以下に添付図面を参照して、本発明に係る自動合焦点装置について説明する。
図1は、自動合焦点装置100の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、自動合焦点装置100は、液晶(LC)レンズ系1、光学レンズ系2、撮像素子3、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)4、オートフォーカス(AF)コントローラ5、及び液晶レンズドライバ6等を備えている。液晶レンズ系1は、P波用液晶レンズとS波用液晶レンズを組み合わせた構成を有する。光学レンズ系2は、絞り、パンフォーカス組レンズおよび赤外線カットフィルタを有する。撮像素子3は、CCDやCMOS等の固体撮像素子よりなるイメージセンサーとアナログ−デジタル変換器を有する。
液晶レンズ系1および光学レンズ系2を通過して結像した光学像は、撮像素子3のイメージセンサーにより、電気信号に変換される。イメージセンサーから出力された電気信号は、アナログ−デジタル変換器によりデジタル信号に変換される。DSP4は、アナログ−デジタル変換器から出力されたデジタル信号に対して画像処理を行う。オートフォーカスコントローラ5は、液晶レンズの過渡応答動作期間中に、DSP4から出力された画像信号を所定の周期でサンプリングすることにより、焦点整合度に対応した複数の焦点信号(以下、オートフォーカス信号とする)を抽出する。そして、オートフォーカスコントローラ5は、抽出された複数のオートフォーカス信号に基づいてオートフォーカス信号のレベルが最大となるときのサンプリングタイミングを判定し、その判定結果に基づいて、液晶レンズ系1の駆動条件の制御を行う。
オートフォーカスコントローラ5は、上述した一連の制御を行うマイクロプロセッサ51と記憶手段52等を有する。記憶手段52は、マイクロプロセッサ51が実行するプログラムや最適な駆動電圧を求めるために必要な種々の関係などを格納した読み出し専用メモリ部(ROM部)と、マイクロプロセッサ51が作業領域として使用する書き込み可能なメモリ部(RAM部)を有する。液晶レンズドライバ6は、オートフォーカスコントローラ5から出力された制御信号に基づいて液晶レンズ系1に電圧を印加する。
オートフォーカスコントローラ5により実行される処理内容については、後述する。液晶レンズ系1および光学レンズ系2は、光学レンズ手段に相当する。撮像素子3およびDSP4は、光電変換手段に相当する。オートフォーカスコントローラ5は、焦点信号抽出、合焦点判定、及び液晶レンズドライバ6を制御する手段に相当する。液晶レンズドライバ6は、液晶レンズを駆動する手段に相当する。
図2および図3は、P波用液晶レンズ7のセル構成を示す正面図および断面図である。
P波用液晶レンズ7は、図2および図3に示すように、一対の対向するガラス基板8,9の内側にパターン電極10と共通電極11が対向して配置され、パターン電極10および共通電極11の内側に配向膜12,13が対向して配置され、その間に例えばホモジニアス配向の液晶層14が封入された液晶パネルを構成している。
P波用液晶レンズ7の中央部には、印加電圧に応じて屈折率が変化するレンズ部15が設けられている。また、P波用液晶レンズ7の周縁部は、シール部材16により封止されている。液晶層14の厚さは、スペーサ部材17により一定に保たれている。パターン電極10の電極取り出し部18には、フレキシブルプリント配線板(FPC)19が異方性導電膜を用いて接続されている。電極取り出し部18の一部は、パターン電極10から絶縁されており、共通電極11に接続されている。
ガラス基板8,9の一辺の長さは数mmから十数mm程度、例えば10mmが好ましい。ただし、パターン電極10側のガラス基板8については、パターン電極10の電極取り出し部18を被う部分を除いた寸法である。ガラス基板8,9の厚さは数百μm程度、例えば300μmが好ましい。液晶層14の厚さは十数μmから数十μm程度、例えば23μmが好ましい。レンズ部15の直径は数mm程度、例えば2.4mmが好ましい。なお、上記の数値は一例であって、これに限定されるものではない。
図4は、パターン電極10の構成を示す正面図である。
