JP2007302991A - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】冷間加工性および熱間加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を提供すること。
【解決手段】C:0.020wt%以下、Si:0.50wt%以下、Mn:1.50wt%未満、P:0.050wt%以下、S:0.005wt%以下、Ni:8.0〜12.0wt%、Cr:16.0〜20.0wt%、Cu:4.0〜6.0wt%、Al:0.005wt%以下、O:0.020wt%以下、N :0.040wt%以下を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物よりなり、かつ、下式(1)で規定されるCSLの値が0以上であるオーステナイト系ステンレス鋼とする。
SL=(wt%Ni)−1.84×(wt%Cu)−(wt%Mn)−78×(wt%N)−(wt%S)−(wt%Al)−(wt%O)・・・(1)
【選択図】なし

Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼に関し、さらに詳しくは、ネジ、ボルト、ナットなどに用いて好適なオーステナイト系ステンレス鋼に関するものである。
従来、オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えば、SUSXM7などが知られている。このSUSXM7は、冷間加工性が比較的良好であるため、ネジやボルトなどの材料として用いられている。
上記SUSXM7は、基本的には、代表的なオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304にCuを添加することにより、冷間加工性を向上させたものである。上記SUSXM7は、具体的には、C:0.08wt%以下、Si:1.00wt%以下、Mn:2.00wt%以下、P:0.040wt%以下、S:0.030wt%以下、Ni:8.5〜10.5wt%、Cr:17.0〜19.0wt%、Cu:3.0〜4.0wt%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなっている。
また、他のオーステナイト系ステンレス鋼としては、例えば、特許文献1に、C:0.05wt%以下、Si:0.5wt%以下、Mn:2.0wt%以下、P:0.045wt%以下、S:0.005wt%以下、Ni:8.5〜10.5wt%、Cr:17.0〜19.0wt%、Cu:4.0〜5.0wt%、N:0.060wt%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。
特開平11−181550号公報
ここで、上記SUSXM7におけるCuの含有量は、その上限値が4.0wt%までとされている。これは、この化学成分系では、Cuをこれ以上過剰に添加すると、熱間加工性が低下し、製造性が悪くなることが経験的に分かっているなどの理由による。
そのため、実際に上市されている他のCu含有オーステナイト系ステンレス鋼も、そのCu含有量の上限が3.9%までである。
このような状況下、本発明者らは、Cuを4.0wt%以上添加して冷間加工性をより向上させつつ、かつ、それによっても熱間加工性を損ない難い、他の化学成分系のオーステナイト系ステンレス鋼を開発できるのではないか、と考えるに至った。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、冷間加工性および熱間加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明者らは、種々の実験を重ね、次のような知見を得ることができた。
すなわち、Cuを過剰添加することによって熱間加工性が低下するのは、固溶しきらないCuが、熱間加工時の温度範囲で液体として晶出するためであった。
そうすると、Cuを過剰添加するには、Cuの固溶限を拡大するような合金設計が必要となる。
さらに、上記実験の結果、液体として晶出するCuは、必ずしも単体の純Cuではなく、他の成分元素とCuとが結びついた、低融点のCu化合物(共晶Cuと考えられる)であることを突き止めた。
特に、Mnは、Cuと結びつきやすく、多量にMnを含有させるとCuの固溶限が狭くなる。また、酸化物、窒化物、硫化物などの介在物は、上記低融点Cu化合物が晶出する際の核となりやすい。したがって、O、N、Sの含有量なども、Cuを過剰添加するときの重要な要素になりうる。
