JP2007275059A - 核酸の精製方法及び精製装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】水素結合を利用して、固体支持体の親水性表面上で核酸を精製する方法及び装置を提供する。
【解決手段】表面に親水性官能基を有する固体支持体の上で、核酸含有試料とコスモトロピック塩を含む溶液とを接触させて、核酸を前記固体支持体に結合させる段階を含む、核酸の精製方法である。
【選択図】図1
【解決手段】表面に親水性官能基を有する固体支持体の上で、核酸含有試料とコスモトロピック塩を含む溶液とを接触させて、核酸を前記固体支持体に結合させる段階を含む、核酸の精製方法である。
【選択図】図1
Description
本発明は、水素結合を利用して固体支持体の親水性表面上で核酸を精製する方法及び装置に関する。
細胞からDNAを分離(単離)する方法は、DNAと結合する物質を用いて行われている。DNAの分離に供される物質の例として、シリカ、ガラス繊維、陰イオン交換樹脂及び磁性ビーズが挙げられる(非特許文献1、2)。手作業工程を避け、作業者によるエラーを排除するために、幾つかの自動化機械が大量のDNAを抽出する目的で開発された。
高純度二本鎖プラスミドDNA、一本鎖ファージDNA、染色体DNA、及びアガロースゲルで精製されたDNA断片の製造は、分子生物学上、非常に重要である。理想的には、DNAを精製する方法は、簡単かつ迅速であり、付加的な試料操作段階がほとんどないものとする必要がある。前記方法により得られるDNAは、直ちに形質転換、制限酵素分析、ライゲーションまたは配列決定に使用できる。このような方法は、DNA試料の自動生産に非常に魅力的であり、研究系及び診断系の実験室から強く求められている。
従来より、固相(物質)を利用した核酸の精製方法が知られている。例えば、特許文献1には、核酸が結合する固相(物質)を利用した、核酸の精製方法が開示されている。具体的に、前記方法は、出発物質、カオトロピック物質、及び核酸が結合する固相(物質)を混合する段階、結合した核酸を有する前記固相(物質)を液体から分離する段階、並びに前記固相(物質)の核酸複合体を洗浄する段階を含む。
また、特許文献2には、固相マトリックスを利用した核酸の集積(archiving)方法が開示されている。前記方法には、核酸が固相マトリックスに不可逆的に結合するので、前記核酸固相マトリックス複合体を一旦保管しておき、後から分析(delayed analysis)したり、反復分析(repeated analysis)することが可能であるという長所がある。
特許文献3には、固相に標的核酸を付着させるために疎水性有機重合体の固相に標的核酸を含む試料を導入する段階と、前記固相に非イオン性界面活性剤を添加して、付着した標的核酸を除去する段階とを含む試料から、核酸を分離する方法が記載されている。
米国特許第5,234,809号明細書
米国特許第6,291,166号明細書
米国特許第6,383,783号明細書
Rudi,K.ら、Biotechniqures 22,506−511(1997)
Deggerdal,A.ら、Biotechniqures 22,554−557(1997)
しかし、前記特許文献1に記載の方法は、時間が長くかかる上に複雑であり、ラボオンチップ(Lab−On−a−Chip:LOC)には適さない。更に前記方法は、必ずカオトロピック物質を使用しなければならないという問題点がある。また、前記特許文献2の方法によれば、アルミナのような、表面に正電荷を帯びる物質は、NaOHのような塩基性物質を添加することによって親水性化する必要があり、核酸は、親水性化したアルミナと不可逆的に結合するため、もはやアルミナから分離することが不可能になる。また、前記特許文献3は、疎水性の固相を利用する方法については開示しているものの、親水性の固相及びコスモトロピック塩を利用する方法については何ら言及していない。
従って、本発明が解決しようとする技術的課題は、前述した従来技術の問題点を改善するためのものであって、簡単に、広いpH領域で、特別な添加剤を添加することなく核酸を固相に結合させて、ラボオンチップに適合させるための、核酸の精製方法及び精製装置を提供することである。
