JP2007263466A - 空調ダクト - Google Patents
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Abstract
【課題】屈曲部を有する複雑なダクト構造をとる場合であれ、ダクト内壁面に対する吸音部材の適切な配設を通じて空調ユニットから発生される騒音を的確に低減させる。
【解決手段】空調ユニット4側から見た空調ダクト5内の屈曲部6の対向面、すなわち傾斜面6aの内側に振動エネルギを減衰させる第1の吸音部材8を設ける。また、傾斜面6aの角度に応じて定まる第1の吸音部材8あるいは同傾斜面6aの内側への入射波が反射される空調ダクト5の対向領域10aに振動エネルギを減衰させる第2の吸音部材10を設ける。第2の吸音部材10はその面位置が空調ダクト5の内壁面5aの壁面位置と一致するように収容凹部9に埋設される。
【選択図】図3
【解決手段】空調ユニット4側から見た空調ダクト5内の屈曲部6の対向面、すなわち傾斜面6aの内側に振動エネルギを減衰させる第1の吸音部材8を設ける。また、傾斜面6aの角度に応じて定まる第1の吸音部材8あるいは同傾斜面6aの内側への入射波が反射される空調ダクト5の対向領域10aに振動エネルギを減衰させる第2の吸音部材10を設ける。第2の吸音部材10はその面位置が空調ダクト5の内壁面5aの壁面位置と一致するように収容凹部9に埋設される。
【選択図】図3
Description
本発明は、例えば自動車等の空調装置に用いられる空調ダクトに関し、詳しくは騒音低減のためのダクト構造の改良に関する。
一般に、自動車等の空調装置に用いられる空調ダクトとしては、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂をブロー成形したものが使用されている。ただし、このような空調ダクトをそのまま用いたのでは、空調ユニットで発生する騒音や同空調ユニットから送風される空調風に起因して発生する騒音等がダクト内の内壁面で全反射してしまい、車室内へのこうした騒音の伝播が避けられない。そこで従来は、例えば特許文献1に記載の発明のように、空調ダクト内の一部に振動エネルギを減衰させて上記騒音を吸音する吸音部材を設けるようにしたものなども提案されている。
特開平6−156051号公報
このように、空調ダクトの一部に吸音部材を設けることで、上述した騒音の車室内への伝播は確かに抑制されるようにはなる。ただし、このような吸音部材を設けたとしても、吸音部材が吸音しきれずに反射された騒音はやはり同ダクトの他の内壁面を介して反射を繰り返しつつ空調風の吹出口に至ることとなり、このような場合、十分な低減効果は期待できない。
一方、このような空調ダクトは通常、インストルメントパネル等との設置スペースの兼ね合いで、そのダクト延設方向中ほどで大きく屈曲する形状にて形成されることが多い。また、空調風の円滑な流通等を考慮して、その屈曲面をなだらかな傾斜面とすることも多い。このような場合、上記騒音の伝播態様も自ずと複雑となり、ダクトの内壁面に吸音部材に設けるにせよ、同吸音部材による吸音効果を最大限に活かすことのできる配設箇所となると、その選定も難しい。なお、空調ダクトの内壁面全域に亘って吸音部材を設けることも考えられるが、その場合、吸音部材そのもののコストはもとより、作業工程の増加も避けられず、全体としての生産コストの増大も無視できない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、屈曲部を有する複雑なダクト構造をとる場合であれ、ダクト内壁面に対する吸音部材の適切な配設を通じて空調ユニットから発生される騒音を的確に低減させることのできる空調ダクトを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、空調風を送風する空調ユニットから延設され、途中に屈曲部を有して該空調ユニットから送風される空調風を室内に吹き出す吹出口に至る空調ダクトにおいて、前記空調ユニット側から見たダクト内の屈曲部対向面に振動エネルギを減衰させる第1の吸音部材を備えるとともに、前記屈曲部対向面または第1の吸音部材の面への入射波が反射されるダクト内の対向領域の少なくとも一部に振動エネルギを減衰させる第2の吸音部材を備えることをその要旨とする。
