しかしながら、上述の集中制御方法では、制御のために複雑な演算を繰り返し行う必要があり、制御量を決定するまでの演算時間が長くなる。このため、電圧変動に素早く対応して電圧制御を行なうのが困難である。また、演算には配電線の構成に基づくインピーダンス情報が必要である。このため、配電系統の構成変更に柔軟に対応するのが困難である。
本発明は、複雑な演算が不要な配電系統の電圧制御方法及び電圧制御システムを提供することを目的とする。また、本発明は、配電系統の構成に基づくインピーダンス情報が不要な不要な配電系統の電圧制御方法及び電圧制御システムを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、請求項1記載の配電系統の電圧制御方法は、配電線上の複数地点で電圧計測を繰り返し行って適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視し、電圧の逸脱を少なくとも1箇所で検出した場合、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値に基づいて、その電圧計測値の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器を作動させるものである。
したがって、配電線上に設けられた複数の計測地点のうち、いずれかの計測地点の電圧値が適正範囲から逸脱すると、電圧制御機器を使用した配電系統の電圧制御が開始される。即ち、適正範囲から逸脱した電圧値(以下、逸脱電圧値という)が計測された計測地点に最も近い位置に設けられている電圧制御機器を作動させる。このとき、逸脱電圧値が適正範囲の上限値を超える場合には電圧を下げるように電圧制御機器が操作され、下限値を下回る場合には電圧を上げるように電圧制御機器が操作される。同時に複数地点で逸脱電圧値が検出された場合には、最も逸脱量が大きい逸脱電圧値を対象に上述の電圧制御が行なわれる。
電圧制御機器の設置台数は複数台でも1台でも良い。複数の電圧制御機器が設けられている場合には、電圧計測を行なう箇所と電圧制御機器との位置関係を予め把握しておき、逸脱電圧値が計測された計測地点に最も近い電圧制御機器を作動させる。また、電圧制御機器の設置台数が1台である場合には、当該電圧制御機器が全ての計測地点に対して最も近い位置に設けられている電圧制御機器であり、逸脱電圧値を計測した計測地点がいずれであっても当該電圧制御機器を作動させる。
電圧制御機器としては、例えば静止型無効電力補償装置(SVC:Static Var Compensator)、電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)等の使用が可能であり、全ての電圧制御機器を静止型無効電力補償装置と電圧調整器とのうち、いずれか一方にしても良いし、両方を混在させて使用しても良い。
全ての逸脱電圧値が適正範囲に収ると、即ち電圧の逸脱が解消されると、電圧制御機器の作動が停止されて配電系統の電圧制御が終了する。
また、請求項2記載の配電系統の電圧制御方法は、電圧制御機器が複数設けられており、電圧計測値の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器の作動だけではその電圧計測値の逸脱が解消しない場合には、その次に近い位置の別の電圧制御機器を追加作動させ、その電圧計測値の逸脱が解消するまで次々に近い順序で別の電圧制御機器を追加作動させるものである。
したがって、1台の電圧制御機器の作動だけでは逸脱電圧値を解消することができない場合には、2番目に近い電圧制御機器も作動させる。そして、2台の電圧制御機器の作動によっても逸脱電圧値を解消することができない場合には、3番目に近い電圧制御機器を作動させる。このように逸脱電圧値が解消するまで次々に電圧制御機器を追加作動させ、電圧の逸脱に対する電圧制御機器の出力不足を補う。
また、請求項3記載の配電系統の電圧制御方法は、電圧制御機器が複数設けられており、電圧計測値の逸脱が解消しないうちに別の計測地点の電圧計測値の逸脱量が最大になった場合、作動中の電圧制御機器の作動を一定に維持したまま、別の計測地点の電圧計測値に基づいてその別の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器を追加作動させるものである。
したがって、ある計測地点の逸脱電圧値を対象にしてその計測地点に最も近い電圧制御機器を作動させている最中に、逸脱が最大となる電圧計測値が別の計測地点で計測されたものに移ると、作動中の電圧制御機器の作動を一定に維持したまま、新たに逸脱が最大となった逸脱電圧値を対象に電圧制御機器の操作が行なわれる。
また、請求項4記載の配電系統の電圧制御方法は、配電線を複数の区画に分割し、各区画に属する電圧計測地点と電圧制御機器毎に逸脱電圧値の発生監視と電圧制御機器の作動を行なうものである。したがって、上述の配電系統の電圧制御が各区画毎に独立して行なわれる。
また、請求項5記載の配電系統の電圧制御方法は、適正範囲を上回る電圧計測値と下回る電圧計測値とが同時に検出された場合には、電圧制御機器の作動を行なわないものである。適正範囲を上回る電圧計測値と下回る電圧計測値とが同時に検出された場合には電圧制御機器の作動によって配電系統の電圧制御を行なうのは適切でない。したがって、不適切な電圧制御機器の作動を防止することができる。
また、請求項6記載の配電系統の電圧制御方法は、全ての計測地点の電圧計測値を1台の制御装置に入力し、当該制御装置によって適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視すると共に、電圧の逸脱を検出した場合、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値に基づいて、電圧計測値の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器を作動させるものである。したがって、配電系統の電圧制御を1台の制御装置によって集中制御することができる。
また、請求項7記載の配電系統の電圧制御システムは、配電線に接続された電圧制御機器と、配電線上の異なる地点の電圧を計測する複数の配電線センサと、配電線センサによって計測された電圧計測値が入力される制御装置とを備え、制御装置は、適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視し、且つ電圧の逸脱を少なくとも1箇所で検出した場合、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値に基づいて、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器を作動させるものである。
