JP2007211306A - ナノ構造体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】規則的な配列の窪みを有する構造体を得ることができる構造体の製造方法の提供。
【解決手段】アルミニウム基板を酸性水溶液中で陽極酸化処理を行なった後、中性水溶液中で、再陽極酸化処理を施し、その後、陰極として、酸水溶液中で電解することにより、前記アルミニウム基板から前記陽極酸化皮膜をはく離させて、複数の窪みを有するアルミニウム表面を有する基板、またはマイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体を得るナノ構造体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、微細構造体であるナノ構造体およびその製造方法に関する。
金属および半導体の薄膜、細線、ドット等の技術領域では、ある特徴的な長さより小さいサイズにおいて自由電子の動きが閉じ込められることにより、電気的、光学的および化学的に特異な現象が見られることが知られている。このような現象は「量子力学的サイズ効果(量子サイズ効果)」と呼ばれている。このような特異な現象を応用した機能性材料の研究開発が、現在、盛んに行なわれている。具体的には、数百nmより微細な構造を有する材料が、「微細構造体」または「ナノ構造体」と称されており、材料開発の対象の一つとされている。
こうしたナノ構造体の作製方法としては、例えば、フォトリソグラフィ、電子線露光、X線露光等の微細パターン形成技術を初めとする半導体加工技術によって直接的にナノ構造体を作製する方法が挙げられる。
中でも、規則的な微細構造を有するナノ構造体を作製する方法についての研究が注目され、多く行われている。
例えば、自己規制的に規則的な構造が形成される方法として、電解液中でアルミニウムに陽極酸化処理を施して得られる陽極酸化アルミナ膜(陽極酸化皮膜)が挙げられる。陽極酸化皮膜には、数nm程度から数百nm程度の直径を有する複数の微細孔(マイクロポア)が規則的に形成されることが知られている。この陽極酸化皮膜の自己規則化を用い、完全に規則的な配列を得ると、理論的には、マイクロポアを中心に底面が正六角形である六角柱のセルが形成され、隣接するマイクロポアを結ぶ線が正三角形を成すことが知られている。
例えば、非特許文献1には、マイクロポアのポア径のばらつきが3%以下である陽極酸化皮膜が記載されている。また、非特許文献2には、陽極酸化皮膜には、酸化の進行に伴って、細孔が自然形成されることが記載されている。また、非特許文献3では、多孔質酸化皮膜をマスクとしてSi基板上にAuドットアレイを形成することも提案されている。
陽極酸化皮膜の材料としての最大の特徴は、複数のマイクロポアが、基板表面に対してほぼ垂直方向に、ほぼ等間隔に平行に形成されたハニカム構造を採る点にあるとされている。これに加え、ポア径、ポア間隔およびポア深さを比較的自由に制御することができる点もほかの材料にない特徴であるとされている(非特許文献3参照。)。
陽極酸化皮膜の応用例としては、ナノデバイス、磁気デバイス、発光体等の種々のデバイス類が知られている。例えば、特許文献1には、磁気デバイスとして磁性金属であるCo、Niをマイクロポア内に充填したり、発光材料であるZnOをマイクロポア内に充填したり、バイオセンサーとして酵素/抗体をマイクロポア内に充填したりした応用例が記載されている。
更に、バイオセンシングの分野では、特許文献2に、陽極酸化皮膜のマイクロポアの内部に金属を充填した構造体を用いて、ラマン分光分析用の試料台とする例が記載されている。
ラマン散乱は、入射光(光子)が粒子に当たって散乱する際に、粒子と非弾性衝突を起こして、エネルギーを変化させる散乱である。ラマン散乱光は、分光分析の手法として用いられるが、分析の感度および精度の向上のため、測定に用いる散乱光の強度を増強させることが課題となっている。
ラマン散乱光を増強させる現象としては、表面増強共鳴ラマン散乱(SERRS:Surface−Enhanced Resonance Raman Scattering)現象が知られている。この現象は、金属電極、ゾル、結晶、蒸着膜、半導体等の表面上に吸収されたある種の分子の散乱が、溶液中に比べて増強される現象であり、特に、金または銀で、1011〜1014倍の顕著な増強効果が見られる。SERRS現象の発生メカニズムは、現時点では解明されていないが、上述した表面プラズモン共鳴が影響を与えていると考えられている。特許文献2においても、ラマン散乱強度を増強させる手段として、プラズモン共鳴の原理を利用することを目的としている。
プラズモン共鳴は、金、銀等の貴金属の表面に光を照射した際に、金属表面が励起状態となり、局在する電子密度波であるプラズモン波が、電磁波と相互作用を起こし(共鳴励起)、共鳴状態を形成する現象である。そのうち、表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)は、金属表面に光を照射した際に、金属表面の自由電子が励起状態になり、自由電子が集団で振動することで、表面プラズモン波が発生し、強い電場が発生する現象である。
プラズモン共鳴が起きている表面近傍の領域、具体的には、表面から200nm以内程度の領域では、数桁倍(一例では、108〜1010倍)に及ぶ電場の増強が見られ、各種の光学効果に顕著な高揚が観察される。例えば、金等の薄膜を蒸着したプリズムに臨界角以上の角度で光を入射すると、薄膜表面の誘電率変化を、表面プラズモン共鳴現象による反射光強度の変化として、高感度で検出することができる。
具体的には、表面プラズモン共鳴現象を応用したSPR装置を用いると、生体分子間の反応量および結合量の測定や速度論的解析が、ノンラベルかつリアルタイムで可能となる。SPR装置は、免疫応答、シグナル伝達、タンパク質、核酸等の様々な物質間の相互作用の研究に応用され、最近では、SPR装置で微量ダイオキシンを分析する論文も発表されている(非特許文献4参照。)。
プラズモン共鳴を増大させる方法として、種々の方法が検討されているが、金属を薄膜ではなく孤立した粒子にすることで、プラズモンを局在化させる手法が知られている。例えば、上述した特許文献2には、規則化した陽極酸化皮膜の細孔上に金属粒子を設けて局在化させる手法が記載されている。
ここで、金属粒子による局在プラズモン共鳴を利用する場合、金属粒子が近接して存在すると、金属粒子間のギャップで電場強度が増強され、プラズモン共鳴がより発生しやすい状態が実現するとの研究報告がある(非特許文献5参照。)。
陽極酸化皮膜の自己規則化を用いて、規則的にマイクロポアが並んだ陽極酸化皮膜を作製する方法においては、従来、特定の電解条件で長時間電解を行い、マイクロポアの生成を規則的に進行させる規則化工程を行った後、最も規則的に整列しているマイクロポアの底部付近を表面に露出させるために、規則化工程で得られた陽極酸化皮膜をクロム酸とリン酸との混合水溶液で溶解させる脱膜工程を行うのが通例である。
また、特許文献3においては、アルミニウム部材又はその合金に硫酸による陽極酸化処理、またはシュウ酸による陽極酸化処理を施して多孔質層を形成することが記載されている。また、マンガン-アルミニウム合金の場合は、シュウ酸による陽極酸化処理後、硫酸による陽極酸化処理する方法が記載されている。陽極酸化処理により形成された皮膜は、逆電解処理で母材からはく離して薄膜状物を得る。薄膜状物には希土類金属を浸漬吸着させて発光体とする。はく離する際にはく離性を良好にするために、多段階電流回復法を用いてバリア層を可及的に薄くさせることが記載されている。電流回復法でバリア皮膜を薄くしてから逆電解はく離すると、陽極酸化皮膜の規則配列が乱れるという問題がある。
