JP2007508823A - 新規な熱ショックタンパク質20関連ポリペプチドおよびその使用 - Google Patents

新規な熱ショックタンパク質20関連ポリペプチドおよびその使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、新規なHSP20に基づくポリペプチドおよびその医薬組成物、ならびに種々の治療的使用のためにこのようなポリペプチドおよび医薬組成物を用いる方法を提供する。

Description

本発明は、細胞および分子生物学、ポリペプチド、薬物送達および治療的な使用方法の分野である。
相互参照
本出願は、その全体が本明細書において参照によって組み込まれる、2003年10月17日出願の米国仮特許出願第60/512,211号、および2003年12月16日出願の同第60/530,306号から優先権を主張する。
政府の資金拠出に関する声明
米国政府は、国立衛生研究所(National Institute of Health)を通じて、本プロジェクトに対して助成金番号RO1 HL58027−01として資金援助を行なった。従って、米国政府は、本発明に対して一定の権利を所有し得る。
細胞接着、細胞質***、細胞運動、遊走および筋の収縮/弛緩のような細胞プロセスには、アクチン細胞骨格の動的な再構築を要する。種々の細胞タイプにおけるサイクリックヌクレオチドのシグナル伝達経路の活性化は、中央のストレスファイバーおよび焦点性付着板の消失を含む、細胞骨格における顕著な変化;細い突起の形成を伴う細胞質収縮;ならびに細胞体の丸まりをもたらす(1)。概して、これらの変化によって、「星状化(stellation)」と命名されている星状の外観がもたらされる。
サイクリックヌクレオチドシグナル伝達経路は、アデニレートシクラーゼ/cAMP/cAMP−依存性プロテインキナーゼ(PKA)およびグアニレートシクラーゼ/cGMP/cGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)を含む。これらの経路は、セリン16上の小型の熱ショック関連タンパク質HSP20のリン酸化に集束する(2、3)。
本発明者らは以前に、HSP20およびそれに由来する特定のペプチドが以下の治療因子として見込みを示すことを実証している。(a)平滑筋細胞増殖および/または遊走を阻害すること;(b)平滑筋弛緩を促進すること;(c)心筋における収縮速度を増大すること;(d)心筋弛緩の速度を増大すること;(e)創傷治癒を促進すること;(f)瘢痕形成を軽減すること;(g)病巣癒着を妨害すること;(h)アクチン重合化を調節すること;ならびに(i)内膜過形成、狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、平滑筋細胞腫瘍、平滑筋攣縮、狭心症、プリンズメタル型狭心症(冠攣縮性狭心症)、虚血、発作、徐脈、高血圧、肺性(肺)高血圧、喘息(気管支喘息)、妊娠中毒症、早期の陣痛および/または分娩、子癇前症/子癇、子宮内成長制限、レイノー病またはレイノー現象、溶血性***、非閉塞性腸管虚血、裂肛、アカラシア、性機能障害、片頭痛、平滑筋攣縮に伴う虚血性筋障害、脈管障害、例えば、移植脈管障害、徐脈性不整脈、徐脈、うっ血性心不全、気絶心筋、肺性高血圧および拡張機能障害(例えば、2003年3月27日出願米国特許第20030060399号;2004年3月4日国際公開WO2004017912号を参照のこと)。しかし、これらの出願は、HSP20の活性が細胞内の他の分子との特定のタンパク質間相互作用から生じることを実証しなかった。HSP20がその細胞機能を行なうように相互作用する特定のタンパク質の同定によって、改善されたHSP20由来の治療剤の設計がもたらされ得る。
1態様では、本発明は、一般式I:
X1−X2−X3
による配列からなるポリペプチドを含む組成物であって、
X1およびX3が独立して存在しないか、または形質導入ドメインを含み;
かつ
X2が[Z1−Z2−RRA−Z3−AP]uであり、
Z1が存在しないかまたはWであり;
Z2が存在しないかまたはLであり;
Z3がS、T、Y、D、E、ホスホセリンアナログおよびホスホチロシンアナログからなる群より選択され;かつ
uは1〜2であり、uが2であるとき、X2の2つのコピーは必要に応じてスペーサーによって隔てられる組成物、を提供する。
別の態様では、本発明は、本発明の1つ以上のポリペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む医薬組成物を提供する。
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離された核酸配列を提供する。さらなる態様では、本発明は、本発明の核酸配列を含む組み換え発現ベクター、および本発明の組み換え発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。
別の態様では、本発明は、改良された生物医学的デバイスであって、この生物医学的デバイスの内外に配置された本発明の1つ以上の組成物を含む、改良された生物医学的デバイスを提供する。種々の実施形態では、このような生物医学的デバイスとしては、ステント、グラフト、シャント、ステントグラフト、血管形成デバイス、バルーンカテーテル、フィステル(fistulas)、創傷被覆材および任意の移植可能な薬物送達デバイスが挙げられる。
さらなる態様では、本発明は、以下の治療用途
(a)平滑筋細胞増殖および/または遊走を阻害すること;(b)平滑筋弛緩を促進すること;(c)心筋における収縮速度を増大すること;(d)心筋弛緩の速度を増大すること;(e)創傷治癒を促進すること;(f)瘢痕形成を軽減すること;(g)病巣癒着を妨害すること;(h)アクチン重合化を調節すること;ならびに(i)内膜過形成、狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、平滑筋細胞腫瘍、平滑筋攣縮、狭心症、プリンズメタル型狭心症(冠攣縮性狭心症)、虚血、発作、徐脈、高血圧、肺性(肺)高血圧、喘息(気管支喘息)、妊娠中毒症、早期の陣痛および/または分娩、子癇前症/子癇、子宮内成長制限、レイノー病またはレイノー現象、溶血性***、非閉塞性腸管虚血、裂肛、アカラシア、雄性または雌性の性機能障害、片頭痛、平滑筋攣縮に伴う虚血性筋障害、脈管障害、例えば、移植脈管障害、徐脈性不整脈、徐脈、うっ血性心不全、気絶心筋、肺性高血圧および拡張機能障害;
の1つ以上のための方法を提供し、この方法は、本発明による1つ以上のポリペプチドまたはその機能的な等価物の1つ以上の治療用途を行なうための十分な量をその必要な被験体に投与する工程を包含する。
本出願では、他に言及しない限り、利用される技術は、以下のような任意のいくつかの周知の引用文献に見出され得る。Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrookら、1989、Cold Spring Harbor Laboratory Press),Gene Expression Technology(Methods in Enzymology,第185巻、D.Goeddel編、1991.Academic Press,San Diego,CA),「Guide to Protein Purification」Methods in Enzymology(M.P.Deutshcer編(1990)Academic Press,Inc.);PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら、1990.Academic Press,San Diego,CA),Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,第2版、(R.I.Freshney.1987.Liss,Inc.New York,NY)、およびGene Transfer and Expression Protocols,第109〜128頁、E.J.Murray編、The Human Press Inc.,Clifton,N.J.)。
アミノ酸に関する1文字記号は本明細書において主に用いられる。当業者によって周知のとおり、このような1文字記号は以下のとおりである。
Aはアラニンである;Cはシステインである;Dはアスパラギン酸である;Eはグルタミン酸である;Fはフェニルアラニンである;Gはグリシンである;Hはヒスチジンである;Iはイソロイシンである;Kはリジンである;Lはロイシンである;Mはメチオニンである;Nはアスパラギンである;Pはプロリンである;Qはグルタミンである;Rはアルギニンである;Sはセリンである;Tはトレオニンである;Vはバリンである;Wはトリプトファンである;そしてYはチロシンである。
本明細書において用いる場合、単数形「1つの、(「a」、「an」)」および、「この、その(「the」)」とは、この文脈が明確に他を示すのでない限り、複数の言及を含む。例えば、「ポリペプチド(polypeptide)」という言及は、1つ以上のポリペプチドを意味する。