したがって、配電線上に設けられた複数の配電線センサのうち、いずれかの配電線センサによって計測された電圧が適正範囲から逸脱すると、電圧制御機器を使用した配電系統の電圧制御が開始される。即ち、制御装置は監視している電圧計測値の中で適正範囲から逸脱した電圧値(逸脱電圧値)を検出すると、逸脱電圧値を計測した配電線センサに最も近い位置に設けられている電圧制御機器を選択し作動させる。このとき、制御装置は、逸脱電圧値が適正範囲の上限値を超える場合には電圧を下げるように電圧制御機器を操作し、下限値を下回る場合には電圧を上げるように電圧制御機器を操作する。制御装置は、同時に複数の逸脱電圧値を検出した場合には最も逸脱量が大きい逸脱電圧値を対象に上述の電圧制御を行なう。
電圧制御機器の設置台数は複数台でも1台でも良い。複数の電圧制御機器が設けられる場合には、制御装置は配電線センサと電圧制御機器との位置関係を予め把握しておき、逸脱電圧値を計測した配電線センサに最も近い電圧制御機器を作動させる。また、電圧制御機器の設置台数が1台である場合には、当該電圧制御機器が全ての配電線センサに対して最も近い電圧制御機器であり、制御装置は逸脱電圧値を計測した配電線センサがいずれのものであっても当該電圧制御機器を作動させる。電圧制御機器としては、例えば静止型無効電力補償装置(SVC)、電圧調整器(SVR)等の使用が可能であり、全ての電圧制御機器を静止型無効電力補償装置と電圧調整器のうち、いずれか一方にしても良いし、両方を混在させて使用しても良い。
逸脱電圧値が適正範囲に収ると、制御装置は電圧制御機器の操作を停止し、配電系統の電圧制御を終了させる。そして、制御装置は逸脱電圧値の発生監視を継続する。
また、請求項8記載の配電系統の電圧制御システムは、電圧制御機器が複数設けられており、制御装置は、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器の作動だけでは適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の逸脱が解消しない場合には、その次に近い位置に設けられている電圧制御機器を追加作動させ、電圧計測値の逸脱が解消するまで次々に近い順序で別の電圧制御機器を追加作動させるものである。
したがって、1台の電圧制御機器の作動だけでは逸脱電圧値を解消することができない場合には、制御装置は2番目に近い電圧制御機器も作動させる。そして、2台の電圧制御機器の作動によっても逸脱電圧値を解消することができない場合には、3番目に近い電圧制御機器を作動させる。このように逸脱電圧値が解消するまで次々に電圧制御機器を追加作動させ、電圧の逸脱に対する電圧制御機器の出力不足を補う。
また、請求項9記載の配電系統の電圧制御システムは、電圧制御機器が複数設けられており、制御装置は、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の逸脱が解消しないうちに別の計測地点の電圧計測値の逸脱量が最大になった場合、作動中の電圧制御機器の作動を一定に維持したまま、別の計測地点の電圧計測値に基づいてその別の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器を追加作動させるものである。
したがって、ある計測地点の逸脱電圧値を対象にしてその計測地点に最も近い電圧制御機器を作動させている最中に、逸脱が最大となる電圧計測値が別の計測地点で計測されたものに移ると、制御装置は作動中の電圧制御機器の作動を一定に維持したまま、新たに逸脱が最大となった逸脱電圧値を対象に電圧制御機器の操作を行なう。
また、請求項10記載の配電系統の電圧制御システムは、配電線が複数の区画に分割されており、制御装置は、各区画に属する電圧計測地点と電圧制御機器毎に逸脱電圧値の発生監視と電圧制御機器の作動を行なうものである。したがって、配電系統の電圧制御が各区画毎に独立して行なわれる。
さらに、請求項11記載の配電系統の電圧制御システムは、制御装置が、適正範囲を上回る電圧計測値と下回る電圧計測値とが同時に検出した場合には、電圧制御機器の作動を行なわないものである。
適正範囲を上回る電圧計測値と下回る電圧計測値とが同時に検出された場合には電圧制御機器の作動によって配電系統の電圧制御を行なうのは適切でない。このように電圧制御機器の作動が不適切な場合には、制御装置は電圧制御機器の作動を行なわない。
請求項1記載の配電系統の電圧制御方法では、配電線上の複数地点で電圧計測を繰り返し行って適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視し、電圧の逸脱を少なくとも1箇所で検出した場合、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値に基づいて、その電圧計測値の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器を作動させるので、電圧制御機器の操作に複雑な演算が不要となり、従来の集中制御方式と比べて高速な制御が可能となる。また、配電系統の構成に基づくインピーダンス情報を用いずに電圧制御機器を操作することができるため、系統切り替えなどによる配電系統の構成変更にも柔軟に対応することができる。
また、請求項2記載の配電系統の電圧制御方法では、電圧制御機器が複数設けられており、電圧計測値の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器の作動だけではその電圧計測値の逸脱が解消しない場合には、その次に近い位置の別の電圧制御機器を追加作動させ、その電圧計測値の逸脱が解消するまで次々に近い順序で別の電圧制御機器を追加作動させるので、逸脱電圧値の適正範囲からの逸脱量が大きい場合にも対応することができる。
また、請求項3記載の配電系統の電圧制御方法では、電圧制御機器が複数設けられており、電圧計測値の逸脱が解消しないうちに別の計測地点の電圧計測値の逸脱量が最大になった場合、作動中の電圧制御機器の作動を一定に維持したまま、別の計測地点の電圧計測値に基づいてその別の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器を追加作動させるので、配電系統の電圧の変動に柔軟に対応することができる。
また、請求項4記載の配電系統の電圧制御方法では、配電線を複数の区画に分割し、各区画に属する電圧計測地点と電圧制御機器毎に逸脱電圧値の発生監視と電圧制御機器の作動を行なうので、配電系統に複数の電圧制御機器が設置されている場合に、各電圧制御機器の操作をそれぞれ適切に行なうことができる。
