JP2007207936A - 希土類磁石 - Google Patents

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将史 三輪
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Michi Tanaka
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Abstract

【課題】 十分な耐食性を有する希土類磁石を提供すること。
【解決手段】 好適な実施形態の希土類磁石1は、磁石素体3と、この磁石素体3の表面の全体を覆うように形成された保護層5とから構成され、保護層5は、磁石素体3側から順に、第1の層2、第2の層4及び第3の層6を備えている。第1の層は、少なくとも希土類元素、鉄及び酸素を含む層である。また、第2の層は、少なくとも希土類元素及び酸素を含み、且つ、鉄に対する希土類元素の含有割合が第1の層よりも大きい層である。さらに、第3の層は、少なくとも鉄及び酸素を含み、且つ、鉄に対する希土類元素の含有割合が第1の層よりも小さい層である。
【選択図】 図3

Description

本発明は、希土類磁石、特に表面上に保護層が形成された希土類磁石に関する。
近年、25MGOe以上の高エネルギー積を示す永久磁石として、いわゆる希土類磁石(例えばR−Fe−B系磁石;Rは希土類元素を示す。以下、同様。)が開発されている。このような希土類磁石としては、例えば、特許文献1では焼結により形成されるものが、また特許文献2では高速急冷により形成されるものが開示されている。
この希土類磁石は高エネルギー積を示すものの、主成分として比較的容易に酸化される希土類元素を含有するため耐食性が比較的低い。
このような希土類磁石の耐食性を改善することを目的として、表面に保護層を形成することが提案されている。例えば、特許文献3では、希土類磁石を酸化性雰囲気下にて200〜500℃で加熱することで、保護層を形成することが提案されている。
特開昭59−46008号公報 特開昭60−9852号公報 特開平5−226129号公報
しかしながら、上記特許文献3の希土類磁石であっても、未だ十分な耐食性を得ることは困難な傾向にあった。例えば、希土類磁石を酸化性雰囲気下で熱処理した場合、耐蝕試験において粉ふきや重量減少が生じるという問題があった。
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な耐食性を有する希土類磁石を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の希土類磁石は、希土類元素及び鉄を含有する磁石素体と、当該磁石素体の表面上に形成された保護層とを備え、保護層は、磁石素体を覆い、少なくとも希土類元素、鉄及び酸素を含む第1の層と、第1の層を覆い、少なくとも希土類元素及び酸素を含み、且つ、鉄に対する希土類元素の含有割合が第1の層よりも多い第2の層と、第2の層を覆い、少なくとも鉄及び酸素を含み、且つ、鉄に対する希土類元素の含有割合が第1の層よりも少ない第3の層とを有することを特徴とする。
上記構成の希土類磁石において、保護層を構成する3つの層は、磁石素体の構成元素に加えて酸素を含む層である。これらの層は、いずれも磁石素体よりも酸素含有量が多く安定であり、外部環境による腐食等を受け難い。本発明の希土類磁石は、このように腐食され難い層を3層有する保護層を表面に備えることから、従来に比して優れた耐食性を有するものとなる。特に、保護層中の第3の層は、腐食を生じ易い希土類元素の含有割合が他の層に比して少ないため特に耐食性に優れている。したがって、かかる第3の層を最外層に備えることによって、本発明の希土類磁石は極めて優れた耐食性を発揮し得るものとなる。
上記本発明の希土類磁石において、第3の層は希土類元素を実質的に含まない層であるとより好ましい。これにより、かかる第3の層は一層腐食され難いものとなり、希土類磁石の耐食性が更に良好となる。
本発明によれば、十分な耐食性を有する希土類磁石を提供することが可能となる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、好適な実施形態に係る希土類磁石を示す斜視図である。また、図2は図1に示す希土類磁石のII−II線に沿う断面構成を模式的に示す図である。図1、2に示すように、本実施形態の希土類磁石1は、磁石素体3と、この磁石素体3の表面の全体を覆うように形成された保護層5とから構成される。