また、Cu含有量を増加していけば、冷間加工性を向上させ続けられるといったわけではなく、ある一定範囲を超えると、かえって冷間加工性が低下することも分かった。
以上のような知見に基づき、本発明者らは本発明を完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、C:0.020wt%以下、Si:0.50wt%以下、Mn:1.50wt%未満、P:0.050wt%以下、S:0.005wt%以下、Ni:8.0〜12.0wt%、Cr:16.0〜20.0wt%、Cu:4.0〜6.0wt%、Al:0.005wt%以下、O:0.020wt%以下、N:0.040wt%以下を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物よりなり、かつ、下式(1)で規定されるCSLの値が0以上であることを要旨とする。
SL=(wt%Ni)−1.84×(wt%Cu)−(wt%Mn)−78×(wt%N)−(wt%S)−(wt%Al)−(wt%O)・・・(1)
ここで、上記ステンレス鋼は、Mo:0.1〜2.5wt%、および、W:0.1〜2.5wt%から選択される1種または2種以上をさらに含有していても良い。
また、上記ステンレス鋼は、Ca:0.0010〜0.0100wt%、Mg:0.0010〜0.0100wt%、および、B:0.0010〜0.0500wt%から選択される1種または2種以上をさらに含有していても良い。
また、上記ステンレス鋼は、Ti:0.50wt%以下、Nb:0.50wt%以下、V:0.50wt%以下、および、Zr:0.50wt%以下から選択される1種または2種以上をさらに含有していても良い。
一方、本発明に係るネジ、ボルト、ナットは、それぞれ、上記ステンレス鋼より形成されてなることを要旨とする。
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、特定成分の含有量が特定範囲内とされており、さらに、上記式(1)で規定されるCSLの値が0以上である。そのため、Cuが4%以上過剰添加されていても、冷間加工性および熱間加工性に優れる。
これは、本発明による要件を満たすことで、Cu含有量の増加による冷間加工性の向上効果と、熱間加工時における低融点Cu化合物の晶出抑制効果とのバランスが適度に取れているためであると思われる。
また、本発明に係るネジ、ボルト、ナットは、上記ステンレス鋼より形成されているので、従来材を用いた場合に比較して、優れた製造性を有している。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼(以下、「本ステンレス鋼」ということがある。)は、以下のような元素を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物よりなり、特定の式により規定されるCSLの値が0wt%以上である。その添加元素の種類、成分範囲および限定理由などは、次の通りである。
(1)C:0.020wt%以下。
Cは、固溶強化元素であり、鋼の強度向上に寄与する。しかし、C含有量が多くなると、材料が硬くなり過ぎる、冷間加工時の変形抵抗が大きくなるなど、冷間加工性が低下する傾向が見られる。また、C含有量が多くなると、Cr炭化物が生成しやすくなり、Crが消費されて耐食性が低下する傾向が見られる。また、生成したCr炭化物が破壊起点となって冷間加工時に割れが生じやすくなり、これによっても冷間加工性が低下する傾向が見られる。
よって、C含有量は、0.020wt%以下とする。好ましくは、0.018wt%以下、より好ましくは、0.016wt%以下とすると良い。
(2)Si:0.50wt%以下。
Siは、Cと同様に、固溶強化元素であり、鋼の強度向上に寄与する。また、脱酸剤としても作用する。しかし、Si含有量が多くなると、材料が硬くなり過ぎる、冷間加工時の変形抵抗が大きくなるなど、冷間加工性が低下する傾向が見られる。
よって、Si含有量は、0.50wt%以下とする。好ましくは、0.30wt%以下、より好ましくは、0.25wt%以下とすると良い。
(3)Mn:1.50wt%未満。
Mnは、特にCuと結びつきやすい。そのため、Mn含有量が多くなると、Cuの固溶限が狭くなる。また、熱間加工時に低融点Cu化合物が液体として晶出しやすくなり、熱間加工性が低下する傾向が見られる。また、MnSが生成しやすくなり、耐食性が低下する傾向も見られる。
