JP2007229048A - リン酸三カルシウム系骨補填材 - Google Patents
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Abstract
【課題】骨親和性および骨伝導性に優れ、骨形成速度と生体吸収速度とのバランスが良好であり、かつ、十分な強度を有するリン酸三カルシウム系骨補填材を提供する。
【解決手段】β‐リン酸三カルシウムおよび/またはα‐リン酸三カルシウムからなる多孔体であって、前記多孔体は、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が50%以上90%以下、平均気孔径が100μm以上500μm以下、各気孔間の連通部の径が20μm以上100μm以下であり、かつ、圧縮強度が5MPa以上であり、前記β‐リン酸三カルシウムおよび/またはα‐リン酸三カルシウムのCaの0.5mol%以上3mol%以下が、Mgにより部分置換されており、前記多孔体の結晶相のβ‐リン酸三カルシウムからα‐リン酸三カルシウムへの相転移温度が、1200℃以上1350℃以下であるように構成された骨補填材を用いる。
【選択図】なし
【解決手段】β‐リン酸三カルシウムおよび/またはα‐リン酸三カルシウムからなる多孔体であって、前記多孔体は、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が50%以上90%以下、平均気孔径が100μm以上500μm以下、各気孔間の連通部の径が20μm以上100μm以下であり、かつ、圧縮強度が5MPa以上であり、前記β‐リン酸三カルシウムおよび/またはα‐リン酸三カルシウムのCaの0.5mol%以上3mol%以下が、Mgにより部分置換されており、前記多孔体の結晶相のβ‐リン酸三カルシウムからα‐リン酸三カルシウムへの相転移温度が、1200℃以上1350℃以下であるように構成された骨補填材を用いる。
【選択図】なし
Description
本発明は、整形外科の分野において、骨欠損部の補填に好適に用いることができるリン酸三カルシウムの多孔体からなる骨補填材に関する。
近年、整形外科の分野において、外傷、骨腫瘍または人工関節の再置換術等による骨欠損部は、骨補填材を用いて修復されるようになってきた。
前記骨補填材の材質としては、優れた生体親和性および骨伝導能を有していることから、ハイドロキシアパタイト(HAp)、β‐リン酸三カルシウム(β‐TCP)等のリン酸カルシウム系セラミックスが多く用いられている。
前記骨補填材の材質としては、優れた生体親和性および骨伝導能を有していることから、ハイドロキシアパタイト(HAp)、β‐リン酸三カルシウム(β‐TCP)等のリン酸カルシウム系セラミックスが多く用いられている。
例えば、HApは、骨補填材として生体内に埋入した場合、これを足場として速やかに骨修復が行われ、新生骨と直接結合するという優れた骨伝導能を発揮する。
また、β‐TCPは、骨欠損部に補填した後、骨形成の進行とともに、材料自体が吸収され、補填部が自家骨に置換されるという優れた生体吸収性を有しており、特に、注目されている材料である。
また、β‐TCPは、骨欠損部に補填した後、骨形成の進行とともに、材料自体が吸収され、補填部が自家骨に置換されるという優れた生体吸収性を有しており、特に、注目されている材料である。
このため、近年、様々なリン酸カルシウム系骨補填材が検討されている(例えば、特許文献1,2参照)。特に、リン酸カルシウム系化合物を多孔質化させたものは、その気孔内部に、生体組織や細胞等が容易に侵入することができ、骨伝導性に優れている。
しかしながら、リン酸カルシウム系多孔体は、強度に劣り、脆弱であるために、手術時においてハンドリングが困難である等の課題を有していた。
特に、β‐TCP多孔体は、β‐TCPからα‐TCPへの相転移温度が1120〜1180℃であるため、多孔体作製時の焼成温度をそれよりも低くしなければならず、従来の市販品のβ‐TCP骨補填材は、通常、焼成温度1050℃前後で製造されていた。このため、多孔体の骨格部分が十分に焼結せず、未熟な焼結体となり、他のリン酸カルシウム系多孔体に比べて、非常に強度が低かった。