本発明の発明者らは、前述のような従来技術に基づいて、核酸の精製方法を研究した結果、表面に親水性官能基を有する固体支持体上にコスモトロピック塩を添加すれば、pHに関係なく核酸を結合することが可能であるということを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第1の形態は、表面に親水性官能基を有する固体支持体の上で、核酸含有試料とコスモトロピック塩を含む溶液とを接触させて、核酸を前記固体支持体に結合させる段階を含む、核酸の精製方法である。
本発明の第2の形態は、表面に親水性官能基を有する固体支持体と、マイクロチャネルを通じて前記固体支持体と相互に接続し、前記固体支持体にコスモトロピック塩を供給するコスモトロピック塩溶液保存部とを備える核酸精製装置である。
本発明の第3の形態は、前記核酸精製装置を備えるラボオンチップである。
何らの表面処理もせずに固体支持体をそのまま利用できるので、非常に容易に、広いpH領域で、特別な添加剤を添加することなく核酸を固体支持体表面に結合させることができ、本発明はラボオンチップに有用である。
本発明の第1の形態は、表面に親水性官能基を有する固体支持体の上で、核酸含有試料とコスモトロピック塩を含む溶液とを接触させて、核酸を前記固体支持体に結合させる段階を含む、核酸の精製方法である。
前記精製方法は、親水性官能基を有する固体支持体の表面に、コスモトロピック塩溶液を利用してpHに関係なく核酸を結合させて分離(単離)し、ここに低濃度の塩溶液を添加して核酸を溶出するものである。従来の核酸を分離(単離)する方法によれば、カオトロピック塩を利用するか、pHを調節するか、固体支持体の表面を変形させるか、またはPEGのような他の特別な添加剤を不可避的に添加しなければならないという不都合性があった。その反面、本発明の方法によれば、固体支持体の表面条件にほとんど制約はなく、広いpH領域で、上記のような特別な添加剤を添加することなく核酸を固体支持体に結合できる。
本発明では、核酸を固体支持体に結合させるためにコスモトロピック塩を利用する。カオトロピック塩の場合には、固体支持体の表面が脱水して、核酸が固体支持体と直接水素結合するのでpHの影響を受ける。しかし、コスモトロピック塩の場合には、固体支持体の表面が水和して、安定な水層が形成され、この水和した表面上で核酸が水和すると考えられる。これは、親水性相互作用による塩析効果に起因する。図1は、コスモトロピック塩の存在下で、固体支持体の親水性表面に核酸が結合することを示す模式図である。図1に示すように、コスモトロピック塩の塩析効果によって、シリカ基板110(図1の左側部分)上で水分子が水素結合を形成し、これにより形成された水層120(図1の中央部分)は、核酸100(図1の右側部分)と更に水素結合を形成するので、結果的に、核酸100が安定な水層120を介して固体支持体110と結合する。
従って、固体支持体への核酸の結合は、核酸の結合に一般的に必要な酸性条件下で行われる必要はない。なお、固体支持体の表面がシリカに限定される必要はない。
固体支持体上の親水性官能基は、親水性であれば、特に制限されることはないが、例えばヒドロキシル基、アミン基、カルボキシル基、ポリカルボキシル基などが挙げられる。
上記した核酸の結合段階後に、結合していない試料を洗浄する段階を更に含んでもよい。このように、核酸を固体支持体上に結合させた後、前記固体支持体に結合していない試料を洗浄することにより、核酸を更に純粋な状態に精製することが可能となる。洗浄液は、核酸を固体支持体に結合させる時に利用する溶液を利用してもよい。
核酸溶出液を添加して、前記固体支持体に結合した核酸を溶出させる段階を更に含んでもよい。固体支持体に結合した状態の核酸そのものを利用することも可能であるが、例えば、分離(単離)した核酸の増幅または検出のように、結合した核酸をより効率的に利用するためには、固体支持体に結合した核酸を溶出することが要求される。
