JP2007273901A - 半導体発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】単位共振器あたりの電流密度を低減し、長寿命とした窒化物系半導体III−V族化合物レーザを得る。
【解決手段】光閉じ込め係数Γが小さくなると、内部損失が低減するので、単位共振器長あたりの電流密度も低減する。本発明では、Γを1.5以上3.0以下に設定し、共振器長を800μm以上2,000μm以下とする。これにより、従来に比べて小さな内部損失を持つ構造としたうえで共振器を長くすることになるので、単位共振器あたりの電流密度を低減し、長寿命とした窒化物系半導体III−V族化合物レーザが得られる。
【選択図】図9

Description

この発明は、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体レーザや発光ダイオード等の半導体発光素子に関するものである。
近年、光ディスクの高密度化に必要である青色領域から紫外線領域におよぶ発光が可能な半導体レーザとして、AlGaInNなどの窒化物系III−V族化合物半導体を用いた窒化物系半導体レーザの研究開発が盛んに行われ、すでに実用化されている。
これまでに報告されている窒化物系半導体レーザにおいては、その活性層構造として、InGaNからなるウエル層(InGaNウエル層)と、当該ウエル層よりもIn組成比が小さい値(通常0.02程度)をとるInGaNからなるバリア層(InGaNバリア層)とが交互に積層した多重量子井戸構造が用いられる。上述した多重量子井戸構造の活性層を有する半導体レーザとして例えば、特許文献1で開示された窒化ガリウム系半導体発光素子がある。
特開平10−261838号公報
ところで、窒化物系半導体レーザは、ディスク用途に主として用いられるGaAs系レーザダイオード(LD)や、通信用途に主として用いられるInP系レーザダイオード(LD)に比べて、長期通電中の光出力低下量が大きいことが知られている。
光出力を低下しないようにするには、動作電流を大きくしていく必要がある。ここで、動作電流の値が初期値に対してある一定以上の値になると、素子に故障が生じたと見なして、その値になった時間を素子寿命と定義している。大きな光出力を得るためには、動作電流を大きくする必要があるが、動作電流が大きいと動作電圧も増大して、素子に入力される電力が大きくなる。また、共振器内における光密度も増大する。このため、一般に、素子寿命は、高光出力動作時ほど短くなる。
素子寿命を改善する一つの方法に、共振器長を大きくする方法がある。この方法は、特に、GaAs系レーザダイオードで用いられている。
共振器長を大きくすると、しきい値および動作電流が増大するものの、単位共振器長あたりのしきい値電流密度および動作電流密度は小さくなり、動作電圧も低減する。その結果、動作時の活性層やその近傍の温度が低下し、これによって素子寿命が増大すると考えられている。
しかしながら、窒化物系半導体レーザにおいては、ウエル層の層方向(成長方向と垂直な方向)の位置によって、InGaNウエル層のIn組成比が異なる値をとることが知られている。すなわち、窒化物系半導体レーザでは、ウエル層の層方向に沿ってIn組成比が大きく揺らいでおり、これが原因となって、発生した光の共振器内での再吸収、いわゆる内部損失が非常に大きくなる。
ここで、半導体レーザにおける前端面と後端面の微分効率の和である外部微分効率ηtotalは、前端面反射率をRf、後端面反射率をRr、共振器長をL、内部量子効率をηi、内部損失をαiとすると、以下の式(1)によって表される。
Figure 2007273901
式(1)から明らかであるように、共振器長Lを大きくしていくと、外部微分効率ηtotalが小さくなっていくが、この変化は内部損失αiが大きいほど顕著となる。したがって、内部損失の大きな窒化物系半導体レーザでは、共振器長を大きくしていったときの外部微分効率の低下は著しいものとなる。このため、動作電流が非常に大きくなって、共振器長を大きくした場合においても、単位共振器長あたりの動作電流密度を低減することが困難になる。このことは、共振器を長くすることによる寿命増大の効果が非常に小さいことを意味している。
したがって、内部損失の小さいGaAs系レーザダイオードでは、共振器長を大きくすることによって素子寿命を改善することができるが、内部損失の大きい窒化物系半導体レーザでは、非常に小さい程度でしか改善できないか、または、逆に素子寿命を低下させてしまうという問題があった。
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光レーザにおいて、従来に比べ小さな内部損失を持つ構造としたうえで、そのレーザ共振器を長くすることで、単位共振器あたりの電流密度を低減し、長寿命とした窒化物系半導体III−V族化合物レーザを得ることを目的とする。
本発明の他の目的および利点は以下の記載から明らかとなるであろう。
本発明は、少なくとも2つのウエル層を含む多重量子井戸構造の活性層を有する窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、少なくとも2つのウエル層は少なくとも2つのInGaNウエル層を含み、発光時における素子の全導波光のうち、少なくとも2つのInGaNウエル層にある光の割合を示す光閉じ込め係数(%)が1.5以上3.0以下に設定され、共振器長が800μm以上2,000μm以下であることを特徴とするものである。
本発明の半導体発光素子によれば、光閉じ込め係数(%)を1.5以上3.0以下に設定し、且つ、共振器長を800μm以上2,000μm以下とするので、従来に比べ小さな内部損失とすることができ、また、素子寿命を長くすることが可能となる。