また、請求項5記載の配電系統の電圧制御方法では、適正範囲を上回る電圧計測値と下回る電圧計測値とが同時に検出された場合には、電圧制御機器の作動を行なわないので、不適切な電圧制御機器の作動を防止することができる。
また、請求項6記載の配電系統の電圧制御方法では、全ての計測地点の電圧計測値を1台の制御装置に入力し、当該制御装置によって適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視すると共に、電圧の逸脱を検出した場合、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値に基づいて、電圧計測値の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器を作動させるので、配電系統の電圧制御を1台の制御装置によって集中制御することができる。
また、請求項7記載の配電系統の電圧制御システムでは、配電線に接続された電圧制御機器と、配電線上の異なる地点の電圧を計測する複数の配電線センサと、配電線センサによって計測された電圧計測値が入力される制御装置とを備え、制御装置が、適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視し、且つ電圧の逸脱を少なくとも1箇所で検出した場合、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値に基づいて、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器を作動させるので、電圧制御機器の操作に複雑な演算が不要となり、従来の集中制御方式と比べて高速な制御が可能となる。また、配電系統の構成に基づくインピーダンス情報を用いずに電圧制御機器を操作することができるため、系統切り替えなどによる配電系統の構成変更にも柔軟に対応することができる。
また、請求項8記載の配電系統の電圧制御システムでは、電圧制御機器が複数設けられており、制御装置は、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器の作動だけでは適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の逸脱が解消しない場合には、その次に近い位置に設けられている電圧制御機器を追加作動させ、電圧計測値の逸脱が解消するまで次々に近い順序で別の電圧制御機器を追加作動させるので、逸脱電圧値の適正範囲からの逸脱量が大きい場合にも対応することができる。
また、請求項9記載の配電系統の電圧制御システムでは、電圧制御機器が複数設けられており、制御装置は、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の逸脱が解消しないうちに別の計測地点の電圧計測値の逸脱量が最大になった場合、作動中の電圧制御機器の作動を一定に維持したまま、別の計測地点の電圧計測値に基づいてその別の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器を追加作動させるので、配電系統の電圧の変動に柔軟に対応することができる。
また、請求項10記載の配電系統の電圧制御システムでは、配電線が複数の区画に分割されており、制御装置は、各区画に属する電圧計測地点と電圧制御機器毎に逸脱電圧値の発生監視と電圧制御機器の作動を行なうので、配電系統に複数の電圧制御機器が設置されている場合に、各電圧制御機器の操作をそれぞれ適切に決定することができる。
さらに、請求項11記載の配電系統の電圧制御システムでは、制御装置が、適正範囲を上回る電圧計測値と下回る電圧計測値とが同時に検出した場合には、電圧制御機器の作動を行なわないので、不適切な電圧制御機器の作動を防止することができる。
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
図1に本発明の配電系統の電圧制御方法(以下、単に電圧制御方法という)の実施形態の一例を、図2に本発明の配電系統の電圧制御システム(以下、単に電圧制御システムという)の実施形態の一例をそれぞれ示す。この電圧制御方法は、配電線2上の複数地点で電圧計測を繰り返し行って適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視し、電圧の逸脱を少なくとも1箇所で検出した場合、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値に基づいて、その電圧計測値の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器3を作動させるものである。また、電圧制御システム1は、配電線2に接続された電圧制御機器3と、配電線2上の異なる地点の電圧を計測する複数の配電線センサ4と、配電線センサ4によって計測された電圧計測値が入力される制御装置5とを備え、制御装置5は、適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視し、且つ電圧の逸脱を少なくとも1箇所で検出した場合、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値に基づいて、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の計測地点に最も近い位置の電圧制御機器3を作動させるものである。
まず最初に、電圧制御機器3を1台だけ設けている場合について説明する。この場合は、当該電圧制御機器3が全ての配電線センサ4に対して最も近い位置に設けられている電圧制御機器であり、電圧計測値の中で適正範囲から逸脱した電圧値(逸脱電圧値)を計測した配電線センサ4がいずれのものであっても当該電圧制御機器3を作動させる。
電圧制御機器3は、例えば静止型無効電力補償装置(SVC)である。ただし、SVCに限るものではなく、例えば電圧調整器(SVR)等の使用も可能である。電圧制御機器としてのSVC3は制御装置5によって操作され、配電線2に注入する無効電力を増減して配電線2の電圧を増減させる。
配電線センサ4は、配電線2の電圧を計測するセンサであり、単体で設置されたセンサであっても他の機器に組み込まれて配電線2上に設置されるセンサであっても良い。本実施形態では、配電線センサ4は、例えば柱上変圧器の高圧(6600V)側の電圧を測定する。配電線センサ4は計測した電圧値(以下、電圧計測値という)を制御装置5に送信する。なお、図2では、配電線センサ4を配電系統の配電線2上の例えば4箇所に設置しているが、配電センサの設置数は4箇所に限るものではない。