よって、Mn含有量は、1.50wt%未満とする。好ましくは、1.30wt%以下、より好ましくは、0.80wt%以下、最も好ましくは、0.80wt%未満とすると良い。
一方、Mnは、オーステナイト生成元素であるので、オーステナイト相の安定化にも寄与する。そのため、比較的高価な他のオーステナイト生成元素であるNiの代替にもなりうる。したがって、コストなどを考慮してNi含有量とMn含有量とのバランスを取っても良い。コスト低減効果を得るため、Mn含有量は、好ましくは、0.10wt%以上、より好ましくは、0.30wt%以上とすると良い。
(4)P:0.050wt%以下。
Pは、鋼材の不純物元素である。P含有量が多くなると、熱間加工性が低下する傾向が見られるので、少ない方が好ましい。しかし、必要以上の低減は、コストの上昇を招く。
よって、P含有量は、0.050wt%以下とする。好ましくは、0.040wt%以下、より好ましくは、0.030wt%以下とすると良い。
(5)S:0.005wt%以下。
Sは、Pと同様に、鋼材の不純物元素である。S含有量が多くなると、MnSが生成しやすくなり、耐食性が低下する傾向が見られる。また、生成したMnSが破壊起点となって冷間加工時に割れなどが生じやすく、冷間加工性が低下する傾向が見られる。また、生成したMnSは、低融点Cu化合物が晶出する際の核となりやすく、これにより熱間加工性が低下する傾向が見られる。
よって、S含有量は、0.005wt%以下とする。好ましくは、0.004wt%以下、より好ましくは、0.003wt%以下とすると良い。
(6)Ni:8.0〜12.0wt%。
Niは、オーステナイト生成元素であり、オーステナイト相の安定化に寄与する。その効果を得るため、Ni含有量は、8.0wt%以上とする。好ましくは、9.0wt%以上、より好ましくは、10.0wt%以上とすると良い。
一方、Ni含有量が多くなると、コストの上昇を招く。そのため、Ni含有量は、12.0wt%以下とする。好ましくは、11.5wt%以下、より好ましくは、11.0wt%以下とすると良い。
(7)Cr:16.0〜20.0wt%。
Crは、耐食性、耐酸化性を向上させるのに必要な元素である。その効果を得るため、Cr含有量は、16.0wt%以上とする。好ましくは、16.5wt%以上、より好ましくは、17.0wt%以上とすると良い。
一方、Crは、フェライト生成元素であるので、Cr含有量が多くなると、オーステナイト単相組織を維持し難くなる傾向が見られる。そのため、Cr含有量は、20.0wt%以下とする。好ましくは、19.5wt%以下、より好ましくは、19.0wt%以下とすると良い。
(8)Cu:4.0〜6.0wt%。
Cuは、基本的には、材料硬度を小さくする、冷間加工時の変形抵抗を小さくするなど、冷間加工性を向上させる元素である。その効果を得るため、Cu含有量は、4.0wt%以上とする。好ましくは、4.3wt%以上、より好ましくは、4.5wt%以上とすると良い。
一方、Cu含有量が多くなると、固溶化熱処理などを行っても、Cuが晶出しやすくなり、耐食性が低下する傾向が見られる。また、Cu含有量を増加させればさせるほど、冷間加工性が向上するわけではなく、ある一定範囲を超えると、かえって冷間加工性が低下し、さらには、熱間加工性までもが低下する傾向が見られる。
よって、Cu含有量は、6.0wt%以下とする。好ましくは、5.5wt%以下、より好ましくは、5.0wt%以下とすると良い。
(9)Al:0.005wt%以下。
Alは、Siと同様に、脱酸剤として作用する。しかし、Al含有量が多くなると、Nと結びついて生成したAlNが破壊起点となって冷間加工時に割れなどが生じやすくなり、冷間加工性が低下する傾向が見られる。また、生成したAlNは、低融点Cu化合物が晶出する際の核となりやすく、これにより熱間加工性が低下する傾向が見られる。
よって、Al含有量は、0.005wt%以下とする。好ましくは、0.004wt%以下、より好ましくは、0.003wt%以下とすると良い。
(10)O:0.020wt%以下。
Oは、他の元素と結びついて酸化物を生成する。O含有量が多くなると、生成した酸化物が破壊起点となって冷間加工時に割れなどが生じやすくなり、冷間加工性が低下する傾向が見られる。また、生成した酸化物は、低融点Cu化合物が晶出する際の核となりやすく、これにより熱間加工性が低下する傾向が見られる。また、酸化物により耐食性が低下する傾向が見られる。
