JP2008000131A - 被検水棲生物の生理状態を評価する方法 - Google Patents

被検水棲生物の生理状態を評価する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、被検水棲生物の生理状態を遺伝子発現により確認し、該被検生物が生物学的試験における標準状態の指標動物として適しているか否かを評価する方法を提供することを課題とする。また、様々な飼育条件下における被検水棲生物の生理状態を遺伝子発現により確認し、該飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適しているか否かを評価する方法を提供ことも課題とする。
【解決手段】本発明者らは、上記課題を解決するために、被検水棲生物に対して、網羅的遺伝子発現解析を行い、生理状態に関与する水棲生物の遺伝子の特定を行った。その結果、生理状態に関与するメダカ遺伝子群を同定し、本遺伝子群の発現確認を行うことで被検生物の生理状態を確認できることを見出した。
【選択図】なし

Description

本発明は、被検水棲生物の生理状態を遺伝子発現により確認し、該被検生物が生物学的試験における標準状態の指標動物として適しているか否かを評価する方法に関する。
現在、生物学的試験には様々な指標生物が用いられている。生物学的試験に用いられる指標生物は予めじゅん化され、死亡率が低い、病気がない、行動異常がない、健康状態がよいといった外観的な検査を受ける。外観的な検査方法で指標生物が標準状態にあることを確かめることにより、じゅん化中の飼育方法が適切であると判断された後、はじめて試験に用いられる。さらに、生物学的試験の終了時においては外観検査により対照区の指標生物が標準状態にあることを確かめることにより、試験中の飼育方法が適切であると判断され、当該試験は有効とみなされる。また、野外における生物学的調査の場合においても外観検査により指標生物の生理状態を評価している。
しかしながら、外観検査において問題が無いと認定されても、その生理状態には差異が存在することが指摘されており、外観検査のみで指標生物の生理状態を確実に評価することは難しいとされている。じゅん化時における指標生物の生理状態に差異が生じているために、引き続き行われる生物学的試験に差異が生じると考えられている。また、生物学的試験終了時の対照区の生理状態に差異が生じているために、該生物学的試験の結果を正確に判定できない現状がある。
すなわち、外観検査のみでは試験に用いられる指標生物の試験前あるいは試験中における対照区の生理状態に差異が生じるために、正確な試験結果が得られない危険性があるものと示唆されている。従って、指標生物の生理状態を外観検査という試験者の主観的な判断により評価するだけでなく、科学的手法により客観的に評価する方法の確立が求められている。
メダカは平成16年度に施行された「改正化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)」(日本)において義務付けられた生態毒性試験に推奨されている水棲生物種である。メダカの生態毒性試験はGLP(適正検査基準)認定を受けた機関がこれを行うことになっている。詳細なメダカの飼育方法が標準マニュアルとして提供されているものの、本マニュアルにより飼育されたメダカが標準状態にあるか否かを客観的に評価する手法は存在していなかった。
近年、実施された生物学的試験が有効であると判定された後の対照区と試験区の比較解析方法としては、形態学的・組織学的手法のみならず、生理学・生化学的手法、遺伝子発現・たんぱく発現状況の測定といった様々な解析手法が用いられており、生物の生理状態を詳細に解析できる状況にある。このうち、網羅的遺伝子発現状況の測定は、簡便に生物の生理状態を判定することができることが知られている。
しかしながら、網羅的遺伝子発現状況の測定技術が、被検生物(例えば被検水棲生物)が生物学的試験における標準状態の指標生物として適しているか否かを評価する際に利用されたことは、これまでになかった。
尚、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
OECD Guidelines for Testing of Chemicals, "Fish, acute toxicity test" Vol. 203, 1-9, 1992 USEPA, EPA/600/4-90-027F, "Methods for measuring the acute toxicity of effluents and receiving waters to freshwater and marine organisms, 4th ed.", (1993) 改正化学物質審査規制法(厚生労働省、経済産業省、環境省、日本、平成16年2月)
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検水棲生物の生理状態を遺伝子発現により確認し、該被検生物が生物学的試験における標準状態の指標生物として適しているか否かを評価する方法を提供することにある。
すなわち、外観検査で指標水棲生物の生理状態を評価するのではなく、遺伝子発現状況を測定することにより指標生物として用いる予定の被検水棲生物の生理状態を測定し、引き続き行われる生物学的試験に適しているか否かを評価する方法を提供することを課題とする。あるいは、遺伝子発現状況を測定することにより試験中における対照区指標生物として用いる予定の被検水棲生物の生理状態を調べ、当該試験の有効性を評価する方法を提供することを課題とする。
また、様々な飼育条件下における被検水棲生物の生理状態を遺伝子発現により確認し、該飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適しているか否かを評価する方法を提供することも課題とする。さらに、該評価方法によって特定された飼育条件により生物学的試験における標準状態の指標生物を育成する方法、および該育成方法により生育した標準状態の指標生物として用いることが可能な水棲生物の提供も課題とする。
上記課題を解決するために本発明者らは、様々な飼育条件下における生物学的試験用の標準状態の指標生物として用いられる予定の水棲生物(メダカ)または、生物学的試験中の対照区として用いられる予定の指標水棲生物(メダカ)に対して、網羅的遺伝子発現解析を行い、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の特定を行った。
具体的には、生態毒性試験用にじゅん化したメダカの生理状態の研究を行った。まず、生態毒性試験標準マニュアルの検証を行い、標準マニュアルに従い同一条件下においてじゅん化した成熟メダカの遺伝子発現状況はオス・メスの性差はあるものの、非常に安定していることが明らかとなった(図1a、1b)。
次に、異なる飼料による飼育が、メダカの生理状態にどのような影響を与えるかを検討した。その結果、与える飼料の種類は、メダカの生存率、生育状態に大きな影響を与えることが明らかとなった(図2)。また、同一環境下でじゅん化を行っても飼料の違いにより成熟メダカの遺伝子発現状況が大きく異なること、および、各遺伝子の発現状況はメダカの生存率および生育状態に相関を示すことが明らかとなった(図1c)。
次に、低溶存酸素処理が、生態毒性試験における対照区メダカの生理状態にどのような影響を与えるかを検討した。その結果、溶存酸素濃度はメダカの生存率、生育状態に大きな影響を与えることが明らかとなった。また、同一環境下でじゅん化させても溶存酸素濃度の違いにより成熟メダカの遺伝子発現状況が大きく異なること、および、各遺伝子の発現状況はメダカの生存率および生育状態に相関を示すことが明らかとなった(図1d)。
さらに、メダカの生理状態が悪化した際、すなわち生存率および生育状態が悪化した際に、大きく発現量が変化した遺伝子の同定を行った。その結果、26,689種類の遺伝子から、1/4倍以下発現量が変化した遺伝子を23種類(配列番号:1〜23)、1/2倍以下発現量が変化した遺伝子を93種類(配列番号:1〜93)、2倍以上発現量が変化した遺伝子を18種類(配列番号:93〜111)同定した(表1)。
また、メダカの生理状態に影響を及ぼすと考えられる環境下においても、該遺伝子の発現量が変化しない遺伝子をネガティブコントロールとして27種類(配列番号:112〜138)同定した(表2)。このネガティブコントロールの使用法の1例としては、生理状態の評価に用いる遺伝子とネガティブコントロール遺伝子の発現量を、被検水棲生物と正常対照区で飼育したメダカとで求める。その際、ネガティブコントロール遺伝子の発現量は被検水棲生物と対照区とで変化しないと考えられる。つまり、ネガティブコントロール遺伝子の発現量から、生理状態の評価に用いる遺伝子の発現量を補正する事が可能である。また、ネガティブコントロール遺伝子自体の発現量を被検水棲生物と正常対照区とで測定・比較してもよい。発現量に差があるとすれば、その程度は測定誤差なのか、ノイズなのか、実施環境の微妙な違いなのか等であり、それを実際の測定値の補正に用いることもできる。
さらに、DNAマイクロアレイ解析により、上記の育成方法により異なる溶存酸素条件下で飼育した各メダカの遺伝子発現状態を確認したところ、高溶存酸素条件での飼育がメダカの生理状態を悪化させている事が明らかとなった。本発明で同定された生理状態に関与する水棲生物遺伝子を用いる事により、生存率に関わりなく、メダカの生理状態を評価する事が可能である事が明らかとなった。
即ち、本発明者らは、生理状態に関与するメダカ遺伝子群を同定し、本遺伝子群の発現確認を行うことで被検生物の生理状態を確認できることを見出した。また、本方法を適用することにより被検生物が生物学的試験における標準状態の指標動物として適しているか否かを評価できること、および、飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適しているか否かを評価できることを見出し、これにより本発明を完成するに至った。