このように途中に屈曲部を有する空調ダクトにあって、空調ユニットから送られる空調風や前述した騒音はまず、空調ユニット側から見たダクト内の屈曲部対向面、すなわち同屈曲部の外側に対応するダクト内の屈曲壁面に当接し、その後、この屈曲部の屈曲形状に沿うかたちで上記吹出口側に流れるようになる。このため、上記空調ユニット側から見たダクト内の屈曲部対向面に対してまずは第1の吸音部材を設けることで上記騒音の吸音が図られ、該騒音の上記吹出口からの流出が抑制緩和される。ただし前述のように、このような吸音部材を設けたとしても上記騒音の全てがそこで吸音(消音)されるとは限らず、通常は、そこで吸音しきれなかった反射波成分が当該ダクトの内壁面で順次反射を繰り返しつつ上記吹出口に至る。
この点、空調ダクトとしての上記構成によれば、こうして第1の吸音部材から反射される騒音成分、すなわち第1の吸音部材では吸音しきれなかった騒音成分(反射波成分)が上記第2の吸音部材、すなわち上記屈曲部対向面または第1の吸音部材への入射波が反射されるダクト内の対向領域の少なくとも一部に設けられた吸音部材にさらに入射され、吸音されることとなるため、第1の吸音部材では吸音しきれなかった騒音成分も、この第2の吸音部材を通じてそのさらなる減衰が図られるようになる。そして、このようなかたちで上記空調ユニットから発せられる騒音の吸音(消音)が図られることで、上記吹出口からの騒音の流出も大きく抑制されるようになる。しかも、同構成によれば、上記吸音部材の配設が必要最小限の箇所で済むことから、生産コストの増大を招くこともない。なおこのことは、上記屈曲部が複数設けられる空調ダクトにあっても基本的に同様であり、上述の原理によればむしろ、このような屈曲部毎に上記吸音構造を採用することで、その吸音(消音)効果もより高められるようになる。また、このように屈曲部が複数設けられる空調ダクトであれ、上記空調ユニット側から見た最初の屈曲部、あるいは任意の1つの屈曲部に対してのみ上記吸音構造を採用する構成としても勿論よい。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空調ダクトにおいて、前記ダクトは角筒状に形成されてなるとともに、前記屈曲部は前記空調ユニット側から見たダクト内の対向面がその屈曲方向に傾斜した傾斜面を有してなり、前記第1の吸音部材はこの傾斜面に対して設けられてなり、前記第2の吸音部材はこの傾斜面の傾斜角度に応じて定まる同傾斜面への入射波が反射される当該ダクト内の対向領域に対して設けられてなることをその要旨とする。
このような構成によれば、上記傾斜面の傾斜角度さえ決まれば上記第2の吸音部材を配設すべき領域もより容易に求まることとなり、ひいては同空調ダクトの設計や製造もより容易となる。また、ダクト自体をこのように角筒状とすることで、上記第1の吸音部材や第2の吸音部材の配設も容易となる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の空調ダクトにおいて、前記第2の吸音部材が設けられる領域である前記傾斜面の傾斜角度に応じて定まる同傾斜面への入射波が反射されるダクト内の対向領域が、前記屈曲部の内側に対応する同ダクト内の屈曲壁面から前記吹出口側に至る特定領域であることをその要旨とする。