図4に示すように、パターン電極10は、円形状の中心部電極20の回りに、半径の異なる複数の同心円の円周に沿って複数のC字状の輪帯電極21,22が配置されたパターンを有する。中心部電極20と最も内側の輪帯電極21の間、および隣り合う輪帯電極21,22の間は、空間となっている。そして、中心部電極20と最も内側の輪帯電極21、および隣り合う輪帯電極21,22は、輪帯接続部23を介して互いに接続されている。
中心部電極20からは、中心部引き出し電極24が、他の輪帯電極21,22および輪帯接続部23から離れて(すなわち、絶縁された状態で)最外周の輪帯電極22(以下、外周部電極22とする)の外側まで伸びている。一方、外周部電極22からは、その外側まで、外周部引き出し電極25が他の電極から絶縁された状態で伸びている。パターン電極10の図4に示すパターンは、レンズ部15に重なるように配置される。
中心部引き出し電極24と外周部引き出し電極25にそれぞれ印加された電圧に応じて、共通電極11に対する中心部電極20、中心部電極20と外周部電極22との間の各輪帯電極21、および外周部電極22のそれぞれの電圧値が異なる状態となる。つまり、パターン電極10によってレンズ部15に電圧分布が生じる。この電圧分布を変化させることによって、液晶レンズ7の屈折率の分布が変化し、液晶レンズ7を凸レンズの状態にしたり、平行ガラスの状態にしたり、凹レンズの状態にすることができる。
図4では、中心部電極20、外周部電極22およびその間の輪帯電極21の総数を7としたが、中心部電極20、外周部電極22およびその間の輪帯電極21の総数は、例えば27が好ましい。また、中心部電極20の径、各輪帯電極21の幅および外周部電極22の幅は、レンズ部15において所望の屈折率の分布が得られるように選択される。中心部電極20、輪帯電極21および外周部電極22の隣り合うもの同士の間にある空間の幅は、例えば3μmが好ましい。また、各輪帯接続部23の抵抗値は、例えば1kΩが好ましい。上記の数、数値は一例であって、これに限定されるものではない。
図5は、液晶レンズにおける駆動電圧と屈折率分布との関係を示した図である。
図5では、液晶の配向方向と同じ方向の偏光面を有する光が液晶を透過している状態で、液晶に印加される駆動電圧例(図5(a))及びその時の屈折率の変化(図5(b))が示されている。
図5(a)に示すように、液晶に外部から駆動電圧V0が印加されると、液晶の屈折率は、その駆動電圧V0の立ち上がりのタイミングからtfの時間だけ遅れて駆動電圧V0に対応した状態となる(図5(b))。また、液晶の屈折率は、駆動電圧V0の立ち下がりのタイミングからtrの時間だけ遅れて元の状態に戻る(図5(b))。このtfおよびtrの時間は、液晶が過渡応答動作をしている期間であり、屈折率が漸次変化する。ここで、上述した通り、駆動電圧V0は、例えばパルス高さ変調(PHM)またはパルス幅変調(PWM)された交流電圧である。
各部の寸法や特性値が上述した値のP波用液晶レンズ7およびパターン電極10を用い、液晶層14として、異常光線についての屈折率neおよび通常光線についての屈折率noがそれぞれ1.75および1.5であり、複屈折Δnが0.25であるネマティック液晶を用いたこの場合、例えば駆動電圧V0の立ち上がり(0Vから5Vへ)に対する液晶の過渡応答動作時間tf、および駆動電圧V0の立ち下がり(5Vから0Vへ)に対する液晶の過渡応答動作時間trは、ともに500ミリ秒程度である。
このように、液晶の過渡応答動作が終了するまである程度の時間がかかる。そこで、自動合焦点装置100では、液晶の過渡応答動作期間中に、液晶レンズ系1および光学レンズ系2を通過した光学像から生成された画像信号を所定の周期でサンプリングする。
図6は、駆動電圧の立ち上がり時の過渡応答動作期間tfにおける液晶の屈折率の変化の様子と、P波用液晶レンズ7の焦点距離の変化を示した図である。
例えば、図6(a)に示すように、液晶の屈折率は、過渡応答動作期間tf中に変化し、過渡応答動作期間tfが経過すると一定になるので、液晶レンズ7の中心部電極20、各輪帯電極21および外周部電極22のそれぞれに対応する液晶部分の屈折率も一定となる。従って、過渡応答動作期間tfが経過した時点で、P波用液晶レンズ7の屈折率分布がある分布に定まり、P波用液晶レンズ7の焦点距離fは、その屈折率分布に応じたある一定値に収束する。