本発明は、より具体的には、以下の〔1〕〜〔16〕を提供する。
〔1〕 以下の(a)〜(c)の工程を含む、被検水棲生物の生理状態を評価する方法。
(a)被検水棲生物由来の生物学的試料において、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルを決定する工程
(b)被検水棲生物由来の生物学的試料における該遺伝子の発現レベルと、該遺伝子の正常対照発現レベルを比較する工程
(c)(b)における発現レベルの比較結果により、被検水棲生物の生理状態が良好であるか否かを評価する工程
〔2〕 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:1〜23に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも低下した場合に、被検水棲生物の生理状態が良好でないものと評価する、請求項1に記載の方法。
〔3〕 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:1〜93に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも低下した場合に、被検水棲生物の生理状態が良好でないものと評価する、請求項1に記載の方法。
〔4〕 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:93〜111に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも上昇した場合に、被検水棲生物の生理状態が良好でないものと評価する、請求項1に記載の方法。
〔5〕 以下の(a)〜(c)の工程を含む、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適しているか否かを評価する方法。
(a)被検水棲生物由来の生物学的試料において、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルを決定する工程
(b)被検水棲生物由来の生物学的試料における該遺伝子の発現レベルと、該遺伝子の正常対照発現レベルを比較する工程
(c)(b)における発現レベルの比較結果により、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適しているか否かを評価する工程
〔6〕 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:1〜23に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも低下した場合に、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していないと評価する、請求項5に記載の方法。
〔7〕 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:1〜93に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも低下した場合に、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していないと評価する、請求項5に記載の方法。
〔8〕 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:93〜111に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも上昇した場合に、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していないと評価する、請求項5に記載の方法。
〔9〕 以下の(a)〜(c)の工程を含む、被検飼育条件が、生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適しているか否かを評価する方法。
(a)被検飼育条件下で飼育された被検水棲生物由来の生物学的試料において、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルを決定する工程
(b)被検水棲生物由来の生物学的試料における該遺伝子の発現レベルと、該遺伝子の正常対照発現レベルを比較する工程
(c)(b)における発現レベルの比較結果により、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適しているか否かを評価する工程
〔10〕 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:1〜23に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも低下した場合に、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していないと評価する、請求項9に記載の方法。
〔11〕 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:1〜93に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも低下した場合に、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していないと評価する、請求項9に記載の方法。
〔12〕 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:93〜111に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも上昇した場合に、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していないと評価する、請求項9に記載の方法。
〔13〕 請求項9〜12のいずれかに記載の方法により、生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していると評価された被検飼育条件により、水棲生物を育成する方法。
〔14〕 生物学的試験における標準状態の指標生物として用いることの出来る、請求項13によって育成された水棲生物。
〔15〕 配列番号:112〜138に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群を、ネガティブコントロールとして使用するものである請求項1〜12のいずれかに記載の被検水棲生物の生理状態、指標生物の生理状態、又は被検水棲生物・指標生物の飼育条件の評価方法。
〔16〕 配列番号:1〜138のいずれかに記載の核酸配列に対応する一つまたは複数のプローブからなる、核酸マイクロアレイ。
本発明において、水棲生物の生理状態に関与する遺伝子が特定され、本遺伝子を指標として、被検水棲生物の生理状態の評価を容易に行うことが可能となった。本評価方法を用いることにより、生物学的試験の前に行われる従来の外観検査では検出できなかった、指標生物における生理状態の差異を確認することが出来るものと考えられる。そのことから、本評価方法によって標準状態であると評価された水棲生物を用いて、生物学的試験を行った場合、その結果はより正確なものになるものと考えられる。また、本評価方法によって、生態毒性試験における対照区水棲生物の生理状態の評価を行うことにより、その生態毒性試験の結果は、より正確なものになるものと考えられる。
さらに、このような評価方法を適用することにより、指標生物の生息環境あるいは飼育方法を査定することが可能である。この場合、指標生物は実験施設内で飼育されている生物だけでなく、野外で生息している生物であってもよい。
本発明は、水棲生物の生理状態に関連した遺伝子発現パターンの発見に基づく。本発明において、水棲生物は特に限定されるものではないが、好ましくは魚類を、より好ましくはメダカを挙げることが出来る。
本発明は、被検水棲生物由来の生物学的試料において生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルを決定することによって、被検水棲生物の生理状態を評価する方法を特徴とする。
本明細書において同定された発現差のある遺伝子は、被検水棲生物の生理状態を評価するためのマーカーとして、または生理状態を改善するためにその発現が維持されるべき遺伝子標的として用いられる。
正常対照水棲生物と比較して、他の環境条件下で育成した水棲生物において発現レベルが変調している遺伝子(実施例における表1及び表2)、を、本明細書において総称して「生理状態に関与する水棲生物遺伝子」と呼び、対応するコードされたポリペプチドを「生理状態に関与する水棲生物タンパク質」と呼ぶ。特に明記していなければ、「生理状態に関与する水棲生物遺伝子」は、本明細書に開示された任意の配列(例えば、配列番号:1〜138のいずれかに記載の配列)を指すことを意味する。該遺伝子の配列番号、データベースのアクセッション番号を実施例における表1及び表2に示す。
被検水棲生物由来の生物学的試料における様々な遺伝子の発現を測定することによって、被検水棲生物の生理状態が評価される。同様に、様々な環境下に応答したこれらの遺伝子の発現を測定することによって、被検水棲生物の育成条件として最適な環境を評価することができる。
本発明は、以下の(a)〜(c)の工程を含む、被検水棲生物の生理状態を評価する方法に関する。
(a)被検水棲生物由来の生物学的試料において、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルを決定する工程