電圧の適正範囲は、例えば標準電圧である。本実施形態では、全ての計測地点の電圧を同時に評価するため、配電線センサ4の計測値(高圧:6600V)から低圧(100V)換算を行なっており、標準電圧は例えば100V、即ち101±6Vである。即ち、制御装置5は低圧換算された電圧計測値を比較することで適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値を決定する。ただし、適正範囲は必ずしも100Vについての標準電圧に限るものではなく、その他の電圧の標準電圧を使用しても良い。また、標準電圧以外の範囲の電圧でも良い。
配電線2には分散型電源6や負荷7が接続されている。
制御装置5は、例えばコンピュータで構成されている。制御装置5は、例えば図3に示すように、適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視する監視手段5aと、電圧の逸脱を少なくとも1箇所で検出した場合に操作するSVC3を決定する機器決定手段5bと、電圧の逸脱を少なくとも1箇所で検出した場合に作動させるSVC3の制御量Qを決定する制御量決定手段5cと、決定されたSVC3に対して制御量Qを送信する送信手段5dとを有している。制御装置5を構成するコンピュータには、配電線センサ4の電圧計測値を監視すると共に電圧の逸脱を少なくとも1箇所で検出した場合にSVC3を操作して配電系統の電圧を安定化させる制御手順を定めたプログラム等がインストールされており、当該プログラムと演算装置、記憶装置、入出力装置等のハードウエア資源との協働によって監視手段5a、機器決定手段5b、制御量決定手段5c、送信手段5dが実現されている。
SVC3は自励式または他励式の変換器を有しており、接続された配電線2に流れる無効電力を制御する機器である。他励式変換器を有するタイプのSVC3は、受信した制御量Qに応じて変換器のスイッチングと位相制御を行なって内部に保有する無効電力量を増減し、電圧制御を行なう。即ち、制御装置5の操作によってSVC3が作動し制御動作を行なう。また、自励式変換器を有するタイプのSVC3は、受信した制御量Qに応じたインバータ制御により無効電力を能動的に発生させて電圧制御を行なう。即ち、制御装置5の操作によってSVC3が作動し制御動作を行なう。
制御装置5は、例えば以下のようにして配電系統8の電圧制御を行なう。
制御装置5の監視手段5aは、各地点に設置された配電線センサ4から供給される電圧計測値を収集して監視し(ステップS21)、適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視する(ステップS22)。本実施形態では、配電線センサ4は柱上変圧器の高圧側に設置されているため、監視手段5aは各配電線センサ4の測定値を対応する柱上変圧器の変圧比に基づいて低圧(100V)換算を行い、換算後の値を電圧計測値とする。
そして、電圧の逸脱がなければ監視手段5aはステップS23を実行し、制御量が0であるか否かを判別する。いま、プログラムの実行が開始された直後であり、制御量は0であるので、ステップS26に進む。ステップS26では、送信手段5dが制御量として0をSVC3に送信する。いま、SVC3は制御量0を受信しても作動しない。そして、ステップS21に戻って各地点の電圧計測値の収集が行なわれ、逸脱電圧値の発生監視が継続される。
一方、電圧の逸脱が少なくとも1箇所で検出された場合、即ち少なくとも1つの配電線センサ4の電圧計測値が適正範囲から逸脱したことを監視手段5aが検出した場合、ステップS22からステップS25に進む。ステップS25では、機器決定手段5bが操作対象のSVC3を決定すると共に、制御量決定手段5cが操作対象のSVC3の制御量(制御指令値)Qを決定する。ここでは設置されている電圧制御機器は1台であり、作動の対象となるのは当該SVC3である。また、制御量決定手段5cは、適正範囲から逸脱している電圧計測値に基づいて制御量Qを決定する。例えば、逸脱量に所定の制御ゲインを乗じて制御量Qを算出する。このとき、制御装置5は、逸脱電圧値が適正範囲の上限値を超える場合には電圧を下げるように制御量Qを決定し(上限値制御)、下限値を下回る場合には電圧を上げるように制御量Qを決定する(下限値制御)。なお、設置されている電圧制御機器は1台であるため、以降、SVC3の決定についての説明を省略する。
図4に、上限値制御の場合の制御ブロックの一例を示す。配電線センサ4の電圧計測値Vと目標電圧(適正範囲の上限値)Vrefとの差を取り、この差に所定の係数(制御ゲイン)を乗じることにより、制御量Qを算出する。ただし、制御ブロックは図4のものに限るものではない。制御ブロックは、配電系統8の構成等に応じて適宜決定される。
操作対象となるSVC3とその制御量Qを決定した後、ステップS26に進む。ステップS26では、決定されたSVC3に対して送信手段5dが制御量Qを送信する。制御量Qを受信したSVC3は作動し、制御量Qに対応した無効電力を配電線2に注入する。即ち、前回の制御量Qと今回の制御量Qとの差に応じて無効電力の注入量を増減させる。SVC3が無効電力の注入量を増減させることで、配電線2の電圧が調整される。
その後、ステップS21に戻り、監視手段5aは各地点に設置された配電線センサ4から供給される電圧計測値を収集して逸脱電圧値の有無、換言すると逸脱電圧値の解消を判別する(ステップS22)。いま、SVC3の作動開始直後であり電圧の逸脱が解消していない場合には、ステップS25に進んで制御量Qを算出し直した後、ステップS26に進んでSVC3に算出し直した制御量Qを送信し、ステップS21に戻って上述の制御が繰り返し行なわれる。このように制御量Qは順次更新され、更新後の制御量Qに基づいてSVC3が操作されるので、変化する電圧に良好に追従して電圧制御を行うことができる。しかも、電圧のみに基づいて制御量Qを算出しており、計算量が少なく迅速に制御量Qを算出することができる。このため、ステップS21からステップS26までの実行時間が極めて短く、短時間周期で繰り返し実行することができるので、この点からも電圧の変動に良好に追従して電圧制御を行なうことができる。
そして、電圧の逸脱が解消すると、ステップS22からステップS23に進み、制御量Qが0であるか否か判別し、制御量Qが0の場合にはステップS26に直接進み、制御量Qが0でなければステップS24を実行して制御量Qを0にリセットした後、ステップS26に進む。いま、SVC3の作動によって電圧の逸脱が解消された直後であり、制御量QはSVC3を作動させる値となっているため、ステップS23からステップS24に進んだで制御量Qを0にリセットした後、ステップS26に進む。
ステップS26では、送信手段5dが制御量Qとして0をSVC3に送信する。制御量0を受信したSVC3は無効電力の注入量を0にする。即ち、作動を停止する。そして、ステップS21に戻って各地点の電圧計測値の収集が行なわれ、逸脱電圧値の発生監視が継続される。