このような構成によれば、上記傾斜面への入射波が反射されるダクト内の対向領域の一端が上記屈曲部の内側に対応する同ダクト内の屈曲壁面に位置する態様で、すなわち上記傾斜面の傾斜角度が吹出口側になだらかな角度をもって設定されることとなる。したがってこの場合、同傾斜面への入射波が反射されるダクト内の対向領域の他端も、自ずと上記ダクト内の屈曲壁面から上記吹出口側への比較的近い位置に収まるようになり、ひいては上記第2の吸音部材の配設領域についてもこれを必要最小限の領域に収めることができるようになる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の空調ダクトにおいて、前記第2の吸音部材はそのダクト内での面位置が同ダクト内の壁面位置に一致する態様にて同ダクトに設けられた収容凹部に収容されてなることをその要旨とする。
空調ダクトとしてのこのような構成によれば、ダクト内に上記第2の吸音部材を設ける場合であれ、同第2の吸音部材の配設に起因する風切音の発生や通気抵抗の増大が避けられ、ダクト中での圧力損失を招くようなこともなくなる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の空調ダクトにおいて、前記第1の吸音部材と前記第2の吸音部材とは各々周波数帯域の異なる振動エネルギを減衰する各別の吸音特性に設定されてなることをその要旨とする。
このような構成によれば、より広い周波数帯域の騒音に対してその吸音(消音)効果を得ることができるようになり、それら各吸音部材を通じた吸音構造としての設計の自由度も高められるようになる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の空調ダクトにおいて、前記第2の吸音部材は前記第1の吸音部材にて減衰しきれない周波数帯域の振動エネルギを主に減衰する吸音特性に設定されてなることをその要旨とする。
このような構成によって、上記請求項5に記載の空調ダクトとしての上述した作用効果もより顕著となる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の空調ダクトにおいて、前記空調ユニットが車両に搭載された空調ユニットであり、前記空調風が吹き出される室内が当該車両の車室内であることをその要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の空調ダクトにおいて、前記空調ユニットが車両に搭載された空調ユニットであり、前記空調風が吹き出される室内が当該車両の車室内であることをその要旨とする。
特に近年は、自動車等の車両にあってもその車室内の静寂性に対する要求が強い。この点、空調ダクトとしてのこうした構成によれば、そのような要求に応えることも容易となる。
以上説明したように、本発明の空調ダクトによれば、屈曲部を有する複雑なダクト構造をとる場合であれ、ダクト内壁面に対する吸音部材の適切な配設を通じて空調ユニットから発生される騒音を的確に低減させることができるようになる。
本発明を車両、特に自動車に搭載される空調装置に用いられる空調ダクトに具体化した一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。なお、以下の説明、並びに各図において、「左」、「右」、「前」、「後」、「上」、「下」は、特に断らない限り、車両の運転手席に座したドライバーから見た場合の、「左」、「右」、「前」、「後」、「上」、「下」方向である。
図1は、車室内の各部材の配置態様を示した斜視図であり、この図1に示されるように、車室内には、各種計器等が搭載されたインストルメントパネル1が設けられている。そして、このインストルメントパネル1の左右方向中央の乗員側(後側)には、空調装置から送風される空調風を車室内に送り出す吹出口2,3が設けられている。
図2は、このようなインストルメントパネル1の内部に配設されて上記吹出口2,3に空調風を送り出す空調装置について、その斜視構造を模式的に示したものである。
同図2に示すように、この空調装置には、車室内又は車室外から空気を取り入れて当該空気を空調風として送風するとともに、空調風を加熱用熱交換器(図示略)や冷却用熱交換器(図示略)によって温度調節を行う空調ユニット4が設けられている。そして、この空調ユニット4の作動時には、これらの送風や温度調整動作に伴う作動音が同空調ユニット4から常時発生することとなる。