図6(b)の横軸よりも上側および下側に描かれた線は、それぞれP波用液晶レンズ7が凸レンズの状態および凹レンズの状態のときの焦点距離fの変化の様子を表している。説明の便宜上、P波用液晶レンズ7が凸レンズの状態になるときの焦点距離fを正の数値で表し、P波用液晶レンズ7が凹レンズの状態になるときの焦点距離fを負の数値で表している。このように表すと、P波用液晶レンズ7の焦点距離fが正または負の無限大であるとき、P波用液晶レンズ7は平行ガラスの状態となる。
自動合焦点装置100では、P波用液晶レンズ7の焦点距離fが一定値に収束するまでの過渡応答動作期間tfの時刻t1、t2、t3、t4、t5およびt6において画像信号をサンプリングする。各サンプリングタイミングでは、P波用液晶レンズ7の焦点距離fが異なる。従って、P波用液晶レンズ7の1回の過渡応答動作期間中に、焦点距離fが種々異なる状態の液晶レンズ7を通過した光学像から生成された画像信号をサンプリングすることができるので、焦点整合度に対応した複数のオートフォーカス信号を抽出することができる。
ここで、サンプリング周期tsは、例えばフレームの周期に同期している。なお、P波用液晶レンズ7の立ち下がり時の過渡応答動作期間trにおいて、画像信号をサンプリングしてもよい。また、サンプリング数は、6個に限らない。
予め、1番目にサンプリングする時刻t1におけるP波用液晶レンズ7の焦点距離f1、2番目にサンプリングする時刻t2におけるP波用液晶レンズ7の焦点距離f2、というように、サンプリングする時刻とP波用液晶レンズ7の焦点距離との関係が求められている。この関係は、例えばオートフォーカスコントローラ5内の記憶手段52のROM部に格納されている。
従って、オートフォーカスコントローラ5のマイクロプロセッサ51は、P波用液晶レンズ7の過渡応答動作期間中に画像信号をサンプリングした時刻に基づいて、各サンプリング時刻におけるP波用液晶レンズ7の焦点距離を求めることができる。それによって、P波用液晶レンズ7の各焦点距離とオートフォーカス信号のレベルとの対応関係を得ることができるので、オートフォーカス信号のレベルが最大になったとき、すなわちピントが合ったときのP波用液晶レンズ7の焦点距離を求めることができる。
図7は、静的な状態におけるP波用液晶レンズ7の焦点距離と、P波用液晶レンズ7の焦点距離をある値にするために液晶レンズ7に印加する電圧との関係の一例を示す図である。
図7に示す様に、予め、静的な状態でP波用液晶レンズ7の焦点距離がf1になるときの液晶レンズ7の外周部電極22の電圧Vouterおよび中心部電極20の電圧Vinnerの値、静的な状態で液晶レンズ7の焦点距離がf2になるときのVouterおよびVinnerの値、というように、静的な状態におけるP波用液晶レンズ7の焦点距離fと、P波用液晶レンズ7の焦点距離fをある値にするためにP波用液晶レンズ7に印加する駆動電圧との関係も求められている。この関係も、例えばAFコントローラ5内の記憶手段52のROM部に格納されている。
従って、マイクロプロセッサ51は、実際にピントを合わせるため、すなわちP波用液晶レンズ7の焦点距離を、オートフォーカス信号のレベルが最大になったときの焦点距離に合わせるには、P波用液晶レンズ7にどの程度の駆動電圧を印加すればよいかということを知ることができる。
図2〜図7を用いて、P波用液晶レンズ7について説明を行ったが、S波用液晶レンズについても、上述したP波用液晶レンズ7と同様であるので、説明を省略する。しかしながら、S波用液晶レンズにおける液晶層の配向方向は、P波用液晶レンズ7の液晶層14の配向方向と、90°異なる。
P波用液晶レンズ7の屈折率分布を変化させた場合、P波用液晶レンズ7の配向方向と同じ方向の偏光面を有する光は、屈折率分布の変化の影響を受けるが、P波用液晶レンズ7の配向方向に対して直交する方向の偏光面を有する光は、屈折率分布の変化の影響を受けない。この点については、S波用液晶レンズについても同様である。従って、撮像光学系には、配向方向が90°異なる2枚の液晶レンズ、すなわちP波用液晶レンズ7とS波用液晶レンズが必要となる。P波用液晶レンズ7とS波用液晶レンズは、同じ波形の駆動電圧によって駆動される。駆動電圧は、例えばパルス高さ変調(PHM)またはパルス幅変調(PWM)された交流電圧である。
