JP2007287498A - プラズマディスプレイパネルおよびプラズマディスプレイパネル装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い放電効率を達成しながら、維持放電時のスパッタリングによる保護層の削れを抑え、長寿命で且つ高い信頼性を有するPDPおよびPDP装置を提供する。
【解決手段】パネル部10では、放電空間13に放電ガスが充填されている。そして、この内部空間13を臨む一部領域(前面パネル11側)に保護層114が形成され、放電空間13を挟む対向領域(背面パネル12側)に蛍光体層124が形成されている。
放電ガスには、全圧1.50×104[Pa]以上5.00×104[Pa]以下に設定されており、主成分としてのXeガスと、添加成分としてのHeガスまたはArガスとを含み、且つ、Neガスが含まれていない。
【選択図】図1
【解決手段】パネル部10では、放電空間13に放電ガスが充填されている。そして、この内部空間13を臨む一部領域(前面パネル11側)に保護層114が形成され、放電空間13を挟む対向領域(背面パネル12側)に蛍光体層124が形成されている。
放電ガスには、全圧1.50×104[Pa]以上5.00×104[Pa]以下に設定されており、主成分としてのXeガスと、添加成分としてのHeガスまたはArガスとを含み、且つ、Neガスが含まれていない。
【選択図】図1
Description
本発明は、プラズマディスプレイパネルおよびプラズマディスプレイパネル装置に関し、特に、封入されている放電ガスの成分に関する。
近年、平面型表示装置の一種としてプラズマディスプレイパネル装置(以下では、「PDP装置」と記載する。)が広く普及してきている。現在広く普及しているPDP装置は、高い技術的ポテンシャルを有する交流型(AC型)であるが、中でも、寿命特性に優れる面放電AC型PDP装置(以下では、単に「PDP装置」と記載する。)が主流となっている。
PDP装置は、画像表示を行うパネル部と、入力信号に基づきパネル部の駆動を行う駆動部などから構成されている。この内、パネル部は、前面パネルと背面パネルとが互いの間に間隙をあけて対向配置されてなる構成を有する。このうち前面パネルは、ガラス基板の一方の主面にストライプ状のスキャン電極、サスティン電極が交互に配され、この上を誘電体層および保護層で順に被覆された構成を有する。
背面パネルは、ガラス基板の一方の主面にストライプ状のデータ電極が配され、この上を誘電体層で被覆され、さらにその上にストライプ状あるいは井桁状などの隔壁が突設されている。また、背面パネルには、誘電体層の表面および隔壁の側面によって形成される凹部に蛍光体層が形成されている。蛍光体層は、隔壁によって仕切られる凹部ごとに色分けされて形成されている。
前面パネルと背面パネルとは、保護層と蛍光体層とが向き合い、且つ、スキャン電極およびサスティン電極とデータ電極とが立体交差する状態に配されている。また、前面パネルと背面パネルとの間に設けられた間隙は、放電空間であり、キセノン(Xe)/ネオン(Ne)やキセノン(Xe)/ネオン(Ne)/ヘリウム(He)などの混合ガスが充填されている。このように構成されたパネル部では、電極対(スキャン電極とサスティン電極との対)とデータ電極とが立体交差する各部分が放電セルに相当する。
PDP装置の駆動部は、パネル部の各電極(スキャン電極、サスティン電極、データ電極)に対し接続されており、各電極に対して独立して電圧パルスを印加できるようになっている。駆動部が実行するパネル部の駆動においては、所謂、フィールド内時分割階調表示方式が用いられている。この方法では、1TVフィールドを複数のサブフィールドへと分割し、入力された映像信号に基づいて各サブフィールドの点灯/非点灯を制御し、1TVフィールドでの点灯の合計回数により階調表示が実行される。
ところで、PDP装置においては、その維持放電の放電効率が4〜8[%]と非常に低く、消費電力の低減などの観点から放電効率の改善が求められている。このような要求に対して、様々なアプローチがなされているが、その一つとして、放電ガス中に占めるXeガス成分の割合を高めるという研究開発がなされている(例えば、特許文献1)。
特開2002−83543号公報
しかしながら、上記特許文献1の技術のように、放電ガス中に占めるXeガス成分の割合を従来のPDP装置よりも高めていった場合には、放電効率は向上するものの、放電空間を臨む保護層が維持放電のスパッタリングによって削り取られていくという問題を生じる。そして、維持放電による保護層の削れ量は、放電ガス中に占めるXeガス成分の割合(全圧に対するXe分圧の比)を5[%]から10[%]、さらには30[%]と高くすればするほど増加する。
このように放電によるスパッタリングにより削り取られてゆく保護層は、誘電体の表面保護という役割だけではなく、2次電子放出による駆動電圧の低減や壁電荷の保持といった非常に重要な役割も果たす部位である。このため、上記のように、ただ単に放電ガス中に占めるXeガス成分の割合を高くしたPDP装置は、放電効率の向上というメリットと引き換えに、寿命および信頼性の低下というデメリットを有することになってしまう。
本発明は、このような問題を解決しようとなされたものであって、高い放電効率を達成しながら、維持放電時のスパッタリングによる保護層の削れを抑え、長寿命で高い信頼性を有するプラズマディスプレイパネルおよびプラズマディスプレイパネル装置を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記放電ガスの成分と駆動に伴う放電に起因する保護層のスパッタリングによる削れの発生との関係について探求したところ、次のようなメカニズムを解明するに至った。即ち、放電ガスとしてXe/Neの2元系ガスを用いる場合には、全圧に対するXeガス成分の分圧比を5[%]から30[%]あるいはそれ以上に上昇させるとき、Xeガス成分の分圧比を上げてゆくのに従ってパネル駆動時における保護層の削れ量も増大する。そして、本発明者等は、放電ガスの構成要素であるNeの質量数(原子量)が、保護層を構成するマグネシウム(Mg)原子や酸素(O)原子の質量数と近い値を有することに着目し、放電ガス中に含まれるNeガス成分がパネル駆動時における保護層の削れに大きく影響を与えるものであることを見出した。
本発明は、上記検討結果を考慮し、次のような構成を有するものとする。
本発明に係るPDPは、内方の空間(放電空間)に放電ガスが充填されてなる密閉容器を有し、当該密閉容器において、保護層と蛍光体層とが互いに放電空間を臨む状態で形成されてなるパネルであって、放電ガスは、放電空間に対し1.50×104[Pa]以上5.00×104[Pa]以下の全圧を以って充填されているとともに、プラズマ放電により蛍光体層の蛍光体を励起する光を出射するガスからなる主成分ガスと、ヘリウム(He)ガスとが含まれ、且つ、Neガスが含まれていない構成を有することを特徴とする。
本発明に係るPDPは、内方の空間(放電空間)に放電ガスが充填されてなる密閉容器を有し、当該密閉容器において、保護層と蛍光体層とが互いに放電空間を臨む状態で形成されてなるパネルであって、放電ガスは、放電空間に対し1.50×104[Pa]以上5.00×104[Pa]以下の全圧を以って充填されているとともに、プラズマ放電により蛍光体層の蛍光体を励起する光を出射するガスからなる主成分ガスと、ヘリウム(He)ガスとが含まれ、且つ、Neガスが含まれていない構成を有することを特徴とする。
また、本発明に係るPDP装置は、上記本発明に係るPDPをパネル部として備え、これに駆動部が接続されていることを特徴とする。
なお、上記における「Neガスが含まれていない」とは、放電ガスを構成する一成分としては含まれていないということを意図するものであり、例えば、PDPの製造過程において放電空間中の脱気を実施した際に不純物レベルでNeが残留することも状況によっては考えられるが、本発明は、この不純物レベルでのNeの含有までも排除することを意図するものではない。
なお、上記における「Neガスが含まれていない」とは、放電ガスを構成する一成分としては含まれていないということを意図するものであり、例えば、PDPの製造過程において放電空間中の脱気を実施した際に不純物レベルでNeが残留することも状況によっては考えられるが、本発明は、この不純物レベルでのNeの含有までも排除することを意図するものではない。
本発明に係るPDPでは、放電ガスの全圧を1.50×104[Pa]以上としているので、高い放電効率が得られ、放電電圧の上昇を抑制することができる。また、本発明に係るPDPでは、放電ガスの全圧を5.00×104[Pa]以下としているので、放電電圧が著しく上昇してしまうことがない。即ち、パネルの高い輝度を得るために、例えば、5.00×104[Pa]よりも高く放電ガスの全圧を上昇させた場合では、放電電圧が著しく上昇してしまい、実際のパネルを実現する上で問題を生じるのに対して、本発明に係るPDPのように放電ガスの全圧を5.00×104[Pa]以下とすることによって、このような問題を生じることがない。