また、同時に複数地点での電圧計測値が逸脱電圧値となる場合もある。この場合には、ステップS22から進んだステップS25において、制御量決定手段5cは逸脱量が最大となる電圧計測値に基づいて制御量Qを決定する。このとき、逸脱量が最大となる電圧計測値が別の計測地点のものに移ったときには、別の計測地点の電圧計測値に基づいて制御量Qが決定される。そして、新たに決定し直された制御量Qに基づいてSVC3が操作され(ステップS26)、配電系統8の電圧制御が行なわれる。
制御装置5はステップS21からステップS26を繰り返し行い、配電系統8の電圧制御を行なう。ステップS21からステップS26を繰り返し行なうことで、配電線2の複数地点での電圧計測が短時間周期で繰り返し行なわれ、常に電圧の安定化が図られる。例えば、約2秒程度の周期で電圧計測が繰り返し行なわれる。
本発明では、配電系統8の電圧に基づいてSVC3の制御量Qを算出しているので、制御量Qの算出に複雑な演算が不要となり、高速制御が可能となる。このため、電圧の変動に良好に追従して電圧制御を行うことができる。また、配電系統8の構成、即ち配電線2に接続された分散型電源6、負荷7等の種類、数、大きさや接続位置等に基づくインピーダンス情報を用いずにSVC3の制御量Qを決定することができるため、系統切り替え等による配電系統8の構成変更にも柔軟に対応することができる。
また、全ての計測地点の電圧計測値を1台の制御装置5に入力し、当該制御装置5によって適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視すると共に、電圧の逸脱を検出した場合に作動させるSVC3とその制御量Qを決定し、その決定に基づいてSVC3を作動させるので、配電系統の電圧制御を1台の制御装置によって集中制御することができる。
また、逸脱電圧値が計測された地点に最も近いSVC3を作動させるので、逸脱している部分の電圧を直接的に増減することができ、効率よく電圧の逸脱を解消することができる。
次に、配電系統8に複数のSVC3が設けられている場合について説明する。複数のSVC3が設けられている場合は、制御装置5は配電線センサ4とSVC3との位置関係を予め把握しておき、逸脱電圧値が計測された計測地点に最も近いSVC3を作動させる。
図5に、複数のSVC3を設けた電圧制御システム1を示す。なお、図2に示す構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。本実施形態では、例えば2台のSVC3が設けられている。
制御装置5には、配電線センサ4とSVC3との位置関係が予め記憶されている。例えば、配電線センサ4と当該配電線センサ4に最も近いSVC3とを対応付けた情報(以下、位置関係情報という)が制御装置5の記憶装置に予め記憶されている。機器決定手段5bはこの位置関係情報に基づいて操作するSVC3を決定する。
図2の電圧制御システム1では、設置されているSVC3が1台であったため図1のステップS25において機器決定手段5bは常に同じSVC3を選択していたが、図5の電圧制御システム1では機器決定手段5bが記憶手段に記憶されている位置関係情報に基づいて作動対象のSVC3を選択する。
制御装置5の監視手段5aは、図2の電圧制御システム1と同様に、各地点に設置された配電線センサ4から供給される電圧計測値を収集して監視し(ステップS31)、適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視する(ステップS32)。そして、電圧の逸脱がなければステップS33に進んで、制御量Qが0であるか否かを判別する。いま、プログラムの実行が開始された直後であり、制御量Qは0にリセットされているので、ステップS34に進む。
ステップS34では、作動出力を一定に維持されているSVC3、即ち制御量Qが一定に保持されているSVC3(ホールド中のSVC3)があるか否かを判別する。いま、プログラムの実行が開始された直後であり、ホールド中のSVC3は無いので、そのままステップS38に進む。ステップS38では、送信手段5dが制御量Qとして0をSVC3に送信する。SVC3は制御量0を受信しても作動しない。そして、ステップS31に戻って各地点の電圧計測値の収集が行なわれ、逸脱電圧値の発生監視が継続される。
一方、電圧の逸脱が少なくとも1箇所で検出された場合、即ち少なくとも1つの配電線センサ4の電圧計測値が適正範囲から逸脱したことを監視手段5aが検出した場合、ステップS32からステップS35に進む。ステップS35では、機器決定手段5bが操作対象のSVC3を決定すると共に、制御量決定手段5cが操作対象のSVC3の制御量Qを決定する。いま、電圧計測値が逸脱電圧値となっている計測地点は1箇所であり、当該電圧計測値が適正範囲からの逸脱量が最大となる電圧計測値である。機器決定手段5bは、位置関係情報を参照し、逸脱電圧値の計測地点に最も近い位置に配置されているSVC3を選択し、このSVC3を操作対象に決定する。また、制御量決定手段5cは、この逸脱電圧値に基づいて制御量Qを決定する。制御量Qの決定は図1の場合と同様であり、その説明を省略する。
操作対象のSVC3とその制御量Qを決定した後、ステップS38に進む。ステップS38では、決定されたSVC3に対して送信手段5dが制御量Qを送信する。制御量Qを受信したSVC3は作動し、制御量Qに対応した無効電力を配電線2に注入する。即ち、前回の制御量Qと今回の制御量Qとの差に応じて無効電力の注入量を増減させる。SVC3が無効電力の注入量を増減させることで、配電線2の電圧が調整される。
その後、ステップS31に戻り、監視手段5aは各地点に設置された配電線センサ4から供給される電圧計測値を収集して逸脱電圧値の有無、換言すると逸脱電圧値の解消を判別する(ステップS32)。いま、SVC3の作動開始直後であり電圧の逸脱が解消していない場合には、ステップS35に進んで制御量Qを決定し直した後、ステップS38に進んでSVC3に算出し直した制御量Qを送信し、ステップS31に戻って上述の制御が繰り返し行なわれる。このように制御量Qは順次更新され、更新後の制御量Qに基づいてSVC3が操作されるので、変化する電圧に良好に追従して電圧制御を行うことができる。しかも、電圧のみに基づいて制御量Qを算出しており、計算量が少なく迅速に制御量Qを算出することができる。このため、ステップS31からステップS38までの実行時間が極めて短く、短時間周期で繰り返し実行することができるので、この点からも電圧の変動に良好に追従して電圧制御を行なうことができる。
