IMT−2000に代表される移動通信分野においては、近年、サービスの多様化に対応するために、インターネットの発展によって構築されたIP(Internet Protocol)通信技術を基盤とし、IPを効率的に伝送するためのIPコアネットワーク、及びIPマルチメディアコアネットワーク制御サブシステム(IMS)を配した通信制御を行なっている。IPコアネットワークは、特に通信端末の認証や移動管理、伝送経路設定、帯域設定などの基本制御を行ない、IMSは、リアルタイム系マルチメディアの伝送をさらに効率よく制御するためのサブシステムとして前記IPコアネットワークに付加され、前記IPコアネットワークを制御することを目的に配される(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−320702号公報
図11に、前記説明した従来の移動通信ネットワーク20の構成の一形態を示す。図11に示す移動通信ネットワーク20は、IPマルチメディアコアネットワーク制御サブシステム(IMS)22と、IPコアネットワーク24と、IPトランスポートネットワーク26の3つのネットワーク(サブシステム)から構成されている。また、移動通信ネットワーク20は、アプリケーション10及び一又は複数の無線アクセスネットワーク30とに接続されている。
また、無線アクセスネットワーク30には、それぞれ複数のアクセスポイント(AP)310が接続されており、AP310を介して通信端末40が接続される。図11においては、無線アクセスネットワーク30として、第1無線アクセスネットワーク30Aと、第2無線アクセスネットワーク30Bとが配置されており、第1無線アクセスネットワーク30Aには、AP310Aと、AP310Bとが接続されている。また、第2無線アクセスネットワーク30Bには、AP301Cと、AP310Dとが接続されている。さらに、通信端末40として、第1通信端末40Aと、第2通信端末40Bとが接続されている。
ここで、IPマルチメディアコアネットワーク制御サブシステム(IMS22)は、テレビ電話や双方向グループ通信等のリアルタイム系マルチメディアサービスを行なう際に起動されるサブシステムであり、ストリーミング配信やメール、WEB閲覧のようなその他のサービスタイプには基本的に用いられないものである。
また、IMS22には、第1通信端末40Aと第2通信端末40B若しくはアプリケーションサーバとが通信する場合、例えば第1通信端末40Aからサービス起動要求を受け、第2通信端末40B若しくはアプリケーションサーバとの通信セッションの確立、維持、変更、終了を制御するセッション制御装置220と、セッションを実行するのに必要なQoSを設定するQoS制御装置222と、通信端末を所有するユーザー(加入者)を識別し、認証する加入者情報管理装置224とが配置されている。
セッション制御装置220は、インターネット分野においてIPによるエンド・エンドのリアルタイムセッションを確立する際に用いられるSIP(Session Initiation Protocol)を処理するSIPサーバであり、それを移動通信ネットワークのために適応、発展させたCSCF(Call Session Control Function)に相当する。
QoS制御装置222は、前記サービス起動要求に含まれる要求アプリケーション形態、例えば音声などの帯域保障型アプリケーション、PoC(Push−to−Talk over Cellular)やゲームなどの双方向グループ通信型アプリケーション、ストリーミング配信などの帯域可変型アプリケーションごとに、それぞれ最適なQoS(Quority of Service)の要求値のポリシーを持ち、伝送経路上の帯域設定をIPトランスポートネットワーク26や無線アクセスネットワーク30へ要求する装置である。
加入者情報管理装置224は、前記セッション制御装置220を用いたリアルタイム系マルチメディアサービスを提供する際に、通信端末40が保持する加入者識別子を基に加入者を認証する装置である。移動通信ネットワーク20が提供するサービスに加入し、該移動通信ネットワーク20にアクセス可能な通信端末を所有するユーザー(加入者)の識別情報、属性に関する情報を管理する点においては、機能的には後述する加入者管理サーバ242と同等であり、加入者情報を加入者管理サーバ242と共有する。また、前記セッション制御装置220を用いたリアルタイム系マルチメディアサービスを起動する時には、セッション制御装置220のアドレスと通信端末のアドレスを対応付けて管理するので、通信端末40がユーザ登録しているセッション制御装置220を起動する。
IPコアネットワーク24には、モビリティ管理装置240と、加入者管理サーバ242とが配置されている。加入者管理サーバ242は、通信端末40がユーザにより起動され、利用可能となった時に、在圏する無線アクセスネットワーク30経由で送信するアタッチ要求の制御信号を受け、その信号に含まれる加入者固有の識別子(非公開識別子)を前記加入者情報と照合し、加入者を識別、認証する。
ここで、加入者管理サーバ242が前記加入者情報管理装置224とは別にIPコアネットワーク24に配置される理由は、もともとIMS22を付加する以前の移動通信ネットワーク20において、加入者を認証、管理する機能として加入者管理サーバ242が設けられていたためである。IPによるリアルタイム系マルチメディアの発展に伴い、加入者管理サーバ242と同等の機能をIMS22にも配する必要が生じてきたため、IMS22サービス、いわゆるセッション制御装置220を用いたリアルタイム系マルチメディアサービスには、IMS22の加入者情報管理装置224が用いられ、それ以外のサービスには、加入者管理サーバ242が用いられる。加入者の認証情報は、基本的に加入者管理サーバ242と前記加入者情報管理装置224の間で共有される。
モビリティ管理装置240は、ルーティングエリア(無線アクセスネットワーク30制御下のアクセスポイント(AP)が管轄する地理的な範囲)に在圏する通信端末40を、前記AP310のアドレスと対応付けて管理する。具体的には、通信端末40が起動し前記AP310を介して位置登録とアタッチ処理が行なわれた時をはじめ、通信端末が在圏するルーティングエリアを変更した時(移動した時等)に、モビリティ管理装置240は通信端末から発せられる位置登録の制御信号を受信して、それに含まれる通信端末の識別子と、AP310のアドレスを関連付けて管理する。
これにより、例えば第1通信端末40A宛に第2通信端末40Bからサービス起動要求があった場合には、モビリティ管理装置240が第1通信端末40Aの在圏位置のAP(例えば、図11においてはAP310A)を特定できるので、該AP310Aを介して第1通信端末40Aに発呼が可能となる。通信開始時には、通信端末が在圏する無線アクセスネットワーク30が従属するアクセスルーター(AR)が、通信端末固有の識別子とは別に、伝送経路設定用のIPアドレスを割り当て、そのIPアドレスをARのアドレスと関連付けてモビリティ管理装置240に通知するので、モビリティ管理装置240はサービス起動要求側、及び相手側双方の通信端末のIPアドレス、ARアドレスを管理することができ、それにより通信端末間の伝送経路を設定することが可能となる。
サービス実行中に、例えば第1通信端末40Aが移動して従属するARが変更される場合には、変更先のARが第1通信端末40Aに新規にIPアドレスを割り当て、モビリティ管理装置240にそれを通知し、モビリティ管理装置240は前記伝送経路を変更するので、IPパケットを移動先のARに転送可能となる(ハンドオーバ処理)。
IPトランスポートネットワーク26には、アクセスルータとしてAR260が複数配置されており、図11においては、第1AR260Aと、第2AR260Bとが配置されている。AR260は、通信端末40と各制御装置間の制御信号やデータの転送を行うルータであり、無線アクセスネットワーク30に対応して配される。例えば、図11において第1無線アクセスネットワーク30Aに対応するアクセスルータとして第1AR260Aが配置されており、第2アクセスネットワーク30Bに対応するアクセスルータとして第2AR260Bが配置されている。
また、前述したように、通信開始時にAR260は通信端末40に伝送経路設定用のIPアドレスを割り当て、前記モビリティ管理装置240に通知すると共に、前記QoS制御装置222からのリソース設定指示に含まれるQoS要求値に基づき、伝送容量(帯域)を確保してデータ転送を実行する。
無線アクセスネットワーク30は、無線アクセス種別(例えばIMT−2000方式であるWCDMAやcdma2000、さらには次世代の移動通信の無線方式や、既存の無線LANなどの無線方式)毎に構成され、配置される。図11においては、無線アクセスネットワークとして、第1無線アクセスネットワーク30Aと、第2無線アクセスネットワーク30Bとが接続されている。また、各無線アクセスネットワーク内には、無線リソースの状況(利用帯域幅、空き帯域幅、伝播路状況等)を管理し、無線区間を通じて通信端末との間に必要な帯域での無線伝送路を確保する無線リソース制御装置302が配置されている。