[希土類磁石]
以下、まず、希土類磁石1の各構成の好適な実施形態について説明する。
(磁石素体)
磁石素体3は、希土類元素(R)及び鉄(Fe)を含有する永久磁石である。ここで、希土類元素とは、長周期型周期表の第3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイド元素のことをいう。なお、ランタノイド元素には、例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビニウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が含まれる。
なかでも、希土類元素としては、Nd、Sm、Dy、Pr、Ho及びTbからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素が好ましく、これらの元素にLa、Ce、Gd、Er、Eu、Tm、Yb及びYからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含有したものであるとより好適である。磁石素体3に主として含まれる希土類元素としては、特にNdが、優れた磁気特性等を発揮し得るため好ましい。
また、希土類元素には、鉄以外の遷移元素、例えば、コバルト(Co)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含んでいてもよい。
より具体的には、磁石素体3の構成材料としては、R−Fe−B系のものが好ましい。このような材料は実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有しており、また、この主相の粒界部分に希土類元素の配合割合が高い希土類リッチ相、及び、ホウ素原子の配合割合が高いホウ素リッチ相を有している。これらの希土類リッチ相及びホウ素リッチ相は磁性を有していない非磁性相であり、このような非磁性相は通常、磁石構成材料中に0.5〜50体積%含有されている。また、主相の粒径は、通常1〜100μm程度である。
このようなR−Fe−B系の構成材料においては、希土類元素の含有量が8〜40原子%であると好ましい。希土類元素の含有量が8原子%未満である場合、主相の結晶構造がα鉄とほぼ同じ結晶構造となり、保持力(iHc)が小さくなる傾向にある。一方、40原子%を超えると希土類リッチ相が過度に形成されてしまい、残留磁束密度(Br)が小さくなる傾向にある。
また、Feの含有量は42〜90原子%であると好ましい。Feの含有量が42原子%未満であると残留磁束密度が小さくなり、また、90原子%を超えると保持力が小さくなる傾向にある。さらに、Bの含有量は2〜28原子%であると好ましい。Bの含有量が2原子%未満であると菱面体構造が形成されやすく、これにより保持力が小さくなる傾向にあり、28原子%を超えると、ホウ素リッチ相が過度に形成されて、これにより残留磁束密度が小さくなる傾向にある。
上述した構成材料においては、R−Fe−B系におけるFeの一部が、Coで置換されていてもよい。このようにFeの一部をCoで置換すると、磁気特性を低下させることなく温度特性を向上させることができる。この場合、Coの置換量は、Feの含有量よりも大きくならない程度とすることが望ましい。Co含有量がFe含有量を超えると、磁石素体3の磁気特性が小さくなる傾向にある。
また上記構成材料におけるBの一部は、炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)又は銅(Cu)等の元素により置換されていてもよい。このようにBの一部を置換することによって、磁石素体の製造が容易となるほか、製造コストの低減も図れるようになる。このとき、これらの元素の置換量は、磁気特性に実質的に影響しない量とすることが望ましく、構成原子総量に対して4原子%以下とすることが好ましい。
さらに、保持力の向上や製造コストの低減等を図る観点から、上記構成に加え、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、銅(Cu)、ハフニウム(Hf)等の元素を更に含んでいてもよい。これらの含有量も磁気特性に影響を及ぼさない範囲とすることが好ましく、構成原子の総量に対して10原子%以下とすることが好ましい。また、その他、不可避的に混入する成分としては、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、カルシウム(Ca)等が考えられる。これらは構成原子の総量に対して3原子%程度以下の量で含有されていても構わない。