また、本発明に係るPDPでは、放電ガスにおいて、主成分ガスに対し、Heガスが添加されているとともに、Neガスについては、構成中に含まない。本発明に係るPDPでは、このような構成を採用することによって、駆動時の放電によるスパッタリングによる保護層の削れが発生し難く、パネル寿命および品質の安定性という観点から優位性を有する。即ち、従来のPDPのように放電ガスの構成要素としてNeガスを含む場合には、Ne原子の質量数が保護層を構成するMg原子の質量数と近いことからパネル駆動時に保護層が削れるという現象が発生するが、本発明に係るPDPでは、Neガスを含んでいないので、パネル駆動時における保護層の削れという現象が発生しにくい。
また、本発明に係るPDPでは、放電ガス中にHeガスを含む構成を採っているので、放電電圧の大きな上昇を招くことがなく、Neガスを構成中に含む従来のPDPと比べて同等の放電効率を有する。
従って、本発明に係るPDP、さらには当該PDPを備える本発明に係るPDP装置は、高い放電効率を達成しながら、維持放電時のスパッタリングによる保護層の削れを抑え、長寿命で高い信頼性を有する。
従って、本発明に係るPDP、さらには当該PDPを備える本発明に係るPDP装置は、高い放電効率を達成しながら、維持放電時のスパッタリングによる保護層の削れを抑え、長寿命で高い信頼性を有する。
上記本発明に係るPDPでは、放電ガスとして次のような組み合わせを採用することができる。
1)主成分ガス;キセノン(Xe)ガス
添加ガス;ヘリウム(He)ガス
2)主成分ガス;クリプトン(Kr)ガス
添加ガス;ヘリウム(He)ガス
3)主成分ガス;窒素(N2)ガス
添加ガス;ヘリウム(He)ガス
なお、本発明に係るPDPおよびPDP装置では、放電ガスを2元系の混合ガスに限定するものではなく、3元系あるいはそれ以上の混合ガスを採用することもできる。なお、それらの場合においても、放電ガスの構成要素としてNeガスを含まないことが前提条件となる。
1)主成分ガス;キセノン(Xe)ガス
添加ガス;ヘリウム(He)ガス
2)主成分ガス;クリプトン(Kr)ガス
添加ガス;ヘリウム(He)ガス
3)主成分ガス;窒素(N2)ガス
添加ガス;ヘリウム(He)ガス
なお、本発明に係るPDPおよびPDP装置では、放電ガスを2元系の混合ガスに限定するものではなく、3元系あるいはそれ以上の混合ガスを採用することもできる。なお、それらの場合においても、放電ガスの構成要素としてNeガスを含まないことが前提条件となる。
ここで、上記のように、本発明に係るPDPでは、主成分ガスに対し添加するガス成分としてHeガスを含む構成としているので、Neガスを含まないこととしても、放電電圧の大きな上昇を招くことがない。
上記本発明に係るPDPおよびPDP装置では、放電ガス中におけるHeガス成分の分圧比(全圧に対するHeガス成分の分圧の比率)を40[%]以下にしておけば、上述のように、パネル駆動時の保護層の削れの発生を抑制できるという優位性に加え、放電効率という観点からも優位となる。即ち、Heガス成分の分圧比を40[%]以下としておけば、Xe(15[%])/Ne(85[%])の放電ガスを全圧5.00×104[Pa]で封入した従来技術に係る高XeなPDP装置(放電ガス中におけるXeガスの含有比率が高いPDP装置)に対して、放電効率を大幅に改善することが可能である。また、Heガス成分の代わりに、同量のNeガスを添加した場合と比べても同等の放電効率を有する。
上記本発明に係るPDPおよびPDP装置では、放電ガス中におけるHeガス成分の分圧比(全圧に対するHeガス成分の分圧の比率)を40[%]以下にしておけば、上述のように、パネル駆動時の保護層の削れの発生を抑制できるという優位性に加え、放電効率という観点からも優位となる。即ち、Heガス成分の分圧比を40[%]以下としておけば、Xe(15[%])/Ne(85[%])の放電ガスを全圧5.00×104[Pa]で封入した従来技術に係る高XeなPDP装置(放電ガス中におけるXeガスの含有比率が高いPDP装置)に対して、放電効率を大幅に改善することが可能である。また、Heガス成分の代わりに、同量のNeガスを添加した場合と比べても同等の放電効率を有する。
上記のように、本発明に係るPDPおよびPDP装置において、上記範囲でHeガス成分の比率を規定すれば、パネル駆動時の保護層の削れの発生の抑制と高い放電効率の達成とが両立できる。
また、上記本発明に係るPDPおよびPDP装置では、Heガス成分の分圧比を30[%]以下とすれば、上記優位性に加えて、放電電圧を低く維持することができるという優位性も有する。
また、上記本発明に係るPDPおよびPDP装置では、Heガス成分の分圧比を30[%]以下とすれば、上記優位性に加えて、放電電圧を低く維持することができるという優位性も有する。
さらに、上記本発明に係るPDPおよびPDP装置では、Heガス成分の分圧比を20[%]以下とすれば、より一層の放電効率の向上を図りながら、パネル駆動時における保護層の削れの発生を効果的に抑制することが可能となる。例えば、放電ガスとして、Xeガスを主成分ガスとする2元系混合ガスと仮定するとき、Heガス成分の分圧比を20[%]以下とすれば、60000[時間]の保護層寿命を保証できる程度に、保護層の削れを低減することが可能であり、且つ、Xe分圧が高いので放電効率を高くすることができる。
また、本発明に係るPDPおよびPDP装置では、誘電体層の厚みを20[μm]以下にしておくことが望ましい。これは、誘電体層の厚みを上記のように薄くすることで、パネル駆動時における放電電圧(維持電圧)を低く抑えることが可能であり、放電効率の向上およびパネル駆動時における保護層の削れの発生抑制という観点から望ましい。
上記本発明に係るPDPおよびPDP装置では、上述のように、第1ガス成分の比率を高めて高い発光輝度を確保することが可能であるので、(表示)電極対を金属材料からなる構成とし、構成要素として酸化膜(ITO(Indium Tin Oxide)、ZnO、SnO2などからなる膜)を有しないこととし、従来のPDPの電極構成として用いられていた(透明)酸化膜を省略することができる。これによって、本発明に係るPDPおよびPDP装置では、材料コストおよび製造コストなどの低減を果たすことが可能となる。
上記本発明に係るPDPおよびPDP装置では、上述のように、第1ガス成分の比率を高めて高い発光輝度を確保することが可能であるので、(表示)電極対を金属材料からなる構成とし、構成要素として酸化膜(ITO(Indium Tin Oxide)、ZnO、SnO2などからなる膜)を有しないこととし、従来のPDPの電極構成として用いられていた(透明)酸化膜を省略することができる。これによって、本発明に係るPDPおよびPDP装置では、材料コストおよび製造コストなどの低減を果たすことが可能となる。
また、本発明に係るPDPおよびPDP装置では、具体的な保護層の構成として、アルミニウム(Al)またはシリコン(Si)を添加物(不純物レベル)として含み、屈折率が1.6以上の酸化マグネシウム(MgO)からなるものとすることができる。
また、保護層の面上の少なくとも一部に、0.5[μm]以上1.0[μm]以下の粒径を有する酸化マグネシウム結晶が配されているという構成を採用することもできる。
また、保護層の面上の少なくとも一部に、0.5[μm]以上1.0[μm]以下の粒径を有する酸化マグネシウム結晶が配されているという構成を採用することもできる。
なお、本発明に係るPDPおよびPDP装置では、放電ガス中に上記以外の成分、例えば、水素(H2)などを微量添加する構成としても、同様の効果を得ることができる。
以下では、本発明を実施するための最良の形態について、一例を用いて説明する。なお、以下の説明で用いる形態は、あくまでも一例であって、本発明は、その本質的特徴とする部分以外これに限定を受けるものではない。
(実施の形態1)
1.パネル部10の構成
実施の形態1に係るPDP装置1の構成の内、パネル部10の構成について、図1を用いて説明する。図1は、パネル部10の構造を示す要部斜視図である。
(実施の形態1)
1.パネル部10の構成
実施の形態1に係るPDP装置1の構成の内、パネル部10の構成について、図1を用いて説明する。図1は、パネル部10の構造を示す要部斜視図である。
図1に示すように、パネル部10は、2枚のパネル11、12が間に放電空間13をあけて対向配置された構成を有する。
1−1.前面パネル11の構成
図1に示すように、パネル部10を構成する2枚のパネル11、12の内の一方、前面パネル11は、前面基板111をベースとして構成されており、その一方の主面(図1では、下向き主面)にスキャン電極Scnとサスティン電極Susからなる表示電極対112が互いに並行して複数配設され、この表示電極対112を覆う状態に、誘電体層113および保護層114が順に積層形成されている。