無線リソース制御装置302は、サービス起動時にQoS制御装置222からの指示に応じて、必要な帯域での無線伝送路を設定すべく、帯域を割り当てる。図11においては、第1無線アクセスネットワーク30Aに、第1無線リソース制御装置302Aが配置され、第2無線アクセスネットワーク30Bに、第2無線リソース制御装置302Bが配置されている。
AP310は、無線伝送路を通じて通信端末40とのインターフェース点となる。通信端末は、APを介して無線アクセスネットワークに接続されることとなる。図11では、第1無線アクセスネットワーク30AにAP310Aと、AP310Bとが、第2無線アクセスネットワーク30BにAP310Cと、AP310Dとが配置されている。この、AP310がカバーするエリアがルーティングエリアであり、ルーティングエリアのカバー率を広めるため、AP310は地理的に分散して配置される。また、無線アクセス種別によって対応するAP310、及び無線アクセスネットワーク30は異なるため、地理的に同一の場所に異種のAP310及び無線アクセスネットワーク30が複数重複して配置されても良い。
第1通信端末40A及び第2通信端末40Bは、少なくともひとつの無線アクセス手段を備え、加入者識別子を有し、アプリケーションの処理実行手段を有する通信端末である。通信端末の種別によっては、複数の無線アクセス手段に対応するため、複数の無線アクセスインターフェースを有する場合がある。図11では、通信端末40として、通信端末40Aと、通信端末40Bとが配置されている。そして、通信端末40Aは、例えばAP310Aを介することにより、無線アクセスネットワーク30Aに接続される。
アプリケーション10には、複数のアプリケーションサーバ100が配置されており、図11においては、第1アプリケーションサーバ100Aと、第2アプリケーションサーバ100Bとが配置されている。アプリケーションサーバ100は、各通信端末40からのサービス起動要求によって要求されるアプリケーション種別に従って、アプリケーションを実行するサーバである。なお、アプリケーションサーバ100とは、第1アプリケーションサーバ100A又は第2アプリケーションサーバ100Bを包括的に示したものであり、具体的には、通信端末40が要求するサービスに応じたアプリケーションサーバとの通信が行われることとなる。
アプリケーションサーバ100には、提供するデータに対してサービス変換、メディア変換を行なう機能を備えたものがあるので、通信端末が具備するアプリケーション種別や処理能力が異なっていても、通信端末が処理可能なようにデータを変換して提供することができる。そのため、第1通信端末40Aと第2通信端末40Bの間で通信を設定する場合に、アプリケーションサーバを介在させることで、当該アプリケーションサーバにおいて、第1通信端末40Aからのデータを変換して第2通信端末40Bに送信、あるいは反対に第2通信端末40Bから第1通信端末40Aへのデータに対しては逆方向の変換処理を行なうことにより、双方の通信端末は変換後のデータを受信でき、第1通信端末40Aと第2通信端末40Bは、お互いが具備する処理能力が異なっていたとしても、サーバでのデータ変換機能を介して通信を行うことが可能となる。
また、一方で、多者間通話、チャットなどの集中処理を行なうサービスを提供するアプリケーションサーバもある。このようなアプリケーションサーバでは、複数の通信端末からのデータを集約して処理する構成となっているため、メディア変換などの機能を併せて提供することが容易である。
また、テレビ電話のような双方向リアルタイム系サービスの他に、ストリーミング配信型のサービスを提供するアプリケーションサーバもある。このようなアプリケーションサーバは、要求されたコンテンツをストリーミングなどで通信端末へ伝送する機能を有する。この場合、コンテンツ受信側の通信端末と、配信側のアプリケーションサーバが1対1の通信を設定する形態をとる。この時も、アプリケーションサーバは、通信端末の処理能力などに合わせてコンテンツのメディア変換などを行なう機能を設けることもできる。
上述のような現在の移動通信システムでは、第一の通信端末が、第二の通信端末若しくはアプリケーションサーバとの間で通信を行う場合、IPコアネットワーク24による通信接続設定(仮想伝送パスの設定)を行ない、さらにリアルタイム系マルチメディアサービスの場合は、IMS22によるセッション設定を行ない、第一の通信端末が、通信相手である第二の通信端末若しくはアプリケーションサーバとの間でネゴシエーションを行なって、相互がサポートする機能や処理能力を確認し、合致した機能や能力を用いた通信が可能である。
すなわち、ネゴシエーションの結果、第一の通信端末と第二の通信端末もしくはアプリケーションサーバの機能や能力が適合しない場合(双方で一致するサービス形態が存在しない場合等)には、通信を実行することができない。具体的には、サービス起動要求側の第一の通信端末が、高解像度の動画と音声によるテレビ電話というアプリケーションを第二の通信端末へ要求しても、第二の通信端末が高解像度の動画を処理する機能をサポートしていない場合、サポートしている音声や動画のコーデックが第一の通信端末とは異なる場合、必要な処理能力を満たしていない場合などには、通信を行うことができない。
このような状況が予めわかっている場合は、第一の通信端末は、サービスの変換やメディア変換の機能を提供している前記アプリケーションサーバを利用する。サービスの変換とは、例えば、テレビ電話サービスを電話のみ(音声のみ)のサービスにするようデータを変換する等、あるサービス形態を別のサービス形態に形式変換することを指し、メディア変換とは、通信端末の画面の大きさや解像度に合わせてデータの内容を変換して伝送したり、コーデック種別(符号化の方式やデータの表現形式、伝送フォーマットなど)を切り替えたりする等によってデータ形式を変換することを指す。
アプリケーションサーバでのサービス変換やメディア変換の機能を利用して通信端末間での通信を行う場合、第一の通信端末がアプリケーションサーバとの間で通信設定後、さらに当該アプリケーションサーバから第二の通信端末への通信設定を行なうという二段階の手順を経ることによって、第一の通信端末はアプリケーションサーバを介在させて第二の通信端末と通信を行なう。
上述のような従来技術による通信開始までの処理手順を、図12を用いて説明する。図12は、第一の通信端末として第1通信端末40Aと、第二の通信端末として第2通信端末40Bとが、アプリケーションサーバ100を介して通信を行う場合の処理の流れを示す図である。前提として、サービス起動要求側の第1通信端末40Aは、通信相手となる第2通信端末40Bとの間で通信を行なうために、アプリケーションサーバ100での変換が必要なことを予め認知している。
まず、第1通信端末40Aは、アプリケーションサーバへ要求するサービス変換の種別、変換指示などを含めたサービス起動要求を行なう。このとき、サービス起動要求には、通信相手が第2通信端末40Bであるとして第2通信端末40Bを識別する情報も併せて指定する。
アプリケーションサーバは前記要求に基づき、第2通信端末40Bに変換後のサービス形態の通知を含めたサービス起動要求を行なう。第2通信端末40Bは該サービス起動要求に対し、前記アプリケーションサーバ100に応答すると、アプリケーションサーバ100を介したセッションが設定される。
セッションが設定された後は、第1通信端末40Aがアプリケーションサーバ100に対してユーザデータを送信すると、アプリケーションサーバは指定されたサービス変換、メディア変換などの処理を実行し、変換後のユーザデータを第2通信端末40Bに送信する。また、逆に第2通信端末40Bがアプリケーションサーバに対してユーザデータを送信すると、アプリケーションサーバは指定されたサービス変換、メディア変換等の処理を実行し、変換後のユーザデータを第1通信端末40Aに送信する。
図13は、第1通信端末40Aと、第2通信端末40Bのやりとりを簡略化して示した図である。第1通信端末40Aから送信されたデータはアプリケーションサーバで変換後、第2通信端末40Bに送信され、同様に、第2通信端末40Bからアプリケーションサーバを経由して第1通信端末40Aに送信されるデータに対しても、アプリケーションサーバでの変換処理が実行される。この時、当然ながら変換処理の内容は前記の内容とは逆となる。
しかし、上述した従来の移動通信システムにおいては、以下のような問題点があった。第一に、サービス起動要求側の通信端末と、その相手となる通信端末もしくはアプリケーションサーバとの間で相互にサポートするアプリケーションや処理能力が合致しない場合は、通信を実行することができなかった。
第二に、アプリケーションサーバによる変換機能を介在させて通信を行なう場合は、サービス起動要求側の第一の通信端末が、相手の第二の通信端末のサポートするアプリケーションや処理能力を予め認知すると共に、データの変換を実行するアプリケーションサーバを介した通信設定が必要かつ可能なこと、即ち、第一の通信端末が第二の通信端末と通信を行うために、アプリケーションサーバによる変換が必要であり、必要な変換機能を提供するアプリケーションサーバが存在することを認識しておかなければならなかった。
第三に、第一の通信端末はアプリケーションサーバへの通信接続設定(伝送経路設定)、セッション設定を行ない、次にアプリケーションサーバから第二の通信端末へ通信接続設定(伝送経路設定)、セッション設定を行なう、という二段階の設定処理を行なう必要があり、通信開始までの接続手順が複雑であった。