そして、電圧の逸脱が解消すると、ステップS32からステップS33に進み、制御量Qが0であるか否か判別し、制御量Qが0の場合にはステップS34に直接進み、制御量Qが0でなければステップS37を実行して制御量Qを0にリセットした後、ステップS38に進む。いま、SVC3の作動によって電圧の逸脱が解消された直後であり、制御量QはSVC3を作動させる値となっているため、ステップS33からステップS37に進んで制御量Qを0にリセットした後、ステップS38に進む。
ステップS38では、送信手段5dが制御量Qとして0をSVC3に送信する。制御量0を受信したSVC3は無効電力の注入量を0にする。即ち、作動を停止する。そして、ステップS31に戻って各地点の電圧計測値の収集が行なわれ、逸脱電圧値の発生監視が継続される。
そして、逸脱電圧値の発生が検出されない場合には、ステップS32からステップS33に進む。前回のステップS37の実行により制御量Qは0にリセットされているので、ステップS33からステップS34に進み、ホールド中のSVC3の有無を判別する。そして、ホールド中のSVC3が無い場合にはステップS38に直接進み、ホールド中のSVC3がある場合にはステップS36を実行してホールドを解除(制御量Qの維持を解除)した後、ステップS38に進む。いま、ホールド中のSVC3は無いので、ステップS34からステップS38に直接進む。そして、ステップS38では制御量Qとして0がSVC3に送信されるが、この制御量Qは前回と同じ値であり、SVC3は作動を停止したままである。その後、ステップS31に戻って各地点の電圧計測値の収集が行なわれ、逸脱電圧値の発生監視が継続される。
また、同時に複数地点での電圧計測値が逸脱電圧値となる場合もある。この場合には、ステップS32から進んだステップS35において、機器決定手段5bは逸脱量が最大となる電圧計測値を求め、その電圧計測値の計測地点に最も近い位置のSVC3を位置関係情報を参照しながら選択する。また、制御量決定手段5cは逸脱量が最大となる電圧計測値に基づいて制御量Qを決定する。このとき、逸脱量が最大となる電圧計測値の計測地点が変わらない場合には、引き続き同じ計測地点の電圧計測値に基づいて制御量Qの算出と操作対象のSVC3の決定が行なわれ、逸脱量が最大となる電圧計測値が別の計測地点のものに移った場合には、別の計測地点の電圧計測値に基づいて制御量Qの算出と操作対象のSVC3の決定が行なわれる。そして、逸脱量が最大となる電圧計測値が別の計測地点のものに移った場合において、操作対象のSVC3が他のSVC3に変わったときには、今まで操作されていた変更前のSVC3の作動出力をそのまま一定に維持する。即ち、変更前のSVC3はホールド中のSVC3となり、ステップS38において、送信手段5dは、変更後のSVC3に対して新たに算出した制御量Qを送信すると共に、変更前のSVC3に対して前回のステップS35の実行により算出した制御量Qをそのまま送信する(SVC3のホールド)。このSVC3のホールドは、ステップS36を実行するまで継続される。
その後、ステップS31に戻って各地点の電圧計測値の収集が行なわれ、全ての逸脱電圧値が解消するまでステップS31→ステップS32→ステップS35→ステップS38→ステップS31が繰り返し実行される。そして、全ての逸脱電圧値が解消すると、ステップS32からステップS33に進む。いま、SVC3の作動によって逸脱電圧値が解消された直後であり制御量QはSVC3を作動させる値となっているため、ステップS33からステップS37に進んで制御量Qを0にリセットした後、ステップS38→ステップS31へと進む。
そして、逸脱電圧値の発生がなければ、ステップS32からステップS33に進む。いま、制御量Qは0にリセットされているので、ステップS32からステップS34に進む。いま、最初に操作されていたSVC3がホールド中であるので、ステップS36に進んでそのホールドが解除される(一定値に保持していた制御量Qが0にリセット)。その後、ステップS38からステップS31へと進み、逸脱電圧値の発生が監視される。
このように、制御装置5はステップS31からステップS38を繰り返し行い、配電系統8の電圧制御を行なう。ステップS31からステップS38を繰り返し行なうことで、配電線2の複数地点での電圧計測が短時間周期で繰り返し行なわれ、常に電圧の安定化が図られる。例えば、約2秒程度の周期で電圧計測が繰り返し行なわれる。
この実施形態でも、上述の実施形態と同様に、配電系統8の電圧に基づいてSVC3の制御量Qを算出しているので、制御量Qの算出に複雑な演算が不要となり、高速制御が可能となる。このため、電圧の変動に良好に追従して電圧制御を行うことができる。また、配電系統8の構成に基づくインピーダンス情報を用いずにSVC3の制御量Qを決定することができるため、系統切り替え等による配電系統8の構成変更にも柔軟に対応することができる。
また、全ての計測地点の電圧計測値を1台の制御装置5に入力し、当該制御装置5によって適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視し、且つ電圧の逸脱を検出した場合に作動させるSVC3とその制御量Qを決定し、決定したSVC3に対して制御量Qを送信して電圧制御を行うので、配電系統の電圧制御を1台の制御装置によって集中制御することができる。
また、逸脱電圧値が計測された地点に最も近いSVC3を作動させるので、逸脱している部分の電圧を直接的に増減することができ、効率よく電圧の逸脱を解消することができる。
このように、SVC3が複数設けられているケースでは、電圧計測値の逸脱が解消しないうちに別の計測地点の電圧計測値の逸脱量が最大になった場合、作動中のSVC3の制御量Qを一定に維持したまま、別の計測地点の電圧計測値に基づいて制御量を決定し、決定された制御量に基づいて別の計測地点に最も近い位置のSVC3を追加作動させる配電系統8の電圧制御方法であっても良く、また、制御装置5が、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の逸脱が解消しないうちに別の計測地点の電圧計測値の逸脱量が最大になった場合、作動中のSVC3の制御量を一定に維持したまま、別の計測地点の電圧計測値に基づいて制御量を決定し、決定された制御量に基づいて別の計測地点に最も近い位置のSVC3を追加作動させる配電系統8の電圧制御システム1であっても良い。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