同図2に示すように、この空調装置には、車室内又は車室外から空気を取り入れて当該空気を空調風として送風するとともに、空調風を加熱用熱交換器(図示略)や冷却用熱交換器(図示略)によって温度調節を行う空調ユニット4が設けられている。そして、この空調ユニット4の作動時には、これらの送風や温度調整動作に伴う作動音が同空調ユニット4から常時発生することとなる。
一方、この空調ユニット4からは、同図2に示されるように上方に向けて角筒状の空調ダクト5が延設されている。この空調ダクト5は、ポリエチレン等からなる熱可塑性樹脂のブロー成形によって作られており、その途中には屈曲された屈曲部6が設けられている。すなわちこの空調ダクト5は、上記インストルメントパネル1(図1)内においてこの屈曲部6が車両後方に向けて屈曲するように配設されるものであり、その一方の開口7aは上記吹出口2,3(図1)に対向するように設けられ、他方の開口7bは上記空調ユニット4に直接接続されている。なお、この空調ダクト5の壁部の厚みは、部位ごとに多少の差はあるものの概ね1〜2mm程度となっている。また、上記空調ユニット4から上記屈曲部6までの長さは15〜20cm程度であるとともに、この屈曲部6から上記開口7aまでの長さは8〜13cm程度となっている。すなわちこの空調ダクト5において、上記屈曲部6は開口7aまたは開口7bから容易に手が届く位置に形成されている。
図3は、このような空調ダクト5について、図2のA−A線に沿った断面構造を示したものである。この図3に示されるように、上記屈曲部6の外側には、平面状をなして屈曲方向に傾斜する傾斜面6aが設けられている。この傾斜面6aの内側は、空調ダクト5内において、空調ユニット4側、すなわち上流側から見て対向面(屈曲部対向面)となっている。
また、この傾斜面6aの内側、すなわち上記屈曲部対向面には、同傾斜面6aに沿うように第1の吸音部材8がその全域に亘って設けられている。この第1の吸音部材8としては、例えばウレタン等からなる合成樹脂発泡材が使用されている。特にここでは、この第1の吸音部材8として連気泡率の大きい連泡タイプのものが用いられるものとする。なお、この第1の吸音部材8は、上記空調ダクト5の開口7aあるいは開口7b側から接着剤または粘着材等によって上記屈曲部対向面(傾斜面6aの内側)に直接貼り付けられる。
一方、上記屈曲部6の内側にあたるとともに、上記屈曲部対向面の角度に応じて定まる同屈曲部対向面への入射波(音波)が反射されるダクト内の対向領域10aは、内壁面5aからみて空調ダクト5の外側に向けて突出しており、そこには内側面9bを底部とする収容凹部9が形成されている。そして、この収容凹部9には、同収容凹部9の形状と整合するように、すなわちその面位置が同空調ダクト5の内壁面5aの壁面位置と一致する態様で第2の吸音部材10が設けられている。この第2の吸音部材10も、上記第1の吸音部材8と同様に、例えばウレタン等からなる合成樹脂発泡材によって形成されているとともに、同空調ダクト5の開口7aあるいは開口7b側から接着剤または粘着材等によって上記内側面9bに沿うように貼り付けてられる。なお、第1の吸音部材8および第2の吸音部材10は、夫々10mm程度の厚さに形成されている。
次に、上記第1の吸音部材8と上記第2の吸音部材10の位置関係について、空調ユニット4から発生した作動音の伝達態様に着目しながらさらに詳述する。
上述のように、空調ユニット4からは、その作動時、空調風の送風や温度調節をする際の作動音が騒音として常時生じている。音波は通常直進する性質を有しているため、こうして空調ユニット4で発生した作動音は、図3に矢印B(実線で示す)として示すように、ここでの例では空調ダクト5内を鉛直方向上方に向けて空調ダクト5内の空気を振動させながら伝播していく。そして、上述した本実施形態の空調ダクト5のように、そのダクト途中に屈曲部6を有している場合、この作動音は空調ユニット4側から見た屈曲部6の対向面、すなわち上記傾斜面6aの内側に設けられた第1の吸音部材8に向かって伝播する。