第四に、通信端末がアプリケーションサーバを介した通信接続設定を行う際に、アプリケーションサーバに対する通信接続要求に相手通信端末への接続を要求する情報を含めるために、通常の通信接続設定とは異なる特別の手順を用いて、異なる構成の情報を送信する必要があり、これらの双方を備え、区別して利用するための接続手順や通信端末の処理、実装が複雑であった。
第五に、通信を行っている間に、システムリソースの状態が変化した等の理由により、利用可能なサービスの形態、メディア種別などが変化したことに従い、前記アプリケーションサーバでの変換処理の内容を変更する必要があった場合等に、通信端末及びアプリケーションサーバはその状態変化を認識する手段がないため、通信途中で状態変化に追従して変換処理を動的に変更することは困難であり、ひいては、状態変化に対応できず、通信が中断される場合があった。
このように、従来の移動通信ネットワークでは、セッション制御やQoS制御、リソース制御等、個々の機能の高度化が図られ、さらにはサービス変換やメディア変換等を可能とするアプリケーションサーバが提供されてはいるものの、それらの内、またアプリケーションサーバを介した通信を行なうかどうか、サービスタイプに応じてどの制御機能を用いるか等は、通信端末がサービスを起動する際に、その状態や相手通信端末の種別や能力を考慮して判断し、その後に通信設定の手順を実行しなければならず、さらにはアプリケーションサーバを介した通信を開始できても、状態変化に応じてサービス変換、メディア変換を動的に制御する柔軟なサービス制御が考慮されていなかったため、各制御機能を活かしたサービスの最適化が図られていなかった。
上述のような課題を鑑み、本発明が目的とすることは、移動通信ネットワーク内にサービス制御システムを配置することにより、通信端末の種別や能力、状態、システムリソースの状態等から提供するサービス形態を判定し、サービス起動時のアプリケーションサーバあるいは変換機能を有する他のサービス/メディア変換装置による変換の必要性を判定して、アプリケーションサーバまたは他の変換装置を介在させたセッションの設定、およびアプリケーションサーバまたは他の変換装置での変換の実行、さらには変換内容の動的な変更などを制御することにより、柔軟で拡張性に富み、高度なサービスを提供することが可能な通信システムの実現を目的としている。
上記の課題を解決するために、第1の発明のサービス制御装置は、通信端末と、前記通信端末と通信相手先との間のセッション設定を制御するセッション制御装置とを備えたネットワークシステムに接続されたサービス制御装置において、前記通信端末がサービス起動要求を行った際に、前記セッション制御装置から前記サービス起動要求で指定されたサービス形態の通知を受信するサービス要求受信手段と、前記サービス要求受信手段により受信されたサービス形態に基づいて前記通信端末が利用可能で適切なサービス形態を判定するサービス形態判定手段と、前記サービス形態判定手段により判定されたサービス形態で、前記通信端末に対するセッション設定を行なうよう前記セッション設定を行うように前記セッション制御装置を制御する通信設定制御手段と、を備えることを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明のサービス制御装置において、前記サービス制御装置が前記サービス形態を判定するにあたって、前記通信端末の種別や型式、能力などを示す通信端末情報と、前記通信端末のユーザのサービスへの加入状況や利用可能なサービスなどを示すユーザ情報と、前記通信端末の前記通信相手先の種別や型式、能力などを示す通信端末情報と、前記通信端末の前記通信相手先のユーザのサービスへの加入状況や利用可能なサービスなどを示すユーザ情報とを取得する情報取得手段を備え、前記サービス形態判定手段は、前記情報取得手段により取得されたそれぞれの情報に基づいて、前記通信端末が利用可能で適切なサービス形態、及び前記通信相手先の通信端末が利用可能で適切なサービス形態を判定することを特徴とする。
また、第3の発明は、第2の発明のサービス制御装置において、前記ネットワークシステムには、前記通信情報及び前記ユーザ情報を含む加入者情報を記憶する加入者情報管理装置が更に接続されており、前記情報取得手段は、前記通信端末情報及び前記ユーザ情報を、前記加入者情報管理装置から加入者情報を読み出すことにより取得することを特徴とする。
また、第4の発明は、第2又は第3の発明のサービス制御装置において、前記ネットワークシステムには、ネットワークシステムのリソースに関する情報、無線リソースに関する情報を含むシステムリソース情報を管理するQoS制御装置が更に接続されており、前記情報取得手段は、前記QoS制御装置より前記システムリソース情報を取得し、前記サービス形態判定手段は、前記重宝取得手段により取得されたシステムリソース情報を参照することにより、前記通信端末に提供可能で適切なサービス形態を判定することを特徴とする。
また、第5の発明は、第2から第4の発明のいずれか一つのサービス制御装置において、前記ネットワークシステムには、通信端末の種別や通信端末の位置と、それらに応じた適切なサービス形態を示す情報とを含むコンテキスト情報を記憶するコンテキスト管理装置が更に接続されており、前記情報取得手段は、前記コンテキスト管理装置よりコンテキスト情報を取得し、前記サービス形態判定手段は、前記情報取得手段により取得されたコンテキスト情報を参照することにより、前記通信端末が利用可能で適切なサービス形態を判定することを特徴とする。
また、第6の発明は、第2から第4の発明のいずれか一つのサービス制御装置において、前記サービス形態判定手段は、前記通信端末情報と、前記ユーザ情報と、前記システムリソース情報との組み合わせに対応づけてサービス形態を記憶するサービス形態判定テーブルを更に有し、前記サービス形態判定手段は、前記情報取得手段により取得されている情報に基づいて、前記サービス形態判定テーブルを参照し、前記通信端末が利用可能で適切なサービス形態を判定することを特徴とする。
また、第7の発明は、第2から第6の発明のいずれか一つのサービス制御装置において、前記情報取得手段は、前記通信端末情報、前記ユーザ情報、前記システムリソース情報の少なくとも何れかが変化した場合に、それぞれの情報のうち、少なくとも変化した前記情報を取得する情報再取得手段を有し、前記サービス形態判定手段は、前記情報再取得手段により再取得されたそれぞれの情報に基づいて、利用可能で適切なサービス形態を再度判定することを特徴とする。
また、第8の発明は、第2から第7の発明のいずれか一つのサービス制御装置において、前記ネットワークシステムには、アプリケーションサービスを提供するアプリケーションサーバが更に接続されており、
前記サービス形態判定手段により判定されたサービス形態を、前記アプリケーションサーバへ通知するサービス形態通知手段を備えることを特徴とする。
また、第9の発明は、第2から第7の発明のいずれか一つのサービス制御装置において、前記ネットワークシステムには、前記通信端末が送受信する通信データのサービス形態を変換するアプリケーションサーバがさらに接続されており、前記サービス形態判定手段により判定されたサービス形態で前記通信端末に対してサービスを提供するように、前記通信端末が送受信する通信データのサービス形態を変換するように前記アプリケーションサーバを制御するサービス形態制御手段を備えることを特徴とする。
また、第10の発明は、第9の発明のサービス制御装置において、前記通信設定制御手段は、前記セッション制御装置に対してセッション設定を制御する際に、前記通信端末と前記通信相手先との間で前記アプリケーションサーバを介したセッション設定を制御することを特徴とする。
また、第11の発明は、第10の発明のサービス制御装置において、前記通信設定制御手段は、前記セッション制御装置に対してセッション設定を制御する際に、前記通信端末と前記通信相手先との間で前記アプリケーションサーバを介したセッションを設定するよう制御することを特徴とする。
また、第12の発明は、第10又は11の発明のサービス制御装置において、前記サービス形態制御手段は、前記通信端末が利用可能で適切と判定されたサービス形態と、前記通信相手先へ提供するサービス形態とが適合するように、前記アプリケーションサーバにおいて通信データのサービス形態を変換するよう制御することを特徴とする。
また、第13の発明は、第2から第8の発明のいずれか一つのサービス制御装置において、前記ネットワークシステムには、ネットワーク内部に前記通信端末が送受信する通信データのサービス形態を変換するサービス形態変換装置が更に接続されており、
前記サービス形態制御手段は、前記サービス形態判定手段により判定されたサービス形態で前記通信端末に対してサービスを提供するように、前記通信端末が送受信する通信データのサービス形態を変換するように前記サービス形態変換装置を制御することを特徴とする。
また、第14の発明は、第13の発明のサービス制御装置において、前記通信設定制御手段は、前記セッション制御装置に対してセッション設定を制御する際に、前記通信端末と前記通信相手先との間で前記サービス形態変換装置を介した通信路を設定するよう制御することを特徴とする。
