JP2007229630A - 反射率の高い白色塗装鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】下塗り塗膜と上塗りの2コート2ベーク塗装により製造可能で、ワキに起因する塗装欠陥が防止された、L値が非常に高い白色塗装鋼板を提供する。
【解決手段】上塗り塗装膜厚が20μmより大、塗装膜厚の合計が30μm以上の白色塗装鋼板であって、上塗り塗膜が、顔料のチタニア(TiO2)に加えて、平均粒子径が1〜10μmのシリカを1〜5質量%の量で含有する。上塗り塗膜の塗装厚みを40μm程度まで増大させても、ワキによる塗装欠陥の発生が防止される。塗膜の樹脂種は好ましくはポリエステル系樹脂であり、チタニアの含有量は50〜65質量%とすることが好ましい。
【選択図】図4
【解決手段】上塗り塗装膜厚が20μmより大、塗装膜厚の合計が30μm以上の白色塗装鋼板であって、上塗り塗膜が、顔料のチタニア(TiO2)に加えて、平均粒子径が1〜10μmのシリカを1〜5質量%の量で含有する。上塗り塗膜の塗装厚みを40μm程度まで増大させても、ワキによる塗装欠陥の発生が防止される。塗膜の樹脂種は好ましくはポリエステル系樹脂であり、チタニアの含有量は50〜65質量%とすることが好ましい。
【選択図】図4
Description
本発明は、塗装欠陥を発生させずに上塗り塗料を厚膜塗装することが可能な、反射率の高い白色塗装鋼板に関し、照明器具の器具効率を改善するのに有用である。
従来から、光線反射性の高い塗装鋼板に対するニーズがあり、そのような塗装鋼板を証明器具の反射板またはカバーに使用すると、照明器具の器具効率が改善されることから、省エネルギーに有効であるとして注目されている。光線反射性は白色が最も高くなることから、そのような塗装鋼板は白色に塗装されている。
特開2001−243819号公報には、JIS Z8722によるL値が90を超え、しかも60度鏡面光沢法による光沢が80を超える光反射性を備え、加工性に優れた塗装鋼板が提案されている。
特開2003−236981号公報には、塗膜表面の形状(うねり)をコントロールすることで塗膜の反射性を向上させることができることが提案されている。
特開2003−236981号公報
特開2001−243819号公報
光線反射性の高い白色塗装鋼板では、白色顔料としてチタニア(TiO2)が使用されている。その場合、塗膜中の白色顔料(チタニア)の濃度が同じであれば、塗膜が厚い程、塗膜は白くなり、反射性が高くなる。
一方、塗膜の厚みが同じであれば、塗膜中の白色顔料(チタニア)の濃度が高いほど、塗膜の白さ(反射性)は高くなる筈である。しかし、実際には、顔料濃度が約50〜65質量%付近に達するまでは白さが向上するが、それより顔料濃度を増大させても、白さが向上しなくなる。これは、光線が有効に反射しなくなるか、或いは顔料の均一分散が困難になって、見かけ上の粒子サイズが大きくなるためではないかと考えられる。
以上より、白色度(反射性)の高い白色塗装鋼板を得るには、塗膜中の顔料濃度を50〜65質量%にして、その厚みを増大させればよいという結論になる。しかし、チタニアを含有する白色塗料を用いて、一度の塗装で厚い塗膜を形成するように厚膜塗装を行うと、ワキと呼ばれる現象に起因する塗装欠陥が発生する。
ワキとは、塗装された塗料がオーブンで乾燥される際に、塗料に含まれる溶剤が、固まり始めた塗膜からスムーズに抜けずに、突沸的に蒸発する現象である。図1に示すように、塗装膜厚を増大させてある一定値を超えると、ワキ発生領域となり、ワキに起因する塗装欠陥(ブツ)が発生するようになる。
ワキは、塗装膜厚を増大させた場合に顔料や樹脂の種類によらずに共通して見られる現象であるが、白色塗装鋼板の場合、顔料の隠蔽力が比較的小さいため、白色度を上げるのに塗膜厚みを非常に大きくすることが必要となる。そのため、ワキが特に起こり易いという事情があった。