<発明の原理>
(問題点の検討)
InGaN材料のバンドギャップは、In組成比が大きくなる程、小さくなるという負の相関を有している。したがって、従来の問題点の原因となるInGaNウエル層の層方向におけるIn組成比の揺らぎの存在は、ウエル層内でのバンドギャップが層方向の位置により異なることを意味する。
図1は、InGaNウエル層における層方向のIn組成比の揺らぎによるバンドギャップの状態を示す説明図である。同図に示すように、In組成比大領域31ではバンドギャップが相対的に小さくなり、In組成比小領域32ではバンドギャップが相対的に大きくなる。
図2はInGaNウエル層における利得領域及び吸収領域の存在を示す説明図である。同図に示すように、InGaNウエル層に電子及び正孔が注入され、レーザ発振している時には、バンドギャップが小さい領域ではキャリアが多く、バンドギャップが大きい領域ではキャリアが少ない。これはInGaNウエル層内においてキャリアが拡散した結果生じる現象である。
通常、半導体レーザの利得領域となるウエル層においては、キャリア密度の大小により利得の大小が決定される。すなわち、キャリア密度がある一定の値(透明化キャリア密度と呼ばれる値)よりも高い領域は利得領域となるが、キャリア密度が透明化キャリア密度よりも小さい領域では、利得が負、すなわち、光の吸収領域となる。
以上のことを考え合わせると、InGaN材料をウエル層として用いた窒化物系III−V族化合物半導体レーザにおいては、図2に示すように、発振時においても、利得領域に加え、キャリア密度が透明化キャリア密度より小さい光の吸収領域が存在することにより、当該吸収領域において光吸収が起こっていることが推測される。
一方、半導体レーザにおける前端面と後端面の微分効率の和である外部微分効率ηtotalは、前述の式(1)によって表される。InGaNウエル層に前述したような光の吸収が存在するということは、内部損失αiが大きいということを意味することから、内部損失αiが増加する分、外部微分効率ηtotalが減少することを意味する。このように、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体レーザでは、ウエル層でのIn組成比揺らぎに起因して発生するウエル層内での光吸収が、高い外部微分効率ηtotalの実現のための障害となっていることがわかる。
これまで報告された窒化物系III−V族化合物の半導体レーザでは、共振器長を600μm程度とすることが多く、また、前面から得られる微分効率を大きくするため、前面に10%程度の低反射率コーティングを、後面に95%程度の高反射率コーティングを施しているものが多い。それにも関わらず、前述したIn組成比の揺らぎに起因する障害によって、前端面の微分効率は1.6W/Aよりも小さいものとなり、それ以上の微分効率を有する半導体レーザの報告はなされていない。
信頼性向上のためには、単位共振器長あたりのしきい値電流密度や動作電流密度を低減することが効果的であり、これを実現するためには、共振器長Lを大きくすることが望ましい。しかしながら、式(1)から分かるように、共振器長Lの増大は、外部微分効率の低下を引き起こして動作電流を増大させる。また、単位共振器長あたりの電流密度も必ず小さくなるものでもない。
(問題点の解決についての検討)
共振器増大による外部微分効率の低下をできるだけ抑えるためには、内部損失αiをできるだけ小さくする必要がある。そして、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体レーザでは、In組成比の揺らぎに起因して発生するInGaNウエル層内での光吸収を低減することが有効である。
InGaNウエル層内での光吸収は、ウエル層における光閉じ込め係数Γ(発光時における半導体レーザの全導波光のうち、ウエル層内にある光の割合)に比例することから、ウエル層内での光吸収を低減するためには、この光閉じ込め係数Γの低減を図ることが有効である。
しかしながら、レーザ光の利得、すなわちモード利得も光閉じ込め係数Γに比例することからも、光閉じ込め係数Γを小さくすると、モード利得が小さくなり、発振するために必要なキャリア密度(しきい値キャリア密度)が大きくなり、光出力−電流特性における発振しきい値(しきい値電流)が増大するといった問題が発生する。このような問題により、従来の窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体レーザでは、ウエル層への光閉じ込め係数Γを、3.5〜4.5%前後で、設計、作製することが一般的であった。
これまでのGaAs系材料や、InP系材料を用いたレーザにおいても、ウエル層での光閉じ込め係数Γを極端に小さくすることは、上述した同様な問題が発生するため好ましくなく、行われていないのが実状であった。
上述のように、ウエル層への光閉じ込め係数Γは3.5〜4.5%前後が適切であるとの技術常識が支配的な中、本願の発明者はさらに光閉じ込め係数Γを小さくした、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体レーザを試験的に作製し、外部微分効率向上の可能性を検討した。
図3は、しきい値電流の光閉じ込め係数Γに対する依存性(以下、「Γ依存性」と略記する場合あり)を示すグラフである。図4は、前端面から出射するレーザ光の微分効率のΓ依存性を示すグラフである。なお、図3および図4は、共振器長を600μmとしたときのΓ依存性を示したグラフであり、さらに、図4は、前端面に10%、後端面に95%の反射率を持たせるようにコーティングを施したときのグラフである。