また、第15の発明は、第14の発明のサービス制御装置において、前記通信設定制御手段は、前記通信端末と前記サービス形態変換装置との間の通信路を設定するよう制御し、前記サービス形態変換装置と前記通信端末の通信相手先との間の通信路を設定するよう制御することによって、
前記サービス形態変換装置を介した通信路を設定するよう制御することを特徴とする。
また、第16の発明は、第14又は第15のサービス制御装置において、前記サービス形態判定手段により判定されたサービス形態と、前記通信相手先へ提供するサービス形態とが適合するように、前記サービス形態変換装置において通信データのサービス形態を変換するよう制御することを特徴とする。
また、第17の発明は、第2から第8の発明のいずれか一つのサービス制御装置において、前記ネットワークシステムには、前記通信端末が送受信する通信データのサービス形態を変換するアプリケーションサーバと、ネットワーク内部に前記通信端末が送受信する通信データのサービス形態を変換するサービス形態変換装置が更に接続されており、前記サービス形態判定手段により判定されたサービス形態で前記通信端末に対してサービスを提供するように、前記通信端末が送受信する通信データのサービス形態を変換する処理を、前記アプリケーションサーバに行わせるよう制御するか、あるいは、前記サービス形態変換装置に行わせるよう制御するかを判定する変換装置判定手段を有し、前記通信設定制御手段は、前記セッション制御装置に対してセッション設定を制御する際に、前記変換装置判定手段により判定された結果に応じて、前記通信端末と前記通信相手先との間で前記アプリケーションサーバを介したセッション設定を行うよう制御するか、あるいは、前記通信端末と前記通信相手先との間で前記サービス形態変換装置を介した通信路を設定するよう制御するか、を選択して、前記セッション制御装置を制御することを特徴とする。
第18の発明は、通信端末と、前記通信端末と通信相手先との間のセッション設定を制御するセッション制御装置とを備えたネットワークシステムに接続されたコンピュータに、前記通信端末がサービス起動要求を行った際に、前記セッション制御装置から前記サービス起動要求で指定されたサービス形態の通知を受信するサービス要求受信機能と、前記サービス要求受信機能により受信されたサービス形態に基づいて前記通信端末が利用可能で適切なサービス形態を判定するサービス形態判定機能と、前記サービス形態判定機能により判定されたサービス形態で、前記通信端末に対するセッション設定を行なうよう前記セッション制御装置を制御する通信設定制御機能と、を実現させることを特徴としている。
本発明を適用することにより、サービス変換やメディア変換の必要性の判定、変換機能を有するアプリケーションサーバまたは変換機能を有する他の変換装置の存在や提供される機能を予め認識する必要がなくなり、これらを経由した通信の設定を、サービス制御装置が判定し、制御するため、通信端末は相手通信端末によってサービス変換の必要性を判断して判断結果に応じて異なる通信設定の手順を実行する必要がなく、常に相手通信端末を指定してサービス起動要求を送出するだけで良い。従って、アプリケーションサーバによる変換機能を介するか否かにかかわらず、通信端末にとっては統一的な通信開始手順を提供することができる。
また、双方の通信端末のサポートするアプリケーションや処理能力の不一致により、従来は通信が行なえなかった場合でも、サービス制御装置の制御により変換機能などを経由させてサービス形態を適応させるので、通信端末の処理能力の格差を解消して通信を行なうことが可能となる。
また、通信端末や無線/ネットワークリソースの状態を勘案してサービス形態やメディア種別を決定、変更できるため、サービス開始時にリソース状態を懸念する必要、即ちリソース状態に適合したサービス形態を判定して要求する必要がなくなるだけでなく、無線/ネットワークリソースの状態変化により提供中のサービスの継続が困難となるような場合でも、サービス制御装置がリソース状態に合わせてサービス形態の変換を行なうように制御するため、サービスが中断されることがなくなる。これにより、無線/ネットワークなどのシステムリソースの有効利用が可能となるだけでなく、通信端末はサービス開始要求の再試行等、特段の通信手順を実行する必要がなく通信が継続されるため、ユーザの利便性も向上する。従って、柔軟性に優れた、高度で高機能な通信サービスの提供が可能となる。
また、コンテキスト管理装置を設けることで、ユーザの主観的な状態やその変化(移動による環境の変更等)をも勘案し、それに対応した適切なサービス形態でのサービス、即ち状態変化に依存しないシームレスなサービスが提供可能となる。
更に、ネットワーク内に配置したサービス/メディア変換装置を経由させた通信を設定することにより、アプリケーションサーバへのセッション設定のレベルではなく、ネットワーク内での伝送経路の変更のみでもサービス変換、メディア変換に対応できるため、サービス/メディア変換装置での変換によるアプリケーションサーバでの変換制御の補完や、アプリケーションサーバが存在しない場合でもサービス/メディア変換装置が変換制御を行なうことによる処理の簡易化、サービス及び機能の柔軟性と拡張性の増加、伝送経路の最適化なども可能となる。
さらにセッション制御装置が、推奨サービス形態の選択、決定にあたって、アプリケーションサーバからの情報や指示も利用することができるようにすることで、判定の柔軟性や拡張性、自由度に優れたシステムを構築することができる。
また、通信端末の種別や属性など、能力に関する情報を勘案するため、推奨サービス形態の判定に加えて、通信端末が複数の無線アクセス種別に対応している場合等は、サービス形態に応じた適切なアクセス種別を判定し、アクセス種別切り替えを通信端末に指示することが可能となる等、異種アクセスシステムを有効に活用した通信制御を実現するための判断材料として応用することも可能となる。
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明を適用した場合における移動通信ネットワークシステムの概要を示した図である。移動通信ネットワーク21は、サービス制御システム28と、IPマルチメディアコアネットワークサブシステム(IMS)22と、IPコアネットワーク24と、IPトランスポートネットワーク26と、を備えて構成されている。
さらに、サービス制御システム28には、サービス制御装置282と、コンテキスト管理装置284とが配置され、IMS22には、セッション制御装置220と、QoS制御装置222と、加入者情報管理装置224とが配置され、IPコアネットワーク27には、モビリティ管理装置240と、加入者管理サーバ242と、サービス/メディア変換装置244とが配置され、IPトランスポートネットワーク26にはアクセスルータ(AR)260(第1AR260A及び第2AR260B)とが配置されている。
さらに、移動通信ネットワーク21は、第1アプリケーションサーバ100Aと第2アプリケーションサーバ100Bとを備えるアプリケーション10と、通信端末が移動通信ネットワーク21へ接続するための無線アクセスネットワーク30とに接続されている。
無線アクセスネットワーク30は、無線リソース制御装置302を備えており、通信端末40を制御している。通信端末40は、アクセスポイント(AP)310を介して無線リソース制御装置302に接続され、移動通信ネットワークにアクセス可能となる。
本実施形態においては、無線アクセスネットワークとして、第1無線アクセスネットワーク30Aと、第2無線アクセスネットワーク30Bとが備えられている。第1無線アクセスネットワーク30Aは、第1無線リソース制御装置302Aを備えている。そして、第1通信端末40Aが、例えばAP310Aを介して第1無線リソース制御装置302Aに接続することにより第1無線アクセスネットワーク30Aにアクセス可能となる。
また、第2無線アクセスネットワーク30Bは、第2無線リソース制御装置302Bを備えている。そして、第2通信端末40Bが、例えばAP310Dを介して第2無線リソース制御装置302Bに接続することにより第2無線アクセスネットワーク30Bにアクセス可能となる。
また、アプリケーション10には、第1アプリケーションサーバ100Aと第2アプリケーションサーバ100Bが設けられている。アプリケーションサーバの種類としては、前述のようにサービスやメディア変換などを処理するアプリケーションサーバ、双方向多者間通信やチャットなどサーバでの集中処理を行なうアプリケーションサーバ、ストリーミング配信を処理するアプリケーションサーバ等があり、アプリケーション10としては、それら各種のアプリケーションが併せて提供される。アプリケーション10は、移動通信ネットワーク21、その中でもサービス制御システム28に接続され、サービス制御装置282との間でインターフェースを設けることにより、サービス制御システム28からアプリケーション10のアプリケーションサーバへの指示や要求、また、アプリケーション10のアプリケーションサーバ100からサービス制御システム28への通知や要求などの制御情報が交換できるように構成されている。
なお、本実施形態における各構成のうち、図11で説明した従来のネットワークシステムと同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