(b)被検水棲生物由来の生物学的試料における該遺伝子の発現レベルと、該遺伝子の正常対照発現レベルを比較する工程
(c)(b)における発現レベルの比較結果により、被検水棲生物の生理状態が良好であるか否かを評価する工程
本方法の第一工程として、被検水棲生物由来の生物学的試料において、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の少なくとも一つ以上の遺伝子の発現レベルを決定する。
被検水棲生物由来の生物学的試料は、水棲生物が小型である場合には、水棲生物全体から得た細胞試料を用いてもよい。水棲生物が大型である場合には、水棲生物の一部の細胞試料を単離して生物学的試料として用いてもよい。遺伝子発現はまた、被検水棲生物の血液のような他の体液から測定してもよい。他の生物学的試料は、タンパク質レベルを測定するために用いることができる。
発現レベルを決定する遺伝子群は特に限定されるものではないが、好ましくは配列番号:1〜111のいずれかに記載の配列のうちの1つまたは複数の塩基配列からなる遺伝子群を、より好ましくは配列番号:1〜23のいずれかに記載の配列のうちの1つまたは複数の塩基配列からなる遺伝子群を挙げることができる。
特定の標本における生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルは、配列番号:1〜138のいずれかに記載の塩基配列に対応するmRNA、または配列番号:1〜138のいずれかに記載の塩基配列によってコードされたタンパク質を定量することにより決定することが出来る。mRNAの定量法は、当業者に公知である。例えば、配列番号:1〜138のいずれかに記載の塩基配列に対応するmRNAのレベルは、ノーザンブロッティングまたはRT-PCRにより推測され得る。当業者であれば、配列番号:1〜138のいずれかに記載の塩基配列を定量するためのプローブまたはプライマーのヌクレオチド配列を設計することができる。プローブには、「生理状態に関与する水棲生物遺伝子」の少なくとも10、20、50、100ヌクレオチドが含まれていてもよい。また、発現に差のある配列に対して特異的なプライマーを用いて、逆転写を利用したPCRアッセイを用いて、該遺伝子の発現を測定することができる。
配列番号:1〜138のいずれかに記載の塩基配列を含む遺伝子の発現レベルは、遺伝子によってコードされたタンパク質の活性または発現量に基づき分析されてもよい。配列番号:1〜138のいずれかに記載の塩基配列によってコードされるタンパク質の量を決定するための方法は、当技術分野で周知である。例えば、イムノアッセイ法は、生物学的材料中のタンパク質の決定に有用である。任意の生物学的材料が、タンパク質またはその活性の決定のため使用され得る。該遺伝子にコードされるタンパク質の生物学的活性測定も、当技術分野において周知の方法により行うことができる。
本発明においては、水棲生物の生理状態を評価するための判定試薬として用いてもよい。ここでいう判定試薬とは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと結合する化合物を含む。好ましくは、配列番号(1〜138)のいずれかに記載の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、または配列番号(1〜138)のいずれかに記載の塩基配列によってコードされるタンパク質と結合する抗体が、そのような化合物として使用され得る。
本方法の第二工程として、被験水棲生物の生物学的試料における生理状態に関与する水棲生物遺伝子の1つまたは複数の発現レベルを、該遺伝子の正常対照レベルと比較する。本発明において、「正常対照レベル」とは、化審法の国際的な毒性試験標準マニュアル(例えば、OECD Guidelines for Testing of Chemicals, "Fish, acute toxicity test" Vol. 203, 1-9, 1992; 2)USEPA, EPA/600/4-90-027F, "Methods for measuring the acute toxicity of effluents and receiving waters to freshwater and marine organisms, 4th ed.", (1993)または改正化学物質審査規制法(厚生労働省、経済産業省、環境省、日本、平成16年2月)において規定されているマニュアル)に指定されている手順・条件に則って飼育またはじゅん化された水棲生物由来の生物試料における遺伝子の発現レベルのことをいい、その遺伝子発現レベルの変動幅は集積したデータの許容範囲内であるものをいう。
化審法の国際的な毒性試験標準マニュアルに指定されている飼育条件としては、具体的に以下の条件を挙げることが出来る。水温:21〜25℃の範囲で一定にし、変動は±1.0℃、水の溶存酸素濃度:飽和酸素濃度の少なくとも80%、明暗周期:12-16時間明(試験条件は16時間)、給餌:ブラインシュリンプの24時間以内の孵化幼生を毎日2回、水のpH:6-8.5で変動は1.0以内、TOC:2mg/l未満、全硬度:炭酸カルシウム濃度10-250mg/l。
本発明において許容範囲内とは、有意水準5%で、好ましくは有意水準1%で、より好ましくは有意水準0.1%で、遺伝子発現レベルのt検定を行った結果、正常対照と被検生物試料間で有意な差があるとは認められない範囲内をいう。すなわち生理状態が良好である水棲生物において典型的に見出される遺伝子の発現プロファイルである。対照レベルは、既に試験された水棲生物に基づく、発現パターンのデータベースでありうる。
本発明において、生理状態が良好である水棲生物とは、化審法の国際的な毒性試験標準マニュアルに準じた飼育条件で生育され、行動上・外見上の異常の個体が存在せず、かつ、じゅん化中の連続した7日間で全体の死亡率が5%より低く、毒性試験終了時に対照区の死亡率が10%を超えないような状態が保たれている水棲生物のことをいう。本発明において、「生理状態が良好である水棲生物」は、「標準状態の水棲生物」と言い換えることも出来る。
本方法の第三工程として、上記発現レベルの比較結果により、被検水棲生物の生理状態が良好であるか否かを評価する。本発明において「被検水棲生物の生理状態が良好であるか否かを評価する」とは、「被検水棲生物の生理状態が良好であるか否かを示す」ことと同様の意味を示す。
被検水棲生物由来の生物学的試料における生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルの増加または減少は、被検水棲生物の生理状態が良好であるか否かの指標となる。例えば、正常対照レベルと比較された被検水棲生物由来の生物学的試料における配列番号:1〜93のいずれかに記載の塩基配列を含む遺伝子の発現レベルの減少、又は、配列番号:93〜111のいずれかに記載の塩基配列を含む遺伝子の発現レベルの増加は、被検水棲生物の生理状態が悪化していることの指標となる。反対に、被検水棲生物由来の生物学的試料における、配列番号:1〜111のいずれかに記載の塩基配列を含む遺伝子の発現レベルが、正常対照レベルと同等であることは、被検水棲生物の生理状態は良好であることの指標となる。
生理状態に関与する水棲生物遺伝子のうちの1つまたは複数を正常対照レベルと比較し、被検水棲生物来の生物学的試料において発現レベルが変化している場合、それは、被検水棲生物の生理状態が悪化していることの指標となる。例えば、生理状態に関与する水棲生物遺伝子(配列番号:1〜111のいずれかに記載の塩基配列)のうち、少なくとも1%、5%、10%、25%、50%、60%、80%、90%、またはそれ以上が、正常対照レベルから変化している場合には、生理状態が悪化しているものと評価することが出来る。
具体的には、配列番号:1〜93のいずれかに記載の塩基配列から選択される生理状態に関与する水棲生物遺伝子群の発現レベルが、正常対照発現レベルより低下した場合に、被検水棲生物の生理状態が良好でないものと評価することが出来る。
より具体的には、配列番号:1〜23のいずれかに記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群の発現レベルが、正常対照発現レベルの50%(1/2倍)より小さい場合に、より好ましくは25%(1/4倍)より小さい場合に、被検水棲生物の生理状態が良好でないものと評価することが出来る。また、配列番号:1〜93のいずれかに記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群の発現レベルが、正常対照発現レベルの50%(1/2倍)より小さい場合に、被検水棲生物の生理状態が良好でないものと評価することが出来る。若しくは、統計的手法を用いて、有意水準5%で、好ましくは有意水準1%で、より好ましくは有意水準0.1%で、遺伝子発現レベルの減少に有意差が認められた場合に、被検水棲生物の生理状態が良好でないものと評価することが出来る。
また、配列番号:93〜111のいずれかに記載の塩基配列から選択される生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルが、正常対照発現レベルより上昇した場合に、被検水棲生物の生理状態が良好でないものと評価することが出来る。より具体的には、配列番号:93〜111のいずれかに記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群の発現レベルが、正常対照発現レベルの200%(2倍)より大きい場合に、被検水棲生物の生理状態が良好でないものと評価することが出来る。若しくは、統計的手法を用いて、有意水準5%で、好ましくは有意水準1%で、より好ましくは有意水準0.1%で、遺伝子発現レベルの上昇に有意差が認められた場合に、被検水棲生物の生理状態が良好でないものと評価することが出来る。