1−1.前面パネル11の構成
図1に示すように、パネル部10を構成する2枚のパネル11、12の内の一方、前面パネル11は、前面基板111をベースとして構成されており、その一方の主面(図1では、下向き主面)にスキャン電極Scnとサスティン電極Susからなる表示電極対112が互いに並行して複数配設され、この表示電極対112を覆う状態に、誘電体層113および保護層114が順に積層形成されている。
ベースとなる前面基板111は、例えば、高歪点ガラスあるいはソーダライムガラスなどから構成されている。また、表示電極対112を構成するスキャン電極Scnおよびサスティン電極Susの各々は、例えば、アルミニウム合金(例えば、Al−Nd)などの金属材料から構成されており、従来のPDPで用いられていたような透明電極(ITOやSnO2、ZnOなど)とバス電極(細幅金属線)との積層構造を有していない。
前面パネル11の誘電体層113は、酸化シリコン(SiO2)から形成されており、その厚みが約15[μm]に設定されている。また、保護層114は、アルミニウム(Al)またはシリコン(Si)を添加物として0.01[%]〜0.1[%]含んでおり、屈折率が1.6の酸化マグネシウム(MgO)から形成されている。
なお、前面基板111の表面において、隣り合う表示電極対112間には、隣り合う放電セル間で互いの光が漏れ出るのを防ぐためにブラックストライプが設けられることもある。
なお、前面基板111の表面において、隣り合う表示電極対112間には、隣り合う放電セル間で互いの光が漏れ出るのを防ぐためにブラックストライプが設けられることもある。
1−2.背面パネル12の構成
背面パネル12は、背面基板121における上記前面パネル11と対向する側の主面(図1では、上向き主面)に、データ電極Datが複数配設されている。データ電極Datは、前面パネル11の表示電極対112に対して交差する方向を以って配設されている。データ電極Datが配設された背面基板121の主面には、誘電体層尾122が形成され、その上には、隔壁123が形成されている。隔壁123は、隣り合うデータ電極Dat間に立設される主隔壁1231とこれに交差する方向に形成された補助隔壁1232とからなる。
背面パネル12は、背面基板121における上記前面パネル11と対向する側の主面(図1では、上向き主面)に、データ電極Datが複数配設されている。データ電極Datは、前面パネル11の表示電極対112に対して交差する方向を以って配設されている。データ電極Datが配設された背面基板121の主面には、誘電体層尾122が形成され、その上には、隔壁123が形成されている。隔壁123は、隣り合うデータ電極Dat間に立設される主隔壁1231とこれに交差する方向に形成された補助隔壁1232とからなる。
誘電体層122と隔壁123とで形成される各凹部は、その内壁面に蛍光体層124が形成されている。蛍光体層124は、各凹部ごとに赤色(R)蛍光体層124R、緑色(G)蛍光体層124G、青色(B)蛍光体層124Bがそれぞれ色分けされて形成されている。
背面パネル12における背面基板121についても、上記前面パネル11における前面基板111と同様、高歪点ガラス材料やソーダライムガラス材料などを用い形成されている。データ電極Datは、アルミニウム合金や銀(Ag)などといった金属材料から形成されている。
背面パネル12における背面基板121についても、上記前面パネル11における前面基板111と同様、高歪点ガラス材料やソーダライムガラス材料などを用い形成されている。データ電極Datは、アルミニウム合金や銀(Ag)などといった金属材料から形成されている。
誘電体層122は、前面パネル11における誘電体層113と同様の酸化シリコンや、非鉛系の低融点ガラス材料などから形成されているが、これに酸化アルミニウム(Al2O3)や酸化チタン(TiO2)などが含まれたものでもよい。隔壁124は、ガラス材料から形成され、蛍光体層125は、各々次のような材料から形成されている。
R蛍光体;(Y、Gd)BO3:Eu、Y2O3:Eu、YVO3:Euなどをそれぞれ単独で使用したり、あるいは、これらを混合した材料
G蛍光体;Zn2SiO4:Mn、(Y、Gd)BO3:Tb、BaAl12O19:Mnなどをそれぞれ単独で使用したり、あるいは、これらを混合した材料
B蛍光体;BaMgAl10O17:Eu、CaMgSi2O6:Euなどをそれぞれ単独で使用したり、あるいは、これらを混合した材料
1−3.前面パネル11と背面パネル12との配置
図1に示すように、パネル部10は、前面パネル11と背面パネル12とが、背面パネル12の隔壁123をギャップ材として間に挟み、且つ、表示電極対112とデータ電極Datとが略直交する方向になる状態に配され、外周部で封止された構成となっており、内方に放電空間13を有する密閉容器となっている。そして、前面パネル11と背面パネル12との間は、隔壁123により仕切られた放電空間13が形成される。
R蛍光体;(Y、Gd)BO3:Eu、Y2O3:Eu、YVO3:Euなどをそれぞれ単独で使用したり、あるいは、これらを混合した材料
G蛍光体;Zn2SiO4:Mn、(Y、Gd)BO3:Tb、BaAl12O19:Mnなどをそれぞれ単独で使用したり、あるいは、これらを混合した材料
B蛍光体;BaMgAl10O17:Eu、CaMgSi2O6:Euなどをそれぞれ単独で使用したり、あるいは、これらを混合した材料
1−3.前面パネル11と背面パネル12との配置
図1に示すように、パネル部10は、前面パネル11と背面パネル12とが、背面パネル12の隔壁123をギャップ材として間に挟み、且つ、表示電極対112とデータ電極Datとが略直交する方向になる状態に配され、外周部で封止された構成となっており、内方に放電空間13を有する密閉容器となっている。そして、前面パネル11と背面パネル12との間は、隔壁123により仕切られた放電空間13が形成される。
本実施の形態に係るパネル部10の放電空間13には、キセノン(Xe)ガスとヘリウム(He)ガスとの2元系混合ガス(放電ガス)が封入されている。放電ガスの封入圧力は、1.50×104[Pa]〜5.00×104[Pa]の範囲で設定されている。
放電ガスは、Xeガスを主たる比率を占める主成分ガスとし、Heガスがこれに対する添加ガスとして構成されている。放電ガス中において、全圧に対するHeガスの分圧の比率(Heがスの分圧比)は、40[%]以下に設定されている。Heガスの分圧比については、2[%]以上とすることが望ましく、また30[%]以下とすることが望ましく、20[%]以下とすることがより望ましい。この理由については、後述する。
放電ガスは、Xeガスを主たる比率を占める主成分ガスとし、Heガスがこれに対する添加ガスとして構成されている。放電ガス中において、全圧に対するHeガスの分圧の比率(Heがスの分圧比)は、40[%]以下に設定されている。Heガスの分圧比については、2[%]以上とすることが望ましく、また30[%]以下とすることが望ましく、20[%]以下とすることがより望ましい。この理由については、後述する。
2.PDP装置1の構成
上記パネル部10を備えるPDP装置1の全体構成について、図2を用いて説明する。図2は、PDP装置1の全体構成を模式的に示したブロック図である。なお、図2では、パネル部10の構成の内、電極Scn、Sus、Datの配列のみを模式的に示している。
上記パネル部10を備えるPDP装置1の全体構成について、図2を用いて説明する。図2は、PDP装置1の全体構成を模式的に示したブロック図である。なお、図2では、パネル部10の構成の内、電極Scn、Sus、Datの配列のみを模式的に示している。
図2に示すように、PDP装置1は、上記構成を有するパネル部10と、この各電極Scn、Sus、Datのそれぞれに対して所要にタイミングおよび波形で電圧パルスを印加する表示駆動部20とから構成されている。パネル部10のスキャン電極Scnおよびサスティン電極Susは、それぞれが交互に、n(本)づつ配設され、データ電極Datは、列方向にm(本)配設されている。パネル部10の放電セルは、一対の表示電極対112(Scn(k)、Sus(k))とデータ電極Dat(l)との各交差部分に形成され、パネル部10全体では、(m×n)個の放電セルを備えることになる。
表示駆動部20は、データ電極Dat、スキャン電極Scn、サスティン電極Susのそれぞれに接続されるデータドライバ21、スキャンドライバ22、サスティンドライバ23を有する。表示駆動部20には、各ドライバ21〜23に接続される、タイミング発生部24、A/D変換部25、走査数変換部26、サブフィールド変換部27およびAPL(平均ピクチャーレベル)検出部28などを有する。また、その図示を省略しているが、表示駆動部20には、電源回路も接続されている。