サービス制御システム28には、サービス制御装置282と、コンテキスト管理装置284とが配置されている。また、サービス制御システム28は、サービス制御装置282において推奨サービス形態を判定するための情報や、推奨サービス形態を実行する契機となる情報を得るために、IMS22とIPコアネットワーク24へのインターフェースを有するシステムである。また、該インターフェースによって、セッション制御装置220に対して伝送経路設定、セッション設定の制御を行なう。
さらに、サービス制御システム28は、サービス起動時に経由すべきアプリケーションサーバへの確認とサービス変換、メディア変換の実施要求を行なうために、ネットワーク外部として設置されたアプリケーションサーバとのインターフェースを持たせている。
なお、サービス制御システム28は、アプリケーションサーバが管理しているユーザのアプリケーション利用歴等に基づくユーザの嗜好(プリファレンス)に関する情報も、前記インターフェースによって取得することが可能であり、これによって、サービス制御装置282でのサービス形態判定時にその情報を反映することも可能である。
サービス制御システム28内に配置されたコンテキスト管理装置284は、通信端末を所有するユーザ(加入者)の位置(場所)や状態、これらに応じて変化する嗜好などの状態を表すコンテキストの情報を管理し、サービス制御装置282でサービス形態を判定する際に利用する。
また、IPコアネットワーク24にサービス/メディア変換装置244を配置することもできる。該サービス/メディア変換装置244を経由した通信設定を行なうようにすることで、サービス/メディア変換装置によるアプリケーションサーバでの変換処理の補完が可能となり、サービス実行中の柔軟な変換制御も実現する。また、サービス/メディア変換装置をIPコアネットワーク24に設けることにより、アプリケーションサーバに処理を委ねる必要のない簡易な変換制御をサポートできるようにすることで、サービスやメディアの変換機能をネットワーク機能の一部として内部に保有することとなり、外部のアプリケーションサーバへの接続を省略し、サービス/メディア変換装置244への伝送経路設定のみでも変換を実現することも可能とし、処理の簡易化、伝送経路の最適化を実現する。
図2に、サービス制御装置282の概略構成の例を示す。サービス要求受信部は、セッション制御装置220から通信端末がサービス起動要求を行ったこと、及び、前記サービス起動要求で指定されたサービス形態の情報の通知を受信する。情報読出部は、加入者情報管理装置224、コンテキスト管理装置284、QoS制御装置222などから、ユーザの加入しているサービス、属性や状態に関する情報(ユーザ情報及びコンテキスト情報)、通信端末の型式や種別、属性や能力に関する情報(通信端末情報)、ネットワークリソースや無線リソース等のシステムリソースに関する情報(システムリソース情報)を読み出すか、通知を受信することにより取得する。
サービス形態判定部は、前記サービス要求受信部、前記情報読出部からこれらの情報を受け取って参照し、通信端末が利用可能で適切なサービス形態を判定する処理を行う。
判定されたサービス形態は、サービス形態制御部、サービス形態通知部、通信設定制御部へ通知される。サービス形態制御部は、前記判定したサービス形態で通信端末に対してサービスを提供するように、アプリケーションサーバ100またはサービス/メディア変換装置244に対してデータの形式を適合させるためのサービス形態変換を要求、指示することにより、これらにおけるサービス形態の変換処理を制御する。
サービス形態通知部は、前記サービス形態判定部で判定されたサービス形態をアプリケーションサーバに通知する。
通信設定制御部は、通信端末がアプリケーションサーバ100、またはサービス/メディア変換装置244を介した通信端末と通信相手先との間での通信経路の設定、セッション設定を行うように、IPコアネットワーク24のモビリティ管理装置240、IMSのセッション制御装置220へ指示することにより、これらを制御する。
ここで、サービス制御装置282がサービス形態の判定のために参照する情報の一例を図3に示す。サービス制御装置282が取得する情報としては、ユーザの加入しているサービス、属性や状態に関する情報(ユーザ情報及びコンテキスト情報)、通信端末40の型式や種別、属性や能力に関する情報(通信端末情報)、ネットワークリソースや無線リソース等のシステムリソースに関する情報(システムリソース情報)がある。
ユーザの属性などに関する情報(ユーザ情報)としては、加入者情報管理装置224で保持されているサービスへの加入状況や利用可能なサービスの情報などを含むユーザプロファイルがあり、ユーザの状態に関する情報(コンテキスト情報)としては、後述するコンテキスト管理装置284で管理する情報がある。さらに、前述したようにアプリケーションサーバからユーザのアプリケーション利用歴等の情報も取得して参照可能である。また、加入者情報管理装置224で管理されている通信端末40に関する情報(通信端末情報)としては、通信端末40の種別や型式、保有しているコーデック、実行可能なアプリケーション、処理能力、利用可能なアクセス手段、通信端末の属性や能力に関する情報を記述したデバイスプロファイルがある。システムリソースに関する情報(システムリソース情報)としては、QoS制御装置222が保有しているシステムリソースの利用状況、を介して、通信端末が在圏し接続している、若しくは、接続が可能な無線アクセスネットワーク30、及びAR260が保持するリソース情報(無線チャネルや帯域の空き状態)などがある。サービス制御装置282は、これらの情報を、それぞれの装置から取得して参照する。
サービス制御装置282はこれらの情報を取得すると、情報の管理を容易にし、判定や比較などの処理を簡単にするために、例えば、それぞれの情報をクラス分けして管理する。これは、これらの多くの情報が様々な値を取り得るため、ある程度の範囲をグループ化してまとめて扱った方が、効率的であり処理が簡単化できるためである。ユーザプロファイルでユーザが定額制等のような加入形態であり、料金を気にせずサービスを利用可能ということがわかれば、例えば「SA」というクラスに分類し、ある程度大容量通信を行なう余裕があるが利用制限があるという加入形態であれば「SB」、さらに料金に上限があり利用できるサービスに制限があるなどの場合であれば「SC」といったようにクラス分けを行なう。また、デバイスプロファイルの通信端末の種別、型式情報から、高速な無線アクセス種別を具備し、画像処理等の能力が高く、高速・大容量アプリケーションを実行するのに適している通信端末であれば「DA」、低速な無線アクセス種別しか具備していない通信端末であれば「DB」、高速無線アクセス手段を具備しているが、データ通信にしか利用できない通信端末は「DC」等のようにクラス分けする。
なお、これらユーザと通信端末の属性に関する情報は、加入者情報管理装置224が保持するユーザプロファイルとデバイスプロファイルから確認しても良いし、通信端末40から直接それらに相当する情報をサービス制御装置282に通知しても良い。後者の場合、後述する通信端末40からのサービス起動要求にそれらの情報を含めることもできるし、サービス起動要求を行う以前(例えば、通信端末の購入時、サービスへの加入時、電源投入などによるネットワークへの登録時など)に予め通信端末40からサービス制御装置282へ登録しておくこともできる。
サービス制御装置282は、ユーザ情報、通信端末情報、システムリソース情報などを参照して、適切なサービス形態を判定する。ここで、サービスは、通信端末と通信相手との接続形態、データの転送形態に応じて、各種の種別に分類されるため、サービス制御装置282は、サービスの種別ごとに適切なサービス形態を判定する。サービスの種別は4種類に大別でき、サービスタイプ1は音声通信やテレビ電話等の会話型サービス、サービスタイプ2は双方向グループ間通信やゲーム等のインタラクティブ型サービス、サービスタイプ3はストリーミング配信型サービス、サービスタイプ4はメール、WEB閲覧等のバックグラウンド型サービスである。また、サービスタイプごとに、要求ビットレート等のサービスクラス(またはQoSクラス)が細分化される。そこで、サービス制御装置282は、通信端末から要求されたサービス形態に対して、上述したユーザ情報、通信端末情報、システムリソース情報などから、適切で提供可能なサービスクラスを判定する。この際に、例えば、図3に示すように、クラス分けされたユーザ情報、通信端末情報、システムリソース情報などの組合せに対して、サービスタイプにおけるサービスクラスの優先度を記述したテーブルを用意しておき、このテーブルを参照することによって判定することもできる。このテーブルでは、サービスタイプに対して推奨、非推奨、あるいは推奨する優先度を表す情報が記述される。図3では、優先する順に、「◎」(推奨)、「○」、「△」(非推奨)で示す。
例えば、上述のようなクラスの組合せが「SA_CA_DA_NA_RA」のような組合せの場合、推奨サービス形態として、サービスタイプ1(音声通信、テレビ電話等)を行う場合は30Mbps程度のサービスクラスの高速アプリケーションが「◎」のように推奨であり、16kbps以下のサービスクラスのアプリケーションは「△」のような情報であれば、16kbps以下の音声のみのような通信より、30Mbps程度のテレビ電話のような高速大容量を要するアプリケーションの方が好適であるといった判定を行なう。