本発明においては、水棲生物の生理状態を評価するための診断剤も提供される。本発明の診断剤は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと結合する化合物を含む。好ましくは、配列番号:1〜138のいずれかに記載の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、または配列番号:1〜138のいずれかに記載の塩基配列によってコードされるタンパク質と結合する抗体が、そのような化合物として使用され得る。
本明細書において同定された生理状態に関与する水棲生物遺伝子は、被検水棲生物が生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適しているか否かを評価する際にも用いることができる。
本発明は、以下の(a)〜(c)の工程を含む、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適しているか否かを評価する方法に関する。
(a)被検水棲生物由来の生物学的試料において、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルを決定する工程
(b)被検水棲生物由来の生物学的試料における該遺伝子の発現レベルと、該遺伝子の正常対照発現レベルを比較する工程
(c)(b)における発現レベルの比較結果により、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適しているか否かを評価する工程
本方法の第一工程として、被検水棲生物由来の生物学的試料において、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の少なくとも一つ以上の遺伝子の発現レベルを決定する。本方法において「生理状態に関与する水棲生物遺伝子」とは、上記に定義された遺伝子を選択することができ、また「遺伝子発現レベルの決定」も上記に定義された方法により行うことが出来る。
本方法の第二工程として、被験水棲生物由来の生物学的試料における生理状態に関与する水棲生物遺伝子の1つまたは複数の発現レベルを、該遺伝子の正常対照レベルと比較する。
本方法の第三工程として、上記発現レベルの比較結果により、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適しているか否かを評価する。本発明において「生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適しているか否かを評価する」とは、「生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適しているか否かを示す」ことと同様の意味を示す。
生理状態に関与する水棲生物遺伝子のうちの1つまたは複数を正常対照レベルと比較し、被検水棲生物由来の生物学的試料において発現レベルが同等である場合には、被検水棲生物は、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していると評価することが出来る。例えば、生理状態に関与する水棲生物遺伝子(配列番号:1〜111のいずれかに記載の塩基配列)のうち、少なくとも1%、5%、10%、25%、50%、60%、80%、90%、またはそれ以上が、正常対照レベルと同等である場合には、被検水棲生物は、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していると評価することが出来る。
具体的には、被検水棲生物における配列番号:1〜93のいずれかに記載の塩基配列から選択される生理状態に関与する水棲生物遺伝子群の発現レベルが、正常対照発現レベルより小さい場合に、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していないと評価することができる。
より具体的には、配列番号:1〜23のいずれかに記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群の発現レベルが、正常対照発現レベルの50%(1/2倍)より小さい場合に、より好ましくは25%(1/4倍)より小さい場合に、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していないと評価することができる。また、配列番号:1〜93のいずれかに記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群の発現レベルが、正常対照発現レベルの50%(1/2倍)より小さい場合に、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していないと評価することができる。若しくは、統計的手法を用いて、有意水準5%で、好ましくは有意水準1%で、より好ましくは有意水準0.1%で、遺伝子発現レベルの減少に有意差が認められた場合に、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していないと評価することができる。
また、被検水棲生物における配列番号:93〜111のいずれかに記載の塩基配列から選択される生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルが、正常対照発現レベルより大きい場合に、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していないと評価することができる。
より具体的には、配列番号:93〜111のいずれかに記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群の発現レベルが、正常対照発現レベルの200%(2倍)より大きい場合に、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していないと評価することができる。若しくは、統計的手法を用いて、有意水準5%で、好ましくは有意水準1%で、より好ましくは有意水準0.1%で、遺伝子発現レベルの上昇に有意差が認められた場合に、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していないと評価することができる。
本明細書において同定された生理状態に関与する水棲生物遺伝子は、被検飼育条件が、生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適しているか否かを評価する際にも用いることができる。
本発明は、以下の(a)〜(c)の工程を含む、被検飼育条件が、生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適しているか否かを評価する方法に関する。
(a)被検飼育条件下で飼育された被検水棲生物由来の生物学的試料において、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルを決定する工程
(b)被検水棲生物由来の生物学的試料における該遺伝子の発現レベルと、該遺伝子の正常対照発現レベルを比較する工程
(c)(b)における発現レベルの比較結果により、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適しているか否かを評価する工程
本方法の第一工程として、被検飼育条件下で飼育された被検水棲生物由来の生物学的試料において、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の少なくとも一つ以上の遺伝子の発現レベルを決定する。本方法において「生理状態に関与する水棲生物遺伝子」とは、上記に定義された遺伝子を選択することができ、また「遺伝子発現レベルの決定」も上記に定義された方法により行うことが出来る。
本方法において被検飼育条件としては、様々な条件を設定することが出来る。設定する条件としては、水温、水の溶存酸素濃度、明暗周期、給餌の種類、水のpH、全有機炭素量(TOC)、水の硬度等を挙げることが出来る。
本方法の第二工程として、被検飼育条件下で飼育された被験水棲生物由来の生物学的試料における生理状態に関与する水棲生物遺伝子の1つまたは複数の発現レベルを、該遺伝子の正常対照レベルと比較する。
本方法の第三工程として、上記発現レベルの比較結果により、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適しているか否かを評価する。本発明において「被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適しているか否かを評価する」とは、「被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適しているか否かを示す」ことと同様の意味を示す。
生理状態に関与する水棲生物遺伝子のうちの1つまたは複数を正常対照レベルと比較し、被検飼育条件下で飼育された被検水棲生物由来の生物学的試料において発現レベルが同等である場合には、被検飼育条件は、標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していると評価することが出来る。例えば、被検飼育条件下で飼育された被検水棲生物由来の生物学的試料において、生理状態に関与する水棲生物遺伝子(配列番号:1〜111のいずれかに記載の塩基配列)のうち、少なくとも1%、5%、10%、25%、50%、60%、80%、90%、またはそれ以上が、正常対照レベルと同等である場合には、標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していると評価することが出来る。