次に、液晶レンズ7を凸レンズの状態と凹レンズの状態の両方に変化させる場合の液晶レンズ7への電圧印加パターンについて説明する。液晶レンズ7は、パターン電極10の外周部電極22に印加する電圧Vouterが、中心部電極20に印加する電圧Vinnerよりも高いときに凸レンズの状態となり、その逆のときに凹レンズの状態となる。
図8は、本発明に係る自動合焦点装置100で用いられる電圧印加のパターンの一例を示した図である。
図8(a)はパターン電極10の外周部電極22に印加する電圧Vouterを示し、図8(b)はパターン電極10の中心部電極20に印加する電圧Vinnerを示し、図8(c)は図8(a)及び(b)の電圧が印加された場合のP波用液晶レンズ7の焦点距離fの逆数の変化を示し、図8(d)は図8(a)及び(b)の電圧が印加された場合に得られるオートフォーカス信号の一例を示す図である。
図9は、液晶レンズのリタデーションの一例を示した図である。
図9(a)は図8の時刻T1におけるP波用液晶レンズ7のリタデーションの一例を示し、図9(b)は図8の時刻T2におけるP波用液晶レンズ7のリタデーションの一例を示し、図9(c)は図8の時刻T3におけるP波用液晶レンズ7のリタデーションの一例を示し、図9(d)は図8の時刻T4におけるP波用液晶レンズ7のリタデーションの一例を示している。
本電圧印加のパターンでは、図8(a)及び(b)に示しように、時刻T0において、外周部電極22に印加する電圧Vouter及び中心部電極20に印加する電圧Vinnerをそれぞれ、最大の印加電圧であるV2とする。次いで、時刻T1において、電圧Vouterを印加最小電圧であるV1に変化させ、電圧Vinnerを印加最大電圧であるV2に維持する。次いで、時刻T2において、電圧Vinner及び電圧Vouterをそれぞれ、最大の印加電圧であるV2とする。次いで、時刻T3において、電圧Vouterを印加最大電圧であるV2に維持し、電圧Vinnerを印加最小電圧であるV1に変化させる。なお、時刻T0以前の電圧Vinner及び電圧Vouterは、オートフォーカス開始前の状態を示しており、時刻T4以降の電圧Vinner及び電圧Vouterは、時刻T0〜時刻T4におけるオートフォーカス動作によって検出された合焦時電圧を示している。
P波用液晶レンズ7は、時刻T0から印加される電圧の立ち上がりタイミングからリタデーションがその前の状態から変化し、時刻T1において、図9(a)に示すように、リタデーションが均一な初期状態、即ち平板ガラスの状態となる。液晶の過渡応答動作期間は、印加電圧が高いほど早いので、印加最大電圧V2によって、液晶はより早く初期状態への復帰することが可能となる。即ち、液晶の正気状態への変化の最大値を見越して、時刻T0〜時刻T1の期間を定めれば良い。
次に、P波用液晶レンズ7は、時刻T1の立下りタイミングからリタデーションが変化し、レンズパワーが徐々に大きくなっていき、時刻T2において、図9(b)に示すように、レンズパワーが最大の凹レンズの状態となる。
次に、P波用液晶レンズ7は、時刻T2から印加される電圧の立ち上がりタイミングからリタデーションが変化し、時刻T3において、図9(c)に示すように、リタデーションが均一な初期状態、即ち平板ガラスの状態となる。前述したように、液晶の過渡応答動作期間は、印加電圧が高いほど早いので、印加最大電圧(V2)によって、液晶はより早く初期状態への復帰することが可能となる。
次に、P波用液晶レンズ7は、時刻T3の立下りタイミングからリタデーションが変化し、レンズパワーが徐々に大きくなっていき、時刻T4において、図9(d)に示すように、レンズパワーが最大の凸レンズの状態となる。
図8(c)に示すように、P波用液晶レンズ7の1/fの値は、時刻T1ではほぼ0であり、時刻T1から時刻T2にかけては、下に凸の曲線を描くように変化し、時刻T2において負の値の最大値となる。したがって、時刻T2において、P波用液晶レンズ7は、レンズパワーが最大の凹レンズの状態となる。さらに、P波用液晶レンズ7の1/fの値は、時刻T3において再度ほぼ0に復帰し、時刻T3から時刻T4にかけては、上に凸の曲線を描くように変化し、時刻T3において正の値の最大値となる。したがって、時刻T4において、P波用液晶レンズ7は、レンズパワーが最大の凸レンズの状態となる。なお、S波用液晶レンズも、P波用液晶レンズ7と同じ駆動波形(図8(a)及び(b)参照)によって、P波用液晶レンズ7と同時に動作される。