同様に、推奨サービス形態判定テーブルにはサービスタイプ2(双方向多者間通信)やサービスタイプ3(ストリーミング)、サービスタイプ4(メール、WEB閲覧)についても、クラスの組合せによって好適なサービスクラス、アプリケーションがサービスタイプごとに記述され、サービス制御装置282はそれを基に推奨サービス形態を判定する。また、サービス制御装置282は、このようなテーブルを利用しなくても、ユーザ情報、通信端末情報、システムリソース情報などから、適当な判定処理、閾値との比較、境界条件や評価条件に従う処理、演算、比較などを行うことにより、適切なサービスクラスの判定、パラメータの導出などを行うようにしても良い。
つづいて、コンテキスト管理装置284が管理する情報の一例を図4に示す。第1通信端末40Aを所有するユーザのコンテキスト情報として、例えば、ルーティングエリアと対応させて、ルーティングエリアAに在圏する場合には「自宅にいると考えられ、高解像度の動画付き音声のような高速・大容量アプリケーションが実行可能な望ましいサービス形態である」ことを示す情報が、コンテキストAとして登録してある。図では、さらにビットレートとサービスクラス(CBR/VBR/ABR/UBR)などのパラメータを示すことで高速・大容量アプリケーションが実行可能であることを示している。同じくコンテキストBとしては、ルーティングエリアBに在圏する場合には、「移動中と考えられるため、音声のみやテキストデータのような低速アプリケーションが実行可能な望ましいサービス形態である」ことを示す情報が、コンテキストBとして登録されている。これによって、ルーティングエリアAが第1通信端末40Aを所有するユーザにとってプライベートな利用頻度が高い場所(自宅等)をカバーしており、そこでは高解像度の動画付き音声のような高速・大容量アプリケーションを嗜好し、一方ルーティングエリアBはビジネスなどでの利用頻度が高い場所(移動中や公共の場所等)をカバーしており、解像度が低い簡易動画や静止画、音声、テキストデータのみといった低速で利用するアプリケーションを嗜好する、というように特定の周辺環境に応じたユーザの主観的な状態を表現する情報として参照することができ、サービス形態の判定時に反映することが可能となる。
これらのコンテキスト情報は、ユーザによる登録、通信端末からの入力、またはサービス制御装置282からの通知を受け、柔軟に変更可能とすることで、ユーザの実態に合った内容に適宜最適化することが可能である。さらに、サービス制御装置282がアプリケーションサーバからアプリケーションの利用暦等の情報を取得し、サービス形態の判定時に参照することで、ユーザの嗜好などを適切なサービス形態の判定に反映させることも可能である。
ここで、上記した適切なサービス形態の判定は、通信端末とその通信相手先との双方に対して実行することが必要である。即ち、サービス制御装置282は、通信端末がサービス起動要求で指定したサービス形態に応じて、前記通信端末に適したサービス形態、通信相手先に適したサービス形態をそれぞれ判定し、これら双方が一致しない場合に、サービス形態の変換を制御するような処理を行なう。この様子を、図5を用いて説明する。
サービス制御装置282は、上述の手段を用いて第1通信端末40A、第2通信端末40Bのそれぞれに対して通信端末が利用可能で望ましいサービス形態を判定する。例えば、第1通信端末40Aへサービスタイプ1(リアルタイム音声通信、テレビ電話等)のサービスを提供する場合は、144kbps程度の低速でベストエフォートのサービス形態が好適であることを判定し、第2通信端末40Bは、30Mbps程度の高速・高品質のサービス形態が好適と判定する。
ここで、第2通信端末40Bから、通信相手として第1通信端末40Aを指定し、高速・大容量な伝送リソースを必要とする高解像度動画のテレビ電話のサービス起動要求を行ったとする。サービス起動要求は、セッション制御装置220において受信され、セッション制御装置220は前記サービス起動要求に含まれるサービス形態を、サービス制御装置282に通知する。サービス制御装置282は、セッション制御装置220から通知された第2通信端末40Bが要求した前記サービス形態が、前記判定した第2通信端末40Bのサービス形態と適合していることを確認する。次に、前記サービス形態に基づいて、第1通信端末40Aの利用可能で適切なサービス形態を確認、判定する。
図5に示した判定結果では、第1通信端末40Aは144kbps程度の低速でベストエフォートのサービス形態が適していると判定しているため、前記第2通信端末40Bから要求されたサービス形態とは一致しない。そこで、サービス制御装置282は、サービス形態の変換が必要であることを判断し、変換処理を介したセッションを設定するよう制御する。つまり、所望のサービス形態を変換する機能を有するアプリケーションサーバ及び/またはサービス/メディア変換装置244を経由した伝送経路設定、及びセッション設定を、セッション制御装置220へ要求する。
続いて、図6及び図7を用いて、サービス制御装置282と他の制御装置や管理装置、アプリケーションサーバ及び/またはサービス/メディア変換装置244、さらに通信端末40A及び40Bの間でのネットワークシステムにおける制御情報のフローの概略を説明する。図6は通信端末40が通信開始前の準備段階として行なう設定であり、例えば位置登録を契機として行なわれるサービス形態判定までの処理を示している。第1通信端末40Aが、例えばルーティングエリアAからモビリティ管理装置240に位置登録更新を要求すると、モビリティ管理装置240は位置登録更新処理を行なうと同時に、第1通信端末40Aの位置登録更新通知(第1通信端末40AがルーティングエリアAに在圏することを示す情報の通知)をサービス制御装置282に行なう。サービス制御装置282は、コンテキスト管理装置284が管理しているコンテキスト情報を確認し、第1通信端末40AがルーティングエリアAに移動したことにより、望ましいサービス形態が、例えば30Mbps程度のビットレートを処理可能であり、高速・大容量アプリケーションのサービスが提供可能なサービス形態であることを示すコンテキスト情報を取得する。
また、サービス制御装置282は、加入者情報管理装置224が第1通信端末40Aの加入者情報として管理しているユーザプロファイル、デバイスプロファイルを取得する。そして、サービス制御装置282はQoS制御装置222に対してネットワークリソース及び無線リソースの状態をアクセスルータ(AR)、無線リソース制御装置302にそれぞれ確認することを要求する。これらユーザ情報、通信端末情報、システムリソース情報を取得すると、サービス制御装置282は、これらの情報から適切なサービス形態を判定する。この判定処理は、例えば、前記説明したように、取得した情報をクラス分けし、そのクラス分けの組合せを推奨サービス形態判定テーブルに照会する手段により実行する。この結果として、例えば第1通信端末40Aは高速・大容量アプリケーションのサービスを受信可能であり、好適なサービス形態であることが判定される。サービス制御装置282は、第1通信端末40Aのみならず、ネットワークに接続し通信サービスを利用可能な第2通信端末40Bについても同様に、前述のような処理により好適なサービス形態を判定する。
なお、ここでは第1通信端末40Aの位置登録を契機とした処理の例を説明しているが、通信開始前に予めサービス形態を判定しておくのではなく、第1通信端末40Aがネットワークに対してサービス起動要求を行った時に、サービス形態を判定するようにしてもよい。この場合は、サービス起動要求を受信したセッション制御装置220がサービス制御装置282に前記サービス起動要求で指定されたサービス形態を通知し、サービス制御装置282は、モビリティ管理装置240に対して第1通信端末40Aが位置登録しているルーティングエリアを確認し、また、コンテキスト管理装置284、加入者情報管理装置224、QoS制御装置222からユーザ情報と通信端末情報、システムリソース情報を取得して、これらの情報を参照することによりサービス形態を判定する。
図7はサービス起動時の制御手順を示した図である。図7の例では、図5の例に準じて、第2通信端末40Bが第1通信端末40Aに対して、高精細動画と音声による高品質テレビ電話という高速・大容量通信を要するサービス形態でのサービス起動要求を行った場合を示している。この例では、第2通信端末40Bと第1通信端末40Aとの属性、処理能力が異なるため、アプリケーションサーバを経由した通信、すなわちアプリケーションサーバ100でのサービス変換やメディア変換が必要な場合を示している。第2通信端末40Bが第1通信端末40A宛に高精細動画と音声による高品質テレビ電話というサービス形態を指定して、セッション制御装置220へサービス起動要求を行なうと、セッション制御装置220はサービス制御装置282に第2通信端末40Bからの前記サービス起動要求で要求された前記サービス形態を通知する。