特開2001−259016号公報
特許第3400740号公報
特に、β‐TCP多孔体は、β‐TCPからα‐TCPへの相転移温度が1120〜1180℃であるため、多孔体作製時の焼成温度をそれよりも低くしなければならず、従来の市販品のβ‐TCP骨補填材は、通常、焼成温度1050℃前後で製造されていた。このため、多孔体の骨格部分が十分に焼結せず、未熟な焼結体となり、他のリン酸カルシウム系多孔体に比べて、非常に強度が低かった。
上記のように、従来のリン酸カルシウム系骨補填材は強度が低いことから、医療現場で求められている大型のものや複雑な形状の骨補填材は、作製時にクラックや欠けが生じてしまうため、小型かつ単純な形状のものしか作製することができなかった。
一方、上記β‐TCPのような生体吸収性材料の場合、多孔体からなる骨補填材は、その気孔率、気孔径、気孔構造、結晶化度、溶解度、粒子の大きさ等の種々のパラメータが、骨形成速度および該骨補填材の吸収速度に大きく影響する。例えば、気孔径が大きすぎたり、気孔率が高すぎたりすると、骨補填材の吸収速度が速すぎて、新生骨形成のための足場を提供することができなくなる。
したがって、従来のβ‐TCP多孔体からなる骨補填材は、機械的強度に劣り、かつ、生体内での吸収速度が大きいために、骨生成が遅い部位や大きな骨欠損部においては、骨形成速度とβ‐TCPの生体吸収速度とのバランスを保持することが困難であるという課題を有していた。
すなわち、β‐TCP多孔体からなる骨補填材においては、強度の向上を図り、かつ、骨形成速度と生体吸収速度との適度なバランスを保持可能であることが求められていた。
すなわち、β‐TCP多孔体からなる骨補填材においては、強度の向上を図り、かつ、骨形成速度と生体吸収速度との適度なバランスを保持可能であることが求められていた。
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、骨親和性および骨伝導性に優れ、骨形成速度と生体吸収速度とのバランスが良好であり、かつ、十分な強度を有するリン酸三カルシウム系骨補填材を提供することを目的とするものである。
本発明に係るリン酸三カルシウム系骨補填材は、β‐リン酸三カルシウム(β‐TCP)および/またはα‐リン酸三カルシウム(α‐TCP)からなる多孔体であって、前記多孔体は、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が50%以上90%以下、平均気孔径が100μm以上500μm以下、各気孔間の連通部の径が20μm以上100μm以下であり、かつ、圧縮強度が5MPa以上であり、前記β‐リン酸三カルシウム(β‐TCP)および/またはα‐リン酸三カルシウム(α‐TCP)のCaの0.5mol%以上3mol%以下が、Mgにより部分置換されており、前記多孔体の結晶相のβ‐リン酸三カルシウム(β‐TCP)からα‐リン酸三カルシウム(α‐TCP)への相転移温度が、1200℃以上1350℃以下であることを特徴とする。
骨親和性および骨伝導性に優れたβ‐TCP多孔体を、上記のような構成とすることにより、焼結性の改善および機械的強度の向上を図ることができ、しかも、骨形成速度と生体吸収速度とのバランスが良好に保持される骨補填材とすることかできる。
骨親和性および骨伝導性に優れたβ‐TCP多孔体を、上記のような構成とすることにより、焼結性の改善および機械的強度の向上を図ることができ、しかも、骨形成速度と生体吸収速度とのバランスが良好に保持される骨補填材とすることかできる。
上述したとおり、本発明に係るリン酸三カルシウム系骨補填材によれば、従来のリン酸カルシウム系骨補填材と比較して、焼結性を改善することができ、強度の向上を図ることができ、また、骨形成速度と生体吸収速度とのバランスが良好に保持することができる。