よって、O含有量は、0.020wt%以下とする。好ましくは、0.018wt%以下、より好ましくは、0.015wt%以下とすると良い。
(11)N:0.040wt%以下。
Nは、固溶強化元素であり、C、Siと同様に、鋼の強度向上に寄与する。しかし、N含有量が多くなると、材料が硬くなり過ぎる、冷間加工時の変形抵抗が大きくなるなど、冷間加工性が低下する傾向が見られる。また、他の元素と結びついて生成した窒化物が破壊起点となって冷間加工時に割れなどが生じやすくなり、これによっても冷間加工性が低下する傾向が見られる。また、生成した窒化物は、低融点Cu化合物が晶出する際の核となりやすく、これにより熱間加工性が低下する傾向が見られる。
よって、N含有量は、0.040wt%以下とする。好ましくは、0.035wt%以下、より好ましくは、0.030wt%以下とすると良い。
ここで、本ステンレス鋼は、下式(1)で算出されるCSLの値が0wt%以上である。
SL[wt%]=(wt%Ni)−1.84×(wt%Cu)−(wt%Mn)−78×(wt%N)−(wt%S)−(wt%Al)−(wt%O)・・・(1)
本ステンレス鋼では、Cuの含有量をSUSXM7よりも増量しているので、Cuの固溶限を拡大するため、Cuの固溶に寄与する合金元素の添加量を適正化する必要がある。
上記(1)式によるCSLの値によれば、鋼中にCuが固溶しているか否かを概ね判断することが可能である。式中、Niは、Cuの固溶限を増加させるので、係り方が正となっている。一方、Mn、N、S、Al、Oは、Cuの固溶限を減少させるので、係り方が負となっている。また、Cuの含有量が過度に多くなれば、Cuが晶出しやすくなるので、係り方が負となっている。なお、各wt%元素の係数の大小は、Cuの固溶限に対する寄与度合いを表している。
この(1)式によるCSLの値が0wt%以上であると、概ねCuが固溶しており、冷間加工性および熱間加工性に優れる。これに対し、CSLの値が0未満であると、Cuが晶出しやすくなり、冷間加工性、熱間加工性の何れか一方またはその両方に劣る。
また、本ステンレス鋼は、(wt%C)+(wt%N)の値が、好ましくは、0.025wt%以下、より好ましくは、0.023wt%以下であると良い。
(wt%C)+(wt%N)の値、つまりC、N両者の合計wt%が上記範囲内にあれば、冷間加工時の変形抵抗が適切な範囲内に収まりやすいなどの利点があるからである。
また、本ステンレス鋼は、上述した元素に加えて、さらに、必要に応じて、MoおよびWから選択される1種または2種以上の元素を含有していても良い。MoおよびWの成分範囲およびその限定理由は、次の通りである。
(12)Mo:0.1〜2.5wt%。
Moは、耐食性を向上させる元素である。その効果を得るため、Mo含有量は、好ましくは、0.1wt%以上、より好ましくは、0.15wt%以上とすると良い。
但し、Mo含有量が多くなると、生成したMo炭化物が破壊起点となって冷間加工時に割れなどが生じやすくなり、冷間加工性が低下する傾向が見られる。
よって、Mo含有量は、好ましくは、2.5wt%以下、より好ましくは、2.0wt%以下とすると良い。
(13)W:0.1〜2.5wt%。
Wは、耐食性を向上させる元素である。その効果を得るため、W含有量は、好ましくは、0.1wt%以上、より好ましくは、0.15wt%以上とすると良い。
但し、W含有量が多くなると、Moと同様に、生成したW炭化物が破壊起点となり、冷間加工時に割れなどが生じやすく、冷間加工性が低下する傾向が見られる。
よって、W含有量は、好ましくは、2.5wt%以下、より好ましくは、2.0wt%以下とすると良い。
また、本ステンレス鋼は、上述した元素に加えて、さらに、必要に応じて、Ca、MgおよびBから選択される1種または2種以上の元素を含有していても良い。Ca、MgおよびBの成分範囲およびその限定理由は、次の通りである。
(14)Ca:0.0010〜0.0100wt%。
Caは、熱間加工性を向上させるのに有効な元素である。その効果を得るため、Ca含有量は、好ましくは、0.0010wt%以上、より好ましくは、0.0015wt%以上とすると良い。
但し、Ca含有量が多くなると、酸素と結びつき、酸化物を生成するため、耐食性、冷間加工性が低下する傾向が見られる。
よって、Ca含有量は、好ましくは、0.0100wt%以下、より好ましくは、0.0080wt%以下とすると良い。
(15)Mg:0.0010〜0.0100wt%。