サービス制御装置282は、第1通信端末40Aと第2通信端末40Bのユーザ情報、通信端末情報、システムリソース情報などを取得し、前述したような処理を実行して第1通信端末40Aと第2通信端末40Bが実行可能で適切なサービス形態をそれぞれ判定する。その結果、第2通信端末40Bは高精細動画と音声による高品質テレビ電話が利用可能な状態にあり、要求された通りのサービス形態でサービスを提供できるが、第1通信端末40Aは第2通信端末40Bから要求された高精細動画と音声による高品質テレビ電話ではなく、簡易動画と音声によるテレビ電話アプリケーションのサービス形態が好適と判定し、高解像度の動画と簡易動画との変換(コーデックの種別やデータ形式、伝送フォーマットなどの変換)、音声コーデックや伝送フォーマットなどの変換等の変換機能を備えたアプリケーションサーバ100による変換を実行させることを判断し、アプリケーションサーバ100において変換機能が提供可能なことを確認した上で、セッション制御装置220へ前記アプリケーションサーバ100を経由させたセッションの設定指示を含めて応答する。
セッション制御装置220は、モビリティ管理装置240、QoS制御装置222に必要な制御指示を行ない、要求された伝送経路設定、即ち第2通信端末40Bとアプリケーションサーバ100との通信経路、並びに、アプリケーションサーバ100と第1通信端末40Aとの通信経路の設定を実行した上で、第1通信端末40Aへサービス起動要求を行なう。この際、セッション制御装置220はサービス制御装置282から通知されたサービス形態に基づき、第1通信端末40Aに対しては、第2通信端末40Bから要求された高解像度の動画付き音声による高品質テレビ電話のサービス形態を、簡易動画付き音声によるテレビ電話のサービス形態でのサービス起動要求を行なうこともできる。尚、このようなサービス形態の変換の通知を含める、あるいは含めないことは、第2通信端末40Bへ返送するサービス起動応答に関しても同様である。
あるいは、上述のサービス形態の変換がサービス/メディア変換装置244で提供可能な場合には、サービス制御装置282は、セッション制御装置220へサービス/メディア変換装置244を経由させた伝送経路及びセッションの設定を指示する。この時、上記と同様に、セッション制御装置220は、モビリティ管理装置240、QoS制御装置222に必要な制御指示を行ない、要求された伝送経路設定、即ち第2通信端末40Bとサービス/メディア変換装置244との通信経路、並びに、サービス/メディア変換装置244と第1通信端末40Aとの通信経路の設定を実行した上で、第1通信端末40Aへサービス起動要求を行なう。この際、セッション制御装置220はサービス制御装置282から通知されたサービス形態に基づき、第1通信端末40Aに対するサービス起動要求、第2通信端末40Bに対するサービス起動応答にサービス形態を変換することの通知を含めてもよいし、含めなくてもよいことは、上述のアプリケーションサーバ100を経由する場合と同様である。
ここまでの処理により伝送経路、セッションが設定された結果、第2通信端末40Bが第1通信端末40A宛に送信した高解像度の動画付き音声による高品質テレビ電話のデータは、アプリケーションサーバ100又はサービス/メディア変換装置244によって、簡易動画付き音声のデータに変換されて、第1通信端末40Aに送信される。反対に、第1通信端末40Aから送信された簡易動画付きの音声によるテレビ電話のデータは、アプリケーションサーバ100またはサービス/メディア変換装置244において高解像度の動画付き音声による高品質テレビ電話のデータ形式に変換されて、第2通信端末40Bへ送信される。
また、上記のようにセッションを開始した後に、通信端末が移動する等して通信トラフィックが混雑しているエリアに入るなど、通信端末が利用可能、もしくは、通信端末へ割り当て可能な無線リソースやネットワークリソースの状態が変化したり、他の通信端末による通信トラフィックが増加するなどのネットワークリソースなどの利用状況、占有状況が変化することによってシステムリソースの状態が変化したり、又はユーザが自宅から外出するなどユーザの利用環境の状態、つまりユーザのコンテキスト情報が変化したりする等の理由で、実行していたサービス形態を変更する必要が生じる場合が想定される。これらの状態変化は、主に通信端末の移動等に伴う通信環境の変化、特にハンドオーバをきっかけに発生する場合が多いため、例えば、サービス制御装置282は、モビリティ管理装置240などからハンドオーバが実行された通知を受け、ハンドオーバを契機にサービス形態の変換の処理内容の変更、変換の中止、または変換の実行/再開の必要性を判定する。
判定の結果、通信中の通信端末に好適なサービス形態が変化し、これまで実行していたものとは異なるサービス変換やメディア変換が必要であれば、アプリケーションサーバ100で変換して送信しているデータに、さらにサービス/メディア変換装置244において変換を加えるような制御、例えば、アプリケーションサーバ100と第1通信端末40Aとの間で設定されていた通信経路、セッションを、アプリケーションサーバ100とサービス/メディア変換装置244との通信経路、セッション及びサービス/メディア変換装置244と第1通信端末40Aとの通信経路、セッションへ変更して設定する制御を行う。あるいは、サービス制御装置282が、アプリケーションサーバ100またはサービス/メディア変換装置244に対して、実行中であったサービス形態の変換処理の内容を、異なるサービス形態への変換に変更するように指示し、制御する。このようにサービス形態の変換処理を制御することにより、通信端末の状態やシステムリソースの変化に迅速かつ適切に対応してサービス形態をより柔軟に変更することができる。このような場合の処理を図8に示す。
まず、第1通信端末40Aが移動するなどによりハンドオーバの状態が発生すると、第1通信端末40Aは、モビリティ管理装置240にハンドオーバの要求を通知し、第1通信端末40Aとモビリティ管理装置240との間でハンドオーバ処理が実行される。このハンドオーバ処理時には、通常、QoS制御装置222が起動して、ハンドオーバ先のAPを制御する無線リソース制御装置に無線リソース設定、さらにハンドオーバ先のAR260にネットワークリソース設定処理を要求する。モビリティ管理装置240はハンドオーバ処理が終了すると、サービス制御装置282へ第1通信端末40Aがハンドオーバしたことを示すハンドオーバ通知を行なう。ハンドオーバ通知を受けたサービス制御装置282は、QoS制御装置222にハンドオーバ先のAPまたはAR260のリソース状態を確認し、そのリソース状態を示すシステムリソース情報を参照して適切なサービス形態を、前記と同様にして再度判定する。例えば、サービス形態判定テーブルを参照する場合は、ハンドオーバ前のクラスの組合せが「SA_CA_DA_NA_RA」のような組合せであり、高解像度の動画付き音声の高速・大容量アプリケーションを実行していたが、ハンドオーバ発生後のリソース状態の変化に伴い「SA_CA_DA_NB_RB」のような組み合わせに変化した場合は、低速アプリケーションのサービス形態(静止画付き音声など)が適切なサービス形態と判定される。そこで、アプリケーションサーバ100で高速・大容量アプリケーションのデータ形式へ変換されたユーザデータを、さらにサービス/メディア変換装置244において低速アプリケーションのデータ形式へ変換させるよう制御を行う。
サービス制御装置282はハンドオーバの結果、適切なサービス形態が変化したことを判定すると、第1通信端末40Aとの間で判定された新たなサービス形態への変換の可否を確認する。この確認は、第1通信端末40Aに対して、サービス形態を変換することを通知している場合には必要となるが、通知しない場合にはこの手順は不要となり省略される。サービス制御装置282はサービス/メディア変換装置244を起動し、適切と判定されたサービス形態への変換機能を実行するように、必要な変換処理内容を通知する。サービス制御装置282は、セッション制御装置220へサービス/メディア変換装置244を経由させるように経路を変更したセッションの設定を指示する。本例では、第2通信端末40Bとアプリケーションサーバ100、アプリケーションサーバ100とサービス/メディア変換装置244、サービス/メディア変換装置244と第1通信端末40Aとの間で、それぞれ伝送経路、セッションが設定されるように制御する。セッション制御装置220は、モビリティ管理装置240、QoS制御装置222に必要な制御指示を行ない、要求された伝送経路設定を実行する。伝送経路が設定されると、サービス/メディア変換装置244がユーザデータの変換を実行し、アプリケーションサーバ100にて変換された高解像度の動画付き音声による高品質テレビ電話のデータがさらにサービス/メディア変換装置244で静止画付音声のサービスのデータ形式に変換されて、第1通信端末40Aに送信されるようになる。反対に、第1通信端末40Aから送信されるデータは、サービス/メディア変換装置244で変換され、さらにアプリケーションサーバ100で変換されて、第2通信端末40Bに送信される。