2003年3月27日出願の米国特許第20030060399号;2004年3月4日公開のWO2004017912)に考察されるとおり、HSP20およびそれに由来する特定のペプチドは、以下の各々についての治療因子としての見込みを示す。(a)平滑筋細胞増殖および/または遊走を阻害すること;(b)平滑筋弛緩を促進すること;(c)心筋における収縮速度を増大すること;(d)心筋弛緩の速度を増大すること;(e)創傷治癒を促進すること;(f)瘢痕形成を軽減すること;(g)病巣癒着を妨害すること;(h)アクチン重合化を調節すること;ならびに(i)内膜過形成、狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、平滑筋細胞腫瘍、平滑筋攣縮、狭心症、プリンズメタル型狭心症(冠攣縮性狭心症)、虚血、発作、徐脈、高血圧、肺性(肺)高血圧、喘息(気管支喘息)、妊娠中毒症、早期の陣痛および/または分娩、子癇前症/子癇、レイノー病またはレイノー現象、溶血性***、非閉塞性腸管虚血、裂肛、アカラシア、インポテンス、片頭痛、平滑筋攣縮に伴う虚血性筋障害、脈管障害、例えば、移植脈管障害、徐脈性不整脈、徐脈、うっ血性心不全、気絶心筋、肺性高血圧および拡張機能障害。
本発明は、HSP20ペプチドが、14−3−3タンパク質に対して結合、およびコフィリンに対して結合する能力を妨害することによってこれらの治療効果を達成し得るという証拠を提供する。本明細書に考察されるとおり、ADF(アクチン脱重合ファミリー)/コフィリンファミリーのタンパク質は、重合化/脱重合化の調節を介してアクチンの代謝回転に関与する。詳細には、リン酸化したコフィリンは不活性である;しかし、ホスファターゼのスリングショットファミリーによって脱リン酸化された場合、コフィリンはアクチンの脱重合化を触媒する(8)。リン酸化したコフィリンは、14−3−3タンパク質に対する結合によって安定化される(9)。14−3−3タンパク質は、一般的な生化学的調節因子であると考えられる。なぜなら、それらは、多くの細胞機能に関与しており、広範なリガンド、例えば、レセプター、キナーゼ、ホスファターゼおよびドッキング分子を有するからである(10)。シグナル伝達タンパク質の活性および高次構造を安定化することによって構造的役割を果たすことに加えて、14−3−3タンパク質はまた、リン酸化したモチーフと相互作用してこれを局在化することによって足場タンパク質として作用する(11)。HSP20においてリン酸化部位を囲むドメインは、推定の14−3−3結合モチーフ(RSXpSXP)(配列番号55)と同様の配列(RRApSAP)(配列番号54)を含む。以前の結果は、Rの直後の非リン酸化セリンの存在は、極めて好ましいが、このモチーフには必要ではないということを示している(12)。従って、pHSP20がアクチン破壊をもたらすありそうな1つの機序は、コフィリンの放出および脱リン酸化を生じる14−3−3タンパク質に対する競合的結合を介する。この仮説と一致して、フォルスコリン(forskolin)でのまたはpHSP20での処理は、リン酸化コフィリンの量を減少させた(図3)。リン酸化したコフィリンでの同様の減少がhepI処理で観察されている(13)。
まとめると、これらのデータによって、リン酸化部位を囲む短い配列またはモチーフが細胞の生物学に顕著な影響を有し得ることが示唆される。これらのペプチドは、三次構造をほとんど、または全く有さないので(15)、これらのペプチドモチーフは、タンパク質間の相互作用における変化を通じて細胞機能を変更していると考えられる。リン酸化したHSP20の場合、これらのデータは、リン酸化部位を囲むモチーフが14−3−3タンパク質に結合することを示唆する。14−3−3タンパク質に対する結合は非共有結合的であるので、リン酸化したHSP20による14−3−3タンパク質からのコフィリンの競合的解離は、アクチン脱重合化タンパク質としてコフィリンの脱リン酸化および活性化をもたらし得る。
アクチンの特定の機序によって束縛されないが、上記で考察されたHSP20(またはHSP20ポリペプチド)の効果は、HSP20による14−3−3タンパク質からのコフィリンの同様の競合的解離から生じるというのが本発明者らの仮説である。従って、本発明のポリペプチドは、少なくとも、HSP20またはそれに由来するペプチドとして有効であると予想される(例えば、2003年3月27日に出願のUS20030060399に開示されるように)が、一方では、産生するのがさらに安価であり、さらなる細胞内タンパク質とのHSP20タンパク質上の他の部位の間の相互作用ではなく14−3−3との相互作用についてさらに特異的であり、従って、他の生理学的成分との所望されない相互作用の可能性が少なく、従って副作用が少ない。
従って、1態様では、本発明は、一般式I:
X1−X2−X3
によるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む組成物であって、
X1およびX3が独立して存在しないか、または形質導入ドメインを含み;
かつ
X2が[Z1−Z2−RRA−Z3−AP]uであり、
Z1が存在しないかまたはWであり;
Z2が存在しないかまたはLであり;
Z3がS、T、Y、D、E、ホスホセリンアナログおよびホスホチロシンアナログからなる群より選択され;かつ
uは1〜2であり、uが2であるとき、X2の2つのコピーは必要に応じてスペーサーによって隔てられる組成物、を提供する。
この態様では、uは1つであっても2つであってもよい、なぜなら、14−3−3結合はある場合には、14−3−3の二量化におそらく起因して、2つの結合部位がその結合パートナーに存在する場合、30倍以上有効であるからである(例えば、Yaffeら、Cell,91:961−971、1997を参照のこと)。
特定の実施形態では、Z1および/またはZ2が存在する。特定の機序に束縛されないが、本発明のポリペプチドにおけるこれらの残基の1つまたは両方の存在は、14−3−3「結合ポケット(binding−pocket)」における疎水性領域と相互作用するのに役立ち得ること、従って、14−3−3との相互作用の特異性および親和性の増大に役立ち得るということが考えられる。
「ポリペプチド(polypeptide)」という用語は、その広義の意味では、サブユニットアミノ酸、アミノ酸アナログまたはペプチド模倣物の配列を指すために用いられる。このサブユニットは、注記される場合を除いてペプチド結合によって連結される。本明細書に記載されるポリペプチドは、化学的に合成されても、または組み換え発現されてもよい。好ましくは、本発明のポリペプチドは、化学的に合成される。合成ポリペプチドは、固相、液相またはペプチド濃縮技術の周知の技術、またはそれらの任意の組み合わせを用いて調製されて、天然および非天然のアミノ酸を含み得る。ペプチド合成のために用いられるアミノ酸は、Merrifield(1963,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154)の元の固相手順の標準的脱保護、中和、カップリングおよび洗浄プロトコールを用いる標準的なBoc(Nα−アミノ保護Nα−t−ブチルオキシカルボニル)アミノ酸樹脂であっても、またはCarpinoおよびHan(1972,J.Org.Chem.37:3403−3409)によって最初に記載された、ベース不安定性(base−labile)Nαアミノが保護された9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸であってもよい。FmocおよびBocの両方のNαアミノが保護されたアミノ酸は、Sigma,Cambridge Research Biochemicalから、または当業者になじみのある他の化学会社から入手され得る。さらに、ポリペプチドは、当業者になじみのある、他のNα保護基とともに合成されてもよい。
固相ペプチド合成は、当業者になじみがあり、そして例えば、StewartおよびYoung,1984,Solid Phase Synthesis,第2版、Pierce Chemical Co.,Rockford,I11.;Fields and Noble,1990,Int.J.Pept.Protein Res.35:161−214において提供される技術によって、または自動シンセサイザーを用いて達成され得る。本発明のポリペプチドは、Dアミノ酸(インビボにおいてLアミノ酸特異的プロテアーゼに耐性である)、Dアミノ酸およびLアミノ酸の組み合わせ、ならびに特異的な特性を伝達するために種々の「デザイナー(designer)」アミノ酸(例えば、βメチルアミノ酸、Cαメチルアミノ酸、およびNαメチルアミノ酸など)を含んでもよい。合成アミノ酸としては、リジンについてはオルニチン、そしてロイシンまたはイソロイシンについてはノルロイシンが挙げられる。
さらに、このポリペプチドは、新規な特性を有するペプチドを調製するために、エステル結合のようなペプチド模倣結合を有してもよい。例えば、減少したペプチド結合を組み込むペプチド、すなわち、R1およびR2がアミノ酸残基または配列であるR1−CH2−NH−R2が生成されてもよい。減少したペプチド結合は、ジペプチドサブユニットとして導入され得る。このようなポリペプチドは、プロテアーゼ活性に対して耐性であり、そしてインビボで伸長した半減期を有する。