上述のように、空調ユニット4からは、その作動時、空調風の送風や温度調節をする際の作動音が騒音として常時生じている。音波は通常直進する性質を有しているため、こうして空調ユニット4で発生した作動音は、図3に矢印B(実線で示す)として示すように、ここでの例では空調ダクト5内を鉛直方向上方に向けて空調ダクト5内の空気を振動させながら伝播していく。そして、上述した本実施形態の空調ダクト5のように、そのダクト途中に屈曲部6を有している場合、この作動音は空調ユニット4側から見た屈曲部6の対向面、すなわち上記傾斜面6aの内側に設けられた第1の吸音部材8に向かって伝播する。
こうして、作動音が第1の吸音部材8に入射すると、同作動音の振動エネルギがこの第1の吸音部材8により減衰されて吸音される。すなわち、上記ウレタン等の発泡材からなる第1の吸音部材8は内部に多数の孔を有しており、同孔内で作動音の振動エネルギが熱エネルギに変換されることによって、作動音が減衰(吸音)されるようになる。
また、第1の吸音部材8によって吸音しきれなかった作動音(騒音)成分の一部は第1の吸音部材8を透過して屈曲部6の傾斜面6aに衝突し、図3に矢印D(一点鎖線で示す)として示した経路をとりながら反射される。なお、この反射成分には、同図3に矢印C(二点鎖線で示す)にて示すような第1の吸音部材8の表面で反射される成分も含まれる。ここで上述のように、こうして反射される騒音(作動音)の進行方向は上記傾斜面6aの傾斜角度に依存している。ちなみに本実施形態にあって、この傾斜面6aの傾斜角度は、上記反射波の一端を屈曲部6の内側に対応する当該空調ダクト5内の屈曲壁面6bに向けて反射しうる角度にて、上記吹出口2,3(図1)側になだらかに傾斜するように設定されている。そのため、上記傾斜面6aおよび第1の吸音部材8からの反射波の他端も、自ずとこの屈曲壁面6bから吹出口2,3側の比較的近い範囲内に収まるようになる。
一方、第2の吸音部材10は、当該空調ダクト5内の上記屈曲壁面6bから吹出口2,3側に至る特定領域、すなわち上述した屈曲部対向面となる傾斜面6aの内側あるいは第1の吸音部材8への入射波(音波、騒音)が反射される同空調ダクト5内の対向領域10aに設けられている。すなわち、この第2の吸音部材10は、上記第1の吸音部材8にて吸音しきれなかった騒音成分を吸音するように設けられており、これによってこうした騒音成分のさらなる吸音が図られ、ひいては上記吹出口2,3(図1)を介しての車室内への騒音の流出も大きく抑制されるようになる。なお、この第2の吸音部材10は上述のように、その面位置が当該ダクト5の内壁面5aと一致するように収容凹部9に埋設されているため、空調ユニット4から送風される空調風の流動を阻害することもない。すなわち、この第2の吸音部材10の配設に起因する風切音の発生や通気抵抗の増大は避けられるようになり、同空調ダクト5内での圧力損失を招くようなこともなくなる。
図4および図5は、このような実施形態の空調ダクトの上記第1の吸音部材8および第2の吸音部材10による吸音(消音)効果について実験による測定結果を示したものであり、次にこれら図4および図5を併せて参照して、本実施形態の空調ダクトによる吸音(消音)特性について考察する。
まず、図4に示すデータは、本実施形態の空調ダクト5の一方、すなわち空調ユニット4側の開口7bにスピーカーを設置してこれを鳴動駆動するとともに、他方の開口7aにおける周波数毎の騒音レベルを測定した実験結果を周波数特性図として示したものである。本実験では、第1の吸音部材8および第2の吸音部材10を取付けた実験データL1(図4に実線で示す)の採取に併せて、第1の吸音部材8のみを取付けた比較データL2(図4に破線で示す)と、吸音部材を取付けなかった比較データL3(図4に二点鎖線で示す)とについても同様に採取を行った。その結果、第1の吸音部材8及び第2の吸音部材10を取付けた実験データL1では、比較データL2および比較データL3と比較して、1600Hz〜6300Hzの周波数帯域、いわゆる人間の耳につきやすい周波数帯域において騒音レベルの低下が観測された。このような実験結果からも明らかなように、上記第1の吸音部材8および第2の吸音部材10を共に設けることで、車室内の騒音も大幅に低減されるようになることが分かる。