このワキを防止するために、従来の白色塗装鋼板の製造では、一度に塗布する上塗り塗料の量を低く抑え、数回に分けて塗装する(即ち、下塗りと上塗りの間に1、2回の中塗りを行う)ことが必要となり、塗装に手間がかかり、白色塗装鋼板のコスト高の要因となっていた。上述した特許文献1、2においても、ワキの発生を防止する対策はとられていない。そのため、上塗り塗膜の塗装膜厚は、比較的小さな厚みに抑えられ、十分な白色度は得られていない。
本発明は、ワキを発生させずに一度に厚膜塗装することを可能にすることによって、反射率(白色度)の高い白色塗装鋼板を、中塗りを行わずに下塗りと上塗りだけで、コストを抑えて製造可能にする技術を提供することを課題とする。
チタニアを50〜65質量%含有する白色塗膜の場合、塗装膜厚を30μm以上にしないと、L値が93以上の白色にはならない。ここで、白色とは、a値、b値ともに、その絶対値が3以下であることを意味する。
塗装膜厚をさらに大きくすれば、L値はさらに高くなる。例えば、塗装膜厚が40μmになるとL値は95前後になり、50μmではL値は96を超えるようになる。しかし、下塗りと上塗りだけでそのような膜厚を得ようとすると、上塗りの膜厚を大きくしなければならず、ワキが発生するようになる。そのため、下塗りと上塗りだけの2コート2ベーク塗装では、ワキの発生のため、従来はL値が95より高い白色塗装鋼板を製造することは困難であった。
本発明によれば、上塗り塗膜に、白色顔料(通常はチタニア)に加えて、シリカのような白色顔料より大粒径の無色の無機粒子を含有させることにより、ワキ発生領域の膜厚をより高膜厚側にシフトさせることができる。それにより、ワキが発生しない上塗り塗膜の最大塗装膜厚が従来より大きくなり、2コート2ベーク塗装により、反射性の高い白色塗装鋼板を低コストで製造することが可能になる。
ここに、本発明は、上塗り塗装膜厚が20μmより大、塗装膜厚の合計が30μm以上の白色塗装鋼板であって、上塗り塗膜が、白色顔料に加えて、平均粒子径が1〜10μmの無色無機粒子を含有し、それにより上塗り塗膜のワキ発生が解消または抑制されたことを特徴とする白色塗装鋼板である。
別の側面において、本発明は、それぞれ白色顔料を含有する下塗り塗料と上塗り塗料を鋼板に塗装して白色塗装鋼板を製造する方法において、上塗り塗料が、白色顔料に加えて、平均粒子径が1〜10μmの無色無機粒子を含有し、それによって、ワキを発生させずに塗装可能な最小塗装膜厚を増大させることを特徴とする、白色塗装鋼板の製造方法である。
本発明の白色塗装鋼板において塗装膜厚の合計を30μm以上としたのは、前述したように、L値93以上の白色塗装鋼板に必要な塗装膜厚であるからである。一般に下塗り塗装膜厚は10μm以下と薄いので、下塗りと上塗りの2コート2ベーク塗装により30μm以上の合計塗装膜厚を得るには、上塗り塗装膜厚を20μmより大きくする必要がある。ところが、上塗り塗膜の塗装膜厚が20μmより大きくなると、後で例証するように、ワキが発生し易くなる。
図2に示すように、従来の方法で厚膜の上塗り塗装を行うと、塗膜の乾燥・焼付き時に塗料中の溶剤が揮発する際に、溶剤が気化して発生した小さな気泡が集まって大きな気泡となり、それが塗膜から抜けにくくなるため、ワキと呼ばれる現象が発生し、それに起因する塗装欠陥が発生する。この塗装欠陥は、塗膜の表面に肉眼で見える不規則な窪み(ブツ)を生じて、表面の平滑性を低下させ、塗装外観を著しく悪化させる。また、内部にも、大きな気泡がボイドとして残っており、塗膜の性能にも悪影響がある。従って、この塗装欠陥が顕著に発生した塗装鋼板は不良品となり、廃棄されることになるため、1回の塗装厚みは、好ましくはワキが全く発生しない範囲、あるいはワキ発生が軽微な範囲に抑える必要がある。
本発明では、上塗り塗膜中に、白色顔料に比べて著しく大粒径の無色の無機粒子(例、シリカなどの無機酸化物)を添加することにより、図3に示すように、溶剤の気化により発生した小さな気泡が、無機粒子の周囲に沿ってスムーズに移動できるため、集まって大きな気泡とならずに、小さな気泡に分散した状態のまま塗膜表面まで移動し、塗膜外に放散される。特に無色無機粒子の平均粒子径が1〜10μmである時に大きな効果が得られた。無色無機粒子の平均粒子径が1μmより小さいと、無色無機粒子が塗膜中で凝集するため、均一な塗膜を得ることができない。無色無機粒子の平均粒子径が10μmより大きくなると、塗膜の加工性や耐食性に悪影響を生じる。