特開2000−31462号公報 特開2003−268592号公報 特開昭61−88495号公報 H.Masuda et.Al.,Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.37(1998),pp.L1340−1342,Part2,No.11A,1 November 1998(Fig.2.) 「表面技術便覧」、(社)表面技術協会編(1998)、日刊工業新聞社、p.490−553 益田秀樹,「陽極酸化アルミナにもとづく高規則性メタルナノホールアレー」,固体物理,1996年,第31巻,第5号,p.493−499 軽部ら,ANALYTICA CHIMICA ACTA 2001,434:2:223−230 岡本隆之、"金属ナノ粒子相互作用および、バイオセンサーに関する調査研究"、[on line]、[平成15年11月27日検索]、インターネット<URL:http://www.plasmon.jp/reports/okamoto.pdf>
しかしながら、クロム酸とリン酸との混合水溶液を用いた脱膜工程は、6価クロム等の環境に好ましくない物質を使用しこれらを廃棄しなければならないという問題があった。
また、特許文献3に記載の陽極酸化処理の条件では、規則配列が乱れ、得られる陽極酸化皮膜をラマン分光分析用試料台等に用いることができなかった。また、特許文献3に記載されている電流回復法により皮膜の膜厚を薄くする方法を用いると、アルミニウム部材の表面の規則配列が乱れるため、アルミニウム部材をラマン分光分析用試料台等に用いることができなかった。
したがって、本発明は、短時間で、規則的な配列の窪みを有する構造体を得ることができるナノ構造体の製造方法およびそれにより得られるナノ構造体を提供することを目的とする。
本発明者は、短時間で、規則的な配列の窪みを有する構造体を得るべく鋭意研究した結果、酸性水溶液中で陽極酸化処理を行なった後、中性水溶液中で、再陽極酸化処理を施して、酸水溶液中で電解することにより、陽極酸化皮膜とアルミニウム基板とをはく離させて、規則的な配列の複数の窪みを有する陽極酸化皮膜とアルミニウム基板とをナノ構造体として得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下を提供する。
(1)アルミニウム基板を酸性水溶液中で陽極酸化処理を行なった後、中性水溶液中で、再陽極酸化処理を施し、その後、陰極として、酸水溶液中で電解することにより、前記アルミニウム基板から前記陽極酸化皮膜をはく離させて、複数の窪みを有するアルミニウム表面を有する基板からなる構造体を得るナノ構造体の製造方法。
(2)アルミニウム基板を酸性水溶液中で陽極酸化処理を行なった後、中性水溶液中で、再陽極酸化処理を施し、その後、陰極として、酸水溶液中で電解することにより、前記陽極酸化皮膜と前記アルミニウム基板とをはく離させて、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体を得るナノ構造体の製造方法。
(3)上記(1)で得られたアルミニウム表面を有する構造体に、さらに、陽極酸化処理を施すことを特徴とする陽極酸化皮膜付きアルミニウム基板からなる構造体を得るナノ構造体の製造方法。
(4)上記(2)で得られた陽極酸化皮膜に化学処理を施して細孔を広げたことを特徴とする陽極酸化皮膜からなる構造体を得るナノ構造体の製造方法。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかの方法で得られるナノ構造体。
(6)上記(1)で得られたアルミニウム表面を有する構造体に、さらに、陽極酸化処理を施した後、細孔内に金属または金属酸化物を充填した陽極酸化皮膜付きアルミニウム基板からなる構造体を得るナノ構造体の製造方法。
(7)上記(1)で得られたアルミニウム表面を有する構造体に、さらに、陽極酸化処理を施した後、細孔内に金属または金属酸化物を充填した陽極酸化皮膜付きアルミニウム基板からなるラマン分光分析用試料台。
(8)アルミニウム基板を酸性水溶液中で陽極酸化処理を行なった後、中性水溶液中で、再陽極酸化処理を施し、その後、陰極として、酸水溶液中で電解することにより、前記陽極酸化皮膜と前記アルミニウム基板とをはく離させて、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜のバリア層を除去して得られるナノ構造体の製造方法。
(9)アルミニウム基板を酸性水溶液中で陽極酸化処理を行なった後、中性水溶液中で、再陽極酸化処理を施し、その後、陰極として、酸水溶液中で電解することにより、前記陽極酸化皮膜と前記アルミニウム基板とをはく離させて、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜のバリア層を除去して得られたフィルター。
本発明の構造体の製造方法によれば、アルミ表面の規則的配列を維持しながら酸化皮膜がはく離可能である。酸化皮膜表面からの水素ガス発生を抑制し、必要最低限度の電気量ではく離可能である。逆電解はく離の際に発生し易い金属アルミ表面の10nm〜100nm程度の微小な欠陥が減少し、結果として得られるナノ構造体の規則化度が向上する。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1、第2の態様は、アルミニウム基板を酸性水溶液中で陽極酸化処理を行なった後、中性水溶液中で、再陽極酸化処理を施し、その後、陰極として、酸水溶液中で電解することにより、前記アルミニウム基板から前記陽極酸化皮膜をはく離させて、複数の窪みを有するアルミニウム表面を有する基板からなる構造体(第1の態様)と、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体(第2の態様)とを得るナノ構造体の製造方法である。
<アルミニウム部材>
本発明に用いられるアルミニウム部材は、アルミニウム基板と、前記アルミニウム基板の表面に存在する陽極酸化皮膜とを有する。このアルミニウム部材は、アルミニウム基板の表面に陽極酸化処理を施して得ることができる。
<アルミニウム基板>
アルミニウム基板は、特に限定されず、例えば、市販のアルミニウム基板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板が挙げられる。
アルミニウム基板のうち、陽極酸化処理により陽極酸化皮膜を設ける表面は、アルミニウム純度が、99.5質量%以上であるのが好ましく、99.80質量%以上であるのがより好ましく、また、99.99質量%未満であるのが好ましく、99.95質量%以下であるのがより好ましい。アルミニウム純度が99.5質量%以上であると、ポア配列の規則性が十分となり、99.99質量%未満であると安価に製造することができる。
アルミニウム基板の表面は、あらかじめ脱脂処理および鏡面仕上げ処理を施されるのが好ましい。
<脱脂処理>
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、表面に付着した有機成分(主に脂分)等を溶解させて除去することを目的として行われる。脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。
具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
また、pH10〜13、温度30〜50℃程度の水酸化ナトリウム水溶液、pH1〜4、温度40〜70℃程度の硫酸水溶液等に、アルミニウム表面から気泡がわずかに発生する程度の時間、アルミニウム基板を浸せきさせることによっても行うことができる。
好ましい脱脂処理としては、アルミニウム基板をアセトンで洗浄した後、pH4、温度50℃の硫酸に浸せきさせる方法が例示される。この方法によれば、アルミニウム表面の脂分が除去される一方で、アルミニウムの溶解がほとんど起こらないので好ましい。
<鏡面仕上げ処理>
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸をなくして、電着法等による封孔処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。