図8(c)に示すポイント110〜121は、オートフォーカス信号を得るサンプリング時刻の一例を示している。即ち、AFコントローラ5は、P波用液晶レンズ7が、過渡応答動作中で、凹レンズの状態となっている期間の6つのポイント110〜115で、6つのオートフォーカス信号135〜130を撮像素子3及びDSP4から取得し、P波用液晶レンズ7が、過渡応答動作中で、凸レンズの状態となっている期間の6つのポイント116〜121で、6つのオートフォーカス信号136〜141を撮像素子3及びDSP4から取得する。
図8(d)は、所得したオートフォーカス信号を、1/fの値が、1/100〜−1/100の範囲内で、並べ直したものであり、サンプリング時刻110〜115は、オードフォーカス信号135〜130のそれぞれと対応し、サンプリング時刻116〜121は、オートフォーカス信号136〜141のそれぞれに対応している。
AFコントローラ5は、予定された全てのオートフォーカス信号をサンプリングした後に、全てのオートフォーカス信号を比較して、オートフォーカス信号の最大値を検出する。図8(d)の例では、オートフォーカス信号132が最大値を取り、オートフォーカス信号132をサンプリングした状態で、液晶レンズ系1と光学レンズ系2が組み合わされたレンズ系において、被写体に対してピントが合う状態となっていると考えられる。したがって、AFコントローラ5は、時刻T4以降において、最大のオートフォーカス信号132に対応した状態となるように、液晶レンズを駆動する。なお、上記の例では、液晶レンズが凹レンズ状態となっている場合に6つのサンプリングを行い、液晶レンズが凸レンズ状態となっている場合に6つのサンプリングを行ったが、サンプリング回数はこれに限定されることなく、適宜、自動合焦点装置のスペックに合わせて最適な回数を選択することが可能である。また、被写体にピントが合ったときに、オートフォーカス信号が最大地となる輪郭検出方法の原理については、前述した非特許文献1に記載されているので、ここではその説明を省略する。
なお、例えば、図1に示す、自動合焦点装置100において、液晶レンズ系1が平板レンズ状態のときに、光学レンズ系2のみによって、被写体までの距離Lが200mmでピントが合うように設計されていた場合、図8(d)では、被写体までの距離Lが200mmより長い場合、例えば、Lが350mmである場合を示している。したがって、P波用液晶レンズ7が凹レンズの状態になっている時に、オートフォーカス信号は最大値を取るようになっている。
図10は、本発明に係る自動合焦点装置100で用いられる電圧印加のパターンの他の例を示した図である。
図10(a)はパターン電極10の外周部電極22に印加する電圧Vouterを示し、図10(b)はパターン電極10の中心部電極20に印加する電圧Vinnerを示し、図10(c)は図10(a)及び(b)の電圧が印加された場合のP波用液晶レンズ7の焦点距離fの逆数の変化を示し、図10(d)は図10(a)及び(b)の電圧が印加された場合に得られるオートフォーカス信号の一例を示す図である。
図8に示した例では、最初に液晶レンズを凹レンズの状態にしてオートフォーカス信号を取得し、その後液晶レンズを凸レンズの状態にしてオートフォーカス信号を取得した。これに対して、図10に示す例では、最初に液晶レンズを凸レンズの状態にしてオートフォーカス信号を取得し、その後液晶レンズを凹レンズの状態にしてオートフォーカス信号を取得する。
本電圧印加のパターンでは、図10(a)及び(b)に示しように、時刻T0において、外周部電極22に印加する電圧Vouter及び中心部電極20に印加する電圧Vinnerをそれぞれ、最大の印加電圧であるV2とする。次いで、時刻T1において、電圧Vouterを印加最大電圧であるV2に維持させ、電圧Vinnerを印加最小電圧であるV1に変化させる。次いで、時刻T2において、電圧Vinner及び電圧Vouterをそれぞれ、最大の印加電圧であるV2とする。次いで、時刻T3において、電圧Vouterを印加最小電圧であるV1に変化させ、電圧Vinnerを印加最大電圧であるV2に維持する。なお、時刻T0以前の電圧Vinner及び電圧Vouterは、オートフォーカス開始前の状態を示しており、時刻T4以降の電圧Vinner及び電圧Vouterは、時刻T0〜時刻T4におけるオートフォーカス動作によって検出された合焦時電圧を示している。