Mgは、Caと同様に、熱間加工性を向上させるのに有効な元素である。その効果を得るため、Mg含有量は、好ましくは、0.0010wt%以上、より好ましくは、0.0015wt%以上とすると良い。
但し、Mg含有量が多くなると、酸素と結びつき、酸化物を生成するため、耐食性、冷間加工性が低下する傾向が見られる。
よって、Mg含有量は、好ましくは、0.0100wt%以下、より好ましくは、0.0080wt%以下とすると良い。
(16)B:0.0010〜0.0500wt%。
Bは、熱間加工性を向上させるのに有効な元素である。その効果を得るため、B含有量は、好ましくは、0.0010wt%以上、より好ましくは、0.0020wt%以上とすると良い。
但し、B含有量が多くなると、酸素と結びつき、酸化物を生成するため、耐食性、冷間加工性が低下する傾向が見られる。
よって、B含有量は、好ましくは、0.0500wt%以下、より好ましくは、0.0100wt%以下とすると良い。
また、本ステンレス鋼は、上述した元素に加えて、さらに、必要に応じて、Ti、Nb、VおよびZrから選択される1種または2種以上の元素を含有していても良い。Ti、Nb、VおよびZrの成分範囲およびその限定理由は、次の通りである。
(17)Ti:0.50wt%以下。
Tiは、固溶強化元素であり、鋼の強度向上に寄与する。しかし、Ti含有量が多くなると、冷間加工時の変形抵抗が大きくなるなど、冷間加工性が低下する傾向が見られる。
そのため、Ti含有量は、好ましくは、0.50wt%以下、より好ましくは、0.40wt%以下とすると良い。
(18)Nb:0.50wt%以下。
Nbは、Tiと同様に、固溶強化元素であり、鋼の強度向上に寄与する。しかし、Nb含有量が多くなると、冷間加工時の変形抵抗が大きくなるなど、冷間加工性が低下する傾向が見られる。
そのため、Nb含有量は、好ましくは、0.50wt%以下、より好ましくは、0.40wt%以下とすると良い。
(19)V:0.50wt%以下。
Vは、析出強化元素であり、鋼の強度向上に寄与する。しかし、V含有量が多くなると、冷間加工時の変形抵抗が大きくなるなど、冷間加工性が低下する傾向が見られる。
そのため、V含有量は、好ましくは、0.50wt%以下、より好ましくは、0.40wt%以下とすると良い。
(20)Zr:0.50wt%以下。
Zrは、Vと同様に、析出強化元素であり、鋼の強度向上に寄与する。しかし、Zr含有量が多くなると、冷間加工時の変形抵抗が大きくなるなど、冷間加工性が低下する傾向が見られる。
そのため、Zr含有量は、好ましくは、0.50wt%以下、より好ましくは、0.40wt%以下とすると良い。
次に、本ステンレス鋼の製造方法の一例について説明する。本ステンレス鋼を得るには、例えば、以下のようにすれば良い。
上述した化学組成となるように各原料を秤量し、これらを、例えば、電気炉、高周波誘導炉などの溶解炉にて溶製した後、鋼塊に鋳造する。次いで、得られた鋼塊を、熱間加工し、所望の形状の鋼材とすれば、基本的には、本ステンレス鋼を得ることができる。
また、必要に応じて、得られた鋼材に対して、固溶化熱処理、冷間加工、時効処理などを行っても良い。
上記固溶化熱処理としては、具体的には、例えば、950〜1250℃の温度に加熱し、10分〜24時間保持した後、急冷する方法などを例示することができる。
上記時効処理は、具体的には、例えば、400〜1000℃、好ましくは、500〜900℃の温度で、10分〜100時間程度行うと良い。
以上説明した本ステンレス鋼の用途は、特に限定されるものではない。本ステンレス鋼の用途としては、具体的には、例えば、ネジ、ボルト、ナット、リベット、冷間または温間加工により成形される耐食性の求められる部材などを例示することができる。
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。
1.オーステナイト系ステンレス鋼
表1〜表3に示す化学成分の合金を高周波誘導炉により溶製した後、50kgの塊状物に鋳造した。次いで、各塊状物を、1200℃にて熱間鍛造することにより、直径60mmの丸棒をそれぞれ製造した。
次いで、得られた各丸棒に対して、1100℃で1時間保持した後、水冷する固溶化熱処理を行った。
この本丸棒から各試験に適した試験片を採取し、以下の試験方法により、耐食性、冷間圧縮前後の硬さ(Hv)、冷間圧縮後の割れ発生率(%)、冷間圧縮歪が1の時の変形抵抗値(MPa)、熱間破断絞り(%)を測定した。なお、上記硬さ、割れ発生率、変形抵抗値は、冷間加工性を評価するためのものであり、上記熱間破断絞りは、熱間加工性を評価するためのものである。