本発明において、鏡面仕上げ処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法、電解研磨を施す方法、化学研磨を施す方法が挙げられる。これらの方法は、適宜組み合わせて用いることができる。
電解研磨および化学研磨の方法は、例えば、アルミニウムハンドブック(第6版)、(社)日本アルミニウム協会編(2001年)、p.164−165に記載されている各種の方法が挙げられる。
好ましい鏡面仕上げ処理としては、研磨剤を用いる方法を、用いる研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行い、その後、電解研磨を施す方法が挙げられる。この場合、最終的に用いる研磨剤としては、#1500のものが好ましい。この方法によれば、アルミニウム基板が圧延を経て製造されたものである場合、圧延時に圧延筋が発生していても、圧延筋をなくすことができる。
鏡面仕上げ処理により、例えば、平均表面粗さRa、0.03μm以下、光沢度70%以上の表面を得ることができる。平均表面粗さRaは、0.02μm以下であるのが好ましい。また、光沢度は80%以上であるのが好ましい。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。
<陽極酸化処理>
陽極酸化処理としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、後述する自己規則化法を用いるのが好ましい。
自己規則化法は、陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。具体的には、高純度のアルミニウムを使用し、電解液の種類に応じた電圧で、長時間(例えば、数時間から十数時間)かけて、低速で陽極酸化皮膜を形成させる。
本発明に用いられる自己規則化陽極酸化処理は、例えば、酸濃度1〜10質量%の溶液中で、アルミニウム基板を陽極として通電する方法を用いることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、シュウ酸、硫酸、クエン酸、マロン酸、酒石酸、リン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
自己規則化陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度0.01〜10mol/L、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧15〜240V、電気量3〜10000C/dm2、電解時間30〜1000分であるのが好ましい。
電解は、定電圧電解を行うのが好ましい。
自己規則化法の代表例としては、J.Electrochem.Soc.Vol.144,No.5,May 1997,p.L128(非特許文献6)、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.35(1996)Pt.2,No.1B,L126(非特許文献7)、Appl.Phys.Lett,Vol.71,No.19,10 Nov 1997,p.2771(非特許文献8)、上記非特許文献1が知られている。
これらの公知文献に記載されている方法は、高純度の材料を用い、電解液に応じた特定の電圧で、比較的低温で長時間処理を施しているところに技術的特徴がある。具体的には、いずれもアルミニウム純度99.99質量%以上の材料を用いており、以下に示される条件で、自己規則化法を行っている。
0.3mol/L硫酸、0℃、27V、450分(非特許文献6)
0.3mol/L硫酸、10℃、25V、750分(非特許文献6)
0.3mol/Lシュウ酸、17℃、40〜60V、600分(非特許文献7)
0.04mol/Lシュウ酸、3℃、80V、膜厚3μm(非特許文献8)
0.3mol/Lリン酸、0℃、195V、960分(非特許文献8)
<中性水溶液中での再陽極酸化処理>
中性電解液とはpHが6〜8の電解液であり、より好ましくはpHが6.5〜7.5の電解液であり、電解液として水に溶解させる電解質の具体例として、次のようなものが挙げられる。硫酸、塩酸、シュウ酸、ホウ酸、硝酸等の無機酸やマレイン酸、オレイン酸、アジピン酸、酢酸、酒石酸、蟻酸、クエン酸等の有機酸、これら有機酸または無機酸とNa、K、Mg、Alからなる金属塩、または、これら有機酸または無機酸をアンモニアや苛性ソーダ、苛性カリウム等のアルカリ水溶液でPhを調整した水溶液も含まれる。中でも好ましくは、ほう酸、四ほう酸Na、五ほう酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、燐酸2水素アンモニウム、アジピン酸、アジピン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、クエン酸が好ましい。さらに好ましくはホウ酸、四ほう酸Na、五ほう酸アンモニウム等のホウ酸類、酒石酸、酒石酸アンモニウム等の酒石酸類、燐酸2水素アンモニウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム等の燐酸類、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸類であり、中でもホウ酸類が好ましい。中性塩の中でもホウ酸類を使用すると欠陥を修復させる効果がある事が知られており、好ましく使用できる。
好ましい電解液濃度は、0.001mol/L〜2mol/Lの範囲が好ましい。さらに、0.01mol/L〜1mol/Lの範囲が好ましい。0.02mol/L〜0.8mol/Lの範囲が最も好ましい。さらに好ましい電解液を具体的に列挙すれば下記のようなものである。
0.5mol/L(31g/l)ほう酸+0.05mol/L(10g/l)四ほう酸ナトリウム
120g/Lほう酸+0.8g/L 五ほう酸アンモニウム
1g/Lオレイン酸ナトリウム
1.65g/L 燐酸2水素アンモニウム+0.05ccアンモニア
150g/L アジピン酸
0.1mol/L(17.8g/L)アジピン酸アンモニウム
0.1mol/L(18.4g/L)酒石酸アンモニウム
処理条件は、電解液温度1℃〜40℃、さらに好ましくは5〜35℃、10〜33℃の間が最も好ましい。
電解条件は、定電圧電解 10V〜25Vで陽極電解する事が好ましい。予めバリア皮膜の厚みを計測し、その厚みd[Å]に対応した V1=d/14 電解電圧V1[V]付近で電解することが好ましい。V1はハンター電圧と呼ばれ、バリア層中を電解イオンが容易に移動できるようになる電圧に対応していると考えられる。
時間は、1秒〜600秒が好ましい。5秒〜300秒がより好ましい。10秒〜180秒が最も好ましい。電解電圧を0Vから直線的に上昇させる方法も好ましい。好ましい電圧上昇速度0.1〜5V/min、0.3V〜 3V/min 0.5V〜 2V/minが最も好ましい。電圧がハンター電圧に到達したら、電解電圧の上昇を停止させる事が好ましい。
<ポアワイド処理>
ポアワイド処理は、化学処理ともいわれ、陽極酸化処理後、アルミニウム基板を酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきさせることにより、陽極酸化皮膜を溶解させ、マイクロポアのポア径を拡大する処理である。これにより、マイクロポアの配列の規則性を制御することが容易となる。
ポアワイド処理に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜40℃であるのが好ましい。
ポアワイド処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜60分であるのが好ましく、10〜50分であるのがより好ましく、15〜30分であるのが更に好ましい。
<バリア層薄層化処理>