具体的には、被検飼育条件下で飼育された被検水棲生物における配列番号:1〜93のいずれかに記載の塩基配列から選択される生理状態に関与する水棲生物遺伝子群の発現レベルが、正常対照発現レベルより小さい場合に、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していないと評価することができる。
より具体的には、配列番号:1〜23のいずれかに記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群の発現レベルが、正常対照発現レベルの50%(1/2倍)より小さい場合に、より好ましくは25%(1/4倍)より小さい場合に、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していないと評価することができる。また、配列番号:1〜93のいずれかに記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群の発現レベルが、正常対照発現レベルの50%(1/2倍)より小さい場合に、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していないと評価することができる。若しくは、統計的手法を用いて、有意水準5%で、好ましくは有意水準1%で、より好ましくは有意水準0.1%で、遺伝子発現レベルの減少に有意差が認められた場合に、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していないと評価することができる。
また、被検飼育条件下で飼育された被検水棲生物における配列番号:93〜111のいずれかに記載の塩基配列から選択される生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルが、正常対照発現レベルより大きい場合に、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していないと評価することができる。
より具体的には、配列番号:93〜111のいずれかに記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群の発現レベルが、正常対照発現レベルの200%(2倍)より大きい場合に、正常対照発現レベルより大きい場合に、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していないと評価することができる。若しくは、統計的手法を用いて、有意水準5%で、好ましくは有意水準1%で、より好ましくは有意水準0.1%で、遺伝子発現レベルの上昇に有意差が認められた場合に、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していないと評価することができる。
本発明は上記の生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していると評価された被検飼育条件により、水棲生物を育成する方法に関する。本方法により育成された水棲生物は、様々な生物学的試験において標準状態の指標生物として用いることが可能である。
本発明は、配列番号:1〜138のいずれかに記載の核酸配列に対応する一つまたは複数のプローブからなる、核酸マイクロアレイに関する。
核酸マイクロアレイは、同時に多数の遺伝子の発現レベルを比較するのに便利な装置である。核酸マイクロアレイに基づく発現プロファイリングは、例えば「Microarray Biochip Technology」(Mark Schena、イートンパブリッシング、2000)等に開示される方法によって行うことができる。
核酸マイクロアレイには、多数の遺伝子を検出するための固定化された高密度プローブが含まれる。したがって、多くの遺伝子の発現レベルを、1ラウンドの分析によって同時に推定することができる。本発明の方法において遺伝子の発現は核酸マイクロアレイによって決定されてもよい。本発明の核酸マイクロアレイに基づく方法は、以下の段階を含む:
(1)マーカー遺伝子に対応するaRNAまたはcDNAを合成する段階;
(2)aRNAまたはcDNAをマーカー遺伝子に関するプローブとハイブリダイズさせる段階;および
(3)プローブとハイブリダイズしたaRNAまたはcDNAを検出して、そのmRNA量を定量する段階。
aRNAとは、RNAポリメラーゼによって鋳型cDNAから転写されたRNAを指す。核酸マイクロアレイに基づく発現プロファイリング用のaRNA転写キットが市販されている。そのようなキットによって、T7 RNAポリメラーゼを用いて鋳型としてのT7プロモーター結合cDNAからaRNAを合成することができる。一方、ランダムプライマーを用いたPCRによって、mRNAから合成したcDNAを鋳型として用いてcDNAを増幅することができる。
本発明の核酸マイクロアレイは、本発明の水棲生物の生理状態に関与する水棲生物遺伝子(マーカー遺伝子)を検出するための、プローブからなる。核酸マイクロアレイ上にスポットされるマーカー遺伝子に対するプローブの数に制限はない。例えば、本発明の配列番号:1〜111のいずれかに記載の核酸配列(遺伝子)のうち、1%、5%、10%、25%、50%、60%、80%、90%またはそれ以上の遺伝子(より具体的には1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、23個、25個、40個、50個、75個、100個またはそれ以上の遺伝子)に対応するプローブがスポットされていてもよい。マーカー遺伝子に加えて、他の遺伝子に対応するプローブをDNA分子チップ上にスポットすることもできる。例えば、その発現レベルがほとんど変化しない遺伝子のプローブを、核酸マイクロアレイ上にスポットしてもよい。複数のアレイ間または異なるアッセイ間でアッセイ結果を比較することを意図している場合、そのような遺伝子を用いてアッセイ結果を標準化することができる。
プローブは、選択されたそれぞれのマーカー遺伝子に関して設計され、核酸マイクロアレイ上にスポットされる。そのようなプローブは、例えばヌクレオチド残基5個〜50個を含むオリゴヌクレオチドであってもよい。核酸マイクロアレイ上でそのようなオリゴヌクレオチドを合成する方法は、当業者に既知である。PCRによってまたは化学的に、より長いDNAを合成することができる。PCR等によって合成された長いDNAをスライドガラス上にスポットする方法も同様に、当業者に既知である。上記の方法によって得られる核酸マイクロアレイを、本発明の評価方法に用いることができる。
調製された核酸マイクロアレイをaRNAに接触させた後、プローブとaRNAとのハイブリダイゼーションを検出する。aRNAは、蛍光色素によって予め標識することができる。Cy3(赤色)およびCy5(緑色)のような蛍光色素を用いてaRNAを標識することができる。披検水棲生物および対照由来のaRNAを、異なる蛍光色素によってそれぞれ標識する。両者の発現レベルの差を、シグナル強度の差に基づいて推定することができる。核酸マイクロアレイ上の蛍光色素のシグナルをスキャナによって検出し、特殊なプログラムを用いて分析することができる。例えば、AffymetrixのSuiteを、核酸マイクロアレイ分析のためのソフトウェアパッケージとして挙げることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕メダカの生理状態に対する飼料の影響の確認
異なる飼料による飼育が、メダカの生理状態にどのような影響を与えるかを検討した。具体的には、与える飼料以外の条件を同一にした環境下でメダカの飼育を行い、メダカの生存率およびメダカの各遺伝子の発現量を比較した。
まず、下記に記載のメダカの生育方法によりメダカの飼育を行い、各飼料を与えた場合の生存率の比較を行った。
<メダカの生育方法>
生態毒性試験には、通常、じゅん化後2ヶ月齢から6ヶ月齢までの成熟メダカを研究に使用する。メダカ標準株(NIES株)を国立環境研究所(日本)から入手し、産業技術総合研究所(日本)で産卵させ、得られたF1世代をメダカの生育法の検討に用いた。予備実験の結果より、オス・メス間の遺伝子発現には大きな差があることが明らかとなったため(実験結果示さず)、オス・メスを別々に検討した。飼育に用いる水槽はガラス製又は化学的に不活性な材質(例:フッ素樹脂製)でできた45-60cm水槽を用いた。飼育の際には、水温24±1℃、明16時間、暗8時間の光周期を維持し、溶存酸素濃度が80%を下回らないようにエアレーションを行い、飼料を一日二回給餌した。飼料としては、「孵化24時間以内のアルテミア(Artemia) 製品名:ブラインシュリンプ(日清マリンテック、日本)」、「製品名:おとひめ(日清丸紅飼料、日本)」、「製品名:テトラミン(ドイツテトラ社、ドイツ)」、または「製品名:メダカのエサ(イトスイ、日本)」を用いた。
飼育水には飲料用水道水をPESメンブレンカートリッジ(TCS-E020、ADVANTEC)および活性炭カートリッジフィルター(TCC-WL-SOCP、ADVANTEC)で濾過後、一昼夜以上曝気したものを用いた。これらフィルターは最低一ヶ月に一回は交換した。飼育水槽中の魚体密度は100尾/50Lを超えないようにし、飼育水槽の換水は週1回の頻度で行った。飼育期間中の飼育水の全硬度は炭酸カルシウム濃度10〜250mg/Lで、pHは6〜8.5の範囲であることが望ましいが、現在までに使用している飼育水は全硬度50〜70mg/L、pH7〜8の範囲に保たれていた。