本発明のポリペプチドの種々の実施形態によれば、Z3はS、T、Y、D E、ホスホセリン模倣物、またはホスホチロシン模倣物である。Z3がS、TまたはYであることがさらに好ましく;さらに好ましくはZ3がSまたはTであり、そして最も好ましくはZ3がSである。Z3がS、TまたはYであるこれらの実施形態では、Z3がリン酸化されることが最も好ましい。Z3がDまたはEである場合、これらの残基はリン酸化状態を模倣する負の荷電を有する。本発明のこのポリペプチドは、Z3がリン酸化される場合、本発明の方法において最適には有効であり、ホスホセリンもしくはホスホチロシン模倣物であるか、またはDもしくはE残基のようなリン酸化アミノ酸残基の別の模倣物である。ホスホセリン模倣物の例としては、限定はしないが、スルホセリン、リン酸酸素のメチレン置換を含むアミノ酸模倣物、4−ホスホノ(ジフルオロメチル)フェニルアラニンおよびL−2−アミノ−4−(ホスホノ)−4,4−ジフルオロブタン酸が挙げられる。他のホスホセリン模倣物が、当業者によって作製されてもよい;例えば、Otakaら、Tetrahedron Letters 36:927−930(1995)を参照のこと。ホスホチロシン模倣物の例としては、限定はしないが、ホスホノメチルフェニルアラニン、ジフルオロホスホノメチルフェニルアラニン、フルオロ−O−マロニルチロシンおよびO−マロニルチロシンが挙げられる(例えば、Akamatsuら、Bioorg Med Chem 1997 Jan;5(1):157−63を参照のこと)。
Z3残基がリン酸化される実施形態では、ペプチドは、ポリペプチド合成の間にリン酸化アミノ酸(またはリン酸−模倣物)を用いて合成されてもよく、またはZ3残基は、ポリペプチド鎖に対するその付加後にリン酸化されてもよい。
従って、これらの種々の態様によれば、一般式Iによるポリペプチドの代表的なサンプルとしては、限定はしないが、以下:
RRASAP(配列番号1)
LRRASAP(配列番号2)
WLRRASAP(配列番号3)
RRATAP(配列番号4)
LRRATAP(配列番号5)
WLRRATAP(配列番号6)
RRAYAP(配列番号7)
LRRAYAP(配列番号8)
WLRRAYAP(配列番号9)
RRADAP(配列番号10)
LRRADAP(配列番号11)
WLRRADAP(配列番号12)
RRAEAP(配列番号13)
LRRAEAP(配列番号14)
WLRRAEAP(配列番号15)
RRASAPRRASAP(配列番号16)
LRRASAPLRRASAP(配列番号17)
WLRRASAPWLRRASAP(配列番号18)
RRATAPRRATAP(配列番号19)
LRRATAPLRRATAP(配列番号20)
WLRRATAPWLRRATAP(配列番号21)
RRAYAPRRAYAP(配列番号22)
LRRAYAPLRRAYAP(配列番号23)
WLRRAYAPWLRRAYAP(配列番号24)
RRADAPRRADAP(配列番号25)
LRRADAPLRRADAP(配列番号26)
WLRRADAPWLRRADAP(配列番号27)
RRAEAPRRAEAP(配列番号28)
LRRAEAPLRRAEAP(配列番号29)
WLRRAEAPWLRRAEAP(配列番号30)
が挙げられる。
一般式Iの範囲内におさまる他の特定のポリペプチドは、本明細書の技術に基づいて当業者に容易に明白である。
さらなる実施形態では、本発明のポリペプチドは、領域[Z1−Z2−RRA−Z3−AP]u由来の異なる配列の組み合わせからなる。本実施形態では、例えば、ポリペプチドは、配列番号9の1コピーおよび配列番号25の1コピーから構成され得る。異なる例では、このポリペプチドは、配列番号4の1コピーおよび配列番号20の1コピーから構成されてもよい。このようなポリペプチドの非限定的な例としては、RRASAPWLRRASAP(配列番号31)およびWLRRASAPRRASAP(配列番号32)が挙げられる。多くのこのような組み合わせが本発明の教示に基づいて可能であることが当業者には明白である。
本明細書において用いる場合、「スペーサー(spacer)」という用語は、X2の2つのコピーを隔てて、本発明の方法におけるポリペプチドの使用のためのさらに最適の間隔を提供する分子をいう。このスペーサーは好ましくはX2のコピーの間に17〜50Åを提供する(14−3−3結合ペプチドの間の最適の間隔に基づいて(Yaffeら、Cell,91:961−971,1997))。スペーサーは、ペプチド可溶性に有害に影響しないGGAPまたは他の配列のようなアミノ酸配列であってもよい。さらに、親水性オリゴマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)およびポリ(プロピレンオキシド))のような短い合成配列が、異種の二機能性の架橋リンカーとのスペーサーとして用いられてもよい。好ましい実施形態では、スペーサーは、30Å長の可塑性の6アミノヘキサン酸ループスペーサーである(Yaffeら、Cell,91:961−971,1997)。
好ましい実施形態では、少なくとも1つのX1およびX3が形質導入ドメインを含む。本明細書において用いる場合、「形質導入ドメイン(transduction domein)」という用語は、細胞膜にまたがる活性ドメインを担い得る1つ以上のアミノ酸配列または任意の他の分子を意味する。これらのドメインは、細胞膜にまたがる連結されたポリペプチドの直接の動きを指向するように他のポリペプチドに結合されてもよい。ある場合には、この形質導入分子は、活性ポリペプチドに対して共有結合される必要はない。好ましい実施形態では、この形質導入ドメインは、ペプチド結合を介して残りのポリペプチドに連結される。(例えば、Cell 55:1179−1188,1988;Cell 55:1189−1193,1988;Proc Natl Acad Sci USA 91:664−668,1994;Science 285:1569−1572,1999;J Biol Chem 276:3254−3261,2001;およびCancer Res 61:474−477,2001を参照のこと)。この実施形態では、上記のような任意のポリペプチドは、少なくとも1つの形質導入ドメインを含む。さらなる実施形態では、X1およびX3の両方が形質導入ドメインを含む。さらに好ましい実施形態では、この形質導入ドメイン(単数または複数)は、(R)4-9(配列番号33);GRKKRRQRRRPPQ(配列番号34);AYARAAARQARA(配列番号35);DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPRRPVE(配列番号36);GWTLNSAGYLLGLINLKALAALAKKIL(配列番号37);PLSSIFSRIGDP(配列番号38);AAVALLPAVLLALLAP(配列番号39);AAVLLPVLLAAP(配列番号40);VTVLALGALAGVGVG(配列番号41);GALFLGWLGAAGSTMGAWSQP(配列番号42);GWTLNSAGYLLGLINLKALAALAKKIL(配列番号43);KLALKLALKALKAALKLA(配列番号44);KETWWETWWTEWSQPKKKRKV(配列番号45);KAFAKLAARLYRKAGC(配列番号46);KAFAKLAARLYRAAGC(配列番号47);AAFAKLAARLYRKAGC(配列番号48);KAFAALAARLYRKAGC(配列番号49);KAFAKLAAQLYRKAGC(配列番号50)、AGGGGYGRKKRRQRRR(配列番号51);YGRKKRRQRRR(配列番号52);およびYARAAARQARA(配列番号53)からなる群より選択される。
別の態様では、本発明は、本明細書に開示されるポリペプチドの1つ以上と薬学的に受容可能なキャリアとを含む医薬組成物を提供する。このような医薬組成物は、以下に記載される本発明の方法を行なうために特に有用である。
投与のためには、ポリペプチドは通常、投与の示された経路に適切な1つ以上のアジュバントと組み合わされる。この化合物は、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、滑石、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、アラビアゴム(acacia)、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、硫酸デキストラン、ヘパリン含有ゲル、および/またはポリビニルアルコールと混合されても、都合のよい投与のために錠剤化またはカプセル化されてもよい。あるいは、本発明の化合物は、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、エタノール、コーン油、ピーナツ油、綿実油、ゴマ油、トラガカントゴムおよび/または種々の緩衝液中に溶解されてもよい。他のアジュバントおよび投与の方式が薬学的分野において周知である。キャリアまたは希釈剤は、遅延性物質、例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを単独で、またはワックスと、または当分野で周知の他の物質と一緒に含んでもよい。このポリペプチドは、ポリエチレングリコールのようなインビボでの半減期の増大を促進する他の化合物に連結されてもよい。このような連結は、当業者に理解されるように共有結合であっても非共有結合であってもよい。
このポリペプチドまたはその医薬組成物は、経口、非経口、吸入スプレーによる、直腸、または局所的を含む任意の適切な経路によって、従来の薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントおよび溶剤を含む投薬単位処方物で投与されてもよい、非経口という用語は、本明細書において用いる場合、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、胸骨内、腱内、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、注入技術または腹腔内を含む。投与のための好ましい実施形態は、処置される条件に関連して変化する。