ここで、ウエル層への光閉じ込め係数Γは、光の進行方向に対し垂直な二次元面でのレーザ層構造について、その屈折率から光強度分布をシミュレーションした後、ウエル層に相当する領域における光強度の全体に対する割合を計算することにより求めたものである。なお、多重量子井戸構造における光閉じ込め係数Γとは、複数のウエル層それぞれの光閉じ込め係数の和を意味する。
作製した半導体レーザの活性層は、それぞれが5nmの膜厚を有する2つのウエル層を有する2重量子井戸構造を有している。従来、この構造におけるウエル層への光閉じ込め係数Γは、約3.7%程度であるため、この場合、しきい値電流は30mA以下(図3参照)となり、微分効率は1.5W/A以下(図4参照)となる。
しかしながら、光閉じ込め係数Γは3.0%以下の領域について検討すると、図3で示すしきい値電流のΓ依存性から、しきい値電流の劣化(上昇)は比較的小さく、図4で示す微分効率のΓ依存性から、微分効率は大幅に改善(上昇)するという特性を有していることがわかる。
窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体レーザにおいて、上述した特性を有する理由としては、以下の点が挙げられる。一般に、光閉じ込め係数Γの減少によるモード利得の減少があった場合、それを補うだけのウエル層の利得が必要となるため、発振させるためには、ウエル層へのキャリア注入量の増大(しきい値キャリア密度増大)が必要となるが、この材料系においては、キャリア濃度変化量に対するウエルの光利得変化量の割合(微分利得)が非常に大きく、キャリア注入量を小量で済ますことができるため、しきい値電流の増大が大きく生じないと考えられる。
また、前述したように、InGaNウエル層は、In組成比の揺らぎがウエル層内で生じることにより、ウエル層内での光吸収が他の材料系に比べても極めて大きくなっている性質を有しており、この性質が光閉じ込め係数Γの低減時に微分効率が大きく改善する理由にもなっていると考えられる。
また、光閉じ込め係数Γの低減による光吸収量低減により、発振に必要なモード利得が低減し、これがこれがしきい値電流の同大の影響をある程度相殺することも、Γ依存性によるしきい値電流の増大がそれほど大きくならない理由と考えられる。
図3及び図4で示すΓ依存性から、光閉じ込め係数Γが1.5%より小さくなくと、しきい値電流が大幅に増大する一方、微分効率の改善量も小さくなることがわかる。したがって、光閉じ込め係数Γの下限としては、1.5%程度が好ましいと判断される。
また、図4で示す微分効率のΓ依存性から、光閉じ込め係数Γを3.0%以下にすると、微分効率は1.6W/A以上得られることがわかる。さらには、光閉じ込め係数Γを2.6%以下にすることにより、1.7W/A以上の微分効率が得られる。
したがって、2つのInGaNウエル層を含む2重量子井戸構造の活性層を有する半導体レーザにおいて、微分効率が1.6W/A以上でしきい値電流が実用レベルとなるには、ウエル層の光閉じ込め係数Γが1.5〜3.0の範囲にする必要があり、微分効率が1.7W/A以上でしきい値電流が実用レベルとなるには、ウエル層の光閉じ込め係数Γが1.5〜2.6の範囲にする必要があるといえる。
これまで報告されている窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体レーザにおいて、前端面から出射するレーザ光の微分効率の値は1.6W/Aよりも小さかったことから、本発明により、従来では得ることが不可能であった微分効率を得ることが可能となることがわかる。
微分効率を高くすることができれば、同じ光出力を出すのに必要とされる電流値を低く抑えることができるため、レーザ駆動回路の負荷軽減、消費電力低減による発熱量の低減など、その利点は極めて大きくなる。
図5及び図6は、膜厚が5nmの1つのウエル層のみで構成された活性層を有する半導体レーザにおけるしきい値電流及び微分効率のΓ依存性をそれぞれ示す説明図である。
これらの図に示すように、光閉じ込め係数Γの減少に伴うしきい値電流の劣化(上昇)度合が著しく、微分効率の改善(上昇)効果もあまり発揮されていない。このことは、活性層を構成するウエル層の数が2つの場合の半導体レーザにおけるしきい値電流及び微分効率のΓ依存性(図3及び図4)との比較から明白である。
1つのウエル層のみで構成された活性層を有する半導体レーザにおけるしきい値電流及び微分効率のΓ依存性が上述した性質を有するのは、ウエル層が1つの場合には、ウエル内のキャリアに対してポテンシャル障壁が1つしかなく、オーバーフローした結果、ウエル内で再結合することなく電子が漏れるため光出力に寄与しないことに起因すると考えられることができる。
また、1つのウエル層の場合において、それと同じ厚さを持つ2つのウエル層の場合と同様な光閉じ込め係数Γを得ようとした場合、ウエル層の膜厚を2つのウエル層の場合におけるウエル層の膜厚の和と同程度に厚くするか、垂直方向の光の分布、すなわり近視野像をできるだけウエル近傍に集中させた形にする必要がある。
しかしながら、ウエル層の膜厚を厚くした場合には、ウエル層の量子効果が小さくなることにより、しきい値電流の増大等のデメリットが発生し、垂直方向の近視野像を小さくすると、遠視野像が大きくなり、光ピックアップ用用途しては不適な特性となる。
このように活性層を構成するウエル層の数が“1”の場合、種々の問題が発生することが考えられることから、本発明の効果を得るためには、ウエル層の数は2以上であることが望ましいと考えられる。また、ウエル層の数が“3”より多い場合は、上記したウエル数が“1”の場合の問題が発生しない上に、通常の設計においては、ウエル層の体積が大きくなるとこと、さらに活性層近傍の屈折率が大きくなることとの2つの効果により、光閉じ込め係数Γが大きくなる傾向が強いため、本発明を用いることによる光吸収の低減効果は、より大きなものとなることが多い。