表示駆動部20に対して入力された映像信号VDは、A/D変換部25に入力され、また、水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vは、タイミング発生部24、A/D変換部25、走査数変換部26およびサブフィールド変換部27に対して入力される。
A/D変換部25は、上記入力された映像信号VDをデジタル信号の画像データへと変換し、変換後の画像データを走査数変換部26およびAPL検出部28へと出力する。A/D変換部25からの画像データの入力を受けたAPL検出部28は、1画面ごとの各放電セルにおける各階調値を示す画面データに基づき、当該1画面の合計の階調値を計算し、これを全放電セルで割った値を求める。そして、APL検出部28は、上記求めた値より最大階調値(例えば、256階調)に対する百分率を算出して平均ピクチャーレベル(APL値)を求め、その値をタイミング発生部24へと出力する。
A/D変換部25は、上記入力された映像信号VDをデジタル信号の画像データへと変換し、変換後の画像データを走査数変換部26およびAPL検出部28へと出力する。A/D変換部25からの画像データの入力を受けたAPL検出部28は、1画面ごとの各放電セルにおける各階調値を示す画面データに基づき、当該1画面の合計の階調値を計算し、これを全放電セルで割った値を求める。そして、APL検出部28は、上記求めた値より最大階調値(例えば、256階調)に対する百分率を算出して平均ピクチャーレベル(APL値)を求め、その値をタイミング発生部24へと出力する。
ここで、APL値は、その値が高ければ高いほど白っぽい画面となり、逆に、低ければ低いほど黒っぽい画面となる。
走査数変換部26は、A/D変換部25からの画像データを受け付け、これをパネル部10の画素数に応じた画像データへと変換して、当該値をサブフィールド変換部27へと出力する。サブフィールド変換部27は、走査数変換部26から転送されてくる画像データを、パネル部10に階調表示させるための各サブフィールドでの放電セルの点灯/非点灯を示す2値データの集合であるサブフィールドデータに変換し、備えるサブフィールドメモリ(不図示)に一旦格納する。そして、サブフィールド変換部27は、タイミング発生部24からのタイミング信号に応じてサブフィールドメモリに格納しているサブフィールドデータをデータドライバ21へと出力する。
走査数変換部26は、A/D変換部25からの画像データを受け付け、これをパネル部10の画素数に応じた画像データへと変換して、当該値をサブフィールド変換部27へと出力する。サブフィールド変換部27は、走査数変換部26から転送されてくる画像データを、パネル部10に階調表示させるための各サブフィールドでの放電セルの点灯/非点灯を示す2値データの集合であるサブフィールドデータに変換し、備えるサブフィールドメモリ(不図示)に一旦格納する。そして、サブフィールド変換部27は、タイミング発生部24からのタイミング信号に応じてサブフィールドメモリに格納しているサブフィールドデータをデータドライバ21へと出力する。
データドライバ21は、サブフィールドごとの画像データを各データ電極Dat(1)〜Dat(m)に対応する信号に変換し、各データ電極Dat(1)〜Dat(m)に対し電圧パルスを印加する。データドライバ21は、公知のドライバICなどによって構成されている。
タイミング発生部24は、入力される水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vに基づいて、タイミング信号を生成し、当該タイミング信号を各ドライバ21〜23に対して出力する。
タイミング発生部24は、入力される水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vに基づいて、タイミング信号を生成し、当該タイミング信号を各ドライバ21〜23に対して出力する。
スキャンドライバ22は、タイミング発生部24からのタイミング信号に基づいてスキャン電極Scn(1)〜Scn(n)に対し電圧パルスを印加する。スキャンドライバ22についても、上記データドライバ21と同様に、公知のドライバICなどによって構成されている。
サスティンドライバ23は、タイミング発生部24からのタイミング信号に基づいてサスティン電極Sus(1)〜Sus(n)に対し電圧パルスを印加する。このサスティンドライバ23についても、上記データドライバ21、スキャンドライバ22と同様に、公知のドライバICなどによって構成されている。
サスティンドライバ23は、タイミング発生部24からのタイミング信号に基づいてサスティン電極Sus(1)〜Sus(n)に対し電圧パルスを印加する。このサスティンドライバ23についても、上記データドライバ21、スキャンドライバ22と同様に、公知のドライバICなどによって構成されている。
3.PDP装置1の駆動
次に、上記構成を有するPDP装置1の駆動方法について、図3を用いて説明する。図3は、フィールド内時分割階調表示方式(サブフィールド法)を用いてPDP装置1の駆動を実行する方法を示す波形図である。
図3に示すように、PDP装置1の駆動においては、一例として、256階調を表現するために1TVフィールドを8サブフィールドSF1〜SF8に分割し、それぞれのサブフィールドSF1〜SF8に初期化期間T1、書き込み期間T2および維持期間T3の3つの期間を設定し、サスティン電極Sus(1)〜Sus(n)に対し電圧パルス2001を、スキャン電極Scn(1)〜Scn(n)に対し電圧パルス2002を、データ電極Dat(1)〜Dat(m)に対し電圧パルス2003を各々印加する。なお、上述のように、各電極Sus、Scn、Datの各々に対する電圧パルス2001、2002、2003の印加は、タイミング発生部24からのタイミング信号に基づいて実行される。
次に、上記構成を有するPDP装置1の駆動方法について、図3を用いて説明する。図3は、フィールド内時分割階調表示方式(サブフィールド法)を用いてPDP装置1の駆動を実行する方法を示す波形図である。
図3に示すように、PDP装置1の駆動においては、一例として、256階調を表現するために1TVフィールドを8サブフィールドSF1〜SF8に分割し、それぞれのサブフィールドSF1〜SF8に初期化期間T1、書き込み期間T2および維持期間T3の3つの期間を設定し、サスティン電極Sus(1)〜Sus(n)に対し電圧パルス2001を、スキャン電極Scn(1)〜Scn(n)に対し電圧パルス2002を、データ電極Dat(1)〜Dat(m)に対し電圧パルス2003を各々印加する。なお、上述のように、各電極Sus、Scn、Datの各々に対する電圧パルス2001、2002、2003の印加は、タイミング発生部24からのタイミング信号に基づいて実行される。
図3の下部分に示すように、各サブフィールドSFにおける初期化期間T1では、パネル部10の全ての放電セルにおいて弱放電である初期化放電を生じさせ、当該放電により先行するサブフィールドにおける放電の有無による影響の除去や、放電特性によるバラツキ等を吸収する初期化が実施される。初期化期間T1では、スキャン電極Scn(1)〜Scn(n)に対し、緩やかな電圧−時間の傾きを以って上りおよび下り方向に変化するランプ波形電圧パルスを印加し、この傾斜部分の印加の際に定常的に放電電流を流す。初期化期間T1では、スキャン電極Scn(1)〜Scn(n)への印加電圧パルスにおける上り傾斜部分と下り傾斜部分とで各々1回づつ弱放電たる初期化放電が発生する。
上記初期化期間T1に続く書き込み期間T2では、サブフィールド変換部27からのサブフィールドデータに基づいてスキャン電極Scn(1)〜Scn(n)を1ラインごとに順次スキャンして行き、当該サブフィールドで維持放電を生じさせたい放電セルに対し、スキャン電極Scnとデータ電極Datとの間で書き込み放電を生じさせ、当該放電の発生によって前面パネル11の保護層114表面に壁電荷を蓄積する。
図3に示すように、維持期間T3では、パネル部10の全てのサスティン電極Sus(1)〜Sus(n)とスキャン電極Scn(1)〜Scn(n)に対し、極性が交互に変わるように維持パルスが印加される。維持期間T3において、サスティン電極Sus(1)〜Sus(n)に印加される電圧パルスの波形とスキャン電極Scn(1)〜Scn(n)に印加される電圧パルスの波形とは、同一周期(例えば、λ=6μsec.)であり、互いに半周期ずらした状態になっている。なお、各維持パルスの高さ、即ち、電圧値は、例えば、180(V)に設定されている。
維持期間T3においては、上記全てのサスティン電極Sus(1)〜Sus(n)およびスキャン電極Scn(1)〜Scn(n)への維持パルスの印加により、直前の書き込み期間T2で壁電荷の蓄積がなされた放電セルで維持放電が発生する。維持放電は、サスティン電極Susとスキャン電極Scnとの極性が反転するごとに発生する。そして、サブフィールドSFごとにおける維持放電の発生回数は、そのサブフィールドに割り当てられた輝度重みに基づき設定される。