(保護層)
保護層5は、磁石素体3側から順に、第1の層2、第2の層4及び第3の層6を備えている。これらの層は、いずれも希土類磁石及び/又は鉄に加え、酸素を含有する層である。具体的には、希土類金属の酸化物及び/又は鉄の酸化物を主に含む酸化物層であると好ましい。
第1〜第3の層2,4,6に含まれる希土類磁石及び/又は鉄は、いずれも磁石素体3に由来するものであると好ましい。すなわち、保護層5を構成する第1〜第3の層2,4,6は、磁石素体3の表面上に別途形成させた層ではなく、磁石素体3自体が酸化するなどして変化することによって形成された層であると好ましい。なお、第1〜第3の層2,4,6には、希土類元素及び/又は鉄に加え、磁石素体に由来する例えばB、Bi、Si、Al等が含まれてもよい。また、保護層5中の各層には、大気成分に由来する窒素等が含まれる場合もある。この保護層5の総膜厚は、0.1〜20μm程度であることが好ましい。
第1の層2は、希土類元素、鉄及び酸素を含む層である。より具体的には、かかる第1の層2は、希土類元素の酸化物及び鉄の酸化物を含む層であると好ましい。磁石素体3に、Co等が含まれる場合は、第1の層2にこれらの元素が更に含まれていてもよい。かかる第1の層2の膜厚は、0.1〜20μmであると好ましい。
第2の層4は、少なくとも希土類元素及び酸素を含む層である。より具体的には、希土類元素の酸化物を含む層であると好ましい。この第2の層4は、鉄を含有しても含有していなくてもよく、鉄を含有する場合は、鉄酸化物の形態で含むことが好ましい。第2の層4は、鉄に対する希土類元素の含有割合が第1の層2よりも大きい層である。この層の膜厚は、1〜300nmであると好ましい。
ここで、保護層5の各層に含まれている各元素の含有量は、例えば、EPMA(X線マイクロアナライザー法)、XPS(X線光電子分光法)、AES(オージェ電子分光法)又はEDS(エネルギー分散型蛍光X線分光法)等の公知の組成分析法を用いて測定することができる。そして、鉄に対する希土類元素の含有割合は、上記の組成分析により得られた各元素の含有率(原子%)から、例えば、「希土類元素の含有率(原子%)/鉄の含有率(原子%)」に基づいて算出することができる。なお、第2の層4は鉄を含有しない(鉄の含有率が0%である)こともあるが、上述の如く、第1の層2は少なくとも鉄を含有していることから、この場合も、「第2の層4における鉄に対する希土類元素の含有量が第1の層2よりも大きい」場合に該当することとする。
第3の層6は、鉄及び酸素を含む層であり、希土類元素を含む場合は、鉄に対する希土類元素の含有割合が第1の層2よりも小さい層である。また、この第3の層6は、希土類元素の含有量自体も、第1及び第2の層2,4よりも少ないことが好ましく、さらには希土類元素を実質的に含有しない層であるとより好ましい。これは、希土類元素は非常に酸化され易く、酸性溶液に溶出するなどして腐食され易いからである。第3の層6における元素の含有割合や含有量は、上記と同様にして測定可能である。なお、「希土類元素を実質的に含有しない」とは、上述したような組成分析によって希土類元素が検出されない場合をいうものとする。かかる第3の層6の膜厚は、5〜1000nmであると好ましい。
[希土類磁石の製造方法]
次に、上述したような構成を有する希土類磁石1の好適な製造方法について説明する。
希土類磁石1の製造においては、まず、磁石素体3を形成する。磁石素体3は、粉末冶金法によって製造することができる。この方法においては、まず鋳造法やストリップキャスト法等の公知の合金製造プロセスにより所望の組成を有する合金を作製する。次に、この合金をジョークラッシャー、ブラウンミル、スタンプミル等の粗粉砕機を用いて10〜100μmの粒径となるように粉砕した後、更にジェットミル、アトライター等の微粉砕機により0.5〜5μmの粒径となるようにする。こうして得られた粉末を、好ましくは600kA/m以上の磁場強度を有する磁場のなかで、0.5〜5t/cmの圧力で成形する。