本発明においては、上述したアルミニウム部材が、陽極酸化皮膜のバリア層を薄層化されたアルミニウム部材であるのが、好ましい態様の一つである。バリア層が薄層化されていると、後述するはく離工程におけるはく離性が優れたものとなる。
本発明者は、陽極酸化処理の後、電圧を急激に変化させることなく漸減させることにより、即ち、電流回復期間を発生させず、常に電流が流れる状態を保持した状態を保つようにしながら電圧を下げる方法により、陽極酸化皮膜のマイクロポアの配列の規則性を損なうことなく、陽極酸化皮膜のバリア層を薄層化できることを見出した。これは、電流回復期間が発生しないため、微細な枝分かれが起きないからだと考えられる。
具体的には、例えば、陽極酸化処理の電圧が100V以上である場合は、電圧の降下速度を20V/分以下とするのが好ましく、10V/分以下とするのがより好ましく、5V/分以下とするのが更に好ましい。
維持する電流は大きいほどよい。具体的には、10μA/cm2以上であるのが好ましく、30μA/cm2以上であるのがより好ましく、50μA/cm2以上であるのが更に好ましい。
電流が低くなりすぎると、マイクロポアの配列の規則性が乱れるため、上記速度で、電流が10μA/cm2未満に低下した場合には、一旦電圧降下を中止し、電流が10μA/cm2以上流れるのを待って、電圧降下を続けるのが好ましい。
<その他の処理>
また、必要に応じて、その他の処理を施すことができる。
例えば、本発明の構造体を試料台にして、水溶液を垂らして膜状にしたい場合には、水との接触角を小さくするために、親水化処理を施してもよい。親水化処理は、従来公知の方法により施すことができる。
また、本発明の構造体を試料台にして、酸で変性し、または分解されるタンパク質を対象とする場合には、陽極酸化処理に用いられ、アルミニウム表面に残留している酸を中和するために、中和処理を施してもよい。中和処理は、従来公知の方法により施すことができる。
<はく離工程>
はく離工程は、上述したアルミニウム部材を陰極として、酸水溶液中で電解することにより、前記陽極酸化皮膜と前記アルミニウム基板とをはく離させて、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体を得る工程である。なお、はく離工程においては、アルミニウム部材を陰極として電解を行うが、これは陽極酸化処理の電解がアルミニウム部材を陽極とするのと逆になるので、以下「逆電解」と呼ぶ。
はく離工程においては、この逆電解により、アルミニウム部材の陽極酸化皮膜とアルミニウム基板との界面で水素が発生し、この水素により陽極酸化皮膜のアルミニウム基板との界面にあるバリア層が還元され、アルミニウムイオンとなって電解液として用いられる酸水溶液中に移動して溶出するため、陽極酸化皮膜とアルミニウム基板とがその界面ではく離するものと考えられる。
逆電解においては、陰極として、上述したアルミニウム部材を用い、アルミニウム基板側から通電させる。
陽極は、特に限定されず、例えば、PtめっきされたTi電極、Pt電極、カーボン電極が挙げられる。
逆電解に用いられる酸水溶液は、pH1〜7あるのが好ましく、pH2〜6であるのがより好ましく、pH2.5〜5.5であるのが更に好ましい。また、酸水溶液の電気伝導度は、0.01〜100mS/cmであるのが好ましく、0.1〜50mS/cmであるのがより好ましい。
酸水溶液のpHおよび電気伝導度が上記範囲であると、アルミニウム基板の腐食および残膜が発生しにくく、はく離性が良好になる。
酸水溶液の電気伝導度が低すぎると、電流値の極小値が発生しないことがある。その場合には、酸水溶液中のイオン濃度を高くして、電流値の極小値を発生させるのが好ましい。逆に、酸水溶液中のイオン濃度が高すぎると、電流値の極小値が発生はするものの、短時間で終了し、その後、急速に電流値が増加してしまうので、制御が困難となる。更に、極小値に達する時間を超えると、腐食が発生してしまう。
酸水溶液には、酸として、例えば、シュウ酸、硫酸、リン酸を好適に用いることができる。
また、例えば、水に溶解して酸性を示す金属塩化合物、水に溶解して酸性を示す有機化合物を用いることもできる。
水に溶解して酸性を示す金属塩化合物としては、例えば、シュウ酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムが挙げられる。
水に溶解して酸性を示す有機化合物は、カルボン酸であるのが好ましい。例えば、アジピン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、マレイン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、安息香酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、サリチル酸等の芳香族オキシカルボン酸が好適に挙げられる。
また、水に溶解して中性を示す塩、即ち、中性塩を用いることもできる。中性塩としては、例えば、炭酸アンモニウム等の炭酸塩、ホウ酸アンモニウム等のほう酸塩が好適に挙げられる。
中性塩を用いる場合、更に、添加剤として、フッ化物、炭酸誘導体または酸アミドを添加した混合浴とするのも好適な態様の一つである。フッ化物としては、例えば、フッ化アンモニウムが挙げられる。炭酸誘導体としては、例えば、炭酸グアニジン、尿素、ホルムアルデヒドが挙げられる。酸アミドとしては、例えば、アセトアミドが挙げられる。
これらの中でも、シュウ酸、シュウ酸アルミニウム、硫酸、硫酸アルミニウムまたはこれらの混合物が好ましい。特に、硫酸アルミニウム、硫酸が、入手性や廃液処理性の点で好ましい。
また、上記陽極酸化処理で用いられた電解液と同一の種類のものを用いるのが好ましい態様の一つである。これにより、同一の電解槽で、陽極酸化処理と逆電解とを行うことが可能となる。また、別の電解槽で行う場合であっても、逆電解槽への液の持ち込みによる悪影響がない。
逆電解の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ない。
電解液濃度は、例えば、シュウ酸水溶液の場合、0.4〜10%、硫酸水溶液の場合、2〜20%、リン酸水溶液の場合、0.4〜5%であるのが好ましい。
電解液の温度は、一般的には、0〜50℃であるのが好ましく、10〜35℃であるのがより好ましい。
電流密度は、0.1〜200A/dm2であるのが好ましく、0.3〜50A/dm2であるのがより好ましく、0.5〜10A/dm2であるのが更に好ましい。上記範囲であると、はく離にムラが生じず、より均一に行うことができる。
電圧は、5〜500Vであるのが好ましく、10〜240Vであるのがより好ましい。逆電解が陽極酸化処理に引き続いて行われる場合は、陽極酸化処理と同じ電圧で、定電圧逆電解を行うのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。電圧を断続的に変化させる方法においては、電圧を順次低くしていくのが好ましい態様の一つである。
電解時間は、1〜500秒であるのが好ましく、10〜120秒であるのがより好ましい。
上記範囲であると、陽極酸化皮膜のバリア層とアルミニウム基板とのはく離性により優れ、かつ、陽極酸化皮膜の窪みの規則性もより高くなるので好ましい。電気量が多すぎたり、電解時間が長すぎたりすると、陽極酸化皮膜のバリア層とアルミニウム基板との界面が高温となり、得られる構造体が変形し、窪みの規則性が損なわれる場合がある。
また、逆電解は、電流値をモニターし、電流値が極小となる時間を中心に±30%程度の範囲で停止して終了するのが好ましく、電流値が極小付近となる点で電解を停止して終了するのがより好ましい。この場合、はく離性と、はく離後の陽極酸化皮膜およびアルミニウム基板の面状とが、優れたものになる。
はく離工程を行って得られるアルミニウム基板には、はく離面の10%以下の領域に、厚さ0.2μm以下の陽極酸化皮膜の残存物が残留することがある。このアルミニウム基板を利用する場合には、陽極酸化皮膜の残存物がないのが好ましい。