上述のように、維持期間T3において維持放電が発生した放電セルでは、放電空間13に充填された放電ガス中の励起Xe原子から波長147[nm]の共鳴線が放射され、励起Xe分子から波長173[nm]の分子線が放射される。そして、これら励起Xe原子および励起Xe分子から放射された共鳴線および分子線が背面パネル12における各放電セルの蛍光体層124で可視光に変換されて、前面パネル11側より出射される。
このようにして、PDP装置1では、入力映像信号VD等に基づく画像表示がなされる。
4.PDP装置1が有する優位性
本実施の形態に係るパネル部10は、放電空間13に2元系混合ガス(Xe/He)が充填されている。即ち、パネル部10に充填される放電ガスは、従来のPDPで用いられる放電ガスのように、その構成成分としてNeガスを含むものではなく、Xeガスに対する添加ガス成分としてHeガスを有する。このため、パネル部10の放電ガス中には、前面パネル11の保護層114の構成要素であるMgと質量数が近いガス成分は存在せず、主成分ガスであるXeガスの分圧比を高く設定しても、放電時のスパッタリングによる保護層114の削れという問題を生じにくい。
4.PDP装置1が有する優位性
本実施の形態に係るパネル部10は、放電空間13に2元系混合ガス(Xe/He)が充填されている。即ち、パネル部10に充填される放電ガスは、従来のPDPで用いられる放電ガスのように、その構成成分としてNeガスを含むものではなく、Xeガスに対する添加ガス成分としてHeガスを有する。このため、パネル部10の放電ガス中には、前面パネル11の保護層114の構成要素であるMgと質量数が近いガス成分は存在せず、主成分ガスであるXeガスの分圧比を高く設定しても、放電時のスパッタリングによる保護層114の削れという問題を生じにくい。
なお、上述のように、Mgの質量数に近いNeが放電ガス中に含有されていないことが望ましいのであるが、パネルの製造過程において放電空間13中に不純物レベル(例えば、0.01[%]〜0.50[%]程度)のNeを含んでいる場合にも、上述の効果が揺らぐことはない。
パネル部10における保護層114は、誘電体層113の表面の保護という目的の他に、駆動時における2次電子放出による駆動電圧の低減や書き込み期間T2から維持期間T3に至るまでの間などでの壁電荷の保持といった重要な役割を果たす部位である。よって、Xeガスの分圧比を高く設定して輝度の向上を図った場合にも、駆動時における保護層114の削れが発生しにくいPDP装置1は、高い放電効率を維持しながら、長寿命で高い信頼性を有する。
パネル部10における保護層114は、誘電体層113の表面の保護という目的の他に、駆動時における2次電子放出による駆動電圧の低減や書き込み期間T2から維持期間T3に至るまでの間などでの壁電荷の保持といった重要な役割を果たす部位である。よって、Xeガスの分圧比を高く設定して輝度の向上を図った場合にも、駆動時における保護層114の削れが発生しにくいPDP装置1は、高い放電効率を維持しながら、長寿命で高い信頼性を有する。
また、PDP装置1では、上述のように、放電ガスの全圧が1.50×104[Pa]以上5.00×104[Pa]以下の範囲内で設定されているので、高い放電効率と低い放電電圧とを実現することができる。放電ガスの全圧に関しては、仮に1.50×104[Pa]よりも低く設定の場合には、放電効率の低下に加え、放電電圧の上昇を招いてしまう。他方、全圧を5.00×104[Pa]よりも高く設定の場合には、放電電圧が高くなり過ぎ、実際のPDPへの適用は困難となる。
また、PDP装置1のパネル部10においては、表示電極対112を構成するスキャン電極Scnおよびサスティン電極Susの各々を、Al合金材料から構成し、ITOなどの透明電極膜を要素として含まない構成としている。これによって、パネル部10の製造にあたっては、透明電極膜の形成に係る材料および形成プロセスなどを省略することができ、製造コストという観点から優位性を有する。なお、このように透明電極膜を省略することができるのは、本実施の形態に係るPDP装置1が非常に高い輝度を有することができるためである。
なお、本実施の形態では、表示電極対112の各電極Scn、Susを1本の金属線として構成したが、並列接続され並設された複数の金属線を用いて各電極Scn、Susを構成することとしてもよい。また、これらの電極Scn、Susの構成材料には、Al合金材料の他にも、銀(Ag)や銅(Cu)なども用いることができる。
また、PDP装置1のパネル部10においては、前面パネル11の誘電体層113がSiO2を材料として膜厚約15[μm]で形成されている。このため、PDP装置1では、より一層の放電電圧の低減が可能となっている。即ち、SiO2は、従来のPDPにおける誘電体層の形成に用いられてきた低融点ガラスなどに比べて低い誘電率を有するので、このように20[μm]以下とする薄肉化が可能である。薄い誘電体層113を形成するということは、維持期間T3などにおいて表示電極対112にかかる電圧を効率的に放電空間13に対し印加することが可能となり、放電電圧の低減を図ることが可能となる。
また、PDP装置1のパネル部10においては、前面パネル11の誘電体層113がSiO2を材料として膜厚約15[μm]で形成されている。このため、PDP装置1では、より一層の放電電圧の低減が可能となっている。即ち、SiO2は、従来のPDPにおける誘電体層の形成に用いられてきた低融点ガラスなどに比べて低い誘電率を有するので、このように20[μm]以下とする薄肉化が可能である。薄い誘電体層113を形成するということは、維持期間T3などにおいて表示電極対112にかかる電圧を効率的に放電空間13に対し印加することが可能となり、放電電圧の低減を図ることが可能となる。
以上のように、本実施の形態に係るPDP装置1では、高い放電効率を達成しながら、維持放電時のスパッタリングによる保護層の削れの発生を抑え、長寿命で高い信頼性を有する。
なお、本実施の形態に係るPDP装置1のパネル部10では、AlまたはSiを添加物(不純物レベル)として含み、屈折率が1.6のMgOから保護層114を構成することとしているが、保護層114についての検討の結果、その屈折率が高いほど、維持放電時における保護層114の削れ量を少なくすることができることが解明した。よって、PDP装置1のパネル部10において、屈折率が1.6以上の保護層114を供えることで、PDP装置1全体の寿命を長くすることが可能となる。
なお、本実施の形態に係るPDP装置1のパネル部10では、AlまたはSiを添加物(不純物レベル)として含み、屈折率が1.6のMgOから保護層114を構成することとしているが、保護層114についての検討の結果、その屈折率が高いほど、維持放電時における保護層114の削れ量を少なくすることができることが解明した。よって、PDP装置1のパネル部10において、屈折率が1.6以上の保護層114を供えることで、PDP装置1全体の寿命を長くすることが可能となる。
また、保護層114の面上にMgO結晶を部分的に配すれば、維持放電時の保護層114の削れ量をより抑制することができ、保護層114の寿命、即ち、PDP装置1の寿命を長くする上でより望ましい。ここで、保護層114の面上に配するMgO結晶については、その粒径を0.5[μm]〜1.0[μm]とすることが望ましい。これは、MgO結晶の粒径が小さすぎる場合には、スパッタリングを抑制する効果が小さく、寿命の確保という観点から望ましくなく、逆に粒径が大きすぎる場合には、特性のバラツキが大きくなってしまい、望ましくないという理由によるものである。
5.放電ガスの各成分の比率
以下では、放電ガスにおける成分比率を規定するにあたり確認した実験について説明する。以下で説明する確認実験には、上記PDP装置1と同一構成の装置を用いた。
5−1.放電効率のHeガス添加比率依存性
先ず、PDP装置における放電ガス中のHeガス添加比率(分圧比)と放電効率との関係について確認をした。本確認実験では、放電ガスに関する実験条件を次のように設定した。
以下では、放電ガスにおける成分比率を規定するにあたり確認した実験について説明する。以下で説明する確認実験には、上記PDP装置1と同一構成の装置を用いた。
5−1.放電効率のHeガス添加比率依存性
先ず、PDP装置における放電ガス中のHeガス添加比率(分圧比)と放電効率との関係について確認をした。本確認実験では、放電ガスに関する実験条件を次のように設定した。
・放電ガス;Xe/Heの2元系混合ガス
・Xeガスの分圧;2.4×104[Pa]で一定
・Heガスの添加比率;放電ガスの全圧に対する分圧比を、0[%]〜60[%]まで変化
なお、比較例として、放電ガスにXe/Neの2元系混合ガスを用い、上記同様にXeガスの分圧を2.4×104[Pa]とした。
・Xeガスの分圧;2.4×104[Pa]で一定
・Heガスの添加比率;放電ガスの全圧に対する分圧比を、0[%]〜60[%]まで変化
なお、比較例として、放電ガスにXe/Neの2元系混合ガスを用い、上記同様にXeガスの分圧を2.4×104[Pa]とした。