P波用液晶レンズ7は、時刻T0から印加される電圧の立ち上がりタイミングからリタデーションがその前の状態から変化し、時刻T1において、図9(a)に示すように、リタデーションが均一な初期状態、即ち平板ガラスの状態となる。液晶の過渡応答動作期間は、印加電圧が高いほど早いので、印加最大電圧V2によって、液晶はより早く初期状態への復帰することが可能となる。即ち、液晶の正気状態への変化の最大値を見越して、時刻T0〜時刻T1の期間を定めれば良い。
次に、P波用液晶レンズ7は、時刻T1の立下りタイミングからリタデーションが変化し、レンズパワーが徐々に大きくなっていき、時刻T2において、図9(d)に示すように、レンズパワーが最大の凸レンズの状態となる。
次に、P波用液晶レンズ7は、時刻T2から印加される電圧の立ち上がりタイミングからリタデーションが変化し、時刻T3において、図9(c)に示すように、リタデーションが均一な初期状態、即ち平板ガラスの状態となる。前述したように、液晶の過渡応答動作期間は、印加電圧が高いほど早いので、印加最大電圧(V2)によって、液晶はより早く初期状態への復帰することが可能となる。
次に、P波用液晶レンズ7は、時刻T3の立下りタイミングからリタデーションが変化し、レンズパワーが徐々に大きくなっていき、時刻T4において、図9(b)に示すように、レンズパワーが最大の凹レンズの状態となる。
図10(c)に示すように、P波用液晶レンズ7の1/fの値は、時刻T1ではほぼ0であり、時刻T1から時刻T2にかけては、上に凸の曲線を描くように変化し、時刻T2において正の値の最大値となる。したがって、時刻T2において、P波用液晶レンズ7は、レンズパワーが最大の凹レンズの状態となる。さらに、P波用液晶レンズ7の1/fの値は、時刻T3において再度ほぼ0に復帰し、時刻T3から時刻T4にかけては、下に凸の曲線を描くように変化し、時刻T4において負の値の最大値となる。したがって、時刻T4において、P波用液晶レンズ7は、レンズパワーが最大の凹レンズの状態となる。なお、本例でも、S波用液晶レンズは、P波用液晶レンズ7と同じ駆動波形(図10(a)及び(b)参照)によって、P波用液晶レンズ7と同時に動作される。
図10(c)に示すポイント110〜121は、オートフォーカス信号を得るサンプリング時刻の一例を示している。即ち、AFコントローラ5は、P波用液晶レンズ7が、過渡応答動作中で、凸レンズの状態となっている期間の6つのポイント110〜115で、6つのオートフォーカス信号135〜130を取得し、P波用液晶レンズ7が、過渡応答動作中で、凹レンズの状態となっている期間の6つのポイント116〜121で、6つのオートフォーカス信号136〜141を取得する。
図10(d)は、所得したオートフォーカス信号を、1/fの値が、1/100〜−1/100の範囲内で、並べ直したものであり、サンプリング時刻110〜115は、オードフォーカス信号135〜130のそれぞれと対応し、サンプリング時刻116〜121は、オートフォーカス信号136〜141のそれぞれに対応している。
AFコントローラ5は、予定された全てのオートフォーカス信号をサンプリングした後に、全てのオートフォーカス信号を比較して、オートフォーカス信号の最大値を検出する。図10(d)の例では、オートフォーカス信号139が最大値を取り、オートフォーカス信号139をサンプリングした状態で、液晶レンズ系1と光学レンズ系2が組み合わされたレンズ系において、被写体に対してピントが合う状態となっていると考えられる。したがって、AFコントローラ5は、時刻T4以降において、最大のオートフォーカス信号139に対応した状態となるように、液晶レンズを駆動する。なお、上記の例では、液晶レンズが凹レンズ状態となっている場合に6つのサンプリングを行い、液晶レンズが凸レンズ状態となっている場合に6つのサンプリングを行ったが、サンプリング回数はこれに限定されることなく、適宜、自動合焦点装置のスペックに合わせて最適な回数を選択することが可能である。