その結果、ワキが発生しない最大の塗装膜厚(換言すると、ワキ発生領域の最小塗装膜厚)が従来に比べて著しく大きくなるので、ワキ上塗り塗装時の塗装膜厚を大きくすることができ、下塗りと上塗りだけの2コート2ベーク塗装によって、L値が十分に高い反射性に優れた厚膜の白色塗装鋼板を得ることが可能となる。この無機粒子は無色であるので、白色塗装鋼板の色への悪影響は生じない。
図2および図3に白色顔料が示されていないのは、チタニアのような白色顔料は粒径が0.2〜0.3μmと非常に小さいからである。このような超微細な粒子は、それがたとえ無機酸化物であっても、塗膜の乾燥中に上述した無色無機粒子の作用を果たすことはできない。
本発明によれば、白色顔料に比べて著しく大粒径の無色無機粒子を上塗り塗料に含有させることにより、ワキ発生領域が著しく高膜厚側にシフトするので、上塗り塗膜の膜厚を20μmより大きくしてもワキの発生を完全に防止できるか、あるいは膜厚が非常に大きくなる場合でもワキ発生を著しく軽減できる。
従来の2コート2ベーク塗装では、ワキの発生を防ぐための上塗り塗装膜厚の制限により、白色塗装鋼板のL値は最高でも94程度に抑えられていた。これに対し、本発明では、ワキの発生しない上塗り塗装膜厚が少なくとも10μm以上大きくなり、例えば、40μmの上塗り塗膜をワキを発生させずに塗装可能になる。それにより、L値が95以上の高い反射性を持つ白色塗装鋼板を2コート2ベークにより製造することが可能となる。従って、本発明によれば、高品質の白色塗装鋼板を低コストで製造することが可能となる。
本発明の白色塗装鋼板は、鋼板の少なくとも片面の表面に、少なくとも1層の白色塗膜、即ち、白色顔料、典型的にはチタニア(TiO2)で着色した塗膜、を有する。塗膜は通常は下塗り塗膜と上塗り塗膜の2層であり、この場合は2コート2ベーク塗装により塗装鋼板を製造できる。
上述したように、本発明は、この2コート2ベーク塗装によりL値が非常に高い反射性に優れた白色塗装鋼板を得ることができるという効果があり、この効果を生かすために、塗膜は下塗り塗膜と上塗り塗膜の2層だけとすることが好ましい。しかし、1または2以上の中塗り塗膜を下塗り塗膜と上塗り塗膜との間に介在させることも可能である。
基材鋼板は、裸の鋼板(冷延鋼板または熱延鋼板)でも、めっき鋼板でもよい。また、ステンレス鋼板などの合金鋼板も使用できる。耐食性の点から好ましい基材は、亜鉛めっきと亜鉛合金めっきとを含む亜鉛系めっき鋼板である。めっき方法は、溶融めっき、電気めっき、気相めっきのいずれでもよい。亜鉛合金めっきとしては、これらに限られないが、Zn−Ni合金めっき、Zn−Al合金めっき(Al含有量5または55質量%)、Zn−Fe合金めっきなどが例示される。コスト面から好ましいのは溶融亜鉛めっき鋼板である。めっき付着量は通常の範囲でよいが、例えば、片面当たり20〜100g/m2の範囲内であろう。
基材鋼板は、塗装前に適当な下地処理を施したものでよい。基材が亜鉛系めっき鋼板である場合、従来の典型的な下地処理はクロメート処理であったが、6価クロムの有害性から、6価クロムを使用しない化成処理を下地処理に利用することが好ましい。例えば、リン酸亜鉛処理、3価クロムを含有する化成処理、あるいはケイ酸もしくはケイ酸塩、リン酸塩などを利用した完全クロムフリーの各種のノンクロム下地処理を利用することができる。
塗膜の樹脂種は特に制限されず、ポリウレタン系樹脂、メラミン樹脂、さらには特に下塗りにはエポキシ樹脂、なども使用可能であるが、少なくとも上塗り塗膜の樹脂種はポリエステル系樹脂であることが好ましい。より好ましくは、全ての塗膜の樹脂種がポリエステル系樹脂である。これは、ポリエステル系樹脂の塗膜が加工性、強度などの各種物性においてバランスがとれているためである。