ここで、半導体レーザの信頼性向上のためには、共振器長を長くして、単位共振器長あたりのしきい値電流密度や動作電流密度を小さくするのが有効であることが、GaAs系半導体レーザ等の例で示されている。この主な理由は、発熱の減少であると考えられる。ただし、上記の式(1)から分かるように、共振器長を長くすると、内部損失に起因した外部微分効率の低下が発生する。この際、内部損失が大きいほど、長共振器化に伴う外部微分効率の低下が大きくなる。
窒化物系半導体レーザでは、上述したように、ウエル層での光吸収に起因する内部損失が大きい。したがって、外部微分効率の低下が顕著となり、共振器長を長くしたところで、外部微分効率の低下による動作電流の増大によって、単位共振器あたりの電流密度を十分に低減することが困難となる。単位共振器あたりの電流密度を十分に低減するには、内部損失を低減することによって、共振器長を長くしたときの外部微分効率の低下を小さくすることが望ましい。そして、内部損失の低減には、上述したような、ウエル層への光閉じ込め係数の低減が効果的である。
図7は、この内部損失の低減を目的として、ウエル層への光閉じ込め係数Γを変化させた場合における、外部微分効率の共振器長依存性の測定結果である。また、図8は、動作電流の共振器長依存性の測定結果である。さらに、図9は、動作電流[mA]を共振器長[μm]で割って得られた、単位共振器長あたりの電流密度の共振器長依存性の測定結果である。なお、動作電流は、光出力が200mWとなったときの注入電流値である。
図7〜図9から分かるように、Γを小さくするほど、外部微分効率が向上し、動作電流は低減し、そして、単位共振器長あたりの電流密度も低減する。図9より、単位共振器長あたりの電流密度を小さくするには、共振器長を800μm以上とすることが好ましく、900μm以上とすることがより好ましい。一方、共振器長が長くなると、単位共振器長あたりの動作電流の低減量は小さくなる。また、共振器が長すぎる場合には、サブマウントからの応力の増大等の問題が発生する。したがって、共振器長は、2,000μm以下であることが好ましく、1,600μm以下であることがより好ましい。また、Γが1.5%より小さい場合は、前述したように、しきい値が大幅に増大することから好ましくないと言える。
<実施の形態1>
図10は、この発明の実施の形態1である窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体レーザ(半導体発光素子)の構造を示す断面図である。本実施の形態の半導体レーザは、リッジ構造及びSCH(Separate Confinement Heterostructure)構造を有する。
同図に示すように、実施の形態1の半導体レーザは、GaN基板1の一方主面であるGa面上にn型GaNバッファ層2を形成している。n型GaNバッファ層2はGaN基板1の一方主面の凹凸を低減し、その上層をできるだけ平坦に積層する目的のために用いられる。
n型GaNバッファ層2上に、Al組成比が0.07のn型AlGaNクラッド層3、Al組成比が0.045のn型AlGaNクラッド層4、Al組成比が0.015のn型AlGaNクラッド層5が順次積層される。さらに、n型AlGaNクラッド層5上にn型GaN光ガイド層6、n型InGaN−SCH層7が順次積層される。n型InGaN−SCH層7として例えばIn組成比0.02でアンドープの構成が考えられる。
そして、n型InGaN−SCH層7上に活性層8が形成される。活性層8は、図11に示すように、例えば、In組成比0.12でアンドープのInGaNウエル層8a、In組成比0.02のInGaNバリア層8b、及びIn組成比0.12でアンドープのInGaNウエル層8cの順に積層した、2重量子井戸構造を呈している。
さらに、活性層8上に、p型InGaN−SCH層9、p型AlGaN電子障壁層10、p型GaN光ガイド層11の順に積層される。p型InGaN−SCH層9として例えばIn組成比0.02でアンドープの構成が考えられ、p型AlGaN電子障壁層10として例えばAl組成比0.2の構成が考えられる。
p型GaN光ガイド層11上にAl組成比0.07のp型AlGaNクラッド層12が形成される。このp型AlGaNクラッド層12は一部突出したリッジ12aを有している。p型AlGaNクラッド層12のリッジ12a上にp型GaNコンタクト層13が形成される。リッジ部12a及びリッジ部12a上のp型GaNコンタクト層13によりリッジ14が形成され、このリッジ14は、p型GaN光ガイド層11上にp型AlGaNクラッド層12及びp型GaNコンタクト層13を積層した後、例えば(1−100)方向に向かってエッチング処理を施すことにより形成される。このリッジ14はGaN基板1上にストライプ状に形成された数μm〜数十μm幅の高転位領域の間にある低欠陥領域上に位置するように形成される。
また、GaN基板1の一方主面となるGa面とは反対側方向の他方主面となるN面には、n型電極18が形成される。このn型電極18は例えばチタン(Ti)及びAu膜を順次積層した構造となっている。
p型AlGaNクラッド層12のリッジ部12a以外の表面上、リッジ14(リッジ部12a及びp型GaNコンタクト層13)の側面に絶縁膜15が形成され、p型GaNコンタクト層13及び絶縁膜15を覆ってp型電極17が形成される。絶縁膜15はリッジ部12aの側面部及びリッジ部12aが形成されないp型AlGaNクラッド層12の表面保護及び電気的絶縁のため設けられる。