したがって、骨親和性および骨誘導性に優れ、ハンドリング容易な骨補填材として好適に用いることができるのみならず、組織工学の細胞足場材料(スキャホールド)としての利用も期待される。
したがって、骨親和性および骨誘導性に優れ、ハンドリング容易な骨補填材として好適に用いることができるのみならず、組織工学の細胞足場材料(スキャホールド)としての利用も期待される。
以下、本発明について、より詳細に説明する。
本発明に係るリン酸三カルシウム系骨補填材は、β‐TCPおよび/またはα‐TCP多孔体からなる骨補填材である。そして、前記多孔体は、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が50%以上90%以下、平均気孔径が100μm以上500μm以下、各気孔間の連通部の径が20μm以上100μm以下であり、かつ、圧縮強度が5MPa以上となるように構成されている。
すなわち、本発明に係る骨補填材は、独自の気孔間連通構造を有するTCP多孔体からなり、ハンドリングにおいても十分な強度を備えたものである。
本発明に係るリン酸三カルシウム系骨補填材は、β‐TCPおよび/またはα‐TCP多孔体からなる骨補填材である。そして、前記多孔体は、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が50%以上90%以下、平均気孔径が100μm以上500μm以下、各気孔間の連通部の径が20μm以上100μm以下であり、かつ、圧縮強度が5MPa以上となるように構成されている。
すなわち、本発明に係る骨補填材は、独自の気孔間連通構造を有するTCP多孔体からなり、ハンドリングにおいても十分な強度を備えたものである。
本発明に係る骨補填材の材質として用いられるβ‐TCPは、人体への適用も既に認められており、上述のように、骨親和性および骨誘導性に優れた好適な材料である。
一方、α‐TCPは、溶解性が高く、機械的強度が低いことから、単独では、骨補填材として用いることが難しいが、インプラント初期段階において重要な感染症の予防、骨形成促進に有効な薬剤をα‐TCPに担持させることにより、その溶解性の速さを活かすことができる。
したがって、本発明に係る骨補填材は、強度向上の観点から、主成分はβ‐TCPであり、α‐TCPは、骨補填材を構成する多孔体の圧縮強度を5MPa以上に保持することができる限りにおいて含有させることができる。
一方、α‐TCPは、溶解性が高く、機械的強度が低いことから、単独では、骨補填材として用いることが難しいが、インプラント初期段階において重要な感染症の予防、骨形成促進に有効な薬剤をα‐TCPに担持させることにより、その溶解性の速さを活かすことができる。
したがって、本発明に係る骨補填材は、強度向上の観点から、主成分はβ‐TCPであり、α‐TCPは、骨補填材を構成する多孔体の圧縮強度を5MPa以上に保持することができる限りにおいて含有させることができる。
また、本発明に係る骨補填材は、独自の気孔間連通構造を有する多孔体であり、多数の球状の気孔が全体にわたって三次元的に分布し、隣接する気孔同士が相互に連通した構造を有していることによって、該多孔体の内部への細胞の侵入が促進され、骨の形成促進を図ることができる。
なお、球状の気孔とは、厳密な真球状に限定されるものではなく、真球がやや扁平したり、歪んだりした形状等の気孔も含む。
なお、球状の気孔とは、厳密な真球状に限定されるものではなく、真球がやや扁平したり、歪んだりした形状等の気孔も含む。
前記多孔体は、表面積、血液や体液等の浸透性、細胞や生体組織、血管等の侵入および付着容易性等の観点から、気孔率が50%以上90%以下、平均気孔径が100μm以上500μm以下とする。
前記平均気孔径が100μm未満である場合は、該多孔体の内部に、細胞や組織が侵入しにくく、気孔内部での骨の形成促進を十分に図ることができない。
一方、前記平均気孔径が500μmを超える場合は、空間が大きすぎるため、気孔内に侵入した細胞が係留されにくく、十分に定着することが困難となり、この場合も、気孔内部での骨の形成促進効果は不十分となる。