各飼料を与えた場合の生存率の比較を、図2に示す。その結果、アルテミアとは異なり、おとひめ、テトラミン、メダカのエサを飼料として飼育した場合には、生存率が著しく低下すること、および発育状態が低下することが明らかとなった。すなわち、与える飼料の種類は、メダカの生存率、生育状態に大きな影響を与えることが明らかとなった。また、これらの結果より、生態毒性試験を行う対象となる標準状態のメダカ(生存率が高く健康状態であるメダカ)を育成する場合には、飼料としてアルテミアを与えることが最適であることが明らかとなった。
次に、DNAマイクロアレイ解析により、上記の育成方法により異なる飼料を与え飼育した各メダカの遺伝子発現状態を確認した。マイクロアレイ解析は以下の各工程により行った。
<核酸の抽出>
メダカTotal RNAの抽出には、RNeasy Lipid Tissue Midi Kit(QIAGEN)を使用した。手順の概略は以下のとおりである。すなわち、メダカ凍結個体(体長約3 cm)を乳鉢中で液体窒素を加えながら粉砕し、粉末の半量を5 mLのQIAzol Lysis Reagentに加え、速やかに強く攪拌し、室温で5分間置いた。1 mLのクロロフォルムを加えて15秒ほど攪拌した後、室温で2〜3分間置き、遠心で上清を分離した。この上清に70%エタノール3 mLを加えてよく混合させ、全量をRNeasy Midi Spin Columnに通した。4mL Buffer RW1、2.5 mL Buffer RPEでカラムを洗浄し、最終的には300 μLのRNase-free waterでRNAを溶出させた。
<メダカTotal RNAの標識>
Eberwineらの方法(Eberwine, et al., PNAS 89:3010(1992))に準じて、メダカから抽出したTotal RNAよりビオチン標識化cRNAを得た。すなわち、Total RNA 10ugよりT7-oligo(dT)をプライマーとし逆転写反応によりmRNA由来のcDNAを調製した。その後、T7 RNAポリメラーゼによりIn Vitro Transcription反応を行い、cRNAを調製した。In Vitro Transcription反応の際に基質としてビオチン化シトシン、ビオチン化ウラシルを加えることで、cRNAにビオチンを取り込ませ標識を行った。cRNAは加水分解により50〜200塩基の断片化を行った。
<メダカEST配列搭載DNAマイクロアレイの合成>
DNAマイクロアレイの作製はNimbleGen Systems社(米国)のマスクレス光合成DNAマイクロアレイ作製技術(Maskless Array Synthesizer Technology, 以下MAS)を用いた。本技術はSingh-Gassonらにより開発されたマイクロアレイ作製技術(Singh-Gasson, et al., Nat. Biotech. 17: 974 (1999))であり、UV光をDigital Light Processor(Texas Instrument社製)で選択的に制御することで異なる塩基配列のオリゴヌクレオチドをスライドグラス上に合成することができる。スライドグラス上に数十万単位の配列の異なるオリゴヌクレオチドを合成することで、網羅的に遺伝子発現を検出するためのDNAマイクロアレイの作製が可能である。
今回、メダカのESTに基づくDNAマイクロアレイの作製に当たり、設計の基本情報となるESTの塩基配列は米国TIGR(The Institute for Genomic Research)に登録されている情報を使用した。2004年5月17日時点で、TIGRに登録されているESTのユニーク配列は26,689種類である。これらのEST塩基配列情報を基に特異性を検討後、60塩基を単位として各EST特有な塩基配列部分を1ESTに対して7種類選択した。選択したEST特異塩基配列をMASでスライドグラス上にオリゴヌクレオチド合成を行った。最終的にメダカEST配列搭載DNAマイクロアレイとして26,689種類のESTに対し1ESTあたり7種類の60塩基配列、総計186,823本のオリゴヌクレオチド(以下プローブ)を合成した。
<ハイブリダイゼーション>
メダカEST配列搭載マイクロアレイ上のプローブと断片化したビオチン標識cRNAのハイブリダイゼーションは以下の条件で行った。断片化したビオチン標識cRNA 10ugを含む40%フォルムアミド溶液をマイクロアレイと接触させ42℃、14〜16時間インキュベーションした。その後、スライドガラスを洗浄し、ストレプトアビジンーCy3を室温で25分間反応させ、マイクロアレイ上のプローブに結合した断片化したビオチン標識cRNAにさらにCy3を結合させた。
<マイクロアレイのスキャンニングとデータ化>
ハイブリダイゼーション後のマイクロアレイは、DNAマイクロアレイスキャナー GenePix 4000B (Axon Instruments社製)にて、マイクロアレイ上のCy3による蛍光強度を測定し、数値化処理を行った。各ESTの遺伝子発現強度は、1ESTあたり7種類のプローブの蛍光強度の平均値とした。
上記工程により、推奨飼料である「アルテミア」で飼育した成熟メダカのオスとメス数尾について、DNAマイクロアレイを用いてその発現強度を調べた。2尾の個体(アルテミア飼育オス1、アルテミア飼育オス2)について、プロット図を用いて発現強度を比較した。その結果、アルテミア飼育オス1とアルテミア飼育オス2は、ほとんどの遺伝子において同程度の発現強度示すことが明らかとなった(図1a)。また、同様の手法により、アルテミアとは異なる飼料である「メダカのエサ」で飼育した成熟メダカのオスとメス数尾についてDNAマイクロアレイを用いてその発現強度を調べた。2尾の個体(メダカのエサ飼育オス1、メダカのエサ飼育オス2)について、プロット図を用いて発現強度を比較した。その結果、メダカのエサ飼育オス1とメダカのエサ飼育オス2は、ほとんどの遺伝子において同程度の発現強度を示すことが明らかとなった(図1b)。すなわち、同じ環境において、同じ種類の飼料を与えた場合には、多くの遺伝子が同程度の発現を示すということが明らかとなった。
次に、メダカのエサ飼育オスメダカとアルテミア飼育オスメダカを比較した。2尾の個体(メダカのエサ飼育オス1、アルテミア飼育オス1)について、プロット図を用いて発現強度を比較したところ、メダカのエサで飼育したオス1とアルテミアで飼育したオス1では、多種の遺伝子の発現状況が異なることが明らかとなった(図1c)。さらに、別の飼料(おとひめ、テトラミン)で飼育したメダカの場合にも、推奨飼料のアルテミアで飼育した場合と異なる遺伝子発現状況を示すことが明らかとなった。
以上の結果より、同一環境下でじゅん化を行っても飼料の違いにより成熟メダカの遺伝子発現状況が大きく異なること、および、各遺伝子の発現状況はメダカの生存率および生育状態に相関を示すことが明らかとなった。
〔実施例2〕メダカの生理状態に対する低溶存酸素濃度の影響の確認
次に、低溶存酸素処理が、メダカの生理状態にどのような影響を与えるかを検討した。具体的には、溶存酸素濃度以外の条件を同一にした環境下でメダカの飼育を行い、メダカの生存率およびメダカの各遺伝子の発現量を比較した。
生態毒性試験中の対照区と同一の環境での飼育(飽和溶存酸素濃度下での飼育)または低溶存酸素濃度下での飼育は以下のようにして行った。
生態毒性試験中の対照区と同一の環境(対照区)は半止水式(毎日全換水)で行った。3Lガラスビーカーに試験用水を2Lずつ加え、1ビーカーあたり7尾ずつ飼育した。用いたメダカはアルテミアでじゅん化させ、試験に使用する24時間前から給餌を止めておき、試験期間中も飼料は与えなかった。試験期間中はエアレーションを行い、毎日一回水換えを行った。この状態の場合、96時間の試験中全期間において飽和溶存酸素濃度であったことを確認した。
96時間の試験終了後、オス・メス5尾ずつ液体窒素で凍結し、そのまま保存した。
低溶存酸素処理を行う場合は、試験用水を密閉しメダカの呼吸によって酸素を消費させ、溶存酸素濃度10%となったら酸素を供給することにより溶存酸素濃度10%で96時間維持した。 この条件の場合、オス9尾メス9尾合計18尾中、8尾が死亡した。生存した個体を液体窒素で凍結し、そのまま保存した。
以上の結果より、溶存酸素濃度はメダカの生存率に大きな影響を与え、メダカの健康状態を維持するための重要な要因の一つであることが明らかとなった。
次に、DNAマイクロアレイ解析により、上記の育成方法により異なる溶存酸素濃度下で飼育した各メダカの遺伝子発現状態を確認した。保存したサンプルからの核酸の抽出、メダカTotal RNAの標識、メダカEST配列搭載DNAマイクロアレイの合成、ハイブリダイゼーション、マイクロアレイのスキャンニングとデータ化は実施例1に記載の工程により行った。
生態毒性試験中の対照区と同一の環境で飼育した成熟メダカ(対照区)のオスとメス数尾について、DNAマイクロアレイを用いて26,689種類の遺伝子の発現強度を調べた。2尾の個体(対照区オス1、対照区オス2)について、プロット図を用いて発現強度を比較したところ、対照区オス1と対照区オス2はほとんど同じ程度の発現強度であった。同様に低溶存酸素濃度下で飼育した成熟メダカのオスとメス数尾について、DNAマイクロアレイを用いてその発現強度を調べた。2尾の個体(低溶存酸素濃度処理オス1、低溶存酸素濃度処理2)について発現強度を比較すると、低溶存酸素濃度処理オス1と低溶存酸素濃度処理オス2はほとんど同じ程度の発現強度であることが明らかとなった。すなわち、同じ環境において、同じ溶存酸素濃度下で飼育した場合には、多くの遺伝子が同程度の発現を示すということが明らかとなった。
その上で、低溶存酸素濃度処理オスメダカと対照区オスメダカを比較した。2尾の個体(低溶存酸素濃度処理オス1、対照区オス1)について、プロット図を用いて発現強度を比較した結果、低溶存酸素濃度処理オス1と対照区オス1では多種の遺伝子の発現状況が異なることが明らかとなった(図1d)。
以上の結果より、同一環境下でじゅん化させても溶存酸素濃度の違いにより成熟メダカの遺伝子発現状況が大きく異なること、および、各遺伝子の発現状況はメダカの生存率および生育状態に相関を示すことが明らかとなった。