<耐食性>
耐食性は、JIS Z 2371に準拠する塩水噴霧試験にて評価した。すなわち、各ステンレス鋼につき、直径10mm×長さ50mmの丸棒試験片を準備した。次いで、試験片の表面をエメリー紙により番手#400まで研磨加工し、脱脂洗浄した。次いで、これら各試験片を温度35℃、5%NaClの塩水噴霧雰囲気中に96時間保存した。次いで、保存後の各試験片につき、目視にて発錆の有無を確認した。その結果、発錆がなかったものを「A」とし、発錆の面積率が3%未満のものを「B」とし、発錆の面積率が3%以上のものを「C」として評価した。
<硬さ>
硬さは、冷間圧縮前後の試験片につき、ビッカース硬さ(Hv)を測定することにより行った。
なお、冷間圧縮後のビッカース硬さは、いわゆる、端面拘束圧縮試験、すなわち、直径15mm×長さ22.5mmの円柱試験片を、長さ方向に75%冷間圧縮する試験を行い、その後の試験片について測定したものである。
<割れ発生率>
冷間圧縮後の割れ発生率(%)は、上記端面拘束圧縮試験を10回行ったときの、亀裂が発生した試験片の割合である。
<変形抵抗値>
上記端面拘束圧縮試験の際に、圧縮荷重を負荷して得られる応力−歪曲線において、冷間加圧縮歪が1となるときの応力を、変形抵抗値(MPa)とした。
<熱間破断絞り>
熱間破断絞りは、高温高速引張試験(グリーブル試験)により測定した。すなわち、先ず、両端にM6のネジが切ってある、直径6mm×長さ55mmの丸棒試験片を準備した。
次いで、上記試験片を通電加熱して所定温度まで昇温し、この所定温度に60秒間保持した後、クロスヘッドスピード50.8mm/sで試験片を引っ張って破断させ、破断絞り(%)(くびれ度合い)を測定した。
この際、上記温度は、800℃、850℃、900℃、950℃、1000℃、1050℃、1100℃、1150℃、1200℃、1250℃、1300℃の11水準とした。また、各水準の温度に達するまでの所要時間は、何れも100秒とした。また、本試験は、各水準N=1で行い、各水準について得られた破断絞りの平均値を熱間破断絞りの値として採用した。
なお、この熱間破断絞りは、その値が高いほど変形能があり、熱間加工性に優れることを示すものである。
表1〜表3に作製したステンレス鋼の化学成分を、表4〜表6に各試験結果を示す。
Figure 2007302991
Figure 2007302991
Figure 2007302991
Figure 2007302991
Figure 2007302991
Figure 2007302991
表4〜表6の試験結果を相対評価すると、次のことが分かる。
すなわち、本願に規定される条件を満たしていない、比較例1(C過剰)、比較例2(Si過剰)、比較例3(Mn過剰、CSL値<0)、比較例4(P過剰)、比較例5(S過剰、CSL値<0)、比較例6(Cr不足)、比較例7(Al過剰、CSL値<0)、比較例8(N過剰、CSL値<0)、比較例9(O過剰、CSL値<0)、比較例10(Cu不足)、比較例11(Cu過剰)、比較例12(Cu過剰、CSL値<0)、比較例13〜16(各成分範囲は満たすが、CSL値<0)は、耐食性、冷間加工性、熱間加工性のうち少なくとも1つ以上が劣っていることが分かる。
これらに対し、本願に規定される条件を満足する、実施例1〜48は、耐食性、冷間加工性および熱間加工性の何れにも優れていることが分かる。
2.ネジ、ボルト、ナットの製造
次に、後述する表7〜表9に示すように、上記実施例および比較例に係る何れかの鋼種を、5.5mm線径に線材圧延し、1050℃で5分間溶体化処理したものを伸線加工により3.85mmの線径にし、さらにこれを1050℃で5分間溶体化処理して得た線材を各ヘッディングマシンで加工することにより、ネジ、ボルト、ナットを製造し、その冷間鍛造性を評価した。
この際、上記各部材の冷間鍛造性は、次のように評価した。
ネジについては、パンチ寿命、割れ発生率を評価した。上記パンチ寿命は、M5皿頭型小ネジ製造時に、パンチ摩耗によって十字穴寸法が規定範囲外となってパンチ交換するまでに製造することができたネジの個数を調べることにより評価した。また、上記割れ発生率は、据え込み加工時に、ネジ頭部割れ(亀裂)が発生した割合(サンプル数n=1000)を求めることにより評価した。
また、ボルトについては、成型荷重、金型寿命を評価した。上記成型荷重は、M5六角ボルトネジを製造中、据え込み加工時にかかる成型荷重を測定(サンプル数n=2)することにより評価した。また、上記金型寿命は、頭部(つば部)の打ち抜き加工(トリミング)時に、金型パンチ交換までに製造することができたボルトの個数を調べることにより評価した。