そして、上記各サンプルについての放電効率を測定し、従来のPDP装置(放電ガスが、Xe/Neの2元系混合ガスであり、Xeガス分圧比が15[%]で、Neガス分圧比が85[%]、全圧が5.00×104[Pa])を基準(1.0)とする相対値を算出し、図4に示す。
図4に示すように、放電ガスとしてXe/Heの2元系混合ガスを有するPDP装置では、Heガスの添加比率が0[%]から約40[%]の範囲でHeガスの添加比率の上昇に伴って放電効率が上昇し、Heガスの添加比率が約40[%]を超えると放電効率は飽和する傾向をしめす。また、比較例は、添加比率が0[%]から約40[%]の範囲ではHeガス成分を含むサンプルに対して放電効率は同等であった。これは、放電ガスの構成要素としてHeガス成分を含む場合には、Neガスと同等の効率を向上させる効果を得られるためであると考えられる。
図4に示すように、放電ガスとしてXe/Heの2元系混合ガスを有するPDP装置では、Heガスの添加比率が0[%]から約40[%]の範囲でHeガスの添加比率の上昇に伴って放電効率が上昇し、Heガスの添加比率が約40[%]を超えると放電効率は飽和する傾向をしめす。また、比較例は、添加比率が0[%]から約40[%]の範囲ではHeガス成分を含むサンプルに対して放電効率は同等であった。これは、放電ガスの構成要素としてHeガス成分を含む場合には、Neガスと同等の効率を向上させる効果を得られるためであると考えられる。
しかし、本発明者等の確認によれば、放電ガスをXe/Neの2元系混合ガスとした場合には、パネル駆動時における保護層の削れの発生が放電ガスをXe/Heの2元系混合ガスとした場合に比べ著しくなり、実用には耐えないものである。
なお、図4に示すように、放電ガスをXe/Heの2元系混合ガスとし、Heガスの添加比率を40[%]以下とする場合には、基準とした従来のPDP装置に対して、高い放電効率を有するとともに、同じ添加比率のXe/Neの2元系混合ガスとも同等の効率が得られることが分かる。
なお、図4に示すように、放電ガスをXe/Heの2元系混合ガスとし、Heガスの添加比率を40[%]以下とする場合には、基準とした従来のPDP装置に対して、高い放電効率を有するとともに、同じ添加比率のXe/Neの2元系混合ガスとも同等の効率が得られることが分かる。
5−2.放電開始電圧のHeガス添加比率依存性
次に、上記と同一のサンプルの各々について、放電の発生・維持に必要な最小電圧、即ち、放電開始電圧を測定し、その結果を図5に示す。
図5に示すように、放電開始電圧(図5では、「維持電圧」と記載する。)は、Heガスの添加比率が0[%]〜30[%]の範囲では約247[V]で安定しており、Heガスの添加比率が30[%]を超えると上昇する。例えば、Heガスの添加比率が60[%]のときには、放電開始電圧は約260[V]となり、Heガスの添加比率が30[%]以下の場合よりも約13[V]上昇する。
次に、上記と同一のサンプルの各々について、放電の発生・維持に必要な最小電圧、即ち、放電開始電圧を測定し、その結果を図5に示す。
図5に示すように、放電開始電圧(図5では、「維持電圧」と記載する。)は、Heガスの添加比率が0[%]〜30[%]の範囲では約247[V]で安定しており、Heガスの添加比率が30[%]を超えると上昇する。例えば、Heガスの添加比率が60[%]のときには、放電開始電圧は約260[V]となり、Heガスの添加比率が30[%]以下の場合よりも約13[V]上昇する。
この結果より、Heガスの添加比率が30[%]以下の範囲では、Heガスによる電圧低減の作用と放電ガスの全圧上昇による電圧上昇の作用とがバランスしているが、Heガスの添加比率が30[%]を超えると放電ガスの全圧上昇による電圧上昇の作用が大きくなると考えられる。よって、低い放電開始電圧とするためには、放電ガス中におけるHeガスの添加比率を30[%]以下とすることが望ましい。
また、図5では、比較例としてNeおよびArを添加した場合の放電開始電圧も合わせて示している。図5から明らかなように、主成分ガス(Xeガス)に対しHeガスを添加した場合の放電開始電圧は、Neガスを添加した場合と略同等である。一方、Arガスを添加した場合には、HeガスやNeがスを添加した場合と比較して、放電開始電圧が添加比率とともに大幅に上昇している。ここからHeガスを添加することは、Arガスを添加することに比べ、放電開始電圧を低くすることができるという優位性が確認できる。
5−3.スパッタリングレートのXeガス比率依存性
次に、パネル駆動時の放電による保護層114のスパッタリングレートと放電ガス中におけるXeガス比率との関係について、確認をした。確認には、次に示す条件を以ってサンプルを作成し、各サンプルでのスパッタリングレートを求めた。
・放電ガス;Xe/Heの2元系混合ガス
・放電ガス全圧;4.0×104[Pa]
・Heガス比率;放電ガスの全圧に対する分圧比を、0[%]〜25[%]まで変化
なお、比較例として、放電ガスにXe/Neの2元系混合ガスを用い、同様にNeガスの比率を0[%]〜25[%]まで変化させたサンプルを作製し、これらについてもスパッタリングレートを求めた。
次に、パネル駆動時の放電による保護層114のスパッタリングレートと放電ガス中におけるXeガス比率との関係について、確認をした。確認には、次に示す条件を以ってサンプルを作成し、各サンプルでのスパッタリングレートを求めた。
・放電ガス;Xe/Heの2元系混合ガス
・放電ガス全圧;4.0×104[Pa]
・Heガス比率;放電ガスの全圧に対する分圧比を、0[%]〜25[%]まで変化
なお、比較例として、放電ガスにXe/Neの2元系混合ガスを用い、同様にNeガスの比率を0[%]〜25[%]まで変化させたサンプルを作製し、これらについてもスパッタリングレートを求めた。
なお、スパッタリングレートの算出は、各イオンにおけるスパッタリング確率と、イオン密度およびイオンエネルギ分布とを考慮して行った。
図6に示すように、Xe/Neの放電ガスを充填した比較例に係るサンプルでは、Neガスの比率の上昇に伴ってスパッタリングレートが上昇することが分かる。例えば、Neガス比率が5[%]のときのスパッタリングレートは、”0.3”程度であるが、Neガス比率が15[%]のときのスパッタリングレートは、”0.83”となる。なお、図6では、Neガス比率が25[%]のときのスパッタリングレートを”1”として規格化した相対値として示している。
図6に示すように、Xe/Neの放電ガスを充填した比較例に係るサンプルでは、Neガスの比率の上昇に伴ってスパッタリングレートが上昇することが分かる。例えば、Neガス比率が5[%]のときのスパッタリングレートは、”0.3”程度であるが、Neガス比率が15[%]のときのスパッタリングレートは、”0.83”となる。なお、図6では、Neガス比率が25[%]のときのスパッタリングレートを”1”として規格化した相対値として示している。
図6に示すように、放電ガスにXe/Heの2元系混合ガスを用いる場合には、Heガス比率の上昇に伴ってスパッタリングレートが上昇する。ただし、Xe/Heの混合ガスを用いる場合には、スパッタリングレートの上昇度合いが、Xe/Neの混合ガスを用いる比較例の場合に比べて緩やかであり、Heガス比率が25[%]のときにスパッタリングレートが”0.58”となり、最高値をとる。現行のPDP装置の駆動方法を用いた場合、放電ガスにXe/Neの2元系混合ガスを用いる場合において、十分な製品寿命を確保するためには、Neガス比率を8[%]以下にすればよいことが検討の結果わかっている。同様に放電ガスとしてXe/Heの2元系混合ガスを採用する場合には、Heガス添加比率を20[%]以下とすれば、従来のPDP装置に対し同等かあるいはそれ以下のスパッタリングレートを確保することが可能であることが確認できた(図6を参照)。
以上の結果より、放電ガスに従来のXe/Neの2元系混合ガスを用いるのではなく、Neガスを含まず、Xe/Heの2元系混合ガスを用いることで、Heガス比率を高く設定する場合にも、低いスパッタリングレートを確保することができる。
5−4.考察
図4〜図6に示す確認実験の結果より、放電ガスとしてXe/Heの2元系混合ガスを用いる場合には、Heガスの添加比率を40[%]以下とすれば高い放電効率を得ながら低いスパッタリングレートを確保することができ、Heガスの添加比率を30[%]以下とすれば、維持電圧を低く抑えたまま、高い放電効率を得ることが可能である。さらに、Heガスの添加比率を20[%]以下とすれば、十分な保護膜の寿命を有するPDP装置を実現することができる。
5−4.考察
図4〜図6に示す確認実験の結果より、放電ガスとしてXe/Heの2元系混合ガスを用いる場合には、Heガスの添加比率を40[%]以下とすれば高い放電効率を得ながら低いスパッタリングレートを確保することができ、Heガスの添加比率を30[%]以下とすれば、維持電圧を低く抑えたまま、高い放電効率を得ることが可能である。さらに、Heガスの添加比率を20[%]以下とすれば、十分な保護膜の寿命を有するPDP装置を実現することができる。