また、図5に示すデータは、本実施形態の空調ダクト5の空調ユニット4側の一方の開口7bに送風ファンを装着してこれを駆動するとともに、同空調ダクト5の上記第2の吸音部材10が設けられている位置において同様に周波数毎の騒音レベルを測定した実験結果を周波数特性図として示したものである。なお本実験において、上記ファンによる送風量、すなわち風の流量は240m3/hに設定されている。そして、本実験においても、第1の吸音部材8および第2の吸音部材10を取付けた実験データL4(図5に破線で示す)の採取に併せて、第1の吸音部材8のみを取付けた比較データL5(図5に実線で示す)についても同様に採取をおこなった。その結果、実験データL4では、比較データL5と比較して、500Hz〜6300Hzといった広い周波数帯域において騒音レベルの低下が観測された。これにより、比較的低周波数域にある送風音の一部も第2の吸音部材10によって吸音(消音)されていることが分かる。
以上説明したように、本実施形態の空調ダクトによれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)空調ユニット4側から見た屈曲部6の対向面、すなわち傾斜面6aの内側に第1の吸音部材8を備えるとともに、この同傾斜面6aまたは第1の吸音部材8の面への入射波が反射される空調ダクト5内の対向領域10aに第2の吸音部材10を備えることとした。これにより、第1の吸音部材8から反射される騒音成分、すなわち第1の吸音部材8では吸音しきれなかった騒音成分(反射波成分)が第2の吸音部材10にさらに入射され、吸音されることとなるため、第1の吸音部材8では吸音しきれなかった騒音成分も、この第2の吸音部材10を通じてそのさらなる減衰が図られるようになる。そして、このようなかたちで空調ユニット4から発せられる騒音の吸音(消音)が図られることで、吹出口2,3からの騒音の流出も大きく抑制されるようになる。
(1)空調ユニット4側から見た屈曲部6の対向面、すなわち傾斜面6aの内側に第1の吸音部材8を備えるとともに、この同傾斜面6aまたは第1の吸音部材8の面への入射波が反射される空調ダクト5内の対向領域10aに第2の吸音部材10を備えることとした。これにより、第1の吸音部材8から反射される騒音成分、すなわち第1の吸音部材8では吸音しきれなかった騒音成分(反射波成分)が第2の吸音部材10にさらに入射され、吸音されることとなるため、第1の吸音部材8では吸音しきれなかった騒音成分も、この第2の吸音部材10を通じてそのさらなる減衰が図られるようになる。そして、このようなかたちで空調ユニット4から発せられる騒音の吸音(消音)が図られることで、吹出口2,3からの騒音の流出も大きく抑制されるようになる。
(2)各吸音部材8,10を配設する箇所を屈曲部6に限っても十分な吸音効果が得られるため、吸音部材の配設が必要最小限の箇所で済み、生産コストの増大を抑えることができる。
(3)空調ダクト5を角筒状に形成するとともに、屈曲部6にはその屈曲方向に傾斜する傾斜面6aを設けることとした。このような構成によれば、傾斜面6aの傾斜角度さえ決まれば第2の吸音部材10を配設すべき領域もより容易に求まることとなり、ひいては空調ダクト5の設計や製造もより容易となる。また、空調ダクト5自体をこのように角筒状とすることで、第1の吸音部材8や第2の吸音部材10の配設も容易となる。
