粉に対する微細鉄粉の混合割合を、10〜30vol%の範囲とすることが好ましい。微細鉄粉の添加割合をこのような割合に選定することによって、微細鉄粉の焼結への関与が大きくなって焼結性を高めることができる。そのため、空孔が多い還元鉄粉自体の当該空孔を焼結によって無くすことなく焼結摩擦材を緻密化でき、硬度を低下させることができる。微細鉄粉は還元鉄粉より1/10以下の平均粒径を持つ粉末を選定しているため、同じ体積で還元鉄粉と比較すると表面積が非常に大きくなって活性化するため焼結性が向上する。
上記の還元鉄粉に微細鉄粉を混合させた焼結摩擦材において、前記黒鉛化促進元素は、アルミニウム、珪素、チタンの元素群から選ばれる1又は2以上の元素であり、前記アルミニウム1〜9vol%、前記珪素1〜8vol%、及び前記チタン0.5〜8vol%を、合計0.5〜20vol%の範囲で添加することができる。黒鉛化促進元素であるアルミニウム、珪素又はチタンのそれぞれ及び合計の割合をこのように定めることにより、焼結時の還元鉄粉に対して潤滑材の黒鉛の固溶を防ぎ、基地組織をフェライト(還元鉄粉の基地組織)に保つことができる。各黒鉛化促進元素は、各下限添加量以下では基地組織をフェライトに保つことができず、各上限添加量以上では添加金属を含む炭化物を生成してしまうことが判明している。その他、珪素を添加する場合は、炭化物の生成を防ぐため、金属シリコンではなくフェロシリコンを添加することが好ましい。
上記の還元鉄粉に微細鉄粉を混合させた焼結摩擦材において、前記還元鉄20〜45vol%と、前記還元鉄に対して30vol%以下である前記微細鉄粉2〜14vol%とを含み、更に、前記黒鉛化促進元素は、アルミニウム、珪素、チタンの元素群から選ばれる1又は2以上の元素であり、前記アルミニウム1〜9vol%、前記珪素1〜8vol%、及び前記チタン0.5〜8vol%を、それらの合計を0.5〜20vol%の範囲として添加し、更にまた、平均粒径0.3〜2μmの微細アルミナ0〜15vol%、平均粒径50〜250μmのマグネシア0〜10vol%、平均粒径5〜20μmのアルミナ2〜10vol%、及び黒鉛30〜45vol%を、前記マグネシアと前記アルミナとの合計を5〜15vol%の範囲として、添加することができる。ここで各成分の範囲設定の理由は、還元鉄が20vol%未満では摩擦材中の結合力不足により摩擦材摩耗量が急激に増加し、45vol%を超えると他の成分が不足し問題点が生じる。微細鉄が還元鉄に対して30%を超えると摩耗材の硬度が増し、硬く脆くなるため、摩擦材摩耗量と相手材摩耗量ともに増加する。マグネシア+アルミナが5vol%未満の場合は摩擦係数が低下し、また15vol%を超えると相手材摩耗量の増加が顕著になる。アルミナの粒径が小さいためアルミナ(5〜15vol%の範囲)だけでも攻撃性を抑制し、制動時の摩擦材及び相手材(鉄系材料)摩耗量を少なくするが、マグネシアと併用することで摩擦係数の確保と相手材攻撃性の抑制を両立させることが容易になる。黒鉛粉末が30vol%未満の場合、潤滑効果が低下するため摩擦材及び相手材摩耗量ともに増加し、45vol%を超えた場合は磨擦係数の低下が大きくなる。基地組織をフェライトに保つための各黒鉛化促進元素は各下限添加量以下では基地組織をフェライトに保つことができず、各上限添加量以上では添加金属を含む炭化物を生成してしまう。その他、珪素を添加する場合は、炭化物の生成を防ぐため、金属シリコンではなくフェロシリコンを添加することが好ましい。
更に、還元鉄粉に微細鉄粉を混合させた焼結摩擦材においても、放電プラズマ焼結、ホットプレス等の加圧焼結法による焼結後の相対密度(焼結耐密度/真密度の百分率)を80%以上とすることができる。