このポリペプチドは、固体型(顆粒、粉末または坐剤を含む)に、または液体型(例えば、溶液、懸濁液またはエマルジョン)に作製されてもよい。本発明のポリペプチドは、種々の溶液に適用され得る。本発明に従う使用に適切な溶液は、滅菌の溶解した十分な量のポリペプチドであり、そして提唱される適用に有害ではない。
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離された核酸配列を提供する。本発明のこの態様による適切な核酸配列は、本明細書に提供される開示に基づいて当業者に明白であり、そして当分野の一般的な技術レベルである。
別の態様では、本発明は、上記のような本発明の単離された核酸分子に対して作動可能に連結されたDNA制御配列を含む発現ベクターを提供する。本発明の核酸配列に対して作動可能に連結された「制御配列(control sequences)」は、核酸分子の発現を達成し得る核酸配列である。制御配列は、それらがその発現を指向するように機能する限り、核酸配列と連続する必要ない。従って、例えば、介在する非翻訳のまだ転写されていない配列がプロモーター配列と核酸配列との間に存在してもよく、そしてプロモーター配列は、コード配列に対してやはり「作動可能に連結される(operatively linked)」とみなされ得る。他のこのような制御配列としては、限定はしないが、ポリアデニル化シグナル、終止シグナル、およびリボソーム結合部位が挙げられる。
このような発現ベクターは、限定はしないがプラスミドおよびウイルスベースの発現ベクターを含む当分野で公知の任意のタイプであってもよい。
さらなる態様では、本発明は、本発明の発現ベクターを含む遺伝子操作された宿主細胞を提供する。このような宿主細胞は、原核生物細胞であってもまたは真核生物細胞であってもよく、そしてウイルスベクターを用いて一過性にもしくは安定にトランスフェクトされてもよく、または形質導入されてもよい。
別の態様では、本発明は、改良された生物医学デバイスを提供する。この生物医学デバイスは、この生物医学的デバイスの内外に配置された本発明の1つ以上のポリペプチドを含む。好ましい実施形態では、1つ以上のポリペプチドが上記のようにリン酸化される。
本明細書において用いる場合、「生物医学的デバイス(biomedical device)」とは、所望の結果をもたらすために被験体、例えば、ヒトに移植されるデバイスをいう。本発明のこの態様による特に好ましい生物医学的デバイスとしては限定はしないが、ステント、グラフト、シャント、ステントグラフト、フィステル(fistulas)、血管形成デバイス、バルーンカテーテル、移植可能な薬物送達デバイス、創傷被覆材、例えばフィルム(例えば、ポリウレタンフィルム)、親水コロイド(ポリウレタンフォームに結合された親水性コロイド粒子)、ヒドロゲル(少なくとも約60%の水を含む架橋ポリマー)、泡状物(親水性または疎水性)、アルギン酸カルシウム(アルギン酸カルシウム由来の不織の繊維合成物)、セロハン(登録商標)および生物学的ポリマーが挙げられる。
本明細書において用いる場合、「グラフト、移植片(grafts)」という用語は、天然および補綴のグラフトおよびインプラントをいう。最も好ましい実施形態では、グラフトは代用血管である。
本明細書において用いる場合、「ステント(stent)」という用語は、ステント自体およびステント置換を促進するために用いられ得る任意のスリーブまたは他の構成要素を含む。
本明細書において用いる場合、「内外に配置される(disposed on or in)」とは、この1つ以上のポリペプチドが外面、内面に直接または間接的に接触しているか、またはこの生物医学的デバイス内に包埋されていてもよいことを意味する。「直接(direct)」接触するとは、このポリペプチドのこのデバイスの直接の内外の配置であって、限定はしないが1つ以上のポリペプチドを含む溶液に生物医学的デバイスを浸漬する工程、この1つ以上のポリペプチドを含む溶液をこのデバイス上にスピンコーティングまたは噴霧する工程、このポリペプチドを送達する任意のデバイスを埋め込む工程、およびこのカテーテルを通じてポリペプチドを任意の器官の表面上または任意の器官内に直接投与する工程を含むものをいう。
「間接的な(indirect)」接触とは、この1つ以上のポリペプチドがこの生物医学的デバイスに直接接触しないことを意味する。例えば、1つ以上のポリペプチドは、この生物医学的デバイス上に配置されるマトリックス、例えば、ゲルマトリックスまたは粘性の液体に配置されてもよい。このようなマトリックスは、例えば、必要に応じて、この1つ以上のポリペプチドの結合および放出特性を改変するように調製され得る。
別の態様では、本発明は、一般式II:
X1−X2−X3
によるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む組成物の使用であって、
X1およびX3が独立して存在しないか、または形質導入ドメインを含み;
かつ
X2が[Z1−Z2−R−Z4−A−Z3−AP]uであり、
Z1が存在しないかまたはWであり;
Z2が存在しないかまたはLであり;
Z3がS、T、Y、D、E、ホスホセリンアナログおよびホスホチロシンアナログからなる群より選択され;
Z4がRまたはSであり;かつ
uは1〜2であり、uが2であるとき、X2の2つのコピーは必要に応じてスペーサーによって隔てられる組成物か、あるいはその機能的等価物であって、以下の治療用途:
(a)平滑筋細胞増殖および/または遊走を阻害すること;
(b)平滑筋弛緩を促進すること;
(c)心筋における収縮速度を増大すること;
(d)心筋弛緩の速度を増大すること;
(e)創傷治癒を促進すること;
(f)瘢痕形成を軽減すること;
(g)病巣癒着を妨害すること;
(h)アクチン重合化を調節すること;ならびに
(i)内膜過形成、狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、平滑筋細胞腫瘍、平滑筋攣縮、狭心症、プリンズメタル型狭心症、虚血、発作、徐脈、高血圧、肺性高血圧、喘息、妊娠中毒症、早期の陣痛および/または分娩、子癇前症/子癇、子宮内成長制限、レイノー病またはレイノー現象、溶血性***、非閉塞性腸管虚血、裂肛、アカラシア、性機能障害、片頭痛、平滑筋攣縮に伴う虚血性筋障害、脈管障害、徐脈性不整脈、うっ血性心不全、気絶心筋、および拡張機能障害の1つ以上を処置または阻害すること、
の1つ以上を行なうための医薬の調製のための、使用のための方法を提供する。
この態様では、X1、X3、Z1、Z2、Z3およびuは上記のとおりである。本発明の方法の好ましい実施形態では、Z4はRである。本発明の方法の全てのさらに好ましい実施形態では、1つ以上のポリペプチドは上記のようにリン酸化される。
好ましい実施形態では、治療剤が哺乳動物に投与される;さらに好ましい実施形態では、この哺乳動物はヒトである。
本明細書において用いる場合、「処置する(treat)」または「処置する工程(treating)」とは、以下の1つ以上を達成することを意味する。(a)障害の重篤度を軽減する;(b)処置されている障害(単数または複数)の特徴的な症候群の発達を制限または防止する;(c)処置されている障害(単数または複数)の特徴的な症候群の悪化を阻害する;(d)この障害(単数または複数)を以前に有していた患者におけるこの障害(単数または複数)の再発を制限または防止する;そして(e)この障害(単数または複数)について以前に症候性であった患者においてこの症状の再発を制限または防止する。
本明細書において用いる場合、用語「阻害する(inhibit)」または「inhibiting(阻害する工程)」とは、障害を発症するリスクのある個体においてこの障害を制限することを意味する。
本明細書において用いる場合、「投与する工程(administering)」とは、インビボ投与、および静脈移植血管のようなエキソビボでの組織への直接的投与、を含む。
内膜過形成は、移植片の不全をもたらす複雑なプロセスであり、動脈バイパス移植片の不全の最も通常の原因である。不完全な理解ではあるが、内膜過形成は、内皮細胞傷害ならびに引き続く血管平滑筋増殖および中膜から内膜への遊走を含む一連の事象によって媒介される。このプロセスは、収縮性から合成の表現型への平滑筋細胞の表現型の調節に関連する。「合成(synthetic)」平滑筋細胞は、細胞外基質タンパク質を分泌し、これが移植片狭窄そして最終的には移植片の不全をもたらす血管腔の病理的な狭小化をもたらす。このような内皮細胞傷害ならびに引き続く平滑筋細胞増殖および内膜への遊走はまた、最も通常には、閉塞された血管を通過させる血管形成術後の再狭窄を特徴づける。
本発明の方法、例えば、平滑筋細胞増殖および/もしくは遊走を阻害すること、または平滑筋弛緩を促進することに関する方法のいくつかの実施形態では、処置されている被験体の血管と本発明の1つ以上のポリペプチドとを接触させる工程によって、投与は指向され得る。例えば、本発明による1つ以上のポリペプチドの液体調製物は、多孔性のカテーテルを通じて強制されても、そうでなければ損傷部位へカテーテルを通じて注射されてもよく、または本発明による1つ以上のポリペプチドを含有するゲルもしくは粘性の液体が損傷部位に塗布されてもよい。直接送達のこれらの実施形態では、本発明による1つ以上のポリペプチドが損傷または介入の部位で平滑筋細胞に送達されることが最も好ましい。これは、例えば、本発明の組み換え発現ベクター(最も好ましくはウイルスベクター、例えばアデノウイルスベクター)をこの部位に送達することによって達成され得る。さらに好ましくは、平滑筋細胞への送達は、平滑筋細胞への進入を容易にする少なくとも1つの形質導入ドメインを含む本発明の1つ以上のポリペプチドを用いることによって達成される。