(4)第2の吸音部材10が設けられる上記対向領域10aが、屈曲部6の内側に対応する空調ダクト5内の屈曲壁面6bから吹出口2,3側に至る特定の領域であることとした。このような構成によれば、上記第1の吸音部材8あるいは傾斜面6aの内側への入射波が反射される空調ダクト5内の対向領域10aの一端が屈曲部6の内側に対応する空調ダクト5内の屈曲壁面6bに位置する態様で、すなわち傾斜面6aの傾斜角度が吹出口3側になだらかな角度をもって設定されることとなる。したがってこの場合、第1の吸音部材8あるいは傾斜面6aの内側への入射波が反射される空調ダクト5内の対向領域10aの他端も、自ずと空調ダクト5内の屈曲壁面6bから上記吹出口3側への比較的近い位置に収まるようになり、ひいては第2の吸音部材10の配設領域についてもこれを必要最小限の領域に収めることができるようになる。
(5)第2の吸音部材10についてはこれを、その面位置が空調ダクト5内の内壁面5aの壁面位置に一致する態様にて収容凹部9に収容することとした。空調ダクト5としてのこのような構成によれば、空調ダクト5内に第2の吸音部材10を設ける場合であれ、該第2の吸音部材10の配設に起因する風切音の発生や通気抵抗の増大が避けられ、空調ダクト5内での圧力損失を招くようなこともなくなる。また、この第2の吸音部材10を通じて空調風による風切音の一部を吸音することもでき、空調風に起因する騒音についてもその低下が期待できるようになる。
なお、本実施形態はこれを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・第1の吸音部材8と第2の吸音部材10についてはこれらを夫々異なる周波数帯域の振動エネルギを減衰させる吸音特性に設定するように変更してもよい。このような構成によれば、より広い周波数帯域の騒音に対してその吸音(消音)効果を得ることができるようになり、それら各吸音部材を通じた吸音構造としての設計の自由度も高められるようになる。また、第2の吸音部材10についてはこれを第1の吸音部材8にて減衰しきれない周波数帯域の振動エネルギを主に減衰する吸音特性に設定することとすれば、こうした作用効果もより顕著となる。
・第1の吸音部材8と第2の吸音部材10についてはこれらを夫々異なる周波数帯域の振動エネルギを減衰させる吸音特性に設定するように変更してもよい。このような構成によれば、より広い周波数帯域の騒音に対してその吸音(消音)効果を得ることができるようになり、それら各吸音部材を通じた吸音構造としての設計の自由度も高められるようになる。また、第2の吸音部材10についてはこれを第1の吸音部材8にて減衰しきれない周波数帯域の振動エネルギを主に減衰する吸音特性に設定することとすれば、こうした作用効果もより顕著となる。
・各吸音部材8,10をウレタン等の合成樹脂発泡材によって形成することとしたが、いわゆる吸音材として通常に用いられている材料であればその選択は任意である。他に例えば、ガラス繊維材や各種不織布等を単独で、或いは組み合わせて用いてもよい。その他、合成樹脂発泡材としても、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレン等がある。
・傾斜面6a全体が吹出口3側に傾斜するよう屈曲部6を形成したが、傾斜面6aの一部のみを傾斜させ、その傾斜面に第1の吸音部材を設けるように変更してもよい。
・空調ダクト5の形状は円筒状に形成してもよい。要は空調ユニット4側から、すなわち上流側から見たダクト内の屈曲部対向面に第1の吸音部材8を備えるとともに、この屈曲部対向面の角度に応じて定まる同屈曲部対向面への入射波が反射されるダクト内の対向領域に第2の吸音部材10を備える構成であればよい。空調ダクトとしてのこのような構成であれば、先の実施形態の上記(1)、(2)、(4)、および(5)に準ずる効果を得ることはできる。
・空調ダクト5の形状は円筒状に形成してもよい。要は空調ユニット4側から、すなわち上流側から見たダクト内の屈曲部対向面に第1の吸音部材8を備えるとともに、この屈曲部対向面の角度に応じて定まる同屈曲部対向面への入射波が反射されるダクト内の対向領域に第2の吸音部材10を備える構成であればよい。空調ダクトとしてのこのような構成であれば、先の実施形態の上記(1)、(2)、(4)、および(5)に準ずる効果を得ることはできる。