したがって、この場合、逆電解後、化学処理を行って、陽極酸化皮膜の残存物を除去するのが好ましい。具体的には、各種の酸性またはアルカリ性の水溶液を陽極酸化皮膜に接触させることにより、除去することができる。
酸性水溶液としては、例えば、リン酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液、シュウ酸水溶液、クロム酸とリン酸との混合水溶液が挙げられる。中でも、クロム酸とリン酸との混合水溶液が好ましい。
酸性水溶液は、pH−0.3〜6であるのが好ましく、pH0〜4であるのがより好ましく、pH2〜4であるのが更に好ましい。
酸性水溶液の温度は、20〜60℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
処理時間は、1秒〜6時間であるのが好ましく、5秒〜3時間であるのがより好ましく、10秒〜1時間であるのが更に好ましい。
アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムの各水溶液が挙げられる。
アルカリ性水溶液は、pH10〜13.5であるのが好ましく、pH11〜13であるのがより好ましい。
アルカリ性水溶液の温度は、10〜50℃であるのが好ましく、20〜40℃であるのがより好ましい。
処理時間は、1秒〜10分であるのが好ましく、2秒〜1分であるのがより好ましく、3秒〜30秒であるのが更に好ましい。
また、はく離工程を行っても陽極酸化皮膜が一部残存する場合には、陽極酸化処理とはく離工程とを交互に複数回繰り返し行うことにより、残存した陽極酸化皮膜を完全に除去することができる。
この方法で、陽極酸化皮膜をはく離させると、電流回復を行わないため、アルミニウム基板側の窪みの配列の規則性を乱すことがないので、本発明の第1の態様において、好適である。
逆電解の好適条件の例を下記に例示する。
<好適条件1>
陰極:濃度0.3mol/L、温度17℃のシュウ酸水溶液で、電圧40V、処理時間60分の条件で陽極酸化処理して得られる陽極酸化皮膜、厚さ60μm、ポア径35nm、ポア径の変動係数15%、マイクロポア周期63nm
陽極:カーボン電極
電解液:濃度0.04g/L(アルミニウムイオン換算)、pH3.8、電気伝導度0.6mS/cm、温度33℃の硫酸アルミニウム水溶液
電圧:40V(設定電圧)
電流密度:5A/dm2(極小値1A/dm2
処理時間:40秒(極小時)
本発明の第1、第2の態様においては、はく離工程の処理時間が、従来のクロム酸とリン酸との混合水溶液で溶解させる脱膜工程に要する時間に比べて、極めて短い。したがって、本発明の第1の態様によれば、効率的な構造体の製造が可能となる。
更に、クロム酸とリン酸との混合水溶液は、脱膜工程時において、酸化アルミニウムの含有量がAl23として15g/Lを超えると、急激に溶解能力が劣化するため、新しい処理液に交換する必要がある。本発明に用いられるポア径の変動係数が小さい陽極酸化皮膜は、一般に厚さが厚いので、一度の処理で溶出する酸化アルミニウムの量が多く、処理液の劣化が激しい。
これに対し、本発明においては、陽極酸化皮膜はアルミニウム基板との界面で固形の状態ではく離するため、フィルター等で簡便に分離することができ、逆電解に用いられる酸水溶液が劣化しない。
したがって、本発明におけるはく離工程の処理時間および酸水溶液の消費量は、従来のクロム酸とリン酸との混合水溶液による脱膜工程の処理時間および処理液の消費量に比べて、格段に短く、少ない。
はく離工程においては、上述した逆電解により、陽極酸化皮膜がはく離させたアルミニウム基板は、複数の窪みを有するアルミニウム表面を有する基板となる。この複数の窪みを有するアルミニウム表面を有する基板からなる構造体は、本発明の第1の態様の構造体である。
また、一方で、バリア層が溶解し、アルミニウム基板が除去され、陽極酸化された表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体が得られる。このマイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体は、本発明の第2の態様の構造体である。以下、図面を用いて具体的に説明する。
本発明の第1、第2の態様においては、はく離工程の処理時間が、従来のクロム酸とリン酸との混合水溶液で溶解させる脱膜工程に要する時間に比べて、極めて短い。したがって、本発明の第1、第2の態様によれば、効率的な構造体の製造が可能となる。
図1は、本発明の構造体の製造方法の説明図である。
図1(A)は、はく離工程前のアルミニウム部材の模式的な断面図である。図1(A)に示されるように、アルミニウム部材10は、アルミニウム基板12と、アルミニウム基板12の表面に存在する陽極酸化皮膜14とを有する。陽極酸化皮膜14には、マイクロポア16が存在し、その下部はバリア層18となっている。
図1(B)および図1(C)は、それぞれはく離工程により得られる複数の窪みを有するアルミニウム表面を有する基板からなる構造体(B)およびマイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体(C)の模式的な断面図である。
図1(B)に示される構造体は、図1(A)に示されるアルミニウム部材10の陽極酸化皮膜14のバリア層18が溶解して得られ、複数の窪み26を有するアルミニウム表面を有する基板24からなる構造体である。
図1(C)に示される構造体20は、図1(A)に示されるアルミニウム部材10の陽極酸化皮膜14のバリア層18が溶解して得られ、マイクロポア22を有する陽極酸化皮膜からなる構造体20である。
本発明の第1の態様のアルミニウム表面を有する基板からなるナノ構造体は、そのままナノ構造体として用いることもできるが、前記複数の窪みを有するアルミニウム基板にさらに、陽極酸化処理を施して、陽極酸化皮膜付きアルミニウム基板からなる構造体28(D)としてもよい。
本発明の第2の態様の製造方法は、はく離工程までは、本発明の第1の態様と同様に行われる。図1(C)に示すように、本発明の第2の態様のマイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体20は、そのままナノ構造体として用いることもできるが、前記マイクロポアを有する陽極酸化皮膜に、図1(E)に示すように、さらに化学処理を施して細孔を広げた陽極酸化皮膜からなる構造体21としてもよい。
<陽極酸化処理工程>
はく離工程後に行う陽極酸化処理工程は、はく離工程で得られた複数の窪みを有するアルミニウム基板に陽極酸化処理を施して、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜を表面に有するアルミニウム基板からなる構造体を得る工程である。
陽極酸化処理工程は、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、上述したアルミニウム部材を得る際の酸性水溶液中での陽極酸化処理と同様である。
ここで、上記逆電解で用いられた電解液と同一の種類のものを用いるのが好ましい態様の一つである。これにより、同一の電解槽で、逆電解と陽極酸化処理工程とを行うことが可能となる。また、別の電解槽で行う場合であっても、陽極酸化処理槽への液の持ち込みによる悪影響がない。
この陽極酸化処理工程においては、アルミニウム基板の表面の規則的な配列の複数の窪みが陽極酸化処理の起点となって、規則的な配列のマイクロポアを有する陽極酸化皮膜が形成される。
したがって、陽極酸化処理工程により、規則的な配列のマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を表面に有するアルミニウム基板からなる構造体が得られる。
上述したように、好ましくはアルミニウム表面に窪みを形成させた後、本陽極酸化処理により、陽極酸化皮膜を形成させる。