また、ナットについては、成型荷重を評価した。上記成型荷重は、M5六角ナット(2種)を製造中、後方押出加工時にかかる成型荷重を測定(サンプル数n=2)することにより評価した。
以下の表7〜表9に各部材の評価結果を示す。
Figure 2007302991
Figure 2007302991
Figure 2007302991
上記表7〜表9の結果を相対評価すると、次のことが分かる。
すなわち、ネジについては、実施例に係る鋼種を用いた方が、比較例に係る鋼種を用いた場合よりも、パンチ寿命が長く、かつ、割れ発生率も低い。このことから、実施例に係る鋼種を用いたネジは、優れた冷間鍛造性を有していることが確認できた。
同様に、ボルトについては、実施例に係る鋼種を用いた方が、比較例に係る鋼種を用いた場合よりも、成型荷重が低く、かつ、金型寿命も長い。このことから、実施例に係る鋼種を用いたボルトは、優れた冷間鍛造性を有していることが確認できた。
同様に、ナットについては、実施例に係る鋼種を用いた方が、比較例に係る鋼種を用いた場合よりも、成型荷重が低い。このことから、実施例に係る鋼種を用いたナットは、優れた冷間鍛造性を有していることが確認できた。
以上、本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼およびその用途について説明したが、本発明は、上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。

Claims (7)

  1. C :0.020wt%以下、
    Si:0.50wt%以下、
    Mn:1.50wt%未満、
    P :0.050wt%以下、
    S :0.005wt%以下、
    Ni:8.0〜12.0wt%、
    Cr:16.0〜20.0wt%、
    Cu:4.0〜6.0wt%、
    Al:0.005wt%以下、
    O :0.020wt%以下、
    N :0.040wt%以下を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物よりなり、かつ、下式(1)で規定されるCSLの値が0以上であることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
    SL=(wt%Ni)−1.84×(wt%Cu)−(wt%Mn)−78×(wt%N)−(wt%S)−(wt%Al)−(wt%O)・・・(1)
  2. Mo:0.1〜2.5wt%、および、
    W :0.1〜2.5wt%、
    から選択される1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  3. Ca:0.0010〜0.0100wt%、
    Mg:0.0010〜0.0100wt%、および、
    B :0.0010〜0.0500wt%、
    から選択される1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  4. Ti:0.50wt%以下、
    Nb:0.50wt%以下、
    V :0.50wt%以下、および、
    Zr:0.50wt%以下、
    から選択される1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  5. 請求項1から4の何れかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼より形成されたネジ。
  6. 請求項1から4の何れかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼より形成されたボルト。
  7. 請求項1から4の何れかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼より形成されたナット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN111094611A (zh) * 2017-09-13 2020-05-01 神钢特殊钢管株式会社 奥氏体系不锈钢及其制造方法

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