n型GaNバッファ層2は膜厚が例えば1μmで、n型不純物として例えばシリコン(Si)がドープされている。n型AlGaNクラッド層3、4及び5それぞれの膜厚は例えば0.4μm、1.0μm及び0.3μmであり、n型不純物としては例えばSiがドープされている。
n型InGaN−SCH層7及びp型InGaN−SCH層9は共に膜厚が30nmであり、2重量子井戸構造の活性層8は、例えば2つのInGaNウエル層8a、8cの膜厚が共に5.0nm、InGaNバリア層8bの膜厚が8.0nmであり、p型AlGaN電子障壁層10の膜厚は例えば20nmであり、p型不純物として例えばマグネシウム(Mg)がドープされている。また、p型GaN光ガイド層11の膜厚は例えば100nmである。
p側クラッド層としてのp型AlGaNクラッド層12の膜厚は例えば500nmであり、p型不純物として例えばMgがドープされている。p型GaNコンタクト層13は膜厚は例えば20nmであり、p型不純物として例えばMgがドープされている。
絶縁膜15は膜厚が200nmのSiO2膜で形成され、p型電極17は例えばパラジウム(Pd)及び金(Au)膜を順次積層した構造となっている。
共振器は、両端面をへき開することにより形成しており、共振器長は1,000μmである。
表1は、実施の形態1の半導体レーザを構成する各層における材料、膜厚及び屈折率を示した表である。表1の最左欄に示した層No.は、図10で示した構造の各層に対応する符号番号を意味する。
Figure 2007273901
図12は、AlxGa(1-x)N層の屈折率nのAl組成依存性を示すグラフである。図13は、InxGa(1-x)N層の屈折率nのIn組成比依存性を示すグラフである。なお、図12及び図13で示したAl組成依存性及びIn組成比依存性は、発振波長が405nmの場合を示している。
表1で示すn型AlGaNクラッド層3〜5等のAlGaN層の屈折率nは、図12で示したAl組成依存性に基づき算出し、n型InGaN−SCH層7等のInGaN層の屈折率nは、図13で示したIn組成比依存性に基づいて算出している。これらは、半導体レーザを構成する各層の屈折率nから近視野像及び遠視野像を求めるシミュレーション結果と、レーザの遠視野像の実験結果を、どのような構造においても一致させることができるようにフィッティングした結果であり、その精度は非常に高いものである。
活性層8を構成するInGaNウエル層8a、8bについては、2重量子井戸構造であるため、バンドギャップ構造がバルク結晶と異なることから、In組成比と屈折率nとの関係は図13と異なる値を取る。そこで、遠視野像の実測値をもとに「2.765」と決定した。ウエル層の屈折率nは、ウエル構造や膜厚によって変わるが、バンドギャップと発振波長との関係は、ウエル層のIn組成比の違いによって大きな変化を受けないことから、一般的に用いられるIn組成比0.05〜0.2程度、厚さ2〜10nm程度の範囲内においては、光閉じ込め係数Γの計算に大きな影響を与えるほどの実質的な変化はない。このことから、ウエル層の屈折率nについては、上記した範囲内であれば「2.765」としても精度的に差し支えない。
また、図12及び図13で示す屈折率nのAl組成依存性、In組成比依存性は、発振波長によって変化し、発振波長が短いほど屈折率nが大きく、発振波長が長いほど屈折率nが小さくなる傾向がある。ただし、その変化についてはレーザを構成する全ての層に当てはまるため、その変化量はその材料のAl組成比やIn組成比に対して同程度の値をとる。
例えば、発振波長410nmの場合には、発振波長405nmの値を用いて計算した場合に比べ、実際の屈折率nは小さくなる。この場合、光閉じ込め層(n型GaN光ガイド層6、n型InGaN−SCH層7、活性層8、p型InGaN−SCH層9、p型AlGaN電子障壁層10及びp型GaN光ガイド層11)での屈折率が活性層への光閉じ込め係数Γを小さくする効果を発生する反面、p型及びn型クラッド層の屈折率も小さくなるため、クラッド層への光の滲み出しが小さくなる。すなわち、活性層8への光閉じ込め係数Γを大きくする効果を発生する。したがって、これらの効果が相反することにより、結果的にウエル層への光閉じ込め係数Γについては実質的に変化しないことことになる。
上述した理由により、ウエル層への光閉じ込め係数Γについては、発振波長が405nm近傍である限りは、発振波長によって大きく変化することはないと考えられる。すなわち、発振波長が405nmと異なる場合においても、図12及び図13で示したAl組成依存性及びIn組成比依存性に基づき屈折率nを算出することにより、ほぼ正確なInGaNウエル層への光閉じ込め係数Γを求めることができることになる。実際に、発振波長の変化を考慮した屈折率nを用いた計算の結果も、上記の考えを支持するものであった。
以上の検証結果を踏まえ、実施の形態1の半導体レーザの光閉じ込め係数Γのシミュレーションを行った。その結果、光閉じ込め係数Γ(InGaNウエル層8a、8cの光閉じ込め係数の和)は2.50%であり、従来の約3.7%よりも小さくなっている。
表2は、実施の形態1に対応する従来例の半導体レーザを構成する各層における材料、膜厚及び屈折率nを示した表である。なお、表2の最左欄に示した層No.は、図10で示した構造の各層に対応する符号番号を意味する。
Figure 2007273901
図14は、実施の形態1による半導体レーザの前端面からの光出力を測定した結果を示すグラフである。図14で示す光出力変化L1は、この発明の実施の形態1による半導体レーザによるレーザの前端面に10%。後端面に95%の反射率を持たせるようにコーティングを施した際の、前端面からの光出力を測定した結果を示している。なお、光出力変化L2は、従来の半導体レーザに前端面及び後端面の反射率を同様に設定した際の前端面からの光出力を測定した結果を示している。