本発明のこの方法、詳細には平滑筋細胞の増殖および/または遊走を阻害する工程を含む方法の種々の他の好ましい実施形態では、この方法は、血管形成術、血管ステント配置、動脈内膜切除、アテローム切除術、バイパス手術(例えば、冠動脈バイパス手術;末梢血管バイパス手術)、血管移植、器官移植、人工補綴具移植、微小血管再建、形成外科的皮弁形成術、およびカテーテル設置からなる群より選択される手順を受けているか、受けつつあるかまたはこれから受ける被験体で行なう。
HSP20およびそれに由来する特定のポリペプチドは、各々が内膜過形成に関与しているアクチンストレスファイバー形成および付着板を破壊することが示されている(2003年3月27日出願の米国特許第20030060399号を参照のこと)。このデータはさらに、内膜過形成に対するHSP20ポリペプチドの直接の阻害効果を実証する(2003年3月27日出願、米国特許第20030060399号を参照のこと)。従って、別の実施形態では、この方法は、内膜過形成、狭窄、再狭窄およびアテローム性動脈硬化症からなる群より選択される1つ以上の障害を処置または阻害する工程を含み、その必要な被験体と、本発明による1つ以上のポリペプチドの内膜過形成、狭窄、再狭窄および/またはアテローム性動脈硬化症を処置または阻害するのに有効な量とを接触させる工程を含む。
本発明のこの態様のさらなる実施形態では、この方法を用いて、平滑筋細胞腫瘍を処置する。好ましい実施形態では、この腫瘍は筋肉から生じる悪性腫瘍として規定される平滑筋肉腫である。平滑筋肉腫は、小血管および大血管の両方の壁から生じ得るので、それらは、身体のいずれでも生じ得るが、腹膜、子宮、および胃腸(特に食道)の平滑筋肉腫の方が一般的である。あるいは、この平滑筋腫瘍は、非悪性平滑筋腫瘍である平滑筋腫であってもよい。さらなる実施形態では、この方法は、平滑筋細胞腫瘍についての他の処置、例えば、化学療法、放射線療法、および腫瘍を除去する手術と組み合わされてもよい。
さらなる実施形態では、本発明の方法は、平滑筋攣縮を処置または防止するために用いられるが、この方法は、その必要な被験体または移植片と、本発明による1つ以上のポリペプチドの平滑筋攣縮を阻害するのに有効な量をと接触させる工程を含む。
HSP20およびそれに由来する特定のペプチドは、血管攣縮のような平滑筋攣縮を阻害するのに有効であり、平滑筋血管緊張低下を促進することおよび収縮を阻害することによってその抗平滑筋攣縮効果を発揮し得るということが示されている(2003年3月27日出願の米国特許第20030060399号を参照のこと)。
平滑筋は、血管壁、気道、胃腸管および尿生殖器管において見出される。平滑筋の病理的な緊張性収縮が攣縮を構成する。多くの病理的な状態が、血管を裏打ちしている平滑筋である血管平滑筋の攣縮(「血管攣縮(vasospasm)」)に関連している。これは、狭心症または虚血のような症状を生じ得る(心臓動脈が関与する場合)か、または脳血管が関与する場合はクモ膜下出血誘発性血管攣縮の場合のような脳卒中を生じ得る。高血圧(高い血液の圧力)は、過剰な血管収縮、および血管壁、特に循環の小血管の肥厚によって生じる。
従って、本発明の方法のさらなる実施形態では、筋細胞攣縮は、血管攣縮を含み、この方法は、血管攣縮を処置または阻害するために用いられる。本方法の好ましい実施形態は、限定はしないが、狭心症、冠攣縮性狭心症、プリンズメタル型狭心症(心外膜動脈の一過性の限局性痙攣)、虚血、発作、徐脈、および高血圧を処置または阻害する方法を含む。
本発明の方法の別の実施形態では、平滑筋攣縮は、本発明による1つ以上のポリペプチドを用いる静脈または動脈の移植片のような移植片の処置によって阻害される。末梢血管および冠動脈の再建のための理想的な導管の1つは、それよりより大きい伏在静脈である。しかし、この導管の採取の間の外科的操作はしばしば血管攣縮をもたらす。血管攣縮の正確な疫学は複雑であって、多因子製である可能性が高い。ほとんどの研究者らが、血管攣縮は静脈の中膜における血管平滑筋の収縮の増強または弛緩の障害に起因するということを示唆している。多くの血管収縮因子、例えば、エンドセリン−1およびトロンボキサンが外科手術中に増大されて、血管平滑筋の収縮を生じる。ノルエピネフリン、5−ヒドロキシトリプタミン、アセチルコリン、ヒスタミン、アンジオテンシンIIおよびフェニルエピネフリンのような他の血管収縮因子が、静脈移植血管の攣縮に関与している。パパベリンは用いられている平滑筋血管拡張因子である。パパベリンの存在下でさえ攣縮が生じる状況では、外科医は攣縮を抑えるために管腔内の機械的拡張を用いる。これによって静脈移植血管壁の損傷および引き続く内膜過形成が生じる。内膜過形成は移植片の不全の主な原因である。
従って、本実施形態では、移植片を、この移植片ドナーからの回収の間、回収後(移植前)、および/または移植片のレシピエントへの移植の間に(すなわち、エキソビトロまたはインビボで)、本発明による1つ以上のポリペプチドと接触させてもよい。これは、例えば、本発明の組み換え発現ベクター(最も好ましくはウイルスベクター、例えばアデノウイルスベクター)をこの部位に送達すること、および平滑筋細胞をトランスフェクトさせることによって達成され得る。さらに好ましくは、平滑筋細胞への送達は、平滑筋細胞への進入を容易にするための少なくとも1つの形質導入ドメインを含む本発明による1つ以上のポリペプチドを用いることによって達成される。移植片の移植の間、移植されている被験体を、ヘパリンを用いて全身的に処置することが好ましい。なぜならヘパリンは、タンパク質形質導入ドメインに対して結合すること、およびそれらを細胞への形質導入から妨げることが示されているからである。このアプローチは、移植片のみであって、末梢組織へではない、局在化されたタンパク質形質導入をもたらす。本発明のこの実施形態の方法は、移植片の回収および/または移植の間の静脈移植血管の攣縮を阻害して、これによって短期および長期の両方の移植の成功が改善される。
本発明の方法の種々の他の実施形態では、筋細胞攣縮は限定はしないが、肺性(肺)高血圧、喘息(気管支喘息)、妊娠中毒症、早期の陣痛および/または分娩、子癇前症/子癇、レイノー病またはレイノー現象、溶血性***、非閉塞性腸管虚血(腸への不十分な血流によって生じる腸の虚血)、裂肛(内肛門括約筋の持続性の攣縮によって生じる)、アカラシア(下部食道括約筋の持続性の攣縮によって生じる)、雄性または雌性の性機能障害(陰茎または陰核の血管の弛緩の欠如によって生じる、なぜなら***には陰核海綿体(陰茎または膣)の血管の血管拡張を要するからである);片頭痛(頭蓋内血管の攣縮によって生じる)、平滑筋攣縮に伴う虚血性筋障害、および脈管障害、例えば、移植脈管障害(アテローム性動脈硬化症と同様の移植血管での反応であって、これは移植された血管の収縮性再構築および最終的な閉塞を含み、これは心臓移植不全の主な原因である)を含む障害に関連している。
本発明の方法の種々の実施形態のこれらの種々の指示についての送達の好ましい経路は変化する。局所投与は、静脈移植血管攣縮、内膜過形成、再狭窄、内膜過形成に起因する補綴性移植片不全、ステント、内膜過形成/収縮性再構築に起因するステントグラフト不全、血管攣縮に起因する微小血管移植片不全、移植脈管障害ならびに雄性および雌性の性機能障害の処置または阻害を含む方法に好ましい。本明細書において用いる場合、「局所投与(topical administration)」とは、器官の表面上にポリペプチドを送達することをいう。
脳脊髄液へのポリペプチドの送達として規定されるクモ膜下投与は、脳卒中およびクモ膜下出血誘発性血管攣縮を処置または阻害するための好ましい送達経路である。腹腔へのポリペプチドの送達として規定される腹腔内投与は、非閉塞性の腸間膜虚血を処置または阻害するための好ましい送達経路である。経口投与は、アカラシアを処置または阻害するための好ましい送達経路である。静脈内投与は、高血圧および徐脈を処置または阻害するための好ましい送達経路である。坐剤を介した投与は、裂肛を処置または阻害するために好ましい。エアロゾル送達は、喘息(すなわち、気管支喘息)を処置または阻害するために好ましい。子宮内投与は、早期の陣痛および/または分娩、子癇前症/子癇、および子宮内成長制限を処置または阻害するために好ましい。
本発明の方法の別の実施形態では、この方法は心筋における収縮速度を増大するために用いられる。このような処置から有益であり得る個体としては、この個体についての正常な心拍、または同様の状況の個体についての「正常な(normal)」心拍のいずれかに対して低下した心拍を示す個体が挙げられる。本明細書において用いる場合、「心筋での収縮速度の増大(increasing the contractile rate in heart muscle)」という句は、患者に治療上の利点を与える収縮速度の任意の増大を意味する。このような治療上の利点は、例えば、この収縮速度を個体の正常な収縮速度、同様の状況の個体についての正常な収縮速度、またはなんらかの所望の標的の収縮速度に近くさせるように増大させることによって達成され得る。好ましい実施形態では、この方法は、このような処置の必要な患者の収縮速度において少なくとも5%の増大を生じる。さらに好ましい実施形態では、本発明の方法は、このような処置の必要な患者の収縮速度において少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、および/または50%の増大を生じる。好ましい実施形態では、心筋での収縮速度の増大は、心筋の弛緩速度を増大することによって達成される(すなわち:心筋が速く弛緩するほど、心筋は速く拍動する)。さらに好ましい実施形態では、本発明の方法は、このような処置の必要な患者の心筋弛緩速度において少なくとも5%の増大を生じる。さらに好ましい実施形態では、本発明の方法は、このような処置の必要な患者の心筋弛緩速度において少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、および/または50%の増大を生じる。