このポリエステル系樹脂は、塗料に慣用されている焼付け硬化型のポリエステル系樹脂であり、ポリエステル樹脂に少量に硬化剤を配合したものである。硬化剤としては、メラミン樹脂、ブロックイソシアネートなどが使用できる。硬化剤の配合量はポリエステル樹脂100質量部に対して20〜35質量部程度が適当である。
下塗り塗膜の塗装膜厚は通常は10μm以下であるが、それより厚膜(例、20μm以下、場合によっては20μm超)とすることも可能である。下塗り塗膜の樹脂種は、上塗り塗膜と同じとすることが好ましいが、例えば、エポキシ樹脂などの鋼板との密着性が高く、架橋密度の高い樹脂を使用することもできる。下塗り塗膜は、白色顔料、好ましくはチタニアに加えて、防錆顔料などの他の成分を含有することができる。但し、上塗り塗膜の塗装膜厚が30μm以上あれば、下塗り塗膜に白色顔料を含有させることは必ずしも必要ない。
上塗り塗膜は、白色顔料(好ましくはチタニア)に加えて、平均粒子径が1〜10μmの無色の無機粒子、好ましくは無機酸化物粒子を含有する。それによりワキが発生する塗装膜厚みを(ワキ発生領域)を高塗装膜厚側にシフトさせることができ、ワキを発生させずにより厚い上塗り塗膜を塗装することが可能となる。それ以外の少量の添加成分をさらに含有することもできる。
無色無機粒子として好ましいのは無機酸化物粒子であり、特にシリカが好ましい。本発明において、シリカとは、粉末状の非晶質シリカ、即ち、シリカガラスの粉末を意味する。シリカは安価である上、チタニアと一緒に塗膜中に存在させた場合に、色相ズレ(色相の変化)を起こしにくい。シリカはまた、上塗り塗膜に微細な凹凸を形成させることにより、光沢調整作用も示す。本発明において無色無機粒子として使用できるシリカ以外の材料としては、アルミナ、酸化亜鉛など、可視光に特定吸収を示さない無色の金属酸化物が挙げられる。
上塗り塗膜中の無色無機粒子の含有量は、本発明の目的である、ワキ発生領域の高塗装膜厚側へのシフトが達成されるように設定すればよい。無色無機粒子がシリカである場合、上塗り塗膜中のシリカの含有量は1〜5質量%とすることが好ましく、より好ましくは2〜4質量%である。無色無機粒子の含有量が少なすぎると効果がほとんど得られず、多すぎると塗装鋼板の加工性に悪影響を及ぼす。
上塗り塗膜の膜厚は20μmより大とし、全ての塗膜の合計塗装膜厚は30μm以上とする。上塗り塗膜の膜厚が20μm以下である場合には、本発明に従って無色無機粒子を含有させなくても、ワキの発生は見られないことが多い。上塗り塗膜の膜厚の上限は、ワキの発生が顕著に起こらないように設定すればよく、これは塗膜中の無色無機粒子や白色顔料の含有量によっても変動する。
上塗り塗膜中の白色顔料がチタニアで、その含有量が、塗膜の白さが上限に達する50〜60質量%である場合、塗膜がシリカを含有しない場合には、膜厚が20μmを超えるとワキが発生するようになり、膜厚が30μmになるとワキが顕著となって商品価値が著しく損なわれる。これに対し、本発明に従ってこの上塗り塗膜にシリカを含有させると、シリカの含有量が3質量%ある場合、膜厚が40μmまではワキの発生は起こらず、膜厚が45μmでもワキは軽微であり、ワキが顕著となるのは膜厚が50μmになってからである。従って、この場合の膜厚は45μm以下とし、好ましくは25〜40μm以下とする。無色無機粒子(シリカ)の含有量が多ければ、膜厚をさらに大きくすることができ、逆に含有量が少なければ、膜厚をより小さくする必要がある。
下塗り塗膜は一般に上塗り塗膜より薄く、溶剤の揮散が比較的容易である上、表面に欠陥が発生しても、上塗り塗膜によりカバーされる。従って、下塗り塗膜には、上記の無色無機粒子を含有させる必要性はない。
上塗り塗膜中の白色顔料の含有量は、塗膜の白さが最大になる量に設定することが好ましい。従って、好ましい白色顔料であるチタニア(TiO2)の場合、上塗り塗膜中のその含有量は50質量%以上とすることが好ましい。多くしすぎても、L値のそれ以上の増大は得られないので、チタニアの好ましい含有量は50〜65質量%である。下塗り塗膜については、塗膜密着性を確保するために、チタニアの含有量をより少ない量(例、30〜50質量%)としてもよい。