図14を参照して、光出力変化L2に示すように、従来構造の微分効率(動作電流に対する前端面からの光出力の割合)は1.42W/Aであるのに対して、光出力変化L1に示すように、実施の形態1の微分効率は1.80W/Aと大幅に向上している。その結果、光出力150mW時における動作電流値は従来は130mA必要であったものが、実施の形態1では110mAで済ますことに成功している。
この結果は、前述したように、ウエル層への光閉じ込め係数Γの低減により、ウエル層での光吸収が減少したことが原因と考えられる。
図15は、実施の形態1におけるリッジ中央部、垂直方向の屈折率分布と光電界強度部分のシミュレーション結果を示す説明図である。光電界強度部分布は、光の進行方向に対し垂直な二次元面でのレーザ層構造からシミュレーションを行い2次元での光電界強度分布を計算し、そのリッジ中央部の分布を示している。なお、光電界強度の2乗が光強度である。
実施の形態1のレーザ構造では、n型のAlGaNクラッド層として、3層構造のn型AlGaNクラッド層3〜5を用い、n型AlGaNクラッド層3、4及び5において、Al組成比を0.07.0.045、及び0.015に設定することにより、n型AlGaNクラッド層3〜5間において異なったAl組成比に設定している。
図15に示すように、比較的屈折率が高いAl組成比0.015のn型AlGaNクラッド層5に光が引き込まれており、このn型AlGaNクラッド層5への光強度が大きくなるため、光の強度中心(ピーク位置)が活性層8の中心よりもn側(n型AlGaNクラッド層3〜5側)にシフトする結果、活性層8のウエル層内での光閉じ込め係数Γが小さくなることがわかる。
なお、Al組成比が0.07のn型AlGaNクラッド層3は、光分布がGaN基板1に滲み出すことを抑制するために設けられた層であり、n型AlGaNクラッド層3の有無は、活性層8のウエル層での光閉じ込め係数Γにほとんど影響を与えない。
(製造方法)
次に、実施の形態1の半導体レーザの製造方法について、図10を参照して説明する。まず、予めサーマルクリーニングなどにより表面を洗浄化したGaN基板1上に有機金属化学気相成長(MOCVD)法により例えば1000℃の成長温度でn型GaNバッファ層2を成長させる。
その後、MOCVD法により、n型AlGaNクラッド層3〜5、n型GaN光ガイド層6、アンドープのn型InGaN−SCH層7、アンドープのInGaNウエル層8a、8c及びInGaNバリア層8bからなる2重量子井戸構造の活性層8、アンドープのp型InGaN−SCH層9、p型AlGaN電子障壁層10及びp型GaN光ガイド層11、p型AlGaNクラッド層12及びp型GaNコンタクト層13を順次積層する。
ここで、これらの層の成長温度は、例えば、n型AlGaNクラッド層3〜5、及びn型GaN光ガイド層6は1000℃、アンドープn型InGaN−SCH層7〜アンドープp型InGaN−SCH層9については780℃、p型AlGaN電子障壁層10〜p型GaNコンタクト層13については1000℃とする。
以上の結晶成長が終了したウェハの前面に、レジスト(図10では図示せず)を塗布し、リソグラフィーによりメサ部の形状に対応した所定形状のレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクとして、例えば、RIE(Reactiv Ion Etching)によりp型GaNコンタクト層13及びp型AlGaNクラッド層12に対して、p型AlGaNクラッド層12の一部のみが残るようにエッチングを行う。その結果、レジストパターン下にあるp型AlGaNクラッド層12のリッジ部12a及びp型GaNコンタクト層13によってリッジ14が形成される。
次に、マスクとして用いたレジストパターンを残したまま、再びウエハ全面にCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法等を用いて、例えば、厚さが0.2μmのSiO2膜である絶縁膜15を形成し、レジストパターン除去時にレジストパターン上に形成された絶縁膜15を併せて除去する、いわゆるリフトオフを行う。その結果、リッジ14上に開口部16が設けられる。
次に、ウエハ全面に例えば真空蒸着法によりプラチナ(Pt)及びAuを順次形成した後、レジスト塗布、リソグラフィーによるレジストパターン形成後、ウェットエッチングあるいはドライエッチングを施すことにより、図10に示すように、p型電極17(パターン)を形成する。
その後、GaN基板1の裏面全面に、真空蒸着法によりTi及びAl膜を順次形成することによりn型電極18を得、n型電極18をオーミック接触させるためのアロイ処理(熱処理)を行う。
この後、この基板を(第1の方向に沿った)劈開などによりバー状に加工して両共振器端面を形成し、さらにこれらの共振器端面に端面コーティングを施した後、このバーを(上記第1の方向と垂直な方向に沿った)劈開などによりチップ化する。以上により、実施の形態1の半導体レーザが製造される。
<実施の形態2>
表3は実施の形態2の半導体レーザを構成する各層における材料、膜厚及び屈折率nを示した表である。表3の最左欄に示した層No.は、図10で示した構造の各層に対応する符号番号を意味する。
Figure 2007273901
表3に示すように、実施の形態2では、活性層8の構造を3つのウエル層と2つのバリア層による3重量子井戸構造で実現している点が実施の形態1と異なる。また、3つのウエル層のIn組成比、膜厚、2つのバリア層の膜厚も、実施の形態1とは異なっている。