本発明の方法のさらなる実施形態では、この方法は、心筋の収縮速度の増大から生じ得る1つ以上の心筋障害を処置するために行なわれる。このような心筋障害としては、徐脈性不整脈、徐脈性うっ血性心不全、肺高血圧、気絶心筋、および拡張機能障害が挙げられる。本明細書において用いる場合、「徐脈性不整脈(bradyarrythmia)」とは、通常心臓への電気的インパルスの妨害によって生じる、1分あたり60拍未満への心拍の速度の異常な低下を意味する。徐脈性不整脈の一般的な原因は、冠状動脈性心臓病であり、これは心組織への血液の流れを制限するアテロームの形成をもたらし、従って心臓組織が損傷される。冠動脈疾患に起因する徐脈性不整脈は、心筋梗塞後にはさらに高頻度に生じる。症状としては限定はしないが、活力の消失、衰弱、失神および低血圧が挙げられる。
本明細書において用いる場合、「うっ血性心不全(congestive heart failure)」とは、身体を通じた血液の十分な供給を心臓が拍出できないことを意味する。このような心不全は、限定はしないが、高血圧、貧血、甲状腺機能亢進症、限定はしないが大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全、および三尖弁閉鎖不全を含む心臓弁欠損;限定はしないが大動脈の縮窄、中隔欠損症、肺動脈弁狭窄症およびファロー四徴症を含む先天性心臓欠損;不整脈、心筋梗塞、心筋症、肺高血圧症、ならびに限定はしないが慢性気管支炎および肺気腫を含む肺疾患、を含む種々の状態または障害に起因し得る。うっ血性心不全の症状としては、限定はしないが、疲労、呼吸困難、肺水腫、ならびに足首および脚部の腫れが挙げられる。
本明細書において用いる場合、「気絶心筋(stunned myocardium)、とは、心虚血に起因して機能(ポンピング/拍動)していない心筋を意味する(心筋に供給する血管への血流/酸素の欠乏)。
本明細書において用いる場合、「拡張機能障害(diastolic dysfunction)」は、拡張期(心収縮の休止期)に心臓が血液で満たされないことを意味する。この状態は通常、左室肥大の設定を生じる。心筋は拡大されて、堅くなり、その結果十分に満たされない。拡張機能不全は、心不全および不十分な心機能を生じ得る。
本明細書において用いる場合、「肺性高血圧(pulmonary hypertension)」とは、肺に供給する動脈における血圧が異常に高い障害を意味する。原因としては、限定はしないが、慢性気管支炎および肺気腫におけるような;肺への酸素の不十分な供給;肺塞栓症、および間質性肺線維症が挙げられる。肺性高血圧の症状および兆候はしばしば微妙であって非特異的である。後期段階では、肺性高血圧は、肝臓拡張、首の静脈の拡張および全身性浮腫を伴う右心不全をもたらす。
本発明のさらなる実施形態では、この方法は、心筋障害を処置するために用いられ、徐脈性不整脈、徐脈、うっ血性心不全、気絶心筋、肺性高血圧および拡張機能障害の1つ以上を罹患している個体に対して、本発明による1つ以上のポリペプチドの心筋収縮速度を増大するのに有効な量を投与する工程を含む。
徐脈性不整脈を処置する工程は、以下の1つ以上を含む(a)心拍数を個体の正常なレベル近くまで、所望の速度に近くまで改善すること、または1分あたり少なくとも60拍まで増大すること;(b)徐脈性不整脈に罹患している患者における活力の消失、衰弱、失神および低血圧の1つ以上の出現を予防すること;(c)徐脈性不整脈およびその症状に罹患している患者における活力の消失、衰弱、失神および低血圧の1つ以上の悪化を阻害すること;(d)徐脈性不整脈に以前に罹患した患者における徐脈性不整脈の再発を制限または防止すること;ならびに(e)徐脈性不整脈に以前に罹患した患者における活力の消失、衰弱、失神および低血圧の1つ以上の再発を制限または予防すること。
同様に、うっ血性心不全を処置する工程は、以下の1つ以上を含む。(a)個体の正常なレベル近くまで、または所望のポンプ能力に近くまで、心臓が身体全体にわたる血液の十分な供給を拍出する能力を改善すること;(b)うっ血性心不全に罹患している患者において疲労、呼吸困難、肺水腫、ならびに足首および脚部の腫れの1つ以上の発症を制限または予防すること;(c)うっ血性心不全およびその症状に罹患している患者において疲労、呼吸困難、肺水腫、ならびに足首および脚部の腫れの1つ以上の悪化を阻害すること;(d)うっ血性心不全に以前に罹患した患者におけるうっ血性心不全の再発を制限または防止すること;ならびに(e)うっ血性心不全に以前に罹患した患者において疲労、呼吸困難、肺水腫、ならびに足首および脚部の腫れの1つ以上の再発を制限または予防すること。
気絶心筋の処置とは、(a)虚血筋の酸化を改善することによって、または心筋細胞の酸素の必要性を低下させることによって、心筋が拍動する能力を改善すること、および(b)気絶心筋に以前に罹患した患者における気絶心筋の再発を制限または防止することのうちの1つ以上を意味する。
同様に、拡張機能障害を処置する工程は、(a)心臓が弛緩してさらに完全に充満することを可能にすることによって、心不全および/または不十分な心機能を制限または防止すること;(b)拡張機能障害に以前に罹患した患者において拡張機能障害の再発を制限または防止すること;ならびに(c)拡張機能障害に以前に罹患した患者における心不全および/または不十分な心機能の再発を制限または防止すること、のうちの1つ以上を含む。
肺性高血圧を処置する工程は、以下の1つ以上を包含する。(a)個体の正常なレベル近くまで、または所望の圧力に近くまで、肺に供給する動脈における血圧を低下させること;(b)肺性高血圧に罹患している患者における首の静脈の拡張、肝臓拡張、および全身性浮腫の1つ以上の出現を制限または予防すること;(c)肺性高血圧およびその症状に罹患している患者において首の静脈の拡張、肝臓拡張、および全身性浮腫の1つ以上の悪化を阻害すること;(d)肺性高血圧に以前に罹患した患者における肺性高血圧の再発を制限または防止すること;ならびに(e)肺性高血圧に以前に罹患した患者において首の静脈の拡張、肝臓拡張、および全身性浮腫の1つ以上の再発を制限または予防すること。
さらなる態様では、本発明は、心筋障害を防止するための方法を提供し、この方法は、徐脈性不整脈、徐脈、うっ血性心不全、気絶心筋、肺性高血圧および拡張機能障害を発現する危険性のある個体に対して、本発明による1つ以上のポリペプチドの心筋収縮速度を増大するのに有効な量を投与する工程を含む。
例えば、うっ血性心不全を予防する方法は、高血圧、貧血、甲状腺機能亢進症、限定はしないが大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全、および三尖弁閉鎖不全を含む心臓弁欠損;限定はしないが大動脈の縮窄、中隔欠損症、肺動脈弁狭窄症およびファロー四徴症を含む先天性心臓欠損;不整脈、心筋梗塞、心筋症、肺高血圧症、ならびに限定はしないが慢性気管支炎および肺気腫を含む肺疾患のうちの1つ以上に罹患する被験体に対する、本発明による1つ以上のポリペプチドの投与を含む。
同様に、徐脈を予防する方法は、冠状動脈性心臓病およびアテローム形成の1つ以上に罹患しているか、または心筋梗塞もしくは伝導障害を以前に有していた被験体に対する本発明による1つ以上のポリペプチドの投与を含む。
同様に、肺性高血圧を予防する方法は、慢性気管支炎、肺気腫、肺塞栓および間質性肺線維症の1つ以上に罹患している被験体に対する、本発明による1つ以上のポリペプチドの投与を含む。
気絶心筋を予防する工程は、心筋虚血に罹患している被験体に対する本発明による1つ以上のポリペプチドの投与を含む。
拡張機能障害を予防、処置する工程は、左心室肥大に罹患している被験体に対する本発明による1つ以上のポリペプチドの投与を包含する。