前記平均気孔径が100μm未満である場合は、該多孔体の内部に、細胞や組織が侵入しにくく、気孔内部での骨の形成促進を十分に図ることができない。
一方、前記平均気孔径が500μmを超える場合は、空間が大きすぎるため、気孔内に侵入した細胞が係留されにくく、十分に定着することが困難となり、この場合も、気孔内部での骨の形成促進効果は不十分となる。
また、隣接する前記気孔間の連通部の径は、20μm以上100μm以下である。
上記範囲内の大きさを有する連通部であれば、細胞や生体組織が侵入可能であり、多孔体内部での骨の形成促進を図ることができる。
なお、この気孔間の連通部の径は、水銀ポロシメータを用いた細孔径分布測定から求めることができる。
上記範囲内の大きさを有する連通部であれば、細胞や生体組織が侵入可能であり、多孔体内部での骨の形成促進を図ることができる。
なお、この気孔間の連通部の径は、水銀ポロシメータを用いた細孔径分布測定から求めることができる。
上記のような構造を有する本発明に係るリン酸三カルシウム系骨補填材は、特開2002−121088号公報に記載されているような製造方法、すなわち、リン酸カルシウム系セラミックス原料を含むスラリーを撹拌起泡させる方法によって作製することができる。
撹拌起泡により気孔が形成された多孔体は、気孔を区画する骨格自体は緻密であり、気孔がほぼ球状となり、高気孔率であるにもかかわらず、比較的高強度であり、また、毛管現象により、細胞や血液等が浸透しやすい性状が得られる。さらに、単位体積当たりの表面積が大きく、侵入した細胞の足場としても好適な性状となりやすい等の優れた特性を有している。
撹拌起泡により気孔が形成された多孔体は、気孔を区画する骨格自体は緻密であり、気孔がほぼ球状となり、高気孔率であるにもかかわらず、比較的高強度であり、また、毛管現象により、細胞や血液等が浸透しやすい性状が得られる。さらに、単位体積当たりの表面積が大きく、侵入した細胞の足場としても好適な性状となりやすい等の優れた特性を有している。
また、本発明に係る骨補填材は、多孔体を構成するβ‐TCPおよび/またはα‐TCPにおいて、そのCaの0.5mol%以上3mol%以下がMgにより置換されたものであり、該多孔体の結晶相のβ‐TCPからα‐TCPへの相転移温度が1200℃以上1350℃以下であることを特徴とするものである。
このようなMg添加によって、多孔体の焼結性を改善することができ、強度の向上を図ることができる。
このようなMg添加によって、多孔体の焼結性を改善することができ、強度の向上を図ることができる。
上述のように、β‐TCPは、1120〜1180℃でα‐TCPに転移するため、β相を維持するためには、通常、焼成温度を低くしなければならない。
これに対しては、TCPのCaの一部をLi,Na,K,MgまたはZnのうちのいずれかで置換することにより、相転移温度を高温側にシフトさせることが可能となる。
本発明においては、上記金属元素のうち、特に、Mgにより置換し、これをTCP中に固溶させる。
Mgは、生体必須元素の一つであり、成人体内中に約30g存在し、そのうち、約60%が骨に存在している。骨の重量は体重の約1/5であることから、骨中のMg含有量は約2000ppmである。このような点からも、骨補填材へのMg添加は好ましい。
これに対しては、TCPのCaの一部をLi,Na,K,MgまたはZnのうちのいずれかで置換することにより、相転移温度を高温側にシフトさせることが可能となる。
本発明においては、上記金属元素のうち、特に、Mgにより置換し、これをTCP中に固溶させる。
Mgは、生体必須元素の一つであり、成人体内中に約30g存在し、そのうち、約60%が骨に存在している。骨の重量は体重の約1/5であることから、骨中のMg含有量は約2000ppmである。このような点からも、骨補填材へのMg添加は好ましい。
Mgによる置換量は、TCP中のCa分の0.5mol%以上3mol%以下とする。
前記Mg置換量がCa分の0.5mol%未満である場合、β‐TCPからα‐TCPへの相転移量が75%を超え、十分な強度を有するTCP多孔体が得られない。