その後、得られた成形体を、好ましくは不活性ガス雰囲気又は真空下中、1000〜1200℃で0.5〜10時間焼結させた後に急冷する。さらに、この焼結体に、不活性ガス雰囲気又は真空中、500〜900℃で1〜5時間の熱処理を施し、必要に応じて焼結体を所望の形状(実用形状)に加工して、磁石素体3を得る。
こうして得られた磁石素体3には、後述の保護層5を形成する工程を実施する前に、酸洗浄を施すことが好ましい。酸洗浄で使用する酸としては、硝酸を用いることが好ましい。一般の鋼材にメッキ処理を施す場合、塩酸、硫酸等の非酸化性の酸が用いられることが多い。しかし、本実施形態での磁石素体3のように希土類元素を含む場合には、これらの酸を用いて処理を行うと、酸により発生する水素が磁石素体3の表面に吸蔵され易く、吸蔵部位が脆化して多量の粉状未溶解物が発生する場合がある。この粉状未溶解物は、表面処理後の面粗れ、欠陥および密着不良を引き起こすおそれがある。このため、上述したような非酸化性の酸は、本実施形態におけいては酸洗浄処理液に含有させないことが好ましい。したがって、酸洗浄においては、水素の発生が少ない酸化性の酸である硝酸を用いることが好ましい。
このような酸洗浄による磁石素体3の表面の溶解量は、表面から平均厚みで5μm以上、好ましくは10〜15μmとするのが好適である。こうすれば、磁石素体3の表面の加工による変質層や酸化層をほぼ完全に除去することができ、後述する熱処理によって、所望の保護層5(酸化物層)をより精度よく形成することができる。
酸洗浄に用いられる処理液の硝酸濃度は、好ましくは1規定以下、特に好ましくは0.5規定以下である。硝酸濃度が高すぎると、磁石素体3の溶解速度が極めて速く、溶解量の制御が困難となり、特にバレル処理のような大量処理ではばらつきが大きくなり、製品の寸法精度の維持が困難となる傾向がある。また、硝酸濃度が低すぎると、溶解量が不足する傾向がある。このため、硝酸濃度は1規定以下とすることが好ましく、特に0.5〜0.05規定とすることが好ましい。また、処理終了時のFeの溶解量は、1〜10g/l程度とする。
なお、酸洗浄を行う場合、酸洗浄後の磁石素体3の表面から少量の未溶解物、残留酸成分が残る場合がある。そこで、これらの未溶解物等を完全に除去するため、磁石素体3に対しては、超音波を使用した洗浄を更に実施することが好ましい。この超音波洗浄は、磁石素体3の表面に錆を発生させる塩素イオンが極めて少ない純水中で行うのが好ましい。また、上記超音波洗浄の前後、及び酸洗浄の各過程で必要に応じて同様な水洗を行ってもよい。
次いで、磁石素体3の表面上に保護層5を形成させる。保護層5は、例えば、酸化性ガスを含有する酸化性雰囲気中で磁石素体3を熱処理(加熱)することで形成することができる。かかる熱処理の際には、上述した第1〜第3の層2,4,6が形成されるように、酸化性ガス分圧、処理温度及び処理時間のうちの少なくとも1つの条件を調整することが好ましく、酸化性ガス分圧、処理温度及び処理時間の3つの条件を調整することがより好ましい。
ここで、酸化性雰囲気とは、酸化性ガスを含有する雰囲気であれば特に限定されないが、例えば、大気、酸素雰囲気(好ましくは酸素分圧調整雰囲気)、水蒸気雰囲気(好ましくは水蒸気分圧調整雰囲気)等の酸化が促進される雰囲気である。また、酸化性ガスとしては、特に限定されないが、酸素、水蒸気等が挙げられる。
例えば、酸素雰囲気とは、酸素濃度が0.1%以上の雰囲気であり、その雰囲気には、酸素と共に不活性ガスが共存していてもよい。かかる不活性ガスとしては窒素が挙げられる。つまり、酸素雰囲気の態様としては酸素と不活性ガスとからなる雰囲気がある。
また、水蒸気雰囲気とは、例えば水蒸気分圧が10hPa以上の雰囲気であり、その雰囲気には、水蒸気と共に不活性ガスが共存していてもよい。かかる不活性ガスとしては窒素が挙げられ、水蒸気雰囲気の態様としては水蒸気及び不活性ガスを含む雰囲気がある。酸化性雰囲気を水蒸気雰囲気とすることで、より簡易に保護層を形成することができる。さらに、酸化性雰囲気は、酸素、水蒸気及び不活性ガスを含む雰囲気であってもよい。
熱処理における処理温度は、200〜550℃の範囲から調整されることが好ましく、250〜500℃の範囲から調整されることがより好ましい。処理温度が上記上限値を超えると磁気特性が劣化する傾向にある。一方、上記下限値未満であると上記の3層構造の保護層5を形成することが困難となる傾向にある。