本発明の方法のさらなる実施形態では、この方法は、創傷治癒を促進するため、および/または瘢痕形成を軽減するために用いられる。これらの実施形態では、「その必要な個体(individual in need thereof)」とは、瘢痕形成を生じ得る創傷を被っているかまたは被る(例えば、外科的手順を介して)か、または瘢痕形成を生じている個体である。本明細書において用いる場合、「創傷(wound)」という用語は、皮膚および皮下の組織に対する創傷を広く指す。このような創傷としては、限定はしないが、断裂;熱傷;穿刺;床ずれ;褥瘡;アフタ性口内炎;外傷、咬傷;瘻孔;潰瘍;感染によって生じる病変;歯周部創傷;歯内創傷;口腔灼熱症候群;開腹術の創傷;外科的創傷;切開創傷;火傷後の拘縮;限定はしないが特発性肺線維症、肝線維症、腎線維症、後腹膜線維化症、嚢胞性線維症、血管線維症、心組織線維症を含む組織線維症;および美容整形外科手順から生じる創傷が挙げられる。本明細書において用いる場合、「瘢痕形成の軽減(reducing scar formation)」という句は、患者に対して治療上または美容上の利点を提供する瘢痕形成の任意の軽減を意味する。このような治療または美容の利点は、例えば、本発明の方法での処置のない瘢痕形成に対して瘢痕のサイズおよび/もしくは深さを軽減することによって、または既存の瘢痕のサイズを減少することによって達成され得る。本明細書において用いる場合、このような瘢痕としては、限定はしないが、ケロイド;肥厚性瘢痕;限定はしないが外科手術の結果として生じる癒着を含む器官表面の間の癒着形成が挙げられる。瘢痕形成を軽減するためのこのような方法は、最初の瘢痕形成を軽減するため、および既存の瘢痕の治療的処置のための両方について瘢痕形成を軽減するために全てのタイプの創傷を処置するために臨床上有用である(すなわち:瘢痕形成後に瘢痕を切除すること、本発明の化合物を用いて瘢痕を処置すること、および瘢痕の治癒をより緩徐にさせること)。このような創傷は上記のとおりである。本明細書において用いる場合、「創傷治癒を促進する工程(promoting wound healing)」という句は、患者に対して治療上または美容上の利益を提供する創傷治癒における任意の向上を意味する。このような治療上の利益は、例えば、未処置の個体に対する創傷治癒の速度の向上、および/または創傷治癒の程度の向上のうちの1つ以上によって達成され得る。このような創傷は上記のとおりである。
この実施形態では、1つ以上のポリペプチドが創傷被覆材または他の局所投与の内外に配置されることが好ましい。このような創傷被覆材は、当分野で用いられ得る限定はしないがフィルム(例えば、ポリウレタンフィルム)、親水コロイド(ポリウレタンフォームに結合された親水性コロイド粒子)、ヒドロゲル(少なくとも約60%の水を含む架橋ポリマー)、泡状物(親水性または疎水性)、アルギン酸カルシウム(アルギン酸カルシウム由来の不織の繊維組成物)、セロハン(登録商標)、および生物学的ポリマー、例えば、2003年10月9日公開、米国特許出願公開番号20030190364号に記載されるものを含むいずれであってもよい。
本発明の方法の全てについて本明細書において用いる場合、1つ以上のポリペプチドの「有効量(amount effective)」とは、意図される処置の利点を提供するのに十分である量である。使用され得るポリペプチドの有効量は一般に、体重1kgあたり約0.01μg〜体重1kgあたり約10mgに及び、好ましくは体重1kgあたり約0.05μg〜体重1kgあたり約5mgに及ぶ。しかし、投薬レベルは、傷害のタイプ、個体の年齢、体重、性別、医学的状態、この状態の重篤度、投与の経路および使用される特定の化合物を含む種々の要因に基づく。従って、投薬レジメンは、広範に変化してもよいが、標準的な方法を用いて医師によって慣用的に決定され得る。
本発明は、本明細書に添付される請求項によって規定されるとおり、例示の目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない添付の実施例を参照してさらに良好に理解され得る。
材料および方法
ペプチド合成および精製
ペプチドは、標準的なf−moc化学を用いて合成されて、Cell Essentials(Boston,MA)による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製された。蛍光ペプチドは、リンカーとしてβアラニンを用いてN末端上で標識されたフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で合成された。
細胞培養、免疫細胞化学および干渉反射顕微鏡
他に言及しない限り、全ての試薬は、Sigma,St.Louis,MOから購入した。Swiss Albino 3T3線維芽細胞(ATCC,Manassas,VA)を、10% BCS、4mM Lグルタミンおよび50μg/mlペニシリン−ストレプトマイシンを補充したDMEM中で培養して、37℃、5%CO2で維持した。細胞を播種して一晩培養した。培養培地は、実験の1時間前に0.5%BCSを含有するDMEMで置換した。0.5% BCSを含有するDMEM中で希釈したペプチドアナログまたは試薬(LPAまたはフォルスコリン)とともに、細胞を30分間37℃でインキュベートさせた。次いで、細胞を4%パラホルムアルデヒド中で固定して、0.25% Triton X−100中で透過化処理して、1% BSA溶液を用いて1時間ブロックさせた。f−アクチンの細胞骨格分布を決定するために、処理した細胞をAlexa 568ファロイジン(Molecular Probes,Eugene,OR)とともに1% BSA中で30分インキュベートさせた。接着斑タンパク質局在化を決定するために、処置した細胞をα−アクチン(1:100,Upstate,Charlottesville,VA)、ビンクリン(1:100、Sigma)またはパキシリン(1:100,BD Bioscience−Transduction Labs,San Jose,CA)についての一次モノクローナル抗体とともにBSA溶液中で2時間インキュベートさせて、PBS中でリンスして、Cy3−ヤギIgG二次抗体(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)とともに60分間インキュベートさせた。スライドを装着して、共焦点顕微鏡(Leica TCS SP2,Bannockburn,IL)によって分析した。干渉反射顕微鏡を用いて、接着斑について陽性である3T3細胞の割合を決定した。上記のように細胞を培養して、処理しないか、または100nM HepI(トロンボスポンジンペプチド)、10μMおよび25μM pHSP20(リン酸(phospho)HSP20ペプチド)もしくは10μMおよび25μM sHSP20(スクランブルされた(scrambled)HSP20ペプチド)を用いて処理した。
イムノブロッティング
3T3細胞を20mM HEPES、15mM EDTA、2mM EGTA、1% Triton−100溶液中に溶解した。細胞溶解液(20μg)由来のタンパク質を15%SDS−PAGEゲル上で分離して、Immobilonメンブレン(Millipore,Billerica,MA)に転写した。このブロットを5%ミルク/TBS/Tween−20中で1時間ブロックさせた。次いでこのブロットを抗コフィリン(1:1000,BD Bioscience−Transduction Labs)またはリン酸化状態特異的コフィリン抗体(1:2000,Chemicon,Temecula,CA)を含有するTBS/ミルク中で室温において1時間インキュベートさせた。このブロットをTBS/Tween−20中で3回(各10分)洗浄した。このコフィリンおよびリン酸−コフィリンブロットを、TBS/ミルク中に希釈した(1:20,000)ヤギ抗マウスまたはヤギ抗ウサギ二次抗体(Jackson ImmunoResearch)中で室温において1時間入れた。次いでこのブロットをTBS/Tween−20中で3回(各10分)洗浄した。免疫反応性タンパク質を、X線フィルム(Kodak,New Haven,CT)に曝露した高感度ケミルミネセンス(SuperSignal West Pico,Pierce,Rockford,IL)を用いて決定した。
結果
HSP20がサイクリックヌクレオチド依存性の星状化を媒介するか否かを決定するため:1)HSP20のリン酸化部位を囲むアミノ酸配列(WLRRApSAPLPGL)と;2)ホスホセリン(pS)と;3)HIV Tatタンパク質由来の11アミノ酸のタンパク質形質導入ドメイン(YGRKKRRQRRR)とを含んだ、HSP20のリンペプチドアナログ(pHSP20)を合成した。コントロールのペプチドは、ホスホセリンの位置のアラニン(aHSP20)、またはホスホセリンを含むスクランブルされたHSP20配列(scrHSP20、PRpSLWALGRPLSAK)のいずれか以外はリンペプチドアナログと同じ配列を含んだ。Swiss 3T3細胞をpHSP20またはaHSP20(25μM、30分)で処置して、固定して、アクチンファイバーをファロイジンで染色した。血清(10%)またはリゾホスファチジン酸(10μM、30分)に曝された細胞は、強固なストレスファイバーを示した(図1A)。アデニレートシクラーゼ活性化因子フォルスコリン(10μM、30分)を用いて、またはpHSP20を用いて処置された細胞は、星状の形態および崩壊したストレスファイバーを示した。コントロールのペプチドaHSP20は形態学でもストレスファイバーでも変化をもたらさなかった。
ストレスファイバーの損失が、糸状(f−)アクチンの損失、およびそれに釣り合った球状(g−)アクチンの増大を伴うことを確認するため、DNase1阻害アッセイを行なった(5)。フォルスコリン(10μM、30分)およびpHSP20(25μM、30分)の処置は、g−アクチンの増大をもたらした(図1B)。従って、pHSP20の形質導入は、アクチンフィラメントの動態および細胞の形態学において、上流のアデニレートシクラーゼ活性化因子フォルスコリンの活性化がするのと同様の変化をもたらした。