一方、前記Mg置換量がCa分の3mol%を超える場合、TCP多孔体中のMg含有量が4000ppm以上となり、骨中のMg含有量よりも多くなりすぎるため、好ましくない。
前記Mg置換量がCa分の0.5mol%未満である場合、β‐TCPからα‐TCPへの相転移量が75%を超え、十分な強度を有するTCP多孔体が得られない。
一方、前記Mg置換量がCa分の3mol%を超える場合、TCP多孔体中のMg含有量が4000ppm以上となり、骨中のMg含有量よりも多くなりすぎるため、好ましくない。
例えば、β‐TCPのうちのCa分の2mol%をMgで部分置換した場合、β‐TCPからα‐TCPへの相転移温度は、約1300℃にまで上昇する。
したがって、焼成温度をHApと同程度まで高くすることができるため、多孔体を構成する骨格部分が十分に焼結し、β‐TCP多孔体の機械的強度の向上を図ることができる。
したがって、焼成温度をHApと同程度まで高くすることができるため、多孔体を構成する骨格部分が十分に焼結し、β‐TCP多孔体の機械的強度の向上を図ることができる。
上記のようなMg添加されたTCPの多孔体を得るための焼成温度は、1100℃以上1200℃以下であることが好ましい。
前記焼成温度が1100℃未満である場合、焼結が不十分となり、特に、多孔体の骨格部分の焼結が不十分となり、該骨格部分に孔が残存し、十分な強度の焼結体が得られない。
一方、前記焼成温度が1200℃を超える場合、粒成長により、焼結体(多孔体)の生体吸収速度が遅くなる。
前記焼成温度が1100℃未満である場合、焼結が不十分となり、特に、多孔体の骨格部分の焼結が不十分となり、該骨格部分に孔が残存し、十分な強度の焼結体が得られない。
一方、前記焼成温度が1200℃を超える場合、粒成長により、焼結体(多孔体)の生体吸収速度が遅くなる。
上記のように、焼成温度によって、粒子径を制御することができ、これにより、TCP多孔体の生体吸収速度を制御することができるため、用途に応じたTCP多孔体の物性設計が自在となる。
また、前記Mg置換量を変化させることによって、TCP多孔体を構成するβ‐TCPとα‐TCPの割合および気孔率を制御することができ、これにより、該多孔体の生体吸収速度を調整することも可能である。
また、前記Mg置換量を変化させることによって、TCP多孔体を構成するβ‐TCPとα‐TCPの割合および気孔率を制御することができ、これにより、該多孔体の生体吸収速度を調整することも可能である。
上記のようなMg添加されたTCPの原料粉末は、一般に知られている方法により製造することができる。これらのうち、合成方法の一例を以下に述べる。
TCP中のCa分の所望のMg置換量に基づいて、所定量の水酸化カルシウムと塩化マグネシウムと水とを撹拌混合して、水酸化カルシウムスラリーを調製し、これに、リン酸水溶液を徐々に全量滴下した後、撹拌する。
エージング後、ろ過し、固形分を乾燥させ、仮焼することにより、Mg添加されたTCP合成粉体が得られる。
このようにして得られたTCP合成粉体を原料粉末として用いて、上述したような撹拌起泡法によって、本発明に係るTCP多孔体からなる骨補填材を作製することができる。
TCP中のCa分の所望のMg置換量に基づいて、所定量の水酸化カルシウムと塩化マグネシウムと水とを撹拌混合して、水酸化カルシウムスラリーを調製し、これに、リン酸水溶液を徐々に全量滴下した後、撹拌する。
エージング後、ろ過し、固形分を乾燥させ、仮焼することにより、Mg添加されたTCP合成粉体が得られる。
このようにして得られたTCP合成粉体を原料粉末として用いて、上述したような撹拌起泡法によって、本発明に係るTCP多孔体からなる骨補填材を作製することができる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例1]
TCP中の各成分について、(Ca+Mg)/P=1.528、Ca分のMg置換量が2mol%であるβ‐TCP粉末を、以下のようにして作製した。