本陽極酸化処理は、従来公知の方法を用いることができるが、上述した自己規則化法と同一の条件で行われるのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。これらの方法によれば、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
上述した電圧を断続的に変化させる方法においては、電圧を順次低くしていくのが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の抵抗を下げることが可能になり、後に電着処理を行う場合に、均一化することができる。
本陽極酸化皮膜を低温で、マイクロポアの配列が規則的になり、また、ポア径が均一になる。
本発明においては、本陽極酸化処理を比較的高温で行うことにより、マイクロポアの配列を乱し、また、ポア径のばらつきを所定の範囲にすることが容易となる。また、処理時間によっても、ポア径のばらつきを制御することができる。
陽極酸化皮膜の性状については、以下のとおりである。
厚さは、バリア層を含めて、0.1μm以上であるのが好ましく、1μm以上であるのがより好ましい。上記範囲であると、マイクロポアの規則性がより優れたものとなる。
また、厚さは、バリア層を含めて、100μm以下であるのが好ましい。上記範囲であると、後述するはく離工程におけるアルミニウム基板からのはく離が容易となる。
バリア層の厚さは、600nm以下であるのが好ましく、5〜400nmであるのがより好ましく、10〜80nmであるのが更に好ましい。上記範囲であると、後述するはく離工程におけるはく離性が優れたものとなる。
ポア径は、10〜500nmであり、15〜100nmであるのが好ましく、20〜80nmであるのがより好ましい。上記範囲であると、マイクロポアに金属を充填する際に、金属がより均一に充填される。
ポア径の変動係数は、30%未満であり、5〜20%であるのが好ましい。上記範囲であると、プラズモン共鳴デバイス等に応用する際に、高い効果が得られる。
マイクロポアの周期は、20〜700nmであるのが好ましく、25〜600μmであるのがより好ましく、25〜150nmであるのが更に好ましい。ここで、周期は隣接するマイクロポアの中心間の距離である。
マイクロポアの占める面積率は、10〜70%であるのが好ましい。
<化学処理>
本発明の第2の態様で用いられる 化学処理工程は、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、上述したポアワイド処理と同様である。
図1(D)は、陽極酸化処理工程により得られる構造体の模式的な断面図である。図1(D)に示される構造体28は、図1(B)に示されるアルミニウム基板24に陽極酸化処理を施すことにより陽極酸化皮膜30を形成して得られる。陽極酸化処理時には、アルミニウム基板24の窪み26を起点としてマイクロポア32が形成される。したがって、構造体28は、マイクロポア32を有する陽極酸化皮膜30を表面に有するアルミニウム基板34からなる。
<構造体>
本発明の第1の態様により得られる複数の窪みを有するアルミニウム表面に有する基板からなる構造体、および本発明の第2の態様により得られるマイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体は、いずれも規則的な配列を有する複数の窪みまたはマイクロポアを有するため、種々の用途に応用することができる。
例えば、封孔処理により、複数の窪みまたはマイクロポアに金属を充填することにより、ラマン分光分析用試料台等として用いることができる。
また、ナノプリント用金型として用いることができる。
<封孔処理>
封孔処理に用いられる金属は、自由電子を有する金属結合からなる元素であり、特に限定されないが、プラズモン共鳴が確認されている金属であるのが好ましい。中でも、金、銀、銅、ニッケル、白金が、プラズモン共鳴が起こりやすいことが知られており(現代化学,2003年9月号,p.20〜27(非特許文献9))、好ましい。特に、電着やコロイド粒子の作製が容易である金、銀が好ましい。
封孔処理の方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、電着法;金属コロイド粒子の分散液を本発明の構造体に塗布し乾燥させる方法が好適に挙げられる。金属は、単一粒子または凝集体であるのが好ましい。
電着法は、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、金電着法の場合、1g/LのHAuCl4と7g/LのH2SO4を含有する30℃の分散液に、アルミニウム部材を浸せきさせ、11Vの定電圧(スライダックで調整)で、5〜6分間電着処理する方法が挙げられる。
電着法としては、現代化学,1997年1月号,p.51−54(非特許文献10)に銅、スズおよびニッケルを用いた例が詳細に記載されており、この方法を用いることもできる。
金属コロイド粒子を用いる方法に用いられる分散液は、従来公知の方法により得ることができる。例えば、低真空蒸発法による微粒子の作製方法、金属塩の水溶液を還元する金属コロイド作製方法により得ることができる。
金属コロイド粒子は、平均粒径が1〜200nmであるのが好ましく、1〜100nmであるのがより好ましく、2〜80nmであるのが更に好ましい。
分散液に用いられる分散媒としては、水が好適に用いられる。また、水と混合しうる溶剤、例えば、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコールと、水との混合溶媒も用いることができる。
金属コロイド粒子を用いる方法において、塗布方法は特に限定されず、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、浸せき塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等が挙げられる。
金属コロイド粒子を用いる方法に用いられる分散液としては、例えば、金コロイド粒子の分散液、銀コロイド粒子の分散液が好適に用いられる。
金コロイド粒子の分散液としては、例えば、特開平2001−89140号公報および特開平11−80647号公報に記載されているものを用いることができる。また、市販品を用いることもできる。
銀コロイド粒子の分散液は、陽極酸化皮膜から溶出する酸によって影響を受けない点で、銀とパラジウムの合金の粒子を含有するのが好ましい。この場合、パラジウムの含有量は、5〜30質量%であるのが好ましい。
分散液を塗布した後、水等の溶媒を用いて適宜洗浄する。これにより、複数の窪みまたはマイクロポアに充填された粒子のみ残存し、複数の窪みまたはマイクロポアに充填されなかった粒子は除去される。
封孔処理後の金属の付着量は、100〜500mg/m2であるのが好ましい。
また、封孔処理後の表面空隙率は、20%以下であるのが好ましい。封孔処理後の表面空隙率は、構造体表面の面積に対する封孔されていない複数の窪みまたはマイクロポアの開口部の面積の合計の割合である。表面空隙率が上記範囲であると、より強い局在プラズモン共鳴が得られる。
ポア径が50nm以上である場合は、金属コロイド粒子を用いる方法が好適に用いられる。また、ポア径が50nm未満である場合は、電着法が好適に用いられる。両者を組み合わせる方法も好適に用いられる。
封孔処理後の構造体は、金属が複数の窪みまたはマイクロポアを封孔しており、構造体の表面に粒子となって存在している。
この金属粒子の間隔は、ラマン増強効果を大きくするためには、一般に短い方が好ましいが、最適な間隔は、金属粒子の大きさや形状の影響を受ける。また、ラマン分光分析の検体とされる物質の分子量や液体の粘性によっては、金属粒子の間に上手く入り込まないなどの問題が発生する場合がある。
したがって、金属粒子の間隔は一概には決定することができないが、概して、1〜400nmの範囲であるのが好ましく、5〜300nmであるのがより好ましく、10〜200nmであるのが更に好ましい。上記範囲であると、ラマン増強効果が大きくなり、かつ、検体とされる物質が金属粒子の間に入りこまないという問題も少なくなる。