実施の形態2の半導体レーザにおいて、光閉じ込め係数Γについて、実施の形態1と同様のシミュレーションを行うと、光閉じ込め係数Γ(3つのInGaNウエル層の光閉じ込め係数の和)は2.58%となることがわかった。
共振器は、両端面をへき開することにより形成しており、共振器長は1,000μmである。
また、レーザの前端面に10%、後端面に95%の反射率を持たせるようにコーティングを施した後、前端面における微分効率を実測した結果、1.85W/Aと従来の1.47W/Aから大きく改善していることがわかった。
なお、実施の形態2の半導体レーザは、その層構造のみ異なり、実施の形態1と同様に製造されるため、説明は省略する。
<実施の形態3>
図16は、この発明の実施の形態3である窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体レーザの構造を示す断面図である。同図に示すように、3層のn型AlGaNクラッド層3〜5が1層のn型AlGaNクラッド層20に、p型AlGaNクラッド層12がp型AlGaNクラッド層21に置き換わった点を除いて、図10で示した実施の形態1の層構造と同様である。
表4は、実施の形態3の半導体レーザを構成する各層における材料、膜厚及び屈折率nを示した表である。表4の最左欄に示した層No.は、図16で示した構造の各層に対応する符号番号を意味する。
Figure 2007273901
表4に示すように、実施の形態3では、p型AlGaNクラッド層21及びn型AlGaNクラッド層20のAl組成比を、従来のp型AlGaNクラッド層及びn型AlGaNクラッド層に比べ小さくすることにより、それぞれの屈折率nを従来より大きくしている。その結果、n型AlGaNクラッド層20及びp型AlGaNクラッド層21への光の滲み出しを大きくし、その結果、ウエル層への光閉じ込め係数Γを小さくしている。
実施の形態3の半導体レーザにおいて、光閉じ込め係数Γについて、実施の形態1と同様のシミュレーションを行うと、光閉じ込め係数Γ(2つのInGaNウエル層8a、8cの光閉じ込め係数の和)は2.62%となることがわかった。
また、レーザの前端面に10%、後端面に95%の反射率を持たせるようにコーティングを施した後、前端面における微分効率を実測した結果、1.80W/Aと従来の1.45W/Aから大きく改善していることがわかった。
このようにn型AlGaNクラッド層20のAl組成比を小さくすることで、n側方向への光の広がりを大きくすることができるため、結果として、ウエル層への光閉じ込め量を低減することが可能である。n型AlGaNクラッド層20のAl組成比xは、0.01≦x<0.06の範囲であれば、Al組成比が0.06以上の場合に比べて光滲み出しを大幅に小さく抑えることができる。ここで、Al組成比の下限を0.01としたのは、0.01より小さなAl組成比のn型クラッド層20では、活性層から離れるにしたがって光の減衰が十分でなくなる可能性があるためである。さらに、n型AlGaNクラッド層20のAl組成比が0.01≦x≦0.05であれば、より容易にウエル層への光閉じ込め量を低減することが可能となるので、より好ましい。さらに好ましくは、Al組成比が0.01≦x≦0.03であるのがよい。
n型AlGaN層の膜厚は、実施の形態1乃至3の例に限る必要はなく、0.5μm以上4.0μm以下が適当である。
また、p型AlGaNクラッド層21についても、上記と同じ理由により、そのAl組成が小さいほど、p側方向への光の広がりを大きくすることができるため、結果として、ウエル層への光閉じ込め量を低減することが可能である。p型AlGaNクラッド層21のAl組成比xは、0.01≦x<0.06の範囲であれば、Al組成比が0.06以上の場合に比べて光滲み出しを大幅に小さく抑えることができる。ここで、Al組成比の下限を0.01としたのは、0.01より小さなAl組成比のp型クラッド層21では、活性層から離れるに従う光の減衰が十分でなくなる可能性があるためである。さらに、p型AlGaNクラッド層21のAl組成比が0.01≦x≦0.05であれば、より容易にウエル層への光閉じ込め量を低減することが可能となるので、より好ましい。さらに好ましくは、Al組成比が0.01≦x≦0.03であるのがよい。
p型AlGaN層の膜厚は、実施の形態1乃至3の例に限る必要はなく、0.2μm以上2.0μm以下が適当である。
なお、実施の形態3の半導体レーザは、その層構造のみ異なり、実施の形態1と同様に製造されるため、説明は省略する。
実施の形態1および3ではウエル層の膜厚が5.0nmの場合を、実施の形態2ではウエル層の膜厚が3.5nmの場合を記載しているが、この値に限る必要がないことは言うまでもない。ウエル層の膜厚が薄い場合には、同じ発振波長を得るためにInGaN層のIn組成比を大きくする必要があり、結晶性に問題が発生する。また、ウエル層の膜厚が厚い場合にも結晶性の問題が発生することから、ウエル層の膜厚は、2nm以上10nm以下が好ましく、さらには2nm以上6nm以下がより好ましい。
バリア層については、膜厚が薄い場合には、ウエル層間で電子の波動関数の干渉が起こることで特性が劣化することがよく知られている。一方、膜厚が厚い場合には、結晶性の問題が発生することから、バリア層の膜厚は、2nm以上15nm以下が好ましく、さらには4nm以上10nm以下がより好ましい。
p型およびn型SCH層については、光閉じ込め量を適当な値にする働きを持たせることが可能で、膜厚は、5nm以上100nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上60nm以下がよい。