〔実施例3〕メダカの健康状態(生存率および/または育成状態)の指標となる遺伝子の同定
実施例1および実施例2において、メダカの各遺伝子の発現状況がメダカの生存率および生育状態に相関を示すことが明らかとなった。メダカの生存率および生育状態が悪化した際に、大きく発現量が変化した遺伝子の同定を行った。
2種類の異なる飼育環境間で特定遺伝子の発現量を比較する場合、一遺伝子当り7種類あるプローブから蛍光強度の平均値をそれぞれの飼育環境の遺伝子の発現量から算出し、この平均値の有意差をt検定により確認した。t検定より、有意確率が0.1%以下のものを2種類の飼育環境間で遺伝子発現が変化したと判定した(有意水準0.1%)。この有意確率が0.1%以下の遺伝子群から、実際の蛍光強度の数値が1/4倍以下、若しくは1/2倍以下に変化している遺伝子を大きく発現量が変化した遺伝子として同定した。
26,689種類の遺伝子から、溶存酸素濃度・エサの違いといった要因に左右されずに有意水準0.1%で有意差がある遺伝子は264種類であった。それら264種類の遺伝子の中で、溶存酸素濃度・エサの違いといった要因に左右されずに、蛍光強度が1/4倍以下に変化していた遺伝子は23種類、1/2倍以下に変化していた遺伝子は93種類、2倍以上に変化していた遺伝子は18種類であった。
また、ネガティブコントロールとして、メダカの生理状態に影響を及ぼすと考えられる環境下においても、該遺伝子の発現量が変化しない遺伝子の同定を行った。これら遺伝子の同定方法は以下の通りである。生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベル、および正常対照発現レベルの差が、全ての試験条件において、正常対照発現レベルの±20%以内(80〜120%)であり、且つ、t検定の際の有意確率が5%以上の遺伝子(蛍光強度:2〜211=64〜2048)を同定した。更に、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベル、および正常対照発現レベルの差が、全ての試験条件において、正常対照発現レベルの±30%以内(70〜130%)であり、有意確率が1%以上の遺伝子(蛍光強度:210〜=1024〜)を同定した。これらの方法で絞り込まれた遺伝子を、該遺伝子の発現量が、メダカの生理状態に影響を受けない遺伝子として、27種類同定した。
発現量が1/4倍以下に変化していた遺伝子を表1の配列番号:1〜23に、1/2倍以下に変化していた遺伝子を表1の配列番号:1〜93に、2倍以上に変化していた遺伝子を表1の配列番号:93〜111に示す。ネガティブコントロールとしての遺伝子を表2(配列番号:112〜138)に示す。
〔実施例4〕メダカの生理状態に対するpH(水素イオン濃度)の影響の確認
飼育水のpHがヒメダカの生理状態に与える影響を検討した。具体的には、飼育水のpH(酸性条件、及びアルカリ条件)以外の条件を同一にした環境下でメダカの飼育を行い、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現の変化を確認した。
酸性条件、及びアルカリ条件での飼育は以下のようにして行った。
試験には(独)国立環境研究所より譲渡され、継代飼育して得られた孵化後約5ヶ月齢のヒメダカ雌雄を用いた。5Lの活性炭ろ過水のpHを適宜調製した後、ヒメダカ雌雄9尾ずつを投入して96時間の試験を行った。pHコントローラー(Biott DT-1023)を用いてpHが一定となるように、酸性条件には0.1N塩酸を、アルカリ条件には0.1M水酸化ナトリウムを適宜添加した。pHのモニタリングにはHORIBA Navi D-55を併用した。試験期間中の塩濃度を希釈するために約100-150ml/hの速度で換水を行った。エアレーションを行い、水温24±1℃、明16時間・暗8時間の光周期を維持し、試験開始の24時間以降の給餌を停止して試験を行った。
予備試験の結果、約半数の魚が死亡する条件であるpH4.0を酸性条件として、pH10.8をアルカリ条件として本試験を実施した。pH4.0での96時間後の死亡魚数は、4/9尾(オス)、6/9尾(メス)であり、pH10.8では、5/9尾(オス)、5/9尾(メス)であった。サンプルは液体窒素で凍結し、全個体を粉末化してRNAを抽出して実験に使用した。
以上の結果より、飼育水のpHはメダカの生存率に大きな影響を与え、メダカの健康状態を維持するための重要な要因の一つであることが明らかとなった。
次に、DNAマイクロアレイ解析により、上記の育成方法により異なるpH条件下で飼育した各メダカの遺伝子発現状態を確認した。保存したサンプルからの核酸の抽出、メダカTotal RNAの標識、メダカEST配列搭載DNAマイクロアレイの合成、ハイブリダイゼーション、マイクロアレイのスキャンニングとデータ化は実施例1に記載の工程により行った。
これらDNAマイクロアレイ解析の結果を元に、実施例3で同定された生理状態に関与する水棲生物遺伝子(配列番号:1〜111)の発現状況を確認した(表3)。これら遺伝子の発現状況は、生理状態が良好ではない遺伝子発現のパターン(表1)とよく一致した。すなわち、本発明で同定された生理状態に関与する水棲生物遺伝子が、より有用かつ確実である事を証明できた。
〔実施例5〕メダカの生理状態に対する高溶存酸素の影響の確認
飼育水の溶存酸素濃度は、低溶存酸素条件・高溶存酸素条件のどちらの場合においても、ヒメダカの生理状態に影響を与える事が報告されている(Lushchak VI, et al., Comp Biochem Physiol B Biochem Mol Biol. 144: 283 (2006), Epub 2006 Jun 5)。また、高溶存酸素条件下では、酸化ストレスにより遺伝子発現に変化が起きる事が報告されている(Olsvik PA, et al., J Exp Biol. 209: 2893 (2006))。そこで、実施例2に示した低溶存酸素の影響の確認に加え、メダカの生理状態に対する高溶存酸素の影響を確認した。具体的には、溶存酸素濃度以外の条件を同一にした環境下でメダカの飼育を行い、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現の変化を比較した。
高溶存酸素条件での飼育は以下のようにして行った。
試験には(独)国立環境研究所より譲渡され、継代飼育して得られた孵化後約4ヶ月齢のヒメダカ雌雄を用いた。5Lの活性炭ろ過水を酸素ボンベからのバブリングを一晩行った後、ヒメダカ雌雄9尾ずつを投入して96時間の試験を行った。試験期間中は酸素ボンベからのバブリングを継続し、毎日一回行う水換えの際にも酸素ボンベからのバブリングを一晩行った活性炭ろ過水を用いた。更に、水温24±1℃、明16時間・暗8時間の光周期を維持し、試験開始の24時間以降の給餌を停止して試験を行った。
予備試験の結果、通常大気を一晩バブリングした活性炭ろ過水の溶存酸素濃度は8.32mg/L、酸素ボンベからの酸素を一晩バブリングした活性炭ろ過水の溶存酸素濃度は40.29mg/Lであった。これら溶存酸素濃度の測定には、METTLER TOLEDO SG6を用いた。
96時間の高溶存酸素条件での試験の結果、死亡及び行動異常を示した個体は無かった。この結果より、高溶存酸素条件は生存率に影響を与えない事が判った。生残個体をオス・メスそれぞれ5尾ずつ液体窒素で凍結し、全個体を粉末化し、RNAを抽出して実験に使用した。
次に、DNAマイクロアレイ解析により、上記の育成方法により異なる溶存酸素条件下で飼育した各メダカの遺伝子発現状態を確認した。保存したサンプルからの核酸の抽出、メダカTotal RNAの標識、メダカEST配列搭載DNAマイクロアレイの合成、ハイブリダイゼーション、マイクロアレイのスキャンニングとデータ化は実施例1に記載の工程により行った。
これらDNAマイクロアレイ解析の結果を元に、実施例3で同定された生理状態に関与する水棲生物遺伝子(配列番号:1〜111)の発現状況を確認した(表3)。これら遺伝子の発現状況は、生理状態が良好ではない遺伝子発現のパターン(表1)とよく一致した。この事から、高溶存酸素条件での飼育がメダカの生理状態を悪化させている事が示された。更に、本発明で同定された生理状態に関与する水棲生物遺伝子を用いる事により、生存率に関わりなく、メダカの生理状態を評価する事が可能である事が示された。
表1中の「▽(黒下三角)」は、正常対照区と比較して、被検水棲生物の該遺伝子の発現量が低下した事を示し、「△」は、正常対照区と比較して、被検水棲生物の該遺伝子の発現量が増加した事を示す。また、表1の横軸の、AからHの値はそれぞれ、以下に示す傾向強度の比を示す。これらの数値は、正常対照区の遺伝子発現を100%とした場合に、どれだけ該遺伝子の発現が変化したかをパーセンテージ(%)で示す。
A:(メダカオス)生態毒性試験中の対照区と同一の環境での飼育/低溶存酸素濃度での飼育
B:(メダカメス)生態毒性試験中の対照区と同一の環境での飼育/低溶存酸素濃度での飼育
C:(メダカオス)アルテミアで飼育/おとひめで飼育
D:(メダカメス)アルテミアで飼育/おとひめで飼育
E:(メダカオス)アルテミアで飼育/テトラミンで飼育
F:(メダカメス)アルテミアで飼育/テトラミンで飼育
G:(メダカオス)アルテミアで飼育/メダカのエサで飼育
H:(メダカメス)アルテミアで飼育/メダカのエサで飼育
有意水準0.1%で、遺伝子の絞り込みを行った(p < 0.001,and)。
表2の「−」は、該遺伝子の発現量が、ヒメダカの生理状態により影響を受けず、ある範囲内で一定であった事を示している。また、横軸の「発現レベル」とは、各試験条件における、該遺伝子の発現強度の平均を表している。