ここで、「金属粒子の間隔」は、隣接する粒子の表面同士の最短距離である。
<局在プラズモン共鳴によるラマン増強効果>
ラマン増強効果は、金属に吸着した分子のラマン散乱強度が105〜106倍程度増強される現象であり、表面増強ラマン散乱(SERS:Surface Enhanced Raman Scattering)と呼ばれている。そして、上記非特許文献9には、金、銀、銅、白金、ニッケル等の金属粒子を用いた局在プラズモン共鳴により、ラマン増強効果が得られることが記載されている。
封孔処理後の構造体は、従来技術に比べて、強度が大きい局在プラズモン共鳴を発生させることができるため、ラマン分光分析に用いると、より強いラマン増強効果が得られる。したがって、封孔処理後の構造体を用いたラマン分光分析用試料台は、有用である。
封孔処理後の構造体を用いたラマン分光分析用試料台の使用方法は、従来のラマン分光分析用試料台の使用方法と同様である。具体的には、封孔処理後の構造体を用いたラマン分光分析用試料台に対して光を照射して、反射した光または透過した光のラマン散乱強度を測定することにより、試料台に保持された金属の近傍の物質の特性を検出する。
<バリア層を除去して得られる構造体>
バリア層を除去する方法としては、各種公知の方法が利用可能である。例えば、クロム酸水溶液や燐酸水溶液などの酸性水溶液をバリア層側から、僅かに加圧して浸透させる方法やイオンミリング装置などによって、バリア層を除去し、図1(F)に示すようにマイクロポアが貫通した形状の構造体を得ることが出来る。逆電解剥離処理の終了後、陽極酸化皮膜側に多孔質なテープ(布テープ、紙テープ、多孔質テープ)を貼り付けた後、剥離することで、バリア層を除去できる。
また、上記の様にマイクロポアが貫通した構造体は、精密フィルターとして有用である。精密フィルターとはナノメートルスケールで細孔サイズが高度に制御されているので、ウイルスや生体関連物質のサイズに基づいて高精度に分離する技術が期待されている。
<ナノプリント>
本発明の構造体は、ナノプリント用金型として用いることができる。具体的には、本発明の構造体の複数の窪みまたはマイクロポアに、樹脂等を流し込んで固めることにより、複数の突起物を有する基板を得ることができる。この複数の突起物を有する基板は、例えば、光学デバイスに用いることができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.構造体の作製
(実施例1〜9)
基板に、以下の工程(1)〜(4)を行って実施例1〜9で、本発明の第1の態様のアルミニウム基板からなる構造体を得た。実施例3〜9についてそのまま評価を行った。実施例1,2については、その後、それぞれ工程(5)A、工程(5)B行った後に評価した。
一方、実施例10〜19では、本発明の第2の態様の陽極酸化皮膜からなる構造体を得た。実施例11〜19についてそのまま評価を行った。実施例10については工程(6)の化学処理(ポアワイド処理)を行った後に評価した。
以下、各処理の詳細について説明する。
<基板>
構造体の作製には、以下の基板1を用いた。
基板1:高純度アルミニウム、和光純薬工業社製、純度99.99質量%、厚さ0.4mm、処理面積5×10cmとした。
工程(1)鏡面仕上げ処理
上記基板に、以下の電解研磨を行い鏡面仕上げ処理を施した。
<鏡面仕上げ処理>
研磨布を用いた研磨、バフ研磨および電解研磨をこの順に行うことにより、鏡面仕上げ処理を施した。バフ研磨後には水洗を行った。
研磨布を用いた研磨は、研磨盤(Struers Abramin、丸本工業社製)および耐水研磨布(市販品)を用い、耐水研磨布の番手を#200、#500、#800、#1000および#1500の順に変更しつつ行った。
バフ研磨は、スラリー状研磨剤(FM No.3(平均粒径1μm)およびFM No.4(平均粒径0.3μm)、いずれもフジミインコーポレーテッド社製)を用いて行った。
電解研磨は、裏面を日東電工製 商品名:ダンプロンテープで被覆した後、下記組成の電解液(温度65℃)を用いて、陽極を基板、陰極をカーボン電極とし、12.5A/dmの定電流で、5分間行った。電源としては、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。
<電解液組成>
・85質量%リン酸(和光純薬工業社製試薬) 1320mL
・純水 20mL
・50%硫酸 600mL
工程(2)自己規則化陽極酸化処理(窪みの形成)
鏡面仕上げを施した基板の表面に、マスキングし、以下のようにして自己規則化陽極酸化処理を施して、窪みを形成させた。この窪みは、後述する逆電解剥離処理後のアルミニウム表面においてマイクロポア形成の開始点となった。
<自己規則化陽極酸化処理>
1)作成条件A
硫酸(関東化学社製試薬)を用いて、濃度0.3mol/L、温度16℃の硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液に基板を浸せきさせ、電圧25V定電圧電解の条件で、7時間、自己規則化陽極酸化処理を行い、陽極酸化皮膜を形成させた。
自己規則化陽極酸化処理においては、陰極:SUS304、陽極:試料として、冷却装置としてNeoCool BD36(ヤマト科学社製)、かくはん加温装置としてペアスターラー PS−100(EYELA社製)、電源としてGP0650−2R(高砂製作所社製)を用いた。なお、基板の電極面と対向していない側の面には、陽極酸化処理が施されないように、あらかじめPETテープ(ダンプロンテープ、日東電工製)を貼り付けておいた。
2)作成条件B
シュウ酸(関東化学社製試薬)を用いて、濃度0.5mol/L、温度16℃の水溶液を調製した。この水溶液に基板を浸せきさせ、電圧40V定電圧電解の条件で、5時間、処理した以外は、作製条件Aと同様に行った。
工程(3)中性水溶液中での再陽極酸化処理
陰極:SUS304、陽極:試料として、以下の1)〜19)の条件を変えて中性水溶液での再陽極酸化処理を行った。中性水溶液のpHはそれぞれ以下であった。
1)条件A 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 33℃ 17.5V 0.5分間、pH6〜7.5。
2)条件B 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 33℃ 17.5V 1分間、pH6〜7.5。
3)条件C 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 33℃ 17.5V 3分間、pH6〜7.5。
4)条件D 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 33℃ 17.5V 5分間、pH6〜7.5。
5)条件E 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 33℃ 15V 1分間、pH6〜7.5。
6)条件F 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 33℃ 16.5V 1分間、pH6〜7.5。
7)条件G 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 33℃ 19.5V 1分間、pH6〜7.5。
8)条件H 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 40℃ 17.5V 1分間、pH6〜7.5。
9)条件I 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 20℃ 17.5V 1分間、pH6〜7.5。
10)条件J 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 10℃ 17.5V 1分間、pH6〜7.5。