本発明の塗装鋼板は常法に従って塗装と焼付けにより製造することができる。通常は2コート2ベークの塗装方法が採用されるが、樹脂種によっては、下塗り塗装後の乾燥焼付けを省略して、2コート1ベークとすることも可能である。もちろん、中塗りを行う時には、塗装工程が増える。焼付け条件は樹脂種と硬化剤に応じて設定すればよい。塗装方法は特に制限されないが、工業的には通常はロール塗装により行われる。
基材として溶融亜鉛めっき鋼板(片面あたりのZn付着量:60g/m2、鋼板厚み:0.5mm)を使用し、この基材の両面に、シリカ系の塗布型ノンクロム下地処理(日本ペイント製サーフコートEC2000)を付着量300mg/m2となるように施した。
下地処理した基材の片面に、下塗り塗料として、全固形分に基づいてチタニアを53質量%含有する焼付け型ポリエステル系塗料(関西ペイント社製KPカラー8602)をバーコーターで塗装し、200℃(PMT)で焼き付けて塗膜を乾燥した。形成された下塗り塗装膜厚は全例で5μmに固定した。
次いで、上塗り塗料として、全固形分に基づいてチタニアを59質量%含有する焼付け型高分子ポリエステル系塗料(関西ペイント社製KPカラー1510)を下塗り塗膜の上にバーコーターで塗装し、230℃(PMT)で焼き付け乾燥して、白色塗装鋼板を作製した。
使用した上塗り塗料には、無色無機粒子として平均粒子径が5μmのシリカを、塗料中の全固形分に基づいて0〜5質量%の範囲で0.5質量%のピッチで変化させながら添加し、塗膜の加工性と塗装欠陥(ワキにより発生したブツ)の関係を調査した。また、上塗り塗膜の塗装膜厚については、15μm〜50μmの範囲で5μmのピッチで変化させながら、塗装外観(ワキ発生状況)との関係を調査した。
塗装外観(ワキ発生状況)については、得られた白色塗装鋼板の200×300mmのサンプルの外観を目視観察して、ワキにより発生した塗装欠陥(ブツ)の個数を数え、次の基準で5段階評価した:
5:全面的に良好で、ワキに起因する塗装欠陥(ブツ)が全く見られない;
4:サンプルに1〜2個のブツが観察される;
3:サンプルに3〜10個のブツが観察される;
2:サンプルに11個以上のブツが観察される;
1:ほぼ全面にブツが観察される。
5:全面的に良好で、ワキに起因する塗装欠陥(ブツ)が全く見られない;
4:サンプルに1〜2個のブツが観察される;
3:サンプルに3〜10個のブツが観察される;
2:サンプルに11個以上のブツが観察される;
1:ほぼ全面にブツが観察される。
加工性については、得られた白色塗装鋼板のサンプルに常温(20℃)で万力を用いて2T折り曲げを行い、折り曲げ部を10倍ルーペで観察して、クラックの発生状況により、次の基準で5段階評価した。
5:クラックが全く見られない;
4:1〜2ヶ所にクラックが観察される;
3:3ヶ所以上に部分的にクラックが観察される;
2:全面に小さいクラックが観察される;
1:全面に大きなクラックが観察される。
4:1〜2ヶ所にクラックが観察される;
3:3ヶ所以上に部分的にクラックが観察される;
2:全面に小さいクラックが観察される;
1:全面に大きなクラックが観察される。
試験結果を表1〜表3および図4〜6にそれぞれ示す。なお、塗装外観と加工性のいずれもサンプル数は2であり、その平均値で結果を表示した。いずれも、評点5が最良であり、評点4は許容できるが、評点3以下は商品としては許容できない水準である。
表1および図4は、上塗り塗膜へのシリカ添加量が0質量%(比較例)および3質量%(本発明例)である場合について、上塗り塗装膜厚と塗装欠陥(ワキ)の発生状況との関係を示す。表2および図5は、上塗り塗装膜厚が30μmおよび40μmである場合について、シリカ添加量と塗装欠陥(ワキ)との関係を示す。表3および図6は、上塗り塗装膜厚が30μmおよび40μmである場合について、シリカ添加量と加工性との関係を示す。
表1および図4からわかるように、上塗り塗膜が無色無機粒子であるシリカを含有しない場合には、上塗り塗膜の塗装膜厚が25μm以上でワキが発生しはじめ、塗装膜厚が30μm以上ではワキ発生がやや目立ち(評点4)、特に40μm以上では商品価値がなくなるほどワキ発生が著しくなる(評点2以下)。