・第2の吸音部材10を傾斜面6aまたは第1の吸音部材8の面への入射波が反射される空調ダクト5内の対向領域10aの一部にのみ設けるよう変更しても良い。
・空調ダクトとして屈曲部が複数設けられたダクトにこの発明を適用するようにしてもよい。このような空調ダクトにあっても、屈曲部毎に上記実施形態のような吸音構造を採用するようにすれば、その吸音(消音)効果もより高められるようになる。また、このように屈曲部が複数設けられる空調ダクトであれ、空調ユニット4側から見た最初の屈曲部、あるいは任意の1つの屈曲部に対してのみ上記実施形態の吸音構造を採用する構成としてもよい。
・空調ダクトとして屈曲部が複数設けられたダクトにこの発明を適用するようにしてもよい。このような空調ダクトにあっても、屈曲部毎に上記実施形態のような吸音構造を採用するようにすれば、その吸音(消音)効果もより高められるようになる。また、このように屈曲部が複数設けられる空調ダクトであれ、空調ユニット4側から見た最初の屈曲部、あるいは任意の1つの屈曲部に対してのみ上記実施形態の吸音構造を採用する構成としてもよい。
・上記自動車に搭載される空調装置の空調ダクトに限らず、他に自動車のデフロスターノズルや家屋用の空調装置に用いられる空調ダクトにこの発明にかかる空調ダクトの吸音構造を適用するようにしてもよい。
1…車室、2,3…吹出口、4…空調ユニット、5…空調ダクト、5a…内壁面、6…屈曲部、6a…傾斜面、6b…屈曲壁面、7a,7b…開口、8…第1の吸音部材、9…収容凹部、10…第2の吸音部材、10a…対向領域。
Claims (7)
- 空調風を送風する空調ユニットから延設され、途中に屈曲部を有して該空調ユニットから送風される空調風を室内に吹き出す吹出口に至る空調ダクトにおいて、
前記空調ユニット側から見たダクト内の屈曲部対向面に振動エネルギを減衰させる第1の吸音部材を備えるとともに、前記屈曲部対向面または第1の吸音部材の面への入射波が反射されるダクト内の対向領域の少なくとも一部に振動エネルギを減衰させる第2の吸音部材を備える
ことを特徴とする空調ダクト。 - 前記ダクトは角筒状に形成されてなるとともに、前記屈曲部は前記空調ユニット側から見たダクト内の対向面がその屈曲方向に傾斜した傾斜面を有してなり、前記第1の吸音部材はこの傾斜面に対して設けられてなり、前記第2の吸音部材はこの傾斜面の傾斜角度に応じて定まる同傾斜面への入射波が反射される当該ダクト内の対向領域に対して設けられてなる
請求項1に記載の空調ダクト。 - 前記第2の吸音部材が設けられる領域である前記傾斜面の傾斜角度に応じて定まる同傾斜面への入射波が反射されるダクト内の対向領域が、前記屈曲部の内側に対応する同ダクト内の屈曲壁面から前記吹出口側に至る特定領域である
請求項2に記載の空調ダクト。 - 前記第2の吸音部材はそのダクト内での面位置が同ダクト内の壁面位置に一致する態様にて同ダクトに設けられた収容凹部に収容されてなる
請求項1〜3のいずれか一項に記載の空調ダクト。 - 前記第1の吸音部材と前記第2の吸音部材とは各々周波数帯域の異なる振動エネルギを減衰する各別の吸音特性に設定されてなる
請求項1〜4のいずれか一項に記載の空調ダクト。 - 前記第2の吸音部材は前記第1の吸音部材にて減衰しきれない周波数帯域の振動エネルギを主に減衰する吸音特性に設定されてなる
請求項5に記載の空調ダクト。 - 前記空調ユニットが車両に搭載された空調ユニットであり、前記空調風が吹き出される室内が当該車両の車室内である
請求項1〜6のいずれか一項に記載の空調ダクト。
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- 2006-03-28 JP JP2006088950A patent/JP2007263466A/ja active Pending
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