例えば、上述の説明では、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値に対し、その計測地点に最も近い位置の電圧制御器のみを作動させるようにしていたが、必ずしもこの構成に限るものではない。例えば、SVC3が複数設けられているときには、電圧計測値の計測地点に最も近い位置のSVC3の作動だけでは電圧計測値の逸脱が解消しない場合には、その次に近い位置の別のSVC3を追加作動させ、電圧計測値の逸脱が解消するまで次々に近い順序で別のSVC3を追加作動させることようにした配電系統8の電圧制御方法であっても良く、また、制御装置5が、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の計測地点に最も近い位置のSVC3の作動だけでは適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の逸脱が解消しない場合には、その次に近い位置に設けられているSVC3を追加作動させ、電圧計測値の逸脱が解消するまで次々に近い順序で別のSVC3を追加作動させるようにした配電系統8の電圧制御システム1であっても良い。
この場合の電圧制御として、例えば図6のステップS35において、現在操作しているSVC3をホールドし、その次に近い位置のSVC3を選択すると共に、そのSVC3の制御量Qを決定することが考えられる。即ち、機器決定手段5bが制御量決定手段5cによって決定された制御量Qが最大値になり続けている時間を監視し、その時間が予め設定された所定時間に達すると、位置関係情報を参照して現在操作しているSVC3の次に近い位置のSVC3を追加決定する。そして、この追加決定を受けた制御量決定手段5cは、電圧逸脱が解消されない電圧計測値に基づいて追加決定のSVC3の制御量Qを算出する。例えば、現在の電圧計測値と適正範囲との差(逸脱量)が制御不足量であると考えられるので、この逸脱量に所定の制御ゲインを乗じた値を追加作動させるSVC3の制御量Qとする。
続くステップS38では、送信手段5dはホールドしたSVC3に対し最大値である制御量Qを送信すると共に、追加決定されたSVC3に対し新たに算出した制御量Qを送信する。これにより、適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の計測地点に最も近い位置のSVC3の作動だけでは適正範囲からの逸脱が最大となる電圧計測値の逸脱が解消しない場合には、その次に近い位置に設けられているSVC3が追加作動する。
そして、2台のSVC3の作動によっても電圧測定値の逸脱が解消しない場合には、解消するまで次々に近い順序で別のSVC3を追加作動させる。即ち、ステップS35において、機器決定手段5bが位置関係情報を参照してその次に近い位置のSVC3を追加決定すると共に、制御量決定手段5cが追加決定されたSVC3を制御量Qを決定する。
その後、逸脱電圧値が解消するまで、上述の手順が繰り返される。そして、逸脱電圧値が解消された後、ステップS36の実行によりSVC3のホールドが解除される。
このようにすることで、逸脱電圧値の適正範囲からの逸脱量が大きい場合にも対応することができる。
また、配電線2を複数の区画9に分割し、各区画9に属する電圧計測地点と電圧制御機器毎に逸脱電圧値の発生監視とSVC3の作動を行なうようにした配電系統8の電圧制御方法であっても良く、また、配電線2が複数の区画9に分割されており、制御装置5は、各区画9に属する電圧計測地点と電圧制御機器毎に逸脱電圧値の発生監視とSVC3の作動を行なうようにした配電系統8の電圧制御システム1であっても良い。この場合の電圧制御システム1を図7及び図8に示す。図7は各区画9毎に1台ずつSVC3を設けた例であり、図8はSVC3を1台設けた区画9と複数台設けた区画9とを混在させた例である。ただし、全ての区画9を複数台のSVC3を設けた区画9としても良い。制御装置5は、各区画9毎に上述の電圧制御を並行して独立して行う。これにより、配電線2全体の電圧を安定化させることができる。
このようにすることで、操作対象となるSVC3が配電系統8に複数設置されている場合には、各SVC3毎に予め分担する区域を定めておくことができ、それぞれのSVC3は分担区域内の逸脱量が最も大きい計測地点の計測値を用いて電圧制御を行なうことができる。
また、適正範囲を上回る電圧計測値と下回る電圧計測値とが同時に検出された場合には、SVC3の作動を行なわないようにした配電系統8の電圧制御方法であっても良く、また、制御装置5は、適正範囲を上回る電圧計測値と下回る電圧計測値とが同時に検出された場合には、SVC3の作動を行なわないようにした配電系統8の電圧制御システム1であっても良い。
この場合の制御は、例えば図1のステップS22において、監視手段5aが適正範囲を上回る電圧計測値と下回る電圧計測値の両方を同時に検出するとステップS21に戻るようにすることが考えられる。また、例えば図6のステップS32において、監視手段5aが適正範囲を上回る電圧計測値と下回る電圧計測値の両方を同時に検出するとステップS31に戻るようにすることが考えられる。
また、上述の説明では電圧制御機器3はSVCであったが、配電線2の電圧を調整できる機器であれば必ずしもSVCに限るものではない。例えば、SVRでも良く、その他の機器でも良い。電圧制御機器3としてSVRを使用した配電系統8の電圧制御方法の実施形態の一例を図9に、配電系統8の電圧制御システム1の実施形態の一例を図12にそれぞれ示す。図9及び図12は、例えばSVRを1台だけ設けている場合の例である。ただし、SVRを複数台設置しても良く、配電線2を複数の区画9に分割し、各区画9ごとに1台ずつSVRを設置しても良く、SVRを1台設置する区画9と複数台設置する区画9とを混在させても良く、更に、各区画9ごとに複数のSVRを設置しても良い。
この場合の制御装置5を図10に示す。制御装置5は、適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視する監視手段5aと、電圧の逸脱を少なくとも1箇所で検出した場合に作動させる電圧制御機器(SVR)3を決定する機器決定手段5bと、電圧の逸脱を少なくとも1箇所で検出した場合にSVR3に対してタップ操作指令を送信する送信手段5eとを有している。制御装置5を構成するコンピュータには、配電線センサ4の電圧計測値を監視すると共に電圧の逸脱を少なくとも1箇所で検出した場合にSVR3を操作して配電系統8の電圧を安定化させる制御手順を定めたプログラム等がインストールされており、当該プログラムと演算装置、記憶装置、入出力装置等のハードウエア資源との協働によって監視手段5a、機器決定手段5b、送信手段5eが実現されている。
電圧制御機器3としてのSVRは二次側電圧(SVRからみて、配電線2の末端方向)のみを電圧制御できるため、制御装置5は適正範囲からの逸脱量が最大となる電圧計測値の計測地点がSVR3の制御可能範囲内のときだけ当該SVR3を操作して電圧制御を行なう。図12において、制御可能範囲を符号10で示す。SVR3の二次側に設けられている2台の配電線センサ4が制御可能範囲10内に設置されている配電線センサであり、符号4Bで示す。また、SVR3の一次側に設けられている1台の配電線センサ4が制御可能範囲10の外に設置されている配電線センサであり、符号4Aで示す。制御装置5は、位置関係情報として、各配電線センサ4がSVR3の制御可能範囲10内のものであるか否かについての情報を予め記憶装置に記憶している。なお、複数のSVR3を有する配電系統の電圧制御システム1では、各SVR3毎に、各配電線センサ4が制御可能範囲10内のものであるか否かについての情報も有している。