本発明の方法において、前記コスモトロピック塩は、特に限定されることはないが、硫酸塩(SO4 2−を含む塩)、リン酸塩(HPO4 2−を含む塩)、水酸化物塩(OH−を含む塩)、フッ化物塩(F−を含む塩)、ギ酸塩(HCOO−を含む塩)、及び酢酸塩(CH3COO−を含む塩)からなる群から選択されうる。コスモトロピック塩は、ホフマイスター(Hofmeister)シリーズに従って、蛋白質の結晶化を誘導し、疎水性粒子に対する塩析イオンとして機能し、水構造を形成する。
前記核酸含有試料及び前記コスモトロピック塩を含む溶液は、pHが3.0〜10.0でありうる。また、pHが3.0〜7.0であることがより好ましく、3.0〜5.0であることが特に好ましい。前記核酸含有試料及び前記コスモトロピック塩を含む溶液のpHがかかる範囲内にある場合、DNAの物理的、化学的変性が生じることはなく、これらの使用が後続の工程に影響を与える可能性が極めて低くなりうる。
前記コスモトロピック塩の濃度は100〜2,000mMでありうる。前記濃度は、500〜2,000mMであることがより好ましく、1,000〜2,000mMであることが特に好ましい。前記コスモトロピック塩の濃度がかかる範囲内にある場合、固体支持体に結合する核酸の結合効率が増大し、かつ溶液の製造が容易になりうる。
前記固体支持体は、特に限定されることはないが、スライドガラス、シリコンウエハー、磁性ビーズ、ポリスチレン基板、膜及び金属板からなる群から選択されうる。固体支持体は、表面に親水性官能基を有するものであれば、いずれも可能であるが、水に溶解しない性質を有しなければならない。もし、水に溶解してしまうと、核酸精製後に核酸溶液と固体支持体とを分離し難いためである。また、前記固体支持体は表面積の大きいことが好ましく、これにより、金属酸化物を多く蒸着でき、更にはガラスやウエハーのような平坦な固体支持体の場合、ピラー形態に表面を加工することも可能となる。なお、ALD(atomic layer deposition)などによる金属酸化膜の製造時に、その製造方法に応じて親水性官能基を有する固体支持体表面、すなわち親水性酸化膜は形成可能である。
前記核酸溶出液は、特に限定されることはないが、リン酸塩、トリス、ヘペス(HEPES)、チェス(CHES)及びホウ酸塩からなる群から選択される1種以上を含む溶液でありうる。
前記核酸溶出液のpHは5.0〜10.0であることが好ましい。また、pHが6.0〜9.0であることがより好ましく、7.0〜9.0であることが特に好ましい。pHがかかる範囲内にある場合、固体支持体に結合した核酸の回収率(溶出効率)が増大し、かつ後続の工程に影響を与える可能性が極めて低くなりうる。
前記核酸溶出液の濃度は100mM以下でありうる。また、前記濃度が10〜50mMであることがより好ましい。濃度が前記範囲内にある場合、固体支持体に結合した核酸の回収率(溶出効率)が増大し、かつ後続の工程に影響を与える可能性が極めて低くなりうる。なお、前記核酸溶出液の濃度が0mMの場合、前記核酸溶出液は水である。
前記固体支持体に対する核酸の結合または溶出段階は、静止状態または流動状態で行われうる。核酸と前記固体支持体とを静止状態で接触させることも可能であるし、流動状態で接触させることも可能である。後者の場合、核酸を含む溶液を流動制御システムで流動させながら固体支持体と核酸とを接触させうる。流動制御システムにおいて、固体支持体は、平面形態であってもよいが、核酸と固体支持体との接触機会を増やして、更に多くの核酸を結合させるためにピラー形態であってもよい。
前記核酸含有試料は、特に限定されることはないが、血液、血清、尿、唾液、接眼レンズ液、脳脊髓液、牛乳、腹水液、滑液、腹膜腔液、羊水、組織、発酵ブロス、細胞培養液、核酸増幅反応産物及び核酸合成産物からなる群から選択されうる。本発明の核酸を含む試料は、哺乳動物、植物、バクテリア、または酵母由来でありうる。前記試料は、単一細胞形態または組織形態のいずれであってもよく、細胞または組織は、インビトロの培養物由来であってもよい。