図11は、本発明に係る自動合焦点装置100で用いられる電圧印加のパターンの更に他の例を示した図である。
図11(a)はパターン電極10の外周部電極22に印加する電圧Vouterを示し、図11(b)はパターン電極10の中心部電極20に印加する電圧Vinnerを示す図である。
図8に示した例では、電圧Vinner及び電圧Vouterに、V2またはV1の電圧を印加した。これに対して、図11に示す例では、液晶レンズを初期化する場合には、電圧Vinner及び電圧Vouterとして最大電圧であるV0を印加し、その他の場合には、外周部電極には電圧VouterとしてVo1またはVo2を印加し、中心部電極には電圧VinnerとしてVi1またはVi2を印加するように構成している。即ち、図11の例は、中心部電極および外周部電極に対して個別に所定の電圧を印加する場合に相当する。また、図11の場合、電圧Vinner及び電圧Vouterの関係としては、Vi1<Vo1、Vi2>Vo2、且つV0≧Vi1、Vo2の関係が成り立っている必要がある。なお、図8に示す例は、Vi1=Vo2=V1且つV0=Vi2=Vo1=V2の場合、即ち、図11の例の特定の一例であるということもできる。
本電圧印加のパターンでは、図11(a)及び(b)に示しように、時刻T0において、中心部電極20に印加する電圧Vinner及び外周部電極22に印加する電圧Vouterをそれぞれ、最大の印加電圧であるV0とする。次いで、時刻T1において、電圧VinnerをVi2に変化させ、電圧VouterをVo2に変化させる。次いで、時刻T2において、電圧Vinner及び電圧Vouterをそれぞれ、最大の印加電圧であるV0とする。次いで、時刻T3において、電圧VinnerをVi1に変化させ、電圧VouterをVo1に変化させる。なお、時刻T0以前の電圧Vinner及び電圧Vouterは、オートフォーカス開始前の状態を示しており、時刻T4以降の電圧Vinner及び電圧Vouterは、時刻T0〜時刻T4におけるオートフォーカス動作によって検出された合焦時電圧を示している。
P波用液晶レンズ7は、時刻T0から印加される電圧の立ち上がりタイミングからリタデーションがその前の状態から変化し、時刻T1において、図9(a)に示すように、リタデーションが均一な初期状態、即ち平板ガラスの状態となる。液晶の過渡応答動作期間は、印加電圧が高いほど早いので、印加最大電圧V0によって、液晶はより早く初期状態への復帰することが可能となる。
次に、P波用液晶レンズ7は、時刻T1の立下りタイミングからリタデーションが変化し、レンズパワーが徐々に大きくなっていき、時刻T2において、図9(b)に示すように、レンズパワーが最大の凹レンズの状態となる。
次に、P波用液晶レンズ7は、時刻T2から印加される電圧の立ち上がりタイミングからリタデーションが変化し、時刻T3において、図9(c)に示すように、リタデーションが均一な初期状態、即ち平板ガラスの状態となる。前述したように、液晶の過渡応答動作期間は、印加電圧が高いほど早いので、印加最大電圧V0によって、液晶はより早く初期状態への復帰することが可能となる。
次に、P波用液晶レンズ7は、時刻T3の立下りタイミングからリタデーションが変化し、レンズパワーが徐々に大きくなっていき、時刻T4において、図9(d)に示すように、レンズパワーが最大の凸レンズの状態となる。なお、本例でも、S波用液晶レンズは、P波用液晶レンズ7と同じ駆動波形(図11(a)及び(b)参照)によって、P波用液晶レンズ7と同時に動作される。
図11に示す電圧パターンを印加した場合の、P波用液晶レンズ7の1/fの値の変化および、オートフォーカス信号のサンプリングは、図8(c)および(d)と同様であるので、説明を省略する。
図11に示す電圧パターンを印加する場合でも、AFコントローラ5は、予定された全てのオートフォーカス信号をサンプリングした後に、全てのオートフォーカス信号を比較して、オートフォーカス信号の最大値を検出する。さらに、AFコントローラ5は、時刻T4以降において、最大のオートフォーカス信号に対応した状態となるように、液晶レンズを駆動する。
図12は、本発明に係る自動合焦点装置100で用いられる電圧印加のパターンの更に他の例を示した図である。
図12(a)はパターン電極10の外周部電極22に印加する電圧Vouterを示し、図12(b)はパターン電極10の中心部電極20に印加する電圧Vinnerを示す図である。