なお、上述のように、放電ガスをXe/Heの2元系混合ガスとし、その構成要素からNeガスを除いたことにより、パネル駆動時のおける放電での保護層114の削れの発生を低減できるのは次のような理由によるものであると考えられる。
即ち、保護層114には、上述のように、誘電体層113の保護および2次電子放出係数γの確保という観点からMgOが用いられるが、従来のPDP装置では、この保護層114の構成要素であるMg原子やO原子と質量数が近いNeガスが放電ガス中に含まれていたため、パネル駆動によってNe原子が保護層に衝突することで、そのエネルギが共鳴的にMgおよびOに与えられる。そして、これにより従来のPDP装置では、高い確率で保護層がスパッタリングされていた。
即ち、保護層114には、上述のように、誘電体層113の保護および2次電子放出係数γの確保という観点からMgOが用いられるが、従来のPDP装置では、この保護層114の構成要素であるMg原子やO原子と質量数が近いNeガスが放電ガス中に含まれていたため、パネル駆動によってNe原子が保護層に衝突することで、そのエネルギが共鳴的にMgおよびOに与えられる。そして、これにより従来のPDP装置では、高い確率で保護層がスパッタリングされていた。
これに対して、本実施の形態に係るPDP装置では、放電ガスをXe/Heの2元系混合ガスとして、構成中にNeを含まないので、上記スパッタリング確率の低減が図られる。その結果、本実施の形態に係るPDP装置1では、パネル駆動時において、放電によるスパッタリングでの保護層114の削れの発生は抑えられる。
ここで、本実施の形態においては、放電ガスのXe/Heの2元系混合ガスを用いたが、この他に、Kr/Heの2元系混合ガスでも上記同様の効果を得ることができる。例えば、放電ガスをKr/Heの2元系混合ガスとして、Heガス比率が20[%]の場合には、図6におけるスパッタリングレートは”0.5”であり、放電ガスがXe/He(全圧に対するHeガスの分圧比20[%])の場合と同等であった。
ここで、本実施の形態においては、放電ガスのXe/Heの2元系混合ガスを用いたが、この他に、Kr/Heの2元系混合ガスでも上記同様の効果を得ることができる。例えば、放電ガスをKr/Heの2元系混合ガスとして、Heガス比率が20[%]の場合には、図6におけるスパッタリングレートは”0.5”であり、放電ガスがXe/He(全圧に対するHeガスの分圧比20[%])の場合と同等であった。
また、水素(H2)等のガスを数[%]添加することとしても、上記同様の効果を得ることができる点にかわりはない。
さらに、放電ガスの全圧を1.50×104[Pa]〜5.00×104[Pa]の範囲であれば図4〜図6を用いて確認したのと同様の効果を得ることができる。さらには、放電ガスの全圧を2.20×104[Pa]〜4.00×104[Pa]の範囲とすれば、高い放電効率を実用的な放電開始電圧で実現することが可能であるため、望ましい。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係るPDP装置について説明する。本実施の形態に係るPDP装置が上記実施の形態1に係るPDP装置1と相違する点は、放電ガスの構成、放電ガスの圧力、前面パネルにおける誘電体層の材質、膜厚、および表示電極対の各電極の構成材料である。その他の部分については、上記実施の形態1と変わるところがないので、その説明を省略する。
さらに、放電ガスの全圧を1.50×104[Pa]〜5.00×104[Pa]の範囲であれば図4〜図6を用いて確認したのと同様の効果を得ることができる。さらには、放電ガスの全圧を2.20×104[Pa]〜4.00×104[Pa]の範囲とすれば、高い放電効率を実用的な放電開始電圧で実現することが可能であるため、望ましい。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係るPDP装置について説明する。本実施の形態に係るPDP装置が上記実施の形態1に係るPDP装置1と相違する点は、放電ガスの構成、放電ガスの圧力、前面パネルにおける誘電体層の材質、膜厚、および表示電極対の各電極の構成材料である。その他の部分については、上記実施の形態1と変わるところがないので、その説明を省略する。
本実施の形態に係るPDP装置では、パネル部における放電空間に対し、Xe/Heの2元系混合ガスが充填されている。この内、Xeガスは、PDP装置の駆動時において、プラズマ放電により蛍光体層を構成する蛍光体を励起する光(真空紫外線)を出射する要素として含まれ、分圧が3×104[Pa]に設定されている。放電ガスを構成するもう一つの要素であるHeガスは、全圧に対して0[%]〜25[%]の範囲で添加した。
また、パネル部における誘電体層は、非鉛の低融点ガラス材料を用い、膜厚約20[μm]に形成されている。表示電極対を構成するスキャン電極およびサスティン電極の各々は、全て銀(Ag)から形成され、上記実施の形態1と同様にITOなどの透明電極膜を有しない構成となっている。
本実施の形態においては、PDP装置のエージング時間に着目した。PDP装置におけるエージング時間とは、PDPパネルの完成後、放電特性が安定化するまでにかかるエージング放電の実施時間のことであり、長時間のエージング放電の後にPDP装置に組み立てられる。エージングはPDP装置の製造工程の一部であり、エージング時間の長短は製造リードタイムに大きな影響を与える要素である。このためエージング時間の短縮は製造コストを低減する有効な方法である。
本実施の形態においては、PDP装置のエージング時間に着目した。PDP装置におけるエージング時間とは、PDPパネルの完成後、放電特性が安定化するまでにかかるエージング放電の実施時間のことであり、長時間のエージング放電の後にPDP装置に組み立てられる。エージングはPDP装置の製造工程の一部であり、エージング時間の長短は製造リードタイムに大きな影響を与える要素である。このためエージング時間の短縮は製造コストを低減する有効な方法である。
図7には、本発明のPDP装置におけるエージング時間を示している。図中には、添加ガスをHeガスとする場合とともに、NeガスおよびArガスを添加する場合の結果も併せて示している。図7より、添加ガス比率を増加させるにつれ、エージング時間が短縮されていることがわかる。一般的にPDP装置におけるエージング時間は10[時間]程度であるため、放電ガスの全圧に対し2[%]以上の分圧比を以ってHeガスを添加することにより、従来よりもエージング時間が短縮できることがわかる。逆にHeガスの添加量が極端に少ない場合には、長時間のエージングが必要であることもわかった。
また、添加ガスの種類に着目すると、同じ添加ガス比率であれば、添加ガスがHeガスの場合に比べ、添加ガスをNeガスとした場合にはエージング時間が短く、Arガスとした場合にはエージング時間が長くかかることがわかった。ただし、添加ガスがNeガスの場合には、MgOからなる保護層のスパッタリングレートが早いため、保護層寿命が短くなるという問題点があることは前述の通りである。
また、図示を省略するが、本実施の形態に係るPDP装置についても、上記実施の形態1と同様に、放電特性についての確認を実施した。この確認結果によると、本実施の形態に係るPDP装置は、実施の形態1において図4に示した傾向と同じく、Heガスの添加量の増加に伴い放電効率が向上する結果が得られている。また、維持電圧についてもHeガス添加(添加ガス比率0〜25[%])によって大きな変化は確認されなかった。この点についても、上記実施の形態1と同様である。
したがって放電ガスにおいて、全圧に対するHeガスの分圧比の望ましい範囲としては、エージング時間を短縮する上で2[%]以上であることが望ましく、前記実施の形態1と同様に、40[%]以下であることが望ましく、30[%]以下とすることがより望ましく、20[%]以下とすることがさらに望ましい。
以上のように、本実施の形態に係るPDP装置においても、放電ガスの構成要素としてNeガスを含まず、Heを放電ガスに含むようにすることで、高い放電効率を達成しながら、維持放電時のスパッタリングによる保護層の削れの発生を抑え、長寿命で高い信頼性を有する。
以上のように、本実施の形態に係るPDP装置においても、放電ガスの構成要素としてNeガスを含まず、Heを放電ガスに含むようにすることで、高い放電効率を達成しながら、維持放電時のスパッタリングによる保護層の削れの発生を抑え、長寿命で高い信頼性を有する。
なお、本実施の形態に係るPDP装置に対しても、上記実施の形態1と同様の種々のバリエーションを採用することが可能である。本実施の形態においては、放電ガスのXe/Heの2元系混合ガスを用いたが、この他に、Kr/Heの2元系混合ガスでも上記同様の効果を得ることができる。例えば、放電ガスをKr/Heの2元系混合ガスにおけるエージング時間は、添加ガス比率が同じであれば、図7に示したXe/Heにおけるエージング時間と同等であった。