本発明による焼結摩擦材は、主成分が鉄系材料で、他の配合材は研削材のセラミックス、潤滑材の黒鉛、金属粉を使用している。そのため、焼結の際に、融点が高い還元鉄粉に潤滑材の黒鉛が固溶して炭化鉄(Fe−C)となる。(Fe−C)は硬さが増すが、融点が下がり耐熱性を低下させていた。そこで、黒鉛化傾向(Al>Si>Ti>C)の大きい元素を添加することにより、基地組織をフェライトに保つことができる。その結果、主成分の融点の低下が少なく、高温特性・耐食性に優れた焼結摩擦材が得られる。フェライトは、黒鉛が固溶した(Fe−C)より軟らかいため、相手材摩耗量も少なくすることができる。
この焼結摩擦材において、基地組織をフェライト(還元鉄粉の基地組織)に保つため、黒鉛化促進元素であるアルミニウム、珪素、又はチタンの添加量の上下限を定めることで、潤滑材の黒鉛の固溶を抑制し基地組織をフェライトに保つことができる。各黒鉛化促進元素は各下限添加量以下では基地組織をフェライトに保つことができず、各上限添加量以上では添加金属を含む炭化物が生成される。
この焼結摩擦材において、フェライトの存在率(フェライト/基地組織の百分率)は30%以上で耐熱性の低下が少なく、更に、高温特性に優れ、相手材摩耗量も少ない焼結摩擦材とすることができる。
この焼結摩擦材において、還元鉄、マグネシア、アルミナ、マグネシア+アルミナ、及び黒鉛ついての各成分の範囲設定を定めることにより、摩擦係数の確保と、摩擦材摩耗量及び相手材の摩耗量の抑制との両立を果たすことができる。黒鉛粉末についても、下限未満では潤滑効果が低下するため摩擦材及び相手材摩耗量ともに増加し、上限を超えた場合には摩擦係数の低下が大きくなる。基地組織をフェライトに保つための各黒鉛化促進元素は各下限添加量以下では基地組織をフェライトに保つことができず、各上限添加量以上では添加金属を含む炭化物を生成する。
この焼結摩擦材において、加圧焼結法を用いるときには、焼結後の相対密度(焼結体密度/真密度の百分率)が80%以上とすることにより、鉄系材料間の結合力が強いため、強度、耐摩耗性に優れた焼結摩擦材を得ることができる。
更に、還元鉄粉を主成分とする焼結摩擦材によれば、還元鉄粉に微細鉄粉を混合させることにより相対密度を低下させることなく硬度を低下させることができ、相手材との接触性が改善され、ブレーキディスクのような相手材との間で局部当たりに起因した温度上昇や偏摩耗を抑制することができ、摩擦係数・耐摩耗性を向上させることができる。微細鉄粉の添加量を還元鉄粉に対して10〜30vol%の範囲とすることにより、主成分が還元鉄粉のみの場合よりも低い焼結温度で焼結が可能となり、且つ微細鉄粉が焼結に大きく関与して焼結性を高めることが可能となる。更に、還元鉄粉に微細鉄粉を混合させることで、放電プラズマ焼結、ホットプレス等の加圧焼結法による焼結させた後の焼結摩擦材の相対密度(焼結体密度/真密度の百分率)を80%以上とし、鉄系材料間の結合力を強めることができ、強度・耐摩耗性に優れている焼結摩擦材を得ることができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明による焼結摩擦材を更に、詳細に説明する。
まず、原材料として平均粒径約160μmの還元鉄粉と、基地組織をフェライトに保つための黒鉛化促進元素である平均粒径約20μmのアルミニウム粉末及び/又は平均粒径約24μmの珪素(フェロシリコン)及び/又は平均粒径約10μmのチタン粉末と平均粒径約1.2μmの微細なアルミナ粉末と、平均粒径約190μmのマグネシア粉末と、平均粒径約170μmの天然黒鉛粉末と、平均粒径約240μmの人造黒鉛粉末を用意した。
次に、上記の各原材料を表1に示す配合Cに各々秤量後、攪拌らい潰機(石川工場製)を用い、混合時の偏析を防ぐため混合物に4%のメタノールを添加して10分間混合することにより混合粉末を作製した。C1〜C6は黒鉛化傾向の大きい元素を添加して基地組織が耐熱性の高いフェライトに保たれている。C7〜C9は黒鉛化傾向の大きい元素を2又は3元素添加することで更に基地組織をフェライトに保つ。なお比較材として現在量産されている銅系焼結材Aの混合粉末と、黒鉛化傾向の大きい元素を添加していない配合の代表例Bの混合粉末も用意した。