なお、判定の結果、例えば高解像度の動画付き音声による高品質テレビ電話の高速・大容量データを要するサービス形態を、簡易動画付き音声によるテレビ電話のサービス形態に変換して送信していたが、高速・大容量データの伝送リソースの確保、通信路の提供が可能となったためサービス形態の変換が不要となり、元の高解像度の動画付き音声による高品質テレビ電話のサービス形態が適切と判定された場合は、サービス制御装置282が変換処理を実行していたアプリケーションサーバ100またはサービス/メディア変換装置244に変換処理の中止を要求することで、一方の通信端末から送信されるデータを、変換せずにもう一方の通信端末に送信するよう制御する。
また、上記説明した図8の実施例はアプリケーションサーバ100とサービス/メディア変換装置244を介した通信設定による二段構えの変換制御を行なうことを特徴としているが、本発明の変形例では、アプリケーションサーバ100でのサービス形態の変換処理の変更を要求することも可能である。さらに、アプリケーションサーバ100経由での通信からサービス/メディア変換装置244で変換を実行させ、サービス/メディア変換装置244のみを経由させるように変更するなど、伝送経路の変更により変換機能を提供する装置の変更、あるいは、変換内容の変更を制御することも可能である。のように、通信経路の設定のようなネットワーク内部での制御を行うことにより、様々な手段で変換の有無や変換内容を柔軟かつ簡単に変更することができ、通信状態の変化や通信端末の移動、環境の変化に追従した適応的なサービス変換、ユーザや通信端末の状態や要求に合わせた高度な通信サービスの提供を容易に実現することができる。
なお、上述した内容は、IMS22を起動することによる会話型サービスや双方向多者間通信等のリアルタイム系マルチメディアサービスを前提としたサービス制御の例として説明してきたが、本発明によればこの形態に限らず、通信端末がストリーミング配信型のサービスを提供するアプリケーションサーバ100からストリーミング配信を受けるようなサービスタイプのサービス制御にも適用可能である。
ストリーミング配信の場合は、基本的にIMS22のセッション制御装置220は起動せず、サービス起動時に通信端末がAR260やモビリティ管理装置240を起動することによって、ストリーミング配信のサーバとなるアプリケーションサーバとの通信設定を要求する。その後、QoS制御装置222が起動されて、ストリーミング配信に必要なリソース設定を行なう。この時、前述の通信端末間での会話型サービスの場合の実施例とは異なり、セッション制御装置220は起動されないため、モビリティ管理装置が第1通信端末40Aから通信接続要求があったことをサービス制御装置282に通知する。サービス制御装置282は前記と同様な手段によって変換の必要性を判定し、サービス/メディア変換装置244を介した伝送経路を設定して該サービス/メディア変換装置244で適切なサービス形態への変換を行うよう制御し、さらにQoS制御装置から利用可能なシステムリソース情報を取得することで、好適なサービス形態での通信、さらにその後の状態変化に追従したサービス形態の変換制御を実現することが可能となる。
図9に上述した手順の例を示す。サービス制御装置282は、例えば第1通信端末40Aはサービスタイプ3(ストリーミング配信)においては高速・大容量アプリケーションが適切なサービス形態であるとの情報を予め管理している。第1通信端末40Aからモビリティ管理装置240へストリーミング配信用のアプリケーションサーバへの通信接続要求がなされ、モビリティ管理装置240からサービス制御装置282に通信接続要求が通知される。そして、サービス制御装置282は当該通知を受信すると、適切なサービス形態の判定処理を実行し、さらにサービス形態の変換の必要性を判断する。サービス形態の変換が必要であれば、サービス制御装置282はサービス/メディア変換装置244での変換を制御するために、サービス/メディア変換装置244を起動すると共に、該サービス/メディア変換装置244を経由した通信経路設の定をモビリティ管理装置240へ指示する。
モビリティ管理装置240はQoS制御装置222に対し、前記伝送経路上のQoS設定(リソース設定)を指示する。QoS制御装置222がAR260、無線リソース制御装置にそれぞれ指示してリソース設定を行なうと、モビリティ管理装置240はサービス制御装置282へ経路設定指示に対する応答を返し、モビリティ管理装置240はアプリケーションサーバ100に通信接続要求を行なう。
アプリケーションサーバ100からのストリーミング配信のデータは、サービス/メディア変換装置244を経由して第1通信端末40Aへ送信される。サービス/メディア変換装置244では、前記サービス制御装置282から指示された変換処理の内容に従ってサービス変換、メディア変換が実行され、変換後のデータを第1通信端末40Aへ送信する。
なお、上述した例では、アプリケーションサーバ100からのデータをサービス/メディア変換装置244で推奨サービス形態に変換する例を示したが、サービス/メディア変換装置244ではなく、サービス形態の変換機能を提供する別のアプリケーションサーバを経由することもできる。この時の手順は、上述の場合と同様であり、サービス/メディア変換装置244に代わって、サービス形態の変換機能を提供するアプリケーションサーバを経由するように通信経路の設定が制御される。
このように、サービス制御装置282が提供可能で適切なサービス形態を判定してサービス/メディア変換装置244を経由した経路設定、アプリケーションサーバ100との通信の設定を制御するので、第1通信端末40Aは通常と同様な手順、つまりサービス形態の変換を伴わない場合若しくは1対1の通信でネゴシエーションを行う場合と同じ手順で、通信相手となる通信端末またはストリーミング配信サービスなどを提供するアプリケーションサーバ100へのサービス起動要求を実行することができる。つまり、サービス形態の変換処理を介在させることを意識することがなくなり、また、第1通信端末40Aにとって、その特性、処理能力、さらには状態、通信環境などに応じて、常に適切なサービス形態に変換されてサービスが提供されることとなる。
さらに、サービス制御装置282が、アプリケーションサーバへ適切なサービス形態を通知する機能を利用して、ストリーミング配信のアプリケーションサーバ100とのネゴシエーション機能の代替として利用することも可能である。この場合の通信手順の例を図10に示す。図に示したように、サービス制御装置282は、アプリケーションサーバ100に対して、適切なサービス形態を示す情報を受信して、通常の第1通信端末40Aとのネゴシエーション手順に代えて、この情報を参照して提供するサービス形態を決定することができる。
このようにして、サービス制御装置282が適切なサービス形態を判定して、アプリケーションサーバ100に対して、判定された適切な形態でのサービスの提供を要求する通信設定の制御を行うので、第1通信端末40Aとアプリケーションサーバ100とのサービス形態のネゴシエーションをサービス制御装置282が仲介することとなり、ネットワークなどのシステムリソース情報に合わせたサービス形態の判定、コンテキスト情報の参照、アプリケーションの利用暦の参照など、ネゴシエーションでは考慮できない情報も参照して適切なサービス形態を判定し、その形態でのサービスの提供を制御することができるため、第1通信端末40A及びそのユーザにとって最適で、かつ、システムリソースに適したサービスが提供されることとなる。
なお、本発明の応用例では、サービス制御装置282が通信端末の種別や型式、処理能力や、システムリソースの状態、さらにはその通信端末を利用するユーザの属性、状況(コンテキスト)を考慮して適切なサービス形態を判定しているため、通信端末が複数の無線アクセス手段を有する場合に、どのアクセス手段を用いて通信を行なうかを状態に応じて適宜判定し、さらに通信中にアクセス手段を切り替える等の制御へ応用することも可能となる。つまり、適切なサービス形態を示す情報に加えて、適切な無線アクセス手段を示す情報を管理しておくことにより、本発明のサービス制御装置282において適切な無線アクセス手段の選択を含めた判定を実行することができる。将来の移動通信ネットワークでは、通信端末が高速伝送可能なアクセス種別を用いてデータを受信している時、受信を継続しながら状態の変化に応じて低速・低コストのアクセス種別に切り替えて用いる等、通信端末がアクセス種別を切り替える異種アクセスシステム間ハンドオーバが想定されているため、適切な無線アクセス手段を判定できる機能は重要かつ有効である。
このような異種アクセスシステム間ハンドオーバ処理は、同一のエリアに種別の異なる無線アクセスシステムを提供する無線アクセスネットワーク30が複数存在している場合などに、通信端末が在圏しているルーティングエリアの無線リソースの状態変化等に基づいて、実行される。その場合、サービス制御装置282において適切なサービス形態を判定するのと同時に、適切なアクセス種別も判定することで、サービス制御装置282が異種アクセスシステム間ハンドオーバの実行を判定し、推奨する無線アクセス手段へのハンドオーバ処理の実行を制御することも可能となる。例えば、通信端末が同一のルーティングエリアに在圏しており、ハンドオーバ処理が生じていない時でも、ネットワークや無線リソースなどのシステムリソースの状態変化や新たなサービス起動要求などを契機として、適切な無線アクセス手段が変化することにより、無線アクセスシステム間でのハンドオーバを実行することができる。