本発明の方法によって精製される核酸は任意の分子量であってよく、一本鎖形態、二本鎖形態、円形、プラスミド形態などがありうる。例えば、長さが約10〜50ヌクレオチドの小さなオリゴヌクレオチドまたは核酸分子、約1000〜10,000ヌクレオチドのより長い分子、約50〜500kbのもっと大きな分子量の核酸が、本発明の方法により分離できる。
前記固体支持体から核酸を溶出させた後、溶出した核酸を検出または増幅する段階を更に含んでもよい。検出段階においては、溶出した核酸は、電気泳動、塩基配列決定などにより検出できる。また、溶出した核酸が微量であるために直接検出することが不可能な場合には、PCRなどを利用して溶出した核酸を増幅することによって容易に検出できる。従って、溶出した核酸を検出及び増幅する段階を共に含むこともありうる。
核酸を増幅する段階は、前記核酸溶出液を除去することなく行われうる。核酸溶出液は、核酸の増幅に利用された緩衝液とほぼ同様の組成を有するので、核酸溶出液を除去する段階を必要とせず、核酸溶出液中に溶出した核酸を直ちに増幅させることが可能である。
本発明の第2の形態は、表面に親水性官能基を有する固体支持体と、マイクロチャネルを通じて前記固体支持体と相互に接続し、前記固体支持体にコスモトロピック塩を供給するコスモトロピック塩溶液保存部とを備える核酸精製装置である。
本発明の核酸精製装置は、実質的に、コスモトロピック塩溶液保存部、及び表面に親水性官能基を有する固体支持体からなる。前記コスモトロピック塩溶液保存部は、固体支持体にコスモトロピック塩を供給する部分であって、マイクロチャネルを通じて前記固体支持体と相互に接続する。分離(単離)しようとする核酸を含有する試料を前記装置に導入すると、コスモトロピック塩溶液保存部でコスモトロピック塩が固体支持体に供給され、核酸及びコスモトロピック塩を含む試料が混合され、その後、コスモトロピック塩の塩析効果によって核酸が固体支持体に結合する。結合した核酸を溶出するために、本発明の核酸精製装置は、マイクロチャネルを通じて前記固体支持体と相互に接続し、前記固体支持体に核酸溶出液を供給する核酸溶出液保存部を更に備えうる。
前記固体支持体の構造(形態)は、特に限定されることはないが、平面、ピラー、ビーズ及び篩からなる群から選択されうる。
前記固体支持体は、特に限定されることはないが、スライドガラス、シリコンウエハー、磁性ビーズ、ポリスチレン基板、膜及び金属板からなる群から選択されうる。固体支持体は、表面に親水性官能基を有するものであれば、いずれも可能であるが、水に溶解しない性質を有しなければならない。もし、水に溶解してしまうと、核酸精製後に核酸溶液と固体支持体とを分離し難いためである。また、前記固体支持体は、表面積の大きいことが好ましく、これにより、金属酸化物を多く蒸着でき、更にはガラスやウエハーのような平坦な固体支持体の場合、ピラー形態に表面を加工することも可能となる。なお、ALD(atomic layer deposition)などによる金属酸化膜の製造時に、その製造方法に応じて親水性官能基を有する固体支持体表面、すなわち親水性酸化膜は形成可能である。
前記コスモトロピック塩溶液は、コスモトロピック塩溶液保存部で保存され、マイクロチャネルを通じて固体支持体に供給される。前記コスモトロピック塩は、特に限定されることはないが、硫酸塩(SO4 2−を含む塩)、リン酸塩(HPO4 2−を含む塩)、水酸化物(OH−を含む塩)、フッ化物(F−を含む塩)、ギ酸塩(HCOO−を含む塩)、及び酢酸塩(CH3COO−を含む塩)からなる群から選択されうる。
本発明の装置は、前記固体支持体から核酸が溶出した後、溶出した核酸を検出及び/または増幅可能な、核酸検出部及び核酸増幅部の少なくとも一方を更に備えてもよい。核酸検出部は、溶出した核酸の存在の有無を確認するために、電気泳動装置、塩基配列決定機(シーケンサー)などを利用できる。また、核酸増幅部は、溶出した核酸が微量であるために直接検出することが不可能な場合に、PCRなどを利用して溶出した核酸を増幅する役割を果たす。従って、核酸検出部または核酸増幅部を共に備えていてもよい。