Figure 2008025018
更に、各混合粉末を23mm×35mmのキャビティを有する黒鉛型に充填し、放電プラズマ焼結装置(住友石炭鉱業製、型式SPS−515S)を用い、圧力14MPa、昇温速度100℃/min、焼結温度1150℃、保持時間5minの条件で焼結を行った。なお、A配合材は量産材と同条件で作製するため、バッチ式焼結炉(昇温速度10〜20℃/min、加圧0.7MPa)でも焼結を行い、放電プラズマ焼結装置で焼結したものと比較した。
焼結後、各焼結体の相対密度(焼結体の見掛け密度/焼結体の真密度の百分率)、硬さを測定した。また、500℃、600℃の高温ブレーキ性能試験を実施し、摩擦係数及び相手材摩耗量を求めた。焼結体の見掛け密度は大気及び水中の重量から算出し、真密度は原材料の真密度と配合割合から算出した。硬さはロックウェル硬さ試験機のSスケール(HRS)で測定した。ブレーキ性能試験は当社所有の1/10スケールテスタ試験機を用いて実施した。表1には、焼結条件、相対密度、硬さとブレーキ性能試験における平均摩擦係数と相手材の摩耗量が示されている。
表1から理解されるように、本発明品はいずれも高温時の摩擦係数が安定して高く、また比較材Bに比較して相手材摩耗量が少ないことが解る。C1〜C6は黒鉛化傾向の大きい元素を添加していて、比較材A,Bは600℃の平均摩擦係数が0.22〜0.23であるのに対して、0.25〜0.28と高く、C7〜C9は黒鉛化傾向の大きい元素を2つ以上組み合わせると、600℃の平均摩擦係数が0.27〜0.29と更に高く好ましい。
図1はこの発明による焼結摩擦材C1の基地組織の一例を示す顕微鏡写真であり、図2は比較材Bの基地組織の一例を示す顕微鏡写真である。基地組織を5%ナイタールで10秒エッチング処理した。図2から、比較材Bの基地組織はパーライトの生成が多いことが判る。また、珪素を添加する場合は炭化物の生成を防ぐため、金属シリコンではなくフェロシリコンを添加した。フェライトの存在率は、比較材Bが約20%であるのに対して、発明材Clは約45%であった。
次に、本発明による焼結摩擦材の別の実施例を説明する。
まず、原材料として平均粒径約160μmの還元鉄粉と、当該還元鉄粉の一種であるが還元鉄粉とはサイズ(平均粒径)が1/10以下であるような、平均粒径約5μmの微細鉄粉と、基地組織をフェライトに保つための黒鉛化促進元素である平均粒径約20μmのアルミニウム粉末及び/又は平均粒径約24μmの珪素(フェロシリコン)及び/又は平均粒径約10μmのチタン粉末と平均粒径約1.2μmの微細なアルミナ粉末と、平均粒径約190μmのマグネシア粉末と、平均粒径約170μmの天然黒鉛粉末と、平均粒径約240μmの人造黒鉛粉末を用意した。
次に、上記の各原材料を表2に示す配合Dに各々秤量後、攪拌らい潰機(石川工場製)を用い、混合時の偏析を防ぐため混合物に4%のメタノールを添加して10分間混合することにより混合粉末を作製した。なお、表2においては、比較材として、表1に銅系焼結材Aの混合粉末として既に示した現在量産されている試料A1及びA2と、表1に示した本発明である耐熱性の高いフェライト基地組織を有する鉄系焼結材の代表例C8及びC9を再掲している。
Figure 2008025018
焼結型及び放電プラズマ焼結装置、並びに温度・圧力・時間等の焼結条件、或いはA配合材についての焼結については、先の実施例の場合と同じでよく、これらについての再度の説明を省略する。また、焼結後の各焼結体の相対密度(見掛け密度と真密度)、硬さの測定、高温ブレーキ性能試験における摩擦係数及び相手材摩耗量の測定についても、先の実施例の場合と同じ条件でよく、再度の説明を省略する。