図10に示した例では、電圧Vinner及び電圧Vouterに、V2またはV1の電圧を印加した。これに対して、図12に示す例では、液晶レンズを初期化する場合には、電圧Vinner及び電圧Vouterとして最大電圧であるV0を印加し、その他の場合には、外周部電極には電圧VouterとしてVo1またはVo2を印加し、中心部電極には電圧VinnerとしてVi1またはVi2を印加するように構成している。即ち、図12の例は、中心部電極および外周部電極に対して個別に所定の電圧を印加する場合に相当する。また、図12の場合、電圧Vinner及び電圧Vouterの関係としては、Vi1<Vo1、Vi2>Vo2、且つV0≧Vi1、Vo2の関係が成り立っている必要がある。なお、図10に示す例は、Vi1=Vo2=V1且つV0=Vi2=Vo1=V2の場合、即ち、図12の例の特定の一例であるということもできる。
また、図11に示した例では、最初に液晶レンズを凹レンズの状態にしてオートフォーカス信号を取得し、その後液晶レンズを凸レンズの状態にしてオートフォーカス信号を取得した。これに対して、図12に示す例では、最初に液晶レンズを凸レンズの状態にしてオートフォーカス信号を取得し、その後液晶レンズを凹レンズの状態にしてオートフォーカス信号を取得する点で異なる。
本電圧印加のパターンでは、図12(a)及び(b)に示しように、時刻T0において、中心部電極20に印加する電圧Vinner及び外周部電極22に印加する電圧Vouterをそれぞれ、最大の印加電圧であるV0とする。次いで、時刻T1において、電圧VinnerをVi1に変化させ、電圧VouterをVo1に変化させる。次いで、時刻T2において、電圧Vinner及び電圧Vouterをそれぞれ、最大の印加電圧であるV0とする。次いで、時刻T3において、電圧VinnerをVi2に変化させ、電圧VouterをVo2に変化させる。なお、時刻T0以前の電圧Vinner及び電圧Vouterは、オートフォーカス開始前の状態を示しており、時刻T4以降の電圧Vinner及び電圧Vouterは、時刻T0〜時刻T4におけるオートフォーカス動作によって検出された合焦時電圧を示している。
P波用液晶レンズ7は、時刻T0から印加される電圧の立ち上がりタイミングからリタデーションがその前の状態から変化し、時刻T1において、図9(a)に示すように、リタデーションが均一な初期状態、即ち平板ガラスの状態となる。液晶の過渡応答動作期間は、印加電圧が高いほど早いので、印加最大電圧V0によって、液晶はより早く初期状態への復帰することが可能となる。
次に、P波用液晶レンズ7は、時刻T1の立下りタイミングからリタデーションが変化し、レンズパワーが徐々に大きくなっていき、時刻T2において、図9(d)に示すように、レンズパワーが最大の凸レンズの状態となる。なお、本例でも、S波用液晶レンズは、P波用液晶レンズ7と同じ駆動波形(図12(a)及び(b)参照)によって、P波用液晶レンズ7と同時に動作される。
次に、P波用液晶レンズ7は、時刻T2から印加される電圧の立ち上がりタイミングからリタデーションが変化し、時刻T3において、図9(c)に示すように、リタデーションが均一な初期状態、即ち平板ガラスの状態となる。前述したように、液晶の過渡応答動作期間は、印加電圧が高いほど早いので、印加最大電圧V0によって、液晶はより早く初期状態への復帰することが可能となる。
次に、P波用液晶レンズ7は、時刻T3の立下りタイミングからリタデーションが変化し、レンズパワーが徐々に大きくなっていき、時刻T4において、図9(b)に示すように、レンズパワーが最大の凹レンズの状態となる。
図12に示す電圧パターンを印加した場合の、P波用液晶レンズ7の1/fの値の変化および、オートフォーカス信号のサンプリングは、図10(c)および(d)と同様であるので、説明を省略する。
図12に示す電圧パターンを印加する場合でも、AFコントローラ5は、予定された全てのオートフォーカス信号をサンプリングした後に、全てのオートフォーカス信号を比較して、オートフォーカス信号の最大値を検出する。さらに、AFコントローラ5は、時刻T4以降において、最大のオートフォーカス信号に対応した状態となるように、液晶レンズを駆動する。