SVR3は内部にタップ切替式の変圧器を有しており、タップ上げまたはタップ下げの制御指令を受信したら、このタップを切り替えてSVR3の二次側の配電線電圧を調節する。即ち、制御装置5の操作によってSVR3が作動し制御動作を行なう。
制御装置5の監視手段5aは、各地点に設置された配電線センサ4から供給される電圧計測値を収集して監視し(ステップS41)、適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視する(ステップS42,S43,S44)。そして、適正範囲の上限値からの逸脱も下限値からの逸脱もなければ、ステップS42→ステップS44→ステップS41へと進み、逸脱電圧値の発生監視が継続される。
一方、電圧の逸脱が少なくとも1箇所で検出された場合、その逸脱が適正範囲の上限値を超えるものであればステップS42→ステップS43→ステップS45へと進む。ステップS45では、逸脱電圧値を計測した配電線センサ4が制御可能範囲10内のものであれば機器決定手段5bが操作対象のSVR3を決定し、決定されたSVR3のタップを送信手段5eが操作(タップ操作指令を送信)して配電線2の電圧を下げる。ここでは設置されているSVR3は1台であり、作動の対象となるのは当該SVR3である。SVR3のタップ変更により、配電線2の電圧が減少する。その後、ステップS41に戻り、逸脱電圧値が解消するまで上記手順が繰り返し行なわれる。一方、ステップS45において、逸脱電圧値を計測した配電線センサ4が制御可能範囲10の外のものであれば、SVR3を操作せずにステップS41に戻る。
また、ステップS42において検出された逸脱電圧値が適正範囲の下限値を下回るものであれば、ステップS42→ステップS44→ステップS46へと進む。ステップS46では、逸脱電圧値を計測した配電線センサ4が制御可能範囲10内のものであれば機器決定手段5bが操作対象の電圧制御機器3を決定し、決定された電圧制御機器3のタップを送信手段5eが操作して配電線2の電圧を上げる。電圧制御機器3のタップ変更により、配電線2の電圧が上昇する。その後、ステップS41に戻り、逸脱電圧値が解消するまで上記手順が繰り返し行なわれる。一方、ステップS46において、逸脱電圧値を計測した配電線センサ4が制御可能範囲10の外のものであれば、SVR3を操作せずにステップS41に戻る。
なお、この場合、逸脱電圧値の検出に時限を設け、逸脱電圧値の継続時間が同時限を超えた場合に電圧制御機器3の操作を行なうようにしても良い。この場合の制御として、例えばステップS42において、逸脱電圧値の継続時間が同時限(例えば45秒)を超えた場合にステップS43に進むようにすると共に、テップS44において、逸脱電圧値の継続時間が同時限を超えた場合にステップS46に進むようにすることが考えられる。即ち、ステップS42では、監視手段5aが電圧計測値が適正範囲の上限値を超えている時間をカウントし、その時間が所定時間に達した場合にステップS43に進み、たとえ電圧計測値が適正範囲の上限値を超えたとしてもその継続時間が所定時間に達しない場合にはステップS44に進むようにする。また、ステップS44では、監視手段5aが電圧計測値が適正範囲の下限値を下回っている時間をカウントし、その時間が所定時間に達した場合にステップS46に進み、たとえ電圧計測値が適正範囲の下限値を下回ったとしてもその継続時間が所定時間に達しない場合にはステップS41に戻るようにする。
また、同時に複数地点での電圧計測値が逸脱電圧値になった場合には、逸脱量が最大となる電圧計測値に基づいて上記制御が行なわれる。この場合、適正範囲を上回る電圧計測値と下回る電圧計測値とが同時に検出された場合には、ステップS42→ステップS43→ステップS41へと進み、電圧制御機器3の操作は行なわれない。
なお、電圧制御機器3がSVRの場合にも、電圧計測値の逸脱が解消しないうちに別の計測地点の電圧計測値の逸脱量が最大になった場合、作動中のSVR3のタップ位置を一定に維持したまま、別の計測地点の電圧計測値に基づいてその記計測地点に最も近い位置のSVR3を追加作動させるようにしても良い。また、逸脱電圧値の計測地点に最も近い位置のSVR3の作動だけでは逸脱電圧値が解消しない場合には、その次に近い位置の別のSVR3を追加作動させ、逸脱電圧値が解消するまで次々に近い順序で別のSVR3を追加作動させるようにしても良い。
また、電圧制御機器3として、SVRとSVCを混在させても良い。この場合の制御を、例えば図11に示す。なお、この場合の制御装置5は、監視手段5a、機器決定手段5b、制御量決定手段5c、送信手段5d、送信手段5eを有している。また、制御装置5が記憶している位置関係情報には、電圧制御機器3がSVRであるのかSVCであるのかについての情報、各配電線センサ4がSVR3の制御可能範囲10内のものであるか否かについての情報も含まれている。
制御装置5の監視手段5aは、各地点に設置された配電線センサ4から供給される電圧計測値を収集して監視し(ステップS51)、適正範囲から逸脱した電圧の発生を監視する(ステップS52)。そして、電圧の逸脱がなければステップS51に戻る。一方、電圧の逸脱が少なくとも1箇所で検出された場合、ステップS52からステップS53に進む。ステップS53では、機器決定手段5bが位置関係情報を参照し、逸脱電圧値(逸脱電圧値が複数の場合は逸脱量が最大となる逸脱電圧値)を計測した配電線センサ4が制御可能範囲10内のものであるか否か(第1条件)を判別すると共に、監視手段5aが逸脱電圧値の継続時間が所定の基準値(例えば45秒)以上であるか否か(第2条件)を判別する。
そして、第1条件と第2条件の両方が満たされた場合以外は、ステップS54に進む。ステップS54では、例えば図1のステップS22からステップS26までの手順と同じ手順や、図6のステップS32からステップS38までの手順と同じ手順を行なう。その後、ステップS51に戻る。
また、ステップS53において、第1条件と第2条件の両方が満たされた場合には、ステップS55に進む。ステップS55では、例えば図9のステップS42からステップS46までの手順と同じ手順を行なう。その後、ステップS51に戻る。
このようにして、電圧制御機器3としてSVRとSVCを混在させている場合であっても、配電系統の電圧制御を良好に行うことができる。