本発明の第3の形態は、前記核酸精製装置を備えるラボオンチップ(lab−on−a−chip)である。本発明の核酸精製装置において、各機能的要素は、公知のマイクロ流体技術及びMEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスを利用するプロセスオンチップ(process−on−a−chip)で具現することが可能であるだけでなく、ラボオンチップで具現することも可能である。
以下、本発明を、添付された図面を参照しつつ実施例を通じて詳細に説明する。これら実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の技術的範囲が以下の実施例によって限定されるものではない。
<比較例1>Qiagen DNA精製システムを利用した、pHによる核酸結合効率
Qiagen DNA精製システムを利用してpHによる核酸結合効率を調べた。核酸を含む試料として、大腸菌(E.coli)BL21のgDNA 4688ngを含む大腸菌溶解物を使用し、基板の表面として、シリカ表面を有するQiagenキット(Cat.#51306)を使用し、pH4.0、7.0及び10.0で核酸の結合効率を測定した。
Qiagen DNA精製システムを利用してpHによる核酸結合効率を調べた。核酸を含む試料として、大腸菌(E.coli)BL21のgDNA 4688ngを含む大腸菌溶解物を使用し、基板の表面として、シリカ表面を有するQiagenキット(Cat.#51306)を使用し、pH4.0、7.0及び10.0で核酸の結合効率を測定した。
図2は、pHによる、シリカ基板に結合する大腸菌gDNAの結合効率を示すグラフである。図2より、pH4.0で核酸の結合効率が最も高く、pH10.0で核酸の結合効率が最も低いので、pHが増加するほど核酸の結合効率が顕著に減少するということが分かる。これは、溶液のpHが増加すると、基板表面の負電荷が増大し、増大した負電荷と負電荷を有するDNAとの間の静電的な反発力が増大するため、DNA結合効率が減少することによる。
従って、コスモトロピック塩を利用しないQiagen DNA精製システムは、低いpHでは核酸を十分に結合させることが可能である一方、高いpHでは核酸の結合効率が顕著に減少するので、核酸を分離(単離)する際にpHによる制約を少なからず受けるということが分かる。
<実施例1>本発明の方法による核酸の結合効率
本発明の方法を用いて核酸の結合効率を調べた。コスモトロピック塩としてSO4 2−を含む硫酸塩(Na2SO4)を使用し、カオトロピック塩としてSCN−を含むチオシアネート(NaSCN)を利用し(参考例)、これらの塩の濃度が、それぞれ0(対照群として)、10、1,000及び2,000mMの水溶液を使用し、pHが4.0、6.5〜7.5、及び10.0で行ったことを除いては、比較例1と同様に実験を行った。
本発明の方法を用いて核酸の結合効率を調べた。コスモトロピック塩としてSO4 2−を含む硫酸塩(Na2SO4)を使用し、カオトロピック塩としてSCN−を含むチオシアネート(NaSCN)を利用し(参考例)、これらの塩の濃度が、それぞれ0(対照群として)、10、1,000及び2,000mMの水溶液を使用し、pHが4.0、6.5〜7.5、及び10.0で行ったことを除いては、比較例1と同様に実験を行った。
図3は、コスモトロピック塩及びカオトロピック塩のpH及び濃度による大腸菌gDNAの結合効率を示すグラフである。図3において、左半分のグラフは、コスモトロピック塩の例であるSO4 2−を含む硫酸塩を利用して大腸菌gDNAの結合効率を測定したものであり、右半分のグラフは、カオトロピック塩の例であるSCN−を含むチオシアネートを使用して大腸菌gDNAの結合効率を測定したものである。図3より、全般的にpH4.0で核酸の結合効率が最も高く、pH10.0で核酸の結合効率が最も低く、塩の濃度が増加するほど核酸の結合効率も増加する。しかし、比較例1とは異なり、コスモトロピック塩の場合には、SO4 2−を含む硫酸塩の濃度が増加するほどpH10.0でも核酸の結合効率が増加し、SO4 2−を含む硫酸塩の濃度が2,000mMである場合、pHが4.0と10.0とで核酸の結合効率に大きな差がないということが分かる。一方、カオトロピック塩を使用した場合、低い塩濃度ではコスモトロピック塩と同様の結合効率のパターンを示すが、2,000mMの塩濃度では、コスモトロピック塩とは異なり、pHが増加するにつれて、核酸の結合効率は顕著に減少するということが分かる。