まず、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)13.4770mol、塩化マグネシウム(MgCl2)0.2750mol、純水15dm330分間撹拌混合して、水酸化カルシウムスラリーを調製した。
一方、リン酸(H3PO4)9.0mol、純水3dm3を30分間撹拌して、リン酸水溶液を調製した。
前記水酸化カルシウムスラリーに、前記リン酸水溶液を20〜25cm3・min-1で徐々に全量滴下した後、4時間撹拌した。
得られたスラリーを24時間エージング後、ろ過し、固形分を乾燥機中で80℃で乾燥させた。
得られた合成粉体を800℃で仮焼し、Mg添加されたβ‐TCP粉末を得た。
[実施例1]
TCP中の各成分について、(Ca+Mg)/P=1.528、Ca分のMg置換量が2mol%であるβ‐TCP粉末を、以下のようにして作製した。
まず、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)13.4770mol、塩化マグネシウム(MgCl2)0.2750mol、純水15dm330分間撹拌混合して、水酸化カルシウムスラリーを調製した。
一方、リン酸(H3PO4)9.0mol、純水3dm3を30分間撹拌して、リン酸水溶液を調製した。
前記水酸化カルシウムスラリーに、前記リン酸水溶液を20〜25cm3・min-1で徐々に全量滴下した後、4時間撹拌した。
得られたスラリーを24時間エージング後、ろ過し、固形分を乾燥機中で80℃で乾燥させた。
得られた合成粉体を800℃で仮焼し、Mg添加されたβ‐TCP粉末を得た。
次に、TCP多孔体を以下のようにして作製した。
上記により得られたMg添加β‐TCP原料粉末(平均粒子径1μm)500.00gに、分散媒として20重量%ポリエチレンイミン水溶液334.59gを加え、ボールミルで48時間混合してスラリーを調製した。
得られたβ‐TCPスラリー700.00gに、起泡剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル1.40gを添加し、機械的撹拌により1200cm3まで起泡し、泡沫状のスラリーを得た。
これに、架橋剤としてソルビトールポリグリシジルエーテル13.7gを添加し、撹拌した後、型に鋳込んだ。
得られたゲル化体を型から取り出し、乾燥し、成形体を得た。
これを1050℃で焼成し、TCP多孔体を得た。
上記により得られたMg添加β‐TCP原料粉末(平均粒子径1μm)500.00gに、分散媒として20重量%ポリエチレンイミン水溶液334.59gを加え、ボールミルで48時間混合してスラリーを調製した。
得られたβ‐TCPスラリー700.00gに、起泡剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル1.40gを添加し、機械的撹拌により1200cm3まで起泡し、泡沫状のスラリーを得た。
これに、架橋剤としてソルビトールポリグリシジルエーテル13.7gを添加し、撹拌した後、型に鋳込んだ。
得られたゲル化体を型から取り出し、乾燥し、成形体を得た。
これを1050℃で焼成し、TCP多孔体を得た。
[実施例2〜6]
実施例1において、表1の実施例2〜6に示す焼成温度とし、それ以外については、実施例1と同様にして、TCP多孔体を得た。
実施例1において、表1の実施例2〜6に示す焼成温度とし、それ以外については、実施例1と同様にして、TCP多孔体を得た。
上記実施例1〜6において得られた各TCP多孔体について、気孔率、圧縮強度、平均気孔径および気孔間連通部の平均孔径を求めた。これらの結果を表1に示す。
なお、気孔率は、体積、重量、真比重から求めた。
また、平均気孔径は、該多孔体を樹脂包埋し、表面を研磨したものを電子顕微鏡観察し、画像解析により求めた。
また、気孔間連通部の平均孔径を、水銀ポロシメータを用いて、水銀圧入法により測定した。
なお、気孔率は、体積、重量、真比重から求めた。