p型ガイド層については、膜厚は0μm以上1.0μm以下が適当であり、無くてもよい。n型ガイド層については、光電解を基板側にしみ出させることで、光閉じ込め係数を小さくする働きを持たせることが可能で、膜厚は、0.02μm以上1.0μm以下、より好ましくは0.05μm以上0.4μm以下がよい。
InGaNウエル層における層方向のIn組成比の揺らぎによるバンドギャップの状態を示す説明図である。 InGaNウエル層における利得領域及び吸収領域の存在を示す説明図である。 しきい値電流の光閉じ込め係数Γに対する依存性を示すグラフである。 前端面から出射するレーザ光の微分効率の光閉じ込め係数Γに対する依存性を示すグラフである。 膜厚が5nmの1つのウエル層のみで構成された活性層を有する半導体レーザにおけるしきい値電流のΓ依存性をそれぞれ示す説明図である。 膜厚が5nmの1つのウエル層のみで構成された活性層を有する半導体レーザにおける微分効率のΓ依存性をそれぞれ示す説明図である。 異なるΓについて微分効率の共振器依存性を示す説明図である。 異なるΓについて動作電流の共振器依存性を示す説明図である。 異なるΓについて単位共振器あたりの動作電流の共振器依存性を示す説明図である。 この発明の実施の形態1である窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体レーザの構造を示す断面図である。 図7で示した活性層の内部構造を示す断面図である。 AlxGa(1-x)N層の屈折率nのAl組成依存性を示すグラフである。 InxGa(1-x)N層の屈折率nのIn組成比依存性を示すグラフである。 実施の形態1による半導体レーザの前端面からの光出力を測定した結果を示すグラフである。 実施の形態1におけるリッジ中央部、垂直方向の屈折率分布と光電界強度部分のシミュレーション結果を示す説明図である。 この発明の実施の形態1である窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体レーザの構造を示す断面図である。
符号の説明
1 GaN基板、2 n型GaNバッファ層、3〜5、20 n型AlGaNクラッド層、6 n型GaN光ガイド層、7 n型InGaN−SCH層、8 活性層、8a、8c InGaNウエル層、8b InGaNバリア層、9 p型InGaN−SCH層、10 p型AlGaN電子障壁層、11 p型GaN光ガイド層、12、21 p型AlGaNクラッド層、13 p型GaNコンタクト層、14 リッジ、15 絶縁膜、16 開口部、17 p型電極、18 n型電極。

Claims (10)

  1. 少なくとも2つのウエル層を含む多重量子井戸構造の活性層を有する窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、
    前記少なくとも2つのウエル層は少なくとも2つのInGaNウエル層を含み、発光時における素子の全導波光のうち、前記少なくとも2つのInGaNウエル層にある光の割合を示す光閉じ込め係数(%)が1.5以上3.0以下に設定され、共振器長が800μm以上2,000μm以下であることを特徴とする半導体発光素子。
  2. 請求項1記載の半導体発光素子であって、
    前記光閉じ込め係数が1.5以上2.7以下に設定されたことを特徴とする半導体発光素子。
  3. 請求項1あるいは請求項2記載の半導体発光素子であって、
    前記活性層の下層に設けられる第1の導電型の第1のAlGaNクラッド層と、
    前記活性層の上層に設けられる第2の導電型の第2のAlGaNクラッド層とを備え、 前記第1及び第2のAlGaNクラッド層のうち少なくと一方のクラッド層のAl組成比が0.01以上0.06未満に設定されたことを特徴とする半導体発光素子。
  4. 請求項3記載の半導体発光素子であって、
    前記Al組成比が0.01以上0.05以下に設定されたことを特徴とする半導体発光素子。
  5. 請求項4記載の半導体発光素子であって、
    前記Al組成比が0.01以上0.03以下に設定されたことを特徴とする半導体発光素子。
  6. 請求項1あるいは請求項2記載の半導体発光素子であって、
    前記活性層の下層に設けられる第1の導電型の第1のクラッド層と、
    前記活性層の上層に設けられる第2の導電型の第2のクラッド層とを備え、
    前記第1及び第2のクラッド層のうち一方の屈折率を他方のクラッド層の屈折率よりも高くすることにより、発光時における素子の光出力のピーク位置を活性層の中心から一方のクラッド層の方向へずらしたことを特徴とする半導体発光素子。
  7. 請求項6記載の半導体発光素子であって、
    前記第1のクラッド層と前記第2のクラッド層はともにAlGaNクラッド層であり、
    これらのAlGaNクラッド層のうち少なくとも一方のクラッド層のAl組成比が0.01以上0.06未満に設定されたことを特徴とする半導体発光素子。
  8. 請求項7記載の半導体発光素子であって、
    前記Al組成比が0.01以上0.05以下に設定されたことを特徴とする半導体発光素子。
  9. 請求項8記載の半導体発光素子であって、
    前記Al組成比が0.01以上0.03以下に設定されたことを特徴とする半導体発光素子。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項記載の半導体発光素子であって、
    前記共振器長が900μm以上1,600μm以下であることを特徴とする半導体発光素子。
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