また、処理時間は、1分〜24時間の範囲から調整されることが好ましく、5分〜10時間の範囲から調整されることがより好ましい。処理時間が上記上限値を超えると、磁気特性が劣化する傾向がある。一方、上記下限値未満であると、所望の保護層5を形成することが困難となる傾向がある。
酸化性雰囲気が酸素雰囲気である場合、酸素濃度が25〜100%であると好ましく、25〜50%であるとより好ましい。この酸素濃度が25%未満であると、上述した3層構造の保護層5が得難くなる傾向にある。一方、50%を超える場合は、希土類磁石1の磁気特性が低下する場合がある。
また、酸化性雰囲気が水蒸気雰囲気である場合は、水蒸気分圧が、10〜2000hPaの範囲から調整されることが好ましい。水蒸気分圧が10hPa未満であると、保護層5が上述したような3層構造になり難い傾向にある。一方、2000hPaを超える場合も、保護層5が上述したような3層構造になり難いほか、高圧であるため装置構成が複雑となり、また結露等が生じ易くなる等、作業性が悪くなる傾向にある。
なお、3層構造の保護層5を得るための条件は、例えば、予め保護層5の構成と、酸化性ガス分圧、処理温度及び処理時間のうちの少なくとも1つの条件との相関を求めておき、得られた相関に基づいて決定することができる。そして、熱処理の際には、酸化性ガス分圧、処理温度及び処理時間を、上記相関から求めた好適条件に調整する。
以上、好適な実施形態に係る希土類磁石1について説明したが、この希土類磁石1は、上述の如く、いずれも耐酸化性等に優れる第1、第2及び第3の層2,4,6という3層構造からなる保護層5を備えていることから、優れた耐食性を有するものとなる。
また、保護層5は、第1の層2と第3の層6との間に、鉄に対する希土類元素の含有割合が大きい第2の層4を備えていることから、当該層5を構成している各層同士の密着性が極めて良好となっている。このため、例えば、保護層5を構成する各層間の剥離等も生じ難く、保護層5自体の破壊や腐食等に基づく希土類磁石の腐食も大幅に低減できる傾向にある。
第2の層4により密着性が向上する要因は必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。すなわち、希土類元素は、酸化物生成の標準自由エネルギーが負に大きいことからも分かるように、酸素との結合力が強いものである。そのため、希土類元素の含有割合が大きい層は、これに隣接する層をくさび止めする効果が高いものと考えられる。また、希土類元素は、鉄よりも原子半径が大きく活性な金属であることから、過剰な空孔との間で一種の複合体を形成することができ、これによって膜界面でのボイドの形成をおさえる働きをするとも考えられる。かかる要因によっても、希土類元素の含有割合が高い層は、これに隣接する層との密着性が良好となるものと考えられる。なお、作用は必ずしもこれらに限定されない。
さらに、保護層5は、第2の層4を有することによって、外部からの物質の浸入に起因する希土類磁石1の腐食を抑制することもできると考えられ、これも希土類磁石1の優れた耐食性に寄与しているものと考えられる。これは、必ずしも明らかではないが、希土類元素の含有割合が大きい層は、そうでない層に比べて、腐食性のイオン等を透過し難いことに起因すると推測される。
なお、本発明の希土類磁石は、上述した実施形態の構造に限定されない。例えば、希土類磁石は、上述した保護層5の表面上に、希土類磁石を保護するための他の層を更に備えていてもよい。このような層としては、樹脂層やめっき層等が挙げられる。また、希土類磁石は、上述のような直方体形状に限られず、球状、リング状等の種々の形態を採ることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[希土類磁石の製造]
(実施例1)
まず、粉末冶金法により、組成が10.8Nd−2.5Dy−79.6Fe−1.0Co−6.1B(数字は原子百分率を表す。)である鋳塊を作製し、これを粗粉砕した。その後、不活性ガスによるジェットミル粉砕を行って、平均粒径約3.5μmの微粉末を得た。得られた微粉末を金型内に充填し、磁場中で成形した。次いで、真空中で焼結した後、熱処理を施して焼結体を得た。得られた焼結体を20mm×10mm×2mmの寸法に切り出し加工し、磁石素体を得た。次に、得られた磁石素体を2%HNO水溶液中に2分間浸漬し、その後、超音波水洗を施した。
それから、酸洗浄(酸処理)後の磁石素体に対し、酸素濃度30%の酸化性雰囲気中、380℃で10分間の熱処理を行い、磁石素体の表面に保護層を形成して、希土類磁石を得た。