また、平均気孔径は、該多孔体を樹脂包埋し、表面を研磨したものを電子顕微鏡観察し、画像解析により求めた。
また、気孔間連通部の平均孔径を、水銀ポロシメータを用いて、水銀圧入法により測定した。
さらに、得られた各TCP多孔体の結晶相の同定を行った結果、いずれもβ‐TCP単相であった。
また、室温から1400℃までのTG‐DTAの結果、β‐TCPからα‐TCPへの相転移温度は、1300℃であった。
また、室温から1400℃までのTG‐DTAの結果、β‐TCPからα‐TCPへの相転移温度は、1300℃であった。
前記TCP多孔体はいずれも、全体にわたって気孔同士が連通しており、生体内において、骨芽細胞等が十分に侵入することができ、かつ、骨補填材として十分な強度を有していることが認められた。
また、表1から分かるように、焼成温度が1100℃以上の場合(実施例3〜6)、1100℃未満である場合(実施例1,2)よりも高強度であり、より好ましい。
また、表1から分かるように、焼成温度が1100℃以上の場合(実施例3〜6)、1100℃未満である場合(実施例1,2)よりも高強度であり、より好ましい。
[比較例1〜6]
実施例1〜6において、Mg無添加でβ‐TCP粉末を調製し、これを原料粉末として用い、それ以外については、実施例1〜6と同様にして、TCP多孔体を得た。
得られた各TCP多孔体について、気孔率、圧縮強度、平均気孔径および気孔間連通部の平均孔径を、実施例1と同様にして求めた。これらの結果を表2に示す。
実施例1〜6において、Mg無添加でβ‐TCP粉末を調製し、これを原料粉末として用い、それ以外については、実施例1〜6と同様にして、TCP多孔体を得た。
得られた各TCP多孔体について、気孔率、圧縮強度、平均気孔径および気孔間連通部の平均孔径を、実施例1と同様にして求めた。これらの結果を表2に示す。
さらに、得られた各TCP多孔体の結晶相の同定を行った結果、比較例1〜3はβ‐TCP単相、比較例4,5はα‐TCPとβ‐TCPの混合相、比較例6はα‐TCP単相であった。
また、室温から1400℃までのTG‐DTAの結果、β‐TCPからα‐TCPへの相転移温度は、1150℃であった。
また、室温から1400℃までのTG‐DTAの結果、β‐TCPからα‐TCPへの相転移温度は、1150℃であった。
前記TCP多孔体の気孔構造はいずれも、上記実施例とほぼ同様であった。
また、表2に示したように、焼成温度が1130℃以上の場合(比較例4〜6)において、強度の低下が見られるが、これは、多孔体の結晶相がβ‐TCPからα‐TCPに転移する際に、その結晶構造が変化して体積膨張が生じ、多孔体構造に欠陥が生じたことによると考えられる。
また、表2に示したように、焼成温度が1130℃以上の場合(比較例4〜6)において、強度の低下が見られるが、これは、多孔体の結晶相がβ‐TCPからα‐TCPに転移する際に、その結晶構造が変化して体積膨張が生じ、多孔体構造に欠陥が生じたことによると考えられる。
以上の結果から、本発明に係るリン酸三カルシウム系骨補填材は、TCP原料粉末合成時のMg添加によって、従来より高強度の多孔体として得られることが認められた。
Claims (1)
- β‐リン酸三カルシウムおよび/またはα‐リン酸三カルシウムからなる多孔体であって、
前記多孔体は、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が50%以上90%以下、平均気孔径が100μm以上500μm以下、各気孔間の連通部の径が20μm以上100μm以下であり、かつ、圧縮強度が5MPa以上であり、
前記β‐リン酸三カルシウムおよび/またはα‐リン酸三カルシウムのCaの0.5mol%以上3mol%以下が、Mgにより部分置換されており、
前記多孔体の結晶相のβ‐リン酸三カルシウムからα‐リン酸三カルシウムへの相転移温度が、1200℃以上1350℃以下であることを特徴とするリン酸三カルシウム系骨補填材。
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