表2には、焼結条件、相対密度、硬さとブレーキ性能試験における平均摩擦係数と相手材の摩耗量が示されている。表2から理解されるように、D1〜D5は微細鉄を表中の数値のvol%で含有(D1からD5に至るほど含有率が大きい)しており、また、黒鉛化傾向の大きい元素が添加されている。本発明品(D1〜D5)はいずれも高温時の摩擦係数が安定して高く、また比較材に比較して相手材摩耗量が少ないことが解る。即ち、相対密度と硬度については、本発明材Cと比較して、相対密度を大きく低下させることなく、硬度を量産タイプの試料Aの場合の焼結摩擦材に近づける改善(数値としては低い値で軟らかい)が得られている。摩擦係数については、比較材Aは600℃の平均摩擦係数が0.22〜0.23であるのに対して、本発明材Cの平均摩擦係数0.27、0.29と同等又はそれを上回る係数を示している。更に、相手材摩耗量についても、本発明材Cの相手材摩耗量を改善し、量産タイプの試料Aの場合の焼結摩擦材に近づける改善(数値としては小さい値で相手材摩耗量が少ない)が得られている。
この発明による焼結摩擦材C1の基地組織の一例を示す顕微鏡写真である。 比較材Bの基地組織の一例を示す顕微鏡写真である。

Claims (11)

  1. 主成分として高融点の還元鉄粉に黒鉛化傾向の大きい元素を添加して焼結されており、基地組織がフェライトに保たれていることから成る焼結摩擦材。
  2. 前記黒鉛化促進元素は、アルミニウム、珪素、チタンの元素群から選ばれる1又は2以上の元素であることから成る請求項1に記載の焼結摩擦材。
  3. 前記アルミニウム1〜9vol%、前記珪素1〜8vol%、又は前記チタン0.5〜8vol%が、合計0.5〜20vol%の範囲で添加されていることから成る請求項2に記載の焼結摩擦材。
  4. 前記フェライトは、前記基地組織中に30%以上存在することから成る請求項3に記載の焼結摩擦材。
  5. 前記還元鉄20〜45vol%を含み、更に、平均粒径0.3〜2μmの微細アルミナ0〜15vol%、平均粒径50〜250μmのマグネシア0〜10vol%、平均粒径5〜20μmのアルミナ2〜10vol%、及び黒鉛30〜45vol%が、前記マグネシアと前記アルミナとの合計を5〜15vol%の範囲として、添加されていることから成る請求項3に記載の焼結摩擦材。
  6. 放電プラズマ焼結、ホットプレス等の加圧焼結法による焼結後の焼結体密度の百分率としての相対密度が80%以上であることから成る請求項1〜5のいずれか1項に記載の焼結摩擦材。
  7. 前記還元鉄粉に、平均粒径が1/10以下の微細鉄粉が添加されて焼結されていることから成る請求項1に記載の焼結摩擦材。
  8. 前記微細鉄粉の前記還元鉄粉に対する混合割合は、10〜30vol%の範囲であることから成る請求項7に記載の焼結摩擦材。
  9. 前記黒鉛化促進元素は、アルミニウム、珪素、チタンの元素群から選ばれる1又は2以上の元素であり、前記アルミニウム1〜9vol%、前記珪素1〜8vol%、及び前記チタン0.5〜8vol%が、合計0.5〜20vol%の範囲で添加されていることから成る請求項7又は8に記載の焼結摩擦材。
  10. 前記還元鉄20〜45vol%と、前記還元鉄に対して30vol%以下である前記微細鉄2〜14vol%とを含み、更に、前記黒鉛化促進元素は、アルミニウム、珪素、チタンの元素群から選ばれる1又は2以上の元素であり、前記アルミニウム1〜9vol%、前記珪素1〜8vol%、及び前記チタン0.5〜8vol%がそれらの合計を0.5〜20vol%の範囲として添加され、更にまた、平均粒径0.3〜2μmの微細アルミナ0〜15vol%、平均粒径50〜250μmのマグネシア0〜10vol%、平均粒径5〜20μmのアルミナ2〜10vol%、及び黒鉛30〜45vol%が、前記マグネシアと前記アルミナとの合計を5〜15vol%の範囲として、添加されていることから成る請求項7に記載の焼結摩擦材。
  11. 放電プラズマ焼結、ホットプレス等の加圧焼結法による焼結後の焼結体密度の百分率としての相対密度が80%以上であることから成る請求項7〜10のいずれか1項に記載の焼結摩擦材。
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