一方、本発明に従って上塗り塗膜にシリカを3質量%の量で含有させた場合には、塗装膜厚が40μmまではワキが全く発生せず(評点5)、45μmでワキが発生し始めるが、膜厚50μmまでは評点が4であり、ワキ発生が著しくなるのは膜厚が55μm以上である。従って、シリカを含有しない場合に比べて、ワキが発生しない膜厚を約20μmも大きくすることができた。
表2および図5からは、上塗り塗膜の塗装膜厚が30μmの場合にはシリカ含有量が1質量%以上になるとワキ発生を完全に防止することができ、上塗り塗膜の塗装膜厚が40μmの場合にはシリカ含有量が2質量%以上でワキ発生を抑制でき、3質量%以上では完全に防止できることがわかる。
表3および図6からは、上塗り塗膜へのシリカ添加量が多くなると加工性が低下するが、シリカ添加量が5質量%以下であれば、上塗り塗膜の塗装膜厚が40μmの場合でも加工性は許容範囲内である。上塗り塗膜の膜厚をさらに大きくする場合には、シリカ含有量を例えば、4質量%以下と少なくすることにより、必要な加工性を確保できる。
なお、下塗り塗膜および上塗り塗膜のチタニア含有量ならびに下塗り塗料の塗装膜厚が本実施例に記載した条件である場合、上塗り塗膜の塗装膜厚による塗装鋼板のL値は次の通りであった(カッコ内がL値):
上塗り塗膜の塗装膜厚:20μm(90.5)、25μm(93.0)、30μm(93.9)、35μm(94.2)、40μm(95.2)、45μm(96.3)、50μm(96.5)。
上塗り塗膜の塗装膜厚:20μm(90.5)、25μm(93.0)、30μm(93.9)、35μm(94.2)、40μm(95.2)、45μm(96.3)、50μm(96.5)。
従って、本発明によれば、ワキを全く発生させずに、L値が95以上という反射性(白色度)に優れた、照明器具の反射板やカバーに最適の性能を持つ白色塗装鋼板を下塗りと上塗りだけで効率よく低コストで製造することができる。
Claims (11)
- 上塗り塗装膜厚が20μmより大、塗装膜厚の合計が30μm以上の白色塗装鋼板であって、上塗り塗膜が、白色顔料に加えて、平均粒子径が1〜10μmの無色無機粒子を含有し、それにより上塗り塗膜のワキ発生が解消または抑制されたことを特徴とする白色塗装鋼板。
- 少なくとも上塗り塗膜の樹脂種がポリエステル系樹脂である、請求項1に記載の白色塗装鋼板。
- 無色無機粒子がシリカであり、上塗り塗膜中のシリカの含有量が1〜5質量%である請求項1または2に記載の白色塗装鋼板。
- 塗膜が下塗りと上塗りの2層からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の白色塗装鋼板。
- 白色顔料がチタニアである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の白色塗装鋼板。
- 上塗り塗膜中のチタニアの含有量が50〜65質量%である、請求項5に記載の白色塗装鋼板。
- 下塗り塗料と上塗り塗料を鋼板に塗装して白色塗装鋼板を製造する方法において、上塗り塗料が、白色顔料に加えて、平均粒子径が1〜10μmの無色無機粒子を含有し、それによって、ワキを発生させずに塗装可能な最小塗装膜厚を増大させることを特徴とする、白色塗装鋼板の製造方法。
- 乾燥膜厚で上塗り塗料の塗装厚みが20μmより大、塗装膜厚の合計が30μm以上である、請求項7に記載の方法。
- 上塗り塗料の塗装厚みが30μm以上である、請求項8に記載の方法。
- 無色無機粒子がシリカであり、上塗り塗料の全固形分に基づくシリカの含有量が1〜5質量%である請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 上塗り塗料に含有される白色顔料がチタニアであり、その含有量が上塗り塗料の全固形分に基づいて50〜65質量%である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
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