上記の結果は水和の効果に起因している。すなわち、コスモトロピック塩は基板表面を水和することで水ネットワークを強化し、シリカ表面上における水層の強いネットワークは、DNAが水素結合を通じて表面に結合する際に重要な役割を果たす。
従って、本発明のコスモトロピック塩を用いて基板表面に核酸を結合させる場合、適量のコスモトロピック塩を添加すれば、pHに関係なく、核酸を基板表面に効率良く結合させることができる。
<実施例2>基板表面の種類による核酸の結合効率
基板表面の種類による核酸の結合効率を調べた。基板として、ガラスビーズ、ポリカルボキシル末端基を有するガラスビーズ、及びカルボキシル末端基を有するガラスビーズを使用した。コスモトロピック塩として1,000mMの硫酸ナトリウム(pH4.0、pH7.0)を使用し、核酸は、大腸菌gDNA 1515ngを利用したことを除いては、比較例1と同様に実験を行った。
基板表面の種類による核酸の結合効率を調べた。基板として、ガラスビーズ、ポリカルボキシル末端基を有するガラスビーズ、及びカルボキシル末端基を有するガラスビーズを使用した。コスモトロピック塩として1,000mMの硫酸ナトリウム(pH4.0、pH7.0)を使用し、核酸は、大腸菌gDNA 1515ngを利用したことを除いては、比較例1と同様に実験を行った。
図4は、基板表面の種類による大腸菌gDNAの結合効率を示すグラフである。図4において、D.D.Wで示された結果は、コスモトロピック塩の非存在下で蒸溜水を利用した場合の結果であり、pH4.0及びpH7.0で示された結果は、各pH下でのコスモトロピック塩として1,000mMの硫酸ナトリウムを添加した場合の結果である。図4より、コスモトロピック塩を添加しない場合には、核酸の結合効率が非常に低い一方、コスモトロピック塩を添加した場合には、核酸の結合効率が顕著に高いことが分かる。また、pH4.0及びpH7.0では、基板表面の種類によって核酸の結合効率がほとんど変化しないことが分かる。
従って、基板に核酸を結合させる際にコスモトロピック塩を添加すると、pHまたは基板表面の種類に関係なく核酸が効率的に結合する。
<実施例3>本発明の方法による核酸の回収率
本発明の方法を用いて基板に結合させた核酸の回収率を調べた。基板としてピラー形態のシリカチップを利用し、コスモトロピック塩として2,000mMの硫酸ナトリウム(pH4.0)を使用し、核酸として大腸菌gDNA 1377ngを使用し、核酸溶出液として10mM Tris−HCL(pH9.0)を使用したことを除いては、比較例1と同様に実験を行った。核酸溶出液は、一般的なPCR緩衝液と類似した組成である。対照群としてQiagen溶液を使用し、核酸の結合及び回収率を比較した。
本発明の方法を用いて基板に結合させた核酸の回収率を調べた。基板としてピラー形態のシリカチップを利用し、コスモトロピック塩として2,000mMの硫酸ナトリウム(pH4.0)を使用し、核酸として大腸菌gDNA 1377ngを使用し、核酸溶出液として10mM Tris−HCL(pH9.0)を使用したことを除いては、比較例1と同様に実験を行った。核酸溶出液は、一般的なPCR緩衝液と類似した組成である。対照群としてQiagen溶液を使用し、核酸の結合及び回収率を比較した。
図5は、コスモトロピック塩を使用した大腸菌gDNAの結合効率及び回収率を示すグラフである。図5において、Aは、コスモトロピック塩としてSO4 2−を含む硫酸塩を使用した場合の結果であり、Bは、対照群としてQiagen溶液を使用した場合の結果である。結合効率のグラフは、A、Bそれぞれの左側の棒グラフに相当し、回収率のグラフは右側の棒グラフに相当する。図5から分かるように、コスモトロピック塩及びQiagen溶液のどちらも、pH4.0では核酸の結合効率が非常に高い。しかし、DNAの回収率(溶出効率)は、Qiagen溶液より本発明のコスモトロピック塩の方が顕著に高い。