また、本実施の形態に係る誘電体層および表示電極対の構成についても、これを採用できる理由およびこれより奏される効果などについては、上記実施の形態1と同様である。
(その他の事項)
上記実施の形態1〜2では、本発明に係るPDPおよびPDP装置の構成およびそこから得られる効果を説明するために一例として示したものであって、本発明は、上記特徴とする部分以外の点について、何らこれに限定を受けるものではない。例えば、上記実施の形態では、放電ガスとしてXe/Heの2元系混合ガスを用いることとしたが、これらの組み合わせに対して、微量(例えば、数[%])のH2ガスを添加することとしてもよい。そして、Neガスを構成要素として含まないことを前提に、他の成分を微量添加することも可能である。
(その他の事項)
上記実施の形態1〜2では、本発明に係るPDPおよびPDP装置の構成およびそこから得られる効果を説明するために一例として示したものであって、本発明は、上記特徴とする部分以外の点について、何らこれに限定を受けるものではない。例えば、上記実施の形態では、放電ガスとしてXe/Heの2元系混合ガスを用いることとしたが、これらの組み合わせに対して、微量(例えば、数[%])のH2ガスを添加することとしてもよい。そして、Neガスを構成要素として含まないことを前提に、他の成分を微量添加することも可能である。
さらに、本発明が意図するところは、放電ガスの成分としてNeガスを含まないということであり、パネル部の製造過程等において放電空間中に残留するNeガスまでも排除しなければならないものではない。即ち、不純物レベル(例えば、0.01〜0.5[%])程度であれば放電ガス中にNeガスを含有していたとしても、実用上の問題を生じることはない。
また、上記実施の形態では、PDP装置のパネル部の形態の一例として、2枚のパネルを対向配置し、間に放電空間を形成するタイプのものを採用したが、本発明の本質的な部分は、放電ガスの組成であることから、このようなパネル部の形態については、種々のバリエーションを採ることができる。たとえば、SID’04−Session18.4:”Flexible AC Plasma Displays Using Plasma−spheres”(SID-Symposium Digest of Technical Paper,May2004,Volume35,Issue1,pp.815-817,Carol A. Wedding et al,University of Toledo,OH)で紹介されている複数の球状セルの集合体を以って構成された表示装置や、あるいは、特開2000−315460号公報に開示されている複数の柱状体を集合させて構成された表示装置に対しても適用することが可能である。
また、上記では、放電ガスの第1ガス成分(主成分ガス)として、XeガスまたはKrガスを採用することとしたが、これらの成分については背面パネルにおける蛍光体層を構成する蛍光体により適宜の変更が可能である。即ち、蛍光体の励起光波長によって主成分ガスを規定すればよい。
また、上記実施の形態1〜2においては、放電開始電圧の低減のため、その膜厚を20[μm]以下としているが、それ以上の膜厚とすることも可能であり、その場合にも、従来のPDP装置に対し放電ガスの組成を変更した分だけの効果を得ることはできる。また、誘電体層を形成するための材料についても、上記実施の形態1〜2で採用したSiO2や非鉛の低融点ガラス材料以外の材料を採用することも可能である。
また、上記実施の形態1〜2においては、放電開始電圧の低減のため、その膜厚を20[μm]以下としているが、それ以上の膜厚とすることも可能であり、その場合にも、従来のPDP装置に対し放電ガスの組成を変更した分だけの効果を得ることはできる。また、誘電体層を形成するための材料についても、上記実施の形態1〜2で採用したSiO2や非鉛の低融点ガラス材料以外の材料を採用することも可能である。
また、上記実施の形態においては、表示電極対を構成する各電極を、AgやAl−Ndなどの金属材料から形成することとしたが、これ以外にもCu−Cr−Cuの積層構造体や、その他の金属材料を用いることも可能であり、勿論、従来のPDP装置で採用されているような透明電極膜とバスラインとの積層構造を採用することも可能である。
本発明は、高い放電効率を維持しながら、駆動の長短にかかわりなく安定して高い表示品質を維持することができ、大型で高精細なテレビジョンあるいは大型表示装置などに適用することができる。
1.PDP装置
10.パネル部
11.前面パネル
12.背面パネル
13.放電空間
20.表示駆動部
21.データドライバ
22.スキャンドライバ
23.サスティンドライバ
24.タイミング発生部
25.A/D変換部
26.走査数変換部
27.サブフィールド変換部
111、121.基板
112.表示電極対
113、122.誘電体層
114.保護層
123.隔壁
124.蛍光体層
Scn.スキャン電極
Sus.サスティン電極
Dat.データ電極
10.パネル部
11.前面パネル
12.背面パネル
13.放電空間
20.表示駆動部
21.データドライバ
22.スキャンドライバ
23.サスティンドライバ
24.タイミング発生部
25.A/D変換部
26.走査数変換部
27.サブフィールド変換部
111、121.基板
112.表示電極対
113、122.誘電体層
114.保護層
123.隔壁
124.蛍光体層
Scn.スキャン電極
Sus.サスティン電極
Dat.データ電極
Claims (10)
- 内方の空間に放電ガスが充填されてなる密閉容器を有し、当該密閉容器において、保護層と蛍光体層とが互いに前記空間を臨む状態で形成されてなるプラズマディスプレイパネルであって、
前記放電ガスは、
前記空間に対し1.50×104Pa以上5.00×104Pa以下の全圧を以って充填されているとともに、
前記放電ガス中において主たる比率を占め、プラズマ放電により前記蛍光体層の蛍光体を励起する光を出射する主成分ガスと、ヘリウムガスとが含まれ、且つ、ネオンガスが含まれていない構成を有するプラズマディスプレイパネル。 - 前記放電ガスには、前記主成分ガスとしてキセノンガスまたはクリプトンガスが含まれている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記ヘリウムガスは、前記放電ガスの全圧に対し40%以下の分圧比を以って含まれている請求項1または2のプラズマディスプレイパネル。
- 前記ヘリウムガスは、前記放電ガスの全圧に対し30%以下の分圧比を以って含まれている請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記ヘリウムガスは、前記放電ガスの全圧に対し2%以上の分圧比を以って含まれている請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記保護層が形成されてなる領域では、前記放電ガスが充填されてなる空間から前記密閉容器の厚み方向外方の領域に誘電体層が形成されており、
前記誘電体層は、20μm以下の膜厚を有する請求項1から5の何れかに記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記誘電体層よりも前記密閉容器の厚み方向外方の領域には、電極対が形成されており、
前記電極対は、各々が金属材料からなり、酸化膜を有しない構成となっている請求項5に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記保護層は、アルミニウムまたはシリコンを添加物として含み、屈折率が1.6以上の酸化マグネシウムからなる請求項1から7の何れかに記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記保護層の面上の少なくとも一部には、0.5μm以上1.0μm以下の粒径を有する酸化マグネシウム結晶が配されている請求項1から8の何れかに記載のプラズマディスプレイパネル。
- 請求項1から9の何れかのプラズマディスプレイパネルを表示パネル部として備えるプラズマディスプレイパネル装置。
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JP2006114053A JP2007287498A (ja) | 2006-04-18 | 2006-04-18 | プラズマディスプレイパネルおよびプラズマディスプレイパネル装置 |
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2006
- 2006-04-18 JP JP2006114053A patent/JP2007287498A/ja active Pending
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