pHSP20の付加の際にアクチン細胞骨格網目状構造の破壊をさらに確実にするために、干渉反射顕微鏡によって接着斑の存在を試験した(6、7)。接着斑は、インテグリンおよびシンデカン(syndecan)のレセプターを通じて細胞外基質に対して細胞骨格を結合させる構造タンパク質およびシグナル伝達タンパク質の両方のプラーク様の足場である。接着斑は、細胞接着に応答して形成されて、Rhoを通じたシグナル伝達を含む。これらは、ストレスファイバーの消失ならびにビンクリン、αアクチニンおよびパキシリンの分散によって特徴付けられる、分解および再構築を受ける動的な構造であり、そして細胞移動度の増大を伴う。マトリクス細胞タンパク質トロンボスポンジンおよびテネイシン−Cは、基礎PGK活性を要する方式で、接着斑の分解および中間細胞接着状態の誘導を生じる(7)。フォルスコリンまたはpHSP20で処置した細胞は、αアクチニン、ビンクリンおよびパキシリンの接着斑蓄積の減少を示した(図2A−C)が、aHSP20で処置した細胞は、接着斑タンパク質を保持しているようであった。pHSP20は、トロンボスポンジンのhep Iペプチドで生じた接着斑の損失と同様の、培養された3T3細胞における接着斑の分解を生じ(図2D)、これはPKG依存性の様式で接着斑の分解をシグナルすることが示されている(7)。ここでも、aHSP20は、接着斑に影響を有さなかった。これらのデータによって、リン酸化したHSP20は、PKGが接着斑分解を媒介する下流エフェクターの1つであり得ることが示唆される。
本発明者らは、次に、pHSP20がアクチンフィラメントおよび接着斑複合体の分解を媒介し得る、潜在的な機構を試験した。ADF(アクチン脱重合ファミリー)/コフィリンファミリーのタンパク質は、重合化/脱重合化の調節を介してアクチンの代謝回転に関与する。詳細には、リン酸化したコフィリンは不活性である;しかし、ホスファターゼのスリングショットファミリーによって脱リン酸化された場合、コフィリンはアクチンの脱重合化を触媒する(8)。リン酸化したコフィリンは、14−3−3タンパク質に対する結合によって安定化される(9)。14−3−3タンパク質は、一般的な生化学的調節因子であると考えられる。なぜなら、それらは、多くの細胞機能に関与しており、広範なリガンド、例えば、レセプター、キナーゼ、ホスファターゼおよびドッキング分子を有するからである(10)。シグナル伝達タンパク質の活性および高次構造を安定化することによって構造的役割を果たすことに加えて、14−3−3タンパク質はまた、リン酸化したモチーフと相互作用してこれを局在化することによって足場タンパク質として作用する(11)。HSP20においてリン酸化部位を囲むドメインは、推定の14−3−3結合モチーフ(RSXpSXP)と同様の配列(RRApSAP)を含む。前の結果によって、Rの直後の非リン酸化セリンの存在は、極めて好ましいが、このモチーフには必要ではないことが示されている(12)。従って、pHSP20がアクチン破壊をもたらすありそうな1つの機序は、コフィリンの放出および脱リン酸化を生じる14−3−3タンパク質に対する競合的結合を介する。この仮説と一致して、フォルスコリンでのまたはpHSP20での処理は、リン酸化コフィリンの量を減少させた(図3)。リン酸化コフィリンでの同様の減少がhepI処理で観察されている(13)。
まとめると、これらのデータによって、リン酸化部位を囲む短い配列またはモチーフが細胞の生物学に顕著な影響を有し得ることが示唆される。これらのペプチドは、三次構造をほとんど、または全く有さないので(15)、これらのペプチドモチーフは、タンパク質間の相互作用における変化を通じて細胞機能を変更していると考えられる。リン酸化HSP20の場合、これらのデータは、リン酸化部位を囲むモチーフが14−3−3タンパク質に結合することを示唆する。14−3−3タンパク質に対する結合は非共有結合的であるので、リン酸化HSP20による14−3−3タンパク質からのコフィリンの競合的解離は、アクチン脱重合化タンパク質としてコフィリンの脱リン酸化および活性化をもたらし得る。
細胞骨格動態を調節するペプチドモチーフの形質導入は、プロテオミクスベースの治療剤の開発のためのフレームワークを提供する。このアプローチの1つの利点は、下流のタンパク質標的の進化的な特性である。シグナル伝達カスケードのレセプターに基づく調節によって酵素的活性の増幅がもたらされる。従って、プロテオミクス標的の特異的な翻訳後修飾を開発することは、潜在的にさらに化学量論的であり、従って細胞プロセスの微細な調節について安定である。このアプローチはまた、タンパク質産生における遅延も、またはタンパク質発現の量の調節の困難性もないという点で遺伝子治療を上回る利点を有する。最終的にはこのアプローチは、上流レセプターまたはシグナル伝達カスケードの活性化に対して抵抗性である特定の様相の処置のために実行可能であり得る。例えば、クモ膜下出血に関する血管攣縮は、HSP20の発現の下方制御と同期して生じる(16)。これらのペプチドアナログは、脳内血管攣縮の処置のためのCSFへの直接送達のために開発され得る。
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12.J.E.Murphy−Ullrich,未公開データ。
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14.S.Yellamraju,P.Komalavilas,E.J.Furnish,C.R.Flynn,C.M.Brophy,データ示さず。
15.S.D.Macomson,C.M.Brophy,W.Miller,V.A.Harris,E.G.Shaver,Neurosurgery 51,204(2002)。
リン酸HSP20ペプチドはリン酸−コフィリン(phosphp−cofilin)のレベルを低下する。3T3細胞は、未処置(レーン1)であるか、または10μM LPA(レーン2)、10μM FSK(レーン3)、または25μM FITC−pHSP20(レーン4)を用いて30分間37℃で処置されるかのいずれかであった。細胞溶解物(25μg/レーン)をSDS−PAGEによって分析して、コフィリン(上部)またはリン酸−コフィリン(下部)に対する抗体を用いてプローブした。これらのブロットは3つの独立した実験の代表である。 14−3−3はブタ冠動脈免疫沈降においてHSP20と会合している。組織を、示したとおり処置して急速凍結させた。再懸濁したタンパク質をそれぞれ、コフィリン(上部パネル)および14−3−3(下部パネル)を用いて免疫沈降させ、そして14−3−3およびHSP20についてイムノブロットさせた。

Claims (7)

  1. 一般式I:
    X1−X2−X3
    によるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む組成物であって、
    X1およびX3が独立して存在しないか、または形質導入ドメインを含み;
    かつ
    X2が[Z1−Z2−RRA−Z3−AP]uであり、
    Z1が存在しないかまたはWであり;
    Z2が存在しないかまたはLであり;
    Z3がS、T、Y、D、E、ホスホセリンアナログおよびホスホチロシンアナログからなる群より選択され;かつ
    uは1〜2であり、uが2である場合、X2の2つのコピーは必要に応じてスペーサーによって隔てられる、組成物。
  2. 請求項1の組成物および薬学的に受容可能なキャリアを含む医薬組成物。
  3. 請求項1のポリペプチドをコードする単離された核酸配列。
  4. 請求項3の核酸を含む組み換え発現ベクター。
  5. 請求項4の組み換え発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞。
  6. 請求項1に記載の1つ以上の組成物を含む、改良された生物医学的デバイス。
  7. 一般式II:
    X1−X2−X3
    によるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む組成物の使用であって、
    X1およびX3が独立して存在しないか、または形質導入ドメインを含み;
    かつ
    X2が[Z1−Z2−R−Z4−A−Z3−AP]uであり、
    Z1が存在しないかまたはWであり;
    Z2が存在しないかまたはLであり;
    Z3がS、T、Y、D、E、ホスホセリンアナログおよびホスホチロシンアナログからなる群より選択され;
    Z4がRまたはSであり;そして
    uは1〜2であり、uが2である場合、X2の2つのコピーは必要に応じてスペーサーによって隔てられる組成物か、あるいはその機能的等価物であって、以下の治療用途:
    (a)平滑筋細胞増殖および/または遊走を阻害すること;
    (b)平滑筋弛緩を促進すること;
    (c)心筋における収縮速度を増大すること;
    (d)心筋弛緩の速度を増大すること;
    (e)創傷治癒を促進すること;
    (f)瘢痕形成を軽減すること;
    (g)病巣癒着を妨害すること;
    (h)アクチン重合化を調節すること;ならびに
    (i)内膜過形成、狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、平滑筋細胞腫瘍、平滑筋攣縮、狭心症、プリンズメタル型狭心症、虚血、発作、徐脈、高血圧、肺性高血圧、喘息、妊娠中毒症、早期の陣痛および/または分娩、子癇前症/子癇、子宮内成長制限、レイノー病またはレイノー現象、溶血性***、非閉塞性腸管虚血、裂肛、アカラシア、性機能障害、片頭痛、平滑筋攣縮に伴う虚血性筋障害、脈管障害、徐脈性不整脈、うっ血性心不全、気絶心筋、および拡張機能障害の1つ以上を処置または阻害すること、
    の1つ以上を行なうための医薬の調製のための、使用。
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