表3は、正常対照区の遺伝子発現を100%とした場合に、どれだけ該遺伝子の発現が変化したかを示している。表中の「▽(黒下三角)」及び「△」は以下の意味を持ち、数値を視覚的に示している。
「▽▽▽」:正常対照区と比較して25%未満に遺伝子発現レベルが減少
「▽▽」:正常対照区と比較して25%以上50%未満で遺伝子発現レベルが減少
「▽」:正常対照区と比較して50%以上100%未満で遺伝子発現レベルが減少
「△△△」:正常対照区と比較して400%以上で遺伝子発現レベルが上昇
「△△」:正常対照区と比較して200%以上400%未満で遺伝子発現レベルが上昇
「△」:正常対照区と比較して100%以上200%未満で遺伝子発現レベルが上昇
Figure 2008000131
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アルテミアで飼育した場合のメダカの遺伝子発現状況の比較を示す図である。アルテミアで飼育した場合のメダカオス1の発現強度を横軸に、アルテミアで飼育した場合のメダカオス2の発現強度を縦軸にとり、遺伝子ごとにプロットした図である。それぞれの遺伝子発現強度が一致すると遺伝子のプロットは傾き45度の直線y=x上に位置することから、2尾間で遺伝子の発現がよく一致していることが明らかとなった。 メダカのエサで飼育した場合のメダカの遺伝子発現状況の比較を示す図である。メダカのエサで飼育した場合のメダカオス1の発現強度を横軸に、メダカのエサで飼育した場合のメダカオス2の発現強度を縦軸にとり、遺伝子ごとにプロットした図である。2尾間で遺伝子の発現がよく一致していることが明らかとなった。 アルテミアで飼育した場合のメダカの遺伝子発現状況とメダカのエサで飼育した場合のメダカの遺伝子発現状況の比較を示す図である。アルテミアで飼育した場合のメダカオス1の発現強度を横軸に、メダカのエサで飼育した場合のメダカオス1の発現強度を縦軸にとり、遺伝子ごとにプロットした図である。2尾間で多数の遺伝子の発現が異なっていることが明らかとなった。 生態毒性試験の対照区と同一の環境下で飼育した場合のメダカの遺伝子発現状況と低溶存酸素下で飼育した場合のメダカの遺伝子発現状況の比較を示す図である。生態毒性試験の対照区と同一の環境下で飼育した場合のメダカオス1の発現強度を横軸に、低溶存酸素処理した場合のメダカオス1の発現強度を縦軸にとり、遺伝子ごとにプロットした図である。2尾間で多数の遺伝子の発現が異なっていることが明らかとなった。 孵化後、メダカを4種類の異なる飼料(アルテミア、おとひめ、テトラミン、メダカのエサ)で飼育し、(A)生存率、(B)生育状態(体長)に与える影響を調べた図である。メダカを孵化後アルテミアで飼育すると生存率の低下も認められず、生育状態も良好であり、メダカは標準状態にあると考えられた。一方、おとひめ、テトラミン、メダカのエサで飼育した場合は、程度の差はあるものの生存率の断続的な低下が観察され、生育状態も良くないことが明らかとなった。

Claims (16)

  1. 以下の(a)〜(c)の工程を含む、被検水棲生物の生理状態を評価する方法。
    (a)被検水棲生物由来の生物学的試料において、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルを決定する工程
    (b)被検水棲生物由来の生物学的試料における該遺伝子の発現レベルと、該遺伝子の正常対照発現レベルを比較する工程
    (c)(b)における発現レベルの比較結果により、被検水棲生物の生理状態が良好であるか否かを評価する工程
  2. 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:1〜23に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも低下した場合に、被検水棲生物の生理状態が良好でないものと評価する、請求項1に記載の方法。
  3. 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:1〜93に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも低下した場合に、被検水棲生物の生理状態が良好でないものと評価する、請求項1に記載の方法。
  4. 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:93〜111に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも上昇した場合に、被検水棲生物の生理状態が良好でないものと評価する、請求項1に記載の方法。
  5. 以下の(a)〜(c)の工程を含む、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適しているか否かを評価する方法。
    (a)被検水棲生物由来の生物学的試料において、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルを決定する工程
    (b)被検水棲生物由来の生物学的試料における該遺伝子の発現レベルと、該遺伝子の正常対照発現レベルを比較する工程
    (c)(b)における発現レベルの比較結果により、被検水棲生物が、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適しているか否かを評価する工程
  6. 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:1〜23に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも低下した場合に、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していないと評価する、請求項5に記載の方法。
  7. 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:1〜93に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも低下した場合に、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していないと評価する、請求項5に記載の方法。
  8. 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:93〜111に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも上昇した場合に、生物学的試験における標準状態の指標生物、または生物学的試験中の対照区となる指標生物として適していないと評価する、請求項5に記載の方法。
  9. 以下の(a)〜(c)の工程を含む、被検飼育条件が、生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適しているか否かを評価する方法。
    (a)被検飼育条件下で飼育された被検水棲生物由来の生物学的試料において、生理状態に関与する水棲生物遺伝子の発現レベルを決定する工程
    (b)被検水棲生物由来の生物学的試料における該遺伝子の発現レベルと、該遺伝子の正常対照発現レベルを比較する工程
    (c)(b)における発現レベルの比較結果により、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適しているか否かを評価する工程
  10. 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:1〜23に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも低下した場合に、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していないと評価する、請求項9に記載の方法。
  11. 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:1〜93に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも低下した場合に、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していないと評価する、請求項9に記載の方法。
  12. 生理状態に関与する水棲生物遺伝子が配列番号:93〜111に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群であって、被検水棲生物における該遺伝子群の発現レベルが正常対照発現レベルよりも上昇した場合に、被検飼育条件が生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していないと評価する、請求項9に記載の方法。
  13. 請求項9〜12のいずれかに記載の方法により、生物学的試験における標準状態の指標生物を飼育するための条件として適していると評価された被検飼育条件により、水棲生物を育成する方法。
  14. 生物学的試験における標準状態の指標生物として用いることの出来る、請求項13によって育成された水棲生物。
  15. 配列番号:112〜138に記載の塩基配列から選択される少なくとも1つ以上の塩基配列からなる遺伝子群を、ネガティブコントロールとして使用するものである請求項1〜12のいずれかに記載の被検水棲生物の生理状態、指標生物の生理状態、又は被検水棲生物・指標生物の飼育条件の評価方法。
  16. 配列番号:1〜138のいずれかに記載の核酸配列に対応する一つまたは複数のプローブからなる、核酸マイクロアレイ。
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