従って、コスモトロピック塩を使用して核酸を精製すると、従来に比して核酸の結合効率及び回収率が顕著に高いので、本発明の方法は核酸の精製に効率的に利用できる。
本発明は、核酸の精製関連の技術分野に好適に用いられる。
100 核酸、
110 シリカ基板、固体支持体、
120 水層。
110 シリカ基板、固体支持体、
120 水層。
Claims (19)
- 表面に親水性官能基を有する固体支持体の上で、核酸含有試料とコスモトロピック塩を含む溶液とを接触させて、核酸を前記固体支持体に結合させる段階を含む、核酸の精製方法。
- 核酸溶出液を添加して、前記固体支持体に結合した核酸を溶出させる段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
- 前記コスモトロピック塩は、硫酸塩、リン酸塩、水酸化物塩、フッ化物塩、ギ酸塩及び酢酸塩からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
- 前記核酸含有試料及び前記コスモトロピック塩を含む溶液は、pHが3.0〜10.0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記コスモトロピック塩の濃度は100〜2,000mMである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記固体支持体は、スライドガラス、シリコンウエハー、磁性ビーズ、ポリスチレン基板、膜及び金属板からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記核酸溶出液は、リン酸塩、トリス、ヘペス、チェス及びホウ酸塩からなる群から選択される1種以上を含む溶液である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記核酸溶出液のpHは5.0〜10.0である、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記核酸溶出液の濃度は100mM以下である、請求項2〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 前記核酸含有試料は、血液、血清、尿、唾液、接眼レンズ液、脳脊髓液、牛乳、腹水液、滑液、腹膜腔液、羊水、組織、発酵ブロス、細胞培養液、核酸増幅反応産物及び核酸合成産物からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記固体支持体から核酸を溶出させた後、溶出した核酸を検出または増幅する段階を更に含む、請求項2〜10のいずれか1項に記載の方法。
- 核酸の増幅は、前記核酸溶出液を除去することなく行われる、請求項11に記載の方法。
- 表面に親水性官能基を有する固体支持体と、
マイクロチャネルを通じて前記固体支持体と相互に接続し、前記固体支持体にコスモトロピック塩を供給するコスモトロピック塩溶液保存部と、
を備える核酸精製装置。 - マイクロチャネルを通じて前記固体支持体と相互に接続し、前記固体支持体に核酸溶出液を供給する核酸溶出液保存部を更に備える、請求項13に記載の装置。
- 前記固体支持体の構造は、平面、ピラー、ビーズ及び篩からなる群から選択される、請求項13または14に記載の装置。
- 前記固体支持体は、スライドガラス、シリコンウエハー、磁性ビーズ、ポリスチレン基板、膜及び金属板からなる群から選択される、請求項13〜15のいずれか1項に記載の装置。
- 前記コスモトロピック塩は、硫酸塩、リン酸塩、水酸化物塩、フッ化物塩、ギ酸塩及び酢酸塩からなる群から選択される、請求項13〜16のいずれか1項に記載の装置。
- 核酸増幅部及び核酸検出部の少なくとも一方を更に備える、請求項13〜17のいずれか1項に記載の装置。
- 請求項13〜18のいずれか1項に記載の核酸精製装置を備える、ラボオンチップ。
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