上記のようにして磁石素体の表面上に保護層が形成した希土類磁石を、集束イオンビーム加工装置を用いて薄片化し、表面近傍の膜構造を透過型電子顕微鏡で観察した。なお、透過型電子顕微鏡には、日本電子社製のJEM−2100Fを使用した。かかる観察によって得られた保護層の積層構造を表す電子顕微鏡写真を、図3に示す。
図3において下側が、写真中には示されていない磁石素体側である。図3より、得られた希土類磁石には、磁石素体側から順に、厚さ(図中上下方向の幅)がそれぞれ1μm、10nm及び40nmである第1の層A、第2の層B及び第3の層Cの3層が形成されていることが確認された。なお、第3の層C上の白色の層Pは、観察のために用いた白金−パラジウム膜である。
さらに、この表面近傍の膜構造に含まれる元素を、EDS(日本電子社製のJED−2300T)を用いて分析した結果、第1の層Aからは主な成分としてNd、Dy、Fe及びOが検出され、第2の層BからはNd、Dy、Fe及びOが検出され、第3の層Cからは、Fe及びOが検出された。また、上記分析により得られた各元素の含有率に基づき、各層における鉄に対する希土類元素の含有割合(希土類元素の含有率(原子%)/鉄の含有率(原子%))を算出した結果、第1の層A、第2の層B及び第3の層Cは、それぞれ0.147、0.342及び0.013であった。
(実施例2)
実施例1で得られた希土類磁石の表面に、スプレー塗装によりエポキシ樹脂塗料を塗布した後、180℃、30分の加熱によりエポキシ樹脂塗料を硬化した。これにより、実施例1の希土類磁石の表面上に、厚さ10μmの樹脂層を更に備える希土類磁石を得た。
(比較例1)
実施例1と同様にして磁石素体を作製して酸処理を行った後、熱処理は施さずに保護層を有しない希土類磁石を得た。
(比較例2)
比較例1で得られた希土類磁石の表面上に、実施例2と同様にして樹脂層を更に形成させて、表面に樹脂層を備える希土類磁石を得た。
[耐食性の評価]
(プレッシャー・クッカー・テスト)
実施例1〜2及び比較例1〜2の希土類磁石それぞれに対し、プレッシャー・クッカー・テストを行った。試験条件は、120℃、0.2MPa、100%RHの環境下に100時間放置とした。その結果、実施例1及び2の希土類磁石では試験後に粉落ちや色変化等といった外観上の変化は見られなかった。これに対し、比較例1の希土類磁石は試験後に黒く変色し、また、比較例2の希土類磁石では樹脂層の剥離が生じた。
また、これらの希土類磁石の試験前後における磁束の変化を測定したところ、各希土類磁石の永久減磁は、実施例1で0.2%、実施例2で0.1%、比較例1で0.8%であった。
(塩水噴霧試験)
まず、実施例2及び比較例2の希土類磁石の樹脂層に、それぞれクロスカットを施した。そして、クロスカット後の各希土類磁石に対し、それぞれJIS K5600−7−1に準拠する5%の塩水を用いた35℃、96時間の塩水噴霧試験を行った。その結果、実施例2の希土類磁石では、クロスカット部では発錆が見られたものの、この部分から内部への腐食は生じていなかった。これに対し、比較例2の希土類磁石では、クロスカット部から内部に腐食が進行し、更に樹脂層にふくれが生じていることが確認された。
好適な実施形態に係る希土類磁石を示す斜視図である。 図1に示す希土類磁石のII−II線に沿う断面構成を模式的に示す図である。 実施例1の保護層の断面構造を示す透過型顕微鏡写真である。
符号の説明
1…希土類磁石、2…第1の層、3…磁石素体、4…第2の層、5…保護層、6…第3の層。

Claims (2)

  1. 希土類元素及び鉄を含有する磁石素体と、当該磁石素体の表面上に形成された保護層と、を備え、
    前記保護層は、
    前記磁石素体を覆い、少なくとも希土類元素、鉄及び酸素を含む第1の層と、
    前記第1の層を覆い、少なくとも希土類元素及び酸素を含み、且つ、鉄に対する希土類元素の含有割合が前記第1の層よりも大きい第2の層と、
    前記第2の層を覆い、少なくとも鉄及び酸素を含み、且つ、鉄に対する希土類元素の含有割合が前記第1の層よりも小さい第3の層と、
    を有することを特徴とする希土類磁石。
  2. 前記第3の層は、希土類元素を実質的に含有しない層であることを特徴とする請求項1記載の希土類磁石。
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