11)条件K 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 5℃ 17.5V 1分間、pH6〜7.5。
12)条件L 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 1℃ 17.5V 1分間、pH6〜7.5。
13)条件M 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 33℃ 定電流電解(0.05A/dm2)17.5Vで電解中止、pH6〜7.5。
14)条件N 0.5mol/Lほう酸+0.0.5mol/L 四ほう酸Na 33℃ 定電流電解(0.05A/dm2)20Vで電解中止、pH6〜7.5。
15)条件O 0.5mol/Lほう酸+0.0.5mol/L 四ほう酸Na 33℃ 定電流電解(0.05A/dm2)15Vで電解中止、pH6〜7.5。
16)条件P 1.8mol/L ほう酸 70℃ 、17.5V 1分間、pH3〜3.5。
17)条件Q 1.9mol/Lほう酸+0.02mol/L 五ほう酸Na 70℃ 17.5V 1分間、pH3〜3.5。
18)条件R 0.014mol/L燐酸2水素アンモニウム pH5.4にアンモニアで調整 70℃、17.5V 1分間、pH4.5〜5.5。
19)条件S 0.5mol/Lオレイン酸ナトリウム55℃ 陽極電解。17.5V 1分間、pH6.5〜7.5。
20)条件T 0.5mol/Lほう酸+0.05mol/L 四ほう酸Na 33℃ 28V 1分間、pH6〜7.5。
工程(4)逆電解
逆電解剥離処理の前に試料の陽極酸化処理面を、半径1.7cmの円を開けたダンプロンテープ(日東電工製、PETテープ)にてマスキングした。アルミのエッジ部分も被覆されるようにして、以下の陽極酸化処理を行った。
1)工程(2)作成条件Aの場合
電解液組成は、硫酸アルミニウムをアルミニウム濃度が4.5g/Lとなるように使用して調製した。温度:33℃、陰極:試料、陽極:Ptとし、16Vで定電圧電解し、処理時間は、電流値を電流計でモニターして、電流値が初期比10%以下となった時点で停止した。電気量(電流×時間)を表1に示した。陽極酸化皮膜表面の処理面境界曲線(半径1.7cmの円状)に切り込みを入れて、酸化皮膜を脱離させた。
2)工程(2)作成条件Bの場合
28Vで定電圧電解した以外は、上記1)と同様の条件で逆電解した。
工程(5)再陽極酸化処理
1)工程(2)作成条件Aの場合
実施例1において、逆電解で陽極酸化皮膜をはく離されて得られたアルミニウム基板に再陽極酸化処理を施した。再陽極酸化処理は、自己規則化陽極酸化処理で用いたのと同一の陰極(SUS304)、陽極(試料)を用い、硫酸水溶液(濃度0.3mol/L、温度16℃)にアルミニウム基板を浸せきさせ、電圧25Vの定電圧電解で、2分間行い、基板上に膜厚200nmの陽極酸化皮膜を形成させた。
2)工程(2)作成条件Bの場合
実施例2において、逆電解で陽極酸化皮膜をはく離されて得られたアルミニウム基板に再陽極酸化処理を施した。再陽極酸化処理は、自己規則化陽極酸化処理で用いたのと同一の陰極(SUS304)、陽極(試料)を用い、蓚酸水溶液(濃度0.5mol/L、温度16℃)にアルミニウム基板を浸せきさせ、電圧40Vの定電圧電解で、2分間行った。基板上に膜厚200nmの陽極酸化皮膜を形成させた。
工程(6)化学処理
実施例10において、逆電解で陽極酸化皮膜とアルミニウム基板とをはく離させて得た陽極酸化皮膜に、化学処理(ポアワイド処理)を施した。化学処理は、アルミニウム基板を濃度5wt%のリン酸水溶液(温度30℃)に、15分間浸せきさせることにより行った。
Figure 2007211306
(比較例1)
実施例1において、中性水溶液中での再陽極酸化処理を行わなかった以外は、同様の処理を行った。
(比較例2)
実施例19において、中性水溶液中での再陽極酸化処理を行わなかった以外は、同様の処理を行った。
2.はく離後の均一性の評価
上記各実施例における逆電解後の陽極酸化皮膜とアルミニウム基板とのはく離の状態を評価した。具体的には、逆電解後のアルミニウム基板のはく離面、またはアルミニウム基板を除去した側の陽極酸化皮膜の底面をそれぞれ目視で観察し、残膜(陽極酸化皮膜の残存物)の有無および腐食の有無を評価した。
結果を第1表に示す。表中、
1)◎○「はく離面の残膜」が、残膜が存在する部分の面積が0%以上3%未満であったもので、「はく離面の腐食」が、腐食が存在する部分の面積が0%以上3%未満であったもの、
2)◎「はく離面の残膜」が、3%以上10%未満であったもので、「はく離面の腐食」が、0%以上3%未満であったもの、
3)○「はく離面の残膜」が、0%以上3%未満であったもので、「はく離面の腐食」が、3%以上10%未満であったもの、
4)○△「はく離面の残膜」が、3%以上10%未満であったもので、「はく離面の腐食」が、3%以上10%未満であったもの、
5)△「はく離面の残膜」が、10%以上であったもので、「はく離面の腐食」が、10%以上であったもの、で評価した。
3.複数の窪みを有するアルミニウム表面または陽極酸化皮膜の規則化の評価
複数の窪みを有するアルミニウム表面または陽極酸化皮膜を倍率倍率50000倍(硫酸電解浴:周期63nm)〜100000倍(シュウ酸電解浴:周期100nm)の電子顕微鏡で撮影し、得られた像から、図2で示すように、ある細孔Aに着目し、その細孔の等価円の中心を中心として、少なくとも一つの細孔に外接する同心円を描く。細孔A以外で、同心円内に等価円の中心を有する個数を数える。その個数が6個のものaと6個以外のものbに分ける。
6個以外のものの数bと、6個のものの数aとから、下記式により算出する。
規則化度[%]=6個のものの数数/細孔全数=a/(a+b)×100
約200〜400個のマイクロポアを、図2で示す方法で測定して結果を表1に示した。
4.はく離に要する電気量
電気量はクーロンメーター(北斗電工製HF-201)を使用し計測した。電流値をY軸とし、時間をX軸としてプロットして、一定電流を通電し、電気量を校正した。
本発明の実施例は、比較例1,2に比較して、低い電気量ではく離が可能であった。試料表面から発生する水素ガスの発生も抑止可能であった。
本発明の構造体の製造方法の説明図である。 本発明の構造体の複数の窪みの規則化度を測定する方法を説明する図である。
符号の説明
10 アルミニウム部材
12、24、34 アルミニウム基板
14、30 陽極酸化皮膜
16、22、32 マイクロポア
18 バリア層
20、21、28 構造体
26 窪み

Claims (5)

  1. アルミニウム基板を酸性水溶液中で陽極酸化処理を行なった後、中性水溶液中で、再陽極酸化処理を施し、その後、陰極として、酸水溶液中で電解することにより、前記アルミニウム基板から前記陽極酸化皮膜をはく離させて、複数の窪みを有するアルミニウム表面を有する基板からなる構造体を得るナノ構造体の製造方法。
  2. アルミニウム基板を酸性水溶液中で陽極酸化処理を行なった後、中性水溶液中で、再陽極酸化処理を施し、その後、陰極として、酸水溶液中で電解することにより、前記陽極酸化皮膜と前記アルミニウム基板とをはく離させて、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体を得るナノ構造体の製造方法。
  3. 請求項1で得られたアルミニウム表面を有する構造体に、さらに、陽極酸化処理を施すことを特徴とする陽極酸化皮膜付きアルミニウム基板からなる構造体を得るナノ構造体の製造方法。
  4. 請求項2で得られた陽極酸化皮膜に化学処理を施して細孔を広げたことを特徴とする陽極酸化皮膜からなる構造体を得るナノ構造体の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかの方法で得られるナノ構造体。
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